【咲saki-】洋榎「竜華の膝枕は最高やなー」 (106)

愛宕洋榎×清水谷竜華です
麻雀描写は少なめでー

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6月――愛宕洋榎中学3年生

えり「インターミドル大阪予選個人戦もいよいよ最終戦・最終局。卓に着くのは“大阪キセキの世代”の3人です」

洋榎「…ふう。これはウチの勝ちやな」

竜華「たったの500点差で何を調子にのっとんのや。ウチが和了って終わりやろ」

セーラ「いやいや、ラス親は俺やで? 偉い人が言うてたわ。『和了り続ける限り負けることはない』て」

えり「なお、この3名は成績的に既に全国行きを決定していますが、順位自体はほぼ横並びの状態です」

由子「うぅ…。この3人、強すぎなのよー…」

えり「さて…ライバル同士である“大阪キセキの世代”の3名で、優勝するのは誰なのか――!?」

洋榎「ロン! しかも…どや! 潔いまでの役牌のみや!」

由子「」

竜華「うああああ! 洋榎自分ーー! 私が折角ジュンチャンで綺麗に締めようと思うてたんにぃー!」

セーラ「やっぱ親番で国士なんて狙うもんやないなあ。けど見損なったで洋榎。なんちゅう格好の悪い和了りやねん」

洋榎「そんなん関係あらへんやろ。優勝は優勝やで? これで大阪最強はウチやと証明されたわけや」

竜華「なんやてー!?」

セーラ「そんならもう一回勝負や洋榎! 次は絶対勝つからなー!」


絹恵「おねーちゃん、優勝おめでとうな」パチパチ

絹恵「それにしても、ホンマに楽しそうやなあ…。まあ、昔っからのライバルと一区切り決着がついたわけやしな」

絹恵「けど、おねーちゃんも竜華さんもセーラさんも、高校はどこに行くんやろか」

絹恵「今まではおねーちゃんだけ違う学校やったけど…、高校では3人が集結したりはせんのやろか」

8月――

洋榎「あー」

セーラ「終わってもうたな、インターミドル。楽しかったけどなーんか消化不良やわ」

洋榎「辻垣内のやつまーた実力つけとったわ。今回ばかりは負けを認めたらなアカンな」

セーラ「せやな。インターハイでリベンジや!」

竜華「…インターハイ、か」

竜華「なあ。洋榎もセーラも、高校はどこにいくつもりなん?」

洋榎「へ?」

セーラ「ほ?」

竜華「せやから高校やって。インハイ行くんやったら強い高校に行くべきやろ? まさかどこ行くか考えてへんの?」

セーラ「い、いや…考えてるで? 大阪やったら千里山か姫松やろ」アセアセ

洋榎「うーん、千里山ってコーチがオカンやからなー。なんか嫌やからウチは姫松やろか」

竜華「そうなん? 私は千里山に行くつもりなんやけどな」

竜華「実はな…たまに考えてしまうんや。“キセキの世代”なんて呼ばれとるうちらが揃ったらどうなるやろかって」

竜華「もしみんなが一つの学校に集まったら…インターハイも優勝できるんやないやろか」

洋榎「竜華…」

竜華「でも、やっぱないわなー。これからもずっと、うちらはライバル同士やもんな」

セーラ「そやろな。まあどこの学校行くんか分からんけど」

洋榎「…」



絹恵「お帰り、おねーちゃん。お客さんが来てるで」

洋榎「ウチに? 誰やろ」


善野「こんにちは、愛宕洋榎さん。私は姫松高校で監督をしています、善野と言います」

洋榎「!! 姫松の…」

善野「今日お邪魔したのは他でもありません。あなたを姫松に勧誘しに来ました」

善野「特待生として迎え入れるつもりですし、ゆくゆくは伝統のエース・中堅もお任せしたい」

善野「どうですか? 姫松高校で、インターハイ優勝を共に目指しませんか――?」

洋榎「…」

洋榎(インターハイ…)



絹恵「そんで? お姉ちゃんは姫松に行くん?」

洋榎「うーん、こればっかりはオカンとも相談せんとアカンしなあ」

絹恵「お姉ちゃん、竜華さんと同じ千里山に行ったりせんの?」

洋榎「は? なんでここで竜華の名前が出てくるん?」

絹恵「いや…。だってお姉ちゃんたち3人が集まったら相当強いやろ? インターハイ優勝も夢やないやん」

絹恵「それやったら竜華さんと同じ千里山に行くんかなーって思うとったんやけど」

洋榎「いやいや…。まあそうかもしれへんけどな?」

絹恵「どっちにしろ悩んどんのやろ? それやったら本人と相談したらええやん」

絹恵「浩子ちゃんからメール来ててな。竜華さんが今度のミナミの大会に出るんやて。お姉ちゃんも行ってきたらええやん」

洋榎「ほう…?」

→1.行く

2.行かない



洋榎(来てしもうた…べ、別に竜華に進路相談してもらいに来たわけやないんやで?)

洋榎(と、それはええんやけど…)チラッ

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

サングラスのおじさん「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

頬に傷のあるおじさん「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

洋榎(なんやここ…もしかしてアッチの方々の大会なんか!? めっちゃ怖いわ…)ガタブル

竜華「ん…? もしかして洋榎!? 自分なんでこんなとこにおんの?」

洋榎「よ、よう竜華…。き、今日は竜華を倒す為にここまで来たんやで…」フルフル

竜華「どこで私がここの大会に出ること聞いたんか知らんけど…ここ、堅気の女子中学生が出るような大会やないで?」

洋榎「ま、マジか…やっぱそうなん!?」

竜華「私はお祖父ちゃんが世話になってるから来てるんやけど…洋榎自分、そんなんも知らんで来たんか」

洋榎「コクコク」ガクブル

竜華「気をつけるんやで? 基本的に優しい人ばっかりやけど最近の若いのにはチンピラみたいなのもおるからな」

洋榎「ええぇ…?」ガタガタ

竜華「まあ、そんな貧乳で襲われることなんかないやろけど」

洋榎「うっさいわ!」



洋榎(…はあ)

洋榎(なんや、怖い人ばっかやと思うと緊張して力出えへんかったわ)

洋榎(まあ、意外とええ人ばっかりやったんやけどな…指が無いのを除けば)

洋榎(…そうや! 竜華は今試合中なんやったな。どれどれ…?)


竜華「ツモ。対々役牌ドラ3、6300オール」

刺青のにーちゃん「グッ…」


洋榎(うわっ! 優勝してもうた…)

洋榎(やっぱウチほどやないけど竜華も強いやん。優勝の記念にジュースでも買ってやろかな)



洋榎(結構時間かかってもうたな。コンビニに行ったら立ち読みしてしまうわー)タッタッタ

洋榎(ん? あれは…)


竜華「そんで? こんなところまで何の用なん?」

刺青のにーちゃん「なあねーちゃん、さっきの試合のはイカサマやろ?」

竜華「あの試合のどこでイカサマなんてあったっちゅーんや。いくら女子中学生に負けたからって往生際悪いで?」

刺青のにーちゃん「なんやと…?」プルプル


洋榎(竜華! それにさっきの怖そうなにーちゃんやん! なんかすごい危ない感じやで…?)


