エレン「共同生活」 (117)
1.進撃のSSです。
2.アニ「共同生活」
3.ミカサ「共同生活」
4.アルミン「共同生活」
5.ユミル「共同生活」
の続きでこれで終わりです。
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アニ「もうこんな時間なんだね」
ミカサ「エレンでかけるから早く」
エレン「なんだよそんなに急いで」
アルミン「訓練兵団に行くのは今日で最後だよ」
ユミル「はやく飯食え」
エレン「ユミルの飯食えるのもあと少しかー」
ユミル「だからどうした」
エレン「美味かったぜ」
ユミル「っ」
エレン「だから少しゆっくり食わせてくれよ」
ユミル「しっ仕方ねーな」
アニ「なんて解りやすいのあんたは」
ユミル「お前にいわれたくねー」
ミカサ「思えば長くて短い3年間だった」
アニ「うん」
アルミン「そうだね」
・・・
ユミル「はっ早く食えよ」
エレン「えー」
アルミン「じゃ行こうか」ガチャ
ミカサ「忘れ物は?」
エレン「ないだろ」
アニ「ないかな?」
ユミル「まだ寒いか?」
アルミン「うーん。どうだろ」
ユミル「上着着るか?」
ミカサ「大丈夫」
アニ「ほらっきっと暖かくなるから」
ユミル「そうか。じゃマフラーだけもってくかな」
アルミン「エレン戸締りを」
エレン「おう」
バタン…カチャ
サシャ「おはようございます」モゴモゴ
アルミン「食べながら喋らないの」
クリスタ「おはよう。みんな」
ユミル「おはようクリスタ」
コニー「もう最後だな」
エレン「片づけやってるか?」
コニー「まぁまぁだな。だけど意外と冬の間備蓄した食糧が残ったな」
アルミン「どうするの?」
コニー「サシャが食う」
ミカサ「あー」
アニ「納得」
サシャ「なんです?私の凄さについて語っているのですか?」
ユミル「ある意味な」
サシャ「そうですか。それは良かったです」
ユミル「あーよかったよかった」
クリスタ「良かったねサシャ」
コニー「良かったなサシャ」
サシャ「ハイ!」
ユミル「なんつー無駄な会話」
ライナー「ようエレン」
エレン「ライナー」
ベルトルト「おはよう」
アニ「おはよう」
ベルトルト「・・・おはようアニ」
ユミル「どうしたーベルトルさん」ニヤニヤ
ベルトルト「ユミル。髪留め変えたの?似合うね」
ユミル「うっ・・・バーカ」
ライナー「なんだお前らいつの間に仲良くなったんだ」
アニ「そうなの?」
ベルトルト「仲良く」
ユミル「ないからな」
エレン「息がぴったりだ」
ライナー「まったくだ」
ミーナ「今日で最後なんて寂しいね」
ジャン「そうかぁ?」
ミーナ「ジャン冷たい」
マルコ「ジャンは冷たいよ」
ジャン「おいっ」
マルコ「うそうそ。ジャンは暖かいよ」
ミーナ「うっそぉ」
ジャン「おいっ」
マルコ「我らがジャンがんばろうね」
ジャン「バカにしてるか?」
マルコ「まさか」
ミーナ「いこう我らがジャン」
ジャン「お前言いたいだけだろそれ」
ハンジ「おっリヴァイ見てよ」
リヴァイ「なんだ。うるせーな」
ハンジ「見てよ。みんなが来るよ」
リヴァイ「毎回も見てるだろうが」
ハンジ「何言ってるの?もう見れないんだよ」
リヴァイ「まぁな」
ハンジ「うん。来るね。どんどん来るね。キャラバンみたいだ」
ハンジ「あーもっといろんなことを教えたかったよ」
リヴァイ「もっと鍛えてやりゃよかった」
ハンジ「リヴァイさ」
リヴァイ「あ?」
ハンジ「もしもう一度彼らに何かを教えることが叶うなら」
ハンジ「今度は少しくらいの平和を教えたいね」
リヴァイ「悪いが・・・俺達には無理だな」
ハンジ「おっ・・・そうか。そうだね。どうしよっか」
リヴァイ「あいつらの誰かにそんなのまかせればいい」
ハンジ「うん。んっ?もしかして励ましてくれてる?」
リヴァイ「・・・もう時間だ行くぞ」
ハンジ「はいはい。行くしかないね」
待ってた!
ハンジ「おはよう。じゃっ今日の講義を始めようか」
リヴァイ「・・・講義はもう全て終っている」
ハンジ「知ってるってそんなの。言ってみたかっただけ」
ハンジ「今日は事務連絡だけですぐ終るから」
ハンジ「それともみんな講義聴きたい?」
・・・
ハンジ「・・・」チラッ
リヴァイ(こっちを見るな)
リヴァイ「・・・おいっ」
アルミン「エレン」
エレン「あっ聞きたいです!」
ハンジ「・・・言わせたみたいでごめんね。どうだったかな」
ハンジ「兵団が縮小されて授業料を取るようになって寮もなくって」
ハンジ「それでもここに来てくれてありがとう」
ハンジ「これから君達は選択をするんだ」
ハンジ「どの所属にするかは自分で選択して決めるんだ」
ハンジ「それは何よりも大切な選択になるからね」
アルミン「あのー・・・今更ですが何故こんな状況なんですか?」
ハンジ「リヴァイ言ってもいいかな?」
リヴァイ「かまわないだろ・・・すぐに知ることだ」
ハンジ「実はね私達調査兵団が大規模な作戦を計画している」
ハンジ「それはね壁外調査をするんだ」
アルミン「えっ壁外調査はいつも行っているのでは?」
ハンジ「これはいつもの壁外調査と違って永続的な壁外調査だ」
エレン「まさかそれって」
アルミン「そういうことですか?」
ハンジ「そう。今度は果てを目指すんだ」
ハンジ「そのために巨額の予算が必要で・・・ エレン「ちょっと待って下さい!」
リヴァイ「なんだ。うるせーな」
エレン「すみません。でも巨人は・・・巨人は問題ないんですか?」
ハンジ「当然の質問だね。うん。当然だ」
ハンジ「これはまだ秘密なんだけど最近巨人を見ないんだよ」
エレン「えっ?」
アニ「・・・」
アルミン「いないってことですか?」
ハンジ「それが分からないから厄介だね」
ハンジ「だけど少なくともここ5年間は見ていない」
ハンジ「でもなぜいなくなったのは今は誰もわからない」
リヴァイ「だから調査兵団は今度の作戦で今まで行っていない場所へ」
ハンジ「目的はね。巨人は本当にいないのか?だ」
ハンジ「けど早い話が冒険さ」
ハンジ「どこまでも行く。どこまでも」
エレン「すげえ!」
ハンジ「でしょ?」
サシャ「あのー帰ってこれるんですか?」
ハンジ「保証はないよ。それはいつだってそう」
クリスタ「どこまでいったら帰ってくるのですか?」
ハンジ「だから果てまでさ。君達は知ってるかな海って?」
ハンジ「この世界は大きな水で囲われているらしい」
ハンジ「だから私達が目指すのは海になるかな。そこが果てだから」
アルミン「うわー」
サシャ「アルミンすごいですね!」
アルミン「うん。すごいよ!」
サシャ「是非一緒にみたいですね」
アルミン「うん。ありがとう」
ハンジ「まっ君らは他に駐屯兵団や憲兵団を選択することができる」
リヴァイ「もう決めていると思うが精々悩んで決めろ。自分でな」
ハンジ「近日中に決めてもらうからね。それぞれの兵団が指定する場所に各々向かって」
ハンジ「それでもう決まり。嘘でも誇張でもなくてそれが今生の別れになるかもね」
ハンジ「っとこれがちょっと脱線したけど事務連絡だよ」
ハンジ「講義でもなんでもないけど最後に」
ハンジ「いつか君達が私達のようなことしか教えることができない人間にならないように」
ハンジ「もし君らができなかったら君達が教える者達に今の言葉を言ってくれることを」
ハンジ「願っているよ(でもみんな今はそんなこと思ってないだろう)」
ハンジ「それでは会える人はまた今度」
ハンジ「そうでない人はまた会えることを祈って今日は解散っ」
ハンジ「ふー・・・リヴァイ何か言う事はある?」
リヴァイ「私物は持ち帰れよ」
