メタルスライム「人間の赤ん坊か……」 (83)


「オギャァ! オギャァ!」


メタルスライム「……ふむ」

メタルスライム「人間の子か、何故にこんな森の私達の巣の前に?」

< カサッ

メタルスライム「む、紙切れ……読めないが短く何か書いてあるな」

メタルスライム「ふむ」


「オギャァ!……ギャァアッ!」

メタルスライム「そう泣くな、よいしょ」ポヨン

メタルスライム「泉のエルフさんの所に連れて行ってやろう」



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【迷いの森……深奥・エルフの泉】


エルフ「あら? どうしたのです、人間の赤子を頭に乗せて来るなんて」

メタルスライム「森の入り口で泣いていてな、むむ……泣き止んでいるが死んでないだろうな」

エルフ「可哀想に、また人間に捨てられたのでしょうか」

メタルスライム「オーガ達に見つからず、散歩中の私が見つけたのが良かったかな」

エルフ「ええ」


< カサッ

メタルスライム「この紙切れが、この赤ん坊の入っている籠に添えてあった」


エルフ「お手紙……ですね」

エルフ「…………」

メタルスライム「何と書いてある」

エルフ「その子をお願いしますと、要約して一部を省けばそうなります」

メタルスライム「お願いしますとは…?」

エルフ「その赤ん坊は貴方に任せます、メタルスライム」

メタルスライム「ふむ……」ポヨン


エルフ「しかし急な話です、貴方の妻であるスラリンにもお話すべきかと」

メタルスライム「エルフよ」

エルフ「はい」

メタルスライム「私は人間を育てた事が無いのだが」

エルフ「そうでしょうね……私達エルフと同じ育て方で良いのか疑問ではあります」

メタルスライム「おお、手伝ってくれるのか」

エルフ「森の仲間にも伝えます、新たな森の同胞が一人増えたのですから」

メタルスライム「うむ、では妻にも話してこよう」

< ポヨン……ポヨン……


エルフ「……」

エルフ(特殊な人間の様ですね、近隣の村で産まれたそうですが……魔物の子として捨てられましたか)

エルフ(時代と産まれた場所さえ違ったならば、勇者にも魔王にも慣れたでしょうね)

エルフ(面白い人間を久方ぶりに見れそうです)



【迷いの森……入り口付近・メタルスライムの巣】


メタルスライム「ただいま」ポヨン

スライム「お帰りなさいあなた…………何かしら、その頭の上の籠は」

メタルスライム「森の入り口に捨てられていた人間の赤ん坊だ」

スライム「今すぐ捨ててきなさい」

メタルスライム「妻よ、この子はゴブリンやテラフォーマーじゃないんだぞ」

スライム「屁理屈を捏ねないで下さいな、人間の子なんて育てたらいつか私たちを狩りに来ますよ」

メタルスライム「まぁ待て、落ち着こう」

スライム「お帰りなさい、お茶にしますか」

メタルスライム「その切り替えの速さに私は惚れた」


メタルスライム「かくかくしかじかと言うわけだ」

スライム「……まぁ、人間はどうしてこんなに可愛い赤ん坊を捨てるのかしら」

メタルスライム「色々な事情があるのだろう、私の同属など強くなりたいが為に人間に狩られている」

スライム「灼熱の息でも浴びせれば良いのに」

メタルスライム「私でさえ溶けるわ」

スライム「それで、その子を育てるのよね? どうするつもりなの?」

メタルスライム「育てよう、強くなれば私たちが育てる必要も無くなる」

スライム「その為に育てるのよね?」

メタルスライム「うむ、うん? …………うむっ」

スライム「矛盾してるわあなた」

メタルスライム「話が進まないよハニー」

期待

なかなかいいテンポだ

メタスラって柔らかいのか…(驚愕)

乙!