刺青のにーちゃん「ぐぬぬぬ…ゴルァ! 調子に乗んなよこのガキィ!!」バッ…

竜華「…!」スッ…

→1.竜華を助ける

2.出て行かんでも大丈夫やろ。なんか余裕そうな表情しとるし

洋榎「待てや! りゅ…竜華に手は出させんで!」

刺青のにーちゃん「あぁ…?」

竜華「洋榎!? なんでここに…」

刺青のにーちゃん「なんやこの胸の小っさいのは…もしかしてこいつの知り合いかいな」

竜華「洋榎、まさか自分…」

洋榎「…」ゴクリ

刺青のにーちゃん「まあええやろ…。二人纏めてヤったるわ!」ブンッ

洋榎(ヤバい…!)グッ…

竜華「…」パチン

洋榎(やっぱ、ウチみたいなんがこんな怖そうな人に逆らうもんやないなあ… …)

洋榎「あれ?」パチリ

刺青のにーちゃん「ぐぬぬぬ…! な、なんやテメエら!」ググ…

サングラスのおじさん「おうねーちゃん、ええ根性やないか」

頬に傷のあるおじさん「それに比べてこの若いのは…同じ仕事しとるもんとして恥ずかしいわ」

竜華「スマンな、ヤッさんにテツさん。後は頼むわ」

頬に傷のあるおじさん「了解しました、お嬢」

竜華「ほな行くで、洋榎」

洋榎「ほえ…」


刺青のにーちゃん「ちょい待てやゴルァ! 離せこのっ…!」

頬に傷のあるおじさん「まあそんなに粋がるなや小僧…」

サングラスのおじさん「それより…おじさんと、イイことしようや…」



竜華「洋榎、ありがとうな。さっきのあれ、私のこと助けに来てくれたんやろ?」

洋榎「ま、まあそのつもりやったんやけどなあ。結局何の役にも立たんかったわ」ガクブル

竜華「ははっ! まだ震えとんのかいな。案外ビビリやな、洋榎も」

洋榎「う…うっさいわ!」

竜華「けど、ホンマにありがとうな。正直驚いたし、気持ちだけとはいえ凄い嬉しい」

洋榎「竜華…」ポッ

竜華「そうや! なんかお礼せんとあかんよな。なーんでも好きなこと言うてや、な?」

洋榎「え…そ、そんなら…」

1.じゃあおっぱいくれや。さっきから貧乳貧乳言われて傷ついとんのや

2.そんならお金貸して下さい。今月マジでピンチなんです

→3.ひ、膝枕…?

竜華「はあ? なんやねん膝枕て」

洋榎「いや…なんか疲れたし、そしたら急に膝枕なんてわけのわからんのが思い浮かんでしもうてな?」

竜華「まあ別にええけど。ここじゃ流石に無理やし家に案内するわ」

洋榎「おおっ!?」



竜華「どうや、気持ちええか?」ニコッ

洋榎「…正直、かなり気持ちええわ。竜華の膝枕は最高やなー」ドキドキ

洋榎(な、なんやこれ…ホンマのホンマに気持ちええんやけど)ドキドキ

竜華「洋榎?」

洋榎「な、ななな何でもないで?」ドキィ

洋榎(アカン…)ドクドク

洋榎(なんでやろ、竜華の顔まともに見られへん)ドクドク

洋榎(なんなんやこの膝枕の魔翌力は!)ガーン



ぴんぽーん

竜華「あら、お客さんやわ。ほい洋榎、膝枕終わりやで」スッ

洋榎「え…もう終わりかいな。残念やわ…」ボソッ

雅枝「…お? なんで洋榎のアホが清水谷の家におんのや」

洋榎「お、オカン!? なんでオカンが竜華の家に!?」

雅枝「アホは黙ってろや。ああもう、ウチのアホ娘がホンマにご迷惑おかけしとります」ペコリ

竜華「いえいえとんでもない。洋榎、愛宕先生は私が千里山の麻雀部に入ってからのことを話にきてくれたんや」

雅枝「そうやで。どっかのアホはともかく、清水谷は千里山にとって欲しい逸材やからな」

竜華「この前も言うたけど、私は千里山に入学するつもりやねん。それから、セーラも誘ってるんやで」

雅枝「江口も特待生、スカートは履かなくてええって言ったら快く返事してくれたわ」

洋榎「へぇ…。なあ、ウチはウチは~?」

雅枝「アホのオタンチンは黙ってろや」

洋榎「さっきから実の娘にどこまでアホアホ言うとんのや!」

竜華「ま、まあまあ…。洋榎も千里山受けへん? 多分推薦入学の枠は余ってるはずやで?」

洋榎「えぇ…? でも千里山ってオカンがコーチしとるからなあ…」

洋榎「それに姫松はんからスカウト来たし…特待生とか、相当待遇もええしなあ…」

雅枝「なんや洋榎、姫松からオファー受け取ったんか。そんな大切なこと…絹から聞いてたけどな」

洋榎「聞いてたんかい!」

竜華「はは…。けどまだ返事はしとらんのやろ? 愛宕先生、洋榎も戦力的には欲しいんとちゃいます?」

雅枝「…。まあ、アホなことを除いても実力は認めるわ。ウチが言わんでも推薦入学は可能やろうな」

竜華「やって。洋榎、今やなくてもええんやし、考えてみたらどうやろ」

竜華「私としても、洋榎が一緒にインターハイ優勝目指してくれるんやったら嬉しいわ」ニコッ

洋榎「竜華…」ドキッ

10月――

洋榎(そろそろ決めなアカンな。ウチは…)

1.千里山に行く

→2.姫松に行く



洋榎「勝負やセーラ! ウチら清澄はんのATMやけどな!」グスン

セーラ「おう洋榎! 俺らも白糸台のATMやけどな!」グスン

TRUE END

→1.千里山に行く

2.姫松に行く

洋榎(ウチは、千里山でインターハイに行きたい)

洋榎(竜華やセーラとインハイで優勝したい)

洋榎(そして…)

洋榎(あの日のこと…竜華の笑顔と言葉と、それから膝枕の感触が忘れられへん)ドキドキ

洋榎(ウチは…)


洋榎(竜華のことが、好きなんや――)

4月――愛宕洋榎高校1年生

竜華「けど、ホンマに洋榎が千里山に入ってくれるとはな~。あんなに嫌がっとったのに」

洋榎「…///」

竜華「?? どしたん、洋榎??」

洋榎「なあ竜華、この桜の木って伝説があるんやて」

竜華「そうなん? 入学したばっかりやのによう知っとるなあ。どんな伝説なん?」

洋榎「…恋愛成就や」


洋榎「ウチが千里山に入ったんは…竜華がおるからや」

洋榎「ウチは、竜華のことが好きなんや」


竜華「え…?」

竜華「え、えええ? た、確かに私も洋榎のこと好きやで? …そういうことやないんか?」

洋榎「…///」コクリ

竜華「~~!!///」カアアアアアア

竜華「そっか…。洋榎が私のこと…」

洋榎「スマンな、驚かせてもうて。けど…言わずにはいられんかったんや」

竜華「洋榎…///」

竜華「私は――」


??「…」

5月――

洋榎「りゅーかー、膝枕してやー」

竜華「はいはい、ホンマに洋榎は膝枕が好きやなあ」

洋榎「あー、極楽やわ」

セーラ「けど信じられん話やなあ。まさか竜華と洋榎がこんなにも仲良くなるとは」

竜華「ま、まあ色々あってな///」アセアセ

洋榎「そ、そうやで?」アセアセ

セーラ「??」


??「…」

怜「すいません、体調悪いんで帰ります…」

竜華「ちょ、大丈夫なん? 相当顔色悪いみたいやけど」ガタッ

洋榎「うおうっ!?」ガクン

セーラ「ホンマに帰れるんか? 保健室行っといた方がええんやないか?」

怜「大丈夫や…。家、そんなに遠くないしな…」

セーラ「そんなら俺が送るわ。先生、ええよな?」

雅枝「ああ、頼むで」

竜華「大丈夫やろうか、怜…」

洋榎「…」ムッ

洋榎「竜華…やっぱり園城寺には優しいんやな」

竜華「…ごめんな」

洋榎「いや、別に謝ることやないって。あれはウチの方から言ったことやし――」


竜華「私は――今は他に見ててやらなあかん子がおるんよ」

竜華「その子は病弱で、いつ壊れてもおかしくないような子で――もう少し、その子のこと見ていたいんや」

竜華「洋榎の気持ちは正直凄く嬉しい。けど、その子のことを見たまま洋榎と付き合うのは、どっちにも悪い気がする」

洋榎「竜華…」

竜華「ごめん、洋榎。その告白…今は受けられんわ」


洋榎(ウチはフラれた。まあ、覚悟はしてたことなんやけどな)