ハンジ「あーつまんないよ。つまんない。もっとかっこいいことを言ってよ」
リヴァイ「そんな必要はない。俺はこいつらに教えることは教えたそれで充分だ」
ハンジ「さっきもっと鍛えてやればって」ボソッ
リヴァイ「あっ?」
エレン「えっ?」
リヴァイ「・・・俺はお前達に特に言うことはない」
リヴァイ「だがお前達はそれでいいのか?」
リヴァイ「証明してくれ。俺が教えた者達が強いということを」
ザワッ・・・
コニー「なぁどういうことなんだ?」
アルミン「えっと・・・」
ハンジ「かかってこいってことだよ」
エレン「ほんとですか?」
リヴァイ「いいぜ。かかって来いよ。全員でも構わない」
ハンジ「オッケ。じゃ練兵場へ移動ね」
ユミル「あー始まったな」
クリスタ「大丈夫かな?」
ミカサ「問題ない」
サシャ「じゃれあっているように見えますよ」
ユミル「うん。いつぞやの鬼ごっこみたいなもんだろ」
アニ「なにサボっているの?」ハァハァ
ユミル「お疲れさん。どうだ?」
アニ「やっぱ化け物だね」
クリスタ「水でも飲んで」
アニ「ありがと」ゴクゴク
ミカサ「今度は私もいこう」
アニ「うん。私ももう一回だ」
ユミル「アニ負けず嫌いだなー」
クリスタ「がんばってねー」
アニ「あんた達は?」
ユミル「見守ってるよ」
サシャ「主役は後で登場するものです」
クリスタ「がんばってねー」
アニ「あっそ。ミカサいこ」
ミカサ「うん」
ユミル「みんながんばるな。お前は行かないのか?」
サシャ「お腹が減るので」
ユミル「あっそ」
クリスタ「あっミカサが加わって大分変わったね」
ユミル「おおっすげーな。ミカサとアニ良いコンビじゃねーか」
サシャ「接戦してますね」
ユミル「すごすぎて他の奴らが蚊帳の外だ」
サシャ「アルミンはどこですかね」
クリスタ「みんな怪我してないかな」
ユミル「あいつら遠巻きで見てるぜ。おっ膠着してきたな」
クリスタ「・・・ユミル行かないの?」
ユミル「えー」
サシャ「行きますか?」
ユミル「お前らが行くなら」
クリスタ「じゃ」
サシャ「行きますか」
ユミル「仕方ない。かき混ぜてくるか。いこうぜサシャ、クリスタ」
クリスタ「うん。みんなで行けば」
サシャ「恐くありません」
エレン「いってー」
アルミン「無茶しすぎだよ」
エレン「いいさ。立ち向かえたことだけで」
コニー「あっクリスタとかサシャが行ったぞ」
アルミン「ユミルもだ」
エレン「あいつもいったのか?珍しいな」
アニ「あー疲れた」
アルミン「お疲れ様」
エレン「がんばってたな。水飲むか?」
アニ「あっうん」
ミカサ「私も疲れた」
エレン「そうか」
ミカサ「うん・・・」
ライナー「お前達もう終わりか?」
アニ「私はずっと戦っていたよ」
ベルトルト「エレンはもう一回行く?」
エレン「あぁもちろん」
エレン「負けてやるかって思って」
ジャン「くっそ。どうにかなる気がしねー」
マルコ「まだがんばろうよジャン」
ジャン「まだやんのかよ。成績にも反映されねーよこんなの」
ミーナ「そんなこと言わないでまだがんばりなよジャン」
ジャン「ったく。めんどくせーな」
マルコ「いけジャン」
ミーナ「我らがジャン行くんだ」
ジャン「うるせー」
マルコ「僕も行くから」
ミーナ「私も行くよ」
ジャン「わかったよ。お前達がいくなら」
リヴァイ「ふう」
ハンジ「お疲れ。みんなあなたの言うように強くなっていた?」
リヴァイ「強くはない」
ハンジ「あらら。駄目じゃん」
リヴァイ「だがあいつらは全員で向かってきやがった」
ハンジ「うん」
リヴァイ「それで十分なんだろう今は」
ハンジ「そうだね」
ハンジ「今は目の前のものを見たり考えたりするだけで精一杯だから」
リヴァイ「年取ったなお前」
ハンジ「あー聞こえないよ。そんなこというかなぁ・・・もう。失礼な奴だねぇ」
リヴァイ「何か言ったか?」
ハンジ「なんでもないよ。飯でも食いにいこうよ。奢りで」
リヴァイ「エルヴィンのか?」
ハンジ「それでもいいよ」
リヴァイ「・・・やっぱ半々だ。悪くないだろ?」
ハンジ「それは悪くないね」
アルミン「疲れたー。今日はみんな張り切りすぎだよ」
サシャ「そうですね。お腹減りましたー」
ユミル「言うと思ったよ」
コニー「なぁそれよりも海ってしってたか?」
サシャ「私知ってました!」
クリスタ「えっなんで?」
ミカサ「意外」
サシャ「アルミンに教えてもらいました」
アルミン「あっ」
ユミル「アールミンなんで私らには教えないんだ?」
アルミン「それは・・・聞かれなかったからだよ」
サシャ「あれっ私も私からは聞いてはいませんでしたよね?」
ユミル「アールーミーン」
アルミン「サーシャー」
サシャ「すみません。これは二人だけの秘密でしたね」
ユミル「えっ?そんな仲だったのか」
クリスタ「素敵だね」
コニー「何だ?」
アルミン「いやっエレンだって知ってるよ!」
ミカサ「エレンとそんな仲!?」
アルミン「違うって」
コニー「そういやエレンは?」
ミカサ「それとアニはどこ?」
ユミル「二人で買出しだって」
ミカサ「なぜ?いつもは一人なのに」
ユミル「さあな。いいじゃねーか」
エレン「こんな買うのか?」
アニ「まだ少し」
エレン「何か特別な日だっけか?」
アニ「ふふっなんだろうね」
エレン「作るの大変だな」
アニ「二人ですれば大丈夫でしょ」
エレン「そうだな。けどコニーじゃねーけど食べきれっかな」
アニ「それはがんばって」
エレン「おっし。外の世界に行く前に体力つけとくぜ」
アニ「まぁ・・・そうだね」
エレン「そうだろ?お前はもう少し食って背を伸ばせよ」
アニ「うるさいね。もう伸びないよ」
アニ「もっと背が高いほうがいい?」
エレン「別に。そういや海って知ってたか?」
アニ「・・・知らない。(別にってなに?)知ってたの?」
エレン「おう・・・あっベルトルトだ。おーい」
アニ「・・・」
ベルトルト「やあエレン、アニ買い物?なんかたくさんだね」
エレン「そう。今日は豪勢なんだ」
アニ「たまにだよ。普段はもっと倹約してる」
ベルトルト「別に言い訳しなくてもいいのに」
エレン「ベルトルトはどこの兵団にするか決めたのか?」
ベルトルト「僕とライナーは調査兵団にするつもりだよ」
エレン「じゃ俺と一緒だな」
ベルトルト「だけど今日言っていた大規模遠征には参加しないつもりさ」
エレン「なんでだ?」
ベルトルト「それは・・・考える時間が欲しいんだ。ごめん」
エレン「ごめんってなんだよ。お前達が考えたことだからいいさ」
エレン「だけどまた会おうな」
ベルトルト「うん。外の世界によろしく」
エレン「たんさんのみやげ話を持ってくるからな」
ベルトルト「期待してる(君はいろんなものを見るんだろうな)」
ベルトルト「全てが綺麗だとは限らないけど」
エレン「ん?」
アニ「なに?」
ベルトルト「あっごめん。なんでもない。ライナーが待ってるから」
エレン「おう。またな」
アニ「また」
ベルトルト「・・・」スタスタ・・・クルッ
ベルトルト「ねえアニ!」
ベルトルト「僕らはいつも傷ついてなきゃいけないってそんなことはないよ!」
ベルトルト「・・・じゃあね!」
エレン「じゃーなー。アニも手を振れよ」ブンブン
アニ「うん。そうだね・・・さよならっベルトルト」フルフル
ベルトルト(さよならか・・・)ニコッ・・・クルッ
エレン「なんだよさよならって。また会うだろ」
アニ「知ってるさ。けどね・・・あぁそうだ。魔法って知ってる?」
エレン「知らない」
アニ「そうだよね」
エレン「それで?」
アニ「うーん・・・何だろ。小さいころに本で読んだんだ」
アニ「それは不思議な力で願いごとを叶えてくれる」
