並木芽衣子「7人が行く・この旅の終わりに」(終) (143)

あらすじ
その絶望ごと、葬ってみせます。


7人が行くシリーズ最終話。
設定はドラマ内のものです。

それでは投下していきます。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1426071344

メインキャスト

SWOWメンバー

1・松山久美子
2・財前時子
3・仙崎恵磨
4・太田優
5・持田亜里沙
6・伊集院惠
7・大和亜季

クラリス
柳瀬美由紀
松永涼
白坂小梅
高垣楓
依田芳乃
関裕美

塩見周子
佐藤心

東郷あい
藤原肇
日野茜

多田李衣菜

十時愛梨

並木芽衣子



いろんな所に行きたいと思いました。

叶いました。

私はトラベラー。

どんな所にもどんな時にも行ける。

とってもたくさんの場所へ行きました。

いっぱいいっぱい、人の営みを見てきました。

それで、気づきました。

つまんないな、って。

だって、同じだもん。

何もかもが類似品。似たものの重ね合わせと積み合わせ。

何度も何度も繰り返してきた愚かな失敗の数々。

距離と時がそれを薄めてきただけ。

いつかどこかで見た景色と行動ばっかり。

つまんない。

どうせ同じなら、って。

ここに帰ってきたけど、やっぱりつまんない。

やっぱり、ここを楽しくしないとね。

もっともっと遠くへ行きました。

とっても昔にもとっても未来にも。

でも、ここが楽しくないと意味がない。

だから。

うふふ、楽しい。今は楽しい。楽しい。

追ってきて。追ってきて。

私を楽しくさせて。

皆で楽しんで。

ルールは単純。基本はこの三つ。

私は人殺しをしない、同じ場所に同じ時にいない、私は一人。

さ、楽しませてね!

