モバP「楓さんに告白する」 (76)
モバP 「楓さんのすきなうたって何ですか?」 楓「えっ」 の続きです。
前スレ:モバP 「楓さんのすきなうたって何ですか?」 楓「えっ」 - SSまとめ速報
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「そう決めてからもう三ヶ月か......」
昼休みに一人屋上のベンチで呟く。
自分は雪の降ったあの日に楓さんに自分の気持ちを伝えると決めた。
フラれてもいい。そう決めた。
が、自分はそれを行動に移せていない。
何故か。それは楓さんのスケジュールだ。
楓さんは人気アイドルだ。
彼女のライブチケットは即日完売で、CDは必ずオリコン上位。
そんな彼女はテレビ、雑誌、ラジオなどでひっぱりだこでハードスケジュールなのだ。
楓さんに休みの日がないわけではないのだが。
要は二人でゆっくり話す時間がないのだ。
......違うか。
それは単なる言い訳だ。
本当の理由はまだ告白の言葉が決まってないからだ。
楓さんのことは好きだ。しかし、この気持ちを表現する言葉が見つからないのだ。
「俺、理系だしな......」
「理系がどうかしたんですか」
「あ、ちひろさん」
声がしたので後ろ向くと、黄緑色の事務服を着たちひろさんがいた。
「あと5分で昼休みが終わるから呼びに来たらいきなり理系って......どうしたんですか?」
「いや~その......」
「告白の言葉ですか?」
「ハハッ......お察しのとうりです」
そう言ってベンチから立ち上がる。昼休みあっという間だったな。
「プロデューサーさん、三ヶ月前に諦めないって私にいいましたよね」
「はい......すいません」
「はぁ~それでも男ですか」
「うっ、返す言葉がございません」
「それじゃ私も諦められないじゃないですか.......」
「何か言いましたか? ちひろさん?」
「ひゃっ、い、いや何もありませんよ。あはは......」
「?」
「ほ、ほら、早く仕事に戻ってください。愛しの楓さんが待ってますよ~」
「あまりいじらないでくださいよ」
そう言われて少し急いで事務所に戻る。
事務所のソファーにその愛しの彼女はいた。
「プロデューサー遅いですよ」
そう言って楓さんは頬を膨らませる。その姿はまるで子供のようだ。
「すいません。考え事をしていて」
「考え事?」
「楓さんのことです」
「私?」
「ええ。 たった一年で人ってこんなに変わるんだな~って」
「三年じゃなくて」
「一年です。 ほら、雑誌の撮影いきますよ」
「はい」
つくづく思う。
自分は本当に嘘つきだと。
「お先に失礼します」
そう言ってからスタジオを出る。
「予定より早くに撮影終わちゃいましたね。プロデューサー」
「そうですね」
楓さんがそう言ってくる。
雑誌の撮影は楓さんの言ったとように早く終わった。
しかも、今日の仕事はもうない。
いやな予感がする。
この時間に暇ができるということは......
「プロデューサー飲みに行きましょう!」
「やっぱりそう来ますか~」
彼女は満面の笑みでそう言った。
「やっぱりって何ですか」
「だって楓さんいつもこの時間になると飲みに行こうって言うんで」
「いいじゃないですか! 最近忙しくて二人で飲む機会がなかったじゃないですか!」
「確かにそうですけど.......」
「行きましょうよ!」
そう言われて少し考え込む。
明日は楓さんはオフだ。
なら.......
「はぁ~もう飲みすぎないでくださいよ」
「やった!」
そうやって無邪気に笑う彼女の横で自分は覚悟を決めていた。
次は明日。
おっつおっつ
楓さんかわいいなぁ!
楓さんに初めて会った居酒屋。
そこで向かい合うように自分と楓さんは座っている。
理由?それは......
「今夜は飲みますよ!」
「はいはい」
飲むため......でなく、告白するためなのだが楓さんは完全に飲む気である。
楓さんが明日オフだから告白してもワンクッションおけると踏んだのだが......
このままでは告白はできなさそうだ。
「私は日本酒頼みますけど、プロデューサーは?」
「ビールでお願いします。 ていうか、自分が頼むんですけど」
「え~ 私が頼みますよ」
「ダメです。 いくら変装してるとはいえバレる可能性があることはさせませんよ」
「プロデューサーのケチ」
「駄々をこねても無駄ですよ」
そういう楓さんは頬を膨らませている。
二人で飲むと決めてからは一度事務所に戻り楓さんに変装をしてもらった。
といってもメガネと帽子を深めにかぶってもらっているだけなのだ。
つまり、少しでも見られるとバレてしまう可能性があるのだ。
だから、自分が頼むと言っているのだが......
