とあるチャリ部の活動記録 (11)
こんにちは、僕は公立高校で歴史を主に教えている教師です。
教師として生徒に歴史の事実だけを教えるのではなく、多少面白おかしく説明することで歴史を好きになってもらいたいと思ってます。
まあ、今から書こうと思っていることに関係ないことはこの辺にしておこう。
よし、あらすじを3行で説明しちゃおうかな。
赴任した先の高校
自転車部がある
顧問をまかされる
3行で説明ってこれで良いのかな?
さて、本編に入る前に1つ。人物の名前はもちろん実名ではない。
そうだな...仮として、自転車選手の名前やら、自転車に関係ある人の名前でも適当につけておこうかな。うん、それがいい。ただし、僕は「男」表記にするけど。
前置きが長くなってしまって申し訳ないが、内容に入っていこうと思う。
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男「えー藤田先生からご紹介がありましたように、僕がこの3組の副担任を勤めさせていただきます男です。赴任してきたばかりなので、新入生の皆さんとある意味では同じだと思いますので、相談事などは気軽にどんどんと来てください。よらしくお願いします。」
一気に考えてきたことを吐き出すと、まだまだ緊張で固い雰囲気の教室から、わずかに拍手が起こった。
藤田「じゃあ、我々の自己紹介はこのくらいにして、皆の自己紹介をしてもらおうかな、では名前の順でよろしく~」
このクラスの担任を勤めるのは、既にベテラン教師の域に入っているであろう、藤田先生だ。どこか適当で緩い雰囲気を醸し出しながらも、頼りになる先生だともっぱらの評価だそうだ。
それに比べて僕はまだまだ教師3年目のひよっこ。前の学校では、随分と舐められたものだった。
下校時刻になると、部活動に所属している上級生たちが、我先にと部室へと向かう。
藤田「男先生、ちょっといいかな」
男「はい、なんでしょうか」
藤田「いや、大したことでもあるんだけど、聞きたい?」
男「...はい」
藤田先生の深刻そうな顔につられ、声のトーンが下がる。
藤田「実はだな、」
男「はい...」
藤田「部活動の顧問を引き受けてもらいたいんだ」
男「部活動、ですか...ちなみになに部の顧問で?」
部活動の顧問。教師にとっては、真面目にやると、拘束時間のわりには金にならず、かと言って放置もしにくいと言う、損な役目。
藤田「自転車部があるのは知っているな?」
男「自転車部...ですか」
藤田「ああ、君が経験者だと聞いてな」
男「はい、大学までは...」
藤田「頼まれてくれるか?」
男「わかりました、やらせてください」
おそらく僕がいないところで、既に話は進んでいるのであろう。そうなれば、藤田先生に説得の手間をかけさせてしまう。どうせ引き受けることになるのであれば、面倒なことは避けるべきだ。
藤田「それは良かった!急な話で本当に申し訳ないのだが、大島先生に会ってきてもらえないか?」
男「大島先生ですか?」
藤田「ああ、もう一人の顧問だ。去年までは一人でやられていたんだよ」
男「わかりました」
藤田「じゃあ、職員室にいると思うから、よろしく頼むよ」
男「はい」
教室から出ると、少し急ぎ足で職員室に向かう。
職員室内の席配置もまだ覚えきれていないため、名簿を確認しながら大島先生を探す。
男「えーと...」
大島「あ、男先生!」
後ろを振り返ると、ジャージ姿の活発そうな女教師の姿があった。
男「あ、どうも大島先生」
大島「藤田先生からお話あったかな?」
男「ええ聞きました。これからよろしくお願いします」
大島「よろしくね!」
ちなみに大島先生とは、同い年で同期ならしい。体育教師だからだろうか、まだまだ大学生でも通用しそうな若さと言うか、幼さなようなものを感じる。
男「今日は練習ないんですか?」
大島「うん、月曜日はオフだからね~」
男「なるほど」
大島「じゃあさ、部室でこの後の作戦会議といきますか!」
男「わかりました」
本当に元気の良い先生だ。圧倒されてしまう。
鍵をとり、大島先生に部室まで案内してもらう。この学校の部室棟はまだ改装したばかりなようで、綺麗な上に一つ一つが広く作ってあった。
大島「ここが自転車部の部室ね!」
扉を開けて中にはいると、少々殺風景とも言える部屋が広がっていた。
大島「まだ部ができて2年目のだから、備品が全然ないんだよね」
少し困ったような顔をしながら、大島先生が頭をかく。
男「部員は何人ほどいるのですか?」
大島「ん、4人だね、2年生が4人」
去年できたばかりの部活としては、妥当な人数だろう。
その後も話を聞き、去年の活動が大体把握できた。
部員の4人は元々ロードレース初心者。
去年の実績は、県大会ロードレースでの完走2人、新人戦ロードレース完走3人。
練習は週5日、火水木が室内でのトレーニング(ローラー台というツールで自転車に乗る)土日は一般公道でのロードトレーニング。
練習メニューを作るのは、部員たち自身。
4人の目標はインターハイ出場。
ちなみに、高校での自転車競技にはロードレースとトラックレースがあり、トラックレースとロードレース両方に出る選手が多かったりする。しかし、トラック競技をやるには資金も機材も圧倒的に足りない状態である。
大島「あの、男先生...」
男「はい」
大島「あの子達を、インターハイに連れていってくれあげられますか?」
男「まあ...出るだけならやれないことも無いでしょう、やる気次第ですが」
大島「これから頑張りましょうね!」
男「では、明日早速部員達との話し合いですかね」
大島「そうしましょう!」
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