【涼宮ハルヒの憂鬱とTOX2のクロス】
ルドガー「………ふざけてるのか?」
キョンから言われた言葉に、ルドガーはあからさまに顔を歪めた。
今、こいつは何を言った?いやいやまさか空耳だろう。親友のキョンが俺に向かってそんなまさかエルをくれだなんて、
そんな馬鹿なこと……………
ルドガー「絶対にやらん!」
キョン「やれやれ。即答かよ」
ルドガーの思考この間1秒もかからず。
言葉が聞こえたことへの否定から始まった思考は、
あっという間もなく親友からの言葉の内容そのものに対する否定へと変化した。
ルドガーが腕を組んでキョンを睨む。その据わった眼差しは件の彼の娘――エルの本来の父親である分史世界の彼であったヴィクトルを思い出させるものだった。
やはり彼らは別世界の同じ存在のようだと、こんな形で改めて思いたくはなかったキョンである。
エル「えー!ルドガーなんで?だってエルとキョンはアイしあってるんだよ!」
ルドガー「却下と言ったら却下だ!」
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ルドガーからの拒否の言葉にキョンと手を繋いでいるエルが頬を含まらせて怒る。
しかしその抗議の声にもルドガーはにべも無い返答を返した。
眉間に皺を寄せてエル……ではなく、エルと仲良く手を繋いで立つキョンを睨み続けている。
親友からのいまだかつてないほどの鋭い視線に、キョンは視線を逸らして力無く苦笑った。
キョン(やれやれ。どうして俺はこんなことをしてるんだ……)
始まりはエルがこう言ったことからだった。
エル「エル、ちゃんとおヨメさんにいけるのかな?」
ようやく歳が二桁になった少女の発言としては少々ませていると言うべきか
それとも年相応にお嫁さんなどと可愛らしい夢を抱いているようだと言うべきか。
その時エルと同じ部屋にいたキョンとアルヴィンは悩んだ。
それに対してみくるとレイアがお嫁さんという単語に色めきはじめる。
まず、みくるがエルに尋ねた。
みくる「エルちゃんはお嫁さんになりたいんですかぁ?」
エル「それはやっぱりなりたいでしょ?マジメな人じゃないとパパはゆるしてくれないんだって。それにやしなってもらうんだから、やさしくてコーシューニューでサチうすじゃなくて、バクダイなシャッキンなんか背負わないようなしっかりした人を選びなさいってパパに言われたよ!」
エルの発言にアルヴィンが口元を引き攣らせた。
ほう
アルヴィン「おいおい、それってまんまルドガーのことじゃねぇの…?」
ジュード「ヴィクトルさん、過去の自分なのにルドガーのこと嫌いだったもんね………」
こう言ってはなんだが、ヴィクトルと直接顔を合わせたジュードからすると彼は酷い親バカだったらしい。
そして別世界の自分だというのに大のルドガー嫌いだった。
キョン「俺は直接会ってないからよくわからんが、ヴィクトルって奴は相当親バカでエル好きらしいな」
ジュード「うん。本当に…」
今でも思い出すとジュードはこう思う。シリアスな話をしていたはずなのに、あの時一体いつから二人がどれほどエルが好きでエルが可愛いかと激しく言い争うエルコンバトルになっていたのだろう?
エル「でね、エルがおヨメさんになるにはまずパパがシケンをして、それに合格した人じゃないとダメなんだって」
……それ絶対結婚許す気ねえだろ。
キョンとアルヴィンは視線を合わせて無言で頷きあった。
何だそれ、何処ぞのかつての執事が言っていたのと同じじゃないか、と。そして間違いなくどちらも冗談なんかではないということも、二人にはよくわかっていた。はたしてドロッセルお嬢様は結婚できるのか?
レイア「うーん、お父さんが出す試験かぁ……うちはどちらかと言えばお母さんかな?」
レイアが腕を組みをしてそう言ったが、みくるとキョンは疲れた声音で突っ込む。
みくる「ふぇぇ。それ誰が切り抜けられるんですか~?」
キョン「確かにな、レイアのお袋のバケモノっぷりを見ればわかる。不合格間違いなしだ」
レイア「あははー、確かにねー」
テイルズ×ハルヒとは珍しい
期待
関係ない話ですまないが、ルドガーとレイア母はどちらが強いんだろう
レイアの発言を受けてエリーゼが首を傾げつつ口を開く。
エリーゼ「わたしの場合は……ローエン、でしょうか?」
ジュード「あ、でも僕もエリーゼの相手だったら立ち合いたいな」
ジュード「エリーゼが選んだ人に文句は言いたくないけど、中途半端な人には任せられないもんね」
それにジュードが手を上げた。妹のようなエリーゼのことをジュードも大層可愛がっており、
控えめながらも選抜は容赦しないといった雰囲気がする。
それに面白がったキョンは仮立候補をした。
キョン「ほぅ、じゃあ例えば俺とかはどうだ?」
期待ついでに質問
キョンはもうエクシリアの世界の住人orエクシリアの世界へ呼び出された?
