メイド「傭兵王女の冒険」 (119)
メイド「皆様初めまして」
メイド「私、東の港国第三王女様にお仕えするメイド騎士と申す者です」
メイド「皆様はお気軽にメイドとでもお呼び下さい」
メイド「さてさて、この度皆さんにお聞かせしたいのは、その困ったわんぱくな、だけど可愛い第三王女様のお話なのです」
メイド「実はこの度そのお姫様が、こんな困ったことを言い始めまして…………」
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……………………
今日から手記でも付けようと思う
何故なら今日は私の記念すべき日だからだ
姫「そう言う訳で今日から傭兵王女として傭兵団を作ろうと思うんじゃ!」
メイド「どういう訳ですか!」
姫「じゃってのう…………第三王女なんぞ領地も資産も受け継げず、どこかの敵国に人質として嫁入りするくらいしかない…………不自由じゃろ?」
メイド「それも立派な御公務です」
嫌じゃ~!
そう言う訳で私は城中の暇な……もとい有望な者をかき集め、城を出ることにした
一人は王宮の新人料理人
一人は新入の魔導師
一人は若いシスター
そしてメイドに、メイドを慕う女騎士
六人いればちょっとした問題は乗り切れるだろう
数日ほど入念に準備をした後お父様とお母様には内緒で五人を引き連れ城を出た
メイド「こんな事をして国王陛下がどれほどお嘆きになるか……」
しくしくと嘘泣きを始めたが、無視
料理人「私なんか何にも役に立ちませんよ?」
ごつい体の料理人がそんなことを言う
姫「旅先でも美味い物を食いたいのじゃ!」
料理人「はあ……」
メイド「……諦めて下さい」
料理人「強引な姫様だ……」
シスター「わ、私も小さな傷を癒すくらいしか……」
魔導師「私も」
姫「しかし旅と言えば僧侶に魔法使いじゃろ?」
大人しいシスターと暗めな魔導師……頼りないが旅をすれば成長するだろう
物語と言えばそういう物だし?
魔導師「いい加減」
うっさい
女騎士「あ、憧れのメイド先輩と旅なんて……」
メイドを除いた四人の中ではマシに戦えそうな女騎士だがどうにも頼りない
私の方が剣の腕は立つし
魔法も使える私にはとても適わない
しかし暇な……有望な騎士が他に居なかった
女ばかりのパーティーに野獣を入れる訳にもいかん
そう言う訳でこの六人
私は自分の宝石箱を持ち出し、旅慣れているらしい料理人と博識な魔導師、メイドを連れて準備を始めた
メイド「まず馬車を用意しましょう」
魔導師「それと、テント、毛布に日用品、樽をいくつか」
料理人「鍋が二個は欲しいかな、あと割れにくい食器とテーブルとか……釣竿も欲しい」
なかなか役に立つ奴らだ
宝石二つ売ってそれらと、食料や調味料、水を買い込む
着替えは城から持ち出した旅装束でいいだろう
私も流石にお姫様な格好のまま旅するほど馬鹿ではない
メイド「それで姫様、どこに行かれるんですか?」
姫「寒いから南方じゃの」
魔導師「単純」
姫「お前は一々うっさいのじゃ!」
魔導師「傭兵なら、戦争をしてる国に向かうべき」
姫「……そうじゃな~」
結局私達は南方から更に西、南西草原の国に向かう事にした
メイド(まあそれなら陛下と連絡を取ることは出来ますね)
メイド(実は姫様の計画、全部国王陛下に筒抜けです)
メイド(実は)
メイド(料理人は東方で忍者と言うスパイをしていた者ですし)
メイド(シスターは大神官様の娘さん)
メイド(魔導師は王国一の知恵者の孫であり)
メイド(後輩の騎士ももちろん姫様相手に本気を出したことなど有りません)
メイド(私も魔法剣士だったりします)
メイド(これだけでも国王陛下の超親バカぶり……もとい、姫様に対するお深い愛情が分かると思います)
姫「何をごちゃごちゃ言っとるのじゃ?」
メイド「いえ、六人程度の傭兵団ではどこにも雇われないのではないかと……」
姫「うーむ、しかし今は兵を雇うほど金も無いし……」
メイド「宝石全部売れば一時的に兵団を組めますが」
メイド「その兵団を維持するのにお金がかかりますからね」
姫「そうじゃな……」
魔導師「最初は盗賊や魔物を狩ってお金と信用を得るべき」
姫「お、やっぱり賢いのう」
魔導師「姫が馬鹿なだけ」
姫「……こいつ……置いて行こうかの…………」
シスター「と、とにかく今は南の国に向かうのですねっ」
姫「おう」
姫「えい、えい、おーっ!じゃ」
「えい、えい、おー」
姫「覇気が無い……」
……旅立ちじゃ!
料理人「騎士さんと魔導師さん、少し付いてきてくれるかい?」
女騎士「は、はい~、なんでしょうか?」
魔導師「食料調達?」
料理人「ああ、有るものだけじゃ足りなくなるからな」
早速料理人が夕食の用意を始めた
楽しみだ
買い入れた物がほとんど調味料だったから心配していたが
料理人達はキノコや木の実、山菜や野草、香草、鳩などを取って帰ってきた
料理人「魔導師さんのお陰で狩りも出来るし、助かるな」
魔導師「私も肉を食べたい」
女騎士「肉食系魔導師……」
シスター「良いですね~お肉っ」
女騎士「なまぐさシスター……」
メイド「ではテーブルの準備をしましょう」
メイドはテキパキとテーブルと椅子を用意
樽から水を汲み出してコップと並べる
料理人「今日は鳩のソテーに炒めた木の実とキノコを添えて、あと野草のサラダ」
料理人「パンは買い置きの堅パンだけだけど、この香草のスープをつけて食べれば美味い」
料理人「次の街に着いたら根菜を幾つか買うことにしたいんだが……」
姫「うむ、いいじゃろ」
姫「いただきます!」
「いただきま~す」
うむ、美味い
鳩肉に木の実炒めが良いハーモニー
それにしてもみんな大食いだ
この先大丈夫だろうか、少し不安になる
初めての夜
思ったよりずっと寒かった
テントに囲炉裏を作り、薪に火をおこしてその脇で寝る
寒い
寝辛い
あったかいベッドで寝たい……
早速ホームシック
……いやいや、まだまだこれからじゃ!
翌朝起きるともう料理人と魔導師が朝食の用意をしていた
…………焼けたベーコンの香りが素晴らしい
王宮にいてもこんな小さな事に感動しなかったのに
ちょっと旅の良さを感じた
他に楽しみがないのだから仕方ないが、太るかも……
メイド「思ったのですが、嵐になると困りますね」
料理人「森の中にテントを立ててやり過ごすしかないだろう」
昨晩より寝辛いのは間違いないだろう
早く街に行って拠点を作りたい
ああ、やっぱり旅は大変だ
物語のようにはいかない
料理人「夏場なんか虫も多いし、それは大変だぞ」
姫「う~ん、帰りたくなってきた」
メイド「是非帰りましょう、今すぐ帰りましょう!」
姫「……最初からそのつもりで脅しとるじゃろ?」
メイド「勘のいい……いや、何でもありません」
姫「聞こえとるわ!」
シスター「私も街育ちなんで辛いです……」
魔導師「私も」
女騎士「私もかな~」
料理人「じゃあ私も」
姫「お前は旅人じゃろっ!」
姫「お前ら結託して私を帰らせようとしておるようじゃが、無駄じゃぞ!!」
メイド(へそを曲げられました……)
メイド(こうなると姫様は面倒くさいです)
私達はそのまま南下し、なんとかその日の内に南の国に着いた
ふう、宿を手配して路銀を稼ぐために簡単な仕事を探そう
手持ちの宝石は緊急用に取っておき、できる限りは自分達で稼いで行きたい
メイド「へえ、それなら手詰まりにならずに済みそうですね」
魔導師「珍しく頭を使った」
姫「うっさいわっ!」
料理人「野菜とかを買い出しに行ってくる」
女騎士「荷物持ちます」
魔導師「薬草を集めてギルドに売ってくる」
シスター「教会に行って情報を集めてきます」
メイド「さて、私も魔導師さんの護衛をしますが、姫様は?」
姫「う~ん、馬車を宿屋に持って行って管理してもらうかの?」
姫「その後教会に行くのじゃ」
メイド「分かりました、お気をつけて」
シスター「お待ちしております」
私は宿屋に部屋を二つ取り馬車を預け、必要な金額を確認した
野菜の値段は比較的安いと思うし、宿代の半分も見積もっていれば良いか
急いで教会に向かう
シスター「姫様」
姫「おう、なんか聞けたか?」
シスター「幾つか聞けましたが仕事はやはりギルドで頼む必要がありますね」
姫「そうじゃな、次はギルドじゃ」
シスター「重要そうな情報は」
シスター「南西草原は蛮族が幾つか結託した連合軍に西から攻められているようです」
シスター「そんな中南西草原の国王様は病の床にふせられ」
シスター「その戦争のため西の港国からの物資搬送が滞り」
シスター「敗残兵や飢えた民が山賊や盗賊になって大陸南の全域で暴れているとか」
シスター「後、それらを邪神教が後押ししているらしい……です」
姫「なんか深刻に荒れとるのう……」
シスター「直接南西草原に行くよりこの近くに拠点を設けて賊を討っていくのが適当かと」
姫「うむ、検討しておこう」
シスターから十分な情報を得たところでギルドへ
ギルドに入ると煙草や酒の、男臭い嫌な臭いが満ち満ちていて……
これからここに通うと思うとゾッとする
カウンターに行き係の女性に確認するもまだ魔導師達は来ていないようだ
とりあえず貼り出されている仕事を見てみるか
シスター「ええっと……」
姫「ふむ、薬草調達とかモンスター討伐もあるのう」
掲示板を見ていた私達に煙草をくわえたむさくるしい男が声をかけてきた
来るな
煙草の男「嬢ちゃん、こっちきてお酌してくれや」
はずむからよぉ、と手で丸を作る
姫「悪いがこいつは聖職者での、そう言う仕事はさせられん」
煙草の男「じゃあ嬢ちゃんがやってくれたらいいだろ……」
私の手を掴んできた
思いっきり足を蹴り払うと煙草臭い男は盛大にすっころんだ
ギルド中がドッと沸き上がる
まあこうなると男も怒り狂って掴みかかってくる訳だが
酔っ払ってるのでもう一回出足払い
ギルドのあちこちからヒューヒューと口笛が飛んできた
顔を売るには十分だろう
むふふ
この辺りでやめておけば良いのに煙草男はまだ突っかかってくる
私は男の顔に火球の魔法を放ち、ヘタった所で首元に細剣を突きつけた
シスター「姫様……お強いのですねっ!」
姫「こいつが酔いすぎなだけじゃ」
ギルドの奥から何人か人が出てきて男はつまみ出された
ギルド長と思しき人物から声がかかる
ギルド長「お嬢さんは東の港国の方ですね?」
一瞬、国に私の顔を手配に回されてる可能性を考えたが、そう言う話では無いようだ
姫「そうじゃ」
ギルド長「東の港国と言えば魔法剣士の国ですからね」
姫「まあのう」
その国でも最も優秀な魔法剣士の一人を連れ回していたりするが
そう言えばメイドは魔導師と一緒に来るのか
ギルド長「ではこちらのギルドで登録を行っていただけませんか?」
姫「急じゃのう、まあしばらくはこの国を拠点に仕事をするつもりじゃ」
ギルド長「承っていただき、有り難う御座います」
とりあえず薬草調達と恐竜退治を請け負った
これくらいなら……
やがて魔導師とメイドがやってくる
メイドはチラッとギルド長を見た
メイド(当然国王陛下の手は回っております)
姫「早速仕事を受けたのじゃ!」
魔導師「薬草調達?」
魔導師「馬鹿姫、この白鳩草ってすごくレアな薬草だから」
姫「えっ、手に入らんのか?」
魔導師「ちょっと手間」
姫「しまったのう、お前が来てから受けるんじゃったわ」
メイド「先に恐竜退治に行きますか……報酬はどちらも宝石一つですか」
魔導師「簡単な仕事ではない」
シスター「でも当分暮らせますね」
魔導師「クリア出来れば……ね」
その後買い出しに出た二人とも合流し宿に入る
うーむ、出だしからヘマをしたかのう?
