夢追人-YUMETUIBITO-(199)
君たちは夢追人という存在を知っているだろうか。
彼らは人の夢を、人の想いをその人間へと提供する商売をしているという。
いうなれば"人間の理想"を、"人間の夢"を操るのである。
しかし…それが実在するのか誰にもわからない。
ただ…狂い、夢を見れなくなった、夢を追えなくなった現代。
彼らの存在はまさに"夢"のようなものであるには違いない…
That's where the story begins!
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【夢 追 人 ― YUMETUBITO ―
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Don't miss it!
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――――【 とある飲み屋 】
グビッ…カランカラン…
青年「っていう話さ。少し気になるだろ?」
会社員A「…まさに夢の話だな」ハハッ
会社員B「夢追人ねえ」
青年「そんな人がいたら、どんなことお願いするよ」
会社員A「俺は女がいいわ。あー…いや、金だ。金!」
会社員B「金なぁ。欲しいよなぁ~」
青年「は~お前らバカかよ」
会社員A「あぁ?じゃあお前何お願いするんだよ」
青年「金は欲しいが、ただの金じゃすぐ使い切っちまうだろ」
会社員A「じゃあどうするんだよ」
青年「夢はでっかくだろ。例えば、有名な会社の社長が目の前で倒れてさ…」
会社員A「それを助けて、立派な男だな、君は将来の社長にしたいー…ってか!?」ハハハ
青年「おい!俺のセリフ!!」
会社員A「そして令嬢と結婚して、すばらしい未来をってか!?」ハハハ
青年「なんか、ただ金を手に入れるよりそっちのほうが未来ねぇ?」
会社員A「令嬢と結婚とか、固定されすぎんだろその未来」
会社員B「だよな。やっぱりとにかく目の前に金貰ってさ、あとは自由に生きたいじゃん」
青年「…うーん」
会社員A「お前は現実を知らないからそう言えるんだよ」
青年「あぁ?俺だって社会人だっつーの」
会社員A「俺らみたいに会社員になってみろよ。嫌でも現実を知るぞ」
青年「俺だって自営業で色々やってるの知ってるだろうよ」
会社員A「いやそういう事じゃなくてな。まずは人の下で、命令されながら仕事してみろよ」
青年「…人の下だ?そんな辛いか?」
会社員A「そうだっつーの。つーかさ、そんな夢より目の前の現実だろ」
会社員B「だな…俺らは明日からまた早朝出勤だし、そろそろ帰るか」フワァ
青年「俺も自営業のほうがあるからな…もう11時だし良い時間か」
会社員A「店員さん、勘定~!今日は俺が払ってくるわ」
店員「はーい」パタパタ
期待
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会社員A「ふ~飲んだ飲んだ…。ところで、お前は自営業で何取り扱ってるんだっけ?」
青年「海外雑貨とか、色々な販売だって。ま、まぁ売れてるほうだぜ?」
会社員A「俺らから見たら、そんな生活は羨ましいわ。自由って感じで」
会社員B「そうだな」
青年「…」
会社員A「んじゃあな、また飲もうな」
青年「おう…」
タッタッタッタッタッタ…
青年「…」
青年「…」
青年「…っち」
…トコトコ
青年「何が自由な感じだよ。どうせお前らは、俺のこと見下してるんだろうよ」
青年「夢を追って何が悪い…。夢すら追えないお前らが言うセリフかっつーの」
…ッペ!!
青年「ふん…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガタンガタン…ガタンガタン…
トコトコ…
青年「はぁ…わかってんだよ…」
青年「俺は夢を追いかけて、気づけばもう20半ば…お前らと比べて…落ちこぼれてるってよ…」
青年「でもよ…あーーーーっ!!くそっ!!!」
ゲシッ…カランカランッ!!!
…ゴツッ
男A「いって…何だ」
青年「いっ!やっべ…」
男B「あ?何、どうしたの?」
青年「…」
男A「何か空き缶が頭に当たったんだけど…」チラッ
青年「…っ」
男A「あいつか…この野郎…」イラッ
男B「…は?何、俺の友達に何か用?空き缶ぶつけたかったのか?」ジリッ
青年「い、いや…その…」
男A「ちょっとこっち来いよ。おい!」
青年「ごめんなさいっ!」ダッ
男A「あっ、コラァ!」
男B「待てやぁ!!」
ダダダダダダッ!!!
青年「くっ…くそぉぉ…結局、俺の人生…こんなもんかよ…!!」
ダダダダダダッ…!!!
青年「…何が夢を追うだよ、何が将来だよ…」グスッ
青年「俺がよくわかってる…どうせ俺の未来なんかないんだよ…!」
青年「夢を追って、こんな日常…!未来なんか…クソ喰らえだバカやろう!!」
青年「俺は…夢追い人なんかになるんじゃなかった…!!!」
パァッ!!…
青年「うわっ!?ま、眩しい…!?」
ドサッドサッ!!!
青年「…な、何だ今の音!?」クルッ
男A「」
男B「」
青年「…な、あれ?男たちが倒れて…る?」
…キョトン
青年「なんで…?」
???「…こんばんわ」
青年「…え?ど、どこにいる?」
???「こっちだよ」
青年「え?」クルッ
???「…」ニコッ
青年「う、うわっちけぇよ!!…だ、誰だ!?」ビクッ
???「ひどいなぁ…。今、僕を…呼んだよね」
青年「え?いや…誰…?」
???「…え?」
青年「俺を…助けてくれたのか?」
???「ちょっと眠ってもらったんだよ。結果的に助けたことにはなったみたいだけど」
青年「…誰か知らないが…あ、ありがとう」
???「…」
青年「…」
???「まぁそれはいいよ。で、呼んだでしょ?今、僕を」
青年「…いや、え?何が?」
???「…あれぇ?」
青年「え?…だから、誰?」
夢追人「…僕は、夢追人。君に呼ばれてやって来たんだけど…」
青年「…は?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【青年のアパート】
…ストン
青年「で、お前が夢追人だって?」
夢追人「そう」
青年「冗談だろ」
夢追人「冗談じゃないよ」
青年「…お前を家に入れる俺もどうかしてるわ」ハァ
夢追人「お酒をたくさん飲んでるみたいだからね。そんな人のほうが僕も商売はしやすいんだ」
青年「…お前、俺が酒を飲んでる所から見てたの?」
夢追人「顔が少し赤いし、よっぽどお酒を飲んだってことでしょう?」
青年「…探偵みたいだな。気持ちわりぃ」
夢追人「そういう事言われると、少し悲しくなるよ」
青年「つーか、お前が本当に噂の夢追人なら証拠出してみろよ」ハハハ
夢追人「…いわれると思ったよ」
青年「当たり前だろうが。偽者だったとしたら、お前を叩き出してやるよ」フンッ
夢追人「じゃあ、例えば…こんなのはどうだろうか。お金を手に入れるって事…」
青年「金?いいねえ。じゃあ、ほら、出してみろよ」
夢追人「…」
青年「ほら、早く。出してみろって」
夢追人「…」
青年「…できねえのかよ」
夢追人「…」
青年「おい。だんまりかよ、コラ。聞いてるのか…!」
ピンポーン…
夢追人「…」
青年「ちっ…誰だよこんな時間に…」
トコトコ…ガチャッ
隣人「あの、青年さん」
青年「ん?隣人さん、どうしたんですか?」
隣人「実は、さっき高架橋の下で青年さんが男に追われてるのみかけまして」
青年「あ~…」
隣人「その後通ったら、財布が落ちてました。これ、あなたのですよね?」スッ
青年「え?」
隣人「怖くて助けられませんでしたけど、財布は無事っぽくてよかったです。じゃっ」
青年「え、いや」
…バタンッ
青年「…」
ゴソゴソッ…
青年「5万円…」
夢追人「…」
青年「…」チラッ
夢追人「…信じた?」
青年(隣人さんとは度々飲むし、俺の財布を知ってるはずなんだけど…)
夢追人「その財布が君のものだって認識させただけさ。財布が知ってるとかの問題じゃない」
青年「!…お前、今俺の心を…」
夢追人「…今度こそ、信じたよね?」ニコッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢追人「…」ズズー
夢追人「急にお茶を出すなんて、わざわざありがとう」
青年「お前が本当に夢追人だとして…何で俺の前に現れた?」
夢追人「君が呼んだからだって」
青年「…呼んでないぞ」
夢追人「あれ~…?」
青年「あ…もしかして…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年「俺は…夢追い人なんかになるんじゃなかったっ…!!!」
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青年「…あれか?」
夢追人「まぁそれも、かな」ゴクゴク
青年「それも?」
夢追人「…参ったな。もしかして本当に知らないの?」
青年「だから知らないって」
夢追人「…参ったなぁ」
青年「…一体何だ?」
夢追人「また怒られちゃうよ…。まぁ…仕方ないか」ハァ
青年「だから説明しろって。いったいどういうことだ?怒られるとか、どうして現れたかとか」
夢追人「夜…満月の夜。夢を追うと…3度叫んだ人間に、僕らは現れるんだよ」
青年「ふむ…」
夢追人「僕だけじゃないんだよ。こういう事を生業にしてるのはね」
青年「…は、はぁ。そうなのか」
夢追人「まぁ簡単に言うと、そういうわけ。意図せずに呼ぶなんて…」ハァ
青年「悪かったな。だけどまぁ、何かの縁ってことにしてさ…夢かなえてくれよ」
夢追人「…まぁそうか。いいよ…夢、叶えてあげるよ」
青年「え…マジで?」
夢追人「本当さ」
青年「マジで?本当に?ウソじゃなくて?」
夢追人「呼ばれて現れた限りは、仕事はさせてもらうよ」
青年「マジかよ…マジかよぉぉ!」
…ドンッ!!!