序 了

ついにラストか



出渕教会・地下1階

出渕教会
クラリスが所有する小さな教会。地上2階、地下2階立て。地下一階は住人たちの居間。

関裕美「クラリスさん、亜季さんが来てくれたよ」

大和亜季「何か、御用でありますか?」

関裕美
吸血鬼。昼の生活から離れて、夜の生活へと身を移した。オデコがチャーミング。

大和亜季
SWOWメンバー。約束を守るために、出渕教会によく出入りしている。

クラリス「お待ちしておりました」

柳瀬美由紀「こんばんはー」

クラリス
『シスター』。眼帯により、能力の発生を抑えている。

柳瀬美由紀
クラリスのアシスタント。視界を塞がなければいけないクラリスの生活を補助している。

亜季「お話とは何でありましょうか」

クラリス「ご協力をお願いしたいと」

亜季「旅人の話、でありますか」

クラリス「ええ。準備はできましたか?」

松永涼「ああ。小梅、プロジェクターの電源入れてくれ」

白坂小梅「うん……ポチっと……な」

松永涼
死神。契約満了までは死ぬことすら不可能。プロジェクターは彼女の私物。

白坂小梅
ネクロマンサー。人ならざる者の使い手。映画好き。

亜季「何をするつもりでありますか?」

クラリス「資料をお見せします」

美由紀「皆でがんばって調べたんだよー」

依田芳乃「そうなのでしてー」

高垣楓「ええ。ちょっと他の人のお力もお借りしました」

依田芳乃
退魔師。和装の少女。

高垣楓
捕食者。人間としての外見は捕食者となる前からの痩せた美女。

亜季「どなたでしょうか?」

佐藤心「ふっはー。今をときめく☆しゅがーはぁーとを二束三文で使うんじゃないぞ☆」

佐藤心
魔法使い。CGプロ所属のアイドルでもある。プロデューサーの尽力により、人気上昇中。

クラリス「ご協力ありがとうございます」

心「そりゃ、協力するっしょ……あんなことになったの許さないから」

亜季「……」

涼「はーとサン、資料できたか?」

心「追加したのもまとめておいた」

小梅「プロジェクター……つなぐ」

亜季「資料?」

裕美「昔の映像資料探してもらったの」

心「ちゃんと社長の許可は取ったぞ☆」

亜季「別に心配してないであります」

心「テレビ局にも忍び込んだけど、気にしなーい」

亜季「前言、撤回するであります」

涼「よし、映った。大和サン、適当に座ってくれ」

亜季「了解であります」

クラリス「確認をお願いします」



出渕教会

心「これは左上。パラソル持ってるからわかるっしょ?」

裕美「うん……間違いないと思う」

涼「これは、ここだ。映ったの、わかったか?」

亜季「ええ……」

楓「これはこちらです」

芳乃「カメラに気づいてるのでしてー」

小梅「うん……笑ってる」

裕美「次は地下鉄の映像なんだけど……」

亜季「いるで、ありますな」

クラリス「どうなのですか?」

亜季「間違いなく……並木芽衣子殿であります」

並木芽衣子
トラベラー。時空間をつなぐゲートを開き、異世界のモノを招き入れている。

クラリス「お知り合いですか?」

亜季「友人ではありませんが、知っております」

心「とりあえずさ、大事件があった映像を見てきたわけ」

楓「いますね」

涼「ああ。野次馬だ」

小梅「どこにでもいる……おかしい」

亜季「ふむ……時間と空間を移動するのは本当のようでありますな」

芳乃「姿が変わらないのでしてー」

クラリス「彼女に移動時間も待ち時間もありませんから」

涼「つまり、どういうことだ?」

クラリス「生きている時間は大して変わらないのだと思いますよ」

楓「その時にいればいいだけですから」

亜季「濃密な時間を過ごしている、ということでありますか」

裕美「良く言えば、そう」

小梅「どこにでも行ける……けど、何もしない」

涼「ああ。見てるだけだ」

クラリス「あくまで傍観者。直接的に何かをするわけではありません」

亜季「ルールがあるようであります」

クラリス「以前、お聞きしました」

小梅「殺す意思がないから、助かってる……」

涼「ああ。後ろにゲートが出せれば、こっちの負けだ」

裕美「たぶん……出せる」

クラリス「勝手なルールで縛っていることは利用させて頂きましょう」

亜季「ふむ……」

クラリス「この地域にこだわっているのも幸いでしょう」

亜季「そうなのでありますか?」

クラリス「ええ」

美由紀「そうじゃなければ、来れないもんねー」

亜季「え……知っていたでありますか?」

クラリス「はい。目的をようやく見つけました」

心「はー、なんか大変」

涼「溜息くらいでるさ」

楓「まずは、追いつかないと」

裕美「会うのも一苦労だもんね」

クラリス「ええ。情報はお伝えします」

亜季「こちらもお手伝いするであります」

楓「なにせ、私達に出来ることは限界があります」

亜季「ですが……」

クラリス「なんなりとお聞きください」

亜季「どうやって、追いつくでありますか?結局、2月も終わるでありますよ」

クラリス「それはこれからの課題です」

涼「つまり……あっちが姿を現さない限り無理ってことさ」



SWOW部室

財前時子「亜里沙」

持田亜里沙「はい、コーヒーどうぞ」

財前時子
SWOW代表。この安寧から飛び立つ決意はついたらしい。

持田亜里沙
SWOW副代表。4月から、夢である小学校教諭となる。

時子「ありがとう」

伊集院惠「私も貰っていいかしら」

松山久美子「あ、私も」

伊集院惠
SWOWメンバー。別れる時が近づいてるとか、いないとか。

松山久美子
SWOWメンバー。本年度のS大学ミスコン審査員。1年生時には見事栄冠に輝いた。

亜里沙「はーい♪待っててくださいね~」

時子「恵磨、優、調べ物はできたかしら」

仙崎恵磨「ある程度は」

太田優「うん、少しだけねー」

仙崎恵磨
SWOWメンバー。CGプロ所属アイドル。5月にCDデビュー予定。

太田優
SWOWメンバー。愛犬アッキーと楽しく生活中。

時子「聞かせてちょうだい」

亜里沙「はい、コーヒーどうぞ」

久美子「ありがと」

惠「何がわかったの?」

恵磨「アタシは凄い簡単なことから」

優「あたしは公園にいたころの話だけぇ」

亜季「私がクラリス殿から聞いた話はお話した通りであります」

惠「トラベラーの話ね」

時子「結局、こんな時期になったわね」

亜里沙「卒論も一段落してしまいましたね」

亜季「姿を現さなかったでありますな」

時子「宣言通りね」

恵磨「今までどこにいたんだろうね」

亜里沙「別にどこにもいなくてもいい」

惠「もし、姿を見つけても私達と同じだけの時間を過ごしているとは限らない」

時子「彼女は一日しか過ごしてない可能性もあるわね」

優「……」

時子「話がそれたわ。恵磨、報告を」

恵磨「よっし。まずは名前」

優「名前は、並木芽衣子……なのは間違ってないよねぇ?」

時子「おそらくね」

恵磨「つうか、それくらいしかヒントないし。実際にいたよ」

亜季「どちらにでありますか」

恵磨「大学の近く。久美子ちゃん、地図かして」

久美子「これでいい?」

恵磨「うん。えーっと、ここ」

亜里沙「アパート?」

恵磨「そう。アパート」

時子「このアパートがどうかしたのかしら」

恵磨「住んでるよ」

惠「住んでるの?」

恵磨「表札に名前があったよ。大家さんにも聞いてきた」

優「いたんだ」

恵磨「住んでるみたいだね」

時子「どうやって見つけたの?」

恵磨「偶然」

亜里沙「偶然?」

恵磨「たまたま見つけただけなんだよね」

亜季「それで、会えたでありますか?」

恵磨「いなかったよ」

惠「でしょうね」

恵磨「でも、大家さんの話によると住んでるよ。やっぱり」

優「今も?」

恵磨「うん。大学入学と一緒に引っ越してきて、卒業後も住んでるらしい」

時子「今年になってから見かけたの?」

恵磨「去年くらいから帰ってこない日も増えたらしいよ」

亜里沙「いつから使えるようになったんでしょうね?」

亜季「わからないでありますな」

優「大学がどこかとか聞けた?」

恵磨「ううん」

時子「知人の一人二人見つけられればいいけど」

恵磨「そうだね。優ちゃんは何かわかった?」

優「ぜんぜーん。根高公園ではたまに目撃してる人がいるかな」

惠「問題はいつなのかね」

優「今年の9月と」

時子「6年前と3年前かしら」

優「そう。ちゃんと見てるんだぁ」

亜里沙「あの公園の堕天使さんを、ね」

時子「他には?」

優「後はどのくらい根高公園にいたかぐらい」

時子「いつまでかしら」

優「あたしが聖來ちゃんと一緒に会って、最後に会ったのは李衣菜ちゃん」

久美子「ことが進むくらいまではずっと眺めていた、ということね」

時子「そもそも知ってるんだから、あの時に根高公園にいてもおかしくないわね」

優「うん」

惠「そんなものかしら」

恵磨「相手が相手だしなぁ。どうやって追うのさ?」

亜季「むー、それはクラリス殿も悩みどころと言っておりました」

時子「使えるものは使いましょう」

亜里沙「ええ、そうですね」

久美子「二人はわかってるみたいだけど……なに?」

時子「警察よ」

惠「使えるとしたら……あの刑事二人組かしら」

優「えぇ~、あの刑事さん達、あたし好きじゃないー」

時子「優に頼みに行けとは言ってないわ」

惠「……」

時子「恵磨、お願いできるかしら」

恵磨「オッケー。事務所の件ではお世話になったし」

亜季「それなら、私もアテがあるであります」

惠「ええ」

久美子「他に追う方法は?」

時子「これよ」

優「あれ、新しいファイルもらったの?」

時子「そうよ」

久美子「地道に追いかけるのね」

亜里沙「追えるはず。だって、いなければ意味がない」

時子「彼女にとって見えないものに意味はないわ」

優「絶対に、来る?」

亜季「ふむ……」

時子「大学から押し付けられたけど、この際有効に使わせてもらうわ」

久美子「やりましょう」

時子「ええ。頼むわよ、皆」

優「もちろん、任せてぇ♪」



数日後

某茶店

恵磨「なんか落ち着かないところだなー」

藤原肇「そうですか?落ち着いたお店だと思いますが」

藤原肇
刑事課巡査。東郷あいの相棒。常に落ち着いた若手刑事。

恵磨「そういう雰囲気が逆に落ち着かないんだよ」

肇「お茶でも飲めば落ち着きますよ。こちらへどうぞ」

恵磨「そうかな」

肇「そうですよ。警部、お連れしました」

東郷あい「座りたまえ」

東郷あい
刑事課警部。美貌の女刑事。

恵磨「お久しぶりです」

あい「そうかしこまるな」

肇「ええ。お座りください」

恵磨「うん、ありがと」

あい「お茶はおごりだ。遠慮なく飲みたまえ」

恵磨「そう?それじゃ、いただきます」

あい「今日、佐藤心さんは一緒ではないのか?」

恵磨「最近仕事が忙しくなってきたから」

肇「テレビで見かけますよ」

あい「関裕美はどうだ?」

恵磨「あ、知ってるんだっけ」

あい「質問には答えるように」

恵磨「元気にしてるよ」

あい「そうか」

恵磨「亜季ちゃんも元気だし」

肇「小日向美穂はどうですか?」

恵磨「それはそっちの方がよく知ってる」

肇「聞いてみただけです」

恵磨「相変わらずだなぁ……本題に入っていい?」

あい「頼みごとがあるんだったな」

恵磨「この人を調べてもらっていい?」

あい「映像の印刷か。何か追っかけでもしてるのかい?」

恵磨「追っかけてるのは正解」

肇「では、この人は?」

恵磨「黒幕」

あい「ふっ……単刀直入でいいな」

恵磨「調べてもらえる?」

肇「どの程度ですか?」

あい「捕まえておくか」

恵磨「出来るなら」

あい「出来ないんだろうな」

恵磨「正直言うと、二人じゃ無理」

あい「言ってくれるな。ま、限界は知っているつもりだ」

肇「私達は刑事ですから」

恵磨「名前は、並木芽衣子」

あい「能力は」

恵磨「ホールを作る」

肇「はい」

恵磨「いい?」

あい「これ以上、変なことになると私も藤原君も地下室送りになりかねん」

肇「はい。根は絶っておくべきですね」

恵磨「なんか、変な事件に関わってるかもしれないから気をつけて」

あい「誰よりも気をつけてるさ」

恵磨「それじゃ、お願いできる?」

肇「はい。そのつもりです」

あい「いや、取引くらいしようか」

恵磨「仕方ないか。聞くよ、時子ちゃんがなんとかしてくれるはず」

あい「ライブのチケットでもくれたまえ」

恵磨「ライブ?」

あい「5月の連休前にあるんだろう?」

恵磨「ライブじゃなくてインストアイベント……っていうかなんで知ってるのさ」

あい「秘密さ。準備してくれるか?」

恵磨「わかった。招待したら絶対に来てよ」

あい「もちろん。なぁ、藤原君?」

肇「はい、警部」

恵磨「……やっぱり、頼むべきじゃなかったかなぁ」



交番

日野茜「どうされましたか!?事故ですか、迷子ですか、あっ!お久しぶりです!」

氏家むつみ「こんにちは」

日野茜
交番勤務の巡査。ラグビーワールドカップをいかに楽しむか早くも計画中。

氏家むつみ
交番勤務の巡査。日野巡査と比べれば冷静な警察官。応援から交番へと戻ってきた。

惠「お久しぶりね」

むつみ「前はお世話になりました」

茜「ええ!感謝してもしきれません!腕立て伏せでもしましょうか!」

惠「いえ……しなくていいわ」

亜季「こちらこそ助かったであります」

茜「そうですか!」

むつみ「それで、なにか御用ですか?」

亜季「人を探して欲しいであります」

茜「迷子ですかっ!?」

惠「迷子と言えば迷子なのかしら」

亜季「この人を見たことがあるでありますか?」

茜「あります!!」

惠「根高公園で会ったのかしら」

茜「そうですね。フリーマーケットに出店しておりました」

むつみ「この方を探せばよいのでしょうか」

茜「でも、どうしてでしょう?」

惠「色々あったの」

亜季「詳しい話は、その説明しがたいであります」

茜「ふむ。事情はわかりました」

むつみ「やれる範囲でやっておきます」

惠「ありがとう」

むつみ「具体的には何をすればよいのでしょうか?」

惠「とにかく目撃情報を集めて」

茜「得意であります、任せてください!」

亜季「ですが、注意を」

むつみ「注意、ですか」

亜季「接触はしないでいいであります」

惠「いいえ。しないで」

むつみ「……わかりました」

茜「とにかく目撃情報ですね!」

惠「ええ。他にはなにかある、亜季ちゃん?」

亜季「後は根高公園の件のような不思議なことがあったら教えてもらいたいであります」

むつみ「そちらも調べておきます。日野巡査、この前に見かけた話をしてあげてください」

亜季「もう、何かあるでありますか?」

茜「はい!」

惠「何かしら」

茜「妖精がいるとのことです!本官は未だに見ておりません……無念」

亜季「調べてみるでありますか?」

惠「そうしましょう。日野巡査、氏家巡査お願いします」

むつみ「了解しました」



SWOW部室

久美子「ただいまー。お客さんがいるのかしら」

時子「お帰り、久美子」

久美子「ただいま、時子ちゃん」

荒木比奈「おじゃましてまス」

