モバP「人肌を感じたい」 (48)


ちひろ「……ああ、いつもの発作ですか」ハァ

P「誰が発作ですか。いや、世間一般的な話で、人肌が温かいってのは何故なのかなと」

ちひろ「どうしてって……そりゃあ、温かさの意味合いが違いますよ。優しさとか、安心感とか、そういうのが心の温度として感じるんです」

P「言う割にちゃんと答えてくれるんですね」

ちひろ「プロデューサーさんが訊きましたからね」

P「ありがとうございます。そこで、俺達は最近温かさを感じているんでしょうか?」

ちひろ「……耳痛いなぁ」

P「そうなんです。そういう意味では、俺達の心はここずっと冷えたままなんですよ」

ちひろ「子供……彼氏……結婚……お母さんからの電話……」ボソ

P「自分で言うのもなんですがそんなトシじゃないでしょうよ」

ちひろ「今の仕事量を考えて将来余裕ができると思いますか?」グス

P「思いません」キリッ

ちひろ「それもこれもどこかのスーツ着たイケメンが未来のお姫様を招待してくるから……」ジト

P(褒められてるやら貶されてるやら)



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ちひろ「……それで、どうしてこの話題を?」

P「寂しいですよね、俺達。仕事が恋人で毎日朝早くから夜遅くまで家を出て」

ちひろ「あまり考えたくないですけど」

P「だからこそ! 俺達は! 休息を得たい! 体のそこから温まるような癒やしが欲しい!」ドンッ

ちひろ(……ああ、そういうことか)

P「というわけで、ちょっと人肌を感じに行ってもいいですか」

ちひろ「……行くな、といっても聞かないんでしょう?」

P「漢には、いかなる壁があろうとも、進んでいかなきゃいけないんです」キリッ

ちひろ「知ってます。……いってらっしゃい」

P「ありがとうございます。では――いざ!」ガタッ

 ガチャコン!

ちひろ「……」

ちひろ「……やっぱりいつもの発作じゃないですか」コトン




 ・・・

 ――休憩室

 ガチャ

P「誰かいるかー」

加蓮「あ、Pさん。どしたの」

奈緒「んぐ……よっす」ゴク

凛「お疲れ様、プロデューサー」

P(トライアドプリムスのメンバーか……初戦としては強敵だが)

P「ああ、お疲れ様。……全く、ハンバーガーの臭いが部屋に充満してるぞ」

奈緒「加蓮がどうしてもって聞かないもんでさ。後処理はきちんとするよ」

加蓮「あっれー、シェイクが食べたいって言い出したのは誰だっけー」

凛「あっれー、せっかくだし二個頼んじゃおーとか目を輝かせてたのは誰だっけー」

奈緒「バッ……言ってないし」プイ

P「隠さなくてもいいぞ。知ってるし」

奈緒「何でPさんが知ってんだよォ!?」ドキッ

P「うん、今知った」コク

奈緒「ひ、引っ掛けやがったなぁ…!」プルプル

P「まあ奈緒と長くも付き合ってりゃそれぐらいわかるよ」

奈緒「……う」テレ

凛「流石だね」ボソ

加蓮「ね」コク




P「ところで、今大丈夫だったか?」

凛「うん、ちょっと遅目のお昼ごはん食べてるところだから。仕事の話?」

P「仕事というか……いや、ある意味使命なのかもしれん」

奈緒「どういうことだ?」

P「人には、忘れられない本能というものがある。忘れてはいけない記憶というものがある。わかるか?」カツカツ

加蓮「いきなり何の話…?」

P「そう、人には生まれてまもなくから、温かみを知る。愛する母の腕の中や尊敬する父の背中に抱かれて子供は育っていく」カツ

凛「……そうだね。私達も、両親が居たから今ここにいる」コク

奈緒(あ、ついていくんだ)