料理人「ふむ、結構遭遇ポイントまで距離があるから馬車もある私ら向きの仕事かもな」
女騎士「恐竜なんて勝てるんでしょうか……?」
姫「宝石一つ売って魔法剣でも買うか?」
女騎士「い、いえ、それはパーティーのお金ですし……」
魔導師「恐竜退治と薬草採取…………一度にやる?」
姫「む、出来るのか?」
魔導師「白鳩草は沼に生える……姫も催眠魔法課程で習ったはず」
姫「……ばあやに聞いた気もするのう……」
魔導師「馬鹿姫……姫の教師はうちのおばあちゃんだから間違いなく教えてる」
姫「なんと、お前あのばあやの孫か!」
メイド(もう少し内緒にしてもらいたかったけど、まあ話の合う友達が居た方が良いですね)
魔導師「恐竜の生息地に向かう街道の近くに大きめの沼がある……そこで探そう」
姫「そうするかの」
料理人「じゃあ今日は寝よう、朝早く出れば行き帰り二泊で行けるはず」
姫「こんな地図で良く距離を把握できるな?」
メイド(地図をくるくる回しながら首を傾げる姫様……可愛い)
メイド(可愛い姫様じゃなかったらこんな仕事してませんが)
姫「なんか不穏な眼差しが……」
メイド「気のせいでしょう」
女騎士「では姫様とメイド先輩は一つの部屋で、私達はもう一つの部屋で良いですか?」
メイド(女騎士ちゃんグッジョブ!)
姫「私は魔導師と話がしたいのう……」
メイド(むむっ、思わぬ敵が!)
魔導師「当分旅路で話す機会はある」
姫「そうか」
姫「楽しみは先に取っておくかのう」
料理人「ちなみに好きな物は先に食べた方が太らない」
メイド(余計な事をっ!)
姫「もう面倒くさいからそれで良いのじゃ」
姫「私は風呂に入って寝るぞ」
メイド「そうしましょう、ではお背中をお流しします」
姫「お、おう」
何か物凄い勢いで風呂に押された
……メイドは私がベッドに入ってからしばらくベッドに肘をついて昔語りなどして来た
メイド「そして私が王宮一の魔法剣士と認められた訳ですが」
メイド「王に頼み姫様付きのメイドにしていただいた訳です」
姫「私はもう寝たいのじゃが……」
メイド「これは失礼……ではお休みのキス」
姫「寝ろ!」
全く……
旅先で少し羽目を外しているのか?
可愛がられるのは良いのだが限度があろう
翌朝は日の出の前に起き、準備を始めた
料理人「二日分の食料はあるが」
料理人「どうだろう、恐竜肉を保存食にしたいんだが」
!?
恐竜って食えるのか?!
毒は無いか??
シスター「宗教上肉食は……」
姫「お前鳩食ったじゃろ!」
シスター「ううぅ、だって恐竜……」
料理人「美味いぞ」
メイド「確か氷山で遭難した研究者が氷漬けになっていた恐竜を仕方なく食べたという逸話があるのですが、牛肉のような旨味があったそうですよ」
姫「牛肉……」
シスター「牛肉……」
女騎士「え、いや、何故お二人は食べるつもりになってるんですかっ?!」
魔導師「そう言えばここにモンスター料理についての本が」
魔導師「この本には恐竜肉はドラゴン肉に次ぐ美食、とある」
姫「……腹が減ってきたのじゃ」
シスター「楽しみですね~」
女騎士「いや、そこは止めて下さいよシスター!!」
メイド「まあ姫様が望むのであれば」
料理人「恐竜肉は一体で二百キロ以上は食べられるはず」
料理人「毎日一人一キロ半食べても相当な量だな」
メイド「保存の問題が有りますが当分肉に困ることはなさそうですね」
料理人「そう言う訳で塩を大量に用意したい」
姫「塩漬け肉にして保存するのじゃな」
料理人「香草やチップは現地調達して……これで生ハムやベーコンも作れる」
姫「うおー、よだれが出てきたのじゃ!」
シスター「美味しそうですぅ」
女騎士「うう……」
メイド「まあ毒じゃないなら良いでしょう」
メイド「当然ビールも用意しますよね?」
うちのパーティーで飲めるのはメイドと料理人、女騎士だけだが
馬車も結構狭いのだが
料理人「樽三つくらいか?」
姫「多い!」
料理人「樽一つなら私一人で二日もあれば空けるが」
姫「底無しか!」
メイド「美味しいおつまみ……」
女騎士「ビール飲めるなら良いですね」
魔導師「大人はこれだから……」
姫「珍しく魔導師と意見が合ったのじゃ」
シスター「私もまだ飲めません」
姫「お前は聖職者じゃろ!」
うん、だがパーティーの半分がやる気になるなら良いか
私達は塩と酒を買い込んでから出掛ける事にした
肉の現地調達……
なんだかワクワクする
メイド(その頃、東の港国ではこのようなやりとりがなされておりました)
メイド(国王陛下が勇者を呼んでいたのです)
国王「よく来た……選ばれし勇者よ」
勇者「は、はあ……」
国王「分かっておる、いきなりで戸惑っておるのじゃろう」
国王「しかし、そなたには旅立ってもらわねば困る!!」
勇者「はいーっ!」
国王「儂のいっっちばん可愛い末娘が!」
国王「何を思ったか傭兵になりたいと旅だったのじゃ!!」
勇者「陛下、落ち着いて下さい」
国王「おお、すまん……」
国王「そなたには儂の末娘を守ってもらいたい」
国王「もし成し得たならばそなたの嫁にやっても良い」
国王「失敗すればミンチにして豚の餌じゃが」
勇者「ふえぇ……」
メイド(勇者殿には断る勇気が無かったようですよ)
メイド(チッ、男のくせに!)
メイド(男しか姫様の為の勇者になれないとか不公平では無いでしょうか?)
メイド(無いでしょうか!)
メイド(実力的には私が一番勇者に向くと思うのです)
メイド(もしこの時点でこんなお話があることを知っていたら私が勇者に変わって……くそっ!)
メイド(……失礼しました)
私達が再び旅立って
翌朝
野宿のせいか、何やら良くない夢を見た気がする
顔も知らない婚約者が来て私は不快に思うのだが
何故かメイドがキレてその婚約者をなますに切り刻み
料理人が美味しい恐竜肉ですよーっ!と妙なテンションで皿に盛り
シスターが美味しそうです~とか言い出し
女騎士がそれに突っ込み
魔導師が無かったことにしようと焼き払った所で目が覚めた
姫「??」
メイド「どうされましたか姫!」
姫「ぉうわっ!!」
悪夢を見て目が覚めた時に一センチ先に他人の顔が有った事を想像してみて欲しい
私は火球の魔法を三発くらい放った
メイド「す、すみません……」
心臓止まるかと思った
さあ、恐竜狩りだ
アレのせいでちょっと今朝は調子が悪い
目の下に隈が出来てた
魔導師「おはよう、姫様」
姫「おう」
旅立ちの時は一番苦手だった魔導師が一番の癒やしキャラだ
旅は人を成長させるのだな
シスター「今日は肉日和です」
うん、お前のポジションとしては最も間違ったセリフだな
まあ今日が恐竜との遭遇予定日ではあるのだが
お日様も綺麗に顔を出してくれたし
メイド「昨日実に嫌な夢を見まして」
姫「聞きたくないがなんじゃ?」
メイド「姫様がごろつきにピー!されて私がなますに切り刻むと言う……」
姫「なますだけ一致」
メイド「?」
姫「ろくな夢を見んなお前は」
メイドを軽く小突いたら幸せそうな顔をした
あまり深く追求するまい……
さて、恐竜退治の前にまず私達は沼を探す
料理人「沼でナマズかウナギを取るのも良いかな?」
姫「ほうほう、淡水魚か」
料理人「鯉やハゼも美味いぞ」
シスター「楽しみですねぇ」
姫「泥臭いんじゃないかのう?」
魔導師「泥抜きすればいい、沼の魚は栄養価が高い」
姫「そう言うもんかのう?」
料理人「沼エビやザリガニや蟹だっているし、鴨や渡り鳥もいるだろう」
シスター「夢が広がりますねえ」
姫「お前は夢見ちゃいかんがな」
女騎士「貝もいますかね?」
料理人「泥抜きは大変だが、大きな貝が穫れるぞ」
女騎士「それは楽しみですね」
沼と言っても食べ物の宝庫なんだなあ
旅に出るまで沼なんて不毛な毒沼しか無いのかと思ってた
今日はここまでです
今回は複雑なお話にしたのでエタったらすみません
次は明日更新します
面白いけど、地の文は姫視点なのに時々メイドのモノローグ入るのが少しだけ気になるかな
ほんの少しだけだけど
てか、酉とこの軽いノリ的にメラの人?
恐竜肉乙
乙!
モンスター=食料なんだな
>>20
おれはむしろ気になって全く面白くない
食料ネタ多いな
また飯テロSSかww
こんな時間に読むんじゃなかった…
またジビエか!
乙
食うために[ピーーー]
殺したから食う
それがあるべき姿だからな
ありがとうございます
二重視点は中盤からは少な目にします
今回は大人しめなお話ですみません
モンスターもあんまり食べません
では更新します
恐竜遭遇の前に沼に着く
今回の仕事は薬草採取
私と魔導師は対象の物を知っているので薬草採取、残る四人は釣りだ
餌がミミズだったので触らずに済んで良かったかも
しかし沼は広く、一周するだけでも半日かかる
途中記憶にある薬草を片っ端から採取した
お金になれば良いが
目的の薬草は見つからないまま魔導師と再会
魔導師「見つけたよ、白鳩草」
さすが私の選んだ仲間だ
出会った頃から知ってるが本当に博識だ
姫「お前のお陰で宝石一個ゲットじゃな」
魔導師「う、うん」
私に誉められて魔導師は照れくさそうだ
私はなんだか魔導師を可愛く思った
同じ師に学んだ仲間だし
姫「じゃあ適当に薬草をむしりながら帰るか」
魔導師「じゃあ姫のルートで」
魔導師「多分取りこぼしがあるから」
ムカつくのじゃ
実際白鳩草を二つも発見した
きっちり働かれては文句も言えない
元来たポイントに帰ると
シスター「きゃっほーっ!」
料理人「ブラックバス追加か、シスターさん大活躍だな」
シスターも大活躍……
料理人「スッポンも釣ってくれたしお昼は美味いぞ」
本当に?
