女「恋のキューピッド?」 (33)
女友「そうそう!そういうサイトがあってそのサイトに好きな人の名前を入力すると本当に恋人が出来たって人がいるみたい」
女「何その胡散臭い話…」
女友「いや本当なんだって…隣のクラスの子もそれで長年好きだった幼馴染と付き合えたって言ってたよ」
女「ホントかなぁ…」
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女友「でも、そのサイトにアクセスするには本当に付き合いたって気持ちがないとダメみたいなんだって…」
女「なおさら胡散臭いじゃん…」
女友「私もアクセスできないかぁ…」
女「いや、無視ですか…」
私は恋をしたことがある。それも三回。一度目は小学生の頃、隣に住んでいた幼馴染。二度目は中学一年生の頃、部活の先輩に。三度目はこれまた中学三年生の頃、同じクラスの男の子に恋をした。
まぁ結果はわかるようにすべて失敗。彼氏いない歴年齢=のまま、高校二年生の春を迎えていた…
女「てか女友って好きな人いたの?」
女友「もち!同じ部活の先輩なんだけどね…」
そういう女友の顔はいかにも恋してますって顔で見ているこっちが恥ずかしくなりそうだった。
女「そっか…」
女友「ん、どうかした?」
女「うんん、何でもない…」
本当に恋のキューピッドがいるなら私の恋も叶ってたのかなぁ…
なんてあるはずもない事を考える…
女「それで、その先輩と付き合いたいから恋のキューピッドに頼もうとしてるわけだ」
女友「つまりはそういうことだってばよ!」
女「もう、その漫画は終わったってばさ!」
女「まぁ、でも女友の好きなようにしてみたらいいんじゃない。」
女友「そうする~」
その日の夜。私は今日女友が話していた[あなたの恋叶えます、恋のキューピッド♡]というサイトを調べていた。
ネットでも有名な話らしく、本当に恋をしたいと思っている時にそのサイトは現れ、好きな人の名前を打ち込むだけでその人と一生結ばれるらしい。
一生って…
ベッドに横になりながら携帯でそんなことを調べていると、女友からのメールが来る。
女友(サイトにアクセスできた!明日告白するとうまくいくってメッセが来た!)
私は半信半疑な気持ちでそのメールを見終える。
女「まぁ、頑張んなよ…」
そういうたぐいのメールを返信し、私は眠りについた。
翌日、女友は朝からテンションがマックスだった。てか、五月蝿い…
どうやらもう先輩には放課後話す約束をしているようで、どういう告白をしよう、髪おかしくないかな?
なんて朝から聞いてくるもんだから、放課後までの時間を使って二人でずっと考えていた。
女友「うん、決めた。やっぱりストレートに好きですって言う!」
女「女友らしいよ…」
女友はこういう女の子なんだ。いつも真っ直ぐで気持ちに迷いがなくて…
だから友達として付き合って欲しいなと思う。
女友「それじゃあ、約束の時間だから行ってくるね」
女「うん、行ってらっしゃい」
女友の顔は、うん、可愛いと思った…
キラキラ輝いてて。私には無い、そんな輝きがあるような気がした。
女(しかし、恋のキューピッドねぇ…結局、告白する勇気のない子に告白させるきっかけを与えるようなサイトのような気がするけど…)
女「成功するといいなぁ…女友」
教室で待っているのも落ち着かなくて、私は学校内を歩き回ることした。
なんだか私までドキドキしてきた…
校舎内を歩いていたときふと窓の外を見ると体育館裏に女友と背の高い男子生徒がいるのが見えた。
遠目でしか見えないけれど確かにカッコイイイ人だなったと思った。女友が惚れるのもわかる気がする。
なんだか見ているのも悪い気がして目を離し、もう一度歩き出そうと足を踏み出す。
最後にもう一度女友に目をやると、私はすぐに違和感に気がつく。