隣人"「せめて少し静かにしてもらえませんか!」"
青年「…静かにな」
夢追人「忙しい人だな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢追人「お茶、もう1杯のお代わりありがとう」ズズズッ…
青年「で…何でも叶えてくれるのか?」
夢追人「…そういうわけじゃないよ。その人間の追える夢の範囲で叶えられる」
青年「どういう事だ?」
夢追人「…例えば、蟻が大企業の社長になれるかい?」
青年「無理だろ」
夢追人「そういうこと」
青年「は?」
夢追人「その人間が、本来出来るであろう範囲で回さないと、この社会自体が崩れる事になるんだよ」
青年「何でだよ」
夢追人「何の技術も持たない人間が、有名な車メーカーの社長になったとする。どうなると思う?」
青年「幸せになる」
夢追人「…」ハァ
青年「何だよ」
夢追人「経営の技術がない人間が、そのメーカーを潰すことになるでしょう」
青年「…なるかもな」
夢追人「そしたら、世界への影響だってある。その1つで、社会が崩れる可能性があるということだよ」
青年「じゃあ、大きな夢は叶えられないのか?」
夢追人「まぁそこは追々。で…君の査定に関して。勝手だけど君の人生を軽く見せてもらったよ」
青年「査定かよ…」
夢追人「君は努力をしてると周りに豪語する割りに、ずいぶんと楽な人生を送ってきてるんだね」
青年「…うるせえよ」
夢追人「社会で生きるスキルはあるようだけど、特別なワケでもないし…ね」クスッ
青年「ケンカ売ってるのか、オイ!!」ガタッ
…ドンッ!!!
隣人"「…あのさ!」"
青年「…すいません」
夢追人「そういうところも含めての査定だよ」
青年「ああ…そう」
夢追人「まぁ、まずは君の夢を教えて」
青年「夢?そりゃ…大企業の社長を事故から救って、その次期社長を継ぐとかさ」
青年「そして、その社長の美しい娘と結婚して、幸せな家庭を築くこと…なんてどうだ」ハハ
夢追人「…なるほど」
青年「まさか、できるのか?」
夢追人「それで、本当に良いんだね?」
青年「…何っ!」
夢追人「君に見合ったものになるけど、それでいいなら…」ニコッ
青年「た、頼む!すぐにでもやってくれ!」
夢追人「慌てないで」
青年「…っ」
夢追人「もう1度落ち着いて聞くよ。本当に、それでいいんだね?」
青年「…いい。頼む」
夢追人「わかった…じゃあ、僕の指を見て」スッ
青年「お、おう」ジッ
夢追人「…」
青年「…」
夢追人「3、2、1…」
…パチンッ!!!
青年「!」
夢追人「…君は眠りに落ちる。静かに…静かに…闇の中に…」
青年「…ぉ」クラッ
フラフラ…ドサッ…
青年「…」スヤスヤ
夢追人「ふふ…明日、君は目を覚ましたら…夢は始まる。紛れもない現実という名の夢がね」
夢追人「お茶、ご馳走様でした。また会いに来るよ…」
トコトコ…ガチャッ、バタンッ…
本日はここまでです。ありがとうございました。
>>7
期待ありがとうございます。
おつです
新作おつ
ダークファンタジーで依頼主の夢を叶えるって笑ゥせぇるすまんだな
ありがとうございます。投下致します。
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――――【 次の日・外 】
青年「やれやれ、昨日は変な夢を見たな…」ハァ
青年「酒に酔ってるとはいえ、夢追人なんて…」
青年「とりあえず…コンビニで朝飯かってもう一眠りかな…」フワァ
…バキッ!!…ドサッ!!
青年「ん?」
男A「…金出せよ、オイ!」
男B「持ってるんだろ?」
青年(げっ!あいつらは昨日の…何してんだ?)
初老「…お金は今は持ってない…。勘弁してくれ…頼む…」
男A「いい服着て、持ってないこともないだろうが。財布出せばいいんだよ、財布をよ」
男B「しかしツイてねーよな、お前も。空き缶ぶつけられて、財布落とすなんてよ」ハハハ
男A「昨日のあんのクソ野郎…」イライラ
男B「はははっ!」
青年(お…俺のせいか…!)
初老「…うう」
男A「さっさとしろや、コラァ!」ブンッ
…バキィッ!!
初老「ごほっ…や、やめてくれ…」
男A「ないならATMでも何でも下ろせや!おい!」
男B「こいつ切れやすいから早くしたほうがいいぜ」ククク
青年(…俺のせいじゃない、俺のせいじゃない、俺のせいじゃない…)ビクビク
男A「…あー、もう我慢ならねえ。そこのパイプとってくれ」
青年(!?)
男B「ほらよ」スッ
男A「こいつで頭カチ割って、気絶したら全部奪っちまおうぜ」
男B「ナイスアイデア!」
初老「…っ」
青年(あいつらバカか!?あんなので殴ったら、気絶じゃすまねぇぞ!)
男A「覚悟しろよ…」ググッ
初老「ひっ…」
青年「…っ!!」
男A「オラァッ!!」ブンッ
青年「…お、お巡りさん!こっちです、こっちでーす!」
男A「!?」
男B「えっ!」
男A「け、警察だって!?」
男B「やばい、逃げたほうがいいって!」
男A「く、くっそ…!」
パッ…ガランガランッ…!!
男A「本当にツイてねえぜ…くそっ!」ダッ
タッタッタッタッタ…
初老「た…助かった…?」
青年「だ、大丈夫ですか?」ビクビク
初老「君が…助けてくれたのか…?」
青年「警察はウソですけどね…。戻ってきたら大変だ、急いで離れましょう」
初老「し、しかし腰が…」
青年「背中を貸します。急ぎましょう!」グイッ
初老「…すまない」
青年(俺のせいだなんて、口が裂けてもいえねぇ…。せめても罪滅ぼしだよ…!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 カフェ 】
初老「…ありがとう。助かったよ」
青年「いえいえ」
初老「…あのままでは明日の朝刊に載ってたかもしれなかったな」
青年「…」
初老「ところで君の名前は?」
青年「青年と申します」
初老「そうか…。お礼がしたいんだが、このあと時間はあるかい?」
青年「お礼なんてとんでもないですよ」
初老「しかしこのままでは私の気がすまない」
青年「ん、んーむ…」
初老「遠慮はしないでくれ」
青年「そこまで言うなら…」
初老「はは、それでこそ。この近くに、私の持ち場があるからね…行こうか」
青年「…持ち場?」
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――――【近くのオフィスビル】
トコトコ…
初老「さて、この6Fだ」
青年「一体どこに行くんですか?」
初老「なぁに、ちょっとした仕事場だよ。私はこれでも小さな事業をしていてね」
青年「!」
初老「さぁ着いた」
…ウィーン
社員「お帰りなさい、社長」
会社員A「お帰りなさい社長」
会社員B「お帰りなさいです」
青年「あっ!」
会社員A「あっ!」
会社員B「お、お前!」
初老(社長)「何だ?知り合いなのか?」
青年「ま、まぁ一応…友達です」
初老「そうなのか、偶然とはいえ…」
会社員A「な、何でお前…社長と一緒にいるんだ?」
青年「まぁ色々あって…って、社長!?」
社長「はははっ」
青年「ここの社長さんだったんですか…」
社長「とりあえず社長室においで」
青年「あ、は…はい」
トコトコ…ガチャッ…バタンッ…
会社員A「一体…何なんだ?」
会社員B「…さぁ」
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――――【 社長室 】
社長「…よいしょ」ギシッ
青年「…」
社長「さて、改めて挨拶しよう。私はこの会社を運営しているんだ。よろしく」
青年「あ、よ…よろしくお願いします」ペコッ
社長「…」フゥ
青年「…」
社長「…何をお礼にしたらいいものか」
青年「いえ、何もいりませんよ。当たり前のことですし」
社長「…君ほど欲のない人間も珍しいな」
青年(社長が襲われたのは俺のせいだっつーの!)