「すぅ……すぅ……」Zzz


スライム「それにしても、よく寝ているわね」

メタルスライム「うむ」

スライム「人間の赤ん坊だからよく泣くと思ったのだけどねぇ」

メタルスライム「どれ、布でも確認しようか」

< スッ……

「~~っ……おぎゃぁ! オギャァ!オギャァ!オギャァ!」


メタルスライム「降ろしたら泣き出したぞ」

スライム「あらあら……どうしたのかしら」

メタルスライム「ふむ、もしや予想通りトイレか」



< ゴソゴソ……

「オギャァ!オギャァ!ギャァァア……ビェエエエエ…」


メタルスライム「違うみたいだな」

スライム「お腹が空いたのかしらね」

メタルスライム「ふむ……世界樹の雫でも飲ませるか」

< ヒュンッ……

< ……ヒュンッ

メタルスライム「ただいま」

スライム「あなた、高速すぎて半分くらいこぼしてるわよ」

メタルスライム「Oh……」

スライム「でもまぁ、赤ん坊には丁度良いんじゃないかしら」

メタルスライム「さぁ飲ませよう」



メタルスライム「……飲んだが、まだ泣いてるな」

「ビェエエエエ…ビェエエエエ……オギャァァア…」

スライム「うーん……」


…………【こんにちはスラリン、エルフです】


スライム「あらエルフ、どうしたの念話なんかして」


…………【あなた方の巣には私では入れません、狭いですからね】

…………【泣いている様ですね、旦那様にまた籠ごと乗せて下さい】


スライム「だ、そうだけど」

メタルスライム「??」

スライム「ほら、頭の上に乗せて」

メタルスライム「う、うむ……よいしょ」ポヨン


「オギャァ!オギャァ!…………すぅ…」


メタルスライム「……」

メタルスライム「どういう意味だこれは」

乙!


素晴らしいテンポだぁ…


…………【赤子は母親の胎内にいる時、生活している際の揺れを感じています】

…………【故に、赤子にとって最も安心出来るのは母親の温もりとお腹の中に居た際の揺れを感じている事なのです】


メタルスライム「ほう」

スライム「この子は夫に揺られているのが安心出来るのね」

メタルスライム「メタルスライムの歩みに近い母親とは一体何者だ……」

スライム「さぁ…?」


…………【二人とも外へ来てください、その子を育てる上で必要な事を教えましょう】

…………【場合によっては、スライム属種であるあなた方では出来ないことも有りますので】


メタルスライム「問題ない、私はあと二回変身を残している」

スライム「嘘を言わないの」


「……すや…すや…………」




エルフ「まぁ、よく眠っていますね」

メタルスライム「うむ」ポヨン

エルフ「疲れているのでしょう、恐らく貴方が来るまでその子は泣いていたようです」

メタルスライム「む、そうなのか」

エルフ「ええ」

メタルスライム「よく頑張ったな、偉いぞ銀」

スライム「……銀?」

メタルスライム「メタルスライムの様に銀の髪をしている、だからこの子は銀と名付けよう」

スライム「いきなり名付け親になるだなんて、さすが抜け駆けと発想の速さは天下一ね」

メタルスライム「ふむ、照れる」


エルフ「さて、しかし関心出来ないのがその子に世界樹の雫を与えましたね?」

メタルスライム「ふむ……駄目だったか」

エルフ「いいえ、その子に何か与えるならば私に相談をして下さい」

エルフ「人間の赤子はエルフ族より遥かに弱いのです、間違って死に繋がる食物を与えては大変ですよ」

メタルスライム「うむ」

エルフ(まずそもそもミルクの代わりに世界樹の雫を使う事に私は驚きましたがね)

エルフ(見たところ空腹も満たされ、挙げ句には僅かながら健康体になりつつある……)

エルフ(吸収率が高すぎますね、下手をすればこの子は薬草一枚で一週間は過ごせそうです)

スラリンと聞くとDSゲームしっぽ団の主人公を思い出すな……
今更ながら支援


【二週間後……】


メタルスライム「銀、おいで銀」

銀「……ぅ…ぁー♪」パタパタ

メタルスライム「ダメか」

スライム「まだ四つん這いにもなれない赤ん坊に何を無茶ぶりしてるのよあなた」

メタルスライム「銀は特別だから、行けると思ったのだ」

メタルスライム「私など産まれた時から時速300km出せたぞ」

スライム「産まれた瞬間に爆走したならあなたは、さながら疾風ね」

メタルスライム「ふ……竜巻と呼んでくれ」

スライム「それじゃ移動速度が激減してるわあなた」


銀「……ぅう…おぎゃぁああ!」

銀「オギャァ! オギャァ!……ビェエエエエ…」


メタルスライム「記録は十分か、少しは私の上に居なくても泣かなくなってきたか?」

スライム「まだ赤ん坊なのよ、少しは甘えさせてあげなさいな」

メタルスライム「うむ」ポヨン

銀「…………すぅ……すぅ……」


メタスラの声が稲田徹さん……というかレーツェル・ファインシュメッカー(スパロボOG)で再生される。
竜巻(トロンベ)言ってるし。

乙!


