いつからだろう。好きになってしまったのは。
小学生の頃? それとも中学生?
ライクではない、ラブの好きを抱いてしまったのは。言葉にして書き記したら重いやろなぁ。
せやけど、この重さは心地いいから許せてしまうのは惚気やな。
自分の中に湧き出た感情に気づいたのはついこないだ、数週間前。
きっかけは、至って単純。
考えたら胸が熱くなって、そこからはもう急転直下。
いつも冗談を返してくれる笑顔に手を伸ばしたいと。
麻雀をやってる時の真剣な姿に視線を奪われてしまって。
名前を呼ばれるだけで自然と顔がへにゃっとなってしまうのは我ながら重症だ。
きっと、気づいた時点で負けだったのだ。
恋をしてしまった事実が、仲がいい姉妹の『先』を求めてしまう。
どうしようもないわ、自分。
でも、そんな恋をしてしまったことに対して……後悔はない。いや、後悔なんてするもんか。
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【夕方・姫松高校麻雀部部室】
絹恵「「ほら、お姉ちゃん。さっさと終わらそう」
洋榎「いやぁ~、部室の罰当番を手伝ってくれてホンマ助かるわ~」
絹恵「別に、これぐらいええって」
洋榎「そうか? ま、うちが悪いから仕方ないことやしなー。麻雀牌タワーを作るんや! って遊んでたんやし。
あのロマンがわからんなんて恭子も頭が固いなぁ~」
絹恵「……うん」
洋榎「絹は優しいやっちゃな~。ありがとな」ナデナデ
絹恵「……っ」
洋榎「ほな、ちゃっちゃっと終わらせて帰ろうや。おっいしいごっはんが待っている~」
絹恵「…………なぁ、お姉ちゃん」
洋榎「なんや、絹」
絹恵「……言いたいことあるんやけど、聞いてもらってもええかな?」
洋榎「別にええけど。なんや、改まって。そんなマジ顔でどないしたん?」
絹恵「私が……な? お姉ちゃんのことが好きやって言ったらどうする?」
洋榎「すき家? うちはどんなにディスられても三種のチーズ牛丼を食べることをやめへんで」
絹恵「そのすき家ちゃうわ!」
洋榎「じゃあ、何か? この真夏日にスキーでもしに行くんか?
グラススキー場に繰り出しておもっくそ滑るんか? ってうちのダジャレが滑ってるやないかーい!」
絹恵「……」
洋榎「…………」
絹恵「……」
洋榎「…………ごめん」
絹恵「謝れば済む話じゃないと思うんやけどな」
洋榎「せやけど」
絹恵「……」
洋榎「わかった、わかりましただからその目はやめーっ!」
洋榎「で、なんや。いきなりやぶからスティックに」
絹恵「無理にルー大柴にならんでもええんやで」
愛宕姉妹SSキターーーーーー!!!