P「だが、人は忘れていく。離れて自立していく程、人は本来の温かみから離れ、無機質な暖に切り替える。……お前たちも、忘れてないか?」クルッ

加蓮「……そうだけど、それが自立でしょ? 成長することは嬉しい事じゃないの?」

P「確かにな……。だが、俺は今思うんだ――」スタスタ

 ダキッ

奈緒「ひゃあああっ!?」ポロッ

P「大人である今だからこそ、温かみが一番必要なのだとッ!!」

凛「」

加蓮「」




 ・ ・ ・


l「ふぁい、ふみまへんでひた……」ボロッ

加蓮(文字が変形してる)

凛「ってー、さいってー! 女子高生にいきなり抱きつくとかばっかじゃないの!」

P「大人だって温かみを感じたくなる時ぐらいあるだろ!」ニョキ

凛「知らないよ! 大人じゃないし!」

P「……しかし困った、まさか奈緒が黙るほど嫌だったとは」ウウム

凛「……嫌、というか」ボソ

加蓮(これは……)チラッ

奈緒「……」プスプス

凛加蓮(意識が昇天してる……っ!!)ドキ

P「奈緒は結構寂しがり屋だからわかってくれると思ったんだけどなあ……」

凛「も、もう。こんなに女の子のプロデュースしておいて、そんなこともわからないの?」

P「そうはいっても、いつもはだいたいこんな感じでやってたからさ」

凛「あ、自覚はあるんだ」

加蓮(……私にはわかる。凛はきっと時期を見定めてるんだ)ゴクリ

加蓮(じっくりと見て、違和感のないタイミングを狙って、自然に、味わおうと……)

加蓮(でも、それじゃやだ。私だって同じだから――なら、今しかない!)グッ


加蓮「仕方ないなー、ほらっ」バッ

凛「加蓮!?」ビク

加蓮「私、Pさんならいいよ。私も温かさ……欲しいし、ね?」ニコ

P「加蓮……そうか。ありがとう」

凛「ちょ、ま――」

 ダキッ

加蓮「――!」ボフッ

凛(くっ……自然な流れを作っていたら先を越されるなんて!)




 モゾ

加蓮(あ、そういえばハンバーガー食べてる時だから臭いとか大丈夫かな)

加蓮(今は甘い香りじゃないから嫌われないかな)

加蓮(ああ、こうなるなら別な物にしておけばよかった……)

加蓮(……でも、Pさんの香りに包まれてるんだ、私)

加蓮(少し、男の人の臭い。でも私達に気を使って清潔にしてくれてる。良い匂いがする)スンスン

加蓮(これがPさんの匂い。Pさんだけの、特別な香りが、私を包んで……)ギュ

加蓮(包まれて……ふわぁ)

P「……温かいな」ギュ

加蓮「……うん」トロン

凛(あ、堕ちた)




 ・ ・ ・

奈緒「」

加蓮「ふぁ……」

凛(一番最後になっちゃったな……ま、今回はいいか)

P「ふぅ、加蓮成分をしっかりチャージしたぞ。良い温かさだった」

凛「それって普通口に出して言う?」ジト

P「言わなきゃ伝わらないだろ?」

凛「それを伝えてどうするのさ……」

P「まあそうもあるがな。でも、いつかは伝えなくても伝わる関係になりたいもんだ。辛い時、何も言わず支えてくれる存在っていいと思わないか?」

凛「まあね。私はすぐ会える距離だけど、他のみんなはそうじゃない子も多いし。いざという時は、私だってその立場になれたらいいなと思うよ」

P「是非なってくれ。それをみんな望んでるから」ニコ

凛(……よし、今だね)

凛「じゃあ、教えて。心で伝える方法を。言わなくても、安心させられるような温かさ……持ってるんでしょ?」

P「凛……そうだな。冷えない内に」スッ

 ダキッ

凛「きっ……」ギュ

P「き?」

凛(きたああああああああああ!)ギュウウウ




P「ちょ、凛強いって」モゾ

凛(車の中よりも事務所のソファで隣に座った時よりも包まれてるこの感覚、この空間!)ギュウウウ

P「一体どうしたんだ凛…?」

凛(他の男と同じような感じでもどこか確実に違う、この人だけの匂い……二人の匂いがついちゃってるのが残念だけど、それもプロデューサーらしいかな)

P「……全く」

凛(落ち着いた声。事務所は高い声ばかりだから、プロデューサーの声がよく聞こえて、体に響いて……)