エレン「どんな願いも?」
アニ「そう。すごいでしょ。まあ作り話だけどね」
エレン「なんだ作り話かよ。なんでそんな話をしたんだ?」
アニ「・・・海なんて魔法みたいに思えるから」
エレン「そっか俺も初めて聞いたときは本当だと思わなかったな」
アニ「私も信じられなかった」
アニ(みんなと会うまでは)
アニ(でも私はいつも感じているんだ)
エレン「あー重っ。やっと家についた。扉開けてくれよ」
アニ「はいはい」
アニ(この扉を開けたら私は)
アルミン「おかえり」
ユミル「おせーぞエレン」
エレン「なんで俺だけなんだよ」
ミカサ「たくさん買ったね」
アニ「うん」
アニ(魔法みたいな力があることを)
アニ(そしてその力にはきっと終わりがある)
アニ(わかってる)
エレン「だから外の世界ってのはな?」
ユミル「うるせーな。飯くらい静かに食えよ」
アニ「さっきからその話だね」
ミカサ「エレン静かに」
エレン「みんなしてさあ・・・もうちょっと興味持とうぜ。なあアルミン」
アルミン「何?」
エレン「お前も言ってくれよ。外の世界の感じを」
アルミン「エレンが散々言ったじゃないか・・・そうだ。ご飯食べたら話そうよ」
アルミン「みんなで」
ユミル「みんなで?まあアルミンが言うならいいや」
エレン「差別だ」
ユミル「区別だ。信頼だ」
エレン「うっ」
ミカサ「ユミル。エレンで遊ばない」
ユミル「ふふっいいだろ。じゃあ片付けすっかな。エレンもやるか?」
エレン「ごちそうさま。今日はお前の当番だろ?」
アニ「うん。ありがと」
ユミル「あー片付けしたら肩こったな」トントン
エレン「バアさんみたいだな」
ユミル「お前にはわかるまい」
エレン「否定しろよ。仕方ないな」
ユミル「ん?なんだよ?」
トントントントン
ユミル「別にいいって」
エレン「いいだろ別に」
ユミル(ちょっと恥ずかしいぞこれ)
アルミン「なんで二人とも顔赤くして肩たたきしてるの?」
エレン「してねーし!なあユミル」トントン
ユミル「あ・・・うん」
エレン「やっぱこってるな」モミモミ
ユミル「そうか?自覚ないな。いややったことあるのか?」
エレン「母さんに」
ユミル「ふーん」
アルミン「・・・」
ミカサ「・・・」
アニ「・・・」
ユミル「ああ・・・もういいぞ。ありがとな」
アルミン「・・・ねえユミル」
ユミル「どうしたアルミン?」
アルミン「僕も・・・僕もおじいちゃんの肩を叩いていたんだよ」ガタッ
ユミル「えっ?そっそうか」
ミカサ「私もおばさんの肩を」ハイッ
アニ「私も」スッ
ユミル「えっどうしたんだ?お前達」
エレン「じゃあ交代でやるか?」
アルミン「うん」
ユミル「何を?」
トントントントン・・・
ユミル「肩たたきか」
アルミン「どう?」トントン
ユミル「上手いぞ」
アルミン「うん・・・」カァー・・・
エレン「何で顔赤くなってんだ?」
アルミン「エッエレンに言われたくないなぁ」
アニ「うわっほんとにこってる」モミモミ
ユミル「しみじみ言われるとあれだな」
ミカサ「じゃもっと力を入れて」グッ
ユミル「いたたっ痛いって」
ミカサ「ごめんなさい」
エレン「ははっユミル大人気だな」
ユミル「召使のいるお姫様に見えるか?」
アルミン「・・・」
アニ「・・・」
ミカサ「・・・」
ユミル「黙るなよ!」
エレン「アルミンその変な人はほっといてさっきの話の続きをしようぜ」
ユミル「変って言うな」
アルミン「あっうん。ユミルまた肩がこったら言ってね」
ユミル「大丈夫だって」
アルミン「はい・・・お姫様」カァー・・・
エレン「恥ずかしいなら言うなよ」
アルミン「これはそうだったね。今日はちょっとおかしいなぁ」
アルミン「じゃ始めるよ」
エレン「よっ!」
ユミル「待ってました」パチパチ
アニ「お茶飲む?」
ミカサ「あっうん」
アルミン「はい。どうも」
アルミン「僕もね大して知ってる訳じゃないんだ。外の世界のこと」
アルミン「本でしか知らない。でもね小さい頃から存在は知ってた」
アルミン「だからずっと想像してきたんだ。どんな感じだろうって」
アルミン「海は冷たいのか、温かいのか」
アルミン「それよりもまず海ってどんな匂いなんだろう」
アルミン「あっそうだ。海って塩水なんだよ」
アルミン「きっと海に近づく前にその匂いがするかなって」
アルミン「海に行く前にもなにが起こるかわからない」
アルミン「もしかしたらその前に氷の大地、砂の大地を見れるかも」
アニ「そんなものもあるの?」
アルミン「うん本によるとね」
アルミン「もっとあるんだ。僕達が見たことがないような」
アルミン「燃える水、液体のような金属、水に入れると燃える金属」
ミカサ「何で燃えるの?」
アルミン「何でだろうね?ごめん。わからないんだ。他にも」
アルミン「全てを吹き飛ばすつむじ風、大地から吹き出す溶けた岩とか」
ユミル「なんかひでーとこじゃないか?」
アルミン「うん確かに。でもそれだけじゃないんだ」
アルミン「春になると数多の花を咲かせる樹、天から降りてくるカーテンのような光の束」
アルミン「どう?見てみたいと思わない?」
エレン「すげー」
アルミン「エレンはもう聞いてるでしょ」
エレン「いやけど・・・やっぱりすげーよ」
アルミン「エレンはいつも反応がいいから話して楽しいよ。っとこれが僕が知る大体なんだ」
アニ「ほんと・・・すごいね」
ユミル「お疲れさん」
アルミン「うん。最初にも言ったけどこれは僕が本から得た知識でしかないんだ」
アルミン「お願いなんだけどさ。みんなも想像してみてくれないかな?」
アニ「想像って?」
アルミン「例えば海にいったときのことを」
ミカサ「なぜ?」
アルミン「例えばね僕に想像できないことをみんながしてくれたら」
アルミン「その心構えとか準備ができると思うんだ」
アニ「できるかな?」
ユミル「うん・・・いいぜ。やってみるか」
アルミン「ユミルありがとう(気付いたかな?)」
エレン「海を一番先に見つけるのは俺だ!」
ミカサ「がんばってエレン」
アニ「どうやって?」
アルミン「じゃやってみよう」
エレン「あっ海だ!」
アルミン「早いって」
エレン「そうかぁ?」
アルミン「もっとその想像してよー」
ユミル「じゃあ私から考えてやろう」
ユミル「んーまず始まりは・・・長い旅路の果てにエレンは力尽きたのだった」
エレン「死なすなよ!」
アルミン「違う意味で早いって」
ミカサ「エレンの意志は私が」
エレン「死なないって」
ユミル「だってお前、海が近くなったらはしゃぎすぎて倒れそうだからな」
アニ「あーありがちだね」
アルミン「なんか納得するね」
エレン「いや見せてくれよ海・・・」
ユミル「仕方ねーな。じゃあ大丈夫なこととしよう」
エレン「サンキュー」
アニ「えっ?」
アルミン「エレンがそれでいいならいいけど・・・じゃ続きを」
ユミル「まだ言うのかよ。そうだな・・・いきなり海にいったんじゃ怒られるし」
ユミル「・・・天幕の下。私は目を覚ました。長い旅路はもう終わりに近い」
エレン「なんで分かるんだ?」
ユミル「塩の匂いがしてくる。海は塩水だからな。今日この峠を越えたらきっと見えてくるだろう」
ユミル「そんな噂が団員の中で広がっている。浮き足だっている。昨日も遅くまで議論っていう名目で」
ユミル「多くの団員がおしゃべりを続けていたらしい。私が下らないと思い早々に寝たんだった」
ユミル「一人外に出ると既に日は高く、風が強い。確かに塩の匂いだ」
ユミル「砂地が増えてきている。植物の形態が変わってきた。やはり近いのだろう・・・海が」
アルミン(あれっそんなことユミルにいったっけ?)