妖精娘「こんにちは、メタルスライムさん」

メタルスライム「ふむ、こんにちはだ妖精」

妖精娘「銀ちゃんは元気ですか? んしょっ」


銀「ぅぅ……オギャァ!オギャァ!」


妖精娘「あはは、元気そうですね」

スライム「やっぱり夫に揺られてないと安心出来ないのかしら」

妖精娘「かもしれませんね、まぁとりあえずー」ファサッ…シュルシュル

妖精娘「うんちしてますね、健康体です」

メタルスライム「うむ、良かった」ポヨン

妖精娘「そうそう、森の西にいるトロルキングさんがお祝いの品があるそうですよ」

メタルスライム「あのぽっちゃり系が? ……またウチの銀を食べようとしないだろうな」

スライム「仕方ないわよ、他の住民も人間なんて何百年と会ってないのが殆どだもの」

メタルスライム「出会い頭に捕って喰おうとしたぞアイツ」


【迷いの森……西・暴虐の王の砦】



トロルキング「ククク……来たな銀の者」

メタルスライム「妖精に聞いたのでな、何の用だ」

トロルキング「先日は済まなかったな? 詫びに我が新たな眷属に贈り物をしようと思ってな」

トロルキング「おい」

ボストロール「へいっ」ドスンドスンッ


ボストロール「森の東の奴等から譲り受けた宝具、星降る腕輪でございやすッ」ゴトンッ

< パカッ…

ボストロール「どうぞ受け取り下せぇ」


メタルスライム「……」

メタルスライム「この腕輪、まだちょっと銀にはでかいが?」

トロルキング「成長したら着けてやれ、銀の者の速さに人間はついていけんぞ」

メタルスライム「ふむ……なるほど」

トロルキング「ククク……しかしあの銀の者が人間の赤子を育てるか、面白い事も有るものだ」

ボストロール「組長ッ、この空になった宝箱……頂いても?」

トロルキング「何に使う気だ」

ボストロール「ぬか漬け作ろうと思いやして!」



メタルスライム「うむ……良かったな、銀」ポヨン…ポヨン…

銀「……すぅ…すぅ…」

メタルスライム「星降る腕輪か、千年以上前に大魔王との戦いで使われた宝具らしいが」

メタルスライム「どうやって手に入れたのだかな…私達は森の外には出ない筈だが」


< 「独り言中、失礼」

メタルスライム「む」


ワイトキング「ごきげんよう……メタル殿」

メタルスライム「ワイトキング、お前も銀の話を聞いてきたのか」

ワイトキング「ええ、それはもう」

ワイトキング「聞けば魔法の素質があるとの事、なれば私が是非とも教育しようと思いましてな」

メタルスライム「まだ赤ん坊なんだが」

ワイトキング「成長を助ける良い魔法がございます、それでちょちょいと……」

メタルスライム「NO」

ワイトキング「Oh……」



ワイトキング「ところで、その子に何を与えているのですかな」

メタルスライム「世界樹の雫だな 」

ワイトキング「なにそれこわい」

メタルスライム「この森にミルクはない、果実から取れる汁では人間の赤子は身体に毒らしいしな」

ワイトキング「なるほど」

メタルスライム「母乳が出る者がいたら良かったが……エルフは孕んだ事が無いから出ないそうだ」

ワイトキング「でしょうな」

メタルスライム「まぁ世界樹の雫を与えてれば問題ないだろう、あれは空腹も栄養も満たす上に身体に癒しをもたらす」

ワイトキング「ふむ、どうせならもっと身体に良い物を与えるのはどうでしょう」

メタルスライム「なんだ」


ワイトキング「エリクサーという、最近になって発見された秘薬ですな」

ワイトキング「私の妻が調合出来るので、それを世界樹の雫と混ぜて飲ませては如何か」



【一ヶ月後……】


エルフ「メタルスライム」

メタルスライム「なんだ?」

エルフ「何故にもう銀が貴方の頭の上でハイハイ出来てるのでしょうか」

メタルスライム「?」

エルフ「ああ、もう……何でもありません」

エルフ(まさか世界樹の雫以上の効果のある物を与えるとは、流石に予期していませんでした)

エルフ(しかもそのせいか成長速度が通常では有り得ない域に達していますね)


銀「だぁー♪」ペシペシ

メタルスライム「こらこら、そこはパパスのうなじだぞ?」ポヨン…プルンッ…


エルフ(……)

エルフ(どこにうなじが……?)