社長「今、君は何か働いたりしているのか?」
青年「えっ」ドキッ
社長「なんだ…言葉が悪いが、私服でこの時間からフラフラと…」
青年「そ、その…」
社長「あぁいや、いまどき珍しい事じゃないからな。気を悪くしたなら謝るよ」
青年「い、いえ…違うんです」
社長「…ん?」
青年「俺は一応、輸入雑貨などをネットで販売したり、日本のものを海外販売しているんです」
社長「ほう?」
青年(つっても趣味の域だし、月10万も稼げないし…。本格的にやってるわけじゃないんだけどね)
社長「面白いな。それは君一人でやっているのかい?」
青年「まぁそうなります」
社長「…ふむ。青年君、君はここでその…自分の事業をやりたいと思わないか?」
青年「え?」
社長「私の会社はネット広告事業でね。新たな分野にも手を出そうとしていたんだ」
青年「!」
社長「ある程度の利益があるなら、我が社でもやれるだろう。…どうだ?」
青年「それは、俺をこの会社に雇ってもらえる…と?」
社長「いきなり事業部長は無理だが。その分野を切り開く一人のメンバーということになる…が」
青年(まじかよ、これって社長公認で働けるってことだよな)
社長「君が気乗りしないならいいんだ。別にお礼を考えようと思う」
青年「…ください」
社長「ふむ?」
青年「やらせてください。俺を、ここで働かせてください!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、俺は新人としてこの会社へ入社した。
新たな事業として、小さな物だったが新たな世界への第一歩。
その初期メンバーとして参加させられ、ある程度の経験を持つ俺は仕事をこなす事が出来た。
やがて多忙になった頃には夢追人のことなど頭になく、
ただただ仕事に追われ、毎日を一生懸命過ごしていった。
そして…
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2 年 後 】
社長「…君を会社にいれたのは正解だった。あの出会いは偶然じゃなかったのかもしれん」
青年「いえ…。こんな俺を拾っていただいて本当に感謝しています」
社長「君に良い話があるんだが…」
青年「良い、話ですか?」
社長「取引先の社長の娘さんが、お見合いの話を考えているらしい。どうだろうか」
青年「お、お見合い!?」
社長「…青年君に別に付き合っている女性がいるというなら無理強いはしないよ」
青年「…見せていただけますか?」
社長「うむ…これだ」
ゴソゴソ…パサッ
青年(…か、可愛い!俺より少し年下か…?)
社長「気に入ったのなら、こちら側としても君を推薦したいんだ」
青年「…本当ですか」
社長「もちろんお見合い後、の色々な話もあるだろうが。どうだ?」
青年「是非、お願いしたいです」
社長「そうか!わかった、すぐにでも連絡をしておくよ」
青年(ははは、上々、上々…!)
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 夜・飲み屋 】
会社員A「…お前、すごいよな」
青年「ここでこうして飲むのも久しぶりだよな」フッ
会社員B「あの時、お前が一緒の会社で働くことになるなんて思わなかったわ」
青年「俺だってそうだよ」クク
会社員A「仕事も順調だし、社長にも気に入られてるし、金も入ってるだろ?」
青年「正直、結構入ってるぜ。人生ってこんなに楽しいんだな」
会社員A「お前…少し変わったよな」
青年「そうかい?」グビッ
会社員A「あ…あぁ」
青年「だけどよ…もっと金があれば、テレビの中の人みたいに豪勢な生活も出来るんだろうなぁ」
会社員A「…」
青年「今日の払いは俺が持つぜ。好きなもん頼めばいいさ」
会社員A「そ、そうか…」
会社員B「あ…ありがとな…」
青年(ふんっ、金を持ってると思った途端、急に上目遣いしてやがるんだろ)
青年(たどたどしい感じしやがって)
会社員A「…だけどまぁ、お前が夢を追いかけないで現実的になったってことだよな」ハハハ
青年「夢?夢より現実だろ?」ククッ
会社員A「ま、まぁ…だよな」
青年「夢を追いかけるなんて、所詮は二流のやることで…」ハッ
会社員A「?」
青年(夢追人…すっかり忘れていた。このシナリオ、まさか…)
会社員A「…どうした?」
青年「い、いや。ちょっと」ガタッ
会社員A「あ、おい…どこに行くんだ」
青年「ちょっと外の空気吸ってくる!」ダッ
会社員A「…?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年「…」ハァハァ
…ボウッ
青年(よし、今日は満月…だな。確か満月の夜に…3度の言葉…)
青年「夢を追う、夢を追う…」
青年「夢追人っ…!!!」
青年「…」
青年「…」
シーン…
青年「…何も、起こらない?」
青年「…やっぱり、あの時は悪酔いしてたのかもな」ハハッ
…カツン
青年「…え?」
カツッ…カツッ…カツッ…
青年「…あ!」
夢追人「…久しぶりだね」
青年「…夢追人っ!!」
夢追人「必ずもう1度呼ぶと思っていたよ。まぁ、そうするようにしているんだけどね」ニコッ
青年「教えてくれ。今日までの人生…この俺の人生はお前の仕業なのか!?」
夢追人「…」
青年「…」
夢追人「…そうさ。あの時、暴漢に襲われていた社長から始まった事…全てがね」
青年「…」
夢追人「あの日、君が空き缶を蹴らなければもっと別の展開もあったかもしれないけど」クスッ
青年「全ては仕組まれていた事だったのか?俺が空き缶を蹴ったことも?」
夢追人「まさか。全ては偶然だよ。僕らはそこから運命を少しイジって夢を掴ませるだけさ」
青年「…」
夢追人「…話はそれだけ?」
青年「…いや、もう1つ。お前の目的はなんだ?俺の幸せだけをしたって、お前の得にはならないだろう」
夢追人「…」
青年「代償は?お前が欲しがるものは何だ?」
夢追人「…」
青年「ここまでの幸せだ。相当な代償があるんじゃないのか?…金か!?」
夢追人「…」
青年「金なんだな!?」
夢追人「…まぁ、落ち着いて」
青年「…ぬぐ」
夢追人「本題に入ろうと思う…僕らの本当の仕事は…ここからなんだよ」ニタッ
青年「…何?」
夢追人「君が望んだ幸せは、本当にコレだけの事だったのかい…?」
青年「?」
夢追人「もっともっと、大きな会社に、もっともっと美しい女を抱くこと…だったんだろう?」
青年「そ、そりゃ…」
夢追人「今は苦労してないだろうけど、もっと金があれば…好きな事だって出来るんじゃないかい?」
青年「…出来るだろうな」
夢追人「…出来るよ。させてあげるよ…」
青年「な、何!」
夢追人「今の倍のお金、いや…お金だけじゃない。もっと君が望む夢を追いかけさせてあげるよ…」ニタリッ…
青年「…っ!」ゾクッ
夢追人「どうだい…?」
青年「だ、だけどよ。お前、自分で言ってたじゃないか!叶えられる夢には限度があるって!」
夢追人「へぇ!よく覚えてたね」
青年「社会が壊れるってよ…それはどうなるんだ」
夢追人「"僕ら"は夢追人。本当は…不可能なんてないんだよ…」ゴゴッ
青年「…」ゴクリ
夢追人「改めて…聞こう。君の望む、本当の夢は…何だい?」
青年「お、俺の…本当の夢…」
夢追人「…」
青年「い、いや待て。待て待て待て!」ブンブン