ユミル「今日は長い一日になるのだろうか?それとも・・・」
ユミル「私は思い返して天幕の下へ。まだ静かだ。みんなの心臓の音を聞きたくなるくらいに」
ユミル「寝顔を見ると(なんて想像しやすいのだろう)よく寝ている」
ユミル「よしっみんなを起こすとしよう」
ユミル「おっアルミン、ミカサは自分で起きてきたな」
ミカサ「おはようユミル」
ユミル「んっおはよう」
ユミル「アニ、エレンとっとと起きろよ朝だぞ」
エレン「起きてるよ」
アニ「失礼だね」
ユミル「知ってるから・・・うん。こんなもんかな?」
アルミン「ありがとうユミル」
ミカサ「ユミルすごい。私はこういうの苦手」
ユミル「こんなのテキトーだって」
ミカサ「なら私が次を言ってみる」
エレン「俺は起きてるからな」
ミカサ「うん」
ミカサ「ユミルが私を起こそうとする気配を感じ私は起きた」
ユミル「すごいなお前」
ミカサ「アニとエレンは叩き起こされて機嫌が悪そう」
ミカサ「いつまでも子供」
アニ「異議あり」
ミカサ「私は実は叩き起こしたアルミンと朝ごはんの準備」
アニ(スルーだ)
アルミン「あっそうなんだ」
ミカサ「朝ごはんは・・・」
エレン「もう出発しようぜ」
ミカサ「そう・・・なら仕方ない。アルミンが後から朝ごはんを届けてくれることとしよう」
アルミン「僕は何の係なの?」
ミカサ「なんやかんやで峠の頂上についた私達はここで昼食とする」
ユミル「急展開だな」
アルミン「僕の朝ごはんはどこに・・・」
ミカサ「頂上なのでもう見れると思った海は霧がかかって見えない」
ミカサ「先に行きたがるエレンを押さえつけ休ませる」
ミカサ「霧の所為で行く先も来た道だってよく見えない」
ミカサ「本当に海はあるのだろうかと私は思う」
ミカサ「世界は広すぎて果てはあるのかわからない。知らない」
ミカサ「私は前に歩いたりするのを躊躇してしまう」
ミカサ「そんなとき少し昔を思い出し勇気をもらう」
ミカサ「雨の日や雪の日、家の中や朝ごはんや昼ごはんの時」
ミカサ「夕日の時」
ミカサ「そのとき私・・・違くて私達は何でもできる気がする」
ミカサ「けどそれはいつもと同じ気がする」
ミカサ「きっと海はもうすぐ」
エレン「俺の扱い子供っぽくないか?」
アルミン「そうでもないと思うよ」
エレン「そうかなあ」
ユミル「いいから次お前言えよ」
エレン「おう。あーやっと見ることができるな海」
ユミル「誰に言ってんだ?」
エレン「えっ見たくないのか?」
アニ「見たいと言えば見たいかな」
ミカサ「私は見たい(そのときのエレンを)」
エレン「だろっ?」
アルミン「早く進もうよ」
エレン「アルミンも早く見たいもんな。子供の頃からずっとだ」
アニ「着いたら何するの?」
エレン「そりゃー・・・」
アニ「考えてないの?」
エレン「えっとアルミン。海って水以外になにがあるんだっけ?」
アルミン「特にはないかなー。砂浜っていう砂地が広がっているって話だよ」
エレン「ふーん」
ミカサ「帰る?」
エレン「早いだろ。まだ見てもねーのに」
エレン「じゃあ冒険だ、冒険。砂浜を歩こうぜ」
ユミル「そりゃ散歩だ」
エレン「いっ行ったことのないところを行くのは冒険だろ」
アニ「冒険好きだね。知らないところ行くのって怖くはない?」
エレン「ない」
アルミン「言い切ったね」
ユミル「何も考えてないだけかもな」
エレン「違うって。意味ないだろそんなのは」
エレン「俺が考えたいのは・・・何だろうな。例えば」
エレン「太陽がでていたら眩しくて」
エレン「海は光っているように見えるか」
エレン「砂浜は歩いたら足をとられて大変か」
エレン「海って泳いでもいいのか」
エレン「それで入って少しくらい遊んでも怒られないかとか」
エレン「そんなのでいいって。あと食事こととか」
エレン「海って魚がいるんだろう?それを釣って食おうぜ」
エレン「俺とアルミンで釣るから」
ミカサ「私は?」
エレン「じゃミカサも釣るか」
エレン「釣竿あるかな・・・じゃ潜って獲れるか?」
ミカサ「わかったやってみよう」
ユミル「いいのか?」
エレン「ユミルとアニは料理な」
アニ「なんかいつも通りだね」
ユミル「わかったよ・・・それで海は見えたのか?」
エレン「ああそうだな。見えてくる。本当でもそうだ」
エレン「きっとこんな風に話している間に見えてくる」
エレン「海が」
アルミン「やっと着いたね。じゃ最後にアニお願いできる?」
アニ「えっ思いつかないよ」
ユミル「別に思ったことを言えばいいだろ」
アニ「うーん・・・」
ミカサ「がんばってアニ」
アニ「私達は・・・」
エレン「おっ言い出した」
ユミル「黙ってろよエレン」
アニ「私達は砂浜を歩いている」
アニ「私はみんなの後を足跡を辿っている」
アニ「いろんな数の足跡がみんながいるって実感できる」
アニ「足跡でさえ誰が誰かさえ分かり」
アニ「海は太陽からの反射でとても眩しい」
アニ「私は声をかける。みんなが振り返る」
アニ「輪郭がぼやける。眩しいからね」
アニ「それは本当に魔法がかかったみたいに見えて」
アニ「私達はまだ一緒にいるって思えて」
アニ「足跡だけが」
アニ「私達はまだ一緒にいるって思えて」
アニ「嬉しくなるんだ」
アニ「あっ・・・ごめん」
エレン「なにが?よくわからないけど良かったぞ」
ユミル「アルミンいいか?」
アルミン「そう・・・だね。ありがとう。今日はもう終ろうか」
ミカサ「明日は色々片付けをしなくては」
アニ「ちょっとめんどうだね」
エレン「あれっ?アルミン言ってないだろ?」
アルミン「僕はいいよ」
ユミル「そうか?」
アルミン「うん。いや・・・少しだけ」
アルミン「僕は伝えたいんだ」
アルミン「海を知らない人に」
アルミン「海の音をみんなに」
アルミン「匂いを、感触を、僕が思ったことを」
アルミン「それが僕やエレンが感じた力を受け取ってくれることを信じて」
アルミン「だけどその後僕自身が思うことは」
アルミン「僕が海を見た後その次に思うことは」
アルミン「そのときは」
アルミン「きっと今見ている場所を見たいって思うんだ」
アルミン「いいでしょ?」
エレン「なんでもないのにか?」
アルミン「そうだね。なんでもないよ」
ユミル「ったく。アルミンちゃんは良い子だな」ナデナデ
アルミン「なにがぁ。やめてよ」
アルミン「もう寝ようよ。寝るよ僕は」
アニ「アルミン怒っちゃったね」
ミカサ「珍しい」
エレン「ユミルがわりーぞ。今のは」
ユミル「分かってるよ。けどさあんまりにも懸命で」
ユミル「言いたいことも、考えてることも、したいことも」
ユミル「それでちょっとさ」
エレン「ちょっとってなんだよ」
ユミル「いやなんでも。明日は長い。寝るぞ」
アルミン「はぁー・・・」
アルミン(僕はみんなに・・・むしろ今の生活が)
アルミン(どうやっても取り戻せないものだっていうことを)
アルミン(少しみんなと考えたかったんだ)
アルミン(けどそんなことは余計だったのかな)
アルミン「・・・エレン起きてる?」
エレン「どうした。寝れないのか」
アルミン「今日の話みんなどう思ったのかな?」
エレン「海にまた行ってみたくなった」
アルミン「いやそうじゃなくて」
エレン「そうじゃないって?」
アルミン「うん。エレンだって気付いていたでしょ」
アルミン「最近みんなわざと明るく振舞っているって」
エレン「そんな風には見えなかったけどな」
アルミン「そうかなあ」
エレン「なあアルミン」
アルミン「なに?」
エレン「ちょっと外にでようぜ」
エレン「やってみたいことがあって」
アルミン「なにを?」
エレン「ユミルがうるさいだろうからやってなかったけど」
ガサガサッ
アニ「!ユミル聞こえる?」
ユミル「あぁ聞こえる」
ミカサ「泥棒?」
ユミル「わからんが・・・この家に入るとは良い度胸だ」
アニ「まったくだね」
ミカサ「一生流動食しか食べれない体にしてあげよう」
ユミル「いや」
アニ「そこまでは」
青春だな。
エレン「アルミンちゃんと梯子つかんでてくれよな」
アルミン「やっぱやるの?」
エレン「おう。次アルミン昇ってこいよ」
アルミン「うん」
ユミル「誰だ!何やってる」
エレン「やべっ」
アルミン「あっユミル」
アニ「アルミンだ」
ミカサ「何やってるの?梯子を屋根にかけて」
ユミル「・・・エレンのアホは?」
アルミン「屋根の上」
エレン「言うなよー」
ユミル「アホ。降りてこい」
ユミル「なんで屋根の上に登ったりしたんだ?しかも夜に」
エレン「・・・」
ユミル「答えろ」
アルミン「ごめんなさい」
ミカサ「アニ。ユミルってほんとにお母さんみたい」ヒソヒソ
アニ「それだけ心配なんだよ」ヒソヒソ
ユミル「エレンお前は?」