「すいません。注文お願いします」
「はぁ~。 聞く耳持たずですか」
「ため池でため息をつく......ふふっ」
「二点」
ダジャレを言ったあとに結局楓さんが注文をしてしまった。
幸い、店員さんは気づいていないようだった。
それよりも一つ気になることがある。
それは、
「楓さん、なんか今日やけにテンション高くないですか?」
「へ?」
「いや、まだお酒も飲んでないのに随分と話すなって思って」
「そ、そうですか。 い、いや~変だな~」
「何か隠してます?」
なんとなくそんな風に見えたので聞いてみる。
「そ、そんなことないですよ~ あっ、私ちょ、ちょっと御手洗に行ってきます」
そう言って楓さんは席を外す。どうやら様子がおかしい。
(今日、なんかあったけ?)
今日は特に特別な日ではない。
なので、サプライズとかではない......だろう。
なんだ?
思考を加速させて楓さんが何を考えているかを察しようとする。
(楓さんはトイレに行ったからそれに関連すること? ......あっ)
「Girls day?」
わざわざ得意でもない英語で呟く。
(そっか、そういうことか。 だからか。 納得)
~高垣 楓~
高垣 楓25歳。
今、私はこれまでの人生の中でも類を見ない勇気を振り絞っている。
が、
(やっぱり無理だーーーーーーーーーーーーー!)
御手洗の鏡で自分の顔を見てさらに恥ずかしくなる。
彼は気づいているのだろうか。
いや、気づいてないだろう。
あの人は鈍感だから。
3分ほどで楓さんがトイレから帰ってきた。
「大丈夫ですか楓さん?」
「はい......大丈夫です......」
「無理しなくていいんですよ?」
「いや、無理はしてないんですけど......」
そんな話をしていると店員さんが注文したものを持ってきた。
店員さんはまだここにいるのが人気アイドル高垣 楓だと気づいてない。
案外バレないもんだなと思っていると楓さんが日本酒の入ったグラスを自分に近づけてきて
「プロデューサー。 乾杯」
と言った。
そう言われ自分もグラスを近づけ
「乾杯」
はぁ。 どうやら今日は本当に告白できそうにない。
今日もここまで。
次は明日。
期待待機
「このイカ、イカしてる......ふふっ」
「一点」
「つまみはやっぱりスルメにスルメ(べ)き......ふふっ」
「0点」
「ぶー」
飲み始めてから3時間。楓さんは酔い始めたようだ。
初めて会った頃のように頬を赤く染めている。
「しかし楓さんお酒強いですね」
「プロデューサーだって強いじゃないですか」
「楓さんほどじゃないですよ」
「酔っ払いは酒られる......なんちゃって☆」
「............」
「そろそろお開きにしますか」
会話が成り立たなかったのでそう言うと
「もうちょっとだけ! お願いします! プロデューサー!」
楓さんは上目遣いでそう言う。
......男は女の涙と上目遣いに弱いのだ。
「もうちょとだけですよ」
「やった! プロデューサー大好き!」
そう言われドキッとしてしまう。
そしてある考えが頭に浮かぶ。
今なら
今ならいけるんじゃないか
酔っている今なら。
「......楓さん」
「はい! なんでしょう!」
どうやら相当上気分だ。声が弾んでいる。
「恋......どうなりました」
「えっ」
「だから恋ですよ、恋」
「あ~はい。 その~」
「もう告白しました?」
「いや~そのまだなんですよ。 アハハッ......」
「そう......ですか」
楓さんの声に力が抜けていく。
どうやら告白できないことを気にしているようだ。
どうする
やめるなら今だぞ
言葉は
覚悟は
決まったか?
俺
「楓さん」
「何ですかプロデューサー?」
「俺が事務所に入った経緯知ってます?」
「えっと......知らないです」
「楓さんと同じです」
「えっ」
「俺も人付き合いが苦手で」
「会社で腫れ物扱いされて」
「やめたんです」
「で、社長にスカウトされて、この事務所に入ったんです」
「そう......だったんですか」
「はい」
「小学校も中学校も高校も大学も前の会社でも」
「どんな時も一人で生きてきた」
「自分に自信がなくて」
「俺なんかがいたらって......ずっと思って」
「そう生きてきました」
「自分を偽ってきました」
「けど、今は違う」
「社長やちひろさんアイドルのみんな......そして」
「あなたがいる」
楓さん
あなたを幸せにできるのは俺じゃない
でも
俺を幸せにできるのは
俺が愛したいのは
俺が一緒に生きていきたいのは
あなたなんです
あなたがどんなに変わっても俺はあなたを愛します
俺にはもうあなたしか考えれない
楓さん
好きです
俺は嘘つきだ。
どんな時も一人で生きるために嘘をついてきた。
そんな嘘つきの偽りのない言葉。
それはどんな言葉よりも嘘くさい言葉。
あなたはそれを受け止められますか。
To the next story.