大西由里子「おじゃましてるじぇ」

荒木比奈
S大学の学生。本年度の文化祭実行委員だった。趣味は、漫画描く。

大西由里子
S大学の学生。同じく実行委員だった。趣味はネットサーフィンと読書。

比奈「この前はありがとうございまス」

時子「クッキーを貰ったわよ。食べるかしら。むしろ、量があるから食べなさい」

久美子「お礼なら前にも貰ったわ。いいのに、そんなに気をつかわなくて」

比奈「ミスコンが成功に終わったので」

由里子「紅茶も飲む?」

久美子「ありがとう。いただくわ」

由里子「どうぞー」

時子「審査員としてはなかなか辛辣だったそうじゃない」

由里子「ぐうの音も出ない正論を美人に言われるのはきついじぇ」

比奈「やっぱり、ブラ紐は隠しなさい、は良かったス」

由里子「大フィーバーって感じ」

久美子「盛り上がったのも、まったくわざとじゃなかったのも衝撃だったわ……」

時子「楽しめたようでなによりよ」

久美子「そうね、楽しかったわよ」

比奈「なによりっス」

久美子「それで、二人はお礼に来ただけなの?」

由里子「違うじぇ。部室の引継ぎに」

時子「ええ。ここは珍しく3月には退去が決まってるから」

久美子「この前のサークルって3月に解散したのに4月まで居座ってたのよね」

比奈「そうらしいスね」

時子「だから、占有権強奪できたのだけどね」

由里子「今回は円満譲渡、よしよし」

久美子「あれ?文化祭実行委委員の部屋はあるじゃない」

比奈「新設でス。せっかく仲良くなったんで、イベント企画サークルでも、って」

由里子「まずは部室確保だじぇ」

時子「ということらしいわよ」

久美子「そう、がんばってね」

比奈「はい」

時子「ところで、この人を知ってるかしら?」

由里子「誰?」

久美子「名前は並木芽衣子」

比奈「見たことはありまス」

時子「どこで?」

比奈「キャンパス内。散歩してたんでスかね」

時子「そうじゃないかしらね」

比奈「それがなにか?」

久美子「何でもない。ゆっくりしていって」

時子「ええ、久美子がどうふるまってたか聞かせなさい」

比奈「もちろんでス」

久美子「もう……」



S大学図書館

亜里沙「はい、今回の現場に到着です!」

優「わぁ、とってもちかぁーい!」

亜里沙「これくらいでいいかな?」

優「うん。なんか満足したー」

亜里沙「とりあえず、見回ってみましょうか」

優「そうだねぇー。まだ、話を聞く人も来てないみたいだし」

亜里沙「春休みだし、人もあんまりいなそうね」

優「じゃあ、好き勝手できる?」
 
亜里沙「それは言い過ぎ。静かに大人しく、ね?」

優「はぁーい」

亜里沙「私は1階、優ちゃんは2階をお願いね」

優「30分後に集合で、いい?」

亜里沙「うん、それじゃかいさーん♪」



S大学図書館・ラウンジ

亜里沙「何か見つかった?」

優「ううん、何にもー」

亜里沙「私も」

優「でも、目的の人は来てくれたみたい」

亜里沙「あら。こんにちは~」

奥山沙織「こ、こんにちは」

奥山沙織
S大学の学生。本が好きな大人しい少女。

優「奥山沙織ちゃん?」

沙織「わ、わだすが奥山沙織です!」

亜里沙「持田亜里沙です、よろしくね」

優「太田優ですー」

沙織「よ、よろしくおねげーします」

亜里沙「そんなに緊張しなくていいですよ。お話聞かせてくださいね」



S大学図書館・ラウンジ

沙織「っていうわけです」

優「つまり、変な声が聞こえる?」

亜里沙「そうみたいですね。どの辺でした?」

沙織「日本文学のコーナー近くです。でも、どこで聞こえるかはわからねーです」

亜里沙「ふむ……時間は夜?」

沙織「それがよくわからなくて」

優「適当な時間でも聞こえるってことは、何が原因なんだろ?」

亜里沙「わかりませんねー。調べてみますねぇ」

沙織「よろしくおねげーします。わだすは用事があるので」

優「来てくれてありがとうねぇ。ばいばーい」

亜里沙「さようなら。また、お会いしましょうね」

沙織「はい、失礼します」

優「……」

亜里沙「……」

優「なんだろ?」

亜里沙「わからない」

優「だよねー」

亜里沙「とりあえず、日本文学コーナーに行ってみましょうか」

優「でも、その前に」

亜里沙「その前に?」

優「司書さんに聞いておこうかなぁ」

亜里沙「そうね。見てるかもしれないものね」

10

翌日

SWOW部室

恵磨「むぅ……」

時子「フム……」

亜里沙「ただいま~。あれ、難しい顔してどうしたの?」

恵磨「亜里沙ちゃん、これ見てよ」

亜里沙「なにー?調査書……あら?」

恵磨「頼んだの、昨日だよ」

時子「速すぎるわね」

亜里沙「もしかして……辿り着いてた?」

恵磨「単に速いだけかもしれないけど、さ」

時子「そこは不問にしておきましょう。内容を」

恵磨「よしっ。名前は、並木芽衣子。本名みたい」

亜里沙「本名なんだ」

恵磨「現住所は、アタシが見つけたアパートと一緒だ」

時子「A大学を昨年度卒業。誕生日は10月14日、今年で23歳」

亜里沙「和歌山県出身。10月14日には実家に帰ってるんですね」

恵磨「一応アリバイが出来てる」

時子「彼女にとって全く意味がないわよ」

亜里沙「距離は全く意味がないですもんね」

恵磨「特に定職にはついていなくて、何してたかも不明」

亜里沙「知人には、旅人と答えてるのね」

時子「実際、事実だものね」

恵磨「手に入れたものを売ってたよね」

亜里沙「お金には困ってなさそうですね」

時子「金庫の中にでも行けばいいのよ」

恵磨「とりあえず、犯罪歴は無し」

時子「そうなって、捕まえてもムダ」

亜里沙「大学の友人の話がありますね」

恵磨「旅行好き。旅行の資金を稼ぐためにバイトに勤しんでいた」

時子「大学の成績は優秀な方じゃないかしら」

亜里沙「特に3、4年生の時はね」

恵磨「とにかく色んなところを飛び回っていた」

時子「能力を手に入れたのはその頃でしょうね」

亜里沙「見かけの年齢は、23歳くらいですよね」

恵磨「そうだと思う」

時子「移動に制約がないから、濃密な時期を過ごしているでしょうね」

亜里沙「大事件は日々過ごしてても起こらないけど」

恵磨「いくらでも起きてる」

時子「ええ。人格が変わるくらいには十分な刺激でしょうね」

亜里沙「大学時代のお友達の人物評、読んで」

恵磨「朗らか、がんばり屋、誰とでも仲良くなれる」

時子「語学力はそれなり。流暢じゃないけど、積極的に現地語を話す」

亜里沙「なんとなく現地の人と仲良くなれる」

恵磨「あのさ」

時子「何かしら」

恵磨「もしかして、本当にホールを作る以外は出来ない?」

時子「本人が言ってるわね」

亜里沙「本当に異世界に旅立って、コミュニケーションして、連れてくる。それだけ」

時子「ええ。それだけの存在」

恵磨「本当に何のためにしてるんだろ、こんなこと」

時子「楽しいから、それだけよ」

亜里沙「……意味も何もないから、大変」

時子「私に会った時も、あの壁の中にいた時も、ずっと笑顔」

亜里沙「……」

時子「貼りついてるみたいだったわ。不気味よ」

恵磨「さて、為人はわかったけど」

亜里沙「あの刑事さんでも今どこにいるかはわかりませんでしたね」

時子「いない、と考えるのが妥当でしょう」

恵磨「どうしたらいいんだろ?」

時子「追うしかないわよ」

亜里沙「はい。追えば見つけられます」

恵磨「何か見つかったの?」

亜里沙「並木芽衣子さんの目撃情報です」

時子「図書館にはいたのね」

亜里沙「はい。何かを連れてきたのは間違いないみたいなの」

恵磨「少しだけ希望が湧いてきた、かな」

時子「一歩が小さすぎるわ」

亜里沙「でも、進みましょうね」

恵磨「わかってる」

11

近くの神社

亜季「占い岩でありますか?」

優「そうそう、占い岩」

亜季「何か、怪しい岩なのでありますか?」

優「よくわからないけど、動くとか喋るとか」

亜季「まさか」

優「そのまさか、かもねぇ。こっちこっち」

亜季「こんな所にあるでありますか?」

優「ほら、あそこ」

亜季「先客がいるようであります」

優「ホントだぁー。こんにちはぁ」

藤居朋「なむなむ……」

藤居朋
S大学の学生。占いやパワースポットなどが好きな大学生。

亜季「お参りでありますか?」

朋「違う違う。幸運の石は前にお参りしたもん」

優「それじゃ、なぁに?」

朋「占い岩とかいうらしいの、知ってる?」

亜季「先ほど、聞いたであります」

朋「ウワサは本当なのね」

優「誰から聞いたの?」

朋「大学の同級生だよ。最初は天然ボケの1年生が見つけたとか、なんとか」

亜季「うーむ、これのどこが占い岩なのでありますか?真実の口でもついてるでありますか」

優「ないよねぇー。なんか聞いてる?」

朋「なんか、喋るとか動くとか」

亜季「喋るでありますか?」

優「動く?」

朋「とりあえず、触ってみよ、えいっ!」

優「……」

亜季「……」

朋「……ん?」

亜季「なにかあったでありますか?」

優「あたしも、えいー」

亜季「何か、わかったでありますか?」

優「あれぇ?」

朋「とりあえず、触ってみて」

亜季「ふむ。では」

優「わかった?」

亜季「ん?」

朋「次は耳でも当ててみる?」

亜季「やってみるであります」

優「うーん……?」

朋「聞こえるような、聞こえないような」

亜季「モールス信号……ではありませんな」

優「中から何か、出てきてるよねぇ」

朋「日によって変わるとか、なんとか」

亜季「内側から発振してるようでありますな」

優「なんだろうねぇー?」

朋「鼓動みたいにも聞こえるよね」

亜季「これ、いつからあるでありますか?」

朋「えっと、さっき神主さんに聞いてきたんだよね」

優「いつから?」

朋「20年前ぐらい前だって。なんか、急に置いてあったとか」

亜季「それまでは何もなかったでありますか?」

朋「うん。動かすのもバチが当たりそうだから、放置してたみたい」

優「何か、起こるのかなぁ?」

朋「わかんないけど、不思議な感じ」

亜季「確かに不思議でありますなぁ」

朋「なんか、生きてるみたい。パワーくれる気がしない?」

優「そうだねぇー」

朋「よし、おみくじでも引いて帰ろっ。ばいばーい」

優「ばいばーい」

亜季「お元気にであります」

優「ねぇ、亜季ちゃん」

亜季「なんでありますか?」

優「もしかして、本当に生きてる?」

亜季「わからないでありますが。もし、と仮定しますと」

優「どうなる?」

亜季「わざわざ20年前に置いたということに意味があるかと思うであります」

優「そろそろ、起きるとか?」

亜季「可能性はあるであります。芳乃殿あたりに調査をお願いしてみるであります」

12

根高公園・北地区

茜「妖精の目撃情報が多いのはここです!」

惠「よりにもよって、ここなのね」

茜「どうしましたか?」

惠「いえ、ここは怪しそうね」

茜「むっ!そこでお尻を出してる人がいます!」

惠「その言い方は語弊があるわ……」

茜「そうでした!こちらにお尻を向けて、何かを探しています!」

惠「何かを探してるのかしら」

茜「聞いてみましょう!こんにちは!」

桐野アヤ「わっ、なんだよ、驚かせんな」

桐野アヤ
S大学の学生。最近、裁縫部に加入した。何か探しているご様子。

茜「お困りですか、お困りでしたら本官にお任せください!失ったのはサイフですか、愛ですか、心ですか!」

アヤ「そんな大変なものは失ってないから」

惠「それじゃ、何を探してたの?」

アヤ「何でもない。大丈夫だから、さ」

茜「妖精ですか、妖精ですね!」

アヤ「え、なんで知って……」

惠「そうなの?」

アヤ「ち、違うからな!」

惠「見たことはあるのかしら」

アヤ「だから」

惠「探してるの。教えて」

茜「はいっ!妖精は何を食べてるんですか、カレーですか?」

アヤ「カレーじゃないだろ……で、なんで警察とそこのお姉さんが妖精なんか捜してんのさ?」

惠「いろいろあってね」

アヤ「はぁ?」

惠「見たこと、あるのかしら」

アヤ「ああ、この前にこのあたりでな」

茜「時間はいつだったでしょうか」

アヤ「この前のプロレスの帰りだから、日曜の夜10時くらいか」

惠「一人で歩くには危ないわよ」

アヤ「危なくなったら逃げるさ。それに、ここは平和そのものじゃないか」

茜「いえ!お気を付けください!本官が勤務してる交番も道沿いにありますので、夜はそちらをお使ってださい!」

アヤ「わかった。それでさ、この辺で見たんだよ」

惠「妖精を?」

アヤ「そう」

茜「妖精はどんなものなのですか?」

アヤ「淡く光ってて、小さくて、羽根が生えてた。ふわふわした髪型だったな」

惠「……本当?」

アヤ「怪しんでるな、ま、無理もないか」

惠「見た妖精はどこに?」

アヤ「こっちに気づいたのか、植え込みの中に逃げてった。それ以降は見つからない」

茜「ふむふむ。似たような話は聞いてます」

アヤ「で、寝ぼけてたか見間違いかどうか確認しに来ただけさ。同じ時間にたまたまいた奴もとぼけてるようなやつでさぁ……」

惠「あれ、もう一人いたの?」

アヤ「たまたまそこのベンチで座ってて、一緒に見たんだよ」

茜「お知り合いですか?」

アヤ「いや。でも、どっかで見たことあるような気もすんだ。誰だっけな?」

惠「私に言われても困るわ」

アヤ「そりゃそうだ。妖精よりは見つけやすいから、そのうち思い出すだろ」

茜「私達も探しますか?」

惠「そうね」

アヤ「いた奴は思い出せないけどさ」

惠「なに?」

アヤ「天使もいるらしいぜ。真っ白な大きな羽根があるとか。妖精の親玉かもな」

惠「……」

アヤ「どうしたんだよ、そんな渋い顔して」

惠「それはもう二度と現れないと思うわ」

アヤ「なんで?」

惠「そして、会わなくて幸運だったわ」

アヤ「……ヤバイのか?」

惠「もういないものの話を仕方ないわ」

茜「よーし、探しますよ、妖精を!」

13



SWOW部室

楊菲菲「ご注文はお揃いカ?」

楊菲菲
やおふぇいふぇい。楊さんの中華料理屋さんの一人娘。SWOW部室への出前運びは慣れたもの。

久美子「ええ。いつもありがとう」

フェイフェイ「こちらこそ、いつもありがとうダヨー。それでは失礼するネー」

久美子「はい。ばいばい」

恵磨「おー、来た来た。ご飯にしようよ」

時子「ええ。亜里沙、お茶でも用意なさい」

亜里沙「はぁーい。ウーロン茶の準備はしてありますよー」

亜季「ニラ玉、ニラ玉はどこでありますか!?」

惠「そんなに慌てなくても取らないから」

優「たんたんめーん♪」

亜里沙「はい、温かいウーロン茶をどうぞ♪」

亜季「かたじけないであります」

久美子「それじゃ、いただきます」

恵磨「いただきまーっす!」

時子「いただきます」

惠「そっちはどうだったの?」

亜季「占い岩はありましたな」

優「よくわからなけど、うん、なんか普通じゃなかった」

亜季「芳乃殿に見てもらう依頼をしたであります」

恵磨「こっちは、さっき見せたけど、並木芽衣子さんについては刑事さんが調べてくれたくらい」

