いろは「わたし、葉山先輩のことが…」葉山「…俺は彼の代わりにはなれない」 (884)

新生徒会長 一色いろはに生徒会としての初めての大きな仕事が与えられた
内容は他校と合同イベントを開催する、というものである

まだ生徒会長になったばかりのうえまだ1年生
どのように進めていけばいいのか不安で仕方がない
だが、成り行きでなったとはいえ仕事をしないわけにはいかない

しかし時は無情にも第一回の合同会議を迎えてしまう

最初ということで、顔合わせと少しの作業で済んだのだが、彼女の顔色は優れない
その理由は2つ


生徒会長として何をしていけばいいのかまだわからないこと

生徒会役員といまいち打ち解けていないこと


「はぁ…」


思わず溜息が漏れる
役員と打ち解けてないことで会議中でも気まずく、合同会議にもかかわらず
こちらからの意見は何もなかった

「しかも向こうの会長なーんか微妙なんですよねー」

似たようなことばかり言っていて有意義な話し合いには到底思えなかった


「…はぁ。どーしよ。とりあえず打ち解けることが先…でも…はぁ」


先のことを考えると溜息が止まらなかった



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  * * *


次の日さっそく生徒会で集まり会議を始める…のだが


「えぇっと。どうしたらいいですか…ねぇ?」


その言葉に対する役員たちの反応は悪い。


「あはは…。いきなりこんな大仕事って困っちゃいますよねぇ~」

副会長がそれに答える

「あぁ。始まったばかりなのにな」

 
「ですよねぇ~」


そこで会話はプツリと止まる
とても生産的な会話が出来ているとは思えない


「あ~…あ!めぐり先輩に聞いてきましょうか!」

「でももう引退した人に頼るのも気が引けるよねー」

「まぁ受験生ですし、さすがに悪いですよねー」


また別の役員が反応をしてくれるがそこから会話が発展する気配はない


「じゃ、じゃあ他に頼れる人とかっ」

「会長」

「は、はい!」

そこで副会長がいろはを呼ぶが

「……いや、なんでもない」

「あ、そ、そうですか」

一体何を言おうとしたのか。いやうすうす分かってはいる
外部に頼ろうとしている事になにかいいかけたのだろう



「…今日はこのくらいにしておきましょう!次の合同会議でなにか動きがあるでしょうし、
  各自でアイデアを考えておくということで…どうですか?」

「まぁ…そうだな」


副会長の同意を合図に他の役員も帰る支度をし、
それぞれ控えめにおつかれーといって解散していく


手を振り、はにかんでいたいろはは机に突っ伏し脱力する


「っぷはぁぁー。あーもう無理。限界。助けて葉山先輩ー」


と、いいつつも葉山に頼るつもりなどさらさらなく、これからどうしようかと考えていたのだが


「戸部先輩は使え…頼りになるけどアホだし。あ、いるじゃん。手伝ってくれそうな人」


意地悪い笑みを浮かべると帰り支度を済ませる


「次の会議は明日だから、放課後に行けばいいよね。泣いて頼めばこっちのもんですよ!」
「確か…奉仕部、だよね」


その足取りは幾ばくか軽かった



  * * *


ディスティニーランドに行けとチケットを貰ったのはいいが、この4人と行くのはさすがにきつい。


「あの仲良し?3人と一緒に行けとか平塚先生もエグイこと言いますよねー」


雪ノ下さんが年パス持っててよかったーと思いつつ余ったチケットを握り歩く

向かう先は部活中の葉山がいるであろうグラウンド


「いやぁ。こんな賭けみたいなことするつもりなかったんだけどなー」


賭け。一色いろはのような計算高い人間は賭けるようなことは好まない
当然金の掛かったギャンブルではない
今回でいう賭けというのは、葉山にアタックするということだ

部活のかわいい後輩マネージャーとして葉山に近づいているのだが、彼は表面上では親しげにしつつも、
どこか1歩引いたとこにいるように思えた

そんな相手を遊び(あわよくばデート)に誘ってもやんわり断られるのが関だ



なぜ彼女がこんな攻勢に出たかと言えば…この間の出来事のせいだろう


奉仕部に寄った彼女が偶然にも聞いてしまった比企谷八幡の本音、願い
言葉数は少なかれどその思いはよく伝わってきた


いつも周りに好かれるために行動し、自分のイメージのために生きてきた彼女のこころを動かすには充分だった

そのことが今回の賭けにでた理由である



しかし今回はあくまで仕事としてのお願いだ。失敗してもダメージはない
それに奉仕部面々とは交友がある。勝算は高いように思える


心の中で大丈夫大丈夫と祈っていると目的の姿が目に入る


「あ、葉山せんぱーい!」

「あぁ、いろはか。どうかしたか?」


相変わらず皆を虜にするにこやかな笑みを浮かべている


うん。かっこいい。………あれ?こんだけだっけ?
いやいや!…好き。好き?あれ?


「いろは?」


突然固まったいろはをみて不思議に思った葉山が声をかけてくる


「は!いえいえなんでもないです!あ、それよりこれ!見てくださいよ~」


「これは…ディスティニーのチケットか?どうしたんだこれ?」


「いえいえ実はですねー、生徒会の仕事の参考になるってことで平塚先生に渡されたんですけど1枚余ってて、
 それで奉仕部の方々と行くことになってるんですけどそのー、気まずくて?だから葉山先輩についてきてほしいかなーなんて」


「奉仕部と…。そうか。じゃあせっかくだし無料券もらえるなら行こうかな」


「ほんとですか!やったー!」


と喜ぶ一色であったが、ここは人目に付くグラウンド。そううまくいくはずもなく…


「よっいろはす~。ん?ディスティニーランドのチケットじゃん!はやとくんどうしたのこれ?」

「あぁ、戸部。実はディスティニーに取材にいくことになってな」

「ちょ、なにそれ羨ましすぎっしょ!っべーこれは俺も行くしかないっしょ~」

「ははっ、言っとくがこれは仕事だぞ?」

「とかいって~半分くらいは遊びみたいなもんっしょ!いろはす!俺もいっていいべ?」

突然の戸部の襲来に不機嫌そうないろはだったが、すぐに取り繕う


「え!あ~でもすみません、チケットもうないんですよ~」

「まじか~。あ、じゃあ優美子たちも誘ってみんなで遊び行くべ!俺たちは自腹になっけどさ」


は?なぜそうなる
と言いたいところをグッと抑え、やんわりとお断り体制に入る


「それもいいですね~。でも今回は仕事なのでちょっと…」

「まぁいいじゃないか。遊びながらでも取材はできるわけだし。最近こいつらと遊ぶ時間も取れてなかったしな」

「さっすがはやとく~ん話がわかる!」

「はぁ…そういうことなら」


葉山に言われてはどうしようもないのか、渋々と承諾する


「んじゃ!ちょっくら優美子たちに連絡いれてくるわ!」

「おいおい、今は部活中だぞ?」

「っべ~!テンションあがりまくりで忘れてたわ~」

「おいおい。いろは、集合場所とか決まったら連絡頼む。じゃあ部活戻るな」

「りょうかいで~す…。あぁ」


困り顔で微笑みながらそういうと2人はコートに戻っていく
残されたいろはは戸部を恨みがましい目で見つつ、三浦との諍いを想像して頭を抱える



  * * *


ディスティニーランド当日



三浦と睨み合いながらもそれなりに楽しく園内を回っていた
ふと気になり、奉仕部のメンツを見やる


いろはが彼らを正確に認識したのは生徒会長の一件からなので、それ以前の仲はわかりかねるが、
どうも喧嘩しているようだった。それがこの間解消されたようで、ぎこちないながらもどこか楽しそうだった



先輩 雪ノ下さん 結衣さん



私にはないものを持っている。それがなにかわからないけど
でも、この3人がとても綺麗なものに見えた

同時に自分はこの中に入れないと思い、胸が痛んだ



って、いや。別に入りたいわけじゃないですけどね?
ただなんか…こう。うらやましいなぁ。
先輩。私って先輩にどう思われてるんでしょうか。可愛い後輩?ないな。あざとい後輩?あるよ。


そこで自分の考えていたことにハッ!となる


いやいやいやいや!なに!?違うでしょ!いや違わない!
そう、『葉山』先輩のことだから。うん。間違っても腐敗した方の先輩ではない。



そして、一つの思いが芽生えた。野望と言ってもいいかもしれない

比企谷八幡が求めた"本物"

そして彼女もまたそれを求めた


私も、本物が、欲しい
だから葉山先輩を…


それは自らを誤魔化しているようでもあった

手に入らないものから目をそらし、目を曇らせ、目を伏せた

彼女自身よくわからなくなっていた

だが決意した

おそらく、この魔法の国の効果もあったのだろう


「……戸部先輩、ちょっといいですか?」

「おー、どした、いろはす」



間違っているのかもしれない
それでもやらずにはいられないと思った



「……え、マジ?」



  葉山隼人に告白する決意を



  * * *


パレードが終わり花火が打ち上がろうとしている。

いろはは、八幡や戸部達とは少し離れた場所にいた。傍には葉山もいる。

あらかじめ戸部に頼んで2人きりにしてもらえるようにしたのだ。


「あれ、戸部達とはぐれたか?」

「…みたいですね。あの、葉山先輩」

「うん?あまり遠くに行ってないといいが…」

「あの!少し…お話し、いいですか?」


声は震えていたと思う。
こんな経験初めてだった。

自分は傷を負わないように。
プライドを傷つけないように。
告白は相手にさせようと思っていた。

まさか自分からしようと思うなんて思ってもみなかった。


「あぁ」


葉山は短くそう答えると、いつもの笑顔を消し、真剣な顔になる
だがその顔はどこか痛々しいものをみるような、申し訳なさそうな顔つきだった


正直もう吐きそうだった

だがここまで来て今更退けない



「わたし、その…ですね」


しかし、いざとなるとなかなか言葉が出てこない

ふとある光景を思い出す

実際は声しか聞いていないのでその場を見ていたわけではないが、
必死になりながら、うまく言葉もまとめられず泣きながら思いをぶつけていた人の光景を



もう震えはなくなっていた




「わたし、葉山先輩のことが…好きです」




葉山はその言葉をきくとゆっくりと目を閉じる


あぁーこれはだめかー。


と思い、なにか言おうとしたのだがその前に葉山が口を開く




「…俺は彼の代わりにはなれない」



何を言っているのか理解できなかった


「…は、へ?」


「君は…君が好きなのは俺じゃない」


意味がわからない。なぜそんなことをいうのか
何を根拠にいっているのか


「いや、え?わたしは葉山先輩のことを…」


葉山は優しい笑みを浮かべている


「いろはの気持ちは素直にうれしいし、いい子だと思ってる。薄々気づいてた。
 でも、今はもう違うだろう?君が本当に好きなのは…」


「待って…ください。なに、を」


「…すまない。いらないことを話してしまったな。
 好きになってくれてありがとう。でもごめん。」


「いぇ…わたし、すみません」


もうこの場にいることが耐えられず、気がついたら走り出していた
途中驚いた顔をした先輩方を見かけたが構わず走り続けた


残された葉山は、誰に言うでもなく呟いた


「最低だな…らしくない。ただ一言いえば済んだものを……」




  * * *


帰りの電車の中。先の一件で周りは御通夜ムード。
どうもすみません!空気悪くしちゃって!泣いてもいいですか!


途中戸部先輩グループは乗り換えのため降りたのは幸いだった。


まぁ奉仕部グループと一緒に帰るってのもだいぶ辛いんですけどね。


わたしが逃げ出したあと三浦先輩たちがわたしのとこに来てくれて慰められてたんですけど、
あの人おかんみたいな人ですね。面倒見のいいっていうかババアっていうか。

戸部先輩なんかおろおろしてて、ぶっちゃけキモかったんですけど。
でも気遣いには感謝してます。ツンデレなわたし可愛い!



「では、私はここで」

「あ、あたしもここで」

「お前まだ先だろ」

「明日休みだし、今日はゆきのんち泊まるの」

「あ、そう」


どうやら雪ノ下さんと結衣さんはここで降りるみたいですねー。
…先輩、家どこなんですかね。


「一色、お前駅どこだ」


なんだろう。泣きそうになった。先輩最低ですね。


「先輩。荷物超重いです」

「買いすぎなんだよ……」


なんだかんだいって先輩ってお人好しですよねー。あざといです。

そんな先輩を見て、結衣先輩は微笑む

 
「うん、そのほうがいいかもね」
「一色さん。くれぐれも気をつけて」


ハハッ!先輩にそんな度胸ないので大丈夫です。



  * * *



車内には先輩とわたし2人きり。


「はー……。駄目でしたねー……」

「いや、お前、今行っても駄目なことくらいわかってたろ」

「だって、しょうがないじゃないですか。盛り上がっちゃったんだから」

「意外だな、お前はそういう場の雰囲気に流されないやつだと思ってたぞ」


 
その言葉に、笑顔で返す


「わたしも意外です。もっと冷めてるんだと思ってました」

「あぁ、お前、恋愛脳に見せかけて、結構クレバーっていうか」

「わたしじゃなくて、……先輩の話です」

「は?」


しばし先輩をみつめ、真剣な顔をする
してるよね?


「あんなの見せられた心動いちゃいますよ」

「何が」

「わたしも、本物が欲しくなったんです」

「聞いてたのかよ」

「声、普通に漏れてましたよ」

「忘れてくれ」


照れてますかね。
ネタにするつもりはないんですけど、たまにはこんな先輩もいいですね。


「忘れませんよ。……忘れられません」

「だから、今日踏み出そうって思ったんです」


結果的には振られちゃったけど、そのおかげで気づけたことがある。



「その、なに。あれだな、気にすんなよ。お前が悪いわけじゃないし」

「なんですか傷心につけ込んで口説いてるんですかごめんなさいまだちょっと無理です」

「ちげぇよ…」


気付いてませんかね?ちょっと踏み込んだ言い方したつもりなんですけど。



「ていうか、まだ終わってませんし。むしろ、これこそ葉山先輩への有効な攻め方です。
 みんなわたしに同情するし、周囲も遠慮するじゃないですかー?」

「……お、おう。そういうもんか」

「そういうもんです。それに、振られるとわかってても行かなきゃいけないこともあるんです。あとあれです。
 振った相手のことって気にしますよね?可哀想だって思うじゃないですか。申し訳なく思うのが普通です。
 ……だから、この敗北は布石です。次を有利に進めるための…だから、その、…がんばらないと」


さすがに今日の出来事はこたえたのか、また涙腺が緩む
そんな状態を見ていた先輩は励ますでもなく、ただ一言だけ


「すごいな、お前」


その言葉が何より嬉しかった。
うん、やっぱりこの人じゃなきゃだめだ。



葉山先輩は好きだった。でも本気じゃなかった。本気になった振りをしてた。そう自分に言い聞かせた。
告白したのも、あの人たちを見ているのが辛かったから。多分何でもいいから欲しくなったんだ。
だってわたしが本当に求めた人は、わたしじゃ手に入りそうになかったから。


矛盾してる。本物を求めたのに、それが手に入れづらいものだと知って、仮初のものを求めた。

そう。でも、気づけたから。

逃げないで、近づこうと思った。



わたしが初めて気を許した人

気を遣わなくても苦しくならない人

傍にいると不思議と落ち着く人




先輩が…比企谷先輩が







わたしの本当にもとめた人だ。







「先輩のせいですからね、わたしがこうなったの」


「いや、会長の件はそうだけど他のは」


なにもわかってないであろう先輩に近づき、耳もとで囁く。


 
「責任、とってくださいね」




素晴らしい
続きはよ

いろはす~

可愛いろはす

期待

いいね

はよはよ

つづけ

超グッドだね

ガハハー、グッドだー

こういう真面目なssいいね
壊れ系しか最近読んでなかったから

いろはす~

素晴らしい

これで終わりだったらまじ怒(真顔)

これで終わりとか言わねえだろうな!
続きお願いします

書き溜めここまでしかない
正直ここで終わろうと思ってた

一応大まかな流れはあるから待ってくれ
酉つけとく


あと八幡といろは2視点切り替えでやってこうと思ってるけどいいか

かまわぬ

好きに書くのじゃ

ageんなhage

期待する

おつ、面白かった

>>10-11
葉山が一色から何も聞いてないうちからその行動を比企谷の影響と察知するのは、無理がある。
奉仕部で何があったかも知らない筈なのに。
テレパシストなみだろ。

>>36

そんな変だったか
そもそもいろはがこういう感情に流される行動をしないのは知ってるだろうし
八幡といろはの関わりが深くなってるのも知っている
そしたら感のいい葉山は気づくでしょ
多分

俺は別に違和感感じなかったから気にせず書いてくれ

葉山はよくヒッキーのストーカーにされてるから違和感なかった

全然気になりませんが何か?
いろはが八幡を頼りにしてたのは知ってるだろうし

他人には見せない面を八幡には見せてるってのも気がついてたし、
いろはが取りそうもない行動を取ったのは八幡の影響と考えてもおかしくない

別に変とは思わなかった。
ありそうな展開がとても良かった!

冬休みが終わり、学校が始まる


あー、いきたくねー


特に学校で嫌なイベントがあるとか、そういうわけではない
奉仕部の面々と顔を合わせるのが辛い、というわけでもない

休み前の奉仕部の居心地の悪さはすでに改善され、以前のように
いや、以前よりも空気が良くなった気がする

まて、俺の存在は空気に等しい。
つまり俺という存在もまた良いものになったということだ。
いやー、俺みたいな人が増えれば空気が澄んでいくわけだなー。

働く気のないぼっち量産とか国終わってんだろ。


先ほどからつまらないうえに、よくわからないことを考えては突っ込むのを繰り返している
こう嫌なことから逃げたいときによくなるね

じゃあ嫌なことってなによ?

ずばり学校に行きたくない。寒いし。それだけ。
休みの間グダグダしていた分、切り替えが難しい。もっと休んでいたい

長期休暇のあとの働きたくなさは異常…は!だから社畜には休みが少ないのか!


ほんとお疲れ様です。
身を削ってまで働くその心意気を尊敬しつつ、
自分は専業主夫になってだらだらすごしてやる。と、思いを強くしました。


そんな軽い逃避をしていたらいつのまにか、校舎についてしまった


さすがにここまでくれば、先ほどまでの学校にたいしての嫌悪は消えうせる。
大人しく勉学に励むとしよう。やだ!社畜の才能あり過ぎ!




「あ、ヒッキーおはよ!」

「…おー」


教室に着くと、先に来ていた由比ヶ浜に声をかけられる
まさか声をかけられるとは思っていなかったので、少し驚いた
返事を返すと、おしゃべり中だったのであろう。でさー、と会話に戻る


いや、話しかけられること自体は前からあったっちゃあった。
だが、わざわざ挨拶するために会話を切るなんてことなかった気がする。
それにわざわざぼっちで嫌われ者の俺に、目立つように声をかけるなんて前の彼女からは考えられない。

彼女の中でなにか心境の変化があったのだろう。…まぁ、おれも変わったという自覚はある。

少しすると、小柄の天使が入ってくる


「八幡おはよう!」

「おう!おはよう戸塚!」


おっといけない!俺のクールなキャラが崩れちまうぜ!
え、そんなキャラついてない?ネクラマンサーとかかな。




戸塚は俺のテンションがおかしかったのか、口元に手を当ててクスリと笑う


「久しぶり!雪ノ下さんの誕生日会以来だね」

「そうだな。俺はほぼ家からでないからな」


そう。冬休みと言えば頑なに外に出たがらなかい俺だが、今年は珍しく外に出る機会があった。
一つは戸塚が言ったように雪ノ下の誕生日だ。まぁ、やることはクリパと大差なかったし、
その前にみんなで初詣に行ったくらいか。その時の話は割愛させてもらうとして。

他には……ないな。うん。
あれ?やっぱり家から出てないじゃん。


「もぉ。少しくらい外でなきゃ身体に悪いよ?僕が部活忙しくなかったら遊びに誘ったんだけど……」


Oh ! Shit ! 許さないぞ部活動!


「まぁ…なんだ。暇なときはいつでも誘ってくれ。どうせいつも暇だからな」

「うん!じゃあまたあとでね」

戸塚はにっこり微笑むと自分の席に向かう

いやぁ、朝から癒されましたね。



  * * *



何ごともなく授業は終わり放課後、部室へと向かう
由比ヶ浜は三浦たちと話していたし来るのは少し遅れるだろう

部室の戸を開け、中に入ると先客がいる
読んでいた本から目を離しこちらに顔を向ける


「こんにちは」


「うす」


いつもの席に座るとカバンから本を取り出す


「お久しぶりね。由比ヶ浜さんはまだ来ないのかしら」


なんなのん?おまえほんとガハマさん好きだな。


「三浦たちと話してたからな。まぁ、すぐ来るだろ」


「そう。てっきり一緒に来るものだと思っていたから」


「いや。ないだろ、ない」


いや、ほんと。そういうの恥ずいんで。


「お茶は、由比ヶ浜さんが来てからにしましょうか」


そういうと、雪ノ下は読書に戻る
俺もまた取り出した本を読み始める


…のだが。
妙に視線を感じる。恐らく、というか確実に雪ノ下なのだが。
こいつは相変わらずだな。


「どうかしたか」

と、一言聞くと咳払いをしたのちに口を開く。


「その……。今度、あなたの家にお邪魔してもいいかしら」

「は?あー、小町か?」

「え、えぇ。その…お菓子作りの練習を頼まれてしまって」


あいつ……もう受験間近だぞ。マジか☆マヂカ


「もちろんそのあと、私が勉強を見てあげる予定だから心配はいらないわ」

「……まぁ、お前が見てくれるんなら少しくらいいいか」

「小町さんのお願いなのに、あなたの許可を取らなければいけないなんて変な話ね」

「半分保護者みたいなものだからな」

「小町さんも大変ね。こんなめんどくさい人の面倒を見なくてはいけないなんて」

「俺が保護者って意味なんだが」

雪ノ下はクスッと笑うと


「では、次の土曜日。お邪魔するわね」


と言ってまた読書に戻る


特に話したいこともないので、俺も本に目を通し始める


久しぶりだな。ほんと。


しばらくして由比ヶ浜が部室に来る

お腹すいたーというもんだからそこからは小さなお茶会が始まった

そういえば原作読んでる人向けていうの忘れてた

かまわんほ

いろはす自体まだ原作読んでる人向けだからノープロブレムだ

そういえば二期決定してたんだよな
秋から始まるとは聞こえてこないけど

原作内の季節だと秋から始まるのがちょうどいいんだけどな

となると来年の秋……とかかしら

二期は修学旅行からクリスマスイベントまでかな
番外でウェーイ

二期でアニメ組の奉仕部の株爆下げ、さきさき爆上げ、いろはす~、まで読める

アニメ一期でサキサキスルーされたからなあ
あれは許されませんよ

乙!
二期は原作のラストに合わせんじゃね

それな
二期でいきなり八幡意識されてる所描写されても変だし、だからと言ってあのシーンは二期で追加するのも変だしな

まあそれでも誰視点でかは分からないが回想って感じで追加しなくちゃならんけど


  * * *


時は進み、土曜日
今日は雪ノ下が来ることになっている

うむ。おれはどうしようか。部屋に籠ってた方がいいのだろうか。
小町の客なわけだし俺が出ていくのはおかしよな。

などと柄にもなく、そわそわしている自分が憎い!



程なくして、来訪を告げるチャイムが鳴る


「はいはーい!おまちくださーい!」


小町が颯爽と玄関まで行き扉を開けてくる


「こんにちは小町さん」

「どうもどうもです、雪乃さん!どうぞ上がってください!」

にっこにこ笑顔で雪ノ下を迎え入れる


「こんにちは比企谷くん。お邪魔するわね」


今日はいつもと違い髪を一つに束ね、前に垂らしている
その髪を束ねているものは、以前クリスマスにプレゼントしたシュシュだった


「おう。……あー、使ってんのな、それ」

「ええ。愛用させてもらってるわ」


嬉しそうに微笑む雪ノ下に一瞬見とれてしまったが、すぐに気を持ち直す


「……そうか。じゃあ俺は2階に上がるわ」

「別に気を遣わなくていいわ。あなたに意見を貰いたいところだし」

「いや、そっちこそ気にすんな。呼んでくれたらすぐ行く」

雪ノ下は少しうつむく

「……そう。あなたも…一緒にどうかしら、と思ったのだけれど」


そういわれてドキッとする。
以前の自分だったら即座に断っていただろう。


「あー…いいのか?」


と、問うと彼女は笑顔を見せる


「ええ。小町さんも、いいかしら」


小町は俺たちのやり取りを見て驚いていたようで、目をパチクリさせていたが

「もっちろんですよ!兄と一緒になにか出来るなんて、なかなかないので
 ハッピーです!あ、今の小町的にポイント高い!」


「だそうだ。じゃあ、準備してくるわ」

準備っつっても手洗うくらいなんだがな

「んふふ~。お兄ちゃんも隅に置けませんな~」


小町がニヤけ顔でついてくる


「なにが」

「べっつに~?」


ダル絡みされる前に退散退散、悪霊退散。


「…よかったね。お兄ちゃん」


なにか呟いていた気がするが知らん顔でその場を去る

…あっちー、顔赤くなってるのばれてただろうか。





  * * *


「ふむ。いいできね」

「だな」

「いいですね~。さっすが雪乃さん!」


お菓子作りは、無事終了する
作ったものはクッキーだ
シンプルながらも、雪ノ下先生にご教授いただいた結果、
店に出せるレベルのモノが出来た。……材木座あたりから金を取ろうか



「つーか、なんでクッキーなんだ。わざわざ雪ノ下を呼ぶくらいだから、
 もっと凝ったものかと思ってたぞ」

「あら、クッキーも馬鹿に出来ないわよ?誰でも作れるものは、差が出やすいのだし。
 でも確かに、凝ったものを作るのだと思ってたわ」

確かにな。一流の料理人ってのはただのオムレツですら絶品と言われるほどのものを
作るらしいしな。

小町が不敵に笑う

「フッフッフ。なぜクッキーなのか……それは!」

「もったいぶってないで、さっさと言え」

「ぶー。これだからゴミいちゃんは…。ずばりですね、お礼の品ですよ」

「は?誰にだよ。まさか川なんとかさんの弟か?やめとけ。純粋な中学生男子をからかうんじゃありません」

「……それはあなたが、小町さんと関わられるのが嫌なだけでしょう」


雪ノ下は頭を抱え、呆れたように息を吐く



しかし実際、女子からの贈り物をされるなんて勘違いの塊でしかない。特に個人のみ贈る場合
これがクラス全員とかならまだしも、あのクソガキにだけ渡すなんて死人が出る
主に、弟を抹殺しようとした俺が、姉のほうに殺される


「あー、それにも渡すけど、お兄ちゃんが!お世話になった人に渡すんだよ」


さりげなく酷いこと言ったな。それって。ちょっと同情する、だが妹はやらん


「世話になったって……あの件でか?」


思い当たるのは、雪ノ下、由比ヶ浜を生徒会長にさせないようにするための件だ。
あの場で話し合った程度だが、感謝するには充分だ。
材木座には、大分危険な橋を渡ってもらったが。まあ、材木座だし。金払うならやらんこともない。
あと、戸塚かわいいしな。え?関係ない?



「そうだよ!みんな快く協力してくれたのに、なにもお礼しないなんておかしいでしょ?」

「まあ、そうだな。戸塚には随分と世話になったからな」

「お兄ちゃん……戸塚さん好きすぎるでしょ。やはりお兄ちゃんの恋愛は間違っている」


なんだよそのラノベタイトルみたいなの。もう流行んないぞ。


「確かに感謝の気持ちは大切ね。それではラッピングをしましょうか」


そういうと、慣れた手つきで包装していく


俺が人に感謝するような出来事があったということに対し、何も言及はされなかった
ある程度の察しはついているのだろう。


大した作業量でもないので、包装はすぐに終わった
あとは、誰に渡すかなんだが

「戸塚と……あと誰に渡せばいい」

「川…大志くんのお姉ちゃんと、中二さん。大志くんには小町が渡すよ」

「いや、その必要はない。姉の方に渡しとけば事足りる」


シスコン
ボソッとそう聞こえる

しょうがないだろ。千葉住の兄妹なんだから。


「にしても、少し数が多くないか」


8袋分できてしまった
その4人に渡すとして残りはどうするか
余ったのを4袋に詰めてもいいのだが、いささか数が多い


「うーん。雪乃さんと結衣さんは確定として。あ、先生とか?」

「自分たちで作ったものを貰うなんて、変な気分ね」

たしかに

ふと、思い当たる奴がいる。


「あー、じゃあ後1人は適当に渡しとくわ。自分で食ってもいいしな」

「ほ~。じゃあ、これでミッションコンプリート!あとはお兄ちゃんの仕事です!
 雪乃さんもありがとうございました!」

「いえ、大したことはしていないし、楽しかったわ」

「小町も楽しかったですよ~」


と言って雪ノ下に抱き着く。困った笑みを浮かべながらも、どこか嬉しそうだ



「いい息抜きにもなったし、これから小町は勉強タイムに入ります!」

「そうね。遅れを取り戻さなくてはいけないものね」

「はい!あ、でも最近調子がよくてなんとかなりそうなんですよね~。躓いたら助けを求めるので、
 雪乃さんはお兄ちゃんの面倒を見てて貰えると助かります!」

「おい、なんでそうなる」

「調子がいいと慢心したときが一番危ないわ。人に教えるのも苦ではないし、気にすることはないわ。
 それに心配しなくても、彼は一人で生きていけるわ」

「そいつは無理だ。おれは誰かに養ってもらわないと生きていけない。働く気はないからな」


いい笑顔でそう告げてやると、雪ノ下は、また頭を抱えた
小町にはにやけ顔キモいよと指摘された
え?もしかして今までイケてると思ってやってきたのは全部にやけ顔だったの?
なにそれ超恥ずい。むしろ今までの人生すべて恥ずかしいまである


「まあ、そういうことなんで、兄の面倒よろしくできませんかね?
 友達いないくせにパーティーゲームとか買ってくるんですけど、小町しか相手いなくてー
 しかもお兄ちゃん"強い"ので全然"勝てない"んですよね~」


「強い…勝てない……。比企谷くん、それはどういうゲームなのかしら」


うわぁ……勝負ごとに目がない雪ノ下さんが食いついちゃったよ。


「あれだ、テレビゲーム。マリカとかスマブラとかだよ。ていうか一人でもできる」

「マリ……それはどういうものなのかしら。ゲームとかやらないから」

「はい!用意しましたよ~。存分に楽しんでください!それでは小町は勉強してきまーす」

追随を許さぬかの如く早口でまくしたて、部屋に向かう
なんだよやめろよ2人きりにしないでくれ。変に意識しちゃうだろ。

一方雪ノ下はゲームを興味深そうに眺めちょんちょん触っている。


「これ、どうやって使うのかしら」

「あー、貸してみろ」


テレビを点け、ゲームを起動する


「じゃあやり方から説明するか」


雪ノ下は説明するたび、ふむふむと頷いている。ちなみにスマブラ。
試しに実戦をしてみたのだが、もちろんぼっちマスターこと俺に勝てることもなく、
少し悔しそうな顔をしていた。


「なるほど、なかなか分かってきたわ。同じコマンドでもキャラによって攻撃のタイプが違うのね」

「そうだな。全部のキャラを覚えるのも大変だが、パターンを覚えちまえば大分戦える」


呑み込みの早い雪ノ下は、何戦か続けていくうちにめきめきと上達していく
正直やばい。俺も結構必死になってる。こいつゲームにも才能あるのかよ。
頭のいい奴はみんなこうなのかもな。



更に数戦した結果

「ふふ、完勝ね」

「おい嘘だろ。ていうか投げ連なんてどこで覚えた」


相手の機を一切減らせずに負けた。
いや、あれだし?ゆーてガチキャラで挑んでないし?
でも、初心者相手にガチになるのもあれだし?

いるよなーこういうやつ。負けるの認めたがらないで言い訳はじめる。
友達いないから知らんけど。



「たまには、ゲーム…というのも楽しいわね」

「だな。おれもあんまやる方じゃないし、人とやる機会もないからな」

「今のは負けた言い訳かしら」

「ぐっ…」


くすくすとおかしそうに笑う
つられて俺も笑みがこぼれる

「でも、少し疲れたわね。小町さんに呼ばれるまでどうしようかしら」

「…いつもどおり、本でも読んでりゃいいんじゃねーか?」

「そうね。でも、いつもは持っているのだけれど今日は入れてこなかったのよね。
 なにかおすすめを借りてもいいかしら」

「ああ、ちょっと待ってろ」


自分の部屋から適当に数冊持ってくる
2人、ソファに寄りかかりながら本を読み始める

こいつとこんな近距離で本を読むのなんて初めてじゃなかろうか。
隣にいるといい香りが漂ってくる。
いかんいかん、これはキモいぞ。


邪念を払うためにも本に没頭し始める


随分とゆったりとした時間が流れる


静かな空間と温かみのある部屋
隣から香る心地よい香りが自然と眠気を誘う
思考もままならず、うつらうつらと船を漕ぎ始める

あーやばい眠い。

しかし睡魔には抗えず、いつのまにか眠りに落ちていた



  * * *



「すいませーん!小町寝ちゃってましたー……ってあら?お兄ちゃん?雪乃さんは?」

時刻は午後7時
比企谷小町はリビングに降りると部屋の電気が点いてないことに気付く

「お兄ちゃーん?雪乃さん帰っちゃったー?」

部屋の灯りを点けて周囲を確認する


「…え?ほへぇ~」


目的の人物を見つけると、ニヤニヤしだす
かと、思えば優しく慈愛に満ちた表情になる


「ほんと、よかったねお兄ちゃん。……欲しいもの、手に入ったね」


一人呟く
その手に握られているのはカメラモードになったスマホ


「はい、ぴーなっつ」


カシャッと音を立てると、画面に今しがた撮影したものが表示される

そこには、互いに寄り添い合い眠りにつく男女がいた






  * * *


休み明けの学校
比企谷八幡は机に突っ伏し、考え事をしていた


部活いきたくねえええええええええええええ!


この間雪ノ下が家に来た
そこまではいい。お菓子作りにゲーム。何ら問題ない。
本を読んでる最中に寝てしまう。そんなこと多々ある。

だが、その寝てしまうのが悪かった。
カシャッという音と共に目が覚め、あたりを見回すと違和感に気付いた。
寄り添うように雪ノ下が寝てるではないか!
彼女もまた謎の音で起き、寝ぼけているのかきょろきょろすると、次第に事態を把握した。


そこからの行動は早かった。赤くなった顔を隠すようにマフラーやらなんやら装着し、
荷物をまとめ早口でまくしたてると玄関に急ぐ。

一応、遅いし送ってく、と言ったのだがやんわりと断られ、俺もまた気恥ずかしさから
断られたことにほっとした。


最後の一言だけが鮮明に頭に残っている



『……また。……遊びにきても、いいかしら』



それが先ほどから何どもリピートされ悶えのた打ち回っている
っべーよ、ぱないわ。ちな教室


「ヒッキ―……どうしたの、すんごいキモい」


「……ほっとけ」


わかってる。だがなんともいえない感情が暴れまわっている。
これは本当に俺か?にゃる様に乗っ取られたんじゃなかろうか



そういえば、由比ヶ浜を見て思い出した


「これ、やるよ」

「ん?クッキー?どうしたのヒッキ―!?」


なんかラップっぽくなってる

Hey!これはクッキー!お前はヒッキ―!

俺は誰だよ



「あー、なんか小町がな。世話になってる人に渡してこいってな」

「ほあー、なるほど。でもひ、ヒッキ―を世話してるって、なんかあれだね…養ってるみたいな……
 や!全然そういうんじゃなくてね!?」

「むしろ俺が世話してるもんな」

「されてないし!?」


少し気が紛れたな。
由比ヶ浜に感謝しつつ、そろそろ周りの目が痛くなってきたのでシッシッと追い払う


さて、さっさとこいつを配っちまうか。



目的の人物を探す
どこだ!戸塚はどこだ!
いない。あ、川……川デックスさんがいた。先にこっちに渡すとしよう。

声が裏返らないように気を付けて、ドスの利いた声を発する
いや、ダメでしょそれ。


「よう」

「ひぁ!」


川崎は、突然背後から声をかけられたことに驚いたのか、なんとも可愛らしい悲鳴を上げる
あ、川崎だよ川崎。


「な、なに!?んん゛……何?」


今の反応をなかったことにしたいのか、咳払いをすると軽くにらみながら聞いてくる


「これ。まえ世話になったのになんも礼してなかったからな。こっちは弟さんの分だ」


「別にいらないって……まあもったいないから貰っとく」


少し態度が柔らかくなった。弟に土産が出来たからか?このブラコンめ。

なんて口に出したら殺されかねないのでその言葉は心の中にしまっておく
私のココロ!アンロック!いや開けちゃだめでしょ。



「ん。じゃな」

「あ、あんたさ」


「あ?」

「いや…もうすぐ総武高の受験始まるでしょ?終わったらさ……うちの弟に息抜きさせてあげたくて、
 あんたんとこの妹も同じでしょ?」

「妹はやらん」

「だれも欲しいなんて言ってないでしょ、このシスコン」

「弟のためになんかしてあげたいとかいうブラコンに言われたくない」

「あ゛?」


こわいからやめて。てか先にふっかけてきたのそっちなんですがそれは。



「……話し戻すけど、だからなんかパーティー?とか」

「意外だな、そんな言葉がお前から出るなんて」

「うっさい」

「まあ、お前の弟はどうでもいいとして、小町に労いをかけてやるのは賛成だな」

「あんたしばき倒すよ」

だからこわいって。あとこわい。

「どっちみち、受験終わらないと何も言えんしな。後々考えようぜ」

「……ん」

一緒にやってくれるんだ、と小さな呟きを漏らした

紳士なおれは聞こえないふり聞こえないふり。
え?なんだって?



その場を離れ自分の席に向かうと、ちょうどいいタイミングで戸塚が入ってくる


「あ、八幡!おはよ」


相変わらずの戸塚スマイルである。


「よ。戸塚、これを受け取ってくれ」


その言葉を発した俺は、まるでプロポーズに指輪を渡しているような態度だっただろう

クッキーの入った袋を受け取ると嬉しそうに

「うわぁ、これ八幡が作ったの?ありがとう!でも、どうしたのこれ?」


「戸塚にはいろいろ感謝してるからな。今まで礼らしいこともできてなかったし」

「別に気にしなくていいのに。ぼくがしたいことをしてるだけだよ」


うむ。美しきかな 謙虚な心 日本人 (字余り)


「ありがとな」


特に何を言えばいいのかわからず、そう一言付け加えると、


「ううん。友達だもん」


といって、笑う



"友達"

なのだろうか。俺と戸塚は

そもそも友達の定義がわからない

友達がいたことがないから分かりようがない

いままで、そういったあやふやな関係は否定してきた

自分が傷つかないために

誰かを傷つけないように

だが、それは驕りだ

誰かを傷つけないなんて出来るわけがない

否定している時点で、相手に傷を与えてしまっているのだろう

自分は傷つかない。ならそれでいいのかもしれない

だが、それは偽りだ

否定することで自分も傷ついている

人を傷つけてしまったのではないか、と傷つく

平塚先生に言われた通り

傷をつけないなんてことはできない

そんなものがあるとしたら、それは偽物だ

ならば、本物とは何か

分からないし、解らない

もう、手に入らないものかもしれないし、既に手に入ってるかもしれない

まだ、諦めるのは早い

長い人生の序盤

だったらもう少しくらい期待してみてもいいかもしれない

俺と戸塚はもう友達なんだろうか

彼女たちともまた、そうなのかもしれない

そうであってほしい。そう考えて



「八幡?」


長い間考え込んでしまっていたようで、不安そうに戸塚が見てくる


「ああ、悪い。そうだな、友達…だからな」


すると、驚いたように瞬きをする
が、すぐに笑顔になる


「うん!」


軽く言葉を交わし、授業の準備をする

次は、現国か。


雪ノ下にはあの日に渡してあるから、クッキーの袋はあと3つ
あとは、材木座……には、下駄箱に入れとけばいいな、うん。
直接渡すのもなんかあれだし、勘違いさせておこう。

平塚先生は、教員だしな。部室に来た時くらいし渡せないな。

となると、あと一つ。渡しに行かねばならない奴がいる。

別に渡さないって選択肢もあるが、負い目もあることだしな。


「おらー、席につけー」


現国教師である、平塚先生がやってくる。

俺はどうやって渡そうかなーなんて考えつつ、適当に授業を聞いていた

今日は終わり
八幡パート思ってたより長くなった

次からいろはね

期待



八幡らしいね

ゆきのんかわいい
いろはすはよ!

こうゆきのんとかガハマさんの描写があるといろはすもヒロインになったなと感じるな

千葉だから掛け声がぴーなっつなのかな?

どうも、1年生にして新生徒会長の一色いろはです。

休み前に抱いた想いを胸に抱えたまま学校が始まり、しばらく経ちました。
めっちゃもやもやしてます。

なぜかって?
せっかく自分の想いに気付けたのに、なんにもアクションを起こせないからですよ!


冬休み中、遊びの誘いでも入れようかと思ったとこで気づきました。
先輩の連絡先知りません。

あわよくば街で偶然会えればー、なんて淡い期待をもって外に出ましたが、
あの先輩のことです。めったに家を出ない、出ても人の目につかないところだろうと。


ということで、もやもやとした休みを過ごしました。
せっかくの休みなのに……。先輩に会ったら文句言ってやる。


しかし、ここでもう一つの問題発生
先輩に会いに行く理由がない!

いや、そんなの気にせず行けよって思うかもしれませんが、
無理ですよ。表向きは、葉山先輩好きなわけですし?
振られたばっかで、さっそく別の男にちょっかい出してると思われたくないし?


いくらわたしが変わったといっても、根底から覆すなんて無理なわけで、
今でも、みんなが可愛いと思うわたし、でいたいわけですよ。


あわよくば、本物が欲しい。みたいな。


軽いですかね。でも、それがわたしです。



そんなこんなで今、生徒会室にて絶賛仕事中。溜息つきまくりですよ。はぁ


「会長。これにハンコ頼む」


「あ、はーい」


「そろそろ、紅茶入れますね」


「ありがとうございま~す」


副会長に書類を渡され、書記の子がお茶を入れる
奉仕部を真似して紅茶のセットを置いてみたりしたのだが、
これがなかなかいい息抜きになる

周りは2年生なのに対し、トップが年下ということで距離感がよくわからず、
空気が悪かったのですが、先のイベントを通し、なんとかいい雰囲気にはなったかな?

これも、先輩のおかげですね。いや、そもそもこうなったのは先輩のせいでした。文句言ってやる。


一応、役員の紹介でもしときますか。
副会長の武藤(♂)
会計の城ノ内(♂)
書記の本田(♀) 
今、命名
多分そんな感じの名前です。




「会長、なんか悩みか?」

「え?わたしそんな顔してましたか?」

「いや、溜息ばっかしてたから。むしろ気づいてくださいって言ってるのかと思ったぞ」

「あははーすみません。実はですね」

「あ、やっぱり語りたかったんですね」

本田さんがあははと笑う

「副会長の言うとおり、悩みがありまして。ずばり、わたしがフェイクの方を狙ってる風を装いながら
 本命と仲良くするにはどうしたらいいのかと」

「…ひどいな」

副会長がドン引きしている

そんなの知ってますよう、ぷんぷん。
わたしの本命には強力なライバルがいますからね、正攻法じゃ無理なわけですよ。
葉山先輩の一件をうまく使いつつ、先輩に情を沸かさせるという作戦です。

フられた人には優しくする、という心理。フった人が優しくなるのはもちろん、
そばでその状況を知っていた先輩は、わたしに優しくしてくれるというわけです。

わたしをフッた葉山先輩には、悪いですが利用させてもらいましょう。

やだ!いろはったら完璧!
性格悪い?褒め言葉です。


「その本命とは、現状でどのくらいの仲なの?」


ここまで口を開かなかった城ノ内先輩が疑問を聞いてくる

うーん、そういわれるとなんて答えたらいいんでしょう。
わたしを会長に推したことで、負い目を感じているように思えます。


「びみょ~な感じです、かね?」

「これはまたアバウトな回答だな」


副会長が困ったように言う



「連絡先とかは持ってるんですよね?」

各員のカップに紅茶を注ぎ足しながら本田さんが問う

「う、持ってないです。あ、どうもです」

「いえいえ。そうですか、それだと難しいですね。なにかイベントでもあればいいんですけど」

「もう、この時期になると受験しかないからねー。あとは学校のイベントではないけど、
 バレンタインとかくらいかなー」

バレンタイン
それは魅力ですけどまだまだ先だ。その間に向こうの仲が進展しないとは限らない
となると、なるべく早く行動したいわけなのだが


「遠いですねー。なんか生徒会でイベント作っちゃいましょうか!」

「受験シーズンでそれは無理だ。というかその仕事を今頑張ってるんだが」

「うぐぐ、世界がわたしを邪魔する……」


あれ、そういえば先輩の妹さんがここを受験するって言ってたような…。
ふむ、なにかうまく繋げられませんかね。


「まあ、あまり外部に頼むのは気が引けるが、また仕事を頼めばいいんじゃないか?
 そういう部活なんだろ?」


言われてなるほど、と頷く。ん?


