人魚「なんスか?」
女「いや....え?何?今なんつったの?」
人魚「水浴び気持ちいぃ~って」
女「おかしい!」
人魚「」ビクッ
女「あんたは普段どこで暮らしてんだよ!言ってみろ!」
人魚「か....海中ですが」オソルオソル
女「ほれみろおかしいじゃねーかっ」
人魚「なんなのこの人....」
人魚「あんただって一生プールだけってのは嫌でしょ?お風呂入りたいスよね?」
女「水浴びと風呂は違うでしょーが」
人魚「うちらにとっては風呂みたいなもんなんですよ」
女「あのねぇ、風呂ってのはこう、温かくて、落ち着いて....何より体の汚れを落とすもんなのよ」
人魚「それまんま水浴びに当てはまるかんじです」
女「この水のどこがあったけーのよ!」パシャッ
人魚「だからうちらにとっては十分ぬくぬくなんです!変温動物人魚類!」
女「ほんだら何?あたしらの浸かるお湯ぶっかけたらどうなんのよ」
人魚「お~だ~ぶ~つ~」ナムナム
女「ふざけた種族ね、人魚って」
人魚「あんたに言われちゃお終いだよ....」ボソッ
女「紅茶あるけど飲む?」
人魚「え突然? まぁいただきます」
女「熱いけど大丈夫?死なない?」コポポポ....
人魚「少量ならどうということはありません」
女「あのねぇ、うちの親パティシエやってんのよ」ハイ
人魚「へー....」フ-ッフ-ッ
女「そんであたしがお茶くむわけ。小さい頃からずっとだから....まぁ美味しいわけよ」
人魚「ん....」ズズッ
人魚「あ、ほんとに美味しい」ハ-ッ
女「人魚にはお茶飲む文化あんの?」ズズッ
人魚「あるわけないでしょ」ズズズ....
女「海ん中じゃ無理な話よね。なら午後にほっこり落ち着く時なんかどうしてんの?」
人魚「午後に落ち着く文化もありませんけど....まぁあれですかね。お茶の感覚で嗜むのは藻ですかね」
女「............も?」
人魚「も。」
女「藻ってあの藻?緑色した?」
人魚「多分それでしょうね」
女「コケみたいなやつ?」
人魚「こ、コケ扱い!?あんたぁひでぇ人だ!人でなし!」
女「人魚に言われてもなぁ....」クスクス
人魚「コケなんて食べるのぁ暇な老いぼれどもだけですよ。あんな硬い苦い不味いもん常識で考えて食えないス」
女「いや藻にしたって普通食わないよ....」
人魚「えー?美味しいのに」
女「あたしの紅茶とどっちが美味しい?」
人魚「....気分によりけり?」
女「うわ逃げたよコイツ」
人魚「熱い液体とフヨフヨした緑色を比べさせんでください」
女「今度うちのケーキ食わしたろか。美味しすぎてひっくり返るよ」
人魚「炭水化物はあまり得意で無い....」
女「好き嫌いいくねーよ」
人魚「いやそういうんじゃなくてね?」
女「冷えてきたし帰るわ」スクッ
人魚「そスね、紅茶無ければ凍え死ぬ時間です」
女「人魚って大変だね」
人魚「今のは冗談です」
女「あそぉ....」
人魚「紅茶ゴチになりました。美味しかったですマジで」
女「ふふん、言われなくても分かってるよ」
人魚「人魚に興味あるんならまたここ来て下さい。午後なら水浴びってますんで」
女「暇なら来るわ」ヒラヒラ
人魚「その際は紅茶もお忘れなくね」
支援
人魚「おっ」
女「よ」
人魚「暇な時とか言っといて昨日の今日ですよ。暇人スね」
女「うるせぇほっとけ」ドスッ
人魚「....」チラッ
女「........ふふん」
人魚「........」ジ-ッ
女「気になるかい」
人魚「その箱が例のアレですか」
女「おうよ」パカッ
人魚「........あり?」
女「うちの羊羹よ。寒天は海藻由来なんだからね」
人魚「パティシェっつってませんでした?」
女「元は和菓子職人志望。才能無いから洋菓子に切り替えたらしいわ」
人魚「切り替えられるもんスか....」
女「細かいこと言ってないで食べなよほらほら」
人魚「いただきまーす」ア-ン バクリ
女「美味しいでしょ?」
人魚「んむ」モグモグ....