洋榎(そして“その子”というのが園城寺のことやというのはすぐに分かった)

洋榎(確かに、あの竜華があんな子を見捨てるわけはないもんな――)

8月――

セーラ「…」

竜華「…」

洋榎「これがインターハイなんやな」

竜華「全中とは大違いや。実力も迫力も段違いやで」

セーラ「辻垣内でさえ控えなんやもんなあ…。インハイっちゅーのはホンマにすごいわ」

洋榎「それから…宮永照」

セーラ「ありゃあ化物やな。直接戦わんでも見てて分かる」

竜華「あれ、私たちと同い年やからなあ…。あれに勝たんと優勝はでけへんのや」


3回戦敗退:姫松高校

洋榎「…」



洋榎「なあ、折角のデートやと思ったのに…なんで病院やねん」

竜華「悪いな。まあでも、洋榎にも怜と仲良うなって欲しいんや」

洋榎「だからって…まあ、そういう天然なところも好きなんやけどな」ボソッ

竜華「怜の入院してる部屋はこっちやな」



洋榎「ん? あれは…」


??「ここみたいやな」コンコン

由子「のよー」ガラッ


竜華「あれって確か真瀬さん? 今は姫松に通ってるんやったっけ? なんであの子が怜の部屋に…?」

洋榎「少し様子見てから入ろか」

竜華「失礼するでー。怜、元気やった?」ガラッ

怜「竜華? それに愛宕さんも? お久しぶりやな」

??「!? しまった…!」

由子「これは…マズいのよー」

洋榎「園城寺、体調は…まあまあみたいやな。そんで…」


??「あら? 今日は千客万来やなあ。良かったですね、園城寺さん」

憩「おっと、自己紹介が遅れました。ウチはこの病院でナース見習いやらせてもろてる、荒川憩て言います。中3です」

怜「ホンマにみなさん、ウチなんかのためにお見舞いに来てくれてありがとうございます」

??「…」

由子「あ、あはは~、なのよー…」

洋榎「…」

洋榎「そんな“なんか”とか言わんでや園城寺。“ウチら”は園城寺のこと仲間やと思ってるから来たんやからな」チラッ

??「…!」ギリッ…!

憩「??」

憩「なあ園城寺さん。折角みなさんが来てくれたことやし、今日は“アレ”一緒にしてもらいません?」

怜「ん? ああ、そうやなあ。なあ竜華、愛宕さん、それに真瀬さんたちも」

怜「良かったら、麻雀打たん?」



洋榎「ロン! 3倍満や! 園城寺、今のは流石に無警戒すぎやったで」

怜「あら、ホンマやな。やっぱりウチはまだまだやな」

由子「や、やっぱり勝てないのよー…」

憩「いやー、愛宕さんはホンマに強いですねーぇ。全然追いつけませんわ」

洋榎「せやろー? さすがやろー?」

竜華(…いや)

竜華(今のは運が良かっただけや。怜が振り込んでなかったらあのナースの子が勝ってた)

竜華(あの洋榎相手にここまでやるなんて…何者や、この子)

??(…)



怜「そんなら今日は本当ありがとな。竜華、愛宕さん、もうすぐ退院できるからまた学校でや」

憩「ウチも今日は楽しかったですー」

怜「…」

怜「愛宕さん…意外とええ人やん」

怜(…)



由子「…」

洋榎「…」

??「…」

竜華「さて」

竜華「そんならお見舞いも終わったところで…折角やし姫松のお二人とお話でもしましょうか」

竜華「単刀直入に聞くけど…あの荒川って子のこと見に来たんやろ?」

由子「うっ…」

??「…っ」

竜華「あんな強い子がおるなんて私は全然知らんかったわ。しかも中3。来年は即戦力やろうな」

竜華「姫松がどんな情報網であの子を見つけたんか知らんけど…ホンマ凄い子や」

??「…」

竜華「そんでや」

竜華「奇しくもその子はうちら千里山の怜の部屋におった。でもってうちら千里山もあの子に会うてしまった」

竜華「悪いけど…あの子のことはうちら千里山からもスカウトさせてもらうで」

由子「なっ…!」

由子「ちょ、ちょっと待つのよー! あの子は姫松が見つけた逸材なのよー!」

竜華「けどなあ。私らもあの子の実力は見てしもうたからなあ」

洋榎「あの子の実力は一緒に打ってみてよう分かったわ。あの子がおれば打倒白糸台も夢やない…絶対見逃せない逸材や」

由子「でも…!」


??「なんでや」

??「千里山はもう戦力は十分やろ。自分ら“キセキの世代”が揃っとんのやから…」

??「自分らは――それでもまだ足らへんのか! 愛宕洋榎!」

洋榎「へ? ウチ?」

??「姫松は…昨年のスカウトの目玉、“キセキの世代”3人を引き入れることに失敗した」

??「そのせいもあり、姫松の士気は下がり…インハイでは3回戦敗退や」

??「それだけやない。スカウト失敗とインハイでの責任を問われて善野監督は病気で倒れてしもうた」

竜華「…けど、それは」

??「ああ、別に千里山には何も悪いことはあらへん。けど…」

??「それで今年こそはと躍起になって少しの可能性でも見逃さんように逸材を探して…」

??「そうしてようやく見つけたあの子を奪うて言うんか…!?」

洋榎「…」

洋榎「…なあ。自分、何を甘えとるんや」

??「なっ!?」

洋榎「ウチらはなあ、本気で目指しとるんや。インハイでの優勝、打倒宮永照をな」

??「そ、それは私らも…!」

洋榎「だったら! せやったら…分かるやろ。少しでも強くならんとアカンのや。他の学校に同情なんてしてられへん」

??「くっ…!」

竜華「洋榎…」

洋榎「ああそれと、ウチはホンマはスカウトとかはどうでもええねん」

??「は…?」


洋榎「ウチは新人発掘なんて二の次や。ウチ自身が強くなって、宮永照を倒したる」

洋榎「自分からはそう言う気概が感じられへんで? どうや」

??「…!!」

洋榎「自分、名前は?」

恭子「末原…末原恭子や」

洋榎「そっか。なら末原…ウチは強くなってインハイ優勝を目指す。自分はどうすんのや」

由子「恭子ちゃん…」

恭子「そんなん…」

恭子「決まってるやろ! 私らも強くなる…強くなって、千里山も白糸台もみんな、私らが倒して優勝したるわ!!」

洋榎「ははっ…! それでええんや。待ってるで、末原」スッ

恭子「・・・」

竜華「さっきの格好良かったやん、洋榎。ちょい見直したで?」

洋榎「せやろー? さすがやろー?」

洋榎「…まあ、あの子らに悪いことしたんは事実やしな」

洋榎「ウチが迷った挙句、姫松に入らんかったんは事実や。それが原因か知らんけど姫松は今年3回戦でボロ負けしとるし」

洋榎「言い訳になるんかもしれんけどな。こうでも言わんと姫松に申し訳ないわ」

竜華「洋榎…」

洋榎「そんなことより、なんや真剣な話して疲れてもうたわ。どっかで膝枕してーな~」

竜華「全く、洋榎は甘えんぼさんやなあ…」


竜華(…)

8月――愛宕洋榎高校2年生

インターハイオーダー(先鋒:セーラ、次鋒:竜華、中堅:洋榎、副将:憩、大将:千里山部長)

