貴音「妖精の記憶」 (38)

-765プロ-


貴音「.......」

響 「たかねー」モフ

貴音「...響」

響 「どうしたの貴音。なんか元気ないね」

貴音「......響は」

響 「ん?」

貴音「響は、”ふぇありぃ”と聞いて、何か思うことはありますか?」

響 「え、フェアリー?」

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貴音「はい」

響 「んーと......妖精ってこと?」


ああ---


貴音「.....いえ、なんでもありません」


やはり-------


貴音「忘れてください」

響 「?....へんな貴音」キョトン


この世界に
あなたはいないのですね


『貴音ー。黒井社長が打合せするってさ』

『一緒に行こ!ほら、美希も一緒にさ』


貴音(......響)

貴音「.......」

響 「.....貴音?」

貴音「....あぁ、すみません響」

貴音「わたくしに何か用事でしたか?」

響 「うーんと、用事って訳じゃないんだけどね」

響 「貴音が一人って聞いたから、話でもしようかなって」

貴音「ふふ、そうでしたか......して、話とは?」

響 「うーんとね、そうだなぁ。今ホットな話題は...」

響 「あっ、そうだ。そういえばこの前の収録で偶然ね」

響 「黒井社長と話をしたんだけどさ」

貴音(っ!)

響 「黒井社長ったらさ、自分に会うなりいきなり」

響 「”もっと肉を付けた方がいい”って言うんだ」

貴音「...そうですか、黒井社長がそのようなことを」


『黒井社長がね!』

『”響ちゃんは体力をつけるために、もっとたくさん食べて動いた方がいい”って』

『でね、今晩ご飯連れてってくれるって!一緒にいこ!』


響 「自分ちょっとびっくりしたんだけどね」

響 「黒井社長がいうには、自分はダンスで激しく動くから体力はできるだけつけといた方がいいって」

貴音「......」


響 「黒井社長、意外と自分たちのことよく見てるんだなって、ちょっと感心したぞ」

『黒井社長、自分たちのことよく見てるんだな!』



貴音「......っ!」

貴音「ひ........」

貴音「........ひ、びき」


響 「ん?どうしたんだ貴音」

貴音「すみません、わたくし少し気分が...」

響 「えっ、気持ち悪いのか!?大丈夫か貴音?」

響 「背中さすったほうがいいか?」

貴音「いえ、少し横になれば大丈夫だと思います」

貴音「.........」

貴音「......響、申し訳ないのですが、お茶を入れては頂けませんでしょうか」

響 「わ、わかった!待ってて!」ガタッ


ガチャ
タタタタ


貴音「.........」

貴音「.........」

貴音(......嘘をついてしまいました)

貴音(すみません、響...)