洋榎「性分でな。一セリフ一ボケしないと発作で死んでまうねん、うち。発作だけにぃ~~~~~~?」
絹恵「ほっさほっさの髪の毛も!」
洋榎「抜けてまう!」
絹恵「……よっしゃ、首吊って死のうか」
洋榎「嘘やろ!? こんな大爆笑間違いなしのネタなのに!」
絹恵「街中で言ったら殺されてもおかしくないレベルやん。乗った自分きっついわ」
洋榎「反省はしてるけど、後悔はしてへんでー」
絹恵「しろや」
洋榎「あ、はい」
洋榎「…………」
絹恵「私、冗談じゃないんよ」
絹恵「…………お姉ちゃんのことが好きなこと、本当やから」
洋榎「お、おう。うちも絹のことは好きやで?」
絹恵「違うっ……そういう妹的な好きじゃなくて! もっと、こう……っ! 一人の女性として!」
洋榎「……絹」
絹恵「なんや?」
洋榎「今の絹が言った言葉、聞こえなかったことにしとくことだってできるんやで」
いいですわゾ~
絹恵(やっぱお姉ちゃんはやさしいな。私の事、気ィつかっとる。だけど……っ)
洋榎「もし、罰ゲームなんやったら全然気にせーへんから安心しい。そういうジョークで絹のこと嫌ったりせーへんから」
洋榎「な? だから……っ」
絹恵(それでも、私はお姉ちゃんが好きや。この気持ちは絶対違えへん)
絹恵「……ふぅ。はじめてのキスはお姉ちゃんの味やな」
洋榎「絹、お前っ……!」
絹恵「私は本気や。本気でおねーちゃんのことが好きや」
絹恵「ずっと憧れだった。いっつも真っ直ぐで麻雀を打っていたおねーちゃんがかっこよくて、眩しくて」
絹恵「その背中に追いつきたかった。一緒に並び立ちたかった。麻雀部員としても、愛宕絹恵としても!」
絹恵「でも、ただ憧れるだけじゃなくて……私は、一人の女の子としてお姉ちゃんのこと、好きなんや」
絹恵「悩んで、苦しんで。いっぱいいっぱい考えたけど! 私の気持ちは変わらへんかった」
絹恵「本当は抑えるべきモンやってわかってる。けど、どうしても言いたかった。おねーちゃんが好きだって」
絹恵「これで、後悔はない。断られても、ええ。自分の気持ちに嘘をつくよりは全然マシやから」
洋榎「……絹」
絹恵「返事は今すぐしなくてもええよ。今告白したのは私のワガママ。お姉ちゃんまでそれに付き合う必要あらへん」
洋榎「アホ、そういう訳にはいかんやろ。絹がなけなしの勇気振り絞ってしてくれた告白を簡単に捨てれるかい」
洋榎「ここまでマジに言われるとうちも返事をしないとってなるわ。断るにしても、受けるにしても……真剣に考えたい」
洋榎「とりあえず、ちょっち待っててくれへん? 絹のこと、自分のことも含めてきっちりと考えてくるから」
絹恵「うん、待ってる。どんな答えでも、私は後悔せーへんから」
【夜・愛宕洋榎の部屋】
洋榎「どないするべきか、どないするべきかぁ……」
洋榎(まさか、絹がうちのことをそんな風に思ってくれてたなんて、予想外やで?)
洋榎(思い返すと、告白されたんは初めてや。いつも残念な方の愛宕って男からも言われとるしな。
クソッ、いつかできる女の愛宕って言わせたる!)
洋榎(それよりも、告白かぁ。今のうち冷静じゃあらへんよ、ちょーテンパっとるよ)
洋榎(ホンマにどないするんねん、ヤバイって。マジアカンって! 絶対うちの顔赤いって!)
洋榎(ちゃんと答えなきゃとは思うんやけどな。絹が正面から向かってきたんや。
うちが尻込みしてどーすんねん、姉やで、うちは! 年上の意地を見せなきゃな!)
洋榎(断るにしろ、受けるにしろ真剣に考えるのが筋ってもんや。せやけど、なぁ)
洋榎(『…………お姉ちゃんのことが好きなこと、本当やから』ってうううううわああああ! うーーーわーーーー!)
洋榎(あー……あーーーーーっ!! こく、告白や! 超真正面からのストレーートッ!)
洋榎(恥ずかしっ、聞く方のうちが恥ずか死ーーーーーっ!)
洋榎「はぁ……はぁ……告白されるってヤバイわ」
洋榎「ここまでダメージ負うとか聞いてへん。めっさめっさや」
洋榎(んで、一人悩んでくっそジタバタしてるうちなー……ホンマ、ヘタレやわー)
洋榎(告白ワンパンで沈むとか格ゲーでもあらへんわ。雑魚オブ雑魚やん)
洋榎(ホンマ、こういう時は相談すべきやけど! うちの周りに恋愛マスターおらんねん)
洋榎(いつもなら恭子に聞けば大抵は解決するんやけどなぁ。さすがに恋愛沙汰はどう考えても無理やろ)
洋榎(そもそもあの堅物が恋愛とかマジありえへん。へそで茶を沸かすぐらいありえへんわー)ブークスクス
恭子「くっしゅん!」
恭子「……なんかすっごーくバカにされた気がするんやけど、気のせいやろなあ」
洋榎(恭子に相談するんも無理やし、スズは免疫ないだろうし……ゆーこはなぁ……笑って肯定してくれるイメージしか思いつかへん)
洋榎(頼れるんは自分だけ。孤独な戦いやな……)
洋榎(ま、上等や。妹の愛を受け止められんのはNGや。器の大きい姉でいたいんや、うちは!)