エレン「いやただ単に登ってみたくて」
ユミル「バカじゃねーの。もうガキじゃないんだからな」
ユミル「落ちて怪我したらどうするんだ」
エレン「うっ」
アルミン「あの・・・ユミル。エレンは僕を元気付けようとして・・・」
ユミル「かばうなよ。何でそれが屋根の上に登ろうって発想になるんだ?」
エレン「俺が登ってみたかっただけだって」
アルミン「いや僕も行ってみたいなって。今日は星が綺麗だから」
アルミン「エレンと一緒に見れたらと思って」
ミカサ(なんか・・・)
アニ(恋人みたい)
ユミル「もういい。戻るぞアニもミカサも」
エレン「ユミル」
ユミル「・・・上着を取りに戻るんだ。寒いだろ?」
エレン「いい眺めだ」
アニ「ちょっと梯子もってよ」
エレン「悪い悪い」
ユミル「下で支えているから」
アニ「うん」
ユミル「ミカサは?」
アルミン「お茶持ってくるって。あっきた」
ミカサ「水筒に入れたから時間がかかった」
アルミン「持ったまま登れる?」
ミカサ「片手で登る。コップはアニのフードに入れる」
アニ「えっ?」
ユミル「早く登ろうぜ」
ユミル「よいしょっと・・・いい眺めって訓練の時のほうが高いだろ」
エレン「訓練の時なんかゆっくりしてられるか」
アルミン「普段の景色と少し違うのがいいよね」
エレン「さすがアルミン」
ミカサ「エレンに合わせてる?」
アルミン「まっまさかぁ」
アニ「確かに星は綺麗だね」
ミカサ「確かに綺麗」
エレン「コニーのとこまだ明るいな」
ユミル「ほんとだな」
ミカサ「夜更かしして何してるの?」
アニ「さあ?きっとこんな風に話でもしているのかも」
アルミン「どんな話かな?」
ユミル「そりゃーサシャだったら」
アルミン「サシャだったら?」
ユミル、アニ、エレン、ミカサ「食べ物の話」
ユミル「やっぱそうだろ」
アニ「間違いないね」
アルミン「みんな酷いよ」
アルミン「サシャだってちゃんと食べ物以外のことも考えてるからね」
アニ「よく知っているんだね」
ユミル「仲良いからな」
エレン「一緒に立体機動の練習するくらいだから」
ミカサ「そういえばしてた」
アルミン「・・・あっ流れ星だよ!ほらっ」
ユミル「あーはいはい」
ミカサ「誤魔化してる?」
アルミン「違うってー」
アニ「でもほんとに流れ星だった」
エレン「二つもあった」
アニ「交差して」
ユミル「・・・そうか・・・手を伸ばして掴めればよかった」
エレン「はあ?どういう意味だよ?」
ユミル「独り言だ。どれぐらいの高さまで上がれば届くって考えたことないか?」
エレン「星にか?壁よりもずっと高ければ届くかって思ったことはあるけどな」
ユミル「壁なんかよりも高くか・・・」
ミカサ「それなら届くような気がする」
アニ「だけどそこまで行ったら戻ってこれないような気もするね」
アニ「いなくなって去ってしまった人みたいに」
ミカサ「・・・人は死んだらどこに行くの?」
アルミン「なんて重い話題を」
エレン「星があるってだけの話だったよな」
アニ「どこだろうね。検討もつかないよ」
エレン「わかったよ。だったらきっと壁の外じゃないか?」
ユミル「行くとしたらそうかもな」
アルミン「どうして?」
ユミル「自由になるから」
アニ「壁の中のほうが大事な人だって沢山いる」
ミカサ「だとしたら・・・」
ミカサ(無くなってしまった私達の故郷にはいるのだろうか?)
エレン「・・・」
アルミン「前に僕は僕たちの故郷を見たことがあるよ」
アルミン「サシャ達と立体機動の訓練をしているときに偶然、一瞬だけ」
アルミン「真っ暗だった。空よりもずっと」
エレン「わからないな」
アルミン「そうだね」
ミカサ「うん」
エレン「ほらっアルミンもミカサも元気だせよ。月も星も明るくてすごいぞ」
ミカサ「うん」
ユミル「願いでもかけてやるか?」
エレン「んー・・・うん」
エレン「・・・」
エレン「おっし。でもいい眺めだな」
エレン「昼間とか夕日のときとかも登ってみれば良かった」
ユミル「近所の人に不審者扱い受けるからやめろ」
エレン「そうかー。お前ずっと家にいたからそういう扱い受けたのか?」
ユミル「受けてねーよ。買い物とかで外に出てるし、クリスタのとこにも遊びに行ってるし」
アニ「結局ユミルだけ働いてなかったね。別に悪くないけど」
ミカサ「悪くないけど」
アルミン「悪くないけど」
ユミル「ほんとか?ほんとに思ってるか?」
エレン「ははっ」
ユミル「私だって色々やってたんだからな」
エレン「知ってるから」
ユミル「せいせいするよ」
ユミル「もうお前らの服を洗濯しなくていいし」
ユミル「髪だって切らないし」
ユミル「服だって繕わないし作らないし」
アニ「その割りには全部自発的にやってたような気がするけど」
ミカサ「服も自分から」
アルミン「僕髪を切ってほしいなんて一度も言ってないよ」
エレン「この前洗濯しているとき歌ってなかったか?」
ユミル「・・・星が綺麗だな」
アニ「誤魔化した」
ユミル「・・・まっ不思議なもんだよ」
ユミル「偶然会った奴らとこんな風に話すなんてな」
アルミン「そうだね。それを考えると不思議に思えるね」
エレン「けどさ」
エレン「俺達が会ったのは偶然だけど」
エレン「ここで話しているのは偶然じゃない」
エレン「そうだろ」
アニ(偶然じゃない・・・か)
ユミル「・・・そんなことでそんなに真っ直ぐ人を見るなよ」
ユミル「恥ずかしくなるだろ」
エレン「?」
アルミン「じゃあさ僕達会わなかったらどうだったのかな?」
エレン「うーん・・・まあなんとかやってたんじゃないか」
ミカサ「野宿を?」
エレン「野宿は少しくらいならいいけどよ」
アニ「私もなんとかやっていたはずだよ」
ユミル「そーかぁ?」
ミカサ「きっとアニは人見知りだから仕事を探すの苦労したはず」
エレン「お店の人に話しかけるのに何時間もかかったりな」
アニ「なっ・・・そんなことないよ」
アルミン(あったんだけどな)
ミカサ(心の中に閉まっておこう)
アルミン「ハンジさんの話にもあったけど、もう会えなくなる人はたくさんいるのかな?」
ミカサ「そうかも知れない。けどいつか会える・・・と思う」
アルミン「また会ったら何を話そうか?」
エレン「そりゃたくさんの話を言い切れないくらい」
アルミン「毎日話しても言い切れないくらいのね」
アルミン「うん・・・けどおかしいよね。僕ら毎日話しているのに終らないから」
エレン「毎日いろんなことがあるからな」
アルミン「うん。ほんとに色んなことがあった。普通に暮らしているだけなのにどうしてだろう?」
アルミン「ごめんねエレン。僕は最近思ってしまうんだ。こんなに色々あるのなら」
アルミン「大事なものが僕のすぐ傍にあって。それを壊してしまう価値があるのかと」
アルミン「変なこと言ってごめん。けど言いたかった。言えなくなって忘れてしまう前に」
アルミン「泣き言を言ってるのはわかってる。前に進まなくてはいけないのにね」
ミカサ「アルミン・・・」
エレン「なあアルミン。俺達が旅から戻ってきたら故郷に一回行ってみようぜ」
アルミン「故郷に?」
エレン「そう。それで旅を終らせようぜ」
アルミン「どうして?」
エレン「世界の果てから故郷へ。なんかいいだろ」
ミカサ「じゃあエレンその時、世界の果ての話をしよう」
エレン「いいかもな。それ」
ミカサ「何かが救われる気がする」
ミカサ「いなくなってしまった人も、いる人も」
アルミン「うん!そうだね」
ミカサ「エレンはその後どうするの?故郷に戻るの?」
エレン「いや俺はここがいいよ」
アルミン「けどこの家はもう僕らのではないよ」
エレン「買おう」
ユミル「すげーな」
アルミン「お金あるかな?」
エレン「アニもユミルも一緒にいるんだからな」
ユミル「勝手に決めんなよ」
エレン「金出せよ」
ユミル「そっちかよ」
ユミル「まぁいい。そのかわり全員で戻ってこれたらな」
エレン「よっし。決まりだ」
エレン「そろそろ降りようぜ」
アルミン「ミカサ水筒僕が持とうか?」
ミカサ「いいアルミンは梯子を持っていて」
ユミル「ねむ」
エレン「ああねみーな」
ユミル(あれっアニ喋ってないなどうした?)
アニ「エレン」ギュ・・・
エレン「ん?」
アニ「あの・・・もっと話をしたくて」
エレン「何の話を?」
アニ「もっと下らない話を」
アニ「していたいんだ」
エレン「いつもみたいな?」
アニ「うん・・・もっと話して」
アニ「もっと聞きたいんだ」
アニ「もっと声を聞いていたくて」
アニ「・・・いたかった」
アニ「それなら真っ暗に感じることもないから」
アニ「いつもたくさん悩んでて」
アニ「でも良かったと思う」
アニ「私はあなたの勇気を持った目にはなれないかも知れない」
アニ(魔法が終わるのか?)