惠「妖精は結局見つからず」

亜里沙「でも、目撃情報は見つかったんでしょ?」

惠「ええ。日野巡査と氏家巡査が見つけてくれたわ。まだ、根高公園近辺だけよ」

亜季「有益な情報はあったでありますか?」

惠「いいえ。いつがどの段階の彼女なのか見当はつかない。あればいいけど、簡単じゃなさそうね」

時子「わかりきったことは言わなくていいわ」

久美子「他には何かないの?」

時子「そうねぇ、コンビニの話とか」

優「それ、なにぃ?」

恵磨「ここいらで広まってる都市伝説。スクーターに乗ってると、変な声がして」

亜里沙「座席の下のトランクに」

時子「生首が入ってるって話よ」

亜季「食事中にそんな話をしないで欲しいであります」ガツガツ

惠「まったくね」パクパク

優「ねぇー」ズルズル

時子「それは明日にでも、恵磨が調べてくれるわ」

恵磨「行ってくるよ」

亜里沙「少しだけ近づきましたね」

時子「ええ。彼女の性格からして、出てこないことはないわ」

惠「そうね。きっと、動くはず」

優「見えるようにねぇ」

亜里沙「まずは、コンビニの話と大学での聞き取りかな?」

時子「ええ。気は抜かないで行くわよ」

優「ああ!」

亜里沙「優ちゃん、どうしたの?」

優「杏仁豆腐頼み忘れちゃったぁ!」

時子「今日は久美子が貰ったクッキーで我慢なさい」

14

翌日

S大学構内

惠「ねぇ、亜季ちゃん」

亜季「なんでありますか?」

惠「私達、なんでコロッケ食べてるのかしら」

亜季「貰ったからであります。美味しくいただいております」

惠「そうね、あの金髪の子がくれたのよね」

宮本フレデリカ「んー、おいしー♪いやぁ、故郷の味を思い出すよー」

宮本フレデリカ
短期大学の方のS大学の生徒。非常に目立つ外見をしているが、なかなか学校で見られない。いないから。

亜季「おや、故郷はどこなのでありますか?」

フレデリカ「フレデリカはね、パリ、花の都パリ出身なの!」

惠「コロッケがパリの味……?」

フレデリカ「あれ、パリにコロッケないんだっけ?」

亜季「ある……かもしれないであります」

フレデリカ「こまかいことは気にしなーい。コロッケ、美味しいから大丈夫だよー」

惠「そ、そうね」

フレデリカ「今日ね、いいことがあったんだ」

亜季「何でありますか」

フレデリカ「いやぁ、美味しいコロッケを見つけられて、フレちゃん幸せ!」

惠「あんなに自信満々だったのに、今日見つけたのね……」

フレデリカ「だから、皆に配ろうと思ったら、あら、大変!」

亜季「何があったでありますか?」

フレデリカ「なんかステージが出来てる!?」

惠「これは卒業式の時に付属高校の生徒が出し物をするためらしいわ」

フレデリカ「じゃ、なかった。目に入ったからつい言っちゃったー。そうじゃなくて」

亜季「そ、そうでありますか」

フレデリカ「大学に人がいない!どーしちゃったの、もしかして、神隠しだったりして」

惠「春休みだからじゃない」

フレデリカ「そうなんだよねー。だからお出かけしてたのにねー。フレちゃん、がっくし」

亜季「まぁ、私達が貰えたのでよしとするであります」

フレデリカ「わーお、こんな時間だし急がなくちゃ!用事ないけど。そんじゃ、まったねー」

惠「あ、待って……」

亜季「行ってしまったであります」

惠「何も聞けなかったわ」

亜季「まぁ、いいであります」

惠「せめて、お店の名前くらい聞いておけば良かったわ」

亜季「しかし、惠」

惠「なに?」

亜季「お店の名前、憶えてると思うでありますか?」

惠「……」

亜季「そんな気がするであります」

惠「よし、気を取り直していきましょう」

亜季「ええ」

15

S大学図書館

亜里沙「ねえねえ、優ちゃん」

優「なに、亜里沙ちゃん。何か見つけたぁ?」

亜里沙「ここにあった本、前は借りられてた?」

優「はっきり覚えてないけど、借りられてなかったような」

亜里沙「誰が借りて行ったのかな」

優「亜里沙ちゃん、本の名前は?」

亜里沙「日本近代文学全集4かな、たぶん」

優「これ?」

亜里沙「あ、それそれ」

優「返却カゴに返ってたよー」

亜里沙「貸出は?」

優「最近の貸し出し記録はないよー」

亜里沙「そう、それじゃあ誰が借りて行ったのかはわからないのね」

優「でも、なんでこれを手に取ったのかな?」

亜里沙「棚に戻さないで、返却カゴに置いたのはなんでだと思う?」

優「忘れたから?」

亜里沙「こんなに目立って重いのに?」

優「なにか、上の空だったとか」

亜里沙「本当だと心配ねぇ。あら……?」

優「何か見つけたー?」

亜里沙「これ、手紙かしら」

優「本当だ」

亜里沙「奥に挟まってたの。読んでみ……」

優「ねぇ、亜里沙ちゃん」

亜里沙「うん、優ちゃん」

優「それ、動いてない?」

亜里沙「うん、動いてる。飛んでいきそう」

優「確保!」

亜里沙「こんな所に、ジップロック!」

優「密封よし」

亜里沙「それで……これなにかな?」

優「わかんなーい」

亜里沙「動いてる?」

優「鳴いてる?」

亜里沙「本棚に挟まって逃げられなくなったのかしら」

優「うーん、楓さんとかに話を聞いてみようか」

亜里沙「そうね。都合よく捕まえたことだし、行ってみましょうか」

優「それにしても」

亜里沙「誰がこの本を取ったのかな?」

優「黒幕なら逃がすよね」

亜里沙「偶然かも」

優「偶然じゃないと思うよ」

亜里沙「どうして?」

優「なんとなく。さ、いこっ、亜里沙ちゃん」

16

大学近くのコンビニ・バックヤード

藤本里奈「おつにゃん!待った?」

藤本里奈
近くのコンビニ店員。通勤は原チャ。

久美子「大丈夫よ。勤務中にごめんなさいね」

里奈「こーひー、お買い上げありがとうぽよ」

恵磨「余分に買ってきたから、飲む?」

里奈「ほんとー?いただきまーす」

久美子「それで、本当なの?」

里奈「なんのはなしー?」

恵磨「生首の話」

里奈「それねー」

久美子「どうなの?」

里奈「うそー」

恵磨「うそなん?」

里奈「生首なんて入ってないってー。それだったら今頃大事件じゃない?」

久美子「それはそうだけど」

里奈「仕事帰りにさ、アタシが愛車の、あの子なんだけどー」

恵磨「窓の脇に置いてある原付だね」

里奈「おつーんで、早く帰ろうと思ってたぽよ」

久美子「それで?」

里奈「ヘルメットして、いざまたがろうとしたらっ!」

恵磨「したら?」

里奈「可愛い女の子、大学生かなー、その子がねー」

久美子「その子が?」

里奈「あのぉ、座席の下は気をつけてください~」

恵磨「って言ったの?」

里奈「そうそう。のんびりした子だったぽよ」

久美子「なんか、聞き覚えがあるような……」

恵磨「それで、何があったの?」

里奈「開けてみたら、こんなんが出てきたのー。これ、写メったやつ」

久美子「恵磨ちゃん、これ」

恵磨「アタシは知ってるよ、凄く」

里奈「ウネウネしてきもちわるーい。すぐにいなくなっちゃったけどー」

恵磨「何もなかった?」

里奈「なーんにも」

久美子「その女の子はどうしたの?」

里奈「あれれ?」

恵磨「見失っちゃったの?」

里奈「そうみたいー。でも、代わりに」

久美子「代わりに?」

里奈「なんかさー、モデルみたいな人がいたのー。びっくりん」

恵磨「そっちは心当たりがある」

里奈「凄い眉間にシワ寄せて、やっぱり美味しくありませんね、って言ってたぽよ」

久美子「間違いなさそうね」

恵磨「それなら、もう大丈夫だと思うよ」

里奈「そうなの?」

久美子「ええ」

恵磨「ありがと、時間取ってもらって」

里奈「売り上げ増やしてくれたら許してあげるー」

久美子「デザートでも買って帰りましょうか」

恵磨「そうしよ。杏仁豆腐とかいいかも」

17

出渕教会・地下1階

涼「んー?」

優「これなんだと思う?」

涼「生きてるみたい、だな」

亜里沙「はい」

涼「アタシだけじゃ知ってることは限られるな」

優「他の人はいないの?」

涼「シスターはお仕事中。芳乃は学校だ」

亜里沙「学生、中学生?」

涼「芳乃は高校生だぞ」

優「ええっ!」

涼「そんなに驚く……驚くか。後は地下2階にも二人いるけど」

亜里沙「お休み中ですか」

涼「そうだ。日が落ちるまで起きてこないだろうな」

亜里沙「わかることだけでも、教えてください」

涼「こいつ、出していいか」

優「逃げない?」

涼「ここで逃げられるなら大したものさ。よっ、と」

亜里沙「飛んで、ますね」

優「チョウチョみたい」

涼「二つ折りの紙が飛んでるな。ふむ」

亜里沙「生き物なんでしょうか」

涼「さぁな。でも、これはこの世界の生き物じゃない」

優「連れてきた?」

涼「だろうな。どこで見つけた?」

亜里沙「大学の図書館です」

涼「紙みたいな生物というか、紙が生きてる感じか」

優「どうしたらいい?」

涼「どうしようもない。そいつには時間も残されてない」

亜里沙「どういう意味?」

涼「死期が近いから、だ」

優「わかるの?」

涼「わかるよ。アタシには」

亜里沙「どうにかなりませんか?」

涼「死因は餓死だ。この世界にコイツが食べられるものは、ない」

優「ひどい……それなのに、連れてこられた?」

涼「微妙に音を出してる」

亜里沙「反応できると?」

涼「自分の意思で来た可能性もある」

優「そうやって」

亜里沙「正当化、する」

涼「トラベラーの考えてることなんてアタシにはわからない」

優「悔しい、な」

涼「だから、止める方法を考える」

亜里沙「追いつけますか」

涼「追いつく」

優「……」

涼「なぁ、考えてみろ」

優「なに?」

涼「面白いこと探すのも大変だろ」

亜里沙「はい。出来ることなら、一度に見たい」

涼「それに、アイツの信条は混沌だ」

優「なら、どういうこと?」

亜里沙「集めてみるんですね」

涼「そういうこと。財前サンに言った時期も近い」

優「出て、来る……?」

涼「見ないことには面白くない。絶対に来るよ」

亜里沙「トラベラーが、ですね」

涼「ああ。気をつけな」

18

夕方

近くの神社

芳乃「これが、占い岩でしてー?」

亜季「はい」

惠「何かわかるかしら」

芳乃「力を感じるのでしてー」

亜季「なんなのでありましょうか」

芳乃「……」

惠「目を閉じて手を触れてる」

亜季「何を感じてるのでありましょうか」

芳乃「わかったのでしてー」パチッ

亜季「なんでありますか?」

芳乃「我孤独なり。久遠の彼方から数多なる同朋の声も聞こぬ」

惠「はい?」

芳乃「人の心臓の音は煩わしき。それは如実なる心の奏」

亜季「えっと……」

芳乃「落ち込みし時は強く。高ぶる時は緩やかに」

惠「占いの話をしてるのかしら、もしかして」

芳乃「連れてこられて寂しいようでしてー」

亜季「なるほど」

芳乃「人の鼓動から状態を感じているようでしてー」

惠「それに適切な対応をするのね」

亜季「ふむ。なんとなく気分が整って、いいことが起きる気がする」

惠「それで、占い岩」

芳乃「そうでしてー」

惠「会話できてるの?」

芳乃「出来ませんー。ただ、わかるのでしてー」

亜季「これ、なんなのでありますか」

芳乃「この世で一番近いものはー」

惠「なに?」

芳乃「通信機でしてー」

亜季「通信機……?」

惠「電波の送受信をしてる」

亜季「でも、受け取れないでありますか」

芳乃「この世界はそなたの世界ではないのでしてー」

惠「……」

芳乃「お休みなさいでしてー」

亜季「どうしたでありますか」

芳乃「時が来るまで眠るそうでしてー。永き時ならば、いつか同朋が現れん、と」

惠「そう……」

芳乃「夕ご飯の時間が近いゆえー」

亜季「ええ。ありがとうであります」

19

SWOW部室

時子「調子はいかがかしら」

黒川千秋「相変わらず」

黒川千秋
S大学の学生。クラシック研究会の代表。

時子「発作は」

千秋「ないわ」

時子「がんばりすぎてないかしら」

千秋「美里も手伝ってくれてるの。無理なんてしてないわ」

時子「なら、いいけれど」

千秋「そちらこそ、また変なことに巻き込まれてないのかしら」

時子「そんな心配は無用よ」

千秋「聞くまでもなかったわね」

時子「そう。今も進行中よ」

千秋「呆れた」

時子「だから、聞いてるのよ」

千秋「特に悪いウワサは聞かないわ」

時子「フム」

千秋「噂話は増えているようだけど、実際に何かあるという話には結びつかない」

時子「問題ないと、考えていると」

千秋「私の見解ではそうよ」

時子「だけど、何かが起きそうよ」

千秋「確信があるように聞こえるわ」

時子「ええ。ケンカを売られてるんだから」

千秋「まぁ、くれぐれもお気をつけて」

時子「他人事ね」

千秋「他人事であったほうがいいと、あなた方が教えてくれたわ」

時子「……そうね」

千秋「ごちそうさまでした」

時子「ええ。来てくれてありがとう」

千秋「ご卒業おめでとうございます」

時子「……ありがとう。皆で卒業旅行には行くことにしたわ」

千秋「あら。やっとまともにサークル活動するのね」

時子「なにか、思うところでも?」

千秋「恩人に言うのも難だけれど、不真面目なサークルと感じてたの」

時子「間違ってないんだから、いいわよ」

千秋「楽しんでくださいね」

時子「言われなくても、楽しむわ」

20

SWOW部室

時子「今日の話は以上ね」

亜里沙「はい。図書館、コンビニ、占い岩の話は解決でしょうか」

惠「日野巡査に見回りを頼んだから、見つかるかもしれないわ」

優「来るかな」

亜季「そろそろ、でありましょうか」

久美子「ええ」

時子「話は変わるけれど、惠」

惠「チケットの話?」

恵磨「そういえば、発券した?」

惠「ええ。時子ちゃんの名前で取ったから、預かって」

時子「財前時子様以下7名様」

優「楽しみだねぇー、卒業旅行」

惠「こんなに平凡な所で良かったの?」

亜季「惠もたまには初心に帰るであります」

恵磨「どんな平凡な観光地だって、一緒に行けば楽しいよっ!」

亜里沙「はい。楽しみましょうねー」

惠「……ええ」

時子「今日は外にでも食べに行きましょうか」

優「何か希望あるー?」

亜季「お好み焼きがいいであります!」

時子「決定。行くわよ」

21

幕間

CD発売記念イベント会場

心「今日は来てくれてありが……」

芽衣子「こんにちは~。新曲最高ですっ!」

心「ありがと!ファンなのかな!」

芽衣子「はい、魔法使いさん」

心「口を慎めよ」ボソッ

芽衣子「夢と希望を与える魔法使い、素晴らしいじゃないですか」

心「サインが欲しいの?」

芽衣子「握手をお願いします!手袋をしてないみたいなので!」

心「わかってる?」

芽衣子「アイドルに直に触れなくちゃ、イベントに来た甲斐がありません!」

心「これからも応援よろしくね♡」ギュ

芽衣子「はーい。見てますよ」

心「ぶん殴っていい?」

芽衣子「今、この場で殴れるならどうぞっ!」

心「厄介なファンだな☆」

芽衣子「よく言われます!」

ジカンデース!

