提督「…転属だ」 (141)
提督「…転属だ」
・独自の世界観・設定・解釈等が含まれています。
・キャラ崩壊や、轟沈等扱いの悪いと思われるであろうキャラクター等が居ます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424958206
提督に呼び出され、執務室に入ったアタシが最初に言ったのはそんな言葉だった。
「ああ、重巡洋艦摩耶…第十五艦隊への転属を命ずる」
提督がアタシの方を見向きもせずに手にした紙切れを読んでいた。
たぶん上半分は長々とした定型文があって、一番下に上の言葉が書いてあるんだろうな。
「明日…迎えが来る…荷物を纏めておけ…」
「了解…重巡摩耶、今までお世話になりました」
出来るだけ、感情を押し殺して声に出した。
感情を殺さないと、泣き出してしまいそうだったから。
「…すまん、摩耶」
「…いいよ…ありがと」
それだけ言って提督に背を向け、執務室を出る。
彼が謝る必要なんてどこにもない、むしろアタシは提督に感謝しなければならない立場だ。
提督のおかげでアタシの同型艦は無事だったのだから。
宿舎に戻る途中、涙が出てきた。止まって欲しかったが、涙って奴は一度で始めると中々収まってくれない。
「第三艦隊、重巡摩耶だな?」
「…はい」
「…乗れ」
翌日、迎えに来た特高隊の車に押し込まれる。
道中無言の空気に耐えられず、二言三言話しかけたが彼らは終始無言だった。
第十五艦隊、ごくたまに無電で名前を聞く以外はまったく不明の艦隊だ。
いや、だった、今日までは。
軍には艦隊は十個しかないはずだし、一般向けの雑誌にもそんな名前は載ってない。
前に提督の執務室の資料を覗き見た事が数回あるが、そこにも名前は載ってなかった。
艦娘たちの間では「試作装備を運用する実験部隊」等といううわさがたってたが…
それでも、あの提督の態度を見ると彼は知っていたんだろう。
軍隊は大組織だ。そして大組織と言うのは不祥事が付き物。
人数が多ければそれだけ不祥事や犯罪も起きる。いくら厳格な組織でも、最前線で戦う以上そういった不祥事は避けられない。
犯罪率自体は民間より少なくてもでかい組織だから内外に与える影響は大きいものだ。
軍隊で不祥事が起きればどうするか?
簡単だ、当事者と責任者の不祥事の内容に合わせて処分すればいい。
それが船でも同様だ。艦長を首なり左遷なりすればいい。
でも艦娘はそうは行かなかった。
艦娘は艦自体が一つの意思で動いている。艦娘の起こす不祥事はそのまま船の不祥事でもある。
かといって不祥事を起こした艦娘を首にすると言うわけにも行かない。
不祥事が起こるたびに無傷の戦艦を解体処分、そんな勿体無い真似をする奴がどこに居るのか?
かといってそのまま使い続けるわけにも行かない。
不祥事を起こすような奴を誰が信用するのか?信用したとして、外部がそれを理解するわけがない。
だから表向きには戦闘や事故で沈没…、場合によっては解体処分にした事にし、民間から遠くはなれたところに隔離、そこで運用する。
第十五艦隊と言うのはそう言うところだ。
ここまで言ったらお分かりだろうか?
アタシ、摩耶は不祥事を起こし、その処分として第十五艦隊に配属されることになった。
「摩耶、降りろ」
「はいはい、言われなくても降りるってば…」
終始無言の特高隊の奴が数十時間ぶりに口にした言葉はたった五文字だった。
腕を引っ張られてよろめきながら桟橋に足を付ける、ムカつきもしたが文句を言う気にもならなかった。
途中で何度か乗り物を変え、目隠しまでして移動するとは脱走防止のつもりなのだろうか、念入りなことだ。
天測をすれば位置はわかるんだが…口にしない方がよさそうな気がした。
「荷物だ」
それだけ言ってアタシの横に乱暴にバッグが投げられる。
「では、任務に励め」
「おいおい、アタシはこれからどうすれば…」
彼に声をかけようとしたが、何も言わずに大発に乗って沖の船に向かってしまう。
周囲を見渡すが、誰かが居る気配はない、司令部のような施設も見当たらない。
ここは島だろうか?
「…天測、してみるかな…」
したって意味があるとは思えない、そもそも脱走する気もないけどな。
手を伸ばして太陽を見ていると背後から声をかけられた。
「あの…新しく配属された艦娘さんですか…?」
慌てて振り返る。背の小さな艦娘がそこに居た。
「あの、私第十五艦隊の提督秘書艦をしています、電と言いますです、本艦隊への配属を歓迎します!なのです!」
「あ…重巡洋艦、摩耶だ、よろしく…」
不祥事を起こした連中のたまり場、悪く言えば悪党共の巣窟だ、もっともアタシもその悪党なわけだが。
そこの秘書艦のイメージとはあまりにかけ離れた見た目と言動にアタシは出鼻をくじかれた。
「思ったより早く来たのでビックリしたのです、まだ予定時間まで30分もあるのですが…」
船に戻る途中の大発の上でタバコを吹かす。
あの島には一秒たりとも居たくない。
何をトチ狂ったか犯罪を犯した艦娘の護送等と言う任務を受けることになり、ずっとこの任務をしている、さっきの艦娘で10人目だったか?
最初は刑務所の看守みたいなつもりだったさ、何ヶ月か何年かすればまた転属になる艦娘を迎えに行ける日も来るさ、なんて考えてた。
グリーンマイルとか、大好きだったしな。
でも、今のところ送り届ける事はあっても迎えに行けたためしがない。
新しい艦娘を送り届けるたびに、秘書艦の子が世間話をしてくれた。
5人目辺りから彼女の顔がどんどん暗くなって行った。
「そういえば前赴任したあの子は元気かい?」
「あの…その…はわわ、元気、げんきなのです!」
一瞬で嘘だとわかる。
あんな顔は見たくない。
俺はその日以降、わざと嘘の時間を通達するようにした。
犯罪者といっても、任務の前には当人の資料を必ず熟読する。
艦娘でなかったら、犯罪者でなかったら、任務でなかったら?たぶん俺はナンパの一回ぐらいして居ただろう。
向こうにとって俺はいけ好かない相手だろうが、資料を読むうちに俺は相手に妙な親近感を持ってしまっていた。
だから、つらい思いはしたくない。俺は自然と無口になって行ったと思う。
島?なのだろうか、陸地を進んで行くと森の中に一階建ての建物があった。
「ここが司令部なのです!」
「…ずいぶんとショボイ建物だな…」
「はわわわ…ここ、一応最前線になるので…」
最前線。か、悪党共を飼い殺すにはうって付けの場所、ってわけだ。
「それで、ここの提督は?挨拶ぐらいしときたいんだけどさ」
「あのっ…司令官さんはお忙しいので、またの機会に…あ、ここが摩耶さんの部屋なのです!」
あからさまにおかしい態度で提督との面会を断られる、どんな部隊だろうと上司になる人間、挨拶ぐらいはしたかったが…
ここの提督はどんな奴なんだろうか?