アニ(何回想像しただろう言ってしまったことを)
アニ(何回願った?言わないでしまうことを)
アニ(本当に・・・何回迷っただろうか)
アニ「エレン。あなたにたくさんの希望を」
アニ「私には何も要らないから」
切ない。
エレン「どうしたんだアニ?」
アニ「でも・・・もう一度・・・もう一度でも」
アニ「手が届くような距離で」
アニ「星が見れたらって」
エレン「どうしたんだってアニ!」
アニ「どうか今までのままで」
アニ「迷いも恐れもないあなたのままで」
アニ「お願い。これから言う事に対して」
ユミル「・・・」
アルミン「どうしたの二人供?」
ミカサ「?」
アニ「エッ・・・」
アニ(声が・・・声を)
アニ「エッ・・・レ・・ン」
アニ(騙していた・・・違う。そんなんじゃない)
アニ(そんなものではないんだ)
アニ(もっと酷い。単純な酷さで)
アニ「私はあなたと共に行けない」
アニ(私が大事に思っていることと同じものを)
アニ「私はあなた達の故郷を滅ぼした者達の仲間だった」
アニ(壊した)
エレン「はっ?」
アルミン「えっ?」
ミカサ「何かあったの?」
アニ「いっ今まで・・・言えなくて・・・言えなかっ」
エレン「だから!何言ってんだよ!訳わかんねーよ」
アニ「っごめん・・・なさい」
エレン「だからごめんじゃねーよ!悪いことしてないだろ?」
エレン「そうだろ!?」
アニ「いや・・・もう少しそんな風に強いままでいて」
エレン「違うって言えよ!」
アニ「っ・・・」
ユミル「やめろエレン。アニ震えているだろう」
エレン「えっ?」
エレン「あっ・・・ああ」
エレン(どうなってんだ?何が起きてんだ?)
アルミン「・・・」
ミカサ「何?」
ユミル「なあアニお前エレン達と共に行けないって言ったよな」
エレン(俺らは星をみんなで見ていただけだろ?)
アニ「・・・」
ミカサ「えっ?これは?」
ユミル「なら私はアニ。お前と共に行く」
エレン(何だよこれ?)
アニ「ユミル・・・わたし・・・私は」
ユミル「何も言わなくていい」
ユミル「けど言わせてくれ」
ユミル「私は今お前を誇りに思う」
ユミル「エレン」
エレン「えっ?あっ俺か?何だよ?」
ユミル「飛び越えてみせてくれないか」
エレン「はっ?何を?」
ユミル「決まっている」
ユミル「壁を」
ユミル「その目の前にあるのは昔の片鱗、残滓」
ユミル「それを背負っている」
ユミル「アニも私も・・・そしてお前達も」
エレン「お前何を?」
ユミル「今日のところはもう眠ってくれ」
ユミル「それで明日も起きてこいよ」
ユミル「でも・・・そうじゃなかったら起こしてやるよ」
次の日
ミカサ「ユミルおはよう」
ユミル「んっおはよう」
アルミン「あっおはよう。早いね」
ユミル「まーな」
アルミン「アニは?」
ミカサ「寝てる」
ミカサ「エレンは?」
アルミン「寝てるよ」
ユミル「そうか」
ミカサ「起こすの?」
ユミル「いや。まだ早いな」
ミカサ「朝ごはん作る?」
ユミル「頼めるか?」
ミカサ「まかせて」トコトコ
アルミン「昨日は眠れた?」
ユミル「私はな」
アルミン「うん。僕もね」
ユミル「それで?」
アルミン「うん・・・僕の所為かな」
アルミン「僕があのときみんなを集めて外の世界の話を」
アルミン「屋根の上で話なんてしなければよかったかな」
ユミル「そうじゃないさ。いつかこうなる。というか遅いくらいだ」
ユミル「それに昨日の話はいつも誰もがある時に思ってたんじゃないか?」
ユミル「それをお前が言い出しただけのことさ」
アルミン「駄目だね僕は。最近弱音が多いかも」
ユミル「悪くないし、駄目でもない」
ユミル「それはお前の強さなのかもしれない」ナデナデ
アルミン「自然に頭なでないでね」
アルミン「うん。ありがとうユミル。じゃあ昨日のアニは?」
ユミル「そうだな。思いの強さはだれよりも」
ユミル「来たら頭をなでてやろうかな」
アルミン「そんな気分じゃないと思うよ」
ユミル「分かってるよ。冗談だ」
ユミル「それよりもお前はあんまり驚かないんだな」
アルミン「驚いたよ。けどあそこで言ったからね。なんでって最初は感じたけど」
アルミン「だけどそれがアニを信じられることなんだ」
ユミル「冷静だ。昨日よりもずっと」
アルミン「昨日より以前にはもう戻れないね。僕達は」
ユミル「それはいつだってそうだよ。お前は憎くはないのか?」
アルミン「アニを?分からないよ」
アルミン「でもどんなにつらかったのだろうって思うよ」
アルミン「誰にも関わらずに生きたほうが楽だった。そう思えるくらいに」
アルミン「けどそうしなかったんだね。僕達との生活を選んだ」
アルミン「それを考えると・・・ね」
ユミル「ああうん・・・そうだな。エレンにもそれを言ってやるのか?」
アルミン「いや。エレンももちろん分かっているから」
アルミン「それに僕達は保護者じゃないでしょ?」
ユミル「ふふっその通りだ。最後はあいつらが決めるしかない」
ユミル「だけどもしアニがこのままだったら私はアニに着いていく」
ユミル「一人になんかさせてやるもんか」
アルミン「優しいね」
ユミル「違う。約束したんだ」
アルミン「誰に?」
ユミル「私に」
アルミン「それは大事だね」
ユミル「決して破りはしない。そうならないことを願っている」
ミカサ「朝・・・ごはん出来た」トコトコ
まだか
ユミル「おっありがとな」
ミカサ「まだ起きてこない?」
アルミン「うん」
ユミル「昔みたいにエレンを起こしに行くか?」
ミカサ「そんなことできない」
アルミン「うん?」
ユミル「そうだよな。昔とは違う」
ミカサ「なぜ起きてこないの?」
アルミン「そうか。ミカサは聴こえなかったんだね」
ミカサ「私には何が起こったのかわからない。何かが起こったのかは分かる」
アルミン「僕の口から言っていいものか」
ユミル「言ってやれよ。言うべきだ」
アルミン「うん」
ユミル「私は起こしてきてやるとするよ」ガタッ
ミカサ「お願い」
ユミル「アニ起きろ。飯だぞ」コンコン
アニ「・・・」
ユミル「なあアニ」
アニ「・・・」
ユミル「昨日お前が言ってしまったことが正しいことか間違っていることかは知らないが」
ユミル「どちらにしても」
ユミル「正しいことをやるのは簡単だよ」
ユミル「間違ったことをするのと同じくらいに」
ユミル「けどそれは幸せになることとは無関係なんだよ」
ユミル「幸せになるのは難しいな」
ユミル「その前に力尽きそうだって思うときもあるよ」
ユミル「だけどさ・・・」
ユミル「嵐の中に一人でいる私達に」
ユミル「私は手持ちの嘘を十分に使って」
ユミル「過ごしてきたつもりだ」
ユミル「けどもう無くなってきたよ」
ユミル「すっからかんだ」
ユミル「だから言うんだ」
ユミル「私達は知らない内に互いの傷を縫い合わせてきたのかもな」
ユミル「けどもう治った頃だ」
ユミル「そうだろ?今度はいけるさ」
ユミル「だってお前の行動は正しくも間違ってもいない」
アニ「・・・」
ユミル「みんな待ってるから来いよ」
アニ「・・・うん」
ミカサ「そんなことがあったの・・・」
アルミン「ミカサはどう思ったの?」
ミカサ「アニはあのとき誰よりも勇敢だと思った」
ミカサ「目を伏せながら震えながらも」
ミカサ「エレンはただ混乱していたように見えた。無理もないけど」
アルミン「いや僕が言いたいのは」
ミカサ「そして二人供とてもつらそうだった」
アルミン「あのね。ミカサ自身はどう思ったの?」
ミカサ「つらそうな二人をみるのはつらい。それだけ」
アルミン「・・・そうだね。僕もそう」
ミカサ「感情は決して整理はされない。だけど進まなくてはいけない」
ミカサ「もう子供ではないのだから」
アルミン「そうだけどできるかな?特にエレンは」
ミカサ「エレンだから」
アルミン「説得力があるんだか無いんだか分からないね」
ミカサ「信じる。二人を」
ユミル「まあそういうことだな」
ミカサ「ユミル」
アルミン「アニは?」
ユミル「じきに起きてくる」
ユミル「次はエレンだな」
ミカサ「エレンは・・・今とても悩んでいると思う」
ユミル「うん。あいつにしては珍しい」
アルミン「昨日もずっと眠れなかったみたい」
ミカサ「エレンの良いところ、強さはその・・・迷いのないところだった」