P「そこまで強くされると、俺も嬉しくなるな」ナデ

凛(そして仕草や考えもずっと優しくて、ぶつかっても受け止めてくれる大きさが……頭…撫で……)コトリ

凛(うん、幸せに溺れて溺死しちゃいそう。いやしちゃおう)

P「……凛? おーい凛、どうしたー?」ユサユサ

凛「」

P「……へんじがない、ただのしかばねのようだ」

期待



 ・ ・ ・

ちひろ「……それで、戻ってきたわけですか」

P「ええ。もしかしたら日々の仕事がかなり疲労させてるのかもしれません」

ちひろ(ないです、ない)

P「かといってスケジュールも空けられないし……どうしたもんか」

ちひろ「だったら、もっとあの子たちの近くにいてやってくださいよ。安心できるでしょう?」

P「それもそうか……あれだけぐっすり眠ってるんだ、どこか寂しさもあったのかもしれませんよね」

ちひろ(全部外部から見てたから言えますけどそれはない)

ちひろ「まあ、仕事が近くなったら起こせばいいでしょう。発作は収まりましたか?」

P「発作って……まあ何となくもう少し欲しいかな、と」

ちひろ「それじゃあ今第三レッスンルームに人がいると思うので行ってみてはどうでしょう」

P「おお、人の居場所も把握してるとは、流石ですねちひろさん」

ちひろ(このPCから見えますからね)

ちひろ「それほどでも。というかプロデューサーさんこそ程々にしてくださいね」

P「勿論です。それじゃ!」スタスタ

 ガチャ

ちひろ「……まあ、抑える気があるならまずしてませんけどね」




 ・ ・ ・

 ――第三レッスンルーム

 ガチャ

P「こんこん」

ルキトレ「いますよー、ってプロデューサーさんじゃないですか。何かありました?」クルッ

P(ツッコまないのな)

P「いえ、ちょっと野暮用で」

ルキトレ「野暮用……ですか? あ、アイドルの子たちなら今休憩中で外にいますよ」トコトコ

P「ああ、すいません。用は貴方にあるんです」

ルキトレ「私…ああ、レッスンの内容の事ですね! わかりました、何でも聞きますよー!」

P「残念ながら、仕事の話じゃないんですよ」

ルキトレ「へ、へ? 仕事じゃないって……私個人にって……ことですか?」オロ

P「そうです」ニコ

ルキトレ(……ま、まさかこれって、わわ私にプライベートのおさそ……うそ、そんな)ドキドキ




P「最近、疲れてませんか?」

ルキトレ「え、疲れてる?」

P「はい。こっちもそうですけど、教えてるトレーナーの人たちも休みなく働いてもらってますし、もしかして疲れてるんじゃないかなと思いまして」

ルキトレ(どういうことなんだろう……確かにお休みすくないし、雑用多いしで疲れてるけど)

ルキトレ「ま、まあトレーナーとして生きている以上、疲れてるなんて言えませんよ」

P「でもまだ貴方は19歳の少女だ」トン

ルキトレ「ふぇ!?」ドキッ

ルキトレ(プロデューサーさんのて、手が私の肩に置かれて……)カアア

P「姉妹の一番下で、お姉さんたちに囲まれて大変だろうし、レッスンするアイドルも年上も多かったりで気苦労が多いはずです」

ルキトレ「は、はいぃ……」ドキドキ

P「だからこそ、たまには甘えても文句はありませんよ」

ルキトレ「……ありがとうございます」コク

P「そこで……俺で良ければ相手になってもいいですか?」

ルキトレ「え、えぇ!?」ビク

P「たまには、こうやって――」

 ダキッ

P「お姫様のように優しく、とか」ボソ

ルキトレ「………っ!!?」ボンッ!


ほほぉ…ほほぉ…!!