憩「いやあ、やっぱり臨海女子は強いですね。トばされないようにするのに精一杯でしたよ」

セーラ「お疲れや、憩ちゃん。…言うても割と余裕やったやろ?」

洋榎「おかげで助かった、ちゅーべきなんかな? 天江衣まで回らんかったんはこっちとしては嬉しい誤算やで」

竜華「憩ちゃんがおってホンマに良かったわ。おかげでここまで順当に勝ち残れたんやもんな」

セーラ「決勝は臨海女子とダークホースの永水、それから白糸台やな。よし! 今年こそは勝つでー!」

洋榎「…」

3回戦敗退:姫松高校

洋榎(末原…来年こそは待ってるからな)



えり「インターハイ決勝・大将戦もいよいよ大詰め。白糸台の宮永照の猛攻が止まりません」

竜華「部長…苦しいやろうな」

セーラ「副将戦終了時点で2位、しかも殆ど点差なしやったのになあ…。これはキツいで」

えり「終了です。宮永照の国士無双が千里山を直撃! 今年も白糸台が優勝、2連覇達成です」

憩「…」

洋榎「今年も、勝てへんかったか…」


雅枝「…」

雅枝(今年は間違いなく歴代の千里山でも最高クラスのメンバーやった。けどそれでも白糸台には勝てへんのか…)

雅枝(一体何が足らんのや…。個人の実力か? それとも…)

雅枝「全員、気持ちを切り替えていくで。まずは個人戦、それから来年や!」

10月――

秋季大会決勝戦オーダー(先鋒:竜華、次鋒:フナQ、中堅:セーラ、副将:憩、大将:洋榎)

恒子「秋季大会、関西ブロック決勝戦ん! 千里山優勢かと思われましたが、姫松が食い下がっております!」

健夜「個人戦2位の荒川憩相手に良く頑張ったよね。あの子…上重漫」

恒子「3位の瞼谷、4位の晩成はどう出る!?」

洋榎「勝負や末原…。来年のインハイの前哨戦や!」

恭子「絶対に負けへん!」



恒子「終了ー! 優勝は千里山! 姫松は惜しくも2位です!」

恭子「ぐっ…!」

恭子「まだ勝てへん…愛宕洋榎にはまだ全然及ばんのか…!」


雅枝(…)



雅枝「秋季大会、御苦労さまや」

竜華「ごめんな、みんな…」

セーラ「謝らんでもええって! 宮永照へのリベンジは来年のインハイやって前から決めてたことやろ?」

洋榎「臨海女子は留学生軍団抜きでここまでやれるんやなあ…。やっぱ辻垣内のヤツ強いわ」

憩「九州赤山も完成度が増していますね。来年は永水とどっちが来るやら」

竜華「それを言うなら3回戦の新道寺も…」洋榎「長野の福路ー」セーラ「個人戦のー」憩「上重さんがー」

竜華「  」

洋榎「  」



怜「…」フラ…

パタッ…



竜華「怜! 怜ぃ!」

怜「…竜華?」

セーラ「怜! 良かった…。気がついたみたいやな」

洋榎「秋季大会終わった後倒れたみたいやな。すぐに絹ちゃんが気付いてくれたからホンマ良かったわ」

憩「多分いつものでしょうけど…無理はせんで下さいね?」

怜「…」

怜「みんな…ゴメンな。またお騒がせさせてしもうて」

竜華「そんなんええんやて。みんな怜の仲間やからここに来とるんやからな」

洋榎「そうやで。体調戻ったらウチが特訓したるわ!」

怜「…」

怜「竜華、洋榎…ホンマにありがとうな…」

12月――

怜「クリスマスやっちゅうのにこんな感じで…ホンマごめんな」

セーラ「ええんやって。どうせ俺らには恋人なんかおらんしな!」

洋榎「…」

怜「…」

洋榎「そうやな! 女4人でクリスマスパーティや!」

竜華「病院の面会時間ギリギリまで楽しむでー!」

怜「…みんな、ありがとうな」

竜華「ほら怜、ケーキも買ってきてるんやで? お医者さんもええって言うてくれたし、一緒に食べようや」

洋榎「そんならウチが最初に選ぶで! ウチは一番人気のコレや!」

竜華「なっ!? ズルいで洋榎! そこは怜から選ぶか公平にジャンケンやろ!」

洋榎「うおおおおおっ! なんやこれ、ごっつ美味いやんかあああ!」パクッ

竜華「言うてる側から何を食べとんのやああああ!」

洋榎「ほい竜華、一口やるわ」ヒョイ

竜華「ホンマやああああ! 舌がとろけるわああああ! って何をさせとんのや!」モグモグ

セーラ「いやいやいや…竜華も十分乗ってるやん。ホンマ二人は仲良えなあ」

怜「…」

洋榎(さて、ここで重大な問題ができたで)ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

洋榎(ウチ、愛宕洋榎はパーティのテンションに任せて竜華にケーキを一口あげたわけやけど――)


洋榎(それはつまり――ウチが口付けたフォークが竜華の口に入ったっちゅうことや!)ゴーン

洋榎(そして――その竜華が口をつけたフォークが今ウチの手のなかにあるわけやん?)


洋榎(さて、ウチはどうするべきなんかな)

→1.ケーキを食べるふりしてペロペロしておく

2.怜にもケーキ分けたらなアカンよな…


洋榎「甘いわ~♪」モグモグ

怜「…?」

竜華「ほいセーラ、一口交換しようや」

セーラ「お、ありがとな」パクッ

洋榎「」ブフッ

竜華「?? 洋榎、どうしたん?」

洋榎「今、猛烈に恥ずかしい思いをした気分やわ…」

セーラ「はあ?」

竜華「なんや分からんけど、さっき洋榎にも一口もらったもんな。ほい」ヒョイッ

怜「…」

洋榎「甘いわ~♪」ニマー

竜華「そんなに? なんや洋榎の顔気持ち悪いで?」

怜(…)

2月――

セーラ「怜、大丈夫やろか…」

洋榎「2月に入ってから学校一回も来てへんもんなあ…。先生に聞いたら進級自体は問題無いらしいけど」

竜華「ほらセーラ、洋榎! 春季大会も近づいてきとんのやから練習すんで!」

セーラ「はいはい、分かってるて!」

セーラ(竜華のヤツ…部長として気を張ってくれとるけど、ホンマは相当心配なんやろうな…)ボソッ

洋榎(そう、やな…)ボソッ

雅枝「よし! そんなら気合い入れていくで! …お? 荒川はどうしたんや――」


ガタッ!!


憩「はあ、はあ…」

憩「大変や…怜先輩が…!」

竜華「怜が、もうすぐ死ぬかもしれへん…?」フラ…

セーラ「嘘やろ…?」フルフル

憩「今はなんとか持ちこたえてますけど…今夜がヤマです。もしかしたら…」

竜華「そんな…怜!」

セーラ「はよ病院行くで!」


雅枝「ちょい待ちや」

雅枝「自分ら…春季大会も近い今、練習もせんでどこに行く気やねん」


洋榎「お、オカン…?」

セーラ「なっ…! 何をそんなこと言うとんのや! 怜が危ないんやで!?」

竜華「今すぐ…今すぐ怜のとこ行かんと…」ポロ…

洋榎「オカン…自分、正気か?」

雅枝「ウチは正気や。他の部員の面倒も見んで3軍の子のとこに行くんか?」

雅枝「千里山が今一番必要としとんのは何や? 自分ら4人個人個人の実力もそうやろうけど…」

雅枝「5人目のメンバーを確定させることやろ。そしてその為には自分らが鍛えんとアカンよな」

憩「せ、せやかって…そんなことしてる場合やありませんよ?」

雅枝「ゴチャゴチャ言わんでええねん! 自分ら何のための推薦入学や! 特待生やと思うとんのや!」

洋榎「オカン…!」

竜華「怜…!」ポロッ…

フナQ「あの…ちょっとよろしいやろか」

絹恵「おかーちゃ…先生に一つ、提案があるんやけど」

雅枝「なんや」

絹恵「用は私ら平の部員がレギュラー無しでもしっかり練習すればええんやろ? なら…」

フナQ「今日は“ええ練習相手”を呼んでますよ」キラリ

雅枝「は…?」


??「なんやよく分からんけれど!」

??「私たちが千里山との合同練習を引き受けるのよー!」

??「せやから…あんたらは、あの子のとこに早う行き」


洋榎「こ、この声は…!」

雅枝「…」ポカーン

由子「のよー」

漫「です」

フナQ「ニヤリ」キラーン

洋榎「末原、自分…」

恭子「私と話してる暇があったら早う行ったらどうや。…そうやろ?」

洋榎「…!」

洋榎「行くで! 竜華! みんな!」


恭子「…ふう」

恭子「…」

恭子「これで、あの時の借りはナシやで…」

恭子(私が姫松に入ったのは、私の憧れたその人が姫松に入るという話を聞いたからやった)