人魚「んーぅ....おぉっ」ゴクン
女「美味しいでしょ!」
人魚「うめぇーっス!」
人魚「あいやぁ、こりゃあ~中々の....うーんっ」バクバク モグモグ
女「落ち着いて食いねぇ」
人魚「親御さんいい仕事してますねぇ~」ゴックン
女「でそ?」
人魚「いいの?全部食べちゃうよ?止めるなら今だぜ?」
女「よい許す」
人魚「えーい!おー!!」ジュルリン
女「羊羹でここまでハイになる奴も初めて見たわ....」
人魚「んぐんぐ」ペロリ
女「後半丸呑みじゃねぇ....?」
人魚「ごっそさんした~」フィ-
女「あいお粗末様でした」
人魚「あ~食った食った」
女「食い急ぎすぎだっつーの。雅も繊細さもあったもんじゃない」
人魚「そこはほら、野獣ですもん」
女「都合いい時だけ獣ぶってんじゃないよ!」
人魚「んー...もう少し砂糖控えめにしてもらえるとよい気がします」
女「砂糖ハイ?」
人魚「シュガー・ハイでよくないスかね」
女「分かったよ....次機会がありゃ考えたる」
人魚「わーいわーい」キャッキャッ
女「ん、お茶」コポポポ.... ハイ
人魚「緑茶ですかね」フ-ッフ-ッ
女「羊羹だもん」
人魚「んー」ズズズ....
人魚「ほぁぁ....」ホッコリ
女「顔がふにゃけとるよあんた....」ズズズ
人魚「至福の時っスね」
女「そりゃ良かったねぇ」
俺もほっこりした
支援
女「へいっ」ガラガラガラ
人魚「へーい」
女「ふぅ」ヨッコイセ
人魚「なんスかそのでかいの....とても重そう」
女「ベールアップ!」バサッ
人魚「早い!溜めもへったくれもねぇっ!」
女「正解はかき氷機でした~」
人魚「また本格的ですね」
女「買ったはいいけど、パティスリーでかき氷売るのもナンだってんで活躍は少ないのよね」
人魚「もったいないなぁ」
女「だからちっこいペンギンのやつにしろとアレほど....」
女「氷はイケる?」シャリシャリシャリシャリ....
人魚「むしろ大得意です。人魚ってのぁ本来流氷の上で暮らすもんですよ」
女「初耳だわ」シャリシャリ....
人魚「今日はお茶は?」
女「ん?一応紅茶はいれてきたけど」シャリ.... シャリ....
人魚「かき氷には紅茶なんですね」
女「そこ、迷うとこよね」ゼェ.... ゼェ....
人魚「....代わりましょうか」
女「そうね、それがいいね」ハァハァ
女「だいじょぶ?結構力いるよ?」
人魚「ふんぬっ」グリン
女「おぉ」
人魚「ていていていていていてい」グルグルグルグルグルッ
女「はやっ」
人魚「あたたたたたたたたたたたた」シャリシャリシャシャシャシャシャッ
女「見る見る間に白い山がっ!」
人魚「コンプリィッ!!」ジャッ
女「や、やるわね....」
人魚「力と器用さには自信あり♪」ブイッ
支援ッス
面白い
人魚「どぞ」
女「あたしの分まであっちゅー間に出来たね....すげっ」
人魚「....からの?」
女「うむ」ゴソゴソ
女「ほれ、シロップ15種セット!!」ドジャ-ン
人魚「すげぇ!選り取りみどりっスね!」
女「ちなみに味は全部同じ」
人魚「わー....すげー」
女「あんたはこっちの方がいいかもね」ゴト
人魚「なんですこれ」
女「メープルシロップ」
人魚「んーむ」シャクシャク
女「ふむ」シャリシャリ
人魚「う、美味い!氷のクセに!」
女「そーね....ただ」
人魚「どうかしました?」
女「かき氷にはちょびっと時期が遅かったよね....」ブルブル
人魚「唇が紫色してますよ」
女「これだからアレよ....あたしは元々食べる気無かったの」
人魚「あーらら....お節介しちゃいましたか」
女「全くだよ....責任とれや....」ガチガチ
人魚「んじゃお茶ください」
女「あぁ?」
人魚「まぁいいから任して下さい」
人魚「んー....」ズズッ
人魚「ほわぁ....」ホッコリ
女「何がしたいわけ」
人魚「ほら、こっち来て」
女「は?」
