エルフが奴隷に堕ちた理由を考えてみたりなど (139)
森に住む彼らにはエルフという名以外にもいくつか呼び名がある。
賢き者たち、森の子ら、知恵の種族、歌う人。
蔑みの意を込めた名ももちろんあるのだが、呼び名のほとんどは彼らの力を認め畏れるものだ。
人との交流は最低限。
その口から出る言葉は思慮深く難解。
森の奥で独自の生活を営んでいると言われるがその実際を知る人間はほとんどいない。
不可思議な力を使う、人間には考えもつかない知識や技術を持っているなど、とにかく謎が多いという。
もし彼らとの間に争いが起こればまずもって勝ち目はないと人は信じていた。
程度の差はあれど、誰もが彼らを恐れていたのだ。
しかしそれらはすべて過去の話である。
もう誰も彼らを恐れない。
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十年ほど前のことだ。エルフは人間との戦いに敗北した。
争いの発端はエルフが人側の土地に入り込み害をなし、それに人間が反撃したこととされているが定かではない。
確かなのは争いがあったことと、それに敗北したエルフたちが人間の支配を受けるようになったということだ。
エルフならば男女関係なく森から引きずりだされ鎖や縄につながれた。
彼らは珍しがられ、またその美しさもあって欲しがる人間は少なくなかった。
エルフたちは故郷と離別させられ各地に散ることになった。
今ではもう先のような名で彼らを呼ぶものはいない。
腰抜け、能無し、やせっぽち、見かけ倒し。
エルフの拍子抜けするほどの弱さからついた名だ。
彼らは呆気なく屈服し、あれほど恐れられていた力は少しも人間に襲い掛かることはなかった。
エルフが持つといわれた力はただの作り話だった。
人間が勝手にこしらえた幻想だった。
今では疑問を持つことなく人々はそう信じている。
いや信じる信じないではなくそれ以外に考えられないのだ。
もし何か力があったのならばエルフはそれを使わずに奴隷の身に堕ちることを甘受したということになる。
が、それは誰が見てもおかしい。
自らが支配される危険を目の前にして力を使わないことを選ぶ理由がない。
だから人々は疑問を持たなかった。
これからも持つことはないだろう。
それで何の不都合もないし何もおかしなことはないのだから。
だが、もし理由があったとしたら?
エルフたちにはエルフたちなりに考えるところがあったとしたら?
それは一体どんな理由なのだろう。
きっと誰もその問いに価値を見出すことはない。
だから、考える意味もまたないのかもしれないが。
……
朝から続く曇天は昼を過ぎても大きく変化することはなかった。
日の光は弱く心なしか肌寒い。
どうにも沈む気分を抱えながら旅装の彼は道を進んでいた。
起伏の多い土地だ。
道が上がったり下がったりのでこぼこで歩き心地はあまりよくない。
それも彼をうんざりさせる。
だが根本的な憂鬱の出どころはそれらではなかった。
二つ。
そう、彼の頭にある悩みの元は二つだ。
一つ目は大きい割に漠然としている。
この旅路の先に残るものはあるのだろうか。
時たま彼はそれを考える。
小さい頃に母と共に故郷を離れてもう十年以上。
旅にも慣れ、それが当たり前となり、どうにかこうにか生き延びてそのぐらいの月日。
一日一日をつないでいくのは口で言うより難しく旅の意味を求める余裕はない。必要も感じない。
だから普段は遠い先のことなど考えることはない。
だが夜の眠りに落ちるまでのまぶたの裏側や昼間の延々と続く道の向こう側。
そういった日々の隙間に、その問いはふと浮かぶ。
俺はこの先どうなるんだろう。
いや、どうなるもこうなるもない。
定住は難しくそれならば旅は続くところまで続く。
そして続かなくなったところで死ぬ。何も残らない。
しかし、では自分はどのように死ぬのだろう。
一番ありそうなのが餓えによる野垂れ死にや事故死。それから病死。
野盗に襲われて殺されるのも同じくらいあり得ることだ。
そして死ぬまではどれくらいの時間があるのだろう。
次の町や村に着くまでに死ぬか? それともジジイになるまで生きるのか?
分からない。
分からないが、長生きできたところでもっと憂鬱の種が増えているだろうことは想像に難くない。
だがそれでも彼は夢想する。
俺に希望はないのだろうか、と。
何かの間違いでもいい、心安らぐ時間が与えられることはないか。
小さな幸せがこの手に飛び込んでは来ないだろうか。
その甘い夢が今という時間をつらくすることは分かってはいるのだが。
何はともあれとりあえず言えるのは今は死にたくないということだ。
ならば今日をしのいで生き続けなければならない。
そしてここからが二つ目の悩みになるのだが、彼には残りの路銀がほとんどなかった。
懐の布袋を探る。軽い。
何度触れても同じ。悲しいくらいに手ごたえがない。
これは先ほどのものに比べれば卑小だが、具体的かつ差し迫った悩みだ。
遠い先のことなど分からなくても生きていけるがこれを無視すればそのまま死に至る。
今はまだいい。
だが食料や路銀が尽きればおしまいだ。
だというのに売れるもの価値あるものは手元になかった。
これから手に入る見込みもない。
結局、と彼は自嘲する。
旅路の果てに気をとられているうちに足元の石につまづくわけか。
路銀については前々から不安に思ってはいたが打てる手もないままここまで来てしまった。
現状をひっくり返す何かがない限りそう長くないうちに彼の命は終わる。
何かないか。天の恵みでも偶然の拾いものでも。
どんよりとした視線をあたりに振るがめぼしいものは何もなかった。
あるのは背の低い草が広がるでこぼこした土地と雲り空。それだけ。
処刑台に向かう者の歩みを、今なら彼は理解できる気がした。
彼のそれは普通よりも何倍も長いが死を約束されているという点では変わらない。
上りになった道の一番上に、首をくくる縄が見えたように思った。
妄想の縄に首を絞られて、それでも死ぬことができるはずもなく。
彼はため息をついて立ち止まる。
足が痛い。
汗をぬぐってふくらはぎをたたく。
旅は日常だがそれでも疲れるものは疲れる。
水袋を取り出して口を付けた。
これも残りがほとんどなかった。
どこかで休むついでに水を足す必要がある。
視線を巡らすと左方にまばらな木々と、その間を流れる川が見えた。
そこに立ち寄ろうと決めた。
と、その時、彼は木々の間に別のものを見つけた。
横転し、壊れ、汚れていたがそれは確かに――
彼は理解するやいなや速足で歩きだした。
何かあるだろうと思っていた。
事故か野盗に襲われたのかは分からないが、これほど大きな馬車ならば何か残っているだろうと考えていた。
甘かった。
横倒しになった幌馬車の中はほとんどからっぽだった。
いや、正しくはガラクタやゴミしか残っていないようだった。
価値ある荷は運び出されたと見え、ならば賊に襲われたのだろう。
周囲を回ってみると身ぐるみはがされた死体がいくつか転がっているのを見つけた。
馬車の汚れからしてあまり長い時間はたっていない。
襲われたのは昨日今日といったところか。
あまり長居しない方がいいかもしれない。
だがもしかしたら使えるものが残っているやもと思い、彼は中に足を踏み入れた。
元は何かの器だったと思しきいくつかの破片があった。
それから価値のあるなしも不明な木彫りの像。
汚れ破れていなければ上等だったろう毛織物のなれの果て。
それらの物に統一感はなく、生活のための品というよりは売り物に見えた。
とすると金持ちの引っ越しの類ではなくどこぞの商人の馬車か。
使えそうなものも売れそうなものも、何もない。
彼は諦めて、入った側とは反対の方から外へ出ようと踏み出した。
その時視界の端に何かが引っかかる。
空の木箱が積み重なった陰に、何かの気配を感じた。
青い瞳と目が合った。
彼はしばらくの間動くこともできずにそれを凝視した。
緊張が体を縛ってしまっていた。
賊がまだ残っていた?