恭子(インターミドル大阪予選、本戦…その人はそんな大きな舞台でも臆すことなく大暴れしていた)

恭子(そんなその人の姿を見て、私もあの人のようになりたいと憧れてしもうた)

恭子(そうや、高校はあの人と同じとこに行って…あの人がインハイで活躍できるようサポートするんや! …そう思った)

恭子(けど、そう上手くはいかんかった。その人は情報とは違う学校に行っとった)


恭子(私は…その人のおらん姫松で、何をしているのか全く分からんかった)

恭子(けど、善野監督と出会うて目標を見つけて頑張ろうと思うて…私はまた頑張ろうと思った)

恭子(でもその矢先、監督は倒れてもうた。理由は…その人が姫松に入らんかったからやと、思うしかなかった)


恭子(これは私の勝手な憎悪や。その人は何も悪くない)

恭子(そんな私に、その人は“待ってる”と言ってくれた)

恭子(あれだけ言ったのに、まさか私の方を激励してくるなんて思うてへんかったわ…やっぱり、その人は――)

恭子(愛宕洋榎は、私の憧れの人や――)

雅枝「絹…浩子…お前ら、これは一体なんや」

絹恵「全部浩子ちゃんがやってくれたんやで」

浩子「園城寺先輩がこうなるんは予想外やったんやけど…」

浩子「予想外の事態になった時いつでも姫松に来てもらえるようしとっただけです」

絹恵「なあおかーちゃん。ホンマはこれ、茶番の予定やったんやろ? それでも行くて言わせてチームを一つにしようって」

雅枝「…さあ、なんのことやろな」

雅枝「…はあ。絹、浩子…自分らには負けたわ」

雅枝「さて! 折角の合同練習、始めるで!」パンパン

由子「よろしくおねがいするのよー」

竜華「怜…!」ギュッ…!

洋榎「竜華…」

洋榎(…)

憩「みなさん! やりました…峠は越えたそうです。もう命に別状ないらしいですよ」

セーラ「ホンマか!? …はあ」ヘニャヘニャ

竜華「良かった…!」グスン

竜華「ホンマに、良かっ…」パタリ

洋榎「おおっ!? 竜華!」

セーラ「安心して眠ったみたいやな。憩ちゃん、怜にはまだ会えんの?」

憩「まだ安静にしとかなあかんみたいですから…。面会OKになるまで少しゆっくりしときましょ」



竜華「…ここは」ハッ

竜華「そうや! 怜!」バッ!

洋榎「おおっ!? 竜華、起きたんか…」

洋榎「大丈夫やで。怜は今ゆっくり眠ってるそうや。もう命の危険はないそうやで」

竜華「洋榎…。そっか、それなら良かったわ…」


竜華「そんで? この状況はなんやねん」

竜華「なんで私、洋榎に膝枕されとんの?」

洋榎「いや、いつも竜華に膝枕してもろうとるし…そのお返しをする千載一遇のチャンスかなあと思うて」

竜華(…///)

竜華「洋榎の膝…あんま気持ち良うないなあ」

洋榎「ええぇ… それはめげるわ…」

竜華「…」

洋榎「…」

洋榎「なあ、竜華」

竜華「何? 洋榎」

洋榎「竜華は怜のこと好きなん? その…恋愛的な意味で」

竜華「…!」

洋榎「…」

竜華「…」

竜華「私は――」

セーラ「怜が目を覚ましたで!」ダッダッ

セーラ「怜…なんだかんだ無事で良かったわ」

怜「今回ばかりはホンマに心配かけたな。ごめん」

竜華「もう…! 謝らんでもええんやて…!」グスン

憩「とりあえず、しばらく安静にしておけば大丈夫らしいですから」

怜「そっか…」

怜「…」


怜「なあ、こんなこと今話すことでもないんかもしれんのやけどな…?」


怜「ウチ、竜華のこと好きや…」

セーラ「…」

憩「…」ポカーン

洋榎「…!!」

竜華「怜…!?」


洋榎「そ、そうなんか…良かったな、竜――」

怜「けど…竜華が好きなんはウチやないハズや。そんなんは分かってる」


怜「死ぬ直前に走馬灯を見るって話あるやろ? 実はあれを見て来たんやけどな」

怜「ウチ、ホンマに竜華のこと好きやったんやな。竜華の笑顔ばっかり浮かんできたわ」

竜華「怜…」

怜「けど、竜華の笑顔の隣にはいつも洋榎がおった。洋榎とおるときの竜華の笑顔が一番輝いとった」

洋榎「え…?」

セーラ「…」

憩「…(気まずい…)」

怜「なあ竜華、竜華は洋榎のこと好きなんやろ?」

竜華「!!」

怜「それに洋榎も竜華のこと好きみたいやし…」

洋榎「え、いやそれは…//」


怜「それなのに二人が付き合うてへん理由は分かっとる。ウチのせいや」

怜「ウチが竜華から離れられへんから、いつまでも頼ってるから、やから竜華はウチのことずっと見てくれてたんや」

竜華「怜!? それは違う…!」


怜「竜華、今までありがとうな。ウチ…竜華に支えてもらわんでもちゃんと立てるようになるから」


怜「せやから竜華…幸せになってや」

セーラ「…」

憩「…(部屋から出れへん!?)」

怜「幸せになってや、竜華。そして…頼むで、洋榎」

洋榎「…!!」

竜華「と、き…」ポロッ…

洋榎(…)


洋榎「任されたで、怜…」

洋榎「ウチは竜華のこと好きや。世界で一番大好きや。怜に絶対負けへんくらい、本気で愛しとる」

怜「…やろうな」ニコッ

竜華「~~っ///!!」

竜華「…」ボロ…ポロッ…

竜華(私は…卑怯者や)

竜華(ホンマは、洋榎の気持ちも怜の気持ちも知っとった)

竜華(けど、私はどちらの気持ちにも応えんでずーっと今まで通りにしとった)

竜華(私がおったから、洋榎は千里山に来た。それで姫松の人や色んな人の運命を変えてしまったハズなのに)

竜華(私がおったから、怜もまた千里山に来た。こんな学校やなければもっとゆっくり生活できたハズやのに)


竜華(私は…二人との関係を変えられずにいただけなんや。洋榎への気持ちに答えを出さんで怜を言い訳にしてただけや)


竜華(私は…最低やな。なのに…)

竜華「なんで…」

竜華(なんで二人とも、そんな私のことを好きって言ってくれるんや…!)