『摩耶、良く来てくれたな』
なんて、第三艦隊の提督が居てくれたら…いや、ありえないことは考えない方がいいよな。
「木曽さん!木曽さん居ますか?電なのです」
「おー、昨日言ってた新入りかい?後は俺が受け持つから帰って良いぞー」
木曽と呼ばれた艦娘が二段ベッドの下で寝転がったまま、顔も見せずにしゃべっていた。
「一応挨拶しとくぜ、俺は球磨型軽巡、木曽って言うんだ、短い付き合いになるだろうがよろしくな」
「…重巡、摩耶だ」
「ベッドは上を使いな、普通新入りが下って決まってるらしいが、俺は上は使いたくねぇ」
「なんでだ?」
「…そこのベッドを使ってもう2人沈んでるからな」
用はいわく付のベッド、って事か。
…いいさ、どうせ沈むなら、早い方が良い。
アタシは二段ベッドにかばんを放り投げて、ベッドによじ登った。
「なぁ、お前、どうしてここに来たんだ?」
尻の下から木曽が話しかけてきた。
「そういうオマエは?」
「俺の個人的な興味さ、どうせろくでもない事、したんだろ?俺と同じでさ?言えよ、お前が話したなら、俺の事も話してやる」
「…」
「司令官さん、電です…入ってもいいですか?」
「んぁ…あぁ、入れ」
司令官さんの返事を聞き、ドアを上げると椅子に腰掛けた司令官さんがお酒を飲みながら書類を見ていました。
「よ」
「司令官さん…昼間っからお酒を飲むのは…今は執務中なのです…」
「うっせぇなぁ…お前の頭ん中には何にも詰まってないのかチビよ?お前それ言うの何度目だ、そして俺の返事は何回やっても同じ「黙れ」だ」
また、黙れと言われてしまいました。
「で、何だ?用も無しに来たわけじゃねぇだろ?」
「あ、はいなのです!先ほど重巡摩耶さんが着任したので部屋に案内したのです、摩耶さんが挨拶したい、と…」
「やだ、お前がやれ。ここの運営は全部お前に任せてるって言っただろうが…他に用がないなら出て行け」
「はい…失礼しました、なのです…」
司令に敬礼して執務室を後にしました。
司令官は私以外の艦娘に会おうとは絶対にしません。電だけが執務室に入る事を許されて居ます。
「お前とだって秘書艦でなかったら会いたくない」そう言われたこともあります。
実質、艦隊の運営は全部電がやっている状況、なのです。
「…強盗暴行殺害事件、新聞じゃそう書かれてたと思うけど…知ってるか?」
「知らないね、ここに来てから新聞やニュースの類が読めると思ってんのか?」
だろうな、大抵艦娘の部屋には本だ何だがあるのが普通だが…この部屋には、いや、この建物にはそんな類のものがあるようには見えなかった。
「簡単な話さ、民間人を…殺した」
「へぇ…民間人を殺るとか、なかなかやるじゃないか」
「…銀行強盗に居合わせて…蹴りをかまして吹っ飛んだ奴にのしかかった、抵抗したから何発かぶん殴った。気がついたら死んでたよ」
「ついカッとなって…って奴かい?」
「良くある話だろ?」
ほんと、良くある話だ。「ついかっとなって…」とは良く使われる言葉だが、あたしがこの言葉一回で運命を狂わされてるとは。
きっと世の中には程度の差はあれ、こんな奴が入り乱れてるんだろうな。
「…結局、アタシは過剰防衛って事で捕まった訳さ、犯罪者だからって殺して言いなんて法は無い、アタシは強盗の遺族や行員、人質から非難の的、さ」
「へぇ…行員や人質から、ねぇ?」
「あの強盗は刃物は人に向けてたが、誰も傷つけてなかった、被害者から見てもアタシはやりすぎちまったのさ」
「…なるほどね…わざと民間人を殺したなら、ここに来るのも納得だ、なんせ艦娘は国民にとっては国を守る艦娘サマでなきゃいけねぇってのが上の考えだもんな」
一瞬間が開く。
コイツの言うとおり、艦娘と言うのは深海凄艦に対抗できる唯一の存在、それゆえに軍は艦娘が使用不能になる事態を極端に恐れている。
それはつまり、国民が艦娘の使用に否定的になることだ。だから艦娘は国民にとって、天使や女神、聖女に戦乙女のように扱われている。
その現状に泥を塗るような行為はなんとしても闇に葬らなければならないってことだ。
数十秒、静寂が続いた後、相手が口を開いた。
「…同型艦はどうなったんだ?そこまでの事をやったなら…同型艦ってだけで処分は免れないだろ?」
「…無事、のはずだ…第三の提督が尽力してくれたから、アタシ一人だけが人類に敵対的であって、高雄型の欠陥ではないって結果になったはずだよ」
「珍しいな、よほどの事が無けりゃ不祥事は欠陥って事で、ここに来なくても外地に飛ばされたりするもんだが…」
その通りだ、提督には感謝しなきゃな、もっとも、その感謝を伝える機会が来るかどうかは別の話だが。
「お前、運が良かったよ、事情なしに不祥事を起こした奴がここでは真っ先に沈むからな、そして殺人や強姦、凶悪な事をやった奴が優先して沈む」
「ジンクス、なのか?」
「…他所の艦隊じゃ嫌われ者だって援護してもらえるが、ここじゃ嫌われ者は死んだって援護してもらえない、ここに来る奴はみんなクソッ垂れだが、クソッ垂れにも二種類居るのさ」
「なるほど」
「ま、安心しろよ、お前は俺が援護してやる、機会があれば、だが」
援護してもらえれば生き延びられる。か。
はっきり言って、それが幸運かどうか、こんな艦隊で戦うのなら、とっとと沈んじまったほうが楽なんじゃないか?
そんな事を言おうとしたが、別のことを聞くことにした。
「木曽…だっけ?そういうオマエは?」
「俺か?俺は…前の提督の腕の骨を折った」
「…それだけ、か?」
以外だ、この軽巡の見た目なら数人ぐらい辻斬りしてても驚かないと思ってたが…まさか傷害、それも身内への物だとは。
これじゃアタシの方がクソッ垂れだな。
「そこの提督がひどい奴でな、艦娘に命令だとしてセクハラだなんだしまくってたんだよ、んで…嫌がる潜水艦を襲っているところを…見ちまってな、両腕をポッキりだ」
「…」
「それで、提督に暴力を働くような艦娘は危険すぎる…って事で、ここへ移動さ。まあ、あいつもヤッてる事はヤッてたから俺も同型艦への処罰は免れた」
フフッと笑って木曽は続けた
「ま、奴も社会的に抹殺出来たし、あの潜水艦も助けられた。だから後悔はしてないが」
「メシの時間だ」と木曽が言うのでついていくことにする。
食堂。と札の掛かった部屋で何人かが電の前に並んで鍋から白米とカレーを受け取っていた。
「…あいつ、何で秘書官なんだ?」
ふと気になったことを木曽に聞く。
さっき木曽は辻斬りでもしてそうだと思ったが…電はどう見てもこんな艦隊に来るような奴には見えなかった。
上からのお目付け役?とも思ったが、あんな駆逐艦じゃ意味を成さないだろ?
「あまり人の過去を詮索すると嫌われるぜ?ま、いいよ、こっちきな」
木曽に言われて部屋の隅に移動する。見ると何名か居る艦娘は全員一人だけで飯を食っていた、前の艦隊ならこういうことは無かったんだが。
木曽が居てくれて良かったのかもしれない。
「あいつは…この艦隊が出来るきっかけを作った奴だ、過去に訓練で艦娘が二人、沈んだって話、知ってるか?」
「…聞いた事はあるな、訓練中に衝突…だろ?」
「俺もここに来て始めて知ったが…あいつの過失による衝突さ、ボーっとしてて旗艦の回頭指示に反応が遅れたのさ」
「…なんだそりゃ?」
いくらなんでもボーっとして…は無いだろう?