その日の昼ご飯は実にご馳走だった
ブラックバスの肉をムニエル
美味い
鴨肉のステーキに根菜のソテー
実に美味い
スッポンスープ
これも美味い
天然物は美味いとは聞いたことあるがこれほどとは……
みんな黙々と食べた
旅に疲れた体が癒えるようだった
鯉やナマズを干物にして、貝の泥抜きをしつつ、私達は恐竜を探し始めた
食う
メイド(姫様が肉食動物になってしまいました……)
その日のうちに私達は恐竜に遭遇したが
戦いである
メイド「くっ、流石に宝石一個分の魔物ですね!」
料理人「弱点は足と頭だ!」
魔導師「火球では難しいか……閃光魔法!」
女騎士「なんとか倒しますっ」
シスター「傷を癒やします!」
私は恐竜に突進し、鱗に守られた脚を斬り、火球を撃ちつつ離れた
なんとなく初めての獲物は私がトドメを刺したかった
暴れる恐竜に挑む
噛み付かれ投げ飛ばされ
若干血塗れになっているのが分かる
私は王女なのに
いや
だからこそ
姫「私はひ弱なお姫様じゃない……!」
姫「うおおおおっっ!!」
傷を負った恐竜の心臓に
鋭く直撃を入れた
私は
遂に初めての獲物を仕留めた……
料理人「まあ心臓を突くと血抜きが上手く行かないんだが」
……そんなこと先に言って欲しい
とにかく
私は我がパーティー最初の獲物に、無事にトドメを刺した
肉で言えば鳩を捕った魔導師に
報酬で言えばやはり白鳩草を取った魔導師に負けてはいるのだが
初めての討伐任務
最初に仕留める事が出来た
魔導師「おめでとう、姫様」
うふっ!
大満足!
姫「ありがとうなのじゃ!」
シスター「お怪我は大丈夫ですか?」
姫「うむ、お前の回復魔法はよく効いたぞ」
メイド「大切な姫様が傷物に……」
その言い方やめい
その後、料理人が短刀で見事に恐竜肉をさばいていった
メイド「ふむ、本当に上質な肉ですね」
女騎士「グロテスクです……」
魔導師「食うって言うのは命をバラバラにして消化するってこと」
魔導師「自然の摂理」
私は思う
魔導師って言うのはみんなこんな風に達観してるのかな?
ともかく
料理人「キノコと川魚のスープ」
料理人「野草とベーコンのサラダ」
料理人「根菜の煮物」
料理人「……メインは恐竜肉のソテー、オレンジのソースを添えて」
姫「……うむ」
姫「スープはサッパリじゃな…………サラダのドレッシングは濃いのう」
姫「煮物は薄味で変わった味付けじゃが好きじゃ」
姫「そして……これがメインの恐竜の肉か……」
姫「ん、塩胡椒に香ばしい溢れる肉汁の旨味…………」
姫「……美味い……」
姫「ん~~、美味いっ!!」
シスター「さいこうーっ!」
女騎士「あなた本当にシスター?!」
メイド「ははっ、これは美味しいですね」
姫「苦労したから格別じゃな!」
料理人「はい、ビール」
メイド「イエッス!」
魔導師「んふ」
魔導師「美味しい」
料理人「ふむ」
料理人「この肉だと旨味も強いし、甘いソースよりシンプルな味付けで肉の旨味を味わいたいか……」
料理人「飲む前に塩漬け作っておくか」
メイド「おつまみもお願いしま~す」
料理人「塩漬け終わったらな!」
女騎士「……しかし解体シーンを見るとちょっと食欲が……」
姫「神経細い奴じゃな」
女騎士「姫様は平気なのですか~?」
姫「昔厨房に忍び入って鴨や兎の解体を見ていたし」
女騎士「フリーダムですね、姫様」
メイド「前任者の頃から苦労されたようですよ?」
メイド「目を離したら街を飛び出して森のモンスターに襲われそうになってたとか」
姫「ああ、あったのう……妖精探してた時じゃな」
魔導師「馬鹿姫」
姫「うっさい」
街に帰る前に一泊
酔っ払った大人達がいつまでもお喋りしている
私はテントで魔導師と話をする
魔導師「姫の喋り方、おばあちゃんの真似?」
姫「そうじゃ、赤ん坊の頃からばあやに言葉を習ったからこれが普通になってしまったわ」
魔導師「……嫌いじゃない」
姫「そうか」
姫「お前もばあやに習ったのか?」
魔導師「私はあんまり」
魔導師「ただ本が沢山有ったからそれで覚えた」
魔導師「魔法は失敗すると困るからみっちり教えてもらったけど」
姫「もっとすごい魔法も使えるのか?」
魔導師「……」
魔導師「秘密」
姫「ずるいのう……まあいい、寝るか」
魔導師「うん」
その日は料理人と魔導師と三人で寝た
無事に街に帰ると、ギルドに報告
白鳩草の要請は一つだったが、他も買取してもらう
結果として討伐分薬草分を含め、宝石三個分
姫「初収入にしては上等だな」
メイド「ふむふむ……、管理しておきます」
姫「みんなの装備を整えてやりたい所だな」
女騎士「私はこの剣があれば……」
姫「しかし頼りないしのう……肉の解体に戸惑う奴が盗賊を斬れるのかのう……」
女騎士「うぐっ……」
姫「魔法剣なら直接斬らなくても魔法を放てるし」
女騎士「わ、私は仮にも騎士です……悪には容赦しません!」
姫「ほ~んと~かの~」
魔導師「とりあえず保留」
魔導師「それは宝石箱に入れておくと良い」
姫「そうするかのう」
料理人「食材は十分買い入れてある」
姫「いよいよ金の使い道が無い」
メイド「もう少し稼がないと中途半端ですからね」
魔導師「兵を雇うとしても五十人程度?」
姫「戦力もそんなに足りてなくもないし……なんか皆暇人な割に強いし」
メイド(ギクッ)
料理人「で、次はどこに行くんだ?」
姫「思い切って山賊でも壊滅させるかのう」
料理人「ふむ」
料理人「私は二、三日パーティーを離れようと思う」
姫「?」
姫「何故じゃ?」
料理人「城に用が有ってな、少し里帰りだ」
姫「皆で行かないのか?」
料理人「一人の方が身軽だからな」
メイド(ふむ、どうやら)
メイド(姫様が無理矢理山賊砦に押し入る前に偵察するつもりですね)
シスター「じゃあ私も明日はお出かけしようかな~?」
姫「う~ん、じゃあ料理人が帰ってくるまでは別行動かの?」
魔導師「そうね」
姫「くれぐれも私の事を城の者に話さんようにな!」
料理人「分かってる」
姫「そう言う訳で、明日は魔導師とお出かけしたいんじゃが」
魔導師「構わない」
姫「やった!」
メイド「私も」
姫「嫌じゃ」
メイド「そ、そんなはっきり……」
メイド(まあこちらもやることは有るのですが)
魔導師「…………」
翌日私は予定通り魔導師と遊びに出掛ける
多少なら自由になるお金もあるし……
お買い物とかしてみたかったし、大っぴらに友達と街を散策出来るなんて!
姫「楽しみじゃ!」
魔導師「あんまり張り切ると転ける」
姫「クールじゃのう」
姫「魔導師と言うのは皆そうなのか?」
魔導師「私だけでしょ?」
姫「ま、まあ深くは聞かんが……」
姫「友達でも話せんことはあるからの」
魔導師「友達?」
姫「同年代の友達は初めてなのじゃ!」
魔導師「そう……」
姫「シスターや他の三人はだいぶお姉さんじゃからな」
魔導師「そうだね」
私達は広場や大通りを回る
ちょっと買い食いしたり、楽しい
魔導師「あまり食べると、太る」
姫「こういう格言がある」
魔導師「?」
姫「ダイエットは明日から!」
魔導師「ぷっ!」
魔導師「馬鹿姫、そんな格言はない」
姫「格言じゃなかったか?」
魔導師「馬鹿姫の格言集に書いておく」
姫「そんな物書くでない!」
二人で大笑いしながら街を歩いた
最後にギルドに寄ってみた
掲示板を魔導師と確認してみる
前に失敗したからな
魔導師「山賊砦に乗り込むって本気なの?」
姫「皆がおれば割となんとかなるじゃろ」
姫「数日雇うくらいなら昨日手に入れた宝石だけでも五百人くらいは雇えるし……」
姫「宿代は金貨二枚じゃから宝石一個あれば二カ月は大丈夫」
魔導師「でも兵数も分からない砦を落とすなんて簡単にできるかな?」
姫「うむ……不安になってきたのじゃ……」
魔導師「山賊砦を一つ落とすと宝石十個だって」
姫「凄いのう……」
魔導師「でも金貨五十枚くらいの任務からこなすべき」
姫「うむ……」
姫「国から兵を借りれんかのー」
魔導師「それなら最初から国がやってると思うけど」
魔導師「今の時代下手に兵を動かせば他の国から攻められる事も考えられるし、山賊も連携してくると思うし」
魔導師「安定して大軍を使えるのなんて東の港国だけ」
姫「そう言えばうちの周りには山賊いないのう?」
魔導師「昔居たけど皆殺しになった」
姫「そ、そうか」
姫「魔導師は歴史にも詳しいんじゃのう」
魔導師「三年前」
魔導師「その山賊討伐任務中に私のお父さんは死んだ……」
姫「!」
姫「すまん!」
私は魔導師に土下座した
魔導師「……人目があるのに、やめて」
姫「うう……すまん」
魔導師「何故泣くの?」
姫「ばあやが死んだのもその頃じゃろ……」
魔導師「!!」
魔導師「関係無い」
でも、魔導師がそんな風なのもそのせいじゃないのか?
私が呑気にお姫様をやっている影で幾つも悲劇を味わって……
魔導師「私も……」
魔導師「私も友達はあなたが初めてよ」
魔導師「だから泣かないで」
魔導師は私を抱き起こした
姫「すまん……」
姫「ありがとう」
魔導師「とりあえずこの仕事をやりましょうか」
魔導師「山賊砦の近くの山だけれど、山頂に魔物が出るみたい」
姫「うむ……小さい仕事じゃな」
姫「なんで誰も受けんのかな?」
魔導師「難易度は高いのに報酬が凄く低い」
魔導師「山頂にわざわざ行く人もいないから重要度も低い」
姫「そんなのをわざわざ受けるのか?」
魔導師「こういう仕事を地道にこなすと名声が上がる」
姫「……なるほどのう」
姫「おねーさん、この仕事をお願いするのじゃ!」
係員「はいは~い」
魔導師「私を……」
姫「ん?」
魔導師「……何でもない」
姫「どうなることかの」
魔導師「?」
姫「こっちの話じゃ」
……私は何も知らなかった
しかし私は全てを知っている
姫「そう言う訳じゃから料理人が帰ってきたら山賊砦近くの山に向かうぞ」
メイド「辺鄙な所ですね~」
姫「じゃからこそ名声に繋がると言うもの、のう魔導師」
魔導師「え、そ、そうね」
メイド「なるほど」
姫「魔導師が言ってたまんまなんじゃけど」
魔導師「馬鹿姫」
姫「ええっ?!」
メイド「まあ姫様ですからね」
姫「悪かったのう!」
シスター「なんだかまた大変そうな任務ですねえ」
女騎士「す、少しはお役に立てるでしょうか?」
メイド「まあ役に立たなかったら国に帰らせますが」
メイド「勇者とは自ら危険に飛び込む者ですよ?」
女騎士「……了解です」
次の日は料理人が帰ってこなかったので私は女騎士とトレーニングした
姫「私はまだ本気を出してないが、お主も本気を出してないのう?」
女騎士「ええっ、全力ですっ」
姫「そんな腕で騎士に取り立てられる訳がないじゃろ」
女騎士「うう……しかし……」
姫「本気を出さないと解雇しようかの」
女騎士「そ、それだけは……」
女騎士が力を隠してるのはとっくに知っている
しかしどれくらい強いのか知っておきたかった
姫「今ならメイドも見ておらんぞ」
女騎士「……では……しっかりと剣をお構え下さい」
姫「おう」
私はしっかり女騎士を見据え剣を構えていたが
後ろ?!
辛うじてかわすが
なんじゃその動き?!
なんとかついていくものの、一撃一撃が重い
練習用の木剣が折れてしまいそうだ
私は狙いをすまして女騎士に突きを入れる
突く、突く、突く!