「え?へ?何の話ですか?」

「ん?ちがうのか?てっきり、ヒキ…ヒキガ……、前に手伝ってくれた奴かと思っていたんだが」

「あ、わたしもそう思ってたんですけど、違うんですか?」

「へええええええええええええ!?なんでばれて…は!」

「まぁ僕らが会長の友好関係わからないから、それっぽい雰囲気だった彼を想像するのは当然じゃないかな」


城ノ内先輩がにやにやと笑う
本田さんも微笑ましいものを見るかのようにニコニコしてる

アイエエエエ!バレテル!?バレテルナンデ!?

葉山先輩にもばれてたみたいだし、わたしって結構わかりやすいのかな。



「むぅ、そうですとも!誰にも言わないでください、お願いします!」

「大丈夫だ。ここにいる奴は他言するような奴じゃない」

「おー、副会長から好評価いただきましたー」


くっそぅ、やれれましたー。




  * * *



「それで、彼との関わりをつくるためにどうすればいいかだが……」

「副会長なんだかんだ言って乗り気だね~」

「な、なにをいっている。これは会長が悩みを解消しないと仕事の効率が落ちるからやっているだけだ」

「ツンデレなんだね~」

「うわぁ、私ツンデレ生で初めて見ました」


城ノ内先輩と本田さんにいじられて、副会長は居心地が悪そうだ


「ありがとうございます副会長。やっぱり仕事頼むのが手っ取り早いですかね?」

「そうなるんじゃないかなー。こっちとしても助かるしねー」

「気が進まんがそうだな。こちらとしてもなかなか忙しい上に、会長がこんな状態で効率が悪い」

「も、申し訳なく思っております」


しかし、今回の仕事は地味なうえになにも面白いことがない
祭りをしようという前回の仕事ではなく、ただ受験生のデータの管理と当日の誘導やら監視やらの指示等


でも、デスクワークとか先輩超得意そうですね。


「でも、仕事受けてくれない可能性ありますよね~」

「そうなったら仕方ないな」

「そんな~」


ぐでーとしていると、コンコンと生徒会室の扉が叩かれる


「あ、はいどうぞ~」


訪問を促すとそこにいたのは、


「おす。あー、一色ちょっといいか」

「先輩!」


まさに今求めていた人がそこにいた



「だいじょぶですよ~。あ、すみません少し席外しますね」


役員たちに断りを入れ生徒会室を出る


「どうしたんですか先輩、わたしに会いたくなっちゃいましたか~?」

向こうから来ることなどないと思っていた故に喜びが大きい
自然と笑顔になる

「あざとい……。これ、渡そうと思ってな」

「なんですか?これクッキー?どうしたんですか先輩あざといです」

「うるせー、いろんな奴に配ってんだよ。で、余った分やる奴が思いつかなくてな、
 いらないなら俺が食うから気を遣わなくていいぞ」

「いえいえいりますよ!貰えるものはなんでも貰っておきます」


むぅー。プレゼントはいいんですが理由が気に入りません。わたしはついでですか。



「そうか、じゃあ俺はこれで」

「え、もう帰っちゃうんですか?」


せっかくのチャンス、逃したくはない


「いや、ほかに用途かないし……部活もあるしな」

「そういわずにちょっと寄ってってくださいよ。お茶出しますし、仕事もたくさんありますよ~」

「いらねーよ。よくそれで引き止められると思ったな」

「えー先輩お茶好きじゃないんですかー。じゃあ仕事だけでもどうですか?」

「逆だよ!仕事がいらねーっての、じゃあな」

「じゃあ奉仕部に依頼です!手伝ってください!」

「うちは何でも屋じゃねーっていったろ。ただの仕事の手伝いじゃうちの部長はお断りなんだよ」


そういえばそんなこと言ってた気がする。ならば煽り作戦です。


「先輩は雪ノ下さんの許可がないと動けないんですか?」

「ああ。飼いならされてるからな」


く、手ごわい。


「じゃ、じゃあ……先輩個人にお願いは、ダメですか?」


裾をつかみ、うつむきがちに問う
これは効いたのか、少し顔をゆがめる


「俺は働かないと決めているからな」


わー、これでもだめか。絶望的に脈がないのだろうか。
でもクッキーくれるくらいにはわたしの印象は残ってますよね。



「ただ、ほんとうにやばくなったら頼れ。そのときはなんとかしてやる」

「…! ほ、ほんとですか先輩!約束ですよ!」

「お、おう。そんなやばいのか」

「えへへ~、やばいですよ~」

主に先輩のせいで。

「そんな笑顔なら大丈夫だな、じゃこれで」

「ストップです先輩!携帯!携帯貸してください!」

「あ?なんでだよ…変なことすんなよ?」

「といいつつ、渡しちゃうんですね。危機感薄いですよ」

「やっぱ返せ」

「ウェイウェイ!……はい!できました!わたしのメアドと電話番号です」

「ああ。おい……愛しの後輩って誰だよ。うちの妹まだ入学してないんだが」

「わたしのことですよ!?ていうかシスコンなんですね、ドン引きです」

「まあいいや。今度こそ、またな」

「はい!ありがとうございました、先輩!」



やりましたね。やりましたよ!遂に進展しちゃいましたよ!
いやー、がんばったなわたし。

うん、これでがんばれる。


これからの事を考えて思わず笑みがこぼれる

ようやく始まる、わたしの恋路


生徒会メンバーは遊戯王かな?
いろはすやっぱいいわ~

本田だけ女なのが謎
そこは杏子で良かったんじゃないかな

>>87
別にいいじゃないか

>>88
誰もダメなんて言ってないだろ
アスペかよ

>>89
なんでキレてんだ?
そうだなの一言で終わる話だろ?

ああ、そういうことか。
それより副会長がヒロインに思えてきた

副会長は原作でも八幡とさりげなく馬が合うというかなんかそんな感じだしな

おもしろい!

続きまだー?

副会長名前出てた気がするけど遊戯でいっか

いろはす~

>>62
>一方雪ノ下はゲームを興味深そうに眺めちょんちょん触っている。

ん?かわいい

これは傑作になる予感

生徒会のメンツでワロタww

本田(TS)

期待

副会長名前出てたのかやっちまったな




「ただいまー」

「あ、お兄ちゃんおかえりー」


冷えた体を温めるために炬燵に潜り込む
僕を癒してくれるのは君だけだよ、炬燵君。それとマッ缶。あと戸塚くらいかな。
だけ、といったな。あれは嘘だ。


あの後一色と別れ、部室に向かった
すでに由比ヶ浜は来ていて、雪ノ下と談笑していた


努めて平静にいこうと思っていたのだが、最初の一声が裏返ってしまった。
それに連られ雪ノ下もキョドってしまい、何ごとかと
由比ヶ浜に問い詰められたりしたが、なんとかいつも通りに過ごすことが出来た。



「ねぇーお兄ちゃん。雪乃さんとどうだった?」


ニヤニヤしながら聞いてくる


「あ?なんもねーよ」


「えー!なんにもないことないでしょ、なんか進展は?」


「なんだよ進展て……。別にいつも通りだったぞ」


その返答に小町は、あれー?おかしなー?なんて言っていたが、
なにもおかしいことなんかない。俺にとって、おそらく雪ノ下にとっても、
あの出来事は気恥ずかしいものではあったが、自分が一歩進むためのものだった。

だから、特にそれを引きずることもなく受け止められた。受け入れた。



過去の自分が、今の俺を見たらなんと言うだろうか。
無謀だ。学習しない。勘違い乙。なんて言うかもしれない。
もしかしたこの先、何も信じられない状態に戻ることもありえる。

だが、そんなことに対して、心の中でフッと笑う。

俺は卑屈で、陰湿で、劣悪だ。つまり闇属性。
闇属性の孤独な傷心主人公。なにそれかっこいい。俺が編集者だったら速攻でボツだね!
傷ついても、その分なにか得られれば文句がない。

開き直りではない。失敗しても、それはいい経験だとか、
青春の1ページだとかいうつもりもさらさらない。


ただ、純粋に欲しくなってしまったから。わがままを言う子供のように。


ずっと焦がれてきたもの。何度も諦め、そのたびに何度でも手に入れたがる。


傷をつけずに生きていくなんて不可能だ。だからその分の見返りがあるべきなのだ。


今まで傷を最低限に抑える生き方をしてきた。それでも、0ではない。


だから、傷の量関係なしに、見返りを求めようと思った。ただそれだけのこと。




「ふふ。小町はね、嬉しいよお兄ちゃん。成長したね~」

「何様だお前は。ていうか勉強はどうした、もう後がないぞ」

「もー!受験生にそういうこといったらダメでしょーが!やる気がなくなる以前に心が折れるよ!」

「そうなったら俺が癒してやるよ。今の八幡的にポイント高い」

「うわぁ……、今のはポイント低いよ。ちょっと気持ち悪い」


え?まじで?
やばい心折れそう。


「でも、妹である小町には効果ばつぐんだよ!あ、今の小町的にポイント高い!」

「はいはい、たかいたかい。じゃあ俺は自分の部屋に籠るとするかね」

「ほいほーい」


最後に一言、勉強がんばれよ、と言おうとしたのだが、頑張ってるやつにそれは禁句だったな。
だから、妹に対して適切な言葉を使おう。


「小町、愛してるぞ」

「……へ?……ふぇええええええええええ!?」


謎の小町の絶叫を聞きリビングをでる

なんだよ、おまえが言えって言ったんじゃねーか……




  * * *



自室にて、ラフな格好に着替え、ベッドにダイブする
ふと、携帯を見てみるとメールが届いていた


「どこからだ?」


我ながら、"誰"ではなく"どこ"で思うあたり自分の友好がないのがうかがえる


「あん?一色?……さっそく泣き言いってんじゃねーだろな」


メールの相手は今日、アドレスを交換したばかりの一色いろはであった。(登録されてた名前は修正した)


『こんばんは先輩!特にこれといった用もないんですけどメールしてみました☆』


なんなんだこいつ。まあ、特に用もないならスルーでいいな、スルーで。


と、携帯を放り投げ、読みかけの本を取り出す



――――――
―――――
―――


本を読み進めて数分、携帯のバイブ音が聞こえてくる

確認してみると、予想通り一色だ


『先輩メールみました?暇だから見てますよね?返事くださいよー』


「はぁー……。用もないのになんて返せばいいんだよ」


一言
『見た。用がないなら話すこともないだろ』
とだけ送る

すると、ものの数秒で返信が来る

由比ヶ浜といい、なんで女子校生っていう生き物はこうメールが好きなのだろうか。


『ぶー、冷たいですよ先輩……泣いちゃいます。ていうかそれ、コミュ力低すぎですよー』


うわっ……わたしのコミュ力、低すぎ!?
このネタ前にもやったな。


『いつも通りだ。あと、あざとい。こちとら、メールする相手なんてそうそういないからな』


『えー。結衣さんとか雪ノ下さんとやり取りしてるんじゃないんですかー?』


『たまに由比ヶ浜とすることはあるが、そんな頻繁でもないし、雪ノ下に至っては連絡先知らん』


あとは平塚先生くらいだが、あれはやり取りというよりは、
業務連絡とか、個人の日記を無理やり読まされてる感がある。


『……へー、意外です。ところで先輩、明日の放課後暇ですか?
 暇ですよね、ちょっと付き合ってほしいんですけど』


なんか興味なさげなんですけど、聞いてきたのあなただよね?別に興味持たなくていいが。
てか、さっきばっちり用がないって書いてあったよな。確実に今思いついただろ。


『放課後は部活だから無理だ。知ってるだろ』

『でも、依頼なんてほとんど来ませんよね?大丈夫ですよ』


まったくもってその通り。



『どこにいって何するかによる。仕事と関係あるならついてく』


これに対する返信に少しかかったのか、間が空いてからメールが届く


『もちろん仕事です。今、受験関連で仕事中なわけですけど、少し相談事がありまして。
 話が長くなるので、直接話をしたいんですけど……駄目ですか?』


……どうするかな。確かに部活は暇なことが多いし、俺一人かけたところで問題ない。
依頼を受けるかどうか決めるのは雪ノ下だ。俺が直接依頼人に合わなくても大丈夫だ。

…仕事、大変そうだしな。とりあえず、話だけでも聞いてみるか。


『わかった。じゃあ、集合場所はサイゼとかでいいか』

『ありがとうございます。というか、同じ学校にいるんですし、
 校門集合とかでいいじゃないですか…。サイゼはなんかあれですけど賛成です』

『じゃあ、そういうわけで。おやすみ』

『ぶった切ってきましたね…。まあいいです、おやすみなさい』


決してもう寝る時刻、というわけではなくあいさつ的な意味だ。


仕事内容はなんだろうか。めんどうじゃないといいんだけどなー。
大体俺がやる仕事は、面倒な気がする。というか仕事自体がめんどい。


おかしいなー。
仕事から逃げているはずなのに、逆に囚われている気がするよー。




  * * *



「あ、せーんぱい!」

「……なんでいる」


放課後、今日は部活を休むと伝え、校門を出ようとしてたところである。
なぜかそこで待機していた一色に捕まってしまった。


ちなみに、奉仕部の2人には何事か聞かれたが、特に隠す気もなく正直に話してきた。

最初は訝しんでいた彼女たちだったが、まだやるか決めてないということと、
内容によっては頼ってもいいかと聞いたところ、快く承諾してくれた。



「だって、店で合流って完全に二度手間じゃないですか。
 どうせ、前みたいな一緒にいて恥ずかしいとかいう理由でしょうけど、
 店の中で合流するのも恥ずかしいですよ。あと駅前ならどっちみちうちの学生多いですし」


ぐぬぬ……。こやつやりおる!


「……たしかにそうだが、二人一緒に歩いてるところを見られる方がやばいだろ。
 言っとくが俺は、嫌われ者だぞ」

「全然やばくないです。それに先輩のことなんか誰も見えてませんよ、自意識過剰です」

「おい、俺は透明人間か」


もしくは、幻のシックスメン。


「とにかく、もう合流しちゃったわけですし、今更時間ずらすなんてさせませんよ?」


ニコッとはにかみながら歩き始める。
やめろよ、可愛いじゃねーか。


「……つーか、いいのかよ。葉山とかに見られでもしたら」

「今は部活中なので問題ありません」


そういえばそうだったな。
こいつは部活出てるのだろうか。




しかたなく、自転車を押して歩く


「一色、カバンこっちよこせ」

「え!?な、なんでですか?なにするつもりですか!?」

「別になんもしねーよ……。チャリあるし、カゴにいれてけばって意味だ」

一色は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に変わる

「先輩、あざといですよ。もしかして口説いてるんですか?すみません今は無理です」

「うぜぇ……。ま、べつにいいならかまわねぇよ」

「まあ、お言葉に甘えるんですけどね」


というと自分のカバンを自転車のカゴに詰める

おい、今の無駄なやり取りはなんだったんだ。

そんな風に思いつつもこんなのも悪くはないな、なんて思ってる俺がいた




  * * *


「さて、何食べましょうか。甘いものですかね。それともガッツリいっときます?」

「ドリンクバーくらいでいいだろ……。そんなかかるのか」

「そりゃかかりますよー、今日は帰しませんからね?せーんぱい」

「あざといっての。ちょっと妹に飯いらないって断りいれてくる」

「え?……あ、はい」


といって席を立つ


残された一色は小さな声でつぶやく


「にへへ~。ほんと先輩はお人好しですね~」


そう言った一色の頬は、だらしなく緩んでいた


「しかし、どうしますかね。まさか時間かかるっていうのを信じるとは思いませんでしたからねー。
 なんとかして引き延ばさないと、先輩の妹さんに悪いですねー」


そこには、今更ながら仕事の内容を何にしようか悩んでる生徒会長がいた



――――――
――――
――


「悪いな、少し時間かかった。妹のやつにダル絡みされてな」

「いえいえ、おかげで考える暇もできましたしー。妹さんと仲いいんですね~」


俺がいない間仕事のこと考えてたのか。なかなかきちんと会長やってるんだな。



「そうか。まあ、小町ほどかわいい妹ならそりゃ可愛がるだろ」

「……シスコン。そこまで言われると気になっちゃいます。どんな子なんですか?」

「あー、一言で言うとお前みたいな感じだ」

「え、え?せ、せんぱい、こんなところで急に告白ですか!?」

「は、ばっかちげーっての!性格の特徴がだいたい似てるってだけだ。実際は全然違う」

「でも、わたしを可愛がりたいって意味にも聞こえます。
 すみませんまだちょっと恥ずかしいんで無理です」

「なぜそうなる。あーもうこの話はやめだ。つーか仕事しに来たんだろ」

「お、せんぱ~い。やる気満々じゃないですか~」


う、うっぜぇ……




  * * *



「で?具体的になにするんだ」


「えっとですね、せっかく私が生徒会長になったんですから、他と違うことやりたいんですよ。
 1年生にして仕事をきちんとこなし、ユニークな発想とイベントを思いつくなんて、
 ポイント高いじゃないですか?」


そこらへんが小町っぽいんだよな。小町のほうが100倍可愛いけど。


「そこで思いついたのが、我が校を受ける受験生の緊張を和らげるようなイベント。
 終わった後の労いのイベントって感じなんですけど、どうでしょう?」


なるほどな。確かに受験てのは将来を決めるであろう大事なイベントだ。
故に緊張するし、体調も崩しやすい。それを和らげることで万全の状態で試験に臨んでもらう。
総武校の印象もよくなるし学校側としても、受験生にしても双方にプラスの効果を得られる。
まさにWin-Winの関係だね!


労いのイベントというのもいいだろう。
張りつめていた緊張感をなくし、リラックスさせることができる。

しかし、このどちらにも穴がある。


「発想自体はなかなかいいな。だが問題もある。まずは前者の案だが、
 緊張を和らげるというのは非常にいい。では、緊張を和らげうるイベントとは何か。
 インパクトの強い物か、そうでないのか。そうでない場合あまり効果がない場合がある。
 それに、インパクトが強いと覚えたことを忘れかねない。実際はそんなことないかもしれないが、
 そこは問題じゃない。逃げ道を与えてしまうことが問題なんだ。万が一受験に失敗した場合、
 あのイベントのせいで内容が飛んだ、どうしてくれる。なんて責任問題になりかねない」


「う、うわぁ…。それはひどい話ですね……」



「次に後者だ。アフターケアまでしてくれるのは本人たちにとって嬉しいだろう。
 ここまで頑張ってきて、やり終えた人たちにプレゼントを与えるというのは、
 好印象だし、いい気分転換だ。だが、失敗した人はどうする。自身がない、
 落ちたかもしれない、そんな不安な気持ちを抱えた人たちからしたら、
 終わったねーなんていって騒いでる人たちがいるのは気に食わないだろ。」


「な、なるほど……。先輩って頭いいんですね~見直しました」

「……このくらい誰でも思いつく。で、それに対するプランはあるのか」

「ないです」

「は?」


おい、こいつ本気でただ自分がやりたいことやるだけだったのかよ……


「あ、ち、違うんですよ!?私ひとりじゃ厳しかったので、このプランを考える
 パートナーが欲しかったんです」

「そうだな、確かにひとりで考えるのにも限界がある。自分じゃ気付けない
 ポイントってのはあるからな。そのために会議があるわけだし。」

「で、ですよね~。と、いうわけで協力してほしいんですけど……お願いできますか?」


……乗りかかった船だし、その対象には小町も入るからな。
あの毒虫は知らん。勝手に落ちろ。


「わかった、手伝おう」

「ほ、ほんとですか!?」

「ああ。しっかしそうなると、俺だけじゃ厳しいな……。
 雪ノ下たちにも手伝ってもらうとするか」

「え…あ、はい。そのほうがいいですよね……」


…? ああ、こいつ雪ノ下が苦手なのか?


「雪ノ下たちとは俺を通してやってけばいい。お前は生徒会メンバーをメインに動いてくれればいい」

まあ、それが普通なんだが。
しかし、一色の歯切れは悪い。ぼそぼそとなにか呟く

「やー、そういうことじゃないんですけどー……。わかりましたそちらはお任せしますね」

「ああ、了解した」

「せんぱい……、ありがとうございます」

「気にすんな、そういう部活だ」


と告げると、少し困ったような笑い方をする


「頼りにしてますよ、先輩」



そのあとは軽いアイデアを出していく作業に移り、ある程度でたところで解散ということになった



  * * *



「もう、暗いし送ってくぞ」

「いえ、そんな遠くありませんし、気にしなくて大丈夫ですよ」


ん?てっきり口説いてるんですか?とか聞かれるかと思ったが。
まあ、はっきり断られてるのを無理して送る必要はないな。


「そうか、じゃあまたな」


と、背を向けて走り出そうとすると、控えめに背を引かれる


「おい、一色?」

「先輩……。雪ノ下さんとか、結衣さんのこと…どう思ってます」


どう思ってるとはどういうことだろうか。
どんな人物かだろうか。あるいは…
いやいや、とかぶりを振る


「雪ノ下は……何でもできているようで、実はできない。不器用な奴、て感じか。
 由比ヶ浜は……アホだな。うん。でも、そのアホさになんども救われた。
 俺も…雪ノ下も…」

「…そうですか。じゃあ、わたしは?」

「おい、さっきからどうしたんだ?おまえ――」

といったところで一色にさえぎられる

「答えて…くれませんか?」



といわれて考える

俺にとって一色とはどんな存在だ。

生徒会長に半ば無理やり推薦したことで負い目がある。

いや、ちがう。こいつはもう大丈夫だ。生徒会長として充分やっていける。

ならば、負い目を感じる必要もない。

じゃあ、なぜこいつを手伝う?

奉仕部だから。仕事だから。……はたしてそうだろうか。

それならば雪ノ下たちと共に話を聞けばよかった。

俺が個人的に話を聞きたかった?

……どうだろうか。

一つだけ思い当たるとしたら――――



「ほっとけない、可愛い妹……みたいな存在…かもな」



最後のほうに行くにつれ、声は小さくなっていったが、一色にはしっかりと聞こえていたようで


「なんですかそれ。口説いてるんですか?」


その声音は、いつもの明るく、あざといものに戻っていた


「ちげーよ。じゃあもう大丈夫そうだし、いくな」


「せんぱい」


呼ばれて振り向こうとするが、それは拒まれた
後ろからなにかに抱き着かれている。いや、この場において一色意外に思いつかないのだが


「お、おい?一色?」


なにか言ってるようにも聞こえるがその音は小さく、外の喧騒もあってか聞くことは叶わない


「えへへ。ちょっと感極まっちゃいました~。それじゃ先輩、おやすみなさい!」


と言って、その場を逃げるように去っていく


俺はうるさく、鳴り止まない心臓を誤魔化すように全力で自転車を漕ぐ


一体何のつもりだったのだろうか。最後のほうの一色はなにかおかしかった


「……あー、さぶ」


少し、頭を冷やしてから帰るか。



途中MAX缶コーヒーを買い公園に寄っていく
暖かい缶を手の中で少し転がし、一気にあおる


「……あっま」

その日飲んだコーヒーは、いつもより甘く感じた



終了
いろは視点で甘いやつ行こうかと思ってたけどなんかシリアスになっちゃったな

十分甘いゾイ

終了って完結のこと?今日の投下分が?

いろはす可愛すぎていろはすが甘いわ


原作読んでるけど副会長の名前なんか覚えてないからへーきへーき

今日の投下分ね

ここで完結かと思っちまったぜ
次も期待してる

期待

いいな? 面白い

いろはすのシーンはいつ終わらせても良い感じだな

面白いな
所々原作に似てる部分があって読んでて楽しい

いろはす~

なにこれくっそ可愛い

クッキーには多少塩を混ぜ込んだほうが美味しくなるんだぜ

八幡の誕生日



やっちまいましたね。
あれはさすがにまずかったですかね。


別れ際に、自分がしたことを思い出しつつ、うわー、なんて言いながらごろごろと自室のベットを転がる


いやー、だって仕方ないじゃないですか。なんかそういう雰囲気だったじゃないですかー。


空気に流されて行動するのは、これで二回目
一度目は、葉山先輩への告白


ほんと、先輩はわたしを狂わす。
自分自身の行動に、驚かされる。


「ふへへ、かわいい妹~。えへへへ~」


先輩に言われた言葉を反芻しては、湧き上がる気持ちを抑えられず、枕をぎゅっと抱きしめる


はあ~本格的にわたしは先輩にお熱のようです。
でも、いまいっても絶対無理ですからねー。我慢我慢。


「あれ?妹みたいな存在ってよく考えたらマイナス?」


よく聞く話で、『妹のように可愛がる』とか『妹みたいな存在』っていうものは、
恋愛対象になってないようなことがしばしばある。

といっても、友達と話を合わせるために読んでいる恋愛系の少女マンガの知識だったりで、
実際にはわからない。だが、あり得る話だ


先輩に妹がいるのは知っているし、わたしに似ているとも言ってた。
ということは、今の評価はまずい気がする。
でも、思っていたよりはいい結果だった。
まだ先輩のことをよく知っているわけじゃないけど、拒絶される可能性は十分あった。

それを考えると、出だしとしてはいいのかもしれない。

今はそれでもいいだろう。まだ始まったばかり。
とりあえずは余韻に浸りたいと思った。


「は~、切ないです。せんぱいー」


悶々とした気持ちを抱えたまま、気がつけば微睡の中にいた



  * * *



朝、学校にて
先輩に会えないかな~なんて思いつつ、昇降口周辺を見回していた

すると偶然にも、その姿を発見する


「あ、せんぱ―――」


しかし、その言葉は最後まで言えなかった


「よう」

「あら、おはよう。比企谷くん」


その場に雪ノ下雪乃の存在があったからだ


「昨日、一色に仕事を頼まれてな。ちょっと俺一人じゃ厳しいから力を借りたい」

「ふふ、わかったわ。それにしても、仕事嫌いなあなたが積極的に仕事をしにいくなんて、
 皮肉な話ね」

「まあな。むしろ今仕事の辛さを経験することで、将来仕事に就くもんかと決意するまである」

「なぜそうなるのか全く理解できないのだけれど……」

呆れたように溜息を吐く


「俺が理解しているから何も問題ない」

「問題しかないのだけれど……。ほんと、小町さんが大変ね」

「そうだな、うまく専業主夫になれなければ小町に養ってもらうしかないからな」

「それはどうなのかしら……」

彼女はふいに笑うと

「あなたのことだから、なんだかんだ言いながら働くのでしょうけど、
 もしそうなったら私が面倒を見てあげるわ」

先輩は顔を赤らめ、焦ったように言う

「お、おい。変な勘違いされるぞ」

「え?……あ、あぅ、ち、ちがくて、その……」

「いや、いい。わかってる」

「……わかってないじゃない」


軽くむくれて、小さな声でつぶやく


てっきり慌てた雪ノ下さんが先に行ってしまうのだと思っていたが、
二人はそのまま校内を歩いていく



その光景をみて、胸が絞めつけられた


「……っくはぁ。…きっついなぁ」


先輩、いつの間にあんな仲良くなってるんですか。
ついこの間までびみょーな感じだったのに、進むの早すぎですよー。


「……かなわないなぁ」


しばらくその場を動けず、思考が停止していた


もたもたしてられない、ってことですよね。
しかしあの人相手に駆け足では意味がない。
どうすればいいんだろう……



先ほどとは一転、わたしの気分はどん底に落ちていた



  * * *



「おい、またか会長」

「はやかったですねー。昨日まではうきうきしてたのに」


現在、生徒会室でわたしは机に伏せていた


なんだか、ここがわたしの安らげる第二の場所な気がする。
第一は当然先輩。


役員たちとは友達、のような間柄ではないが、それなりに気を抜ける人たちだった
取り繕わなくてよくなったのは、わたしの想い人が露呈し、距離が近まったからかもしれない


「だってー、衝撃的なものをみせられてー、そりゃこうもなりますよー」

「……別に何があったか話せとはいわんが、相談事ならいつでも聞くぞ。
 仕事に支障が出るからな」

「やっぱツンデレだねー」

「なかなかテンプレの人だったんですね、副会長さん」


この微妙な関係が妙に落ち着く
打ち明けてしまおうか、とも思ったがそれに意味はない


そうだ。今はこの仕事をどうするか決めないと。
グダグダしてる暇があったら、やれることをやる。

わたしが先輩に近づけるチャンスは、今はこれしかない。
だからちゃんとやんなきゃ。


キリッとした表情をみせ、役員たちに口を開く


「みなさん聞いてください。一つイベントを考えてまして―――」


いろはすは悲恋が似合う
けどうまく行って欲しい気もする

やばい、甘すぎて死ぬ…

いろはす~

八幡的に妹みたいってすごく良い評価だと思う

むしろ最上級の評価と言ってもいいと思うがな

小町と同格って事はつまり、戸塚に匹敵するってことだよな

結婚できる間柄で1位まである

ちんこくれよ。ヒキタニくん。

は?何いってんのお前?夏の暑さにやられたのか?

俺は君にヤられたいよ。比企谷。

マジで大丈夫か?

八幡。僕、八幡のおちんちん欲しいな。

あんたたち、いい加減にしてくんない? てか隼人も悪のりしすぎ。

はやはちとつキター

擬態しろし

今思うと八幡を落としやすそうなのって、いろはすぐらいだよなー

ゆきのんは守りだし
ガハマはゆきのんに気を使うし
川なんとかさんはブラコンだからなー

いろはすちゅよしゅぎぃー

結依って雪ノ下に気を遣ったことなんかあったっけ?
原作見てて逆ならよく見掛けるけど

気を遣うというか空気の読み過ぎだろ




「――――ということなんだが」


奉仕部にて、昨夜一色に頼まれた仕事を2人に説明した


「なるほど……。彼女、しっかり仕事をしているのね」


「ね!……一時はどうなるかと思ったけど、ちゃんと会長やれてるんだ」


ツッコむところそこかよ……
確かに、自分からイベントの提示してくるのは意外だったが。


「で、どう思う」

「そうね、現状だとあなたの言ったように失敗する可能性が高いわ。
 なにかそれを打破するものを見つけないといけないのだけれど」

「あ、じゃあさ、自由参加で試験前日にっていうのはどう?
 自由なら参加した人の責任だし、こっちに被害は来ないんじゃない?」


ガハマさんがちょっと黒いこと言ってる……
だが、それではまだ弱い。


「それも無理でしょうね。試験前日というのは最後の追い込みをしたい大事な時期なわけだし、
 リラックスさせたいという目的のイベントなのだから、全員参加型でないとあとあと問題が出るわ」

「人が集まるかどうかも怪しいしな。やるんなら当日ちょっとした息抜きになるモノになるが……」

「それだとやはり、そのイベントのせいで落ちた…なんて話も出てくるでしょうし」

「うわー……。なんか難しいね」


雪ノ下は小さく嘆息し、由比ヶ浜はちょっと引いているようだ。



「……なんか悪いな、勝手に依頼受けてきて頼んじまって」


というと二人は微笑む


「気にしないでちょうだい。これは奉仕部の活動なのだし、あなた一人にやらせる方が不服だわ」

「そーそー。……あたしたちもヒッキ―に頼られて嬉しいんだよ」


別に私は……、なんて雪ノ下が続け、またまたーなんていいながら由比ヶ浜がじゃれつく

……別にいいんですけど、よそでやってもらえませんかね。美少女二人の絡みなんて目の毒だ。



「そうか、ありがとう。んで、話を戻すが――――」



そのあともいくつか意見を出しては、問題点を指摘するという作業が続いた
昨夜同様、有用な意見は出せず、改めてこの依頼の難易度を実感した


なにせ前例がない。どこかにはあるのかもしれないが、手元に情報はなく、
また、俺や雪ノ下まで知らないとなればそれが上手くいったものではない、と想像できる。


とりあえず、一旦生徒会と連携を取った方がいいのだろうか。向こうでも意見交換はしているだろう。
……一色が、雪ノ下を苦手としているようなのが気がかりだが、そうもいってられない。




「……直接生徒会と話し合うか」

「そうね……。生徒会主催なのだし、向こうの意見も聞きたいところね」

「じゃあ今から行く?あたしが連絡取ってみるよ」

「いや、いい。俺から連絡入れる。受けたのは俺だしな」



由比ヶ浜は、そっか、といって携帯をしまう。が、違和感に気付き慌てたようにまくしたてる


「って、ヒッキーいろはちゃんのメアド知ってるの!?いつ?どこで!?」


雪ノ下もまた怪訝そうにこちらを軽く睨んでいる


「別に驚くことじゃねーだろ。昨日だよ。連絡先知ってた方が連携取りやすいからな」

「……そうね。一色さんも、あなたとなら気兼ねしなくていいでしょうし」


その視線は相変わらず鋭い

こわいからやめてくれ。由比ヶ浜もなにか納得いっていないようでプクーッと頬を膨らませる
つついてやろうか。や、恥ずかしいんでやりませんけどね。


とりあえず一色にメールで伝える
するとすぐに返信が来て、今すぐにでもやりたいとのことだった


その旨を二人に伝え、共に生徒会室へ向かった



  * * *



「えー、皆さん今日はお集まりいただきありがとうございます」

「そういうのいいから。普通に始めてくれ」

「むっ!先輩、これはわたしの生徒会長としての進行の練習なんですよ!」

「確かに実践してみることは大事ね」

「ですよね~!や~い先輩怒られてやんの~」

「いや、別に怒られてはいないだろ……。むしろ今のお前の態度に怒ってるぞ」

「ええ!?すみませんでした!」

「……いえ。始めてもらえるかしら」

「はい!それではまず、今回の議題についてですが――――」



雪ノ下が苦手なのかと思ったがそうはみえない。
それを隠すことができるのも、彼女のスキルの一つなのだが。
進行もしっかりできている、他の役員とも以前のような距離はないようだ。



ここまでのまとめのような話が終わり、会議は次の段階に進む



「それで具体的な案はまだでてきてない感じです…」

「そうね。では、考え方を変えましょう。これまでは先に気分転換になるようなアイデアを
 考えていたわけだけど、問題点をまとめてそれを潰していくやり方にするわ」

「そうだな。とりあえず今まで出た問題点をまとめちまうか」


皆、思いつく限りの問題点をあげ、
書記の子がそれをホワイトボードに書き上げる


リストに上がった大きな問題点はこうだ。


・受験に失敗したときの責任転嫁

・成功者と失敗者を引合すことで起きる不和

・個々に対し不平等になる可能性


細かい問題も多々あるが、大体に共通する問題はこの3つだ。


「ほへー。案外まとめてみるといけそうだね」

「ばっかおまえ、これを消化するのが大変なんだよ」

「……やっぱり、無謀ですかね」

「どうだろうな。……少なくともいい試みではあるんじゃないか」

「……せんぱい」

「んん……話を戻してもいいかしら」


ジロリと一睨みされたあと、会議は続行される




  * * *




結局、あれからもうまい解決策は出てこなかった。
まだ初日だしこんなものだろう。と言いたいところだが、
イベントの規模にもよるが、このままでは間に合わなくなる。


とりあえず今日のところは解散し、帰宅した

リビングに入ると、炬燵に潜り込む小町を発見する


「おーい、風邪ひくぞー」

「寝てないからだいじょうぶー」


それは寝落ちしそうな奴が言うセリフだ。ソースは俺。


「ちゃんと勉強したのか」

「してるよー。今は休憩中なのー」


そうか、休憩中ならしかたない。
俺もよく休憩を挟んだものだ。あれ?だめじゃねそれ。



……そういえば、受験生側の意見というものを聞いていなかった。小町に聞いてみるか。




「なあ小町」

「なにー?」


こいつ本気で寝ちまいそうだな。言葉数はいつもより少ないし、気怠そうだ。


「……受験当日に緊張感を紛らわすようなイベントってうれしいか?」

「えー?なに?なんかやるのー?そいえば最近帰り遅いよねー」

「ああ。受験生のためになにか出来ることはないかって、生徒会長さんに依頼されてな」


というと小町はガバッと起き上がる


「うーん、小町的には嬉しいんだけど、やっぱり追い込みたいだろうし、試験ぎりぎりまで
 暗記モノとかやりたいと思うよ?」

「だよな。じゃあ試験後に、お疲れ様的なのはどうだ?」

「それはダメだよー。試験にうまくいかなかった人たちが可哀想だもん」


やはり、俺たちで考えうる問題は、受験生の間でもトラブルになりかねない…か。


「ねえお兄ちゃん、それって当日じゃなきゃだめなの?」


「ん?いや、前日だと同じように追い込み期間だろ?それに当日の緊張感を和らげたいとなると―――」


「そこだよお兄ちゃん!そこで間違ってるんだよ!」


途中で言葉を遮られ小町に指を指される。やめなさい、行儀悪いわよ。



「あん?どういうことだ?」

「ちっちっちー、お兄ちゃんもまだまだ甘いね!前提を間違えてます」


……ちょっとむかつくが、ここは素直に聞いておくべきだろう。
小町の言うことだから聞いてあげるんだからね!あ、今の八幡的にポイント高い。


「たしかにみんな緊張するだろうし、それを和らげたいっていうのは凄くありがたいよ?
 でも、緊張感って悪いことばかりじゃないでしょ?」

「……まあ、一理あることもある」


緊張というのは自分の行動を制限するものであるが、緊張感というのは闘争心に近い。
緊迫した空気の中で自分の力をどれだけ出せるかの勝負どころである。
モチベーションといってもいいのかもしれない。


………いや、まて。モチベーション?


気付くと小町がその通り、といった感じに頷いている


「感のいいお兄ちゃんはもう気づいたと思うけど、
 モチベーションを上げるイベントのほうが盛り上がるし、俄然やる気がでるんだよ!」


「……つまり、当日にやる必要はなくて数日前に、ここが総武校のいいところ、
 というのを紹介してこの学校に入りたいと思わせることが大事なわけか」


「そゆこと!」


なるほどな、それは盲点だった。たしかにアプローチを間違えていた。
この前それを平塚先生に教わったばかりなのに、もう忘れていた。



「あとね、試験後の受験生のお疲れ様パーティーとかはね、各自でやると思うし、
 学校側はあまり考えなくてもいいんじゃないかな」


それもそうだな。学校主催の固っ苦しい物よりも、
友人と勝手に騒いだ方が盛り上がるし気も抜ける。

ぼっちには関係ないですけどね、フヒヒ。


「……ありがとな、小町。ちょっと息詰まってたから助かった」

「おお!お兄ちゃんが素直に感謝するなんて……今日はお赤飯だね!」

「いや、いみわかんねーから……」


別に珍しいことじゃないだろ。
……え?おれって感謝できる人間だと思ってたけど違うの?


「んじゃ、さっそく作戦考えるとすっかな」

「おー、がんばれお兄ちゃん!小町のためにもね!」


そういや一色のやつ、俺が前に言った妹のためにもいい学校にしてくれ、
ってやつを覚えていて今回のイベントを思いついたのだろうか。まさかな。


可愛い妹の頭を一撫でしてやると、えへへーなんてかわいい声を出す


………さて、これで方向性は決まった。あとは何をやるかだ。


一旦終わり

無駄に話展開させたせいで消化が大変なんだが
いろはす無双はまだまだ先になりそうだ


長くなるのは大いに結構
嫉妬のんかわいいよ

ぷくーヶ浜さんもかわいいので個別イベント用意しましょうや

美人でおっぱい大きくて裏表少なくておばかなところも可愛いガハマさんとの仲にさらに焦るいろはすはよ

時間かかっても丁寧に進んでった方がいい 面白いからこのままで

乙乙

うんこの苦みが食欲をそそる

>>161
誤爆か?