アルミン「だからユミル。エレンはどうなんだろう?」
ユミル「さっき信じるとか言ったろ?」
ユミル「それにそんなのは誰にでもあることだったんだよ」
ユミル「おーい。聞こえてるか?」コンコン
エレン「・・・」
ユミル「はいるぞお」カチャ・・・
エレン「なんでだよ!?」
ユミル「起きてんじゃねーか。よいしょっと」ドサッ
エレン「人のベットの上に座るんじゃねーよ」
エレン「そもそも勝手に入ってくんなよな」
ユミル「んっ?言うようになったな」
エレン「当たり前だって」
ユミル「だかお前にそんな権利は無い」
エレン「・・・何しに来たんだよ?」
ユミル「起こしに来た私に大した口を利くじゃないか」
エレン「うるせー」
ユミル「・・・酷い顔だな。眠れなかったのか?」
エレン「・・・」
ユミル「添い寝でもしてやろうか?」
エレン「あほ」
ユミル「ふふっ。・・・なあエレン」
ユミル「今日中にちゃんと笑えるようになってるといいな」
エレン「うるせーよ・・・」
ユミル「じゃ早く来いよ飯だから」スッ
エレン「あっ・・・ユミルちょっと待ってくれ」
ユミル「・・・言ってみな」
エレン「昨日言ったことは本当なのか?アニの」
ユミル「あの瞬間にしかもお前に対して嘘をつく理由は?」
エレン「・・・」
ユミル「それはお前もそう思っていたんだろ?」
エレン「だとしたらあいつは俺の大事なものを奪った」
エレン「だからあいつは敵で許す訳にはいかない」
エレン「・・・だけど訳わかんねーんだ」
エレン「何をしたら正しいんだ?どうすりゃ正解なんだ?」
エレン「なんで何をしたって間違えに思えるんだ?」
ユミル「ハハッ」
エレン「なんだよ」
ユミル「いや。悪い」ナデナデ
エレン「やっやめろよ」
ユミル「うん。もっと考えるんだ。考えたり思い出してみろよ」
ユミル「お前も欲しいもの、したいこともその全ても」
ユミル「だけど飯だからな。待ってるよアルミンもミカサもアニも」ガチャ
エレン「・・・おう」
エレン「なんだよ。忘れるはずないだろ。嫌なことも良い事も全部」
ユミル「遅くなったな。もう食おうぜ」
アルミン「ユミルありがとう。どうだった?」
ユミル「さあ?」
ミカサ「さあ?って何をして来たの?」
ユミル「頭なでできた」
ミカサ「いいな」
アルミン「それはちょっと違うと思う」
ガチャ
アルミン「あっ」
アニ「・・・」キョロキョロ
ユミル(来たな)
ミカサ(挙動不審)
アルミン「おはようアニ」
アニ「あっ」ビクッ
ミカサ「おはよう」
アニ「・・・ぉはよっ」ボソッ
ユミル(何て言ったんだ?)
ミカサ(さあ?)
アルミン「さあ席に座って」
アニ「うん」
アニ「・・・今日は誰が?」
ミカサ「私が」
アニ「悪かったね」
ミカサ「全然」
カチャカチャ
アルミン(無理もないけど静かだな)
ミカサ「美味しい?」
アニ「美味しい」
ユミル「アルミンそれ取ってくれよ」
アルミン「あっこれ?どうぞ」
ユミル「どうも」
アルミン「今日は片付けをやらなきゃね」
ユミル「あーまあな」
アルミン「掃除道具って足りてるかな?」
ユミル「そうだなー」
アニ「それは大丈夫この前確認したから」
ミカサ「さすが」
アニ「別に」
ガチャ
アルミン(エレンだ)
ユミル「遅い。もう私らは食い終わるぞ」
エレン「ああ」
ミカサ「エレンおはよう」
エレン「おう。おはよう」
アルミン「おはよう水要る?」
エレン「ああ。ありがとな」
アニ「あっ・・・おは」
エレン「んっ?」
アニ「よぅ・・・」
エレン「ああ・・・」
アルミン(ああっまた静かに)
アルミン(こんなの初めてだな。いや今までもあったけど)
アルミン(ちょっと違うかな。居辛いよ)
ユミル「じゃっアルミン、ミカサ食い終わっただろ。先に片付けしようぜ」
アルミン「えっまだ二人が」
ミカサ「分かった。二人とも食べ終わったら食器洗って」
エレン「おう」
アニ「分かったよ」
アルミン「どうして二人きりにしちゃったの?」
ユミル「面白いから」
ミカサ「そんな理由?」
ユミル「いや。二人きりのほうが話しやすいと思ったんだよ」
ミカサ「だけどなぜこうやってこそこそ見ているの?」
ユミル「見たいだろ?」
ミカサ「うん」
エレン「・・・」モクモク
アニ「・・・」モクモク
シーン・・・
アルミン「静かだね」
ユミル「うーん」
エレン「・・・飯美味いな」ボソッ
アニ「・・・そう」ボソッ
ミカサ「私が作った」グッ
アルミン「静かに」
エレン「・・・」モクモク
アニ「・・・」モクモク
アルミン「向こうが静かになってしまった」
ミカサ「初めて会った時でも全然話せてたのに」
ユミル「お互い何話していいか分からないのだろうな」
アニ(間が持たないな・・・)
エレン「・・・あれだな」
アニ「なに?」
エレン「あいつらどこに掃除しにいったんだ?」
アニ「台所とか風呂場かな。外に行った気配はないから」
エレン「じゃ残るは庭かー」
アニ「んー面倒だね」
アニ(あれっ?)
エレン(これは一緒に掃除すんのか?)
アルミン「ユミルいつまで見てる?もういいんじゃない?」
ユミル「うーん・・・」
アニ(結局二人で掃除か・・・)
エレン「何軒先まで掃除すればいいんだ?」
アニ「えっととりあえず目の前から」
エレン「そうだな」
アニ「箒」
エレン「おう」
アニ「・・・」ザッ・・・ザッ
アニ(なぜエレンは昨日のこと私には聞かない?)
アニ「んっ?何をしてるの?」
エレン「ユミルが植えた家庭菜園だ」
アニ「それが?」
エレン「これもう実がなってるぞ」
アニ「えっほんと?」
エレン「食えるかな」
アニ「大丈夫じゃない?」
エレン「じゃ」ブチッ
エレン「お前も」
アニ「あっありがと」
エレン「うわっ甘くねー」
アニ「うぅ本当だね」
エレン「すげーすっぱい」
アニ「ふふっ」
エレン「どうした?」
アニ「いやっ変な顔って」
エレン「いいだろ別にお前だって」
アニ「うるさいなぁいいでしょ」
アニ(私達は話をしている)
エレン「ああ。いいよ。まだ早かったか?」
アニ「もう少し。もう少しだね」
エレン「そん時食べたかったなー」
アニ「いつか食べれるよ」
エレン「いつか・・・か」
エレン「これも俺達がいなくなったら枯れてしまうのか?」
アニ「それは世話をする人がいなくてはね」
アニ(どうしてかなぁ)
エレン「もし帰ってきたとき荒れ果てていたらなんか嫌だな」
アニ「きっとまだあるよ。あなたならきっと」
アニ「それでこの実もその時は甘いのかもね」
アニ(不思議に思えるほど)
エレン「なんだよユミルみてーなこと言って・・・」
エレン「アニ口開けて」
アニ「なんで?嫌だよ」
エレン「いいから。じゃあ、あーって言ってくれよ」
アニ「仕方ないね」
アニ「あー」
アニ(いつもよりずっと)
エレン「ほらっ」ポイッ
アニ「うっ」
エレン「どうだっ全然甘くねーだろ」
アニ「・・・」スクッ
エレン「どうした?何か言ってくれよ」
アニ「・・・」ブチブチブチ・・・
エレン「そんなに採ってどうすんだ?というか何で無言なんだ」
アニ「ねっエレン口開けて」ニコッ
アニ(普通に話せるのは)
エレン「・・・」イヤイヤ
アニ「黙ってちゃわからないね」
アニ「ほらっいいから口開けて」
エレン「うー」
アニ「うーじゃないの」
エレン「勘弁してくれよ」
アニ「どうしようか。まぁ許してあげましょう」
エレン「ほんとか?」
アニ「ほんとほんと」
エレン「じゃあその手に持ってるやつは?」
アニ「ほおっておいてよ」
エレン「うん?」
アニ「うん」
エレン「・・・」
アニ「口開けてよ」
エレン「ははっ」
アニ「あはっ」
エレン「バカみてー」
アニ「ほんとだね。あっあのエレン。ちょっとお願い」
エレン「なんだ?」
アニ「もう一回笑って」
エレン「こうかっ?」ニッ
アニ「あっうん」
エレン「それで?」
アニ「それだけ」
エレン「手に持っているの投げてくるんじゃねーかと」
アニ「これもジャムにでもしてとって置くからね」
エレン「アニ」
アニ「・・・」コクッ
エレン「俺はずっと考えてみたりしたけど」
エレン「分からない」
エレン「俺は許せなかった。あのとき全てを壊したものを」
エレン「なによりも何も守れなかった自分が」
エレン「だけど」
エレン「俺は以前失くしたものがあってそれを今」