剣をはじかれる
なんとか態勢を立て直すが
姫「くっ!」
喉元に剣を突きつけられた
姫「やるのう」
女騎士「姫様も……まさかついてくると思いませんでした」
姫「まあ私も本気じゃ無かったがの」
女騎士「えっ!」
姫「魔法使ってないしの」
女騎士「あ、そうですね……やはり修行が足りませんね」
姫「まだ本気じゃないのかのう……」
女騎士「い、いえ、まさか」
姫「まあ、そこまで使えたら十分じゃな」
女騎士「は、はい!」
姫「明日は沢山働いてくれよ」
女騎士「はい、わかりました……」
女騎士「あれ?」
女騎士「明日ってちょっとした魔物を倒しに行くんですよね?」
姫「魔物を倒してたら山賊に囲まれるかも知れんぞ?」
女騎士「ま、まさか」
女騎士「まあでもきっと大丈夫ですよ」
姫「ああ、皆を信じておるからの」
女騎士「……先輩がいるし……それに……」
姫「ん?」
女騎士「いえっ、なんでもありません!」
そしてその夜、料理人が手土産を持って帰ってきた
姫「東の港国名物イカ焼き煎餅か」
姫「もっとマシなもの無かったのかの~」
料理人「一応ソミュール液に使う香草を持って帰ったけど」
姫「肉を漬け込む塩水じゃったか?」
料理人「ああ、これで美味いの作るから良いだろう」
姫「しかしわざわざそんな香草取りに帰るとはのう」
料理人「せっかく良い肉が入ったし、特別美味いのを食わせたいからな」
姫「それは楽しみじゃ!」
メイド(まあ定期連絡要員に持ってこさせたんですけどね)
姫「明日は仕事じゃし、寝るか」
姫「今日は魔導師と寝る」
魔導師「甘えっ子」
女騎士「わ、私もよろしいですか?」
姫「うむ」
メイド(さて)
メイド(明日はどうなることでしょう?)
翌朝、山上へ向かう道
森が静かだ
天気は良いが森と言うのは虫や鳥の声がするものじゃないのか
姫「ふう……」
魔導師「疲れた?」
姫「いや、ちょっと気が重くての」
魔導師「?」
姫「心配させて悪いの」
魔導師「気にしない」
魔導師「……友達だから」
姫「うん!」
私の返事に魔導師は顔を赤らめた
やがて山頂に着く
魔物の気配はない
まあ、そうじゃろうの
姫「出てくるが良い!」
私が声を上げると…………森からワラワラと山賊が現れた
姫「して、料理人よ、敵は何人じゃ?」
料理人「ん」
料理人「バレていたのか」
メイド「ええっ!?」
料理人「三千だ」
姫「それっぽっちか」
姫「メイドよ」
メイド「はひっ!」
姫「私は全部知っておるからな」
メイド「ま、まさか……」
姫「お前らがお父様の差し金で動いていると言うことも」
姫「そして」
魔導師は、山賊たちの方へと歩いて行った
姫「許せ、魔導師よ」
姫「私はお前が山賊たちと内通しているのは知っていたが、その理由は知らなかった」
魔導師「……私は王族が嫌い」
魔導師「私のお父さんを戦争で死なせた国王も」
魔導師「あなたも嫌いだった」
魔導師「私のおばあちゃんを独り占めにしたあなたを」
魔導師「私は許せなかった」
山賊「そうよ、王族なんぞ糞ばかりだ」
山賊「さっさとこっちに来い、魔導師」
魔導師「ふふ……」
姫「行くな」
魔導師「あなたにそれを言う権利がある?」
姫「権利など知らん」
姫「私は王族」
姫「お前らが大嫌いな強欲な王族じゃ」
姫「友達だってもちろん失いたくない!」
魔導師「あはは、馬鹿姫!」
魔導師「さよならよ」
魔導師が小さな円を描くと
閃光が辺りを包み
耳をつんざく轟音とともに土柱が立ち上がり
山賊たちが何百人も吹き飛んだ!
魔導師「馬鹿な山賊ども!!」
姫「魔導師!!」
魔導師「私があなた達に復讐したかったのは本当」
魔導師「だから私はあなたに旅を持ち掛けられた時すぐにこいつらに知らせた」
魔導師「国王に愛されているあなたを誘拐し、東の港国を陥落するつもりだった」
魔導師「だから私は……裁かれるべき」
姫「じゃあ最後まで私を追い落とせば良かったじゃろう!」
姫「何故そうしなかった!」
姫「お前には……お前にはその権利が有る!」
魔導師「……だって」
姫「!」
魔導師「友達になったから」
姫「……うん」
姫「そうじゃ!」
姫「お前と私は友達じゃ!!」
迫り来る山賊達
私達も魔導師と合流し敵兵を薙ぎ倒していく
料理人「しまったな、援軍を呼ばれたか」
女騎士「数が多いですね」
姫「なあに、ここにはお前らが全員かかっても倒せない」
姫「軍神がおる」
メイド「ひゃっはーっ!!」
メイドはこの大陸で一、二を争う魔法剣士だ
一軍を持ち出したに等しい
どんな事態も乗り越える自信
その根拠だ
メイド「姫様、あんまり離れないで下さいね!」
魔導師「こいつらは全員私が倒す」
メイド「ご遠慮無用です」
メイド「私もあなたの内通を知ってましたので」
メイド「実はさっきまであなたは山賊に寝返ると思ってました!」
魔導師「そうね」
二人の強烈な魔法が敵陣を蹴散らす
敵はしかし、三千とはとても思えない大軍
料理人「偵察のついでに近隣の砦五カ所の兵数もチェックしたが、全部で二万近くいた」
料理人「しかしまさか私らに全軍向けるとは……」
姫「私がお父様の寵愛を受けてるのを知っているのじゃ」
姫「王国の援軍を見越しての事じゃろ」
女騎士「姫様、まさか援軍がある事もご存知で!?」
姫「お前らは私を侮り過ぎじゃ!」
そんなやりとりをしていると
目の前の軍隊を割って一人の男が駆けてくる
え、援軍一人!?
勇者「ひめさまああああああっ!!」
なんか来たーっ!?
女騎士「姫様もあれは知らなかったんですね」
メイド「勇者とは自ら危険に飛び込む者ですよ」
姫「あれは符丁じゃったか!」
勇者を用意していたとは思わなかった
一人一軍の実力者としてお父様の認めた王国三大英雄
メイドと勇者……
勇者「お待たせしました!」
姫「全く待ってない」
勇者「ええっ!?」
姫「じゃってのう、考えてもみろ」
姫「王国一の知恵者、魔導師の祖母に一番教えを受けたのは誰じゃ」
王国三大英雄最後の一人
それは……
姫「砕け散れ!」
メイド(姫様は魔導師に匹敵する魔法を放ち)
メイド(山賊達は哀れと言わざるを得ない状態)
メイド(三大英雄三人揃ってるんですから、王国騎士団を三万人持ってこないと勝てない計算です)
魔導師「詐欺だ……」
女騎士「めちゃ手加減されてた……」
こうして私達は山賊達を蹴散らした
これはこの物語の、ほんの入り口の物語
メイド(しかし姫様はどうやって私達や魔導師の秘密を知ったのでしょうか?)
メイド(その謎が解けるのは随分先の事でした)
魔導師「……おっと、忘れてた」
魔導師は何やらメモを取りはじめた
魔導師「……王族は……強欲だから……もちろん……友達も……無くしたく……ない…………と」
姫「何をして……」
姫「お、お前、……まさか……っ!」
魔導師「馬鹿姫格言集二言目ゲット」
や、やめーい!
私は山の下まで魔導師と追いかけっこした
今回はここまでです
次の更新は多分年明けです
今年一年ありがとう御座いました
来年もまたよろしくお願いします
乙!
年明け楽しみにしてる!
姫様まさかの切れ者か。
乙
全員可愛すぎた乙
みんなつええ乙
見た事のある作風だと思ったらオリハルコンの牙のシリーズの人か。
道理で飯テロを連発するわけだ。
相変わらず飯テロなのかw
全員規格外のお話もワクワクして楽しいね
乙
sage忘れたごめん
メラメラメラ
新年明けましておめでとう御座います
今年はもっと面白い物を書きたいです
この作品も駆け足でもうラストまでできてしまいましたが、最後までお付き合いお願いします
では、更新します
姫「……さて、次はどうするかの?」
料理人「このまま砦をいただいて私達の拠点にしよう」
姫「ふむ、いいの」
勇者「あの~、俺はどうすれば……」
姫「帰れ!」
メイド「帰れ!」
姫「なんでお前が言うんじゃ?」
魔導師「……」
魔導師「私は居て良いの?」
私は魔導師に抱きついた
姫「居なかったら嫌じゃ~」
魔導師「ば、馬鹿姫!」
シスター「仲良きことは美しきかな、ですねえ」
メイド「私も抱きつかれたい!」
姫「お前も帰れ!」
女騎士「先輩には私が抱きつきます」
メイド「そういう趣味はない!」
女騎士「な……親愛のハグでは……!」
姫「はいはい……お前らみんな帰れ」
勇者「……とりあえず陛下に報告に帰ります」
勇者「姫様、ご無理はなさらずに」
姫「ふん、お前は姉様にでも取り入っておれ」
勇者「でも国王陛下にはあなたを守らないとミンチにすると言われてて……」
姫「哀れじゃの、墓には勇者のハンバーグここに眠ると書いてやろう」
勇者「ひどい」
こいつは歴代の勇者の中でもだいぶ軽いのではないか
そもそも今の時代の魔王は治安維持を心掛けているし、人類の味方だ
勇者と言うのはもはや国王の小間使いにも等しい
そう考えると哀れな気もするな
料理人「しかし私も姫様があれほど強いとは知らなかったな」
姫「あ~」
姫「剣では女騎士に劣るし魔法も魔導師にかなわんが」
メイド「国王陛下が認めた王国三大英雄の一人ですからね」
料理人「そう言うのがいるのも知らなかったな」
メイド「まあ内輪しか知らない話ですから」
料理人「諜報員としては知らないと言うのは屈辱だ」
姫「まあ良いではないか、これからも頼むぞ?」
料理人「ラジャ」
魔導師「狭い空間だと大魔法は放ちにくい」
魔導師「肉弾戦ができる人は重要」
その通りだ
私も無敵ではないし
最終的な目的は邪神教団の壊滅かな?