もうひとり誰かが居る…
それは先程まではいなかった何かだった。
私が目を離したのはほんの一秒程度だったと思う。その間に女友と男子生徒の中に遠目からでもわかるほど異質な何かがいた。
すぐさま私は女友のもとへ走った。
なんだかやばい気がする。そんな思いでいっぱいだった。
二分も立たずに女友のいる体育館裏へ着く。そこで見た光景はまさしく非現実的な光景だった。
異質な存在は二人に向かって金色の銃を向けている。
女「や、やめてっ!」
そう叫ぶ頃には二人は銃弾に打ち抜かれていた…
気が付くと私は保健室のベッドの上だった。
どうやらあのまま気を失っていたらしい…
女「お、女友は!?」
ベッドから起き上がると仕切りのカーテンの向こうから女友が姿を現す。
女友「あぁ、女~、大丈夫?どこも痛くない?びっくりしたよ~、いきなり倒れてるんだもん」
女「それより、女友の方こそ大丈夫なのっ?」
女友「ん?私はなんともないよぉ」
確かに私は見たのだ。女友と先輩が撃たれるところを…
夢!?そんなはずは…
女友「大丈夫なら良かったよぉ。私が告白した場所でいきなり倒れてるんだもん。」
そうだ、女友は告白しようとしていたんだった。
女「そ、それで、結果は…」
女友は満面の笑みで親指を立てる。
どうやら成功したようだった。
私は保健の先生に大丈夫だと伝えると、心配する女友を保健室の外で待っていた女友の彼氏に無理やり連れて帰ってもらった。
私がすみませんと伝えると笑って、なんともなくてよかったよと言ってくれるあたり本当にいい人だなっと思った。
女友と彼氏さんを見送り、私はもう一度あの体育館裏に行ってみることにした。
先ほどのあれは本当に夢だったのか。それをどうしても確認しておきたかった。
体育館裏に行くが特に変わったことはない。
本当に夢を見ていたのではないか、そう思うほどに…
女「帰るか…」
そう呟いた時だった…
その人はいきなり私の前に現れた。
「やっぱ見られてたか…めんどくせぇ…」
その人の第一印象は美しいだった。
一瞬女性かと思うほどの…多分男性だと思うけれど。
女「あ、あの、あなたは?」
男「あー、まぁなんというか…」
その男はめんどくさそうに答える。
男「恋のキューピッド的な…」
女「……」
男「まぁ、こうなるよなぁ…」
女「ふっ、あはは」
自然と笑いが出てくる。冗談にしてもおもしろすぎる…
男「信じるか信じないかはお前次第だよ。ん?」
初めてこの男と目が合うと同時に、男が私の顔を見て怪訝そうな顔をする。
男「ノコリモノか…お前…」
女「ノコリモノ?」
ノコリモノ。なんだかいやな言葉だ…
男「ほぉ、その歳でノコリモノとかどんな確率だよ…」
男の言葉からはあまりいい言葉ではないことが分かる。
女「ねぇ、ノコリモノって?」
男「ん、ああ、でもいってもお前絶対信じないだろ…」
女「いいじゃん、信じるって」
男「初対面の奴に向かってその態度とは…」
男は、はぁとため息をつくと諦めたかのように話し出す。
男「人っていうのは人生に運命の相手と三度出会えるようになっている。結局行き着く先はその運命の三人のうちの一人になるってわけなんだが…」
男は間を空けて話を続ける。
男「お前はもうその歳でその三名の相手と出会いそして振られてるって訳。だからもう恋もできないし、一生独り身で死んで行くってわけ」
男「お前自身も感じてるんじゃないか。誰も好きになれないようなそんな感情を…」
男「こんな話をしても信じてもらえないと思うから聞き流してくれればいいが…」
女「なんで、そんなことが分かるの?」
男「…」
女「どうして…そんな事を言うの…」
私はなぜが涙が止まらなくなる。不思議とこの男が言っていることは想像できてしまう。一人で死んでいく自分自身も…
男「ちょ、おいおい…泣くなよ…」