エレン「俺は失くそうとしているのをかって」
エレン「そんなのは二度としたくない」
エレン「後で願ってももう戻らない。分かってる」
エレン「何度も思っていた気持ちを思って」
エレン「そのまま行くんだ」
エレン「だから」
エレン「俺達と来ることはできないのか?」
アニ(あなたはいつもそんなふうに)
アニ(簡単に私ができないこと言ったり、してしまって)
アニ(嬉しくなって・・・本当に)
アニ(あなた達は私なんかに会わなければよかった)
アニ「ありがとう」
アニ「私はあなた達に会えて良かったよ」
アニ「あなたが戻ってきて私が生きていたらまた私と会って欲しいんだ」
アニ「そのときは海の話を星を見ながらみんなでしよう」
エレン「わかった。約束だな」
アニ「約束だよ」
アルミン「じゃあ行ってくるね」
ユミル「うん。そうか」
アルミン「二人はどうするの?」
ユミル「もう少しこの家を借りれないか交渉してみるさ」
ユミル「できたら一人一部屋だ」
ミカサ「広く感じると思う」
アルミン「エレン行くよ」
エレン「おう。アニ、ユミルまたな」
ユミル「またな。帰ってこいよ」
アニ「・・・」
ユミル「アニ」
アニ「また・・・ね」
ユミル「いっちまったな」
アニ「うん」
ユミル「まだ手を振ってるのか」
アニ「うん」
ユミル「バカか?」
アニ「うん」
ユミル「もうやめろよ」
アニ「まだ見えてるから」
ユミル「もう見えねーよ」
アニ「まだ見える」
アルミン「まだ見てるの?」
ミカサ「エレン前を見て」
エレン「だってまだ手を振ってるぞ」
ミカサ「それはエレンが見ているから」
アルミン「そんなに気になるのなら」
エレン「なんだよ」
アルミン「アニも一緒に来て欲しいって言わなかったの?」
エレン「言ったさ」
ミカサ「じゃあなぜ?」
エレン「アニもアニで考えがあって」
アルミン「はぁー」
ミカサ「まったくエレンは」
アルミン「やっぱりユミルの言うとおりだったよ」
アルミン「君ら二人だと強がりを言うだけだって」
ユミル「そんなに気になるか?」
ユミル「まぁ無理もないか。長い間一緒にいたからな」
ユミル「そこまで知り合うなんて考えもしないくらい」
アニ「こんな風に思うなら」
アニ「そんなに私達知り合う必要があったの?」
ユミル「分からないな。必要なんて」
ユミル「けどもうそんなことないんだ。ないんだよ」
アニ「何が無いの?」
ユミル「自分で解れよ。まぁ無理か」
ユミル「時間を重ねれば解るかもな」
アニ「ユミル」
ユミル「一緒にいたかったか?」
アニ「・・・いたい。いたいけど」
ユミル「やっぱり強がりか。お前ららしいよ」
アルミン「本当はきっとアニも一緒に来たかったと思うよ」
エレン「だってアニは」
アルミン「アニが僕達に告白したことを考えてみてよ」
アルミン「本当の意味で・・・その家族みたいになりたかったんだ」
アルミン「嫌われても憎まれてもいいって」
エレン「俺も一緒にいたいってアニやユミルと」
エレン「だけどあいつらが自分で決めたんだ」
アルミン「エレン」
アルミン「そんなの・・・知るかぁ!」
アルミン「僕は一緒にいたいんだ。海だって一緒に見るんだ」
エレン「アルミン?」
アルミン「子供みたいなバカなこと言ってるでしょ?」
アルミン「いいよそれで。そんなことなんてどうだっていい」
エレン「アルミン変わったな?なんつーか強くなったみたいだ」
アルミン「全然!僕なんて強くなれなかったよ一人でなんか」
アルミン「ねえ僕の願いはさっき言ったよ」
アルミン「エレン。君の願いはなんなの?」
ユミル「だったらそう願えよ」
ユミル「そのくらいの権利は私達にだってある」
ユミル「願えば簡単に叶うことだってある」
ユミル「それで掴めよ」
ユミル「今度こそお前の両手で」
アニ「今度?」
ユミル「いいからっ。お前のためと私のために」
ユミル「今は願いがここにあることを」
ユミル「疲れ果ててしまう前に信じてくれ。だからっ」
ユミル「そんな泣きそうな顔なんてするなよ」
アニ「あんたのほうが」
ユミル「泣いてねーよ。ちょっとあくびしただけだって」
エレン「俺は・・・」
ミカサ「エレンそんな顔をしないで。あなたがつらいと私もつらい」
ミカサ「私は覚えている。あなたがつらかったことを」
ミカサ「あなたが笑ったことを」
ミカサ「楽しかったことを」
ミカサ「だって私もそのとき同じことを思っているのだから」
ミカサ「いつもでもきっといつまででも」
ミカサ「私はうまく言うことができない」
ミカサ「けど言う」
ミカサ「どんなにこの世界がつらくたって私達は一緒にいこう」
ミカサ「今度は私から言わせてほしい」
ミカサ「そう・・・今度は私から言う」
ミカサ「家にかえろう」
アニ「ユミルだけど・・・だけどもうエレン達は行ってしまった」
ユミル「そんなときは」
ユミル「手を真直ぐ伸ばして前を見てみるんだ」
ユミル「その手の先にはあいつらが見えてくる」
ユミル「そうしたら手だって届く、触れる事だってできる」
ユミル「だってそうだろ?」
ユミル「私達はまだ一緒にいるから」
ユミル「繋がっているのは少しでも微かでも」
アニ「私達はまだ一緒にいる・・・」
アニ「そうだ。そうなんだね。まだ私達は」
アニ「ユミル」
ユミル「行って来い」
アニ「ありがとう」
ガチャ
アニ(扉が開いた!?)
エレン「アニ!」ハァハァ
エレン「俺達は・・・まだ一緒にいるよな?」
ユミル「おせーよ」
アルミン「やっと追いついた。あれっ?アニ固まっているね」
ミカサ「エレンもそうみたい」
アニ(どうしてだろう)
アニ(一歩も動けない)
アニ(ほんとに・・・強固な壁みたいに)
エレン「なぁアニ。俺の願いはえーと」
エレン「俺が見たいのは・・・その海で」
エレン「いや違うんだ・・・俺が見たいのはお前達で」
エレン「違う・・・俺が見たいのは」
アニ「ふふっ」
エレン「笑うなよ」
アニ「だって。どうしてそんなしどろもどろなの?」
アニ「いつかのようにはっきり言えばいいのに」
アニ「ねえ。しっかり私を見て」
アニ「私もあなたを見るから」
アニ「今度は目を伏せないでみるから」
エレン「おっし。じゃあ」
エレン「一緒に見るんだ何もかも。そうだな世界の果てだってその先だって」
エレン「俺達が想像したことみたいに」
エレン「俺達がしてしまった過去も」
エレン「それがつらかったら」
エレン「だれかから助けてもらえばいいって」
エレン「ミカサやアルミンやユミルにいつもみたいに」
エレン「いつもそうだったんだ。気付いてなかった」
アニ(ああ・・・やっぱり私は好きだ。好きなんだ)
アニ「エレン。手を出して」
エレン「こうか?」
アニ「そう。じゃあ掴むから」
アニ「掴んで」
ギュ
ユミル「よっし!」グッ
アルミン「うわっ」ビクッ
ミカサ「ユミルうるさい」
ユミル「悪い悪い。あまりにもここまでが長かったから」
アニ「私達は続きを見れる?」
エレン「もちろんだろ」
ユミル「そりゃ私達は同じ屋根の下で。なっミカサ?」
ミカサ「勇気を少しもらう。そうでしょエレン」
エレン「話をしながらさ。アニは」
アニ「足跡を辿りながら。アルミンも」
アルミン「うん。同じ景色をみんなで」
エレン「見ることができるから」
・
・
・
アルミン「じゃ行こうか」ガチャ
ミカサ「忘れ物は?」
エレン「ないだろ?」
アニ「ないよ」
ユミル「もう暖かいな」
アルミン「そうだね」
ミカサ「うん。前よりずっと」
アルミン「エレン戸締りを」
エレン「おう」
バタン…カチャ
これで終わりです。ありがとうございました。
乙。おもしろかったよ。
乙
長い間楽しませてもらったよ
乙
ハッピーエンドでよかった
ありがとうございます。元々このSSは同時期に書いていたアニ「私の両手」が
バットエンド(といってもほぼ原作通りですが)だったのでその裏返しで書いていたものです。
ですがこんなにも長くなるとは思いませんでした。このシリーズ自分で見返すとどの話も地味だったなと思いますが
でも終らすことができて良かったです。
乙乙
このシリーズほんとに好きだったよ
また何か書いて欲しい
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