ルキトレ「え、いやちょ、や……私レッスン中なので汗かいてて!」グルグル

P「いい匂いですよ」ギュ

ルキトレ「で、でも私なんかじゃプロデューサーさんとは!」アワワ

P「アイドルかアイドルじゃないかで違いはありませんよ。むしろアイドルにしたいぐらいいです」

ルキトレ「そりゃあ羨ましいしプロデューサーさんと一緒に仕事したり営業したり一緒の車の中で話したりお出かけしたりしてていいなーなんてことも思いましたけどぉ!」

ルキトレ(あれ、私…何を言って)

P「でも許されない、と」

ルキトレ(でも、なんだろう……温かいな)ボフ

ルキトレ「……はい」コクリ

P「俺と出会うタイミングが少し遅かったのが残念でなりません」

ルキトレ「そーですよ…もし貴方ともっと早くに会えていたら……私も」ボソ

P「だから、少しぐらいは許されてもいいんです」

ルキトレ「え?」ドキ

P「誰だって理不尽というものがありますし、誰だって少なからず大きな我慢を強いられるんです」

ルキトレ「……」

P「そのかわり、我慢した分くらいは肩書を棄てて遊んだって、許されるんです」

ルキトレ(……プロデューサーさんは私の事を案じて……)ドキドキ

ルキトレ「じゃ、じゃあ……お願い、聞いてもらってもいいでしょうか」ギュ

P「勿論。相手は俺でいいですか?」

ルキトレ「プロデューサーさん以外はいないです……その、もう少しだけ――」ボソ




 ・ ・ ・

P「ふう」ゴク

ちひろ「お疲れ様です。どうでした?」

P「いえ、人には知らず知らずのうちに疲れとかが溜まってるものなんだなと」

ちひろ「そりゃあ、こうやって働いてるとそうなりますよ」

ちひろ(だからといって口説けとは言ってませんけど)カチカチ

 ―――

ルキトレ「わ、私あんな大胆な……ひゃぁあぁ」バクバク

笑美「休憩から帰ってきたらどしたんや一体……」アセ

 ―――

P「しかし、それにしても温まるというのは良いことですね。幸せになります」

ちひろ「……それで、満足したんですか?」

P「そうですね、俺も久しぶりにハツラツとしてきたような気がします。よし、仕事仕事!」ガバッ

ちひろ「あ、一応満足したんですね」

P「欲望にキリはありませんから」キリッ

ちひろ(キメ顔で言うことじゃない)

完全に勢いだけのSSおわり


誰か続き書いてもいいのよ(ニッコリ)

乙!
もっと続きを書いてもええんやで(ニッコリ)

ふみふみ書いてもええんよ(ニッコリ)

北条加蓮(16)
http://i.imgur.com/VDbYvwA.jpg
http://i.imgur.com/NzmsUdN.jpg

神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/QEhKiif.jpg
http://i.imgur.com/mt9UCBf.jpg

渋谷凛(15)
http://i.imgur.com/SfIqMF7.jpg
http://i.imgur.com/beyGOj7.jpg

ルーキートレーナー(19)
http://i.imgur.com/3K0mSUi.jpg

難波笑美(17)
http://i.imgur.com/yntrLuh.jpg
http://i.imgur.com/saV2nii.jpg

ここは乗っ取り禁止や

まだまだいける

さあ次は大人組を書くんだ

難波ちゃんを書いてくれても良かったんだぜ?

>>23
ごめんなさい(´・ω・`)

乙女なきらりが見たいです

どうでもいいが腹筋したら死ぬIDだな

ありーー橘さんを忘れてませんか?

早苗さんに後ろから抱きかかえたいです。
身長差30cmほどあるときついが

橘ァさっさと寝ろ

美嘉!美嘉!