キチガイを構うなよ

ここのSSが楽しみすぎて眠れない…



  * * *


再度生徒会室に集まり、方針の変更を促す
そちらの方が現実的かつ、対象である受験生直々の提案だ
全員そのことに不満は無いようで、新しい議題を前に議論がなされる


「ただ総武校の見どころを説明するだけでは効果はないでしょうね」

「ああ、それに学校説明会とか最低限の知識は大方しってるだろ」


副会長がふむ、と何か考える


「となると、この学校の特色を実際に触れてみてもらうのがいいんじゃないか?」

「あ、それいいですね!…部活の体験入部、とかですかね?」

「まあ、ありっちゃありだな。つってもうちの特色って言われても他になにがある」

「正直、前面に押し出せるようなものはあまりないのよね……」


雪ノ下は困ったように顔をしかめる



「う~ん、うちの見所か~。あ!はやとくんとか!」

「おい、あいつは動物園のパンダか。つか、おい」

「え?あ、やば…」

「……パンダ」


なんか雪ノ下さんが反応してた気がするがスルーで。

それよりも葉山の話が出て一色は…


「それいいですね結衣先輩!目玉となる先輩がいれば女子はより燃えるでしょうし、
 問題は男子のほうですねー。あ、かわいい生徒会長なんてどうでしょう?先輩!萌えませんか?」

「いや…俺に聞くなよ。まあ釣れるんじゃないか?」

「釣れるって……なんか嫌な言い方ですね。でも、遠回しにかわいいよ、いろはって言ってますよね?
 人前で口説くなんてさすがですね。でも仕事に集中したいので無理です」

「お前の自意識過剰っぷりは俺もびっくりだ。……おまえらもこっちみんな」

「見てないわ。自意識過剰なんじゃないかしら」

「べべべ、別にヒッキ―のこと見てても何も得しないし!?じーしきかじょー?だよ!」


言葉重ねるのやめろ。恥ずかしくなるだろ。
恐らく意味を理解してないであろう由比ヶ浜さんにはあとで教えるとして、
一色のやつは、あまり気にしてないみたいだな。


「……おまえがそれでいいんならそれでいこう。葉山のやつも頼めば断らないだろ」

「じゃあ目玉は決定ですね。でも、そうなるとサッカー部の紹介になるんですかね?」

「いや、どうせなら"体験入学"だな」


雪ノ下はふむ、と顎に手をあて続ける


「それなら自分が入学したらどういうことをするかのシュミレートができて、
 個々人のモチベーションもあがるわね。比企谷くんにしてはまともな案がでるじゃない」


HAHAHA ! まるでいつも卑屈な案しか出してないみたいじゃないか! 自覚はある。



「今回はトラブルとかじゃないしな。正攻法でなんとかなるならそうするさ」

すると雪ノ下は言いよどむ

「そうね、でも。……トラブルのときでも、あまり無茶…しないで」

「……善処する」

由比ヶ浜はにっこり笑うと

「大丈夫!3人でやればうまくいくから!」

「……そうね。ありがとう由比ヶ浜さん」

優しげな顔を見せると由比ヶ浜はまたじゃれつき始める

……話がそれたな。


「んで、具体案だが。まず受験生を男女で分ける。男子は一色に、女子は葉山に頼んで
 校内を見学してもらう。部活動も回ってもらうがテニスとサッカーをメインにする」

「あ、テニスならさいちゃんいるもんねー」


そのとおり。戸塚を衆目に晒すのは気が引けるが、あの天使っぷりをみせれば
男女問わずプラスになるだろう。


葉山は女子にはもちろんプラスであることは間違いないが、男子からはヘイトを集めかねない。

またその二つは目を引くものがあるので、最後にまわす。



「運動部のほうはそれで構わない。だが文化系に花が無くなる。
 そこで雪ノ下と由比ヶ浜にそっちの紹介を頼みたい」

「ええ、かまわないわ」

「うぇ!?う、うんやってみる。ゆきのんと一緒なら大丈夫」


その言葉に照れているやつがいたが、また逸れるのも癪なのでスルー



「よろしく頼む。あとは好きな部活を体験させたり、自由行動で好きに動き回ってもらう。
 もちろん監視の行き届く範囲でな。部活もハードなことさせてけがをさせないよう監督する」


副会長がそれに一言


「監督は生徒会と委員会が責任をもって行う。あとでそれに対する打ち合わせもしておこう」

「ああ、頼む」


しかし、なにか足りない。部活動も学校の特色の一つであることに違いはない。
だが、それではまだ、わざわざ受験前にやるようなものではない。


「あの~、もひとついいですか」


一色が控えめに手を挙げる


「どうしたのかしら?」


「えっと、なんか物足りないなって感じて……。あ、悪いとかじゃなくてですねー」


少し歯切れの悪い一色だったが、顔を引き締め一つ、提案する


「なので、全体で集まってLHRみたいなことをやってなにか団結できるようなことをやらせたい…みたいな」


LHR
即ちロングホームルームのことである。
略すとなんかの団体みたいだがなんてことはない。大体この時間に修学旅行関連だったり、文化祭の出し物
についての話し合いをしたりする。
この時間は、学生にとって貴重な時間で、クラスが団結するまたとない機会だ。
いつもは小グループで行っている遊び。その規模が大きくなればなるほど、
なにかを成し遂げた後の気分はいい物になるだろう。

ちなみに俺はその団体の外にいる。
別に気にしてないけどね?ほら、そういうの苦手だし。


雪ノ下は満足そうに頷き、賛成の意を唱える


「いいと思うわ。出来ることは限られてくるでしょうけど概ね賛成よ」



そういえば今回の彼女は、あまり口を出したり、仕切ったりしていないことに気が付いた。
いつもならあれこれ的確な指示やらしそうなものだが、一色を試しているような感じだった。

ふと、奉仕部の理念というものを思い出す。

腹を空かせてる人に餌を与えることはしないが、餌の取り方を教えてやる


自分の行動を振り返り、反省する。

少し手を出し過ぎただろうか。本来なら一色にうまく考えてもらい指揮させるとこなのだが。


「……っていっても、具体的なことは何も言えないんですけどね~」


少し頼りないところもあるが、十分だ。彼女は確かに成長している。


「それじゃあ僕たち在校生と一緒に授業受ける感じのほうがいいのかなー?」


これまで空気だった会計のひとが発言する


「あ、それいいね!現役生と一緒の方がりんじょーかん?とか味わえそうだし!」


おお、ガハマさん、その使い方は大体あってるぞ!だがなんとなくわかってない気がする。


「たしかにそれなら特別感もあるな」

「でしょでしょ!オリンポス?とかいうやつ!」

「まさかオリエンテーション、といいたいのかしら」

「そ、それそれ」


もはやわざと言ってるのではないかという間違い。なんなの?山なの?十二神なの?
というか、この場合オリエンテーションでいいのだろうか。


「そうだなやる内容としては、この学校に入って何がしたいとかの意見の交換の場だったり、
 俺たちがやってきた事のおさらいとかな。んで、最後にみんなで遊ぶ内容を決める会議」

「それってあたしたちも参加していいの?」

「むしろ参加することに意味がある。当然決まった人に頼むことになるが」

「ふ~ん。じゃあはやとくん、さいちゃん、いろはちゃん、ゆきのんとあたしってこと?」


雪ノ下は、いえ……わたしは、なんて言ってその場にいることを想像したのか、戦慄していた。



「まあ、あとは戸部とかな。こういう時に盛り上がれる奴を呼んだ方がいいだろう。こういうイベントなら喜んで参加すると思うし」


いやー戸部ってホントいいやつだわー。
ちなみに盛り上がれる奴うんぬんをきいてホッと安堵していたやつが約一名。


「よし!それではとりあえず今までの意見をまとめて、固めていきましょう!」


そう言った一色いろはは、とてもいい笑顔をしていた






  * * *



「あー、疲れたなー」

「そうね、少し根を詰め過ぎたかしら。でも時間もないのよね」

「だねー。なんかお腹すいちゃった」


会議は一段落し、ようやく帰りである
あとのことは生徒会と委員会にまかせるとして、俺たちのやるべきことはほぼないだろう。

あるとすれば、各人へのイベント協力の申し出と、当日のサポートだ。
当日、由比ヶ浜には少し働いてもらうことになるが、本人も乗り気のようで問題はない。


「あ、先輩」

「ん?ああ、悪い先行っててくれ」


一色に呼び止められ、彼女たちの歩も止まったので、先に行かせる


「どうした」

「いえ。いろいろとお礼が言いたくて」

「別に気にすんな。むしろ悪いな、少し手を出し過ぎて」

「そんなことないですよ、むしろ大助かりです。わたしだけじゃ無理でしたから」

「……おまえはよくやってると思うぞ」

「ありがとうございます」


えへへ、と軽く笑う
その自然な笑みに思わず見惚れてしまう


「わたし、先輩がいったような楽しい学校、作れますかね」


やっぱ覚えてたのか。あのときは適当に聞き流されたと思っていたが。


「さあな。先のことなんかわからん」

「えー、そこは嘘でもできるっていうとこですよー」

「自分以外のことに嘘はつけないからな」

「なんですかそれ」

一色は手を口元にあて、くすくすとおかしそうにしている



もう用はないのか、そこで会話は止まる


「じゃあ、また次の打ち合わせの時にな」


といってその場を去ろうとすると、裾を引かれる


「……まだなんかあるのか?」


「あの、えっと。………いえ、なんでもないです」


なにか言いたそうにしていたが、本人が何でもないというのだからそうなのだろう。


「じゃあな、一色」


と、自然な感じで頭を撫でてやる。
………あれれぇ!?何やってんだ俺やばいやばい。通報されるまである。


自分の行動を不審に思いつつ、一色の反応を見る。下手したらマジで通報かもしれん。


「………っ」


一色は最初こそ驚いて固まっていたが、
次第に顔を赤くし、見られないようにするため腕でで覆うが、隠しきれてない


俺はその手をどうしたらいいかわからずそのままでいたのだが、
ハッと我に返り手をどける。


「す、すまん。つい」


上手く言葉が出てこず言いよどむと、一色が口を開く


「いえ、その、びっくりしましたけど……いやじゃないです」


最後の方は小さくて聞き取りづらかったのだが、そこはぼっちの習性。ばっちり耳に残ってしまった


「そ、それじゃまだやることあるのでし、失礼します」


逃げるように生徒会室の戸に手をかけるが、一旦止まりこちらに顔を向ける


「それでは……また」


まだ赤いのが引かない状態で明るく、優しい笑みを浮かべる
その姿が印象的で、彼女が去った後もその場を動けなかった


「……ほんと、何やってんだ俺」


顔が熱い。多分俺の顔も赤くなっているのだろう
いやじゃない、その言葉がぐるぐると頭の中を回り続ける



「はら、へったな」


気を紛らわすように別のことを考えようていると、下駄箱に着く
そこには奉仕部の二人が待っていた


「あ、ヒッキ―おそーい!もうお腹ペコペコだよー」

「いや、しらねーよ。つか先に帰ったんじゃなかったのか」

「だって一緒にご飯食べに行くんなら待ってた方がいいでしょ?」

「いや、そもそも食いに行くこと自体初耳なんだが……」

「……私も、今初めて聞いたのだけれど」

「えぇ!?一緒に食べに行く流れじゃなかったの!?」


なぜか彼女のなかではそうなっていたようである。リア充の考えてることはわからんな。


「まあ確かに腹は減ってるしな」


雪ノ下もクスリと笑うと


「そうね、たまにはいいかもしれないわね」


と、前向きな返事をする。
それを聞いた由比ヶ浜は笑顔になり飛び跳ねる


「よーし、いこいこー!あたし甘いものとか食べたーい!」

「太るぞ」

「そういうこと言うの禁止だし!?」

「……少しくらいなら大丈夫じゃないかしら」


由比ヶ浜はだよねーなんていいながら雪ノ下にくっつく
雪ノ下は鬱陶しそうにしながらも強く拒絶したりしない


ほんと仲いいねー君たち。



二人より一歩先を自転車を押しながら歩く


そういや、小町に連絡いれとかなきゃな。
もう出来てるかもしれないし怒られるかもな。


「あー、小町?今日飯いらんから。……そうだが。ん、わかった」


小町に伝えると、どうやらご飯の用意はまだのようだった。
一瞬で由比ヶ浜たちといることを見抜かれ、自分も一緒に食べたいとのことだった。


「なあ、小町も来たいって言ってるんだが」

「小町ちゃん?もちろんおっけーだよ!」


快諾されたのでそのことを伝えると、40秒で支度しな!とかいって切られた。
支度するのは俺じゃないんだけどな。



俺たちは駅のほうに進む。多分サイゼ。学生はほんとサイゼ好きだなー。俺も好きだぜ。



仲良く談笑している二人の前をなに食べようかなーなんて考えて歩きつづける





***

今日はこれにて
しばらく更新できないかもしれないけど書き溜めとく
次に一気に投下…かもしれない

期待して待つ

なでなで

麻薬

たまらん

いよはすhshs

ちょっと聞きたいんだけどいろは視点ているか?
なくてもいいなら八幡のみでやるけど

好きにやっていいと思うよ

あったほうがいい

ほしい

いらにゃい

むしろいろはすの視点を主に八幡攻略を見たいまである

いろはすが可愛すぎて辛い…

いろはす視点で悶たい

八幡はもはやヒロインだからな
いろはす目線が見たいです

いろはす目線だけでいいまである

いろはすかわいい
後はわかるな?

視点とか好きにやっていいから、あまりにも現実感無さすぎな無茶企画の方なんとかしなよww

前半は原作の焼き直し?だよな

やっぱ総武って糞だわ
もやしもんの最終巻完全否定だもん

で、出た?wwwwww所詮創作なのに現実語りだし奴?wwwwww

>>194
え?誰?

>>194
こういう真性馬鹿装った末Oって作者だったりするパティーン多いんだよなぁ…

荒らしに構うやつも荒らし
面白いから期待して待ってるよ

荒らしに構うやつも荒らし
面白いから期待して待ってるよ

連投キチガイも荒らし

荒らしに構うやつも荒らし
面白いから期待して待ってるよ

荒らしに構うやつも荒らし
面白いから期待して待ってるよ

夏だなぁ

そして秋が訪れるのです

うんこの苦みが食欲をそそる

夏だなぁ




生徒会と委員会の連携により、イベントの準備は滞りなく進み、当日


あれから奉仕部がすることは特になく、当日を待つのみの暇な時間だった。
一色からも特にコンタクトはなかった。


今は協力してもらう人物を集め、最終確認を行っている最中だ。
ちなみに、今日の俺の仕事は見回りである。
簡単なようだが各ポイントを監視している人たちよりも行動範囲が広く、
運動不足の俺にとっては、なかなか辛い。
あと、なんかあの人ついてくるーみたいに思われて辛い。
や、まだ始まってないんだけどね。


雪ノ下はいたって平静だったが、由比ヶ浜はどことなく緊張しているように思える。


「おい、あんま気張るなよ。おまえが失敗したらうちの学校に傷がつくだけだ。
 なんにも心配する必要はない」

「う、うんそうだよね……。ってダメだよ!?励ますの下手くない!?」

「いつからおまえを励ましていると錯覚していた?」

「なんかうざい!あと中二っぽかった」


おいやめろ。


「えへへ、でもありがとヒッキー。ちょっと気が楽になったよ」


由比ヶ浜は自分の頭のお団子をくしくしと触ると、顔を引き締める。
こいつはもう大丈夫だろ。


「雪ノ下は大丈夫か」

「あら、あなたに心配をされるなんて、屈辱だわ」

「大丈夫そうだな。まあわかってたけど」


一色に目をやる。こういうイベントごとには強いのか、緊張している様子は見えない。
ふと、目が合うがすばやく逸らされる。
いや、多分あの出来事のせいなんだろうけど。あれからどことなく距離をとられているように感じる。

どことなく、ではなく明らかなのだが。


……そのことは今は置いとくとしよう。それよりも今日のイベントを成功させることが先決だ。




「―――と、いうことです。みなさん大丈夫ですか?」


一色が今一度確認を取る。みんな大丈夫なようでこくりと頷く


「それではみなさん、今日はお願いします。楽しんでいきましょう!」


その掛け声におー!という声が上がり、各自の持ち場へと移動を始める。


持ち場に行く前に、運動部男子の目玉となる戸塚がこちらへ寄ってくる


「八幡!今日は小町ちゃんのためにもがんばろうね!」

「ああ。頼むな戸塚」

「うん!じゃあいくね」


戸塚を手を振りその場を立ち去る。由比ヶ浜たちは先にいったようだ

……一応一色に声かけとくか。


「あー、一色」

「はい。て、せ、せんぱい…!ど、どうしました?」


一色はあわあわと居心地悪そうに身をよじる

やっぱこの間のこと引きずってるよな……。


「いや、このあいだはすまなかったなと思ってな。そんだけだ。じゃ頑張ってくれよ」

「あ、あ、せんぱい……その」


何を言ってよいのか分からないといった感じできょろきょろ視線を動かす


「えと、がんばりましょうね」

「……おう」


どこかぎごちないが、笑みをみせる。それを確認して俺も持ち場に向かう。

持ち場とか学校全体みたいなもんですけどね。


――――――――――



あああああ、キョドってしまいました……。
変に思われてないですかね。って、普通変だと思いますよね。


でも無理です無理。顔合わせられません。


あの掌の感触を思い出し、かぁ、と頬が染まる


あの時から先輩との接し方がわからなくなり、自然と避けるようになってしまいました。
これじゃ意味無いのに、意外と奥手なわたしにびっくりです。


「先輩が悪いんです。急にあんなことするから」


ぶぅーと唇を突出しむくれる



……とりあえずやるべきことをやってしまいましょう。



わたしは、受験生が集う体育館へと足を運ぶ
道中葉山先輩を見つけたので声をかけてみる


「葉山先輩!」

「ああ、いろはか……。どうした?」


にこっ、と爽やかな笑みを浮かべる。自分に向けられた優しい笑みに何人の女性が勘違いしてきただろう。
そんな笑顔にも、今はなにも思わない。


「わざわざすみません、協力してもらって」

「いや、いいんだ。こういうの好きだしね。戸部たちもノリノリだったよ」

「そういわれると救われます」


あはは、と笑う

葉山先輩はなにか言いたそうにしているようなので、こちらから話をふってみますかね。


「一応なにか聞いておきたいこととかありますか?」

「自分の仕事については大丈夫だよ。……ただ、ひとつ聞きたい……いや、やめとこう」

「………葉山先輩には感謝してます」

「……俺はなにもしてないさ」

「いえいえ。おかけで気づけたんですから。まあ、今行き詰ってるんですけどねー、いろいろ」

「はは。君なら大丈夫さ……きっと」

「そうですかね……。それではよろしくお願いしますね!」


葉山先輩の返事を聞いたあと、早足で立ち去る


うん、大丈夫。
自分に自信をつけるためにも、まずは目の前のことをやりきってみせる。




―――――――




HQ HQ こちら八幡 異常はなかった これより帰還する


いや、帰れないんだけどさ。
現在外で待機中。めちゃくちゃ寒い。


部活見学&体験が始まりそれに合わせ適当に見回る。
他にも監視している人物はおり、時折無線で連絡を取る。

今のところなにも問題はない。
が、これからなにか起こるかもしれない。自分の性分が嫌になる。
先ほどから悪い想像がぽんぽん出てくる。


いろいろ対策は取っているが、それでも無茶な企画だ。
どこで破綻するかわからない。


なにも起きなければいいのだが、こういうときの悪い予感というのは当たるものだ。


無線に入る報告を漏らさず聴き、いざという時に備える。


しばらくして、不穏な報告が耳に入る。
……やっぱきたか。



どうやら運動部のほうを回っている最中に問題が起きたらしい。
場所は体育館。バスケやバレーボールなんかの部活がいるところだろう。

急ぎその場所へと向かう




  * * *



武道館に着くと、なにやら怒号が聞こえてくる


「つーか、あんた1年なんだろ?そんなやつが考えたモノが上出来だとでも思ったのかよ!」

「そ、それは、ですから……」


責められている相手は一色のようだ。
どういう状況なのか把握するため、近くにいた委員会の腕章をつけているやつに話を聞く。


どうやらバスケの体験をしていたようなのだが試合をしたいというものが現れたらしい。
本来、怪我などのトラブルを極力避けるため、部活体験で出来ることは抑制してある。
バスケなどの球技はシュートやパス程度のことなのだが、そのことについて不満があったとのことだ。


一色はそれを許可できない理由を説明したのだが、それが逆効果だったようで、
じゃあそもそもこんな企画やるんじゃねー的な展開だった。
それに対しうまく言い返せないところを、一方的に攻め立てられてしまったらしい。


……こいつはまずいな。彼は受験勉強に必死だったのだろう。
自分のしたいことを抑えるほどに。
こんなイベントを出されれば、なんで自分が必死こいて勉強してるのを
邪魔するんだ、ということになるだろう。


迂闊だったとしかいえない。


息抜きやモチベ向上には最適かもしれないが、それはある程度の余裕がある者だけだ。
ぎりぎりまで、一時の休みを許さないほどの追い込みをしている人の存在を考えていなかった。


そんなこと考えなくてもわかるじゃないか。なぜ見落としていた。
いや、違う。そうじゃない。見逃したかったのだ。


一色が生徒会長として、学校を盛り上げたい。だれかの役に立ちたいという願いを優先してしまった。
本来ならやるべきではなかったのだ。時期が悪すぎる。
なぜ、一色の願いを優先した?……いや、今考えるのはそこではない。


しかし、そんなことを言ってもどうしようもないし、考えるだけ無駄だ。
今は目の前の不祥事を解決せねば。


とりあえず涙目になっている一色を下げる、といきたいところではあるが、
それでは焼け石に水だろう。



どうする、考えろ。


と、そこで救世主になるかもしれない人物が現れる


「なにごとかしら」


雪ノ下雪乃はこの状況でも凛とした姿勢を崩さないでいた


彼女たち誘導班には無線をもたせていないのだが、異常を察知した監視員が報告を入れたのだろう。


その美しい容姿と冷たい声音に、周囲は静寂に包まれる
が、それも一瞬。次の瞬間には怒りの矛先が雪ノ下に向けられる


「なにごとかじゃねーよ!こっちは必死こいて勉強してんのに、
 こんな遊びみたいなことやらされてんのに黙ってられるかよ!」


「……比企谷くん。彼は何をほざいてるのかしら?」

「いや、聞いたまんまだろ。何煽ってんだ。つか、自分の持ち場はどうした」

「あちらは由比ヶ浜さんに任せたわ。向こうは温厚な子が多いから彼女一人でも大丈夫でしょう」


その雪ノ下の余裕な態度に相手の怒りは増していく


「おい!無視してんじゃねーよ!」

「口のきき方がなっていないわね。年上に対する敬意を知らないのかしら」


その喧嘩腰の雪ノ下に小声で注意する


「おい雪ノ下、あまり相手を刺激するな。不利なのはこっちだ」



雪ノ下はわかってるわ、と一言。ほんとにわかってんのかよこいつ……。


「はぁ?そっちこそそんな態度でいいのかよ。
 俺があんたらのやってることに文句言ったら困るのはそっちじゃないのか?」


少年はニヤニヤと勝ち誇った笑みを浮かべる。


「……好きにすればいいじゃない」

「んな!?」


おいおいまじかよ雪ノ下さん。さすがにまずいぞ。

雪ノ下は俺の方を見たあと、一色の方に目をやる

……ああ、そういうことか。

俺は呆れたように息を吐き、一色の方へ向かう



「大丈夫か」

「は、はい。でも、雪ノ下さん、あれまずいですよね?」

「……いや、多分大丈夫だ。それよりもあれを治めるにはお前の一言が必要だ。いいか――」

「―――――はい、わかりました」



その間にも言い争いは続く


「は、はぁ?あんたおかしいんじゃねーの?意味わかってーねーだろ」

「わかっているわ。そのうえであなたに言ったつもりなのだけれど。
 もしかして理解できなかったかしら。好きにしなさいと言ったのよ」



正直ものすごくヒヤヒヤするやり取りだ。
しかし、その動じない雪ノ下の態度に相手は焦りを見せる。


彼女は当然、その焦りを見逃すはずがない。その隙を逃さず一気に攻めたてる。



「あなたの言うとおり、私たちのやっていることは随分と無謀だと言えるわ。
 あなた一人の言葉でこの学校は悲惨なものになるわね。
 在校生はもちろん、ここを受験しようとしている人たちも、ね」

「……な」



最後の一言に、我関せずでいた他の受験生たちもざわめきだす。
彼らは本気でここに入学をすることを目指し頑張ってきた。
しかし、それが一人の発言により周囲から責められるような問題校になってしまう。
ここでの学校生活を夢見た者達からしたらたまったものではないだろう。



「……は、おどしのつもりかよ」



そういう少年の顔は、先ほどのような余裕は無く、周囲の視線を気にしだす



「ええ、そうよ。あなたの行動ひとつでここにいる彼らの人生も決まってしまうのよ?
 ……どうすればいいかわからないあなたに選択肢をあげるわ。
 一つ、一時のテンションに身を任せ、周りを、挙句自分すらも壊すもの
 二つ、怒りを抑え、その感情を別の労力に使うことでこれからの道を形成すること」



少年の目はこれでもかというくらいに泳いでいる。
雪ノ下はそんな少年に、これまでの冷めた表情から一転、優しいものになり諭すように言う。



「利口なあなたならわかるはずよね。あなたのストレスはもっともだわ。
 でも、それであなたのこれまでの努力を無駄にするのは愚かだわ」



それはもう洗脳と言ってもよかった。
彼からはもう反論する気配はない。ここでもうひと押しだ。
一色が前にでて頭を下げる。



「こちらの配慮が足りず、不快な思いをさせてごめんなさい。
 許してもらえるなら……諦めずにここを目指してください
 わたしにできたんです。あなたにできないわけがありません」



最後のは一見、挑発のようにも思えるかもしれない。
だが、これでいい。
こいつは周りの人間からの攻撃を恐れ、見下した相手からも劣るわけにはいかない。
こういう輩には、妙なプライドがある。
ならばここで投げるようなことはしないはず。


正直酷い賭けだ。こいつがこの件を問題にしないとは限らない。
しかし、そうはならないという確信があった。だから雪ノ下はこの方法を取った。


「………いえ、こちらこそ迷惑かけてすみません」


というと彼は俯いたまま、皆の輪に戻る



この周囲の人間がこいつを縛る枷となる。
そもそも総武の学力は高いほうで、仮にもここを目指すような人間が自分をも貶めかねないことなんてしないはず。
なんて考えだろうが正直苦しいな。
……人の心なんざいつだって変わる可能性はある。

運が良かった……とでも思っとくか。


俺は雪ノ下に近寄り小声で声をかける


「よくあんなこと思いついたな」

「別に……あなたの真似をしただけよ。正直いい気はしないわね」

「そりゃそうだろ」


恐らく体育祭の会議でのことを言っているのだろう。
真似と言っても、あの時に限っては直接手を出したわけではないのだが。


「あなたならすぐこの方法に出ると思っていたのだけれど、柄にもなく焦っていたようね」

「……別に。たまたま出てこなかっただけだ」


雪ノ下は、そう、と呟くと再度動き出した集団についていく


「私もこちらにつくわ。また問題を起こされても面倒だし」

「ああ、頼む」

「………それと、彼女のケアは任せるわ。あなた以上に適任はいないでしょうし」


一言任せろとだけ言って俺もその後を追う



  * * *



以降の見学では少し空気が悪かったがテニス部の体験をするころには皆笑顔に戻っていた。
さすが戸塚パワーだ。だがそれ以上近づくことは俺が許さん。



そのあとも特に問題は起きず最終段階までいき、
うぇーい集団のおかげもあってか全体的に雰囲気はよかった。

お調子者の戸部とアホの由比ヶ浜がなかなかいい盛り上げ方をしてくれ、
その馬鹿っぷりをみて安心した奴も少なくないだろう。二人には感謝している。

あと、おまえらほんとにどうやって入学したの?
総武校七不思議のひとつに認定されるまである。


他には、そこにいるのにいない人とか。あ、俺か。



中学生たちは帰り際に絶対受かってみせます!と意気込んでいる奴らもちらほらいた。
そのなかに小町や、川崎大志っす!が口癖の川なんとかさん弟がいた。……まさか一緒に来たなんてことないよな?


依然落ち込んでいる様子の一色であったが、その言葉にはいくらか救われただろう。



イベントのあとには当然片付けやらなんやらの後処理がある。
とはいえ、文化祭のようなゴミが大量に出るものでもないので、机やイスを運ぶ程度だ。




だらだらとイスを運んでいるところに、一人の男が近づいてきた。


「やあ」


そいつは爽やかな笑みを貼り付け、馴れ馴れしく声をかけてくる。
葉山隼人。一色いろはの想い人である。


「よぉ……」


なにか用があるのだろうが、なにも言わず隣を歩く

なんだ、なんだよ、なんですかァ?言いたいことあるならさっさと言えっての。



「おい、なんか用があったんじゃないのか?」

「はは。用がなければ共に行動しちゃダメなのか?まあ用はあるんだけどね」


少しイラッときたが、ここは大人しく聞いてやろう。でもムカつくからちょっと小言いってやろ。


「そりゃだめだろ。俺とお前はそんな仲じゃないからな。んで?なんだよ」

「相変わらずキツイな。………今回のことだよ。いろはがこんなことしたのには君が一枚絡んでるんだろう?」

「まるで俺があいつをけしかけたみたいな言い方だな。確かに協力はしたが、提案したのはあいつだ」

「そうか。でも君がいなければ彼女はあんなことしなかった」


その言い方に俺の目は鋭く、攻撃的な声になっていた


「……なにがいいたい」

「ははは、そう睨まないでくれ。別に誰が悪いとかいう話をしに来たわけじゃないよ。
 むしろあの変化はいいものだと思ってるよ。結果がどうあれ……ね」

「は、どうだか。最終的な結果としちゃあながち失敗でもねーだろ」


強がりだ、わかっている。今回は完全に失敗だ。10人中10人が満足しなければ意味のないような企画だった。

葉山はまるで見透かした風に笑い、話を続ける。


「雪ノ下さんは気づいてたんじゃないかな。今回の結末について」

「…かもな。実際問題が起きたときの行動も早かったし、対策も早かった。まぁ穴だらけの策だが」

「……さっきいった彼女という言葉。雪ノ下さんも含まれてたんだけど……気づいたかな」

「………さあな」



話している間に気付けば片付けは終わっていた
これ以上こいつといるといらんことを言いそうだし、さっさと退散するとしよう


「君は、すごいな。羨ましくて……妬ましいよ」


その言葉に足を止める。


「は?俺に羨む要素なんかどこにある。ただの卑屈なぼっちだ」

「……俺にはできないことをやってのけるところだよ」


そんなもの過大評価だ。

……そういえば俺を褒めるのは自分のためだとかいってたな。
俺は無意識のうちに、前から思っていた疑問をぶつけようとしていた。


「お前、前好きな奴がいるって言ってたが……あれは―――」


葉山はただ哀しそうに笑い、告げる


「……俺にそんな感情を抱く資格はないよ。……君がどんな選択をして、
 誰を選ぶかはわからないけど、それがいいものであることを祈っているよ」


最後に意味深で、理解不能な言葉を残し、その場を去っていく。
つーかあいつは監視者かなんかなの?もしかして俺の秘められた力がうんちゃらかんちゃら。


「選択……か」


そんなもの、俺にあるのだろうか。
そもそもなんの選択をするというのだ。


「……とりあえず、一色のケアを頼まれたからな」


誰に言い訳するでもなくそう口にすると、目的の人物を捜すために歩き出す。




  * * *



生徒会室に足を運ぶと、そこに一色いろははいた。
既にほかの役員たちはおらず一色一人のようだ。


「あ、先輩……」


俺の姿を確認すると、顔を俯かせる。
少しだけ近づくと、うなだれたまま口を開く。


「……あははー、なんかダメダメでしたねーわたし」

「……よくやってたと思うぞ」

「全然だめですよ。やっぱり無茶でした。
 みなさんに負担もかけてしまいましたし、雪ノ下さんまで……」


その声は震えていて、必死に涙を堪えているようだった。


「仕事なんだ。誰にだって負担はかかる」

「そういうことじゃないです!……わたしは!」

「お前は悪くないだろ。今回のことは俺に責任がある」

「……なんでそうなるんですか。先輩は悪くありません。わたし、が」

「おおまかな提案をしたのは俺だ。もっとうまくやる方法だってあった。完全に俺のミスだ」



一色はあはは、と力なく笑う。


「先輩慰めるの下手ですね~。気を遣ってるのバレバレですよ。
 ……むしろはっきり言ってもらった方が、ひらき、なおれ」


最後まで言葉にできず、小さな嗚咽が聞こえる。


俺は無意識に、自然に、彼女を慰めるべく、その頭に手をやる。


「頑張ってたよ、お前は。確かに失敗だったかもな。時期は最悪だったし、やったこともむちゃくちゃだ。
 でも、おれも共犯だ。むしろ戦犯まである。お前だけがしょい込む必要はない。
 この学校を盛り上げようとしたお前は……立派だったぞ」


「ぜん……ぱい゛」


一色は俺にしがみつくかのように抱き着いてくる。
少し驚いたが、ここで引きはがすのもさすがに可哀想だ。
それに………嫌ってわけでもない。


なおも泣き続ける一色の頭を撫で続ける。



なぜだろうか。
自分の今までの行動を振り返り、よく考える。

以前、雪ノ下に甘やかすなと言われたことがある。

俺は一色のことを甘やかしすぎたのだろうか。

では、なぜ甘やかした。

小町に通ずるとこがあったからか。

それもあるだろう。だが、すべてじゃない。

……まだ、よくわからない。

少なくとも、こいつのことは……嫌いじゃない。



「……もう、落ち着いたか」

「……もう少し、こうしてたいです」


既に嗚咽は鳴り止み、落ち着いてはいるのだろう。
この気恥ずかしい状態は続いたままだが、すでに十分恥ずかしいので1秒も1分も変わらない。


「先輩。なんでわたしによくしてくれるんですか?わたしみたいな人、苦手そうなのに……」

「さあな。慣れたんじゃねーの」


言われて気づく。
こいつを、一色いろはを初めて認識したときどう感じた。
柔道部からの依頼の時に初めて知った。俺は確か危険な奴だと称した。
こういった人間は苦手ではなかったか。


「えへへ……。やっぱり年下好きなんですね先輩って」

「別にそういうわけじゃないだろ……。お前のことはなんも思ってないしな」

「えー!?ここまでやっといてそれは酷いですよせんぱーい!」

「おい、誤解を招く発言をするな。つーかそろそろ離れろ。誰かに見られて葉山の耳にでも入っても知らんぞ」

「へ?なんで葉山先輩がでてく……あー、そうですねはい」


一色は、ふっふっふーと謎の笑みを浮かべると、こちらに目を向ける。



「あ?なんだよ」

「いえいえ。名残惜しいですが、今日は充分堪能しましたし離してあげましょう」


あざといなー。俺じゃなかったら、え?こいつ俺のこと好きなん?って勘違いするところだぞ。


「あ、わたし葉山先輩狙うのやめましたんで」

「は?なんで急に…」

「別に急じゃないですよ?それよりも難易度高い人を落としたくなったんですよ先輩」

「葉山より難易度高いとかそれもう無理だろ。つーか葉山ですらダメなのにそいつはいけんのかよ」

「ぐっはぁ、先輩なかなかストレートに抉ってきますね……。でも、なんかいけそうな気がします!」

「ほーん。まーがんばれよ」

「はい!というわけで覚悟してくださいよ?せーんぱい?」

「は?」


可愛らしい笑みを浮かべると荷物をまとめ颯爽とこの場から立ち去っていく。
なんか嵐みたいな奴だな。


つーか個々の鍵どうすんだよ……。俺にかたしに行けってか。


はぁー、と溜息をこぼし部屋に鍵をかけ、その鍵を返すべく職員室へと向かう



選択。

ギャルゲーなんかでいえば、ヒロインの選択だろうか。

1 雪ノ下
2 由比ヶ浜
3 一色
4 小町
5 戸塚

みたいな。……なにこの妄想恥ずかしい!
安易に知り合いをたとえ話に用いるのはやめておこう。
つか、小町とかおかしいだろ。戸塚?それは別におかしくない。


だが、それは物語の中のお話。
セーブ前に戻って選択を変えることはできない。
そもそも俺に選択肢なんてあるのだろうか。


仮にあったとして、俺が選ぶルートなんか決まっている。
実質的には一本道だ。


BAD ENDやHAPPY ENDなんてものがあるが、それは本人からしたらだ。
誰かにとってハッピーでも、別の人からしたらバッド。逆もまた然り。


そんな選択を迫られたとき、俺はどうするだろう。
ま、そんな経験ないし、これからもするとは思えないんだけどな。


ふと外をみるとだいぶ暗い。
もう小町は家についてるだろう。飯が出来ているかもしれない。


「さっさと帰るか」


今日はいろいろ考えすぎて疲れたしな。はやく自室でゆっくりしたい。


鍵を返し、駐輪場へ向かう。


その頭の片隅にあるのは、可愛らしい後輩の笑顔だった。



***

おもってたより短かった
次からいろは視点による八幡攻略タイム

俺なら6のハーレムだな

おつ!!
おいお前ゆきのんが好きなのかよ
これが終わったらゆきのんのSSを書いてくださいオナシャス




原作は物語として順当に終わるなら1になるだろうから3で

俺なら、7の全員から逃げ切るを

選択か……胸がアツくなるな!!

美人教師が抜けているようだが

アラサーは(^-^)⊃⌒Ο

千葉の兄妹なんだから4一択だろ

なんとなく胡桃沢梅と重なるなこのいろはちゃん



早く動くいろはすが見たいわ

二期はいつだっけな

待ち遠しい

平塚先生は選択肢を30番台くらいまでいけば出てくるよ三十路的に

選択肢増えて平塚先生出てきたなら静たんを選ぶ
静たん出てこないうちに選ぶならガハマさん

静ちゃんも含め、ラブコメなラノベにはかなりの確率で嫁き遅れの女教師(総じて美人で人柄もよく結婚できないのが不思議)が出てくるので幸せ

>>236
ageんなks

いつからいろは、こういうイベントごとに強いって原作と逆の設定が定着したん?

アイテムの7番目にカーソルを合わせてセレクトボタンをうんぬんかんぬんしないと平塚先生は出ないから

ここの一色は時々目にハートマーク浮かんでそう

イベント内容もめちゃくちゃ、解決方法もめちゃくちゃ、雪ノ下もめちゃくちゃ

色恋沙汰以外書く必要なくね?まともに書けてないんだし

SSなんだしそこまでの完成度求めてどうすんのさ
おかしかったら「ハハ、クオリティ低ww」って流せばいいのに

7ではるのんルート

なんであーしさんがいないんだよ

うざいから

>>242
低知能の読者様にそれを求めるのは酷

作者様キモいな

あーしさんがうざいだと!?

ハハ、クオリティ低wwwwwwwwww

ハハハハハッッハッハハハハハハwwwwwwww

低っwwwwwwwwwwwwハハハハ、クオリティあははハハハハ低wwwwwwwwwwwwww

完結してくれりゃなんでもいい

はよはよ

なんかこの雪乃、激しく違う…
いろはは悪くないのになんなんだろうこの違和感…

ハハ、クオリティ低wwwwwwww
自覚はあるし無駄なことし過ぎた結果むちゃくちゃだったな

まあ八幡の攻略難易度落とすための茶番だと馬鹿にしてくれ
むしろここから見始めればいいまである




「……ふぃー」


一色いろは、現在自販機前で休憩中


生徒会主催のイベントから数日
わたしたちの仕事はまた作業ゲーよろしく延々と書類に目を通す作業が続いていた


正直、前回の失敗はだいぶ堪えました。
一応立ち直ってはいるんですが、なんとなく先輩に会い辛いといいますか……
やらかしてしまった手前ニコニコするのが億劫といいますか、
大胆な行動もしてしまいましたし。


「お、会長おつかれー」

「あ、どうもお疲れ様でーす」


今声をかけてくれたのは生徒会の人ではなく、委員会の人。
てっきり、みんなからは白い目で見られるのかと思っていたわけですが、
割と友好的……というかなんというか。前よりも好印象っぽいです。


とにかく悪目立ちはしてないのが救いです。
それはなぜか副会長たちにきいてみたんですけど、頑張ってた姿を評価された的なテキーラ?


たしかに、わたしってちゃんと仕事するように見えませんしねー。
こいつちゃんとやってんなー、てのを見せれてラッキーです。


でも、あの時のことを思い出すとぐわぁーってなります。
これが黒歴史というやつでしょうか。


先輩もあれからなんにもアクションないですし。
えー、まさかあんなことしておいてなんにも感情抱いてないとかありますかー?

……ありそうでこわい。なんか仕事のためなら何でもしそうな人ですし。




「ん?一色か」

「へ?あ、先輩!」



えへへー、おっといけない。ニヤケ顔気をつけなくては。キリッ!


なんという偶然。これは運命感じちゃいますね!
……なーんて。ここの自販、先輩よく使ってるの知っててここにいたんですけどね。
買うものは決まって甘ったるいMAX缶コーヒー。

なんかわたしストーカーみたいだな。でもこうでもしないと会えない先輩のキャラが悪い!


「あれー?もしかして部室追い出されちゃったりしますー?」

「ちげーよ。甘いもん飲みたくなったから買いに来ただけだ。
 ……お前こそ仕事から逃げ出したのか?ちゃんと働いてもらわなきゃ困るぞ。俺が働く羽目になる」

「逃げてませんよー。てゆーか心配が自分のためって……さすがですね」

「まあな。俺は自分の負担を減らすためなら労力を惜しまない」


とかいってー、なんだかんだ自分が背負い込むんですからこの人はー。
そこが好きなんですけどね。口にしませんけど。

先輩は缶コーヒーを手に入れるとその場から立ち去ろうとする。


「じゃあな一色」

「もういっちゃうんですかー?もっとお話ししましょうよ」

「なにも話す話題がない。それに一応部活中だ。おまえも仕事戻んなくていいのか」

「どうせ依頼なんか滅多にこないじゃないですか。心配しなくてももう少ししたら戻りますよー」



しぶっていた先輩だが、結局少し離れたところに腰を下ろす。
もーかわいいなー。


「そんな離れなくても、もっとこっちきたらいいじゃないですか」

「近寄る理由もないだろ」

「離れる理由もありません」


うぐ、とうめき声を漏らす。
といってもその距離が埋まるわけではないですが。
……まぁ、こっちから近づけばいいんですけどね。


わたしは、んしょ、んしょ、と先輩のほうに近づく


「……ちけぇよ」

「えー?でもこのほうが話しやすくないですかー?」

「別に離れてても一緒だろ」

「またまたー、それに近いっていってもゼロ距離じゃないですし、
 意識しすぎですよ。ぶっちゃけキモいです」

「悪かったな。こちとら自意識の化け物なんで」

「なんですかそれ」



しばらく他愛のない話が続く。このままずっとここにいたいのもやまやまですが、
さすがに仕事をほっぽりだしとくわけにはいきませんので、ここらでお開きですかね。




「んじゃ、そろそろ戻るわ。お前もしっかりやれよ」

「言われなくてもわかってますよーだ。あ、そうだ先輩」

「あ?」

「今度の休みに、一緒にお買いもの行きましょうよ」

「断る」

「それを断ります」

「……なんだそのドヤ顔。うぜぇ……」

「な、ドヤ顔なんかしてません!てゆーかうざいとか酷すぎません!?」


ちょっとグサッっときたのは秘密。


「つっても、休みが無理な理由があるからな。小町たちの遊びに付き合わなきゃいかん」

「小町……って妹さんですよね?家族でお出かけですか?」

「いや……、雪ノ下とか由比ヶ浜とかな。妹の奴完全に受験終わった空気出しててな」

「え?……あー、そう、ですか」



うあー、聞きたくなかったなー。
とすると、受験おつかれパーティー的な感じでしょうか?……いいなぁ。

わたしも参加したいんですけど、先輩以外の人と仲いいわけじゃないですし……。


あまり表に出すつもりはなかったのですが、うなだれてしまったようで、
それを見かねた先輩が声をかけてくる。


「……その買い物っての、休みじゃなきゃだめなのか?」

「……はへ?」


先輩は、あー、なんていいながら頭をがしがし掻いている。


「買い物、放課後とかじゃだめなのか?」

「……いえ。いえいえいえ全然だめじゃないです!むしろ今のはポイント高いです!」

「……おまえ小町と会ったことないよな?」


なにいってるんですかね。
でもそんなことはどうでもいいです!はぁ?この人ほんとに先輩ですか?
まさかこんな展開誰が予想できたでしょう。


「まあいい。んで、いつにするよ」

「そうですね、今日はちょっと厳しいので……。明後日なら多分いけますね!」

「じゃあその日に。そんじゃあな」

「はい!お疲れ様でーす!」








ふえへへへーい。
ちょっとまってやばい。顔がやばい引きつりそう。
こんな顔だれかに見られたらやばいです。もう、先輩のせいで仕事に遅れが出てしまいます。


……ふふ、放課後デートですよこれ。完全に。


もしかして先輩もうだいぶ落ちてたりします?……お人好しだからそれはないかー。


とりあえずもう少しここで休まないと。今の自分を人に見られるわけにはいきませんからね。
さっさと仕事を片付けて、明後日思いっきり遊びましょう。よし!がんばります!




そのあと、帰りの遅かったわたしは副会長に怒られてしましましたがそれは秘密で。



ちょっと一旦とめ
総武って公立だっけ私立だっけ?まあどっちでもいいよねいろはかわいいし

モデルの高校は市立だな

市立だね

いろはすが最高に可愛い

支持してる人だって間違いなく多いから好きなようにやってくれ
ということで支援

ハハ、クオリティ低wwww

夏だなぁ

見てる奴はいるんだから変なやつの煽りに乗らずにちゃんと完結頼むわ

ハハ、クオリティ高wwwwwwww

再開マダー?




  * * *



HQ HQ こちらいろは ターゲットを捕捉 これより追跡を始める


「おい、なにやってんだ」

「えへへー。先輩いつ気付くかなーみたいな。……気づくの早すぎですよ」

「ぼっちの気配察知能力舐めんなよ?あと、あざとい」


はい、というわけで約束の日。放課後先輩とデートです。
絶対否定されますけどね。


待ち合わせ場所は駅前なわけですが、このひとも相変わらずですねー。
前のように校門で待ち伏せしようと思っていたら、それを見こされて
先に行かれてしまいました。軽く傷つくんですけど……。


「ほら、いくぞ。で?何買うつもりなんだ」

「はい?いや、とくに決まってないですけど」

「は?じゃあなんで誘ったんだよ……」

「先輩とお出かけしたかったからですがなにか?」

「なんでちょっと半ギレなんだよ……。つーか俺じゃなくて好きな奴誘えよ」

「まあまあ(笑)」


ここはスルーでいきましょう。とりあえず動いてしまえばこっちのもんです。



「とりあえずララポいきましょう」

「はぁー。まあいいか、たまには」

「んふふ~、そういう先輩好きですよ」

「うっせ。好きとか軽々しく言うな」

「軽くないのでいいです」

「は?」

「ほらほら先輩、いきますよ!」


あわわわ。つい口がすべっちゃいました。
でも逆に意識させること、できたかな?





  * * *




「はい、とーちゃーく。あざといは禁止ですよ」

「あざとい」


さーて、この出不精さんをどう楽しませましょうかね。
人嫌いでこもりがち、本をよく読む先輩には~
………あれ、結構きついかも。なにがいいんだろ。


「先輩、どっかいきたいとこあります?」

「家」

「ちょ、来たばっかなんですけど……」


しかも一文字で返されるとか。


「じゃあわたしがルート決めちゃってもいいですかね?」

「好きにしろ。もともとお前の買い物に付き合ってるんだからな」


前半と後半録音したいですね。……ってわたし完全にキモい。ジョークですよ?



「そういえば妹さん受験終わったんですよね?なんかプレゼントあげるのどうです?」

「いや、まだ受かったかわかんないんですけど……。
 今度パーティーやるし、いつも貢いでるから別にいいんじゃないか?」

「いつも貢いでるんですか……。
 んー、でも一緒に食べるお菓子くらいならいいんじゃないですか?」

「まあ一理あるな。だが一色、一つ見落としている。
 あいつは俺に渡されたお茶菓子を、本人の知らぬ間に食べちまうようなやつだ」

「わ、わーそうなんですかー。なのに仲いいんですね」

「うちの男は小町のすることなら許しちまうからな」

「なんという家族愛……。わたしもそんな便利な人欲しかったなー」

「言い方に悪意があるんだが……」


ふーむ。じゃあ特に先輩はなにも買うつもりないみたいですね。
なんか連れまわすみたいで気が引けますが、先輩だし、いっか♪


「あ、わたしあっちみたいです!いきましょう!」

「おい引っ張るな。そんなに強くひっぱったら服が破けちゃうだろうが!」

「駆逐系男子ですか……。リアルで聞くとキモいですね」

「お前進撃知ってんのかよ」


それからもしぶしぶ、といった感じの先輩を連れまわすこと数分
ちょっと小腹もすいてきたことですし、カフェに向かいます



「なにか食べます?」

「いや、コーヒーだけでいい」

「んー、わたしは……パフェでも食べましょうかね」

「太るぞ」

「……先輩。刺されますよ。わたしはあんま太らないので気にしませんが」

「お前の方が敵作りそうなもんだが……」

「わたしが周りの好感下げるようなこと言うわけないじゃないですかー」

「その遠回しに『わたしの周り』に俺は入ってない発言とかいいから。知ってるから」

「そうですね。先輩はわたしの傍、ですからね」

「……あほか」


あは、先輩てれてるー。
なんか恋人っぽい雰囲気ですよこれ、いけちゃいますかこれ!
……うん、それで失敗したから抑えますよ今回は。




「あれ?ヒッキー……と、いろは、ちゃん?」

「どうしたの由比ヶ浜さ……あら」

「へ?」

「あ?」


あ、奉仕部メンツがそろった。……じゃなくて!
あれ、これまずいです。修羅場です!


「奇遇ねこんなところで。部活を休んで遊びに来ていたなんて」

「いや、おまえに言われたくないんだけど……」

「あははー、用事っていろはちゃんと買い物だったの?いってくれればいいのにー」

「特に言わなきゃいけない理由もなかったしな。おまえらは?」

「私たちは今度のお疲れ様会の準備のためにちょっと買い物を、ね」

「そうか、悪いな任せちまって」

「いいっていいって!こっちは任せてよ!」

「……それでは、また」

「おう。じゃあな」

「ばいばいヒッキー。いろはちゃんもまたねー」

「あ、さよならでーす」



……あ、あれぇ?


「なんか普通だったんですけど」

「は?何が」

「え?だって……んん?」


てっきり気まずい空気になるものだとばかり……
あれー?わたしの早とちり?いや、でも結衣さんはそうっぽいし……。
それとも眼中にないとか?うーん。


「おーい。なに変顔してんだ」

「別に変顔なんかしてませんよ!ほら、ちょうぷりちーです」

「はいはい、かわいいかわいい」


うわーてきとうだー。
まったくこっちの気も知らないでー。



「ところで先輩」

「どうした」

「もうお腹いっぱいで食べられません」

「……それを俺にどうしろと」

「はい、あーん」

「やめろ。ほんとやめて」

「もったいないですよー?甘いの好きですよね?はい、あーん」

「……勘弁してくれ。別に残してもいいだろ」

「ぶー、しょうがないですねー。はいあーん」

「おまえ馬鹿なの?」


失礼な!
ちょっとした冗談ですよ!



カフェを後にしてまたぶらぶらと店内をまわる
あ、そうだせっかくなので先輩にプレゼントをあげましょう。
いろいろお世話になってますしね。なにがいいかなー。ガンダムとか?