セーラ「…」

憩「…(これが修羅場…)」

竜華「私も…洋榎のこと好きや。怜のことも好きやけど、怜への好きは友達としての好きや」


竜華「怜、ゴメン…私、怜の気持ちには応えられへん」

竜華「そして洋榎、今日までゴメン…。ずっと洋榎のこと待たせてしもて…私は――」ムグッ


セーラ「…」

憩「…」ブフッ


洋榎「…ふう。まさかファーストキスの場所が病院になるとは思うてもなかったわ」

竜華「…」ポー…

怜「そうやろなあ。…おめでとさん、洋榎。…竜華」

竜華「な、ななななななななな///」カアアア

洋榎「そ、そんなに恥ずかしがらんでや…///」カアアア

怜「ふふ。なんやこっちまで暑くなってきたやん。…ホンマ、温かいなあ」

怜「こんなに温かいと眠くなるわ…いや、正直もう眠い…」

怜「これで胸のとっかかりが外れたんやからな…心おきなくお休みできるわ」

竜華「ちょ、怜…!?」

怜「大丈夫やって。ちょっと寝るだけやから…」

怜(ホンマ、温かいなあ…)

怜(洋榎…竜華のこと、任せたで――)

洋榎「眠ったみたいやな。これまた気持ちよさそうな寝息立てとるわ」

竜華「洋榎…///」

洋榎「せやからそんな顔せんでや…// ていうかそんなジッとみられると照れるんやけど…////」

憩「い、いやあ~、ホンマ温かいですねえ。こんなにあっついと怜先輩も寝ちゃいますよね~」

セーラ「…」

洋榎「…」

竜華「…あ」

憩「…」ニッコリ

洋榎「ああああああああ! 憩ちゃんとセーラもおったんやったあああああああああ!」

竜華「めっちゃ恥ずかしいやんかあああああああああ!」

セーラ「…」


憩「あ、セーラ先輩は固まってますね。あまりに乙女な話題でしたからねえ…」

4月――愛宕洋榎高校3年生

春季大会オーダー(先鋒:セーラ、次鋒:絹恵、中堅:洋榎、副将:竜華、大将:憩)

雅枝「まあ、春季大会はインハイやないからな。これで十分や」

竜華「けど、やっぱり白糸台には勝てへんかった…。次こそが本番でラストチャンスやな」

絹恵「すんません…私が弘世菫にあんなに削られんやったら」

洋榎「気にすることやないって。ウチかて渋谷堯深にやられとるし」

憩「宮永照とは昨年の個人戦以来でしたけど、あれはもう人じゃないですね。けど…」

憩「次はもう負けません。絶対に…!」

雅枝「…」

セーラ「…と、それより」

洋榎「そうやな! 春季大会の打ち上げや! そして打ち上げには…」

竜華「ようやっと…怜が戻ってくる!」

怜「みんな…お久しぶりや」

洋榎「怜! まあウチらはそんなにぶりでもないんやけどな!」

セーラ「ほら、怜は特等席やで! まあ座れや」

竜華「そんなら私は怜の隣にっと」

洋榎「なっ!? いやいや竜華はウチの隣やろ! 早速浮気か!」

竜華「席順一つで嫉妬すんのやめえや。みっともないで?」

洋榎「ぐぬぬぬぬぬぬ」

怜「…二人とも、仲は良好なようやな」

憩「勿論ですよ。毎日暑くて困ってるくらいですよ」

洋榎「…///」

竜華「…///」

怜「ぷふっ! …それはそれは。ごちそうさまや」



セーラ「そういや姫松は今回も3回戦負けなんやなあ…。なんか申し訳なくなってきたで」

怜「けどそれはベストメンバーやないからやろ? あそこは即戦力に二条泉と…を入れてきてるって聞いたで?」

洋榎「末原はインハイが本番やって分かってるからなあ。あの策士、何をしてくるかホンマ分からんわ」



雅枝「あー…酒はまだかいなー!」ヘベレケー

絹恵「はいはい…部活の打ち上げやっちゅうのに何を飲んどんのやこの人は。親の顔が見てみたいわ」

浩子「ばあちゃんの悪口はやめとこうや。…それより絹ちゃん」

絹恵「なに?」

浩子「そろそろハッキリしとこうや…インハイのレギュラーは誰になるんかを!」

絹恵「…!」

雅枝「お? おおおっ? 浩子も絹もやる気があってええなあ」デローン

雅枝「ええでええで! そんなら今ここで勝った方がレギュラーや! やってまえ!」

絹恵「えええええっ!? 何を言うてんのやおかーちゃん!」

浩子「ほう…。けど、私ら二人じゃ麻雀は打てへんよ?」

雅枝「そんなら…ほらアホの洋榎! 自分も卓に入れや!」

洋榎「え、ウチ…? しゃあないなあ」

セーラ「そんならあとの一人は怜や! ほら、怜も」

怜「え? ウチは3軍やし…」

憩「まあええやないですか。ああ、でも怜先輩が勝ったら怜先輩がレギュラーになるんですかね?」

雅枝「おう、ええでええで~」デロローン

怜「ウチが、レギュラー…?」

8月――

えり「インターハイ2回戦A下ブロックは先鋒戦が終了したところです」

詠「流石千里山、流石は荒川憩って感じだねぇ。奈良の王者・小走を全く寄せ付けずにトップだもんね~」

えり「さて、注目の次鋒戦…この選手が今の千里山にはいます!」


怜「行ってくるな、みんな」

竜華「うん! 楽しんで来るんやで、怜!」

洋榎「一発かましたれやー!」


えり「このインターハイで突然現れた千里山の隠し玉、“未来が見える”? と評判の園城寺怜選手です」

詠「未来が見える? わかんね~」


怜(夢みたいやな…。竜華と、セーラと、洋榎と…みんなと同じ舞台で戦えるやなんて)

怜(みんなに感謝して頑張るで…!)



インターハイオーダー(先鋒:憩、次鋒:怜、中堅:セーラ、副将:竜華、大将:洋榎)

恒子「こ、これは…!」

健夜「予想だにしてなかったね…」

恒子「なんと! インターハイ3回戦Aブロック! 副将戦終了時点でトップは千里山! 白糸台はまさかの最下位!」

健夜「宮永照を上手く抑えた荒川憩。弘世菫を完全に封じた園城寺怜。渋谷堯深相手に3万点以上稼いだ江口セーラ」

健夜「亦野誠子から5万点を奪いついに最下位に落とした清水谷竜華…。千里山が圧倒的な力を見せつけていますね」

恒子「2位の新道寺、3位の劔谷との点差も既に5万点以上! 歴代最強の千里山、今年こそV奪還だー!」

健夜「いやいや、まだ大将戦もあるからね…?」


淡「…」ニヤリ



淡「ツモ」

洋榎「ウソやろ…?」

恒子「終了ー! 怒涛の展開を見せた3回戦、終了ー! 白糸台・大星淡、最下位から1位まで一気に大逆転ー!」

恒子「2位は千里山! この2校が決勝戦へとコマを進めます!」



洋榎「なんやあれ…。宮永照だけでも恐ろしい言うのに…」ブルブル

竜華「洋榎…」

セーラ「くっ…! アレにも勝たんとアカンのか…!」

憩「流石にしんどいですねーぇ」

怜「大星淡、か…」

竜華「洋榎、膝枕したるから少し聞いてや」

洋榎「竜華…」

竜華「洋榎、こんなことを言うのは卑怯なんかもしれへんけどな…?」

竜華「これまで、色んなことがあったよなあ」

竜華「小さな頃から麻雀の大会でよう打ったなあ。全小では辻垣内にボコボコにされて一緒に泣いたこともあった」

竜華「全中の時はセーラと3人で誰が1位か競い合って…そうや、ミナミの大会もあったなあ」

竜華「あの時洋榎が私のこと助けに来てくれて、ホンマに嬉しかったんやで? あの時惚れたんかもしれんなあ」

竜華「高校入ってから洋榎に告白されて…仲間になって一緒に打って…憩ちゃんが入ったり姫松と争ったり…」

竜華「そんで怜が私たちを結びつけてくれた。私たちは、これまでもこれからもずっと一緒や」

洋榎「竜華…」

竜華「せやからな…」


竜華「洋榎、私が…私たちがついてるで。最後まで頑張ろうや」

洋榎「竜華…。ははっ、やっぱり竜華には敵わんなあ」



恒子「さあ! 遂に今年のインターハイ団体戦も決勝戦! 出場校は――」

恒子「Aブロック1位! 3連覇なるか? 西東京最強のチーム虎姫、白糸台高校!」

恒子「Aブロック2位! 歴代最強のキセキの世代が揃った北大阪のチーム竜姫、千里山高校!」

恒子「Bブロック1位! ついに臨海女子を破ってきました長野の破王! 龍門渕高校!」

恒子「そしてBブロック2位! ここ数年は息を潜めていましたが遂に名門復活! 南大阪の姫松高校!」


恭子「ついにここまで来たで…愛宕洋榎」

和「末原主将、宮永さんを見ませんでしたか?」

由子「ええー!? また咲ちゃんはいなくなっちゃったのよー」

漫「迷子みたいですね…」

恭子「全く…あれが宮永照の妹やと分かった時はビックリしたんやけどなあ…」

姫松オーダー(先鋒:宮永咲、次鋒:真瀬由子、中堅:原村和、副将:上重漫、大将:末原恭子)

