姫子「じゃあ私と付き合ってみない?」 (11)

まだ5時半か…どうやら今日は早く起きすぎてしまったらしい。することも無いし準備して学校に行こう。まぁ誰も来てないだろうけど。そう思っていたが学校に行くとすでに先客がいた。

姫子「いちご早いね」

いちご「別に」

私は姫子がこんなに早く来ていることに何か企んでるのではと思わず考えてしまった。

姫子「いちごはいつもこんなに早いの?」

いちご「今日だけ」



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姫子「ふぅん」

いちご「姫子はいつもこれぐらいなの?」

姫子「まあね、何してるか気になる?」

いちご「別に」

姫子「そこは空気を読んで聞くとこでしょ」

いちご「聞いて欲しいの?」

姫子「だから振ったんだよ」

いちご「なんで?」

姫子「いちごと会える時間を増やすため」

いちご「は?」


何を言ってるのだ姫子は。私に会うため?意味が分からない。

姫子「いちごって変わってるじゃん?だからもっといちごのこと知りたいと思って」

そんなストレートに変わってると言われたら怒るに怒れないじゃないか。

いちご「そう」

取り敢えず私は素っ気なく返しといた。こうすれば話が終わると思ったからだ。しかし現実はそう上手くいかなかった。

姫子「いちごって何か熱中してることとかある?」

いちご「別に」

姫子「強いてあげるなら?」

いちご「ない」

姫子「バトンとかは?」

いちご「普通」

姫子「何でバトン部に入ったの?」

いちご「関係無い」

姫子「良いじゃん、教えてよ」

いちご「やだ」

姫子「じゃあ好きな人とかいる?」

いちご「いない」

姫子「好きなタイプは?」

いちご「別に」

姫子「男と女どっちの方が好き?」

いちご「質問の意図が分かんない」

姫子「どっちに恋愛感情抱くのかって話」

いちご「興味ない」

姫子「じゃあ私と付き合ってみない?」

一体何を言い出すのだ姫子は。女同士で付き合う?それも私と?まったく姫子の考えが理解できない。こんな状態で返す言葉は1つしか無い。

いちご「やだ」

姫子「なんで?」

いちご「興味ないから」

姫子「どうせ何かに熱中したこと無いんでしょ?何かに熱中することは良いことだよ」

いちご「余計なお世話」

姫子「余計なお世話と言われようと私はずっと言い続けるよ」

何かに熱中したことが無いことはそんなに悪いことだろうか?そもそも何かに熱中している人は日本人の何割だろうか?

いちご「そういう姫子は何かに熱中してるの?」

姫子「昔はソフトボールに熱中してたけど今はいちごに熱中してる」

いちご「どういうこと?」

姫子「だからいちごのことが好きだってこと」

いちご「そう」

ここは何と返しておくのが正解だろうか?私は姫子のことどう思っているんだろう。特別親しくないクラスメイトだろうか?かといって好意を無下にするのもどうかと思う。どうせなら付き合ってみるのも1つの手かもしれない。

姫子「だからさっきも言ってるけど私と付き合って」

いちご「分かった」

姫子「えっ!?」

いちご「なに?」

姫子「いや、まさかOKされるとは…」

いちご「いや?」

姫子「全然嫌じゃないよ、むしろ嬉しいけど」

いちご「けど?」

姫子「いちごの反応が予想外だったから」

いちご「ただの気まぐれ」

姫子「そっか、そういや皆遅いね」

いちご「もう8時なのに誰も来てないね」

姫子「今日って平日だよね?」

いちご「ちょっと待って」

私は携帯を取り出して今日の日付を確認した。そこに書いてあったのは4月29日。つまり昭和の日だ。

いちご「今日、祝日…」

姫子「あっ!」

姫子「すっかり忘れてたよ」

いちご「帰ろっか」

姫子「うん…」

帰り道、私と姫子は他愛もない話をしながら帰った。しっかり手を繋いで。

おわり

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