このセンス嫌いじゃない

乙でございます

乙!

乙乙 期待してみてるよ

乙です!


1はss経験者なのか?

君よ〜立〜て〜、君よ〜行〜くのだ

乙!


銀「ぁー♪ きゃーぅ♪」ペシペシ

メタルスライム「こらこら、あんまり叩くとアストロンするぞ」ポヨン…プルンッ…プルンッ…


妖精娘「こんにちはー……ってすごいプルンプルンされてますねぇ」

メタルスライム「少し力を入れれば大抵の攻撃も弾ける硬さになるがな」

妖精娘「力をいれないと?」

メタルスライム「柔らか堅いボディになる」

メタルスライム「具体的にはゾディア・キューブリック社の社長クラスの硬さに」

妖精娘「例えが解りずらい……」

銀「……」じー

妖精娘「?」キョトン

銀「だぁーぅ」ペシペシ

メタルスライム「なんだなんだァァァア…」プルンップルンップルンップルンップルンッ

妖精娘「ブフゥッ…!?」


銀「ぁぅぁぁー……♪」ペシペシペシペシ


妖精娘「それにしても銀ちゃん元気ですねぇ、可愛いです」

メタルスライム「うむ、そうだろう」

妖精娘「奥さんはどうしています? この一ヶ月で慣れましたか」

メタルスライム「慣れたが、私を盗られたと言って少し拗ねている」

妖精娘「あらら」

メタルスライム「……妖精、その手に持ってるのは?」

妖精娘「あ、これ森の川に流れて来たんです! 綺麗ですよね」

メタルスライム「そうだな」

妖精娘「お母様に見せて来ようと思いまして」

メタルスライム「待て」

妖精娘「はいはい?」ピタッ


メタルスライム「そのガラス玉を譲ってくれるか」


妖精娘「えぇー……」



───── 《誰かの義眼》を手に入れた!



メタルスライム「物騒だな」ポヨン

銀「……すぅ…すぅ…」Zzz

メタルスライム「実に物騒だ、この森に血の匂いのする物品が流れてくるとは」

メタルスライム「森の東にある妖精族の川か」

メタルスライム「上流には滝があったな、となると崖の上にある先で何かあったか」

メタルスライム「確か……人間の村があった」

メタルスライム「恐らく銀の生まれ故郷だろう」

メタルスライム「…………」

メタルスライム「…………」

メタルスライム「…………」




メタルスライム「行くか」ポヨン…ポヨン

銀「だぁ……ぅ…すぅ…すぅ…」Zzz





【迷いの森……東・妖艶の王の大樹】



妖精王「……誰かと思えば君か」


メタルスライム「ひさ」

銀「…Zzz」


妖精王「噂の、【外】から来た人間の赤子だな」

妖精王「性別が読めないけど……何か対魔法でもかけたかい?」

メタルスライム「??」

妖精王「泉のエルフが言っていた特別な子、というのはそれか……あらゆるステータスを隠匿しているね…」

メタルスライム「どういう意味だ」

妖精王「メタルスライム、君の所に面白い人間が来たという事さ」

妖精王「人間かすら怪しい所だけど、僕の見立てでは害は無さそうだ……歓迎しよう」

メタルスライム「ふむ、何やらよくわからんが……」

妖精王「ああ、何も言わなくていいよ」

妖精王「君の心は読めるからね……なるほど、川の上流から血の匂いのする義眼ね」

妖精王「だけど崖の上からは特に魔法の気配は無かったよ、人間同士の争いか……運の悪い冒険者さ」

メタルスライム「お前がそう言うならそうなのか、良かった」

妖精王「君は心配性だね? その子に災いが来ないように常に気を張っている」

メタルスライム「おかげで足が遅くなりそうだ」

妖精王「なら問題ない、君に足はないのだから」


乙!