恭子(あれはインハイで負け、秋季大会でも負けた後――)

恭子(赤坂代行が私に“もっと強くなりたい?”と聞いてきた。私はあの人のこと胡散臭いとは思ってたけど…)

恭子(まさかあの人が、全中王者の原村和と宮永照の妹である宮永咲を引き入れるとは思ってもいなかった)

恭子(一体どんな手を使ったんかは私には知る由もない)

恭子(しかもこの二人の弱点をすぐに看破して強化。僅か1,2ヶ月で化物並みの選手にまで仕上げて見せた)

恭子(これで勝てる…千里山にも、白糸台にも)


咲「お姉ちゃん…」

咲「ようやく会えたね…!」ニッコリ

先鋒戦――

健夜「こ、これは…」

恒子「何が起こっているのかー! 先鋒戦が終了して…なんと全チーム±0です!」


透華「お疲れ様ですわ、純。この面子で±0なら十分な結果なのではなくて?」

純「…そりゃ褒め言葉にならねえよ」


照「…」ギリッ…!

憩(この子…)


咲「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

次鋒戦――

菫「ロン」ビシュッ

由子「ま、またやられちゃったのよー…」グスン

怜(…ウチのことは完全に無視してるみたいやな、弘世菫)

怜(まあ当然やな。あの子のSSはウチにとって絶好のカモや)

怜(また稼がせてもらうで!)


恒子「次鋒戦が終了しました。トップは園城寺選手が活躍した千里山高校!」

健夜「弘世選手からしたら相性は最悪ですね」

中堅戦――

セーラ(フナQの言うてた通りや)

和「ロン。7700の2本場は8300です」

セーラ(この原村って子は対策もなんもあれへんな。完全にガチ麻雀やわ)

堯深「はい…」

一(けど、原村和の連荘のせいで…)

堯深「…」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

一(オーラスは渋谷堯深の大三元字一色聴牌でスタート…! 地和もありうるよこれ…)


恒子「中堅戦終了ー! トップは依然、千里山高校ですが姫松がかなり追い上げてきています!」

健夜「白糸台は役満を和了ってるのに全く追いつけてない…原村選手の連荘が重かったですね」

副将戦――

竜華(ウチは、最高に幸せモンやな…)

竜華(怜がおって、セーラがおって、憩ちゃんやみんながおる。応援してくれとる)

竜華(そして何より、洋榎が居てくれる。だから…)


竜華(ここでウチが負けるはずないやろ!)ゴゴゴゴゴゴゴ

咲「…」ピクッ…

淡「へぇ…」ゾク…


フナQ「コンディションは最高…今までで一番の状態や。あれなら行けるで!」

透華「…」スウウウウウ

漫「…」ドドドド

誠子(あー)

副将戦終了――

1位:千里山 152000
2位:姫松 124500
3位:龍門渕 113500
4位:白糸台 10000

誠子「…」-50000

堯深「…」-20000

菫「…」-20000

照「…」±0

淡「何これ」

菫「面目次第も御座いません」ペッコリン

照「淡さま、どうかよろしくお願いします」ペッコリン

淡「はぁ…」

淡「ま、余裕だけどね…!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

智紀「区間1位おめでとう、透華」

透華「ええ…」スウウウウ

純(これ…アレだよな。原村に感化されたのか?)

一(うん。多分『冷たい透華』だと思う)

衣「ようやく私の出番だな…全て皆、灰燼に帰してくれる!」


泉「驚きました…」

優希「こう言うのもなんだけど、上重先輩がこんなに強いとは思ってなかったじぇ」

漫「後輩にここまで言われる私…」ズーン

由子「きょーこちゃんの采配がここ一番でついに花開いたのよー」


恭子「さあ…最後の勝負や! 愛宕洋榎!」

大将戦前半戦東一局 親:大星淡

恭子(とか言ったものの…麻雀は4人で打つもんやからな。当然他の2人にも注意せんとアカンわ)

恭子(特に――)

衣「ツモ。海底撈月! 4000・8000!」129500

恒子「出たァー! 運命を決する大将戦最初の和了は天江衣! 得意の海底撈月で倍満です!」

淡「…」2000

健夜「親被りの白糸台は首の皮一枚…まずトバされないかが気になります」

恭子(天江衣…2回戦3回戦と戦って分かっとる。こいつは宮永照に並ぶ化物)

恭子(情けない話やけどこれのおかげで永水臨海をオトせたと言っても過言やない)

恭子(私は上手く躱してきただけや。せやけど今回はそうはいかん)

恭子(狙うんは1位のみ…やったる!)

淡「…」

大将戦前半戦東二局 親:末原恭子

衣「…」ズズズズズズズズズズズ

恭子(相も変わらず自由に打たせてくれへんな。天江衣の『海の支配』…)

恭子(けど…トッププロの人たち…そして宮永との特訓で支配系能力の破り方は体で覚えた)

恭子(今の私は、天江衣よりも強い!)

恭子「ロン! 9600!」130100

衣「なっ…!」119900

衣(私の支配をこうも容易く破った…!?)

衣(2回戦3回戦の時点で奇妙とは感じていたがやはり力を隠していたか)

衣(末原恭子…!)

恭子(今大星をトバしたら私らの負けや。まずはそれで得する愛宕洋榎を抑えつつ手の遅い天江から和了っておくで…)

淡「…」ピシッ…

大将戦前半戦東二局一本場 親:末原恭子

恭子「ロン! 3900の一本場は4200!」134300

衣「ぐ…!」115700

恒子「姫松高校末原恭子、天江衣から2連続和了! まだまだ連荘は続きます!」

健夜「あの天江衣の支配を二度も破るなんて…プロの雀士でもそうそうできませんよ」

恭子(これで満貫クラスをツモればトップ捲って終了…! 次で決める!)

衣(させない…!)


淡「あーあ、もう…この私を無視するなんていい度胸じゃん…!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

洋榎「…」ポカーン

竜華「あの…流れをブチ壊してまうんですけど、どうして洋榎を大将にしたんですか?」

フナQ「私の見立てやと荒川や今日の清水谷先輩、園城寺先輩より下。しかも別段大将向きの打ち方でもあらへん」

セーラ「ああ、俺より弱いからこの中で最下位やな」

怜「どっちもどっちやろ」

絹恵「いや…ウチからしたらこれで4番5番や言うのも相当贅沢な話なんですけど」

憩「何か理由があるんですか?」

雅枝「…」

雅枝「それはな…」

竜華「…」ゴクリ


雅枝「全くあらへん!」ドン!

洋榎「アカン…天江の支配から全然抜けられへん…」ポーン

恭子「」ブフッ

大将戦前半戦東二局二本場 親:末原恭子

恭子(愛宕洋榎…。まさか本当に天江の支配についてこれてないんか?)

恭子(そんならチャンスや! 一気に捲って終わらせるで――)

淡「――ダブルリーチ」

洋榎「!」

衣「これは…!」

恒子「おーっと! 白糸台、大星淡ダブルリーチだああああ! 反撃の狼煙となるかー!?」

淡「――カン」

健夜「あれは…!」

淡「ロン! …12000!」14000

恭子(しまった…! ここで来たんか大星淡)122300

淡「アハ…。そろそろまぜてよ」ドン!