貴音「......」

貴音「.........」

貴音「..................」


コンコン


貴音「!」

貴音「響?」


ガチャ


美希「あ、貴音なの」ヒョコ


貴音「美希?」

美希「あれ......どうしたの?顔まっさおなの」

貴音「....いえ、少し寝不足のようでして」

美希「...そうなんだ。あはっ、それは大変だね~」

貴音「......はい。油断していたようです」

美希「だめだよ貴音」

美希「寝不足は美容の天敵なの」テクテク


ボフッ


美希「....で?」

貴音「え?」


美希「ホントは、何に悩んでるの?」

美希「ミキでいいなら聞いてあげるよ?」


貴音「っ!!?」

美希「........」ジッ

貴音「な、なぜ...」

美希「なぜって....見たらわかるの」

美希「貴音、すっごく悩んでるって顔してたよ?」

貴音「そうでしたか...」ムニムニ

美希「貴音はわかりやすいの」

美希「響ほどじゃないけどね。あはっ」

貴音「......美希には、敵いませんね」クス

貴音「美希」

美希「なぁに?」

貴音「笑わずに聞いて頂きたいのですが」

美希「うん」

貴音「私には......その」

貴音「別の世界の、記憶があるのです」

美希「別の世界?」

貴音「はい」

貴音「こことよく似ていて」

貴音「けれども少しだけ違う」

貴音「そんな世界です」


美希「よく似ていて、でも少し違う世界....」

貴音「その世界では、わたくしは961に所属していました」

貴音「わたくしだけではありません」

貴音「わたくしと響。それに美希、あなたも」

美希「ミキが961プロ...」


貴音「おかしな話です」

貴音「別の世界の記憶など...」

貴音「夢、あるいはすぴりちゅあるな妄言だと殆どの人は言うのでしょう」

貴音「ただ、わたくしはその世界を鮮明に覚えていて」

貴音「とても、夢だとは思えないのです」


美希「.......」

期待

貴音「わたくしたち三人は”プロジェクトフェアリー”として」

貴音「色々な曲を歌ったり、春香達と競い争いました」

貴音「”すとれぇとらぶ”、”黒い犬”...他にも、たくさん」

美希「違う世界のミキたちの歌....」

貴音「ほとんど同じ世界....」

貴音「今のわたくしたちとの違いは、殆どありません」

貴音「ですが.....違うのです」

貴音「色々なことが、少しずつ違うのです」

美希「...たとえば?」

貴音「そうですね......」

貴音「たとえば......響は、もう少し牙のある言動をしていました」

美希「牙?」

貴音「それにもう少し、胸もあった気がします」

美希「へー...じゃあ、背がもっと高かったり?」

貴音「いえ、そういったことはありませんでした」

美希「そっか」

貴音「......」

貴音「.......すみません、このような話.....」

美希「.......」


美希「.......」


美希「ねぇ、貴音は......そっちの世界に帰りたいの....?」


美希「今のミキ達といるの....イヤ?」


貴音「....!」

貴音「いえ!そのようなことは決してありません!」

貴音「ただ....」

美希「ただ?」


貴音「ただ...」

貴音「響や....皆の似ている所、違う所を見つけてしまう度に」

貴音「もうこの世界のどこにも、わたくしの知る響たちがいない」

貴音「そう思ってしまう」

貴音「わたくしはそれが...」ポロ

貴音「それが......ただ、辛いのです」ポロポロ


美希「っ!」ハッ

美希「貴音.....泣いて」

貴音「黒井殿との打合せや、三人でのれっすん」

貴音「三人で上がった舞台を思い出すと」

貴音「胸が締め付けられるように....」

貴音「痛むのです......」ボロボロ

美希「貴音.....」

貴音「美希......わたくしは」

貴音「わたくしは、どうしたらよいのでしょうか」

貴音「この世界で、違和感を感じたまま」

貴音「どのように生きて行けば....!」


美希「......」

美希「ごめんね」


貴音「!」

美希「貴音の話、難しくてよくわからないの」

美希「違う世界にミキがいたって」

美希「ミキはミキなの」

美希「ミキは、ミキが思うことをするだけ。きっと貴音のいう世界のミキも」

美希「そうだったって思うな」


貴音「....そうですね」グシ

貴音「確かに貴女は、そうだったかもしれません」クス

美希「あ、それとね」

貴音「?」


美希「”ストレートラブ!”......それ、瑠衣......神長瑠衣の曲でしょ?あってる?」


貴音「え...!?」

美希「やっぱり」

貴音「美希...な、なぜ...!」

美希「んっとね」

美希「貴音の話を聞いてたらなんとなく、ふわ~って出てきたの」

貴音「なんとなく、ふわぁ...?」


美希「ねぇ、響もそうなんじゃない?」

貴音「!!?」


響 「.......」スッ


貴音「ひ、響.....!!!?」

貴音「聞いていたのですか...」

響 「うん......お茶を淹れてきたんだけど」

響 「なんか深刻そうな話してたから入りにくくて」

響 「あはは、お茶もさめちゃったぞ...」

貴音「........」

貴音「あの、ひび」

響 「貴音がね」

貴音「っ」


響 「...貴音が、自分と話してる時に」

響 「時々辛そうな顔するの」

響 「気づいてたんだ」

響 「ほら、自分カンペキだからさ....えへへ」

貴音「響...」

響 「なんでかなーとか」

響 「もしかして、何か悩みがあるのかなって」

響 「真に相談したりもしたんだけど」

響 「わかんなくって」

響 「自分、なんにもわかんなくって」

響 「.......何度も」

響 「何度も貴音に聞こうと思ったんだけど」

響 「言えなくって」

美希「........」

貴音「ひ、ひび....き」

響 「でも、そういう事....だったんだな」

響 「........」

響 「ごめんね、貴音」

貴音「......え...?」

響 「自分と、話をするたびに」

響 「その、もう一人の自分のことを思い出して」

響 「悲しんでた.....苦しんでたんだな」

響 「自分が貴音を苦しめてたなんて...気づかなかった自分が恥ずかしいぞ」

響 「本当にごめん」ペコ

貴音「!?」

貴音「ちがっ、違うのです!響!!!」

貴音「なぜあなたが謝るのです!」

貴音「謝るべきはわたくしの方ではありませんか...!」

貴音「わたくしが....わたくしが!!」

貴音「心弱いが故に、周りに心配を掛けてしまったのです!」


響 「そんなことない!」

貴音「!」

響 「そんなことないよ...」

響 「貴音はずっと悩んでたのに、なんとかしようってひとりで頑張ったんだ」

美希「うんうん。すごいって思うな」

貴音「そのようなことは...」

響 「それにね、自分ちょっとすっきりしたんだ」

貴音「すっきり...ですか?」

響 「うん。さっき美希が言ってた、神長瑠衣さん。自分も覚えてるぞ」

響 「いや、思い出した...って感じなのかな」

貴音「響も...?」

響 「うん。他にもIU...アイドルアルティメイトとか」

響 「黒井社長がスカウトに来たときのこととか、色々」

響 「きっとこれが、貴音が言う世界の記憶なんだよな」

貴音「は、はい......間違いありません」

響 「なんか不思議だけどさ」

響 「きっと、そういう事をあるんだよな」

美希「うんうん。きっとそういうもんなの!」

美希「春香たちも覚えてるかもしれないよね。今度きいてみるの!」

貴音「は、はぁ...」

響 「あっ、そうだ!胸!自分の胸はまだこれから大きくなるの!あと背も!!」

美希「背はムリだって思うな」

響 「!?」

美希「残念ながら......なの」

響 「なんで!?のびるよ!!」


貴音「...ふふっ」


貴音「...あ」

響 「.........」

響 「あのさ」

響 「きっと、貴音の言う世界...そこには戻れないと思うんだ」

響 「っていうか、自分は...戻って欲しくない」

響 「貴音とお別れなんてしたくない」

貴音「.........」

響 「だからね...自分さ、前の自分に負けないように頑張るから」

響 「言ってくれれば性格も直すから」

響 「貴音」

響 「今の自分で....ガマンしてくれないか?」

響 「......お願い」


美希「響...」

貴音「......響」

響 「......」ジィ

貴音「.......ふふっ」

響 「!」


貴音「響。我慢などと言わないでください」

響 「え...?」

貴音「あなたは、あなたのままでいてください」

貴音「わたくしは、無理に背伸びしないありのままの響の方が好きです」

響 「貴音....!」

貴音「響。美希」

貴音「二人に話を聞いてもらって、話を聞いて.....とても楽になりました」

貴音「きっと、わたくしたちの世界はずっと続いているのです」

貴音「過去の全てがあって、今のわたくしたちがいる....」

貴音「だから悲しむ必要なんて、きっと最初からなかったのです」

貴音「ありがとうございます。二人とも」

貴音「ご心配お掛けしてしまい...申し訳ありませんでした」

貴音「こんなわたくしですが...」

貴音「これからも一緒にいて頂けますか....?」

響 「.......」

美希「.......」

響 「.......」

美希「.......」



美希「だって。どーする?響?」

響 「うーん。どうしよっかなー」


貴音「!!!?」

貴音「あ、あの.....」オロオロ


響 「うーん....」

美希「うーん....」


貴音「あぁ、あぁ..」

貴音「うぅ.....」シュン


響 「.........なんてね。えへへ、じょーだん」モフ

貴音「ひ、響?」

響 「これからも一緒に...なんて、当たり前だろ」

響 「自分たちは、きっとおばあちゃんになるまでずっと一緒さー」ギュ

美希「そうそう。むしろ、離れようって思っても離れられないって思うな」ギュ

貴音「響、美希.....!」ウルウル


貴音「うぅ....うぅう....」ポロポロ

美希「あ、貴音ったらまた泣いてるの」

響 「全く、貴音は泣き虫だぞ...」グス

美希「よしよしなの。辛かったね、貴音」ナデ

貴音「うぅう...」ポロポロ

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響 「貴音、落ち着いた?」

貴音「はい。お恥ずかしいところを見せてしまいました...」

響 「あはは、気にすることないさー」

美希「じゃあ、貴音も復活したし」

美希「そろそろ行こ?」

貴音「?」

響 「ん?行くって、どこにだ?」


美希「決まってるでしょ!社長室!」

美希「フェアリーのユニット結成をお願いしに行くの!」


響 「!!」

貴音「!!」

響 「美希...!」

美希「ミキね、考えたんだけど」

美希「昔に戻れないなら、いっそ自分たちで作っちゃえばいいって」

美希「前に負けないくらいキラキラすればいいって」

美希「そう思ったの!」


貴音「美希....!!」

響 「さっすがリーダーだな!!」

美希「え?ミキがリーダーなの?」

響 「あれ?」

響 「違うのか?なんかしっくりくるんだけど」

美希「うーん......よくわかんないけど、いいよ!ミキ、リーダー頑張っちゃうの!」

貴音(響....美希.....)

貴音(わたくしは、本当によき友に出会うことが出来ました)

貴音(かけがえのない宝物...)


貴音「ふふ...それで、でびゅー曲はどうしますか?」ニコニコ


響 「......」チラ

美希「......」チラ

響 「美希」

美希「響?」

響 「自分いまね、頭の中に”これだ!”って曲が出てきたんだけど」

美希「あはっ、実はミキも....貴音は?」

貴音「ふふ、お任せください」


響 「じゃあ、せーので言おっか」

美希「うんっ!」

美希「いくよーっ!せーのっ!!」


-終わり-

フェアリーはSPだけの設定だけど、あらゆる世界でずっと仲良くあって欲しいです
ありがとうございました


フェアリーさいつよ

フェアリーってドラマCDではユニットだったんだっけ?

フェアリーを見出した黒井社長、有能

フェアリーの組合せほんと好き

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