人魚「寒いでしょ?」
女「そりゃ寒い....けど」
人魚「温めますよ」
女「いやいやいや、あんた冷たいじゃん」
人魚「試してみなさい」
女「............」
女「....」ソ-ッ
人魚「ほら」
女「....ん」ピトッ
人魚「ほらほら」
女「手....冷たいよ」
人魚「ほれ」グイッ
女「えっ?」グラッ
人魚「」ガシッ
女「え....え?」
人魚「ぎゅーっ」
女「あ....なんか....」
人魚「お腹はあったかいでしょ」ギュゥ-
女「うん....」ギュッ
人魚「うちらの体温なんてね、コロコロ変わっちゃうもんですよ」
女「へぇ....すごいね」
人魚「えへへ」ギュ-
女「で....も」
人魚「ほい?」
女「頭抱えるのは止めてよ....」
人魚「え....嫌スか?これ」
女「体制的に腰が痛いんだよ!」
人魚「あーらら、こりゃ失礼」パッ
人魚「後ろからぎゅー」
女「うん....」ギュッ
人魚「こりゃもうかき氷食べらんねースね」
女「とけちゃうね」
人魚「....」
女「....」
人魚「つっても黙ってみてるのもどうかと思うんですよ」
女「逆にとけるまで待とうか。その後飲む」
人魚「氷けずった意味ねぇー....」
女「....」ピトピト
人魚「どうかしました?」
女「肌綺麗だね。ずっと海水に浸かってるってのに」
人魚「そらあんた、人間の皮膚とは違いますもん」
女「ふぅん....」ツネッ
人魚「あだだだだ」
女「羨ましいぐらいだわ....いやうらめしい!」ペチペチ
人魚「....」ズズッ
女「」ゴクゴク
人魚「甘ったるいわ!」
女「うん」ゴクゴク
人魚「あんたあれですね....ガムシロ渡したらペロペロ舐め始めそう」
女「それ暴言!」プハ
人魚「....」ズズッ
女「....」
人魚「....つかいい加減私冷たいスよね。寒いでしょ、離れますね」
女「ん、別にいいよ。平気平気」
期待
女「....」トボトボ
人魚「どしたんスか。くまが....」
女「....ん」ズイッ
人魚「....?」
女「ん」ズズイッ
人魚「こりゃお菓子ですか。つかなんか喋んなさいよ」ガサガサ
女「んー....」
人魚「ケーキのようですね」ホ-
女「そう....それはケーキだよ」
人魚「また独特なデコレーションで」
女「失・敗・したの! 笑えよ!ほら!」
人魚「落ち着いてくださいよ」
女「あのね、おからのケーキを焼こうと思ったの」
人魚「はぁ」
女「そしたらこうなったの」
人魚「またえらい端折りましたね。 元気出せよ」
女「出るか!こんなんで!」
人魚「あーう」カパァ
女「」ギョッ
人魚「」バクッ
女「....」
人魚「....」
女「....?」
人魚「」....モモモモモモモモモ
女「はやっ!?」
女「どの位不味かった?」
人魚「美味しいですよ?」ペロ
女「しっらじらし....」ケッ
人魚「疑り深い人ですねー」
女「いい加減分かってるよ。食えたもんじゃないってさ」
人魚「私はこれぐらいの方が好みです」
女「....」
人魚「今日のお菓子はもう無い?」
女「....」
人魚「ねぇねぇ」
女「....ほれ」ズズイッ
人魚「やふー♪」
人魚「あぐあぐ」モッモッモッ
女「そんな急いで食べるのは....さっさと食べ切りたいからでしょ」
人魚「私も高く見られたもんですね」モグモグ
女「は?」
人魚「食欲に抑えが効かないだけです」ババ-ン
女「....」
人魚「気がつくと無くなっていて悲しい....」
女「....なにそれ」
人魚「お菓子なんて、あなたのくれる物しか食べる事が無いから....楽しみなんです」
女「ゆっくり食べればいいでしょ」
人魚「それが出来たら苦労はねぇスよ....」ズ-ン
女「....」チギリッ
人魚「およ?」
女「....ほらよ」ハイ
人魚「」バクッ
女「あだっ」
人魚「んー♪」モグモグ
女「....」
人魚「もっともっと」
女「はいはい」