「当時の訓練が厳しすぎて過労だったって話だ、で、軍としてはその鎮守府の艦娘の劣悪な労働環境を隠蔽するためにどちらかに原因があったわけではない不幸な事故、としたのさ。おかげで他の艦娘は環境が改善してだいぶ楽になったがね」
「…冤罪ってやつなのかね?」
「ここにはいろんな奴が来る。そして生き残るのは俺やお前見たいなのと、冤罪の奴ぐらいさ」
なるほど、軍が失敗を隠すために電を隔離し、それを繰り返しているうちに15艦隊なんてもんが出来たってわけか…
「ま、例外も居るがな」
「それは我輩の事か、木曽」
木曽と話していると後ろから声をかけられる。
振り返ると少し背の低い艦娘が立って居た。
「さぁて、ね、俺はただ例外も居る、と言っただけさ」
「…ま、事実だからのう…言い訳はせん…お主、新入りか?短い間だろうが、よろしく頼むぞ?」
そう言ってその艦娘は席に戻ってしまった。
「…あいつは何をしたんだ?」
「…民間人を数十人、殺している、お前とは違って、主砲でな」
「…誤射か?」
「いや、故意だよ。それで今まで生き残ってる、だから例外なのさ」
『南西諸島海域で複数の深海凄艦を発見したと民間船からの情報が入った、当海域は有人島も存在している、現地住民に被害が出る前に当海域の深海凄艦を駆逐してもらいたい』
「了解した、我輩に任せておけ」
『期待しているよ、利根』
あの日、我輩は配下の駆逐艦5隻を連れて哨戒任務に着いてた。
小規模な敵艦隊を発見したと言うの通報、事実なら住民に被害が及ぶ可能性がある。そのため、情報の確認と敵の撃滅のために派遣されたのだ。
「提督、利根だ…現地に到着、水偵を出しているがいまだ敵艦隊発見の報はないぞ?」
『了解だ、付近の有人島に上陸して島民からも情報を得てくれないか、彼らも深海凄艦を目撃しているかもしれない』
「了解した、すまんがお主、あの島に上陸して話を聞いてきてもらえんか?」
「了解しました、利根さん」
人口20人前後、小規模な漁業で生計を立てていると言う小島に配下の駆逐艦を向かわせる。
「そこに人間など人間と呼べる奴など、いなかった」辺りか
ネタつぶしはいけない。特にシリアス系は
『上陸しました…島民を発見、話しかけて見ます』
「…どうだ?」
『…ありがとうございました、協力に感謝します…利根さん、島民は深海凄艦など見て居ない、と。これより戻ります』
その直後、島の方から砲声が響く。
『撃たれました!海に戻った直後…深海凄艦…っ!ひぃっ!!』
もう一発、砲声。彼女からの通信が途絶えた。
「利根さん!敵です!島の方から…」
「撃ってきました!…きゃあっ!?」
さっき、駆逐艦を向かわせた島から深海凄艦が出てくる、次々に砲弾、魚雷が飛んできて、僚艦が次々と火達磨になって行く。
「なっ…貴様らぁ!」
我輩は主砲を敵である深海凄艦ではなく、守るべき人が居る島に照準を合わせ、発砲した。
「うぅ…うああっ!?」
慌てて毛布を蹴り飛ばしながら跳ね起きる、下着まで汗でぐっしょりだった、そうか、夢を見ていたのか。
夢と言うのはいやな物だ、どんなに現実離れな事が起きようと、自分が経験したことと同じ夢を見ようとも起きるまでは夢である事に気づけないのだから。
我輩が指揮していた艦隊は我輩一人を残して全滅、そして島民は、我輩が20cm砲で消し飛ばした。
配下の駆逐艦が全滅した事は我輩の責任は免れた、指揮内容自体には怠慢が認められない、という理由でだ。
問題になったのは我輩が、自分の意思で民間人を攻撃した、と言うことだ。
過去に魚雷が民間船を誤射した…と言うことはあっても、自らの意思で村を消し飛ばすなんて後にも先にも我輩だけだろう。
なぜ敵である深海凄艦ではなく、島の民間人に向けて撃ったのか?答えは一つだ。
守るべき者達に裏切られた、敵を手引きし、待ち伏せされた、僚艦を失った。それが敵よりも憎かったのだ。
しかし軍の方針として、深海凄艦との交渉の可能性も探るために鹵獲可能な艦は鹵獲すべし、コミュニケーション手段を探るべし、と言うものがある。
我輩の砲撃は、島民と深海凄艦のコミュニケーション手段も、本当に島民は深海凄艦を手引きしていたのか?と言った証拠すらも消し飛ばしてしまい、我輩は国に今後数十年に匹敵する損失をもたらした、と判断された。
我輩はこの一件後、軍事裁判にかけられ、戦闘で撃沈したことにされこの艦隊に移ることになった。
我輩がやった事が許されるとは思えない、しかし我輩はなぜかこの艦隊で生き続けて、何度も悪夢にうなされる。
早く沈んだものは幸運なんじゃないか?ここまで苦しむ事も無いのだから。
この艦隊の目的、それは最前線に位置する事で、敵の攻撃を吸収、そして全滅するまで戦い、一隻でも多くの敵を沈める事。
二日目の朝に木曽がそう教えてくれた。
しかし、敵もここが使い捨て部隊だとわかっているのか、島近辺に現れる敵はせいぜい重巡、ほとんどは駆逐艦数隻という事も多いのだと言う。
「それじゃあこの艦隊がある意味は無いんじゃないか?」
「いや、厄介者を消すと同時に少しでも敵を減らすって一番の目的は達成されているのさ」
そんな事を話しているとスピーカーからサイレンが流れてくる、アタシは反射的にベッドから飛び降り、木曽はやれやれと呟きながらゆっくりとベッドから降りる
『本島南50km地点で敵艦隊を発見したのです。各艦娘は出撃をお願いします。なのです』
スピーカーからノイズ交じりの電の声が聞こえた。
のんびりと歩く木曽を急かしつつドッグに向かう。
どんな艦隊だろうと出撃だ、何をしているんだこいつは。
「…」
「な?戦闘に意気込んだって、仕方ないのさ」
木曽の言うとおりだった。
普通なら出撃前に編成序列…旗艦や、基本の陣形等の指示があるはずだが、そんなものはどこにもない。
「俺たちはここで適当に戦って沈んでく、死にたくなけりゃ味方を盾にするんだな」
「…なるほどね、みんな死んだ目をして何も考えずに出撃してくってわけか…」
「ま、俺はそれでも死にたくはないんでな、いざとなったらお前も盾にするぜ、重巡さん」
ニィッと笑いながら木曽がアタシの肩を叩く。
「先に行くぜ、真剣に戦わなくても誰も気にしないが、出撃しないのはさすがに不味いんでね」
そして追い越すさいにボソッと、小声で言った。
「(砲や発射管は一つは使わないで取っときな、体や機関は修理してもらえても武装はなかなか修理してもらえねぇ)」
そういった木曽はの擬装は砲塔が二基、破壊されて居るようだった。
「なるほどな…クソがっ…!」
今日、何度目かのせりふを呟く、ここに配属される事が決まった時は仕方ないと思ったさ、それだけの事をしでかしたとも思ってた。
だが、でもだ、指揮系統も陣形も無い、それぞれがそれぞれ、味方を盾にしようとしながら思い思いの敵を攻撃する。
まるで素人だ、まだ中東あたりの民兵の方がまともな戦い方をしているだろう。
艦娘に産まれた以上沈むのは覚悟してるさ、でも、それでも。だ。
こんなボロボロの戦いで沈むなんて、嫌だ。
島に向かってきた深海凄艦と射程ぎりぎりで打ち合う、味方を盾にしろ、でも戦ってる振りをしろ、そんな空気が全員から、木曽からも感じた。
敵は軽巡と駆逐、アタシは重巡、おかげでアタシは無傷だ。
「…こちらもそろそろ引くか、二隻沈めてるんだ、戦果としては上場だろうよ」
「…いや、待て」
この艦隊で生きてくなら、それが正解だろう?
でも、アタシは帰れなかった
「主砲と機関部が…クソッ!!」
後退を始める艦娘の中で逃げ遅れた駆逐艦が一隻、敵艦隊に囲まれていた。
「ほっとけほっとけ、ああいうのを助けてたら命がいくらあっても足りねぇ、アイツのおかげで俺たちは帰れるんだ」
「…」
「あいつは怠慢で味方を何隻も殺しかけてる、この艦隊に来てからも嫌味と悪口しか言わない、今生きてるクソッ垂れの中でも一番のクソッ垂れさ、お前が助ける価値があるとも思えないぜ?」
「…アタシは、嫌だ」
アタシは悪い奴さ、守るべき民間人に過剰な攻撃をして殺してるんだから。
でも、だからと言ってもう一度悪い奴になれって言うのか?
どうせ沈むなら最後ぐらい自分に後悔しないで死にたいだろ?
たとえあいつが艦娘の腐ったような奴だとしても、一応は味方なんだ。
「おい、摩耶!!…ったく、熱い奴だな…」
俺の制止も聞かずに摩耶は反転して駆逐艦の方に向かってしまう。
まったく、まっすぐな奴だな、そういう奴は早死にするんだ、先輩の言うことは聞くものだぞ?
「しまった…」
敵の被弾で機関が停止、動けなくなってしまう。失敗した、いつもどうり他の駆逐艦と同じように射程ぎりぎりで撃ちあっていれば良かったのに。
敵に砲撃され、頭にきたら一人だけわずかに突出、集中攻撃されてごらんの有様。
いままでそうやって沈んで行った連中、何人も見てたのに私が同じミスを犯すなんて。
「ほんと、冗談じゃないわ…」
でも、考えたら私らしいのかもしれない。
今まで私は貧乏くじばっかり、敵の輸送艦だと思ったら重巡だったり、護衛した対象はみんな攻撃されて大破したり…
最初は前の提督も、護衛対象の艦も私を庇ってくれた、「曙は悪くない、運が悪いだけだった」って、でも、それが何度も続いたら?