男の子ですし難しいですねー。
マフラーとか季節にあってるんですけど、ちょっと重いかな。
あんまお金のかかるものは受け取ってもらえなさそうですし。

男子高校生といえば数珠ですか?戸部先輩あたりつけてそうですよね。
でも、先輩はつけないだろうし、つけてたらそれはそれで……。
むしろ数珠つけてる人馬鹿にしてそうですね。正直わたしも理解しがたいです。


小物……とか。あ、実用的なものとかいいですね。
となるとコップとか食器類でしょうか。



「先輩ここからちょっと別行動でもいいですか?」

「ああいいぞ。おれもちょっとみたいとこあるしな」

「じゃあちょうどいいですね。では、30分後にまた会いましょう」

「りょーかい」



てなわけで、先輩と別れ目的のものを買いに行きます。
……先輩のみたいものってのが気になりますけどね。






  * * *




「お待たせしました~」

「おつかれさん」


お目当てのものを購入し先輩と合流する


「先輩早いですね」

「まあ買うもの決まってたからな」

「じゃあちょっと待たせちゃいましたか?」

「いんや、てきとーにぶらついてたから問題ない」

「そうですか。それじゃそろそろ帰りますか」

「だな」


モール内を出て帰宅するために足を進める



けど、帰りたくないなー。
ずっと一緒にいたいです……。さすがに恥ずかしいんで口にできませんけど。


「一色、もう暗いし送るぞ」


……なーんも下心なくこんなこと言える先輩ってすごいですよね。


「なんですか!?暗がりに紛れてなにするつもりですか!?」

「なんもしねーよ……」

「あはは、さすがに悪いので大丈夫です」

「そうか」

「そうです」


しばらく会話もなく歩き続け、次第に別れなければいけないところまでくる。


「それじゃ……ここでお別れですね」

「だな」

「今日はありがとうございました。楽しかったですよ~」

「まあ、俺も楽しかった……かもしれん」


えへへ。素直じゃないですね~。



「そんな先輩にプレゼントです!はいどーぞ」

「んあ?なんで」

「いろいろお世話になってるお礼です。……いらないなら、その」

「あ、いや、ありがとな」


といってわたしの手からブツを受け取る

へっへっへ、どうですか。なんだかんだ拒否しそうな先輩でも、
こういってしまえば受け取らざるを得なくなってしまう。完璧ですね。


「これ、マグカップか?」

「はい、そうです。せんぱいコーヒーとかよく飲むんですよね?
 実用的なのを考えてみたんですけど……」

「まあよく飲むな。ありがとな一色」


ほとんど表情を変えない先輩が笑顔になる。それだけで買ったかいがありました。



「あー、お返しと言っちゃなんだが。これ、やるよ」

「へ?なんですか?」


綺麗に包装された包みを渡される
一応許可をとってその場で開けてみると


「わぁ……かわいい。シュシュですか」

「ああ。なんか迷惑かけてるし、その詫びだ。いらなかったら返してくれも―――」

「いえ、ありがとうございます!土下座されても返しません。というか迷惑かけてるのはわたしのほうな気が」


しばらく眺めてて気づく


「もしかして、結衣先輩たちのもってたのも先輩からのですか?」

「あー、まあ一応」


やはり。どうりでたまに見かけたとき大事そうにしてたわけですね。


通常なら、他の子にもあげているというのはマイナスな事実ですが、
この場合はむしろプラスですね。


先輩の求めた"本物"
それがあの二人なのだとしたら、わたしも、もしかしたら―――


そう考えていたらつい、口を開いてしまいました


「先輩のいう本物にわたしは入ってますか?」

「おい、もう忘れてくれっていったろ」


先輩は恥ずかしそうに顔を背けるが、わたしの真面目な態度を察してこちらに向き直る


「わたしは、先輩にとってただの後輩ですか?」



しばらくの無言ののちに小さな声が聞こえてくる




「………ただの後輩にプレゼントなんかするか」




あー、ははは。これは………嬉しいです。というかかわいすぎます先輩!



「もう!先輩のほうがあざといじゃないですか!」

「なにいってんだこいつ」



ですが一色いろはここで焦らなーい。
はやる気持ちを抑えます、抑えましょう、抑えました。




「それでは先輩、おやすみなさい」

「ああ、おやす―――」


その言葉を待たず、ぎゅっと先輩に抱き着く


「は、な、おい一色」

「えへへー照れてるんですか?別に初めてじゃないですしそんな慌てなくても」


と言ってるわたしの顔は真っ赤だろう。暗くてよかった。


「おまえ、新しいやつの攻略するとか言っておきながらこんなことしてていいのか」

「言い方わるいですよねぇ!?わたしが節操ないみたいじゃないですか!」


絶賛攻略中ですがなにか?


「それじゃ今度こそほんとうに、おやすみなさい」

「……おう。ほんとに送ってかなくてもいいのか」

「なんですか送りたいんですか?もしかして口説いてます?ごめんなさい、もう少しまってください」

「別にそういうわけじゃねーよ。じゃ、きをつけてな」

「はい、先輩こそ」


先輩に手を振ってその場を後にする



確実に前へ進んでる実感から、自然とスキップをしてしまう。
いつものニコニコしてる表情とは別の、なんとも言い難い顔をしてる気がする。



「んー……はぁ」


少し伸びをして息を吐く。その吐息は白くこの場の寒さを物語っている。
それとは裏腹に、わたしの体は熱いままだ。


すごくドキドキします。こんな経験いままでなかったですからね。
ちょっと恥ずかしいような気もします。


ふと目に入ったのは、自販機にあるコーヒー
いつもなら気にも留めなかった飲み物を、気づいたら購入していた


「んく、んく……ふあー、あっま」


なんか久しぶりに飲みましたけど、めちゃくちゃ甘いですねこれ。
胸焼けしそうな甘さが、まさに今の自分の心境のようでくせになりそうだった。



「……明日も会えるかな」



奉仕部でないわたしは、先輩に会う大義名分がないわけですが―――


「うん。もうちょっと攻めてみましょう。手始めに昼食を一緒に……とか」


多分嫌がるであろう先輩の姿を想像して、笑いが込み上げる。


最近は毎日"明日"を楽しみにしている気がする。


次はどんなふうにしようかなー、なんて考えながら甘ったるい液体を胃に流し込んでいた。





うえぇ……むねやけしそう。







***

数珠系男子…
ああ、麻倉か

ハハッwwwいろはすwwwwww
いろはすの今後に乞うご期待(ここで完結ってのは)

>>287
ないな

ララポがラブホに見えて会話が意味不明になるところだった

おう早く続きかけや
書いてください

ららぽをカタカナ表記とは千葉愛が足りてないな

モデルの稲毛高校に一番近いのは稲浜ショップかマリンピア。
稲浜ショップ内にはラーメン屋があるが、別に美味くない。

>>291
千葉人はマイノリティなのだよ

いろいろ理由をつけて逃げ出す怖がりで難攻不落のヒロイン
ヒロインを狙う計算高くてずる賢い肉食系主人公

順調に間違っているなぁ

ハハ、クオリティ低wwww

???『ハハッ、舞浜並にクオリティ高いね!』

いろはす可愛すぎてワロタ




「で、どうすればいいと思いますか」

「なぜ俺に聞くんだ……」


またも生徒会室にて、副会長に話をふっかけてみます。


「んと、なんとなく?ですかね」


どことなく先輩と雰囲気が近いからですかね。
勘違いされても困るんで言いませんけど。


「それより、そこに同性がいるだろう」

「えぇ!私ですかぁ!?……そ、その、そういった経験はないのでちょっと」

「おれもないんだが……」

「えーそなの?なんか大人の付き合いとか知ってそうじゃない?」

「なぜそうなる。そういうおまえはどうなんだ」

「僕もないよー。まだ遊んでいたい時期だからねー」


あはは。なんか面白くなってきましたねー。
案外固い人たちかと思えば割と普通に青春したい気持ちもあるのでしょうか。



「以外ですね。城ノ内さんとか経験豊富そうですが」

「びみょーなとこかな。付き合う一歩手前までが楽しいっていうかさ」

「あ、それわかります」

「わかるのか……。それって、その……不健全じゃないのか」

「やだなー副会長ー。純情だなー」

「このくらい普通ですよねー?なにもいけないことはしてませんよー?」

「……うるさい」


なんか副会長って面白いですよね、いろいろと。


「それよりもいろはちゃんの恋路を手伝わないとね。ね?副会長」

「そうだな。仕事に支障が―――おい何見てる」


ふふ。最近は楽しいですね~。

先輩、いまごろ何やってるんだろ。

………ちょっと奉仕部に遊びに、って無理ですよねー。



「弁当でも作ってやるってのはどうだ?」

「やだー副会長かーわーいーいー」

「貴様……」


わなわなと震えてる副課長を本田さんがなだめる

しかし弁当、弁当ですかー。いやーそれはさすがにハードル高いですよ。
いやでも後輩からの差し入れとかポイント高くないですか?
まさにハイリスクハイリターンですね!ドヤァ



「えと、それもありだと思うんですけど、まだはやいかなーなんて」

「たしかに付き合ってもない異性に弁当なんて何ごとかって話だよねー」

「あ、でも一緒にお昼くらいならいいんじゃないかな」

「それも考えましたけど……。前狙ってた人がそこのクラスなんでちょっと」

「メールで呼び出せばいいじゃないか」

「あの人はメールごときで動きません」

「……それはなんか。大変だねー」


多分みなさんびみょーな顔してたと思います。
最近先輩のことばかり考えてたから"普通"が先輩基準になってる気がします。



「いろはさんなら結構がつがつ行きそうなイメージでしたけど」

「そんなことないですよ。あまりアタックしてると引かれそうですし、
 周囲の目も悪くなりますからねー。あとみんなに優しいみたいな
 キャラなので目立った好意はわたし的にちょっとまずいって感じです」

「聞きたくない話だなそれは」


なんとも言えない表情で腕を組んでいる
まあ、最近のわたしは結構がつがついってる気もしますがね。



「やーあの……ヒキタニくんだっけ?なんかメタルスライムを思い出すよ」

「ん?ドラクエのはなしか?」


副会長はただのゲームの話にしか思ってないのだろう
本田さんは理解してるのか、くすくすと笑っている


「でも、最近のお話を聞いてる限り、結構よさそうな感じですよね」

「そうだな。よくわからんが好感は持たれてるように思えるぞ」

「ですよね!ふっふっふ、一色いろはが先輩を落とす日も近いですね!」


ほんとうにそうならいいんですけどね。



「それで、次はどうするのか決めたのか?」

「うぐ……。どうしましょうか」


はい、ここで振り出しにもどりまーす。
人生ゲームで振り出しに戻されるときの屈辱は異常。

あ、ある意味人生のゲーム中ですね。


今がゲームだとしたら終わりはどこでしょう?
け、けっこんとかですかね。


やーでもわたしたちそこまでいけるかなー。
行けますよそりゃ先輩一途ぽいですし、わたしも先輩になら一途になれる気がします。

なんかもう付き合ってる感じで話してるのはスルーで。
話してませんけど。



「あいつと接触するためには、偶然会うか、依頼しかないだろうな」


なんかもう超メタルスライムって感じですね。
わたしのいろは斬りで手なずけたくなります。


「なんかイベントでもやるー?」

「うぐ、ちょ、ちょっとしばらくはいいです」


やめてくださいよー忘れてたのにー!
枕があったら抱き着いて転がるレベルです。
先輩がいたら抱き着いて甘えるレベルです。えへへ。


わかってて言ってるであろう城ノ内先輩に激オコです。



「まあダメもとでメールしてみたらいいんじゃないかな、お昼一緒にどうですかーって」

「そうだな。結果はダメだろうが連絡取らなければ始まらない」

「ダメなの決定なんですね……。でもそうですねとりあえずそれでいってみましょう」


そこで本田さんから意見が


「奉仕部の方々と仲良くなるのはどうですか?」

「あ、それです!将を射んと欲すれば……豚?をなんとか!」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、だ。
 ……まさか彼女たちの事を豚なんて思ってないよな?」

「し、失礼な!そんなこと思ってません!」


やだなー性悪みたいに思われるじゃないですかー。
いや、こう考えてる時点で充分悪いかも……。


「でもそれなら奉仕部に遊びにいける口実が出来るよねー」

「ですよね、いいと思ます」


うんうん。でもそれが難しいのわかってますか?
結衣さんはともかく雪ノ下さんとかどう考えてもラスボスですよ。

そういえばお姉さんがいるんでしたっけ?その人はきっと魔王ですね。

現段階で仲良くなれる気があまりしないので置いておきましょう。



「まあそれは後々考えるとして、とりあえず明日のお昼でも誘ってみます」

「おう、がんばれよ」

「ファイトー」

「応援してますよ!」


なんと心温まる方たちでしょう!
わたしは高らかに発言します!


「それでは今日の生徒会はこれにて!」

「あほか帰さんぞ」




ちぇー。





  * * * 

ハハ、ここまでwwwwww

ハハ、乙wwwwww

千葉的に「ハハッ」の方が合うな

副会長は原作でもいいやつだよなぁ

ハハ、乙wwwwww

いろは可愛いよいろは

● ●

ハハ、乙wwwwwwwwwwww

続きが待ち遠しいのおおおお

いい加減にしろ
夢の国の住民に見張られているぞ

葉山どこいった?

ハハ、クオリティ低wwwwwwww

ハハッ
いろは可愛いな

なんかいろはすも可愛いんだが副会長も可愛い
なんだこの気持ち……

愛だよ

ハハ、クオリティ低wwww

なんで俺ガイルスレはこんなにガキが多いんだ

>>318
つ【学生×夏休み】

ハハッ

>>242←こいつが元凶か

アッー!

僕は好きだよ、めげずにがんばってくれ

>>321
うざかったら「ハハ、精神年齢低wwww」って流せばいいのに

更新はよ!

一週間分の投下はよ

しばらく家あけてたすまん。あとしばらく忙しい
続きも一応書いてみたけど今まで以上につまんないから書き直す
逃亡はしないからちょっとまっててね

待ってるぜ

来週の土日かな

待ってる

愛してるぜ

  * * * 



というわけで、
先輩にメールを送ってみたわけですが。


見事に やだ の二文字で帰ってきました。


ええ、わかってますとも予想通りです。
めげずに送り続けますよ~。


『えーいいじゃないですかー。どうせ一人でしょ先輩?』


『一人がいいんだよ』


『お話しながら食べるとおいしく感じません?』


『まったく』


くぅ、冷たい反応!返信が簡素すぎてちょっと不安になるレベルです。
でもこの人はこういう人ですから。……めんどくさく思われてませんよね?


しかーし!この流れも想定済み!ここからが本番です。
なら今までの流れいるか?てのは無しで。


『一緒に食べましょーよー。いまなら可愛い後輩にあーんしてもらえます』


『だからいらねーって……。つーかなんで俺なんだよ。お友達と食べとけ』


『実はわたしあんまり仲のいい友達いないんですよー。先輩となら気兼ねなくお食事できるかなーって……』


『あざとすぎる。あとお前が友達いないなんて想像できねーよ』


ちぃ!普通の男子なら今のでいけてますよ。
……それに友達いないってのも、案外嘘じゃないですしね。

いや、ぼっちとか嫌われ者とかいう先輩のような属性はないですよ?
むしろ愛されキャラです☆……でも、そのせいで特に親しいと思う人がいないんです。

今まではそれでいいと思ってたし、一緒に遊ぶような友達もいる。
けれど"本物"ではない気がするから。


なんかもう呪いみたいですね。ないと気づいてしまったら必死にそれを求めたくなる。
この考え方は一生付きまとうんでしょうか。



暗くなってしまったのを払うかのように、慣れた手つきでメールを打ち込んでいく。




『ぶーぶー、一回くらいいーじゃないですかー。減るもんじゃないですし』


『減る。主に俺の精神力が』


『というかもしかしてわたしに気をつかってたりします?』


『それはない。めんどくさいことになりでもしたら俺が大変だからな。俺のためだ』


やっぱり気つかってますよね。わたしは何に対して気をつかってるか書いてないのに。
多分、嫌われ者の自分と親しいことで、わたしに害が及ばないようにしてるんでしょう。多分。
……半分くらい自分のためにも思えてきました。むしろ9割ぐらい。

まあいいです。最終兵器投下しますねー。


『じゃあ先輩の教室に突撃します。まっててくださいね~』

『どうぞご自由に』


ははーん。これは来てもいいがそこに俺はいないぞってことですね。
授業終わったと同時にさっさと抜け出すつもりでしょうがそうはいきません。



『じゃあ勝手にさせていただきまーす。逃げないでくださいね。
 あ、先輩のお弁当作ってきましょうか』


『いらん。小町の愛妹弁当があるからな』


『それではまた明日~』



スルーするー。笑ってもいいですよ?


はいミッションこんぷり~つ!……なんかすごい疲れた。
しかもなんだろう……今更ながらちょっとドキドキする。


まあいつも通りでいきましょう、おやすみなさ~い!







  * * *



間もなく授業終了のチャイムが鳴るという頃、わたしは先輩のいる教室の前で待機中です。
ちなみに体調が悪いってことで教室を抜け出してきました。てへぺろ。


チャイムが鳴り、程なくして教室の戸が開く


「せ~んぱい」

「……なんでいんだよ」

「待ち伏せてました。にひひ~」

「みりゃわかる。生徒の模範となる人間が授業さぼっていいのか」

「失礼な!さぼってませーん。体調悪かったんですぅー」


1回だけ!1回だけだから許して!


はぁ~、とめんどくさそうなのを隠しもせず豪快に溜息を吐く先輩。


「じゃ、俺は飯食いにいくんで」

「御一緒しますよ!」

「来なくていい。つーかなんでそんなに俺に構うんだよ。狙ってるやつはどうした」



む~、このままではいけませんね。
………なら。



「はい。だからそのことでお話があるかな~なんて……」



と返すと先輩はガシガシと頭をかいたあとに渋々といった感じで、わかったよと返してくる。



「裏庭でいいか」

「そんな人目につかないとこでわたしに何をする気なんですか!?」

「うぜぇ……」






  * * *



「んで、話って具体的になんだ。依頼と受け取っていいのか」


裏庭にあるベンチに二人で座り、お弁当を広げつつ話をふってくる。


「んーと、依頼って感じじゃ……なくてですね。相談?に近いかもしれません」


微妙にぼかしつつとりあえず先に食べちゃいましょう、という雰囲気を醸し出しておく。


というか流れで進んできてしまいましたがこれ、どうしましょう。
もうわたしの想いをぶっちゃけちゃいましょうか。



「……話が長引いて飯食えないのは嫌だしな。先に食ってからにするか」

「そうですねー。はいあーん」

「いや、もうそれはいいから」



まったく。可愛い後輩のあーんを断るなんて尋常じゃない防御力ですよねー。

でも、なんとなくこのやりとりが好きな自分がいる。
これ先輩ただ恥ずかしがってるだけだったりするんじゃないでしょうか。ないですね。



そうだ、せっかくだし情報を引き出してみましょう。
情報こそが現代における最強の武器です!



「先輩いつもここで食べてるんですか?というかいつも一人?」

「一人で悪かったな。いつもじゃないが大体な」

「雪ノ下さんとかと食べたりしないんですか?結衣さんならクラスも一緒ですよね?」

「ない。あいつらは一緒にいるらしいけどな」

「ああ、先輩。奉仕部という少人数の場でさえハブられてるなんて……」

「やめろ哀れみのまなざしを向けるな。むしろ少人数だからこそ俺のぼっちスキルが輝く」

「なにいってるんですか?……本気で何が言いたかったんですか今」



実際どうなんでしょう。そこに入りたい気持ちってあるんですかね。



「じゃあ先輩休み時間ってなにしてるんですか?瞑想?」

「瞑想を真剣にやってる人に謝りなさい。読書とかだよ」

「めんご。そういえば先輩博識ですもんね。雪ノ下さんもそんなイメージありますね」

「まあイメージ通りだな。割とそこは話が合うとこではあるが、バトルになることもある」

「……あの、後半の意味が解らないんですけど」

「いろいろ知識が多いと軽く論争になったりするからな。
 加えてあいつは負けず嫌いだからな。どうでもいいことでも勝手に勝負になったりする」

「そんなもんですか~」



ふ~ん。やっぱり仲いいですねー。
わたしも話題作りのために本でも読みましょうかね。すぐ寝れそう。
先輩!昨日はよく眠れました!

それならあるね♪ ありえる♪



「でも、先輩と雪ノ下さんはわかるんですけど、結衣さんと仲いいのはなんでですか?
 二人とタイプ違いますけど」

「ああ、あの二人な。なんかしらんがあいつが雪ノ下に懐いてるんだよな。
 雪ノ下もまんざらじゃないみたいだし。タイプの違いなんか関係ないんじゃないか」

「んと、先輩がそこに含まれてないのは意図的でしょうか」

「基本蚊帳の外だからな。あまり百合百合されると肩身が狭い」

「3人しかいない部室でハブられるなんて、だれにでも出来ることじゃないですね」





しばらく会話……というかわたしの一方的な聞き込みは続き、
二人とも弁当の中身がカラになると、先輩が本題に入る。



「それで話ってのは?」



あぁ~ついにこの時が来てしまった。
気分は悪いことしたのが親にばれたときの感じです。


しかし周りにはあまり人はおらず、会話の内容を聞かれることもないでしょう。
ここで一気に踏み込むのもありか、否か。


ここで逃げることもできますが、せっかくのチャンスのうえ、次が来ないかもしれない。



わたしの言い辛そうな態度を察して、先輩はただ黙って待っている。


とりあえず無難な感じに攻めつつ相手の反応をみましょう。
いつものように明るくつとめてきいてみる。



「えと、その狙ってる人がですね~全然気づいてくれなくて。
 結構アタックしてるつもりなんですけど、その堅物が手ごわくて。
 どうすれば振り向いてくれるんですか?」


「いや、俺にきかれても……。つーか今更だが、俺に恋愛ごとの相談しても力になれないと思うぞ」




気づいてない。いや、気づいててとぼけた振りしている可能性もありますね。
今の話も本心で言っているようにも思えますが、この場から立ち去る算段にも思えます。
さすがに深読みしすぎでしょうか。

とりあえず念のため退路を塞いでおきます。


「いいんですよ。こんな話できるのは先輩ぐらいですし、聞いてもらえるだけでも」

「そうか。……あー、具体的にどんなことしてきたんだ?」

「それきいちゃいます?プライベートに踏み込んじゃいます?」

「すまん。不躾だったな」

「メールしたり、買い物に付き合ってもらったりですかね~」

「いうのかよ」


作戦その1
これ、自分にもあてはまるんじゃね?と思わせること


大抵の人ならここで変に考えますよね~。勘違い乙!
でも勘違いしてくれていいですよ?勘違いじゃないんだからね!

やばいなんか意味わかんない。




「確かに結構アタックしてるな。異性と買い物なんてそうそうないイベントだろうし、
 もう相手は勘違いによりドキマギしてるまである」



ならドキマギしてください。
この人わざと言ってませんか?と思うレベル。


「でも、まったくそんなそぶりみせないんですよね~」


といいつつ、先輩のことを見つめます。


作戦その2
不自然なタイミング意味深な態度で勘違いを誘う



「いや、そんな期待されてもそうそういいアイデアなんかでねーよ」



勘 違 い 乙 !

この人実は馬鹿なんですか?
わたしのことをあざとい後輩認定してるのでこの手の攻撃は無意味ですかねー。


ええい!作戦その3!
相手の服の一部を引っ張ってもえもえきゅん作戦!

しかし効果はいまひとつのようだ

ですよねー!前々からやってるのに動じないんですもんわかってました!
なんかテンションおかしくなってきた。




「はぁ~。なんかもういいです。疲れました」

「……あー、すまんな力になれなくて」

「謝らないでくださいよ。先輩のそういうとこわかってて回りくどいことしましたし」

「あ?」


……もうぶっちゃけてもいいよね。



先輩って鈍感なのかもしれませんが、意図的にそういうの避けてる感ありますし、
こんな遠回りなやり方ではなにも進展しないでしょう。
失敗を恐れて、安全なやり方ばかり選んでいたら、
本物なんて手に入らない……そんな気もします。



先輩に向き直り、じっと見つめる。
握った拳が痛い。心臓は今までにないくらい早鐘を打ち、声が震えそうになるのを必死に抑える。

ほんと、こんな経験初めてだ。
いざ本気になってみるとこんなにも怖いなんて。


でも我慢できなくて、失敗してもいいなんて思えないけど……それでも。
現状を破壊してまでも、欲しくなってしまったから。


これは作戦その4です。
多分、ここまで先輩に踏み込んだことをした人はいない……と思います。
だからこれはわたしを、一番に、印象付けるための……作戦。

断られるのは怖いけれど、それでも先輩に近づけるなら成功……ですよね?






「先輩、わたし、その……。わたしが好きなのは――――」




「あ、おーいいろはす~。ん?お、ヒキタニ君も一緒じゃーん。どしたん珍しい」


わたしが想いを伝えようとした瞬間、
向こうから戸部先輩、葉山先輩たちグループが歩いてくる。

思わぬ空気ブレイカー出現にわたしは声も出なかった。


「……おい、戸部」

「ん?どったんはやとく……あ、れ?もしかして俺お邪魔しちまった、か?」


やばい、ここは誤魔化さなきゃ。
……先輩に迷惑がかかる。


「いえいえ大丈夫ですよ~。ちょっと奉仕部に相談ごと持ってきてただけなんで」

「あ、あ~焦ったわ~。俺としたことがやっちまったかと思ったわ~」

「あはは、なんですかそれ~」


………ほんとなんですかそれ。


戸部先輩はまだわたしが葉山先輩のことを想ってるって思ってるでしょうし、この場は大丈夫ですよね?

それにしても瞬時に笑顔貼り付けられるわたしの技量には惚れ惚れしますね~。
とりあえず明るくしなきゃ。……あまりいやな感情は持ちたくないですから。




「なに?ヒキオいんの?」

「2人ともはろはろ~」



後ろから女王こと三浦先輩と妃菜先輩が続く。

先輩は、うすと返事をしている。
変な返事ですねー。



「みなさんおそろいでどうしたんですか?もうお昼休み終わっちゃいますよ~?」

「え、まじ?んだよ~せっかくフリスビーやろうとおもってたんによ~」

「だからいったろ時間あんまないぞって」

「……じゃあなに?あーしたち無駄に歩かされたわけ?」

「ちょ、ごめんて~。飲み物おごるからさ~」

「あーしスタバのフラペチーノが飲みたいんだけど」

「えぇ!?そこは缶ジュースとかじゃないの!?」


三浦先輩が半ギレになったり周りが茶化したりして盛り上がる。
わたしはそのなかに混じる気分にもなれず、その場を離れるとする。



「じゃあみなさんおつかれさまでーす」


戸部先輩をはじめ、じゃーなーなんて返事をきいてから足を動かす。
去り際に、すまないなんて声が聞こえた気がするが、気のせいだと思います。


さりげなく、じゃあおれも戻るわ、なんて言って帰る先輩のあとに続いていく。





無言で歩き続ける。……さっきの続きを聞いてきたりしないのでしょうか。
それとも聞きたくなかったり……なんて。


「じゃあおれはこっちだから」

「あ、はい。話聞いてくれて……ありがとうございました」

「……気にすんな。じゃあな」

「はい……それでは」



先輩が先に進んでいくのを見送り、わたしはその場で立ち尽くします。

なんかどうしようもない空気になってしましました。
ほんっと最悪なタイミングでしたね。……いってもどうしようもないので忘れるとしましょう。




まだ終われません。……終われません、が。
なにかが終わってしまったような気分になるのは………気のせいでしょうか。




***

大したことじゃないけど>>341の2人誤字った
正しくは二人ね

本日はここまでで


マジ戸部空気読めない奴



相変わらず面白い

ハハ、空気読めないw

難易度たかい

おつおつ!おもしろい!

ちなみに姫菜です(小声)

ハハッ、勘違い乙wwwwww

ハハ、クオリティ低wwww

ハハ、愛してるwwww

>>353
安定のSSLクオリティー
sageができないのがSSLのレス

そしてスルー出来ないもしもし

>>355
自虐しなくていいよ

末尾0もOもほとんどスマホだろ?仲良くしろよwwww

SSなんか読むヒキヲタなんだしそこまでのモラルめてどうすんのさ
うざかったら「ハハ、クオリティ低wwww」って作者叩いときゃいいのに

まあ落ち着けよ

>>358
作者ワロタ


こんなにいいいろはss久しぶりだわ

とりあえず>>1のメンタル強くてよかったわ

これ勝手にいろはの友人役出しちゃってもだいじょうぶかね
ほんのチョイ役なんだけど

おけ、待ってる

作者の自由に書けばいいんだよ

いいと思う
続きはよ





告白未遂から数日、またもわたしは何もできずにいた。
言葉にできない気まずさからこれまた自分から距離を置いてしまっている。

しかし、前回と違うのは距離を置いた理由だ。
先輩に顔を合わせるのが恥ずかしい、というなんとも可愛らしいものとは違い、
先輩と顔を合わせるのが怖い、というものである。



まさか自分で軽く引くくらい先輩に惚れこんでいるというのに、
こんなにも会いたくないなんて思うことに驚きだ。



なにが怖いって?
そりゃ避けられてしまうかもしれないという不安ですよ。
先輩と会って、もし、互いの態度が上っ面なものになってしまったらどうしよう、とか。
自然と先輩がその手の話題を潰してきたり、わたしのアピールを避けてきたりして。


そして気づけば今までのことがなかったかのような関係に―――



「なったらどうしましょう……」


「……ここは相談を受けるとこではなく、生徒の見本となる者の仕事場なんだが」


「わたしの唯一の安らげる場なんですよ~。大目に見てくださ~い」



はい、また生徒会室でございます。
わたし専用奉仕部みたいな?ハッハッハ。


でもここでしか不満を吐けないですしー、ストレスを貯め込むのはよくないっていいますしー。



「その関係を潰したくないならなおさら距離をとるのはまずいんじゃないのか。
 だったら、関係悪化を恐れず素直に気持ちをぶつけてみるのはどうだ」

「それもそうですけどー。それができたら苦労しないっていうかー」



その素直な気持ちをぶつけられる相手ならいいんですけど、相手の鉄壁を崩せる気がしません。
ていうか風ですね風。流される的な?なにそれ辛い。




「あのぉ、逆に距離をとるのもありなんじゃないですか?恋愛ではよくある戦法ですよね?」

「こんな状況じゃなきゃありかもですけど、そのまま疎遠になっていく気がします……」


目があっても何事もなかったかのように逸らされるなんて想像して絶望。
それにすでに距離とっちゃってますし。


「そもそも彼は避けてたのかな?もしかしたら言ってくれるのを待ってた線もあるんじゃない?」

「あーそれもあるかもですねー。でもあの先輩ですし……」


なんか楽観視できないってゆうかー、
うわぁ……いつになく弱気だなー、わたし。


「その不安てのは、あくまで会長の想像だろ?だったら本人はどう考えてるかわからないじゃないか。
 もしかしたら城ノ内のいったとおりかもしれないぞ」


……まぁ確かにわたしが勝手に決めつけてるだけですけど?
ちょっとマイナスになりすぎ、ってのは自分でもわかってるんですけどね


自分で思ってるほど深刻な話でもないかもしれないし、わたしの捉えようの問題だ。
これまで通り当たっていけばいいのだろう。


……そうですね、やることはどうせ同じですし。
ちょっと空気が悪くなった程度どうってことないです。

と、いうことにこの場ではしておきます。




「……副会長の言うとおりですね。すみません!弱気になってました!
 それじゃさっそく行動してきます、皆さんお疲れ様でした!」



「待て。それとこれとは話が別だ。この書類にハンコを押してもらう作業をしてもらおう」


ですよねー。







  * * *




あの場ではああ言いましたが、弱気なのは変わらずで、行動する気もさらさらありません。
こんなんじゃだめだなー、と思いつつもどうしてもいい方に考えがいかない。


でもこのままでは、全てが台無しになるのも事実。
だったらダメもとで……最近ダメもとで行動することが多い気がします。

無理なものに手を出さず、自分を傷つけずでいたのに。
100%以外は0%くらいの考えだったのに。



「はぁー、早く帰ろ」



足を速めた矢先に、今は会いたくなかった人と出会う。


「……よお」

「あ、どうも……先輩」


少しの間沈黙が続き、先輩のほうから口を開く。


「もう帰りか?」

「あ、あー、いえ、まだ仕事途中でこれからちょっと」

「そうか頑張れよ」

「はい~。それではおつかれさまでーす」

「おう」


本当はもう仕事が終わり帰るところだったのだが、つい嘘をついてしまった。
どう考えても不自然……でしたよね。あぁ…ド壺にはまっていく。



先輩にああ言ってしまった手前、今すぐに帰るわけにもいかずそこらを適当にぶらぶらする。


すると一人の教師が目に留まる。
どうやら、あちらもわたしの存在に気付いたようでこちらに寄ってくる。


「おお一色、生徒会ご苦労だな。マネージャーもしてるのに偉いこった」

「いえいえ、まだぜんぜんうまくいってなくて~」


暗くなっていても笑顔を取り繕うことは忘れない。
考え方が変わってきていても、いままでのスタイルまで変わることはない。

見た感じ体育系のこのおっさんはサッカー部の顧問である。


「いやいや頑張ってるとおもうぞー?そんで、忙しいだろうが部活の備品が足りてなくてだな、
 悪いんだが補充しといてくれないか」

「……あ、はい~了解です!」

「すまんな忙しいのに」

「それを承知の上で生徒会入ってるんで、どうってことないです!」


まったくそんなことはないのだが。
半ば洗脳されて入ってしまった感じですし。


顧問は一言礼を言うと職員室の方に向かって歩いていく。



なんでわたしなんですかねー、マネは他にもいるでしょうに。

たまたまそこにいたからだろうか。なんて運の悪い。
なんか今日はレアエネミーのエンカウント率高いですねー。
ボールが少ない時にでる伝説ポケモンみたいな。ポケモンとか金銀くらいしか知りませんけど。


「頼まれたからには仕方ないですね~。明日にでもいってきましょう」


ついでに戸部先輩も使おう。別にこの間の腹いせとかじゃないですよ?
使え……優しい先輩なので協力してもらうだけです。



嫌なことから逃げるときに人の心は少し軽くなるもので、
先輩に会わなくていい口実が出来たことに少なからず喜んでしまっているわたしがいた。



そんな自分に気づき、胸のつかえが酷く、重くなったような気がした。










  * * *




「ねーねー、いろはちゃん。最近あの先輩と一緒にいるとこ見ないけど、喧嘩でもしたの?」

「そうそれ。気になってたんだよね~」

「はへ?」


クラスメイトであり、わたしの仲の好いお友達である二人が変なことを聞いてくる。


「あ~葉山先輩?いや~今は距離をとって様子見というか?逆に意識させちゃう作戦みたいな?」

「あれ?まだ葉山先輩狙ってたの?てっきりあの先輩に乗り換えたかと思ったのに」

「え……」

「ほら、なんてったっけ?ひき……ヒキガ……タニ?あ、そうだヒキタニ先輩だ!」


違うんですけど。ヒキガタニて……弾き語りみたいでちょっと面白いじゃないですか。
ていうか、え?なんで?そんな目立ってましたっけ?


「あ、あ~そっちの先輩ね、あはは。そんな一緒にいたかなー?
 仕事の話くらいしかしてなかったと思うけど」

「えー、よくみるよー。この間一緒にお昼とか食べてたんでしょ?てっきり付き合ってるのかと」

「それ思った。なんかいい雰囲気だったじゃん?」



これはあれか。葉山先輩を狙うものを一人でも多く潰したい女子の心理戦か。
別にもう狙ってないんでどうでもいいですけど。

ていうかなんでこんなガッツリ知られてるんでしょうか……。
わたしって実は隙だらけ?先輩に好きだらけ故に。うわつまんね。

というかこの手のネタは今はちょっと堪えますね……。


先ほどまで笑ってた二人だったが、急に真面目な顔をする。


「それで、実際のとこどうなの。ヒキタニ先輩好きなの?」


あーちょっとめんどうだなー。
これは、絶対言わないでね!わかった!の繰り返しで拡散していくパターンですね。


そこそこ仲のいい友人だったが、わたし自身、そこまで踏み込もうとしていないので、
どうも薄っぺらく、深読みするような間柄である。

正直もういいかなーとか思ったり。


「……まあ、そのー。うん」


と答えると、きゃーやっぱねーキェアーなんて盛り上がる。
ああ、こりゃネタになりますね、と思ったが予想外の返事をもらう。


「よかったねーいろは。やっと本気になれる人見つかって」

「うんうん。いろはちゃんなんか誰に対しても妙な距離とってたし心配してたよ~」

「ね。だから葉山先輩狙うって言ってたときは、あーってなったけど」

「わざわざ一部で悪評の絶えない先輩を選ぶってことは、よほどのことがあったわけでしょ」


……なんだろうこれは。新手の戦略でしょうか。
日々女子は周りの関係を壊さず攻撃を与える技術を産み出してるのでしょうか。
わたしもそれ系の女子ですけどね、えへっ!



「あははーそうかばれてたのかー。わたし的には上手くやってると思ったんだけどな~」

「もう超丸わかりって感じだったよ~」

「そーそー。……だってあの先輩と一緒にいるいろはって、一番楽しそうにしてるんだもん」

「妬けちゃうよね~」


そう口にした二人は、戦略女子特有の嫌な笑みではなく、どこかやさしい笑みだった。


「もー妬けるってなによ」


わたしはこの空気をどうしたらいいかわからず戸惑い、誤魔化すように笑う。


「実際さ……あたしらはいろはと仲いいつもりだけど、いろははそう思ってないのかなーって思うことがあってさ」

「うん。なんとなく距離あいてるのかなーなんて……思ってた」

「あ……え、と」

「まあ、あたしらの勝手な思い込みだし、だからなに、って言えないんだけどさ」

「もしかしたら、あんまり楽しくないのかな~って」



核心をつかれドキッとする。
予想外の彼女たちの分析に素直に驚いた。……いや、そんなものではない。

彼女たちと遊ぶのは楽しい。そりゃ当然だけれど。
でもそれは遊ぶことが、だったのか彼女たちだから、だったのかは……わからない。



「だからあの人と本当に楽しそうにしてるいろはが見れてよかったよ」



ちょっといい笑顔でニコっとしている。
対するわたしは少し泣きそうだ。


わたしの友達はちゃんと友達だった。
なにいってるか自分でもよくわからないけどそういうことだ。


分析してたとかそういうのじゃなくて、純粋にわたしを見ていてくれたのだ。
……もしかして本物というのは彼女たちのようなことを言うのだろうか。
わたしのほうが偽物ということか。

いろいろ考えていたわたしが恥ずかしく思える。


「ちょいろは大丈夫!?」


気付いたら涙が出でいた。
なんかいろいろと申し訳なくて……。



「あは、は……。だいじょうぶ。ちょっと目に大量のゴミがね」

「ええ!それだいじょうぶじゃないよ~」



泣き止むまでのほんの数分。
さすられていた背中はとってもあたたかかった。











「いや~お見苦しいところをお見せしました~」

「ほんとだよ、びっくりしたわ」

「そんないいかたダメだよー」


三人ともあはは、と笑いあう。


「……ごめんね二人とも。ありがと」

「ん~なにが~?」

「えへへ~」


軽い青春劇に皆少し恥ずかしく感じたのか軽く流し、話を戻してくる。


「それで!あの先輩と喧嘩したわけ?どうなの?」

「え、えーその話まだ続くのー……」

「そりゃいろはの一世一代のバトルですから!」


こういうのは気の持ちようの違いなのだろうか。
なんだか楽しく思える。

今までも楽しかったといえばそうでけど、それとは別に、ね。


「まあ、ちょっとギクシャクしてたけど多分大丈夫」



その時のわたしの顔はいい笑顔してたんじゃないかなと思う。
二人とも、おお、なんて言ってるし。


多分、もうだいじょうぶ。
なんとなくだけど、わたしにも"本物"が見えた気がするから。



彼女たちはずっと本気だったのだろう。わたしが見ていなかっただけで。

これで本物になれたとは思わないけど、少しでも近づけたらいいな。



「よし!その大丈夫っていう根拠を聞かせてもらおうかのぅ~」

「あはは、誰それ~」

「秘密で~す!」

「実はノープランだったりするんじゃないのー?」

「はい」



また笑いがうまれる。




なんかすごくいい気分です。



授業開始したにも関わらず笑いが止まらなくて、
こんなわたしの姿を初めて見たであろう先生は驚いてなにも言えなくなってました。

まあ、あとで怒られましたけどね。







  * * *


これにて導入終了
次から動きますかね

ごめん海老名さん気付かなかったよ

おつ



相変わらず面白し

乙です

ハハ、愛してるぜww

>>386
黙って下げろよ糞SSL

なぜsageと書き込むことすらできないのか

友達出さない方がよかったな
つうか対八幡以外書かない方がいいよ
書けば書くだけいろはのキャラくだらなくなってくだけっていうか
ラブコメだけに絞った方がよくね?ぶっちゃけそれ以外の才能無いべ
前も誰か同じ様なこと言ってなかったか

>>389みたいなゴミは無視して好きに書いてくれ
というか普通に面白いからそのまま頑張って

「普通に面白い」って作者馬鹿にしてるつもりじゃなければやめてあげて

普通に面白い

更新早いし面白いから期待してるよ

>>391
日本語理解できる?

お疲れ様ですもっ

いや、普通に+褒め言葉はスラングだから、日本語としてはどうかと思うぞ

素直に「面白い」と言えばいいところを、「普通に」を付けることで「面白いけど、そこまで面白い訳ではない」、
「手放しで褒められる訳ではないけど、まあ面白いんじゃない」といった失礼なニュアンスが含意されてしまうからな。
悪意がないなら誤解を避けるためにも止めた方がいい表現。

ここで言う普通にってのはお世辞とか過大評価ではないって意味だろ

使い方はともかく、「普通に面白い」の意図と意味も汲めない奴らばっかなのか

普通につまらない

>>399先生が詳しく解説してくれるらしいから、みんな心して拝聴するように

猛アタックはじまりますか?

アタックの応酬

時代と共に変わっていく言葉の意味も理解出来ない人々

いろはすかわええ
安定して質が高いから期待

普通に面白いって褒め言葉としてそんなにおかしい感じはしないけどね
相手がプロとかそれについて勉強してる人とかだったら別だろうけど
日本語として正しいのかどうかも知らない

知らないなら黙っとけ

めっちゃ荒れててワロタwwwwいやほんとすんません
正直ラブコメ以外のとこ書いててこれつまんねって思いながらも投稿してきたんだけどさ
最初がなんかシリアスチックに書いちゃったもんだからそうしなきゃなーみたいな流れでこうなっちゃいました

でも充分二人の時間稼いだんでこれからはラブコメが続く感じになる予定
無駄にイベント加えないよう気を付けるよ

背伸びしすぎたせいで不快な思いさせてごめんね

>>407
そうやってすぐ返せる人って羨ましい

俺ガイルスレって内容にかかわらず荒れやすいからあんまり気にしないほうがいいよ

気にせず>>1の思うように書いてくれればいいんだよ

期待

中身に関して荒れてるわけじゃ無いから、気にするな

表面だけのラブコメよりゃ、礎になるものをきちんと描いてからのラブコメのほうがいいに決まってるから安心しろし

>>414みたいなゴミは無視して好きに書いてくれ
というか普通に面白いからそのまま頑張って

ラブコメ以外のとこも読んでて楽しいんで書いてください

>>415
お前が文章を読めもしないことだけはわかったよ・・・

>>417
どう見てもフォローなのにな、どんまいw

>>415
ここまで馬鹿だと実社会で生きていくのも辛いレベルだろうな…
流石に気の毒すぎる

おい誰か「なぜ俺ガイルスレは荒れるのか」で論文書いて発表しろよ

SSLがいるからさ

更新じゃなかった……( ´・ω・`)
静かにね

理由の無いSSL叩き

>>394に「sageろよクソが」みたいな文句が出なかったあたり
普段ageに厳しいやつ(ら)とSSL叩きにやっきになってるやつ(ら)と>>394が同一人物の可能性

>理由の無いSSL叩き
SSLが八幡でそれを叩いてるのが総武高校の有象無象だと思ってればいいのかな?

>>425
お前最高にキモいよ

なんか進んでると思ったらざつだんか

ageんなとか言ってる奴はもう専ブラ使えばいいのにな
管理も楽だし新着もわかりやすいのに

専ブラつかっててもageされたら一瞬きたかと思うだろうがアホか

けんかならよそのスレでやれやれ

やっぱsslと末尾O って糞だわ

>>43
何回荒らしたら気が済むんだ?死ねや

saga入れてる奴なんなの?

>>429
思わねーよアホか

アホばっかりだな

つーかこれだけの人数このSS見てんのか
ある意味スゲーわ

確かにすげーな
>>1ー! 早く戻ってきてくれ!
お前のssが好きすぎてみんなささくれ立ってるんだ!

うむ、>>1のいろはは非常に可愛い

いろはのモノローグ、好きです

ちゃんと相手してやるなんて
お前ら優しいよな

>>432は何言ってるの?