そんな考えが頭をよぎる。
武器、逃げ道、命乞いといった言葉も怒涛のごとく流れていく。
だが彼が攻撃も逃亡も選ばなかったのは人影が危険な動きを見せず、どころか身じろぎすらしなかったからだ。
「誰だ」
彼の口をかすれ声が割る。
何者かはしばらく黙ったままこちらを眺めていたが、やがてかぶっていたフードをゆっくりと下ろした。
白い肌が彼の視線を吸い寄せた。
埃に汚れてくすんでしまっているものの、その滑らかさを全て覆い隠せるほどではない。
燐光を放つようなその頬の上を、それとはまた別の輝きを持つ金の髪が流れ落ちていた。
纏っているローブでわかりにくいが身体の線は細い。
女。
座り込んでこちらを見上げていた。
彼は身体が冷えるのを感じた。
恐怖ではない。凍えるのとは違う。ただ体温が少しだけ下がる。
頭が冴える感覚に似ている。
おそらく彼を見つめる青い目のせいだろう。
睨むでもなく怯えるでもなく。
それは彼を真っ直ぐに見据えていた。
見るという行為から余計なものを全部削ぎ落とすとこういう視線になるのかもしれない。
澄み切った水のような。
あまりにその瞳に呑まれてしまっていたのか、彼は気づくのが遅れた。
金髪から小さく尖ったものがのぞいていた。
耳の位置にそれぞれ一つずつ。
あっ……と彼は声を漏らした。
エルフだ。
つづく
おつおつ
期待
どういう方向に転ぶのかまだ分からんなぁ
でも期待
尖った耳は噂に聞いていたよりは小さいようだった。
彼はまじまじとそれを見つめたがエルフは気にした様子を見せなかった。
ただこちらに静かな視線を注いでいる。
と。
形の良い唇が開いて、けほっと小さく咳をする。
一回、二回。
馬車の中が埃っぽかったせいだろう。
それはともかくようやく彼は口を開く機会をつかんだ。
「お前……エルフだな。売り物か」
エルフは答えない。
彼は構わず問いを続ける。
「この馬車に何があった」
「……夜、外で声がして、それから馬車が倒れた」
今度は答えがあった。
「賊に襲われたのか?」
「分からないわ」
「? 分からないことはないだろう」
「わたしが体感したのはそれだけ。推測を述べることはできるけれど確かかどうかは確信がないから断言できない」
「……どういうことだ?」
「起きたことを正確に言い表すのは難しい。
しっかり見聞きしたことでさえもそうよ。立場や解釈の仕方によって変化してしまう。
見聞きしてないことならもっと変形が加わりかねないわね」
何を言っているのか分かりにくい。
エルフの口から出る言葉は難解。そんな言い伝えを思い出した。
「つまり……見てないから自信がないってことか?」
彼女は小さくうなずいた。
「わたしは馬車が横転した時に気絶したらしい。
意識を失う前より一緒に積まれていた荷物が減っているから誰かが持ち出したのだとは思う」
やはり野盗に襲われ強奪されたとみて間違いなさそうだ。
「お前はなんで無事なんだ?」
「無傷じゃない。擦りむいたり頭をぶつけたりしたわ」
「違う。なんでお前は持っていかれなかったんだ」
エルフは脇のガラクタの山を示した。
「目が覚めたらこの下に埋まっていた」
そのせいで見つからなかったらしい。
「……よく息ができたな」
「なぜかしら。運が良かったと考えるのが最も簡単だとは思うけれど。
でも埋まって苦しい思いをしたのだからそれは普通に言えば不運であって結局どれくらい幸運だったのかはよく分からないわね」
会話に微妙な違和感が生じている気がする。
頭の中をかすかにくすぐられるかのような。
はっきり言って不快だった。
だがその不快感の隣に浮かぶものもある。
(現状をひっくり返す何か……)
路銀の不足を解決する一手。
エルフを欲しがる人間は少なくない。
そして今、誰にも所有されていないエルフが目の前にいる。
彼は後ろ手にナイフを取り出し、突き付けた。
なるたけ恐怖を与えるようにゆっくりとした動作。
「おい」
声も心持ち低くなる。
「俺と一緒に来い。抵抗はするな」
睨みつける先でエルフは微動だにしない。
突き付けるナイフを気にも留めず彼の目を見返していた。
平然とした表情を崩さない彼女に苛立ち、近づいて肩をつかむ。ナイフを首にあてがう。
「お前に選択肢はない。立て」
彼女の瞳は揺れない。
「どうせここにいても飢え死にだぞ! 分かってるのか!」
「もちろん」
恫喝の勢いはその一声で削がれた。
「行かなければそのうち死ぬわね、わたし。行っても死ぬかもしれないけれど」
それを聞いしまって、何やら彼の胸は痛んだ。
彼女はここに残れば死ぬ。
残らなくても人里にたどり着けなければやはり死ぬ。
そして上手く他人の手に引き渡せたところで彼女に明るい未来はない。
だがエルフなどに同情している余裕はなく、義理もまたないのだ。
痛みを振り払って彼はナイフを持つ手に力を込めた。
「ならどうする。来るのか、来ないのか」
「行く」
エルフはあっさり答えてフードをかぶりなおした。
「行きましょう」
彼は呆気にとられる。
エルフがようやく表情らしい表情を見せた。
怪訝そうにこちらを見上げて言った。
「放してくれないと立てないわ」
つづく
おもしろい
なるほど?