遅れてすみみません。
自分はお酒を飲んだことがないので楓さんの酔いの具合がおかしいかもしれませんが、許してください。
このあと別にするか迷う......
乙
このままここで続けて良いと思うよ
少なくとも告白が成功して実るまでは同スレ内で良いと思う
続きはメイプルポイズンで!
書き忘れてましたが、続きは明日か明後日には投稿します。
モバP 「楓さんの答えは?」
「プ、プロデューサー? よ、酔ってるんですか」
楓さんはどうやら混乱しているようだ。
それもそうだろう。
いきなりあんなことを言ったら。
楓さんの頬はさらに赤く、紅く染まっていた。
「いや、酔ってないです」
「で、でもい、一人称が」
「元々俺の一人称は『俺』です」
「そ、そうなんですか......」
「あ、ドッキリ! ドッキリですねこれ!」
「いや、違いますけど」
「ち、違いますか......」
「驚かせてすいません。 でも、今の言葉に嘘は一つもないです」
「好きです。 楓さん」
そうもう一度言うと楓さんは頭を下げてしまった。
どうやら俺と目も合わせたくないらしい。
「それが答えですか楓さん」
......返事はない。
フラレたか。
それもそうか。
楓さんには好きな人がいるわけだし。
「仕事はちゃんとするんで気にしなくていいですよ」
「楓さんと飲んでて楽しかったです」
「さようなら楓さん」
俺だって子供じゃない。
この世界には叶う恋より叶わない恋の方が多いのだ。
あきらめよう。
伝票を持って帰る。
最後くらい格好つけさせてくれ。
家に帰ると心の奥底に抑えていた感情がこみ上げてきた。
この感情はなんだ?
怒り?哀しみ?悔しみ?
いや、違う。
これは感情じゃない。
感情なんてない。
あるのは虚無だ。
だから、ここから先の人生には希望なんてない。
絶望さえない。
ただ無意味に時間を浪費していく。
ああ、人を本当に好きになるってこういうことか。
もう寝よう。
意識があるのは辛いから。
「プロデューサー」
聞きなれた声が後ろから聞こえ振り向く。
声の発信源である彼女は幸そうに男と手を繋いでいる。
「私、結婚します」
彼女は男の人と手を繋ぎながらそう言った。
「楓、行こ」
男は彼女ににそう言う。
「うん!」
彼女は嬉しそうに返事をする。
待ってくれ
待ってくれ
「待って、楓さん!」
「ッ!ゆ、夢?」
全身が汗まみれで起き上がる。
「ハァハァ......」
「クソ!」
「諦めれてないのかよ......」
「俺」
深夜にそう呟く声は彼女には届かない。
自分はまた屋上にいた。
楓さんが休みでも自分は休みじゃない。
一人称を元に戻し、いつもどうり出社した。
「............」
終わったのか。
全部。
全部、全部終わった。
「なに全部終わったみたいな顔しているですか」
「ちひろさん」
彼女はまた後ろにいた。
「そんな顔してますか自分?」
「してます」
どうやらもう得意の嘘もつけないようだ。
「なにかあったんですか?」
「......」
そう言われ答えるか迷った。
言ったら何かが崩れる気がしたからだ。
「楓さんに告白したらフラれた......ですか」
「......」
言葉にはしないがちひろさんは察したようだ。
「それで落ち込んでいると」
「女ですか」
「まぁわからなくもないんですけどね」
「......」
「死なないでくださいよ」
「あなたが死んだら悲しむ人がいるんですから」
そう言い残してちひろさんは去っていった。
そうだ、自分はもう一人じゃない。
仕事を終えて家に帰る。
帰り道がいつもより長く感じる。
そうすると考え事も多くなる。
これからどうするか。
そればかりが気になる。
しかし、そんな思考を止める出来事が起こった。
それは
(ん?)
(家の前に誰かいるぞ)
そう家の前に誰かいるのだ。
(誰だ?)
そこにたのは
(楓さん!?)