>>441みたいなゴミは無視して好きに書いてくれ
というか普通に面白いからそのまま頑張って

----------------ハイハイ、やめやめ----------------

>>442
>>432を見てくれ
>>43に安価つけてるが、>>43は普通に作者が書いてんのに荒らしって書いてるから純粋に気になった

そういうのどうでもいいです

前回の投下からもう70レス近くも雑談で消費してるんですが
(´・ω・`)

すまん、上の名前欄間違い。
このスレとは関係ないんで。

わざとだろ
荒らししねや

>>448
はいはいもういいからから黙ろうねwwww

なんだ荒らしか

>>449のレスでわざとだと認めたようなもんだな

--------------ハイハイ、もうやめやめ--------------

というか普通に面白いからそのまま頑張って

そのとうりだから作者愛してるぜww
 
ところでSSLってなに?

この糞SSLはsageることをしない常習犯
>>353
>>386
どうせ同一人物だろくっさい半芝二つ増やす糞野郎

とうりってwwwwwwwwww
SSLは日本語も書けないのかwwwwwwwwww

\パン/ヨッシャwwwwwwキタァァァァァァァアアアアアwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww(高い声で)ウワヤッタァァァァァァアアアアアアwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

↑ここまで自演

普通に面白いって褒め言葉としてそんなにおかしい感じはしないけどね
相手がプロとかそれについて勉強してる人とかだったら別だろうけど

単発ばっかで草




さぁ!それではさっそく先輩に……と、思ったが
そういえば顧問になんか頼まれているのを忘れてました……。


先にそっちを済ませておかなければいけません。出鼻挫かれたー。
先輩に頼んで一緒に~なんて思ったのですが、この状態で頼むのはどうかと思うので。
せっかくの休みですがまあ、さっさと野暮用を済ませることにしましょう。
仲直り?してない状態で休みの日に呼び出すのもあれですし。


というわけで


「戸部先輩!荷物持ち、よろしくお願いしますね!」

「お、おう。まかせとけって~」


いや~こういうとき二つ返事で了承してくれる人は役に……頼りになりますね~。

他のマネに頼むと生徒会やってるとか言い訳にしてーなんてことになりかねませんし、
点数アップのためにも自分で買い出しに行くわけですが、その点裏表なしに協力してくれる
戸部先輩はやはり使えます。あ、使えるっていっちゃった、てへ。



「ほんでー?今日は何買う感じなん?」

「カラーコーンいくつか紛失しちゃったらしいんでそれの補充と、
 あと飲料系ですね。そんなに大荷物にはならないと思います。
 あ、プロテインも買っていきましょうか」

「りょーかーい。って頼まれてないもの買ってってだいじょぶな感じ?ヤバイくね?」

「おねだりすれば大丈夫な感じします」


選手のコンディション考えてたらつい~、なんていってしまえばしょうがないな~ってなりませんかね。
ついでに救急道具も補充してしまいましょう。気が利く女~♪



買い物かごにどかどか詰め込んでいき割と重そうな感じになっている。
やはり呼んでおいて正解でしたね。


「ちょ、まじでやばいんじゃ……。あと重くね?」

「それじゃさっさと買って帰りましょうか」



会計を済ませ早々に店を出る。
せっかくだしウィンドウショッピングといきましょうか。
なーんて思ったけどカップルに思われたくないので撤退撤退~。


「お?」

「なにしてるんですか?帰りますよ?」


なにに気を取られてるのか、その視線の先を伺うと


「ヒキタニ君と妹ちゃんじゃーん!うぇーい!」

「うおっ……」

「あ、どーもです~。うぇーいうぇーい!」


ゲッ!先輩!
……おっといけない。きゃーせんぱーい。タイミング悪いんですけど!



「なーにしてんの、なんか買いもん?」

「買い物じゃなきゃこんなとここねーって」

「うっはーテラヒキタニ君だわー。いつも引きこもってる感じっていうか?」


すっげぇ馴れ馴れしい!それを計算でやってないあたりすごいですけど。
普通、人にあんなこと言われたらカチンとくるようなことですけど、なんか憎めないんですよねー。


そう思ってるのは先輩も同じようで、苦笑いしつつもそんな不快な様子にはみえない。


「ひきこもりで困ってますよほんとー。だから小町が買い物に付き合ってあげることで
 外に出してるわけですよ!お兄ちゃんの体調が悪くなったら困るからね。あ、今の小町的にポイント高い!」

「いや、今のは俺の体調が悪くなったら看護がめんどいって意味にもなる。あと付き合ってやってるのは俺の方なんだが」

「ぶー、深読みはポイント低いよーお兄ちゃん。……それでーそちらの方は~」


あわわ、ぼーっとしてました。完全に出遅れてしまいました。


「一色いろは。うちの学校の生徒会長だ。ついでにサッカー部のマネをしてる」

「わたし的には生徒会のほうがついでだったんですけど……。えと、初めまして一色いろはです」

「どうも~比企谷小町です!兄が迷惑かけてないでしょうか?」

「かけてねぇよ。……多分」

「いえいえ、先輩にはほんとよくしてもらってて、その……感謝してるっていうか」


うー、なんか本調子になれない。
どうも気まずさが抜けてない。気分的にはやったるで~なんて気分なのだが。



「ほほう?これは新しいタイプですな……ふむふむ」


妹さんがなにやら思案しているご様子で。


「お兄ちゃん!せっかく知り合いに会ったことだしちょっと遊んで来たら?」

「はぁ?なんでそうなる。用すんだなら帰るぞ」

「まあまあまあ~。そういえば小町、買いたいものあったけどお兄ちゃんに見られたくない的な?
 だからどこかで時間つぶしてくれると助かるななんてとこなのですよ」

「じゃあどっか店入って―――」

「というわけでいろはさん!兄のことをよろしくできないでしょうか?
 あ、これ小町の連絡先です」

「え?あ、はい。どうも……ってええ!?」


そこで小町ちゃんは戸部先輩に目配せする。なにか察したらしい戸部先輩は


「あ、あ~わりぃいろはす。おれ行くとこあったから先いっとくわ!
 ほんじゃなヒキタニ君!」

「お、おう」

「またあとでねーお兄ちゃん!」

「え、ちょ、まっ」


なんというマシンガン。



「………」

「………」




き、きまずい……。


結果、二人取り残されてしまいました。
嵐のようとはこういうことをいうんでしょうか。


どうしましょう。まさかこんな状態で二人きりになるとは、完全に想定外です。
心の準備もできていません。が、これはチャンスだ!絶対に逃すな!



「……どうする。帰るか?」

「え、と……じゃあ。せっかくなんでちょっと遊んでいきません?」


断られたら泣きますよ。


「……まあ、少しくらいなら」


っしゃあきたこらー!
お、おちつけいろは。そこにいろはすがあるじゃろ?落ち着け!



「は、はい。じゃあ……適当にお店みて回りますか?」

「了解」



おぉ……久しぶりのこの淡白なやり取り。
他人からすれば冷めたように見えることでも先輩を知る人からしたら充分ですよね。




「……生徒会、忙しいのか」



最近あまり先輩に会いに行ってないことから言ってるんでしょうか。
実は寂しかったりします?かわいいなーもぉ。



「えぇ、まあ。でもだいぶ落ち着いてきましたね。わたしも慣れてきましたし」

「そうか」

「役員とも上手くやれてるんで、苦痛ではないですね。割と楽しいですよ」



それを聞いて少し安心したような表情を見せる。
もしかしたら感情閉ざされてたりなんて考えてましたけど、杞憂だったようですね。

……ちょっと元気出ました。


「妹さん……小町ちゃん、でしたっけ。かわいい子ですね。先輩がシスコンになるのもわかる気がします」

「まあな。たまにめちゃくちゃやってくることもあるが、いい妹だよ」


なんか策士のようなイメージを受けました。気が合いそうです。
わたしに似てるってのもちょっと納得です。

二人とも気を遣ってくれたようで、感謝です。

戸部先輩も前回の失態を許してあげましょう。別にそんな怒ってたわけではありませんけど。


というか今更ですけどよく遊びの誘いに乗りましたね。
割と心開いてると受け取っていいんでしょうか。




しばらく店を転々としてると、先輩の携帯にメール届く。


「……そんな気はしてた」

「どうしたんですか?」

「小町のやつ先に帰るねーだとよ。前も似たようなことあったからうすうす気づいてはいたが……
 どうする?俺らも帰るか?」


ふむふむ。帰すとお思いですか?


「えーもうちょっと遊んできましょうよー。ラウワンいきましょラウワン!カラオケもありますよ!」

「いかねーよ。運動苦手だしな」

「そうでしたっけ?前葉山先輩とテニス勝負してた時すごかったような気がしますけど」

「………いたのかよ」


そりゃ葉山先輩いるところに、いろはありですよ。
その時の相手が先輩だったのは今思い出したんですけどね。


「でも、全然記憶に残ってなくてびっくりですね。多分あの時の葉山先輩の相手が
 先輩だったなんて覚えてないと思いますよ。」

「なんで唐突に傷をつけてくるの?言われなくても知ってるから」

「いえ、わたしは覚えてましたよっていうアピールです」

「………そうかよ」


ふふ。なんかいつもみたいに戻れましたね。よかったよかった。



「じゃあゲーセンならどうですか?」

「まぁそれくらいなら」

「記念にプリクラ撮りましょうよプリクラ!」

「なんで女と二人きりで撮らなきゃいけないんだよ……勘違いされるだろうが」

「逆に男だけで撮るんですか?気持ち悪いです。
 ていうか変に意識しないでくださいよ、恥ずかしいじゃないですか~」


しかし残念なことに撮る気は一切無いようで、
ここで無理に押すと好感度下がりそうなので今回は諦めるとします。今回はね。


話している間にゲーセンに到着。さてプリクラがダメならなにすればいいんですかね。


「あ、先輩UFOキャッチャーですよ!なんか取ってください」

「なんで取れると思ったんだよ……無理無理」

「えーアニメの主人公はとれる法則知らないんですかー?」

「主にラノベアニメに多いな。つーか主人公じゃねーよ」

「えー、あちこちでフラグ建ててるくせに主人公じゃないと」

「なんの話だよ……。つーかお前ってアニメ見るタイプなのな」

「それなりですかね~。眠れないときとかテレビつけてたまたま~くらいの感じですけど。
 あと、有名なとこは一応押さえてますよ。多方向に話題をつくれるので」

「そういう理由かよ」

「あ、じゃあこれやりましょうよ!定番のホッケー」

「急だなおい。それくらいなら付き合ってやらなくもないが」

「え!?今告白しましたか?でもごめんなさいムードがないのでダメです」

「ほらやるぞ」

「ちょ、無視ですか!?」


いやー実に楽しいですね~。ホッケーはぼこぼこにされましたけど。
先輩あんま外でないとか言ってたくせになんで強いんですか。もしかして一人でホッケーやってました?



「なんか悔しいので先輩を負かします。なにが苦手ですか?」

「負かすってのに苦手聞くなよ……。まあシューティング系か、苦手どころは」

「っしゃー!これやりましょう!」


選んだのは車ぽい筐体に入ってやるちょっと値段が高めのやつだ。
手にあたるセンサーでビビり度をはかるおまけつきである。


ふっふっふ。二重のいみで泣かしてやりますよ~。………あ、わたし怖いの苦手だった。


ひぃ~なんて甲高い声をあげてすぐにリタイアしてしましました。


「おまえあほか。怖がりなのになんでやったんだよ……」

「ぐぬぬ、先輩を泣かしてあげることしか考えてませんでした」


しかも全然びびってないし……。


「実はこわがりとかいう設定なんでないんですか」

「まぁあんだけ隣で騒がれればな。俺にだって怖いものはあるぞ。平塚先生の拳とか」

「物理なんですね……」




しばらくいろんなゲームで勝負して時間をつぶしていました。
楽しい時間というのはあっという間なもので、いつのまにか外は暗くなっていた。



「そろそろ帰るか」


名残惜しいですが今日はここまでですね。


「そうですね。でましょうか」

「俺は自転車とってくるから―――」

「ついてきますよ」

「……そうか」


外に出て自転車置き場までやってくる。妹さんとは二人乗りできてたんでしょうか。
いつかわたしも後ろ乗りたいですね。


「送るか?」

「はい、お願いします」


先輩は、ん、と短く返事をすると自転車を押して歩き出す。


「なんか久しぶりですね」

「……そうだな」



帰り道、特に会話もせず二人黙々と歩き続ける。


しばらくして、人通りが少ない辺りにやってきたところで、わたしは口を開く。


「あの」
「なあ」


まさかの二人の言葉が重なる。
うっひゃーベタですけどこんなことあるんですねー。
相性ばっちりみたいな?知りませんけど。


「先輩から先にどうぞ」

「いや、あー……じゃあ」


先輩はんん、と軽く咳払いをすると少し言い辛そうに話し始める。


「その、だな。この間のことなんだが」


……っ!
思わず息が詰まる。それはちょうどわたしが話そうと思っていたことだ。


「あれは――――」

「ストップです先輩」


先輩がなにか言う前にそれを遮る。万が一、これから話そうとしてることを邪魔されてはたまらない。


「やっぱわたしから話します」

「……わかった」




……しかしなにから話そう。思えば全然話しまとまってないや。
まあ、なるようになるでしょう。


「本物、の話あったじゃないですか」

「ん?あぁ……まあ」


相変わらずこの単語を出すと、恥ずかしそうに頭を掻くんですね。
かわいいので見ていたいのも山々ですが、進まないので先行きましょう。


「先輩はなにが本物かってわかりましたか?」

「……いや、そもそももったことがないものなんて、わかりようがないだろ」

「そうですね……。これは持論なんですけどね」


そう切り出して話始める。


「本物って実はもともと存在してるものなんじゃないかなって。ただそれを当人たちが
 認められるか、認められないかの違いで。……考えてみれば本物が欲しいっていってそれを
 探したところで、それが本物になることなんてそうそう無いんじゃないかと思います。」


実際に本物を得ようと手を伸ばした結果、それは本物には程遠い偽物だった。
その手を伸ばした先が偽物というよりは、わたしの心が偽物だった。


「でも、きづいたらあったんですよね~。わたしが遠ざけてただけで。
 今まで否定してたんですけど、それを認めたらなんていうか、こう、いい感じでした」


「なんだそりゃ」


先輩はなにいってんだこいつみたいに笑いつつも、真剣に話を聞いてくれていた。



「だからその、上手く言えないんですけど、求めて手に入れるっていうよりは
 いつの間にか手にしてるってことが言いたいわけですよ!」


「……まぁ、一理あるかもな。だが、もともと持っていない可能性もある」

「そういう人もいるでしょうね。これから出会うかもしれないですし、一生ないことも
 あり得るかもしれません。でも、先輩は持ってると……思いますよ」


といったわたしの言葉に対し、長い沈黙の後一言、かもな、と肯定の声が聞こえてきました。


「なーんて、偉そうに言ってもわたし自身よくわかってないですけどね、えへへー」

「まぁ言いたいことはそこそこわかった。そんでそっちの話はそれで終わりか?」

「いえいえもう一つ。好きです先輩」

「そうか…………は?」


さらっといったドストレートな言葉に理解が追い付いていないようで、意味不明というような顔をしている。


「か、勘違いしないでくださいよ?いい先輩として好きじゃなくて、男性として好きって意味ですからね?」

「お、おう。……て、おい」


はっはっはー、これぞ逆ツンデレ。テンパってる先輩というのもなかなか見ものですねー。


「likeじゃなくてloveですよ?先輩」

「うぐっ……。あー、一色多分それは勘―――」

「勘違いなんかじゃないですよ。ちゃんと好きで、本気です」


なんとなく先輩の言わんとしてることを察し、それを言い切らせる前に断言する。
自分で言うのもなんですが、やさしい笑みを浮かべてると思います。



「告白に対しYESもNOも言わないで人の気持ちを否定するのは一番ひどいと思いますよ?
 そもそも先輩は誰かを本気で好きになったことってあるんですか?」

「……まぁ俺は振られることに関してはエキスパートだからな」

「言い訳のつもりですか?それこそ先輩の言う勘違いで好きになったってやつでは?」


苦しいことはわかっていたようで苦虫を噛み潰したような顔になる。
どうでもいいですけど苦虫ってなんですか?

ゲーセンではぼろくそに負けましたけど、今回は攻めてきますよー。
多分最初で最後になるんじゃないですかね、先輩に勝てるの。なんか勝利確信してますが。



「つまりですね、なにが真実か知らない先輩に、人の感情をどうこういう資格はないんですよ。
 理解していないならそれが間違いであるかなんて決められません。」

「……まあそれも、そうか」


もはやそれを否定する気も無いようで、すんなりと肯定してくる。


要するに先輩はビビッて逃げてるだけなんですよね。
本物が欲しいと言っときながら、それを避けてる。

おお!先輩のビビりポイント見つけましたね。
まぁ霊的、怪物的より生身の人間が怖いというところが先輩らしいです。



でもこの捻くれ先輩にしては全然反論してこないのが疑問ですね。
純粋に論破されてるとういうようにも感じますが、なんか違和感。



「といっても、経験が多いわけではないのでわたしの感情が正しい物かなんてわからないですけど、
 それでも、本気で先輩のことを好きだって、言えると思います」



そろそろ、わたしの家ですね。
まあ先輩には悩みまくってもらうとしましょうか。



「別に今すぐに返事してもらわなくてもいいですよ。たっぷりと悩んでください
 あ、ここまでで大丈夫です。送ってくれてありがとうございました!」


「あ、ああ。………一色」


「はい?」


「……いや、あー。……気をつけてな」


「はい、先輩こそ。……おやすみなさい」


「おやすみ」


別れの挨拶を告げると先輩は向きを変え、走り出そうとする。


「あ、そうだ先輩一つ忘れてました」


「あ?」


と振り向いた先輩の不意を突き、その頬に唇を合わせる。


「な、おま…え」


突然の奇襲にあわあわと慌てる。
暗がりでよく見えないが多分赤くなってるであろう先輩を想像してにやける。


「えへへぇ~、それでは!」



わたしは恥ずかしさを紛らわすため、たったったーとその場を逃げるように走り去る。


んー、さすがにまずかったでしょうか。まだ付き合ってもない段階で。しかも先輩相手に。
………もし引かれてたらやばいですね。多分大丈夫慌ててたし。
わたしだったら好きでもない奴にやられたら、頭の中でメッタ刺しにおっといけない。



なにはともあれ、いろはの完全勝利~……で、いいですかね?



しかし我ながら初恋の、しかも告白イベントだったいうのに、色気もムードもあったもんじゃないですね~。
もっといい雰囲気で告白するものだと思ってたんですけど、先輩相手ですしね。全部それで通ります。


加えて先輩を言い負かす告白とかどうかんがえてもおかしいですよね。
第三者からすれば間違っても恋愛イベントには見えなかっただろう。



でも、これで進めたかな。どうなるかわからないけど。



先ほどのやり取りを思い出してみて、はぁ~と息がこぼれる。



「やはりわたしの青春ラブコメは間違ってますねー」



ま、それもありかな?なんてクスリと笑う。



大好きですよ、せんぱい?にひひ~






***




自分で乙って行くスタイル

まあ乙

おつおつ
いろはすはいいな

八幡、やられっぱなしかよ。情けない。

がんばれ
オモロイぞ

普通に面白い。普通に



いろはすが可愛くて生きるのが辛い

おつおつ!面白い!べりー面白い!

何この普段荒らしてるくせに手のひら返したような絶賛
やっぱこいつらクソやわあwwww

終りなのか?終りなのか?!

八幡って素直に好意を現せばチョロいんじゃね?
小町と戸塚にゲロ甘だし

ヒロイン側に「~は間違ってる」のフレーズを上手につかわせたのは見た中だと2作目

乙はす!



後日談とか書いてもええんやで?(チラッチラッ


我孫子のちんこ

文句垂れたい気持ちもわかるけど
そうやってここに書き込んで荒らしの片棒担ぐのはおやめになって
なんなら↓をNGワード登録しとくといいざんす

変な艦これ劇場 -鎮守府狂騒曲- - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409906850/)
変な艦これ劇場 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404364419/)
変な艦これ劇場

下げろよSSL

さすがだわ
>>1の書くいろはすめっさかわえあ

>>494
? かわえあ
〇 かわええ
興奮しすぎたスマソ

は?何終わりみたいな雰囲気出してるの?
画竜点睛を欠くとはこのことか

【朗報】まだ半分

第一部完

終わってないんだが?
まだ半分てことはないけどおわるなら充分いちゃいちゃさせてからなんだが?

ネタがまとまってないからいつになるかはわからんが

紛らわしい
更新待ってるぞ

完全に青春ラブコメだな
続き期待してるよ

こういうスカッとするの待ってたんだよ
ほんとありがてえ

どんどんいろはと別キャラになってくのはある意味面白いよね
ある意味ね

待ってる

甘々ニヨニヨ

甘々ニヨニヨ

SSなんだしそこまでの完成度求めてどうすんのさ
おかしかったら「ハハ、甘々ニヨニヨwwww」って流せばいいのに

>>1
続きが楽しみでしょうがない

続きが楽しみなのはわかったから下げよSSL

別にいいじゃん下げなくても
スルーしとけよ

まずお前がスルーしろよ

醜い争いはやめろ!

これ程多くの野郎を狂わせるとは・・・
いろはすッ・・・恐ろしい子ッ!!!

文章力が足りないことに定評のあるいろはすSSの中でかなり綺麗で読みやすいSSだな
期待

いや、煽るやつがいても、これ好きだよ。
100個SSあったら、、トップテンに入るくらい。エレ速とかにまとめられるSSが10個あったら、トップスリーに入る。

いや、つーか、雪乃さんの次にいろはす好きだわー。やばい。

はい

>>1

低俗な煽り合いなんかせずに黙ってみてろよ

そんなに煽り多いか

期待





はいはいはい。先輩に想いを告げたわたしです。
あれからというもの、先輩の態度が妙にかわいくてしかたがありません。


別にそんな気にしてないけど?みたいなオーラ出すぎなんですよね~。
気にしてるの丸わかりて感じで。


こっからどうしようかな~っていっても、やることは同じなんですけどね。
ひたすらアタックしてさっさと好きって言わせてみせます!



今日はバレンタインデーです。
なのでこれを利用しない手はありません!



今日という日のために前々から準備してたわけですよええ。
いつも市販のを適当に配ってる感じだったんですけど、手作りですよ。ポイント高いでしょ?



問題はいつ渡すか、なんですよね~。
部活中にお邪魔なんて無理ですし、昼に渡しに行くのもな~。


ベタに下駄箱とか机に入れる?
いや、放課後に待ち伏せ。これか。


自分を好いてくれる後輩が、甲斐甲斐しく自分を待ってくれてて手渡し。

これですわ~。これならコロッといきますね。




しかしこれには問題が。
他の奉仕部メンツと一緒に出てくる可能性があります。

周りに女の子侍らせてる人に渡すとか苦行以外の何物でもありません。


どうしたものか、と考えていたところに声がかかる。


「よっ!いろはす」

「あ、戸部先輩おはようございます!」


おなじみの戸部先輩ですね。
どこかそわそわしてる様子。チョコでも期待してるんですかね。


そういえばわたしが告白した後日、
あれってそういうことなん?みたいに聞かれましたが適当にはぐらかしときました。


周りの空気よんじゃうひとなんで多分気づいてるでしょうけど、
深く問い詰めてこないあたりいい人ですよね。


結局いい人どまりなんでモテなそうですけどね。モテないチャラ男の典型っていうか。



「いや~これきてるっしょ俺。まじやばいっしょ~」

「なにかあったんですか?」

「いや~なんつの?海老名さんからチョコもらっちまったつーか?」


そわそわしてるかと思ったら誰かに自慢したくてそわそわのほうでしたか。
ていうか姫奈さんのこと好きだったんですね。初耳です。


「え~おめでとうございます。やりましたね~」

「まあ?優美子と一緒に作ったとかで隼人くんついでのギリらしいけど?これはきてるべ」


……え?どこが?


「へ~。ていうか戸部先輩、姫奈さんのこと狙ってたんですね」

「え?いろはすエスパー?」

「いや、もろわかりでしたけど」

「うっわーまじか!ちょ、これ内緒にしといてくんない?」

「だいじょうぶです、わたし口は堅いほうですから」


なんかいいたくてしょうがないようにも見えますが。



「んで、いろはすは誰かにあげる感じ?」

「まあ内緒です」

「え~気になるっしょ~」

「おしえませ~ん」


また戸部先輩でも使ってやろうかと思いましたがいい案思い浮かばないですねー。
結衣先輩ならなんとかできそうですけど、雪ノ下さんは難しいですし。

まだ考える暇はあるしいいか。


「それではこれで失礼しまーす」

「おうじゃーなー!」


誰かに今の気持ちを伝えられて満足そうに帰っていく。
やべーしか言ってなかった気もするけど。



さあ、作戦タイムです!







―――――――
―――――





なんか……いいの思いつかない。
やっばー、もう放課後なんですけど。

今から呼び出します?いやでも、待ち伏せのほうがポイント高いですし……。
でもうまく鉢合わせられなかったら?この日を過ぎたらただのチョコになりますし。

いや、気持ちの問題だとは思うんですけどね?



「で、今回はチョコをいつ渡すかって話か」

「さすが副会長話がはやいです」



もう皆慣れたのか、わたしが話を切り出す前に相談に乗ってくれます。いい人たちです。



「普通に今から渡しに行けばいいじゃないか。部活中に呼び出すというのもありだと思うが」

「呼び出しってうれしい反面、周りに茶化されるからどうかと思うなー。彼なんて特にそういうの嫌いそうだけど」

「それなら、どこかで待ち合わせとかで人のいない場所のほうがいいですよね」


さっそく議論を交わす。完全に生徒会が私物化してますが、ちゃんと仕事もしてるので大目にみてくださいね!


「いや、あの手のタイプはアポなしのほうが効果的だと思うねー」

「なんでだ?」

「きっとそわそわしてるだろうから、そこに連絡入れるとキターってなるでしょ?
 で、期待してたのが馬鹿みたいって帰るときにいくとドキッとくるわけ」

「な、なるほど。詳しいな……」

「それですそれ!……でも、周りに人がいたらアウトなんですよね~」

「雪ノ下さんたちですか?たしかに渡しづらいですし、気まずくなりますね」

「あの3人は一緒に帰ってるのか?」

「いえ、そんなことはないと思いますけどー」



多分。でも校門までならいっしょにってのはありますよねー……ん?


そういえば先輩って誰かと一緒に学校を出るとこ見られるの苦手でしたよね?
ということは昇降口……最悪校門までは結衣さんたちといてもそれ以降は一人になる可能性が高い。


つまり校門で待ってればいいのでは?
うん、駐輪場なら間違いないですけど、そこじゃちょっとないですよねー。


「いや、あの手のタイプはアポなしのほうが効果的だと思うねー」

「なんでだ?」

「きっとそわそわしてるだろうから、そこに連絡入れるとキターってなるでしょ?
 で、期待してたのが馬鹿みたいって帰るときにいくとドキッとくるわけ」

「な、なるほど。詳しいな……」

「それですそれ!……でも、周りに人がいたらアウトなんですよね~」

「雪ノ下さんたちですか?たしかに渡しづらいですし、気まずくなりますね」

「あの3人は一緒に帰ってるのか?」

「いえ、そんなことはないと思いますけどー」



多分。でも校門までならいっしょにってのはありますよねー……ん?


そういえば先輩って誰かと一緒に学校を出るとこ見られるの苦手でしたよね?
ということは昇降口……最悪校門までは結衣さんたちといてもそれ以降は一人になる可能性が高い。


つまり校門で待ってればいいのでは?
うん、駐輪場なら間違いないですけど、そこじゃちょっとないですよねー。




「校門あたりが妥当ですかね。そこまで一緒に行動してるかもしれませんが」


しかし城ノ内先輩がそれを否定する。


「いやーそれはないと思うなー」

「なぜだ?」

「だって彼女たちも彼にチョコ渡してるかもしれないじゃん?
 渡した後に一緒にいようとは思わないでしょたぶん」


……それを忘れていました。結衣さんたちも渡してるかもしれないんですよね。
うあー、先越されるー。いやでも告白してる時点でわたしのほうが有利ですよね。

これを機に……ってこともあるかもしれませんけど。


「うぅー。じゃあ校門で待つようにします」

「それがいいと思います」

「だな。よし仕事よろしく」

「ちょ、切り替え早すぎですって~」


あはは、と生徒会室に笑いがうまれる。
とりあえず決まりました。

あとは実行するのみです。








  * * *




「はぁー、さむぅー」


手に息をかけてあたためる。
校門で先輩を待ってるわけなんですが、外で待つのってきついですね。

もうそろそろだと思うんですけど。

生徒会はいつもより早めに抜けさせてもらいました。
仕事仕事と言ってばかりの副会長ですが、
こういう時に気を遣って代わりにやってくれるやさしさに感激ですね。

でもごめんなさい。わたしは先輩一筋なので。なんちって。


しばらくそこで待機していると人影が見えてくる。
が、目当ての人ではないようだ。


運動系と違い大体の文化系の部活は片付けがはやいので、運動部より先にでてくる。


そのうち多くの人がここを通るだろうが、先輩が来るころは人が少ない時間帯だと思われる。
できれば人の少ない今来てほしいですね。


「あれ?いろはちゃん?」


突然声をかけられてビクッとする。
声のした方に目を向けると。明るい髪に大きな胸が特徴の結衣さんだった。


「あ、どうもです結衣さん」


結衣さんは少し驚いてるかのような笑みを浮かべてこちらに寄ってくる。



「どしたのこんなところで寒くない?」

「いえちょっと人を待ってるだけです。大丈夫ですよ~」

「……もしかして、待ってるのヒッキー……だったり?」

「えぇっ!?あ、いや……はい」


あー、やっちゃった。なんで動揺しちゃったんだわたし。
……結衣さんたちも渡してるかもという話を気にしちゃってるせいだろうか。


「そっかぁー。チョコ、渡すの?」

「まぁ、はい。お世話になっているので」

「やっぱりさ、ヒッキーのこと……好き、だったり?」


うっはぁーぶっこんできますねー。
いつもならうまくごまかしてしまうんですけど、なんか嫌だなっていうか。
……嘘でも気持ちを否定したくない。ってなんか乙女っぽいうわああああ。


「……好き、です」


思い切ってぶっちゃける。
が、ちょっと恥ずかしくなって顔を俯かせてしまう。


「……そっか」


結衣さんは、たははーと笑い、お団子にした髪をくしくしと撫で、
うんうん、と納得したように首を振る。



「もうすぐヒッキー来ると思うから」

「あ、はい」

「負けないからね」


ニッっと挑戦的な笑みを浮かべて、去っていく。


「……モテますねー先輩」


しかも周りがハイスペックなんですよねー。何回わたしの心を折る気ですか。
でも、わたしも負けるつもりはありませんけどね。



まもなく来るといった結衣さんの言葉は確かで、先輩が自転車を押して歩いてくるのが見えた。
自然と笑みがこぼれる。


「せーんぱい!」

「うぉっ、一色か。おどかすなよ。弱いんだから」

「えー、そんなふうに見えませんけど」

「つーかなにしてんだこんな寒いとこで」

「先輩を待ってたんです」


先輩は、そうか、といってマフラーで口元を覆う。
そんな照れてる先輩を微笑ましく思いながら、カバンからブツを取り出す。



「はい、せんぱい。はっぴーばれんたいんです」

「……おう。ありがとな」


すでに告白してるんで貰えることには驚いてはいませんね。

心なしか先輩の顔が赤い。
こちらに目を合わせてなにか言いだそうとしている。


「あー、一色……」


えぇ!?もしかして今返事もらえたりしますか!?
さすがに心の準備できてないですよ!


絶対わたしの顔赤くなってる。


ドキドキ高鳴る鼓動を抑えながら次の言葉を待つ。


耐えられなくなったのか先輩は顔を背けてボソッと呟く。



「……お返し、するから。……そんとき、な」



生徒たちの喧噪につぶされ、下手すれば聞き逃してしまうかのような声で告げる。
しかし、その言葉はしっかりとわたしの耳に届いた。


そしてそれを理解した瞬間、自分の顔がすごく熱くなる。



「………はぃ」



来るかも、と思ってた言葉は来なかったが、それで充分だった。




「んじゃ……またな」

「はい、また」



自転車にまたがり、遠ざかっていく先輩の背をしばらく見つめたあと、ぷはぁと白い息を吐く。



「つまり、そういうことで……いいんだよね?」



多分話の流れ的にホワイトデーのお返しだろう。
あるいは、その前にお返しをしてくれるのかもしれないが。


外で待っていたにも関わらずわたしの体は熱い。


この熱が冷めてしまう前に帰ろうと思い歩き出す。
堪えようとおもってもにやけてしまう口元を隠すために、マフラーに顔を深く沈めて。



いつかくるお返しの日を楽しみにしつつ――――




***

遅くなったね
思ったよりネタが出てこなくてやばい



いろはす乙女過ぎて世界がヤバイ

乙です!

いろはす可愛すぎてまじやべーわー

マスクしてて良かったわー

なんか女子の恋心ってのも自分勝手で妄想暴走で大概だな。
男どもの萌え心が気持悪いのと一緒か。

あー死にたい 八幡おめーこのやろう

おつー

いろはすマジいろはす

いろはすはす!!!

待ってる

はよ!

まだかな

によ

仕事が忙しくて書く暇が見つからないのと話まとまってないからしばらく投下厳しいかも
11月、遅くても12月には落ち着くと思うんでそれまでごめんということで

完結しないと自分的にも気分悪いんで書ききることは断言しとく
調子よかったらそのうち投下するかもだけど期待しないでね

おまえSSと仕事どっちが大事なの?
書くのに支障をきたす仕事ならやめちまえよ
遊びじゃねえんだぞふざけんな

>>546
わろた

>>546
ええな

>>546
今日のMVP

コピペを改変しただけの奴に釣られる馬鹿共の図

とりあえずコピペって言っておけば上に立ててると勘違いしがちなお年頃
これでも30代なのである

と、釣られたが必死に言い訳

面白いのは確かだからどっちでもいいのよ

※ここまでがテンプレ

つうかなんでキレてんのか意味わからんなww

>>546がよくわからん
縦読みではないでしょ?
どういうネタ?

分からない人にはどう説明しても分からんと思うんだけどwwwwww

というかアス…なんでもない

元々はネトゲのネタ…だっけ
それはいいんだが知らない奴が見たらただのガチ煽りにしか見えないからやめたほうがいいと思うんだけどね

お、来たのかと思ったらなんだよくそっ

どうでもいい
静かに待とうぜ
邪魔なのはスルーで

待ってる

はよ

な、もしもしだろ

>>563みたいなゴミは無視して好きに書いてくれ
というか普通に面白いからそのまま頑張って

過剰反応が一番ゴミ

普通に面白いって褒め言葉としてそんなにおかしい感じはしないけどね
相手がプロとかそれについて勉強してる人とかだったら別だろうけど

それはコピペにはならない

ヤーレンソーランソーランソーランソーランソーラン (ハイハイ)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
にしん来たかと 鴎に問えば わたしゃ立つ鳥 波に聞け チョイwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤサ エーエンヤーサーノドッコイショ (ハードッコイショドッコイショ)
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤーレンソーランソーランソーランソーランソーラン (ハイハイ)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
沖の鴎に 潮どき問えば わたしゃ立つ鳥 波に聞け チョイwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤサ エーエンヤーサーノ ドッコイショ (ハードッコイショドッコイショ)
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤーレンソーランソーランソーランソーランソーラン (ハイハイ)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
男度胸なら 五尺のからだ どんと乗り出せ 波の上 チョイwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤサ エーエンヤーサーノ ドッコイショ (ハードッコイショドッコイショ)
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ヤーレンソーランソーランソーランソーランソーラン (ハイハイ)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
躍る銀鱗 鴎の唄に お浜大漁の 陽がのぼる チョイwwwwwwwwwwwwwwww
ヤサ エーエンヤーサーノ ドッコイショ (ハードッコイショドッコイショ)
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

誤爆しました

誤爆かよwwww

荒らしじゃないのかよワロタ

わざとだろつまんね

はよ

いろはす〜

もうちょっとで10巻でるね

待ってる

いろはす~あやねる~

10巻のいろはすもかわいいかったな

ついに12月だ
はよはよはよ

とりあえず生存報告だけでもしてくれ
あと3日で落ちるぞ

ようやく書き始めた…遅れてて申し訳ない今しばらくお待ちを!

おお! 

期待してまってます。

うほ!

期待

マダー?

これはもう3ヶ月延長パターンやな…


――――――
――――



炬燵が最高に気持ちいいと感じるのは正月だろう。
2月でもまだまだ寒く、3月でも全然いける……が、なんての?気分的に?
イメージ的に正月といえば炬燵にみかんにおせち。あとお餅か。
そういった固定観念があるからこそ正月の炬燵の中は、なんとなく心地よい。

とはいえ、寒ければいつであっても心地よい……のだがいかんせん。だらけてしまう。
正月であれば、まあこういう期間だし、といって心置きなくだらけられるのだが、
それ以外のなんの変哲もない日にこう炬燵に潜り込んで、挙句寝てしまおうものなら
そのあとの倦怠感に苛やまされる。

しかしそれがわかっていつつもその魔力に逆らうことはできない。ふぇぇ…気持ちいいよぉ。


「なーに気持ち悪い顔してるのお兄ちゃん……ほんとにキモいよ?」

「小町、お兄ちゃんは今炬燵と戦っているんだ。こいつの魔力を抑え込まなければ小町が危ない。
 主に眠気の魔法を使って勉強を邪魔してくる。あと割と傷ついた」

「……ほんとに大丈夫?なんか顔も赤いし、熱でもあるんじゃない?病院行く?」


その病院は普通に風邪的な意味でだよな?頭のとかじゃないよな?


「炬燵に潜ってたからそのせいだろ。俺の頭はいつも通りだ」

「たしかにそんな意味わかんないこと考えてるならいつも通りだね」


おいおい。それじゃまるで俺が年がら年中頭のおかしい人みたいじゃないか。
おかしいとしたらあれだ。俺じゃなくて世界が間違ってる。



「てっきりいろんな人からチョコでも貰って嬉し恥ずかしで顔真っ赤なのかと思ったんだけどなー」

「関係ない。まったくもって関係ない。かすりもしないまである」

「あ、やっぱり貰ったんだ!だれだれ?いくつ?小町も食べたい!」


しまった嵌められた。おのれ孔明!つーかお前も食うのかよいいけど。
てか勝手に俺のカバン漁るな。別に変なもの入ってないからいいけど!


「うっひゃー!4つもある!隅に置けませんな~このこの~」


頬をつつくな鬱陶しい。かわいい。


「そ・れ・で~これはどちら様から頂いたのですか~?」

「……まあ由比ヶ浜とかそこらへんだ」

「ふむふむ。あとは雪乃さんと、川…崎さん?とかー、いろはさん…だったり?あ!今赤くなった!
 ひゃ~もしかして告白イベントとかあったのでございましょうか!」

「なってないし、なにもない。ただチョコもらっただけだ」

「……ふ~ん。まあいっか。お返しはどうするの?」

「当分先だし、今はいいだろ。あとあと考える」

「そっか。……よく考えてね」

「おう」


小町はうん、と一度頷くと炬燵から出ていき、
部屋の戸を開けたところでふとこちらに振り返る。


「なんかあったらいつでも小町のこと頼っていいからね!今の小町的にポイント高い!」

「おーおーありがとさん。寒いからはよ閉めろ」

「はーい」


バタンっと戸が閉まる。
そろそろ自分も部屋に戻ろうかと思っていたのだが今の冷気に当てられて出たくなくなってしまった。
もう少しだけここで温まるとしよう。はっ!炬燵…恐ろしい子……。



「……前のお兄ちゃんだったらお返しは本命にしか渡さない~…だとか言ってたんだろうなー」


閉められた戸の先では小町が一人誰に言うでもなくつぶやいていた。





――――
――――――





  * * *



バレンタインデーも終わり、もう今月はなにもイベントが無くなったといえよう。

そもそもバレンタインというイベント自体気に食わない。
このただチョコを渡すという行為によりどこが得をするかなど言わずともわかる。


しかし得をする人がいる反面損する輩もいる。そう、男子学生だ。


彼らは今日もらえるかもードキドキなんて恥ずかしい勘違いをしてしまう。
あるいはチョコなんていらねー!と仲間と同調して慰め合うということもあろう。
別に興味ないし?みたいなスタンスのやつでも心のどこかでは期待してしまう。それが男子学生というものだ。

女の子が好きな男の子にチョコを渡す。また、義理チョコというやっかいなおまけがついてくることもある。
しかし、意中の相手がいなくとも、友チョコなどと称して仲良くお菓子を食べるといいうこともある。


そもそもバレンタインとは、尊敬、親愛のあるものへの感謝の気持ちであったはずなのだ。
それが我が国では女性の告白ツールとなってしまった。


つまるところこれは女子限定のイベントと言ってよいだろう。
普段勇気の出ない告白の後押しをしてくれる、と考えればなるほど、女性にとってうれしいイベントかもしれない。



だが、男性からしたらどうだろうか?
イベントとはたまにしかないから盛り上がれる。誰もが参加したくなる。

なのに好意を寄せられていなければそのイベントに参加する資格を与えられないとはどういうことか。
仮に男同士でチョコの交換でもしようものならホモのレッテルを貼られかねない。

一部にとっては嬉し恥ずかしドキドキイベントであっても、
大多数の人は自分に関係のないところで人が盛り上がっているのを眺めていることしかできない。



ならホワイトデーという男性向けのイベントがあるじゃないかって?
馬鹿め!あれはバレンタインでチョコという参加資格を貰わなければだれかに贈り物をすることなどできないのだ!

なにももらってない奴にお返しなど意味が解らないし、これまた友チョコの代わりになることをするでもない。

この2つは別物ではなく、セットイベントなのだ。

好意を受け取ったものが、好意を返すイベント。



つまりなにが言いたいかというと、意味深にお返しするなんていってしまった。どうしよう。




  * * * 





そもそもだ。そもそもなんて返そうとしていたのか考えよう。
いや、考えてなかったのかよ俺。しょうがないっすよ~なんか反射的に答えちゃったんですよ~。



まず、一色は俺のことが好きだと言った。それは本当だろうか?
百戦錬磨のぼっちともあろう俺がなぜそこを疑わなかったのか。


普段の俺ならば勘違いだと一蹴していた。相手にも、自分にも。
なのに何故、あいつが俺のことを本気で好きだという前提で考えているのか。


あいつのことだ。ふざけてたとか、賭けとかしていたなんてことが……いや、違う。
わかっている。だからこそわからない。


……また同じようなことを考えてんな。成長したようで肝心なところで後戻りしている。



俺は人を理解しているが、心を理解できていない。
期待しているわけではない。勘違いするつもりもない。



最初に俺が一色の仕事を手伝った理由。
それは彼女への負い目と、逃げ場が欲しかったから。

次に手を貸したのは、依頼があったから。ただそれだけの理由。


生徒会長にさせられたことで面倒事が起きていると考えれば憎まれても文句は言えない。
惚れる要素なんてないだろう。告白された時、勘違いだ、と否定することもできた。
いや、いつもの俺ならばしていたはずだ。


では、何故?……いや、答えは出てる。俺は―――




「ヒッキー?……ヒッキーってば!」

「うぉ!?……なんだどうした。お腹でも痛いのか?」

「え?別になんともないけど……じゃないし!ヒッキーが大丈夫か聞いてるんだけど!
 ……もう放課後だよ?部室いかないの?」

「え?」


まじか。……どんだけ長考してたんだ俺は。いや、あるいは時間を操rケプコン!ケプコン!