無能の証拠は無くても責任は追及される、何度も連続する失敗は無能の証明とされてしまう、死んで来いと15艦隊に転属。
潮は私を庇ってくれたみたいだけど、正直、私が失敗しかしないなかドジなのに戦果をあげるあんたが正直憎かったわ。
敵の駆逐艦が距離を積めて来た、私が動けないことをいい事に、確実になぶり殺しにする気なんだろう。
貧乏くじしか引けない、私らしい最後だわ。
・・・
「…嫌、だ」
嫌だ。
せめて最後に一回だけ、潮に伝えたい。
潮は何も悪くないのに、勝手に嫌って突き放してしまった。
貧乏くじしか引けない私だけど、一回ぐらい大吉を引かせてよ。
一回ぐらい、ごめんって、潮に言わせて…
「まだ…まだ私は海の底は見たくない!!」
敵艦の発砲煙が見えた。直後に私の視界は真っ暗になった。
「ぶち殺されてぇかぁ!!」
誰かが私を抱き締めていた、発砲音が聞こえた。
その腕は力強くて、そして温かかった。
本日はここまでです。
乙
期待
おつおつ
おつ
好みの設定だわ
乙乙。こういう設定の大好きだ
あと曙かわいい
乙乙
よかった、仙水提督が生まれる事はなかったんだね
一人称切り替えってなかなか珍しいな、でも読みやすいわ
摩耶様嫁だから期待してます
海面にひざを着いた駆逐艦を抱く、背中に鈍い衝撃が走った。
「ぶち殺されてぇかぁ!!」
こっちは重巡なんだ、駆逐艦の豆鉄砲なんか効くものか、左腕で駆逐艦を抱きかかえながら右腕を伸ばし、背後の駆逐艦に主砲をぶち込む。
「大丈夫か?機関は動くか!?」
「な…何よアンタ!?」
返事は聞かない、抱きしめてわかった、機関の振動が感じられない。
「アタシから離れるな!行くぞ!」
「ちょ…ええ!?離しなさい!クソ重巡!」
騒ぐ駆逐艦を無視して主砲に装填、一隻と二隻、左右に分かれた敵艦に対し、左の一隻にさらに主砲を撃ちこむ。
直後に敵の第二射が来て一発がわき腹に突き刺さる。
「がはっ…クソっ…が!」
暴れる駆逐艦を無理やり抱きかかえて機関の出力を上げる、右の二隻に主砲を向けようとすると一隻が火を噴いた。
「大丈夫か!?援護するぞ!お主は退け!」
背の低い重巡だった。
「すまん!」
一言だけ礼を言い、逃げる。
「気を付けろ!敵艦、魚雷を撃つ気じゃぞ!」
「援護してくれるんだろ!何とかしろ!」
「今装填中じゃ!」
「クソがぁ!!」
これじゃあ回避も出来ない、と思ったそのとき、敵を巨大な水柱が包み込む。
水柱が消えた時、敵艦は姿を消していた。
「酸素魚雷じゃと…?誰が?」
「やれやれ、いざって時のために取っといてたのに、これで打ち止めになっちまった…」
木曽だった。
まったく、素直じゃない奴が何人もいるな、ここは。
「司令官さん…電なのです」
「…」
司令官さんからの返事を聞かずに執務室に入ります。司令官さんは不機嫌そうな顔で紙を見つめていました。
「なんの用だ」
「…先ほどの出撃の戦果と状況報告なのです…敵駆逐艦5隻撃沈、敵軽巡1隻撃破、損害は重巡1隻中破、駆逐艦1隻大破、駆逐艦2隻小破なのです」
「ちっ…大破に中破かよ、また資源が減るじゃねぇか…」
「でも轟沈はなかったのです!」
「うっせぇ!唯でさえ資源不足なんだよ!損傷艦の修理だけで補給すら出来なくなったらどうするんだ!!」
「っ…」
司令官さんが机を叩きました、司令官の言うことは、事実です。でも
「…くそっ、また輸送の要求しなきゃ行けねぇじゃねぇか、めんどくせぇ…」
司令官さん、それは
「その言い方は…あんまりなのです…」
「あぁ?なんか言ったか?」
「なんでも、ないのです」
昨日はカレーだったが、今日の飯は茶碗一杯の白米と牛缶だった。
「…この調子だと、三日後からは雑炊になるなぁ…」
「マジかよ…」
「いつもの事さ、雑炊が2日ぐらい続くころに補給艦がきて補給してくれる、このメニューは補給5日前の合図なのさ」
まあ、こんな艦隊だし場所も場所だ、食事だなんだで少しは不都合があるとは思ったが…
「計画性とか、ないのかよ…」
「知らんな、俺の管轄外だ、物資の管理とかは電がやってるから奴に言うんだな」
「くそが…」
これしかないと自覚すると余計腹が減ってきた。
「ちくしょー!」と叫びながら白米をかっ込んでいるとアタシの目の前に半分入った牛缶が置かれた。
「…食べなさいよ」
さっきの駆逐艦だった。
アタシの方を見ずにもじもじしながら牛缶をアタシの方に押し付ける
「…余計な事をして、って言いたいけど、一応命を救われたわけだしね…」
「もらって良いのか?」
「…命救われて文句言うほど、まだ落ちぶれて居ないわよ」
「じゃ、ありがたくいただくぜ、サンキュー」
くれると言うのならもらっておくか。
「へぇ、意外だね…曙がちゃんと恩返しするなんて」
「お、恩返しってわけじゃないわよ!唯のお礼よ!れ・い・!!」
「まったくお主は素直ではないな…木曽・摩耶、隣、いいか?」
利根までやってきた。
3分で食い終わる量の飯なのに、なんで賑やかになってるんだ?
この艦隊はまともな艦隊とは言いにくい。でも、そんな艦隊でも、楽しくやって行きたい。
どうせみんな、いつか死ぬ。なら、死ぬまでに沢山。笑いたくないか?
