女神「私は女神だ……」
女神「喜ぶがいい」
女神「私は全人類の中から、無作為にお前を選び出した」
女神「選ばれたお前には、恩恵にあずかる権利がある」
女神「どんな願いでも叶えてやろう」
男「……」
男「裏があるんだろ?」
女神「へ?」
女神「裏だと? そんなものはない」
男「い~や、怪しいな」
男「たとえば願いを叶えたら、死後地獄に行くとか、魂取られるとかするんだろ?」
女神「そんなことは断じてない」
男「ホントかぁ~?」
女神「いやしくも神である私が、嘘などつくわけなかろう」
支援
男「いや、そもそもあんたが神だっていう証拠はどこにもないし」
男「もしかして、正体は悪魔とかなんじゃないのか?」
男「悪魔が神になりすましてる、なんてよくある話だ」
女神「悪魔だと……? なんという無礼な男だ」
女神「悪魔にこのような高貴なる光を放てるわけなかろう」パァァ…
男「まぶしいんだけど」
男「まぁいいや……。あんたが女神だっていうのは、とりあえず信じよう」
男「だけど、だからといってちゃんと願いを叶えてくれるとは限らない」
女神「どういう意味だ?」
女神「金でも、名声でも、美女でも──」
女神「どんな願いでもちゃんと叶えてやる」
男「たとえばさ……」
男「お金をいっぱいください、っていったら」
男「でかい金庫の中に閉じ込められたり、全部ニセ札だったり」
男「こことは全然ちがう世界の紙幣、とかが出てきたりすんだろ?」
女神「そんなことあるものか」
男「どうだろ……」
女神「だったら……地位や名声を願ってみたらどうだ」
男「そしたら多分、こういう結末が待ってるはずだ」
男「さして実力もないのに、分不相応な地位や名声を手に入れてしまった俺は」
男「結局、その役目に押し潰されてしまいました、とかってな」
男「分かってるんだよ、そういうパターンだってのは」
女神「願いを叶えた後の面倒まではみきれんが」
女神「そんなに不安であれば、美女でも願ったらどうだ」
男「美女? ご冗談を」
男「どうせ正体は整形女だったり、男だったりするんだろ?」
男「もしくは昔の感覚では美人だったってことで、浮世絵みたいな女が出てくるかもな」
男「あるいはたしかに美しいことは美しいんだけど」
男「すさまじくワガママだったりヤンデレだったり……ってオチが待ってるはずだ」
女神「勝手に待っていることにされても困る」
男「じゃあ……もしかしたらこういうパターンか?」
男「こうやって俺が悩む、あんたが催促する、そしたら焦った俺がこういう」
男「“ちょっと待ってくれ!”」
男「そしたら“待ったぞ、願いは叶えた”って帰っていくってパターンだ」
男「な? そうなんだろ?」
女神「わざわざここまで出向いてきたのだから」
女神「そんなつまらない願いで終わらせるつもりはない。安心しろ」
男「ふ~ん」
女神「それにしても……お前も疑り深い奴だな」
女神「だったら……やめにするか?」
女神「私としては残念だが、どうしても嫌なら強要することもないしな」
男「なるほど! そう来たか!」
女神「へ?」
男「あんたは神々の世界に帰った後──」
男「せっかくノーリスクで願いを叶えてやるチャンスを」
男「自らドブを捨てたバカな人間がいましたって笑うわけだ!」
男「俺は疑り深いせいで最高のチャンスを台無しにした……ってオチなんだろ?」
女神「なんだろ? ──といわれてもな」
女神「なら、さっさと願いをいえ」
男「そうか、だったら!」
男「こうして悩み、疑心暗鬼になってる俺は、いつしか発狂してしまう」
男「発狂したあげく、精神が崩壊して廃人になってしまう!」
男「そして、哀れにも廃人になった俺を眺めながら」
男「人間は愚かなものだ、とあんたは他の神と笑うんだ! きっとそういうオチだ!」
男「分かってんだよ、俺には! アヒャヒャヒャヒャ! ざまあみろ!」
女神「……」
女神「いい加減にしやがれッ!!!」
男「!」ビクッ
女神「せっかく親切で来てやったってのによォ……」
女神「くだらねえことをガタガタ抜かしやがって……」
女神「これ以上ガタガタ抜かすんなら」
女神「ケツの穴に手ェ突っ込んで……奥歯ガタガタいわせっぞ!?」
男「ひっ!」
男「す、すみませんっ……!」
男「なんていうか、日頃からついてなくて、何事も疑ってしまう性格でして……」
男「私、願いを決めました! お、お金をいただければと……」