洋榎(ともかく、何か行動を起こさないと始まらんわ)
洋榎「よっしゃ、うじうじ考えてるんはうちらしくあらへん」
洋榎「そうと決まれば即行動や!」
洋榎「絹ルームにダーーーイブ! きーーーーぬーーーーー! でーーーてこいいいいい!!」
絹恵「そんで、見たい映画があるから出かけるで~って部屋に突っ込んできた訳」
洋榎「そや! 悪いか? それにいい天気なんだから外に出なきゃ損やっちゅーねん! 休日やで? そらアウトドアせなあかん!」
絹恵「まぁ、暇だったしええけど」
絹恵(告白したばっかりなのにお姉ちゃんの様子は全然変わらへん。平常運転で私に突っ込んでくるやん)
絹恵(お姉ちゃんは私の事そうでもないって思っとること? でも、そんな軽い対応をお姉ちゃんがするとは思えんし)
絹恵(あー、わからへん。底抜けに明るいお姉ちゃんで嬉しいけど! 何かちょっとモヤってするっちゅーか)
絹恵(告白してスッキリしたと思っとったんやけど……全然やん。むしろ、モヤモヤ度高まってるわ)
絹恵(やっぱり、無理だったんかなぁ。これはお姉ちゃんなりの断りの合図なん?)
絹恵(告白して後悔はしないって決めたけど、割り切れへんわ。好きな人と結ばれたいって思うんは女の子として当然のことやし)
絹恵「あー……」
洋榎「どうかしたか、絹?」
絹恵「ううん、何でもあらへん。今日もお姉ちゃんはいつも通りやなあって」
洋榎「……せやな。いつも通りや! さってと~、さっさと映画に行くとしますか。間に合わんかったら予定が丸つぶれや!」
絹恵「映画見れないぐらいで潰れるん!? どんだけハードスケジュールなんや!?」
洋榎「タイムイズマネーってよく言うやろ、限りある時間を楽しまなアカンからなー。一分一秒も無駄にはできひんで~」
絹恵「無駄にできひんって言うぐらいなら、こういう道中のトークも重要なんやろ?」
洋榎「せやせや。話すネタならたくさんあるしな」
絹恵「麻雀とか」
洋榎「好きな食べ物とか」
絹恵「趣味とか」
洋榎「勤めている所とか」
絹恵「そうそう、ってお見合いじゃないかーーい!」
洋榎「……」
絹恵「……」
洋榎「ギャグに関しては頑張らなアカンな。前もダダ滑りやったし」
絹恵「そやね……」
洋榎「まあ、ダダ滑りのギャグはともかくとして」
絹恵「軽っ! 滑ったっていうのに超軽っ!」
洋榎「女は切り替えの良さが大事なんやで」
絹恵「まあ、どんなお姉ちゃんでも私は好きやで」
洋榎「嬉しいこと言ってくれるなぁ~」ナデナデ
絹恵「えへへっ」
絹恵(やっぱお姉ちゃんの笑顔は癒やされるなぁ)
絹恵(こうしてるとまるで付き合ってるみたい……ってぇ!?!?!)
絹恵(よく考えたら、これってデートやん!)
絹恵(いや、こうして二人で遊びに行くことは割とあったけど! 何か雰囲気もいつもよりほんのりと甘ったるいし)
絹恵(そもそもや、映画に行ってウインドウショッピングって完全にデートやん! ホンマにデートやん!)
洋榎「ってうわっ! 和やかにしてる場合じゃあらへん! 映画の時間に遅れてまう」
絹恵(どないしよ、どないしよっ! うあうううううわあああああっ! 今の私変じゃないかな、おかしなとこないかなっ!)