「でれれれでってんでっでっでっでん、でっれっれー、てっれっれー♪」
三日に一度の入浴の日、あたしたちは島内の池で体を洗う。
ドラム缶の中では頭にタオルを載せた摩耶が聞いたことあるような無い様な鼻歌を歌っていた。
「摩耶さん、湯加減はどうですか?」
「あぁ、いい感じだ…最初これが風呂だって聞いた時はマジかって思ったが…案外気持ちいいもんだなぁ…」
「それはよかったのです」
電がドラム缶の下に薪と携行燃料を差し込む
「いっとくが摩耶…いい思いが出来るのは今日だけじゃぞ?次回からは風呂で温まるのは体格順になる、我輩の次…お主は最後じゃ」
「あ…じゃあ今日は…」
「新しく来た人には一番風呂を、って木曽さんが言ったので、ずっと続いているのです」
「…なんか、悪いな、さんきゅ」
「今のうちに一番風呂を楽しんで置け、最後は…毛とか垢とか浮いてるし…」
「ご、ごめんなさいなのです!水は節約しないと…」
「わかっておる、湖があるとはいえ、水は貴重だからな…そんなに謝らんでくれ」
制服を来た電が全裸で腕を組んでいる利根に土下座せんとばかりの勢いで頭を下げていた。
なんかシュールだ。
「だが、せめて我輩が入ると同時に火を消すのは止めてくれぬか?最後は温くなってしまうから温まった気がせんのだ…」
「ごめんなさいなのです、燃料や薪も節約しないといけないし、利根さんが入るタイミングに火を消さないと電が入った後火の始末に苦労しちゃうので…」
「おい、電…お前…」
「まさか、我輩の後に入っておったのか?それじゃあほとんど水だろうて!?」
「ねぇ、電…たまには私の変わりに最初に入ってもいいのよ?火の番は私が変わっても良い訳だし…」
「曙ちゃん…ありがとうなのです、でもこれが秘書艦のお仕事ですから」
まったく。電はこういう奴だ。
「それより摩耶!そろそろ上がりなさいよ!利根が入る前に燃料が尽きちゃうじゃない!」
「あぁ、わかったよ、わりぃわりぃ」
摩耶が立ち上がり、ドラム缶から這い出てくる。
「…デカイな」「筑摩のやつを思い出すのう…」「…クソ重巡」「うらやましい、のです」
「あぁ?なんだ?アタシの顔に何かついてるか?」
なんでもねぇよ、なんでも。
お前少しやせろよ。
お前入ったときにお湯溢れて一度火が消え掛かってて電に迷惑がかかってるんだよ。
俺は喉まで出た言葉を引っ込め、摩耶にバスタオルを投げつけた
「わぷっ、何しやがるクソが!」
「うっせぇ!とっとと服きてこい!」
「あぁもう!うっさいクソ巡!!」
「なのです♪」
「クソッ、敵に見つかった!翔鶴姉、どうする!?」
「…二手に分かれ、敵を分散させます!」
「潮!アンタは瑞鶴さんに着いて行って!」
「えっ!?う、うん、わかった!」
「曙さん、護衛、お願いします!」
「了解!!」
翔鶴さんに肩を貸し、鎮守府に帰投する。
瑞鶴を先頭に、他の艦娘が駆け寄ってきた。
「曙ッ!アンタ、翔鶴姉の護衛に着いていながら何やってたのよ!!」
「まって…瑞鶴…曙さんは、悪くないの…方向を指示したのは、私、だから…」
「っ…翔鶴姉、肩貸すよ、早く入渠しなきゃ…」
ボロボロになった翔鶴さんを私から奪い取るように、瑞鶴さんが翔鶴さんを連れて行く。
「曙ちゃん…お帰りなさい、無事で何より、だったよ」
「…無事、と言えるのかしらね?アレ」
「駆逐艦曙、入るわよ、クソ提督」
提督に呼び出され、執務室に入る。提督は私に背を向けて窓から外を見ていた。
「良く来てくれた、と言いたいところだが…今回は失態だったな、曙」
「く…」
「護衛対象である翔鶴を、優秀な正規空母を大破させるとは、お前はあそこで何をしてたんだ?」
「私は…翔鶴さんの指示に従って「今はお前が何をしてたか聞いて居るんだ、曙」…」
「潮は空襲に逢いながらも無事、瑞鶴を無傷でつれて帰ってきた、スコールを使ってな。同型艦であるお前は何をした?」
「…」
「お前の任務失敗の件については後日、正式な処分が下されるだろう、下がって良いぞ」
「ちょ…待ちなさいクソ提督!アンタ私を処分って…私が何のミスをしたって言うの!?」
「翔鶴を守れなかった」
「ふざけないで!私はどうすれば良かったのよ!答えなさいよ!クソ提督!!」
「曙!」
「!」
「お前は普段から口が悪かったが、私はそれを黙認して来た、だが、私はお前に甘すぎたようだな、今は真剣な話しをしているというのに、なんだその口の利き方は」
「…お前の能力の低さには失望したよ、明日の遠征は出なくていい、だが1200にもう一度ここに来い、そのとき処分を言い渡す」
提督に背を向け、執務室のドアを強引に閉める。
確かに私は翔鶴さんを守りきれなかった、そこに私のミスがあるなら、いくらでも文句を言われてやる。
でも私はミスなんてしていない、進路を決定した時、スコールなんて見つけられなかった、潮たちがスコールに入ってしまったのは唯の偶然。
私はなぜ責められなければいけないの?
「曙ちゃん!」
廊下を歩いていると手に何かを持った潮が駆け寄ってきた。
「見て見て!司令官に軍刀を貰ったの、私ががんばっているから表彰してくれるって!」
潮が持っていた物を見せる。「武功抜群」と書かれた日本刀だった。
私は全力で戦い、ミスをしなくても責められる。なのに潮は少し運が良かっただけで表彰?
「私が持ってても意味ないかもしれないけど部屋に飾らなきゃ…曙ちゃん?」
「ふざけないで!そんな軍刀が何よ、何が武功抜群よ!アンタなんかほんの少し運がいいだけじゃない!」
「キャアッ!?あ、曙、ちゃん?なんで…」
潮の肩を突き飛ばす、そのまま壁に激突し、ズルズルとずり落ちた。
「運が良かっただけで…調子に乗らないで、アンタが何をしたって言うのよ、アンタに私の何がわかるって言うのよ!!」
茫然自失の潮を置いてそのまま部屋に戻る。
私はそのまま、着替えずにベッドに潜り込んだ。
「曙よ、入るわ、クソ提督」
「口の悪さは変わらんな、曙」
「処分って、何よ」
「お前は第十五艦隊に転属が決まった」
「司令官!!」
ドアをノックもせず、潮が執務室に入ってくる。
「噂で聞きました…曙ちゃんが処分されるって、本当なんですか!?」
「本当だ」
「…酷いです、曙ちゃんは何も悪くないのに、唯ほんの少し、運が悪かっただけじゃないですか!それなのに…私が表彰で曙ちゃんが処分なんて…あんまりです…!」
目じりに涙が浮かんでいた、昨日二人が言い争う声が聞こえたと他の艦娘が言ってたな、たぶん潮が表彰を自慢して、曙に火をつけてしまったのだろう。
「…軍とは、そう言うところだ。結果が無ければ過程がどうであろうと…」
「そんな…酷いです、司令官…」
「だが、安心してくれ、俺だって曙が悪いなんて思って無いさ、でも無能な上層部は何らかの罰を与えないと納得してくれない、だから」
「処分として、隣の鎮守府に書類を運ぶお使いをしてもらってるよ、大丈夫、解体だなんだなんて事にはならないさ、それよりも、俺がさせないよ」
潮を安心させるために出来るだけの笑顔を見せる。
潮はしばらく俺の顔を見つめていたが、泣き顔が笑顔に変わった。
「なんだぁ…潮、安心しましたぁ…」
「潮は心配性だなぁ…俺が曙に酷いことをするとでも思ったのかい?」
「潮、司令官の事は信じてます。でもやっぱり、心配で…曙ちゃんが帰ってきたら、私、謝らないと…」
「ははは…おっと、電話だ…ちょっと待っててくれ、潮」
受話器を取る、男の低い声が聞こえてきた。
『提督ですか、こちら特高隊です』
「あぁ、提督だ、どうした?」
『そちらの駆逐艦曙、先ほど十五艦隊に引き渡したとの連絡が来たのでご報告…「なんだと…曙が?それはほんとうか!?」』
『は…えぇ、本当ですが…』
「曙はどうなった!?」
『は、はぁ…落ち着いた様子で、特に反抗的な様子は見られなかった、と…』
「そうか…怒鳴ってしまってすまない、あぁ、ありがとう」
『???…あ、報告は以上です』
「ああ、切るぞ」
受話器を戻す、さっき笑顔だった潮は青ざめた顔で俺の事を見ていた。そそる。
俺は笑い出しそうになるのをこらえて、頭を両手で抱えて机に突っ伏した。
「さきほど…連絡が…くぅ…入った…ククッ…曙は…書類を届けた帰り…うっ…敵潜水艦…くっ…撃沈、された」
「そんな…曙ちゃん…が…?」
「俺が…悪いんだ…書類の輸送なんて、郵便局にでもさせればよかったんだ!曙をあと一時間早く!遅く!出していれば!処罰なんてトイレ掃除でも十分だったのに!!」
机にこぶしを振り下ろした、手が痛かったが、そんな物はたいした問題じゃない。
「すまない…潮、すまない…」
「司令官…自分を、責めないで…」
もとからあのクソガキは気に入らなかったんだ、潮に手を出そうとすればどこからともなく飛んでくるからな。
でもその曙はもう居ない、これで潮は俺の物だ。
『曙ちゃん』
『なによ、潮』
『曙ちゃんは、悪くないんだよ?』
『…潮も、悪くないわ。あなたには謝っておく、ごめんなさい』
『私も、ごめんね、私が優秀だったせいで、表彰されて…曙ちゃんは無能なだけだったのに、無能な奴がどんなに努力しても成果を残せるわけないもんね?だから曙ちゃんは悪くないの』
『『『ごめんね、綾波型の失敗作さん♪』』』
笑う潮の首を締める、潮は笑顔のまま、首が千切れ崩れ落ちる。
振り向くと潮が居た、首を締める、殺す。
潮が増えた、二人同時に、首を締める、ウシオを握りつぶす生々しい感覚が両手に残った。
お前は潮じゃない、私は潮が嫌いだったけど、いつか謝るって決めたんだ。
お前は昨日の夢でお役御免なんだ、もう出てくるな、クソ艦娘!