心「はぁとを独占するのは許されないんだぞ☆」

芽衣子「はーい。まったねー」

心「ばいばーい!」

心「ったく……宣戦布告と見ていいのかな」

心「次の人、こんにちはー☆今日は来てくれてありがとう☆」

心「今日も手作り衣装なの☆かわいいでしょー……うわっ、きつい?冗談はやめないと殴るぞ☆」

幕間 了

22

翌日

路上

時子「ハァ?」

恵磨「だから、はぁとさんの握手会に来たって」

時子「並木芽衣子が?」

恵磨「そう。握手してもらって帰ったって」

時子「意味がわからないわ」

恵磨「ただのお祭りごと好き、かも」

時子「本当に出てきたわね」

恵磨「何か、するのかな」

時子「しなくても、こっちは追わないといけない」

恵磨「来ただけマシ、かな」

時子「ええ……あら」

恵磨「なんか、人だかりが出来てるね」

時子「警察もいるわね」

恵磨「銀行に何かあったのかな」

片桐早苗「あー、あー、テステス」

片桐早苗
警視庁の刑事。ただいま拡声器のテスト中。

恵磨「強盗、立てこもり?」

時子「そうじゃないかしら」

早苗「犯人に告ぐ!銀行は方位されている、大人しく出てきなさい!」

恵磨「本当みたい」

時子「物騒ね」

あい「おや」

肇「こんにちは」

時子「貴方達は何をしてるのかしら」

あい「同僚の見学さ」

肇「雄姿をこの目に焼き付けておこうかと」

早苗「はい、そこの刑事二人ー、さぼってないで職務に戻りなさーい」

あい「だそうだ。戻るとしよう」

時子「待ちなさい。中の様子ぐらい聞かせなさいよ」

肇「そこの方にお話を聞いてください。失礼します」

恵磨「そこの人?」

時子「あら」

衛藤美紗希「あっ、財前さん……」

衛藤美紗希
時子のアパート近くにあるアパレルショップの店員。銀行に立ち寄ったところで巻き込まれた模様。

時子「あなたは無事なの?」

美紗希「はいぃ、でも、お友達が一人中に居てぇ……」

恵磨「え、大変じゃん」

早苗「人質を解放なさーい!」

時子「人質は何人?」

美紗希「えっとぉ、何人だっけ、みやびぃ」

月宮雅「4人、かな。彩華ちゃん含めて」

月宮雅
美紗希の友人。職業は大学生。今日は3人でお出かけ中だった。

岸部彩華
美紗希の友人。職業は大学生。なんだか、雰囲気のある女性。

早苗「故郷のお母さんが悲しんでるぞー!」

恵磨「お友達含めて、4人?」

雅「うん……」

時子「どうして、貴方達は外に?」

美紗希「玄関近くで彩華ちゃんを待ってたからぁ、すぐに逃げられたけどぉ」

恵磨「お友達は中に?」

時子「犯人は何か武器を持ってるの?」

早苗「銃を捨てて、投降しなさーい!」

時子「解決したわ。厄介ね」

恵磨「犯人は?」

雅「えっとぉ、25歳くらいの、若い男の人」

早苗「今ならまだやり直せるぞー!」

時子「動機は?」

美紗希「よくわかりません……」

時子「でしょうね。どうしましょう……」

岸部彩華「きゃあ!」

恵磨「えっ?」

彩華「いたい~、あれ?」

雅「彩華ちゃん!」

美紗希「彩華ちゃぁーん!」

早苗「んー、反応ないわね。中の様子は!?」

恵磨「急に出てきたように見えたんだけど」

時子「急に出てきたわね」

恵磨「一瞬で消えたけど……あれさ」

時子「でしょうね。人質についてお聞きしたいのだけど」

彩華「私に?」

時子「ええ。この、並木芽衣子という女性がいなかったかしら」

彩華「いなかったと思いますけどぉ……」

時子「ありがとう。なら、いるわね」

美紗希「えぇ?」

恵磨「楽しそうだから、首を突っ込みに行ったのかな」

早苗「相変わらず中の様子は確認できないかー。何とか犯人に、接触を……」

時子「……どうして、犯人は応答しないのかしら」

彩華「さっきまでぇ、警察から金と車を要求するんだって、言ってたのにぃ」

恵磨「中で何か、起こってる?」

早苗「突入班、準備!」ダッダッダ

時子「さて、どうなるのかしらね」

23

SWOW部室

亜里沙「今、アパートの引っ越し準備をしてるの。思ったより大変」

久美子「そうなんだ。あっちでも一人暮らし?」

亜里沙「ううん。しばらくは実家から通おうかな、って」

惠「車?」

亜里沙「そう。練習しなくちゃ♪」

惠「久美子ちゃんは引っ越すの?」

久美子「私も、しばらくは実家のままかな」

コンコン

久美子「はい、どうぞー」

江上椿「おじゃまします」

江上椿
S大学の学生。裁縫部所属。趣味は写真。

亜里沙「椿ちゃん、こんにちは~」

椿「あの、伊集院さんいらっしゃいますか?」

惠「私?」

椿「アヤさんが用事だそうでして。案内してきました」

アヤ「よっ」

惠「あら、桐野さん。妖精は見つかったかしら?」

アヤ「そっちは見つからなかった」

久美子「そっちじゃない他の何かが見つかったの?」

アヤ「そうそう。この前さ、一緒に見た人がいたって言ったろ?」

惠「ええ。わかったの?」

アヤ「椿に写真を見せてもらってさ。ウチの大学の有名人だった」

椿「この人です、知ってます?」

亜里沙「あれ、この人って」

惠「誰だった、かしら」

久美子「この子?」

亜里沙「久美子ちゃんは知ってるよね」

惠「誰なの?」

久美子「誰って、今年のミスS大学の……」

テレビ『ここで緊急中継です。M市で発生した銀行立てこもり事件に展開がありました』

アヤ「文化祭で見てたのに、忘れててさ」

惠「へぇ、久美子ちゃんが審査員した子なのね」

久美子「ええ、ちょっと天然ボケな所があるけど……」

テレビ『警察が突入し、犯人を確保した模様です』

アヤ「思い出したから、伝えておこうと思って」

惠「ありがとう」

テレビ『警察に連れられて、人質が解放されました』

亜里沙「ねぇ、みんな」

久美子「なに、亜里沙ちゃん」

亜里沙「それって、テレビに映ってるこの子?」

アヤ「ん?本当だ」

久美子「本当ね……なんで立てこもり事件なんかに巻き込まれてるのかしら」

惠「待って、あそこ」

亜里沙「……こんな所に」

アヤ「さすがに警察に隠されたな」

久美子「亜里沙ちゃん」

亜里沙「うん」

アヤ「どうしたんだ?」

惠「伝えてくれてありがとう。でも、ここからは私達の仕事なの」

24

銀行前

ファンタジックサーカスハジマッテ……

時子「久美子から電話だわ。なにかしら、久美子」

恵磨「さっき見たこと、伝えて」

時子「その銀行前にいるけど。そう、わかったわ。後で連絡するわ」

恵磨「どしたの?」

時子「テレビに映ってたらしいわ」

恵磨「黒幕が?」

時子「ええ。偶々目の前にいることを言ったら、調べてきなさいですって」

恵磨「入れるかな」

時子「さっきの刑事がいればいいけど」

あい「御用かな?」

肇「そのようですね」

時子「帰ってなかったのね」

あい「いや、帰ってきただけさ」

肇「気になることがありましたので」

恵磨「人質と会える?」

あい「善処するさ。行くぞ」

25

交番

亜季「ご協力ありがとうであります」

むつみ「いえいえ。それで、あの、つかぬ事をお聞きしますが」

亜季「なんでありましょう?」

むつみ「この人、知ってますか?」

優「あ、知ってるー。今年のミスS大学の子だぁー」

亜季「名前は忘れてしまいましたが、確かそうでありました」

優「この子がどうしたの?」

むつみ「いえ、並木芽衣子さんを探してるのにこの人ばっかり見られてまして」

亜季「なんで、でありますか?」

むつみ「さぁ……私には何とも」

亜季「うーむ」

優「何かわかった?」

亜季「悩んでも仕方ありませんな。部室に戻るであります」

優「うん。氏家巡査、ありがとー」

むつみ「どういたしまして」

26

銀行前・立てこもり事件対策テント

あい「逃げられた、だって?」

早苗「あいちゃん、そんな目で見ないでよー」

肇「まさか、人質を警戒なんてしませんから」

早苗「肇ちゃんはわかってくれるのね。そうなの、気づいたらいなくて」

あい「警察は誰も見てなかったのか?」

早苗「ええ、でもほんの数分よ?それだけで、どこにもいなくなったわけ」

時子「出来るわね」

恵磨「うん、出来るね」

早苗「それで、この子達は?」

あい「知人だ。その逃げた人質から話は聞いたか?」

早苗「ほんの少しだけね。名前と感想だけ」

肇「教えてください」

早苗「なんで?」

あい「別の事件の犯人だからだ」

早苗「へ?そういうことは早く言ってよ!知ってたら」

時子「知ってたところで止められない」

あい「そうだな。それで、なんと?」

早苗「名前は、並木芽衣子、23歳。感想は……そうね、おかしいこと言ってたわ」

肇「何を言ってたのですか?」

早苗「つまらない、って」

恵磨「……」

早苗「とりあえず、この事件は解決。他の人質に体と心の傷は見られないし」

あい「了解した。逃げた人質については任せてくれ」

早苗「始末書とか書きたくないからよろしく」

肇「はい」

時子「お願いがあるのだけど」

あい「何かあるのか」

時子「人質の中に知り合いがいるの。会わせてもらえるかしら」

あい「だそうだ」

早苗「別にいいけど、会ってどうするの?」

時子「いいから、会わせなさい」

早苗「妙な貫禄があるわね、この子」

あい「そうか?」

早苗「あいちゃんからすれば、全ての人が小娘だろうけど」

恵磨「それで、どうなん?」

早苗「いいわよ。大学生の女の子でしょ?」

時子「ええ。お願いするわ」

27

銀行前・立てこもり事件対策テント

あい「おや、早いな」

時子「挨拶をしただけだから」

恵磨「後で部室に来てもらうし」

時子「そっちは何かわかったかしら?」

あい「君たち、何か隠してるだろ」

時子「そういえば言い忘れたわね」

恵磨「そうそう、人質が一人入れ替わったの忘れてた」

あい「ふむ。その一人が並木芽衣子か」

肇「途中で入った、のですか」

時子「おそらく」

あい「事件の大まかな状況は聞きたいか?」

恵磨「念のため。どうして、犯人が応じなくなったの?」

肇「気絶していたからです」

時子「突入前に?」

あい「転んで頭を打った様だな」

恵磨「そこに突入していって、事件解決?」

肇「はい。それだけですよ」

時子「で、どうして転んだの?」

あい「そもそも転んだのか?」

恵磨「犯人はなんて言ってたの?」

肇「いつの間にか気を失っていた、と」

時子「人質は気づかなかったのね」

あい「奥に入らせなかったようだからな」

肇「犯人は人質に色々と話していたようです」

恵磨「例えば?」

肇「動機などです」

時子「それがつまらなかったんでしょうね」

あい「実に凡庸、下手な小説みたいだよ」

肇「銃はニセモノでした。改造ガス銃なので、危険と言えば危険ですが」

時子「別に犯人に興味はないわ。適当に隠しておいてちょうだい」

あい「言われなくてもそうするさ」

肇「逃げた人質を探しましょうか」

恵磨「お願い」

あい「見つからないだろうがな」

時子「恵磨、部室に集合させて」

恵磨「さっき連絡あったけどさ」

時子「何かしら」

恵磨「亜季ちゃんと優ちゃんも、あの子を連れてきて欲しいって」

時子「……なぜかしら」

恵磨「わかんない。でも、とりあえず連れて行こっか」

28

SWOW部室

亜里沙「お茶をどうぞ♪」

十時愛梨「ありがとうございますっ」

十時愛梨
S大学1年生。本年度ミスS大学。審査員である松山氏の評は、色々心配だが、エントリー者に彼女の対抗馬は居ない、というもの。

恵磨「お菓子もどうぞ。昨日コンビニで買い過ぎたやつなんだけどさ」

愛梨「わぁ、私、このお菓子大好きなんですっ。いただきます♪」

亜季「ふむ」

惠「そうね」

恵磨「うん、可愛いね。スーさんが見たらどう感じるんだろ……」

優「うふふ、ねぇ、髪いじってもいい?」

愛梨「いいですよ。もしかして、寝癖がついてます?」

優「そんなんじゃないよー。失礼しまーす。ふふ♪」

時子「お名前をお聞きしてもいいかしら」

愛梨「十時愛梨です。1年生ですっ」

久美子「久しぶりね。元気そうだけど危ないことに巻き込まれてない?」

愛梨「お久しぶりですっ、久美子さん。大丈夫です、私こう見えてもしっかりするようになったんですっ」

久美子「今日も事件に巻き込まれてたじゃない……」

愛梨「あ、そうでした」

時子「まずはそこから聞こうかしら」

亜季「どうして巻き込まれたでありますか?」

愛梨「えっとぉ、今日はお休みだからケーキを作ろうと思ったんです」

時子「……」

久美子「時子ちゃん、こういう子だからもう少し我慢して」

時子「それで、どうしたのかしら」

愛梨「バニラエッセンスが切れてたのを思い出してぇ、近くのスーパーじゃなくて、そういう専門に扱ってるお店に行こうかな、って」

時子「こだわってるのね」

愛梨「はいっ、ケーキ作るの大好きですっ。それで、暖かいから歩いて行こうかな、って」

惠「そう。それで?」

愛梨「えっとぉ、それでどうしたんでしたっけ?」

時子「銀行には行ったのかしら?」

愛梨「そうでした!銀行に寄ったんです」

時子「なんでかしら」

愛梨「どうして、でしたっけ?」

優「覚えてないのー?」

亜里沙「お金をおろすとか?」

愛梨「違いますぅ。えーっと、どうしてだったかなぁ」

亜季「犯人が来る前は何をしてたでありますか?」

愛梨「旅行のパンフレットを見てました」

時子「つまり、偶々なのね」

愛梨「そうなんです。大変でした」

惠「ふむ……嘘はついてない、と」

愛梨「大変だったんですよ、いきなり銃を取り出して……」

時子「その話はいいわ。警察にも話したでしょう」

亜里沙「私達が聞きたいのは、人質についてです」

愛梨「人質ですか?」

時子「貴方の他に、誰が人質に取られてたのかしら」

愛梨「カウンターにいた銀行員のおばさん、と店長みたいな人でした」

ヘイヘイ時子イラついてる~wwwwww

亜里沙「もっといたけど、逃げられた人も多いのよね」

愛梨「私、のんびりしてるから逃げ遅れちゃって」

恵磨「あれ、もう一人は?」

愛梨「もう一人ですか?はい、綺麗な人がいました」

亜里沙「どんな人ですか?」

愛梨「スタイルがよくて、泣きぼくろがあって、凛々しい顔立ちでした」

惠「並木さんじゃないわね」

時子「岸部彩華ね」

愛梨「でも、その人は途中で解放されたって」

恵磨「誰が言ってたの?」

愛梨「帽子をかぶってたお姉さんが言ってました」

時子「その人、犯人が入ってきた時にどこにいたかわかるかしら」

愛梨「パンフレットを見てて、あまり周りを見てなかったんです」

恵磨「ふむ、どうする時子ちゃん」

時子「教えないでおきましょう」

愛梨「何をですか?」

時子「何でもないわ。私と恵磨からは以上よ。誰か、聞きたいことはあるかしら」

亜里沙「それじゃ、私から」

時子「どうぞ、亜里沙」

亜里沙「最近、図書館に行った?」

愛梨「大学のですか?」

亜里沙「うん。日本文学とか好きかな?」

愛梨「あまり本は読まないから」

亜里沙「そう。ありがとう」

優「よしっ、セット完了。あたしから聞いてもいい?」

愛梨「ありがとうございますっ。なんですかぁ?」

優「占い岩って知ってる?」

愛梨「はいっ。不思議ですよねぇ。お散歩してたら、偶然見つけたんですよっ」

優「そうなんだ、ありがとねぇー」

亜季「根高公園では妖精を見つけたでありますか?」

久美子「あれ?」

恵磨「どうしたの、久美子ちゃん」

久美子「亜季ちゃんにその話した?」

亜季「私は氏家巡査から聞いただけでありますが」

惠「私達は桐野さんから聞いたのだけれど」

愛梨「あの……何の話ですか?」

恵磨「もしかして、コンビニで店員さんに話しかけたりした?原付のおねーさんに」

愛梨「そういえば。どうして話しかけたんでしたっけ?」

時子「こっちが聞きたいわよ」

亜季「……」

惠「十時愛梨さん」

愛梨「はい?」

久美子「前から危なっかしいとは思ってたけど」

亜里沙「本当ねぇ」

時子「……」

久美子「気をつけてね」

29

SWOW部室

愛梨「今日はごちそうさまでした~」

久美子「ええ。また来てね」

時子「3月19日までしかいないけれど」

愛梨「はいっ、今日はありがとうございました」

亜里沙「はい、さようならー」

バタン

恵磨「……」

惠「……」

亜季「……」

優「……」

久美子「行ったわ」

時子「集合」

亜季「なんなのでありますか?」

惠「なんなのかしら」

恵磨「なんなんだろ」

亜里沙「ふふっ、不思議な子ですね」

優「ねぇー」

久美子「それは前から知ってたけど」

時子「問題は彼女のパーソナリティではなく」

亜里沙「行動ですね」

惠「偶然なのかしら」

亜季「本人は偶然と言ってたであります」

恵磨「嘘をついてるようには思えないんだよね」

久美子「実際嘘ついてないと思うわ」

亜里沙「本当ですか?」

久美子「たぶん。あの子、あれが素だし、演技とか苦手なの」

優「それじゃあ、なんでいたのかな?」

亜季「占い岩、原付に潜り込んだ影、妖精、それと」

惠「今回の立てこもり事件」

時子「全て偶然だと思うかしら」

恵磨「偶然じゃないなら、なんなの?」

久美子「気づいてるとか」

亜里沙「彼女の出現に気づいてる?」

優「どうやってぇ?」

惠「未来予知……?」

亜季「未来予知なんかできるでありますか?」

惠「出来る人は出来るんじゃないかしら」

優「未来予知って感じじゃないよねぇ」

恵磨「うん。予知してるなら、危険に巻き込まれてなくない?」

時子「なら、何なのかしら」

亜里沙「別の何かに反応してるとか」

亜季「何かに反応してる、でありますか」

優「あるとしたら、なに?」

恵磨「ホールを感知してるとか」

時子「あるいは、異世界のモノに」

久美子「本当に?」

惠「それとも、全部偶然で片づける?」

久美子「そっちの方が納得できない」

亜里沙「ええ」

時子「何かあると思って、調べるわよ」

久美子「うん、そうしましょう」

時子「亜季、恵磨はシスターの所へ」

亜季「了解であります」

時子「優と亜里沙は彼女について調べてきなさい」

優「はぁい」

時子「惠と久美子は」

久美子「なにするの?」

時子「十時愛梨を尾行なさい」

惠「直接的ね」

時子「並木芽衣子に会える可能性が高いはず」

久美子「それは、大変な仕事ね」

亜里沙「時子ちゃん、ここで情報収集をお願いね」

時子「ええ。あの刑事と連絡を取ってみるわ。何かわかったらすぐに連絡なさい」

亜季「了解であります」

時子「以上よ。動きなさい」

30

S大学構内

惠「それで、尾行してるわけだけど」

久美子「のんびり屋さんは本当なのね……」

惠「久美子ちゃんはどう思ってるの?」

久美子「どうって、何を?」

惠「彼女について」

久美子「可愛いし、スタイルもいいし、性格も悪くない。というか、知れば知るほど悪くない子だってわかる感じ」

惠「そう」

久美子「実際ミスコンも圧倒だったわよ。男女ともに人気で」

惠「そのようね」

久美子「少し不思議ちゃんだけど、まさか本当にねぇ……」

惠「うーん、怪しい動きなんてしてないわね」

久美子「彼女は大丈夫。問題は」

惠「ええ。警戒していきましょうか」

31

出渕教会・地下1階

亜季「というわけなのでありますが、どう思うでありますか?」

クラリス「昔からタイミングの良い人はいるものです」」

亜季「どういうことでありますか?」

クラリス「格段に珍しい存在ではありませんよ」

恵磨「そうなん?」

クラリス「あなたもですよ」

恵磨「え?」

亜季「恵磨殿もでありますか?」

クラリス「彼女も無自覚なのでしょう」

恵磨「待って、アタシは何か気づいてるの?」

クラリス「私には詳細はわかりません」

亜季「ふむ……なら、十時愛梨殿もホンモノでありますか」

クラリス「きっぱりと否定はしません」

恵磨「なら、使える?」

クラリス「可能性はあるかもしれません」

亜季「ふむ……」

クラリス「お手伝いしましょう。裕美さんと涼さんに彼女の護衛をお願いしてみます」

恵磨「よろしく」

クラリス「近づいて来ましたね」

亜季「何とかなるでありましょうか」

クラリス「まだ、です」

恵磨「見つけたところで、どうするのか、って話だもんね」

32

SWOW部室

優「ただいまぁー」

亜里沙「ただいまっ」

時子「あら、早いわね」

優「大学じゃ有名人だしね」

亜里沙「刑事さんとは連絡取れた?」

時子「ええ。でも、並木芽衣子は見つかってないわよ。そっちは?」

亜里沙「聞きたい?」

時子「隠す理由があるのかしら」

亜里沙「聞いてみただけ。十時愛梨ちゃんについてね」

時子「ええ。何か、怪しいところは?」

優「ぜんぜーん。S大学の1年生。秋田から上京してきて一人暮らし。大学の近くに住んでるらしいよ」

亜里沙「友人の推薦でミスコンにエントリー、見事ミスS大学に選ばれた」

時子「普段の様子は?」

優「大学には真面目に通ってるってぇ。ぼーっとしてることも多いみたいだけど」

亜里沙「のんびりした性格みたい。あと、暑がりだとか」

時子「つまるところ、何にもわからないのね」

優「うん。トラブルに巻き込まれてもないし」

亜里沙「お友達がフォローしてるみたい」

優「もちろん、霊感があるとかそういうのも無し」

時子「フム……並木芽衣子との関連もないのね」

亜里沙「そう。でも、わかったことが一つ」

時子「何かしら」

亜里沙「おそらく、巻き込まれるようになったのは年が明けてから」

優「そうみたい。その頃からふらふら~、って出かけるようになったみたい」

時子「フラフラと出かけて行ったから」

亜里沙「何かに遭遇する、と」

時子「その理由は?」

優「散歩が好きになったとか、そんな感じみたい」

時子「つまり、無意識なのね」

亜里沙「そうみたいです」

時子「並木芽衣子について教えてもムダそうね」

亜里沙「はい。意識しだしたら会えなくなるかも」