「あー、ちょっと寝不足でな」

「いつも寝てるイメージなんだけど……。とりあえず部室いこ!」

「おう。……由比ヶ浜、一つ聞いていいか?」

「ん?なにー?」

「人ってなんだろうな」

「重い!?なんか哲学的なこと話始めたし!?」

「いや、実際意味わかんなくね?俺以外の人間て実はプログラムされた行動をなぞってるだけなんじゃね?」

「こわ!ちゃんとあたしはあたしだし!」


由比ヶ浜は軽く引いた目でこちらを見るが、少し真面目な顔をして続ける。


「今度はなに悩んでるのかわかんないけどさ、たまには自分中心で考えてみるのもいいんじゃない?
 相手がどうとかじゃなくてさ。あ、あと素直になるとか……」

「いや俺は基本自分中心だぞ。相手をいかに貶めるか考えてる」

「悪っ!言われてみればいつもそんな気がする……」


いつもとは心外だ。他人中心になるときだってある。小町とか戸塚とか。
だが、材木座を気にかけたりするのは無駄だ。よって奴には自分のために動いてもらおう。どわっはっはっは。

どうでもいいけどあの笑い方は悪意に満ちている気がする。ガキ大将的なレベルで。



他愛ない話を継続しつつ部室へ到着する。
戸を開けると来ることを予想していたかのようなタイミングで部長がお茶を注いでいる。

いや、まじで由比ヶ浜に対してなんかセンサー持ってそう……。


「やっはろー!わ~今日もおいしそだね~」

「こんにちは由比ヶ浜さん。あら、今日は引き笑いくんも一緒に来たのね」

「おいやめろ。なんにもしてないのに通報されたの思い出すだろうが」

「うわぁ…なんかリアル……。でも想像したら怖いかも」

「おい、俺は悪くないだろ。読んでた本が面白いのが悪い」

「その返し方からするに、自分の笑みが凶悪ということについては自覚しているのね……。
 でもほんとに気をつけたほうがいいわ。私もあと一歩で通報していたところだったから」

「おまえ見てたのかよ……。あまり見ないでもらえるかしら」

「それは誰のマネかしら?」


しまった、ついうっかり本人の前でやっちゃったんだぜ。殺されるんだぜ。社会的に。



「……ゆきのんの笑顔が怖い。そ、それより二人って同じ本屋さんよく行くの?
 なんか本屋さんでよく会うみたいだけど」

「大体家から近いとこに行くからな。そういやお前は近くに大きいとこなかったか?
 なんでわざわざこっちの小さい店に来んだよ」

「別に、ただ人の多いところが苦手というだけで他意はないわ。
 まるで私が別の目的のために来ているというような発言はやめてもらえるかしら勘違谷くん」

「的確にトラウマ掘り出すのやめてくれる?」


これも中学のころに一部で流行った……やめとこう。
おのれ…鬼畜ゆきのん、略してキチノンめ……。

キチノンってなんかラリッってそうだな。


「へ~。なんか用事合わせてるわけでもないのに会えるのっていいな~」

「いいものではないわよ。自分のプライベートタイムに誰とも知らぬ人に遭遇するなんて堪ったものではないわ」

「……んー?でもそしたら違うとこいけばよくない?ってっきり―――」

「違う。違うわ。別にこのお店にいけばまた会えるかもなんていう得体のしれぬ感情からきているわけでは決してなく、
 ただ単純に私の行きつけのお店である場所に不純物が混ざった程度で私が場所を変えなくてはならないなんてことが許せないだけよ。
 そもそも私は彼と知り合う前からそのお店に通っていたわけなのだからなにも問題はないわ。最近は寄ることが増えたのだけれど、
 それも今探している書籍が入荷されていないか確認しにいっているのよ。確かにネットで注文すればいいという話なのだけれど、
 現物を手に取って購入するか決めるのが流儀であるだけで、特定の誰かに会いたいがために通ってるわけではないわ」


由比ヶ浜の言葉を遮り、早口でまくしたてる。その勢いのせいか頬は紅潮している。
なんというか焦るとわかりやすい反応するのだがこちらがどう対応したらいいかわからなくなるのでやめていただきたい。
なんかこっちが恥ずかしくなっちゃうからさ!

触れる暇がなかったがどうやら俺は誰とも知れぬ人らしい


「ごご、ごめんねゆきのん!あたしが悪かったから一旦落ち着いて!」

「私は至って冷静よ。変な勘違いをしないように諭してあげただけで」


といってこちらに顔を向ける。おいおいなんて返せばいいんだ。


「あー、こんどその本探しに行くか?」


思わず話題そらし。いや逸らせてないな。てか何言ってんだ俺。


「え?……ええ、そうね。それも……んん。……変にストーカーされるのも煩わしいし、今度付き合いなさい」


あ、いいんだ。てっきり罵倒されるかと思っていたのだが。
しかしどうあっても自分が上に立たなきゃ満足しないんすね。負けず嫌いもここまでいくと病気だな。



「ええ!ずるい、あたしも行きたい!」

「もちろん構わないわ。この男と二人きりなんて通報するしかないじゃない」

「なにするかわからないじゃなくて、すること前提かよ。てか呼んでおいて通報とかまじキチノン」

「なにか言ったかしらキチガ谷くん」

「よっしじゃあ決まりだね!いつ行く?」

「この後でもいいのだけれど、せっかくなのだし休日にお出かけといった形のほうがよさそうね」

「うんうんいいね!あ、じゃあさここのクレープ屋の――――」



いつのまにかガールズトークが始まり蚊帳の外へ。いやいつものことだけどさ。
……そういや、こいつが自分からどこかに遊びに行く計画するなんて珍しいな。
前なら一人でいいとか、めんどうだと言っていたが。……それは俺も同じか。


自分中心に、素直に。雪ノ下なりにこれに忠実になっているのかもしれない。


正直、こいつらと出かけるのが楽しみになっている自分がいる。
それを認められることが素直になるということなのだろうか。


ふと、一色いろはの姿が思い浮かぶ。まだ踏ん切りはついていないが、結論は出せると思う。
それにまだ猶予はある。それまでじっくり考えるとするか。もう少し楽観的にな。




「んじゃ俺帰るわ」

「あ、じゃああたしたちも帰る?」

「そうね、そろそろ暗くなるころだし、今日はここまでにしておきましょう」

「ゆきのん!鍵一緒に返しにいこうよ」

「別に一人でもいいのだけれど、……まあ、あたながそれでいいのなら」


えへへーとかいっちゃって雪ノ下に抱き着く。もーあんま百合百合しないでいただけますー?


「そんじゃあな」

「ばいばいヒッキー!」

「比企谷くん、また明日」


由比ヶ浜はぶんぶんと、雪ノ下は小さく手を振っている。その返事として一応手をあげておく。
駐輪場に寄る前に、あま~いコーヒーでも飲もうかと思ったのだが、今の状態で飲んだらやばそうなのでやめておいた。



気が付くと自分の変わっている一面をみて驚くことがある。俺の考えはかわらない、こうはならない。
と思いつつも、変わってしまっている。そもそも変わらないなんてことはない。
俺がこんなふうに斜め下な考え方する前は純粋な時期だって、期待していたことだってあった。


大本は変わらなくとも、細かい部分では変化し続ける。
とりあえず今は……次の休日が楽しみだな――――








***


上げ忘れ

乙です

長く間がありましたが、続きが気になっていたので良かったです。
次回も楽しみにしています。

乙です


久しぶりだったからはじめから読みなおしたわ

そ、そんな。
いろはすがいないだと…

おつ

前回までどんな話だったかほとんど覚えてなかったけど、やっぱり面白いな いい雰囲気だ


いろはす成分が足りない、提訴

次はいつくるのだろうか...

はまち

続きはよ!

―――――
―――




さてさて。自分の変化を受け入れようが、特にこれと言って何か状況が変わるでもない。
たとえ人が変わっても周囲の状況が激変するわけでもない。


仮に根暗な人間が超絶前向き戸部よろしくうぇーいな人格に、見た目になろうとも状況が変わることは稀だ。


職場で根暗ということで軽くいじめのようなことが起きていたとして、うぇーい系になったところで仲間が
できたり、モテたりするわけでもない。暗かった人物が急に明るくなったことで周りの人間はある種の恐怖を覚えるまである。


根暗クスクス、から、なにあいつきもクスクス、程度の変化。


運命論を感じたのは俺だけであろうか。

世の中の出来事はすべて、あらかじめそうなるように定められていて、人間の努力ではそれを変更できない。
つまり努力するで無駄ってことじゃないですかやだー。



言わずともわかるであろう。人は変化を恐れる。自身、変わっていくことに恐れを抱いていたともいえる。
その結果、多少形が変わろうとも元の状況を保とうとする。故人の変化が周りの状況を変えることにはならない。



しかし、その周りが変化を望むなら別だ。一人の変化をきっかけにして周囲が徐々に変わろうとする。
であれば自然と現状は崩れ、新たな状況が構築されていく。



逆に周囲の人間が個人に与える影響はでかい。周りが楽しそうにしていれば自分も楽しくなる。
元々は明るい者でも、周囲がそれを良しとしないが故の排他により、その個人は殻に閉じこもる。


個人を変えるのは周囲で、周囲を変えるのもまた周囲。

all for one , all for all

なにそれ語呂悪い。



要するに、だ。自分では変わったつもりでも、結局現状維持を望んだが故に特に毎日に変化はなかった、のだが。





「あ、先輩!いらっしゃい!」

「なんでお前がここにいるんだ一色。つーか来客はそっちだろうが」

「じゃあお帰りなさい」

「へいへいただいま」

「へへ~。今の夫婦ぽくありません?」

「あざとい」

「久しぶりですねーそれ言われるの」



それまで黙っていた……というか声をかけるタイミングを見失ったといった感じの雪ノ下だったが、
んん、と咳払いをして注意を引いてくる。



「こんにちは比企谷くん。一応言っておくけれど、ここはあなたの家ではないわ」

「まじかよ。あまりにも居心地のいい場所だったから錯覚してたぜ」

「うわ、先輩がボケてる……ってなんか雪ノ下さん照れてます?」

「なにか?今のやり取りのどこにそんな要素があったのかしら」



だから怖いよ。目が怖い。ゆきのんの睨みつける攻撃!相手は死ぬ。
一色ガチでビビってんじゃねぇか。




「ってそうだ。なんでお前ここにいんだよ。さぼりか」


せんせいにいいつけてやろー!

あのふざけ半分の言葉にどれほど苦しめられたことか。対象が俺であるというだけで嘘が真実に変わる。
下村マジ許さん。



「ちーがいますよー。ちゃんと仕事はしてますー」

「じゃあなんか依頼か。今度は何のミスを犯したんだ」

「ミスったって決めつけないでくださいよ……。まあ、特に依頼というわけでもなくてですね……」

「は?じゃあなんで来たんだよ。ここは喫茶店じゃないぞ」

「依頼ではなかったのかしら?」




雪ノ下も依頼だったと思っていたようだが、どうやら違うようだ。
ということはなにか相談だろうか。うちは相談事も受け付けてるからな。まじ何でも屋。
気分はさながらコーヒーを点てながら常連の話を聞くマスター。……ここは喫茶店だったか。マスター!MAX缶コーヒーお願いします。


さておき、なかなか言いよどんでいるところを見ると話しづらい内容なのだろうか。
クラスの男子が掃除しないんですーとか。ないか……ないな。




「いやーなんていうかーそのー……せ、先輩に会いに来ただけ…ていうか……なんて。あ、あはは」

「…………」

「…………」

「…………」


見る見るうちに一色の顔が朱く染まっていく。その朱が広がってこっちまで赤く塗りつぶされそうだ。
実際雪ノ下もなんか気恥ずかしそうだ。


っていうか、なに照れてんだよお前のキャラじゃないだろていうかアッツいなー!さっき廊下歩いてきたからかなー!
歩いて息上がるなんて歳のせいかな?いや、妖怪のせいだな。



「その……紅茶、淹れるわね」

「あ、ど、どうもありがとうございます~…」



雪ノ下さんが気を遣っている……だと?
ていうかこいつさっきから語尾萎みすぎだろ。
どうするよ俺、選択肢はどの逃げるを選択すればいい!?いや落ち着け。とりあえず現実から逃げよう。すでに軽く逃げてるけど。


と、そのとき狙ったかのようなタイミングでガラガラっとドアが開く。



「やっはろー!お待たせ~っていろはちゃん、いらっしゃい!」

「あ、どうもです結衣さん!」

「今日はどうしたの?なにか依頼?」

「あえ?っとぉ~あ、遊びに来たって感じですかね~」

「そっかそっか、ゆっくりしていってね。あ、お菓子食べようよ!」

「あ、いいですね~。甘いモノ摂りたい気分です」

「ちょうど甘いモノ持ってきたよー、今日のは自信作なんだよね!」

「気が利くな。更にマッ缶もあれば完璧だ」

「さ、さすがにそれはないかな~、ていうか甘いのに更に甘いの飲むんだ……」

「糖分を摂りたがるのは決して悪いことではないぞ。脳の回りが良くなる。
 作家だの漫画家だの集中力使う人たちなんか糖分大量に摂る人多いしな」

「そうね、糖分は集中力、思考力、記憶力の低下を回復させることができるから、その手の能力を活かす人たちは
 積極的に糖分を摂取する傾向にはあるわね。勉強の疲労やテスト前に、というのはよくある話よ」

「へー!じゃあたっくさん甘いモノ食べればテストいい点とれるかな?」

「いや、知識つくわけじゃないからな?無い頭捻っても何も出んぞ。ただ太るだけだ」

「そこ!失礼だし!」

「大量に糖分を摂ることで逆に集中力や動作が低下することもあるから何事も適量が大事になるのよ」

「過ぎたるは猶及ばざるが如し、ってやつですね!」

「ふえぇ!なんかいろはちゃんが頭いいっぽいこと言ってる!」


ふえぇ馬鹿丸出しの発言だよぉ。

しかし一時おかしくなった空気も自然と元通りになったか。
グッジョブガハマさん。…………待て…自信作…だと?





「っじゃ~ん!名付けて!デラックスハニトーゆいゆいスペシャル!」

「あ、俺さっきコーヒー飲んだし腹減ってないから遠慮しておくわ」

「比企谷くん汚いわよ。汚いあなたには糖分が足りてないわ」

「いや、意味わかんないから。ていうか俺は汚くねーよ」


なんかよく見たらパンの白いところかと思ったら生クリームじゃねーの?あれ。
お前パンの耳の中にも外にもクリームとか……その名に恥じぬ甘さだな。
妥当なネーミングだ。発想の馬鹿っぽさといい。



「えー?普通においしそうじゃないですか?食べましょうよ先輩。あーんしますよあーん」

「いらんやめろまじでやめろ。お前が食えほら、あーん」

「……えぅ?あ、あーん、んぐんぐ………」



しまった、ナチュラルに伝家の宝刀あーんをしてしまった。つい小町に接するかのように。
隣でんー!あま~い!とかいって食ってる由比ヶ浜が固まってるじゃねーか。


「ど、どうだ」

「……甘すぎますね……いろんな意味で」


まあ、なにも突っ込まないでおこう。


「ヒ、ヒッキー!……あ、あーん」

「いや、ほんといいんでそういの、まじで」

「割と傷ついた!……じゃあゆきのん、あーん!」

「行儀が悪いわよ由比ヶ浜さん」

「ごめんなさい!?」


なにやってんだか。まあ本人は美味そうに食ってるし放置でいいだろ。
ふと一色のほうに目を見やると、ハニトーの甘さのせいか頬が緩みまくっていた。


なんだ……まあ、見てるとこっちまで甘くなってくるな。甘いついでに一口だけ食ってみるか。
………うむ。砂糖の塊ってかんじだなこれ。





  * * *








「そろそろお開きにしましょうか」

「だな。だいぶ日も落ちてきたし。つか結局ずっとここにいたが大丈夫なのか仕事は」

「大丈夫ですよ、っていうか今日は何もすることなかったんで。また遊びに来ますね!」

「ここは用事のない人が来るようなところではないのだけれど……」

「ま、まあまあ。たまにはいいんじゃない?いつも暇だし」



実際、活動内容なんかほとんど無いようなもんだしな。笑え。



「私は鍵を返してくるからここで」

「あ!あたしもついてくよゆきのん」

「そう。では2人ともまた明日」

「おう」

「おつかれさまでーす!」

「おつかれー!」



雪ノ下、由比ヶ浜と別れ、一色と二人、一足先に帰るとする。
今日は互い少し変な態度になっていたが、部室でごちゃごちゃやっている間に自然といつも通りに戻った。
歩き出して少したってから一色が口を開く。



「奉仕部楽しいですね~。居座りたいです」

「別になにもしない部活のどこに楽しい要素があったんだ」

「強いて言うなら先輩がいることですかね、どや」

「もう普通にぶっちゃけるのな」

「そういう先輩も可愛い反応見せませんね~つまんないー」



少しの時間ではあったが大分慣れた気がする。人間なんにでも慣れるもんだな。



「でもほんと……わたしが奉仕部にいたらどうなってたんでしょう」

「どうもなってないだろ。入部初めの段階でもうバックれてる気がする」

「あはは~それありますね。多分他の部活か、遊びに行ってますね。
 ……そう考えるとこれでよかったのかもしれませんねー。わたしが先輩に依頼してなかったら気付けなかったことばかりな気がします」

「……かもな」



同じ部活であったとして、一色という人間が俺のようなぼっちを認識するようなことはないだろう。
誰にでも愛されたいが故の、どの方面に対しても態度を変えないという点。本来ならば、俺という人間は誰とでも、という枠にいたはずである。
それが依頼というきっかけにより、変化していった。



「また、遊びに行ってもいいですか?」

「おう。どうせ暇だしな」

「えへへ。じゃあまた明日です!せんぱい」

「ん、じゃーな」





   * * *








「で、昨日の今日でさっそくいるわけか」

「へへ~きちゃいました」

「仕事しろよ生徒会長」

「今日の分の仕事はすでに終わらせてますー、授業の合間とかに全て終わらせました」

「まじかよ」

「ふっふーん♪ご褒美があるのならわたしだってやるときはやりますよ」

「ご褒美ってなんだよ」

「先輩との時間、プライスレス」

「うぜぇ……」




部外者が2日立て続けという状況に我らが部長は如何様にお考えなのでしょうかね。


「別にかまわないわ。邪魔にならないのであれば」

「いいのかよ」

「と、いうわけで撫でてもいいですよ先輩」

「いや、まったく意味わからないんだが」

「わたしすごくないですか?放課後までに仕事全部終わらせたんですよ?ご褒美欲しいです」

「さっきプライスがどーのとかいってたのはどうしたんだよ」

「やっぱり目に見える成果がないとがんばれません」

「じゃあがんばんなくていいじゃね?おつかれさん」

「冷たい!あ、結衣さんこんにちは~」

「やっはろー!あれ、いろはちゃん生徒会大丈夫なの?」

「はい、やることやったので!」

「そっかそっか、じゃあゆっくりしていってね!」

「ありがとうござま~す。と、いうわけで撫でてください先輩!」

「断る。人前でんな真似できるか」

「二人ならいいんですか?」

「いや、手が折れてるから無理だな」

「断り方が雑すぎます!」




くだらない掛け合いが続いていき、奉仕部にしてはにぎやかな場所になったような気がする。
人は変化を恐れるものだが、周囲が変わろうとしていればその比ではない。

雪ノ下も由比ヶ浜も一色も。そして俺も変わろうと、近づこうとした。
その結果がいいほうに進んでるのかは、判断しかねない。

だが、今はただ、楽しければそれでいいのかもな。そう思えるくらいには、俺の思考も緩くなったもんだ。








――――
――――――

眠れないから書いてみたが、誤字確認してなかった
本編あと2回か3回程度で終わるかなーようやく

>>1



>>621
くさい(直球)

おつおつ!!

おつ


八幡含めみんなかわいい

続きがきになる!

乙!!

乙!

いろはの心の中の描写から会話から可愛すぎる。やべえ。

ふざけんな!

あーんとか…あーんとか!! 羨ましいでもヒッキーなら許す。

おつ

おうあくしろよ(迫真)

八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「ぼーなすとらっく!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407691710/480)

480 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/01/11(日) 03:34:39.54 ID:qq9a4X0B0 [1/2]
やっぱり皆、アニメPが八幡に似てるって思ってるんだね。
コミュ力の高い外見は八幡さんですわ。

スタッフの中でこのSS見て影響されたのかって思ったりね?

481 名前:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします[sage] 投稿日:2015/01/11(日) 03:39:07.38 ID:qq9a4X0B0 [2/2]
やっぱり皆、アニメPが八幡に似てるって思ってるんだね。
コミュ力は高いが外見はヒッキーて感じ。
スタッフの中で、このSSに影響された方が居るのかな?

きたい

超おもろい
がんばって

あげかすしね

はよ

はよー

まだかな~

>>638
キチガイ死ね

早く!

また?

>>641
あげかすキチガイしね

そろそろこないと落ちるんだが

生存報告だけでもしてくれ

まだ生きてます

酉ミスはずい

どっちも違うzo

成りすましか

後1にちしかないんだが

成りすましじゃないんだよなー
たぶんこれで酉あってるはず

全く違うんですが

ワロタ 

誰だお前は

ワロタ

消えろぶっ飛ばされんうちにな

ギター‼︎

昨日から酉があわない
もうあきらめて落とそうかな

これで違ったら俺は偽物ってことでいい
落としてくれ

なんだこれwwwwwwなんだこれwwwwww

もうこの際偽物でもいいから続き書いてくれwww
長いこと付き合ってるから書き方でわかるだろみんなwww

新しくスレたてた方がいいんじゃないかな

誰だよお前

遅れててすまん!
一応ちょこちょこ書いてるがつまらんのでなかなか投稿できん
今日一日暇なんで今日中に投稿する

まさかの本人降臨
待ってます

ようやく本物がきたか 待ってたわ

ようやく本人降臨

保守

SS作家は偽物があらわれたら生存報告してくれるから助かる

はよ

待ってるぜ
最初から読み直しとく

あれだけやっといて偽物だったんかいww
まあ末尾違ったしな
更新待ってる

まさかの策士でワロタ

作者愛されてんなww



――――
――――――





2月も終わりが近づき、今年度も残すところあとわずかです。
3月といえば春の始まりというイメージではありますが、まだまだ寒さは続いています。
寒いのは嫌ですが、暑いよりはマシです。

半ばまでいくと学生には嬉しい春休みとなりますが、わたしはさほど好きではないです。
この休みが終われば学年が上がるという緊張感がどうも苦手なんですよねー。
クラスが替わったり学校が変わるということは、また一からコミュニティの作り直しということですから。

まぁ一からというのは大げさかもしれませんが、わたしをあまり知らない人に
気に入られるよう行動しなきゃいけないわけじゃないですか?


それはさておき。世間一般的には、卒業式という一大イベントがあるわけですが、
大体、3月1日ですけど、そっこーで終わるんですよ。
卒業生からしたら大事な日ですけど我々からしたら退屈な時間でしかないんですよねー。


あとはなんですかね?修了式?教師陣の長ったらしい話を聞くだけとかつまらなくないですか?


だから3月ってあまりいい印象はないです。ですが今年は違います!
3月14日、ホワイトデー。ぶっちゃけた話バレンタインと対をなす割には地味というか、あまり注視されてない日ですよねー。


しかしわたしの先輩は言いました。お返しの日に告白すると!まだわたしのではないですけど。
……いや告白するとは言われてませんけど、それしかないですよね?これで勘違いとかだったら刺します。


というかあの雰囲気でそれ以外なくないですか!?
逆にこんだけためておいてなんとも思ってなかったーとかありえます?
……ありえないとはいえないかもです。あの先輩のことですからひよったりしそう。



とはいえ、マイナスに考えていてもろくなことが無いので切り替えていきましょう!
具体的には14日の予定を考えて!運のいいことに休日ですし。
ようするにデートですよデート。どうしよう服買おうかな。服の趣味とかなんかあるんですかね。ニーソ?

ていうかそもそも何も予定聞いてない!……まさか忘れてませんよね?

まあいいです、とりあえず準備を進めましょう。




「というわけで、どういう服で攻めていけばいいですかね?」

「まず卒業式の挨拶を考えてくれ頼むから……」


副会長が呆れを隠そうともせず返してくる。もう恒例の流れですよね。


「それよりもホワイトデーですよ!もう時間は残されていないんですから!」

「卒業式のほうが時間残されていないのだが!?」

「挨拶のほうは問題ないです。どうせネットに転がっています」

「確かに転がっているだろうが、だめだろ……常識的に考えて」

「お堅いですねー、どうせ挨拶やらなんやらなんて誰も聞いてやしませんよ……冗談ですよ冗談!やります!」


マジでキレちゃう5秒前な気がしたのでそろそろまじめにやりましょうか。
こめかみぴくぴくしてますし。


「まあ、会長はなんだかんだ言ってしっかりやってくれるから心配はしていないが頼むぞ」

「おお、デレた」

「デレましたね」

「仕事しろ!」


いつものやり取りを境に皆作業に戻っていく。
やることといっても挨拶の内容とか段取り確認とかで特に大変なことはないんですけどねー。


面倒事といえば、卒業式のセットをするための委員会との連携くらいだろうか。
また先輩に頼もうかなー。人手は足りてるんですけどね。


挨拶の場を借りてもう一回先輩に告白とか!…いや、しませんけど。
てか先輩と会う暇ありますかねー。すぐ帰っちゃいそうで。

ま、いっか!
はー例の日が待ち遠しいですねー。




  * * *




「先輩ってこの時期どう思います?」

「なんだ唐突に」


先輩は読んでいた本から目をはなし、訝しげな視線を向けてくる。


最近奉仕部にいることが当たり前になってきてる気がしますね。みなさんも違和感無いようで。
もう入部したいくらいなんですけどちょくちょく遊びに来てるシチュのほうが好感度高くないですか?


まぁさすがにサッカー部のマネまでしてるんでやるとなったらきついんですけどね。
でもあんまやることないですよね。この部活。


「わたしこの時期ちょっと憂鬱なんですよー。で、他の人はどう思ってるのかなーって」

「春休みが待ち遠しい」

「言うと思いました……。雪乃さんなんてどうですか?なんか春好きそうなイメージです」


雪乃さんはぴくっと反応し、陽?…好き?…と呟いて頬を引き攣らせてます。
なんか"はる"の字が違う気がしましたがめんどくさそうなんでスルーで。

あ、ちなみに名前呼びになったあたりちょっと親しくなれた感じです。
向こうは名前で呼んでくれないんですけどねー。



「じゃあ結衣さんどうですかー?」

「う~んあたしか~。虫が出てくるのは嫌だけど、割と好きかな!お花見とか!
 あ、ゆきのんお花見しようよお花見!」

「ええ。いずれね」

「それ絶対やらないやつだ!」


結衣さんはえ~いこうよ~なんて言って抱きついている。
鬱陶しいといいつつも雪乃さんは満更でもなさそうです。


「いつも仲いいですよね~あの二人」

「居心地が悪くなるよな」

「先輩に居場所なんてあったんですか?」

「お前の居場所は生徒会室だろ?帰れ」

「冗談ですよ先輩ー。わたしのいる場所が先輩の居場所です!」

「ドヤ顔うぜぇ……。あと意味わからん」


クールに返したつもりでしょうけど照れてますねこれ。八幡検定2級の目はごまかせませんよ~?
可愛いですね~。このうぶな感じが。



「でもいいですね、花見。やりましょうよ先輩!」

「なんでせっかくの休みをんなくっそ人の多いところで、世間の闇を拝みにいかにゃならんのだ」

「マジで意味わからないんですけど」


先輩はふぅ~とうざったらしく溜息を吐いて語り始めます。


「いいか一色。花見をする人間てのはだな、社畜の宴会の場であったり、薄っぺらいご近所付き合い、
 家族連れ、うぇーいな奴らが酒でもいれてさらにうぇーいする空間なわけだ」


「薄っぺらいとか、うぇーいという表現がもう先輩の卑屈さが伺えますね……」


まともなの家族連れしかいないじゃないですか……

まあなんとなく言いたいことが理解できてしまうわたしもどうかと思いますけどね。
いえ、これは逆手にとると先輩の理解者てことではないですかね?

ドン引きするような内容をドン引きしつつも受け入れてあげる器量の良さ。


「やっぱり先輩にはわたししかありませんね」

「マジで意味わからないんだが。まあ聞け。一見、楽しそうな空間に見えなくもないが
 その実、裏では互いの牽制、高度な情報戦、心理戦といったことが繰り広げられている」

「ああ、先輩がざいも……ざいもくざき?先輩と仲がいい理由わかりました。まあ一応聞いてあげます」

「ぐっ……。まあ要するに、だ。男女間であれば、集団であることで抜け駆けすることを許さず、
 また的確に欲しい情報だけをかすめ取る。ああいう場では少なからず気が緩むからな」

「あー確かにそういうのはあるかもですねー女子は」

「これが社会人であれば、いかに上司のご機嫌をとるかであったり、ご近所様の自慢話大会だったりする」


うわぁ……先輩って何が楽しくて生きてるんですかね。



「でも少人数の友達ならいいんじゃないですか?あとカップルとか」


と訊ねると、卑屈な笑みで答える。


「これは知り合いの話なんだが」

「あ、100%先輩の話ですねこれ」

「……その知り合いは、友達といこうと思っていたらみんな用事があるようで断られたんだ。
 だがまあ、家族で行こうという話になり行ったわけだ」


もう落ちが読めますねーこれ。
自分からトラウマを掘っていくスタイル。実はドMですか?ちょっとそれは困りますねーわたし的に。


「そしたらなんと、そこには用事があるといっていた友達がいるではないか。
 少年は『あれ、なんでみんな揃ってるの』と大変居た堪れない状況になったそうな」


「先輩……もういいです。予想道理過ぎてなんか辛くなってきました……」

「ヒッキーまた自虐してるし……」

「相変わらず逸話に事欠かないわねあなたは……」


いつの間にか話を聞いていたお二人もドン引きのご様子で。



「よし!ヒッキー!お花見いこ!」

「いや、だから俺は別にいいって……」

「いきましょうよ先輩!いつまでも過去に囚われるのはよくないですよ!」

「どうせいつも行く流れになるのだし、潔く諦めなさい」


と、雪乃さんの止めの一言で、まあ特に用事もないしな、と頭を縦に振る。
ぶー、ちょっと複雑です。

まあ先輩も雪乃さんもなんだかんだ言って行きたい気持ちもあったんでしょうけどね。


 
「あ、っと……ちょっと長居しすぎましたね。ではそろそろ仕事しなきゃなんで、お暇します~」

「おお。いってこい。……あーちょっとだけいいか?」


失礼しますー、と部室を後にしようかと思ったら先輩に声をかけられる。
お二人には聞かれたくない話なのか部室を出て話始める。


「どうしました?」

「……14日、あいてるか」


内心キター!と思いつつもここは冷静に。とぼけた感じで。


「はい、あいてみゃすけど……」


かみまみた。

なんかちょっと気まずい空気が流れる。これは恥ずかしい!


「……まあちょっとあけといてくれ。詳しいことは後で連絡する」


「りょ、りょうかいで~す。では失礼します!」


気恥ずかしさから、ささっとその場を後にする。


「……ぅ~……顔あつい」


なんでそこで噛むかな~、と数秒前の自分を恨みます。
ちょっと座り込みたい気分でしたが、他の人に見られるのはあれなんで、
気持ちを切り替えるためにもさっさと生徒会の仕事を始めましょう。

その場で深呼吸してから早歩きで向かう。


……その前に顔洗ってきていいですかね?






『3月14日16時に駅前で』


先輩から来たメールは、ほんと簡潔に一言だけ。
えーもっとなんかないんですかー。まあ先輩らいいですけど。それで十分ですけど。


というかこの日に何をしようとか一切書かれてないんですけど、普通にデートでいいんですよね?
まあ先輩は否定するでしょうけどこれはデートですよ!

時間的にどこかぶらついてお食事て感じですかね?


このメールが来てから毎日のように携帯見てはニヤニヤしてしまいます。
あ、自分の部屋でですよ?さすがに誰かに見られでもしたら不登校ものですよ。

……少し浮かれすぎかなぁ?でもわたしにとって初めての出来事になるわけですからね。
自分にこんな乙女心があるとはほんと驚きですよ。


ちなみに、卒業式は特に問題なく終わりました。はい終了。
いや、ほんと何も思うことなかったのでー。


前生徒会長ことめぐり先輩とすこし話したくらいですかね。
……先輩と親しげなことに何も思わなかったということはありませんが。

まあ特に語るような出来事もありません。



「いろはすー水頼むわー!」

「はーいりょうかいでーす!」



で、今日は久々にマネとしてサッカー部に顔を出しています。


いつもなら葉山先輩に黄色い声援を送っていたところですが、それがないわたしを不審に思ったのか、
体調悪い?なんて他のマネから言われますがむしろ調子いいです。絶好調です。
まあアピールしまくっていたのにそれが一切感じられないんだから変にも思いますよね。

先輩に思いを馳せるようになってからもそれは続いていましたし、
他に好きな人がいるなんて思いませんよねー。

なんか今彼キープしながら別の人にアタックしてるみたいな気分でいい感じはしませんね……。
まあ今彼ではないですけど。フラれてますけど。



それから特に問題もなく練習が終わり、みんな片付けにはいっていく。
わたしも片付けを手伝っていたのですが、声がかかり一旦手を止めます。



「よっ!いろはすおつかれさん!」

「戸部先輩お疲れ様です!どうかしましたかー?」

「いやぁちょっと急で悪いんだけどさ~……」


なにか言い辛そうに頭をガシガシと掻きながら切り出す。
どうやら楽しそうな話ではなさそうですが。


「14日なんだけど親睦会てきな感じで練習試合入ってよ~?それ参加できないもんかなぁーってさ」


「あー……すみません、その日は用事あるのでちょっと―――」


と、言いかけのところで戸部先輩がパン!と顔の前で手を合わせ頭を下げる。
あぁ――これはまずい。


「そこをなんとか!他の子にも声かけたんだけど外せない用事あるってやつ多くてよ~
 まじやばいんだわ~」


……わたしだって外せない……外したくない用事あるんですけど。

ほんとは断るべきところですが、性格上断りきれません。

「えーっと……何時くらいまでやる予定ですかね?」

「多分14時には帰れっと思うんだわ!」



まあ仕方ないですね。その時間であれば多分大丈夫でしょうし。

先輩に恋してからいろいろ変わったところはありますが、みんなから好かれる存在でいたい
というところはなかなか変わらないので、つい引き受けてしまう。


「その時間なら大丈夫ですね。参加します!」

「助かるわ~まじ感謝!今度なんか奢るわ!」


戸部先輩はおつかれさ~ん、とぶんぶん手を振り去っていく。


……まあ大丈夫。準備含めても約束の時間には間に合う。


遅れたとしても、1時間くらいならだいじょうぶ……ですよね?
一応少し遅れるかもという報告だけはしておきましょう。

慣れた手つきでスマホを操作しメールを送る。
割と早い返信にドキッとしたが、特に問題はないとのこと。



すこし予定が狂ってしまったが、楽しみなことに変わりはない。が、一抹の不安が脳裏をよぎる。
―――もし、遅れてしまったら。

こういう時ってどうしようもなく胃が気持ち悪くなるんですよね……。


その不安を取り除くように。あるいは周囲からの評価を大事にしてしまう自分への苛立ちを拭うかのように
ふるふる、と頭を振り、無理やり作った笑顔でその場を後にした。





――――――
――――

とりあえずこんだけ
次回最終回3月14に投下します

乙~
がんばってくれ

うぉおおおおおおおおお来てたァああああ!



やはりいろはす天使


ほんとにうれしい

乙乙
後日談として続くんだよな?そうだよな?

>>689
次→完結
完結から数週間→後日談
後日談から一ヶ月→続編開始

だったよな>>1

>>690
勝手に捏造すんなよ

囲め!>>1を囲むんだーっ!

やばいんだよなー日付変わる前に書きおわっかなー
7割がた終わってるんで急ぎます

楽しみに待ってるで

これは間に合わんパティーン

ちょっと間に合いそうにないんで前半後半にわけるすまん



――――――
――――


3月14日 
ホワイトデー

メディアはホワイトデーのお菓子やら、グッズやらを宣伝し
カップル、あるいは社交的にバレンタインのお返しをする日ではあるが特に大したイベントでもない。

何故そう思われがちなのかというと、男性というのはあまり記念日を重要視しない傾向にあるからだ。

バレンタインの『お返し』であることもそれに拍車をかけているのだろう。
バレンタインを実感しなかった人たちは特にこの日ほど、どうでもいいものはない。

想いを伝える後押しであるバレンタインとは違うのも理由の一つかもしれない。
大体バレンタインで上手くいけばそのままお付き合い、とりあえずお返しという流れ。

もうその時点で新鮮ないちゃらぶしているのであれば
この日に更に気持ちが盛り上がる、ということはないだろう。

まさに蛇足、である。
どっかそこらの企業の金儲けや、報道のネタにはなる程度。



ぶっちゃけわたしも気にしたことない日ですしねー。
でも、今年は違います。少なくとも今年は。

どっかの誰かさんがひよったのか、迷ってるのか知りませんが答えを先送りにしたせいです。
ま、先輩らしいといったら、らしいですが。

もう答えなんてわかっているようなものですが、それでも胸の高鳴りが抑えられません。
それを紛らわす、落ち着かせるという意味では本日の蛇足こと、サッカー部の練習試合は丁度良かったのかもしれません。



少女漫画だとこういう日は曇天からの雨、風邪を引くまでのコンボがありそうですが、
見事な快晴となりました。特に前日風邪気味であったーなんてこともないですし。
試合が雨天中止だったらそれはそれでよかったかもしれませんが。





というわけで、がやがやとした喧噪に包まれた総武校となっていますが、まだ相手の学校は到着していません。
それまでの間にグラウンドの整備、フィールドのセッティング、本部作りなどいろいろやることがあります。


力仕事は男子に任せ、細かい仕事はマネがやっていきます。
しかし今日はマネの数が少ないということで、みんなの便利屋戸部先輩をはじめとする何人かが補助してくれています、が。


「スポドリの作成お願いしまーす」

「りょーかい」

「いろはすー!ビブスどこー?」

「部室を入って左手にあります!」

「いろはちゃん、ラインってどうやって引けばいいんだっけ?」

「それなら……はい!ここに書いてある通りで!」

「ありがとー!」

「あれ?冷却スプレーもうなくね?」

「あとでわたしが貰いにいってきます!」

「うちはなにすればいいー?」

「倉庫にコーンがあるのでアップ用に並べておいてください!」



これがなかなか忙しいです。
いつもはやらないことをやってもらっているので、何がどこにあるとか指示する必要があるんですよねー。

大体女子は数人で固まってなにするんだっけー、こうじゃなーい?的なノリで進むのですが、
一人一人に役割与えないと終わらない勢いです。

本来指示出しなんてしないのですが、生徒会で慣れていて助かったーと今回ばかりは生徒会長であったことに感謝します。
ガラじゃないんですけどね、こういうの。


「おつかれ、いろは」

「わ、葉山先輩!どもです」


接近に気付きつつも、さも今気付いたかのようなスタイルー、さすがいろは選手策士だー。


「戸部から聞いたが、いろはも用事があったらしいな。すまない」

「いえいえ!どのみち夕方からなので大丈夫ですよ!」


そうか、と少し気負いしていたのか安堵した様子の葉山先輩。
きょろきょろと辺りを見渡し、それにしても、と続ける。


「さすがは生徒会長、ってとこかな?手際がよくて助かってるよ」

「いえいえそんな。まだまだですよ~。でも生徒会やっててよかったと思います!」


てへへーと謙虚にアピールという、もはや癖ですねこれは。




「これも、彼のおかげかな」


ボソッ、とわたしにしか聞こえないような声でつぶやく葉山先輩の顔は誇らしいような、悔しいようなよくわからない顔をしている。
が、それも一瞬で、気づけばいつもの爽やかな笑みを浮かべている。


「え~彼って誰です?葉山先輩ですか~?」

「はは、誰だろうね。それはさておき先方から連絡があったんだが、少し到着が遅れるらしい。
 まあ早く準備を終わらせて練習もいいんだけど、今日は手間かかりそうだしゆっくりで大丈夫だよ」

「あ、そうなんですか。助かります」

「俺は選手のほうに伝えてくるから、サポートのみんなにはいろはから伝えてもらえると助かる」

「はい!りょうかいでーす!」


葉山先輩はそれじゃ、と小走りでグラウンドのほうに向かい、集合をかけている。

んー大変だけど準備が間に合わないってことはなかったんですが、お言葉に甘えて少しペース落としますかね。
作業しつつサポートのほうに声をかけていく感じで。


そう思った矢先にくせーと顔をしかめてビブスを持つ戸部先輩が現れる。


「あれ、昨日雨とか降ってませんでしたよね?臭いますか?」

「そーなんだけどさー。だれか水ぶっかけたっしょー、まじないわー」


あ、ほんとだ。何枚か湿ってます。
塗れたビブスはもはや凶器ですからねー。
例えるなら牛乳拭いた雑巾を首にぶらさげるような……そこまで臭くないか。




「あーとりあえず広げて日に当てときましょう。相手チーム遅れてるようなのでそれまでには乾くと思いますし」

「まーなー。って遅れてんの?」

「はい。先ほど連絡があったって葉山先輩から」

「まじかー、じゃあそんな急がなくていい感じ?」

「ゆっくりでいいってのをサポートに伝えてくれって頼まれました」

「了解!んじゃ他のやつにもいってくるわ!」

「おねがいしまーす!」


おお、計らずとも仕事が減ってくれました。
いいね~他人の力使っていくね~。

しかしそれはそれでやることなくて暇です。先輩に電話しよっかな?寝てるか。

休みの日は昼まで寝てそう。
いや、今日は日曜なんでプリキュアのために早起きとかしてそうですね。


ま、暇してるところを目撃されるとマイナスイメージになりかねないので、
スコアボードでもいじってましょうか。



と、ボードに向かって睨めっこを始めたところで聞き覚えのある声が耳に入る。


「あーし寝不足で辛いんだけどー」

「あー、なんか楽しみで眠れなかったって感じかな?」

「ち、ちがうし!夜中まで映画観てたってだけだし!」


言わずもがな、三浦先輩と姫奈さんです。
まあ今日来た目的は大体わかりますけどねー。

コミュニティが崩れるのが怖い人ですから義理チョコって設定でいつものメンバーに配る。
そのお返しを何でもない風に、大勢に目撃された状態で、葉山先輩に貰うことで!優越感を得つつ周りに牽制する。
みたいな感じですよね~わかります。


でもみんなの前では渡さないと思うなー。それはそれでありみたいな感じなんでしょうけど。
そして戸部先輩のテンションがやたら高くなりましたね。試合中かっこつけてやらかさないといいですけど。


とりあえず絡まれるとめんどくさそうなので、なるべく目は合わさないようにしますか。


そういえば結衣さんはいないんですねー………もしかして、先輩と……?
なーんて。……いやいや。いや!ありえますね。

まあ?なんだかんだあそこは仲いいですし、夕方までは友達と遊ぶとかあるでしょう。
そのあとはわたしとデートですけどね!!


びーくーるびーくーる落ち着こう。
ここは正妻の余裕を見せていきましょう!




なんて誰かに頭の中見られたら悶絶してしまうようなことを考えているうちに、
なんだかグラウンドの様子がおかしくなってきてますね。なにかあったんでしょうか。

おかしいといっても、なんか困った顔をしている程度ですが……。
とりあえず聞いてみましょうか。


「あのぉ、葉山先輩?なにかあったんですか?」

「ああ。どうやら向こうの手違いがあったらしくて、バスが出せないそうなんだ」

「えっ、じゃあ今日の試合はどうなるんですか?」

「とりあえず今すぐ動ける保護者や教師から車を出してもらう流れになっているようなんだが、
 急なことだからね。1時間は遅れると思う」

「そ、そうですか……」

「まあ遅らせた分、終了時刻の延長て感じになってしまうかもしれないけど、
 なるべく前倒しでテンポよく進ませるから約束の時間には間に合うと思うよ」

「はい!わかりました~」


いうと葉山先輩は選手のほうに体を向き直し、じゃあそれまで練習だ、と一声かける。


「今回の件は無効に非がある。加えて負けでもしたら頭に来るだろ?全力でやってやろう!」


それまでまじか~、萎えたわ~と言っていた選手たちも葉山先輩の鼓舞でやる気が戻ってきたようだ。
さすが葉山先輩ですね。きゃー!素敵!なんて黄色い声援が聞こえてきそうですね。


しかしこんなこともあるもんなんですねー。大丈夫なんですかね?責任問題的に。


おっと、三浦先輩がさすが隼人と言わんばかりのドヤ顔してますね。
一見恐ろしい女王様ですけど、案外かわいい一面とかあるんですよねー。







  * * *




「いやーすいませんね!こちらの不手際で待たせてしまって!」

「いえいえ、こちらも人手不足だったので準備に余裕が出来て助かりました」



ようやく到着した他校の顧問と葉山先輩が談笑している様子が見られます。
葉山先輩は目上の人の対応に慣れているのか、雰囲気がいいです。


実際は準備なんてすぐに終わったんですけどねー。

そういえばこの練習試合組んだのも急でしたし、てきとうな人なんですかね。

それでも相手の気分を害さないように振舞う葉山先輩はすごいですね。


あのひねくれ先輩なら論破からの人間関係のぶち壊しまでしてくれそうです。


それはさておき、ようやく始まります。
戸部先輩なんか、っしゃーぜってーかつぜー!とか、うぇーい!なんていって士気を盛り上げようとしてます。
時折、姫奈さんのほうをチラチラ見てる辺り、何考えての行動か丸わかりですけどねー。


みんながんばれーという姫奈さんの声に有頂天になってる戸部先輩ですけど、
実際脈なんかあるんですかね?姫奈さんは気付いてて気付かぬフリをしているように見えますが……。

客観的にみてもなさそうですよね。
ですが想い人の何気ない言動で勝手に勘違いして、一喜一憂する様というのは仕方ないですし、
本人が楽しければいいんじゃないですかね?



不意に、ピー!と試合開始のホイッスルが鳴らされます。
ボールがあっちいったり、こっちいったり、葉山先輩がかっこよかったり、戸部先輩がやらかしたりと
なかなかに賑やかなことになっています。

実はわたしってあんまサッカーのことわからないんですよね。
というかマネやってるほとんどの子は葉山先輩目当てでしょうし、
サッカー部のマネであるステータスが欲しい子だっていますからね。ちなみにわたしはどっちもです。

なかには本気でサポートしたい人とかもいるんでしょうけど、うちのサッカー部は女の子多いですからね。
うかつなことすると排他される可能性もありますから。女子って怖いですね~。

相手のチームのマネの子も葉山先輩みて黄色い声出してますし、これには選手も苦笑いでしょう。

一方三浦先輩は胸の前で手を組んでハラハラしているご様子。
姫奈さんはいつも通りのニコニコ笑顔で……なんか怖くなってきました。


というわけで、あまりサッカー詳しくないのと、練習試合というのも相まって
特にこれといって語るべきことはないですね。


まあいつも通りに葉山先輩を中心に応援しておきましょう。きゃーきゃー!


んーちょっと時間が気になるところですが、大丈夫ですよね?