目を覚ます、私は摩耶と同じベッドで、摩耶に抱き着いていた。
「ぐごー…ズゴー…Zzzz…」
摩耶はベッドでいびきをかいていた、まったく、人が悪夢でうなされてたと言うのに気楽な物だ…
そういえばなんで摩耶と一緒に寝ているんだろう?そうだ、利根がそろそろ補給が来るはずだから、と隠し持っていた鮭を処分しようとして、付き合わされてこの部屋でつぶれてしまったんだ。
ふと、両手の感触に気付いた、夢の中でウシオを絞め殺したときと同じ感覚…
私は摩耶の両胸を握りつぶしていた。
あの夢には何の意味があったのだろう?私は死にかけたとき、潮に謝りたいと思った、でも夢にあいつらが出てきたって事は、私はまだ潮を嫌っているのだろうか?
いや、きっと違う。
私は潮におびえて、潮を悪者にしてしまってたんだ、さっきの夢はきっと、そこから抜け出すきっかけなんだ。
夢占いなんて私らしくない。潮は大好きだったけどね。
摩耶のおっぱいには感謝することにしよう。
そして、嫉妬をこめてもう一度握りつぶした。
「おい…摩耶、起きろ」
「ん…後五分待ってくれ、姉貴…」
「おい、摩耶!飯がなくなっちまうぞ!」
「んぁ…なんだ…もうそんなじかんか…」
木曽の叫び声で目を覚ました、そうだ、昨日は利根に酒を飲まされて…あんまり強くないから、そのまま寝てしまったのか。
「早く着替えて食堂にこいよ、まったく…困った重巡洋艦だ」
やれやれだね、と呟きながら木曽が部屋を出て行く。
アタシも着替えて早く向かうか…
「ひゃっ…やんっ…///え…えぇっ?///」
パジャマが擦れた瞬間変な声が出た、誰にも聞かれてないよな?
アタシはどうしちまったんだ?慌てて胸を見ると、赤い手形が両胸についていた。
…まさか木曽、同性愛者じゃねぇよな…?
少し寒気がした、今晩は理由を付けて利根か曙の部屋に泊めてもらおう。
『敵艦隊発見の報あり、艦娘各員、出撃してください、なのです』
「よし!行くぞお前ら!抜錨だ!!」
「出撃よ!蹴散らしてやるわ!!」
「摩耶、お主はまだ魚雷を残しておる、我輩が先頭になろう」
「よし、次はアタシ、次が木曽、最後尾が曙だ」
「さて、出撃と行くか…こちらの有能な指揮艦様の手腕を見せてもらうぜ」
「なんだよその言い方…」
あまり聞きたくない放送、いつもはみんながため息をつきながら立ち上がるが…
なぜか四人だけは元気だった。
何を考えてるんだろう?この艦隊で戦っても誰も褒めてくれない、私たちはただ、死ぬだけなのに。
四人が駆け足でドッグに向かう、その道すがら、陣形や作戦についても話しているみたいだった。
何が楽しいんだろうか?気でもおかしくなった?四人とも簡単につぶれるようには見えないけど。
そのとき、一人が引き返してきて、私に手を差し伸べた。
「お前も、アタシ達と一緒に戦わないか?」
「…アンタも、一人で適当に戦うの、つまらないでしょ?」
「どうせ俺たちはここで戦うことしか出来ないのさ、なら、その一つしか出来ないことを精一杯楽しもうぜ」
「どうだ?お主が来てくれれば輪形陣も組めるから楽になるのだが…」
『さぁ、一緒に行きましょう?大丈夫、私がついてるから』
私が始めて出撃するとき、手を差し伸べてくれた姉の姿がかぶった、正反対のガサツな奴なのに。
でも、どうせなら楽しくやろうぜ。うん、いいかもしれない。
「わかりました…お役立ちです!」
私は、伸ばされた手をつかんだ。
暖かい手がしっかりを私の手を掴む。
痛いです、ちょっと力入れすぎかも。
本日はここまでです。
乙
乙 クソ提督はホントにクソ提督でしたわ
おつおつ これはクソ提督不可避
ごめんなさい、致命的な誤字がありました…
>>54
×→隠し持っていた鮭を処分しようとして
○→隠し持っていた酒を処分しようとして
利根がクマーしてしまった…
>>65
鮭トバでも食べてるのかと思ってたわ
この曙は八つ当たりするクソ艦娘
艦娘を犯罪者にしてこんな描写しかしない作者は艦これアンチ
アンチはSS書くなよ、そこまで艦娘嫌いなのか?
不要とされた者同士が手を取り合うのって燃える展開だな乙
一番不用なのはこの艦これアンチの作者だよ
アンチってのは、ファン以上にその作品を知って知って知り尽くした上で批判するもんだ。
それを知ってたらかわいく見える
乙
こういうのすごい好き
乙です。
次も待ってます
乙です
最後の巻雲?
乙
こういうの好きです
とりあえずクソ提督を焼き殺す展開はよ
乙です。
こういうもいいね
しかし、どこにも愛誤っているんだなヤレヤレ
人によってはこれがアンチに見えるんだ……不思議
「今回の補給物資です、これが目録」
「ありがとう、なのです。確認しました、物資はあとで貯蔵庫に運びこんでおくので、そこに積み上げてほしいのです」
「了解しました、あの…提督は?」
「ごめんなさい…提督は多忙なのです」
「そうですか…出来れば提督さん本人から受領印押して欲しいのですが…」
「はんこは司令官さんから預かっているのです。」
軍の補給部隊の方から物資を受領、はんこを押します。
本来は提督が直接確認をする必要があるのですが…提督はすべての業務を電に委任しているので、この業務はすべて電がやっているのです。
これで、前の戦いで損傷したみなさんの修理、補給が出来ます。
「司令官さん、今日はお酒を飲んで居ないといいのですが…」
お酒を飲んでるときの司令官は基本、電の話を聞いてくれません。
でも、報告だけはしないと行けないので執務室に向かいました。
今日はいい報告が出来るのです。補給が来た、と言うのも一つですが…艦隊が最近、変わりました。
艦娘みんなが摩耶さんと木曽さんを中心に陣形を組んで戦うようになってから、被害は激減。
つーまんせる?を徹底して一人が狙われそうになったらもう一人が首に縄を付けてでも引っ張ってくる、とかで、小破3隻と言う被害で済んだのです。
司令官さんはずっと資源の消費に着いて悩んでいましたから…いい傾向、なのです♪
『くそ…いっそ一度に全員沈んでくれねぇかな…』
…
執務室からそんな声が聞こえて、電は脚を止めてしまいました。
司令官さん、酷いのです。電は、この艦隊のみんなは、罪を犯したり問題を起こしてしまっても、最後に少しだけでも国の役に立てれば…そう考えて戦ってきました。
でも、そんな事を考えてるなんて、昔のやさしい司令官さんは、どこに行ってしまったのですか?