女「なーんであたしだけ、こんなにも菓子作る才能に欠けるんだろねぇ」ハイ ア-ン
人魚「家族のこと?」バクッ
女「そうそう。両親も兄弟も、みんな麗しの洋菓子焼いてみせるわけ」
人魚「ほぉ」モグモグ
女「小さい頃からずっとこの家にいてさ....なんであたしだけ」
人魚「劣等感」
女「」ビクッ
人魚「感じてるのはあなただけではありませんよ」
女「あんた....」
人魚「ほらもう一口」ア-ン
女「はいはい....まぁあれよね。見てのとおりの出来損ないよ」
人魚「そんなことはありませんよ」
女「今度は何....」
人魚「少なくともあなたの煎れるお茶は、認められるでしょ」
女「....」
人魚「ですよね?」
女「....でもさ、それしか出来ない人間の価値なんざ二束三文ってやつで」
人魚「私はあなたのこと好きですし」
女「は?」
人魚「このお菓子だって....二回目ですけど、美味しいです。認めるやつはここにいます」
女「....................」
人魚「ここまでハッキリ言わせて、信じないってのは酷いスよ。恥ずかしいんだから」
女「父さんは優しいこと言ってくれるけどさ」
人魚「うんうん」モグモグ
女「酷いのは弟よ。あいつ自分が上手いからっていびってくるんだ」
人魚「いびる?」
弟『あれ、まだいたの?』
女『はぁ!?はぁぁぁあああ!!?』
女「俺が店継いだら追い出してやるー、って」
人魚「追い出す、ねぇ」
女「うんうん」
人魚「....そう言えば、あなたそこそこの歳ですよね」
女「............二十代だよ」
人魚「家では何を?」
女「....」
人魚「........まさか」
女「お茶汲んでるから。ねっ」
人魚「ニートじゃん」
女「ニートじゃねーし!!」
人魚「えー? 引くわー....」
女「あ・ん・た....ちょっとさっきの優しい態度からの落差がひどいんじゃあない?」
人魚「何故働かないの」
女「働きたいよ!ただそうどこも雇ってくれないじゃない?今時」
人魚「家でも仕事あるんじゃ?」
女「そう、そうだよ....ウェイトレスとかさ」
弟『若くて可愛い子雇うわ。引っ込んでろブス』
女『はぁ!?はぁぁぁあああ!!?』
女「あいつめぇぇええええええ!!!」
人魚「厳しいなぁ....」
女「追い出されたらどうしよっかなー....はは....ほら最後の一口」ハイ
人魚「私と暮らします?」バク
女「は?」
人魚「魚は食べたいだけ食べられます」
女「いやいや」ハハハ
人魚「そして私もお菓子を食べて、お茶が飲めます....」ジュルリ
女「....」
人魚「いいなぁ....天国?」
女「....そんな美味しかった?」
女「羊羹はお父さんのだし、カキ氷は氷だし....でも今回のはさ」
人魚「あなたのお菓子が好きです。また作ってよ」
女「....」
人魚「練習にもなるでしょ」
女「........練習ね」パチンッ
人魚「いいでしょ?」
女「いいね」
人魚「でも....」
女「なにさ....」
人魚「夜はちゃんと寝て。逃げやしませんよ、気長にいきましょ」
女「....そだね」
ほっこり
支援
どうなった?
女「おう」
人魚「夕方まで待って仕事終わりアピールするのも諦めたようですね。ニートらしい時間に」
女「ああぁもうやかましいわ!黙れ黙れ、もう帰る!」
人魚「ちょちょいちょい、そんなぁただのフレンドリィジョークじゃないですか~」
女「チッ....」
人魚「それはそれとして、お菓子の方はいかがスか。上手くできた?」
女「んなすぐに上手くなるわけねーだろ....ほらクッキーだよ」
人魚「ほほう。これなら一口分ずつちぎってもらう必要もありませんね」
女「まさかガラガラ流し込みゃしないよね」
人魚「残念ですが今回は遠慮しましょう....」
人魚「いただきまー」ガッギィッ
女「味はどう」
人魚「まだ噛めてません」バッギィィンッ!!