>>27
そこはわた橘さんだろうが…

みくねこの反応を見てみたい

ニュージェネの2人お願いします

おつー

ルキトレちゃん滅茶苦茶可愛いな

次は清良をお願いします



 ・ ・ ・

 ――談話室

 ガチャ

響子「少し休憩――っと、あれ、Pさん。どうかしたんですか?」キョトン

P「ん、と…その声は響子か。いや、特に何かしてるわけじゃないよ」

響子「……その右手に持ってるワイパーは何かにあたらないんですか?」

P「え、あ、あー……まあ、気がついたから」ポリ

響子「駄目じゃないですかPさん、掃除くらい誰かに任せないと! 疲れちゃいますよっ」

P「別に義務でしてるわけじゃないさ。あくまで気分転換だから、な?」

響子「それでも、Pさんにはゆっくりと休んでもらいたいです。いつも働き詰めですから……」

P「そうか……気を遣ってくれてありがとな、響子」

響子「いえ、別に大したことじゃありませんよー。私、掃除は好きですし!」トン

P「それでも、当たり前の空間を当たり前の状態にしてくれているのは、いつも響子だからな。常々言っておきたいんだ」

響子「……そんなストレートに言われると、照れちゃいますね、あ、あはは……」テレ




P「あー、でも掃除しないとなると、休憩時間は何をしようか……仕事でもするか」

響子「だーめーでーすーっ。言ってるそばから、もう……」

P「そういう性分なんでな」

響子「体には気をつけてくださいよ――あ、そうだ。私にできることがあったら何でも言って下さい! 何でもやっちゃいます!」エヘン

P「何でも、か……」

響子「Pさんのお仕事はお手伝いできませんけど、癒やすくらいなら私にだってできるはずです! はいっ、何かありますか?」

P「そうか、じゃあ――」スッ

 ダキッ

P「少しだけ、こうさせてくれ」ギュ

響子「……え?」キョトン



響子「あ、ああああのPさん!? いきなり抱きついてきて何を――」

P「……響子の手、冷たいな。…教えてくれ。響子はいつ事務所に来た?」ニギ

響子(ひゃっ……私の手が握られて)

P「多分、外から帰ってきたばかりなんだろう。今日は寒かったからな」

響子「は、はい……今日は、久しぶりに寒かったです」

P「響子。そんな冷たい体で、小さい体で、一体どこまで頑張るんだ?」

響子「…それくらいしないと、役立てないじゃないですか」

P「誰が役立たないといけないなんて言った?」

響子「え?」

P「この事務所には迷惑かけまくる子がいくらでもいる。それでも十分やっていってるんだ、響子がそこに収まっている道理はないぞ」

響子「私、好きなんです。みんなが楽しくやっているのを見るのが。そのためには、場所がキレイじゃないと、みんな楽しくないじゃないですか」ボソ

P「だが、それは響子がやらなくても済む話だ。……いいか、響子が俺を労ってくれるのと同じぐらい――いや、それ以上に、響子にも快適に過ごして欲しいんだ」ギュ

響子「……Pさん」

P「だから、少しだけこうさせてほしい。響子が楽しく過ごせて、楽しく掃除ができるように……その手と体を温めたい」ボソ

響子「――っ!!!」ボンッ




 ・ ・ ・

 ――事務所


P「ふう…いい休憩になった」

ちひろ(のっけから何やってんですかあなた)

P「ちひろさん、何か困ってることはないですか?」

ちひろ「困ってることですか……私は特に無いですね」

P「そうですか。まだ休憩時間があるんですけど、響子にも止められましたから何をしようかと」

ちひろ(響子ちゃんの意識も止めましたけどね)

ちひろ「うーん、それなら……あ、トレーニングルームに行くといいですよ」

P「トレーニングルームに? 誰が居るんですか?」

ちひろ「はい、確か今は――」




 ・ ・ ・

 ――トレーニングルーム

 タン タン タン…

P「流石新設とあって、どこも綺麗だな、ここは……と、確かちひろさんがいうにはここに――」

文香「はっ、……ふ、……はぁ」グタッ

P(文香がランニングマシーンの隣で座り込んでいるな……)スタスタ

文香「はぁっ、はあぁ……んっ。……はあ、はあ」ゼェゼェ

P(汗だくになって顔を上げて本当に辛そうだ……っと)