「くそ…酒もタバコもこれで最後か…」
最後の酒瓶を放り投げる、仕方ねぇ、雑誌でも読むか。
この雑誌の発行日は2ヶ月前だ、記事も一次一句、覚えてしまってる。雑誌も放り投げた。
「なんで、こんなところに来てしまったんだろうなぁ…」
椅子の背もたれを最大まで下げ目を閉じる。
最初は新たに編成される艦隊に提督として着任しないかと言う上官の言葉だった。俺は二つ返事で承諾したさ。出世のチャンスだしな。
十五艦隊の詳細を知ったのは、その翌日だった。
何でそんな艦隊に自分が?上官はこういった「君の部隊は小規模な軍規違反すら記録されて居ない、きわめて規律正しい部隊を指揮した君の能力を買っての事だ」
なら、やってやろう。そう思ったさ。ここは死ぬまで戦えと言うに等しい場所だが、刑務所的な場所であるとも言われた。
だから、みんな元の艦隊に返してやろう。
「…俺、嫌われてたんだなぁ…」
俺は若かった。それ以上に、馬鹿だった。
艦娘が三人しか居ない部隊、仮に全艦娘の四分の一が問題児だとしても、一人も問題児が居ない確率の方が多いのが俺の部隊だった
体を起こし完全に吸い尽くしたタバコをくわえて火をつけて見る、フィルターだけが燃えて熱くてむせる。
手元の紙の束を見る。
駆逐艦 電の第六駆逐隊への異動を申請する
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
駆逐艦 電の第六駆逐隊への異動を申請する
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
軽巡洋艦 木曽の第八艦隊への異動を申請する
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
駆逐艦 電の第六駆逐隊への異動を申請する
当艦は任務への忠誠心、規律遵守の意識を通常のレベルにまで回復しており、本艦隊への所属が妥当である理由はすでに消滅している
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
軽巡洋艦 木曽の第八艦隊への異動を申請する
当艦は任務への忠誠心、規律遵守の意識を通常のレベルにまで回復しており、本艦隊への所属が妥当である理由はすでに消滅している
当艦は比類なき魚雷戦闘力を有しており、他艦隊でこそその希少な戦闘力を発揮でき、海軍に貢献できる物である事を確信する
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
駆逐艦 ●●の第一艦隊への異動を申請する
当艦は救助任務にて要救助対象を殺害したと言う容疑で当艦隊に転属となったが、その容疑は証拠がなく、無罪であると確信できる
―第十五艦隊 提督
却下
―軍令部
駆逐艦 電の第六駆逐隊への異動を申請する
当艦は任務への忠誠心、規律遵守の意識を通常のレベルにまで回復しており、本艦隊への所属が妥当である理由はすでに消滅している
せめて当艦隊への配属理由の再検討を要請する。当艦が本艦隊に所属する理由は皆無で、資源の浪費にしかならない
―第十五艦隊 提督
却下
電の通常艦隊への復帰は海軍に不利益しかもたらさない物である
これは警告である、これが最後だ
―軍令部
最初から配属されていた電、彼女は無罪と言ってもいい。
軍規違反は犯しても事情があった奴、完全に反省して心を入れ替えた奴。
彼女らを元の艦隊に戻せるよう、上に配置転換を何度も申請した。そしてすべて却下された。
俺はこの艦隊に来る前、過去になんどか上に対して艦娘の扱いの改善や上層部の腐敗の査察等を意見具申した事がある。
つまり、俺はこの艦隊の監督役ではなく、この刑務所の囚人の一人でしかなかったのだ。
俺は紙の束をすべてシュレッダーに放り込む。
何人かの艦娘の名前は墨で塗りつぶされていて、俺もなんて名前だったのか思い出せなくなってしまった。
「帰りたい、な」
この艦隊に来て結構な時がたった、一度も故郷に帰った事も無ければ、家族に電話した事も無い。もしかしたら故郷では俺は事故死したことになっているのかも…なんてやな妄想も何度もした。
でも、この艦隊を抜けて帰りたい、もし艦隊を抜けれたとしても俺にはせいぜいわずかな口止め料が退職金として渡されるぐらいかもしれない。
最悪消される可能性だって…あるかもしれない。
それでも、故郷に帰って親父と話したい、お袋の佃煮をもう一度食べたい。発売日に書店に行って雑誌を読みたい…
「くそ…いっそ一度に全員沈んでくれねぇかな…」
そんな言葉が口から漏れた。
この艦隊の艦娘がいなくなれば、艦隊は解散だ、俺は帰れる。
「…やめよう、明日かあさってには補給が来るんだ…酒もタバコも、雑誌だって来るさ」
「知ってるわよ利根、いくらシャッフルしても無駄よ、右手がジョーカーでしょ?」
「ふふ、馬鹿め、我輩が何の策も無しに一騎打ちを挑むと思うておるのか?二枚ともさっき新しく傷を付けたわ!」
「なっ…ええーい、ままよ!っつ…ええぇ!?」
「馬鹿め、傷など付けておらぬわ!こっちで…我輩の上がりだな!」
「じゃあ、曙は明日の朝飯、俺に三分の一よこせよ?」
「アタシにも…いや、やめとくか、飯を三分の一にするのはさすがに、なぁ?」
「っ…なによ摩耶、敵に情けをかけたつもり!?」
「おいおい曙、そういう時はちゃんとお礼を言ってだなぁ?」
「…ありがと」
いつのまにか仲良くなってしまった四人で、前に沈んだ奴が残して行った古いトランプで遊んでいるとドアをノックする音が聞こえた。
『木曽さん…電です、ちょっと良いですか?』
「鍵なんてここには無いぞ?入って良いぜ?」
『…ごめんなさい、出来れば二人で話したいのです…』
珍しい、と言うか初めての事だ、電が二人っきりで話したい、と言うのは。
「…まよったのですが、木曽さんにだけは話す必要があると思うのです、この艦隊で一番の古参の方ですから」
「…俺より古参だった奴は沢山いたさ」
「それも、居た、なのです」
消灯されて真っ暗闇の廊下を電の持つ懐中電灯を頼りに歩く。
着いた先は物資の貯蔵倉庫だった。
「電は、ずっとここで働いてきたという自負があるのです」
「…知ってるよ」
言われなくてもわかる。
この艦隊結成当時から理不尽な理由で所属。何度も仲間が沈むのを見てきた。
どんな凶悪な奴でも電は誰かが沈むとそのたびに泣いているのを俺や利根は知っている。
それでも俺とは違って電は一度も不平不満を言わず、黙々と任務をこなしてきた。
「…さっき、司令官が言いました、全員沈んでしまえ、って」
「…そうか」
あの提督、ここ数ヶ月、声も聞いていないが…奴なら言いそうだな。
「電は、悔しいのです、今までみんながんばってきたのに…人間の都合でこの艦隊に追いやられ、ろくに補給も整備もさせてもらえないのに戦い続けて…それで人間が言った言葉が、これ。なのです」
「悪いが俺はそういう愚痴を聞くのは慣れてないんだ、そういうのは利根にでも…」
「電は、人間が憎くなりましたのです」
頼むんだな、と言おうとした俺の言葉は電の予想外の一言でとめられた。
「もうこれ以上、嫌なのです。人間の都合でかってに蘇らされて、勝手に戦って、そしてこの仕打ち」
「おい、電…なにを…」
「勝手な都合で命を与えて、勝手に使い潰して、でも電や木曽さんの事は人間は誰も知らない!」
「おい、待て電、どういうことだ?まるで意味がわからんぞ!!」
「電が沈めてしまったあの子だって…なんで沈んだのかは報道されてないのです!新聞にだって唯の事故!その事故が起こった原因、あの当時の私たちのことは、誰も知らない!!艦娘を艦娘サマと行っている連中は何も知らない!知ろうともしない!!」
「電は、ここで人間を裏切ろうと思っているのです」
一瞬時が止まった気がした。
「木曽さん。人間は何も知らないのです、電達がどんな思いで、ここで敵と戦っているのか。でも電は誰にも知られぬまま死にたくないのです。」
「まて」
「木曽さん。電を手伝って欲しいのです。」
今までずっと背を向けていた電がくるりと振り返り、微笑んだ。
あぁ、ずっと変わらない、電の笑顔だ。
俺が始めてここに来た時、摩耶を部屋に案内した時。ずっと変わらない笑顔だ。
さっき、こいつは狂ってしまったのかと思った。でも、こいつは正気で、本気なんだ。
狂ってイカレた奴より、正常でイカレた奴の方が何倍もヤバイ。
「…無理だ、出来るわけ無い、この艦隊で日本を裏切る?日本の全艦娘艦隊と戦う気か?深海凄艦と戦いながら?血迷うのは止めろ、第一戦うだけの武器も、燃料も無いじゃないか?」
無理だ、出来るわけ無い。二三回全力戦闘したら全員燃料が切れ、魚雷の補給や砲の修理をする資材にすら苦心している。
誰かに知ってもらう?馬鹿を言うな、誰かに知られる前に鎮圧されて終わりだ。
「武器と物資があれば、出来るのです?」
電は俺の答えを予想していたみたいで顔色を一つも変えることなく、床の板を外す。
「ついてきて欲しいのです」
真っ暗な地下に続く階段をカツカツと音を立て、電が降りていく。
俺は後に着いて行った。
「これだけあるのです」
「な…」
言葉がでなった、地下には地上の集積所より広い空間が広がっていて、大量の燃料・弾薬・資材が山積みになっていた。
「この島は、過去の大戦では要塞でした、そのときに軍が放棄した物資、電がずっといざと言うときの為に目録を擬装して備蓄していた分…ずっと溜めていたのです」