最後の掛け合い好きすぎる

いいセンス 乙です



メタルスライム「しかし驚いた、何処で星降る腕輪を手に入れたんだ」

妖精王「手に入れたんじゃあないさ、あれは元々僕らの物だ」

メタルスライム「そうなのか」

妖精王「遥か昔に先祖が当時の勇者より貰い受けた、由緒正しい宝だよ」

メタルスライム「そんなものを何故、西のぽっちゃりに……」

妖精王「森に面白い赤ん坊が来たと聞いてね? 僕の娘や息子達が楽しそうに話していてさ」

妖精王「あの泉にいるエルフまで注目し、明らかに育てる気満々……挙げ句には育ての親役は君と来た」

メタルスライム「ふむ」

妖精王「こんなつまらない森に話題を提供してくれたんだ、どうせ森の中で生きるなら御礼をしてあげようと思ってさ」

メタルスライム「つまりは銀のおかげで楽しいと」

妖精王「シンプルだろう? 僕は今楽しい」


銀「……ぁぅ…すぅ…すぅ…Zzz」


妖精王「その気になれば性別の確認の方法はあるけど、成長してからの楽しみにしておくよ」

メタルスライム「うちの子はお前にはやらんぞ」

妖精王「勿論、僕は観て愛でる派だからね」

メタルスライム「ニフラム」


妖精騎士「お帰りですか、メタル様」

メタルスライム「うむ、そろそろミルクの時間だ」

妖精騎士「なるほど」

妖精騎士「時にメタル様」

メタルスライム「なんだ」

妖精騎士「その子……抱っこしてもいいですか」

メタルスライム「構わんが泣くぞ」

妖精騎士「深い眠りに落とせば問題ないかと」

メタルスライム「おいちょっとまて」

妖精騎士「ではでは」ひょいっ


銀「ぁぅ……ぅぅう……」グスッ

妖精騎士「【ラリホーマ】」


─────【しかし跳ね返された!】─────

妖精騎士「!?」

メタルスライム「Oh……」



妖精騎士「なん……でぇ……?」Zzz

< ドサッ

メタルスライム「おっと、危ない」ポヨン

銀「ぁぅ……っ…すぅ…」すやすや

メタルスライム「良かった大事ないな」


妖精騎士「Zzzz」


メタルスライム「……」

メタルスライム「跳ね返されたな」

メタルスライム「私達メタル系は確かに魔法に耐性があるし、上位の種ならば基本的に無効化する」

メタルスライム「うむ」

メタルスライム「やはり銀は私に育てられるべくして来たに違いない」

銀「すぅ……すぅ…」Zzz

メタルスライム「帰ろう、散歩も程々にしなくては」

メタルスライム「スラリンの奴に火を吐かれては敵わん」


【迷いの森……入り口付近・メタルスライムの巣】


メタルスライム「ただいま」ポヨン

スライム「おかえりなさいあなた、世界樹の雫とエリクサーを混ぜた瓶ならテーブルの上よ」

メタルスライム「うむ」

スライム「それじゃよろしくね」ポヨン

メタルスライム「む? 何処かに出かけるのか」

スライム「ちょっと森の入り口に用事があってね、行ってくるわ」

メタルスライム「ふむ、そうか」


スライム「ふふ……それと今夜は…ひさしぶりに、ね?」

メタルスライム「ほう……私の股間がいきり立つな」

スライム「スライム属種に股間が存在した事に驚きよ」

メタルスライム「奇遇だな、私も今そう思って呆然としかけた」

あるの!?

乙!


【その夜……迷いの森・入り口】


スライム「へぇ」

スライム「この森に入ろうとしたら一定の魔力を持ってなければ、入り口すら通れないのだけど」


デュラハン「……」ギシッ…ギシッ…


スライム「酷い姿ね、その全身の刺突痕……名うての剣士にでもやられたのかしら」

デュラハン「違……う…」ギシッ…グラァッ…

< ドサッ!

スライム(……森に入ってきた荒らしモンスターではないようね)

スライム「何があったの」ポヨン

デュラハン「ぅぐ……ッ、に…人間だ…魔力を持たない……軍隊…」

スライム「見れば分かるわよ、狩られたの?」

デュラハン「この迷いの森より遥か数十里……そこにあった私の故郷が、人間に僅か半日で支配された」

スライム(……アリアハンの王国軍かしら、それだけの力を持ってるなら)