優「どうするの?」

時子「仕方ないわ。彼女には隠し通しましょう」

亜里沙「はい」

時子「ターゲットはあくまで並木芽衣子だけよ」

33

SWOW部室

久美子「ただいま」

優「おかえりー」

亜季「お帰りなさいであります」

時子「何かあったかしら?」

惠「何にもないわ」

久美子「ええ。ちゃんと夕ご飯を食べてから、帰宅」

惠「大体徒歩圏内で生活が完結しているようね」

時子「今は、どうしてるのかしら」

久美子「日が落ちて、裕美ちゃんが引き継いでくれたから」

亜季「特に問題はないようであります」

時子「そう簡単に会えるとは思ってないわ」

亜里沙「続けていきましょうね」

34

幕間

裕美「……」

涼「よう」

裕美「涼さん、どうしたの?」

涼「差し入れだ。タイヤキ、食べるか?」

裕美「本当にタイヤキ?」

涼「そっちは家に帰ってからだ。本当にタイヤキだよ」

裕美「なら、いただきます」

涼「ほら、まだ熱いぞ」

裕美「ホントだ。ありがと、涼さん」

涼「で、様子は?」

裕美「問題ないよ。誰も来てない」

涼「ま、そうだろうな」

裕美「……」

涼「どうした?」

裕美「大学生活って、楽しいのかな」

涼「裕美」

裕美「ごめん、忘れて」

涼「いいんじゃないか」

裕美「なに?」

涼「昼間の学校には通えないけどさ。夜学とかあるし」

裕美「……そうだね」

涼「そのためには、もう少し暇にならないとな」

裕美「そうだね」

涼「ここは任せる。夜明け前に交替しよう」

裕美「ねぇ、涼さん」

涼「なんだ?」

裕美「涼さんは何かしたいこと、ある?」

涼「……それはこれから考えるさ。冷めないうちにタイヤキ食べろよ」

裕美「……」

裕美「タイヤキ、美味しい……」

35

翌日

涼「お出かけ、かな」

楓「そのようですね。追いましょうか」

涼「伊集院サンに連絡してから追うとしよう」

楓「バックも持ってませんね。靴はスニーカー」

涼「ふむ……どこに行くつもりなんだろうな」

楓「付いていけばわかるでしょう」

涼「それもそうだな

36

SWOW部室

時子「キャンパスの幽霊話は?」

亜里沙「それは嘘だったわ」

久美子「泥酔した生徒の見間違い」

時子「泥酔した生徒を見間違えたのか、泥酔した生徒が、見間違えたのかしら」

亜里沙「両方。お酒の飲み過ぎはほどほどにね」

惠「亜里沙ちゃん……」

亜里沙「むぅ、気を付けますー。来月からはせんせーだもの」

惠「あら、涼さんから連絡が」

時子「十時愛梨に何かあったのかしら」

惠「お出かけしたみたい」

時子「フム。念のため、惠も行ってきなさい」

惠「ええ。行ってくるわね」

久美子「お願い」

37

とあるアパート近辺

愛梨「あれぇ、道を間違えちゃったかな」

楓「迷ってますね」

涼「自分で変な道に入って行ったから自業自得だ」

楓「それにしても、どうしてあの道に入ったんでしょう」

涼「さぁな……ストップ。隠れろ」

楓「はい。どうしましたか」

涼「あそこ」

楓「あら……」

涼「並木芽衣子だ」

楓「アパートの一室から出てきましたね」

芽衣子「大家さん、こんにちはっ!」

楓「こう見ても、普通の人ですね」

涼「あの笑顔の裏がどうなってるかわからないのが怖いところだ」

楓「十時さんは行ってしまいましたね」

涼「目的はこっちだ。追うぞ」

楓「ええ」

38

路上

芽衣子「ふんふふふーん♪」

楓「持ち物はパラソルだけですね」

涼「ケースはアパートにでも置いてきたんだろうな」

楓「それと、歩いてますね」

涼「歩く必要なんてないのにな」

楓「なら、歩いている理由は」

芽衣子「……」クルリ

涼「隠れろ」

楓「気づかれましたか……ね」

芽衣子「ふふっ♪」ニコッ

涼「確実に気づかれたな。行くぞ」

楓「ええ」

芽衣子「こんにちはっ!何かお探しですか」

涼「いつから、気づいた」

芽衣子「物騒なものは出さないでくださいね」

楓「ええ……質問に答えてくれれば」

芽衣子「この時でも外国とかは危険なので、警戒してるようにするんです。ホテルまでついてこられたら大変だもん」

涼「で、なにしてる」

芽衣子「やっぱり、アパートは張られてたかぁ」

楓「……」

芽衣子「まっ、そうじゃないと楽しくないよね!」

涼「楓」

楓「はい」

芽衣子「それじゃ、ばいばーい!」ブーン……

涼「逃げると決めたら、こっちは手も足も出ないか」

楓「一瞬でしたね。ホールを自分の付近に出して、入るまで数秒」

涼「それだけなんだがな」

楓「どうしましょうか」

涼「仕方ない。また、追跡に……」

楓「涼さん」

涼「なんだ?」

楓「後ろ」

涼「後ろ?」

愛梨「あ、こんにちは」

涼「あ、ああ、こんにちは」

愛梨「あのぉ……」

楓「なんでしょう」

愛梨「迷っちゃったみたいなんですけど、駅はどっちですか?」

涼「はぁ……」

39

某カフェ

惠「並木芽衣子と接触したの?」

涼「気づかれた」

楓「あなたも旅行の時はつけられてないか、気をつけますか?」モグモグ

惠「ええ。彼女も気にしていたのね」

涼「どうもそうらしい。変な能力があるわけじゃなさそうだな」

楓「ええ」ゴックン

惠「それにしても……」

楓「どうしました?」ムシャムシャ

惠「あの子、何に反応してるのかしら」

涼「意図的にやってるとは思えない」

楓「ええ。でも、辿り着きました」

惠「会えることはわかったわ」

涼「あっちからは何もしてこない」

惠「ルールがあるものね」

楓「ええ」フゴフゴ

涼「あくまで、呼び寄せた何かが動かない限り何もしない」

惠「なら、何かを呼び寄せる可能性はあるわ」

楓「困りましたね」

涼「そっちはアタシ達でどうにかなるさ」

惠「どうにかして、止める方法を考えないとね」

楓「店員さん、パフェを全種類お願いします」

涼「旅をするのを止めさせればいいのか」

惠「無理でしょうね」

涼「やっぱり、止めてやらないといけないか」

惠「ええ」

涼「しっかし、何があったらあんな思考回路になるんだろうな」

惠「……」

涼「おや、心当たりでもあるのか?」

惠「孤独、とかはどうかしら」

涼「そんなバカな」

楓「否定する根拠もありませんよ」

涼「そうだが、なぁ」

惠「もちろん、それだけではないと思うわ」

楓「考えたところで、説得に応じる相手ではないと思います」

惠「……そうね。もう、間に合わない」

涼「ああ」

40

根高公園

優「妖精さーん、出ておいでー」

亜季「しかし、見つかりませんな」

優「痕跡くらい見つけられると思ったのにねぇ」

亜季「むぅ。しかし、愛梨殿を追う以外には後はここくらいしかありません」

優「だから、探してるのにねぇ」

亜季「諦めたら終わりであります。もう少しだけ、頑張るであります」

優「おっけー」

41

SWOW部室

時子「並木芽衣子が見つかったのね」

惠「ええ」

亜里沙「愛梨ちゃんは松永さんと高垣さんが見てくれるのね」

久美子「会ったのがその二人で良かったかもしれない」

時子「そうね。何もせずに逃げたわけだもの」

惠「ええ……」

時子「どうしたの、惠」

惠「並木芽衣子さん、って」

久美子「どうしたの?」

惠「旅行は一人で行ってたの?」

時子「違うんじゃないかしら」

久美子「うん。たぶん、トラベラーになるまでは皆で行くことが多かったんじゃないかな」

亜里沙「刑事さんの資料によると、そうですね」

惠「……」

時子「どうしたの、惠」

惠「いえ、別に」

時子「……」

亜里沙「一人旅だけじゃ、つまらないでしょ?」

惠「ええ、とっても」

亜里沙「わかってます。だから、大丈夫ですよ」

時子「ええ。私はいるわよ」

久美子「私も」

惠「……ありがとう」

亜里沙「一人で結論を出したら、間違うこともありますよ」

久美子「何でも言ってね」

亜里沙「どんな人でも、間違います」

時子「そうよ。それくらいは言ってもいい仲でしょう」

惠「ええ、やっぱりそうよね」

久美子「なに?」

惠「少し、話をする決意がついただけ」

42

根高公園

優「来ないなら」

亜季「待つであります」

茜「はいっ!」

優「茜ちゃんは大丈夫なの?」

茜「今日は非番ですからっ!」

優「でも、だいぶ待ったけど何にも来ないねぇー」

亜季「暗くなってしまいましたな。寒くはないでありますか?」

優「ありがとー、大丈夫」

茜「半日程度の張り込みで結果が出ることの方がまれです!気長に待ちましょうっ」

優「目撃情報も夜だったもんねぇ」

亜季「もう少し待つであります」

茜「了解ですっ!そうだ、温かいものを買ってきましょう!肉まん、肉まんで良いですね!行ってきます!」

優「元気だねぇー」

亜季「ええ。警察官として、足で稼ぐを実践しているだけあるであります」

優「N高校の事件で、犯人につながる重要な目撃情報を見つけたの、茜ちゃんだもんねぇ」

亜季「ええ。私達も見つけるでありますよ」

優「うん」

43



SWOW部室

亜里沙「優ちゃんが連絡くれたけど、根高公園では今のところ何もないって」

久美子「まだ続けてるの?」

亜里沙「うん」

時子「体壊さない程度なら許すわ」

亜里沙「亜季ちゃんのテントとか双眼鏡とかあるから、楽しいらしいの」

惠「楽しんでるのね……」

時子「なら、心配はないわね」

久美子「愛梨ちゃんも自宅に帰ったし、裕美ちゃんが護衛を変わったみたい」

亜里沙「よしっ、今日は帰りましょう」

時子「そうね。休むとしましょうか」

久美子「ええ。今日はゆっくりお風呂にでも入ろうかな」

惠「私はもう少ししたら帰るわ」

時子「……そう」

惠「お疲れ様。また、明日」

亜里沙「はい、久美子ちゃん、時子ちゃん、帰りましょ♪」

久美子「うん。ばいばい、惠ちゃん」

時子「良い結論がでるといいわね。また明日、惠」

惠「ええ……」

44

根高公園

亜季「何もないでありますな」

優「ねぇ、茜ちゃん」

茜「なんですか?」

優「アヤちゃんが言ってた妖精ってどんな感じだっけ?」

茜「淡く光り、小さく、羽根があり、ふわふわした髪型だそうですっ」

亜季「人みたいなのでありますよね?」

茜「そのようですね」

優「何のために出てきたんだろ?」

茜「大きな白い羽根を持つ天使がいるとか、そんなことも言っていました」

亜季「それは」

優「それは別の話だよね?」

茜「そうですかっ、無関係でした!」

亜季「しかし、何のために妖精なんて連れてきたのでありましょうか」

優「深い理由なんてないと思うんだよねぇ」

茜「複雑の気持ちはわかりません!だからっ」

亜季「だから?」

茜「話してもらうしかないんですっ」

優「茜ちゃんは真っ直ぐでいいなぁ♪どことなく犬っぽいし、なでなで☆」

茜「わわわ、頭を撫でないでくださいっ!」

亜季「裕美殿からメールが入ってるであります」

優「どうしたの?」

亜季「護衛を交替したようであります」

優「今日は何もなければいいけどねぇ」

亜季「そうでありますなぁ」

45

SWOW部室

惠「周子さん」

塩見周子「なに、めぐみん?」

塩見周子
狐憑きの被害者。享年19歳。芳乃により惠の守護霊として現世に留まる。

惠「話があるの」

周子「大体言いたいことはわかるよー。だって、守護霊だし」

惠「それじゃあ」

周子「答えはノー」

惠「言うと思ったわ」

周子「離れる理由なんてないしさ。それに私だって、もう少しここに留まってたいから」

惠「なら、私の意思で周子さんを拒絶することもできるはずよ」

周子「めぐみん」

惠「なにかしら」

周子「気にしてくれるの、わかるよ」

惠「……」

周子「めぐみん、優しいもんね」

惠「優しくなんて、ないわ」

周子「ううん。めぐみんさ、自分に霊感あるって知ってた?」

惠「知らなかったわ。あの時に初めて自覚したわ。これでもかと」

周子「それじゃ、なんで霊感があるかわかる?」

惠「いいえ。理由があるの?」

周子「そー。めぐみん、許容力があるんだよ」

惠「どういうこと?」

周子「合理的に考えて、あ、これ理屈じゃ判断できないことだ、って頭が切り替わるの」

惠「そうなのかしら」

周子「無意識だし、わからないよねー」

惠「そう……」

周子「大丈夫だよ、めぐみん」

惠「何が?」

周子「勉強とか研究とか、めぐみんに向いてる。目の前のこと、しっかり見てさ。何にでも誠実だもん」

惠「褒められてる?」

周子「貶す必要ないでしょー?」

惠「それも、そうね」

周子「……ありがとう、めぐみん」

惠「何か、私がしたかしら」

周子「狐憑きも、アタシも見つけてくれた」

惠「……」

周子「家にも帰れたし、お別れも言えた」

惠「それに、もう少しだけ現世を楽しめた」

周子「……」

惠「私はもう大丈夫よ」

周子「いつだって、めぐみんは大丈夫だったよ」

惠「だから、周子さんも次へ行って」

周子「まったく、幽霊にまで気遣う必要ないのに」

惠「お願い」

周子「……わかった。でも、期日は決めさせて」

惠「ええ」

周子「3月19日。大学の卒業式は見せて」

惠「どうして?」

周子「アタシ、出れなかったからさー」

惠「……わかったわ」

周子「めぐみん」

惠「なに?」

周子「ウチの和菓子さ、たまには食べに来てね」

惠「ええ……約束するわ」

46

深夜

根高公園

茜「み、見てくださいっ」

優「亜季ちゃん、見て!」

亜季「どうしたでありま、おお!」

茜「妖精ですっ、写真、写真を」カシャカシャ

優「アッキーよりちょっと小さいくらいかなぁ」

亜季「そういえば、アッキーは大丈夫でありますか?」

優「実家に預けてるからぁ、接待されてるの」

亜季「心配無用でしたな。ふむ、それにしても」

茜「ウワサ通りですね。不思議です……」

優「一匹?」

亜季「そうでありますな」

茜「何か運んでいるようですね、なにでしょう?」

亜季「あれは……」

優「えっ、亜季ちゃん、双眼鏡貸してぇ」

亜季「どうぞ」

優「ありがと……うん、やっぱり」

茜「何かわかりましたか?」

優「ホールだよ、あれ……」

亜季「なんと」

チャチャッチャチャララー……

亜季「裕美殿、どうしたでありますか?こっちは今手が離せないで……へ?」

優「どうしたの?」

亜季「愛梨殿が外出したでありますか?」

優「ええ!?」

亜季「わかりました。日野巡査に頼んでやんわり帰らせるであります」

茜「話はわかりましたっ!行ってきますっ!」

亜季「裕美殿は気づかれないように、護衛を。健闘を祈るであります」

優「ホールが出てきたタイミングと」

亜季「愛梨殿が出たタイミングが一致したでありますな」

優「どうして?」

亜季「わかりませんが……偶然ではないような」

優「妖精さん、どこまで行く気なんだろ?」

亜季「距離を取りつつ追跡するであります」

優「うん」

47

路上

茜「こんばんはっ!」

愛梨「あ、警察官さん、こんばんは」

茜「こんな夜遅くに出かけると危ないですよ」

愛梨「ちょっと目が覚めちゃってぇ、コンビニでも行こうかと」

茜「こっちは根高公園くらいしかありませんよ?」

愛梨「あれぇ?」

茜「寝ぼけて道を間違えたんですねっ!」

愛梨「そうかもしれないです」

茜「お送りしますので、帰りましょう!」

愛梨「はい~」

48

根高公園

優「林の奥まで行ったねぇ」

亜季「止まった。ホールから手を離したでありますな」

優「開いてる?」

亜季「開いてるであります」

優「え……?」

亜季「し、静かに……」

優「うそぉ……」

亜季「いぃ……」

速水奏「見慣れたわね……ここも」

速水奏
堕天使。名前はこの世界の両親がつけたもの。根高公園で起こった神隠し事件の犯人。芽衣子により、この世よりも地獄へと堕とされていたはずだが……。

奏「ふふっ、あの女……許してあげない、から。わざわざ引き落とした先の世界にホールを置いておくなんて、趣味が悪い……」

奏「そこの妖精さん?私が戻ったらこれを隠しなさい、いい?」

優「……」

亜季「……」

優「はー、ホールに戻って行った……」

亜季「心臓に悪いであります……」

優「ど、どうしよー!?」

亜季「参ったでありますなぁ……」

優「他のなんか、可愛いもんだよぉ……」

亜季「明確に力を持っておりますからな」

優「どーしよ、どーしよ」

亜季「優殿、まずは」

優「まずは?」

亜季「深呼吸であります。すーはー」

優「すー、はー」

亜季「よし……次は」

優「よし……シスターに相談かな」

亜季「そうするであります」

優「深夜だけど、大丈夫かなぁ」

亜季「非常時であります。許していただくであります」

49

出渕教会・1階

クラリス「こんな深夜にどういたしましたか?」

涼「おや」

亜季「こんな時間に起きていたでありますか」

涼「野暮用でな。何か、あったのか?」

クラリス「裕美さんから連絡はありませんが」

優「聞いて」

涼「穏やかじゃないな」

優「根高公園に、堕天使が戻ってきたの」

クラリス「ふむ……詳しい状況をお聞かせください」

涼「どうやって戻ってきた?」

優「ホール、だと思う」

クラリス「トラベラーが呼び寄せたのでしょうか」

亜季「どうやら、用意してあったようであります」

涼「どこに?」

優「連れて行った世界に。戻れるように置いておいた……」

涼「悪質だな」

クラリス「ホールはどこに?」

亜季「ウワサになっていた妖精が隠しておりましたが、場所はわかるであります」

涼「シスター、壊しちまうか?」

クラリス「一案としてはありですね。ですが」

優「早くそうした方がいいよぉ」

亜季「何か、考えがあるでありますか」

クラリス「戻ってきた以上は目的があるでしょう」

涼「今回は明確だな」

優「復讐……?」

クラリス「ええ。その相手もトラベラーでしょう」

亜季「動きを見るでありますか?」

クラリス「おそらくですが、すぐに動くでしょう」

涼「なんでだ?」

クラリス「自分で蒔いた種です。回収に来るでしょう」

亜季「つまり……」

クラリス「勝手に来ますよ、トラベラーは」

涼「……」

50

翌朝

出渕教会・地下2階

裕美「そうなんだ……」

優「……」

亜季「十時愛梨殿は問題ないでありますか」

裕美「大丈夫。警察官さんと一緒にプリン買ってきてたよ」

優「よかった」

裕美「でも、堕天使は問題だよね」

優「うん……どうしたらいいかな」

裕美「ホールを壊すのがいいと思うけど」

亜季「結局でありますが」

裕美「うん。クラリスさんも言ってたけど、それでは解決しない」

優「作れるもんね、いくらでも」

裕美「うん。だから、何とかしないといけないのは」

優「トラベラーの方」

亜季「結局はそうなのでありますな」

裕美「うん。ふわぁ……」

亜季「お疲れ様であります、裕美殿」

優「お休み、裕美ちゃん」

51

出渕教会・1階

亜季「すっかり明るいでありますなぁ」

優「ねぇ、亜季ちゃん」

亜季「なんでありますか?」

優「裕美ちゃん、いつもあそこで寝てるの?」

亜季「……はい」

優「思ったより、吸血鬼なんだね」

亜季「ええ……日の光は御法度でありますから」

優「学校も行けてないよね」

亜季「……はい」

優「でも、大丈夫だよね?」

亜季「もちろん」

優「ご飯でも食べて帰ろうかっ」

亜季「ええ。牛丼でも食べて帰るであります」

優「ゆっくり寝ないとねぇ」

亜季「今夜、動くと思うであります」

52

SWOW部室

時子「昨晩の顛末は以上よ」

久美子「だから、優ちゃんと亜季ちゃんはそこで仲良く寝てるのね……」

優「むにゃむにゃ……あっきぃ……」

亜季「zzz……」

惠「でも、なんでわざわざ戻る道を作っていたのかしら」

亜里沙「その方が楽しいから」

久美子「それ……だけ?」

時子「そうでしょうね」

亜里沙「異世界のものが触れ合うこと、それによる混乱が目的だもの」

時子「わざわざ、押し込めておく必要なんてないのよ」

惠「……」

久美子「いつ来ると思う?」

亜里沙「何もかも見飽きて、退屈な彼女なら」

時子「すぐに動くでしょうね」

惠「動かないのはむしろ、堕天使さんのほうね」

亜里沙「人目のつかない時を狙うでしょうね」

久美子「羽根を人間なんかに見られるのはイヤとか、言ってたのよね……」

惠「だから、夜だと思うわ」

時子「場所も特定できてる」

亜里沙「根高公園」

惠「で、問題は」

時子「どうにして止めるか、ね」

亜里沙「なんとかしましょうか?」

時子「出来るの?」

亜里沙「私はなにもできないけれど、条件は揃ってるもの」

53



出渕教会・1階

クラリス「それでは、参りましょうか」

楓「はい」

小梅「……うん」

芳乃「いってらっしゃいませー。ご無事でー」

美由紀「いってらっしゃーい」

裕美「いこっか」

涼「ああ。シスター、お手を」

クラリス「ありがとうございます。ここでの仕事も終わりにしてしまいましょう」

54

深夜

根高公園

奏「さて、どこに……」

芽衣子「こんばんはっ!」

奏「探す必要もなかった、ようね」

芽衣子「どうでした?楽しかったですか?」

奏「ええ、とっても」

芽衣子「良かったですっ!羽根も真っ白に戻りましたね!」

奏「そうね。感謝しないとかしら」

芽衣子「うふふ。お父さんとお母さんにあいさつに行きました?」

奏「いいえ、そんな用事はないわ」

芽衣子「親不孝者ですねー。心配してるんだから、行ってあげないと!」

奏「また会えてうれしいわ」

芽衣子「あなたがここでしたこと、全て話してあげたら、とーってもショックを受けてたんですよ?行ってあげないと、ね」

奏「……ゲス」

芽衣子「あははっ。それなら、どーします?」

奏「殺してあげる」

芽衣子「出来るなら、どうぞ。私はあなたを絶対に殺しませんから」

奏「このっ……」

ブン!