P「……結構走ったな」ポン

文香「!? あ、プ――ゲホッ、ゲホッ!」ガクッ

P「ああ、いい、いいから! 無理に動くな!」

文香「すみませ……はあ、はあ…」

P「運動なんて全く出来なかった文香がこれだけの距離を走れるようになるなんてなあ……すごいぞ」

文香「あり、がと……ございます」ハァハァ

P「そこで座り込むのもあれだから、ベンチに行こうか。……ほら」スッ

文香「……はい」キュ




 ・ ・ ・

P「とりあえずスポーツドリンク。ゆっくり飲めよ」

文香「ありがとうございます……わざわざ」

P「頑張ってる子を俺が応援しなくて誰が応援するんだ、ってな」ハハ

文香「嬉しい……です。様子を…見に来てくれるなど」

P「そりゃ心配にもなる。今まで運動してなかったわけだから、レッスンについていけてるかどうかとかな」

文香「……もう少し、体力を付けておけば、と……少し、後悔しています」

P「なるほどな。普段本ばかり読む少女が、実は強健だった、とかどうだ?」クス

文香「面白い特徴です……物語も、弾みそう」

P「でも文香が常日頃から運動していたらきっとあの場所に居なかっただろうし、俺としては運動していなかったほうが幸運なのかもしれない」

文香「出会いは……撚れぬ糸が吹き荒ぶって交わるもの。……それでも、後悔してしまうんです……」

P「何でだ?」

文香「本も、世界も、命も……全て、始まりが起これば……いつか、終わります」

P「……」

文香「ですが、例え終わりがこようとも……その時を、少しだけ……後ろにずらすことは、できます」

P「……体を鍛えてなかったことが、終わりを早めるんじゃないか、と思ってるんだな?」

文香「……流石、Pさんです。…私の思うことを、知っている」



P「……うーん。こんなことを言っても仕方ないが、そうなってしまったものは仕方ないんじゃないか?」

文香「……」

P「結局過去に記された本は仮定じゃなくて事実なんだから、変えられるのは今とその先だけだろう」

文香「わかっています。……でも」

P「それに、終わりだって悪いことじゃない。……終わらなければ、それは物語として成立しなくなるんだ」

文香「あ……」

P「不条理に引き伸ばされた冗長な小説を読むくらいなら、たとえ短くても面白い物をよみたいだろう?」

文香「……確かに、その通りです」

P「つまり文香は、今の世界が終わってしまって……失ってしまう事が怖いんだな」

文香「情けない話です。……続きを読む手が、それを止めてしまうなんて」コク

P「だから、後悔しないように手を進めれば良い。目だけじゃない、頭も、手も、鼻も、口も、全て使って……そう、例えばこう――」スッ

 ギュ

文香「あっ……」ピクッ

P「文香、わかるか? これだけ近づけば、自分以外の体温が、著しく伝わるだろう」

文香「……は、はい…」カアア



P「……もし俺がこの手を離したら、文香はこの事をすぐに忘れるか?」

文香「い、いえ……とても、新鮮で……刺激が強く…あの」ドキドキ

P「そう、終わってしまっても、記憶や魂はずっと残り続けるんだ」

文香「ずっと、残り続ける……」ピクッ

P「傑作は、伝説は、例え幾千年過ぎたって読まれ続ける。だから恐れるな、文香。背けるよりも良い未来があることぐらい、俺の文香なら知ってるはずだぞ?」

文香(Pさんの、文香……私は……もう)ギュ

文香「はい……理解しています。ずっと、……」




 ・ ・ ・

 ――事務所

ちひろ「長すぎ!」

P「え、いきなりなんですか」

ちひろ「……こほん、こっちの話です」

P(仕事溜まってるのかな……)

ちひろ「それで、行ってみてどうでした?」

P「温かさって、伝わるのと同時に、伝えられるんですよね。相互に行き来して、もっと暖かくなれるのはとても良いことです」

ちひろ(合意の上でなら、ですけど…)ボソ

P「色々考えてる子なんかは特に迷いがありますし。俺も癒やされたいですけど、やっぱり癒してやりたいって思うのは職業病ですかね」

ちひろ(そんな職業逮捕されてしまえ)

ちひろ「まあ、お互い良いならそれでいいですよね」

P「です」

ちひろ「じゃあさっき出てきた仕事をやりましょうか、プロデューサーさん?」ドサッ!

P「……はひ」

アカギレが痛いので終わり。
続きを書いてもいいのよ(ニッコリ

乙。もしかしなくてもセクハラだよねこれ

ちひろさんが一番疲れてるんじゃないだろうか
さあ癒してあげよう

杏と雫を所望する!

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