川で水を汲んでエルフに軽く汚れを落とさせた後、夜までを歩いた。
彼女が早まって逃げ出しはしないかと警戒していたのだがそうなることはなかった。
食料や道の情報を持っているこちらから離れれば危険ということを分かっているのか。
何はともあれエルフに向ける注意は次第に緩んだ。
彼の横、よりは少しだけ後ろを歩いている間、彼女はやはり何も言わなかった。
会話のない曇天の下、二人の足音だけが虚ろに響いていた。
日暮れ後の闇の中、だいぶ炎の弱まった焚き火のそばに座って、しかしまだその音が聞こえる気がする。
規則的に地を擦る音。
延々と続くどこか憂鬱な繰り返し。
チロチロと窪地の真ん中で炎が揺れる。
それを見るともなしに見つめながら考えていたのは、彼女と引き換えに手に入るはずの金のことだ。
上手くやればかなりの金が入るはずだった。
しかし期待に胸が踊ることはない。
期待していないわけではないしエルフを連れ出してしばらくはそれも大きかったのだが、頭にあるどんよりとした思いが次第に色を濃くしていった。
俺はこの先どうなるんだろう。
やはりこの悩みだ。
金が手に入って解決するのは目の前の問題だけ。
もう一つの大きな問題はそう簡単に解決してはくれない。
生きていられる時間は延びるが延びた意味を与えてくれるわけではないのだから当然だ。
首尾よく大金が手に入ったらそこに定住するのはどうだろうかと彼はぼんやりと考えた。
それが悩みの根本的な解決になるかは分からないが、根なし草でいるよりとりあえず生活は安定するかもしれない。
ただもちろんよそ者が住み着いてよくしてくれる土地である保証はない。
(お袋……俺はどうしたらいいんだろうな)
ずいぶん前に死んでしまった母親に問いかける。
もちろん返事はない。
もっとも母は生前もあまりしゃべる人ではなく仮に生きていたとしても返事があるかは怪しかったが。
変化の少ない母の表情からその内面を推しはかるのは実の子である彼にも難しかった。
だが近寄り難かったかと言われればそんなことはない。
母が彼に触れる手は優しく、そっけない言葉の裏には思いやりがあった。
また、旅の道中、母はよく歌を歌ってくれた。
子供のころに覚えたものだという。
そのせいかそれらの歌にはどこか郷愁を誘う響きがあって、優しい調べを聞きながら小さい彼はもう帰れない故郷を思い、こっそり泣いた。
焚き火の反対側に横になっているエルフが目を閉じているのを確かめ、彼は小さく口を開いた。
おぼろげな記憶に残る歌をゆっくりと口ずさむ。
母とは違い、かすれて下手くそな彼の声。
歌詞も音程もあやふやだが、確か子熊が紅い葉を探して歩く話だ。
ネズミやウサギに聞くけれど誰も在りかは知らないらしい。
一生懸命探したけれどどこにも全く見つからない。
そのうち子熊は疲れてしまい、探す理由も忘れてしまう。
母熊のところに帰っていってその懐でぐっすり眠る。
その頃外では紅い葉が、山一杯に揺れていた。
そんな歌だ。
つっかえつっかえ歌い終わりため息をついた時、視線を感じた。
エルフが横になったまま目を開いてこちらを見ていた。
「なんだよ」
「別に」
エルフは短く答えて再び目を閉じた。
妙な気まずさを感じて彼は焚き火に背を向け横になる。
「……いい歌ね」
言い足された言葉を、彼は無視した。
眠りに落ちる間際に彼はふと思う。
久しぶりに母のことを思い出したのは、道に足音が二人分あったからかもしれない。
そんなことを。
つづく
一旦おつ
期待
朝日が昇る少し前、冷たい空気に震えながら彼は目を覚ました。
はっきりしない頭を振りながら起き上がる。
エルフは昨晩と同じ場所で眠っていた。
目を覚ましたら煙のごとく消えていた、などという不安もあったのだが、とりあえずそういったことはなかった。
出発の支度をしている間に朝日が丘の向こうに顔を出した。
同時にエルフが目を覚ます。
ゆっくりと起こしたその顔に日の光が射し、金髪が鮮やかに輝いた。
「いい朝だわ」
荷物をまとめて歩き出すと、また陰気な旅が始まるかに思えた。
実際太陽がもう少し高く昇るまではどちらも口をきかなかったが、しばらくしてエルフが声を上げた。
「わたしたち、どこまで行くの?」
ちらりと彼女を振り返り、それから雲の多い空を見上げて彼は答える。
「さあな」
「決まってないの?」
「いや。人のいるところに行く」
「そこでわたしとお金を交換するのね」
彼は肩をすくめた。
この女、つまらないことを訊く。
「不満か?」
エルフはしばらく考えるような間を置いた後に再び口を開いた。
「どうかしら。人間の世界にはわたしたちを金品と交換する仕組みがあってあなたはそれを活用するというだけだし。
特に不思議なところはないわ。そういうものなんでしょう」
彼は訝しく思ったが何かを問う前に彼女が言葉を続けた。
「それよりもあなたがそのお金で何をするかの方が気になるわ。ねえ、何に使うの?」
「そんなこと気にしてどうする」
率直な疑問だ。
自分が売られた後のことなど知ったところで意味がない。
「でも気になるものは気になるから」
エルフは言った。
「そして知っておきたいと思う。筋の通った話でしょう?」
まあそうかもしれないが。
もしかして自分が売られるに値する理由があるのか確かめたいのだろうか。
彼は意地の悪いことを思いついた。
「お前を売って大金が手に入ったら、その金で遊び倒すんだ」
くだらない目的のために自分が売られると聞かされたエルフはどんな反応を見せるのか。
「なるほど」
しかし特に機嫌を損ねた様子もなく彼女はうなずいた。
とても自然なうなずき方で、どうやら納得したらしい。
「どんな遊びを?」
軽い戸惑いを覚えながら彼は答えた。
「そりゃお前……いろいろだよ。酒とか、賭博とかな」
「ふうん」
一拍おいてエルフは続けた。
「旅は続けるの?」
「当たり前だろ」
彼は特に考えることなく返した。
というより考える余地がなかった。他に選択肢がない。
「旅が好きなの?」
「いいや」
「ならどうして続けるの?」
「続けるしかないからだ」
「それはどうして?」
……どうしてだろう。
問われてふと気づく。
続けるしかない、というのはなぜだ?