女神「ちょいと脅しつけたら、急にしおらしくなりやがって……」
女神「どうせ裏があるんだろォ!?」
男「へ!?」
女神「たとえばここで100万円出してやったら」
女神「ドルのがよかったなぁ~、ユーロにしとけばよかったなぁ~」
女神「ジンバブエドルだったら笑い話にできたのになぁ~」
女神「女神ちゃん気ィきかないなぁ~ってオチなんだろォ!?」
男「い、いや……そんなこといいませんって!」
女神「あ!?」
男「ひっ! じゃ、じゃあ……地位や名声をください」
女神「金の次は、名声だァ……?」
男「は、はいっ!」
女神「おめぇ……翼をくださいって知ってっか?」
男「し、知ってます!」
女神「あの歌にあんだろ……富とか名誉なんざいらねぇってよ」
女神「だいたい名声なんてもんは、てめぇの力でゲットするもんだろがよ」
女神「なんもしてねぇのにノーベル賞とかアカデミー賞とかもらっても困んだろ!?」
女神「なぁ、間違ってるか? この理屈、間違ってるか?」
男「ま、間違ってません!」
男「じゃあ……翼をください……」
女神「ハァ~!?」
女神「たとえ話で歌の話をしただけだっつうに、翼が欲しいて……」
女神「翼なんか手に入れてどうすんだ? 太陽でも目指すんか? おォ?」
女神「で、翼が溶けて死ぬんか? 死ぬんかァァァ!!?」
女神「おめぇどこのイカロスだよ!?」
男「や、やっぱり今のなし! 今のなしで!」
男「じゃあ……美女を! 美女! 美女にします!」
女神「おいおいおいおい、待て待て待て待て」
女神「目の前に世界一、いや宇宙一の美女がいんのに、なぁ~んで美女願う?」
女神「え、なに? 遠回しな侮辱? 私をディスってるわけ?」
女神「神ディスっちゃう? ん? お? あ?」
男「いえ……すみません。本当に至らなくてすみません……!」
課長バカ一代思い出した
男「あの……じゃあもう何もいらないです! お帰り下さい!」
女神「あちゃ~……そうくるか~!」パシッ
女神「ちょっと行き詰まると、す~ぐ逃げる! 無難や妥協に走る!」
女神「下へ下へと流れていくんだよなぁ~、これがあれか? ゆとりってやつか?」
女神「ってかさァ……」
女神「こっちゃ人間界まで出向いてるんだからさァ……手ぶらじゃ帰れねぇのよ」
女神「ガキの使いじゃねンだよ!!!」
男「は、はいっ!」
女神「疑り深いわ、すぐしおれるわ、冒険しないわ……」
女神「ホントダメダメだな、お前」
男「よ、よくいわれます……」
女神「こりゃあ……誰かが支えてやらなきゃあな……」チラッ
女神「誰かがなぁ~」チラッチラッ
女神「こうなったら私と結婚しちまうか! なァ!?」
男「えええ!?」
女神「イヤか!? 不満かァ!!?」
男「イヤっていうか……俺、結婚できるようなお金ないし……」
女神「んなもん、私がポポポポーンってなもんよ」
女神「よし、決まり!」パンッ
女神「そうと決まれば、初夜るぞ!」ガバッ
男「ま、まだ心の準備が……!」
女神「笑わせやがる、下半身は準備万端じゃねぇかよ」クスクス
男「あ、あ、あ……」ビクンビクン
……
…………
………………
教会にて──
ワイワイ…… ガヤガヤ……
「まさか、アイツがあんな美人の嫁さんもらうなんてなぁ」
「世の中分からないもんだな、ホント」
「一般の人らしいけど、女優かモデルみたいだよな」
神父「……死が二人を分かつまで、互いを愛することを誓いますか?」
女神「私は不老不死だし、夫が死んでも神界で一緒になるだけだがな」
神父「へ?」
男「いやいやいや、なんでもないんです!」
男「ちょっとちょっと、神だってのはナイショだっていっただろ?」ボソッ
女神「すまんすまん」
男「せーのっ」
男&女神「誓います!!!」
おわり
ありがとうございました
アグレッシブな女神だったな乙
逆転ぶりにワロタ
すき
ツンデレとヤンデレ(ヤンキーデレ)の女神様とか
俺の所に来ないかな
想像してたのと大分違ってワロタ
これは…良いスレ
いいハッピーエンドだった
神様が人間と結婚したがるとか結構怖いものがあるよね
まとまったお金が欲しい人はこちらへ
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久しぶりにこのジャンルで良作を見た気がする。
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