大将戦前半戦東三局 親:天江衣

恭子(マズいで…。3回戦ではあの絶望的な最下位から一瞬にしてトップまで上り詰めてた)

衣(此奴の支配も六女仙の石戸と同じく強力…ポンポン和了らせるわけにはいかない)

淡「リーチ」ゴオオオオオオオオオオオ

恒子「またまた来たァーーー! 大星選手のダブルリーチ!」

衣「う…」

淡「カン」

恭子「また、暗槓…!」


淡「ロン。ダブリー裏4で12000!」26000

洋榎「…」136000

衣(大事な衣の親番が流れた…でも、これから更に月が満ちれば私が勝つ!)115700

大将戦前半戦東四局 親:愛宕洋榎

淡「…」カタッ

洋榎「ポン」カッ

恭子(さっきから字牌はおろかヤオ中牌も出て来ん…。大星がなんか狙ってるんやろうけど)

恭子(ま、おかげでこっちは断ヤオ狙いやすくて手も早まるんやけどな…)カタッ

洋榎「ポン」カッ

淡「カン」ドドドドドドドドド

衣「う…」

衣(また暗槓…! 先程のを見る限りまたドラ4だとすると…)

衣(オリるしかないのか…)カタッ

淡(さあ、次は誰が私に振り込む…?)カタッ…


淡「…!?」ゾクッ…!?

雅枝「ってのはウソや」

竜華「はぁ?」

雅枝「洋榎の武器はセンスや勘にもあるけど何より三味線や。麻雀てのは如何に相手をダマすかが重要やからな」

竜華「…って! こ、この手は――!」


淡(え…?)

洋榎「ロン。残念やったな、大星淡…」パタタタタタタタ

恭子(は…!?)

衣(此奴…安手かと思ったらこんな手を…!?)


洋榎「清老頭! 48000!」ドン!

洋榎「思ったより…いや、こんなこと全く考えてすらへんかったんやないか?」

淡「ウソ…」

淡「こ、こんなの…考慮してない…」-22000

恒子「し…」

恒子「終了ーーーー! なんと千里山高校の大将愛宕洋榎! 役満直撃でトビ終了ー!」

健夜「…」ポカーン

恒子「優勝は千里山高校に決定しましたーーーー!」

洋榎「まさか点数がフラットになるドッグファイトとかを想像しとったやつがおるんやないかとは思ってたんやけどな」

洋榎「そんなことはさせへんて。前半戦の東場で終わってまうなんてそら誰も思わん…だからこそ狙う」

洋榎「これが…愛宕洋榎や!」ドン!

洋榎「ま、清老頭自体は偶然やけどな。インハイで役満和了ったん初めてやし」ドキドキ

衣「…」

淡「…!」フルフル

恭子「は、はは…」

恭子(これは…敵わんわ。完敗や…)

雅枝「何が偶然やボケェー!」バタン

セーラ「インターミドルの時と言いお前はどうにもしっくり来ない終わらせ方をすんなやー!」ビシッ

洋榎「痛い痛い痛い! ちゃんと役満で終わらせたやろ! それにまず褒めてや! キスしてくれてもええんやで…?///」

怜「こんなんに竜華を任せてええんか分からんくなってきたわ…」

憩「エンターテイメントが分かってないですねーぇ」

フナQ「大阪人失格やな」

絹恵「お姉ちゃん…これはアカンよ」

洋榎「えぇーーっ!? 勝ったのに何やのこの熱いバッシング!? もっと褒めてやー称えてやー」ダンダン

竜華「そ、そうやで…洋榎は日本一や」

洋榎「せやろー? さすがやろー?」ダンダン

雅枝「お前世界一のアホや」

洋榎「なんで!?」

淡「…」ギリッ…!

淡「こんな…こんなの認めない! さっきまで全然覇気の一つも感じなかったのに…」

淡「ちょっと運が良かっただけで私に勝ったなんて許せない!」

洋榎「はぁ? そこの1年は一体何を言ってるん?」

淡「みんなテルより弱いくせに!」

洋榎「…まあ、そうかもな。ウチは宮永照はもちろん、多分チームで一番弱いわ」

淡「アハ。だーと思った。なら…」

洋榎「けどな。麻雀ってそういうもんやで。運で決まることもある競技なんや」

淡「なっ…! だから」

洋榎「ま、リー棒出して後は牌動かすだけの作業をやってるやつには分からんことやろうな」

淡「!!」

洋榎「この勝負の結果が不服なら、今度はプロになってから再戦受けたるわ」

洋榎「それまで『楽しく』実力を磨いておくんやで」

淡「…」

洋榎「ふう」

セーラ「なんやアホの洋榎のくせにえらいこと言いよるなぁ」

絹恵「偶然役満和了れただけやのになぁ」

洋榎「えぇ…? 絹ちゃんまでそんなこと言うん?」

竜華「そ、そうやでみんな。洋榎は今大事なこと言うたんやで」

怜「…」

憩「…」

フナQ「ほう」ニヤニヤ

竜華「え? ええ? な、なんなんみんな…」

怜「やっぱヨメには格好良く写るもんなんやな」

竜華「~~~~っ!?」///

憩「本当に暑いですねーぇ。もうアツアツなんで表彰式まで二人でいてもらいましょうか」

竜華「…///」

洋榎「…///」

洋榎「な、なぁ…」

竜華「ひ、洋榎! そ、その…膝枕する?」

洋榎「ひ!? あ、ああ膝枕な! そうやな。それならお願いしよかな」ドキドキ


竜華「…優勝したんやな、私たち」

洋榎「そ、そうやで」ドキドキ

竜華「これは本当に、洋榎のおかげやな…。洋榎がいてくれたから優勝できて…」

洋榎「そんなに言われたら照れるわ~。いや、優勝はチームみんなの実力やって」

竜華「ううん。洋榎がウチと一緒に千里山に来てくれたおかげや」

洋榎「竜華…」

竜華「洋榎が入ってきたから憩ちゃんが同じチームになったんやし…」

竜華「セーラも近くにライバルがおるからいい刺激になるって言ってたし…」

竜華「怜も洋榎のおかげか元気になったし明るくもなった」

洋榎「…」

竜華「それにウチも、洋榎がいてくれて本当に幸せや」

洋榎「…ああ、ウチも」

竜華「だから…」

洋榎「…」トクン

竜華「今度は、ウチの方から感謝のキスや…」

そうして数年後―――

恒子「さあ! プロ麻雀リーグ日本シリーズも最終戦!」

恒子「帝王・小鍛治健夜率いるブリージングチキンズに食い下がるは新進気鋭の若手軍団プリンセスタイガース!」

恒子「今年こそアラフォーのすこやんは玉座を若者に譲ってしまうのかぁー!?」

良子「ちょ、福与アナそれは」


セーラ「よっしゃー! 勝つでー!」

憩「おー!」

怜「ま、無理だけはせんように頑張るわ」

恭子「対策は昨日伝えた通りやからみんな落ちついて下さいね」


洋榎「…なぁ、竜華」

竜華「?」

洋榎「この試合が終わったら…渡したいものがあるんやけど」

洋榎(ウチはある日、竜華を追いかけて千里山に入学した)

洋榎(ウチに竜華にセーラ。それに憩ちゃんや怜までおるから千里山はそりゃあ最強で、優勝もできた)

洋榎(…もしあの時、ウチが姫松に入ってたらどうなっていたんやろうか)

洋榎(…)

洋榎(ま、もしかしたらのことなんか考えんでええよな…だって)


洋榎「竜華、ウチと結婚して下さい」

竜華「洋榎…!」


洋榎(ウチは…こんなに幸せなんやから)

洋榎「あ、籍は清水谷姓でお願いな。なんや格好いいし」



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