絹恵(今までとは違って告白した後だし! それを誘うってデートやないんか!?)
絹恵(……そう考えると燃えてきたわ。ここが勝負時、下手な真似はできひん)
洋榎「って絹ぅ! 置いてかんといてぇ!!!」
絹恵(しゃんとせな! 周りに見られても恥ずかしくない振る舞いをするでー! 大人の女アピールでお姉ちゃんをゲットや!)
洋榎「絹ぅぅぅぅう! 待ってやぁぁぁああああっ!」
絹恵(やったるでー! 恥ずかしがってないで攻めるんや!)
ここで一旦切ります。
読んでお分かりの通り、咲の愛宕姉妹百合SSです。
乙
やっぱり・・・愛宕姉妹百合SSを・・・最高やな!
一旦乙
絹ちゃんかわええなぁ
お姉さん大好き絹ちゃんかわいい
【午前・映画館】
洋榎「絹ー、ポップコーンとコーラの準備は万全か?」
絹恵「どっちもちゃんと買ったでー。後は座って待つだけや」
洋榎「ん。しっかし、たっのしみや~」
絹恵(はぁ、無邪気やなあ。こっちはおねーちゃんとデートだって考えると気が気でないのに)
洋榎「ふんふふ~ん~」
絹恵(ま、これでこそおねーちゃんや。私が好きになった素顔なんや)
絹恵(自分の思うままに動いて、前を見る。麻雀でも、プライベートでも)
絹恵(最初は羨ましいって思うだけやったのに、いつの間にか別の感情が紛れておった)
絹恵(何でか、いつも目で追うようになって。おねーちゃんのことを思うと、胸が熱くて)
絹恵(自覚できてからは困惑したわ。ただのシスコンこじらせただけかと勘違いもしたけど)
絹恵(違ったんや、私はおねーちゃんのこと……本気で、好きだって気づいてしまった)
絹恵(気づかなければ、告白しなければ。今まで通りの関係でいられたのに)
洋榎「絹?」
絹恵(もーーーー! 私、何で告白しちゃったんや! いやいや、後悔はしてへんけど!)
洋榎「きーぬー」
絹恵(だってだって夕焼けの部室って雰囲気すごく出てるし!)
洋榎「なーに仏頂面しとんねん」
絹恵「あ、ごめん」
洋榎「や、謝ることないんやけどな。せっかく来たんやし、楽しまな損やで?」
洋榎「それに、絹は笑ってる方が可愛いしなー」
絹恵「っ……! そういうこと言うの、卑怯やっちゅーねん」
絹恵(もう、こうやって素でこっちが喜ぶこと言うのが駄目なんや)
絹恵(天然でタラシやで、お姉ちゃん……)
おお、更新きてるやん
絹恵「はいはい、わかったからそのニコニコした顔やめーや。きっしょいで」
洋榎「何をーーー!? うちのプリティフェイスに向かって何たる暴言をーーー!」
絹恵(世界一可愛いで、お姉ちゃん! なんて、言える訳ないやろ……っ)
絹恵(本当にお姉ちゃんはもう!)
絹恵(でも、好きやねん! くっそ、好きやねん!)
洋榎「ったく、今度絹とはじっくりその部分語り合わないかんなー。お、暗くなったっちゅーことは始まるか?」
絹恵「ホンマ、人の気も知らないで……」
絹恵(でも、変に身構えられるよりはマシか)
絹恵(うん、ポジティブに捉えよ。恋する乙女はつよいんや!)
絹恵(気恥ずかしさなんかに負けへん!)
【午後・街中】
洋榎「いやー、いい映画やったなー」
絹恵「うん……」
絹恵(気恥ずかしさに勝てへんかったよ……)
絹恵(ちゅーか、緊張して内容が全く頭に入らんかった……! お姉ちゃんとデートだって意識したらそれしか考えられへん)
絹恵(映画見てる時に躊躇なく手を握ってくるとか聞いとらんよ! お姉ちゃんの柔らか右手がぎゅーって来るとか!)