ジュードはきょとんと首を傾げてから、薄ら笑いを浮かべるキョンに向かってにこりと笑った。
ジュード「うーん、一対一で僕に勝てたら認めてあげるかな?」
キョン「あ、はい、すみません、冗談です。冗談ですからお願いだからその拳鳴らすのやめてもらえませんかね?」
キョン「マジでお前の集中回避はトラウマなんで」
目が笑っていないジュードの言葉に、キョンは即効で彼に謝って軽はずみな発言を撤回した。
もう1年前となる出会った頃のル・ロンドでの(一方的な)殴り合いは、今もキョンの胸にひどい傷を残している。
物理的にも、精神的にも、だ。
キョンの素人丸出しな攻撃は空振り散々後ろに回り込まれて無防備な背中に蹴りやら拳やらといった、とてもじゃないが護身術の域をとっくに越えた武術を年下の少年ジュードに喰らいまくったのだ。
それは勿論、戦闘経験のないただの一般人キョンにとってトラウマにならないわけがない。
エル「ちょっとキョン!そんな弱腰でどうするの?」
エルは腰掛けるベッドで足をぶらつかせながら言った。
キョン「…あぁ、わかってる」
キョンは真剣な表情へと切り替えて拳を握った。決意の滲む声音で話す。
キョン「……エルの為に。 絶対に合格してみせる。それが誰の試験でもな」
強い断言の言葉に女性陣が目を瞬かせる。
一度瞼を下ろしたキョンは次に甘やかさをのせた瞳を覗かせてニカっと微笑んだ。
キョン「まぁ。任せとけって。俺もこの世界にやってきてから一生懸命努力してがんばってきたつもりだ」
ふわりとまるで花を綻ばせるために優しく笑ったキョンに、
思わずエルを含めた女性陣は頬を淡く染めてはにかんだ。
無意識にしろ意識してにしろ、おそらくそれが向けられた相手は決まっていて。
それでも、それは妬ましく思うよりも尊いと思う。少し妬けてしまうし、羨ましいけれど。
アルヴィン「――いやぁ、熱烈だねぇキョン君。思わず俺も照れちゃいそう」
ほわほわとしたそこはかとなく桃色の空気となったのを壊してくれたのは、アルヴィンのそんな軽口だった。
流石ブレイカー。彼と隣り合わせに座っていたために肩を組まれたキョンが浅く溜息を吐く。
キョン「おいおい、茶化すなよ。これはだな、人生に関わる大事なことなんだぞ」
アルヴィン「だからってそこまでマジ答えしなくてもいいんだって。女性陣照れさせてどうしたいわけ?」
キョン「いや、ちょっと待て!そんなつもりは断じてない!」
アルヴィンに言われてようやく自分が妙な(桃色の)空気にしてしまったことに気がついたらしい。
先刻までのきりりとした表情は何処へやら、両手を振って慌てるキョンはいつもの彼だった。
エル「ねぇキョン!」
キョン「な、何だ?」
頬を染めたままのエルがどこと無く目をキラキラとさせて唐突に大声でキョンを呼んだ。
呼ばれたキョンはまだ少し慌てたまま、自分を呼んだエルに向かって首を傾げる。
エルはその表情のまま、やはり大声で言ったのだった。
エル「エルのためにルドガーの試験に合格して!」
盛大なプロポーズを少女から喰らったキョンはうれしさ半分、不安が半分で答える。
キョン「あぁ、任せとけ」
そして冒頭へと話は戻る。
エル「ルドガーのわからず屋!どーしてアタマゴナシにしか話聞いてくれないの?いいか悪いかは試験で決めるって言ったよね?エル、前にそうルドガー本人から聞いたよ!」
ルドガー「う……で、でもキョンが相手とか…」
エルの剣幕に押されたルドガーがちらりとキョンを見る。キョンは気まずげに苦笑していたが、
エルが繋いだ手をぎゅっと握ってきて顔を引き締めた。押し切られたとはいえ引き受けたのだ。
だとしたら全力で取り組まなければエルを悲しませてしまう。
どこまでもお人好しのキョンは、そう考えて親友の――今は娘さんとの結婚を許してもらう相手となった父親の――ルドガーを真剣な眼差しで見つめ返した。
ルドガー「……本気なのか?キョン」
キョン「………あぁ本気だ、ルドガー。いや、お義父さんか?」
ルドガー「お前にお義父さんと呼ばれる覚えはないっ!」
ルドガーが反射的に鋭く叫んで否定した。こっそりと三人のやり取りを見守っているみくる達は、
婿と舅のお決まりの応酬が起こったことにわいわいと無言で騒ぐという器用なことをやってのけた。
そんな彼女らのことはすっかり頭から消えたキョンが少しばかり語気を強める。
キョン「じゃあどうすれば認めてもらえる……認めてもらえますか?」
わざわざ言い直したキョンにルドガーは目を細めた。
本気だと取ったのだろう。
此処にはいないエルの実の父親とも相対しているような心地になるキョン。
しかし気持ちから負けるわけにはいかないと、ぐっと奥歯に力を入れて唇を引き締めた。
しばらく睨み合っていた二人だったが、やがてルドガーが目を閉じた。
小さな吐息を吐き出して、そして控えめながらも厳しい声音を出す。
ルドガー「………わかった。だったらキョンには今から俺が出す試験に合格してもらう。内容もルールも決めるのは俺だ……それでもいいか?」
キョン「あぁ、望むところだ」
アルヴィン「…………なんかマジで本気になってね?」
レイア「クランスピア社社長と源霊匣研究者の婿舅の戦い!これは記事にしないとだよね!」
みくる「ふぇぇ~、ビッグニュースになりますね~!」
熱い展開にきゃいきゃいと騒ぐレイアとみくるは気にしていないようだったが、
どう見ても本気の火花を散らしているルドガーとキョンの二人に今更ながらアルヴィンは冷や汗を流したのだった。
アルヴィン(……どうなんのコレ?)