少なくともこの大陸の拠点は潰さねば
それは難事には違いない
私達は山を逆側に回り、近くの山賊砦に向かった
姫「見張りが何人か残っておるの」
魔導師「炙り出す?」
姫「うむ、頼むぞ」
メイド「良いな~、姫様に頼られて」
姫「まあまあ、一番槍はお前に任せる」
メイド「それ一番危ないですよね」
姫「じゃから名誉じゃろ?」
メイド「はあ」
ほとんど兵の残っていない東一番砦はその日のうちに陥落
これで宝石十個獲得
このお金で兵士を雇ってもいい
何日かかけて砦を直し、山賊たちを埋葬した
戦とは言え、命を奪うことは、悲しいな…………
メイド「……なかなか見晴らしの良い砦ですねえ」
姫「……うむ」
姫「近隣の砦を落として行くとして兵隊は二千は欲しいか?」
魔導師「そうね」
魔導師「守りの兵は多くは必要ない」
魔導師「攻めるのはあなた達と私の魔法があれば十分なはず」
姫「私も弓矢一発で死ぬか弱い少女なんじゃが」
魔導師「ゴリマッチョだったら友達になってない」
姫「ゴリマッチョは嫌じゃな」
料理人「呼んだ?」
姫「呼んでない……周辺の状況はどうじゃ?」
料理人「この辺りの山賊砦は南西草原の聖騎士団が全て抑えたようだ」
姫「ちゃっかりしとるのう」
料理人「まあ二万からの軍が出払ってたからな」
姫「しかし私はとどめを刺してない」
姫「逃げ出した者も七割近くはいるはずじゃろ?」
料理人「だいたいは捕らえられ処刑されたようだ」
姫「むごいの」
メイド「仕方ないですよ、一万からの犯罪者養えるほど豊かな国は多くないですし」
姫「厳しい現実……か……」
魔導師「特に南西草原の国は戦争続きで貧しい」
魔導師「なんとか農地開拓して生産性を上げられたら良いのだけど」
姫「よし、山賊崩れを安く雇ってこの辺りの開拓を始めるか」
メイド「へえ……良いですねそれ」
魔導師「傭兵国家設立ね」
女騎士「しばらくは南の国ギルドの要請を受けて傭兵として活動する訳ですね」
姫「うむ、そうと決まれば早速動くか!」
メイド「求人のビラをギルドに貼ってもらいましょう」
姫「農作業に危険な魔物は排除していくぞ」
姫「女騎士は魔導師と、料理人は私と来るのじゃ」
料理人「分かった」
姫「シスターは留守番な」
シスター「はあい、夕御飯の準備しておきます?」
料理人「私がやるからいいよ」
姫「シスター料理出来なさそうじゃし」
シスター「出来ません!」
姫「きっぱり言うでない!」
魔導師「行くよ」
女騎士「はい、魔導師さん!」
魔導師「年上なんだから敬語いらない」
女騎士「いえ、姫様のご友人ですから!」
魔導師「……」
魔導師がまた赤くなっている
可愛い友人じゃ
この先も危険にさらすのが忍びない
周辺の森に入り、凶暴そうな魔物や畑を荒らしそうな動物を駆逐していく
料理人「こいつらもちゃんと食ってやろう」
姫「そうじゃの、干し肉にして保存しよう」
料理人「雇った農民に振る舞うのもいいな」
姫「ぜひそうしよう!」
私達は逃げ出すものは極力追わずに森の木を切り開き追い払う
この木も資源になる
修復した砦を更に改築するかな?
料理人「スパイの入りづらい造りにしてやるよ」
姫「お前器用じゃのう」
砦に帰ると既に数十人の山賊崩れが集まっていた
私は開墾と砦の改築を指示する
山賊崩れの中でもリーダー格の猟師のような男に話を聞く
猟師「ワシらは心を入れ替えて働きやす」
猟師「頭領のご指示には必ず従いやす!」
姫「信じて良いのかの?」
姫「邪教に従っておる者はおらんだろうな?」
猟師「ワシ共は食うのに困って山賊をやっていました」
猟師「飯さえ食えるなら裏切ることは有りません」
姫「ふむ、信じよう」
姫「邪教について知っている事は有るか?」
猟師「山賊や海賊、蛮族をまとめあげている男の裏に邪教があると聞いたことがある程度で……」
料理人「嘘はついて無さそうだな」
姫「敵の心臓は遠そうじゃ」
料理人「とりあえず海賊や山賊を片付けて領地を広げていこう」
姫「うむ、そのうち何らかのアクションがあるじゃろ」
姫「ここからは力押しじゃな」
姫「よし、お前たちもしっかり働けよ!」
猟師「はいでさ!」
こうして私達は奇しくも国を作る事になった
国として大きくなる事で様々な問題が起こるだろう
ともあれ、それは少し先の話
料理人「今日の料理は猪肉ときのこの黒胡椒炒め」
料理人「干し魚と貝のスープ」
料理人「恐竜ハム山盛りサラダ」
料理人「デザートに南の国の果物のコンポートだ」
姫「おっほう、これじゃこれ!」
シスター「ご飯だーっ!」
魔導師「美味しそう」
女騎士「皆さん元気ですね……走り回って疲れました」
メイド「しっかり食べないと明日も走り回って貰いますよ?」
姫「うむ、スープもサラダも美味い」
魔導師「肉も美味い」
女騎士「デザートも」
姫「デザートから食うな!」
女騎士「うう……」
シスター「肉をたっぷり食べて教会を作り正しい教えを広めないと!」
女騎士「うう……肉食シスターめ……」
姫「その教え本当に正しいのか?」
猟師「ワシらもこんなご馳走いただいて良いんで?」
姫「これからしっかり働いてもらうからの?」
猟師「合点でさ!」
姫「それでじゃ、お前が軸になって建築、開墾、食料調達をやってもらいたい」
猟師「ワシは頭の方はどうも……」
姫「考えるのはこっちがやるからお前は報告をしっかりやってくれ」
猟師「分かりやした!」
メイド「私達はどうしましょうか?」
姫「現場監督班とギルドの仕事で分かれようかの」
メイド「では姫様と私と魔導師さんはギルドの仕事」
メイド「女騎士とシスターと料理人には監督をやってもらいましょう」
姫「うん、とりあえずこの辺りの危険は去ったし、遠出になるから戦力もいるし」
姫「ちょうど良いバランスなんじゃ無いか?」
魔導師「うん、私とメイドさんがいれば姫も守れるし」
姫「守ってくれるか!」
魔導師「……馬鹿姫」
魔導師は可愛いの
次の日、私達は南の国のギルドに向かった
もう仲間に戦力を隠す必要も無いので難しい任務を選択する事にしよう
メイド「宝石五つまでの仕事を探しますか」
魔導師「それだけ稼げたら農民達もしばらくは養えるし、家畜も買える」
メイド「とにかく収穫の早い野菜とか兎や鶏の飼育から始めますかね」
姫「うむ、今回の収益はそれに当てよう」
魔導師「捕らぬ狸の皮算用だけど」
姫「むむっ」
魔導師「南の国から東の海賊砦の攻城戦の要請が出ている」
魔導師「南の国の兵が侵攻するために切り込むと良いらしい」
姫「続けて対人戦か」
メイド「まあこの辺りは戦ばかりですからねえ」
魔導師「城に行く?」
姫「南の国は同盟国じゃから私の顔もバレてるからのう……」
魔導師「私かメイドさんで契約だけ取ってくる?」
メイド「ついでに東一番砦の領有を認めてもらっておかないとですね?」
姫「おお、忘れてた」
姫「仕方ない、私が顔を出すしかないかの……」
私達は三人で城に向かう
兵に用件を伝えると顔見知りの大臣さんが走ってきた
大臣「おお、姫様!」
大臣「わざわざお越し頂き申し訳ありません!」
私は東一番砦の領有と二年間の納税の約束、東の海賊砦の攻撃の契約をする
大臣「全て承りました、東の港国王様にもよろしくお願いします」
姫「メイド、伝えておいてくれるか?」
メイド「はいはい、抜かりなく」
姫「では明日にも出陣します」
大臣「分かりました、騎士団にも通達しておきます」
さて、宿に帰るか
魔導師「あの大臣、ずいぶん腰が低かったね」
姫「うん、私とメイドの事は同盟国のトップならだいたい知ってるはずだし」
メイド「同盟国とは言っても実質東の港国の一強ですからね」
姫「う~ん、しかしこうなってくると勇者も戦力として置いとくべきじゃったか」
メイド「まあそこらへんにいるでしょ、姫様の警護が任務みたいですし」
姫「そうかのう」
魔導師「私達がいる」
メイド「そうですよ、何があっても守りますから!」
姫「お、おう」
翌朝私達は騎士団と共に東の海賊砦に向かう
沖にある船は海賊の物か
姫「あの船も沈めんといかんかの?」
私の質問に騎士団の団長が答える
団長「あの船は私共の海兵が押さえます」
姫「そうか、私達は砦を開城させれば良いんじゃな?」
団長「お願いします」
砦前に着くとまず弓兵達を魔導師が薙ぎ払う
私達も協力し、火球の雨を降らせる
砦から巣を焼かれた虫のように海賊達が逃げ出してきた
……貧弱じゃな
団長「速い……」
姫「ほれ、さっさと行かんか」
団長「は、はい!」
団長「かかれ!」
おおっと言う掛け声と共に千人ほどの重騎士達が駆ける
私達の仕事はあっさり終わった
メイド「騎士団にも力を示せたし、一先ずはこれで良いでしょうか」
姫「そうじゃな」
魔導師「家畜や野菜の種を買い込んで帰ろう」
姫「うむ」
報酬を受け取り、家畜を買い、一日宿泊してから南西草原東一番砦に帰る事にする
雑事を皆がやってくれている
私達の戦利品に砦は歓喜に湧いた
しばらくは地盤固めを行う
次々と私達は南の国の任務をこなし
……そして初収穫の頃
メイド「そろそろ領地拡張を目指しますか?」
姫「うむ、実は海際が気になっておる」
姫「海賊砦を落として海までを支配しよう」
魔導師「海鮮を食べたくなった?」
姫「私港国育ちだし!」
魔導師「ふふ、いいよ……私が取ってくる」
そんな果物を取ってくるみたいな!
飯が食えるというだけで砦に集まった三千人ほどの民から守備兵を除いて派兵できる者を五百人ほど連れて、魔導師が出陣した
メイド「一人で大丈夫ですかね?」
料理人「既に南海賊砦二つを偵察済みだ……海兵含め四千人程度」
メイド「流石」
姫「少し荷が重いかの?」
メイド「女騎士も派遣しましょう」
メイド「……ついでにあの者も派遣しました」
姫「あ~、あいつの」
料理人「?」
料理人「ああ、あいつもいるのか」
シスター「……誰かな?」
南海賊砦の戦いは
魔導師の大魔法で始まり
それで逃げ出す敵兵が半分
魔法使いが敵にもいればまずいが、それも山賊だの海賊だのやっている者たちにいるはずもなく
魔導師の陣営の小ささを見て突撃してきた敵も女騎士にさばかれ
更に攻めてきた別の砦からの大部隊を
勇者が撃滅した
勇者「姫様によろしく~!」
勇者はそれだけ言って去っていったらしい
わりと甲斐甲斐しいやつじゃ
ちょっとは話を聞いてやるかのう
メイド「ははっ、二度と姫様には会わせません」
壁は高そうじゃな
魔導師は無事南海賊砦を二つ奪取し、そこに新たな拠点を築いた
姫「ちょっと寂しいの」
メイド「そうですね」
農民や漁民を集めるまで、しばらくは離れ離れだ
かわりにメイドを送ろうか
メイド「姫様と離れることはできません!」
姫「舌噛み切って死にそうじゃな」
メイド「お望みとあらば」
姫「やめい」
各拠点の開発はどんどん進んだ
姫「兵力が分かれてしまうことで一般兵の重要度も上がってくるのう」
メイド「まあまだまだ必要有りませんが」
料理人「兎肉や鶏肉の輸出を始めて、そのお金で兵を雇えるぞ」
姫「ふむ」
シスター「海賊砦も海産物の輸出をしています」
シスター「海の幸食べ放題です!」
姫「うふふふふ」
メイド「それで人が徐々に増え始めましたが、そろそろ法律なども必要になってきますね」
姫「ひとまずは東の港国の法律体系をコピーして運用しよう」
姫「問題は本業じゃな」
料理人「近隣の砦はほとんど南西草原国の支配下だ」
料理人「攻め入れる地域も無いし……南の国ギルドでも大きな仕事はだいたいやってしまった」
魔導師「海から攻める」
姫「魔導師!」
久しぶりに魔導師が帰ってきた
どうやら何か策を持ってきたようだ
しかしその前に
姫「お帰り」
魔導師「うん」
しっかりハグをする
メイド「う、うらやましい……」
姫「女騎士は砦番か」
魔導師「うん」
魔導師「塩田を開発しそのお金で海賊の軍船を修理した」
魔導師「海から西に攻め入れる」
姫「それはすごい」
私は魔導師と共に西に攻め入ることにした
東の砦三つは南の国に管理を要請、拠点を西に移す
西の砦攻略も前例の通り楽勝……のはずだったが
敵兵の中に魔法を使う者が現れた
メイド「厄介ですね」
姫「うむ、シスターや魔導師が結界を張ってくれているが」
魔導師「迂闊に動けない」
姫「こんな時にあいつがいたらな」
メイド「噂をしたら出てきますからやめてください」
勇者「お呼びですか姫!」
お前はどこで聞いているんだ
料理人「私並の隠密スキルだな」
勇者「姫様の軍の斬り込み隊長こと勇者、行きます!」
ご苦労様
メイド「適当に使ってるだけみたいだしいいですけど」
勇者はしっかり働いて敵魔法使いを撃破
後は自軍兵達が蹂躙するだけだ
姫「勇者よ、魔法使いを捕らえたか?」
勇者「はい、もちろん!」
勇者「捕虜に尋問しますか?」
姫「頭も働くようじゃな」
勇者「勇者は何でも出来ないとですからね~」
姫「私なんぞに執着せず自分で国を建てたらどうじゃ?」
勇者「俺姫様好きですから」
姫「ぶっ!」
料理人「まあ今日はお手柄だし、飯を食っていけ」
勇者「あざーっす!」
さて、美味い飯の前に大仕事だ
敵魔法使いの尋問を始める
姫「魔法使いよ」
敵魔法使い「わ、私は何も知らん!」
姫「うん、喋らんでいい……私が勝手に喋る」
姫「ぶっちゃけ南西草原国の司祭が黒幕なんじゃろ?」
敵魔法使い「な、な、」
姫「はい、確定じゃな」
敵魔法使い「何故だ!」
メイド「私も是非聞きたいです!」
メイド「姫様は独自の諜報員を使ってるんですね?」
姫「まあのう、しかし今回のはほとんど推測じゃ」
姫「まず問題は何故南西草原国は私らが山賊と戦闘になったタイミングぴったりに五つの砦を落とせたのか」
姫「そんな完全に狙った動きが出来たのは、つまり軍と山賊両方の情報を得られる者がいたからじゃ」
姫「そしてそいつは聖騎士を動かせる立場の人間でもあった」
姫「だいぶ絞れてきたじゃろ?」
女騎士「本当だ……国王様が病に倒れられてる事を考えたら……もう一人か二人しか居ませんね」
メイド「そして邪教を広めるには司祭と言うのはとてもいい立場ですね……」
敵魔法使い「そ、それは偶々軍の諜報が上手く行っただけ……」
姫「しつこいの」
姫「じゃあ何故、戦争関係にある蛮族どもがその好機に南西草原を攻めなかったのか言ってみい!」
姫「蛮族を止めてぴったりと山賊の減った砦だけわずか数日で攻略できる大軍を派遣した」
姫「そして今のお前の反応で間違いなくなったわ!」
魔導師「……姫、知恵熱でるよ?」
姫「うん、実はちょっと……うっさいわ!」
敵魔法使い「……」
姫「まああくまでシラを切るなら構わん」
姫「魔導師、こいつに魔法が使えないようにしてくれ」
魔導師「いいよ」
メイド「魔法を使えなくしてどうするんですか?」
姫「放逐する」
メイド「はあっ?!」
魔導師「刺青で魔法を封じた……これでもう魔法は使えない」
姫「じゃ、そう言うことで」
敵魔法使い「くっ、くそ!」
敵の魔法使いは転がるように逃げ出した
姫「さ、飯じゃ飯じゃ!」
メイド「良いんですか?」
料理人「追跡しようか?」
姫「もう密偵は放った」
メイド「?!」
シスター「いつ放ったんですか~?」
姫「しょうがない、見せてやるかの」
私が昔、森に入った時
その時にできた友達が姿を現した
蝶の羽の者
蜻蛉の羽の者
小人
魔導師「!」
シスター「妖精だあ!」
女騎士「可愛い~!」
メイド「なるほど、これは最強の密偵ですね……見つけていたんですか」
姫「こいつら頭悪いから何でも分かる訳じゃないがの」
蝶「姫様~」
蜻蛉「もう姿見せていいの~?」
小人「僕バカじゃないよ~!」
姫「あいつの追跡に派遣した奴はちょっと賢いんじゃ、まあ後は果報は飯食って待とう」
魔導師「!」
魔導師「果報は……飯食って……待て……」
メモするな
料理人「さて、じゃあ私は私の仕事をするか」
テーブルに並んだのは海老や蟹、イカに魚の海鮮尽くしだった
やっぱり飯は美味いに限る
魔導師「そう言えば妖精は何を食べてるの?」
姫「花の蜜や蜂蜜じゃ」
シスター「食費がかからなくて良いですねえ」
女騎士「あの、姫様、私にも一人……」
姫「駄目じゃ」
女騎士「あうう……」
姫「これであの魔法使いが司祭に会ってくれたらいいが……」
姫「司祭が私の口封じに出るかも知れんのう」
メイド「聖騎士と戦闘になるかも分かりませんね……」
姫「大部隊が来るかもじゃな……」
魔導師「とりあえず兵隊をしっかり集めてこの砦を堅めよう」
魔導師「聖騎士が大部隊で来れば流石の三大英雄も厳しいでしょ?」
勇者「そうですねえ」
姫「居たのか」
メイド「同盟関係は有りませんが、流石に東の港と南西草原で戦争になるのは不味すぎる…………援軍も呼べませんね」
魔導師「ん……」
魔導師「ちょっと作戦がある」
姫「お、流石魔導師じゃ!」
魔導師「姫様が珍しく頭を使ったから私も使わないとね」
姫「いちいち一言多いわ!」
魔導師「ふふっ」
魔導師「それでメイドさん、定期連絡要員さんに取ってきて欲しい物がある」
メイド「はいはい、構いませんよ」
魔導師「じゃあ……」
メイド「ふむふむ……へー、はいはい」
魔導師「お願いね」
メイド「了解しました~!」
それからしばらく敵に動きは無かった
流石にすぐにこの砦に大軍を派兵するのは難しかったか
魔導師「それで」
魔導師「姫が放った密偵は帰ってきた?」
姫「おう」
私が手を上げると四人目の妖精が現れた
シスター「な、何か小さいおじさんが見えるんですが」
女騎士「可愛い……」
シスター「えっ」
姫「小人のおっさんじゃ」
おっさん「はっじめまして~!」
おっさん「いや~お綺麗な方々が多い、おっさん感激ですわ~!」
おっさん「ちょっと寝室にお邪魔して良いですかね、姫様命令してくれませんかね、お、こりゃ失礼セクハラでしたねぇ!」
姫「……」
魔導師「ちょっと沈黙の魔法かけていい?」
姫「そうじゃの……」
メイド「その前に、何か聞かなくて良いんですか?」
おっさん「お~、おっさん喋りますよ見てきたこと全部~!」
おっさん「つっても大体は姫様の推測通りでしたがね~!」
おっさん「司祭が黒幕なのは間違いないですが、聖騎士長さん、なんか司祭に弱みを握られてるみたいですよ~!」
メイド「そうですか、彼が……」
姫「知っておるのか?」
メイド「修行時代に少し」
姫「ほう」
姫「その弱みをなんとかしてやらんといかんかな?」
メイド「しかし少し南西草原までは遠いですからねぇ」
姫「迂闊には動けんか」
魔導師「攻めてきてくれたら反撃して中央砦を落とすことでそこから調査もできるけれど」
姫「しかし全面戦争は危険じゃな」
魔導師「兵力をそがないと、ね」
女騎士「怖いですね」
実際かなり良くない事態だ……
シスター「お肉いっぱい食べて準備しましょう!」
姫「そうじゃのう」
姫「……料理人はどうした?」
メイド「南の国に行ってます……すぐに帰るかと」
姫「情報を集めるなら南の国が良いか」
私たちがお腹を空かせた頃、料理人が帰ってきた
その険しい顔を見てすぐに持ち帰った情報が深刻な物であると分かった
料理人「南西草原の国王が亡くなった」
姫「!」
メイド「それは……本当に大変な事態ですね!」
料理人「更に悪い話がある」
姫「もしや……」
料理人「司祭が国王位に着き、聖王を名乗っているらしい」
メイド「なんと!」
姫「……次は邪教徒狩りかのう」
メイド「!」
シスター「えっ、えっ、ひょっとして」
女騎士「私たちが邪教徒ですか?!」
姫「そう言ってしまえばいつでも聖騎士を派遣できるからの……」
女騎士「こ、困りましたね」
王位継承のごたごたからか、それからしばらくは南西草原が動くことは無く
私は料理人と妖精たちに探し物をさせていた
そんなある日、突然一万近い聖騎士に砦を囲まれる
姫「多いの……」
メイド「敵に聖騎士長クラスが二人もいれば勝てるかどうか分からないって数ですね」
メイド「確か部隊長に相当強い人が三人いたかと」
姫「ふむ……じゃがなんとかしてその三人を捕らえれば……」
女騎士「と、捕らえられますか?」
私たちが困っていると魔導師が研究室から出てきた
魔導師「お待たせ」
姫「魔導師!」
魔導師「できたよ、とりあえず表に出よう」
姫「そうじゃな」
姫「……あいつはどこにいるのかの?」
メイド「外にいるはずです」
姫「シスター、結界を頼むぞ」
シスター「はい!」
姫「さて、期待しておるぞ、魔導師!」
魔導師「任せて」
とうとう本格的な戦争だ……
傭兵なんだから戦争をするのが当然なのだが……
ここから南西草原の国の攻略が始まる
今日はここまでです
残りは明日か明後日に更新します
乙。明日も楽しみにしてるよ!
乙
乙
ありがとうございます、あと少しなんで更新します
私は砦の上に立ち、聖騎士に呼び掛けた
姫「これはこれは南西草原の聖騎士の皆様」
姫「この度はこのような大勢でどのようなご用件でしょうか?」
私の呼び掛けに応えたのは大柄な騎士だ
大柄な騎士「貴様達に邪教徒との疑いがかかっておる!」
大柄な騎士「大人しく投降すればよし、さもなくば……」
姫「我々に邪教を信じる者は一人もおりませぬ!」
姫「即刻兵を引き上げて頂きたい!」
大柄な騎士「ならば無理矢理にでも引きずり出すまでよ!」
姫「それは宣戦布告と受け取ってよろしいか!」
大柄な騎士「……」
大柄な騎士「全軍、突撃じゃ!」
宣戦の布告は無いまま、聖騎士たちが攻めてきた
それに対し
魔導師「白鳩草……」
魔導師「白き鳩の導きにより、諍う者達を常世の夢へ誘え」
魔導師「超広域催眠誘導……!」
魔導師が呪文を唱えると空から雪のように羽が降ってきた
その羽に当たった騎士たちはどんどんと眠りに落ちる
魔法に対する耐久力の高いほんの数人の騎士以外、全員眠ってしまうのに時間はかからなかった
姫「見事じゃな!」
大柄な騎士「ななっ、なんとっ!!」
姫「こちらは虐殺なんぞやりたくない……素直に降伏せい!」
大柄な騎士「ぐっおっおあああっ!」
大柄な騎士「こうなれば、一騎打ちじゃあああーっ!!」
姫「!」
メイド「私が行きますか?」
姫「いや、私が行く!」
シスター「お気をつけて、姫様!」
魔導師「危なかったら、逃げて」
姫「おう!」
私は大柄な騎士との一騎打ちに臨んだ
敵騎士はプレートメイルで身を包んでいたが、驚くほど速かった
魔法も剣もほとんど弾かれてしまう
こちらは腕を斬られ、胸を斬られ、腹を斬られ、脚を斬られた
メイド「ああっ、姫様がどんどん傷物に!!」
傷物じゃないわっ!
大柄な騎士「ふあははっ、もらったわ!」
相手の鋭い中段への突きを
腹で受ける
私の剣は敵の胸鎧を
叩く
女騎士「姫様!」
魔導師「……!」
シスター「神様……」
次の瞬間、バン、と音を立てて敵の鎧が内側に火を噴いた
大柄な騎士「ぼっふぁああああ……っ!!」
炎に巻き込まれた騎士はゴロゴロと土の上を転がった
姫「はあっ、はあっ…………」
姫「私の、勝ちじゃ!」
メイド「相手の鎧を剣に見立てて魔力を注ぎ込んだんですね!」
魔導師「すごい……」
女騎士「よかった……、姫様~~!」
シスター「今回復します!」
私はシスターの回復を受けながらまだ起きている敵将に呼び掛ける
姫「投降せよ!」
姫「こちらは無駄な犠牲を出したくない!」
私の呼び掛けに応え、色黒な騎士がこちらに歩んできた
武器を捨てる
色黒な騎士「お見事で御座います、姫様」
姫「!」
姫「ど、どこかで会ったか?」
色黒な騎士「東の港国第二王女様と北の国の王子との結婚式の折、現聖騎士長と前国王陛下とともに一部隊長として参列しておりました」
姫「五年前じゃな……良く分かったな」
色黒な騎士「私共の敗北です、この身はお好きなようにご処断下さい」
姫「……うちに一万もの捕虜を養う能力はない」
姫「武器と防具を全て差し出してもらった上でお前たちには農作業をしてもらうかの」
色黒な騎士「しっ、しかしそれでは反乱の芽を残すのでは……」
姫「いや、やらんよお前は」
姫「南西草原にはお姫様がおったじゃろ」
姫「その結婚式の時に遊んだ記憶がある」
色黒な騎士「……はい」
姫「正当な王位継承者がいるのに司祭が王位に着いた」
姫「こりゃ草原姫様になんかあったと分かる」
姫「大方西の蛮族砦辺りに囚われとるんじゃろな」
色黒な騎士「……!」
色黒な騎士「お願い致します、姫様」
色黒な騎士「我らの姫様と聖騎士長を、お救い下さい……!」
姫「やはり草原姫様を人質に取られて良いように使われておるんじゃな?」
姫「よかろう、お前が協力してくれるならな!」
色黒な騎士「もちろんです!」
魔導師「姫、また知恵熱でるよ?」
姫「おう」
姫「おう、じゃなかった、うっさい」
姫「とりあえずこいつらの装備を剥ぎ取って縛るのじゃ!」
勇者「やってまーす!」
姫「……甲斐甲斐しいのう」
こうして魔導師の機転もあって私達は無事に初戦に勝ったが
この後中央砦を攻め、蛮族砦までの道を作る
そのための準備を進めていく
聖騎士の中には農作業を嫌い逃げ出す者もいたが、放っておく
色黒な騎士は人望が厚いようでほとんどの騎士は部隊長である彼に従った
姫「ふむ、統率力の高い将じゃな」
魔導師「下働きで消耗させるのは、惜しい」
姫「私の騎士として取り立ててみようか」
勇者「ええっ!」
姫「ああ、お前もおったの」
姫「とりあえず女騎士の下で使ってみるか?」
女騎士「ええっ、私!?」
メイド「まあ良いでしょう」
姫「さて、そろそろ料理人も帰ってくるか」
シスター「美味しいご飯食べたいなあ」
魔導師「東一番砦からお肉を取り寄せた」
シスター「やった」
女騎士「なんだかもう肉食教でも開きそうですよね、シスター」
シスター「邪神に祈るよりは良いかも!」
開くのか
その日夕食前に料理人は帰ってきた
料理人「姫様の読み通り、蛮族砦の一つが異常な警備態勢を敷いている」
料理人「妖精たちに探らせた所、草原姫様らしき人物を見つけた」
姫「うむ、やはりの……まず中央砦を奪いその後草原姫様を助けるか」
姫「その前に」
シスター「お肉ですね!」
メイド「ふっふっふ、お酒も有りますよ!」
女騎士「お酒飲める人も増えましたしね」
姫「よし、今日は少し遅い戦勝祝いといこう!」
色黒な騎士「私も良いのですか?」
姫「うむ、今日からお前は女騎士に従ってもらう」
姫「剣を返してやるから、私に忠誠を誓うこと」
色黒な騎士「……分かりました」
色黒な騎士「今この時より我が剣はあなたに捧げます」
姫「うん、よろしく」
食事中今後の戦略を練る
姫「お前には辛いかも知れないが、中央砦を攻め取りたい」
姫「何か知恵は無いか?」
色黒な騎士「魔導師さんの催眠魔法があれば……」
魔導師「ちょっと白鳩草が手に入らないから、無理」
姫「もともとレアアイテムじゃからな」
色黒な騎士「私の部下を逃亡兵に見せかけ砦に行かせ、砦の開城をさせるとか」
メイド「正面から当たるとなると兵数が心許ないですねえ」
料理人「しかしそれが一番妥当な策じゃないかな?」
魔導師「……」
魔導師「砦の間取りが分かれば兵糧に火を放てるかも」
姫「なるほど」
色黒な騎士「それなら分かるかも知れない」
魔導師「あと、事前に中央砦の兵に投降するように誘ってみるとか」
魔導師「流言を使って聖王に反逆させる手もある」
姫「さすがじゃのー」
魔導師「ふふ、姫が勉強不足なだけ」
姫「うっさい」
姫「早く助けてやらんと草原姫様が可哀想じゃ」
姫「できるだけ速く動くぞ」
メイド「分かりました」
色黒な騎士「相手にはもう一人の部隊長がいる可能性があります」
色黒な騎士「調略を仕掛けてみましょう」
女騎士「分かりました、お願いします」
魔導師「五日待って焼き討ちをかける」
姫「その間に兵を集めるか」
メイド「大魔法を使うためには混戦を避けないといけません」
メイド「馬防柵などを用いて敵兵の進軍を防ぎましょう」
姫「よし、早速工作を始めよう」
まず私たちは聖騎士たちに逃げ出す兵を装わせ敵砦に情報を流す
私たちが聖王を邪教徒の元締めと見ていること
私たちの国は開拓が進んでいて食料が十分あること
部隊長が既に寝返ったことなどを広めさせる
嘘がない情報のため火が着くのは速かった
予定よりも早く、兵士や騎士たちの脱走が始まった
部隊長への調略も進めた
聖王に大義がないこと
騎士団長を助けるためにその力が必要であることなどを伝え、揺さぶりをかける
色黒な騎士「部隊長クラスになればみんな状況は理解しています」
色黒な騎士「すぐに投降してくることは考えづらいが戦況が悪化すれば降伏するのも速いはずです」
魔導師「判断力のある聖騎士の部隊長ならすぐ飲み込める」
魔導師「投降することは裏切りではなく王国の財産たる兵を守ることでもあると」
姫「うむ」
料理人「馬防柵も設置するだけだ」
料理人「聖騎士たちがしっかり働いてくれてるからあっと言う間にできるよ」
姫「うむ、部隊長が味方をしっかりまとめてくれてるお陰じゃな」
色黒な騎士「お褒めに与り光栄です」
姫「さて、では始めようか」
姫「メイドと魔導師は敵砦を焼き討ちじゃ」
姫「残り魔法兵は馬防柵内側で待機」
姫「女騎士たちは壊滅した敵軍を捕らえろ」
勇者「姫様、俺はどうしますか?」
姫「うーん」
姫「とりあえずそこに居れ」
勇者「はいっ!」
すごい笑顔だ
遊撃隊として待機させてるだけなのだが
勇者「姫様は俺が守ります!」
勘違いさせたかも……
まあいいか
使える奴だし
砦に火が上がる
工作のために潜り込んだ聖騎士たちは逃げ出すふりをして門をこじ開ける
早急に予定してあった地点まで逃げ出し同士討ちを避ける
仕方なく出陣してきた敵兵たちを私自ら大魔法で焼く
勇者と魔法兵たちもそれに続いた
続々と投降してくる敵兵
入念な準備の結果ではあるが、中央砦の陥落までわずか一日しかかからなかった
残念ながら敵部隊長は兵を国に退く方を選んだが
十分な戦果だろう
私たちは中央砦を手に入れた
料理人「兵の損失も敵味方共に微々たるものだった」
料理人「最高の結果だと思う」
シスター「亡くなった兵隊さんたちは丁重に弔わせて頂きます」
色黒な騎士「感謝します」
女騎士「敗残兵たちは武器を取り上げ野に放ったのですが」
女騎士「ほとんどの兵はうちで働くことを志願してきました」
料理人「砦の復旧を急がせる」
メイド「この後はどうしますか?」
姫「うむ」
姫「恐らくは南西草原と睨み合いになるが……」
姫「少数精鋭で蛮族砦に当たろう」
メイド「……いよいよですね」
姫「とりあえず隠密スキルの高い料理人と女騎士と勇者、それに草原姫様の顔を知ってる私で蛮族砦に忍び入ろうかと思う」
姫「残りは砦を守ってくれ」
姫「すぐ帰る」
メイド「お気をつけて、姫様」
メイド「恐らくはこれが最後の戦いになりますね」
姫「そうか」
姫「魔導師」
魔導師「どうしたの?」
姫「砦は任せるぞ」
魔導師「……うん」
魔導師「姫も気をつけて……」
姫「おう」
私たちは夜を待って砦を出た
明け方頃には目的の蛮族砦に辿り着く
随分長いこと草原姫様を待たせてしまった
姫「さて……どう入るかの?」
料理人「兵の少ない裏口がある」
姫「確認済みか」
女騎士「どうしますか?」
勇者「やっちゃいます?」
姫「いや、表の兵二人だけなら……」
私は催眠魔法を放った
姫「白鳩草が無くとも二人眠らせるくらいは問題ない」
勇者「後は扉の向こうの兵ですね」
姫「ちょっと待ってろ、お前ら見てこい」
蝶「は~い」
蜻蛉「いってきま~す」
料理人「便利だ」
しばらく待つと妖精たちは帰ってきた
扉の向こうには二人見張りがいるらしい
料理人「よし、私が行こう」
姫「気をつけろよ」
料理人は鉤爪のような物がついたロープを砦の壁に掛けると、スルスル登っていく
料理人の姿が見えなくなって少しして、ごきゃっ、と言う嫌な音が二回響いて扉が開いた
中では二つの塊が転がっていた
姫「素手で倒したのか……恐ろしい」
勇者「凄いっすね」
女騎士「料理人さんと喧嘩しないようにしよう……」
妖精たちに先行させ、速やかに敵兵を排除して草原姫の部屋に向かう
姫「おるか、草原の!」
草原姫「うん?」
草原姫「もう朝ぁ?」
姫「脱出するから着替えるのじゃ」
草原姫「え、あれ、なんで東の港の姫様が……?」
姫「とりあえずコート羽織らせるか」
草原姫「あっはっは、久しぶり~」
姫「のんきじゃな!」
女騎士「無事なようでちょっと安心しました」
草原姫「無事じゃないよ~、ご飯不味いし~」
姫「話は後じゃ!」
草原姫を逃がし、私たちは後ろから現れる兵を倒していく
勇者「姫様はお先にお逃げください!」
姫「馬鹿を言え、全員で逃げるぞ!」
勇者「姫様……!」
勇者「命に代えてお守りします!」
私たちはなんとか敵の大部隊に気付かれる前に城を出るが
追っ手が迫る
女騎士「私は……騎士だ!」
女騎士が次々に追っ手を片付ける
私と勇者は草原姫を抱えた料理人を守りつつ撤退
その時、うっかり崖から足を滑らせた
姫「うわっ……」
勇者「姫様!」
勇者は思ったより怪力で私を片手で引き上げた
姫「た、助かったわ」
勇者「逃げますよ、姫様!」
姫「う、うん」
姫「ありがとう」
勇者「お役に立てて感激です!」
泣くな
足を捻った私は勇者に運ばれる
夜が明けてあたりが明るくなって来た
姫「ふん……やっぱり男は力があって良いな」
勇者「姫様はすごい軽いですよ」
姫「ばっ、馬鹿者!」
顔が熱くなった
中央砦は聖騎士長の主力部隊に囲まれている恐れがある
急がなければいけない
草原姫「ダブルお姫様抱っこだね~」
姫「ほんとのんきじゃな!」
昼頃には中央砦が見える所まで帰ってきた
しかし予想通り砦は聖騎士に囲まれている
聖騎士長に草原姫が無事であることを報せなくては……
裏から中央砦に入り、伝令を出す
メイド「お帰りなさいませ、姫様!」
しばらくして伝令が届いたようで、聖騎士長は自ら砦の前に出てきた
草原姫「聖騎士長さま~、お元気ですかぁ~?」
姫「もうちょっと言い方無いのか」
聖騎士長「姫様、ご無事でしたか!」
草原姫「ごめんね~、ご迷惑かけました~」
姫「お前たちの敵は王城に有り!」
姫「邪教徒を殲滅せよ!」
草原姫の無事を確認すると聖騎士長は砦に背を向けた
私の檄を受けて声を上げる
聖騎士長「もはや我が目を曇らせる闇は晴れた、全軍王城に向かえ!」
聖騎士たち「おおおおおっ!!!」
勇者に肩を借り、砦を降りると魔導師が待っていた
魔導師「お疲れ様、姫様」
姫「うん、有り難う!」
…………勝った!
姫「戦勝祝いじゃ!!」
料理人「はいはい、盛大にやるよ!」
シスター「私も手伝います~!」
集めておいた食料で料理人が大人数で食べられる料理を作っていく
シチューにパエリア、バーベキュー……大量の酒……
兵たちも期待してうずうずしてるのが分かる
私は南西草原との戦の終わりを宣言する
姫「ひとまず戦は終わった!」
姫「今後は南西草原と協力し、傭兵として蛮族と邪教徒を倒していく」
姫「皆、これからもよろしく頼むぞ!」
「おおおおおおっ!!!」
姫「乾杯!」
「かんぱ~~い!!!」
宴は大いに盛り上がった
みんなとにかく食って、飲んで、楽しんだ
魔導師「もう立派な傭兵だね」
姫「うむ、なんとか傭兵らしくなったようじゃな」
女騎士「これからが大変です」
姫「頼むぞ、騎士様」
シスター「お肉が焼けましたよ~!」
姫「肉食教万歳じゃ!」
料理人「姫様たちには別にも料理と宴席を用意するよ」
姫「楽しみじゃの!」
草原姫「助けてくれて有り難うね~」
姫「これから女王として王位を継ぐんじゃろ?」
草原姫「できるかな~……助けてね?」
姫「おう、友達じゃからな!」
私たちが盛り上がっている所に、勇者が神妙な面持ちで現れた
勇者「姫様、メイドさんが話があるとか」
姫「ん……なんじゃ?」
メイドに呼び出されて私は人の少ない場所へ向かう
なんじゃろう?
待ち合わせ場所に着いてからしばらく、メイドは黙っていた
メイド「…………」
メイド「姫様、お別れです」
姫「!!」
メイド「この度、東の港から帰還命令が来ました」
姫「な……なぜじゃ?」
メイド「王命でございます」
姫「お前は私の家臣じゃろ……?」
メイド「私がずっと王命で動いていたのはご存知のはずです」
姫「そんな……」
メイド「一段落ついた所で帰ることは決まっていたのです」
メイド「勇者よ、後は任せましたよ」
勇者「え、でも……」
メイド「手を出したらナマスです」
勇者「ひえっ!?」
姫「メイドよ……どうしても行くのか」
メイド「はい」
メイド「姫様……お達者で」
メイド(こうして……私は姫様の元を離れることになりました)
大きな戦も終わり、南西草原では聖騎士が聖王以下邪神教徒を捕縛、草原姫が女王位に着き聖騎士たちは国の安定と蛮族との戦いのために走り回った
メイドが国に帰ってから私は南西草原の要請で派兵したり、商人の警護のため街道に兵舎を築き、流通を加速させ
やがて南西草原東の五つの砦を買い取り、私たちの傭兵国家は国家としての形をなしてきた
そんなある日
勇者「大変です、姫様!」
姫「な、なんじゃ?」
勇者「……東の港国がメイドさん中心の大部隊で」
勇者「侵攻して来ました!」
姫「な、なんじゃと!?」
中央砦はあっと言う間に東の港国精鋭騎士団約五万に囲まれた
姫「これは……東の港国の最強の騎士団か!」
魔導師「姫、とりあえず砦の奥に」
魔導師「少人数なら女騎士さんや勇者さんの方が強いはず」
姫「わ、分かった」
魔導師「聖騎士には守備に徹させる」
姫「すまんな」
姫「……いったいどういう事じゃ……!?」
勇者に攻められる魔王とはこんな気分なんだろうか
階下から激しい剣戟の音が響く
メイドが一人で乗り込んできたようだ
女騎士の悲鳴が響く
姫「くっ……!」
シスターと魔導師をいつでも逃がせるように部隊長に預ける
次には勇者とメイドのぶつかり合う声が響きはじめた
勇者……大丈夫だろうか……
散々良いように扱ったのにこんな所で死なれたら……
……嫌だ……!
しかし
やがて扉が開き、入ってきたのは
……メイドだった
…………何故…………
……何故じゃ!
姫「これはいったいどういう了見じゃ!」
メイド「……姫様を王国に連れ戻しに参りました」
姫「な、なぜ今更!?」
メイド「姫様……」
メイド「王宮にあれば、旅の空で凍える思いをすることも、嵐に怯えることも、傷を負って戦うことも有りません」
メイド「ましてや仲間を失うことなど……」
メイド「なんの不満があるのですか?」
姫「……!」
メイド「嫌と言われても無理矢理連れ帰るように言われております」
メイド「……お答を」
姫「……わ、私は……」
姫「……そうじゃな」
メイド「!」
姫「確かに旅に出た折は何故こんなに寒いのか、寝辛いのかと嫌気が差したこともあるわ」
姫「恐竜に投げられた時は、なんで王女なのに……とも思った」
姫「戦とは言え沢山の命を奪ったことに後悔や心痛が無いはずもない……」
姫「本当の自由を得ることで分かった」
姫「自由とは責任と言う、より重い棘で自分を縛ること」
姫「自分の頭で考え、自分の足で歩き、自分の手で掴むと言うこと」
姫「だが、だからこそ」
姫「自分が生きているという実感を得ることができた」
姫「私はもう…………籠の鳥に戻ることは」
姫「…………できん!!」
メイド「私と戦うことになっても?」
姫「……当然じゃ!!」
私は覚悟を決めた
勇者をも上回るメイドと剣を交えても勝てるはずもないが……
負けるわけには、いかない!
……次の瞬間、メイドの姿は消えた
なんという速さ!
首を生暖かい感触が包む……
一撃で首を……はねられた?
いや
メイド「すりすりすりすりすり…………」
すりすりされている
メイド「すりすりすりすりすりすりすりすり…………」
めっちゃほっぺたすりすりされている
メイド「すりすりすりすりすりすりすりすりすりすり………………」
ちょっ、ま、おまっ
メイド「姫様あ~、ご立派で御座いまぁすうぅ~~~っ!!」
メイドは声を上げて泣き始めた
姫「ちょっ、どういうことじゃ~っ!?」
私が混乱しているとメイドは真相を語った
メイド「今回のことは国王陛下から出された試験でございます」
メイド「もし国に戻るならよし」
メイド「そうでなく、私に救いを求めるなら引きずってでも連れて帰る」
メイド「私と戦っても帰らないと言うなら独立を認める、と」
姫「そんなことであんな大軍団動かしたのか…………お父様…………」
メイド「まあその辺りは訓練も兼ねてです」
メイド「今日からまたお世話になりますね」
姫「……うん」
メイド「姫様?」
姫「ぐすっ……うん」
メイド(姫様が私のために涙を…………!)
姫「お帰り…………お帰り!」
メイド「姫様ああああああっ!!」
メイド「すりすりすりすりすりすりすりすりすりすり…………」
姫「す、すりすりはやめい!」
精鋭騎士団は国に帰還し、魔導師たちも帰ってきた
私以外全員が一枚噛んでいたらしい…………無事だった……
怒るよりほっとした
勇者「すみません、姫様」
姫「うん」
魔導師「良かったね」
姫「うん」
姫「やっと私は独立できたんじゃな……」
姫「みんな、有り難う!!」
今までの短い人生で一番焦ったわ
妖精たちも敵を調べるのに忙しくて味方までは見張れなかったし、仕方ないが…………
しかし、皆が無事で、本当に良かった…………
料理人「……そういう訳で、ご馳走を用意した!」
シスター「やったあ!」
姫「落ち着いたらお腹空いたのじゃ!」
女騎士「私も食べますよ~!」
メイド「あなた達ももっと強くなって下さいね?」
勇者「全く」
その後私は独立国家の盟主として、お父様と同盟を締結
数百年続く大陸の平穏の礎を築いて行く
戦いの中で私はたくさんの傷を負い、痛みを味わった
しかし私は手に入れた
たくさんの仲間と、たくさんの思い……
……そして自由を
――終わり――
めっちゃ詰め込んだので分かりづらい所があったらすみません
レスが飛んでないと良いんですが
自分が書きたいことは書けたのでひとまず満足です
では最後、ほんとただのおまけですが、恒例のおまけです
――おまけ――
料理人「さてさて、流通の中心地になった我が国、食材はなんでも手に入る」
料理人「みんな何を食いたい?」
魔導師「鳩」
勇者「魚ですかね」
女騎士「貝が食べたいです」
シスター「お肉ですよね、お肉!」
メイド「海老が食べたいな~」
姫「恐竜ハム」
料理人「よし、承った!」
魔導師「また恐竜でも狩る?」
姫「良いのう」
メイド「いっそ家畜として飼育します?」
姫「餌が大変そうじゃな」
女騎士「これからは色々養殖や畜産なんかに力を入れていかないとですね」
姫「剣を取るよりそっちのが合うんじゃないか?」
メイド「それじゃ困りますけどね~」
シスター「そう言えば教会も作らないと」
姫「ついでみたいに言うな」
魔導師「色々とやることは多そうね」
姫「うん、これからもよろしく頼むぞ!」
魔導師「で、姫はいつ勇者と結婚するの?」
姫「ぶっ!」
勇者「はい?!」
姫「……まだ早い!」
メイド「私に勝てたら良いですよ」
姫「それ一生独身なんじゃ……」
料理人「ご飯出来たぞ~」
姫「おう、美味そうじゃ!」
大きな海老とあさりの入ったスパイシーな香りの海鮮のスープに
恐竜ハムを山盛りにしてさっぱりしたドレッシングをかけたサラダ
柑橘系ソースの鳩のソテーと香草の効いた猪のステーキ
大きな脂の乗った鯛の塩焼きとビール……
この料理も今までの旅の結晶だ
私は両手を合わせて食事の始まりを告げる
姫「いただきます!」
「いただきま~っす!!」
――おまけ、終わり――
今回はこれで終わりです
メイドの冒険記も書いてみたいかな
次回作は恋愛バトルコメディの予定です
全然違うスタイルのお話です
今からロロナのアトリエをやるので来月くらいになるかも
よければ今後ともよろしくお願いします
ではまた
飯テロの人乙
面白かった
次回も必ず読ませていただきます
乙
物語の疾走感がすごく良かった
乙乙!
今回も面白かった
おつでした
乙
乙乙
生存報告~
と言うか、今晩あたりに新作投下しようと思います
少し青臭い作品ですがお付き合いください
投下したあとHTML化依頼します
おk
次作はこちらです
少女「伝説なんかじゃない」
少女「伝説なんかじゃない」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423318492/)
このスレはHTML化依頼してきます
乙
爆弾もあなただったんだ
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