女「おかしいな....焦がしちゃいないはずだけど、なんでそんな硬くなるんだ....」
人魚「....」ボ-リッボ-リッ
女「どう?」
人魚「おいひぃでふ....この硬さ、さながら骨を噛み砕いてる気分です」
女「ハッ、ついに皮肉ぅききだしたか!キャラの崩壊がひどい!!」
人魚「....? いえ普通に褒めてますよ」
女「何?あんたアレか、チキン食らわば骨までってタイプの」
人魚「チキン食わねぇよ....海の捕食者をなんだと思ってんですか」
人魚「美味しいですよ。歯の丈夫な人ならいただけます」
女「うん....まぁちょっとそこら辺の人にすすめられる硬さじゃないね....」ガリッギャッガリッ
人魚「....」ボ-リボ-リ
女「きっ....くぅぉっ」ガギリッギャガッ
人魚「....大丈夫?噛めます?助けはいる?」
女「助けって何さ....顎にアッパーでももらえるの?」ゼェゼェ
人魚「んー」ガジッ
女「あんたが食べてどうする。いや食べてていいよすまん」
人魚「ふんっ」バッギィィ--ンッ!!
女「うん?」
人魚「あいどうぞ。この大きさなら奥歯で噛み砕けます」ハイ
女「えっ....あぁ、うんありがと」
女「かってぇ....まさしく骨だわ」ボ-リボ-リ
人魚「食べごたえがあるというか....硬いのは私の好むところです」バッギィッ!! ハイ
女「ふぅん....じゃ魚とかも骨ごと食べるんだ」
人魚「丸呑みですよ」
女「噛まないのかよ!」
人魚「失礼、言葉のあやです。本当はシュレッダーの如く粉砕しながらいただきます」
女「自分でする例えじゃないなそれ」
人魚「がうっ」バギィッ!!
人魚「思ったんですがね」ハイ
女「なにさ」ドモ
人魚「お茶ってクッキーに合いますよねぇ~」
女「....」
人魚「そう思いません?」
女「....悪かったよ、忘れてたよあるよ」コポポポ....
人魚「わーい」
女「図々しくなったなぁ....」
人魚「あなたのお菓子とお茶が美味しいのがいけないんですよ」
女「あんたさぁ、あたしが来なければ菓子とか食べないわけじゃん」
人魚「ですね」
女「つまり食べなくても生きて行けるんだよね」
人魚「ですねぇ」
女「菓子ってのは卵やらバターやら大量に入ってるわけなんだけど....」
女「....太んないの?」
人魚「『お菓子食べ過ぎて晩御飯入らないしいいや』作戦で」
女「『お菓子食べ過ぎて晩御飯入らないしいいや』作戦!?」
人魚「太ってる人魚ってほとんどいませんよ。近頃はごく稀に見かけますが」
女「近頃ぉ?」
人魚「首輪ついて可愛がられるやつらは....」
女「あ~」
人魚「やっぱ体動かさんとダメっスよ。ひと狩りいこうぜ」
女「あんたは狩ってるのか」
人魚「....」
女「どうなんだおい」
人魚「....こ、小魚とかね?」
今年もよろしくお願いします!