もし仮にだが十分な大金が手に入れば定住も可能なのだ。
その土地に歓迎されなくても資金があればとりあえずはどうにかなるはずだ。
それでも彼は旅を続ける以外の選択肢を自然と除いてしまっていた。
理屈ではなく、何の疑問もなく続けるつもりでいた。
どうしてか。
「……お前自分がくだらない理由で売られるってことはどうでもいいのかよ」
疑問を振り払って話を逸らす。
「あなたにはくだらなくないのかもしれないと思って」
エルフは追及してはこなかった。
それから昨日と同じ沈黙が落ちた。
足音だけが聞こえる。
だがその静けさにぽつりと声が落ちた。
「その旅の先に残るものって何かしらね」
言葉はそれだけだったが彼はほんの少しどきりとした。
つづく
それから二日が過ぎた夜、彼は不思議なものを見た。
焚き火のそばに座りこみ、彼はため息をついた。
それはもう何度目かもわからないものだったが今度のはいつもと違い具体的な暗さが伴っていた。
「どうしたの?」
訊いてくるエルフに答える。
「……食料の残りが少ない」
覗き込んだ背負い袋の中にはもう一日もつかどうかの僅かな干肉しかなかった。
闇に沈んだ西の方を見やる。
暗くて今はもう見えないが道はそちらの方に伸びていて、前に手に入れた情報によるとそろそろ町に着くはずだった。
しかし夕方になっても町の影すら見えていなかった。
エルフは「ふうん」と答えて別の方向にちらりと目をやったようだった。
そちらには森がある。
昼頃に黒々とした木々の群れが見え始め、夕方にはその辺縁にたどり着いていたのだ。
「このままじゃ終わりだ」
暗い気分でつぶやく。
「森で何か探すとか」
エルフが言うが彼は首を振った。
慣れない森で食物を探すのは危険だ。無駄に体力を消耗する結果になりかねない。
「なんとか町までいかないと……」
そこまで行ければ何とかなるかもしれない。
エルフを買い取ってもらって金を手に入れることもできる。
だがもし体力がもたなければ、そこで野垂れ死にだ。
じりじりとした焦りが彼の胸を満たした。
目を閉じうつむいた彼を、エルフがじっと見つめているのを感じた。
閉じたまぶたの裏側に懐かしい故郷が見える。
山のふもとのその村は小さい。
土地は痩せていて実りも少なく、彼や彼の友達はいつも腹を空かせていた。
だが今に比べればずっと穏やかで、安心して過ごすことができた。
冬は小さな暖炉の前で母の歌を聞きながら、寒い夜の長さを思ったものだった。
「森の深くで小さな熊は紅い葉探して歩いてた。小さな足で歩いてた――」
ふと記憶の中の母の歌が現実にも聞こえることに気づいた。
目を開けるとエルフが焚き火の向こう側で小さく口を開いて歌っていた。
澄んで美しい声だ。
決して強い声ではないのに、透明なそれは彼の胸に大きく響く。
母と似ているようで似ていない。
子を守る母親のような包み込む大きさはそこにはない。
それでも彼の心を揺さぶる力はあった。
子熊が眠って紅い葉が山に揺れ、歌が終わった。
「……なんで歌えるんだ?」
彼は不思議に思って訊いた。エルフは覚えたわ、と答えた。
「あの晩の一回で?」
「ええ」
記憶力がかなりいいらしい。
エルフの別名を思い出す。
歌う人。
「歌は好きか?」
「大好きよ」
「俺もだ」
それを聞いてエルフがかすかに微笑んだ。
まるでほのかに色づいた花がぽっと咲いたかのようで、彼は小さく息をのんだ。
「じゃあこんな歌はどうかしら」
そう言ってエルフが歌い始めたのは少し奇妙なものだった。
しばらくそれに聞き入って。
彼は不思議なものを見る。
つづく
otu
彼女は歌と言ったが彼にはそれは歌のようには聞こえなかった。
彼女が小さく開いた口から、節も音程もないかすかな声だけが聞こえてくる。
優しく耳をくすぐる囁き声だ。
その言葉の意味は分からない。
草原を吹き渡る風を思う。
もしくは妖精たちの内緒話。
不思議と聞いていて心地よく、心が穏やかに凪いでくる。
焦りも不安もどこかに溶けて消えていってしまう。
そんな歌に包まれて、彼はいつの間にか草原に立っていた。
(あれ? 俺は……)
ぼうっとした頭で考えるが忘れたことは思い出せない。
しばらく考えてもわからないので彼は仕方なく歩き出した。
真っ直ぐ歩いていくと山の連なりが見えてきて、そのふもとの村に突き当たった。
柵の間を通って中に入ると子供たちが寄ってくる。
「お前どこ行ってたんだよ、心配したぞ」
子供の一人が言った。
この子は誰だろう、なんでこんなに親しそうに話しかけてくるんだろうと彼は思った。
だがふと気づくと彼もまた小さな子供の身体になってしまっていて、それから急に思い出した。
ここは自分が生まれ育った村だ。
「おかえり」
さっきの子供が言った。
「ただいま」
彼は駆けていた。
彼の家に真っ直ぐ駆けていた。
村の奥の石造りの家がそれだ。
入り口に飛び込んで、椅子でうたたねしていた母に飛びついた。
「母さん!」
目を覚ました母は彼を驚いたように見下ろした。
「母さん……俺、嫌な夢を見た」
母はそれを聞いて、彼を膝の上に座らせた。
その懐はやはり暖かった。
彼はゆっくりと夢のことを話した。
「俺と母さんは旅をしてるんだ。この村がだめになっちゃって、あてもなくさまようんだ」
母はいつもと同じく黙ってそれを聞いている。
「それで、いろんな町や村を回って、それでも住ませてもらえるところはなくて。
村から持ってきたいろんなものを売ってお金にしながらなんとか食べてね。
旅にも慣れてくるんだけど、でも」
そこで彼は言葉を詰まらせた。
「でも……そのうちに母さんが死んじゃって」
母は何も言わなかった。
彼は閉じかけた口をなんとか開いた。
「それで俺一人でずっと旅を続けて、大人になって、やっぱり苦労して、お金も少なくて。
とうとう食料も底を尽きちゃうんだ……」
「それで?」
「そこで目が覚めた」
母はしばらく考えるような間を置いた。
「それは嫌な夢だったね」
「うん、とっても。母さんが死ぬなんて絶対に嫌だ」
「わたしもお前とお別れするなんて絶対に嫌だねえ」
そう言って母は彼の頭を撫でた。
その温かさに彼はなんだか泣きそうになった。
「でも大丈夫、母さんはいつでもお前のそばにいるよ。お前を守ってやる」
「母さんが死んじゃっても?」
「わたしが死んじゃっても」
「……そんなの無理だよ」
彼はうなだれた。死んでしまったらそばにいたり守ったりすることなんてできない。
当たり前のことだ。
しかし母は言った。
「できるさ。これは約束じゃない。わたしがそう決めたんだ」
「決めた?」
「そう。わたしは決めたことは必ず成し遂げるから。大丈夫。安心なさい」
彼の目からとうとう涙がこぼれた。
母の頼もしさと、いつかは来るであろう別れの予感に堪えきれなかった。
抱きしめられたぬくもりだけが感触として残った。
焚き火から火花が弾けた。
彼はぼうっとしてそれを見ていた。
歌はいつの間にか終わっていた。
いつ終わったのか、彼にはわからなかった。
夢を見ていたような気分だった。
とても現実味のある夢。
まだあの感触が身体にしっかりと残っている。
「今のは」
つぶやいて見やると、焚き火の向こう側でエルフが再び微笑んでいた。
だがそれはどこか哀しげな笑みだった。
「可哀想な人。あなたはずっとさまよっていたのね」
「え?」
エルフの言葉の意味をつかみ損ねて声を漏らす。
彼女はゆっくりとその場に横になった。
「でも大丈夫。あなたの母親はあなたのそばにいるわ。だってあなた、温かいもの」
そしてエルフは目を閉じた。
それきり何も言わず、彼女は寝息をたて始めた。
彼は呆然としたまま何も言えなかった。
つづく
乙乙
先ほど見たものについて、暗闇に寝転がって彼はずっと考えていた。
夢か幻覚か。
それにしては光景がしっかり目に焼き付き、聞いた声は耳にこびりついている。
もしかして、と思う。
あれがエルフが持つという不思議な力なのか。
夢はエルフの歌によって始まったようにも思う。
少なくとも歌が始まると共にあの体験もまた始まった。
ならばあの歌は、歌ではなく何か魔法の呪文だったのだろうか。
わからない。
わからないが、彼はその力の強さと恐ろしさをひしひしと感じた。
あれは人の意識を意のままに操れるものだ。
あれが本当にエルフの力で彼らがそれを自由に使えるのだとしたら。
彼らはどうして人間に敗北したのだろう。
その疑問をつらつらと考えているうちに彼は眠りの底に落ちていった。
明日、エルフに訊いてみよう。そんなことを考えながら。
次の朝、焚き火の向こうにエルフの姿はなかった。
つづく
彼は走っていた。
エルフの姿を探しながら全力で走っていた。
だがくすんだ色のローブはどんなに目を凝らしても見つからない。
(ちくしょう……なんで今更!)