夢追人「…どうしたの?」
青年「だから聞きたい。お前は何でここまでする?お前のメリットはなんだ!?」
夢追人「ははぁ、怖いんだね」
青年「当たり前だろ!世の中、うまく回ることなんて有り得ない!」
夢追人「意外と度胸がないんだね」
青年「まずは聞かせてくれ。お前の望むものは…一体何なんだ!」
夢追人「…仕方ないな」
青年「…」
夢追人「僕らが君から貰うもの…それはね…」
青年「…」ゴクッ
夢追人「君の命…」
青年「!?」
夢追人「何てね…冗談だよ。本当の欲しいものは君の夢の欠片だよ」
青年「…夢の欠片?」
夢追人「君が望んだ夢の一部。何がなくなるかは僕にも分からないよ」
青年「な、何を言ってるんだ?」
夢追人「何度も言うけど、その人にはその人の追える夢の範囲がある。要はお皿みたいなものなんだ」
青年「…ふむ」
夢追人「大きすぎた夢は、やがて皿から零れ落ちる…不幸となって。それを僕らは頂くってわけ」
青年「不幸!?」
夢追人「…」
青年「ま、待て。その不幸ってのはなんだ!」
夢追人「大それたことじゃないよ。ほんの少し、危険信号で君に警告される」
青年「…そこまで大きな不幸じゃないってことか?」
夢追人「まぁ…ね。でも、余裕だからって一気に詰め込み過ぎると…お皿は割れちゃうから」
青年「割れたら…どうなる?」
夢追人「皿は人。乗せる物は夢。夢は現実に。皿が割れるということは…分かるよね」
青年(…死!)ゾクゾクッ
夢追人「まっ、さっき言った通り、割れる前のお皿には何かしらの形で注意を呼びかけるからね」
青年「…わかった」
夢追人「…で、どうするんだい?」
青年「ん~…ちょっと待て。俺の器はこれが限度なんだろ?」
夢追人「ん?」
青年「俺の叶えられる夢の範囲は、今の生活が最高なんだろ?これ以上の夢を追えるのか?」
夢追人「めいっぱいに入れるってことさ」
青年「?」
夢追人「コップの水をいっぱいに入れても重力に惹かれるように、人々の夢も同じ。簡単に言えばだけど」
青年「なるほど…こぼれそうでこぼれないってことか」
夢追人「そんな感じ」
青年「ふーむ」
夢追人「…昔はね、大きな皿を持っていたのに望み過ぎて割っちゃった人とかも大勢いたんだよ」
青年「勿体ない話だな」
夢追人「歴史上で大成した後に、何故かポっと死んじゃった人が大勢いるでしょう。大体僕らのせいだよ」クスクス
青年「…!」
夢追人「それじゃ、もう1度聞くよ。君は…まだこれ以上の高望みを…するのかい?」ニコッ
青年「ま、待てよ。ちょっと考えさせてくれ」
夢追人「仕方ないな…まぁいいよ、時間はある。ゆっくり考えて」
青年(…今のままでも充分に幸せだ。社長は俺を可愛がってくれたし…)
青年(だけど、一生は短い。目の前に幸せのチャンスがあるのに、掴まない人間はいるのか?)
青年(俺に幸運があれば、周りの人間なんて知ったことじゃない…)
青年(自分の限界はあるらしいが、俺は俺の中で望みを止めることはできる…必ず)
青年(そうだ。きっと大丈夫…、一度きりの人生…!挑戦しなくて何になる!)
青年(そう…、大丈夫。俺は目の前のチャンスは逃さない…!)
青年「…いいぜ」ボソッ
夢追人「…おっ」
青年「俺は…新しい夢を追う。追わせて貰う」
夢追人「…いいの?」
青年「あぁ当たり前だろ!世の中はやっぱり金だ…金さえあれば何でも出来るって気づいたんだよ!」
夢追人「…そう。本当に、いいんだね?」
青年「しつけえよ!もう、決めたんだよ」
夢追人「…わかったよ」
青年(何だ?妙な目をしやがる)
夢追人「…どうせ」ボソッ
青年「あん?」
夢追人「な、何でもないよ!さっ、また指を見て…」スッ
青年「また、眠らされるのか。あ…待て。まだ酒場に俺の友達とかがいるんだよ」
夢追人「大丈夫。上手いことやるよ」
青年「そ、そうか…」
夢追人「…3、2……、1…」パチンッ!!
青年「へ…へへ、これで目が覚めたら…大金持ち…か…」クラッ
夢追人「…」
青年「…頼んだぜ…夢つ…い…人…」
…ドサッ
夢追人「…せいぜい自分に飲まれないようにね…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
本日はここまでです。ありがとうございました。
これはこれは
いままでとちがったkんじ
ところで夢追人をゆめおいびとじゃなく、ゆめついびとって読んでるのはわざとなの?
ありがとうございます。投下致します。
>>85
一応、ちょっと変えてタイトル・話を進めております。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 次の日 】
青年「…っ!」ガバッ
青年「…」
青年「…」
青年「ん…?」
青年「…」
青年「そ、そうか!夢追人にまた会って…」
ムクッ…ドタドタ
青年「これで、今日から俺の新しい人生が始まったってわけだな!?」
青年「何が待ってるやら…!とにかく…外だ!」ダッ
タタタタタッ…ガチャッ、バタンッ…!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トコトコ…
青年「…とりあえず外に出たが、どうしたもんか」
青年「つーか今日、出勤日だったな。サボっちまった…」
青年「い、いや!そのくらい…。俺は大金持ちになってやるんだ!」
…シャイマセー
青年「…ん?」
クジ売りアナウンス『宝くじ、3億円ジャンボ~♪』
青年「…そういう、ことか?」
トコトコ…スッ
青年「3億の宝くじ、1枚くれ」
販売員「あ~…申し訳ありません。今日の分は既に売切れてしまいました」
青年(…違う?)
販売員「ですが、今ならスクラッチクジが余ってますがいかがですか?」
青年「…1セット貰おうか」
販売員「分かりました、10枚で2000円になります」
青年(たかだか100万のお金を手に入れたってなぁ…)
販売員「ではこちらになります。ありがとうございました」
青年「あいよ」
トコトコ…スッ
青年(とりあえず削ってみるか…)
スッスッスッスッスッス…
"ハズレ"
青年(ハズレ…)
スッスッスッス…
"ハズレ"
青年(これもハズレ…これも…)
青年(ハズレ…ハズレ…ハズレ!!)
青年(く…くっそ、はした金だがこういうのはいつまでもイライラするな…)
販売員「どうしますか?まだ買いますか?」
青年「いらねえよ!」
販売員「…怒鳴らなくても」
青年「…ふん」
…トコトコ
青年(っち…前ならもう何か起きてたっつーのに)
青年(早く俺に…金を!新しい夢を…見せろよ!!)
…ゲシッ!!
クルクルクル…カァンッ!!!
男A「…いって」
青年(!!)
男A「どっから降って来やがったこの空き缶!!」
男B「はははっ、前も一緒のことなかったっけ?」
男A「何なんだよ…またアイツか!?どこだコラァァァ!」
男B「あっちから飛んできたぜ?」
男A「行くぞ!探すぞ!」
男B「で、でもこの男はどうする?」
男A「こんなビビリに何もできねえよ!さっさといくぞ!」
男B「わかったよ」
男A「どこだぁぁ!」ダッ
ダダダダダッ…
青年(あっぶねーー!離れててよかった…草むらに隠れてやり過すか…)
ダダダダダダッ!!!
男A「っち…、あっちだ!」
男B「はいよ」
ダダダダッ…ダッダッダッダ…ダッダッ………
青年(行ったか…ん?)