 

 
  * * *




練習試合ということで、25分ハーフ。開始が遅かったのでひとまず2試合目が終わった状態です。
ここで一旦昼食をとる形になるのですが、現時刻は12時。少し焦りが出てきました。


どうやら次のが終わった後、最後にフルタイムでやるようなのです。
スタートが14時なので終わりが16時ちょっと前。

こうなることを想定してあらかじめ着替えを持ってきといたのは正解でした。
けど、さすがにシャワー浴びる時間が欲しいですよねー……汗と埃まみれで先輩に会うなんて絶対ヤですし。

でも、もともと遅れるかもと言ってあるので、17時ころになりそうです!と連絡しておきましょう。


「あれ、もしかして彼氏に連絡とかー?」

「へっ!?」


聞き覚えのない声にびっくりしてみると、見慣れないジャージ。相手チームの人ですね。


「あはは~そんなわけないじゃないですか~。今はまだお相手いませんよ~」

「そうなんだ。君1年だよね?名前は?」


まず自分が名乗れ!とはいいませんけど。

なんだこの馴れ馴れしい人は、と観察してみる。
ショートのツンツン頭といういかにもなスポーツマンヘア。
葉山先輩には及びませんがなかなかのイケメンさん。
わたしに一目惚れでもしたんですかねー。でも残念!わたしの隣は予約が入っています!





「一色いろはです。はじめまして!……えっとー」

「あ、わるいわるい。神宮だ。よろしく!」

「神宮さんですね、了解です!どうかされたんですか?」

「いや、ちょっと君と話がしたくてさ」


照れくさそうに頬をポリポリと掻く神宮さん。
うー、それどころじゃないんですけど。まあ仕方ないですね。


「ちょっとだけなら大丈夫ですよ」

「よかった。いや、君の行動見てたらすごい有能な子だと思ってさ。
 選手達の気配りとか、周りへの対応がしっかりしてて」


行動見てたら、とかストーカー臭くないですかね。口にはしませんけど。


「あー、わたし生徒会長と兼任してて、多分その影響ですね」

「生徒会長!それでかー。可愛いだけじゃなくてしっかりしてる子なんてなかなかいないからさ。
 あのマネージャーいいなーみたいに思ってね」

「そんな褒めすぎですよ~。でもありがとうございます!」


まったく嬉しくないですけどね。
下心見え見えのお世辞なんかより、そっけない捻くれ者がくれる言葉のほうがよっぽど心に来ます。

って、あーなんかさっきから黒いなー。
わかってるんですけど、ちょっと余裕ないんですよ。時間押してて。間に合わないかもという不安が再来。

勘弁してくださいよ~ほんとに。いや、この状態を招いたのは他でもないわたしなんですけどね。
しかしこんな時にナンパとかスポーツマン的にどうなんですか?

こうみえて知らない人にしっぽふりふりでついてく尻軽とは違うんですよー。
誰からも愛されたいってことは、誰とも深くならないってことの裏返しなんで。

とりあえず困ったときは、はい、とそうなんですか~、ですよね~の繰り返しで何とかなるんで。
あまり面白い話でもないときは聞き流しつつ、相手に不快感を与えない対応というすばらしいスキル。
まあ先輩なんかには見破られるんですけどねー。




「てっきり葉山君の彼女かと思ってたけど、違うのかな?」

「はい~。……はい?」


おっとー?さすがにスルー出来ない話題が。


「いや、結構お似合いだなーとか思ったからさ」

「え~そんな恐れ多いですよわたしなんか」

「そんなことないさ。いろはちゃんはもう少し自分に自信を持ってもいいと思うよ」


いつの間にか名前でちゃん付け……。
というか仮にも振られた相手の名前を連呼されるとさすがに来るものがあるのですが。

こっちの事情なんて分かるわけないのでなんも言えないですけど。
しかし、ずかずか来る人ですね。考えが透け透け通り越して内臓まで見えますよ。うえー。

さっき嘘でも彼氏です!っていっておけばよかったのかな。でも先輩を男除けの理由にしたくないです。


「でもそれならチャンスがあるってことか」

「え?なんですかー?」


ボソッと、だが確実にこちらに聞こえるよな声音でつぶやく。
まあ聞こえないフリをするのが礼儀ってもんですよ。

恋愛漫画の読み過ぎじゃないですかねー。こうすればドキッとくるんだろ?感ありまくりで。



「いや、なんでも。じゃあこのあと楽しみにしてるよ」

「はい!……ってこのあとってなんですか?」

「ん?打ち上げだよ。いろはちゃんもくるだろ?」


え、きいてないんですけど。こういうのはその場のノリで急に決まったりするから聞いてなくて当たり前かもですが。
さすがにそれは無理なのでお断りを入れようとしたところで休憩が終わり、神宮さんは自陣に戻っていく。


……あとで言えば大丈夫ですよね。


ドツボにはまってるっていうんでしょうか。
自分ってこんなに断れないタイプだったのかなぁ。



不安と不甲斐なさに押しつぶされそうな気持ちを煽るかのように、
甲高く、耳につくホイッスルが無情にもならされていた―――




  * * *




おつかれー、おつかれーと試合が終わって、皆片付けにはいっています。

総武の生徒はゴールの片付けや、本部を畳んだりと割と忙しいです。
こういうのは大抵会場の人たちの仕事になるわけですけど、ちょっと納得いきませんよねー。


まあその施設をよく使う人でなければ片付け方、片付ける場所とかわからないわけですか当然なのですが、
それでも主催しておいて、あげく遅刻したのにそれとかどんだけーって話ですよ。


しかたないのでさっさと終わらせてしまいましょう!シャワー浴びたいですし!


と、作業に取り掛かったところに先ほどの好青年に声をかけられる。


「やあ、おつかれさん。手伝うよ」

「あ、どうも~。でも大丈夫です!うちの仕事なんで!」

「遠慮しなくてもいいよ。あまり女の子に重い物持たせるもんじゃないさ」


ひょい、と持っていたカゴを奪われる。
そして運ぶかわりにお話でもしようというかのようにゆっくりと歩き始める。


ああ、葉山先輩と比べてなんで差があるかわかった。
顔だけ見ればイケメンだし、爽やかなところも共通している。
でも、常に周りのことを考えている葉山先輩と違って、この人は自分の評価を考えて行動する人だ。
なんか妙にイライラしてしまうのは同族嫌悪ってやつですかねー。



さっさと作業を終わらせたい身としては、ちんたら歩いていたくないのですがどうしましょう。
いい加減はっきりとしたほうがいいですかね。このままでは泥沼どころか底なし沼ですよ。


「あの―――」

「いろはちゃんってサッカー好きなの?」


はい!アウトー!
うまくずらされました。たまたまなのか、狙ってやってるのかわからない人ですねほんとに。


「あーえっと、見る分には好きですかねー」

「そうなんだ。話は変わるんだけどバイトとかしてる?」

「いえ、今は特にしてないですね」

「じゃあ土日とか休みなんだ。来週とかも友達と出かけたりしてるのかな」

「んー大体休みの日はそうですね!まあまだ次の予定は埋まってないんですけど」


先輩とデートできたらなーなんて思って空けたわけなんですからね!たまたま埋まってないとかじゃないんだからね!


「ちょうどよかった。実は観戦のチケットを友人にもらってさ、良ければ一緒にどうかなって」

「え」


やられたー!まさかのリサーチからの一貫性の法則。こやつ……できる!

迂闊でした……。日程を切ってしまえばあとに出す話題を断りづらくさせるという話術。策士ですね。
策士、策に溺れるというやつですか。策なんて考えてないですけど。



しかしこれはまずい状況だーいろは選手!
今日めでたくお付き合いからの初デートという計画を邪魔されるわけにはいかない!

さーどうするどうする。

そういえば予定ありました作戦でいきましょう!


「いいですね~。是非いってみたいです!あ、でもそういえばその日―――」

「よかった。じゃあ土曜にいかないか?」


ちょっとー!強引しすぎやしませんかね!?このタイプはなかなかめんどくさいですよやばいやばい。


「あーえっとその日は―――」

「おーい、いろはすー!ちょっと手伝ってちょー!」


と、ここで神の手が差し伸べられる。
ほんとナイスです戸部先輩。この人もまた狙ってなのか素なのかわからないですよねー。


「はーい!いきまーす!……すみません少し外します」

「ああ、了解。こっちは先に運んでおくから」

「おねがいしまーす!」


ふぃ~なんとかなりました。
しかし遮られすぎじゃないですかまったくー。助かりましたけど。

ささっと片付け終わらせてしまいましょう!

おっと、戸部先輩に一応助けてもらったお礼しておきましょうか。



「おぉ~わるい!これどうやってはずすん?」



………ま、素ですよねー。









  * * *

終わり?

乙?
いろはすピーンチ

おつ

10.5巻いろは祭りだったな






  * * *




さて、片付けも終わって帰宅ムード。現時刻17時ちょっと。
もうシャワーは諦めましょう。

ということで帰宅する雰囲気になっていたのですが、なにやら打ち上げしようという流れのご様子。
打ち上げって好きですけど、今日のは特に参加しようと思わないので帰ります。
ていうか先輩待たせてるんで早く帰らせてくれないですかねー。


「―――て、感じなんだよね」

「あははー、やばいですねそれ」


まぁ分かっていたことですが、例の神宮さんとやらに絡まれてます。
漫画なら滝のような汗が出ているレベルですよ。

あっちはなんとか引き留めようと引っ付いてくるうえに、
帰ろうと話を切り出そうとすると遮られて帰るに帰れない状況です。

こっちの迷惑も考えてくださいよー。まあできないから超絶劣化版葉山先輩なんでしょうけど。
そこまで劣化してたら完全に別物か。


そして現在、なす術もなくファミレスに向かっています。
とりあえず腹ごしらえして、あとでカラオケとかボーリングっていうテンプレな感じでしょう。


ダッシュで逃げたいくらいの心境なのですが出来るわけもなく、どこで帰ろうか機会を伺ってます。
助けてよハチえもん!


「あ、そうだわたし―――」

「いろはちゃんはカラオケとボーリングならどっちが好き?」

「………カラオケですかね~」


あああああもう!さっきからこればっかりなんですよ!
会話が途切れたところで仕掛けると、かぶせて質問!

こういうのは遮られた側がしばらく言い辛くなるのを知っててやってますよこの人。
恋愛を計算と策略でするってどうなんですかまったく。まあブーメランですけど。



うぅ……。むこうでうぇーい!とかいってる戸部先輩が恨めしい。
葉山先輩は女子に囲まれないようにうまく立ち回ってますね。

一人、二人に対応しては別の男子と会話を挟んだりと全体と仲良くできるような動き。さすがです。

一方劣化版の人はわたし一人につきっきり。顔だけはイケてますからわたしの女子からの評価が悪くなりかねません。
あんだけ葉山先輩一筋っぽいオーラだしといて乗り換えかー!みたいな。女子って怖いですからねー。


―――あれ?
気のせいか目があったときに微妙な顔されたような……。


神宮さんは、葉山先輩の方に目をやっていたのが気に入らなかったのか、
再度注意を引くために話始める。


「葉山くんはモテモテだねー。うらやましい反面大変そうだ」

「たしかにそうですね~。でも、神宮さんもモテそうですけど?」

「いやいや全然。広く浅くじゃなく狭く深くの人間関係を求めてたからさ。
 割と人脈は少ないほうなんだ。でも一途なことは自慢かな」


さりげない一途アピール!
しかもこれは暗に葉山先輩は浅い人間だとしているぞー!さすがにこれはわたしもいい気はしません。


「へ~。でもいいですよねそういうのって」

「だろ?数ある偽物じゃなくて少ないけど"本物"があればいいって思わないかい?」


………はいぃ~?ちょっと聞き捨てならないですね~。
本物?それを語っていいのは本心から求めている人だけですよ。


なにかに似てると思ったらセールスマンに対応しているかのような会話。
褒めちぎる、誘導する、否定させない。

恋人の勧誘ですかー?ナンパよりタチ悪い気がします。

でも将来の仕事には役立ちそうなスキルですね!



「まあそうですよね~」

「ね。特に僕なんかは気に入った人にしか絡まないからさ、モテるっていうのとは縁がないんだよ」


これもまた"君だから絡んだ"と特別感を出すことで相手の好感度を上げる話術ですね。
残念ですけどわたしには逆効果ですよ。

計算で動いてる人に、計算で仕掛けても考えが筒抜けなので硬直状態が続くだけ。
だからここまで引っ張られてるっていうのもありますけど。


「っと、ついたね。なにか食べたいものある?驕るよ」

「いやーさすがに悪いですよー。今日会ったばかりなのに」

「いいよいいよ。今日の記念にさ」


なんの記念ですか。
こういうのは貸し借りがあるとまた会う口実になるんでそれは何としてもさけねばなりませんね。

というか逃げられずここまで来てしまいました……。



ファミレスの中に入り各々はらへったーだの疲れたーと言って席に着いていきます。
できるだけ横一列になれるように座りますが、人数オーバーで何人かは別の場所に座っていきます。

ここで座ったら負けですね。すかさずスマホを取り出し電話なんで、と外に出ましょう。


「あ、ちょっと電話でなきゃなんで外出てきますね!」

「おっけー。じゃあ注文しておくからなにがいい?」

「えっとー戻ってきたら決めます」

「わかった。とりあえずドリンクバー頼んでおくね」

「はい、おねがいしますー」


やられました。注文とられたらバックれるにバックれられないじゃないですか……。
しかもみんなとりあえず頼むドリンクバー。これは回避しづらい。
ドリンクバーをここまで恨めしいと思ったことはないです!


時計を見ればもう18時近く。
とりあえず先輩に詫びのメールを入れておき、席に戻る。



「おかえりー。電話大丈夫だった?」

「はい。あ、でもちょっと早めにここ出ないといけないくなってしましました」

「そっか。りょうかい。じゃなんか飯頼んじゃおうか」


ここでようやく反撃の一手を打てましたね。
ただ問題は、時間制限をかけたので相手がそれにどう行動するかといったところです。

時間による制約は人をやる気にさせるか、焦らせるかですから。

……あれ?どっちにころんでもまずくないですか?

いやはや、のーぷろぶれむです!
さすがにこの場ではそうそう行動に出られないでしょう。

となると、どのタイミングで抜け出すかが悩みどころですねー。


おそらく先ほどのように、席を立とうとするタイミングで話かけてくるでしょうから厄介です。
消えるドリブルをかませられたらいいのに。


まあ出来るわけもなく、料理を待つことになるわけですが………その間は談笑して時間をつぶしていきます。


さあ、いよいよ神宮さんが口を開きますよ……!もう気分はラスボス戦。
この先に待つハッピーエンドを迎えるために、この心理戦勝たせていただきます!

こっから先はわたしの喧嘩です!



「いろはちゃんは生徒会長やってるんだよね?どんなことするの?」



第一手は無難な話題です。ちょろっと相手から聞いた内容を掘り下げることで、
新密度アップが狙え、そのちょろっとを受け取ってもらえると人は喜ぶもの。
加えて、質問側は傾聴していればいいわけですからまず気まずい場にはなりません。

初対面や久しぶりにあった知人、趣味の合わない人間でも、質問と傾聴をくりかえせば
場が沈黙することはありません。相手のことを知りたいと思うのは自然だし、自分のことを知ってもらえれば親しくなれる。

ついでに同調ですね。
相手の話に頷いたり、時にはわかるわーとかテンションあげて話に合わせることで気が合うのではないかと錯覚させる。
同調が重なれば親近感も増していきますからね。当然彼もやってくるんでしょうけど。

それを逆手にとって、非同調であれば自然と相手に好感をもてなくなります。
何事も否定から入る人が嫌われる原因ですねー。先輩とかそうなんじゃないですか?理屈っぽいし。

なんか難しい感じですが、別に会話自体は至って普通でどこでもある光景です。
そこら辺を意識して話してると戦略、策略になりますよね。

戦略、策略の場になってしまったらもうそこは楽しいお喋りの場ではなくなり、
情報収集、牽制、人心掌握といった戦いの場になるわけです。

別にいつもそうしてるわけではないですよ?先輩と話してるときとかは素ですからね。


ですが甘いですね……それは悪手ですよ!



「えーっとですね。いろいろあるんですけど、記憶にあるのはイベントとかの準備、指示だったり企画って感じですかね」

「へぇー!楽しそうだね。なんとなく生徒会って充実してる気がするなぁ」


これまた相手を持ち上げて気をよくさせようという魂胆。
気分がいいと無駄なことをぽろっと吐いちゃったり、乗せられたりしますからよう注意です!


「最初はほんと地獄だったんですけど、とある先輩に救われまして。そっからですね楽しくなったのは!」


まあその先輩に地獄に落とされてたわけですがね。それで救うとかとんだペテン野郎ですよ!
そしてこれはわたしの攻撃です。彼女には尊敬している先輩がいる、と思わせること。

ここを掘り下げようもんならわたしの勝ちですが、それはさすがにしてこないでしょう。

でもこれではその先輩が男か女かわからない状態です。それを自然と明かしていきたいところですねー。


「へぇ~。もしかして葉山君かな?」

「いえいえ!もっと凡人ですよー。もうぼっち過ぎて逆に非凡っていうかー」

「あははぼっち先輩かぁ。よくいろはちゃんと繋がりができたね」

「ほんとですよねー。最初は眼中になかったんですけど、なんか気を許せちゃったんですよねー。
 ちょっとあれな人かと思ってたんですけど、やるときはやる男だったらしくて!」


はい成功!ちょっと特別感だすというおまけつきです。
これにどう反応するんでしょうか。


「なるほど。いい先輩みたいだね。
 しかし生徒会とサッカー部の両立できるいろはちゃんはすごいね」

「別にわたしは普通ですよ~。周りのサポートあってこそなんで」

「はは、謙虚だね」



まあ逸らしますよねー。露骨な逸らしは聞きたくない話の現れです。
ここまではわたしが有利ですね。てかもう勝確です。

恐らく避けてる話題は好きな人の話ですよね。
現在可能性のある人間は2人という情報が相手にはあるはずですから、
これ以上詮索はしないはずです。

となるとアピールしてくるか、より新密度を上げるために世間話を積むかなんですけど、
ここで時間制限が活きてきます。時間の無いなかで攻撃するのに、後者では火力に欠けます。

世間話に花を咲かせたところで、決めようと思ってもタイミングを計りかねますからね。
今日はいい日だね、ところで君のことが好きなんだ。なんてぶっとんだことになります。

だとするなら、アピールからの告白という流れが一番適していることになります。
それってアウトじゃね?ってなるかもしれませんが、アピールを流しに流し、こいつ気が無いなと思わせればいいんです。

明らかに好感度が変動してないのに勝負に出る人なんてそうそういないんで。

ただ問題は、相手の気を害さないタイミングで抜け出さなければいけないわけですが、
アピールタイムからうまいこと抜け出すのは至難の技になります。


「僕もいろんなことをしてきたけれど、人の上に立つのはしたことないかな」

「へ~、なんかリーダー的な印象ありますけど違うんですか?」

「部のみんなからは薦められたけど、ガラじゃないから断ったんだ。
 みんなと同じ目線で物事をみたり楽しみたいって人だからさ」

「いいですね!そういうところが逆にリーダーにむいてるんだと思いますよ」

「はは、そうなのかもね。いろはちゃんはどんなタイプの人を好むんだい?」


ド直球!まあどんな人間~て話してましたから割と自然な流れではあるのかな?
別に好きな人に限った話ではないような質問ですし。

タイプですかー。なんだろう。わたしに好感持ってくれる人は好きですかね。
みんなに愛されてるわたし大好き。



「自分に好感持ってくれる人ならみんな好きですかね!」

「なるほど。恋人に求めるのもそんな感じなのかな」


うっ……わかってはいましたがガツガツきます。
賭けに出ましたね。ここで神宮さんと正反対なことを言えば諦めないまでも、
これ以上ここでは攻めてこなくなるかもです。
そしたら抜け出すのも容易になるってなもんですよ。

……しかし恋人に求めるもの……ですか。
前ならスペックとかブランド性のある人でしたけど……今は―――


「―――本当の自分を見てくれる人……ですかね」


ぽつり、と自然と言葉が零れ落ちる。
考えていたことがつい口から出てしまい、自分でびっくり。
適当に返そうと思っていたのに。

そんなわたしの返答に神宮さんは一瞬驚いたようですが、フッと笑みを浮かべて答える。


「そっか。僕たち、気が合うのかもしれないね。僕の求める人もそんな感じだよ」


…………あ、まずいですしくじりました!
神宮さんにとっておそらく最高の一手をプレゼントしてしまいました!

ここで畳みかけられてはやばいです。告白だけは何としても阻止しなくては!



「いろはちゃんはいろいろ考えて行動してるよね。言動とかもさ」


分かっていたことですが、そこはさすがに見破られてますか。
神宮さんはこれを好機と見て、反論、というか今のを否定する間も与えないかの如く話を続けます。


「僕も同じだから分かるよ。仮面を張り付けて、誰もから好かれようとする気持ちは」
 
「いや、あの今のは―――」

「だから僕ならわかってあげられると思うんだ。逆に僕のことをわかってくれる人も、いろはちゃんくらいだと思う」


……それは押し付けですよ。傷の舐め合いじゃないですか。
拒絶したいがそれも出来ずにいると、ギュッ、と手を握られ、顔を近づけられる。

振り払って飛び出したいのもやまやまですが、この場では……。


「だからいろはちゃん、僕と―――」


ってそんなこと言ってる場合ではないです。
止むおえませんがここは――


「いろは」


と、どことなく怒気を孕んだ声に二人とも怯み、
ハッとして緩んでいた手から抜け出し神宮さんと距離をとります。

今しがた声のした方向に顔を向けると、そこに立っていたのは葉山先輩。


「あ、……と、葉山、先輩」

「邪魔してすまない。でも時間いいのかなって」

「え?」


確認してみると19時。え?そんなに話してましたか?
じゃなくて急がなきゃまずいです!



「約束があったんだろ?いかなくていいのかなと思ってさ」

「は、はい。あ、えっとすみません神宮さん!わたし行かなきゃいけないところがあるので失礼します!」

「ああ、時間とっちゃってごめんね」

「いえ!……葉山先輩すみませんでした、ありがとうございます!」

「いや、謝るのは俺の方さ。……もっと早くに言ってあげることもできたのに」


え?
なんで葉山先輩が謝るのだろうか、とも思いましたが今は一刻も早く待ち合わせの場所に行かないと!


早々に荷物をまとめ、自分のドリンク代を置いて立ち去ります。
もちろん他の人に一声かけてからですけど!

おつかれー、またねーという声を背に店を出る。

ふと、葉山先輩のほうを見やると、なにやら神宮さんと話しているご様子。一体何の話でしょうか。


………というのは置いといて、急がなきゃ!






  * * *






時刻は19時20分程度。
はぁ、はぁ、と息を切らせて走ってきたそこには目的の人影は見当たらない。

一応物陰になるところも見渡しましたが、知らない人ばかり。


はははー、それもそうですよねー。
もともと16時に予定していたのにずらしにずらした挙句これですもん。

わたしだったらブロックからの通報まであります。
あー、最悪だなあわたし。なんでこうなるかなー。


……いや、原因は自覚しているし、なるべくしてなった、って結果ですよね。


そもそも打ち上げに付き合う義理はなかったんですよ。
大事な日だってわかってたじゃないですか。外せない用事って自分で言ってたじゃないですか。


神宮さんの誘導がうまかったーとか、そんなの関係ないんですよ。それは他己責任です。


あー、泣きそうです。もう、ゴールしてもいいよね?
泣く資格なんてない、ってわかってますけど自分の不甲斐なさに泣きそうです。すでにうるうるきてます。


あんまり考えちゃいけないって、振り返ることに意味はないって思っても、あの時ああすればとか、こうしたらとか、
最初から断っておけばとかいろいろ考えちゃって堂々巡りしてしまいます。


「あは、は……なに、やってんです、かね……」


壁に寄りかかり、ずるずると地べたに座り込む。
膝を抱えて丸くなり、気分はさながら悲劇のお姫様。

それを主役たらしめないのは、それが全て自分の意思でどうとでもなったこと。
回避できた未来にわざわざ自分から突っ込んでったんですから。


これでは100年の恋も冷めちゃうかもですよね。
ただでさえ恋愛に奥手な先輩で大量のトラウマ持ちですから、裏切られたくらいに思ってるかもしれません。


あーあ、今頃デートでもしてて、告白の返事もらって、ハッピーエンド迎えてたはずなんですけどねー。
もう取り返しがつかないと思うと、自責の念で胃がぎゅるぎゅるします。なんか吐きそう。


「…………………やだ…なぁ」


終わりたくないです。でも、どの面さげて先輩に会えばいいんだろ……。


顔をあげてみれば、辺りのカップルがちらほらと目に留まります。
別にいつにも増してカップルが多いとかそういうわけではありませんが、
無意識のうちに見回してしまいます。

それぞれが仲よさげに、腕を組んだり笑いあったり。
その様子を見ているのが苦痛になりまた顔を埋めてしまう。


「………先輩……」


まるで不審者ですね。酔っ払いにも見えるかもしれません。
通報されないですかね?これで補導されたら泣きっ面に蜂ですよ。


でもここから動くことも出来ず、惨めに涙が出るばかり。

あれですかね、恋愛なんかするなってことなんですかね。
結局わたしには一人の人を想うことなんてむいてなんでしょうか。


でも、やっぱり。



「………………せん、ぱい……」






「呼んだか」






………え?
いやいやなんですか?幻聴ですかね。ナンパですか?

えー、この状態でナンパされるとかもうだるくて仕方ないんですけど。


「おい、一色さん……?」


あれー、先輩ポイですねこれ。なんでいるんですか。
おーいなんて呼ぶ声が続きますが、顔をあげないわたしを別人だったと思ったのか最後には、


「……あー、人違い………です。すんません」


これ絶対先輩ですね。ほんとにかっこつかない人ですまったく。そこは自信持って声かけてくださいよ。
泣き顔見られたくなくて顔あげませんでしたけど、上げないと帰っちゃいますよね。


「………あってますよ。……先輩」

「…………んだよ。だったら早く顔あげろ。黒歴史増えちゃったかと思ったじゃねーか」


あははーなんて笑う余裕もなく、泣き声を抑えるのに必死です。
いろいろ質問したいことはあるんですけど、今声出したら決壊しそう。



「ったく。こっち向かってんなら連絡入れろ。ホウレンソウは社会でたら基本だぞ。俺は出ないけど。
 葉山から今向かってるらしいって………っておい、一色?」


堪えきれずに先輩の胸に飛び込む。


「……泣いてんのか?」


どうした、なにかあったのか、という先輩の問いに我慢できず、声を殺して泣く。
そんなわたしの背中をさすり、泣き止むまで何も言わずにいてくれる。


「………できれば頭撫でてください」

「もう元気だな。離れろ」

「また泣きますよ」


図々しいですかね。そりゃそうですよ。
先輩からしたら、遅れに遅らされて、いざついてみれば後輩が泣いてるとか謎すぎますもんね。
我ながらいい迷惑です。


「…………ほれ」

「………ぁ……」


でも、なんだかんだこちらの要望に応えてくれるあたり、いいお兄ちゃんって感じですよね。
………あったかい。

綻んだ顔を隠すように先輩にぎゅっと抱き着く。



「んで、どうしたんだお前は」

「先輩こそなんでいるんですか?わたし、こんなに遅れたのに」

「別に、遅れるって連絡は入れてたろ」

「それは、そうですけど……。でも――――」

「別にお前に悪いとこなんかねーだろ」

「悪いですよ。来ようと思えば時間通りに来れたんですから」

「………らしくねーな。いつもならもっとこう、
 すみませ~ん遅れちゃいました~きゃは☆みたいな感じじゃねーか」

「それ誰の真似ですか。………まあ本気で悪いと思ってるんですよ」

「じゃあ普段は悪びれてなかったのか」

「うっ………い、今のは言葉の綾です!手取り、足取り?しないでください!」

「してねーよ……。揚げ足って言いたかったのか?由比ヶ浜レベルの間違いだぞ」

「あーデートの時に他の女の人の名前出すのはタブーですよー」

「まだ始まってないからセーフだ」

「デートって認めるんですね」

「………手取り足取りしないでくれ」

「してないです。というか忘れてくださいそれ……」


なんかいつもの感じに戻ってきました。
というか別に先輩はいつも通りなんですよね。わたしが勝手にテンパってただけで。

……やさしいですよね。



「でも、もう遅くなっちゃいましたね。どうします?これから」

「……まだ間に合うな。電車乗るぞ一色」

「え?今からですか?でもどこに……」

「ほれ」


先輩の手には2枚の紙切れ。
どこか見覚えのあるその紙は舞浜にある某遊園地のチケット。


「これ……ディスティニーのアフターチケットですか?なんで……」

「いやならいいが」

「いえ!全然いやじゃないですけど」


嫌なことはなにもない。だがどういう意図でこの場所を選んだのか。
別にデートスポットとしては定番ですけど、この時間にいってもなにもあまり乗り物には乗れないだろう。

……この時間になったのはわたしのせいですけど。
そういえば間に合うとかなんとか言ってましたが……。


「……んじゃいくか」


先輩はそう一言告げて改札の方へと歩き出す。
わたしも遅れてとことこ、とその隣を歩く。



この時間に間に合うものといったら、あれですかね?










  * * *





3月も半ばまで来ましたが、まだまだ肌寒く夜は冷たい日が多いです。
先輩は寒いのが苦手なのかマフラーに顔を埋めています。

まあ暑いのも苦手そうですけど。

年がら年中家の中って印象受ける人ですからね。
それがこんな人混みの寒空の下で待機してるんですから不思議ですよねー。

というわけで現在ディスティニーにあるお城が見えるところでスタンバってます。
時刻は間もなく20時30分。お城付近で花火が打ち上がる時間です。

この時間でなんかあるとしたらこれ、というのはわかっていましたが、どことなくわくわくしてきます。
先輩といっしょだからですかね?


そういえばここに来る前、どこで待ってたんですかね?一応付近は見回したつもりですが。


「先輩。わたしが駅に着くまでどこで待ってたんですか?」

「コンビニで立ち読み」


そりゃそうですよねー。そんだけ長いこと外に出てるはずないって考えればわかることじゃないですか。
ちゃんと連絡いれておけばあんな泣いてるとこ見せなくてすんだってことですよね……。



「何時間もそこにいたんですか。店からしたらさぞかし迷惑だったんでしょうね」

「甘いな一色。滞在時間は10分程度だが迷惑そうだった。
 長時間いなくとも、店に入った瞬間から警戒されるまである」

「うわぁ……。じゃあそれまでどこにいたんですか?」

「サイゼ」

「一人で?」

「戸塚達とだな」

「へー」

「聞いといて興味なしか」


ふぅーん。
他には誰がいたんですかねー。別にいいですけど。今はわたしの独り占めですし。


「そんなことより先輩!もうすぐですよ!」

「そうだな」


まもなく花火が打ち上がる時刻。心なしか周囲の声のボリュームも下がってきている。
そういえば前に来たとき、隣にいるのは葉山先輩でしたね。

ディスティニーマジックってやつでしょうか。妙に気持ちが昂った記憶があります。
あの時は先輩の影響も受けてましたし。ま、結局そのときから先輩に想いを馳せていたわけですが。


今度はあの時とは違う気持ちでここに立ってますね。
何かに追われるように、焦っていて。

先輩は今何考えてるんでしょうか。


記憶の海を漂っていると、ふいにひゅ~という音が聞こえ、ドンッと空に花が咲く。
この日最後のイベントの始まりです。



1発目が打ち終わったと同時に次々と光が空に打ち上がり、その花が開くたびにわたしたちの姿を明るく照らします。
低いドンッという音が妙に心地よく自然と力が抜けて行くようです。


「先輩。ありがとうございます」

「あん?なにがだ?」

「いろいろですよ。……いろいろ」

「………おう」

「……先輩」

「……ん」

「……好きです」


そのセリフを告げ終えると、タイミングよく花火が綺麗に咲きます。
花火の灯りで見えた先輩の頬は少し朱に染まっている気がしました。無論わたしはほろ酔い気分です。飲んでないですよ?


「……おう」

「………えー!それだけですか?ていうかここは本来先輩から告白する流れですよ?何言わせてるんですか!」

「お前が先走ったんだろうが。俺は悪くない。うん悪くない」


こんなときまで締まらない!やはり間違っていきますね~。
ま、不快になるでもなく、自然と笑みがこぼれてしまうんですけどね。



「それで、返事。もらえないんですか?」


もう返事もらったようなもんですけどね。でもやっぱり言葉にしてもらいたいじゃないですか!
というわけで、どうぞ!


「……まぁ、その、なんだ。悪くないと思う」

「……先輩」

「ぐっ……あーだから、えー。そういうのもありかなっつうか」

「じー………」

「………好き、かもしれん」

「え、なにがですか?」

「………一色のことがだ」

「名前でどうぞ!」


先輩は、こいつ……的な目で見てきますがスルーで!暗くてわかりませーん。
しかし諦めたのか潔く……すでに潔くありませんが、一言。




「好きだ、いろは」


「はい、わたしもです。先輩」




ドンッ!と、今日一番の花火に合わせ先輩の唇に自分の唇を重ねる。
歯がガツンなんてありがちの展開が起きないよう細心の注意をはらって。
せっかくの夢心地を台無しにしたくないですから。

これは予想していなかったのか、驚いた顔をした先輩でしたがそれも少しの間で、
ぐぃっと、わたしの体を引き寄せる。これにはわたしがびっくりです。


「………ん……ぁ……ぅ」



実際にそうしてた時間は短いでしょうけど、とても時間がゆったりと流れているような気持になります。
もっとこのままこうしていたい気持ちはありますが、さすがに人目もあるのでお互いそっと離れます。




「……以外ですね、先輩がそんな積極的だなんて。今日一番のサプライズです」

「……一本取られたからな。お返しだ」

「なんですかそれ。負けず嫌いですねー、雪乃さんみたいですよ?」

「あいつほどじゃねーだろ。つーか他の女子の名前はアウトなんじゃなかったのか?」

「自分から出すのはセーフです」

「なんだそれ」



2人してフッと笑う。
しばし見つめ合い、気恥ずかしくなったのか先輩が口を開く。


「さて、どうするか」

「んー、アトラクションはまだ動いてますけど。なにか乗っておきたいのあります?」

「いや、特には。なんかあるか?」

「ないですねー。ちょっと疲れちゃいましたし」

「だな。帰るか」

「はい。………あ、先輩!」

「あ?」

「えへへー。好きですよー」

「へいへい。世界で一番愛してますよ」

「心がこもってないんですけど!」


ほれ、ふざけてないでさっさと帰るぞー。という先輩についていく。
今のは照れ隠しですか?だとしたらかわいいですねぇやっぱり。

ディスティニーに来て、1時間も経たずに帰るなんて初めてですよ。
まあこの一大イベントのための1時間は十分すぎますけどね。



今日1日いろいろなことがあり、一事はどうなることかと思いましたが、
何とか望んだハッピーエンドは迎えられたようです。



それから先輩もわたしも、駅に着くまで一言も話しませんでしたが、
特に気まずい雰囲気でもなく、ディスティニーの余韻に浸ってました。



今日あった出来事を忘れないように。
自然と繋がった手の感触を確かめるかのように、強く、握って。







  * * *  





はい!というわけで、念願の先輩の彼女さんになりましたー!
どんどんぱふぱふ~。

いやーよかったよかったって感じですね!
わたしが最初に告白してから一月たっていたわけですから、答えが変わったりしてもおかしくなかったわけですし。
……一月して思いが固まった線もありますね。むしろそれです。


そして今日は修了式。
学校も早く終わるので、さっさと下校して遊びに行く人もいれば、学校に残ってぐだぐだする人も。

かく言うわたしはというと―――


「あ、せんぱーい!これから部室ですかー?一緒に行きましょう」

「……お前はいつからうちの部員になったんだ」


気分はすっかり奉仕部なもんで。
一切活動したことはありませんけど。

でも静かだし、お茶でるし、お菓子おいしいし、先輩いますからそりゃ居座りたくなるってもんですよね。


「まあまあ固いこと言わずに。だきぃ」

「くっつくな鬱陶しい……。つーかいいのかよ。誰かに見られたらあらぬ誤解を招くぞ」

「ぶぅー、誤解じゃないですからいいですー」

「まあ、そうだが………。一色」

「なんですか?もしかしてキスですか?さすがに人目のあるとこでは無理ですごめんなさい」

「ちげーよ。つうか久しぶりに聞いたなその常套句。
 じゃなくて、別に今まで通りでいいだろ。わざわざ変わる必要なんざ―――」

「わかってますって!ちょっとしたジョークですよジョーク。
 わたしは多分これからもみんなに愛される一色いろはであり続けますよ。それがわたしですから」


「………そうか」

「はい。………それに」

「それに?」

「人前では一見興味ない風を装ってて、二人きりになるとデレるとか先輩好きですよね?」

「……まぁ悪くないな。2次元なら」

「えー、3次でもいけますよ先輩ならー。こんなにかわいい後輩が彼女なんですよー?」

「はいはい嬉しいなー」

「うわぁすごくうざいです」


さすがにこんな話してて誤解するなってほうが無理な話ですけど、今後は気をつけましょう。

周りの評価を求めたせいで痛い目をみたわけですが、それでもわたしの生き方は変わらないと思います。
そうしていくほうが世の中生きやすいですし。先輩もそうしろと言ってくれているわけですしね。

それに、ミーハーに見えて一途ってポイント高いですよね?ギャップ萌えってやつですよ。


「あ、でも先輩。二人きりになるとデレるってのは本当ですよ」

「あ?」



ここでいったん立ち止まり、もじもじと頬を染め下を向く。


「……いっぱい甘えたいですから」


「………まあ、ほどほどにな」



「ほらやっぱりこういうの好きじゃないですか!照れてますよね?せんぱい?」

「それがなかったらポイント高かったのになー」

「大丈夫ですよ、今のは狙ってましたが甘えたいのは本当なんで」


というと先輩は、がしがしと頭を掻いてそっぽを向く。
ポイント入ったみたいですね。とかいったらいい加減マイナス入りそうですけど。



「それより、なんで名前で呼んでくれないんですか?あの日は呼んでくれたのに」

「限られたときだけのほうが特別感あんだろ?これ八幡的にポイント高い」

「ただ恥ずかしいだけですよね?それ。葉山先輩とか親しい人なら名前呼び普通ですよー」

「あいつらとは生きてる世界が違う。なんでああも馴れ馴れしくなれんの?一言交わしたら友達なの?
 じゃあなんで俺はいつまでたっても名前を憶えられてないんだろうな」

「……地雷多過ぎて会話に困るからじゃないですか?憶えたら付きまとわれたりするのだるいですし。
 実際にそういう人いますからねー」


ああ、だからか。そういえば小5の―――と先輩が勝手に回想という名の黒歴史を語り始めたのでシャットアウト。
この人と付き合っていく人は大変ですねー。わたしじゃなきゃ見放しちゃいますよ。


「つーかおまえこそ俺の名字すら呼んだことないんだが?名前しってんのか?」

「そりゃ知ってますよ。でも今更名前呼ぶなんて恥ずかしいです」

「お互い様じゃねーか」

「……この件は保留にしておきましょう」


丁度部室に着いてしまいましたし。
さて、これが今年度最後の部活動ですね。わたしは部員じゃないですけど!

ちなみに奉仕部のお二人はなんとなく察していたようで、付き合った次の日にこの場所で打ち明けました。

そんな部室からは今日も紅茶のいい香りが部屋の外まで届いてきます。



ふと、全部ここから始まったんだなぁとしみじみします。
平塚先生の薦めでここに来て、先輩に出会って、本物を求めてしまった。


それ故に傷つくことや、面倒事とか出てきたわけですけど、悪くはなかったですね。
基本的なところはわたしも、この奉仕部の人たちも変わってはいないようですが、皆先輩に影響受けて変化があったんだと思います。


ここまでいろいろ間違ってきて、今もなお間違い続けて。


それでもやはり、わたしの……わたしたちの青春ラブコメはこれでいいんだと思います。


ですよね?せーんぱい?








***


 









  

というわけでようやく完結しましたー
長らく待たせたあげく自分で決めた締切やぶってすまんのう
おつおつ

いいいろはだった

おつ
新刊含めていろは分が補給されすぎて幸せだ

あー、すげえ精液出た
捗ったわー

おつ
かわいい

面白かった
いろはすssは良いよな

おつおつです!!

乙乙 最高だった
後日談は?

おつ
ついに終わってしまったか…さみしい
最高にかわいいいろはすだった!
次回作早くしてくださいね

やっと終わったか嬉しいような寂しいような

すげぇよかった


神宮ざまあの後日談はないのか?

それはマジで絶対欲しい

ざまあっていうアレじゃないけど、どうなったのかくらいは気にならざるをえんだろう



神宮にヘイト溜まりすぎて読むのやめそうになったわwwwwww

明治神宮さん嫌われ過ぎワロチ
後日談は考えてないけど番外編と番外短編くらいは書こうかと思ってる
せっかくだし神宮のメンタル壊しときましょう

まあいつになるかわからんけど(・´ー・`)

はよ

やべえ超楽しみww

あ、別に中学生みたいな俺つえーは見たくないです

乙です
久々に綺麗に完結したいろはすSS読めて良かった

最新刊もいろはす祭りで最高だ


すごいよかった。超キュンキュンした
正直エタるんじゃないかと思ってたけど、完結してよかった
また何か書いてください

久しぶりに最初から読み直してみたけど、やっぱいいな

 –––after–––





一年という時間はあっという間に過ぎる。

これがまだ小学生のころであれば長く感じていたものだが、歳を重ねるごとに
時間の経過が早く感じるようになる。

この現象はなんで起こるかという理由があるのだが、特に披露する知識でもないし、
披露する相手もいないので割愛させていただこう。

特に興味のないことを急に語り出すやつとか、間々見かけることがあるが
なぜ彼らはドン引かれているという事実に気がついていないのだろうか。

まだその話を相手が興味を示し、問うてきたのであればいい。
話のネタにもなるし、相手は知識を得られる。語るほうは知識を披露でき、一種の充足感を味わえる。

語る方は所詮自己満なのだ。自分の好きなものや、今熱中しているものについて誰でもいいから語りたくあり、伝えたいのだ。
それゆえだろうか。それが一方通行の押し売りということまでは気がつかない。
でも友達でもない奴に語られたら気持ち悪いこと極まりない。

最終的にいじめられるか、いないもの扱いされる。アナザーなら死んでた。

だが、気持ちはわからなくもない。
友達を作りたいが話すきっかけが掴めないと困っている時、
周りがこれどういうことー、なんなのーとなっていればそこに入って解決してあげたくなる。

あわよくばお前すげーな!と称されそのまま輪に加われたらなんて考えたら、いてもたっていられない。
結果それが裏目にでることが多いのがこの世の常である。


中一の俺とか。もうかわいそすぎて逆に可愛くもある。

しかし中には自分から話ふっかけておいて、興味なさげに流す奴もいるからなー。
あるいは聞いといてドン引きとかするやつなー。
たとえば目の前にいる一色いろはとかなー。

おっと、話が逸れてしまったなぁ失敬!いやぁぼっち歴が長くなると脳内会話が長引いていかんなぁ。


「終わっちゃいましたねー」

「だねぇ。なんかいろんなことがあったけど、あっという間だった気がする」


一色とガハマさんがしみじみと呟く。
そう、今日は修了式があり、おそらく今年度最後の部活中である。

別に卒業したわけでもないのに、そんな感慨耽るようなことか?と感じるが、
もう大学受験のことを考えて行動しなければならないと思うと、
あぁ終わっちゃったな……なんて思わなくもない。

それに確かにあっという間だった気もする。
これまでの誰とも深く関わることのない人生からは想像もつかないようなことが多々あったのも事実な訳で。


何もない日々の繰り返しであればそう実感することもなかっただろうが、
それなりに記憶に残る出来事があったからな。

特にその……なんだ。一色と?付き合うことになったとか?
あれ、付き合うってなに?買い物とか?なんだ~てっきりカップルになったのかと思ったよ~。

なんか改めて意識してたら恥ずかしくなってきた。
わかったこの話はやめよう。ハイ!!やめやめ。


「そういえば奉仕部って春休み中も活動するんですか?」

「いやしない。絶対にしない。せっかくの休みなのに仕事する意味がわからない」

「えー普通に暇じゃないですかー?」

「なんのために休みがあるかわかってんのか?日頃溜まった鬱憤を晴らし、
 縛られた日々から解放されるための羽休めの期間なんだぞ?おとなしく家に閉じこもり、
 自分を見つめ直してもう外になんか出ないからなという気持ちを高めるために存在するのが長期休暇だ」

「なんか必死すぎて気持ち悪いんですけど……」

一色はこいつはやばいと思ったのか如く、ガガっと椅子を引く。


まったくこれだから最近の若い子は!休める時にちゃんと休みなさい!
なにこの超ホワイト企業。雇ってください。いや、お金だけ懐に入れてください。

ほんと日本人働きすぎだよなぁ。代わりに俺が休んどいてあげるか。
いや実際働きすぎなんだってまじで。

そもそも大半の人間が労働収入しかないと思っているプラス、労働しない人間はクズとでもいうかのような風潮があるのも理由の一端である。
労働者と事業主の割合が実に9:1とか。他国からしたら驚きの数字らしい。


「うわぁ……。ヒッキーがまたなんか意味のわからないこと言ってる」

「あなたの休みに対する執着と偏見は異常ね。賞賛に値するわ」

「まあな。俺は休むことにかけてエキスパートだからな」

あとサボることと、逃げること。人を怒らせるのも得意だな。
なにそれ悪役っぽい。

「もちろん皮肉で言ったのだけれど……、でもそうね。
 春休みの間は奉仕部の活動を休止するつもりよ。どうせ相談者もこないでしょうから」

「じゃあ今日が最後かー。なんか寂しいね」

「別にこれが初めてではないし、4月からは活動再開するつもりよ」

でもー、という由比ヶ浜に雪ノ下はそれに、と続ける。

「特に休み中忙しいということはないから、いつでも会えるわよ」

「ゆきのん……。じゃあ休み中いっぱい遊ぼうね!」

少し照れくさそうにしている雪ノ下に、由比ヶ浜は感激したかのような表情を浮かべ飛びつく。

もう見慣れた光景だなーこれも。いつも通り俺が置いてきぼりになるのも一緒で。
気がつけば一色まで雪乃さん!なんていって抱きついてるし。


あれー?おっかしいなー。偶数だから余りは出ないはずなんだけどなー。
つーか男女比がおかしいんだよ。
なんで男子いないの?戸塚とか彩加とか。あとさいちゃんとか呼ぶべきでしょ。

「それじゃ前言ってた花見しましょうよ花見!ね、先輩!」

「帰り道でも桜なんて見れんだろ。買い食いでもすりゃ花見の完成だ。やったな」

「いつ行きます?先輩はいつでも暇ですよね。お二人はどうですか?」

聞けよ。反応してくれないと虚しくなっちゃうだろ。
しかし実際のところ、そういう花見の仕方が増えているらしい。親父に聞いた。

買い食いてことはあれだろ?ゴミのポイ捨てとかが横行するんだろ?
やっぱ花見って地球に優しくないわー。酔っ払って通行人とかに当り散らしたりしそう。


「そうね。休日でなければ特に問題ないわ」

「ちょっとまって!えーっと……うんあたしも休日以外なら余裕あるよ!」

「では三日後とかにしますか。そうですね、詳しい場所と時間は先輩と案練るんで後日連絡ということで!」


おお、いろはすが仕切ってる。どうするどうするー?な人種だった一色が
自分から計画するとは成長し……アイエエエ!?よく考えたら俺に丸投げの可能性があるセリフだったでござる。



「ねえねえゆきのん!なにもってく?あ、ハニトーもってこう!」

「そうね……せっかくだしなにかお弁当を作っていこうかしら」

「それいい!あたしもなんか作ってく!みんなで交換しようよ」

「それはやめとけ由比ヶ浜。死人がでたらどう責任とるんだ」

「失礼だし!まだそこまで自信があるわけじゃないけど、死ぬほどのものはできないから!」

「お弁当のほうは私がみんなの分用意するわ。だから由比ヶ浜さんはおいしいお店のお菓子などお願い出来るかしら。
 私、みんなが好むようなお店を知らないものだから」

「そっか…。任せてゆきのん!」


由比ヶ浜は自分にしかできないことを託されたかのような感激を受けているが、
さすがはゆきのん。由比ヶ浜の扱いに長けていらっしゃる。

さりげなく由比ヶ浜お手製の菓子をも回避しつつ、私には無理なことを頼む、ということで
いいフォローになっている。

由比ヶ浜が一色の方に向いたところで雪ノ下がホッと息をついてるところを俺は見なかった。いいね?


