モバP「二人三脚の魔法使い」 (27)
モバマスSSです。
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事務所
忍「お疲れ様でーす」
穂乃香「あ、お帰りなさい」
忍「あ、穂乃香ちゃん。これからお仕事?」
穂乃香「今日はレッスンだけですね。仕事の予定はないです」
忍「あ、そうなんだ」
穂乃香「はい」
忍「何見てるの?」
穂乃香「これですか? 写真です」
忍「なんの写真?」
穂乃香「あまり人様に見せるような写真ではありませんが…」
忍「なんだか。気になる言い方だね」
穂乃香「まぁ、忍ちゃんだし、別に構いませんけれども…」
忍「これって…」
穂乃香「えぇ、バレエをやってた時の写真です」
忍「綺麗だねぇ…」
穂乃香「しみじみ言われると少しだけ照れますね…」
忍「でも、実際そうだしね」
穂乃香「ありがとうございます」
忍「ここまでになるのにやっぱり頑張ったりしたんだよね?」
穂乃香「まぁ…それなりには」
忍「やっぱり、努力するって大事なことなんだね」
忍「あたしも負けてられないなぁ…」
穂乃香「そうですね。頑張ったんだと思います」
忍「だよね。だから、アタシも負けられないなって」
穂乃香「努力と言えば…」
忍「うん?」
穂乃香「昔、プロデューサーと話していた時に面白いことを言ってました」
忍「どんな話?」
穂乃香「漫画で読んだと言っていましたが…好きなことに努力って言葉は似合わないと」
忍「え?」ビク
穂乃香「変な意味じゃなかったはずですけど…あぁ、思い出しました」
忍「…うん」
穂乃香「本当に好きなことなら、努力するのは当たり前のことだから。そんな風に言っていたと思います」
穂乃香「言われてみれば、この時はバレエが本当に好きで当たり前のようにやっていたなぁと…。だから――どうかしましたか?」
忍「あ、ううん。なんでもない。アタシちょっと出てくるね」
穂乃香「…!もしかして、気分を…」
忍「ううん!違うの。ただ、飲み物を買ってきたいなぁって」
穂乃香「そうですか。それじゃ、私も」
忍「一人で大丈夫だって。うん」
穂乃香「…分かりました」
忍「うん。それじゃ行ってくるね」
事務所
P「ただい――穂乃香どうした?」
穂乃香「あ、お疲れ様です」
P「俺より、穂乃香の方が疲れてる顔してるけどな」
穂乃香「そうですか?」
P「何かあったか?」
穂乃香「いえ、そこまで大したことは…」
P「嘘を吐くのは下手だな」
穂乃香「慣れたくはないですけれどね」ハァ
P「穂乃香らしい回答だな。それで、どうした?」
穂乃香「はい。実はですね――」
P「なるほどなぁ…」
穂乃香「だから…忍ちゃんも…と続けようとしたんですけど」
P「忍が出て行っちゃったと」
穂乃香「はい」
穂乃香「…ダメ、ですね私ったら。人の気持ちも分からないなんて」
P「……」
穂乃香「折角仲良くなれたと思ったのに…」ジワ
ガチャ
忍「ただいまー」
穂乃香「……っ!」ビク
忍「ん?あ、Pさん。穂乃香ちゃん泣かせたの?」
P「え?」
忍「だって、泣いてるじゃん!」
穂乃香「あ、えっと…これは…」アタフタ
忍「あ、なるほど…」
穂乃香「えっと…その…」
忍「大丈夫。気にしてないから!」
穂乃香「え?」
忍「だって、あの時穂乃香ちゃん、続けて何か言おうとしてたし…」
穂乃香「そ、それはそうですけど」
忍「さっきは、びっくりして外出ちゃったけど、よくよく考えてみたら、あの後、何か言おうとしてたなって思って…」
忍「でも、出ちゃった手前聞きづらくて…」ポリポリ
P「そういうことだったのか」
忍「そういうこと」
穂乃香「良かったです…」ホッ
忍「穂乃香ちゃんは、そんなこと言わないって信じてるしね」
穂乃香「それでは、レッスンに行ってきます」
P「あぁ、行ってらっしゃい」
穂乃香「あ、今日はレッスンが終わったら、そのまま寮の方に戻るので迎えは大丈夫です」
P「そうか分かった」
穂乃香「…良かったです」
P「そうだな。忍は良い子だ」
穂乃香「えぇ。それは思います。大切な友人です。ただ…」
P「どうかしたか?」
穂乃香「この状況を作ってしまった私が言っていいことではないと思いますが――」
P「――なるほどな」
穂乃香「はい。すみませんがお願いします」
P「あぁ」
事務所