デュラハン「……ッ…」ギシッ…



デュラハン「気をつけろ……今はもう…勇者も、魔王もいない……アリアハンでさえ存在しない…」

スライム「!」

デュラハン「……ッ、っ……! 迷いの森のスライムよ…今すぐここより離れろ…」

デュラハン「人間は……もう、かつて力の無かった弱い種ではない……奴等には、あの……じゅ……ぅ…が……」


< 「…………」


スライム「……」

スライム「ニフラム」

< ボシュゥッ……

スライム「お休みなさい、名も知らない騎士さん」ポヨン


【メタルスライムの巣】


メタルスライム「……ふむ」ポヨン

銀「……Zzz」

メタルスライム「デュラハンの故郷……私は知らないが、恐らくここと同じく人間から隠れてきた里なのだろう」

メタルスライム「銀が来たばかりだというのに、厄介な」

スライム「問題は彼等すら圧倒した人間の力よ、魔力も無しに戦えたなら技術的な進化しか有り得ないわ」

メタルスライム「技術の進歩……今さら、魔法も使わない選択があるとは」

スライム「とにかく、直ぐにこの事を……」


…………【心配ありません、スラリン】


スライム「聞こえていたのね、エルフ」


…………【はい、デュラハンが森に入れたのは私が意図的に招き入れたからですから】


メタルスライム「突撃隣の晩御飯というやつだな」

スライム「話がややこしくなるからあなたは黙ってて」


…………【今、私は森の実力者を泉に集めています】

…………【メタルスライムは入り口と銀を守って下さい、スラリンはこちらへ来て頂けますか】


スライム「分かったわ」

メタルスライム「うむ、さぁいくぞ銀」ポヨン


【迷いの森……入り口】


メタルスライム「ふむ、寒くはないか銀」ポヨン

銀「……すぅ…すぅ…」Zzz

メタルスライム「うむ」

メタルスライム「【メラ】」ボッ

< ボォォ……

メタルスライム「これなら暖かいだろう」ポヨン


銀「……すぅ…すぅ…」Zzz


メタルスライム「早いものだ」

メタルスライム「お前が私の頭に乗せられてから、ほぼずっと傍にいた」

メタルスライム「一ヶ月でこれだ、一年二年と経とうが変わらぬ早さだろう」

メタルスライム「銀……」

メタルスライム「お前は、私が必ず守るぞ」

メタルスライム「きっと守るぞ」

メタルスライム「だからお前には、いつか大きく強くなってきたなら」

メタルスライム「私の教えられる事は全て教えよう、そうすればお前は生きられる」


メタルスライム「銀、私はお前の父親だからな」

銀「……すぅ…すぅ…」Zzz


火縄銃とかなら大丈夫そうだけど機関銃とか近代レベルになると厳しそうだなぁ……


【二年後……】


エルフ「……それで、これはどういう事ですか……銀?」

銀「幼い妖精が教えてくれた、この格好ならエルフが喜ぶ」

エルフ「……」

エルフ「良いから服を着てそのお腹のスライム模様を川で洗ってきなさい」

銀「うむ」すたすた


エルフ「~~!!」ギロッ


< 「に、逃げろぉ!」バタバタ

< 「ひぃ、見つかったぁ!」バタバタ


エルフ(……全くもう、子供達は……)

エルフ(…………銀、また大きくなりましたね)


【迷いの森……中央・旧バラモス城】


幼妖精「うひひひ! エルフ様唖然としてたな!」バタバタ

幼妖精B「ね! ね! 面白かったぁ!」バタバタ

< ドンッ

幼妖精B「あぅっ……?」チラッ


死神馬「フシュュュュュュふしゅるるるるるるるるるるるる」

死神貴族「……ここは我が王の中庭だ、あまり騒ぐなよ妖精の子供達」


幼妖精B「ヒィヤァアアアアア!!?」

幼妖精「出たぁぁぁあ!!?」

死神貴族「お、おい騒ぐなよ……っ」

幼妖精「ぎゃぁああああっっ!!?」バッ!

幼妖精B「待ってお兄ちゃぁぁんッ!!」バッ!


死神貴族「……」

死神貴族「……クスンッ」ショボボ

銀「しにがみきぞく、どんまい」てくてく

二年後……だと…?

メタスラ夫妻がフラグを建てているような希ガス


死神貴族「……ん? 所で銀は何故ここに?」

銀「父さんがしにがみきぞくにまた稽古して貰えって言った」

死神貴族「またか、俺もワイトキング様の城を御守りする仕事があるんだがなぁ」

銀「だめ?」

死神貴族「……」

死神馬「フシュュュュュュふしゅるるるるるるるるるるるる」ブッフゥゥウ

死神貴族「我が愛馬がやる気のようだ、仕方ない……相手をしよう」


銀「ルールは……どうしよう」

死神貴族「問題ない、いつも通り俺に触れてみろ」

< ガシャッ

死神貴族「『ただし帽子に触らなければ意味はないが』」


銀「【ピオリム】【ピオリム】【スカラ】【ボミオス】」キィンッキィンッキィンッキィンッ


死神貴族「相変わらず凄い魔力だが、フェイントが下手だな」キィンッ

─────【しかし死神貴族にボミオスは通じなかった!】─────


銀「あれー」

死神貴族「相手に意識させないように魔法を撃て、でなければ阻害魔法位は抵抗(レジスト)されてしまうぞ?」

銀「うん、わかった」ダンッ!!