「そうだ!さいちゃんとかにも声かけようよ!」

「それいいな!ナイスアイデアだ今すぐ声かけてくる!」


こうしてはおれん!と立ち上がった俺を、先輩……という一色の圧力により席につかされる。
いろはすこわい。



「でもそうですね。せっかくのお花見なわけですし、どうせならたくさん呼んじゃいましょう!」

という一色の提案に由比ヶ浜は賛成のようだが、俺と雪ノ下は難色を示す。

「あんま大勢になると収拾がつかなくなるぞ。人が多くなる分気を回したり、管理しなくちゃいけなくなるからな。そしたらお前らも疲れるだろ。あ、でも戸塚とか小町なら別な」


俺の言葉にうんうんと頷く雪ノ下であったが、最後の一言で冷ややかな目に変わった。
リアリズムそんな目で俺をみるな。

だが当然のことだろ?戸塚も小町も人でなく天使なのだから。
まてよ…小町が天使ならその血を分かつ俺は一体何者……?やべぇ超大作が書ける気がする。
このクソプロットを材木座にあげよう。


「えー。そりゃ知らない人とかだったらそうかもしれないけど、友達だったら普通に楽しくない?」

「由比ヶ浜。友達の友達は友達じゃないんだぞ」

「う、う~ん。でもそっか。そうだね!いつものメンバーのほうが気楽だし」

「それもそうですねー。人嫌いの先輩が可愛そうなんで今回は多めに見てあげます」

「ありがとよ」

なんの感謝かしらんが。


「じゃあ決まりですね!あ、小町ちゃんと戸塚先輩は先輩から誘っておいてくださいね?」

「任せておけ!」

「なんか生き生きしててむかつくんですけど」


ガハハ!なんとでも言うがいい!
戸塚にメールを送る口実ができたことに感謝しよう。

……なんだ。あれ?緊張してきた。メールを送ろうとする指が震える……。
もしかして、恋!?

小町は……まあ帰ったら言えばいいな。当日に伝えても行くっていいそうだし。


「では、今日はこのくらいにしておきましょうか。もう校舎に残ってる人も少ないでしょうし」

「だねー。こんなギリギリに依頼してくる人なんていなさそうだしね」


じゃあなんで部活やったの?今日。別にいいけど。
残っていた紅茶を一息に飲み干し、それを合図にしたかのように片付けを始める。


片付けが終わり、全員が部屋を出たところで鍵をかける。
次ここに来るときは受験生となっていることを思うと、憂鬱になる。

あーまた受験しなきゃいけないのかーやだなー。
でも就職したくないから進学しよー。こういう考えの大学生多いんじゃね?

そんでサークル入って合コンしてうぇーい!とかいっちゃう感じ?

仕事とか今はいいや~つって就活のときに涙を流すまで容易に想像できる。
ちゃんと今の段階から将来を考えた行動をしなければならない。

となると俺に必要な行動は決まっている。専業主夫スキルを磨くことだ。
でも今年は受験生だからなー!やりたいけど今年は無理だなー!来年がんばろ!

来年になったら、また来年頑張るって言おう。
これぞ予定調和。だれか養ってくんないかなー。


「では、鍵返しに行きましょうか」


部長の一声でみんな職員室のほうへと歩き出す。
道中、ボリュームを抑えた声で一色が話しかけてくる。


「先輩って明日暇ですか?」

「いや忙しい。具体的には……」

「いや、そういうのいいんで。つまり暇ですよね?いつも暇な日何してるんですか」

「本読むか寝るかゲーム。あと本屋に行くとかで暇ではない」

「出かけるとしたら午前中ですか?」

「いや、午前は動きたくない。昼まで寝てるまである」


一色は唇に指を当て、ふむふむと頷いている。
あざと可愛いなちくしょう。



「なんだ。なんか用事か?付き合うぞ」

というと、それが意外だったのか、ふぇ?という反応のあとに慌ててぶんぶんと手を振る。

「いえいえ!特にそういうわけではないです」

「じゃあなんで……あれじゃねえのか?花見の場所決め」

「ああ、そうですね。大丈夫です」

「あ?一緒に決めるとか言ってなかったか?」

「だから大丈夫なんですって!とりあえず明日はゆっくり寝てればいいと思いますよ!」


どうも要領を得ない。
まるで誕生日近くなって、なんか欲しいものある?と聞いてくるような。聞かれたことないけど。


「まあ、いいけどよ」

「ですです。細かい男は嫌われますよ先輩。わたしじゃなければ」

「ドヤらなければよかったのになー」


計算で動く女子ほど怖いものはない。
はたしてこの計算高い女の子は何を企んでいるのか。一応警戒しておこう。


鍵の返却を済ませ、校門に差し掛かったあたりでそれぞれ別れの挨拶を告げる。


「じゃあまた花見で会おうねー!」

「ええ。また」

「また連絡いれますね~」


これにて比企谷八幡の高校2年生は終了した。正確にはまだ2年であっているのだが、もう休み明けまで学校に立ち寄ることはないであろう。
幸いにも春休みは課題もないしな。

この一年間を振り返るのはやめておこう。過去を振り返るとロクなことがない。
今年の思い出~ではなく今年の黒歴史更新である。

いろいろ恥ずかしいものや、こうすればよかったなんて考え始めたらキリがない。

なのでこれからも俺は前だけを向いて歩いておこう。


目下の悩みといえば、……一色がなにか企んでることだな。






***

10.5巻読んだら後日談書きたくなりましたんでそういうことで。もちっとだけ続くんじゃ
甘々なやつだけ書いていけたらなーって感じなんでそんな長くならないと思うけど思いついた限り書いてく

上げわすれ

待ってたぜ

一色視点だとあんなに軽かった文章が八幡視点になった途端重っ苦しくて笑ったww
描き分けすげえな

おつ~動くいろはすが楽しみ過ぎる
ってこんな時間に投下しないで早く寝なさい

スクウォーク75ぅ!

素晴らしいssですね
一生続き書いて欲しいです

追いついた

すごいなこれ 金取れるレベル

信者がちょっとキモいけど面白いのは確か

>>89
彡(゚)(゚)「お前がアスペやで」

すごいなこれ 金取れるレベル(真顔)

普通に面白い

つまんないかと思ってたけど
あんま期待してなかったけど

みたいな否定的なとこから入ってる意味になるよ

すごいなこれ 金取れるレベル(アへ顔ダブルピース)

なんJは定型文が多いから池沼でも溶け込むのが容易なんだろな
ニコニコで「ん?今何でもするって~」みたいなキモい定型文書いてる奴等も同じ
頭が弱く語彙も少ないから定型文を使いたがる

そのなんJ語や淫夢の定型文が多量に使われてるラノベのSSスレで文句言ってる本物の池沼がいるらしいよ

コピペにマジレスwwwwwwwwww
恥ずかしい~wwww

彡(゚)(゚)「ん?呼んだか?」

本物の池沼は間違いないみたいですね…

ま、J語を使う奴が池沼なのは事実だな
ここで言うのもおかしいが

>>793
すごいなこれ 金取れるレベル

>>794
すごいなこれ 金取れるレベル

展開が気になって一気読みしたわ
次も期待してる

うわなにこのすれ

夜に見つけてこんな時間まで読んでしまった
いろはす可愛すぎ

>>798

書こうとした矢先に送信してしまった…
疲れてるんだろうか

読み返してみたけどお前らの雑談で笑った

>>801
金取れるレベルだよな すごいよな

投稿お疲れ様です!次回も楽しみにしています!

俺ガイルスレは雑談多いなぁ

>>804
金取れるレベルだよな

>>805
金取れるレベルだよな すごいよな

>>805
これに金払うレベルなのか
すごいな

さて、最終更新から一月が過ぎたんだが
>>1の生存確認が取れていない

これはあれか、自然消滅か

>>808
金取れるレベルだよな

馬鹿の一つ覚えかよ

この流れつまんな
>>1だけどもう書くのやめるわ

>>811
金取れるレベルだよな

だからつまんねーよガキ

マクロでも仕込んでんじゃね

もう1ヶ月たったのかってことで生存報告
申し訳ないが新作書いててこっちあんま進んどらん

>>815
中途半端なやつだな
一本書き終わってから次の書けよ

>>816
そうだな……すまん
こっちさっさと終わらせるわ

>>817
馬鹿の一つ覚えかよ

>>818
馬鹿の一つ覚えかよ

>>1もあんま気にせず好きにしていいと思われ

ずっと待ってる

虚言癖 国士舘 中退 ウンフェ 飲酒運転 うつ病 長谷川亮太 無能 イジメ なかよし学級 ストーカー 犯罪 万引 逮捕 韓国人 ラブライ豚





「………なんでいる」



朝の目覚めの一言には相応しくない言葉が思わず漏れる。今の出来事から逃避できるもんならしてみたい。
昨夜は確か、春休み初日ということで夜更かしを決め、今日昼過ぎに目覚めようと思っていた。

だがそれは寝苦しさから拒まれてしまい、頭が徐々に冴えてきたのだが、
そこで異変に気付く。寝苦しさの原因は体にかかる謎の質量。

最初は愛猫ことかまくらが寒さ故に入ってきたのかと思ったが、それにしては重いしでかい。
てことはもしかして小町か~?可愛いやつめ。でもいろいろとまずいんで起きてもらいましょうかね
と、布団を剥いで見るとそこにいたのはなんと!!生徒会長の一色いろはさんがすやすやと寝ているではありませんか!

何を言ってるかわからないと思うが以下略。

寝ぼけた脳も一気に覚醒したところで今に至る。以上。


「あー、せんぱいー。おはよーございまふ」

「おい、起きろマジで。つかなんでいんだよ」

「遊びに来ましたー」

「……なんで俺の家を知ってるのかは察しが付くからいいが、問題はなんで俺の布団に潜り込んでるかってことだ」

「驚かそうと思いまして。でも居心地よかったのでつい寝ちゃいましたー」


馬鹿じゃないのこいつ。いろんな意味で。
休み前になんか企んでるかと思ったらこういうことかよ。

ていうか冷静にしてるけど結構やばいからこの状況!さっさと体起こして!
しかし起床を促したところで動く気配がない。

引きはがそうかと思ったががっしり掴んできやがるもんだから動けない。




「……お前。なんかあったのか?」

「いえ特に。……ただ人から見えないとこでくらいいちゃいちゃしたいじゃないですか」

「……いちゃいちゃとかキャラじゃないだろ」


いちゃいちゃしてる風に見せかけてただ周りに幸せアピールしてるだけみたいなキャラ。
これは結構あると思うんだが、愛し合ってる(笑)とみせかけてただ彼氏彼女いることを宣伝して、
自尊心を満たしたいだけのやつ。そういう恋人間の繋がりはそこの意見の一致だけなので喧嘩が絶えない。


「そうですか?じゃあ二人きりだと甘えてくるキャラってことで。これ結構萌えません?」

「それを宣言してなかったらドキッときたな」



まあこの状況ですでに俺の心臓はドキドキだが。むしろドンドンいってる気がする。誰だ!壁ドンしたやつ!

それにしてもこいつ完全に目覚めてるはずだが一向に動こうとしない。
置物ってレベルじゃねぇぞ!



「………だって付き合ってから先輩普通なんですもん」

「………いや。つーかわざわざ行動変える必要もないだろ。お前もそう同意してたろ」

「それとこれとは話が別ですよ!それは外の話で、せめて内ではなんか甘えてもいいじゃないですか」

「あーあれだ。俺はそういう経験が無いもんだからちょっといきなりはあれなんだよ、あれ」

「わたしだって無いですよ。だから加減がわかりません。仕方ないですねー?」



にこーっと実に可愛らしい笑顔をするもんだからなんでも許したくなっちゃうぜ!
だが許さない。ほら、節度は守らないとね?最近は世間がうるさいから。きっと。




「そういうの恥ずかしくね?」

「恥ずかしいに決まってるじゃないですかー。ここに忍び込むのにどれだけ勇気を出したと思ってるんですか」

「じゃあもうどこうぜ。充分ドッキリ成功してるから」

「でもでも、恥ずかしいのがむしろドキドキしません?プラシーボ効果ってやつ?」


なにいってんだこいつ。吊り橋効果のことか?まあそれも元の意味からは違ってくるが、あながちハズレでもない。
本来不安や恐怖からくる感情を恋愛に勘違いするもんだが、羞恥によるドキドキを恋のドキドキに変えるという意味ではありだな。

こいつもなんだかんだ余裕ぶっこいてるけど顔真っ赤だし。俺は言わずとも真っ赤な誓い。


「あーそれは分からないでもないがな……」

「もうこれ以上悪くなることもないんですしいいじゃないですか。先輩はわたしの彼氏さんなんですよね?
 先輩が思ってる以上にわたしは先輩のことが好きなのを理解した方がいいですよー?」



え?そ、そうなの?確かに状況の悪化はしないだろうし、一応恋仲というわけですし?
うん。それなら問題ないかもな。

ほら一色だってより強くぎゅーっと抱きしめてきてるし、それを拒むのも悪いってもんだろ?ほらこんなにも可愛いじゃない。
じゃあこのまま一緒に二度寝といきま………あっぶね!洗脳されかけたぜ。それはどうかんがえてもないわ。

さすがにいろいろパンクしそうなので多少強引にでも引きはがそうかとした瞬間、自室の扉が開く。



「いろはさん、お兄ちゃん起きまし―――」

「………」

「………」

「………あー!これは小町ともあろうものが気が利かず申し訳ない!いやーお兄ちゃんがそこまで進んでるとは。ではでは!」

「ちょ、おいまて小町!」


誤解を解こうと引き留めるも、無情にもドアは閉められ、無残にも残された気まずい二人。
状況が悪化することはないと思っていたが故に、その現実を目の当たりにしたことで心が折れた。


「………飯でも食いにいくか」

「………そうですね」


さすがの一色もくるものがあったのか、今度はすんなりとどいてくれる。


「じゃあ、準備すっから」

「はい、外出てますね」


ということでささっと仕度を済ませ、逃げるように家を出たのであったとさ。







  * * *




特に食べるものも決まっていなかったんですけど、わたしがラーメン食べたいといったので
なりたけ食べてきましたはいおしまい。

食べた以外のことは特に何もないです。
てかラーメン食べるときにお喋りしてる人ってあんまいなくないですか?つまりはそういうです。

お食事の時間というのは交友の場でもあり、情報交換の場でもありますが、ラーメンを食べるときは別ですね。
その時の思考はどんな味がするか、どう食べようかで埋め尽くされ、視界にはそれしか映らないまであります。

必然と人々の声は聞こえなくなり意識が一極化する。
故に会話も生まれず、ラーメン食べましたということ以外語ることもないです。

そのあとにお口直しがしたかったということでたまたま見つけた屋台のクレープを購入し、
現在近場のベンチに座ってゆっくりしてるというわけでした!



「甘くておいしいですねー。先輩甘いの好きですもんね」

「そうだな」

「わたしたちみたいに甘々ですね」

「………」

「………そこで沈黙されるとやらかした感マックスなんですけど」

「じゃあ冒険すんなよ……」


「あ、食べ比べしましょうよ!先輩のやつ食べてみたいです」

「いちいちやることがあざといんだが?」

「いいじゃないですかー。もしかして意識しちゃいます?キスした仲なのに?」

「おい……あんま大きな声で言うなよ。ほれ」


なんだかんだで優しい先輩はわたしの言うこと断れないんですね。
そっぽ向きつつもクレープ差し出してくるあたりがキュートです。

まあまあ先輩の気が変わらないうちにぱくっといきます。うーんおいしい。

もちろんせっかっくのシチュエーション。頬にクリームをつけておくことは忘れません。


「おまえがやるとわざとにしか見えないなそれ」

「えっ!な、何がですかー?」

「もう確定じゃねーか……。さっさと拭け」

「ぶー。せっかくなんでペロってとってください」

「………しょうがねーな」


は?え?ちょちょちょ!なんか先輩顔近づけてくるんですけど!?

冗談で言ったのにまさかこうなるとはあわわわわ。
あ、今の口に出してた方が可愛かったですかね?

先輩の思わぬ行動につい目を伏せて待っていると……こない。普通に手で拭われました。

………わたしをからかうとはいい度胸してますね。まあ先輩も照れてるようですけど。


「大胆な先輩にどきどきした気持ち返してください」

「あほか。こんな人前で出来るかよ」

「じゃあ二人のときはペロるんですか?ごめんなさいペロリストの恋人はNGで」

「あれ?これフラれたの?」



そんなわけないじゃないですかー。そんなんで嫌うんだったら最初から付き合ってませんよ。
しかしそこは冗談とわかっているので軽く流されたわけですけど。

………その手のクリームどうする気ですか?まさか舐めるんですか?


「なんか恥ずかしいんで、やっぱわたしがもらいます」

「は?ちょ、おい」


はむっと先輩の指ごと頂く。………あ、冷静に考えたらやばいです。



「………ぁぅ」

「………あほかお前は」

「だ、だって先輩がいやらしく自分の指を舐めまわすのはさすがに犯罪者なので」

「日本語おかしくね?……。普通に紙で拭くっつうの。ほれまだついてるぞ」


というとナプキンでわたしの頬を拭いてくる。あ、生理用品のほうではないですよ?
なんかわたしが子供みたいじゃないですか……。でも先輩がパパって妙にしっくり来る気がします。

しっかしこの人意外と落ち着いてるなー、顔は赤いですけど。実は経験豊富なんじゃないですかー?
………やめておこう。想像したらもやもやするんで。あ、でも妹さんで手馴れてるとか?普通に引きます。




「………」

「………」

「では第一回奉仕部お花見企画会議といきましょうか」

「唐突だな。べつにいいけど」



だってこの空気に耐えられないんですもん。
思い返せば十分いちゃついた気がするので今日は満足です。

企画会議といっても場所の選定、日時選択くらいしかないですけど。
アポ取りはどうせわたしの仕事なんで。

それでは会議室、もといサイゼにでも移動しますかねー。













「くぅー疲れましたー」

「言うほどそんな疲れることしてないだろ」

「疲れますよー。あそこはどう?ここは?っていう度に先輩いちゃもんつけるんですもん」

「それはすまん」


それはそれはもう大変。ここにはこういう奴らがーとか。この時期この時間だとこういう問題がーとかうるさすぎます。
人嫌いな彼氏さん持つと大変ですねー?


「申し訳ないと思ってるなら行動で示してください。甘いモノでいいですよ」

「俺は人に奢らないって決めてるんで」

「別に甘い行動でもいいんですよ?」

「意味が解らん」


まあそれは期待してないんでいいんですけど、とりあえずお花見の時にでも。
雪乃さんも由比ヶ浜さんも承諾得ましたし、問題ないですね。

妹さんは今朝のことで連絡しづらいんで先輩に任せますけど。

あとは晴れることを願うのみですねー。予報だと晴れなんで大丈夫だと思いますけど。



「それでは今日はお開きですね」

「おう。送ってくぞ」

「えへへー。では、お願いします」


といって先輩の腕に抱き着く。
もうこの手のものには慣れたのか、特に不満を言うでもなく、じゃあ行くかとだけ。

うんうん、素直な先輩はいい先輩。調教した甲斐があったってもんですよ。

どうせならこのまま遊びにでも行きたいところですが、あまり出歩くのに慣れてない先輩を連れまわすのは忍びないんで
今日のところは引き揚げます。先輩をちゃんと気遣えるわたし可愛い。今更感ありますけど。


ふと思う。先輩が卒業した後どうなってしまうのか。
おっと、それまでに別れないとは限らないとか野暮はよしてくださいよ?

少なくともわたしから離れることはそうそうないので。

ただ純粋に先輩といる時間が無くなることを懸念します。
わたしが奉仕部にお邪魔したり、生徒会の手伝いをしてもらったりという時間がなくなってしまうのがちょっと寂しいです。

ちょっと切なくなり、抱きしめる腕に力がこもる。


「どうした?」

「いえ。先輩が浮気しないか心配で」

「する相手がいないし、そもそも相手にされない」

「それもそうですね、安心しました」

「………まあなんだ。先のことなんか考えんな。お前ってそういう人間だろ?」

「失礼ですね。まあそうしときます」


なんとなく察してるんでしょうか。
すっと腕が伸びてきたかと思うと、頭をわしゃわしゃと撫でられる。

先輩って気が遣えたんですね。おかげで幾分か気が楽になりました。
先輩の手あったかい。



「あ、ここまででいいですよ。先輩が遅くなると妹さんに悪いんで」

「そうか。じゃあな」

「はい。それでは」


といいつつ、二人ともその場を動かない。わたしを見送るつもりかなんなのか。
先輩わたしのこと好きすぎません?ごめんなさい顔がにやけるんで人前ではやめてください。



「なんですか先輩。寂しいんですか?ぎゅってしてあげましょうか?」

「………いらん。ほれさっさと帰れ」

「さすがに酷いですよ先輩。むかつくんでお仕置きです」


とりゃ!と声を上げ胸に飛びつく。
瞬間呻き声を漏らす先輩でしたが、数瞬のうちに腕を回してくる。


「先輩やっぱ寂しいんじゃないですかー?」

「甘やかしてるだけだ。断じて俺のためじゃない」

「じゃあ甘やかされときますね」


素直じゃない先輩のためにも。

ほんとめんどくさい人だなー。


「ではそろそろ」

「ん。またな」

「はーい。ちゃんと帰らなきゃだめですよ?」

「言われなくても。じゃあな」


そう手を振り、来た道を引き返す。
もう一度別れの挨拶をいってからわたしも帰路に戻ります。

いやー青春してるなー。先輩に言ったら鼻で笑われそうですけどね。
うん。充実してる。

次会えるのはお花見、たのしみですねー。
別に何でもない日に誘うのもいいんですけど、そこそこ距離あけてた方がどきどき感増しません?
飽きられないように慎重に、でも攻撃にでればがっつりと、でいきましょう。


それでは、おやすみなさい!








***

おはよういってきます
てことで本日はここまで

乙でございます

おつです
いろはすかわいい

乙です

すごいなこれ 金取れるレベル

ハハ、クオリティ高ww

>>838
>>839
馬鹿の一つ覚えかよ

>>840みたいなゴミは無視して好きに書いてくれ
というか普通に面白いからそのまま頑張って

おつー
続き楽しみにしてます

相変わらず素晴らしい
乙です

ID被りかなにか?

ハハ、いろはす可愛すぎwwwwww

ハハッ、一気読みした

次回作はよ!

>>841
[ピーーー]ゴミカス

ハハ、クオリティ高wwww

てかアンチきもすぎだろ!まあ痛いSSしか書けない無名作者の僻みだろうけどww

>>849
どうしたんだよ落ち着け

乙乙




さてさて、お花見当日ですよ?
時間に余裕もありますし、今日のスケジュールでも確認しときますかね。

場所は千葉公園。原っぱのだだ広いところか迷ったんですが、ボートにも乗れるこっちにしました。
風景的にも池や湖近くにある桜ってなんか幻想的なもの感じるじゃないですかー?

ただ先輩はだいぶ渋りましたけどね。んなの最もあれな奴らが集まりそうじゃねーかとかなんとか。
ですがまあどこも一緒ですし、先輩のいうあれなやつらに自身も含まれてますよーといったら撃沈。

実際周りのことをとやかく言う前に自分の現状把握したほうがいいです。
普通に考えて男女比おかしくありません?美少女複数侍らせてリア充死ねとか、いいブーメランですよね。
そのブーメラン刺さってくたばれと言われてもおかしくありません。

で、集合は駅前10時となっていますが、そこからちょっと買い物したり移動時間やらなんやらで
ゆっくりできるときにはちょうどいい時間になってるんじゃないかと踏んでます。

そのあとは各々好きな事でもやって15時ころには解散でもいいし、別のとこに赴くってのでもいいですね。

個人的には先輩とボートでまったりなんてのもいいですけど、絶対拒否してくるからなー。できればって感じで。
そもそもわたしがゆったりな時間過ごすタイプじゃないですしね。


てなわけで5分前行動ならぬ30分前行動で集合場所に着いたわけですが、既にみなさんご到着のようです。
なーんかそんな気がしたんですけどみさん揃って何考えてるんだか。
早めにきて正解でしたね。というかどうせなら集合時間を遅らせておけばよかったとか思いますねこれ。

ただシチュエーション的には遅れた身分なのですこし駆け足で近寄っていきましょう。



「すいませーん。なんか遅くなっちゃいまして」

「ううん、こっちがちょっと早く来ちゃっただけだから大丈夫だよ!」

「ほんとはえーんだよ。集合時間遅らせりゃよかったくらいだ」

「これだからゴミいちゃんは……そこは健気さを褒めるとこだよ!」



さすが先輩気が合いますね〜。
でも早く着きすぎて困ることもないのでいいですけどね。



「む!ヒッキーだって早く着いてるじゃん」

「小町がどうせ30分前には集まるだろうからって無理やり連れてこられただけだ」

「それは言わないでおいてよお兄ちゃん」

「要らぬことを言うのが彼の存在意義なのだから仕方ないわ。諦めましょう小町さん」

「俺の存在をなんだと思ってる。戸塚を愛でることが俺の存在する意味だ」

「そこはわたしを、って言ってくださいよ先輩。まあ多少早くても問題ないので行きますか」



まあ時期が時期だし、場所取りとかしてないんで早いに越したことはないですよね。
それではちゃちゃっとれっつらごー!






 * * *





「うっわー……すごい人」


なんとなく予想はしてましたけど、どこもかしこも人人人。
これはちょっと厳しいですかね。やっぱ場所取りするべきでしたか。

先輩の顔を伺うと、思った通り嫌そうな顔で満足満足。なにもいいことはない。



「ほんとすっごいねー。知り合いとかいてもおかしくないくらい」

「それありますね!小町のクラスメイトいるかなー?」

「とりあえず座れるところを探してみましょうか」



一先ず辺りを見渡しながら歩いていきますが、いい具合に桜の樹の下は空いてないですね。
まあ、わたしは花より男子……もとい団子派なんでどこでもいいですけどね。団子はもちろん先輩です⭐

どこでもといっても原っぱのど真ん中というわけにはいきませんし、なにやらスポーツしてらっしゃるかたもいますから。
邪魔にならないような場所を探さなければいけないわけですが――――



「おぉ?おーい、いろはすー」



と、なにやら聞き覚えのある声が近場から聞こえて来ます。
先輩方も気づいたのか一斉にその声がした方へと顔を向けると、声の主は例によって戸部先輩。
はい葉山先輩グループですね。


まあ誰かしらいるかと思ったわけですが、まさかドンピシャで彼らとは。
しかも葉山先輩達は桜の樹の根元に陣取っています。さすが上位カースト。これはおこぼれを預かるしか!




「あ、葉山先輩たちじゃないですか!こんなところで会うなんて運命感じちゃいますね」

「ほんとだ!やっはろー、みんな」

「やぁいろは、結衣。みんなもほんと奇遇だな、こんなところで会うなんて」

「結衣ー。用事ってそいつらと花見だったんだ。なんなら一緒でもよかったじゃん」

「あははーそうかもね。でも今回は奉仕部ってことだったから」



一緒でもよかったとか言ってる三浦さんですけど、なんか雪ノ下さん睨めつけてません?
なんとなく仲の悪そうなのは伺えます。いかにも衝突しそうな性格してますもんねー二人とも。

きっと先輩のことは目にも止まってないんだろうなぁ。あとわたしも若干苦手です。



「もしかして場所ない感じー?じゃあ俺らんとこ来いって!歓迎すってなあ隼人くん」

「ああ、もしよければ。せっかく会えたんだしこっちもスペース余ってるからな」

「ほんと!?ね、ね、ゆきのん一緒しようよ」

「………まあ場所を分けてくれるというのなら、お言葉に甘えようかしら」

「ですね!先輩もいいですか?」

「別にどこだって一緒だろこの人の多さじゃ。近くにいるのが知り合いかそうでないかの違いだけだ」



つまりOKてことでいいんですよね?
どっちとも取れる反応やめて頂きたい。


ではではお言葉に甘えてご一緒させていただきましょう。


姫菜さんはここ座りなよーなんて葉山先輩の隣を促していますがもちろん先輩はスルーしてます。
これでそっちいったら引っ叩いてましたけどね!男性にも嫉妬しちゃうわたしかわいい!


でも先輩って戸塚先輩大好きですよねー………。そもそもあの方ほんとに男なの?



各々自分のスペースを確保し座っていき、持って来たものを取り出していると聞き覚えのある声がかかる。



「あ、八幡!やっはろー!」

「戸塚か!?こんなとこで会うなんてやっぱ運命だな!」



と、噂をすれば影がさす。その反応の速さにイラっとくるものがなくはないです。
まあ?先輩の数少ない友人ですし多めに見てあげます。男に取られそうと焦るっていろいろまずいですよね。



「あはは、運命だね!テニス部員で息抜き兼ねて来てるんだー。でもこっちにも参加したかったなー」

「そういうことなら歓迎するぞ。ほれ座ってけ」

「じゃあちょっとだけお邪魔しよっかな」



と言って先輩の隣に女の子座りする。
はははー。大丈夫大丈夫。目覚めそうになる前に目覚めさせるんで。何を言ってるんだろう。

みなさんと挨拶が終わったところで戸塚先輩が可愛らしく首を傾けてます。あざといかわいいです。




「そういえば向こうに平塚先生いたけど、もう会った?」

「まじでか」

「あ、やっぱり平塚先生だったんですね。なんか死んだ笑顔でお酌してたんで別人だと認識してました」

「………それは見ていられないわね。目を逸らしたくなる気持ちもわかるわ」

「あははーわかっちゃうんだ。あ、なんなら先生こっちに呼ぶ?」

「こっちきたらやけ酒からの悪酔いされるぞ」

「うーん。それはちょっと小町的にポイント低いかも」



うわーなんか想像できますね……。
先生が酒癖悪いか知りませんが、絡み上戸な印象受けますよね。

まあまあ、大人の世界は置いといて乾杯といきましょう!



「よっしゃ!じゃあ改めて乾杯すんべ。えー本日はお日柄も良く」

「では葉山先輩!乾杯の音頭お願いします」

「え?はは、そうだな。……じゃあ、一年間お疲れ様、乾杯」



同時にみんな乾杯!と一言。まあみんなというのは語弊がありますが。
具体的にはえ、ちょ、とか言って出遅れた戸部先輩。


以外にも先輩も雪乃さんも小さく乾杯してましたね。


そして雪乃さんが取り出したのはバスケットにサンドイッチが詰められたもの。
なんとなく重箱とか出てきそうイメージありましたけど、さすがになかったですね。


小町ちゃんはおかずとなる物を担当し、わたしと結衣さんは食後のデザート。
あ、手作りする余裕はなかったので市販ですよ?
先輩はお茶持ってきたんじゃないですか?




「うわっうわっこれ超おいしいですね」


「おいひー。さすがゆきのん!」


「それはよかったわ。小町さんのもほんとに良く出来てるわ」


「いや〜それほどでも〜。お兄ちゃんどう?どう?」


「いつもどおりうまいぞ」


「わかってないなーお兄ちゃん。そこはいつもよりおいしいくらい言わなきゃ」


「舌がとろけてしまいそうになるほど濃厚なこの肉汁。俺でなきゃ見逃しちゃうね」


「なにいってんのお兄ちゃん」


「ほんとおいしい!でも僕までいただいちゃってよかったのかな?」


「いいに決まってんだろ戸塚!お前は奉仕部の仲間だからな」


「ちょっと先輩。わたしと対応違いすぎじゃないですか?」



わたしのほうが部室利用率高いのに!いや、それがダメなのかな。
いや、あれですね!先輩ツンデレだからそういうことなんですね!つまりどういうことだってばよ。


しかしこれは本格的にちょうきょ……説教しなければいけませんね。

………胃袋掴めとか言いますし、わたしも手料理食べさしたりとか?
別に作れないことはないですけど、雪乃さんと比べられるとなー。


彼女の手作りお弁当なんてありがちなシチュ先輩が喜ぶかどうかって話ですよ。
うん、やめやめー。めんどくさいですしね!


となると、斬新なこと考えなければ。
うーんメシマズなんて誰も得しませんし、斬新でもなんでもないですよね。

あ!わたしの強みってあざとさじゃないですかー?みんなの見てる前であーんしてあげましょう!




「てことで、先輩。あーん」

「え?なにが?……つーか前にも断ったろ」

「あの時と今じゃ、関係が違うじゃないですか!食べてくれなきゃ顔に突っ込みますよ」

「うおっ!まじでやめろ。あー、一色さん?もしかしてなんか怒ってらっしゃる?」

「怒ってないです。でもこれを口に入れないと怒ります。激おこぷんぷん丸です」

「………わーったよ。ん、…これでいいだろ」



……おー。まさか本当に食べてくれるとは。
餌付けしてるみたいで気分がいいですね。



「わっ、ヒッキーが素直だ」

「公道でイチャつくのはやめてもらえるかしら比企谷くん」

「これのどこがイチャついてんだ。本人からしたら迷惑行為だぞ」

「それはあなたが決めることではないわ。周りがそうだと感じたらそうなのよ。客観的に物事を見れなければ大義を見失うわ」

「なんか急に大それた話になってるぞ。つーか–––」

「先輩わたしにもしてくださいよー」

「ん。……つーか客観視くらいできるっつーの。逆にあのくだりを長引かせてたほうが周りから鬱陶しく思われるだろ」

「………ナチュラルにイチャつかれるのはさすがにくるものがあるわね」

「あははー、なんか夫婦?的なーなんて……うー」



んふふー、これは悪くない気分です。
でも注目浴びるのは居心地わるいですね。やっぱ次からは人目は避けましょうか。


葉山先輩なんかと付き合ってるのであればガンガン見せつけていくスタイルだったでしょうが、
先輩ですからねー。見せつける意味ないですもん。
いや、わたしのモノなので見せたくないです!今のいろは的にポイント超高い!


秘匿することに価値が有る。ロマン感じますよね!










「んじゃー食後の運動といくべ!バドするっしょバド!」


飯アタイムが終わり、ゆっくりとお茶した後に戸部先輩が一声。
食後の運動は大事ですからね。


あ、バドってバドミントンのことですよ?バトルドームの略ではないです。
でも超エキサイティンできなくはないですね。


で、そのラケットは見たところ4本あるようです。
元々葉山先輩たちは4人で来てたので丁度ですね。


みたところこちらにも話しを振ってるので交代しながらやることを提案してるみたいです。



「いいねーやろやろ!ゆきのん組も!」

「え、私は別にやりたいとは……。小町さんどうかしら」

「やりますやります!でも、雪乃さんとも組みたいかなー」

「………わかったわ。それなら少しだけ」

「お?お?雪ノ下さんやる感じ?じゃあダブルスっしょー。あ、海老名さん俺と–––」

「姫菜、あーしと組むっしょ?……雪ノ下さんには絶対負けねぇーし」

「いいよ〜。ごめんね戸部っち」



あーあー、ガチバトル始まりますかね。
みんなで楽しくワイワイな感じで提案されたはずですが、親の仇を見るかのような視線を交わしてますよ。


提案者の戸部先輩なんか、いつの間にか審判的な役押し付けられてますし、
祭り事か好きなのか、小町ちゃんは実況みたいなこと始めてます。


まースポーツを通して仲良くなればいいんじゃないですか?ジャンプみたいに(適当)




「葉山先輩、いいんですかー?あれ止めなくて」

「んー、まあ大丈夫だろ。二人ともその辺は弁えてると思うし。……なにか起きる前には止めるよ」



あはは、と困った笑みをこぼし、自分も近くで見てくるために席を立つ。
まあ葉山先輩がいれば万事解決ですね。この安心感は最強です。


しかし、ふーむ。いい具合に二人きりですねー。



「先輩はいかないんですか?」

「お前こそ行かないのか」

「先輩が行くなら行きますよ」

「………まあ向こうの修羅場が終わったら行くかな」



と言って、桜の木に寄りかかり本を読み始める。
なるほど。それは賛成ですね。しかし自由な人だなー。


………いいこと思いつきました!


と、一旦立ち上がり先輩の方へ移動する。
足を開いてください、というわたしの言いつけを聞き素直に足を開く。


もちろんすることは一つ!その間に座ることです!



「えい」

「あ、おい」

「まあまあ、いいじゃないですか」

「……まあいいか」



お?お?今日の先輩デレまくりですねどうしました?
これは会う日を減らす作戦がうまく決まりましたかね。


しかしそこを煽っては、立ち上がりそうなので黙っときます。
大人しく先輩に背を預けましょう。……これすごく落ち着きます。



わたしを寄り掛からせつつ、本を読むために前に出した腕は、さながらわたしを抱きしめているかのようです。
そのまま腕を折り込んでくれればあすなろ抱きになるんですけどねー。



「今日晴れてよかったですねー」

「そうだな」

「風が心地よいです」

「……過ごしやすくて助かる」

「桜の花言葉を知ってますか?」

「いや、知らん」

「わたしも知りません」

「しらねぇのかよ……。完全に知ってる風だったじゃねーか」

「別にどうでもよくないですかー?」

「話し振っといて何言ってんのこの子」



わたしがくすくすと笑うと、先輩もまたにひるな笑みを浮かべる。
なんだか穏やかな時間が流れてますねー。


思い返せばこういう経験なんて初めてなんじゃないでしょうか。
いつもアクティブに行動してましたし、可愛いわたしを振りまいていたわけですし。


静かな時間と、気を使わなくて済む間柄って最高です。
先輩と出会ってからいろんなこと経験しましたねー。これからもいっぱいあるんでしょうか?


ふぅ……少し眠くなってきましたねー。居心地が良すぎるのも問題ですね。




「えへへーせんぱーい」

「どうした?」

「なんかふわふわしてきました」

「そりゃあれだ。巷で噂のふわふわタイムってやつだ」

「そんなのあるんですか?」

「いや、知らん」



なんですかそれーというと少し笑って間が空く。
すると真剣なようでどこか柔らかい声が聞こえてきます。



「ありがとな、いろは」

「………へ?」

「なんでもない。そろそろ向こう行くか」

「今名前で呼んでくれましたよね?もう一回!というかずっとで」

「いやなんでもないし。そろそろいくしー」

「ぶーどきませんー」

「おい」

「……もう少しだけこうしてたいじゃないですか」

「……少しだけな」

「……はい」



そう告げるとわたしは目を瞑り、先輩に体重を預けます。
先輩はわたしのこと大好きですからねー。抵抗もなく身を委ねられます。




「せんぱい、ありがとうございます」

「なにが」

「いろいろと、ですよ。というか、先輩のさっきのこそなにがって話ですよ」

「まあ、いろいろだ」

「そうですか」



それからまた二人とも言葉がなくなる。
しかしそれは不快なものでなく、どこか安心できるような静寂でした。


形容するならまさにそよ風といった風が吹き、それに散らされていく桜がどこか幻想的な風景になる。
近くに感じる先輩の匂いと温もりに、文字通り包まれて、とても心地よいです。



………先輩に魅せられた本物に、わたしは辿りつけたのでしょうか?きっとそうだと思います。
だってわたしがこんだけ気を許してるんですもん。もう先輩逃がしませんから。

進学したら学生生活内ではお別れですが、まあ?先輩ぼっちだし?
進学先でそんな滅多なことにはならないと思いますけど、奉仕部の人たちのような滅多な出会いがないとは言い切れません。

でも、なんとなく先輩は裏切れない人だと思うんで、そこは心配ないんですけどね。
しかしわたしが嫉妬しないかは別です!わたしこう見えて嫉妬深いですからねー?

万が一間違いをおこせば、もぅマヂ無理。 リスカしょ……状態ですからね。ヤンデレの才能あるっぽい。


だから大好きな先輩へ。
これからもずっと、よろしくお願いしますからねー?










* 〜 Happy End 〜 *

くぅ~疲

ここまで読んでくれた人たちサンクス
初SSを言い訳にするつもりはないけど大分見苦しかったとこ含め、次回作はもっとしっかり作っていくわ

どうせなら1000埋めたかったけどもう書くこともないんでこのスレは終わりかなってのと
もしアフター書きたくなったら別スレで台本形式で書いてくわ

もちろん予定は未定

じゃあの!

乙!またいろはSS書くの?
楽しみにしてるよ
今までありがとな!

ゆきのんssにするぞ
いろはす今めっちゃ多いしな

そうかそれは残念だ
またいろはすも書いてくれ!

えんだぁあああああああああああああああ

素晴らしいSSをありがとう

おつ

乙です
素晴らしかった


次も期待してる

とても面白かったっす!乙です!!
また次回作期待してます!



いやー癒されたわー
ゆきのんのモノローグ書いてもいいのだけれど(チラッチラッ

おっつ!
ゆきのんの視点は難しいだろww
でも>>1ならチラチラ

乙乙

「「「豊かな教養・高貴・清純!!」」」


大変素晴らしかった

やけにいろはす人気でいろはすssだけレベルが高い理由がわかった気がする
2014年の8月5日から原作者がいろはすでssを書き始めたからだったんだ!

(^-^)/

くっさ

なんだこの超大作
桜の木の下で一緒に座るシーンが鮮明に想像出来すぎてつらい

神宮ざまぁはやらないのか?

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月16日 (土) 20:43:37   ID: xQ-y8_8P

おもしろいです!頑張ってください!

2 :  SS好きの774さん   2014年08月23日 (土) 09:43:35   ID: f8vkQKEv

いろはす、ファイト!(●´ω`●)

3 :  SS好きの774さん   2014年08月23日 (土) 17:19:49   ID: GGUqAxwg

せめて生存報告を……

4 :  SS好きの774さん   2014年08月25日 (月) 22:19:36   ID: hc4y3kmZ

いろはすたそ〜

5 :  SS好きの774さん   2014年09月08日 (月) 22:37:26   ID: DfLnvU27

面白いです
続きに期待してます
頑張ってください

6 :  SS好きの774さん   2014年09月09日 (火) 22:14:41   ID: 9MrLLhwh

応援してます

7 :  SS好きの774さん   2014年10月05日 (日) 03:02:36   ID: 9bK8wycH

頑張ってください!
楽しみにしてます❗

8 :  SS好きの774さん   2014年11月10日 (月) 19:01:30   ID: Al0YpK1A

カテゴリーなんなの

9 :  SS好きの774さん   2014年12月15日 (月) 01:46:35   ID: IL81r0bu

続き待ってますよ!

10 :  SS好きの774さん   2014年12月19日 (金) 11:33:48   ID: kmncC0t7

続き_|\○_オネガイシヤァァァァァス!!

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