訂正
レイア「クランスピア社社長と平凡な高校生の婿舅の戦い!これは記事にしないとだよね!」
ルドガーは幾つもの試験を出した。数えるのすら面倒だったアルヴィン(審判員)は
最初からその数を数えるのを放棄していたが、隣に座るレイアから先程「50」とか聞こえた気がする。
なぁいつまでやんのコレ?某執事な宰相は200以上の莫大な試験数を課すと言ったらしいが、
それに比べても一般的にこれは。公平な審判員をやれと押し付けられたアルヴィンは、
いい加減キョンの合格を判断するたびに恨めしげな視線を自分へと送ってくるルドガーにうんざりしていた。
俺を睨んだところでキョンのハイスペックぶりは変わりません。
審判員を俺から変えたとしても結果は変わりません。
かつて普通の一般人だったキョンは、この1年を経てハイスペック医学者となって数段レベルアップしていた。
まず課された家事試験は前述の通り。
ルドガーがとりあえず出したらしい礼儀作法だって、
源霊匣研究者としてあちこちに呼ばれては荒波に揉まれたキョンはすでにローエンから習っていたのもあり合格。
エレンピオスから学びに行く者もいるらしい世界最高水準のタリム医学校を首席卒業したジュードに医学に関する基礎知識から応用までを一から叩き込まれたキョン。
ルドガーすら理解不能な計算式やその応用や、さらに此処にいる誰もが知らない専門知識まで披露してみせた。
アルヴィン「戦闘だって今は問題ない、拳一つで立ち向かえる強さがある。…少しお人好しすぎるのが心配だが、それを自分で補えるくらい能力あるし顔も広いし、頭良いし医療にも長けてるし………あれ?今のキョンに欠点なんてあるのか?」
出題した試験がことごとく返り討ちになったルドガーは混乱しているらしい。
ぶつぶつと呟いているが、その内容は目に入れても痛くないと言って憚らない愛娘のエルを奪う憎たらしい花婿候補に向けるにしては褒めているだけだ。
段々と自分でもわからなくなってきたルドガーは、最終的にキョンの欠点が何だったかを忘却したらしい。
首を傾げて悩むルドガーを見ながら、アルヴィンは生暖かい視線を彼に向けた。
アルヴィン(おたくキョンと親友であいつのこと大好きなんだから最初から無理だったんだよ……)
エル「ルドガー、もういいでしょ!試験は合格だよ!」
ルドガー「……うぅ。だが年の差がっ……」
エル「年の差は…今はアレかもだけど、20年もしたら気にならなくなるし!」
10年と言わないあたりしっかりしている、のかもしれない。
エルから畳み掛けられて縮こまるルドガーは、何故か助けを求めるようにキョンに視線を向けた。
それを受けたキョンはもちろん払いのけることなく救いの手を差し延べてやる。
ルドガーの求めたのとは違ったかもしれないが。
キョン「ルドガー、俺を信じて欲しい。俺は自分を完璧だと自惚れるつもりはないし、至らない点だってまだまだ沢山ある。でもな、一度繋いだ手を離すような甲斐性無しのつもりもないんだ」
ルドガー「…………」
キョン「そしてお前からの信頼を裏切るつもりもない。エルをけして不幸にはしないと、………今もずっと俺とこいつを見守ってくれている"ハルヒ"と"ミラ"に誓うよ」
ルドガー「………そうだな。お前のことは試験なんか出さなくても俺自身がよく知ってた。どれだけ誠実で人を大切にしてくれるか」
ルドガー「エルのことを頼んだぞ、ジュード」
キョン「おう、まかせろ」
----おわり----
訂正
ルドガー「エルのことを頼んだぞ、キョン」
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