男は困ったかをでこちらに近づいてくる。
男「と、とりあえず場所変えよう。この季節の夜はまだ冷えるだろ…」
というわけで学校の近くのファミレスに来たわけですが…
涙はもう止まっていて、それと同時に恥ずかしさのほうが押し寄せてきた。
男「なんか悪かったよ」
男はコーヒーを飲みながら謝罪をしてくる。
女「ん、こちらのほうこそごめん」
なんだかとても微妙な雰囲気だ。
結局この男はなんなのだろうか…
女「で、結局君は何者なの?」
男「いや、だから恋のキューピッドだって」
女「……」
つまりはこういうことらしい。
この男は恋のキューピッドであり、恋人を作ることを生業としているらしい。らしいというのはまだ信じていないわけであって…
あの子の男はいろんな特殊能力があるらしい。これもまた信じていないのだが…
男「俺は運命の赤い糸が見える」
真顔でそんな事を言うものだから少し面白い。
男「でもお前のようなノコリモノからは赤い糸は見えなくなるってわけだ」
男「それに赤い糸は生ものみたいなもので鮮度があるから結ばれているからといって必ずその二人が恋人になれるかと言ったらそうでもない」
男「早すぎてもダメ、遅すぎてもダメってわけだ。まぁお前は早すぎたな。タイミングがすべて。」
女「何も知らないくせに…」
少し起こり気味で言葉を発する。
男「そんなこと言っても俺にはわかるんだよ。お前の初恋は隣の家の幼馴染の…」
というとこの男は私の全ての好きだった人の名前をいって言った。
どうやらこの世のものとは思えない力が確かにこいつにはあるらしい。
男「んで、赤い糸が一番太くなる時期にこの金色の銃の銃弾を打ち込まれた奴は一生結ばれるってわけだ」
まぁ、俺の話せることはこれくらいかな…
そう言い終わると彼はドリンクコーナーにコーヒーのおかわりに向かったようだった。
彼の言うことは信じられない。というか信じるつもりもない。
けれど、なぜだろうか。彼の言っていることは嘘だとは思えなかった。
彼の雰囲気がそうさせているのだろうか…
私もコップに入っているオレンジジュースを飲み干した…
ファミレスを後にすると彼は、それじゃあ、またと言って立ち去ろうとする。
女「ねぇ。まだ私あなたの名前聞いてないんだけど…」
男「ん、レンだよ」
女「普通に答えてくれるんだ…」
もっと渋ると思っていたんだけどな。
男「それで、僕だけ答えるなんて不公平…」
女「アイよ」
なぜだろうか。こいつ、レンとは長い付き合いになる気がした。まぁその通りだったんだけれども…
女「これからよろしくね。レン君」
彼は笑みをこぼすように笑い、こちらこそ、よろしく。
そう言うと街の人ごみに姿を消した…
翌日。
先輩とラブラブで投稿してくる女友を教室の窓から見ながら昨日あったことを思い出す。
変な男に出会って変な話をされて…
女「はぁ…」
意味もなくため息が出てしまう。
女友「おはよう~。どうしたの朝からため息なんかついて?」
女「いや~、なんというか…気分だけ生理みたいな…」
女友「どういうこと?」
女「はぁ…」
事件は朝のHRで起こった。
なんでも転校生が急にこの学校に来ることになったらしい。
うん、嫌な予感がするね…
それじゃあ、入ってくれ。なんて担任の声とともに転校生が教室に入ってくる。
男「初めまして、ツキシタ レンです。よろしくお願いします」
はい、そんな気がしてましたよ…
レンは私を見つけると笑みを浮かべる。
クラスの女子は黄色い声を上げている。まぁ格好良いよね…普通に。
その日は放課後までレンは女子からの質問攻めにあっていた。
あらあら、人気なものですねぇ。
女友「かっこいいねぇ、転校生のツキシタ君」
女「そだねぇ」
女友「ん、あんまり興味ない感じ?」
女「……」
女友「やっぱなんか調子悪い?昨日のこともあるし…」