女「よ」
人魚「うい」
女「あの...これあたしの気持ちですっ!受け取って下さい」ハイ
人魚「ほほう。お主も悪よのぉ」フォッフォッフォッ
女「そっちじゃねーよ」
人魚「そスか?失礼ゝ」
女「開けてみ?紐引っ張って」
人魚「これ呪われしファラオの...」ゴクリ
女「人が四苦八苦で仕上げたラッピングに失礼な...」
人魚「過剰包装にも程が...」シュルッ パサパサパサッ
女「紐一つで解けるべ?」
人魚「すげぇ」
人魚「.........どろ?」
女「ガナッシュ」
人魚「がなっしゅ」
女「ガナッシュチョコレート」
人魚「がなちょこ」
女「その略し方は一般的じゃないなぁ」
人魚「何ですのこれ」
女「チョコだっつのはよ食え」
女「このヘラでもって」
人魚「」サクッ
女「そうそう」
人魚「あっ」ポロッ
女「いいよー」
人魚「いいのかよ」
女「初めはみんな通る道よ」
人魚「ぐぬぬ...」ポロッ ポロポロ
女「...」
人魚「...」ポロポロポロポロ
女「...」
人魚「............」ポロポロポロポロポロポロポロポロ
女「ここまでか」
人魚「はい!ごめんなさい!」グチャリ
女「フレークみたいになってんじゃねーか!どうすんだよ!」
人魚「...どうしましょう」ショボン
女「......」
人魚「......」
女「.........ハァ。しゃーない、また作り直してくるわ」
人魚「えっ」
女「どした」
人魚「そ...それは?」プルプル
女「んー..................廃棄」
人魚「それはダメーーーーっ!!!」
女「何さ...だって仕方ないじゃん」
人魚「仕方ないこと無いでしょ!?まだ食べられんのに!」
女「どうやって」
人魚「.........」
女「どうやってさ」
人魚「............このまま」
女「このまま?」
人魚「このままガラガラっと」
女「.........」
女「...」
人魚「いいでしょ?」
女「......ったく」ガラララッ
人魚「ん?」
女「ほれ食え」ハイ
人魚「...何故蓋に分けて?」
女「全部渡したらあんた2秒で流し込んで終わりでしょ」
人魚「それもそうですね。これはこれでわんこそばみたいになりそうですが」
女「自分で言うか」
人魚「」ボ-リボ-リ
女「どうなの」
人魚「おかわりっス」
女「味を聞いてんの」
人魚「美味いってば二杯目お願いします」
女「...嘘だぁ」
人魚「いいからもっと食べたいから下さいよ」
女「...はいはい」ガララッ
人魚「ふぉはわひ」ボリボリ
女「やはりこうなんのね」
人魚「何れふって?」ゴクン
女「落ちつけよ!美味しいっつうんならもっと味わってくれてもいいんじゃないの!?」
人魚「せやかて...」
女「あんた本当は不味いと思ってんじゃないの?」
人魚「なんでそうなるんスか...」
女「そうか...ははっ、読めたぞ貴様」ジロッ
人魚「おお怖い怖い。何が?」
女「やはりあんたは不味いもん無理して食ってんだろ」
人魚「えー?」
女「フン...あんた狩りが下手なんだろ」
人魚「ぎくり。いやそんなことはねっスよ?もう狩りまくりですよ」
女「下手として話を進めさせてもらうが...つまりあんたはここにいて、食料に困ったのだ!!」ビシッ
人魚「なぬ!?」
女「よく考えりゃあそうよねぇ?あたし以外に食べ物よこす人間なんていないだろうし」
人魚「そうとは限らないでしょ」
女「いや限るね。ここは『化け物の溜まり場』誰も近づかない」
人魚「何それ」
女「つまりこの入江は街の人々からは忌み嫌われるスポットなんだよ」
人魚「そうだったの!?」
女「知らなかったんかい」
人魚「だって誰も教えてくれなかったから............はっ」
女「それ見ろ、寄りつく人間なんていないんじゃないか」
人魚「まぁそれは認めますけど...」
女「それで唯一あたしのよこすゴミみたいなゲテモノ菓子を食わねば死んじまうってことだ。ゲロ吐きそうなのを堪えてな」
人魚「.........」
女「どうだ。言い返す言葉もないか」
人魚「......んで」ボソッ
女「ん?」
人魚「な...んでぇ...そんなことばっかり...言うんスかぁっ...」ポロッ ポロッ
女「げっ...ななな泣かしたっ」
人魚「うぇえ〜〜〜っ!!なんでだよぉ〜〜!!言うこと聞けよコラぁーっ!!」ビェェ------ッ
女「なっ...ちょ、いやあんた...」オロオロ
人魚「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!信じてよぉぉぉっ!!!」
女「や...やめなさいよそんな...そんなつもりじゃ...いやそんなつもりだけど...」