急いで家に向かう。
「あ、プロデューサー」
「楓さんなんでここにいるんですか!?」
「いや、その......」
楓さんはそわそわしていた。
その姿を見て
「何か言いに来たんですか?」
「......はい」
急いで家に向かう。
「あ、プロデューサー」
「楓さんなんでここにいるんですか!?」
「いや、その......」
楓さんはそわそわしていた。
その姿を見て
「何か言いに来たんですか?」
「......はい」
「何ですか楓さん?」
ちゃんとフラれるのか。
そのほうがいい。そしたら、諦められる......と思う。
そんなことを考えていると、楓さんは声を振り絞って、
「プ、プロデューサー」
顔を赤らめて、
「私もあなたのことが」
「す、好きです」
「私を幸せにできるのもあなただけです」
と言った。
..................
.........
......
はぁ?
ひぃ?
言葉の意味がわからなかった。
「ずっと一人だった私を救ってくれたあなたが好きです」
「だから、その」
「ちょ、ちょと待ってください」
「昨日、自分のことフリましたよね?」
「えっ」
「いや、だって自分と目を合わせなかったじゃないですか」
「あ、あれはいきなり過ぎてその」
はぁ?
「じゃあ、それが答えですかって聞いたときに返事しなかったのは」
「それ私聞こえてないです......すいません」
はぁ?
「自分が帰っても何も言わなかったのは」
「気づきませんでした......すいません」
驚きの事態に頭は完全にショートしている。
というか
「楓さん好きな人いましたよね?」
「はい......それプロデューサーです」
唖然。言葉が出ない。
つまり
「フラれたっていうのは自分の勘違いってこと......」
「そうなりますね......」
「そして、楓さんも自分のことが好きだと」
「言わないでください......恥ずかしいですから」
そう言って楓さんは頬を紅くする。
そうすると何かとおかしい。
「え、楓さん自分に恋をどうしたらいいか聞いてきましたよね」
「は、はい」
「好きな人にどうしたらいいか聞いたんですか」
「そうです......」
「アハハハハ......」
楓さんは照れを隠すように笑った。
そうするいろいろと辻褄が合うのだが......
......
なんだこれ。
全部、自分の勘違いか。
心が満たされていくのがわかる。
幸せだ。
ほんの少しだけ不満はあるが
それは
「早く言ってくださいよ楓さん」
「う、うるさいです......プロデューサーだって言ってくださいよ」
楓さん不満そうに頬を膨らませた。
その姿は子供みたいだ。
まぁ、二人とも人見知りなのだ。
仕方ないか。
「楓さん」
「何ですか......プロデューサー」
「好きです。 誰よりも」
「な、何ですかいきなり」
「いや、なんとなく」
「......」
「......」
「「プッ、アハハハハハ!!」
二人で顔を合わせると笑いが起きた。
しかし、
「どうしますこれから?」
そう。楓さんはアイドルの恋愛は御法度なのだ。
「そうですね......駆け落ち?」
「それは無しで」
「ロマンチックなのに.....」
「どうしましょうか」
悩みに悩んだ末に行き着いた答えは。
「楓さんが総選挙で一位に、シンデレラガールになったら」
「結婚しましょう」
「えっ」
「それまでは二人とも頑張るってことで」
「でも......」
楓さんは不満なようだ。
「『結婚』はです」
「付き合うのはバレないようにしましょう」
楓さんは一瞬だけ驚いた顔をしたが、また、いつものように
「おぬしも悪よのう」
と返してくれた。
だから自分もこうやって返すのが筋だろう。
「いえいえ、楓さんほどでは......」
「でも、できるんでしょうか私なんかに......」
ボケてはいたが、楓さんは将来が不安のようだ。
だから励ましの言葉をかける。
夢を叶えるために。
「できますよ」
「俺達なら」
できる。楓さんと俺なら
「そう俺達が」
「No.1です」
そう言って人差し指を上にあげる。
「......」
楓さんは俺のテンションに戸惑ったようだが、少しして
「......はい!」
楓さんの返事はまた子供のように元気だ。
さすが25歳児。
そんなことを思っていると
「プロデューサー」
「これからもプロデュース」
「お願いします!」
そう言われ俺も子供みたいに
「はい!」
って返す。
ああ、これからどうなることやら。
でも、幸せな人生が待っていそうだ。
To the final story?
いつもどうり、じゃなくていつも「どおり」
これでとりあえず......終わり?
次は楓さんが総選挙で本当に一位になったら書きたいと思います。
みんな短い間ありがとうございました!
みなさんのおかげでいろんなことを知ることができました!
また、会えることを楽しみにしてます!
それでは!
またここで会えると良いな
総選挙の結果見たら話が浮かんできました。
なので、もしかしたら短い話書くかもです。
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