洋榎「特にラストが最高やった。アネタイマンが故郷の星に帰るとことか号泣もんやで」
絹恵(うあうあうあうあうあうああああ! こんなことじゃ駄目や! 一応は告白したんやからしっかりとした対応でいかんと!)
洋榎「きーぬー」ホッペツンツン
絹恵「ひゃあっ!?」
洋榎「さっきから何ボケーッとしてんねん」
絹恵「ぼ、ボケっとなんかしとらんよ?」
洋榎「語尾が疑問形って時点でバレバレやで……」
絹恵「ごめん、おねーちゃんっ……」
洋榎「別に謝ることでもないやろ。体調が悪いやったら家に帰っても」
絹恵「大丈夫だから! 心配御無用! ほら、踊れるくらいに元気やで!」
洋榎「いや、そこまでは求めてないから」
洋榎「……ともかく! ホンマに大丈夫なんやな?」
絹恵「心配しすぎやって。全く、お姉ちゃんはいつまで経っても過保護なんやから」
洋榎「…………それだけじゃないんやけどな」ボソッ
【午後・ペットショップ】
絹恵「で、何でペットショップなん?」
洋榎「女子力アップの為や。ほら、最近の可愛い女の子はこういうペットに好かれる系やろ?」
絹恵「せ、せやろか……どっちかというとお姉ちゃんに似合うのは雀荘じゃ」
洋榎「やかましいわ! 誰が面白い顔で不良の愛宕ネキや!」
絹恵「そこまで言っとらんよぉ……」
洋榎「す、すまんな。最近カルシウムがたりひんのや」
絹恵(昨日、普通に牛乳飲んどったやないか……乳力アップとか言って)
洋榎「ま、ともかく! どや、これでうちの女子力は上がったやろ?」
絹恵「や、ただ来ただけで上がるもんちゃうやろ。もっと、こうな……」
洋榎「可愛い顔をキメるとか?」
絹恵「ちっがーーーーう! 例えばや、動物抱いて嬉しそうに微笑んだりとか!」
洋榎「うわ、きっしょ」
絹恵「ここまで来てそんなこと言うか!?」
洋榎「だって、うちのキャラやないし」
絹恵「女子力高めようって言ったんはお姉ちゃんやろ!」
洋榎「せやけど、洋榎は自分を曲げへんよ☆」
絹恵「きっしょっ。それ、かの痛くてキツイプロで有名な瑞原はやりのモノマネやないか」
洋榎「痛くてキツイって……それは言い過ぎやろ」
絹恵(そんなことしなくてもお姉ちゃんは可愛いのに)
絹恵「私は普段通りのお姉ちゃんが好きやで」
洋榎「せ、せやな! じゃあ、こんな所で女子力高める」
絹恵「それはそれ、これはこれ。せっかく来たんやし見ていこうや」
洋榎「えー……」
絹恵「何でや! お姉ちゃんはこの愛くるしいわんにゃん達を見ても何とも思わへんの?」
洋榎「犬っころ見てもなあ……そんなのより牌を見ていたいわー」
絹恵「とことん麻雀バカやなぁ……」
洋榎「そら、麻雀好きやからな。とーぜんっ」
絹恵「せやな。でも、わんにゃん達は見ていくからな」
洋榎「堪忍してくれやぁー…………」
絹恵「ふふっ」
絹恵(困り顔のお姉ちゃんも、いいわぁ)
【午後・喫茶店】
洋榎「すっずしー!」
絹恵「まあ、日が照ってたしなぁ~。中は冷房が効いていて当然やん」
洋榎「そんなことどうでもええねん! 今は快適なこの空間を楽しまなアカンねーーん!」
絹恵(元気やなぁ……やっぱり気を張っていたんは私だけやったみたい)
絹恵(お姉ちゃんはいつも通りかぁ……何やろ、ちょっとショックっていうか)
絹恵(まあ、デートって思っとるのは私だけか。そらそーやろな)
洋榎「ん? どしたん?」
絹恵「何でもない。ほら、頼んでたものが来たから食べよ」
洋榎「せやな! ん~、喫茶店のサンドイッチってどうしてこんなに魅力的なんやろなあ!」パクパク
絹恵(これは脈なしかな……。お姉ちゃん優しいから最後に思いで作ってくれる為にデートみたいなこと、してくれたんやろな)
絹恵(届かない恋やろな。そりゃあ、当たり前やわ)
絹恵(妹なのに、姉を好きになるっておかしいもんな)
絹恵(わかってはいるけど、辛いわ。ホンマ、どうしてやろうなあ)
絹恵(どうして、お姉ちゃんを……好きになったんやろ)
絹恵(これが、違う人ならもっといい方向に……)
洋榎「……」
洋榎「なー、絹」
絹恵「ん?」
洋榎「これ食べ終わった後なー、ちょい付き合って欲しいとこあんねん」
佳境ですが一旦切り。
そういえば、投下後にレスがあってホッとしています。
好きなカプだけに、もっと人気が出て欲しいなって。
愛宕姉妹百合すきだからちょーうれしいよー
すばら!