老人「…」
青年「って、なんかデジャヴ…。またアイツら金奪ってたのかよ」
老人「…」
青年「おい、爺さん。大丈夫か?」
老人「…」
青年「…おい!」
老人「…」タラッ
青年「…鼻血?やべえ!」
老人「…」
青年「救急車!え、えっと…待ってろ爺さん!今、助け呼んで来る!」ダッ
…タッタッタッタッタ
青年(こりゃ…もしかして、もしかするぜぇ…!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…青年の読み通りだった。
倒れていた老人は、大手企業の取締役だったのだ。
助けて貰ったお礼にと、
あの日と同様に新事業の立ち上げの面子として採用。
とんとん拍子に事業を成功させ、
気がつけば重役の立場まで上がろうとしていた
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…トプンッ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 3年後・青年のマンション 】
青年(…ふひっ)
青年(俺は有名企業のエースに呼ばれるまでのし上った)
青年(何をするにも、上手くいく)
青年(本当に夢追人に感謝しねーとな!)ハハハ
美人妻「どうしたの?」
青年「ん…何でもねーよ」
美人妻「…変な青年」
青年(こうして美人な妻も手に入れたし、俺の皿ってやっぱでけーんじゃねーの!?)
美人妻「そういえば、今日は大事な会議があるんでしょ?」
青年「あ、そうそう。また新しい事業部立ち上げてさ…プロジェクト責任者がオ・レ」ニカッ
美人妻「凄いわぁ…私、あなたの妻で本当によかった」
青年「…だろ?」ハハハ
…トプンッ…
青年「じゃ、そろそろ行ってくるわ」
美人妻「はぁい。行ってらっしゃいのキスは?」
青年「…」ガバッ
美人妻「…ん」
青年「はは。んじゃ行ってくる」
美人妻「行ってらっしゃあい」
…バタンッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【大手企業 会議室前】
青年(今回のを成功させれば、まず間違いなく次の取締役、重役候補になる)
青年(既にプロジェクトは動いたし、あとは良い結果待ちだ)
青年(さて…部下からの成功したという声…楽しみだぜ)
ガチャッ…
青年「失礼します」
部下「あ、やっと来ましたね!」
青年「遅れたな。今日も妻のやつが離してくれなくてな…」
部下「それどころじゃないんですよ!」
青年「…え?」
…トプンッ…
部下「今回のプロジェクト、大損です!既にライバル社も撤退を始めてます!」
青年「な…冗談だろ?」
部下「本当です!青年さんの言われた通りにやったら、こうなってしまって…」スッ
青年「み、見せてみろ!」ペラッ
部下「…どうですか。どうしますか、まだ続けますか?」
青年(ここに来て失敗!?し、しかもこの額は…洒落に…ならないぞ…)タラッ
部下「…青年さん?」
青年「あ…あぁ。これ以上の負債になる前に一時撤退だ。俺は上に報告してくる!」
部下「わかりました。今回の会議の議題はこれだったんですが…」
青年「そんな事してる暇があるか!さっさと撤退を伝えるんだ!」
部下「わかりました!」
タッタッタッタッタ…
青年(ここに来て失敗だと?アイツの言う、俺の限界は…ここってことなのか?)
青年(と、兎にも角にもまずは報告だ。…よし)
…コンコン
取締役「はい」
青年「青年です。新プロジェクトのことで少しお話がありまして」
取締役「入れ」
…ガチャッ
青年「失礼します」
取締役「一体、どうした?」
青年「今回のプロジェクトが失敗し、我が社にこれだけの損害を出してしまいました」スッ
取締役「何?何だと?」
青年「ですから…これを」
取締役「…ふむ」ペラッ
青年(まだ俺の功績と比較したら問題はない。だが…出世の道が…危うい)
取締役「…」
青年(何とか言えよ…。クビってことは先ずないだろ?…大丈夫だ)
取締役「…」
青年「…」
取締役「…」
青年「…」イライラ
取締役「…分かった」
青年「!」
取締役「今回の件に関しては、私が責任を1つ持とう」
青年「ありがとうございます…それと…ぼ、僕の処遇は…」
取締役「まぁ…なんだ。君の今までの功績と比べたらな。それより…」
青年「はい」
取締役「今はこれ以上のキズ口が広がらないように善処するんだ。わかったか」
青年「わ、わかりました!」
取締役「では、下がれ」
青年「し、失礼します…」
取締役「あ、待て」
青年「は、はい」
取締役「分かっていると思うが…。今度の役員会議で、君がもっと活躍できる場と考えていた…」
青年「…」ゴクリ
取締役「今回はこの結果だ。次に…期待せざるをえなくなった」
青年「…そう…ですか…」
取締役「気を落とすな。君はまだ若い…」
青年「はい…」
取締役「引き止めたのはそれだけだ」
青年「…今度こそ失礼いたします」
…ガチャッ…バタンッ…
青年(……こぼ…れた…?)
…ポタッ…ポタッ…
青年(零れた…溢れた…のか!?俺の夢が…ここで…?)
青年(…俺の本当の限界…)
青年(…いや、まだ割れる訳じゃない。まだ夢に夢を重ねて、現実にするんだ)
青年(割れる兆候はない。追いかけないでどうする…!)
青年「夢追人…、聞いてるんだったら、俺はまだ諦めないからな!」
部下「…え?」
青年「あ…いや、何でもない…」
部下「報告です。先ほど始まった撤退はスムーズに行われています。問題なく終わりそうです」
青年「損害はやはり避けられないか?」
部下「そうですね。そればかりは…」
青年「そうか…」
部下「き、気を落とさないでください!」
青年「何?」
部下「青年さんは、きっと大丈夫です!僕らが応援しますから!」
青年「はは…ありがとうよ」
部下「いえ…」
青年「お前とも最初の事業部からの付き合いだもんな」
部下「ですね」
青年「そうだ、今日は俺の家にのみに来い。失敗パーティだ」ハハッ
部下「…いえいえ!とんでもない!」
青年「いいから。今まで頑張ってくれたお礼だ、良い肉でも用意しよう」
部下「…うーん」
青年「ま、夕方あたりに仕事終わったら声かけるからな」
部下「じゃ、お言葉に甘えます」
青年「よろしい」ニカッ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【夜・青年のマンション】
部下「…お久しぶりです」ペコッ
美人妻「あらぁ~!久しぶり!」
部下「今日はお呼ばれしまして」
美人妻「遠慮なんていらないわよ」
青年「さっき電話で頼んだ肉とか、料理は大丈夫か?」
美人妻「もちろん。お酒もあるわ」
青年「ん、ありがと」
美人妻「大丈夫よ、このくらいの失敗。次があるじゃない」
部下「そうですよ」
青年「いい身内を持ったよ。まだまだ頑張るに決まってるだろ!」
部下「それでこそですっ」
青年「カバンとかは適当に置いておいてくれ」ポイッ
部下「あ、じゃあこの辺で」ストン
青年「さ、今日は遠慮せず食って飲んでくれ。俺も飲むぞ!」
部下「はいっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 2時間後 】
青年「っぷはぁ~…!」
部下「いや~…本当に美味しかった!」
青年「堪能したか?」
部下「はい、そりゃもちろん!」
コチ…コチ…ボーン!ボーン!