そういうそぶりが全くなかったために油断していた。
逃げ出す可能性は絶対になくなるものではないとわかってはいたはずだったのに。
今まで旅してきた道を後戻りし、小高い丘に上って先を見渡す。
しかしどこにもその姿はない。
向こうから暗い雲が迫ってくることだけがわかった。
しばらくして空が暗くなり、雨が降り始めた。
彼は昨晩の焚き火のそばに戻ってきていた。
身体を覆う旅のマントはぐっしょりと濡れて重たい。
眩暈がした。
喉も痙攣したように震え、吐き気がこみ上げてくる。
しんしんと凍えるような絶望が心を満たしていた。
滑る草を頼りなく踏み、彼はよろよろと森の方へと歩いた。
もう全てが終わったことはわかっていたが、雨が冷たいので木の下に寄ろうとしたのだ。
木の幹にどんと背中を預け手足を投げ出し、彼はぼんやりと虚空を見上げた。
「ああ……」
声がむなしく漏れた。
これで本当に終わりだ、と思った。
呆気ない最期だったな、とも。
思いがけない幸運に恵まれて思いがけずにそれを失う。
まあそんなもんだろう、俺の人生なんて。どこか他人事のように彼は力なく笑った。
指の先が凍えてきた。
このまま体温を失ってゆっくり死んでいくのか。
せめて苦しまないで逝きたいものだと思う。
死んだ母の顔が浮かんだ。
母さん。もうすぐそっちに行くよ。
最後にそうつぶやき、彼の意識は寒さの中でゆっくりと閉じていった。
つづく
面白い
雰囲気も好きだわ
……
森の深くで小さな熊は紅い葉探して歩いてた。小さな足で歩いてた。
ネズミやウサギに訊ねるけれど、誰も在りかは知らなくて。
一生懸命探してみてもどこにも紅い葉見つからない。
子熊はいつしか疲れてしまい、巣穴に帰って眠りに落ちる。
母の胸でぐっすりと。
そして子熊は夢を見る。紅い紅い夢を見る。
山いっぱいの紅い葉が、風を受けて揺れている……
歌が聞こえた。
母の声、と思うが違う。
もう少しばかり若い声だ。
あの頃彼はまだ小さくて、母もまた若かったはずだった。
子供を連れて、しかもそれまでろくにしたこともなかった旅など母もまた不安だったに違いない。
だが母はそんなそぶりも見せなかったし弱音を吐くこともなかった。
思えば旅の果てを考えるようになったのは母が死んでからだったように思う。
道の先を見る目は、しかし母の背中を探していたのかもしれない。
旅が嫌でも、それでもやめるという選択をしなかったのはもしかしたらそのせいか。
目を開けるとこちらを覗き込む逆さの顔が見えた。
月明かりにかすかに照らされて、金色の髪が薄く輝いている。
綺麗だな、と彼は思った。
「目が覚めた?」
エルフが言った。
彼は小さく「ああ」と答えた。
ずぶ濡れのマントは脱がされていて、彼女が着ていたローブが身体に掛けられている。
薄着になって寒そうなエルフの膝に頭を預けて彼は横たわっていた。
「どこに行ってたんだ?」
それを聞いてエルフの顔が曇った。
「ごめんなさい」
「逃げたのか?」
「違うわ」
彼女は、何か食料を探そうと早起きして森に入ったのだと言った。
しかし木の実やきのこなどを採って戻ってくると彼の姿がなかったという。
それで彼女は彼を探しに道の先、つまり彼とは反対の方へ行ってしまったらしい。
「ごめんなさい」
小さな声で言う彼女を見上げる。
とても沈痛な表情で、閉じた目からは今にも涙がこぼれそうだ。
「なぜ泣くんだ」
「だって」
「俺はあんたを売りとばそうとしてるんだぞ。逃げられてもそれは当然だろう」
だから怒りはあまりなかったのだ。
いや全くないというと嘘になるが、それよりも今はほっとした気分の方が大きかった。
(ほっとした?)
彼は怪訝に思った。
俺は一体どうしてそう思うんだ?
「でも、それでもごめんなさい。あなたを一人にしてしまった」
「馬鹿にするなよ、いい大人だ」
「長生きしているエルフでも一人は寂しいのに?」
「俺は違う」
「いいえ」
エルフは言った。
「だってあなた泣いてるじゃない」
自分も泣いてるくせに。
彼は一筋、涙をこぼしながら思った。
二人そろってしばらく無言で泣いていた。
「なあ、歌ってくれよ」
彼は涙を拭いて起き上がった。
「もう一度お袋に会いたい」
背後で少しだけ沈黙があって、それからゆっくりと歌が始まった。
今度の歌は風ではなく、昔一度だけ見たことのある海の音に似ていた。
打ち寄せ戻る波の声。
どこか遠く響き、人の思いを引き寄せる。
空を見上げた。
闇の天井にいっぱいの星が輝いていた。
彼は夢を見る。
抜けるような青空の下、波打ち際で遊ぶ夢。
少年の彼は海の水をすくいあげて歓声を上げる。
そこでは母も生きていて、彼の様子を穏やかな表情で見守っていた。
白いワンピースの少女が駆け寄ってくる。
長い金髪から尖った耳がのぞいている子で、彼と一緒に遊び始める。
水をかけ合い、転がりまわって。
いつの間にやら水平線の上に夕焼けが見えた。
つづく
終わりまであと数回
乙
乙
雰囲気すきだわ
……
「俺の故郷は北の方の山のふもとにあったんだ」
道を歩きながら手元の布袋から木苺を取り出し口に放る。
エルフがとってきてくれたそれは舌の上で甘酸っぱく弾ける。
「冬は寒さが厳しい場所だ。土地も痩せててそういうところでも育てられる穀類しかとれなかった。
あれがクソまずいんだ、本当。
でもそれしか食べるものがないしな、仕方なく食ってたよ。まあ腹が減ってれば食えないものはないっていうしな」
「ふうん」
エルフは彼の隣で興味深そうにそれを聞いていた。
時折手を伸ばして彼の手の袋からやはり木苺を取り出して口に運んだ。
彼女に袋を返して彼は続けた。
「山では山羊を放牧して乳を取ってた。それをチーズや酒にしたりしてな、あっちの方はうまかったよ。
クソまずい穀類とそれでちょうどつり合いが取れてた。
……あまりクソまずいっていうとお袋に叱られるんだが」
「どうして旅をすることになったの?」
「本当はしたくなんてなかったよ。まずい飯しかなくても俺はあの村が好きだった。
でもある年がひどい凶作でな。夏になっても冷えて作物が育たなかったんだ。
それに加えて雨もどえらい量が降っていた。作物だけじゃなく家がやられた奴もいた。村は立ち行かなくなった」
彼の父親もその時に死んだ。
思い出したくもないのに今でもあの雨の音は耳に残っている。
崩れた家の光景はまぶたの裏に焼き付いている。
「……だから故郷を離れるしかなかったんだ」
彼は空を見上げた。やはり全体に薄く雲がかかっているが、今までで一番明るい空だ。
「それからお袋とあっちいったりこっちいったり。
お袋はしっかりしてたから俺みたいなヘマはやらずに結構安定した旅ができたよ。
でもやっぱり村に帰れるものなら帰りたかったな」
ふっ、と息をついて視線を上空からつま先に下ろす。
「大変だったわね」
エルフの言葉には答えずに彼は訊ねた。
「お前の故郷はどんなところなんだ?」
エルフは少し考える間を置いた。
「わたしたちが森に棲んでいたのは知ってるわよね?」
「ああ」
「エルフには故郷と呼べるような決まった場所はないわ。森全体がわたしたちの故郷とは言えるかもしれないけれど」
彼女は続ける。
「つまり、エルフは家や定住地を持たないの。気ままに行きたいところに行く。
食べるものは森に恵んでもらって寝るところも森に借りて眠るわ」