芽衣子「あはっ♪私はこっちですよー♪」

奏「逃げるだけなら、あなたが有利ね」

芽衣子「はい!ほら、がんばって捕まえないと、こうですよ?」

奏「……!」

芽衣子「どうしたの?」

奏「驚かせないで……新しく開いただけじゃない」

芽衣子「そうですよ?私はそれ以外なーんにもできないって、言ってるじゃないですか」

奏「こんな、人間ごとき、に」

芽衣子「ふふ、良い表情です……こんな表情出来るんですねっ!」

愛梨「あれ?」

芽衣子「えっ?」

奏「は?」

愛梨「あの……映画の撮影か何かですかぁ?」

芽衣子「……」

奏「……」

心「ちょっと待ってぇ、待てよ☆」

恵磨「アタシ達!」

心「この世に蔓延る悪の心を!」

恵磨「打ち砕くため!」

心「戦う愛と正義の魔法使い!」

恵磨「只今!」

心「見参!」

愛梨「おおー」

奏「なに……コスプレ?」

芽衣子「あはは、凄いな!」パチパチ

恵磨「というわけで!」

心「一発殴らせろ☆」

恵磨「せーのっ!」

心「はぁとパンチ!今回はツイン!」

55

根高公園

心「トラベラーは!?」

恵磨「逃げられた!思ったより、ホールを作って逃げるまでが速い!」

心「しっかたないなぁ、もっと考えないと!」

奏「不意打ちだったわ……何者よ」

心「魔法使いだぞ☆」

奏「……こんな世界にもそんなものがいるのね」

芽衣子「ねー」

恵磨「いっ!?」

芽衣子「イベント会場の時、アクションが凄かったんですよっ!」

心「せーの!」

芽衣子「おっと」

芽衣子「危ないなぁ」

恵磨「スピードじゃ無理か」

芽衣子「見てますから、楽しませてくださいねっ!」

奏「邪魔しないで。私の獲物よ」

心「ごめんね、それは断っちゃうよ☆」

恵磨「そう。お願い」

芽衣子「おっと、紅い目が見てる。うふふ、ばいばーい」

奏「待ちなさい」

恵磨「待つのはそっち」

奏「どうして、邪魔をするの……」

心「自分で考えてみたら?」

奏「何を……?」

恵磨「わからないんじゃ、ずっとこのまんまだよね」

心「そういうこと、ということで☆」

奏「な、何か来る」

心「恵磨ちゃん、小梅ちゃん」

恵磨「おう!」

小梅「……うん」

奏「ちっ、この世界で霊的な集合体を操る存在なんているのね」

心「言ってもわからない奴は、殴ってわからせる☆」

奏「こっちにも味方がいるの」

恵磨「妖精……かな」

心「そっちは心配無用☆行くぞっ☆」

56

根高公園

芽衣子「あらら、あっちも行動が早いなぁ」

時子「そのようね」

亜里沙「はい」

芽衣子「こっちもかぁ」

時子「質問をしていいかしら?」

芽衣子「どうぞ♪」

時子「その旅は楽しかったかしら」

芽衣子「はい?」

時子「能力は手に入れたわ。でも、楽しかったの?」

芽衣子「そうですねぇ、楽しくありませんでした!」

亜里沙「そうよね。楽しければこんなことしないもの」

芽衣子「うん。でも、今は」

時子「楽しくないでしょうね」

芽衣子「そうかもねっ!」

亜里沙「なぜか、わかるかな?」

芽衣子「なんでか、考えたこともないかなぁ」

時子「誰もいないからよ」

芽衣子「……え?」

時子「連綿とつなぐ事件を見ていたら、人間なんて代わり映えのしない生物にしか見えないわ」

芽衣子「何が、言いたいんですか」

時子「別に。寂しい人ね、としか」

芽衣子「バカにしないでください」

時子「隣にいる人間なんて全て理解できないくらい、世界は奥深いわ」

芽衣子「……」

時子「対等となる人が消えた時点で、あなたは間違ったのよ。並木芽衣子」

亜里沙「はい。その能力があなたから楽しみを奪い去ったんですよ」

芽衣子「ふふ、説得してるつもり?」

亜里沙「いいえ。勝手に言っただけです」

時子「別に。意味なんてないわよ」

芽衣子「なら、邪魔をしないでね」

時子「追えと言ったのは貴方よ。だから」

亜里沙「終わりにしちゃいましょうか」

芽衣子「できるなら、ねっ!」

ブン……

亜里沙「いなくなりましたね」

時子「これで固執するわ。言いたいことも言ってせいせいしたわ」

亜里沙「はい。それじゃ、安全な所まで逃げましょうか」

時子「ええ。亜里沙」

57

根高公園

愛梨「あのぉ、どうしたんですか?」

芽衣子「別に、なんでもないよ」

愛梨「元気なさそうですね」

芽衣子「そう?元気なだけが取り柄なのに」

愛梨「落ち込むことはたまにはありますよ。そうだ、温かい飲み物を買ってきましょうか?」

芽衣子「うんっ!ありがとう!」

芽衣子「……」

涼「コーヒーでも飲むか、と言いたいところだけど」

芽衣子「買ってきてくれるからいいよー」

涼「そうか」

芽衣子「死神の仕事、楽しい?」

涼「いいや、全然」

芽衣子「契約終わったらどうなるか、教えてほしい?」ニコニコ

涼「そのうちわかるから、いいよ」

芽衣子「すぐに死んじゃうよ。もとから生きてないもんね」

涼「もとよりそのつもりだから、問題ない」

芽衣子「嘘つきだねー」

涼「いつだって、嘘つきだよ。もう、正直に生きられっかよ」

芽衣子「ふふふ」

涼「だから。アンタも終わりにしろ」

芽衣子「イヤだよ」

涼「いつまでのその旅を続けても、きっと何も得られない」

芽衣子「それは続けてみないとわからない」

涼「嘘つきだな」

芽衣子「違う」

涼「どっちだっていいさ」

芽衣子「もー、怖いこと言うなぁ」

涼「死神だからさ。ここの未来が変わらないことも、見えるんだろ、アンタ」

芽衣子「怖いことは聞きたくなーい。ばいばーい」

ブン!

涼「……裕美、頼んだ」

58

根高公園・河川敷

芽衣子「なんで……そんなこと」

愛梨「あれぇ?」

裕美「うん。だから、下がって」

芽衣子「えっ?」

クラリス「光あれ」パチッ!

59

根高公園

パーン!

恵磨「雑木林が吹き飛んだね」

心「ということは、終わったかな☆」

小梅「こっちも……終わり」

奏「はぁ、はぁ……」

楓「ふむ……これは美味しいですね」ゴリゴリゴリ

心「ちょっと衣装ダメにしたけど、こっちの状態はばっちし☆」

恵磨「ついでに、あと二人いるけどどうする?」

奏「くっ……」

恵磨「正直さ。殺そうとか思ってはないんだよね」

奏「……」

恵磨「帰ったら?」

奏「え……?」

心「そうそう。それでいいんじゃない?」

奏「……」

恵磨「この世界でさ、最後に助けを求めた人の所にさ」

奏「そんなの、出来るわけ……」

心「ま、はぁと達はどっちでもいいんだどね☆」

小梅「戻る……」

恵磨「小梅ちゃん、眠くなった?帰ろっか」

楓「ふあぁ、私も眠くなりました」ゴックン

心「よし、帰ってあったかいものでも飲むぞ☆」

奏「……」

奏「置いてかれた……もう、戻れない」

奏「戻ったら……許してくれるの、かな」

60

根高公園

時子「随分と派手に吹き飛ばしたわね」

亜里沙「そうですねー」

時子「どうせ再開発するから誰も気にしないわ」

亜里沙「ニュースくらいにはなりそうだけどね」

裕美「あ、時子さん、亜里沙さん」

クラリス「ご協力ありがとうございました」

時子「何もしてないわ」

亜里沙「したのは、彼女ですよね」

愛梨「私、ですか?」

裕美「ううん。何もしてないよ」

愛梨「急に空が光って、あれがミステリーサークルかなぁ?」

時子「そうなんじゃない」

亜里沙「帰りましょうか。時子ちゃん、先に行ってますね」

時子「ええ。さよなら、裕美、愛梨」

裕美「うん。今度は、遊びに来てね」

時子「ええ」

クラリス「……」

時子「……」

時子「終わったわね。あっけないものだったわ」

クラリス「人の意識してから動くまでは、瞼を開けるのと光が目に届く速度には勝てませんから」

時子「あとは、場所だけわかればいいだけ」

クラリス「ええ。ピースは十分でした」

時子「終わったわね」

クラリス「気持ちごと葬りました。もう、どこにもトラベラーはいません」

時子「ええ」

クラリス「私の仕事もこれで終わりです。戻るとします」

時子「どこにかしら」

クラリス「神戸ですよ。我が家に帰ろうかと」

時子「そう」

クラリス「孤独に飲まれていませんか」

時子「いいえ。なぜなら、永久の別れでも何でもないもの。それに」

クラリス「それに?」

時子「私は心まで離れたりしないわ」

クラリス「良い友人をお持ちのようです」

時子「そうね。それだけは、幸運だと思うわ」

クラリス「ええ。貴方がたのこれからに『光』あれ」

61

3月19日・S大学学位授与式当日

SWOW部室

時子「ハァ……」

惠「あら、せっかく門出の日なのに、ため息なんてついてどうしたの?」

時子「ちょっと逃げてきただけよ」

惠「なにから?」

時子「あそこ」

優「……あはっ」

椿「……ふふ」

アヤ「なぁ、どうして入らないんだ……?」

惠「優ちゃんと裁縫部ご一行ね」

時子「なぜか袴を着せようとするのよ」

惠「いいじゃない。いつものスーツとパンツじゃなくても」

時子「惠に言われたくないわよ。普段着じゃない」

惠「学位だけ貰ってきただけ。明日からもいるもの」

恵磨「やっほー」

時子「あら、恵磨」

惠「やっぱりスカートよね」

恵磨「優ちゃんは何してんの?」

時子「さあね」

優「恵磨ちゃん、聞いてよ!」

恵磨「わかった。時子ちゃんに袴を着せればいいんだね」

時子「ツーカー過ぎるわよ。内通してるじゃない」

恵磨「あはは!そういえば、優ちゃん、李衣菜ちゃんが呼んでたよ」

優「そーだ、忘れてた!ステージで何か歌うんだよね、挨拶してくるねぇー♪」

恵磨「いってらっしゃーい」

椿「……」

アヤ「……」

時子「ほら、貴方達も諦めて帰りなさい」

椿「残念です……」

アヤ「最初からおかしいと思うんだけどなぁ……」

惠「帰って行ったわね」

恵磨「着ればいいのに」

時子「着てから言いなさい、恵磨」

恵磨「アタシのキャラじゃないっしょ!」

時子「私のキャラクターでもないわよ」

亜季「大和亜季、ただいま参上であります!」

時子「また、普段着の人間が来たわ」

惠「亜季ちゃん、つかぬ事聞くけど」

亜季「寝坊したであります!」

時子「行ってすらいないのね……」

亜季「後で事務に取りに行であります。4月になってから」

恵磨「うん、それがいいね」ニヤニヤ

惠「ええ、それがいいわね」

時子「……手間かけさせるんじゃないわよ」

亜季「亜里沙殿と久美子殿はどこでありますか?優殿は外でお会いしたでありますが」

時子「窓から見えるわよ」

恵磨「お、ほんと?おお、久美子ちゃん、さすが」

亜季「おや。久美子殿と一緒にいるのはどなたでありますか?」

惠「お母さんよ。似てるわね」

恵磨「なんて、ずるい。生まれた時点で運命は決まってたんだ!」

優「そんなことないってぇ。恵磨ちゃんも可愛いよ♪」

亜季「わっ、急に出てこないで欲しいであります」

優「あ、久美子ちゃーん☆」フリフリ

恵磨「気づいたね」

時子「後で来るって言ってたわ」

恵磨「挨拶は終わったの?」

優「うん。次だって、言ってたよ」

亜里沙「みんなー」

時子「あら、亜里沙」

亜里沙「どうかな?優ちゃんがセットしてくれたんだけど」

亜季「実に華やか、めでたい、可愛いであります」

亜里沙「ありがと♪」

久美子「みんな、いる?」

時子「いるわよ。お母さんはいいのかしら?」

久美子「うん。夕飯には帰ってきなさい、って」

優「うんうん、やっぱり綺麗だねぇ」

惠「ええ」

久美子「そうそう、椿さんを呼んできたのだけど」

椿「お久しぶりです」

時子「さっき、ずっといたじゃない」

久美子「そうなの?」

椿「ふふ」

久美子「そうなんだ。ま、いっか」

椿「お写真、いかがですか?」

優「撮ってくれるの?」

椿「はい。ポラロイドカメラも用意してますよ」

亜季「しまった。普段着であります」

惠「いいじゃない。私達らしいわ」

椿「ちょうどよく袴のスペアが……」

時子「却下」

椿「残念。さ、並んでくださいな♪」

亜里沙「はーい、皆ならびましょうねー」

恵磨「久美子ちゃん、真ん中行きなよー」

久美子「いいわよ。恥ずかしい」

亜里沙「ほらほら♪」

久美子「わ、わかったから引っ張らないで亜里沙ちゃん!」

優「うふふ♪」

惠「優ちゃんは、袴は着ないの?」

優「だってぇ、胸つぶすの大変だしぃ」

亜里沙「優ちゃん」

優「はいっ、並ぶよぉー」

時子「部室が殺風景で悪いけど」

亜季「今日で引き渡しでありますから」

恵磨「いいじゃん。旅立ちっぽいよ」

時子「そうね」

椿「はーい、みなさん笑ってくださーい。はい、チーズ♪」

62

SWOW部室

優「李衣菜ちゃんのバンド始まったよぉー」

惠「特等席ね」

冴島清美「わたしだけの特権!」

多田李衣菜「特権!」

清美「特権!」

涼宮星花「特権!」

ライラ「特権!」

清美「特権です!」

多田李衣菜
S大学付属高校の生徒。フォー・ピースではボーカル兼ギター。

冴島清美
S大学付属高校の生徒。フォー・ピースではギター。この曲は彼女のメインボーカル。

ライラ
S大学付属高校の生徒。ドラムス担当。

涼宮星花
S大学の学生。クラシック研究会所属。バイオリンからベースへと楽器を持ちかえた。

時子「がんばってるじゃない」

亜季「そうでありますな」

久美子「上達してるね」

恵磨「やっぱり、好きなことってさ、何をしても楽しいじゃん」

優「ねー」

時子「そうよね、優」

優「なにぃ?」

時子「好きなことを好きなだけやりなさい」

優「言われなくてもそうする。ありがと、時子ちゃん」

恵磨「そうそう。アタシもそうする」

時子「恵磨も自分らしくいなさいね」

恵磨「それには自信があるよ!」

亜季「それはまったくもって心配ないでありますな」

時子「亜季はどうするの、これから」

亜季「いつも通りであります。いろんな人と話して、遊んで、一緒にご飯でも食べるであります」

惠「これからもよろしくね、亜季ちゃん」

亜季「こちらこそ、惠」

亜里沙「えー、二人だけ?」

優「ずるいー。仲間に入れてよー」

惠「もちろんよ」

亜里沙「良かった。たまには、呼んでね?」

恵磨「新幹線でも何でも使ってきなよ!」

亜里沙「ふふっ」

時子「亜里沙、立派な先生になるのよ」

亜里沙「うん。早く、先輩を追い越さなくちゃ♪」

時子「ええ。頑張りなさい」

惠「なれるわ、絶対に」

時子「惠も……」

惠「なに?」

時子「惠は大丈夫よ。心配いらないわ」

惠「……ありがとう」

清美「絶対特権主張します!」

李衣菜、星花、ライラ「ますっ!」

優「おおー」パチパチパチ

久美子「私達もバンドでもすれば良かったかしら?」

時子「まとまる未来が見えないわ」

亜季「うむ、好き勝手でありますからな」

優「誰がぁ?」

惠「私じゃないわ」

恵磨「まさか、アタシじゃないでしょ」

亜里沙「うーん、ピアニカとかピアノなら、あとカスタネット!」

久美子「うん、やらなくて良かった」

時子「ええ」

久美子「でも、楽しかったわ」

優「あたしもー☆」

時子「久美子」

久美子「なに?」

時子「いつでも貴方は貴方らしくて、憧れてたわ。これからも私の自慢でいなさい」

久美子「ありがと。それじゃあ」

亜里沙「久美子ちゃんから、代表さんへ一言。お願いね」

久美子「うん。時子ちゃん」

時子「なによ、改まって」

久美子「来月から働き始めるけど、きっとそれが時子ちゃんに答えをくれると思うの」

惠「……」

久美子「自分で自分を生きられるようになったら、きっとご両親とも仲良くできると思う」

時子「そう、かしら」

恵磨「うん、たぶん、アタシが保障する」

時子「あてにならないわねぇ……」

久美子「ずっと友達でいようね、なんて言わないから」

時子「ええ。いってらっしゃい。私は、絶対に貴方達を止めたりしないわ」

久美子「だから、勝手に押しかけるから」

亜里沙「ええ。平凡な言葉よりも行動が大切♪」

恵磨「うんうん、嫌でも連れてくから」

優「ねぇー☆今度はカットもさせてねぇ♪」

亜季「サバゲーに興味はあるでありますか?」

惠「とりあえず、仕事ぶりは見学に行くわ」

時子「貴方達、ねぇ……」

久美子「時子ちゃん、大学生活楽しかった?」

時子「ええ」

亜里沙「なら、素敵な大学職員さんになりましょう、約束ね♪」

時子「ありがとう、亜里沙。出来る限りやってみるわ」

亜季「しかし、本当に終わりでありますなぁ」

時子「そうね。明日からの卒業旅行が終わったら、この楽しい旅も終わりよ」

優「うん」

惠「でも、終わりじゃないわ」

恵磨「楽しいのは、これから」

時子「ええ。少しだけ寂しいけれど」

優「あっ、めずらしー。寂しいなんて言うなんて、かわいいー♪」

時子「優はいつでも優ねぇ……」

久美子「私もちょっと寂しい」

恵磨「アタシも」

時子「でも、行きなさい。それでいいはずよ」

李衣菜「みなさーん!なつきち、瞳子さん、それと、えっと、お世話になった人達、聞いてますか!?」

時子「あら」

亜季「服部瞳子殿の名前を出したでありますな」

優「李衣菜ちゃん、卒業式のために用意した歌があるって言ってたよ」

久美子「なにかしら」

李衣菜「あっ!優さん、亜里沙さん達も聞いてきださーい!」

亜里沙「はーい♪」

李衣菜「アタシ、伝えられなくて後悔した気持ちがあるんです」

時子「……」

李衣菜「今ここで伝えます。皆が持たせてくれた、歌で伝えます!」

惠「……」

李衣菜「作っていくうちに、色々な人への気持ちが重なっちゃって、まとまってないかもしれないけど……」

優「ふふっ……」

李衣菜「心をこめて歌います!聞いてください、曲は、Twilight Sky!」

EDテーマ

Twilight Sky

歌 フォー・ピース

63

エピローグ

国際線出発ロビー

……国際空港をご利用いただき……

亜里沙「優ちゃん、起きてー」

優「なぁにー?」

時子「朝焼けが綺麗よ」

亜季「ふぁぁぁ、本当でありますな」

惠「綺麗な瑠璃色とオレンジね」

恵磨「やったら朝早いフライトだけど、価値があったかもね!」

久美子「うーん、眠いわ……」

ピンポンパンポーン!

亜里沙「そろそろ出発時間かな……あら?」

財前時子様以下7名様、至急搭乗口までお越しください。繰り返します……

時子「呼び出されてないかしら、今何時かしら?」

恵磨「しまった!もう出発10分前じゃん!」

久美子「誰か気づかなかったの……?」

惠「……ごめんなさい、旅慣れてるつもりだったけれど」

時子「別に責めてないわよ。今やるべきことは」

亜里沙「搭乗口に急ぐこと!亜里沙せんせーが一番乗り!」

亜季「亜里沙殿に先手を取られたであります、続くであります!」

優「待ってよぉー!アッキーだけ先に行かせちゃうのはダメだからぁ、乗り過ごせないのー!」

恵磨「よっし、行くよ!」

久美子「うんっ、それ!」

時子「やれやれ……惠も行きましょう」

惠「……うん、行ってらっしゃい。ばいばい」

時子「お別れは出来たかしら」

惠「ええ。さ、行きましょうか」

久美子「ほらー、二人とも遅れちゃうよ!」

時子「まったく、いつでも落ち着かないしうえに騒がしいわね」

惠「おまけにトラブルには事欠かないわ」

時子「本当に。楽しかったわ」

惠「楽しい旅行はこれからよ」

時子「わかってるわ」

惠「行かないとね、完全に置いて行かれたわ」

時子「貴方達、待ちなさい!代表を置いていくんじゃないわよ!」


製作・ブーブーエス

オマケ

第4話放映後くらいの一幕

芽衣子「プロデューサー!」

PaP「おっ、芽衣子ちゃん、どうしたの?そんなに慌てて」

芽衣子「プロデューサーのあほ!ばか!おたんこなす!ひんそーでちんちくりん!穴掘って埋めてやる!」

PaP「これでもかの罵声はやめてくれ。興奮してしまう」

芽衣子「え……」

PaP「冗談だから。そんなマジにひかないでくれ。で、どうしたの?」

芽衣子「これ、読んで」

PaP「SWOWは名目上旅行サークル、なんだあのドラマの記事じゃん」

芽衣子「どうして?」

PaP「どうして?」

芽衣子「大学の旅行サークルなら、私が出てもいい、というかぴったり!」

PaP「まぁ、確かに」

芽衣子「22歳はダメなんですか?わかりました、ロリコンなんだ!」

PaP「意味がわからなくなってるぞ。それなら、美里ちゃんだって違うし」

芽衣子「美里ちゃんは千秋ちゃんの親友役でしょ、そっちの方がいいもん。だまされないよっ!」

PaP「騙そうと思ってないんだけど。よし、わかった」

芽衣子「本当にわかってるー?」

PaP「わかってる。任せとけ、大役が残ってるんだ」

クランクアップ後

芽衣子「プロデューサーのあほっ!」

PaP「割とノリノリで撮影し終わったのに、どうして今更苦情を言いにくるんだ!」

芽衣子「謝りたいなら、旅行に連れて行って!」

おしまい

資料・1

全話リスト

第1話
松山久美子「7人が行く・吸血令嬢」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1403002283

第2話
伊集院惠「7人が行く・狐憑き」
伊集院惠「7人が行く・狐憑き」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1406552681/)

第3話
持田亜里沙「7人が行く・真鍋先生の罪」
持田亜里沙「7人が行く・真鍋先生の罪」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407499766/)

第4話
大和亜季「7人が行く・ハッピーエンド」
大和亜季「7人が行く・ハッピーエンド」 - SSまとめ速報
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第5話
太田優「7人が行く・公園の花の満開の下」
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第6話
仙崎恵磨「7人が行く・偶像怪奇夜話」
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第7話
財前時子「7人が行く・トマル聖ヤ」
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最終話
並木芽衣子「7人が行く・この旅の終わりに」(終)
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仮のタイトルは、松山久美子「7人が行く・シンデレラの傷痕」。
とときんがひたすら芽衣子が起こした事件の犯人と疑われる話だった。傷痕成分がなくなったので改題。

個人的には、第4話オススメ。立てたプロットをガン無視で筆任せに書いたとは思えない纏まり方。
前半の中学校のシーンは、本来は亜季ではなく別の人がいるべきところだったりする。
ちなみに、犯人がわかる最速のヒントは、のあさんに対する呼び方。

資料・2

7人が行く・キャストリスト

SWOW

1・26・太田優

2・36・持田亜里沙

3・25・伊集院惠

4・6・大和亜季

5・10・仙崎恵磨

6・24・財前時子

7・7・松山久美子

第1話・松山久美子「7人が行く・吸血令嬢」

8・65・黒川千秋・クラシック研究会代表

9・66・向井拓海・最初の被害者となった高校生

10・67・瀬名詩織・S大学クラシック研究会所属

11・68・相葉夕美・ガーデンプランニング研究会所属

12・69・江上椿・裁縫部所属

13・70・日下部若葉・裁縫部所属

14・71・涼宮星花・クラシック研究会所属

15・72・間中美里・クラシック研究会副代表

16・73・梅木音葉・クラシック研究会所属、久美子の知人

17・43・柳清良・S大学付属病院の看護師

18・74・高垣楓・謎の美女

第2話・伊集院惠「7人が行く・狐憑き」

19・75・青木麗・刑事課警部、長女
20・76・青木聖・刑事課警部捕
21・77・青木明・刑事課巡査部長
22・78・青木慶・刑事課巡査

23・79・日野茜・交番勤務巡査
24・80・氏家むつみ・交番勤務巡査

25・81・大石泉・N高校1-B
26・82・土屋亜子・N高校1-B
27・83・村松さくら・N高校1-B

28・84・綾瀬穂乃香・N高校の3年生
29・85・五十嵐響子・N高校1-B
30・86・北川真尋・N高校の3年生
31・87・喜多見柚・N高校1-A
32・88・栗原ネネ・N高校1-A
33・89・小早川紗枝・N高校1-B
34・3・佐久間まゆ・N高校2-B
35・90・佐城雪美・京都の事件の被害者
36・91・杉坂海・N高校3-A
37・9・相馬夏美・京都の事件の被害者
38・92・中野有香・近所の大学生
39・93・速水奏・N高校の学生、視聴覚室のお姫様
40・94・松尾千鶴・N高校の1年生、書道同好会所属
41・95・水本ゆかり・N高校1-B
42・96・三船美優・N高校1-B担任教師
43・97・桃井あずき・N高校1-A
44・5・和久井留美・N高校の教師

45・98・楊菲菲・楊さんの娘

46・99・白坂小梅・涼が連れてきた少女

47・100・依田芳乃・和装の少女

48・101・松永涼・ロックな格好をした女性

49・102・塩見周子・肌の白い女

第3話・持田亜里沙「7人が行く・真鍋先生の罪」

50・103・真鍋いつき・T小学校の教諭

51・104・ケイト・地元国立大の留学生、放課後授業の講師

52・105・龍崎薫・T小学校の児童、事件の被害者

53・106・福山舞・T小学校の児童

54・107・遊佐こずえ・T小学校の児童

55・108・佐々木千枝・T小学校の児童

56・109・横山千佳・T小学校の児童

57・110・メアリー・コクラン・T小学校の児童

58・111・市原仁奈・T小学校の児童

59・112・赤城みりあ・T小学校の児童

第4話・大和亜季「7人が行く・ハッピーエンド」

60・113・関裕美・奏陽泰校の2年生

61・114・輿水幸子・奏陽泰校の2年生

63・115・池袋晶葉・奏陽泰校の2年生

62・116・森久保乃々・奏陽泰校の2年生

64・117・二宮飛鳥・奏陽泰校の2年生

65・118・浅利七海・奏陽泰校の2年生

66・119・神崎蘭子・奏陽泰校の2年生

67・120・矢口美羽・奏陽泰校の2年生

68・121・三好紗南・奏陽泰校の2年生

69・122・白菊ほたる・奏陽泰校の1年生

70・123・椎名法子・奏陽泰校の1年生

71・124・大沼くるみ・奏陽泰校の1年生

72・125・乙倉悠貴・奏陽泰校の1年生

73・126・小関麗奈・奏陽泰校の1年生

74・127・首藤葵・奏陽泰校の1年生

75・128・村上巴・奏陽泰校の1年生、巴組長

76・129・神谷奈緒・高校生、最初の被害者

77・130・道明寺歌鈴・神社の娘、2人目の被害者

78・131・松原早耶・S大学近くに住む高校生

79・17・東郷あい・刑事課警部

80・14・藤原肇・刑事課巡査、あいの部下

81・132・西島櫂・H大学の学生、亜季のバイト仲間

82・133・斉藤洋子・S大学付属病院の警備員

83・1・高峯のあ・奏陽泰校の職員

84・50・北条加蓮・S大学病院内科に入院中の患者

85・44・クラリス・シスター

86・134・柳瀬美由紀・クラリスの助手

87・135・三浦あずさ・765プロ所属のアイドル

第5話・太田優「7人が行く・公園の花の満開の下」

88・136・多田李衣菜・S大学付属高校の生徒

89・41・服部瞳子・公園の美女

90・137・水木聖來・わんこのお姉さん

91・138・大原みちる・パン屋の娘さん

92・139・上条春菜・優の公園仲間のメガネっ娘

93・140・有浦柑奈・公園の流し歌手

94・141・西園寺琴歌・公園のお嬢様

93・142・結城晴・サッカー好きな少女

94・39・相川千夏・優の公園仲間

95・143・大槻唯・千夏のお友達

96・144・木村夏樹・りーなの音楽仲間

97・145・冴島清美・りーなのクラスの委員長

98・146・ライラ・優の公園仲間

99・147・我那覇響・765プロのアイドル

100・32・並木芽衣子・旅人

第6話・仙崎恵磨「7人が行く・偶像怪奇夜話」

101・148・早坂美玲・CGプロのアイドル

102・149・星輝子・CGプロのアイドル、恵磨一押し

103・150・諸星きらり・CGプロが誇る人気アイドル

104・151・双葉杏・CGプロの妖精

105・152・三村かな子・CGプロのアイドル

106・153・小日向美穂・CGプロのアイドル

107・30・安部菜々・CGプロのアイドル

108・154・島村卯月・CGプロのアイドル

109・58・渋谷凛・CGプロのアイドル

110・155・本田未央・CGプロのアイドル

111・156・榊原里美・CGプロのアイドル

112・157・城ヶ崎美嘉・CGプロのアイドル

113・158・城ヶ崎莉嘉・CGプロのアイドル

114・159・上田鈴帆・CGプロのアイドル

115・160・ナターリア・CGプロのアイドル

116・161・野々村そら・しーじーぷろのあいどる☆

117・162・丹羽仁美・CGプロのアイドル

118・163・喜多日菜子・CGプロのアイドル

119・164・浜口あやめ・CGプロのアイドル

120・165・キャシー・グラハム・CGプロのアイドル

121・166・千川ちひろ・CGプロのアシスタント

122・167・荒木比奈・S大学の学生

123・168・大西由里子・S大学の学生

124・169・水谷絵理・876プロのアイドル、イベントのゲスト

125・27・佐藤心・魔法使い

第7話・財前時子「7人が行く・トマル聖ヤ」

126・178・イヴ・サンタクロース・時子のもとに来たサンタクロース

127・179・橘ありす・近くの学校に通う小学生

128・180・的場梨沙・ありすの友人

129・181・若林智香・公園でチアリーディングの練習をしている女の子

130・182・難波笑美・智香の友人

131・183・古賀小春・急いでいた女の子

132・184・愛野渚・ランニング中の女子高生

133・185・衛藤美紗希・アパレルショップの店員

134・63・松本沙理奈・ランジェリーショップの店員

135・4・柊志乃・柊酒店の娘さん

136・29・相原雪乃・喫茶店の店員

137・31・槙原志保・喫茶店の店員

138・175・海老原菜帆・喫茶店の店員

139・186・望月聖・公園で歌う少女

140・187・四条貴音・ドラマの主役

最終話・並木芽衣子「7人が行く・この旅の終わりに」

141・188・奥山沙織・S大学文学部の学生

142・189・月宮雅・S大学の学生。美紗希の友人

143・28・岸部彩華・S大学の学生。美紗希の友人

144・190・藤本里奈・コンビニのバイト。どこかで学生をやっているらしい。

145・191・宮本フレデリカ・S短期大学の学生。

146・192・桐野アヤ・S大学の学生。裁縫部にも所属。

147・193・藤井朋・S大学の学生。占い好き。

148・11・片桐早苗・刑事

149・194・十時愛梨・S大学の学生。本年度ミスS大学。



和久井留美「Re:N・のあの事件簿劇場版」

170・ヘレン・国際捜査官

171・安斎都・高校生探偵

172・新田美波・和久井班巡査

173・姫川友紀・警護官

174・櫻井桃華・櫻井家のお嬢様

175・海老原菜帆・喫茶店のウェイトレス

176・小松伊吹・CGプロのアイドル

177・桐生つかさ・GP社の代表

というわけで、
のあの事件簿と7人が行く合わせて、
シンデレラガールズ183名(韓国版アイドル除く全員)、ゲスト11名、計194名。
端役から主役まで色々ですが、出ないより出たほうがいい、
という21歳組Pである自身の方針より全員出しました。セリフは一つ以上あるはずです。
最後の一人は、デレマスで特別な存在を一人選ぶなら、ということで初代シンデレラガールでした。

全作食い入るように見てました、本当にお疲れ様です
名前の呼び方に違和感覚えてもそこからもう一歩先に考えられなかった

あとがき

最初の最初はりーなとなつきちで、トワイライト・シンドロームをやろうと思ってて、
なんか色々あったあげくにこうなりました。
主に21歳組のせい。

以上で、7人が行くは完結です。
趣味とニッチの塊ですが、長々とお付き合いありがとうございました。

次に関してはまだ何も書き始めてないので、
こんな話がいいとか、このキャラを出してくれ、とかお聞かせくださいな。

それでは。

いやーおもしろかった
ミステリーもサスペンスもどっちも楽しめたよ
また読み応えあるの頼むで

とりあえず乙です。
NG&トラプリで日常ミステリーはどうでしょうか。

長編おつかれさまでした
最初の話で音葉がいい役もらったなーと思ったけど
そのあとなかなか出てこなくて…全員出す方針だったんですね
質の高い2時間ドラマ的な読みごたえある作品でした

乙ー!
のあさんの頃から楽しく読ませてもらってたから終わるのが寂しいわ
文香Pとしてはもう少し文香にスポット当ててほしいなーと(我が儘)

なんにせよ次回作あるなら期待して待ってる

おつー時子様Pとしてはいつも楽しませてもらってた

次は年少組とか、あるいはお姉様組とか
年少組がメインのダークファンタジーなんか見てみたいかも(ゲス)

あらーいつの間にか最終話が
読んできま


芽衣子の退場後も、頼子みたいに生きてるんじゃないかとハラハラした
「最後でポストカード出るんやろ?やろ?」とか画面の前で一人唸ってた

希望としてはスピンオフというか頼子さん(?)のその後がみたいけどキャラ使い切ったから無理やね



乙。俺も芽衣子さんひょっこり出て来ると思ったわ
個人的には時子さんのが一番好きだったかな

>>130
NGとトラプリなら誰か書いてくれるよ、きっと
>>132 >>133
文香でダークファンタジーは考えときます。
>>135
申し訳ないけど、のあの事件簿はのあの事件簿でなければならない話は終わったのでおそらく書きません。

今後の予定(すべて仮題)

西島櫂「IMCG・泳ぎ疲れて、沈む心」

古澤頼子「ロスコ」

槙原志保「Tatlim」

そろそろ、アイドルとPの話を書いていいかな、と思うので、頼子と志保からスタートの予定。時期は未定。

一番上の櫂君が主人公の奴から書いていきます。ドラマ形式の予定です。ジャンルは公開後のお楽しみで。

>>138
乙乙
頼子さんが見られるなら、それで満足

それと、
更新したのに気づかれないのもなんだかなぁ、というわけで、
ツイッター(@AtarukaP)で情報発信していこうと思うので、良ければフォローください。

感想要望質問もお待ちしてます。

それでは。

作者さんおつです〜。
のあの事件簿シリーズから大好きです。
7人が行くシリーズは久美子・音葉Pとしても楽しかったです。
これからも作品心待ちにしています。頑張ってください。

その後の奏がどうなったか見たかったな。

(´・ω・`)そっかー

>>125
×藤井朋
○藤居朋

本編中ではちゃんと合ってます。

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