部下「うわっ、もうこんな時間か」
青年「明日も早いもんな、こんな時間まで付き合ってくれてありがとな」
部下「当たり前ですよ」
美人妻「もっとゆっくりしていったらいいのに」
部下「お二人の時間に余り入り浸りするのも悪いですから」
美人妻「気になさらなくていいのに」
部下「いえいえ」
青年「玄関まで送ろうか」ヨイショ
部下「あ、いえいえ…」
美人妻「…あっ」
ペラッ
部下「何か落ちましたよ」ヨイショ
美人妻「やだ…買い物のレシートだわ。恥ずかしい」
部下「あはは…は…」
美人妻「…」
部下「…ずいぶん高いものばっかりですね。本当にありがとうございました」ペコッ
青年「うんうん。じゃ、またな」
部下「では明日、会社で」ペコッ
ガチャッ…バタンッ
美人妻「…本当にご苦労様、アナタ」
青年「ん…次こそプロジェクトは成功させてみせる」
美人妻「頑張ってね」
青年「もっともっと幸せになってやるさ。お前にも良い暮らしをさせてやるよ」
美人妻「もう幸せでいっぱいよ」
青年「はは、冗談だろ。ゆくゆくは、東都の一等地に一軒家だ」
美人妻「なら…庭つきがいいわぁ。なんて」
青年「当たり前だ。もっと上に、上に…夢はどこまでも…広げてやるよ」
美人妻「…?」
青年「ま、こっちの話だ。それより…いいだろ?」グイッ
美人妻「待って、まだ片付けが」
青年「朝でいいよ…ほら、こっち来い」
美人妻「あ…」
…バタンッ
…
…タッ
ポタッ…
ポタッ…ポタッ…ポタッ…
ザバッ…ザバァッ……ジャアァァァ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 更に2ヵ月後 】
ガチャッ…
青年「…失礼します」
取締役「来たか」
青年「…」
取締役「2ヶ月前、君が大失敗をしたプロジェクト…」
青年「はい」
取締役「よくここまで持ち直した。それどころか、順調に進み始めたとは!」
青年「…はいっ!」
取締役「いや私は信じてたよ。君は本当ならやれるんだってな!」
青年(…ふん、タヌキ爺め)
取締役「早速、次の役員会議でも君の進退について話させてもらう。いい返事を期待したまえ」
青年「ありがとうございます」ペコッ
取締役「よし、では下がってよろしい」
青年「失礼します」
…バタンッ
部下「…どうでしたか?」
青年「褒められた…当然だが」
部下「おめでとうございます!」
青年「バカ、ここで大声出すな」
部下「あ、すいません」
青年「あ~…だけど、本当に安心した。今日まで手伝ってくれてありがとな」
部下「当たり前ですよ。本当にリカバリがとれてよかったです」
青年「これで俺が上に行ったら、俺の後釜はお前になるだろうな」
部下「僕ですか!?」
青年「抜けた穴を埋められるのはお前だけだろう」ハハハ
部下「へへ…そう言って貰えると嬉しいです」
青年「当たり前だ」
部下「…僕の夢なんですよ」
青年「ん?」
部下「僕、先輩…青年さんみたいになるのが夢なんです」
青年「ほぉ?嬉しいこと言ってくれるな」
部下「誰にでも信頼されて、会社のために尽くして、あんな綺麗なお嫁さんをもらって…」
青年「なんだか照れるじゃねえか」
部下「僕みたいな人、結構いると思いますよ。青年さん、凄いカッコいいと思います」
青年「はははっ、よせよ」
部下「…じゃあ、これから打ち合わせもしますか?これからの展開もありますし」
青年「そうだなあ…もっと詰めてプロジェクトを進行しよう」
部下「そうですね~」
青年「んじゃ、先に行ってるよ」
部下「わかりました。僕はちょっとトイレに寄ってから行きますね」
青年「わかった」
…タッタッタッタッタ…
青年(くく…やっぱりまだまだ俺は上にいける…)
青年(最早これはアイツの力じゃないんじゃないか?俺の実力だろう)
青年(本当に俺の限界なら、もうとっくに潰れてるはず…まだまだ…昇るっ!)
青年(ふふ…ふふふふ…)
ピリッ…ピリリリリリリッ・・・
青年(ん…?電話…誰だ?)
青年「はい、もしもし…青年ですが」ピッ
社長「…久しぶりだね。元気でやってるかい」
青年「し、社長さん!?」
本日はここまでです。ありがとうございました。
短編予定でしたので、短めですが明日の更新で最終予定となります。
乙
乙
つまんないから2度と書かなくていいよ
おつ
ありがとうございます。投下致します。
>>127
ご感想、有難うございます。
今回は残念ですが、また次回で楽しんでいただけるように努力致します。
社長「君を大手に引き抜かれてから、もう随分と時間がたった。懐かしいね」
青年「いえ…その節はお世話になりました」
社長「お世話になったのはこっちだろう。元気だったか?」
青年「おかげさまで。新たなプロジェクトも成功して、波に乗ってます」
社長「…そうか。今の君の仕事は風のうわさで聞いてるよ」
青年「…」
社長「それで…その…ちょっと、相談があるんだ」
青年「何でしょうか?」
社長「実は…今、我が社は経営危機に瀕しているんだ…」
青年「…!」
青年「経営危機ですって?社長さんの会社が…そんなバカな」
社長「不景気の風は酷くてね。もう…限界なんだ」
青年「そんな…」
社長「それで、昔なじみ…と言ったら怒るかな。その君に助けを…求めたい」
青年「馴染みでいいですよ。助け、ですか?」
社長「君のやっているプロジェクトは、子会社の吸収も視野に入れているんだった…かな?」
青年「えぇ…まぁ」
社長「それで…我が社を傘下にしてプロジェクトに入れてほしいんだ」
青年「社長さんの会社を…プロジェクトに」
社長「あぁいや…無理なお願いはわかっている。だが…出来れば…」
青年「…」
社長「…」
青年「まだ、俺の友達もその会社に?」
社長「あぁ…」
青年「…」
社長「…」
青年「少し、考えさせてください。僕だけの決断では…出来ませんから」
社長「そ、そうだよな。すまなかった…久々の電話がこんな話で」
青年「いえ…期待して待っていてください」
社長「あぁ…」
…プチッ
青年「…社長さんの会社が経営危機…か」
部下「…青年さん」
青年「ん、まだいたのか」
部下「今の社長さんって、前にいた会社でお世話になったっていう…」
青年「そうそう」
部下「…どういうお話だったんですか?」
青年「経営危機に瀕しているらしい。それで、プロジェクトの傘下に入れてくれと…」
部下「…」
青年「どうするべきか…」ハァ
部下「青年さん、確かその会社って…インターネットの管理も担ってるあの会社ですよね?」
青年「そうだな。駅前の」
部下「あ~…」
青年「ん?」
部下「あのですね、近くに同じ事業をしてる別の会社があるんですよ」
青年「ふむ」
部下「そっちは非常に伸びていて、多数のお金を積んで傘下にする予定なんです」
青年「何?」
部下「ですから、同じ事業を持つ2つの会社はさすがに…入れられませんよ」
青年「2つに…1つってことか」
部下「いえ。1つに1つですよ」
青年「あ?」
部下「青年さん、上に行くんですよね。なら、社長さんは切り捨てるべきです」
青年「なっ…」
部下「結果を残したいなら、お世話になっていても…拒否すべきだと思いますよ」
青年「待て。まだ俺は答えを出そうとは思っていない」
部下「…本当ですか?」
青年「…」
部下「携帯で話をしてた時の顔色で…だいぶ分かってます」
青年「…だろうな」
部下「ですが、やっぱり恩恵や友達もいることでイマイチ切れないんですよね」
青年「よく分かってらっしゃるな…お前は」ハハ
…ピキッ…
部下「…時間もありません。次の役員会議までに更なる結果を出すなら…」
青年「やっぱり切るべき…か」
部下「はい」
青年「…タイムイズマネーだな。わかった…今、断るよ」
部下「賢明な判断だと思います」
青年「…」
カチカチッ…ピリッ…ピリリリリリッ・・・
…ガチャッ
青年「社長さんですか。今のお話についてなんですが…」
社長「お、おぉ!早いな!で…どうだった?」
青年(う…)
部下「…」ジッ
青年(分かってるよ…)
社長「…どうだろうか?」
…ピキッ…
ピキピキッ…
青年「…お断り、させていただきます」
ピキ…バキンッ!!
社長「…そ、そうか」
青年「残念ですが、今回はまだ社長さんの会社では力量不足という…結果です」
社長「い、いや…気にしないでくれ!な!」
青年「…」
社長「出来たら、っていう事だったからな。ハハハ!」
青年(切った…切れた…。昔の知り合いがなんだ…知ったことか…)
社長「青年くんも、これからも頑張って結果を残せるようにな!」
青年(俺は…非情になっても…もっともっと…昇る男だ…!!)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…ビキバキッ…
バキ…パリッ………!!
夢追人「…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社長「そ、それじゃあな。また…」
青年「失礼します」
…ツー…ツー…
部下「…気にすることありませんよ。弱肉強食の世界なんですから」
青年「分かってる…」
部下「…」
青年「…」
部下「さ、さて!仕事、始めましょうよ!」
青年「そうだな」
部下「…頑張りましょう」
青年「おう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
その後、目論見通り青年は幹部へとのし上がった。
だが…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【 付近の公園】
青年「はー…今日は仕事が早く切り上がって良かった。久々に休めるな」フゥ
トコトコ…
青年「部下のやつは風邪で出勤してこないし…少しカフェにでも寄って…お?」
社長「…」
青年(あれは…社長じゃないか。…何て顔色だ)
社長「…」
青年「…社長!」
社長「!」ビクッ
青年「お久しぶりです。…覚えてらっしゃいますか?」
社長「せ…青年くんか。久しぶりだな」
青年「はい。…こんな時間からどうしたんですか?」
社長「私はまぁ…な。君は?」
青年「今日は仕事が早く終えられたので」
社長「なるほどね。仕事…か、懐かしい響きだ」
青年「何かあったんですか?」
社長「はは…何でもないよ」
青年「僕と社長の間柄じゃないですか。お話してくださいよ」
社長「…会社が潰れたんだよ。あれから1週間後にね」
青年「!」
社長「はは…それだけさ」
青年(あの日から1週間後…か。弱肉強食とは分かっていても…)
社長「…」
青年「その…申し訳ありま…」
社長「待て」
青年「え?」
社長「別に君が悪いわけじゃない。私が率先して守れなかったのが悪いんだ」
青年「…」
社長「だから謝るな」
青年「はい…あ、そういえば…」
社長「なんだ?」
青年「俺の友達はどうしてますか?会社が潰れたってことは…」
社長「知り合いに引き取ってもらった。まだ若い種だ…。地方に飛ばされてしまったがね」
青年「…」
社長「…」
青年「そうですか。色々、あの時はお世話になったのに…」
社長「だからそういうのはナシだと言っただろう。今の君は、君のままで生きろ」ニコッ
青年「…はい」
社長「さ。私と一緒にいたら陰気なのが移ってしまう」
青年「そ、そんな」
社長「ははは、私はこれから役所やらに行かねばならないのでね。失礼するよ」
青年「…また」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
――――【自宅のマンション】
青年(…気にするな。俺は勝った…社長は負けた。それだけだ)
青年(とにかく今は、先の事を考える。もっと真剣に考えていこう)
青年(しかし早帰宅も久々だ。妻とのデートでも悪くないかもな)ハハッ
…ガチンッ!!
青年「…あれ?鍵かかってる」
青年「出かけてるのか?鍵どこだったかな…」
チャリチャリ…スッ
青年「…」
ガチャガチャッ…ガチャッ…
青年「ただいま~…っと」
…シーン
青年「やっぱりいないのか」
カタッ…
青年「ん?物音…やっぱりいるのか?お~い!帰ったぞ!」
美人妻「お、おかえりなさい!」
青年「どこにいるんだ?」
美人妻「今行くから待ってて!」
青年「どこだよ?こっちか?」
トコトコ…
美人妻「ま、待ってってば!今ちょっと服着てないのぉ!」
青年「あ~?それくらい別にいいじゃないか。寝室か?」
トコトコ…ガチッ!!
青年「ん?…おい!開かないぞ!」
美人妻「ま、待ってってばぁ!」
青年「…?」
美人妻「…やくっ!」ボソボソ
青年「あ?」
美人妻「な、なんでもないわよ!」
青年「…おい、開けろ。まじで」
美人妻「だ、だめぇ!」
青年「後から直せばいいか…おらぁっ!」
…バキィンッ!!!
美人妻「きゃあああっ!」
???「う、うわっ!」
青年「お、お前…」
美人妻「違う!ち、違うのよこれは…!」
青年「違う…何がだ?あぁっ!?おい!!」
???「そ、そうですよ違うんですよ…!青年さん!怒鳴らないでください!」
青年「青年…さん…?」ギロッ
"部下"「…ぼ、僕が悪いんです!」
青年「て…てめ…」
部下「…っ」
青年「おま…部下…、は…?」
美人妻「違うのよ!これは本当に…たまたま…」
青年「な…なな…何が…」ブルッ…
部下「ぼ…僕が悪いんです!」
青年「…あ!?」
部下「僕が奥さんを誘って…その…」
美人妻「ち、違う!あなたは悪くないのよ!私があの時にまた会いたいって…」
青年「あの時…だ?」
美人妻「その…あの、レシートの…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美人妻「…あっ」
ペラッ
部下「何か落ちましたよ」ヨイショ
美人妻「やだ…買い物のレシートだわ。恥ずかしい」
部下「あはは…は…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年「…あの時か」
美人妻「あれにまた会いたいって…」
部下「そ…そんな!その誘いに来た僕のほうこそ…」
青年「お前ら、何度目だ」
部下「え?」
青年「何度目だ…って聞いてる」
部下「は…初めてで…」
青年「…おいっ!!」
…ドンッ!!!!
美人妻「ひっ!」
青年「…殺すぞ。本当のこと言えや」
部下「すいません…。もう…6回…になります…」
青年「…」
部下「…」
青年「お前は、クビだ。俺の力を使ってでも、この関連会社も抑えてやる」
部下「!!」
美人妻「あ、アナタ!」
青年「黙ってろや!」バシッ!!
美人妻「あうっ!」
青年「俺はお前を信じてた。誰よりも。それをこんな形で…よくも…」
部下「…すいませんでした」
青年「てめぇだけは絶対に許さねぇ…」
部下「で、ですが!仕事だけは…勘弁してもらえませんか…!」
青年「…は?」
部下「ほかの言う事なら何でも聞きます!だから…」
青年「何言ってんのお前」
部下「あなたを追い続けていたということに…嘘はありません」
青年「…」
部下「こんな事をしてなんですが…まだ、まだ僕はアナタの影を追っていたい!」
青年「…うるさい」
部下「…っ」
青年「今すぐ殺す事だって出来るんだ…。刺されないだけマシだと思え…」
部下「う…」
青年「さっさと出てけや!!」
ゲシッ!!…ゴロゴロ
部下「っつ…」
…ヨロヨロ
部下「失礼…します…」
青年「…あ、あぁ。そうだ…おい」
部下「は、はい…」
青年「お前さ…妹いるって昔言ってたよな?」
部下「…は、はい」
青年「確か仕事は…うちの傘下…。結婚もしてたよなぁ?」
部下「…!」
青年「身内を知ってる先輩の嫁をこうしたって事、つまり…その覚悟…あったんだよな?」
部下「ま、待ってください!それだけは…本当にそれだけは!」
青年「てめぇの兄貴は浮気を誘って、クビになりました。なーんて教えてさ」
部下「…っ」
青年「噂を広めたら、俺が手を下さずとも…なぁ?はははっ!」
部下「悪いのは…僕だけです。妹だけは…」
青年「どっちが悪いか良く考えるんだな。さっさと出てけ!」ブンッ
バキッ!!ゴツッ…ゴツッ!!!
部下「あう…うぐっ…」
美人妻「も、もうやめてあげて!」
青年「お前はこのままここだ。今後の話…しっかりさせてもらう」
部下「…」
青年「ん?何見てるんだ…さっさと出てけって言ってるだろうが!」
部下「し、失礼します…」
…バタンッ
青年「…」
美人妻「…」ビクビク
青年「さて」ニコッ
美人妻「あの…その…」ブルブル
青年「何震えてるんだ?俺はお前に暴力は振るった事ないだろう?」
美人妻「…」ブルブル
青年「…」
美人妻「…あの…」
青年「は~…残念だな。本当に残念だ」
トコトコ…
美人妻「ど、どこに行くの…?」
青年「なぁ…俺ってさ。人にあらざる力を持ってるんだよ」ガチャッ
美人妻「鍵…閉めて…どうするの?そっち台所よ…」
青年「ん~…」
ゴソゴソッ…
青年「なぁ…話は少し変わるんだが…。俺の願った事ってさ、何でも叶うんだ。信じられるか?」
美人妻「…え?」
青年「ボロアパートで住んでた俺が、こんな生活を手に入れられるなんてな…笑えるだろ?」
美人妻「…何の…話?」
青年「…へへ、つまりな…」
…スッ
美人妻「ほ、包丁…!?」
青年「俺が思う通りに世界は動く…俺の限界はまだまだ見えないんだよ」
美人妻「や…やめて…」
青年「こんな事になって残念だ。だけどまぁ…大丈夫だろう」ニコッ
美人妻「その包丁で私を…こ…殺す気…?」
青年「俺自身は何度も復活するさ。君は安心して死ねばいいよ」
美人妻「…ひっ」
…ドンッ!!!
美人妻「いやぁぁぁ!」
青年「…何てな。びっくりしたか?足に刺さるとこだったなぁ」
美人妻「…ひぃぃっ!」
青年「はは…。本当に殺すと思ったのか?…殺してやろうか」
美人妻「何でもするから…助けてよ…お願い…」
青年「…」
…ドンドンドンドン!!
青年「あ?」
部下「青年さん!やっぱり話があります…開けてください!」
青年「…っち」イラッ
部下「青年さん!青年さん!!」
青年「ちょっと待ってろ。あのウルセーのを止めてくる」
美人妻「あの人を…刺す気なの…!?」
青年「…さぁな」
美人妻「…!」
青年「…」
ギシ…ギシ…
美人妻「に…逃げてぇぇぇ!!部下さん!!逃げて!!!」
青年「なっ!!」
美人妻「この人、あなたを殺す気よ!包丁を持ってる!」
青年「やめろ!!」
美人妻「逃げてぇぇ!」
青年「やめろって言ってるだろうが!!」ブンッ!!
ザシュッ!!!…ポタッ…ポタポタ…
美人妻「あ…」
青年「あ…」
美人妻「…そんな…何で…」
…ドシャアッ…
青年「…あ、あぁぁぁ…」
美人妻「…」
青年「こ…殺す気なんて…」
…カランカランッ
青年「…そ、そう。お前が悪いんだ…お前が悪いんだ!大声出すから!」
ドンドンドン!!
部下「青年さん!?今の音は…奥さんの今の声は!?」
青年「…いや、妻が悪いんじゃない…」
部下「聞こえますか!」ドンドン!!
青年「お前が…全部…、部下が…悪いんだ!!」ダッ!!
ダダダダダダダッ…ガチャッ…ガチャッ!!!
青年「部下ぁぁ!お前を、殺してやる!!」
部下「…くっ!」
…ザシュッ!!!…ポタ…
青年「…」
部下「…せ、青年さん…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ビキビキッ…バキャンッ!!!
…パラパラ…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青年「おま…え…」
部下「…ごめんなさい。こうするしかなかったんです」
青年「俺に…ナイフを…てめ…」
部下「妹まで…犠牲には出来ませんでした…から…」
青年「うっ…ぐ…」
ドサッ…
部下「本当にごめんなさい。青年さん…」
青年「…う、うぐぅぅ…」ブルブル
部下「…」
青年「痛い…うぅ…いてぇよ…」
部下「…」
青年「救急車…を…」
部下「…無理です。貴方はここでもう…いなくなってほしい」
青年「俺は…まだ…もっと…夢を見るんだ…。夢追人…助けろ…」
部下「…」
青年「助けろ…まだ、俺の皿は…器は…終わってない…!」
部下「…」
青年「…」
部下「…」
青年「…くっ、くそ…何で…返事してくれ…」
部下「…」
青年「ぐぅぅ…」ズキズキ
…スタッ
夢追人「…特例だよ。3度の呼びもなかったけど、特別にね」
青年「…おぉ…!」
夢追人「ボロボロじゃないか。大丈夫?」
青年「…助けろ…」
夢追人「無理だよ。僕はもう手を貸せない」
青年「何…だと…」
夢追人「君のお皿はついさっき割れちゃったんだよ。つまりゲームオーバーってこと」
青年「……ざけんなよっ…!」
夢追人「…ふざけてないよ」
青年「ちきしょう…ちきしょう…!部下、夢追人…てめぇらぜってえ許さねぇから…な…」
部下「…」
夢追人「…」
青年「…く」
部下「青年さん。虫の息じゃ可哀想ですね…今、楽にしてあげますからね」スッ
青年「や…やめ…!」
ブシュッ!!…ズバッ…ドシャッ…
青年「…」
部下「ふぅ。これで…楽になれましたね」
部下「青年さん…僕は、本当にあなたのようになりたかったんですよ」
部下「…どの道、いつかこうなってたかもしれませんが」
部下「ねえ?"夢追人"」
夢追人「…」
部下「僕の前に数ヶ月前に現れてくれて、ありがとう」
部下「この殺人は、夫婦喧嘩のもつれってことにするように願うよ」
夢追人「…」
部下「この人の割れた皿は、君らの生命になるんだろ?先に聞いといて良かったよ」
夢追人「…それが最初の願いじゃ、答えない訳にはいかなかったからね」
部下「こうやって、頭を使って前に前に進むんですよ…青年さん」
夢追人「本当に上手い事やったね。僕らから見ても稀な存在だよ君は」
部下「元々、青年さんの後釜になれる実力は努力で磨いてきた。だけど…」
夢追人「…」
部下「手っ取り早く青年さんの本当の代わりになるには…こう仕向けるしかなかった」
夢追人「…」
部下「完璧だ。あとは…僕が会社を支えていく…。彼がいなくなれば僕が次の実力者だ…」ニコッ
夢追人「ふぅん…でもね…」
部下「何です?」
夢追人「おっと…何でもないよ。ま…ここから離れたほうがいいんじゃないの?」
部下「そうしますよ。また会いましょう…夢追人さん」ダッ
タッタッタッタッタ…
夢追人「…」
夢追人「…」
夢追人「…そこの立場になるまでは努力だった。だけどね…君は気づいてないんだ」
夢追人「一瞬でも、君は"その人になり代わる"という夢を叶えたってことに」
夢追人「その上で殺人なんて…ね」
夢追人「ふふ…また、別の皿が割れる音が聞こえてくるようだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
・
――君たちは夢追人という存在を知っているだろうか。
彼らは人の夢を、人の想いをその人間へと提供する商売をしているという。
いうところ…"人間の理想"を、"人間の夢"を操るのである。
しかし、それが実在するのか誰にもわからない。
ただ…狂い、夢を見れなくなった、夢を追えなくなった現代。
彼らの存在はまさに"夢"のようなものであるには違いない…
あぁ…そういえばもう1つだけ。
流れ星のお話を。
流れ星で3度の願い事をいうと叶うというお話がある。
ただの言い伝えと思うだろうが、流れ星で願いを叶えたという人々は、少なからずいるのだ。
その彼らに、ある共通点があることを知っているだろうか。
そう。
"満月の夜だった"
ということである…。
【E N D】
■あとがき
ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました。
こういう系統のお話は良くあるとは思いますが、王道な1つとしての展開であえてやらせていただきました。
○○の真似だろ、等はあるとは思いますが
一先ずは少しでも目を通して下さったこと、感謝致します。
自分の他の作品は、基本的にファンタジー物が多く、
(少年剣士シリーズ、竜騎士シリーズ、魔王アパート等)
この手の現代ものはあまり書いてなかったので作風も異なっていたので微妙だったこともあるかもしれません。
とっつきやすいように分かりやすくしたつもりですが…王道過ぎた部分で、よく見る感の塊になってしまいました。
まだまだ不得手な部分も多く、退屈な面もあったと思います。
少しでも楽しめた、興味を持ってくださった方がいれば幸いです。
では今回はここまでで失礼致します。
乙、面白かった(о´∀`о)
ただ最後は部下の皿も割れた事をハッキリ告げた方が因果応報な絶望感があって良かったかも
乙
ぅぉぉ、、暗ぇ暗ぇ
夢追人は夢潰人になりました、ってか
おつ、シリーズとはずいぶん違う感じだったな
乙
でもなんだかありきたりな展開だったかも…
割合テンプレなストーリーにするならハッピーエンドの方がいいなぁ
乙乙
社長さんを助けてたらどうなってたんだろうなあ
>>193
皿に余裕が出来てもうちょい長生き出来たんじゃないか?
王道書けるのはすごいと思うけどなあ
この手の話ってピーターの法則に通ずるものがあるな
乙
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女剣士「冒険者の喫茶店で働く事になりました」
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の連載を開始いたしました。よろしくお願いいたします。
遅れましたが、改めてコメント・感想を下さった方々ありがとうございました。
乙
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