「へえ。家族とかそういうくくりはないのか?」
「ほとんどないようなものね。
一時的に男女が一緒になって子を産んで育てることはあるけれど、その子が大人になったらそれぞれがまた旅立つの」
人間とはかなり様子の違う生活を送っていたようだ。
エルフは旅する種族らしい。
「寂しくはならないのか?」
なんでもない風を装って訊ねる。
「それはもう言ったでしょう、もちろんあるわ。あなたみたいに」
悪戯っぽく笑って彼女が言う。
苦笑を返してさらに訊いた。
「そういう時はどうするんだ?」
「考える」
「考える?」
「ええ。いろんなことを考えるの。不思議に思ったことや気になったことをとことんね」
「例えば?」
「寂しいときはなぜ寂しいと思うのか。寂しさという感情を引き起こしているのはなにか。
自分は寂しいのが嫌なのかどうか。嫌ならばどうすればいい方向に行くのか」
彼は、はあ、と当惑した。
「そんなこと考えてどうするんだ?」
「不思議だと思わない? 寂しいという感覚はどうして引き起こされるのかって」
「そういうものかねえ」
エルフは笑って続けた。
「世の中には不思議が多すぎる。なぜあなたは旅を続けるのかしら。その旅の果てにあるものは何かしら。
なぜわたしたちは出会ったのかしら。出会えたのかしら。そして再会できたのかしら。
この出会いの先には何が待っているのかしら」
その、それこそ不思議な言葉を聞きながら彼はふと思った。
こんなに考え込む種族のエルフは、人間と争っていた時にもやはり考え込んでいたのかもしれない。
なぜ自分たちは争うのか。争いとは何か。争いの果てに待つものは何か。
「わたしたちは自分たちのことを、"不思議追い"と呼ぶわ」
「不思議追い……」
「不思議に思ったことはそれが何であろうと追わずにはいられない。それが実際に役に立つかどうかは別にして」
彼は訊こうかどうか迷っていたことを訊くことにした。
「エルフは魔法を使えるのか?」
エルフはちらりと彼を見た。
「どうしてそう思うの?」
「どうしてもなにも……」
故郷と母の夢、海の夢。
あれはエルフの力ではないのか。
「あれは……何かしらね」
「え?」
「わたしにもわからない。わたしの力なのかどうかはわからない。
確かにエルフには力が、というよりエルフの歌には力があるようなところはあるけれど。
不思議を追っているうちにそういう不思議なものに連なるようになったのかしら」
彼女は首を傾げた。
彼女にもわからないらしい。
だがあれは気のせいや見間違いで済むものではない。
何らかの力には違いないはずだった。
しかしもしエルフに確かに力があったとしたら、彼らはなぜ人間の奴隷に堕ちてしまったのだろう。
それを言うと彼女は呆れたように答えた。
「自分で制御できないものは、制御できないのだから役に立たないでしょう」
確かにそうかもしれないが。
「大体エルフはそんな大きな不思議な力があってもおいそれと使わない。いいえ、使えないわ」
「なぜ?」
「それを使うことの意味を考えるからよ」
彼女は空いている右の手のひらを目の前に持ち上げて眺めた。
「大いなる力には責任が伴う……というと少しずれるかしら。
でも仮にいろんなことを思い通りにできる力があったとして、それは簡単には使えない。
思い通りにできるって、案外怖いことよ」
「怖い?」
「ええ。例えばある人の生き死にをあなたに全部委ねるなんて誰かに言われたとして。あなたはそんなの堪えられる?」
少し考えて気づく。
「……無理だ」
「でしょう?」
「だからエルフは負けたのよ。頭でっかちはいざというとき駄目なのね」
彼女は自嘲気味に笑うと、木苺をもう一つ口に運んだ。
その横顔を、彼は見つめた。
果たしてそうなのだろうか。
エルフは力を使うことに臆病だったから敗北した?
彼のために食べ物を探しに行き、彼のために泣いた彼女。
逃げられるはずなのに逃げなかった。
彼が一人ぼっちになってしまうから。
「なあ」
「ん?」
何か言いかけて彼は口を止めた。
そして曖昧に濁して手をひらひらさせる。
「いや。何でもない」
つづく
乙
この作品好き
翌日、起きると頭が重かった。
朝食を終えて歩き出して、しかししばらくもいかないうちにしゃがみこむ。
「どうしたの?」
「いや……」
なんでも、と言いかけて、急に襲ってきた猛烈な寒気に身体を震わせた。
エルフが気づいて彼の額に手をやる。
「……熱があるみたいね」
どうやら風邪を引いたようだ。
一昨日の雨で身体を冷やしすぎたらしい。
そういえば昨日から違和感のようなものはあった。
近くの木の陰によってしばらく休んだ。
「どうする?」
エルフが心配そうに顔を覗き込んでくる。
彼は自分の身体を見下ろした。
まだ頭は重く寒気がある。
頭は熱でぼうっとし、まぶたが腫れぼったく感じる。
「悪いが……もう少し休ませてくれ」
エルフはうなずいて水袋を取り出した。
彼はそれを受け取って一口だけ水を含んだ。
日が高いところから西に傾いても彼の身体はよくならなかった。
それどころかさらに悪くなってきていて、今は吐き気まで加わっている。
「大丈夫?」
「ああ……」
エルフにうなずくが正直言って意識もすでに怪しいところだった。
空を見上げて頭をからっぽにしていると、ふいにエルフが口を開いた。
「行きましょう」
顔を挙げてそちらを見ると、彼女は決心した顔で彼を見つめていた。
「町に行くわ」
「待てよ」
荷物を背負ったエルフに支えられ立たせられて彼は慌てた。
「俺は大丈夫だって」
「いいえ。わたしにはそうは見えない。ちゃんと治せる人に見てもらわないと大変なことになる」
「でも町に行ったらお前は」
エルフは彼を手で制した。
「行くわよ」
身体に力が入らない。思うように抵抗できない。
それはそれで連れていきにくいだろうが、それでもエルフは彼を支えて前へ進む。
「待てよ……頼むから」
ユラユラする世界で彼はつぶやいた。
「頼むから……」
日が暮れ夕焼けが地平に消え闇が落ちても彼女は歩き続けた。
その頃には彼はあがくことさえ忘れてぼんやりと足を運んでいた。
この先には別れがある。人里へ着けば彼女は捕らえられてしまう。
それは分かっていた。
が、それでも足を止めることができない。
彼女が決めたのだ。決めたことを成し遂げられる者をどうにかすることなんてできるわけがない。
このまま旅を続けるのもいいかと思い始めていた。
彼女と一緒にどこまでも続く旅路を歩き続けるのも悪くないと思い始めていたのだ。
それなのに。
漠然とした悲しさに涙がこぼれた。
心がきつく絞られているような気分だった。
エルフが口を開く。
その唇が歌を紡ぐ。
きらきらちらちらと銀の砂のように輝くその歌を。
ふと見回すとどこまでも広がる闇にも蛍のようにいくつも光が咲くのが見えた。
さながら地上の星空だ。
涙で滲む視界にそれはひどく幻想的だった。
道の先に一際大きい光が灯った。
彼女はのろい歩みで、しかし確かにその光に近づいていった。
つづく
あと少しで書き溜めが完結するので明日には投下も終わるはず
……
目を覚ました。
長い長い夢を見ていたような気分だった。
何もかもが嘘だったかのような。
白いシーツに手をついて起き上がる。
彼はベッドに寝ていたようだ。
(ベッド?)