女「いや、それは大丈夫だから…心配かけてごめん」
女友「いや、いいけど…」
放課後、女友は部活。私は部活には入っていないので、放課後はいつも時間を潰して帰る。
家に帰っても何もすることないからなぁ…
「アイさん」
不意に後ろから声をかけられる。
昨日の放課後よく聞いた声だった。てかレンだった。
女「何、転校生さん?」
男「今日も仕事がありましてね…よければご一緒にどうですか?」
ここでいう仕事というのはキューピッドのことだろう。
女「…そうね。やることもないし」
というのは建前で本当はレンが昨日の言ったとおりキューピッドならば少し興味があった。
まだ信じたわけではないけれど、この男は嘘は行っていないと思う。
男「今日の仕事はこの高校の三年生の女子学生からでした」
その人は今日の放課後家の近くの公園で告白する予定らしいです。
女「ふ~ん、よく調べてるのね」
男「いえ、調べなくてもわかるんですよ」
レンは真顔でそんな事を言い出す。
男「その女子生徒の好きな方はバイト先の方でして、赤い糸でもつながっているので簡単な仕事になりそうです」
女「てか赤い糸でつながっていない人同士でも恋人にすることができるの?」
男「できますよ。でもつながっていないもの同士は必ず別れますけどね…」
それがすぐに別れるのか、結婚してから離婚という形で分かれるのかはわかりませんけどね…
女「で、放課後って具体的にはいつなの?」
男「あー、まぁ、あと二時間ほどでしょうか」
長いわ!って叫ぼうかとも思ったが今日はなんだかそんな気分ではなかった。
女「その時間までずっと公園で待機なわけ?」
男「いえ、とりあえず僕の家に行きましょう。色々準備もありますから…」
そう言うとレンはいきなり私を抱き抱える。
女「な、ちょっ、何するのよ!?」
男「私の家まで移動しますね。ちょっと恐いかもしれませんから目を瞑ることをおすすめしますね」
恐い?てか私は抱き抱えられたこの状況を誰かに見られる方がよっぽど恐いんだけど…
そんなことはお構いなしなのか、こいつはいつの間にか私を抱き抱えたまま地面から飛び立っていた。
女「うわーおっ…飛んでるじゃん…」
こいつ飛べるのかよ。てか翼生えとるし…
何でもありだな恋のキューピッド…
女「なに、あんた飛行能力まで持ってんの?」
男「キューピッドですからね。飛べる翼くらい持ってますよ」
笑いながらこの男は答える。
昔は空を飛びたい、雲に乗って空を散歩したいなんて思っていたけど、それがこんな形で叶うなんてね。人生何が起きるかホント分かりませんなぁ…
女「風が気持ちいい…」
男「でしょう。私も気分が落ち込んだ時とかはよくこうやって空を散歩するんですよ」
お姫様だっこされながらの空の散歩も悪くないかな…なんて思う自分がいる。
さっきよりも気分が晴れている自分がいる。
なんでかな…
ほんの五分ほどで彼は目的地に到着したようで、地面に着地する。
もうちょっと飛んでいたかったな…てのは言えないね。
男「着きましたよ。少し気分は晴れましたか?」
女「…別に」
レンは少し笑みを浮かべる。その顔に私は…
グーでパンチを入れる。
女「なんかムカついた…」
男「いきなりですね、ほんとに…」
男「まったく情緒不安定ですか。生理なんですか全く…」
レンはふてくされたように頬を膨らませる。
何その顔、笑えるわ。
男「とりあえず家に入りましょうか。てか頬いてぇ…」
今まで見ていなかったけれどその場所はなんというか、不思議な場所?
というか老人ホームじゃねぇかぁ!
女「あんたの家って老人ホームなの?」
男「私の家っていうか、俺の師匠の家っていうか…」
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