死神貴族(まだ人間で言えば少年少女の域を出ないが、速くなったな)ヒュッ

死神貴族(やはり育ての親がメタルスライムだからか…?)

中々いぶし銀な戦闘スタイルだな…!

乙!


【迷いの森……入り口付近・メタルスライムの巣】


メタルスライム「ふむ、では私はこのまま入り口を守れば良いのだな」ポヨン

スライム「そうね」

メタルスライム「銀の事もある、ワイトキング達には宜しく頼んだ」

スライム「ええ、あなたもトロルキングさんに宜しくね?」

スライム「この二年半、あの子もあなたと同じく銀を見守ってきたモンスターだから」

スライム「暫くの間は会えなくなるかもしれないし、ね……」


メタルスライム「骨付き肉でもやれば忘れるんじゃあないか?」

スライム「そんな事言って去年殴られたじゃないの」

メタルスライム「ダメージが入らなければ問題ない」

スライム「もう……今年早々にどっちが父に相応しいかで殴りあって溶けかけたのは誰よ」

メタルスライム「水銀になるかと思ったわ」


< キィィ……パタンッ


メタルスライム「……行ったか」

< ポヨン…ポヨン…

メタルスライム「思えばもう二年経つのか、銀が私達の元へ来てから」

メタルスライム「早いとは思わない、だが充実した日々ではあった」

メタルスライム「生きる為に必死だった私の若き日とは違い、銀は未だ危機を知らずに過ごしてきた」

メタルスライム「だが、だが……」ポヨン


メタルスライム「……私はそれでいいのではないかと思う」


メタルスライム「銀は恐らく、特別な存在だろう」

メタルスライム「これから私よりも速くなるかもしれない、今はまだ足元にすら及ばないとしてもだ」

メタルスライム「ならば私は強さを教えるよりも、銀がこの世界で幸せになれるだけの事を教えようと思う」

メタルスライム「その為に、私はこの森を守る事にした」

メタルスライム「明日の夜明け前……そこでこの森に来る人間の軍をトロルキング達と迎え討つ」


メタルスライム「……ふむ」ポヨン

メタルスライム「不思議な気持ちだ」

メタルスライム「体が軽い、妙に力が湧いてくる」

メタルスライム「もう何も怖くはない……今の私なら…」






< 「銀のッ! 来たぞ……出てこい!!」






メタルスライム「ッ……!」

メタルスライム(馬鹿な、エルフの予知より早すぎる……?)

メタルスライム「銀は……もう中央の城に避難したのか……!」


【迷いの森……入り口・人間サイド】



トロル『ブルルルァアッ!!』ブァッ!!

魔導師「【ラリホー】」キィンッ

トロル『~~っ……!』クラッ

< 「【メラミ】」

< 「【ヒャダルコ】」

< 「【イオ】」


─────── ゴバァッ……!!

トロル『ぐ……ふ…っ…………』ドサァッ…

─────【トロルをたおした!】─────


魔導師「やはり一定の魔力が無ければ森にすら入れぬか……例の騎士団では我等に同行すら出来なかったと見える」

魔導師B「しかし驚きましたな、霧が晴れてきたと思いきやいきなり複数のトロルがいるとは」

魔導師「魔法使い、魔導師達に伝えよ……これより『魔王因子』を我等で狩り取ると」

魔法使い「……待て、前衛も無しにこの森は危険ではないか?」

魔導師「トロルが横行しているだけならば問題ない、我等は例の騎士団に劣っていない」

魔導師C「一理有りますな、あのごろつき上がりの騎士どもに見せつけねば」

魔法使いB「団長……丁度良いじゃないですか、時代が変わろうと俺達魔法使いはあんな玩具に負けてないと知らしめましょう!」


魔法使い「……わかった、良いだろう」


魔法使い(だが、なんだ? この森に入ってからずっと視線を感じる……何よりMPがずっと回復し続けているのも気になる)

魔法使い(濃密な空気中の魔力……何か、気になるな……)




