春香「ループ…ですか」 (10)


私の事務所にプロデューサーさんはいない。いや、居るにはいるのだけれど、それはまだプロデューサーさんじゃないというか…

「自宅から事務所までどれくらいかかりますか?」

何も知らないような顔で私にカメラを向けるプロデューサーさんは、何も知らないように、私に聞いてくる。

「えっと…2時間くらいですかね」

そう、これはあの時の、まだプロデューサーさんが事務所に来たばっかりの頃の話。
皆の自然な姿を見たいという希望で、カメラマンとして765プロに来たあのプロデューサーさんだ。

「…遠くないですか?」

プロデューサーさんは驚いたように私に聞いてくる。
これも何回目だろうなぁ…
私は考える振りをしながら、そう内心呟いた。


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何回繰り返したのかもう覚えていない。覚えているのは、プロデューサーさんがハリウッドに行った次の日に、目が覚めたらこの時間まで巻き戻っていたことくらい。

最初はびっくりして皆に話したりしたんだけど、これまた驚いたことに皆私が何を言ってるのか分からないっていう顔をするの。

まるで、私が変人扱いだったよ

何回も何回もハリウッドまでやり直したんだけど、結局何回やっても今日に戻ってしまうんだよね。

社長が、自慢気に咳払いをして喜ばしそうに言った。

「何を隠そう、このカメラマンが君達の新人プロデューサーだ!」

えぇ〜と騒いで、皆はカメラに群がっていく。まるで初めて知ったように。
はいはい、これももう聞き飽きたかな。
1人だけ無反応でその場に突っ立ってたのが不思議だったようで、律子さんが私に聞いてくる。

「どうしたの、春香。新しいプロデューサーよ?」

「えっへへ…ちょっとびっくりしすぎちゃって」

あぁ…、と律子さんは納得したように頷く。
一体何を納得してるんだか…

皆まとめてトップアイドル!と右手に力を込めるプロデューサーが目に映る。

最初は何とかここから抜け出せないか、頑張った。猛練習に励んだり、毎日プロデューサーさんにクッキーを作ったり、それはそれはもう必死だった。
でも…あれやこれ手を尽くしたけど、結局プロデューサーさんがハリウッドに行った次の日を迎えることは無かった。
なかには途中で今日まで戻されたりしたこともあったね。

「…ふぅ。」

ため息が出る。
正直、トップアイドルという言葉ももう聞き飽きたかな。
どうせプロデューサーさんがハリウッドに行ったら元に戻ってしまうんだし、今回は好き勝手に過ごそうかな!

そう皆とは違う意味で微笑む私がいるのであった。

えっ

こら!

(プロローグ)完 ってことだよな?続きはよ

ここからが本番なのに!終わる終わる詐欺はよ終われ

早くしたまえ

依頼出されてる・・・

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