乙
凸凹姉妹可愛い
>>31
完全同意だね
愛宕姉妹カプ大好き
【夕方・高台】
洋榎「はー、見晴らし最高や! 自分の住んでる街を一望できるってクッソ気持ちいいな!」
絹恵「せやな」
絹恵(やっぱり、おねーちゃんの笑顔はいいなぁ)
絹恵(だから、好きになったんやろな……私は)
絹恵(私が好きなおねーちゃんは、この顔)
絹恵(諦めることなんて頭になくて、いつだって前を向いている)
洋榎「なあなあ、絹ぅ! うっひょーーー、綺麗やーーー! 夕焼けやーーーーー!」
絹恵(時々子供っぽいけれど、年上の余裕ってのも兼ね備えている)
絹恵(ああ、どうしようもないわ。私、お姉ちゃんのこと……好き過ぎる)
絹恵「それで、付き合って欲しいって言ったんは、私にこの風景を見せたいから?」
洋榎「そや! 絹にもこの一望を味わって欲しくてなー!」
絹恵「うん、綺麗やね。お姉ちゃんが見せたがるのもわかるわ」
絹恵「ホンマ、綺麗やな……」
絹恵(わかってる、わかってるんや)
絹恵(私が一番綺麗だって思えるのは、好きだって言えるのは)
絹恵「ははっ」
絹恵(――お姉ちゃんなんや)
絹恵(だから、最後まで……私は好きになり続ける)
絹恵(断られる可能性が高いってわかってるけど。けどっ、初恋だから。私にとって、初めて好きになった人だから)
絹恵(せめて、最後ぐらい――真正面から受け止める。それが、私に出来る……っ!)
洋榎「それと、昨日の答えを返す為やな~」
絹恵「……ッ」
絹恵(お姉ちゃんに誇れる自分でいるためにも、絶対に……顔を背けない)
洋榎「そない身構えなくてもええやんか」
絹恵「身構えるに決まってるやろ」
洋榎「うちなー、絹のことはいつも見ていたつもりやった」
絹恵「うん」
洋榎「そのはずやったんだけどなぁ……やっぱ、うちの目、節穴やったわ」
洋榎「絹がうちのことをどう思ってるか全く気づかんかったんや。笑えるやろ?」
洋榎「はぁ、ずっと一緒に過ごしてきた姉としても恥ずいわ。鈍感過ぎて悲しくなるわ、全く」
支援
絹恵「……もう、ええよ。悪いのは」
洋榎「別に絹は悪くあらへんよ」
絹恵「悪いよ……だって、私はおねーちゃんを」
洋榎「――そこから先は、言わんで欲しいなあ」
洋榎「うちを好きになったのが悪い? おもんない冗談やめてほしいわ」
絹恵「そんな、ちがっ」
洋榎「違くない、うちは嬉しかったんや。最初は戸惑ったけどな」
洋榎「絹に想われて、告白の言葉を受けて。ちゅーか、人から好意を持たれて嬉しくない訳あるか?」
絹恵「…………」
洋榎「絹は自分のことを卑下し過ぎ。もっと自信たっぷりにかかってこんかい!」
洋榎「だから、うちの中の気持ちを再確認する為にも。こうして、デートをしたってことやね」
洋榎「これでもなー、めっさ緊張してたんやで? 普段通り装うので精一杯で」
洋榎「絹の前でええかっこしたいって思ってな。かっこいいおねーちゃんでいたい」
洋榎「アホかって思ったわ。今更取り繕っても、どうしようもないのに」