< 「さぁ行くぞ、宮廷魔導師の力を見せてやる!」

< 「「おおー!!」」


エルフ「……遂に来てしまいましたか」

エルフ「銀、聴こえますか?」

─────【……ん、エルフ?】─────

エルフ「はい、私です」

エルフ「今の私は念話で語りかけているのは分かりますね?」

─────【うん】─────

エルフ「まだ避難していないなら、中央の城に入って下さい」

─────【来たのか、エルフが言ってた『悪いモンスターと人間の軍隊』が】─────

エルフ「そうです、避難が済んでいない子供達がいたら呼び掛けて下さい」


エルフ(人間の軍隊が攻めてきていると教える訳にはいきませんね……もし銀が『外』へ旅立った時、人間が悪とは思われたくありません)


─────【……エルフ】─────

エルフ「はい、どうしました?」

─────【人間がいる……妖精が一人捕まってるぞ】─────

エルフ「っ!?」


【迷いの森……入り口より北西・林道】


< 「誰か、誰か助けてぇえ!」

< 「大人しくしろッ! くっ……妖精かコイツ!」

< 「取り合えず眠らせろ、魔導師の馬鹿共が俺達に気づく前に目的を達成する」

< 「はっ」


< 「いやだぁああっ……!! うわぁぁ、お母さぁぁん!!」



銀「……エルフ、どうすればいい」

…………【あなたはそこを離れて下さい、近くにいるモンスターを向かわせます】

銀「気配で分かる、皆殆ど城か砦にいる……あの妖精が何処かに連れてかれる」

…………【……それでもあなたは逃げなさい、その子だけでなくあなたまで捕まってはいけません】

銀「あの人間……鎧と、小さな盾しか持ってない……私でも勝てるかも」

…………【彼等はレベルに換算して約18以上の実力と魔力を有しています、でなければこの森には入れません】

…………【しかしあなたはレベルに換算して、約12……殺されるかもしれません】

銀「……」


銀「相手は三人、何処までやれるか分からないけど頑張るね」ザッ


…………【!? 待ちなさい、銀っ……銀!】


銀「行ってきます」ダンッ!!


< ガサッ……


ローブの男「……【ピオリム】」キィンッ

ローブの男B「ッ! 【ピオリム】!」キィンッ

ローブの男C「へ?」

< ザザッ……!

銀「【バギ】」キィンッ


──────── ズバシャァアッ……!

ローブの男C「っ……」ドサッ

─────【奇襲に成功した! ローブの男Cをたおした!】─────


銀「二人、逃げられた」ザッ

幼妖精「グスッ……グスッ……えぐっ…銀…?」

銀「今のうちに逃げろ」

幼妖精「グスッ……で、でも…足が……っ」

銀「!」

銀(足から血が……穴が空いてる、レイピア…?)


ローブの男B「子供……女かあぶねぇッ、あと少しで死んでたぜ」

ローブの男「銀髪に、瞳まで銀と来たか……気味が悪いな、エルフでも妖精でも無さそうだが……」

銀「私は人間だ」

ローブの男「人の形をした化け物かもな?」カチャッ


銀「……エルフ、この人間達の武器は小さな何かみたいだ」ボソボソッ

…………【ええ、見ています……しかしこれは……得体が知れません、気をつけて下さい銀】

…………【あと少しで森の入り口から来た人間の包囲が終わります、そうしたら私がそこへ行くので……】

…………【銀、あなたは何があっても死なないで下さい】

銀「うん、わかった」


ローブの男「合わせろ、B」スチャッ…

ローブの男B「了解……」スチャッ…

─────【連携技発動】─────


銀「!」


──────── ダァンッ!!
──────── ダァンッ!!

─────【クイックショット+クイックショット】─────


銀「~~ッ……!!」ドサァッ…!!

銀(いま……なにが……っ?)ズキズキ…

ローブの男「止血だけしたらそこの妖精と同じく縛っとけ……一人欠員か、弾薬と『銃』を回収してから燃やせ」

ローブの男B「了解」ザッザッ…

銀(ま、ずい……これじゃ……)ビクッ…


銀「……なんで…こんなことする」

ローブの男B「あ?」

ローブの男「話すな、そいつは得体が知れない」

ローブの男B「へいへい」

銀「…………」

銀「父さん……母さん……」

スライム「なぁに?」ポヨン! シュタッ

ローブの男B「!?」

ヒューッ!!

すげー!

(0゚・∀・)wktk

母さんの晴れ舞台を待つ

勝ったな。

期待

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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年10月09日 (日) 12:02:35   ID: spy-FYgW

また途中投げかよ、市ねよ。

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