ま、司令官は気付かなかったみたいですが?と微笑みながら話を続ける。
「嘘…だろ?」
「この物資を使い切ってしまったとしても、この島は落ちないのです。艦娘として戦えなくなっても、これだけの物がありますから」
電が物資の中から細長い棒を取り出す。
陸軍の装備には詳しくないが…それが人間の使うライフルである事だけはわかった、電の背後にはさらに大量の装備が見える。
提督も擦り切れちゃった系だったか……
確かに、これだけあれば…戦えるのかも知れねぇ。
海では負けても、陸では何ヶ月も戦えるかもしれない、そうなれば…軍と行っても国民に隠し通すことは不可能だろう。
「電の目的は…艦娘が本土で持て囃される中、人間の勝手な都合で死んだ艦娘がいることを知らしめる事、この島を、艦娘の国として生きて行く事を認めさせること、なのです」
「艦娘は提督に従う物です、ですが提督が居なくても艦娘は生きて行ける事、艦娘にも、意思があることを証明したいのです」
「…」
「木曽さんはこの艦隊の中でも古参なのです、他の艦娘からも信頼されていると思うのです」
「木曽さん、電に、協力して欲しいのです」
電は、ライフルを抱きかかえたまま、俺に向かってにっこりと微笑んだ。
1.積極的肯定
2.消極的肯定
3.消極的否定
4.積極的否定
終
関係性は無いけどこれまで書いたSS
摩耶「…くそがっ!」提督「…恨んでくれても構わんよ」
摩耶「…くそがっ!」提督「…恨んでくれても構わんよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1413383208/)
叢雲「私たち、何のために・・・」 提督「・・・それが俺たちさ」
叢雲「私たち、何のために・・・」 提督「・・・それが俺たちさ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1414836562/)
叢雲「拒否…ですって?」 提督「拒否…だと?」 大和「はい、拒否です」
叢雲「拒否…ですって?」 提督「拒否…だと?」 大和「はい、拒否です」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1415878009/)
ケッコンカッコカリノカリ・他
ケッコンカッコカリノカリ・他 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1418391866/)
瑞鳳「正規空母のいない機動部隊」摩耶「タスクフォース、だからな」
瑞鳳「正規空母のいない機動部隊」摩耶「タスクフォース、だからな」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419168700/)
夕張「出来ました!○○です!」→夕張「失敗しました!」
夕張「出来ました!○○です!」→夕張「失敗しました!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423579858/)
>>73
質問がありましたのでお答えします。
その通り、巻雲です。彼女もちょいとやらかしてしまった子なので…
ただ
・メインキャラが増えすぎると自分が扱いきれない
・ゲームで所持してはいるがあまり育ててなくてキャラを掴みきれて居ない
・巻雲のやらかした事をうまくこのSSの世界観にあわせて再構成できない
と行った理由で、モブ扱いとしました。
これで終わりなん?
え?
続編あるんだよね?
無論、続編も考えては居ます。
ただ、現時点でこれ以降の展開がまだそこまで組みあがっていない事
長くしすぎて続けれずに打ち切ってしまったという前科がある事
などから、いったんここで区切ってしまおう。という言い訳をさせてください
え?終わりってプロローグがってことだろ?
これで終了はいい判断だと思うよ
この>>1誉めることしかしない読者に持ち上げられて自分の力量を鑑みずに世界観拡げまくってパンクした事あるから。
ここで終わらせりゃたまにある後味の悪いエンドみたいな言い訳も出来るしな。
とは言えキレちまった電ちゃんがどう行動を起こすのか気にはなるな・・・
俺の嫁艦だけに
>>96
書き方変えただけで偽者とか騒いだ挙句
間違いだと分かっても
引っ込みがつかなくなった荒しクンだね
まだストーカーしてるんだww
誤解が解けた後、痛烈独立愚連隊結成、みたいなものを想像してたんだが、こうなっちゃうか
乙
いや、すごかったよ、ここまでするする読めた
今から過去作読んできます
艦娘の反乱で拘束される提督
重荷が取れてやたらフレンドリーになった提督に困惑する電
そもそも艦隊内の艦娘同士の誤解は解けそうだけど、国や軍の上層部の誤解は解きようが無いしな
そういや最後に選択肢っぽいものがあるけど、これで次回作最初のキソーの行動が変わったりするの?
>>103
絶対に反映させる。とは約束出来ませんが、この続きで一番悩んでる事の一つが他の艦娘が電の行動に乗るか否か、なので
ご意見が出てくれば参考にさせていただくことになると思います
おつ
続編スレ立てたらこのスレで告知とかしてほしいな
んじゃとりあえず俺は2で
おつかな
引きこむ引きだ
一応安価は3
4
おつおつ
安価は3で
乙です
3でお願いします
4かな、戦いは数だよ兄貴
4で
4
4
4だな
1
結局やり方だ、初めから敵対する必要はない
従う振りして各地の姉妹艦と連絡を取り
協力を取り付け
仲間を増やしていけばいい
せっかく放任なんだから利用しない手はない
>>116
放任と言っても隔離状態なのにどうやって連絡とるんだよ。
直接なんて無理だし、郵便も無理、無電なら他の奴にも傍受されるし公式には沈んでる事になってるんだから、誤報とか擬装電文で処理されるだろ?
ところで>>1は採用する気の無い安価ってどういう事?そうやってレス稼いで楽しい?
安価に参加する奴も一応終了したSSなんだから感想ぐらいつけてやれよ…
この>>1、SSはおもしろいんだけどなんか微妙なところでミスして厄介なの呼び込む印象が強いわ
誰も望んでないのになんか語りだす
1に粘着傾向
1でもないのにageる
末尾O
コンボだな
厄介なのを呼び込むってのが見事なブーメランでワロタ
正直4で提督と話し合って和解、皆で持ち直していく話がみたいわ
自演だと思えると自演しております
1で電に協力する
基本的には>>116の路線、定期便もあるし海で他の艦娘に会えば連絡は付く。(摩耶や木曽は轟沈扱いとはかかれてない)
提督も本営に対して不満があるだろうから、軌道に乗った後説得すればこちら側についてくれるんじゃないかな
選択肢は1で
乙
提督いい人で安心した
安価は4
1か2だな
提督が職務放棄してるんだから麻耶とか鎮守府抜け出してもばれないし
外国に護衛任務打診して独立路線もありかもな
逆に4だと現行維持?ジリ貧にしかならない
問題あるのは提督じゃなくてその上の組織そのものなんだから
和解?(無関心であって嫌ってすらいないのだが)しても何も変わらない
仮に以前のようにやる気出したら本部に睨まれて良くてクビになるだけ
2かな、とりあえず電の案にのる
でも短絡的に人間に戦いを挑むよりも各地の艦娘に窮状を訴えるべきだ
播磨型ならすぐに話せば味方になってくれるだろう、高翌雄型も情報をくれたり逆に流したり間接的に協力してくれそう
戦いになるにしろ、一方的な悪役にされる前に自分たちが止む無く戦いを挑まれた流れを作りたいね
ちょっと整理しよう
電ちゃんが蜂起する目的は
1.自身達の酷い境遇を国民に知らしめること
2.第15艦隊艦娘の独立?自立?を日本政府に認めさせる事
でいいんだよな?
1.はスノーデンよろしく外国のメディアとコンタクトを取って報道して貰えれば済むとして
問題は2.だな下手打つとイスラム国みたいな扱いを受けかねん
世界観が分からんからな
1が今まで書いたSSならほぼ現代、艦娘は日本だけで重複なし、だったか
現代かはともかく、艦娘が日本だけいて重複なしならそのまま外国に亡命、あるいは後ろ盾になってもらうのもアリかもしれないな
1ダ
シカシ、ハッピーエンドヲ求ム
でも今までは自衛隊、今回は軍だから、今までとは同じって思わない方がいいのかも。
この後の予想
次回作は始まるけど作者が途中で投げ出してエタる
でもプロットは出来てるとか言って長々とプロットを書き込んでまともな読者には呆れられるけど信者と荒らしだけ残る
つまりお前は残るんだな
乙
割とこういう終わり方も悪くないと思う
今後の予想
蜂起した電たちは提督の拘束を試みるが抵抗され殺害してしまう
壮絶な戦いの末、独立を勝ち取った彼女達だが
後日、提督が再三再四に渡って電たちの原隊復帰を陳情していた事を知ることなり・・・
そこから実は提督ギリギリ生きてて罪悪感やらで超絶依存する電ちゃん見たい
続編始めました。
提督「…反乱だ」
提督「…反乱だ」 - SSまとめ速報
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ありがと
新スレ乙です
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