洋榎「でもな、それでも取り繕ってまう自分がいるんやわ」
洋榎「絹に好きでいてもらいたいが為に、頑張っちゃうんよ」
洋榎「その時、思ったわ。ああ、敵わんなぁってな」
絹恵「――!」
洋榎「どーしようもない。でも、負けたんはうちの方やった」
洋榎「気づいてしまったら、手遅れや。こーさんこーさんっ」
洋榎「んじゃ、返事、返すな! 今度はうちから言わせて欲しい」
絹恵「うん、うん……っ」
洋榎「絹、こんなろくでもないうちでよければ――」
洋榎「――末永く付き合って下さい」
絹恵「こ、こっ、ちら、こそ、よろしくおねがいしましゅっ」
洋榎「おいおい、何やねん……その気の抜けた返事は。なーに涙目なっとるんや」
絹恵「だって、だってぇ……嬉しくて。むりだと、思っとったからぁ」
洋榎「泣き虫やなあ。昔っから全然っ変わらへんっ。そんで、その涙を拭うのがうちやって所も」
絹恵「おねーちゃぁん」
洋榎「あー泣くなって。絹は笑ってた方が可愛いんやから」
洋榎「安心しぃ。うちがずっとそばにおる。何があっても、絶対」
絹恵「私も、おねーちゃんと……いっしょにいたい」
絹恵「夢みたいや、おねーちゃんとこうして……こ、恋人になれるなんて」
洋榎「アホっ、夢やない。こんな幸せな時間、夢であってたまるか」
絹恵「ひゃっ」
洋榎「うーん、抱きしめてわかる妹の体温……なかなかやね」
絹恵「は、恥ずかしいんやけど……」
洋榎「ほーー、ほーーーっ! そういうこと言うんか! あんだけ真正面から告白してきたやつが!」
絹恵「からかわんといてや! もう!」
洋榎「ええやんええやん、これがうちのスタイルなんやから」
絹恵「それはわかってるけど」
洋榎「惚れた弱みやで? 今更撤回不可やからなー」
絹恵「バカ、おねーちゃんのバカ!」
洋榎「ははっ」
絹恵「もうっ」
洋榎「……なー」
絹恵「何?」
洋榎「大好きやで、絹っ」
絹恵「うちもや、おねーちゃんっ」
カン!
――――そんな、幸せ『だった』世界は、もうどこにもありやしない」
人を好きになるのに、理由はいらない。
恋をするのに、資格なんて必要じゃない。
だって、仕方ないじゃないか。好きになってしまったのだから。
許されてもいいじゃないか。恋をしてしまったのだから。
確かに、この胸に抱いた気持ちはおかしい。普通とかけ離れた感情だ。
長年を年月をかけて築いてきた関係を壊す。そして、前に進んだ結果が破滅だとしても、振り切れる。
だけど、甘かった。
知らなすぎたのだ、肉親を好きになってしまったことが、どれだけ重い選択か。
二人一緒なら大丈夫で、自分達を取り巻く世界が永遠に続くと。
そう、信じていた。
否、信じたかった。
切りがいいのでここまで。この後はアフターストーリーです。
肉親だからこその苦難が待っています。
乙
シリアス楽しみにしてるのよー
おつ
姉妹だと障害が半端ないだろうが頑張ってほしい
デザート来ると思ってたら牛丼出てきた気分
このSSまとめへのコメント
とっととアプターストーリーかけ