見回すとそこは何やら広い木造の部屋だった。
天井は高く、広々とした壁には壮麗なタペストリーがかけられている。
大きい窓からは朝の陽光がいっぱいに注ぎ込んでいた。
(どこだ、ここは……)
そして気づく。
(あいつはどこだ?)
エルフがいない。
その時ドアが開く音がした。
そちらを見ると陰気な顔の老人が立っていた。
老人は訝しむ彼に構わず平然と近寄ってくるとこちらの腕を取って脈をとり始めた。
「……もう大丈夫だな」
そうつぶやく老人に問う。
「ここはどこだ?」
「町。その首長の館だ」
無愛想に老人が答えた。
不愛想なだけでなく彼の質問でさらに機嫌を損ねたように見えた。
どことなく気圧されるものを感じながらも彼はさらに訊ねた。
「……あいつは?」
老人は 彼の下まぶたの裏の色を確かめるばかりで答えない。
そこでようやく気づいた。この老人は医者のようだ。
「お前はこの町に着いて昨日一日ずっと意識を失っていた。病自体は大したことはなかったが、長引けば危険ではあった。
あのエルフに感謝するんだな」
「エルフ……! あいつは――」
訊こうとして気づいた。彼女の名前はそういえばまだ知らなかった。
訊いておけばよかった。
自分でもよくわからない後悔が胸を締め付けた。
「……あいつはどこだ?」
医者は一通り診察らしきものを終えるとそのまま出ていこうとした。
「おい!」
彼が呼び止めると医者はこちらを振り向いてぼそりと言った。
「首長に訊け」
ドアが閉じた。
首長にはそれから間を置かずに会うことになった。
まだ違和感があるもののすっかりよくなった体を立たせて外に出ようとしたその時、再びドアが開いた。
「おや。もう立てるのか」
恰幅のよい男が入ってきて彼に笑いかける。
「なんともめでたいことだな。ようこそ、我が町へ。わたしが町の長だ」
整えた髪と髭。多少ずんぐりとしすぎているようには見えるが愚鈍には見えない。
笑顔からはどことなく頭の回転の速さをうかがわせた。
彼は部屋にあったテーブルに着くと彼にも椅子を勧めた。
「いやあ君がこの町に来たと聞いたときは驚いた。何しろエルフを連れた重病人と知らされたものでね。
いや、エルフに連れられたというべきか。ここが不思議だ。あのエルフは一体なんなのだ」
エルフが逃げずにしかも彼を助けたことを言っているのだろう。
「まあ……いろいろありましてね」
「ふむ、そうか。まあそれはいいだろう」
そう言って首長は表情を真剣なものに変えた。
「本題に入ろうか」
「本題?」
彼が問うと首長はうなずいた。
「あのエルフにはいくら払えばいい?」
「……何を言っているんだ?」
「あのエルフを譲ってもらうのにいくら払えばいいのか訊いているんだ」
何を言っているんだ、彼は口の中だけでそれを繰り返した。
首長は彼の様子に怪訝な顔をした。
「……君は売るためにあのエルフを手懐けたわけではないのかね?」
ズキリと胸が痛む。
確かにそうだ。俺は売るために彼女を連れ出した。
でも今は違うのだ。
今は、ずっと旅をしていたい。彼女と一緒に。
「俺は――」
言いかけた彼を、首長は手で制した。
「すまないが聞いてほしい。大事なことだ」
「え?」
「わたしには、いやわたしたちにはあのエルフが必要なんだ」
「どういうことだ」
「この町に大切なことだ。町を出てすぐのところに大きな川がある。大雨が降ると氾濫する危険な川だ。
わたしたちはそれに長年苦しめられてきた」
何の話か分からない。
眉をしかめる彼をよそに首長はさらに話を続けた。
「だからわたしたちの暮らしを安定させるには治水工事が不可欠なんだ。だが資金が足りない。
とある大商人に頼って融通してもらうとしたが彼はなかなか首を縦に振らなくてな」
次第に話が読めてきた。
「だから手土産にあいつが必要なのか」
「そうだ」
ふざけるな。彼は奥歯をかみしめた。あんたたちの都合なんて知るものか。
首長は彼の胸中を知ってか知らずか虚空に指を振った。
「エルフは貴重だ。あのエルフを譲ればあの商人も納得するだろう」
それから彼の目を覗き込む。
「くだらないことと思うか? 旅人の君にはわからないかもしれないがわたしたちにとっては死活問題なんだ。
下手をしたらこの町の存続にかかわる。この町を捨てなければならないという事態も決してないわけではない」
ぐ……と彼は詰まった。
思い出したのだ。故郷のことを。彼の故郷もまた災害によって駄目になった。
卑怯だ! 彼は胸の内でわめいた。そんなのなしだ、ずるすぎる。
何に対する怒りか焦りかもわからないままに彼は汗が額ににじむのを感じた。
「譲ってくれるのならばできるだけの代金は払う。
定住権を与えてもいい。ちゃんとした生活ができるよう支援もする」
首長はそう言って立ち上がった。
「いい返事を期待しているよ」
ドアの開く音、それから閉まる音がして、静かになった。
つづく
次ラスト
……
首長からの使いが来たとき、彼はエルフに会いたいことを伝えるよう頼んだ。
最後に一度だけ、と。
……
夕刻、頼みは聞き入れられ、彼は牢へと案内された。
町はずれにそれはあった。
小さい建屋があり、そこから地下に階段が下りている。
「終わったら言え」
詰め所の守備兵の言葉を背後に階段を降りる。
冷たい石造りの通路には蝋燭がともっていてほのかに暗闇を押しのけていた。
彼女の牢は一番奥にあった。
鉄格子の向こう側に、座り込んでいる襤褸を着た女。
「あら。久しぶり。元気になったかしら?」
いつもと変わらない調子で彼女が言った。
彼は答えられなかった。
喉に何かが詰まってしまったように、何も言葉が出てこなかった。
彼女はそんな彼に構わず言葉を続けた。
「なんだか大変みたいね。話は聞いたわ。この町のためにわたしが必要なんだとか」
微笑む。
「悪くないじゃない。わたしが人の役に立てるなんて素敵」
「でも……っ」
言いかける彼の言葉を遮って彼女は言う。
「わたしは納得してるわよ。なんだかあなたの故郷を守るような、そんな気分。
あなたには借りがあるもの。ちゃんと返さないといけないとって思ってたの」
「俺もお前に借りがある。お前は俺を救ってくれた。救われたんだよ、俺は!」
「じゃあおあいこかしら。でもわたしは行くわよ。決めたもの」
成し遂げる者が決めたことは遮れない。
(ちくしょう!)