人魚「なんで信じてくれないんだよぉぉっ!!うちが何したってんだよぉぉぉっ!!」
女「あ...いやそれは...うーん...あ、あの...」
人魚「謝りなさい」
女「は?」
人魚「けじめつけて謝んなさいっつーの!!じゃなきゃこれ全部一気に食べちまうぞ!!」
女「で...でも...だってそうでしょ!?」
人魚「まだ言うかこの分からず屋!!」
女「でもこれどうせ美味しくないじゃん!」
人魚「食べて見なさいよ」
女「なんだって?」
人魚「食べてみりゃ分かるでしょうと言ってるんですよ!」
女「......えー...」
人魚「何スか嫌なんですか」
女「嫌だね正直。自分の菓子の酷さ加減は身に染みて分かってるし」
人魚「これ作るとき味見は?」
女「してないけど」
人魚「」バシャッ
女「つめたっ!?なっ何すんだよ!!」
人魚「味見もせずによくもあんな口がきけたもんですね。その事についてはもう今謝ってください」
女「...ごめんなさい?」
人魚「よろしい」
女「」ホッ
人魚「じゃテイスティングタイムといきましょうか」
女「やっぱそうなんのね...」
女「んー....」
人魚「ほれほれ」
女「....」アム
人魚「....」
女「....」モヌモヌ
人魚「美味しい?」
女「にがい」
人魚「苦くて美味しい」
女「苦くて不味い」
人魚「苦くてあま」
女「くない苦い」
人魚「....美味しいよー?」モヌモヌ
女「本気なら舌の病気だよあんた....」
人魚「おっかしいなぁ....」
女「ムリしてんなら食べないでいいよ....改めて味は分かったから」
人魚「だから違うってば」
女「しっつこい....」
人魚「美味しいってば!」グイッ
女「あ?」グラッ
人魚「んむっ」ブチュッ
女「っ」
キマシ
人魚「む....んぅ....」
女「....!?」ビクッ
人魚「むぇ....むぅ....」
女「むぐ....んむぃ....っ」
人魚「あぇ....」
女「ひ....はへ....」
人魚「ぇお....」レロ
女「ふぁっ....」
人魚「んぅ....んむ....」ジュルッ
女「....めぇ....」
人魚「ぷは....」
女「はっ....はっ....」
人魚「....美味しかった?」
女「あ....あぇ....はひ....」
人魚「ひひひ」
女「は....はぁぁ....」カァァ
人魚「....ねー?」
女「」シュゥゥ....
人魚「ねってば」ポン
女「ひっ!?」ビクッ
人魚「....大丈夫?」
人魚「美味しくなかった?」
女「え....あぅ....わ....」
人魚「私は美味しかったよ。どう?」
女「わかん....ない....」
人魚「....」
女「な....なに....なん、なんの....」
人魚「残り食べましょっか」
女「はえ?」
人魚「また食べさせてほしい?」
女「い、いい!!いい!!」カァァァッ
人魚「あそぉ?残念....」モヌモヌ
女「なん....なんなのよ....」
人魚「ご馳走様でした」
女「お....お粗末様....でした...」
人魚「美味しかったです」
女「そ、そう....そりゃよかった....」
人魚「あんまし不味い不味い言うもんじゃないッスよ。改めて食べてみりゃ案外なんてよくあること」
女「うん....」
人魚「そうだったでしょ?」
女「うん....」
人魚「ん?美味しかったんだ」
女「え?あっ、いやちがくて....」
人魚「なんなの」
女「いやだから....そりゃこっちのセリフだよ....いきなり何なんだよ味とかもうわかんねーよ....」
人魚「伝わればいいなぁと思ってさぁ」
女「いやだからってさぁ....あんた....いきなり強引すぎやしないかい....?」
人魚「動揺しすぎー。まさか初めてかよ」
女「....分かってんでしょ」
人魚「えっマジで?」
女「何だよその反応は!?」
人魚「いや別に....アレは?恋人とかいないの?」
女「あたしがそんなモテるように見えるのか?」
人魚「んー。人間のモテ事情はよくわかんねっス」
女「いやそういうレベルじゃないだろ....」
人魚「はぁ?」
女「もういいよ....あれこれ言って悪かったよもう帰る....」スック
人魚「あそぉ?じゃまた」
女「なんなのあいつ....変態かよ....ねーよ....」トボトボ
女「....」
女「....」
女「....不味くは無かった....かなぁ....」
女「わかんないけど....悪くはなかった....かも....」
女「........気持ち....」
戻って来たか
乙!
保守
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