忍「ねぇ、Pさん」
P「どうかしたか?」
忍「この後レッスン付き合って貰ってもいい?」
P「いいけど…無理するなよ? さっきまで仕事やら、レッスンやってたんだし」
忍「平気だって。皆を見てると負けられないなぁって思うんだよね」
P「なるほどなぁ…」
忍「アタシが頑張ってる所を両親に見せなきゃね」
P「頑張り過ぎるなよ?怪我したら元も子もないし」
忍「練習しようとしてる人に言うセリフ?」
P「そうだな。悪い悪い」
忍「ま。いいけど。それより練習行こっ」
P「そうだな」
泣けた
レッスン室
P「流石にもう誰もいないなぁ」
忍「時間が時間だしね。しょうがないよ」
P「それじゃ早速始めるか」
忍「うん。お願い」
*
忍「どうかなPさん」
P「いいんじゃないか。踊りに迷いもなさそうだし」
忍「なんだかカッコいいこと言ってるね」
P「具体的なことが分からないから抽象的になるんだよ」
忍「天才肌の人みたい」
P「あくまでみたい。だけどな。実際はそんなことないし」
忍「そうかなー?」
P「自分で天才だ。とは俺には言えないな」
忍「あはは。確かに」
P「少し休憩にするか」
忍「そうだねー」
P「最近どうだ?」
忍「仕事は相変わらず楽しいよ。刺激もあって」
P「そうか。それは良かった」
忍「何だかお父さんみたいだね。あ、これ食べる?」
P「ん?リンゴか?」
忍「そ。実家から送ってきたの。一人じゃ食べきれないし」
P「ありがとな。帰ってこいって手紙とか無かったか?」
忍「無かったよ。なにも」
P「そうかそうか」
忍「とりあえず頑張れ。ってことなのかなって」
P「なるほどな」
忍「Pさんがちゃっかり写真とか送ってるみたいだし?」チラ
P「活動は親御さんに知らせておかないとな」
忍「ま。もしかしたらそのおかげでこうやってアイドルを続けられてるのかもしれないんだけどね」
P「それは、忍が頑張ってるからさ」
忍「そうかな?」
P「あぁ」
忍「その。ありがと…へへっ」
忍「よしっ!それじゃ、残りも頑張ろっ!」
P「おう」
P「そろそろ…」
忍「うん。付き合ってくれてありがと」
P「いやいや、これくらいなら。時間も時間だし送るぞ?」
忍「そう?それじゃお願いするねっ!」
車内
P「お疲れ様」
忍「うん。お疲れ」
P「……」
忍「……」
忍「あ、あのさ。一つ聞いてもいいかな?」
P「うん?」
忍「アタシって努力してるよね?」
P「あぁ、努力のアイドルだと思う」
忍「そう言ってくれるとちょっとだけ自信が湧く…かな」
P「不安か?」
忍「…うん」
忍「ほら…努力って皆するじゃない」
忍「誰だってトップアイドルになりたいから努力するのは当たり前じゃん」
忍「だから、努力のアイドルって言ったらバカにされるんじゃないかなぁってちょっとね」
P「珍しく弱気だな」
忍「たまにはこういう時もあるの」
P「そうか…」
P「悪かったな」
忍「なにが?」
P「別に変な意味があって穂乃香にあんな話をした訳じゃなかったんだが…」
忍「それは分かってるって。だって、穂乃香ちゃんと話したのなんてずっと前でしょ?」
P「あぁ。そうだな」
忍「でも、ちょっとだけ。本当にちょっとだけ。自分に言われてるのかなって思ったんだよね」
忍「言ってることも尤もだと思ったし。好きなことをやってる時って努力するのは自然なことだもん」
P「……」
忍「あはは。もしかしてアタシって馬鹿にされてたのかな?」
P「そんな訳ないだろ」
忍「え…?」
P「夢の為に頑張ることは当然だろ。それに忍は自分じゃなくて、その頑張りを見てたファンや俺達から言われたんだ」
P「それに、忍は努力した。って自分で言って納得出来る奴じゃないだろ?」
忍「……」
P「違ったか?」
忍「…ちがわない」
P「アイドルになりたくてこっちまで来たんだもんな」
忍「うん」
P「なっておしまいじゃないもんな」
忍「うん」ヒック
P「オーディションで負けても私は頑張ったから、努力したから。で満足する工藤忍じゃないよな」
忍「うん…うんっ!」
P「泣いてるのか?」
忍「だって…だって、最初穂乃香ちゃんから、その話を聞いた時には、Pさん、は、本当ば、アタシのこど、嫌いなんじゃないがな、って思って…」ボロボロ
忍「そうだっだら…いやだもん。もう…顔も見れないって思ってたんだもん…!」
P「ごめんな」
忍「が、勝手にアタシが勘違いしただけ…気にしないで」
忍「Pさんは…ううん。なんでもない」
P「落ち着いたか?」
忍「…ありがと」
P「いや、俺の方こそ…」
忍「もういいって。恥ずかしくなってきたし」
P「あのさ、穂乃香のことなんだけど」
忍「うん?」
P「嫌わないでやってくれよ?」
忍「へ?」
P「いや、さっき話してたら結構責任感じちゃっててさ」
忍「さっきも大丈夫って言ったけど」
P「穂乃香の性格的にな」
P(思いつめてる風だったし)
忍「あー、そういうことね」ピポパ
忍「もしもしー穂乃香ちゃん?」
忍「うん。なに?謝らなくていいって。うん。うん。分かってるって」
忍「また、ゲーセン一緒に行こうねー」
忍「ぴにゃ?うーん…それは気分次第かな」アハハ
忍「え?うん…アタシも好きだって。ばいばーい」
P「大丈夫か?」
忍「うん。電話してる途中で若干涙声になってたけど」
P「好きってのは?」
忍「えっと…言うの恥ずかしいんだけど…」ポリポリ
忍「穂乃香ちゃんが最後に『まだ、私のこと友達と思ってくれますか?』って聞いてきたから…」
P「なるほどな」
忍「アタシにとっても本当に大事なお友達だしね…へへっ!」ニコ
P「シンデレラガールって言うじゃないか」
忍「言うね」
P「やっぱり忍もなりたいよな」
忍「勿論。Pさんにも両親にも恩返しするためにね」
P「シンデレラって魔法に掛けられて綺麗な服着て王子様と結ばれるって話だよな」
忍「そうだね」
P「生憎俺は魔法使いじゃないから忍をシンデレラには出来ないかもな」
忍「えっ…」
忍(それって…どういう意味?)
P「俺は魔法使いじゃない。だから俺の力一人で忍をシンデレラにすることは出来ないんだ」
忍「…どういうこと?」
P「俺一人じゃどうにもならない。二人で頑張らなきゃいけないってことだ」
忍「あっ…」
P「俺は、魔法使いじゃないから、俺一人じゃ、皆がやりたいと思うような規模のステージや、仕事や待遇を準備することは出来ないかもしれない」
P「忍には灰を被って貰うかもしれない」
忍「灰はちょっと…嫌かも」
P「物の例えだよ」
P「だけど、忍が努力していけば小さなステージが大きく、仕事だって待遇だってよくなる可能性は十分にあるんだ」
忍「うん…うんっ!」
P「そうやって、煌びやかな階段じゃないかもしれないけど、灰や汗が染みこんだ階段の先にはシンデレラになった忍がいるかもな」
忍「たまーに詩人だよね。Pさんって」
P「そうか?」
忍「うん。とっても気障ったらしい。都会の男の人はそんな感じなの?」チラ
P「どうだろうか」
忍「冗談だって」
忍「…ありがと。アタシ頑張れる気がしてきた」
P「それは良かった」
忍「魔法使いの話が出てきたけどさ」
P「うん」
忍「私、魔法を使えるようになりたいな」
P「…うん?」
忍「その魔法で皆を夢中にさせるの」
忍「ステージ上でキラキラと輝いてね」
忍「勿論、その中にはPさんも入ってるよ」
P「お、そうなのか」
忍「だって、だってさ、アタシにとって、その、大事なヒト…だから」ポリポリ
P「忍…」
忍「こんな雰囲気だから言えるけど…ありがと」
忍「きっとPさんに会ってなかったら、夢見がちな学生で終わってた」
忍「テレビや雑誌を見て凄いなぁ…って思うだけで終わってた。でもPさんに会えたからこっちに来れたの」
忍「これからアタシが輝く姿を見ててね」
忍「二人三脚で。常にアタシの隣でね♪」
終わりです。
読んで下さった方ありがとうございました。
何かあればどうぞ。
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読んで下されば幸いです。
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などですかね。
それでは失礼致しました。
おつでした
忍ちゃんが泣きはじめた辺りでうるって来た
面白い
やっぱり古典の人でしたか
野球シリーズはもう書かないんですか?
そうですねぇ…。
書いてはあるんですけど、タイミングを逃しまして…一人で楽しむ用になってしまっていますw
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