「なによりあなたはこの町を見捨てられない。だって優しいものね」
エルフは鉄格子に近づいてきて、間から指を伸ばした。
彼も手を差し出すと、彼女は指を絡ませてくる。
「さようなら」
きゅっと握られて、それからぬくもりが離れていった。
「そろそろいいか?」
守備兵がいつの間にか背後にいた。
「……ああ」
彼女と出会ったのは横転した馬車の中でだ。
青い瞳が彼を見つめていた。
そして一緒に長くを歩いた。
彼女の歌を聞いた。
夢を見た。
そして、ずっと一緒に歩いていけると思った。
いや、歩いていきたいと、そう思ったのだ。
――振り向いて、守備兵の背中を追う。
そしてその首に腕を絡ませ、締め上げる!
「がっ……!」
苦悶の声を上げて暴れる身体に必死でしがみつき腕に力を込めた。
気道を押し潰す、頸動脈を押しつぶす。
どれくらいの間をそうしていただろうか、気づいた時には守備兵は意識を失って彼の前に倒れていた。
ぜいぜいと荒い息が口から洩れる。
頭に上っていた血がざあっと身体の方へと落ちていった。
「なんで……」
後ろから声が聞こえた。
エルフが鉄格子をつかんでこちらを見ていた。
「何やってるのよあなた……!」
「お前、なんで俺についてきたんだ?」
彼女の言葉を無視して訊ねた。
「なんで俺についてくることにしたんだ」
「なんでそんなこと訊くの」
呆然と彼女がつぶやく。
そんな姿に彼は叫んだ。
「決めたからだろうが!」
振り向き拳を握って突き付ける。
「俺についてくる必要はなかった! ついてきてもこなくてもお前には幸せな未来はなかった。
それでもついてきたのはお前がそう決めたからだ! 違うか!」
彼女は黙って聞いていた。
彼は続ける。涙に視界をにじませながら。
「だったら俺も決める! 俺はお前と一緒にここを出ていく! そして旅を続ける。一緒にだ! 決めたんだ!」
この町の都合など知ったことか。
自分は優しさゆえに人間に敗北したエルフではないのだ。
どこまでも自分の欲望とわがままを貫き通す、生粋の、ただの人間なのだから。
彼は振り向いた。別の守備兵が三人駆け寄ってくる。
一声叫んで彼は彼らにとびかかった。
一瞬で殴り倒される。
蹴られる。踏みつけられる。
延々と痛みが身体を突き上げる。
血の味が口に広がる。
それでも彼が聞いていたのは守備兵の罵声ではなかった。
彼女の声だ。
甲高い絶叫にも似た、その声だ。
いつの間にか守備兵の攻撃が止まっていた。
全員が牢屋を振り返っていた。
そこで歌うエルフを。
そう、歌だ。
悲鳴のようだがそうではない。彼にはわかる。
放射状に何か強いものが広がっていく。
そして声は音に変わる。
風に擦れ合う木々の葉の音だ。
一面の紅葉の森。
その中を二頭の子熊が走っている。
連れ立って紅葉降り注ぐ中をどこまでもどこまでも。
一頭は彼で、もう一頭は彼女だ。
走る、走る、走る。
どこまでも、果てへ、果てへ。旅路の向こうへ。
光に全てが包まれて――あとには闇が残った。
……
「わたしたち、どこまで行くの?」
それはいつか訊かれた言葉だった。彼もまたいつか言った言葉で返す。
「さあなあ」
いつかと違うのは互いの顔に浮かぶ穏やかな微笑みくらいか。
彼とエルフは歩いていた。
どこまでも続く道の上を、二人で。
空は今まで見たことのないくらい快晴で、見渡す限りの青空が広がっている。
「じゃあ聞き方を変えるわ。どこまで行けるのかしら」
「行けるとこまでじゃないか?」
「行こうと決めたところ?」
「ああ」
「じゃあそれは決めない方がいいかもしれないわね。行きたいもの、どこまでも」
彼女は伸びをして見上げる。
彼もつられて蒼穹を見上げた。
あそこからどうやって脱出したのかは覚えていない。
気づいた時にはいつの間にか一緒に歩いていた。
まるでずっと前からそうやって歩いていたかのように。
だから二人ともわざわざ野暮に確かめることなんてしなかった。
いいじゃないか、なんだって。
一緒なら、何も問題はないのだから。
「どこまでも、か」
旅路の果てに待つものはなにか。
そんなことを考えていたことを思い出した。
つまり、それまで忘れていた。
旅の先に待つものなんてありはしない。
だって二人の旅は終わらない。
どこまでも続くのならば果てはない。
それにもし仮に待つものがあったとして、それは目に見えないものなのかもしれない。
あの子守歌と同じだ。
子熊が探す紅い葉は、見つからなくてもちゃんとある。
眠る子熊の上でそれは確かに揺れている。
「そういえばだけどね」
エルフが不意に口を開いた。
「わたしの名前、面白いわよ」
「? どんなだ?」
「エルフの言葉で、紅い葉。"紅葉"というの」
彼は呆気にとられて口を開いた。
つまり、と彼は思う。
俺の紅い葉は、わからなかっただけで、ずっと隣にあったのだ。
「……いい名前だな」
言って、それから彼はふき出した。
唐突な笑いは止まらずに、しばらく彼は笑い声をあげ続けた。
ひとしきり笑って目じりに浮かんだ涙をぬぐって彼は背負い袋を背負い直す。
「さて」
「ええ」
エルフがうなずいてこちらに半歩近づく。
手が触れた。
指が絡む。
優しく、柔らかに。
「何か歌ってほしいな」
「どんな歌がいいかしら」
「そうだなあ――」
考えて、思いつかない。
だが、問題はない。考える時間はたっぷりある。
ゆっくり考えよう。
どこか上空から、甲高い鳥の鳴き声がした。
おわり。お付き合いありがとでした
訊かれてもないのに晒すのもアレだけど、奴隷エルフ物では、
・男「エルフを買っt エルフ「新しい家ー!」
・エルフ「見ないで……」
・優秀なはずの「エルフ」がなぜ奴隷に堕ちるのか。
とかも書きました、もしよかったらこれらもよろしくです
どうせならURLまで貼ってくれ
おつかれさま
ありがとう!!
乙乙
>>130
申し訳ない、どこが一番見やすいか判断しかねてしまって……
ググってそれぞれに合ったところで読んでもらえると助かるです
>>133
そう言うときは元スレのURL貼るんだべ
あなたの書くエルフものは最高です!
乙!
>>134
なるほどありがとう
・男「エルフを買っt エルフ「新しい家ー!」
→男「エルフを買っt エルフ「新しい家ー!」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1329888146/)
・エルフ「見ないで」
・優秀なはずの「エルフ」がなぜ奴隷に堕ちるのか
ふいんきが好きだった
乙!
乙
素晴らしい乙
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません