みんなで文才晒そうぜ part2(664)

ここはお題に沿った地の文込みのSSを晒すスレッドです

・主に地の文の練習や批評・感想の場として使ってください
・次スレは>>990が(規制等の際には有志が)必ず『宣言』して立てる事
・気楽な雑談がしたい方は酒場や休憩所でどうぞ

【注意】台詞形式のSSは受け付けておりません

前スレ
みんなで文才晒そうぜ
みんなで文才晒そうぜ - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1352992635/)

お題>>2

格闘

ふと疑問に思ったんだがここって二次創作はアリなのか?
前スレの>>1が細かいルールを決めてないからわからねぇし

分からないなら不用意に触れない、が賢い
前スレに二次創作が無いんだから、ここはそういう場だと思って書いとけ

1レス完結推奨も抜けてるし、どこかでテンプレの話し合いをしないとな

とりあえず立て乙

いつのまにやら次スレが立ってた
確かにここはこのままが一番だろうな
乙一

何気にお題のハードルが高いな……

お題はネタが思い浮かばなかったときのヒント程度の認識でいいんだろ?

何の為のお題だよw

スタンド戦は格闘に入るのだろうか?

いや>>8は「そんなにお題を重要視しなくてもいいんだろ?」って言いたいんじゃないか?

久しぶりに来たらちょうど前スレ完走してるのね
雰囲気もいくらか変わってそうで怖いけどまあいいや

夕食後、コーヒーを飲みながらテレビで野球を見ていると、ドアをノックする音がした。僕はテレビを消し、残りのコーヒーを飲み干し、それから立ち上がって大きく欠伸をした。
時計を見ると8時半を回っている。ノックがもう一度、今度はせかすようになった。客人は一刻も早く僕と会いたがっているようだ。僕ゆっくりとドアを開けた。そこには妙な格好の女がいた。

      🐸              🐸               🐸             🐸              🐸

「わるいけど、ちょっといいかしら」と女が言った。「なに、時間はかからないわ。とりあえず上にあげてくれない」
 女はそういって僕の返事を待たずに家に上がると、さっきまで僕が座っていたソファーにドスンと腰を下ろした。ソファーの上には快楽天が置いてあったので、僕はいささかばつの悪い思いをしたが、女は特に気にしていないようだった。
「それで」と僕は気を取り直していった。「これはつまりどういうことなんだろう。いったいあなたはどういう人で、何をしにきたんだ」
「まあ突然のことで驚かせてしまって申し訳ないとは思うわ。でもこれはあなたが知らなくてもいいことよ。私たちの問題なのだから」
「だけどここは僕の家だよ。僕の家で好き勝手されては困るんだ」
「あなたの家?ああ、そういえばそうだったわね。でも私からすればそんなことは関係ないのよ。それよりコーヒーをごちそうしていただけないかしら。この仕事って結構疲れるのよ」
 女はそういってはテレビをつけるとチャンネルを変え、サスペンス・ドラマを見始めた。
 やれやれ、と僕はため息をついた。まともに話も通じないみたいだ。それからあきらめて台所でコーヒーを作った。冷蔵庫の中に賞味期限の迫ったチーズ・ケーキがあったので一緒に持っていくことにした。
 ガールフレンドを家に呼んだ時に一緒に食べようと思って買ったやつだ。その彼女とは三日前に別かれてしまった。きっかけは些細なことだったが、ずいぶん前からぎくしゃくしていたしこうなるのも時間の問題だったのだろう。
 居間に戻ると、女は神妙な面持ちでサスペンス・ドラマを見ていた。
「コーヒーなんだけど」と僕は言った。「ミルク切らしているんだけど大丈夫かな」
「ええ、ありがとう。迷惑をかけてしまってすまないとは思っているのよ、一応は」
 女はそういうとまたドラマの世界に入って行った。

結局女は二時間以上ドラマを見て、その間にコーヒーを3杯とチーズケーキを二つ食べた。
「さて」と彼女はテレビを消して立ち上がった。「そろそろ仕事のほうも片付けないといけないわね」
 女はそういうとポケットから奇妙なステッキを取り出して、僕のベットの足を3回こつこつこつとたたいた。すると、ベットの下から紫色の芋虫が出てきた。直径2センチ長さ2メートルぐらいだろうか。
 女はそれを摘み上げると、ゴミ袋に入れ、芋虫をその上から足で何度も踏みつぶした。袋の中は紫色の体液で染まっていった。


「仕事は完了したからもう帰るわね。チーズ・ケーキありがとう。おいしかったわ」
 そういうと女はかえって言った。
 僕は残された紫芋虫の残骸をどうするべきか悩んだ挙句に、それをミキサーにかけてトイレに流した。
 僕はトイレの紫色の渦を見送ると、ベットに入った。芋虫を吐き出したベットはいつもより心地よく感じられて、僕はすぐに深い眠りに落ちていった。

>>10
「格闘」って言うと生身で殴り合いをするイメージだな
スタンドとか、能力で闘うのは違うんじゃないか

・作品を晒すときはageるように
ってテンプレも必要そうだな
過疎防止のためにも

>>13
世界観好き
紫の虫の元ネタ探したけど結局分かんなかった

独特の雰囲気が面白かったけども、
一人称視点なのに三人称の表現が混ざってるのが気になった
それでも俺にはよかったけどね

>>16
過疎に怯えすぎワロチ
そこまで自己主張の強いスレは気持ち悪い
適度にageていけばいい

>>17
いや無理強いまではしないが積極的にageていった方がいいのも事実だろ
そうじゃなくても前スレが過疎ってたんだし

>>13
多分、いつもの訪問客の人だよね
月見とか家族連れとかの
雰囲気が村上春樹に似てる
好きなのかな

>>19
3か月ぐらい来てないのに覚えててくれてるのね
批評サンクス、これからまたしばらくお世話になるわ~

 僕が部屋でゲームをしていたら、妹がやってきた。

「兄ちゃん、お母さんが呼んでるよ」

「何で?」

「ジャムのフタが開かないんだって。お母さん、ああもう! とか言いながら、今、必死でビンと格闘してるよ。兄ちゃん、お母さんより力あるでしょ?」

「そりゃそうだけどさ……。今、雷避けてる途中だから。ようやく100回越えたところだし」

「兄ちゃん。行きなよ。怒るよ」

 妹が睨みつける。仕方なく僕はポーズボタンを押してゲームを一時中断した。タイミングがわからなくなって多分失敗するだろうな、と思いつつも。

「母さん、台所か?」

「うん。早く行きなよ」

 やれやれ。妹に急かされ僕は台所へと向かった。多分後ろを見たら、監視するように妹は突っ立っているんだろうな。実際、見ていないから想像でしかないけどさ。

 台所に行くと、母さんは確かに『昏き者の眷属』ーービンと格闘していた。拳が茜色に光っているところを見ると、母さんも本気のようだ。『ヴァンフェローヌの錬舞撃』を使っている。そうそう見せる事がないのに。

「この世に非ず者共に告げる。在るべき世界へと帰りなさい! 暄! 烈! 砕っ!!」

 母さんが放った三連撃は蒼色の『ヒュジュラ』を纏って、ビン三体を完全に核から破壊した。当然の事だが、ビンは音もなく塵と化した。その間、僕は冷蔵庫を開けて牛乳を取り出していた。行儀悪く、パックに口をつけてそのままごきゅごきゅ飲み干す。

「で、母さん。僕はいつものようにジャムのフタを開ければいいの?」

「ええ、頼むわ。その間、母さんはこいつらを抑えておくからね! 覚悟しなさいよ、あんたたち!」

 ビン共に向かって、ギロリ、と睨みつける母さん。それを見て明らかにやつらは怯んだ。その間に、僕は丁度いいからと床に牛乳を垂らして『闇極陣』を描いていく。

「……悠久の離れより現れし森羅の王、ジャムシードへと告げる。今、その世界を閉ざし暗黒の彼方へと放った扉をここに出現させよ。繰り返し、告げる。我は叶える者の王なり……」

 徐々に空間が壊れ始めた。が、そうはさせじとビン共が僕に襲いかかってきた。それを母さんが一体一体なぎ倒して、更には蹴散らしていく。

 瞬間、まばゆいばかりの暗黒色の光。暗闇の彼方への扉が……開いたのだ。僕は片手を上げて、そこに『ヒュジュラ』を集中させた。

「今こそ闇の蓋を開けよ! ルキアイリュテージッ!!」

 まるで氷山がくだけ割れるかのように、空間に亀裂が一斉に走る。その割れた亀裂へと、ビン共が嘆きの絶叫を上げながら次々と呑み込まれていく。一匹も残さずに。

 僕はその光景を眺めながら、残った牛乳をゆるゆると飲み干していった。部屋に戻ったら、あと91回、雷避けないとな、なんて事を思いながら。隣では、母さんが今晩の夕飯を決めたようだ。「お好み焼きにしようかしら……」とか、そんな事を言っていたから。

書いてて楽しかったな、こういう痛い感じのは。いつかきちんと書いてみたい(適当)

2レス失礼。分けたかったので分けました

楽しそうよね、うん

ぼくも次これで書いてみたいと思った(コナミ)

己を理解したければ周りを学べ。周りを理解したければ世界を学べ。
学んだ大は、いずれ小へと凝縮される。武と知は共に依存にある。

それを聞かされた当時の俺はまだ幼く、師匠がたまにぼやく言葉は摩訶不思議な呪文だった。
庭に咲く花の名前を覚えたところで、自分の何が分かるのだろうか。
俺の体は花壇に生えているわけではない。地に足をつけているが、根は生やしていない。

真剣に武道を語り、稽古をつけてくれた先生に強い憧れをいたからこそ、
その話は理解しがたく、されるたびにアレルギーに近い拒否反応を出した。

俺が知る武道と勉強は、水と火の関係である。
難問を解いても筋肉量は増えない。その時間分だけ体は衰えていく。
練習相手に向かって突きを放っても博識にはなれない。
せいぜい間合いを学ぶだけだ。だから火と水だった。

火に水をかければ根元を燻ぶらせてたちまちに消えてしまう。
逆に、水を火にかければ湯気を立ち上らせてしだいに全て蒸発してしまう。

天真爛漫に悪戯好きが加わる年齢を迎えていたこともあり、
人生の5倍以上を生きる師匠に「どっちかで十分じゃないの?」と反論に近い質問をすると、

「いずれ理解する時がくる。わしの知る世界を語ったところで、坊にとっては童話に等しい作り話よ」

そう言って、どこか遠くを見ながら長く伸ばしている白い顎鬚を五本指で梳いたのだった。

師匠の言葉がふと頭の中に浮かんできたのは、それから6年が経っていた。
例年よりも遅れて雪が降ったらしい。窓から見える景色は既に冬の色に染まっていた。

勉強疲れの睡眠から目覚めたのは土曜日の午前11時。
体力の衰えと知識の大切さを思い知った高校3年生の寒い冬だった。

ここのは考えて書かないとオチどころか全体が弱くなるな
筆の赴くままに書いたけどこれが限界だしやり切った感もあるから投下
煮るなり焼くなり好きにして

順調に過疎化が進んでますね

(ま、まずい!)

そう思った男が半歩ほど飛び退いた瞬間、不良の脚が男の鼻をかすめた

ビッ

驚く男。そこに、間髪入れずに不良の拳が雷のような速度で叩き込まれた。

男は悶絶し、地面に倒れた



やべえ文才ねぇ


目覚まし時計の喧しい鳴き声は、氷のように冷たく耳に響いた。
さっさと黙らせてもう一眠りしようと思い手を伸ばしたが、
目覚まし時計はどこにあるのだろうか。布団の中からでは何も見えない。

だからといって布団から顔を出して確認するのは億劫だった。
せっかく温まった布団内に冬の外気が入り込んでくるのは、どうしても避けたかったのだ。
だからはやく黙ってくれ、と俺は祈った。眠りたいんだ。

しかし、俺の気など知るはずもない目覚まし時計は、義務的に冬の空気を揺らしている。
あいつには耳がないから、あんな不快な音で鳴き続けられるんだろうな、と内心でつぶやいた。
それから耳を塞ぎ、無視を決め込むことにした。
あと数分耐えれば目覚まし時計は諦めて静かになり、俺は闘いに勝利することになる。

孤独な喧騒の中で、目覚まし時計の事を想った。
どれだけ持ち主に嫌われようと、決まった時間に朝を叫ぶというのは、どんな気分がするのだろう?
仕事だと割りきってやっているのだろうか? そうでもしないとやっていられないのではないだろうか。
でも、そうじゃないとしたら? 持ち主の事をほんとうに想っているとしたら?
仮によろこんでやっているとしたら、俺は悪いことをしてしまっているのかもしれない。
ほんとうは目覚まし時計というのは、健気で可愛げのあるやつなのかもしれない。

だからといってその健気さが、俺を布団から引きずり出すわけではない。
それとこれとはべつの話だ。愛と欲は別物なのだ。

しばらくすると、目覚まし時計は泣き止んだ赤ん坊のように静かになった。
今朝の格闘はお前の負けだ。ざまあみろ。
俺はほくそ笑みながらあたたかい息を吐き出して、布団に身を沈めた。
意識が毛布に吸い込まれて、瞼の上に重みがやって来る。
今日が月曜日だろうと、知ったことじゃない。俺は眠りたい。

なんだか懐かしい臭いがする

投下ついでにまだ評価されてないやつのにおだやかな感想込みの批評してみ
それだけで過疎じゃなくなるから

 それは、俺と奴との真剣勝負だった。
 暴れまわる奴は、押さえつける俺の手をいともたやすくすり抜け、まるでおちょくるように跳ねる。
 しかし、俺と比べて圧倒的に小さな体は簡単に捉える事ができた。
 睨みつける奴を一瞥し、包丁を首につきつけた。
 やはり抵抗するか……。腕を叩いてくる。
 そんな些細な事は気にさない。尻から頭にかけ、内蔵を傷つけぬように身を削ぎ落とす。
 噛みついて抵抗する奴を無視し反対の身を削ぐ。
 薄く切りやつの上に並べてやる。奴はいまだに反抗の意思があるらしい。
 惨めに睨みつける『奴』に俺は目もくれず。4人の観客に頭をさげた。
 たった数分の格闘だが、今日も完全勝利だ。

>>32
8行目でやっと気づいた

ゴッ

いきなり放たれたハイキック。それを簡単に肘で止めると、男の右手が不良の喉を突いた

呼吸ができなくなる苦しみに倒れ込む不良。

力がうまく入らない脚を無理矢理に立たせようとする不良だが、そこにもう一撃が叩き込まれた

男の膝蹴りが不良の肋骨を捉えたのだ。

辺りに音が響く。不良の肋骨は完全に砕かれた



無理だわ地の文

>>34
ゴッ
とかいう表現を変えるだけで地の文ぽくなるよ

ぶんっ、という鋭い音と共にいきなりハイキックが放たれた
みたいな感じで

あと、慣れない内は一人称で書いた方が書きやすいかな

どかーんと音を立てて爆発した
と同じでダメだろ
ケータイ小説ならありかもしれないけど

負けを悟り、項垂れる。相手は強い。確実にこちらの玉を詰ますであろう。相手の次の手が今自分が想定している手ならばもうこちらはどうすることもできない。

パチリ

駒音がした。盤面を見る。やはり、想定していた手だった。背筋を正し、深く息を吐く。

「負けました」

深く頭を下げた。生まれてこの方初めての決勝という大舞台は強敵相手に奮闘するもやはり敵わず、といったところか。相手の強さ、場の雰囲気、そして対局。全てに対して果敢に立ち向かい、敗れた。両者ともに持ち時間を使い果たし秒読みに入ったのが遠い昔に思われる。持ち時間15分、使い果たした後秒読み30秒の規定で一時間半近い戦いである。長い長い孤独な頭脳の格闘は、終わりを告げた。

将棋という「頭脳の格闘」ということで一つ。

過疎がヤバイヤバイ
とりあえずあげるのと次のお題↓1でいいよね

麻薬

>>39
たかだか三日で過疎は言い過ぎ

あげ

age

大人たちってば、皆タバコを吸ったり、お酒を飲んだりする
僕は、なんでだろうと思っていた
ママの吸うタバコは、煙がとても嫌だし、パパが飲むお酒は、足がふらふらになっちゃう
そうすると、他の人にも迷惑をかけちゃう
それなのに、やめないのはなんでだろうと思っていた

……試しに俺は、一本だけと思って、母さんのタバコを吸ってみた
試しに俺は、一杯だけと思って、父さんの酒を飲んでみた
すぐにやめればいい、そう思っていた

やめられなくなった
また、タバコを一服吸いたくなる
また、酒を飲みたくなる

お袋や親父は、とても早くに亡くなった
俺が若いうちに、亡くなった
お袋は、肺がんで死んだ
親父は、車に跳ねられて

大人がタバコや酒をやめない理由が分かった時には、もう遅かった
やめない、ではなく、やめられないのだ
俺は、恐ろしい麻薬の立派な中毒者になっていたのだった

>>44
酒や煙草は=麻薬ではないと思うが。
子供の視点と大人の視点の書き分けがいいね。

 快楽は浸れば浸るほどドツボに嵌るという。
 私にとってそれはウサギだった。

 偶然譲り受けた仔兎だったが、よく噛みついてはサークルから脱走をした。
 部屋の隅で震える兎に、呆れつつも癒やされていたのは記憶に新しい。
 癒やしと快楽は脳の同じ働きだというのにこんなにも響きがちがうのかと思った事もある。

 日に日にウサギは何をして居るのか気になり仕事が手につかず、怒られるようになった。
 そんな時はいつもウサギに癒やされていた。
 しかし、一年も経たないある日、そのウサギは死んだ。食滞だった。仕事で忙しくブラッシングできなかったのが原因だった。

 それからだ、気がつけばサークルの中から音がする。何もいないのに。
 ウサギが跳ね回る姿が見える。もういないのに。

 心が、脳が、体が、ウサギを欲しているのだ。脳内麻薬だとはよく言ったものだ。私はウサギに癒やされていたわけではなかった。
 それを知らずのうちに義務だとごまかしていただけだ。本当は己のエゴでウサギに接していた。
 もう飼わないそう決めたのに、気が付けばペットショップの自動ドアをくぐっていた。

 この記録を誰かが見る事を期待して、私はここにありのままの事実を残す事にする。

 我々がこの星に来たのは、調査と研究の為だ。この星には遥か過去に文明があったという幾つもの証拠があり、私達の研究チームが降り立った島には遺跡の残骸と思われるものがわずかながら残っていた。
 そこをくまなく調査する事、三年。この星にいたと思われる生命体の生態系はもちろんの事、果ては文化や民族性、娯楽や食習慣まで我々は調べあげたのだ。これはかなりの成果だったと私達は自負している。
 その中の一つに、料理があった。研究チームの一人が興味本意と知的探求心からこれを見事に再現し、我々はこの星の知的生命体が食べていた料理を現代へと甦らせたのだ。

 しかし、それはとんでもない過ちだった。

 菓子とされていたこの料理は、実は麻薬だったのだ。

 いや、この星の生命体にとっては確かに菓子だったのかもしれないが、我々にとってこの料理は完全に麻薬だったのだ。しかし、その事に気がついた時には既に手遅れだった。研究チームの全員がそれをもう食していたのだから。

 カリッとした食感に適度な塩味。一口食べたら、不思議ともう一口食べたくなる。もう一つ、あともう一つとまるできりがない。気がつくと体はもうそれしか受け付けなくなる。
 繰り返す。これは危険な麻薬だ。この記録を発見した君達はこの食品を決して口にしてはいけない。これはとてつもなく危険な麻薬だ。やめられない、止まらないのだから。
 繰り返す。これは危険な麻薬だ。やめられない、止まらない。やめられない、止まらない。やめられない、止まらない。やめられない、止まらない……。やめられない……。止まらない…………。やめら……………………。

ステマじゃありません……(震え声)
コンビニに行ったら何故か思いついただけだから

>>46
ふと、山崎まさよしの有名な曲を思い出した
こんな所にいるはずもないのに♪
これ見た後だとなんか怖くなってきたわ……

カリッとした食感で気付いて吹いたわ
でも好きよ

いいか? 古臭いと、時代遅れだと罵るなら好きにするがいい。
ただしそいつはこれから三分間、まずは最初のナンバーだけでも、耳をつんざき腹わたをひっくり返すアンプの音圧に耐えてからにしてくれ。それで伝わらないならそれまで、お前にゃ合わなかったってだけの話、好きに罵倒してくれて構わない。

例えば酒、例えば異性、例えば喧嘩、人の感情や精神を昂らせる要因は様々ある、それ位は理解できるだろう?

だけどコイツはちょっとレベルが違う。

お前に体験しろとは言わないし、決してお勧めもしない。何故ならコイツは違法だし取り返しのつかない行為だからだ。

でも常軌を逸したその感覚は、時に常軌を逸した旋律を生んでくれる。これからお前が味わうのは、その力を借りた俺が可能な限りその力を具現化した音達。文字通り命を削って吹き込んだ、法を外れたメロディだ。

この前、僅か10歳だという少女が俺の元に駆け寄って『貴方の曲に勇気を貰った』って言いやがった。薄汚れた俺が、精一杯に輝いたふりをして表現したナンバーが、濁りひとつない彼女に力を与えたなんて余りに出来の悪いジョークみたいだろ?

だけどその後、涙が止まらなかった。

決して褒められた物じゃない、ダーティな昂りを得て作った俺の魂の欠片達は、汚れてなんか無かったらしい。

いや、いいんだ、感傷的になっちまった。

だから三分間だけ時間をくれよ。きっと最高の中毒性と暴力性を持ちながら決して身体は蝕む事の無い、世界最高のドラッグだと約束しよう。

近い将来、俺がオーバードーズでおっ死んだら、どうぞ笑ってくれ。俺の遺すドラッグに心を蝕まれた奴らが、運び出される俺の棺が見えなくなるまでコールしてくれたら、それでいい。

時代遅れでも、俺はその言葉通りに生き、そして殉ずるんだよ。

さあ! イントロだ、コールを! 力の限りのコールを!

「SEX! Drug! Rock'nRoll!」
「SEX! Drug! Rock'nRoll!」
「SEX! Drug! Rock'nRoll!」

真っ正面から麻薬そのものでいってみた
ドラッグを美化する意図は無いです

「依存と中毒を混同しちゃだめだよ。知っているのと知らないのとじゃ、大違いなんだからね」

男に負ぶわれた女は、それだけ言うと満足したのか、鼻を鳴らすと男の背中で背筋をぴんと伸ばした。
両肩にかけられていた腕の重みが消え、そのかわりに背中の下半分と足を抱える腕に体重が加わる。
男は不意打ちの体重移動に一瞬よろめいたものの、姿勢を前屈みにすることで転倒の危機を回避した。

「それは新しい自虐ネタか?」

背負われていながら高説を垂れ流す度胸に対して、男は皮肉を込めた嫌味で返した。
再び背中に柔らかな感触が戻ると、今度は目の前を人差し指が羽虫のごとく飛び回る。

「自虐なんてとんでもない。胸に手を当ててお考えなさい。心当たりがきっとどこかにあるはずです」

人差し指が男の額にぴたりと止まる。頭を振ってそれを追い払うと、視界外から笑い声が聞こえてきた。
高校生にもなっておんぶ。これがどれだけ男の羞恥心を煽っているかなど、女が気付いている様子もない。
というか、再び額から飛び立った指先が鼻の頂点に着地した時点で、その心遣いは皆無だと知れた。

「足を挫いた、なんざ言い出すから仕方なくおぶってやっているのに、随分と生意気なことを言うな」

背中を下がってきた女の位置を正すために小さく跳ねる。
背後のふくらみが肩甲骨の下部から上部に移動し、その重みが位置調整は完璧だと教えた。

「覚えてるか? 挫いたのは今日で5日連続。俺だってそろそろ演技を疑い始める頃だぞ」

「痛がったらまたおんぶしてくれる?」

「……そのときの気分しだいでな」

男の広い背中の固さに。女の豊満な胸の柔らかさに。
もう少しだけ異性の感触を味わいたい2人は、また明日も足を挫くかなと思った。

ほとんどこじつけなのは勘弁


硬いベッドから跳ね起きた俺は、手の甲で額の汗を拭った。
夜光塗料が塗られた時計の針はちょうど深夜0時を指し示している。

そのままもう一度眠ろうと思ったが、うまくはいかなかった。
とりあえず、妻を起こさないようにそっと台所に向かい、コップ一杯の水を飲んだ。

寝室に引き返そうとして歩きはじめた時、俺は窓の外に人影を見つけた。
俺は目を瞬きながら、その人影を見ていた。

まただ。またあの亡霊が現れた。

亡霊は言う。
「なあ、お前の隣で眠っているあの女は、ほんとうにお前の妻なのか?」

俺は亡霊の言葉に耳を傾けず、早足で寝室に向かった。
でも俺は背後からついてくる乾いた足音を聞いた。
振り返っても、そこにあるのは夜の不穏な闇だけだった。

亡霊は言う。
「お前がホンモノだと思っているそれは、ほんとうにホンモノなのか?」

寝室の戸を開け放ち、身体を隠すように布団に潜り込んだ。
膝を折り、手を合わせて平穏な朝を祈った。

寝室の窓が、こつこつと音をたてた。まるで誰かがノックでもしたように。
俺は両手で耳をふさいで、布団の中で壊れかけの洗濯機みたいにがたがた震えた。


突然、布団が剥がされた。俺は咄嗟にベッドから転げ落ちるようにして、扉の方に逃げた。
ベッドの方に目をやると、亡霊がこちらを見ながら、ナイフを持って立っている。

亡霊の背後の窓にかけられたカーテンが、ふわりと浮いた。
それはもう一体の亡霊が現れたように見えた。

そう思った矢先、今度は妻が寝ていたはずのベッドから、もう一体の亡霊が現れた。
二体の亡霊はゆっくりと俺に歩み寄ってくる。

亡霊は俺の首にナイフを突き立てて言う。「なあ、死ぬってのはどんな気分がするんだろうな?
個人的な意見を言わせてもらうとさ、たぶん、信じられないくらい気持ちいいと思うんだよね」

亡霊は大きく口元を歪め、ナイフを俺の目に突き立てた。俺は絶叫した。

「うるさいな、まだ目を抉っただけじゃないか」

抉られた目からは、数えきれない程のムカデが這い出してきた。
その瞬間に、見えるもの全てがかたちを失って崩れていった。
それは空気に溶ける煙草の煙にすこし似ていた。

そんな混濁した世界でも、一つだけがかたちを保っていた。もう一体の亡霊だ。
俺は頭を抱えて叫び続けた。どこに逃げればいい? どうすればいい?

やがて亡霊は歩みを止め、俺を強く抱きしめた。
亡霊からは落ち着く香りがした。それは妻のにおいにとても似ていた。

亡霊は言う。
「大丈夫……大丈夫よ。ここにあなたを脅かすものは何もない。
ぜんぶニセモノよ。だから落ち着いて……幻覚なんかに負けちゃ駄目よ……」


僕は、良い子だ。
良い子に育った。
良い事はだいたいした。だいたい知った。悪い事はだいたいしなかった。だいたい知らなかった。

歳を取って、僕は自分で自分を育てる事となった。
僕にとって、目新しい事はあまり残っていなかった。あるフィルターを掛けられた事を除いて。

悪い事だ。

前提から除外されていた領域への探検は、僕の好奇心や探究心を大いに満たした。
だからした。何度もした。
次第に、掛けられたフィルターを外す事に欲を直結させていった。
すると、社会を覆う大きなフィルターにすぐさま気付いた。法だ。
それも外した。何度でも好きなだけ外せるように、そのフィルターから逃げ続けながら。

悪い事はだいたいした。だいたい知った。
目新しい事は、あまり残っていなかった。

しかし、また良い事をする事は出来なかった。
そのまま死んだ。

そろそろ次のお題いってもいいよな
お題↓

『消失』

「え・・・?」

SSのデータが消えた。莫大な絶望が男にのしかかった

「・・・」

男は呆然としてPCの画面を見ることしかできなかった

SSのデータ。ただの文書が消えただけだが、男の気を狂わせるには十分だった

「あああああああ」

数日後、男は警察に連行された

風が吹けば桶屋が儲かる。今の時代は学生が喜ぶ。なにせ電車が止まる。
雪に強いのが自慢の田舎の電車でも、横からの吹き付けには予想以上に脆かったりする。
最も足の速い電車が麻痺した影響を受け、学校は臨時休校をホームページ上で報せたそうだった。

「学校に来た時間が無駄だあ? 文句があるなら特別授業を付けてやってもいいぞ」

玄関で連絡係を任された生徒指導の教師に挨拶代りの愚痴をこぼすと、
なんとも嬉しそうな笑顔でまったく嬉しくない提案をしてくれた。
国が定めた祝日以上に気分が昂ぶる休みの日に、
なんでわざわざ平日をなぞって過ごす必要があろうか。

武骨な体育教師からのありがたみ皆無なお誘いを丁寧に辞退し、
けれども済ませるべき用事があるので教室に向かうことにした。
筋骨隆々いわく、「昼過ぎまでは帰らないから、それまでは良識の範囲内で好きにしろ」
だそうで、こっちの言葉には素直に甘えることにしたのだ。

誰もいない廊下を歩くのはなんとも気分がいいもので、自分の足音だけが
長い一本道に響く感覚は、小学生の頃に作った自分だけの秘密基地を彷彿とさせた。
雪の降らない時期に自転車で学校に通う生徒は、大半が冬の最盛期だけ電車に乗り移る。
2駅分も離れていれば、ほぼ全員が自転車から電車に乗り換えているだろう。

4階の窓から見渡せば田んぼが視界のほとんどを埋める立地条件で、
通学に徒歩を選ぶ生徒は、学校に着いても休校を知ればとんぼ返りしてしまう。
今日のような大雪の日にバスを選んだ律儀な生徒も、寒さと徒労に呆れながら
数分後に訪れる帰りのバスに飛び乗るに違いない。

フローリングを運動靴が擦る音に小体育館を覗くと、その例外に該当する屋内運動部が
熱心にバレーボールやバスケットボールを追いかけていた。
小声を意識して「ご苦労様です」とそっと呟き、廊下と階段を進んで教室の扉を開ける。
誰もいない。人気のない教室は、ただ机の上に私の弁当箱が中身入りで置いてあるだけだった。

雪がひらりと舞う景色を俺は電車からぼんやりと眺めていた。
電車のダイヤは近年稀にみる大雪のせいで乱れきり、もう10分は狭い車内で缶詰めにされている。ここにはサラリーマンだけでなくコジャレた格好をした老婦人、こんな寒い日でもミニスカートを履く女子高校生もいた。そして誰もが例外なく疲労の色を滲ませていた。
俺は窓ガラス越しにはしゃぐ子供達に目を向ける。
名も知らぬ子供達。微かに紅色に色づく彼らの頬。絡まり、湿気に濡れた頭髪。
不意に俺は妙な既視感を覚えた。この光景は以前にも見たことがある気がしたのだ。

幼い時は日常のつまらない風景が白く輝くことに興奮していた気がする。
その時の俺は世界が魔法にかかったみたいだなんてバカなことも真剣に考えていた。これから雪の女王が来て自分を連れ去ってしまうのではないかと怯えてもいた。
隣の家に住む女の子と協力して背丈をゆうに越える巨大な雪だるまを作ったこともあった。
女の子はみっちゃんと呼ばれていて佐藤だか加藤だかそんな名字だ。名前は思い出せないがいつも三つ編みをしている可愛い子だったのは印象に残っている。
今、みっちゃんは何をしているのだろうか。誰かの奥さんになって幸せになっているのだろうか。

外では相変わらず彼らがあどけない表情で走り回っている。
俺なんかは家の庭の雪かきをしなければならないと考えて憂鬱になってしまう天気だが彼らの目には全く違うものとして映っているらしい。

雪の日を楽しいと感じていられるのはいったいいつまでなのだろう。
笑顔を絶やさないでいられるのはどうしてなのだろう。

俺が忘れてしまった答えは無邪気に遊ぶ彼らだけが知っている。

まず特別な場合を除いて小説では漢数字を使うべき

>雪の降らない時期に自転車で学校に通う生徒は…………数分後に訪れる帰りのバスに飛び乗るに違いない。

必要性を感じないし冗長で見苦しい

>小声を意識して
回りくどい。「小声で」でいい

>電車のダイヤは近年稀にみる大雪のせいで乱れきり……そして誰もが例外なく疲労の色を滲ませていた。

突然の神視点止めろ
ここまで一人称だったじゃねえか


個人的には楽しく読めたけど基礎がマズイ感じがする

私と俺が混同されてる

>>62
>>60>>61は別だぞドジっ娘め


「確かにあったんだよ、それは。……最初から、その姿を覆い隠す箱と共に」

上官は唐突とも思える切り口から、私の問いに答えた。

「箱……ですか」
「ああ、大層な装飾が施され、厳重な鍵がかけられた箱だ」

しかし続けて彼は言う。その箱の中身である『それ』は、まだそこにあるのかどうかは判らないと。

「歴史の中で幾度となく争いが起き、そして終わった。箱の中身を求め、また護るための争いだった。……だが争いの終わりに『それ』が護られたのか奪われたのかは結局判らないのだよ」

どちらが奪う側なのか、護る側なのか。始まりがどこにあったのか。『それ』は誰が作ったのか。『それ』は今でもどこかに存在するのか。

「その全てが、もう判らないのだ。……それでも、我々はここに在る」

そこまで聞いて、私はようやく多少の合点がいった気がした。

大事なのは箱の方なのだ。その内に『それ』があるのかどうかを曖昧にする、その箱こそが我々の存在理由。

「もしかして『それ』は最初から……」

思わず想いが口をつきそうになる。しかしそれを声にする事は自己否定にさえ繋がりかねない。言葉を途切れさせた私に背を向けて、上官は静かに「征け」と呟いた。

「全軍に告ぐ! 国境を越え南進せよ! 今この時を以って我が国は宣戦を布告する!」

護るための戦いか、奪うための戦いなのか、知らないままに私は死地へ赴く。

例え既に箱の中身が失われていようとも。そう、最初から今まで『それ』を見た者などいないとしても。

いやんまじか

>>66
どんまい
>>66みたいに丁寧に評価してくれる人は貴重だと思う

>>61の「電車から」を見逃すと微妙に読めちゃうのよね

>>65は余りに曖昧過ぎて
箱の所在は分かってるの?

走れメロスだって語り手の位置が次々に変わってるんだから、突然の視点変更はいいと思う
実際は>>60-61は別物だったけど

評価してくれたドジっ娘を咎めるだけだと印象悪くなるから便乗

>>61
ノスタルジア好き
電車を時間の流れの比喩として用いることで、
過ぎ去っていく日々の中でふと足を休めるのを表現してるんだなと。
周囲の人間が「例外なく疲労」を感じていることで、逆説的に自分も疲れているのを伝えてる。
密室から外の子供たちを眺める部分は、若かりし頃にはもう絶対に戻れないという絶望が読み取れる。
子供たちと過去の自分を重ねながら、けれども同時に今の自分と対比させられる「彼らだけが知っている」
という書き方には思わず溜め息が出たわ。「彼ら」の使い方がやばい。鳥肌が立つ。
俺から見た欠点が文才関係なくて申し訳ないが、改行をしてある程度長さを合わせてくれると読みやすかった。

>>65
一回読んでどういうこと? と思ったけど、何回か読み返して理解した。
言葉の裏をかくのが上手いわ。
1つの出来事を無駄に広げることなくここまで丁寧に書けるのは羨ましい。
文章も躍動感とは違う重みのある猛々しさみたいなものを感じさせる。
人間の汚れた賢さを率直に伝える面白さがあったわ。

>>60
>風が吹けば桶屋が儲かる。今の時代は学生が喜ぶ。なにせ電車が止まる。

この一行いいな
なんかテンポいいし、ちょっとクスっと来た
自分だけの秘密基地を彷彿とさせたって表現も個人的にはツボ

文学は形式に寛容だけど視点を無視するとやっぱり読みにくいし乱文の評価を受ける
所詮俺らは凡人だから自由視点は難しいかな

>>60
消失したのは本来なら通常の学業をこなすはずだった今日という一日なのだろうか
でもおそらくその日はじめて入ったであろう教室に中身入りの弁当があるという事は、誰かが主人公のために置いたって事で
もしかして主人公の彼女であるクラスメイトが弁当だけ置いてさっさと帰宅した(そこで待ってるものと思ってた相手が消失してた)というのもあるのかなと想像が膨らんだ

>>61
去りし日の記憶の中にいる自分と無邪気な子供達の姿を重ね合わせながらも
窮屈な電車の中という閉鎖空間を表現する事で、あの頃には戻れない無情さを表現してるんだなと思った
そうじゃなかったら自分が歩いてる道端で子供達が遊んでたっていいものな


俺は>>65だけど、>>68の言う通り曖昧すぎたな。分かり易い文を心掛けるよ
>>70の感想は過大評価だけど、嬉しいです

珍しく伸びてるな、嬉しい
評価してくれる人がいるとやっぱりありがたいな

 三日前、友人の携帯から奇怪な電話があった。
 仕事帰り、駅までの道のりをゆっくり歩いている途中の事だ。

「もしもし、俺だよ。突然で悪いけど、ちょっと聞いてくれるか。さっき面白い事があったんだ」

 そんな切り出しから始まった話は、俺にとっては全く面白くもなく、むしろ恐怖を感じさせる内容だった。

 人が目の前でいきなり消えたんだ。

 単純に、要点だけをかいつまむと、家にいたら何故か部屋に見知らぬ女が入ってきた。
 その女は「誰……?」と怯えた様な声で尋ねた後、急に目を見開き、それからつんざくような悲鳴。
 最後には、顔や体から血をだらだら流して声もなく消えたという。
 そんな身の毛もよだつような話だ。
 なのに、こいつはそれをひたすら楽しそうに喋っていた。
 もしも、こいつから聞いたのでなければ、俺も多分笑って応じたと思う。
 よくある幽霊話だなと。
 ネタが一つ増えて良かったなと。
 そうならなかったのは、友人がその日から行方不明になっているからだ。

 今日、また警察が俺のところに来てこう言った。

「あなたの言う通り、確かに電話会社の方に通話記録は残ってました。で、もう一度だけ確認したいんですけど、そいつは男の声で間違いなかったんですね? ご友人の女性ではなく。どんな声だったか、思い出せますか?」

みんな、文章が上手だなあと思いました(KONAMI感)

投下ついでに、お気に入りのに少し感想
>>50
麻薬、絶対、良くない
だけど、麻薬やってるとか基地外とかの芸術家って本当にいい作品が多い気がする。なんか人の感性をどっかで越えてるんだろうかね
こういうノリ書けるのは裏山

>>61
スタンドバイミーに似てて好き。名前も思い出せないってのがいい味だしてる。個人的には、もう少し句読点があった方が読みやすいかも

>>75
 >三日前、友人の携帯から奇怪な電話があった。

「友人の携帯」に意味はあるの?家に女が入ってきた直後であるならば友人は家の電話からかけているはず

>よくある幽霊話だなと。
 ネタが一つ増えて良かったなと。

リズム良く場面が進んでいたのに突然スローダウンした感はある
一つ消して前の文章に組み込んだ方が良いかも
 もしも、こいつから聞いたのでなければ、俺もよくある幽霊話だと笑っていただろう。

>>77
友人=女だぞ
主人公にとって、女の携帯を奪い電話をかけてきた男(犯人)こそが知らない者

ごめん、解説してしまったが>>77みたいなレスこそ>>75の思う壺だよね
なかなか上手い引っ掛けだと思う

正直、俺にも解らないのは血塗れになっても消えはしないだろ…ってところと、最後の警官が犯人だったりするのか?ってところ
もしかすると俺も上手く釣られてるのかもしれない

文才スレだからと読み流しで済ませていまうと恥をかく
じっくり読まないなら内容に触れずに文章の良し悪しだけ書けばいい
面白かったよくらいの感想と共に

>>75
流血描写のあるホラーは苦手だけど読んじまった
内容勝負のスレじゃないから個人的には忽然と消える部分に
もっと力を入れていかにもなホラーの雰囲気を味わいたかったなと
でも俺も途中まで騙されたわ

俺、>>75だけど、読み返してしまったなって思った

>最後には、顔や体から……
の部分を
>その後の事はまるで覚えてないが、気がつくと女は消えていたという
にすべきだったね
あと、警察は無関係

引っかけを重視したら、文が浅くなって内容が不自然になったみたい。もう少し推敲すべきだったなあ。二人ともアドバイスありがとう

一人の部屋で床に座る。なぜか体操座りになってしまった。
不安が止まらないのか、膝を抱きよせてしまう。
わけのわからないまま不安定になっている自分がいた。

とにかく、笑ってみることにした。笑えば楽しくなるに違いない。
笑い声は出た。でも、その声は乾いて聞こえてしまう。
腹の底から笑おうと、へそのあたりに力を入れてみた。しかし、腹から湧き出た何かは胸でつっかえて、そのままぐるぐると暴れまわった。
……うまく笑えない。

いっそのこと、大泣きしてやろう。思いっきり泣けばスッキリするのかもしれない。
楽しげな教室に一人ぼっちで取り残された自分。それに耐えられなくて教室でふせった休み時間。
悲しい事なんてたくさんあるはずだった。
しかし、声が悲しもうとする自分を邪魔する。「あなたが悲しんでどうするの? 悲しんだところで意味はあるの?」
とうとう、私の中の悲しみを消し去ってしまった。
……私は悲しむことさえもできないのか。

泣けてきた。
それだというのに、なぜか笑いがこみあげてきた。
ああ、今私は泣きながら笑っている。私は壊れてしまったんだ。
私の心はすり減ってなくなってしまったんだ。

本当に私はどうしようもないな。

>>81
消失・喪失・虚無感がよく表れてると思う
勝手に都合よく解釈すれば、悲しもうとした時にだけそれを制する声(自分の心理? 過去の記憶?)が聞こえるってのは、もしかしたら一縷の救いがあるのかも?
本当に壊れた人は自分が壊れたと認識できない気もする
希望かもしれないけど、それがあるから余計に辛いのか。パンドラの箱のようだ

そろそろ次のお題?

まだ早い様な気もするけど、一応決めとこか

あと投下する時とお題を決める時は保守もかねてアゲてね

『一撃必殺』

屋上のフェンス越しに遥か下方のグラウンドを見下ろす。
中庭と背の低い東棟を越えた先に見えるそこでは、
小さすぎて豆粒にしか見えない生徒たちが放課後の部活に精を出している。
文化部を選んだ僕に運動で汗を流す快感を知ることはできないが、
その必要性だけなら知識という形で記憶に定着している。

羨ましい。彼らを見るたびに心の中で嫉妬の火がぽつりと燈る。
スケッチブックの上をせわしなく走り回っていた鉛筆を休めて、
手の届かない遠くの風景をじっと見つめた。風に乗って彼らの声が聞こえてくる。
きっと彼らにはここに居る人間の姿には気付かないだろう。

グラウンドを駆け回る彼らを最初に見たときは、ただの風景にしか感じなかった。
風景とも感じなかった。歩道の植え込みに生える無名の草。路傍の石ころ。その程度だ。
小学生時代の私の学力は、クラスメイトの追随を許さないほどに飛びぬけていた。
特に得意科目だった算数は、三年生を終える春には既に数学の領域に足を踏み入れ、
授業で他の子がノートに割り算の筆算を必至に連ねる隣で、一人だけ因数分解を解いていた。
それだけに好みと目先の損益をかけ合せた損得勘定が得意だった。

学びがなければ不必要。時間を奪うものはマイナス。行く先を妨げるものに価値は無い。
内向的で閉鎖的。認めないもは異物として捉えて、自分専用の世界から徹底的に排除する。
中学に上がってもその傾向に変化はなく、馴染むことを拒絶する孤立が漂わせる独特の匂いに
周囲は眉をひそめ、鼻つまみ者として私を扱った。無愛想が教師に好かれていたのも要因だろう。

思春期なんてなければよかった。来なければよかった。衝動的に過去を思い出すと、
決まって負の感情がふつふつと沸き上がる。スケッチブックの上で鉛筆がぽきりと音を立てて折れた。
学びがなければマイナス。時間の無駄はマイナス。悪い部分を掛け持ったものが友達。

「今更どうにかなるわけないじゃない。ばーか」

曇る視界を上に向けて空を罵倒する。いわれのない文句に表情を暗くした空は、びゅっと冷たい風を寄越した。

強引に解釈をするならば鉛筆の芯が一撃で死んだあたりがお題の回収
どこかでお題に絡めなければと思いながらも最後まで交わらずに終わってしまった


えぇ。この部屋に来てくださったかたはあなたが始めてですよ。記念すべき最初のお客様です。ウフフフ。
えっ!?笑いかたが気持ち悪い?
ウフッ。ごめんなさい。幼い時からの癖で治らないんですよね。ウフフフ。
折角ですし紅茶でもお出ししますよ。遠慮はいりません。商談が家で行われるなんて楽しみで楽しみで。ウフッウフフフ。

あなたの為にお茶の葉を新しく買ってみたんですよ。それに水道の浄水フィルターも交換しました。買いだめしているミネラルウォーターでいれようかなとも考えたんですが、ほら東京の水道水って美味しいじゃないですか。
安全性世界一みたいな。だからわざわざ使わなくても良いかなと。ウフフフ。
そういえば東京の水って全て利根川水系からきているんですよね。知っていました?私、昨日ちょうど群馬県にあるダムにいきましてね。奥利根湖って言うんですけど。いやぁ良いところだったなぁ。湿度が高い所、好きなんですよね。ベタって張りついてくるような感じがなんとも…。それに私の子たちもジメジメしていると元気になるんですよ。昨日も喜んでましたねぇ。ウフッ。

あ、お味は大丈夫でしたか?
出しておいていうのもあれなんですけど私、紅茶とかダメなんで味の確認してないんですよね。ウフフフ。炭酸飲料しか飲めないんです。どこかのアイドルみたいでしょう?

ごめんなさいね、お喋りで。これも私の悪い癖で。では商談といきましょうか。
って、ん?
……どうかされましたか?
あぁ、カップを落として割ってしまったんですね。別に良いですよ、お気になさらず。特に気に入っていたわけでもないですし。ウフフフ。
でも破片は触らないで下さいね、危ないですから。

ご希望はヘビでしたっけ?
しばらくお待ちください。可愛い子ばかり揃えてますよ?ウフフ。
毒はない種類がお好みですかねではアルビノ君でもとってきますかね

深々と咲いていた。物悲しい白色だった。
夜に濡れて、窓ごしの桜はいよいよ青ざめる。

雨だれるガラスに鼻の頭を冷やしながら、彼は息をのんだ。
手を伸ばせばかき消えてしまうような、あんな儚い美しさが好きだった。
彼は眺め続けるしかない。触れられないまま眺め続け、やがてそのまま失われるとそっと目を閉じて、
やるせなく染み渡る残像をかみしめることしかできないのだ。

保健室のストーブがごくりと油を飲む。

「先生、お茶いれたよ」

振り向くと、猫のような目の生徒が立っていた。すっと湯気をたてる味気の無いカップを二つ持って笑っている。

「ありがとう、遅くまですまないね」

「家は誰もいなくて寂しいから。はい、どうぞ」

今年度も引き続き保健委員をつとめる猫目は、最近になって髪を切った。

「ねえ先生」

「なに」

「好きよ」

春に散る花のように言って、猫目は軽やかに奥の部屋へ向かう。

……保健室の外の彼女をほとんど知らない。彼女が髪を切った理由さえ知らない。
温められたカップに口をつけて、彼は遠ざかる白いブラウスの背中を眺めるしかなかった。

うわぁ87ですが投下できてなかったんで続きを……読みにくくてごめんなさい

その前に私の自慢の子達、見ていきません?ウフフ。可愛いんですよ、皆。
この子達はタイパン、タイガースネーク。有名どころですね。あぁ触っちゃダメですよ。噛まれたら死んじゃいますから。ウフフ。
見て下さいよこの鱗…。妖艶で滑らかで……。まさに美というものが具現化したようですよね。

えっ隣の子達が気になりますか?さすがお目が高いですね。ウフッ。
この子達は比較的新入りなんです。
触りたいですか?どうぞ。その代わり死んでも責任はとれませんけど。あの子達が私の部屋で一番危険なんですよね。

……そんなに離れなくていなくてもも空気感染みたいなことはないので大丈夫ですよ?
近くで見て下さいよ。この子達、イチゴとコバルトって言うんですけどね。ウフッ。鮮やかな赤や深海を切り取ったような青が魅力的でしょう?
あら、珍しい。二匹が鳴いている。
寂しいのかしら?ウフフ。最近までこの子達の仲間がいっぱいいたんですよね。今は別のところにいますけど。
大丈夫ですよ。彼らは今はもっと広いとこに放してあげましたから。ウフフ。
それにしてもなんて綺麗な音色…。蛙の声といえば六月のイメージですが春に聴くのもオツなものですよね。

あの……寝てしまわれましたか?ウフッ。

ウフッウフフ。


 ̄ ̄ ̄
臨時ニュースです……
首都圏の川で魚が大量死しました……
皆さんは水を飲まないで下さい……

誰も見ていないテレビが薄暗い部屋で光っている


視界がひっくり返る、いや、自らひっくり返したのだ。

雲にも届こうかという高度で、魚の腹を思わせる機体の底面を太陽に向ける。そして操縦桿をぐいと引いた次の刹那、愚鈍に海原を横たわる醜い鉄の鯨の背が正面に見えた。

周囲で高射砲が炸裂している。しかし上着の裏に縫いつけた手作りのお護りがある以上、当たりはすまい。

あと少し、軌道を修正し固定できれば間違いない。

狙うは鯨の心臓部、そこへ通ずる排煙筒。
見る間に大きくなってゆく憎き米艦の輪郭に、己が命の刻限を知る。

父上、今も仏間の卓袱台の前で、口を一文字に結び座しておられるのでしょうか。どうか今、最期の時だけは幼き日のように『父ちゃん』と呼ばせて頂きとう御座います。

母上、貴女の作る牡丹餅が何より好きでありました。旅立つ日、それを皿いっぱいに盛りながら『めでたい、めでたい』と唱える貴女の目が濡れていた事、この愚息は気付いておりました。

姉上、庭の柿の木に登り、まだ熟れる前の実をかじった日が昨日のように思えるのです。料理の不得手な貴女の事、私は天からいつも心配しているとお心得下さい。

そして君よ、駅で別れし愛しき君。

どうか笑顔で送ってくれと、見えなくなるまで万歳をしてくれと頼んだはずだ。なのに思い出すのは涙化粧、行かないでくれと袖を握る君の姿ばかり。

嗚呼、二十年に満たぬ我が人生は、今この米艦を沈めて幕を閉じるのだ。

一撃必殺、必中轟沈。

あと僅か、ほんの軽く操縦桿を引──

いつからだろう、ふと気付くと彼女の姿を探している事を自覚するようになったのは。
地下道を人の群に押し流されながら歩く朝も。家路を急ぐ人々から弾き出されそうになる夜も。

元気よく両手を大きく振り、ギターケースを背負って歩く君の姿を探している。

昨日はいつもの交差点のそばなど花壇に腰掛けて歌っていた。今日はどうだろう、会えるだろうか。そんな事ばかり頭にちらついて、仕事に手もつきやしない。

「ヒットした暁にはプレミアつくよ!今の内に買ってよ!」

最初に会った夜、さらさらと自作のCDの表紙にサインを書き付けて並べながら、「ま、夢のまた夢だけどさ」と笑った。

つい「買うよ。その代わり、君のファン1号になってもいいかい?」なんて言ってしまった。


「やったね!」

そう言ってはにかむ彼女の笑顔は、俺の心を刹那に虜にしたんだ。

無機質な文明の森の中を無数の悲鳴がこだまする。
平静を欠き、ただ生存本能だけを原動力に人々はひた走る。例え誰が逃げ遅れようと、例え誰が転倒し、それをどれだけの人が踏みつけようと。
知ったことではない。そんなこと気にする余裕などあるものか。

鉄で出来た冷たい森の中で、それをなぎ倒し進む影がある。
大きい。人類が何年と掛かり築き上げた青い空を隠す構造物群。見上げるほど大きいそれが、ちっぽけな物に思えるほど。
脚がある。顔がある。脚を見れば爪があり、顔を見れば牙がある。
それらは肉食獣が持つような攻撃性が見て取れるが、誰一人として肉食獣など連想しない。そんな生易しいもの、誰一人。
その巨体、あまりに奇怪。あまりに醜悪。あれを形容する言葉は──”怪物”以外何があろうか。
山の如き怪物がおぞましい叫びをあげながら、臭気を、破壊を、死を、恐怖を振り撒きながら、街を、命を蹂躙する。

それを止める物は無い。止められる者など在りはしない。
代わりに──怪物を睨み、立ち向かおうとする影が在る。大きさは人間ほど、いや、人間そのものだ。それを見た誰もが、彼は恐怖で体が動かないものだと、思っただろう。
だがしかし、彼の瞳に宿る灯は。恐怖に竦んだ者のそれではない。静かに燃える、戦士の瞳だ。
彼が、猛進する巨体に飲み込まれんとしたその瞬間。

怪物が止まる。
何故かは分からない。だが確かに怪物は彼を認識したその時、自らが砕いた有象無象と同じように蹂躙するのではなく、自らの意志で殺すことを決意した。
怪物の巨碗が振り下ろされる。山をも砕くそれが振り下ろされれば、彼だけと言わず、大地が、周囲の人々までもが衝撃波で殺される。誰もが自らの死を予感した。
そしてその数秒後───誰もが、自らの常識が覆るのを感じた。
受け止めていた。戦士の瞳を持つ彼が、大地をも砕く巨碗を、余裕を持って受け止めていた。
腕を振り上げ、また振り下ろす。破壊の権化がニ撃、三撃。両腕を交互に振り下ろす。受け止める。その全てを彼は受け止める。
そして七撃目。今度はその腕を掴み、投げた。怪物の腕が空を舞う。其処に居た誰もが───怪物さえ何が起こったのか理解できなかった。
唯一動じない彼は、左手をポケットに突っ込み、持て余していた右手を空に掲げる。
瞬間空気が振動し───気付けば巨大な腕がある。
それだけで怪物を越す大きさを持つ、巨大な右腕。それは、手を掲げた彼の、その手から延びていた。
怪物がそれを何と理解する間もなく、彼は巨碗を振り下ろした。
先程までの七撃を、あざ笑うかのような一撃。
轟音と振動が過ぎ去った後───其処には、山のような巨体さえ、何も残っていなかった。

無機質な文明の森の中を無数の悲鳴がこだまする。
平静を欠き、ただ生存本能だけを原動力に人々はひた走る。例え誰が逃げ遅れようと、例え誰が転倒し、それをどれだけの人が踏みつけようと。
知ったことではない。そんなこと気にする余裕などあるものか。

鉄で出来た冷たい森の中で、それをなぎ倒し進む影がある。
大きい。人類が何年と掛かり築き上げた青い空を隠す構造物群。見上げるほど大きいそれが、ちっぽけな物に思えるほど。
脚がある。顔がある。脚を見れば爪があり、顔を見れば牙がある。
それらは肉食獣が持つような攻撃性が見て取れるが、誰一人として肉食獣など連想しない。そんな生易しいもの、誰一人。
その巨体、あまりに奇怪。あまりに醜悪。あれを形容する言葉は──”怪物”以外何があろうか。
山の如き怪物がおぞましい叫びをあげながら、臭気を、破壊を、死を、恐怖を振り撒きながら、街を、命を蹂躙する。

それを止める物は無い。止められる者など在りはしない。
代わりに──怪物を睨み、立ち向かおうとする影が在る。大きさは人間ほど、いや、人間そのものだ。それを見た誰もが、彼は恐怖で体が動かないものだと、思っただろう。
だがしかし、彼の瞳に宿る灯は。恐怖に竦んだ者のそれではない。静かに燃える、戦士の瞳だ。
彼が、猛進する巨体に飲み込まれんとしたその瞬間。

怪物が止まる。
何故かは分からない。だが確かに怪物は彼を認識したその時、自らが砕いた有象無象と同じように蹂躙するのではなく、自らの意志で殺すことを決意した。
怪物の巨碗が振り下ろされる。山をも砕くそれが振り下ろされれば、彼だけと言わず、大地が、周囲の人々までもが衝撃波で殺される。誰もが自らの死を予感した。
そしてその数秒後───誰もが、自らの常識が覆るのを感じた。
受け止めていた。戦士の瞳を持つ彼が、大地をも砕く巨碗を、余裕を持って受け止めていた。
腕を振り上げ、また振り下ろす。破壊の権化がニ撃、三撃。両腕を交互に振り下ろす。受け止める。その全てを彼は受け止める。
そして七撃目。今度はその腕を掴み、投げた。怪物の腕が空を舞う。其処に居た誰もが───怪物さえ何が起こったのか理解できなかった。
唯一動じない彼は、左手をポケットに突っ込み、持て余していた右手を空に掲げる。
瞬間空気が振動し───気付けば巨大な腕がある。
それだけで怪物を越す大きさを持つ、巨大な右腕。それは、手を掲げた彼の、その手から延びていた。
怪物がそれを何と理解する間もなく、彼は巨碗を振り下ろした。
先程までの七撃を、あざ笑うかのような一撃。
轟音と振動が過ぎ去った後───其処には、山のような巨体さえ、何も残っていなかった。

ミスって二回送っちゃった

>>87,>>89
ネタが割れると逆にうさんくさい、っていうか現実味がなさすぎて怖くない
上水に致死量の毒が入るレベルなら、大量発生系パニックホラーのほうが似合うと思う

どうせヤドクガエル使うなら
「現地の人々は、文字通り鏃に塗ったそうですよ?」
という台詞とコップを取り落とす描写に留めてはどうだろうか。

>>95ありがとう!バイオテロとか書くときに参考にします!!
>>90家族の風景が連想できる素敵な文だと思います。最後に無残に散ってゆく機体の描写とかがあっても個人的には良いかなと思いました。
>>91爽やかで好きです。見ていてキュンとします。
地下道とか夜とか暗い表現が君に会えないときにあるので対照的に君がいる時は色のついた表現を入れてみたらどうでしょうか?
彼女らしい明るい空色のギターケースを背負って歩く後ろ姿とか


耳障りな羽音が、俺の左右を行き来している。
遠ざかったかと思えば、蚊のように小さな虫が
耳から入り込んでくるような感覚がするほど近くまで寄ってくる。
しかし、その羽音はどう聞いても蚊のものではない。

俺は息を飲み、「二度目は気をつけたほうがいい」という医者の言葉を思い出す。
彼らは俺に対して、一撃必殺の武器を持っているのだ。

眼球だけを動かして、羽音の正体を探ってみたが、それはなかなか視界の中に入ってこない。
見えなくても正体はなんとなくわかるのだが、姿が見えない敵ほど恐ろしいものはない。

どちらにしろ、ここに留まるべきではない。
俺は彼を刺激しないように身を屈めて、脚をそっと動かし、その場からゆっくりと離れた。

離れてから先程まで立っていた場所に目を向けると、
思った通り、そこにはスズメバチがいた。
ここまで来れば一安心だろう、と一息吐いたところで、
俺は額にじっとりと汗をかいていることに気がついた。
怯えすぎだろ、と思わず自嘲せざるを得ない。


スズメバチに背を向けて歩くのを再開しようとしたそのとき、耳元に羽音が現れた。
俺は驚いて、無造作に腕を振り回した。
我ながら間抜けな姿だろうと思うが、必死だった。

しかしその直後に、頭のてっぺんをトンカチで殴られたような激痛が、身体のどこかに走った。

刺された?

激痛に呼応して、今までどこかに身を潜めてじっとこの時を待っていたかのように、
吐き気と頭痛と腹痛が現れて、俺の身体をどこかに持って行こうとする。
俺は立っていられなくなり、湿った土の上に倒れこんだ。
水をかぶったみたいに全身が濡れている。
これほどにまで汗をかくのは最初で最後になるだろうな、と驚きながらも思った。

一分もすれば呼吸が苦しくなってくる。喉が締め付けられているようだ。
視界の縁から暗闇が押し寄せてくる。身体が硬くなってくる。

そうだ、エピペン。エピペンは?
こういう時のための薬があるじゃないか。

俺はバックパックの中に腕を突っ込んでエピペンを探した。
どこだ。注射器。どこなんだ。はやく。ない?
はやくしないと……。このままだと……

しかし、数分間探してもエピペンは出てこない。
まもなく、視界はほとんど暗闇で埋め尽くされた。
意識が朦朧とし、バックパックに突っ込んだ腕も凍ったように動かなくなった。
耳元では、勝ち誇ったような低い羽音が鳴り響いていた。

>>91
もしかして:





ひっ





だとしたら、よく仕込んだ

いや本人しか分からねえよ

age

しかし、みんな文才あるよな
いつの間にここ、こんなにレベルが高くなったんだろ

書けば書くほど上手くなっているんじゃないでしょうか
ではそろそろ次のお題いきますか?

お題は「意識の途絶える瞬間」なんてどうだろう

>>104
お題の出しかたとか前スレから色々学んでこような
お題変更↓

別に>>104でもいいんじゃないかな…
ちょっと限定的なお題を各人がどう味付けを変えるのか、それも面白い気がするが

まあでもお題を例に倣ってシンプルにするなら、>>104を汲んで『気絶』でどうか

>>104の何が悪いのか分からなかった…

俺も

お題「プリクラ」とかどう?
ちょっと皆さんがどういうものを書くのか非常に興味がある

>>109地味に面白そう
プリクラとかしたことないから自分は書けんが

プリクラ…だと?
今までにない感じだな

 昔、彼女はこんな事を言っていた。

「撮るのが楽しいんじゃないんだから」

 じゃあ何が楽しいんだよ、と僕がやや呆れ顔で尋ねると彼女は「全部」といつも答えた。答えになんかなってないし、彼女自身答えを探す気もなさそうだった。「ほら、行こ」と僕の腕を引っ張って筐体の中へと結局連れ込む。僕は毎度観念せざるを得ない。

 はっきり言ってしまえば、僕はプリクラなんて撮りたくはなかった。なんだか気恥ずかしいし、それに写真に撮られるのは好きじゃなかった。僕はあまり顔立ちがいい方じゃないから、出来上がったシールを見て後悔する事も多いし、第一、それを友達に見せる様な趣味は持っていない。結局、机の引き出しの奥にしまいこむだけで、こんなのは金と時間の無駄遣いだと本当に思う。

 それなのに、デートに出掛ける度に彼女は僕と一緒に写真を撮りたがるし、プリクラを発見すれば必ず僕を誘って連れ込む。撮ったところで、僕は大体いつも興味のなさそうな顔か仏頂面をしているだけなのに。

「はい、これ。半分こ」

 手慣れた感じでハサミを使って切り分け、彼女はその面白くもなさそうな僕の顔を嬉しそうにバッグへとしまう。別にのろけてる訳じゃなくて、例えば僕以外の女友達と撮ってもそうなのだから、単純に彼女はプリクラが好きなだけだ。そして、単純に僕はプリクラが好きじゃないってだけで、彼女といるそれ以外の時間は僕だってきっと仏頂面以外の顔をしているだろうと思う。

 何がそんなに楽しいんだか。

 僕には一生理解出来ないだろうなって、そう思っていた。

 彼女が交通事故で亡くなるまでは。

 葬式の時、彼女のお母さんが僕にプリクラ手帳を渡してくれた。それは僕と撮ったプリクラだけを貼り付けてある専用手帳だった。中を開いてみると、一ページごとに貼られてるのはたった一枚ずつだけで、その一枚一枚にはその時のデートの想い出や感想が周りにぎっしりと書き込まれていた。何枚も、何枚も。これまで撮った写真やプリクラ全部に。

「撮るのが楽しいんじゃないんだから」

 僕はそれを見て、気が付くとその場に泣き崩れていた。どうしようもなく涙が止まらなかった。何で僕は仏頂面ばかりして撮っていたんだろうと、本当に後悔した。彼女はいつもこんなに笑っていたのに。

 だから、あれから十年以上経った今でも、僕は写真を撮る時は出来るだけ笑顔で写る様にしている。あの手帳も僕の宝物だ。嫁に見つかったらどうしようかと冷や冷やしてはいるが、それでもこれだけは何があっても捨てないだろう。

 最近は幼い娘を連れてよくプリクラを撮りに行っている。娘はそれを家中べたべた貼り付けて喜んでいるが、僕は何となくそれを怒れない。嫁にはその事で、きちんと叱ってよ、と怒られてはいるけれど、やっぱりそれでも僕は何となく怒れないんだった。

こんな感じかな
投下ついでに、お気に入りのに感想を

>>90
毛色が違って新鮮だった
父上の下りが特に好きだな、妙に共感してしまう
最後にどうなったのか、そこをあえて書かないのもいいものです。良きかな、良きかな

>>91
縦読みを狙ってやったならすごいし、狙ってなかったらもっとすごい
ふとしたきっかけからなんか気になる娘っているよね、ほんわかしたよ

>>92
一撃必殺のお題通り。直球勝負だね
癖のある書き方なんだけど、読みやすかったのが見事
最後の一撃必殺は、不覚にも格好良いと思ってしまった。強い者をとことん描写してそれを最後に一発でひっくり返すって手法も王道だけど、それが上手く書けてるから、本当にお手本にしたいぐらいの正統派

>>112
前半のあるあるが後半の切ない感じを引き立てていて好き

十二月の終わり頃。ひどく退屈な終業式を終え、今はまさに冬休み。

ひどく退屈な終業式を終えて迎えた冬休みは───どういうわけか、同じように退屈で。

友達が居ないという訳ではない。むしろ多い方だと、自覚している。
ならば遊べばいいではないかと思うだろう──実際、自分でも思った──が、どういうわけかそんな気力が出なかった。
十一月の頃はやれカラオケだ、やれゲーセンだと──大した予定も立てずに──意気込んでいた気もするが、今の私は対照的に、こたつの中でひどく無気力な生活を送っていた。

最近、隣の──いや、上下左右、全ての部屋が騒がしい。
カレンダーを見やれば、日にちは二九を指す。
そこで、私は漸く、世間が、年末年始の行事に右往左往する───所謂師走に突入していることを知る。

そんな師走の出来事だ。

物音の中でカレンダーの数字から、今は師走である事を知った私は───ふと、自分も師走の時期に倣おうと考えた。

理由は、よくわからない。敢えて言うならば───気分、だろうか。

ともあれ決まれば話は早い。隣の部屋──仲のいい喧嘩の絶えない家庭であったことを記憶している──から聞こえてくる物音は、おそらく大掃除によるものだろう。

ならば私も同じ事をしてみよう。

今は家族が出払っているので大胆には行えないが、とにかく──安直な大衆心理的発想で──大掃除をしてみよう。そう考えたわけだ。

どうやら私の言う大掃除とは世間一般で言う普通の掃除に相当するらしい。

先ず、掃除機をかける。こたつを端に追いやり、その下まで。
しかしそれ以上はない。ただそれだけだ。
ホコリを吸い取ったのは自らの手の届く範囲だけで、部屋の隅すら手付かずだ。

次に、貯まった紙を片付けようと考える。

早速、様々な紙を選別する。
と言っても、大抵は要らないものだが。
処分されないものと言えば、くしゃくしゃになった電話帳と、自分が知らない内容の物だ。

しかし紙を選別していると、ついでに──と言うにはあまりに多いが──そうでない物までボロボロと。
淡い期待の成れの果て、何時しか無くした相棒やら───本当に、色々と。

そして大抵は処分。
必要性が完全に認められた物以外は大抵の場合必要のない物だ。
これは、私が十五余りの──まだ駆け出しと言って差し支えのない──人生で学んだ教訓の一つだ。

そんな折、一際目に留まる物があった。

プリクラ。
おそらくは、──今友人と遊びほうけているであろう──姉の持ち物だろう。十枚程同じ画像が連なっている。内容は───背景がキラキラしており、極彩色の字で彩られた───成る程、プリクラだ。これだけなら取るに足らない事なのであろうが、一つだけ、鼻につく事がある。人間の顔までもが加工されている事だ。
写真とは、いわば過去である。
プリクラもその一種であるからして───つまりは持ち主の過去なのであろう。
現在とは、過去の積み重ねである。
当然だが、重要なことだ。つまり今現在ここにいる自分とは、過去があってこそ存在するものだ。

これを、プリクラに当てはめる。するとつまり、自分の写真を──つまりは過去を──加工してしまうプリクラとは、過去を偽ることになるのではないのかと。

───気に入らない。
特に理由はないが、気に入らない。
そこで、ふと、とある脳科学者の話を思い出した。
プリクラを好むのは主に女性である。これは間違いない。そして女性とは、自らの脳の中で、記憶を自分の都合のいい物に改竄してしまうのだという。
───成る程、そう考えればプリクラとは、女性のそんな習性を表しているのかも知れない。自分の記憶を改竄するように、自分の写真を───過去を改竄してしまうのだ。

まぁ、納得したところで気に入らないものは気に入らない。取り敢えずこのプリクラは自分の物ではないから、そこに置いておくとしよう。

そして再び始めた分別作業の中で、また見つけた物があった。

自由帳。
おそらくは、一昨年あたりの物だろうか。
───暫し見つめる。

捨てる。中身は見ない。
これも、あるいは過去に分類すべき物なのだろう。それを捨てる。

男は過去を改竄しない。
その代わり、忘れる。

もう次のお題に行きましょう

>>116は京極さんみたいですね

履歴書に貼られるべきは証明写真である。
中高生が戯れに撮るプリクラをその欄で見つけたときは、一瞬眩暈がした。

「お前はどこに就職するつもりだ?」

髪の毛を指で弄ぶ生徒に、不安と呆れを混ぜ込んだ視線を向ける。

「先生だって知ってるくせに。高校女子からの熱烈アピールですよ」

しかし生徒は意に介さず。悪びれることもなく飄々として
こう言ってのけたものだから、さすがに顔を手で覆って天を仰いだ。
現実逃避したくなる場面に出くわしても、『一に忍耐、二に努力』を掛け声に
乗り越えてきた。が、さすがにこの問題だけは尻尾を巻いて逃げだしたくなる。

卒業後の進路に就職を選んだ生徒は、つい数日前にそれに関する講義を受けたばかりである。
生徒は特段に問題児ということはない。むしろ品行方正、成績優秀、学業良好の彼女が
就職に進むクラスを選択したときは、進学を信じていた職員室内が騒然としたくらいだった。

「先生はさ。私と特別手当て、どっちが好き?」

ひとつ机を挟んで座る彼女が身を乗り出して訊ねてきた。
確かに進学、就職をした生徒数に応じて特別な収入はあるが、
それを目的として長年面倒を見てきたつもりはない。

何も言わずに首を横に振ると、女生徒が履歴書に手を伸ばした。
履歴書の印字に取り消し線が引かれ、その下で『婚姻届』と正される。
他にも履歴を連ねる欄を縦に割って改変したりと手が加わっていき、
あっという間に履歴書の面影がなくなってしまった。
最後に紙の右下の隅に小さく丸文字で、「ご両親は説得済みですよ」の注訳が付け加えられる。
彼女が差し出してきた我が家の印鑑を受け取って押した判は、諦めよりもふんぎりに近かった。

変更前に見苦しいすべり込み。

>>112
すっごいいい話で好き。情景が想像しやすかった分、その落差が心にきた。
言葉の前後を入れ替えたりすると、もうちょい読みやすくできそうで惜しいなってのが素人の感想。
でも好きよ。

>>115
全ダッシュ多すぎ。そしてお話が長すぎやしないか。
同じ表現が被ってたり、本筋に関係ない説明部分があったりで
けっこう省ける箇所があるから、全体の容量をもう少し減らせそうな気がする。
終わり方が随分すっきりしていてかっこいい。

お題変更なら↓

>>112
見事、1レスで目を潤ませるとは。前に感想を書いてる人も言っている事だけど、あまりに何気ない過去の日常から突き落とされる感が堪らなかった。
しかもその悲しい出来事もまた過去の事で、後悔しつつも幸せな家庭を築いたところまで描かれてる。
手帳を捨てる事ができない、娘を怒る事ができない主人公の気持ちにも共感させられるものがあるし、大袈裟かもしれないけど短編一本読んだくらいの余韻があった。

>>116
ダッシュが多過ぎる……のは、おそらくわざとなんだろう。目をひくための仕掛けだと思えばある意味成功してるかもしれない。
このスレとしては非常に長いという事も、スパッとした終わり方を際立たせるための策略と思えた。
あとはダッシュで囲む内容、あの手法を使うならダッシュ内は『無くても成り立つが、より装飾するため』の文であるべきかと思う。何箇所か無くすと前後の文の繋がりに違和感が生まれる部分があったのが惜しい。

>>119
プリクラという決して証明写真には使えないものを貼っている時点で、その履歴書を真面目に持ってきたのでは無い事を予感させ、その通りに履歴書は何の効力ももたない婚姻届っぽいものに書き換えられる。最後の生徒のドヤ顔が目に浮かんでニヤけた。
本物の婚姻届に判を押すよりは抵抗が無いであろうただの落書き、でもそれに押印するのは確かに意思表示であって、教師の内心には葛藤と共に噛み殺した喜びがあるんだろう…と考えてまたニヤついた。


みんなすごいよなー

おっと、お題は更に↓に頼む

頬ずり

24時間で次のお題かよ!
プリクラで書いてたのに!

最近お題変えるの早いからなあ……
一週間ぐらいは期間欲しいよね
頬ずりはもう少し待って、ある程度出きったところで、変えてくれないか

じゃあそうしましょうか

あぶねえ、頬ずりを投下するとこだった
もう書いちゃったから、できるだけ次のお題は頬ずりキープで頼む


私は悴んだ手に息を吹きかける。束の間温かくなったがすぐに熱は外気に奪われてしまった。
暦ではもう春のはずなのにどうしてこんなにも寒いのだろう。近年騒がれている異常気象の影響だろうか。そういえば今年は桜の開花が遅れると朝のニュースで言っていた。地球は温暖化が今も着々と進行しているはずなのに例年より冬が寒いのはどんな理屈なのだろう。
冷たい北風が私の長い前髪を弄ぶ。視界の中から久しぶりに黒い色が消えた。こんな景色はいつぶりだろう。前髪を伸ばし出す前だから三年ぶり。中学二年以来だろうか。
唐突に背筋にムカデのような虫が這い上がってくるような嫌な感じがした。
私はマフラーを巻き直してため息をつく。今日は本当に寒い。

根っからのインドアの私は外出が嫌いだ。友人がいないわけではないけれど人と関わるのも特筆するほど好きではない。休日は大抵適温にした自室で惰眠を貪っている。
ではなぜ今日は外出しているのか。その理由は一つ。家のガス系統がダウンしたため風呂が使えないからだ。

今朝は珍しく早めに起床した。朝食を食べている最中にデジタル時計に目を向けると六時前を表示していたのを覚えている。
そんな朝早くに私は這いつくばって探し物をしていた。
「どこに置いたっけ……」
予兆もなしに積み上げられた文庫本が頭上に倒れてきた。私はそれを手で払いのける。本の山が崩れてきたのは二回目だ。
整理されているとは言い難い私の部屋は毎日何かが無くなる。そして今日はエアコンのリモコンがどうしても見つからなかった。
しばらくは部屋中を捜索していたのだが寒さに耐えきれなくなった私はガスのストーブを物置から引っ張り出して代用することにした。
どうせ動かないという予想に反してブォンという鈍い音を鳴らした後、埃まみれのストーブは実に効率的良く部屋を暖めていった。ブランクを感じさせない見事な仕事ぶりであった。温風が足を包み、体の芯を赤く染めていく。
なんて気持ちが良いのだろう。私は堪らずお気に入りのブランケットを羽織って丸まった。至福の一時だった。

だが私がこの選択を後悔するのにそう時間はかからなかった。

目を覚ましたのは体が冷えたからだ。意識が途切れて何が起こったのかはすぐに察せた。
鮮やかに使命をこなしていたストーブが切れている。何度電源を押しても反応がない。カチッカチッと空しい音が響くだけだ。どうやら元栓からしまっているらしい。
すぐさま私はガス会社からきた最新の書類を探し、目を通す。役に立ちそうなことは何も書かれていない。
慌てて私はガス会社に電話する。繋がらない。
嘘だろう。私の目の前が真っ暗になる。手の中から書類が滑り床に落ちた。中からアンケート用紙が飛び出している。
私の家はオール電化ではない。風呂だけはガスだ。
一日位ならまぁいいやで済ましてしまう私だが昨晩は帰ってきてすぐに疲れて寝てしまった。さすがに二日連続は気持ち悪い。

こうして私は近場の銭湯に行くため外出することになったのだ。


「ここかぁ」
飴色の板を使った小綺麗な屋根が印象的な銭湯。懐石料理の店と言っても通用しそうだ。私は大きな暖簾をくぐり室内に入った。
そこはなんというか、私の期待を大きく裏切った銭湯だった。外観こそ純和風だったが中には温泉だけでなくロココ調の浴槽やワイン風呂、ジャグジーなども設置されていた。フードコート、ゲームセンターまであった。
こういうのはスーパー銭湯というのだろうか。客層も若い。部活帰りの女学生らしき姿もチラホラあった。
来る場所を間違えたかもしれない。
私は髪の毛をあげ、派手なロココ調の浴槽に浸かりながら考える。初見は面食らってしまったデザインだが実際に入浴してみると滑らかな大理石が心地よかった。
「学校の人に会いたくないなぁ…」
ほんのり上気した頬を撫でながら呟く。彼らが嫌いなわけではないけれど私は面倒に感じてしまうのだ。

しかし、ついていない日というものはとことんついていないもので私は同級生と出会ってしまった。

私がジャグジーをたっぷり堪能し、さぁ上がろうとした時だった。私に向かって語りかける少女がいた。
「あれ?江橋ちゃん?」
一瞬、彼女が何を言っているか分からなかった。
そしてしばらくして気がつく。江橋は私の苗字だ。頭の中が真っ白になった。
手のひらで額を隠す。
「うん、そうだよ。」
「やっぱり!?あーびっくりした。いつもと印象違うから別人かと思ったよ」
あははと私は愛想笑いを返す。
彼女は私に入学式の時、話しかけてきた奇特な子だ。運動部に所属して溌剌としていて人気者。そそっかしいがどこか憎みきれない。
私とは真逆の子だ。
「今から出るの?」
「うん、まぁ…」
「私もなんだ!!一緒に帰ろうよ」
勢いに気押され、私は頷いた。


「ねぇ、江橋ちゃんはどうして前髪をそんなに長く伸ばしてるの?」
着替え終わり、私を待つ彼女が枝毛をいじりながら聞いてきた。私は慎重に言葉を選ぶ。
「昔、転んだ怪我がおでこにあるから。」
私は嘘をついた。
「えっ?そんな理由?」
「あと、顔も大して可愛くないから」
「そんなことないって!!外人さんみたいで綺麗だよ!!」
「それはどうも…」
私の適当な返事に彼女は満足しなかったようだ。足音を響かせて接近してくる。彼女が足をつけた床に白い跡がついた。
「ちょっと動かないでね」
彼女は一方的に告げると私の髪を引っ張り始めた。背筋がぞわっと粟立つ。私は反射的に目を瞑った。
「はい、できた!!みてみて?なかなか上手にできたよ!」
「何が…?」
恐る恐る目を開けてみると視界がワントーン明るかった。
前髪がない?彼女が手鏡を取り出して私に向けた。
「こんな感じでどうかな?」
私の長くて鬱陶しい前髪は見事に編み込まれていた。ほつれも、緩みもない。傷痕も見えない。こんな技術を彼女はどこで手にいれたのだろうか。
「せっかく可愛いんだから勿体ないよ」
彼女は微笑んだ。やはり変な人だと私は思った。
「ねぇねぇ!!ここってゲームセンターあったよね!!せっかくだしプリクラ撮ろうよ!!」
彼女はまたもや私を半ば強引に連れていった。



私は今、彼女と別れて一人で歩いている。街灯がボンヤリと点灯し始め、私を照らしている。私もまた街灯のようにしてボンヤリと手元のプリクラを眺めている。
ぎこちなく笑う私と笑顔に苦戦する私を見て笑う彼女。
北風が吹くが不思議と昼間より寒くない。気温は下がっているはずなのにどうしてだろうか。前髪が編み込まれてとばないせいだろうか。温かい湯船に浸かったせいだろうか。
きっとそれだけではない。私はプリクラを握りしめる。
私の世界にはまだまだ謎がある。例えば地球温暖化が進行しているのに今年の冬は寒い理由とか。
もちろん、学者はその謎をといているのだろう。しかし私は何故か知りたいとは思わなかった。この世界の誰かは知っているけれど、私は知らないこと。それが愛おしい。
私が一人暮らしなのには理由がある。髪の毛を伸ばしだした理由も他にちゃんとある。けれどそれを誰かに教えるつもりはない。彼女にもまだ教えるつもりはない。

プリクラの台紙を作るべきだ。直感が告げていた。その台紙を笑顔のプリクラが埋める頃、何かが変わる。
ガスのストーブやエアコンや湯船がなくたって温かくなるだろう。
私はそんな気がした。


長くてすいませんという謝罪と感想を

>>115不思議な文の書き方ですね。私には絶対に考えつかない方法です。長編小説ではないから使える手法ですね。ただ、少しダッシュが多い気がしました。
文章の方はさっぱりとしていて好きです。

>>119先生の気持ちと女生徒の言動が目に浮かぶようで面白かったです。
文章もしっかりしていてすぐに読めました。ユーモアを書いてる時の宮部さんっぽいなと若干感じたり

>>128
謝られても許さない。長い。
長いの嫌いだから、「お前何様?」の文句が出る覚悟で重箱の隅をつついてほじくる。

結末部分の文末に使ってる『だろう』の連続は意味があると思うけど、序盤での頻繁さは削れるはず。
『悴んだ』や『束の間』はルビがあればいいけども、それがない場合は平仮名に崩すと読みやすくなると思う。
個人差だろうけど漢字にできるものを全て変換すると文章が凝り固まって読む気が失せる。
状況によっては漢字を減らした文章を準備したほうが流れがよくなるし、 なによりも目に優しくなる。
不要な描写も多い気がするからさっくりと消しちゃってもいい。むしろ消そう。消せ。いらん。
そうすると見えにくくしてる前髪の「のれん」が短くなってすっきりする。
『体の芯を赤く染めていく。』等々、表現にこだわりがあるかもしれないけど、なんか違う。
体内は見えないから視覚的な表現は似合わない。というか体の芯が赤くなったら火傷。現実的にもヤバい。
そして無理矢理突っ込んだかのような突然のプリクラに笑った。その強引な絡め方は逆に邪魔だろと。
語り手が私なのは分かってるから文中の「私」が減らせそう。鬱陶しいから思い切って減らせ。
文才に関係ないけど、感嘆符と疑問符の後ろは一文字分の空白を置いてくれると助かる。

全体としてはかなり長いけど一文が短くて読みやすい。文章の書き方は好き。
このスレだから不満だけど、別の場所だったら面白く読めたと思う。というか面白い。内容は。
次から晒すのは物語じゃなくて文才を。

まあ、短くまとめるのも文才だよな
限られた文字数でどれだけ表現出来るかってのも才能だとは思うし、それが出来るようになると長い文章を書く時にも文が引き締まって役立つはず

個人的には文章は気にせず読めたな。上手いと思うよ。
言うほど長いとは思わなかったけど、もう少し短く出来るとも思った

前スレで1レスにするとか話も出てたしな。
物語ではなくて表現が見たいって意見もあったし。

age

いつも通りの退屈な講義を聞き流している。忘れていた事を思い出すようにして教授がホワイトボードに書き出す単語。それを時々写すだけの退屈な時間。暇なのか癖なのかは知らないが、教室内の誰かがノートをペンでトットッと叩く音が耳に残る。リズミカルに、だが不規則に鳴らされるそれは何かの催促のようにも聞こえた。それに促されるようにしてわざと音を立てて参考書を捲る。ペラララ、ペラ。ペラララ、ペラ。いつも必ず途中で一度止まるのはそこに異物の重みがあるからだ。
「はぁ…」
気が重い。だが見ないという選択肢はないのだろう。こういう事は本来、一度気が付くと放っておけるような物ではないのだから。僅かな躊躇を抑え込んで問題のページを開く。
―ああもう。
そこにはプリクラが貼られている。写っているのは俺ともう一人。照れながらもピースをカメラに突き付けた女の姿。このプリクラの持ち主だったはずの女。
悪戯の張本人を探し横の席を見る。いつもこの時間は俺の隣で寝ているのだが、今日は寝ていない。いや、今日も、か。ここ数日間で別人のように変わってしまった女だがその理由は分かっている。このプリクラも大分前に貼ったものを今になってようやく気付いただけのこと。指でそっと撫でると、隅が捲れることに気がついた。台紙から剥がすときに折ったのか、3ミリほどがドッグイヤーのようになってしまっている。
ちょうどいい摘まみだ。外してしまおう。勝手に貼られたのだから勝手に捨てても罪はないだろう。誰にも問われる事のない責任に免罪符を貼り付けて、ゆっくりとプリクラを剥がした。
「…剥がすんじゃ、無かった」
通路を挟んだ席の学生が、突然の一人言にこちらを向く。目が合うと、気まずそうな表情で視線を落とした。仕方の無いことだ。いい年をしていきなり一人言を呟き、泣き出した男をみたら誰だってそうするだろう。
プリクラの裏には消えかけたような筆跡。強がりの笑顔の裏に残された『ごめん。』の文字。
ああ、なんだ。あいつはちゃんと謝っていたのか。意固地になって責め立て、喧嘩別れをしてしまった女。今はもう隣にいない、冷たい目線しかよこさなくなった女。あまりに素直じゃない、こんなやり方しか知らない不器用な女。
いや、違う。不器用なのは自分だ。いつだって催促されるまでは行動が出来ない。後ろ向きな発言で行動を避けてばかりいる自分。
トットットッ。音が聞こえる。先程より早く、急かすように打ち鳴らされる。それに促され、仕方なく教室をでた。数人の視線を背中に感じるが、気にせずに進む。
トットットットットットッ。
段々と早くなる音に責められながら校舎を歩き回る。涙を流しながら彷徨う姿はどれだけ滑稽だろうか。ほんの少しの後悔が漂い始めた頃、ようやく見つけた。
トクン。
一際大きな音を立てると、催促の音は鎮まっていった。
『―――。』
一言だけ伝えると、女は泣きそうな眼を歪めて、紅潮した笑顔でピースを突き付けてきた。
トットットットットッ。また、せわしない催促の音が聞こえる。促され、女を抱き締める。
ああ。きっともう大丈夫なんだろう。いつだって正しく催促してくれるこの鼓動に身を任せていれば、僕たちは素直になれるのだろうから。

初めてやってみたが、お題というわりには「プリクラ」の印象が弱かったかなと反省はしている。

連投してすまんが見直したら最悪な事に気付いた。
一人称が俺→僕になってるわ。
最初の「俺」を「自分」に置換して見てほしい…いや、やっぱり出直してくるorz

>>137
一人称のケアレスミスは特に気ならず
男女互いに恋愛に不得手な雰囲気が好き。
こういう体が痒くなるほどに純な話しを持ってこられると発狂するわ。

一番気になったのは
>「…剥がすんじゃ、無かった」
ってあるけども、その後悔のしかたが後の展開と反するものに感じた。
「もっと早くに剥がしておけばよかった」
とかの前向きな後悔の方がしっくりくるんじゃね?

全体的に『副題:不器用』みたいな感じで面白かったから次のお題で出直してこい

>>137だけど評価ありがとう。うん、やっぱそう思うよなー。

ほんとは「後ろ向きな意見ばっか言い訳にして、面倒くさがりで、なんもしてこなかったダメ男」をもっと表現できればよかった。
見なければよかった、は 「知らなければこんな罪悪感を感じたりしないでよかったのに」ってつもりだった。
でも催促されたから「仕方なく」を「言い訳」に女に復縁を願いにいくって感じが出したかった。
女とやり直してようやくちょっと変われた、みたいな。
やっぱり短くまとめようとすると、大事なところまで削れがちだわ…。
どうやって表現するか難しいと再確認できたよ。
心情描写のあたりに集中してもう少しがんばる。ありがとう。
他にも気になったとこあったら指摘してくれ。次回は注意する。

次のお題いつからだっけ?

一週間たつし、そろそろお題を次のにかえない?
>>123 でいいのかな

手が滑って途中のままあげちゃったわ。ごめん

 己より小さな体を抱きよせると、彼女は体を強ばらせながら俺の肩に顔を乗せる。
 ヒクつく頬のヒゲがくすぐったい。栗毛を撫でればくすぐったいのか彼女は俺の顎したにもぐり込む。
 抱っこが嫌いな彼女も、俺が抱く時は大人しい。本当は怖いのかもしれない。
 チョンチョンと俺の頬を彼女が頬をつける。愛しい彼女の小さな頬はひんやりとした毛に覆われていたが、とても暖かった。

出だしの己の威力がすごいけども他はまったりとしてて雰囲気好き
彼女とのほのぼのいちゃいちゃを行数が許す限り見たいと思った
俺も髭のある小動物チックな彼女が欲しい

>>144
おぅ、シンプルでいいね。ザラッとした舐めキッスに発展しそうな頬ずりだわ
確かに最初の『己』という表現はちょっと浮いてる気もするが、彼女側の視点で描かれた某文豪の作品出だしの『吾輩』を意識してる…とは深読みしすぎか

親が我が子に頬ずりをする。その温もりを、絆を確かめるように。子がある程度の歳にもなれば、父親の頬ずりは「髭が痛い」だとか文句を言われる対象にさえなるが、それでも頬ずりをできる親子の関係は決して希薄なものではない筈だ。

血の繋がりはなくとも、愛すべき家族の一員たるペットに頬ずりをする事もあるだろう。多くの種では人のそれとは違う、ふさふさとした毛に覆われた彼らの頬。しかしそこで確かめられるのは、やはり互いの心の絆に違いない。

有機質か無機質かに関わらず、何か思い入れのある物に頬ずりをする事もあるかもしれない。例えば丹精込めて作った野菜や、ずっと憧れ続けた楽器や車。冷たく硬い感触の素材で出来ていようと頬を寄せてしまうのも頷ける。

若き恋人達が、結ばれて家族となったばかりの二人が、それぞれの居場所を確認するように頬を併せるのは、当たり前を過ぎて本能とも思える事だ。長く連れ添った熟年の夫婦がそうしていても、微笑ましいばかりで何ら不自然さなど感じない。

頬に覚える感触や温度がどうであろうとも、その行為により心に伝い湧き上がるのは愛しさや喜びといった、優しい感情。
頬ずりとは、幸福や充足感を得るためにとる仕草である筈だ。

だから今、私の頬に触れているごつごつとした皺だらけの冷たい肌から届く感情も、悲しみでは無いと信じたい。


「ありがとう」

母が私にくれた、最後の言葉。


絞り出した掠れ声は、とてもそれを唱える唇が私の耳元にあるとは思えないほど小さく弱々しいものだった。

心拍の途絶を告げる機械音が部屋に響き、付き添っていた医師が母の手首に指を当てる。

私の目から零れ落ちた温かい雫が、互いの頬の隙間を濡らしてゆく。

「ありがとう、おふくろ、ありがとう」

幼な子が母を真似るように、私はただ彼女が遺した言葉を繰り返した。

冷たくてごつごつした感触の、優しい頬ずりと共に。

>>147
珍しく随想かなと思ったらいきなり死別してた
序盤が父さんで後半がママンってのがしっくりこなくてもったいない
どっちかのエピソードに偏ってくれるともっと面白くなったんじゃないかと

頬ずりの持つ性質を語るのは面白い発想でいいなって思った

>>148
批評ありがとう
言われてその通りだと感じて悔やんだ、糧にする

我が家には賢い妹がいる。なんでもしたがるし、わりとなんでもできた。
兄妹一緒にお母さんから教わった一度きりのカレー作りで、材料と計量を
まるっと暗記してしまったのはまだまだ序の口。

料理が得意で家庭的なところが長所、ということではなく、勉強もそれなりにこなせた。
小学生の頃なんか学年が違うのに、担任から、「お前の妹は――」と
耳にたこができるくらい何度も聞かされたのをよく覚えている。

それでも運動がからっきしでいてくれれば、まだ兄である僕の立場があった。
昔はあった。今はない。情けない。でも憎めない。それが妹なのだ。
三点倒立を練習する横で華麗に逆立ちを決められてしまえば、もう認めざるをえなかった。

なんでもできるのが妹。なんでもできないといけないのが妹。それが皆にとっての妹。
本質満点から少し下がってしまった成績表を両親が憂うと、妹は僕を羨ましそうに見つめた。
僕は順調に成績を伸ばしていける余地があったから褒められる。その差が羨ましかったようだ。

「お兄ちゃんと一緒がよかったから真似してきたのに、今はなんだかとってもつまんない」

訊ねた僕の部屋で珍しく愚痴をこぼしたのは、妹が県内の有名進学校の高校を受験した晩のことだった。
眉を下げて寂しげにする妹を知っているのは僕だけであり、妹も僕にしかその表情を見せなかった。
隣に腰を降ろすと、肩にこつんと頭をぶつける。どちらからともなく手を重ねて握り合う。
妹の喜びは称賛だけではない。その感情は声には出さなくてもきちんと感じとれた。

「I want you to rub me.」

おねだりに応えて朱色に照った頬に手を添える。手のひらに口づけをされたのは、僕にすきがあったから。

「I rub you.」

残念ながら妹に愛はささやけない。愛おしいとだけ伝えると、それでも満足そうに微笑んだ。

>>150
言葉遊びは面白い。妹が言ったのは本当にrubだったか、兄がそうすり替えて捉えただけか、兄はrubに何も忍ばせなかったか…どうとも取れる憎い作りだと思った。

ただ、お題の頬ずりに対して描写は掌で頬に触れるのみに留まっている点と、『妹の喜びは称賛だけではない』の一文が気になった。

これだけ優秀で、僅かな成績の低迷でも親に渋い顔をされる妹にとって、称賛は喜びというより退屈で鬱陶しい当たり前のものになっているのでは…と

俺がそう思ったというだけだけど

 突然の事で誠に申し訳ありませんが、私は今、複数名の宇宙人と同棲しています。

 わかります。お気持ちはわかります。まだ年端も行かない小娘でありながらこんなふしだらな行いをしている私に対して、きっと貞淑で良識的な皆様方はさぞかし軽蔑の眼差しを向けられる事でしょう。

 ですが、私と彼らとは一緒に住んでいるというだけで、非常にプラトニックなお付き合いをさせて頂いておりますし、お互い、一線を越える様な行為は一切致しておりません。また、もしその様な事になった場合は責任を取ると彼らは私に明言しております。

 いえ、明言というのは正確には正しくありませんが、とにかくそうはっきりと私に伝えております。というのも、彼らと私との意志疎通は全て体を触れ合わせる事によって行われておりますので、どうしても言葉にはならないのです。

 なので、それを証拠として提出する事は出来ませんが、しかし、それに一体何の問題があると言うのでしょうか。私と彼らはお互いに愛し合っておりますし、それはお互いによく伝わっております。愛さえあれば、などと陳腐な台詞を言うつもりはいささかもありませんが、少なくとも私と彼らとの同棲を淫らで破廉恥な行為などと何も知らない方から決めつけられたくはないのです。

 彼らは皆、私を抱き締めたり、私の頭を優しく撫でたり、私に頬ずりをして永遠に変わらぬ愛を誓ってくれておりますし、私も彼らの側で一生を添い遂げたいと切に願っております。愛に国境はないとよく申しますが、ならば種族の垣根を飛び越えても良いのではないかと私は強く思っているのです。

 もちろん、私の言葉は彼らには理解出来ませんし、私も彼らの言葉を理解する事は出来ません。ですが、愛や慈しみ、優しさなどというものは、言葉によって語るのではなく行動によって語るものではないでしょうか? 少なくとも、私はそう思うのです。万の言葉を用いて愛の言葉を囁かれるよりも、たった一回の抱擁や頬ずりの方が遥かに気持ちが伝わるのではないでしょうか。

 私は今、彼らの側で一生を添い遂げたいと切に願っております。ここまで聞いた上で、それでもはしたない女だと蔑まれるのならば私はそれでも結構です。何を言われようとも、今の私の気持ちは一切変わる事はございませんので。

 もちろん、こんな重大な事を今まで黙っていた私を皆様方が責めるのは当然の事かとも思いますし、この様に身勝手で一方的なメッセージを送るだけで何もかもが済まされるとは私も思ってはおりません。ですが、何も伝えないよりは、わずかながらでも伝えた方が良いのではないかと愚考し、ここにこうして書き込みする次第でございます。

 この星にいる猫族を代表し、皆様方にお伝え申し上げます。

 愛しております。

 名無しの猫より。


 追伸。

 カツオブシが好きです。もっとちょうだい。

>>152 話の始まりかたが、武者小路実篤をおもいだした。古風な物言いで文芸的な演出をするなら、プラトニックみたいなカタカナは気になるかも。平仮名にするか日本語にするかのが締まりはいいかなと。感覚的にエロティックな文面に対して内容が猫との同棲というのは面白いかな。ただ後半にいくにつれて段々とその文学的表現のこだわりが薄れていくのがあまりに残念。せっかくならば最後まで通してほしかったなと。嫌いではないです。

一人の帰り道、頬にできたニキビをポリポリと掻く。
ニキビを掻くと悪化することはわかっている。でも、やめられないのだ。
ニキビが気になって仕方なくて、つい掻いてしまう。

ふと、暗いところばかり見ている僕にはお似合いのクセだと思った。
これからも僕はニキビをポリポリと掻いて、そして嫌われ続けるのだろう。

ふと、道端に二匹の猫を見つけた。
猫たちは仲睦まじく頬ずりしてじゃれていた。

僕の頬を掻いていた指に目を移すと、ニキビから出た血で汚れていた。

推敲途中で投稿してしまった、すごく恥ずかしいorz

>>155
ドンマイ

つかお題が猫くらいの勢いになってきたな(笑)

「可愛いげのない奴」
不器用で後ろ向きな性格をした僕の口は、そんな言葉を捻り出した。それを聞いた女は不機嫌に顔を歪ませ、何も言わずに立ち去った。
――またやってしまった。
この間も下らない喧嘩をして、ようやく素直になると誓って復縁したばかりだというのに。素直になりたいと思っているのに、どうして僕の口はそれを理解してくれないのか。
構内で何重にも設置された放送機材が次の講義時間を教えてくる。力強く反響する鐘は、僕の間違いを指摘する警告に聞こえた。だからと言ってこの口が一緒では巧く弁解などできないだろう。
――仕方ないか、それに講義に遅れてしまうし。
自分の口を言い訳に行動を起こさない僕は、以前から比べて進歩したのだろうか。相手に責任をなすりつけて言い訳にしていた頃よりはマシだと信じたい。誓いを立てたからといって、人は簡単に変われないのだ。講堂で女を見かけた。見かけたといってもいつもの席にいるだけだ。600人収容・自由席のこの講堂においては誰もが自分のテリトリーを持って着席する。毎回ほぼ決まってそこの範囲へ足を運ぶ。目に見えなくともそれがわかるのだ。だから僕もそれに従う。女の横。僕のテリトリーはあまりに狭い。唯一の指定席だ。
はぁ、と大きな溜め息が横から聞こえる。見ることはしない。面倒に関わっていくのは苦手だから。
『私の台詞だわ』と聞こえて来ると、目は僕の意に反して女を見る。そして僕が『睨んでも無駄よ』と言われる。僕は口だけでなく目まで素直じゃないらしい。退屈な講義の最中、女の言葉を反芻する。意味はわかる。可愛げの無いのは僕だと言いたいのだ。しかしどうすれば可愛げが出せるかなど知らない。知っているなら教えてくれ。
教授はまだ鐘もならない内に終了を告げた。寒い寒いと手を擦り合わせて帰り支度をする女を見る。仕方がない。聞くなら今しかない。僕は女の冷たい手首を掴んで引き寄せる。驚いて抵抗する女。また勝手に語り出しそうな口と目を閉じさせ、その冷たい掌に僕の頬を擦り付ける。動物に見られるおねだりのボディランゲージだが、目と口を閉ざした僕にはもうそれしか語る術はなかった。意図に気付いてくれるだろうか。
『やればできるじゃない』。女の声と同時に終業の鐘。講堂の唯一の放送機材は今度こそ正解の鐘の音を響かせた。自分の行動を振り返り、正解を認めたくなくなる。やはり素直じゃないのは僕だった。

前回(プリクラ)のリベンジしようと同じキャラをつかって挑戦したけど
やっぱり主題が弱いっていう連敗っぷりだ
泣きたくなるな

そう卑下するほど悪いもんでもないと思うよ。
謙虚すぎるのも良くないし、もうちょっと自信持っていいと思う。

ただ三行目の『顔を歪ませ』は『眉間に皺を寄せて』とか『口をへの字に曲げて』とかのほうが不機嫌の表現としては適切かと。

あと改行する時、時々一段落あけた方が見た目すっきりするかもね。

 頬擦りとは、愛情表現である。

 他人がどう考えているかは知らないが、少なくとも僕はそう考える。それはきっと、過去にそれを認識したその時から。或いは物心つかぬ頃、母や父からそうしてもらったその時から、ずっと変わらない価値観なのだろうと思う。当時の心境など知る由もないが、きっと。

 頬擦りとは、愛情表現である。

 つまり頬擦りをする相手には、少なからずそのような感情を抱いている、ということなのだろう。それは愛玩動物であり、我が子であり、愛する人であり、時に無機物ですらある。相手の意志はどうあれ、憎むべき敵に頬擦りはしないだろう。

 頬擦りとは、愛情表現である。

 僕はしてみたい。無性に。頬擦りを。抱き締めて、体温を感じて、顔を寄せて、頬擦りをしたい。何故かと聞かれたら、答えることは出来ない。これは欲求というより、衝動。そして衝動とは、理由が存在しないからこそ衝動たりえるのだ。

 してその相手とは、僕が握りしめる携帯電話の、その画面に映る電話番号の、その持ち主。彼女は僕が愛する人だ。僕を養ってくれる家族には悪いが、それ以上、僕の最上の愛を注ぐ人である。
 彼女の側は──

 ──程度は知れずとも、愛してくれてはいるだろうと思う。ならば。頬擦りを行うのに過不足は無いだろう。
 受話器のマークを押す。


 僕が握りしめる携帯電話の、その画面には、通話終了の文字が映っている。通話時間、十秒。つまりはそれだけで会話は終了したという事であり、それ以上の発言を許されなかったということでもある。

 頬擦りとは愛情表現である。

 何故断られてしまったのだろう。彼女は僕に愛情を抱いてはいないということだろうか。
 わからない。
 もしや、頬擦りという行為自体に問題があったのか。ならば、頬擦りという行為についてもう一度考えてみようか。

 頬擦りとは愛情表現である………

>>145
 評価ありがとう。
 自身とか自分とかあるけどやっぱり一人称って統一したほうがいいのか。
 実際モデルがいるからちょっと走りすぎた気がする。

>>146
 評価ありがとう。
 うさぎの舌はザラザラしてないし、彼女は抱っこ中は服しか舐めないんだ(泣)

>>147
 すまん、ガチ泣きした。
 前半と後半の雰囲気の落差にちょっとついて行けなかったごめん。

>>160
最初、繰り返す『頬擦りとは~』があまりにくどいと思ったが
最後の展開と再度繰り返させる事で主人公の思考感覚がずれている(病んでる?)事の
表現だったんだなと感じた。読んでて「ん?…んん……ん?…おぉ」って感じだった
面白いと思ったよ

ただちょっと読点が多すぎるか
それも思考の特異性を表現するための事かもしれないが

>>161
うさぎだったんかい、それならちょっとでも『長い耳』とかのキーワードが欲しかったかな
俺の文で泣いてくれてありがとう

一人の帰り道、僕は道端で歩いている二匹の野良猫を見つけた。
灰色の猫と、茶黒のシマシマの猫だった。
なんとなく足を止め、それを見つめた。

猫たちは木陰に入ると、頬をすりよせあいはじめた。灰色の猫はゆったりとした動きで右の頬を擦りよせ、次に左の頬擦りよせ、それでも満足せずに再び右の頬を擦りよせた。嬉しそうに目を細めていて、それがやけに目についた。

僕は右の頬のニキビを掻いた。
ニキビを掻くとひどくなるってわかっていた。それでもお構いなしだった。
仲良さげな猫を見ていると、掻きむしらずにはいられなかった。
自分の悪いところを気にせずにはいられない。それが僕なのだ。

頬にジンワリとした痛みが広がった。
ニキビを掻きすぎたのだ。
頬を掻いていた右手の指を見ると、点々と血が付いていた。
人さし指の腹で血の出たニキビをなぞると、指に血がべったりと付いた。

猫は相変わらずじゃれあっていた。当然、その頬にはニキビなんてない。

僕には頬ずりなんて無理だ。そう考えると、猫を見るのがつらくなった。

猫がこちらに気づいたらしく、頬ずりをやめて僕の方を見た。
僕は猫から目を背け、再び歩き出した。
後ろで猫がにゃあと鳴くのが聞こえたが、振り向く気にならなかった。

>>160
恐くて好きだ。
単にフラれたとかいろいろ考えたけど…
やっぱりこいつは病んでるって思える。
書き方うまいとおもう。

一週間たったけどお題の方どうする?

変えてもいいんじゃない
お題↓で

暖気

 古い街の公園の中で焚き火をしている。
 私は焚き火を、ただボーっと見ていた。灰まじりの炭がほのかに赤く染まっているが、その赤もいずれ消えるのだろう。そう考えると寒くなった気がした。とりあえず焚き木を追加した。

「暖をとってもいいかな」という声が聞こえた。顔を上げると明るい茶色のコートを来た温和そうな若い男がいた。
「いいですよ」と答えた。一人でいる理由も、断る理由もなかった。
 男は正面から少し外れたあたりに座った。

 男の方を見ると、焚き火をぼんやりと見つめていた。
 あまり話しかけなくてもいいのかな、と思った。気さくに話せるほうじゃなかったのでありがたかった。私も火に見入ることにした。
 焚き木を追加したおかげか火は勢いを増し、わずかながら炎も上がっていた。パチパチと鳴る音が心地よかった。

 突然、ポンッ!っと大きな音が鳴った。私は驚いて体を委縮させてしまった。
 目の前の男もビクッと委縮したようだった。
 思わず、コートの男の方を見てしまった。男と目があった。
 しばらく見つめあっていると、男が照れ笑いをした。私もつい笑いをこぼした。
「びっくりしました」と話しかけてみた。
「あまりにも大きい音がするんだから。驚くしかないよ」
 私は、軽くあははと笑って返した。

 私たちは再び焚き火に見入った。相変わらずパチパチと音が鳴っている。
 男の方を見てみると、やはり温和そうな様子で火に見入っていた。
 不思議と暖かい。

 そうやって、どのくらい時間が経ったのか。火の勢いも弱くなった。
「もう少し当たりますか」と男に話しかけた。男は時計を見て、少し目を見開いた。どうやら、このコートの男は長居しすぎたらしい。
「そろそろ行かなくちゃ。焚き火の片づけを手伝おうか」と聞いてきた。
「いえ、お急ぎのようですから私がやっておきますよ」と答えた。
「ありがとう」男は少し安心したような笑みを浮かべた。若い紳士は立ち上がり、軽く身支度を整えた。

「今日は、良い時間をありがとう」男は言った。温かい笑みを浮かべていた。
「こちらこそ」と答えた。

本当にありがとう、と心の中で呟いて男を見送った。

訂正 男もビクッと委縮したようだった→男もビクッと縮こまったようだった

2レスになっちゃったけど、あんまり良くない?

そこまで長い気はしないし、いいんじゃないかな

文の方は、後半の地の文が動作を描写してばっかりにみえたから、もう少し心象の描写を入れても面白いかな、とは思った。


>>152
後半の力尽きた感が微笑ましい
できれば同じ調子で最後まで続いてもらいたかった
雰囲気が好き

>>157
終盤のお題部分ってもしかして無い方がしっくりくるんじゃね?
面白いけれども本当に必要か疑わしい説明が多い気がしなくもない
いらぬ場所を削ってもうちょい男の心情を書き足してくれると理解しやすいくなるんだろうけど……

文才に関係ないけども短文が横にずらりと並ぶと読みにくい
改行をいれてくれると読みやすくて助かる

>>160
こいつは携帯電話に頬ずりをしたのか?
既に頬ずり済みで嫌われてるストーカー体質が電話越しに頬ずりをする天然かで悩む

同じ一文を繰り返し使うならそこでもうちょっと遊んでもらいたかった
内容が面白いだけにそこが残念

>>163
生き物あいてに「それ」とかマジ冷血
文末がもうちょっと一人称らしくなるとすんなりと文が入ってきそう
日常の上辺をすっとなぞるような空気が好き

>>168
もうちょいヒントが欲しいなあとは思った。

>灰まじりの炭がほのかに赤く染まっているが、その赤もいずれ消えるのだろう。
これが血液の表現で

>「こちらこそ」と答えた。
>本当にありがとう、と心の中で呟いて男を見送った。

これが後片付けを辞退してくれてありがとうって意味ならば、
男は死体を燃やしてるってことになるうだろうけども
深読みだったら物騒なことを書いてすまん

台詞の直後の地の文は私には不要な気がした。
男の描写は嵌って面白いけども、私のは改行して専用に地の文を入れた方がいいなあとは思った
誰かの文章をリスペクトして書いてたんなら見当違いスマソ

>>168
たぶん>>173の見解はさすがに深読みなのでは、もちろんそう解釈できなくはないけど

俺は素直に焚き火の情景と、それがもたらした思いがけない他人との交流を描いただけと受け取る
全体的に人物の動作や表情なんかはよく伝わってくる
人同士の心の交流という部分は、割と表現できてると思う

ただ舞台である焚き火のまわり、さらにその周囲の様子・風景の情報はもう少し詳細に欲しいかな

それからあとは文章が綺麗に、スムーズになるように推敲だ
文章の中間、締めに『~した。 ~た~』が多いように思う

例えば

「暖をとってもいいかな」という声が聞こえた。顔を上げると明るい茶色のコートを着た温和そうな若い男がいた。
「いいですよ」と答えた。一人でいる理由も、断る理由もなかった。

…を

不意に届いた「暖をとってもいいかな」という声に顔を上げると、そこには明るい茶色のコートを纏う男が立っていた。
まだ若いであろう彼の顔立ちは、いかにも温和そうに見える。
一人でいる理由も断る理由も特には思いつかず、私は短く「いいですよ」と答えた。

とすれば、幾分スムーズではないか

>>171
言われて気がついたけど、最後の方完全に燃え尽きてるね……。「と聞いてきた」「と答えた」のとってつけた感が半端ないorz

>>173
東野圭吾さんの文の改行の仕方を参考にしてみた
といっても、描写が下手なので全然近づかないけどorz
個人的にはこの改行の仕方が好きなんだけど、やっぱり好みが別れるのか

あと、個人的にはそういうホラーは大好物です。気が向いたら書きなおしてみますね。

>>174
読み直してみると、序盤の説明・情景描写が決定的に足りないですね……
地の文のテンポの悪さは自分でも課題だと思っていたので、すごく参考になります。

「寒いね」

 少女が言う。

「暑い」

 と少年が負けじと言う。

 まるで夏のような日差しに目を細めれば、不意に吹く冷たい風に身を縮める。

 この時期暑くなったり寒くなったり忙しい。

 まさにそんな季節。天気予報は晴天を告げ、晴れやかな旅立ちの日。

 暖かな空気は子供たちを祝福しているよう。

 皆薄着とも言える服だが大丈夫だろうか。体育館へと続く廊下。

 どこからともなく嚔が聞こえた。

シンプルに卒業式に向かう子供達を描いてて微笑ましいと思う

『この時期~』と『まさにそんな季節』、『晴天を告げ』と『晴れやかな~』みたいに被ったイメージの言葉が気になる

暖かな空気が祝福してるなら、薄着を心配する必要は無い気もする

『体育館へと続く廊下』は、どこからかのくしゃみとセットと捉えるべきなら改行が少しおかしいか

ダメ出しをたくさんしてしまったが、このシンプルさで文をもっと纏めれば、実に好印象な出来になりそうなだけに惜しいと思ったんだ

>>176
暑がりの少年 と 寒がりの少女
夏のような日差し と 不意に吹く冷たい風
薄着 と くしゃみ

せっかく対立構造を作って文を整えているのだから、これを生かすといいと思う。
特に最後の対立構造がわかりにくいから、
「薄着になるほどの暖気 と クシャミをするほどの寒気」というように対立構造を明確化させるとよくなると思う。

対立構造のある文を書くと、たいてい「暖気→寒気→暖気→寒気」の繰り返しになって単調になりがちだけど、それを自然に崩せているからセンスは良いと思った。

>>177
評価ありがとう
確かに被ってて諄いな。
薄着と書いてしまったが、制服のない学校は着てる服がバラバラでなんて書いたらいいかわからなかった。
ふと、誰かのクシャミが にした方がよかったかもしれない

>>178
評価ありがとう
暖気にすると前の暖かな空気と重ならないか
本格的に暖かくなるまでの不安定な感じを出して見たかった。
参考にする

冬が開けると、「春の陽気に誘われて」という文句を耳にする機会が増えた。
雪国の春を体感温度で探るのは非常に難しいもので、春一番が吹こうものなら
コートの襟を締めて歩いてしまう。路辺にツクシが生えていても季節を受け入れるのは厳しい。
肌が外気に慣れ始める頃には、暦上では夏の香りを感じ始める時期に入っていたりする。

「それはだって、不毛な我慢大会じゃなければ、半袖でいられるのは夏くらいなものでしょ」

窓越しに空を見上げながら姉が言った。確かにそうかもしれない。
なるほど。一理ある。首を縦に振って同意をする。

窓の端で大と小の一対の雲がのんびりと流れていた。
歩幅が違うのか小さい雲がなんとか大きい雲についていこうとしているようで、
無生物ながらもなんとも微笑ましい光景に思わず頬が緩む。

しばし二人で顔を寄せて別々の空を眺めていると、姉が飽きて窓辺から離脱をしてしまった。
膝を立てていたベッドにころりと仰向けになる。それで何をするかと思えば、
上方にぴんっと伸ばした右腕の人差し指を立てて、天井にむかって小さく動かしはじめた。
眼鏡を外している姉では木目は数えられないだろう。案の定、細い腕はすぐに布団へと落ちた。

「暇なのよ。悪い?」

悪いことはない。暇を持て余していたから揃って青空を気にしていた。
外への興味だけが時間の有効活用ならば、それこそ不毛な我慢比べである。
本棚から一冊を取り出して娯楽を提供する。姉は受け取ると感謝の言葉もなく表紙をめくった。

どこかに冬の気配が残る姉の性格はいつものこと。ここで礼を催促する方がおこがましい。
再び空に視線を送る。中央に並んでいた大小の雲の大きいものだけどこかへ流れてしまったようだった。

なんとなく。それを見てなんとなく寂しい気持ちになった。姉の隣にころりと横になって本を覗き込む。
脇から腕を抱かれても姉は何も言わなかった。ただ自分の速度でページを進めていくだけだった。

個人的には所々少し分かりにくいと思った。冬の気配が残る姉の性格~の辺りとか。二回読んできちっと理解できた感じ。まあ、自分の読解力がないだけなんで参考にならないと思いますが…。
文章自体はどうやったらそううまく書けるのか教えてほしいくらいですわ。

>>180
とても綺麗な文だけど、暖気というキーワードの再現はちょっと薄いかな

もしかしたら姉妹(姉弟?)は季節を擬人化したものなのか
姉は冬で、自分の出番は終わり
本をめくる仕草と同じ、自分のペースで去ってゆく
春?の妹は自分達を雲に見立て、足早に消えていった大きな雲を姉に重ねて…
そう捉えると、妹自身が暖気なのかもしれない

ミュシャの四季の女神の絵、綺麗だよね

春の陽射しが頭上からさしこむアパートの窓辺に、ぱらり、またぱらりと音が響いていた。
開け放たれた窓から春の息吹が投げ込まれてカーテンを揺らし、それに乗じて咲き始めた桜の花びらが一片、しおりのように紙面に落ちる。
部屋の中では男が一人、窓際にもたれかかって一心不乱に頁をめくっていた。
右上から左下へ、次の頁へ。紙をめくり、また頁の右上から。
時にリズミカルに、時にゆっくりと、時には前の頁を読み返しながら。
何度も何度も頁をめくり、ついには終端にたどりつき、それでも足りぬとばかりにカバーを外し、表紙裏に描かれた内容にも目を通す。

「次……あった」

好き勝手に私物が散らばった部屋の中に、男の両足を谷底として深いV字の谷が出来上がっていた。
読み終えた本と、まだ読んでいない本。
微動だにしない男は時間がたつのも忘れて、本を読みふける。

やがて太陽は西に傾きはじめ、男は自分の手元から失せた光に、やっと顔を上げた。
残り一冊となった右手側と、うずたかく本が積まれた左手側。
それを見比べて苦笑した男は、最後の一冊に手を伸ばした。

15分。それだけの時間をかけて最後の一冊を読み終えた男は、知らず知らず頬を伝う涙をシャツの袖で乱暴にこすり――――

本の山の頂に置いた。

勢いをつけて立ち上がると、3時間もじっとしていた体をほぐすように伸びをする。
長い長い休息を経て、目の前の困難に立ち向かう力を蓄えた男は、肩をぐるりと回して息を吐く。

「さってと、荷造り再開しなきゃな!」


そう言うと男はダンボール箱に今しがた読み終えたマンガを詰めこみはじめた。

age忘れた

>>183
なんだかひとつの文章に内容を詰め込みすぎてる気がする。
読み耽る男の描写とか、その周りの風景とかのあるあるは想像できて面白いけども
もうちょい文を切り離して書いてくれるともっと理解しやすくなると思う。
あと微妙に単語の意味を間違って覚えてる可能性とかは、まあ……がんばれ。

その穏やかな雰囲気はけっこう好き。

お題変える?

一週間たったしね

お題↓

くじ引き

息子は重要な決断をくじ引きで決める癖がある。
ハンバーグとカレー。車とブロック。ミカちゃんとリエちゃん。
そのやり方にもこだわりが出てくる。
握った二本のひも。サイコロ。コイン。目をつぶって最初に見た時計の秒数。
彼が言うには、「自分がどうにもできないこと」が大事らしい。
ある日、ひっこ抜いてきた花の根のどちらが長いかを比べていたので、拳骨を頭に当てた。
「突然ここに鬼がやって来て、『おまえと隣のタクヤ、どちらの舌が長いか切り取ってくじ引きをする』と言ったらどうだ?」
息子は青ざめて、翌日久しぶりに「おねしょ」をした。

それから三日後、息子が同じクラスの女の子を泣かせたらしい。
理由を聞いて驚いた。息子は花占いをしていた女の子のもとへやって来て、いきなり怒り出したという。
これは私の責任であるので、女の子の親に謝りに行った。子供同士のことと笑って許していただいたが、理由を話すと、「お互

い大変ですねぇ」と苦笑いを浮かべていた。

息子からしてみればなぜ怒られたのかわからないだろう。父親としても迂闊であった。
「しっかり納得のいく説明をしないとね」妻が言った。「間違ったことは言ってないと思ってるんでしょ?」
確かにその通りで、間違ったことを教えたという気はない。だからこそ説明が難しい。
「ごまかそうとか、しちゃ駄目よ。もう一人前の男の子だからね」
生意気なことである。

その日の夜に、息子を呼び出して伝えた。
「おれがお前を叱ったのは、おれがおまえのお父さんだからだ」
お父さんだから叱ったの、と聞くので、そうだ。と答えた。
「他の子がしていても、おれは叱らないだろう。おまえがおれの息子だから叱るんだ」
「お父さんの子供だから殴られたのは、不幸だな」
「なら別の家の子供になるか」
そう聞くと、しばらく考えたあと、「他の家の子は間違ったことを知らないから、不幸だな」とのたまった。
「それは違うぞ。他の家には他の家の考えがあって、その中にはここじゃわからないこともたくさんある」
「どんなこと?」
「わからないことだから、わからない。まぁ、次からは友達のやることはなるべく大目に見てやれ。いいところを探すほうが何倍も

いい」
息子は、「わかった」と言って、次の日女の子に謝った。

その後、「世のお父さんはこうやって信用を落としていくのね」と妻が笑った。
「くじ引きもお父さんも、同じよ。こうやって痛い目を見るうちに自分で考えるようになるんでしょうね」
「生意気だ」
私は、割り切れないまま焼酎をあおった。

一週間経った訳だがお題変える?
まだ一つしかネタが投稿されてない訳だけど

変えちゃおう安価↓

捕食者

飽きることなく降りしきる雨の中で、夜さえ遮る黒雲を背に、遠雷をその巨躯に照り返す。足元に佇む残骸はそれの持つ質量をしかと伝え、元が何であったかを判断する要素は既に無い。

その鉤爪、余りに大きく。
立ちはだかる障害の悉くを残骸に砕き、尚も鋭さを保ち続けるそれを一体何が止められよう。
その牙、余りに恐ろしく。
ぬめりを伴った凶悪はこれまで幾度大地を噛み砕き、星を、命を喰らい続けてきたのだろう。例えそれらが失われようと、その体だけで多大な破壊をもたらす事は想像に難くない。

過剰にして苛烈。故に絶望。どれだけの言葉を並べようと過不足ということはない。それほどに強大な。

最悪の捕食者は今、幾億の光を見つめる。

だが。人々は、闇夜に映える無数の光は。
何度爪が振るわれようと、巨体が星を揺らそうと、深い瞳を覗き込もうと。一縷の希望を胸に抱き、掴み、捉えて離さない。

彼等は知っている。
遠雷が照らすもう一つの影を。地を駆ける猛き姿を。空に翻る雄々しき姿を。怒りを抱く鋼鉄の剛腕を。期待を支える偉大な豪脚を。勇気を湛える戦士の鼓動を。闇を弾く堅牢なる紅を。
彼等は信じている。
鋭い剣閃が明日を斬り開く事を。煌めく光条が未来を紡ぐ事を。必殺の拳が恐怖の権化を打ち砕かん事を。

呼べ。讃えろ。嘯け。吠えろ。呟け。叫べ。彼の者の名を。さすれば希望は顕れん。

闇夜に輝く双眸ふたつ。
人の、友の、愛の為。
今日も、今こそ、正義の紅蓮が燃え上がる。

>必殺の拳
このフレーズでイメージがサイタマ先生とワクチンマンになってしまった

家に帰るとカマキリがいた。
もちろん本物のカマキリがこの季節に自由かっ歩できるわけではない。
脅威になりえない姿鏡を相手に、その威嚇姿でかまえている彼女のことである。
肩の高さと同じ位置にいる肘は横へ開き、約八十度の鋭角で立てられたその先は、
手の峠が頭よりも高くならない場所で上手く固定されている。

『上手く』というのは、石膏像のようにぴしっと固まっているの意味ではなく、
彼女の手が鎌イタチの腕を思わせる見事なカマを連想させるからである。
向かい合う鏡に無表情を映す彼女の真剣な姿につられて、ごくりと唾を飲む。
闘の姿勢を基準に採点をするならば、肘から上がやや内側に潜り気味なのが減点対象か。

それでも色の乏しい顔と鋭い狩人の眼差しが働き、しっかりと及第点を支えている。
学生時代を鉄仮面で過ごしていたと言うだけあって、沈黙が作り慣れた圧を生んでいる。
ドアの僅かな隙間からでもその重々しい空気がじりじりと伝わってくる。

「……ぁ」

声に気付いて慌てて鏡の中の口を確かめる。僅かに唇が動いていたかもしれない。
聞き逃してしまった要因は、ひとり言にしても音量があまりに小さかったという点もあるが、
動きに期待しすぎて彼女の後姿ばかりを注視しすぎてしまった失態が大部分を占める。
千載一遇の機会を失った悔しさに拳を強く握しめる。冷静さを欠いてしまうとはなんとも恨めしい。

彼女が壁の時計にちらりと視線を動かす。間違いなく待ち人の帰宅時間を気にしている。
ここまでか。唇を噛む痛みで怒りを押し沈める。何も知らないていで扉を開くしかない。
そう諦めを受け入れてドアのノブに手かけたとき、あろうことか彼女の手のカマが頭に添えられた。
鏡に映る口も今度ははっきりと動き――

「にゃあっ」

我慢できずに音を立てて扉を開け放つ。告白以来に見た動揺の顔は、出会い頭の車に驚く猫のようだった。

>>194
壮大すぎる比喩と味のある言い回しとが相まって勢いがすごい
テンポいいから読みやすいけども、読みやすいんだけども……

>>196彼女の行動に対するひねりを加えたような表現に魅力を感じた。
その表現の割にやっていることが実に下らない所も個人的に好き。
こういうボキャブラリーは持ってないから、参考にしたくなる文章でした。

>>197言い淀む事は無い。言いたまえ、ここはそういうスレだ。

自分で反省するなら途中リズムが崩れちゃった所をどうにかするべきだったな。
後これだけで俺の日本語の引き出しが限界を迎えたのも改善したい。

私は昔から鷹が好きだった。
具体的に言うと、小学4年生の夏休みの中頃からだ。
市民プールからの帰り道、太陽の熱で視界が淀むアスファルトの上を、叔母から貰った麦わら帽子を被って、歩いていた時のことだ。
自分の住む町では比較的大きめの川の脇に鷹が居た。居たというより食していた。カエルを。
その光景が純粋な私の目には強く映った。
生物の食物連鎖の中で、上位に居座る鷹が下位のカエルを圧倒的な力の強さで掴み、貪る姿はグロテスクではあったが、自分が自然の中で生きている事を実感できた。
私は鷹が好きだ。今も昔も。

>>199
簡潔で読みやすくていい
読点の多用と伸びた文章を半分にちぎってくれるともっとよかった
もうちょいボリューム増やしてもらうとさらに楽しめたかもしれない

捕食者と言えば何かを食べる者だと一般的には思うだろう。しかし、私はそうは思わない。捕食者というのは何かを食べるだけではなく、何かを従えさせる者でもある。と、私は考える。従えさせる者。つまり、捕食者であり絶対的強者である。強いが故に捕食者になるのだ。人間には強いところや弱いところもある。だからこそ、人間には優劣はなく、差別というのはおかしいものだと私は思う。
話がそれてしまったが、結局のところ言いたい事はというと、人間は捕食者にはなってはいけない。ということだ。

なんか最近過疎ってんな
俺は書いてないけど

まぁ、冬休み終わったし

ロシアンルーレットには必ず不幸のタネが仕込まれている。
鉄板は具の内部にカラシを潜ませることで、もう一段階強い刺激を求めるならば大量のワサビだろうか。
亜種としてラー油や七味を用いることもあるが、瞬間的な破壊力と持続する苦しみは前者には遠く及ばない。

平たい皿に乗せられて出てきた人数分の一口サイズの肉まんを前にして、冷や汗が噴き出る。
最初に訪れる人生の難所と言われた受験番号探しだって、ここまで息苦しくならない。
張り詰めた場の空気と尖った視線がチクチクと急かす。誰かが、「運試しか」と口を開く。

運試しは答えが見えていないから面白い。予測不可能が生む滑稽が楽しいのだ。
目に見えた地雷を踏んで喜劇が生まれると思うな。そもそも試させる気なんて無いクセによく言う。

「冷めちゃう前にみんなに食べてもらいたいんです」

若き同級生兼料理人兼指導者が苦笑いに汗を滑らせる。

「そうよ。その……だから早く食べなさいよ」

肉まんに紛れ込めていないダークマターの製造者が、照れと恥ずかしさを隠そうと言葉に棘を作る。
知っている。プライドの高いお前に惚れられてしまったのは、同級生だって知っている。
加えて料理下手なのも周知の事実。家庭科での惨劇は、伝説入りと同時に七不思議への参入まで果たした。
薄い皮に包まれたカラシを弾けさせないように、知らぬフリで全員が優しく接してきたのは優しさだ。

そして今日、皮肉なことにそのツケが回ってきた。肉まんは五つ。中央に添えられしは暗黒物質。
みんなが先に肉まんを食べてしまえば諦めがつく。そうしないのは、やはりプライドを守る優しさだった。
数ある中から彼女の料理を『偶然選んでしまう』のが大団円への近道なのだ。

舌打ちも混じりそうな重苦しい空気に耐えかねて、とうとう異形の肉まんを手に取る。
これがロシアンルーレットでカラシならばいい方だ。残念。カラシはカラシでもこれはカラシニコフである。
弾薬を仕込んでリロード。もう逃げられない。口を開けて一思いに放り込む。そしてカラシニコフのトリガーを引いた。
賭けに負けてもいい。その後のおみくじは大吉であれ。

新しいお題がくるまえにひとつ前の「くじ引き」

お題がもっと解釈の幅が広いものじゃないと集まらないな
捕食者よりも捕食の方が自由が利いてやりやすいと思うとかそんな感じ

僕は胸の高まりを押さえつつそこへ向かう

学舎への扉、まぁただの学校の玄関である。
中学校の2年生の春というのは、大げさに言うならその一年間を左右するものだ
修学旅行、二泊三日もの間無事に帰路につけるわけがない
口が重い自分ならなおさらだ

運に見放された去年は淋しいものだった、事実孤独へ一方通行だった。

もちろん友達は一人出来た
去年の中学校生活初めて出来た友達は給食のおじちゃんだ。
彼とはその豊富な年の功から人生観についてよく興味深かい話をすることが出来た、つまり孤独に生きるとはなんたるかを
彼はすばらしい、結婚相手も探さずに仕事に打ち込む彼を僕は本当に尊敬する

だが今年はそういうわけにもいかないようだ
二泊三日給食のおじちゃんを同行させることも許されず、自由に生きることをも出来ない
修学旅行に何の楽しみを見いだせるだろうか...否、ない

その去年の哀しみを苦しみを知っている僕だからこそ、今年は変われる気がしていた
積極的になれるわけでもないが、相手の気持ちを汲み取ることはできる

出来ることなら、騒がしいクラスではなくこんな僕でも一人の友人見つけられる...そんかクラスを...
...息が激しくなる、いよいよ紙の目の前だ

息を飲んだ、目を凝らす

目の前が白くなる

そして淡い期待はあっけなく泡になりいつのまにか弾けていった

めっちゃ長文になった
お題の「くじ引き」に挑戦してみた難しいな

稚拙ですまそ

いや、長文でもないだろ。
このスレなら皆そんなもんだよ

>>208
ありがとう
それならよかったばい

>>206
修正のし甲斐がある文章だな
内容は面白いから表現だけ気を付ければかなりよくなりそう

過疎っぽいけどお題どうするよ

ぶっちゃけ捕食者って思い付かないんよね
まあ、くじ引きも思い付かなかったんだけど、それは秘密だ

前スレみたいにもうちょい大雑把なのがくればまだな
そもそも人がいないんだろうけども

ずっとあげ進行いこー

場面と人物を限定しなくて、遊び心を入れやすそうなお題の方がいいよな。「挑戦」とか「嘘」とか「根性焼き」とか

そろそろ一週間なので
↓お題一つ

三分

>>210
いっそのこと自分だったらこういう風に書くとか、添削してくれたらうれしす
表現の仕方とか場面がわかりやすくなりそう

>>216
お前は文章校正を求めるよりも句読点の徹底からな
文才には関係してない部分でもイロハが崩れてると読んでもらえないぞ

ぱっと見だけど思い付いた文章を繋げただけって感じる
内容の整理と文章の整頓をしてくれ
手元にある小説かもしくは教科書に載ってるやつと見比べれば違和感たっぷりだろうよ

「三分間だけ、時間をあげる」

ベッドに押し倒されて、僕はすぐ目の前の彼女の顔を見つめざるを得ない。彼女は薄く笑みを浮かべていた。

こうなってしまった以上、もう逃げられないのはわかっている。手はがっちり押さえられていたし、足は既に手際良くタオルで縛られていた。馬乗りになった彼女の体をこの状態からどかすには、僕の筋力は全然足りない。

「好きな方を選んで。このまま私に犯されるか……」

ぺろりと小さな舌を出して、乾いた唇を軽く舐める彼女。まるで獲物を前にした子猫といったところだ。だけど、小さくたって牙はきちんとあるし、獲物を逃がさない爪だってある。

「それとも、あなたが私を犯すか……。どっちがいい?」

結局、また僕は彼女のペースにすっかりはまってしまっているのだ。いや、本当はそれを望んでいたのかもしれないけど。

「時間切れの場合は、私があなたを焦らしながら犯すから」

そう言った後に、彼女はいかにも肉食獣といった、それでいて可愛らしい笑みを浮かべた。

「どっちでも美味しく食べてあげる。貴方の体を余すところなく、ね」

僕は形ばかりの抵抗を示して、時間切れまで粘った。カウントダウンが終わると同時に、彼女は嬉しそうに僕の唇にむしゃぶりついた。

「三分」のつもりで書いてたら、いつの間にか「捕食者」になってた。今年一番のミステリーだわ(棒)

元ネタは某薄い本より。漫画を文にするってのは難しいなと改めて実感。


>>206
内容は面白いと思うけど、文としてまとまりがないというか、言い回しや使い方がおかしい点がちらほら

ざっと挙げるだけでも、以下の通り
無事に帰路につける訳がない→帰れないという意味に
口が重い→無口という意味ではない
豊富な年の功→豊富な、はおかしい。年の功だけで十分

まあ、そんな事を文才ない自分が偉そうに言うとります。失礼


彼女のマンションに来たのは初めてだった。
緊張している。ゆっくりと息を吸って、時間をかけて吐きだした。
それでも心臓は早鐘を打っている。
本当に、どうしようもないなぁ。
意を決して靴を脱いで一段上がった。
なんの連絡も無しにここまで来てしまったが、彼女は驚いてくれるだろうか。

そういえば、三分前にも同じことを考えてたな。
少し落ち着いた方がいいかもしれない。
冷たい風を浴びながら再び大きく深呼吸をして、ゆっくりと一歩を踏み出した。

>>220

前半では靴を脱いでいる→屋内
後半では冷たい風を浴びている→屋外

つまり前半と後半との間の三分間でナニか心穏やかでない事象に遭遇したと解釈すればよろしいか?
で、理由は別であっても三分前と同じく心を落ち着けようとしている…と

そうだとしたら構成はなかなか面白い
せっかくなら文章にもう少し凝ってみて欲しい

特に『本当にどうしようも~』の一文は、本来なら()があった方がしっくりくる
主人公の思考そのものだと思うので、他の文からはちょっと浮いてる気がしたんだ

>>220 最初は>>221かと思ったけど、もしかして違う?
文章が短くて色んな解釈が出来そうだけど

捉え方によっては三分間の意味が変わってきそうだ
出来れば解説が欲しい

>>219
無口って意味も含んでるらしいよ
使いどころが正しいかどうかはおいておくとして

>>218
えっちなのはいけないと思います!
文章に脅迫感とか切迫感があったらよかったなと思った

のののも気になったから自分なりの修正をちょっとだけ
>ベッドに押し倒されて、僕はすぐ目の前の彼女の顔を見つめざるを得ない。
→ベッドに押し倒されてしまい、すぐ鼻の先にまで彼女の顔が迫る。

それとむしゃぶりついたはやめてください怖いです

>>220
本当に続きが欲しい
深読みをすれば彼がストーカー
涼しい風は玄関扉が開きっぱなし
短文すぎて謎が深まる
早鐘は知らない言葉だったから胸がときめいた

>>220

飛び降りってことかと思った。3分前に驚かせようとして連絡せずに行ったら浮気が発覚してって感じかな
文章の初めからマンションの屋上にいて靴を脱いで1段上がった→屋上のへりにたった
一歩踏み出した→落ちた
って妄想したらぞっとした

>>224
ああ、そう見たらそうとしか思えなくなったわ
ただそれなら飛び降り前に心を落ち着けるというのは違うような、いいような…

満開よりもつぼみに見ごたえを感じるのが梅の花よ、と彼女は言った。
枝先に宿るふくらみを見つめながら白ワインの入りのグラスを揺らす。
日本の美に説得力をもたせたいのならば、そこは日本酒ではなかろうか。

彼女は疑いの眼差しも涼しげに、水面に浮かぶ梅のつぼみに口をつけた。

「素晴らしいじゃない、和洋折衷。やっぱり梅には赤よりも白だわ。度数も最高」

最後の酒好きな言葉が情緒や風情を根こそぎ吹き飛ばす。ただの呑兵衛に呆れのため息が出た。

日付上では春かもしれないが、体感温度では冬に区分してもいい。間違っても花見の気温ではない。
悲しき現実から逃げようと頭上に視線を逸らすと、青空を背負う閑散とした梅の枝が目に映った。
植物と言えども、あまりにも薄着な様相に体がふるえた。肌寒い風を流して春も同意をしめす。

「もう帰りませんか。どこを見たって他に人はいませんし、それに季節外れですよ」

彼女の審美学には申し訳ないが、個人的な意見としては、花見は満開に限ると思っている。
人影の見当たらない公園が、まだ見どころでないことを肯定している気さえしてくる。
それでも彼女は眉をピクリとも動かさず、口に含んだワインの風味に頬を緩ませた。

「人がいないからいいの。冬眠する熊だって専用の穴場を見つける。賢いってのはそういうことよ」

つまりどういうことなのか。言葉の意味が全く理解できないで、疑問符ばかりが頭に浮かんだ。
熊の冬眠は本能であって、知性が絡んでいるとは思えない。冬眠だけを取り上げても、熊に限らず他にもいる。
ハムスターや、はたまた天道虫だって葉の裏に身をひそめて厳しい冬を乗り越える。けれど人は起きて過ごす。

「人間は冬眠なんてしませんから動物の都合に嵌められても困ります」

梅はつぼみから数えて二分三分の開花具合。やはり花があるとは言いがたい。
携帯電話が震えた。上司からの着信だと彼女に伝えると、すぐさま没収された。なるほど、冬眠か。


>>220ですが
批評ありがとうございます
解釈は2つのつもりで書いていたので、違和感のある描写になってしまったかもしれません……。
ここに書くのはあまり良くないと思いますが、解説を書いておくと

1. 連絡をしなかったため彼女の浮気をドア越しに確認。どうしようもないと絶望し、屋上から飛び降りた。

2.浮気を確認。前半は彼女がシャワーを浴びている間に間男を鈍器で殺害。血を拭き取り可能な限り証拠を隠滅。後半は間男の靴を履いて屋上へ。冷静になりつつ死体を運んでいる。
という感じです。

>>217
まじサンクス
安っぽいなって感じてたからありがたいわ、また再挑戦しにくる

一分。
柔らかな感触。
暖かな体温。
穏やかな風が口元を撫でる。

二分。
お互いを噛み合う二匹の蛇。
咀嚼に似た水音が、四つ。
水面下の攻防が激しさを増す。

三分。
僅かに、呼吸困難。
意識の混濁。
懇願する、声音。

そこから始まるのがいつものディナー。

ディナー……
二つの意味で意味深だな

うん。ごめん
ちょっといろいろあって書いたら、こんなんになった

>>226
大人の男女を描いた、なかなか大人な文だと思う

わざと人のいない時期を選んだのかな?
女はたぶん主人公に気があって、酒の力を借りようとしてるのかな?
二分三分開きなのは梅の花だけでなく、二人の関係を比喩してるのかな?

…など、ニヤニヤできる要素がたくさんあると思った

ただ、わざとかもしれないがところどころスムーズに読ませるためには言い回しを変えるべき点がある気もする

『彼女は疑いの眼差しも涼しげに → 疑いの眼差しを向けるも彼女は涼しげに』

『最後の酒好きな言葉が情緒や風情を根こそぎ吹き飛ばす。ただの呑兵衛に呆れの~ → (酒好きと呑兵衛が被ってる気がするので)最後の余計なひと言が情緒や風情を根こそぎ吹き飛ばす。ただの呑兵衛に呆れの~』

…などの点かな、偉そうにすまんかった


「今日は本当、楽しかった。思い出に残る日だね」

彼女は屈託の無い笑顔を見せて僕に言った。しかしその心の内には、果たして一点の曇りさえ無いものか。

僕の転勤はもう来月に迫っている。

同期の仲間からは「栄転だな、憎いぜ」と肩を叩いて野次られたが、向かう先は県境をいくつも越えた土地。車も持っていない彼女にとっては、僕のもつ感覚以上に遠いところに思えるに違いない。

だからこそ今日という日を『思い出に残る』と、自分に言い聞かせたのではないだろうか。

「そろそろ帰らなきゃ、明日は月曜だよ」

時間は残り少ない。

今日一日のプランは、まずまず良かったらしい。
何度か通った店だけに、食事もいつもの気に入った味だった。
その店の化粧室で最後に確認した限り、髪型の乱れも目につかなかったと思う。
ポケットの中なら、さっきから何度も確認した。
昨夜の内に言葉も決めた、用意したはずだ。

仕事も遊びも段取り七分とはよく言うが、それは済ませた。

「大事な話、聞いてくれるか」

「なあに、改まって。良い話? それとも悪い話?」

僕は踏み出す。
今日をただの思い出に残る日ではなく、二人の記念日にするための最後の三分を。

>>233
なんとなーく文章がにぶいというか、すっきり飲み込めないというか
目立った欠点がないだけにところどころ違和感がね
気になった部分の一部だけちょいと手直し

>彼女は屈託の無い笑顔を見せて僕に言った。しかしその心の内には、果たして一点の曇りさえ無いものか。
→彼女は屈託のない笑顔で言った。けれども心の内には、本当に一点の曇りもないのだろうか。

一人称視点なら僕を削る方向に努力すると文中のくどさが消えていいかもしれない
そんで「しかし」と「はたして」は同居させない方がしっくりくる

『今日一日のプランは~用意したはずだ。』は釣り糸が絡まってる感じで逆に面白い
30行以内の短い物語なら単語の重複を気にしながら書くと楽しくなるぞ
俺が気にしすぎなだけかもしれないけど、「確認」と「最後」の被りが引っ掛かった

 幼い頃と言えば一袋のおやつを兄弟で分け合うのは当たり前だった。三人でも長子と末子は少し多めにもらう。なんて不等な三等分か。

 三と言う数字はとても不安定だ。三分に分けたケーキは歪でボロボロ。一番大きなケーキは末子の元へ。
 大好きなチョコの飾りを楽しみにケーキを口に運ぶもチョコレートは横へと浚われた。
 なんて不等な三等分。

 大きくなってカップラーメンを一人で食べられるようになった。けれど三人では一つ困った事がある。
 三分と書いたパッケージは3つ。やかんとタイマーは1つ。柔らかめが好きな長子、固めが好きな次子。
 ようやく三分できた。そうして電子音と共に三人一緒に蓋を捲った。

 三分間という時間は、あまりにも多くの場面で活用されている。

 例えば特撮。光の巨人がその姿を維持できる時間。

 例えばアニメ映画。ある有名な作品に、土壇場で三分間の猶予を与える場面があったことを記憶している。

 して、私にとっての三分間とはカップヌードルの完成を待つ時間に他ならない。

 ──手元にある文の羅列に、とある仕掛けを見い出し、思わず頁を巻き戻す。

 この三分間とは、何とも悩ましい時間である。
 半開きになった蓋に熱湯を定量注ぎ込むことで始まるその時間は、──簡素とはいえ──何かしら手を動かしていた直前までとは違い、こちらからカップヌードルに対して何も働きかける事が出来ない。つまりは手持ち無沙汰なのである。

 ──仕掛けに確信した私は一種の感慨を持って、先程の頁に戻る。

 かと言って、潰すと言うにはあまりにも短いその時間は、その手段を読書しか知らない私からすれば何と半端な事か。
 それでも本を手に取ろうが、カップヌードルに釘付けにされた私の思考は、濃密な文章を理解するには散漫が過ぎる。
 何もする事が無く、しかし頭のみを縛られた、自由であり、同時に不自由でもある時間は、或いは澄み切った寒空の下、目印の前で想い人を待つようだ、というのは言い過ぎなのだろうか。
 とても切なく、もどかしい時間。
 されど、愛おしい時間。
 私はこの時間に一つの縛りを設けている。
 時計を見ないのだ。体のどこかにある体内時計と、立ち上がる湯気だけを頼りにこの時間を待つことで、せめてもの刺激を与えようと。それはなかなかいい加減で、思い通りにはいかないもの。
 しかし、完璧な時間で蓋を開けたときは当然のこと、未だ形を保ったカップヌードルと対面するもまた一興。
 そして──

 ───胸の高鳴りを栞ごとページに挟む。


 そして、暇潰しにかまけて伸びきってしまったカップヌードルを啜るも、また一興。

>>235
読点を使う文章を書け
中身はいいけどもあえての短文で勝負ならもうちょい文章の難易度下げれ
一文が児童書並の短さだからそれに合わせて書くと逆にイケメンに見えて発狂して死ぬ
「浚(さら)う」と「捲(まく)る」は誰かが詰まることを考慮して平仮名にな
算用数字と漢数字の混在は知らん
末っ子が好きです下さい

>>236
空行と全ダッシュが多すぎて禿る
かと思えば途中から空行縛りで頭が追いつかない
平均化させろ

部分的な読点ラッシュが気にくわないから使わない文章の繋ぎ方を考えろ
そんでテキストにコピって読むから気付いたけども頭一文字下げるのは必要箇所だけでいい
変なところが出っ張って読みづらいったらありゃしない

ウルトラマンバロスwwwは安っぽいから削除して
別の方法で時間と人間の関係を掘り下げると賢く見える
中身に関しては頭のみを縛られて自由すぎて同時に不自由でやばい
恥ずかしさと向き合ってきちんと直せば面白くなると思う

シーフードか味噌

>>237
どうでもいいけど、お前の文章もなかなかの難易度だぞ

三分で思いつく事を挙げろと言われたら、実は>>236の三つになるらしい
個人的には構わないと思うけど、小説として見るなら異質の部類かな。別の事に変えると多分ちょっと文学っぽくなる

カップヌードルは硬めと普通とのびてる三種類の味を順番に楽しむのが好き

薄暗い部屋で目が覚める
予想した通り腕の中の娘が泣いている
腕を揺らしながら子守唄を唄う

そして私もいっしょに泣きながら子を抱き寄せ乳をくわえさせる
この2日の間それを続けている

泣き声しかしない部屋で2人、これからも2人

凝りすぎたお題は過疎の元
お題↓

足りないもの

無事営業が終了し、シャッターの閉まった薄暗い店内の隅で売り上げを計算する。
パートで雇われている身の私だが、この店では3年と2ヶ月働いているので、信用されているのだろう。だが人を簡単に信用してはならない。
店長をしている山田さんは鍵を任せて帰宅した。
本日の売り上げは4万と3560円。
2000円程度消えても誰も気付きはしないだろう。私は1000円札を2枚抜き取る。
そして売り上げの記録を書き換え、蛍光灯の光を消し、店に鍵をかけアパートへと帰宅する。

翌朝店長の山田さんから招集がかかる。
私を含めこの店で働いている人は4人。
「私が昨日確認した時点では4万と3000円程売り上げがあったと思うのだが、今朝私が確認すると1000円札が4枚程足りていない。心当たりは無いだろうか」


オチが思い付かなくて中途半端ですみません。
アドバイスを頂けないでしょうか

午後八時。最後のお客様が乗った車が駐車場から出ていくのを確認して、私はお店のシャッターを降ろした。
必要最小限の明りだけを残した店内は薄暗い。賑やかだった数時間前と比べると、温度差に肌寒さを感じてしまう。
誰もいない静かな店内。防犯を意識させるお飾りの監視カメラと見つめ合って数秒だけ息を止める。
それからレジスターを開いて、売り上げの成果をじっくりと眺めた。

この店に雇われてから数年。店長に次いで長い経歴という実績に安心されているのだろう。
そうでなければ、私一人だけを最後に残すシフトは組まないはずである。
それが信用を掴んだという揺るぎない証だと思える。

小銭と各種のお札が詰まっている中身を慎重に数える。
大きい買い物をした人が少なかったので、一万札は数枚だけ。
五千円札もお釣りとして渡すことはなかったが、入りも少ない。
千円札はそれらと大きく差をつけてかさばっている。
小銭は……見なくてもいいだろう。

こんな年齢にもなって変な遊びを覚えてしまったばかりに生活苦に陥ってしまった。
自分のことながらいい年をして本当に情けないと思っている。
店長とは年齢が近いだけに、金の絡む恥部の相談はしたくない。

良心につけこむ罪悪感はあるが、罪が露呈したときは同情を誘うしかない。
動機は、給料日までの繋ぎが欲しかった。言い訳をするならば魔が差した。
店長だって血の通った人間だ。必死にすがれば情状酌量はしてくれると信じている。

近くに人はいないが、それでも音を立てないようにレジスターの中から千円札を二枚だけ引き抜いた。
そして皺を作らないように丁寧に折りたたんで、ポケットに押し込んだ。

店の戸締りをきちんと確認して外に出る。外気の温度に耐えかねて手をポケットに入れると温かさを感じた。
これはあくまでも一時しのぎのために行った拝借行為である。次の給料日には返すつもりだ。

次の日、出勤をすると挨拶代りに店長が言った。「昨日の売り上げを計算すると、四千円ほど足りていない」と。

自画自賛できるほど文章力があるわけじゃないけども
こんな感じに内容よりも文章に凝って書こうぜ、とは思う
オチ考察が必要なほど欠けてたりするのはレスが伸びるから別個でスレ立てちまえよ
ファッションショーにお飾り無しの全裸が飛びこんできたら俺は戸惑う

 ああ、またあのヒス女が新人に怒鳴り散らしている。泣きながら「すみません」と繰り返す少女に追い討ちをかけ、目を腫らせて出て行ったのを確認すると満足そうに口端を上げた。
 いつものように彼女の自慢話を聞かされるのか。小学校の時一番頭が良かっただの、コンクールで優勝しただの本当にどうでもいい。
 俺に出来ることはターゲットにならないように笑うこと。もう何人もの新人があの女にいびられ辞めさせられている。
 すぐ泣くのは努力が足りないなどと論点をずらし愚痴る。ミスをしたのは新人の少女ではなく、愚痴を零す目の前の女だ。新人にミスを指摘されただけで喚くお前は努力するつもりすらないんですね。わかります。
 出来損ないの上司は新人に八つ当たってなにがしたいのだろう。不良品の返却で忙しいのに不良品ばかり詰めて何がしたい

 足りないものはおかしい事をおかしいと言える勇気だった。

>>244
最もだと思う
サンクス

>>245
最後の一行に脈絡が無さ過ぎるように思えた。もうちょっと段階を踏んでからその行につなげた方が読んでて違和感を覚えにくいと思う。

鈍い痛みが顔に走って、僕は目を覚ました。
ゆっくりと見回すと、辺りは真っ暗闇で何も見えない。ここは何処だろう。
かすかに鼻に香る、つんとした臭いから察するに病院だろうか。

確かめるために恐る恐る手を動かして探る。気付いたが、僕は横になっていたようだ。
真横に動かしたところで、何か堅いものに当たる。
掴んで手に取る……おそらくだが、テレビのリモコンのようだ……。
記憶にあるリモコンをひっぱりだし、電源ボタンだと思われるボタンを押す。

『――はようございます。〝午前七時〟になりました、ニュースをお伝えします……』

明るい女性の声が流れ出したが、画面はつかない。配線が抜けているのかもしれない。
思わずうなり声が出る。こうも暗いと、灯りのスイッチを探すのは危険だ。
それにしても、……一向に目が闇に慣れないな。
どうしたんだろう。
どうして、光がないんだろう。

「何か……足りないなぁ……」

そう言えば、どうして病院にいるのだったか。
……そうだ、火事に巻き込まれて。
最後に見たのは、熱にひしゃげて砕け散る窓ガラスだったんだ。
飛び散るガラスが炎に照らされるのを見て。一瞬、場違いにも綺麗だなと思って。
そうして、目を閉じる間もなく……。

「……っ、た、足りないなぁ……おかしいなぁ……」

僕は目を擦ろうと、手を上げた。

指は何にも触れなかった。

階段を降りると、リビングではすでにお兄ちゃんが朝の珈琲を楽しんでおりました。
無糖が好みのお兄ちゃんには珍しく、カップの隣には角砂糖が入っている瓶が置かれていました。

「おはようございます」

「ん、……おはよう」

私の挨拶に振り返って応えました。

「今日はまだ冷えますね」

「前線が悪さをしてるんだとさ。数日はこの温度らしいよ」

新聞の天気図に眼を落としながら言いました。
図に書かれたうねうねとした波紋のような線は、私には難くてまだ理解が出来ていません。
ちょこんとすぐ横に腰をかけます。そしてそっと寄り掛かりますと、
決まって私の頭のてっぺんにお兄ちゃんの頬がかぶさってくるのでした。

「今日は晴れるの?」

「天気図によるとそうらしい」

窓から遠くのお空を眺めます。なんだか曇っているようにも見えなくもありません。
雲の色は薄いですが、少し不安なので傘を持っていこうと思いました。

お兄ちゃんの顔が頭から離れたので、私も動いてカップに手を延ばしました。
興味深そうな視線が気になりますが、お砂糖が入っているなら安全です。
ゆっくりと口をつけて少しだけ啜ると、口の中にひどい苦みが広がりました。

騙された気分になったので、お兄ちゃんの腕をつねりますと、憎き笑顔が歪みました。

週一お題変更といこうか↓

しき

平仮名?

四季
指揮
士気
死期
~式
いろいろとれるな

春夏秋冬のある国に生まれ、育ち、死に逝ける私は間違いなく幸せな部類に入るだろう。
春には、腕を動かす事の出来ない私に仄かな桃色の景色を見せてくれた。
夏には、足を動かす事の出来ない私に太陽の日差しが当たるも、風鈴の涼しい音色で癒してくれた。
秋には、頭を動かす事の出来ない私に橙色の紅葉が風に揺られる音を聞かせてくれた。
冬には、自然が生み出す白い結晶を気の済むまで見せてくれた。
足早に通り過ぎて行く、時間を感じさせない、退屈のしない一生を四季は恵んでくれた。

楽器の調子も万全だった、由緒あるホールで観客も上々
そんな恵まれた中、我が名も知れぬ音楽隊の旗揚げとなったあの日を私たちは忘れる事はできないであろう

青ざめた顔で指揮棒を振るう指揮者と熱い視線をおくる観客の顔、震える手を抑えて演奏する私たちは教訓として笑い話として音楽隊のなかで今でも語りつげられている

メンバーが一人また一人と減っていくなか次は自分の番だろうかと苦しむこともありますがあのホールでまたみんなで演奏できる日を心待ちにしています

草々

>>254
死にと逝くは同じ意味じゃね
季節追って体の自由が利かなくなるけども、
それが怖いとは思わせない文章好き
足→腕→首→目の順番で下から順に蝕んでほしかった
蝕んでほしいってのも変な言い方だけども蝕んでほしかった

>>255
句読点
語りつげられて→語り継がれて

age

    サトリ「文通する」

 ハウリング現象というものをご存じだろうか?

 マイクをスピーカーに近づけると、「キィィィン!」という嫌な音が流れる減少である。

 スピーカーからでた音をマイクが拾い、それをスピーカーが再生する、そしてその音をマイクが拾って……

 これを繰り返すことで大きな騒音が生み出される。


 さて、大人になると心を読める種族である「サトリ」。

 彼らが二人出会うとどうなるのだろうか?

>>256
死に逝く
確かにおかしいな
成る程もう少し順を追ったら良かったな
ありがとう

>>258

今更ながら、誤爆だー

昨夜、どう『しき』にかかってるのかめっちゃ解読しようとしたのに…

>>260
どう誤爆したんだww

age

>>255
とりあえず口調は一貫させろよ……

>熱い視線をおくる観客の顔
舞台に熱い視線をおくる観客、でおけ

>震える手を抑えて演奏する私たちは教訓として笑い話として音楽隊のなかで今でも語りつげられている
色々おかしいよな

せめて自分で何度か見直してから投稿しろよ……

何日前の相手にレスしてるの
お題くれ

裏切り

上げた方が良かったかな

三学年のフロアのどこを捜してもいなかったので、また仮病でも使っているのかと医務室を訪ねたのですが、そこにもいませんでした。

それならばきっと、先に駅のホームへ向かって私の事を待っているのかと思ったのですが、ちりちりと夕闇を削るような音を立てる蛍光灯のほかに立つ影はありませんでした。

ここ最近ののところは、家が同じ方角だと知ったので、毎日一緒に下校していたのです。そんな仲になった彼ならば、きっと委員会が少々長引いた程度なら待っていてくれて、昨日の様にクラスの悪口でも言いながら帰れると勝手に考えていたのです。

元来彼と私は淡泊が過ぎて出会ったようなものですのに、何故そこに気付かなかったのかと、彼がいない空虚を通して、彼になんだか心を弄ばれている様な不思議な気持ちになったのです。

>>268
あまり文学なんぞ詳しくも無ければ文才もねーけど幾らか
医務室に~のくだり
・授業が終わっているのならたとえ仮病でなくても帰るのでは? という素朴な疑問

駅のホームで云々
・蛍光灯と言われると吊り下がっているものを連想してしまうので立っていると言う表現が微妙。
なんなら駅の前で~などにして街路灯とした方がいいのでは。(只ゆとりの自分の想像する蛍光灯が違うだけかも)
・委員会が多少長引いた割には暗すぎないか、という点。
暗くするにしても冬だから等理由をつけるためにマフラーや手袋などのものを出してはどうか。

委員会が云々
・委員会が長引くほどの議題がでてくる高校(?)の最寄りの駅が過疎地にある寂れた駅の様な描写はどうなのか。

最後のところは読解力ない俺には何も指摘できねーわ

>>268
文章の平淡な雰囲気は好き
面白い表現があっていいなあと思った
特に最後の一行の言い回しが自分好み
一文が長いせいか、ちょっとテンポが悪いかもな
短くちぎって読みやすいリズムがほしかった

文才とは関係ないけども、『私』が彼に対して
淡泊でなくなりつつある心境の変化を表す描写が欲しかった

でもわりと好き

>>269
>>270
ありがとうございます
まさか反応あるとは思わなかったから嬉しい
読み返してからおかしかったなって思うとこに的確な指摘が入るから、指摘する方もある種の文才要りそう

楽しいなこれ
これから小説とかはじめようかな

ショコラケーキを切り分ける手が止まる衝撃だった。
友人の話しを要約すると、つまり今日、
これからすぐに彼が部屋にやってくるらしい。

危険を察知して逃げる体勢に入った友人の首根っこを捕まえる。
なにゆえ事前に報せないかと訊ねると、
「冷静沈着が動揺する滑稽を拝みたかった」だそうだ。

部屋の隅に追い詰めて、たわけ小娘がと蹴り回す。
ひたすら小躯を突き回して楽しみ、終いに背中をぐりぐりと
踏んでいると、客人の到達を伝える愉快な音色が流れた。

しまった、来てしまった。早いではないか。
慌てて玄関に走って、のぞき穴から相手を確認する。

あなや本当に彼が来訪しているではないか。
扉越しに「時間がほしい」と伝える。
近くから聞こえる彼の声にどきりとしながらも、
猶予をくれる器の広さに感謝をして、部屋へととんぼ返りする。

走って戻る私の慌てぶりを横目で見ながら、
掛布団の柔らかさにため息をこぼしてくつろぐ友人が憎らしい。

最低限の整理だけを行い、彼を部屋に招き入れる。
友人は挨拶を挙手だけで済ませてしまい、ショコラケーキを頬張った。
こやつ、人が緊張と羞恥でうつむく姿に笑っておる。

祝いの言葉を二三ほど述べた彼は、プレゼントを差し出してきた。
私はなにも教えていない。なにも教えられていない。なにも知らない。
消え入りそうな声で謝辞を口にし、そのまましゅぽんと消えたくなった。

>>272
ステキ!


「糞ったれ、よりにもよってまあ……」

僕は日差しに焼ける楕円形の鉄タンクに、へこみができない程度に力を加減してげんこつを入れた。
こぁん、と響く音がいかにもその中身の少なさを物語っている。

とはいえこの鋼鉄の彼女が拗ねている理由は空腹では無いはずだ。
念のためハンドルを握りその身体を揺すってみると、ちゃぷんと液体が跳ねる音が聞こえた。

(いっそガス欠くらい単純な理由でへそを曲げてるなら、その方が楽なのに)

彼女の心臓に送られるガソリンの霧、その濃さがどうしても整わないのは長く解決しない持病というべき症状。
ガレージを出る前に短く調子を利く時はいつも機嫌が良いくせに、暫くその背に跨って駆けてみると決まって四千回転から上に達さなくなる。

そして挙句の果てには「ぶすん」と悪態をついて鼓動を止め、それからは毎度この有様だ。

しかし今日の不貞腐れようは、いつにも増してたちが悪い。
何しろこの場所は、いくら見渡しても茶色の大地にキャベツと思われる丸い緑が規則的に列ぶだけの畑、畑、田んぼの向こうにまた畑という片田舎。

普通なら三十分も歩けばある程度の得物を借りられるガソリンスタンドが目に入るものだが、こうも明らかに期待がもてない景色の中にあっては二百キロ台半ばの大女を押す気になどなれるはずがない。

「悪かったよ、あの若い娘は近所の買い物用に買った原付なんだ。僕は今までもこれからも……」

キックスターターにかけた足に力を籠めながら、僕は言い訳を並べたてる。

「君ひと筋だって!」

ささやくというより、声を荒げて告げた殺し文句。それと同時に繰り出す、渾身のひと蹴り。

しかし彼女は「まだ許さない」と嘲笑うかのように、めっき色に輝く排気筒からくぐもった不発音を漏らすだけだった。

>>272
どこか突っ込むところがないかと探したけど見つからなかったから褒める事にした

> しまった、来てしまった。早いではないか。
テンポが素敵。
>消え入りそうな声で謝辞を口にし、そのまましゅぽんと消えたくなった。
ここの言い回しも素敵。

人によってはくどいと感じる人もいるかもしれんが俺は好みだな。

>>272
言い回しが軽妙だな
可愛くて可愛くてにやにやしてまう
こういうの好きだわ

>>274
気持ちわかるわー
声かけてまうよな

>>274
焦りが伝わってきてにやにやした

>>272
ニヤニヤ要素満載だな、素晴らしい
1レスで当分補給できた

前半の主人公の気の強そうな様が、最後の弱さをひきたたせてる

ごく一部惜しい点を挙げれば、近接した箇所に「~ではないか」が
二度使われているところくらいかな

いかん

当分補給→糖分補給です

当たり前のことだけれど、僕と彼女には不平等が存在する。
その不平等はコミュニティが閉鎖的になったとき、
秩序の象徴となり必要悪としての役目も持つ。
分かりやすい形として現れるのが、わがままである。

彼女がわがままの矛先を日陰を好んで歩く男子に向けると、
とても残念なことに断れない雰囲気ができあがってしまう。
陽気で呑気な周囲の目には、お姫様が貧しき民に
花束を贈呈するような美しさで見えているのだろう。

しかし僕にとってはまったくの逆である。
ヘビに睨まれた蛙。鷹に出くわしたネズミ。
彼女はまさしく天敵であり、恐怖の対象に他ならない。

「ノート、貸してもらってもいい?」

返事を待たずして差し出される手。
催促しているのか、上に向けた手のひらが閉じて開いてを繰り返す。
男子は嫉妬と好奇心で、女子は純粋な興味だけで僕と彼女を交互に見つめた。

僕と彼女は不平等で立場が違う。立ち位置が違う。
待たせるのは非。断るのは罪。黙って速やかに従うのが法令。
鞄からノート出して手渡すと、彼女は簡素なお礼を残して離れていった。
昼休みが終わるまであと十分。数ページ分の宿題を書き写すには有り余る。

強張った体をほぐすため息をつくと、観衆からひょっこりと友人がこぼれた。
元気出せよと僕の肩をたたく。のと同時にわざと足を踏まれた。
羨ましいなら代わってあげるよ、と言いかけたところで友人が口を開いた。

「俺が写せなくなっただろ」

賑わってたのなage

さびれたトタン張りの体育館の壁、涼しい風がふわりとふき、既に空は赤く染まっていた。
週に一度の掃除当番を終え、帰ろうかと立ち上がった。
見慣れた男が体育館裏へ向かっていった。
気になってこっそり後を追い、死角から聞き耳を立てる。
良く聞こえないけど、告白?
相手が誰かと気になって覗いてみたら、男の後ろ姿と、その向こうには見慣れた女が立っていた。
ふと、私の胸がズキンとした。

>>282
言いたいことがありすぎて一レスに纏まらんかった。
まず文章力がどうこうとかそう言うのは置いといて、もうちょっと書き方に統一性を持って書いて欲しい。
第一人称で書いて、四行目と五行目辺りは主人公の気持ち(ってか考え)が出てきてるのに、一行目と最終行には殆どそれが出て無い。
特に最終行なんて胸がズキンとしたって言ってる割に状況説明にしかなってない。
一行目もふわりと、とか言ってるのにありのままにしか書かれてない。
恐らくだけど感情豊かに書くか淡白に書くか悩んだ上で結局どっちつかずになった感じだと思う。
感情豊かに書くにしても淡白に書くにしてももうちょっとどっちかに寄って欲しい。

一レスに纏まらんから個別的なことは他の人に任せる。

>>280
面白い、とくにオチが秀逸
友が自ら発した励ましの言葉に対しては、足踏み攻撃も裏切りの内か
読み手に『ああ、結局友も彼女にお近づきになりたいから、主人公に裏切られたと考えたんだな』と錯覚させておいて実はノート写しを期待していただけ…と
最後一行で一番裏切られるのは読者というwww

惜しいと感じたのは(考えあってかもしれないが)『彼女が我儘の矛先を~できあがってしまう』は『~生まれてしまう』の方が自然な気がした点
それからお姫様は貧しい民にご丁寧に『贈呈』はしない、『恵んでいる』とか『与えている』が相応しい気がする事と、貧しい民に与えるなら花よりもパンかな…と
最後のはピント外れ感の演出かもしれないが

>>282
人の事を言えるほどの者じゃないが、文章はまだまだ勉強が必要だ
前半『~いた』『~った』『~った』同じ表現が連続する時点で、狙っているのでない限りかなり減点されてしまう
『よく聞こえないけど、告白?』の一文だけが、妙に他の文章から浮いている
それから胸がズキンとする理由はかなり明らかなわけだから『ふと、』の表現は合わないと思う

ただ『見慣れた男』と『見慣れた女』という被った表し方が意図的なんだとしたら、この点はなかなかいい
同じ言葉を使っているから男女ともに主人公と等しく近い距離にいる友人達なんだろうと察せられる
その彼らの秘密の逢瀬を見た主人公が感じた『裏切られた』という想いは、読み手に切なく伝わった気がしたよ

>>284
どうも
出してからなんか全体的に弱かったなあと反省してる
マリーアントワネットにすべきかどうかは迷ったんだけど、
その指摘が入っちゃうなら結果的にすべきだったな
何度も読み直して猛省してるわ

>>282
題材はいいのにボリューム不足でもったいないなと思った
文才絡みは前の二人がつついた内容丸被りだから省略
俺にもそんな甘酸っぱい青春あったらよかったわあ……

>>283
>>285
指摘ありがとうございます。
言われてみれば確かに、と思いました。精進します。
>>286
ボリューム不足は語呂の無さの結果ですね。これも精進します。
ドラマチックには憧れますよね。

「裏切り者ぉっ」

僕に馬乗りになった彼女が涙声で叫んだ。
その小さな握りこぶしにはあらん限りの怒りが込められているようだ。
僕の顔面にそれが降り注がない様に、慌てて口を開く。

「待ってくれ、裏切るつもりは無かったんだ! ちょっと気になっただけな――ぐふぁっ!」

一発。
判断ミスだった、どうやらそもそも弁明の余地もなく彼女は怒っている。
彼女は殴った手を見て痛そうに顔をしかめながら、もう一度振りかぶる。

「気になったからってすぐに手を出すのっ!? 信じてたのに! 君はそんなことしないって信じてたのに!」

二発、三発。
そろそろ頬がしびれてきた。いくら彼女の細い腕だとは言え、顔への攻撃は堪える。
僕が殴られて当然な事をしたのは分かっているけれど、抵抗させてもらおう。
四発目のパンチを手で受け止め、彼女の腕を押さえる。

「っ、離してよ!」
「ごめん……もうしないから」
「……好きだったのに」

彼女は倒れ込んで僕の胸で泣く。


「私、あのプリン大好きだったのに! 楽しみにしてたのに!」


食べ物の恨みは恐ろしいな、と僕は思った。

>>288
それ裏切りじゃなくて泥棒じゃない
約束したとかそれっぽい描写入れたほうがオチもスッキリしたと思う。
私が言えた事じゃないけど。

次のお題行く?

じゃあ梅雨になったから【なめくじ】で
最近はこれが家の中に侵入してくるから困る、どこから沸いてくるんだか

あ、
ごめんなさい、Sageを消す途中で送信しました


「あっ、かたつむりだ」

透き通った朝露が光を反射させ緑を彩る。

鮮やかなステージの上に小さな主役が佇んでいた。

「えっ、この子ナメクジじゃないの」

「だって、カラがついてるだろ」

首を傾げ、不思議そうな顔をする。

「じゃカラを取ったらナメクジなの?」


大きな影がかかる。

じりじりと身を焦がす光が遮られ、ふわりと体が浮いた。

「人間も、そうなのかな」

空気が震え、僕は僕ではなくなった。

地の文も行間空けてしまってた
読みづらかったらごめんなさい

 ナメクジは薬になるらしい。
 乾燥蚯蚓や蝮焼酎なんてものがあるのだから。ナメクジもその中に入るのだろう。
 ただナメクジを生きたまま飲むというのは想像するにはとても恐ろしい。
 嘗て、浮気性の夫にエスカルゴと偽り蛭を喰わせたという逸話があるが、それとしって食べようなどとは到底思えない。
 そんなナメクジを料理する強者もいるらしいが、それを真似できるだけの度胸を持ち合わせいないのだから、結局真相はわからずじまいだ。

目と鼻の先にナメクジが飛んでいる。
一寸と満たない体?が、目下、肌色銃弾となり己の顔面へと飛翔中なのだった。言わば落下中とも言える。

「えっ」

──事の発端は「あー今日もバイト疲れたなーあ、星が綺麗じゃん」と夜空を仰いだ瞬間だった。
時給八百四十円。街角老舗古本屋。主な労働内容はもっぱら手癖悪し悪ガキ監視。
筆舌すべき疲労点は、長時間の着座に、赤子の夜泣きにも負ける腰の悲鳴程度。

「ちょっ」

勿論、本来この度合いでエネルギッシュかつ若さ溢れるマイボディが愚痴を零すわけがなく。
口から放り出たものは只の単なる世迷い言。塵にもみたない自己満足を得るためであり、故に怠慢たる行為は無作為に悲劇を巻き起こしてしまったのだ。

「まっ!?」

夜道のみっちり閉じた闇を、申し訳程度に緩和させる街頭。
頭上高々に聳え立つ一筋の光は、街中の虫という虫をワッシワッシとかき集めたかのような混沌たる惨状であり。
──そこから『四弾目』の肌色残光が迸ってきた。

「って?」

降り落ちる弾道は刃物の如く鋭い。
まずい、このままでは顔どころか口内へと侵入を許させてしまう。というかむしろ既に『一弾目』と『二弾目』は口内へと突入済みだった。

「もがっ! んんんんッ~~~~~~!!!!????」

事は既に始まりを告げて、終わりを迎えている。
思考速度は軒並みのもので、走馬灯のような奇蹟を起こしているわけじゃない。
無事に五弾の着弾を確認した己のフレキシブルな脳は、手遅れのまま現状を無事に把握した。

>>292 ほのぼのした雰囲気から少し哲学的な文章に変わったように感じた。殻を取ったら人間も自分自身ではなくなるということを理解するのに少し時間がかかった。
夏の朝の表現が爽やかで良かったから最後まで保てていればさらにいいんじゃないかな。短い文だけど色々詰まってて良かった。

>>294 あるのだから~入るのだろうで文章がつながっているから「。」ではなく「、」の方が自然な気がした。それか「ある。」で切るとか。文章が短いから何とも言えない。他に違和感を感じるところは特になかった。

雷が幾度がぴかりずしんと雷鳴をとどろかせてからは、
いきなりの大粒の雨だった。
乾いた雷ばかりが続いていたので油断していると、
待つ時間もくれずに空気が冷えて強い雨が屋根を叩いた。

慌てて窓を閉めてもその音の勢いは弱まることがなかった。
ガラス越しの夜の曇り空を見上げた。
夜よりも重い色をした雲がどんよりと、体全体で空一面を覆っていた。

窓ガラスに触れてみる。温度はぬるいがひんやりとしていた。
夏には似つかわしくない冷め方をしていた。

なんとなく外気との温度差が気に入ってしまい、
まるで初めて鏡の不思議を見つけた子のように、
ペタペタと表面を触って冷たい温度を探した。

もしかしたら、ガラスよりも縁の鉄枠の方が具合がいいのかもしれない。
思い付いて窓枠を触る。案の定だった。ガラスよりも温度が低い。
縁は広くないので、人差し指でガラスと鉄の境目を沿って撫でる。

発見に対しての興味と執着は一致しない。
つまり全部を丁寧に味わい尽くすつもりはなかった。
足のつま先を延ばさずに手の届く範囲だけで縁をたどる。

側辺と底辺だけで満足できてしまうので、
わざわざ上辺にまで手を伸ばすことはしない。

指先でぬるい温度を楽しんでいると、
不意にふぬりとした感触が指の腹に当たった。
いつのまに入っていたナメクジが、迷惑そうに頭を持ち上げた。

詩みたいで普通の文章より読みやすい

ナメクジと妖怪は似ている。

ナメクジは昔、その毒で蛇をドロドロに溶かして殺すと考えられていた。
それが間違いなのは明らかであるのに、人々はそれを信じて疑わなかったのだ。
しかし、科学の進歩とともにナメクジの毒は否定されていった。
現代でナメクジにそんな毒があると信じている人はいないだろう。

しかし、あなたはなめくじが何を食べているかを知っているだろうか?

ナメクジには、植物を食べるものもいれば、動物、ひいては同族すら食べるものもいる。
しかし、私たちにはそれが想像できない。
どうして「ヌメヌメしてノロノロと動くだけの生物」が、何かを食べると想像できるだろうか?
葉っぱを食べて体が緑になるナメクジを知っている人なんてほとんどいないに違いない。
ましてや、同族を食べるところなんて想像すらしないだろう。
私たちはナメクジを知らないのだ。ナメクジは、まさに身近にいる未確認生物である。

ナメクジと妖怪の話に戻そう。
ナメクジの名前を知らないものはいない。しかし、ナメクジがどう生きているのかは知らない。
身近な謎であるのにもかかわらず、誰も疑問に思わないのだ。
案外、謎なんてそんなものではないかと思う。
身近に妖怪がいたところで、誰も謎にすら思わないのだから。

>>299
妖怪視点かな?
未確認じゃなくて未知じゃないかな。でも身近にいる未確認生物って表現は好きだな。

ショートケーキとは世界有数の壊れやすい食べ物である。
今回父の買ってきたものに至ってはツバメの巣のような砂糖細工まて乗っかっている。くしゃみをしただけで崩れてしまいそうな程危うい代物だ。
まずそれを崩すことなく家まで持ち帰った父が偉大であり、また形を保ったまま切り分けた母も大したものである。
それらの仕事に比べればなんてことはない最後の仕事、お盆に乗せたケーキをテーブルに運ぶこと。
それを任せられた私の緊張は言葉に表せなかった。何を隠そう、私は不器用なのだ。

慎重にお盆を持ち上げ、体を右に向ける。出っ張った輪ゴムかけに注意を払いつつ狭いキッチンを抜けると廊下に出る。
目指すはリビングであり、そこに向かうにあたってはダイニングを抜けるのが最短となる。廊下を通るのは、多少回り道をしても障害物のない道を通るべき、との判断の基である。
短い廊下には曲がり角もないのだ。問題になるようなものは一つとして存在しない....その考えは、ハッキリ言って間違いだった。実際神経を張り詰め歩けば見えてくる、危険の数々。
まず床の滑りやすさ。謎だった。材質はキッチンと同じフローリングのはずなのに、ここだけ妙にツルツルと足をとられる気がする。
次に階段。三階に続く上り、一階に続く下り。白い壁紙のせいか、真横に立つまでそれらの存在に気付かないのだ。思いもよらぬ場所に突如として現れる巨大な穴は恐怖そのものである。
そしてなんと言ってもその廊下の暗さ。リビングからの光で十分、普段は廊下の電気はつけないのだ。スイッチをたった一度押せば足元が見えるはずなのだが、今の私にそれはあまりにも難しい動作である。助けを呼ぼうにも口が開かなかった。つくづく不器用なのだ。

ここまでの危機的状況、いかにして切り抜けるべきか?答えはたった一つ、気をつけて進むだけである。しかしそれのなんと難しいことか、冷たい緊張が背中を伝う。
すり足で先に進む。急いではいけない、お盆の水平を保つのだ。横目でチラリと階段を見やる。下りの階段は感覚を狂わせるようで、体は静かに傾き始める。
私がその事実に気づいたのはお盆に乗った皿の滑ったことによる。状況を理解、瞬間湧き上がる焦り。あなたならどうする?
私のとった対応はこうだ。まずお盆を水平に戻す。倒れていく体を支えるべく足を一歩横に踏み出し、体勢を安定させる。一度落ち着いたらお盆の上でずれた皿を整え、再び運び始めればよい。全て分かっていた。
当然ながら、そう上手くはいかなかった。なんせ私は不器用なのだ。

傾きを直そうとした盆はひっくり返り、踏み出した足がガクンと下がった。下りの一段目が見えないのだ。踏ん張るタイミングを思いっきり外した私は綺麗に横回転、階段を転げ落ちた。
背中を打ち、肩を打ち、頭を打ち。遅れて落ちてきたお盆までもスコーンと額を打った。今頃あのケーキはどうなったのだろうか?薄れる意識の中、ここまでの事を思い返して最後に浮かんだ疑問だった。

お題全然関係ないの投稿してから気づいた
ごめんね

面白いしべつにいいんじゃね
お題が大事なら次のを↓

お互いに批評しないから過疎ってんじゃね
自分のだけ評価して欲しいじゃなくて他の人のもみてやれよ

あげる

>>299
面白かった
>>300を見てから最後の行を読み直してそういうことかと気付いた
いきなりなにを語ってんだと思ってたらそっちだったか

>>301
お題なんて日が経てば無いに等しい
短文でテンポが良くて読みやすいな
見た目は圧倒される分量だけど主人公がかわいかった。


お題どうするよ
過疎に負けずに継続か?

夏の暑さというのは何故こうも人を気怠げにさせるのか。
暑さで脳が働かない。とよく人は口々に言うが、まさしくその通りだ。
暑さで脳が働かないとはどういうことだと、冬の時点では誰しもが抱く感想だが、実際、夏を迎えるとその誰しもが頭を抱える問題だ。
クーラーが三種の神器の一つとはよく言ったものだと思う。
人々から崇拝され、時に助けを求められる神という存在が人に授けた鏡・玉・剣。
その三つに値する程価値のある物、という解釈で差異は無いだろう。
カラーテレビ、自動車に名を連ねるクーラー。
この世にクーラーが生まれなければ自分は生まれなかったかも知れない。
それは流石に無い。とは言い切れない物である。
バタフライエフェクトという仮説をご存知だろうか。
北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで竜巻が起こる。という信じがたい事ではあるが、あり得ないとも言い切れない仮説である。
クーラーが無ければ私の父に当たる人物は母に出会わなかったのかも知れない。
つまりクーラーは私の恩人、いや恩物と言っても過言では無いのかも知れない。
全ての物事に"かも"は付きものなのだろう。
つまり、結局の所ここまで自分が云々かんぬん述べた話をまとめると、クーラーを発明した人はノーベル賞でも受賞すべきであるという事だ。

>>308
知ってる知識をいい具合に並べてみましたみたいな感じになって微妙
物語なら展開の移り変わりで強引に流れが作れるが、
評論っぽいものを狙ったなら、その内容の薄さは致命的
最後の〆かたを見るとバタフライ効果の部分はまったくいらないし

自分に合う文章の書き方を再確認するための習作ならまあまあじゃね?
文の長さは適度で読みやすいから、それを意識して維持すると良くなると思う
次に期待だわ

>>309
自分でも書いててこんがらがっちゃったのよね
知識不足を露見させただけだったわ
評価サンクス

でもクーラーつけたらつけたで体がだるくなるよな

>>299
今更だけど、最後の一文、「誰も謎に思わない」じゃなくて「誰も疑問に思わない」だね。
いやはや、お恥ずかしい。

>>308
やりたいことはなんとなくわかるんだけど・・・って感じかな?
もっとクーラーをプッシュしてもいいかもしれない。
例えば、3行目と4行目の間に「そのにっくき人類の天敵への救世主こそがクーラー様である」

なんとなくラノベっぽいから、もっとラノベっぽくしてもいいかもしれない。
書き手の心情や皮肉をプッシュしてみるとか

額から生まれた汗が、のろのろと落ちていく。

眉を伝い、頬を這うそれはあまりにも粘性に満ちていて、溶けた脳が染み出しているんじゃないかとも思った。
なんだか頭もぼんやりとしているから、たぶんそうなんだろう。

ならば、このままほうっておけば。
太陽光に焼かれながら、脳を溶かし続ければ。

いろんな思い出を、アスファルトの染みにして。そのまま日で焼いて消せるのだろう。
あるいはシャツに染みこませて。洗濯してきれいさっぱり洗い流せるのだろう。

こんなことを言えば、あの子はどう応えるだろうか。
アイスをかじりながらけらけらと笑っていた、彼女の顔が浮かぶ。

ちょっぴり日焼けして赤くなった鼻先、真っ白な歯。口角を持ち上げる表情筋。
薄桃色の唇から感じる、甘くてさわやかな香り。僕の鼓膜と心を揺らす、笑い声。

まあ、溶かしたいのも、消したいのも、その笑顔なんだけど。
身体が動かなくなるまで脳みそ溶かしても浮かぶ、それなんだけど。

ああ、うまくいかないなあ。

>>313
いいよ、俺は好きだな
いかにも平凡でメルヘンチックな恋煩いの表現と、脳が溶けて染み出すなんて少しグロいような表現の対比が効いてる

少し読点が不要な部分があるかな…とは思った
『いろんな思い出を』や『けらけらと笑っていた』の後ろの読点は要らない気がする

『~おけば』に連続した『~れば』
『~だろう』×2連
『~なんだけど』×2連

この辺は狙ってるんだと思う、俺は好き

>>313
粘性の汗は不健康なイメージが付くからやめようぜ
新陳代謝が衰えたせいで老廃物が混ざってしまった汗だぞ

>口角を持ち上げる表情筋
>僕の鼓膜と心を揺らす、笑い声
可愛い彼女に似つかわしくない固い表現でもったいない
ここだけ浮いてる気がする

フラれたのかべつの男がいるところを発見したのか
彼女を見てきて上昇していった体の熱と体温調節のために排出される汗の組み合わせが面白い
汗に脳を混ぜようとする錯覚と願望で、細胞単位で彼女を忘れ去りたいという思いの強さを感じた
それでも上手に消しきれないところが青春らしい若さ故の執着なんだろうなと思えた

苦い失恋話は得意じゃないけど、これは嫌いじゃない

かなり時間経ったからお題変更する?

海の向こうは真っ暗で、波の音と潮の匂いが君を少し怯えさせている。
少し離れたところで、君の友達が花火で遊んで笑っているのに、君はこんなところで黒い海を眺めている。
君は多分、こういうのが苦手なのだろう。
一人の男の子が君に近づいてくる。彼は君のことが好きで、それは君も気付いているのだけれど、あまり嬉しく思ってはない。
わずらわしいとさえ思ってる。
「何、してるの?」
「海を見ているよ」
「真っ暗で、何も見えないように思うけど」
「そう?」
実際、君にだって海はよく見えていないのだ。ただ、見えないけれど、確かにそこにある、ものすごいエネルギーの水の満ち干きから君は目を離せなかった。
「怖くない?」
「何が」
「夜の海」
君は笑ってしまう。
「何で? 見えないから? 見えないけど、そこには確かにあるんだよ」
「……だから、怖いなって、俺は思うんだけど」
「怖くないよ。むしろ、ひきこまれるような感じがして、悪くない」
「……何かの例え話?」
「どうだろう。そうかも知れない」
「……皆のとこに戻ろうよ」
「もう少ししたらね」
君はいつまでも海を見ている。図々しくも隣に座って君と同じ方向を見ている男の子のことを、早くどこかに行ってくれないかなあと思いながら。

お題
怖い話

人生は選択の連続であり、その選択によって無限の可能性に分岐する。
私は似たようなことを何度も聞いて来た。
しかし、私は断言する。
人生に無限の可能性なんてない。

私にとって、人生の選択はすべて不幸にするものだった。
人と話せば口げんかをし、黙っていれば気まずくなり、一人でいたらいたたまれなくなる。それが私である。
友人関係、進路、趣味。その中でどんな選択をしても、私は不幸になった。どの選択も「はずれ」だったのである。
だから、私はせめて「はずれ」を引かないようにし。
私はいつも選ばなかったのだ。
現状維持を続ければ、不幸にならないし無心のままでいられる。
それは、何かを選んで不幸になるよりもよっぽど楽なことであった。

しかし、しばらく自分の世界に引きこもり続けているうちに気づいてしまった。
こうやって無心であり続けても私に幸せなんて訪れないし、幸せはむこうからはやってこない。
今のままの私には幸せな未来なんてない。
しかし、自分の世界から飛び出したところで……待っているのは苦痛だけである。
私が私である限り、人生は不幸なのだ。

だからこそ、私は生まれ変わるのだ。
私が私でなくなれば、きっと人生はうまくいく。選択が幸運を招くようになる。

これから私がすることは、最悪の選択かもしれない。
だが、私はこれが最善の選択であると信じている。
少なくとも、不幸になる選択をしなくて済むようになるのだから。

あれ、なんか怖い話をするつもりが変な方向に暴走したorz

>>319
ラストでえ?ってなって読み返して理解した。

「これから私の~」のあたりもっと目立つようにしてよかったんじゃ?

>>317
読み手自身が最初から海を見ている子なんだと捉えるのが自然なんだろうな
こういう書き方も面白いと思う

「もう少ししたらね」と言っておきながら、直後に『いつまでも海を見ている』と否定して
いかにもいい加減に返事をした感をもたせたりするのは上手い

気になったのは

『君を少し怯えさせている』
『彼は君のことが好きで、それは君も気付いているのだけれど、あまり嬉しく思ってはない』
『わずらわしいとさえ思って(い)る』
『君は目を離せなかった』
↑あたりは『君』の心情についてかなり断定的に語っているし

『早くどこかに行ってくれないかなあと思いながら』
↑に至っては脳内での台詞(?)さえ読み取っているようなのに

『君は多分、こういうのが苦手なのだろう』
↑なぜここだけが曖昧で予想に過ぎないのかってところが引っ掛かった

狙いがあったならすまん

>>322
そう、読み手が自分(女の子)っていうふうに考えて書きました。
「君は多分、こういうのが苦手なんだろう」っていうのは、本当は皆でわいわいしたいような気もするけど何となく中二病的な気分になって出来ない。
でもそれを認めるのってしんどいから、客観的に自分を表現してしまいがちな面倒くさい乙女心…みたいな感じです。
何を言っているのだ私は。

「怖い話」でちょい長めのものを書いてみましたので投下します。

これはママがまだ中学生のときの話なんだけどね。そう、パパと結婚するよりも、もっともっと前の話。

ママのおじいちゃん、あなたのひいおじいちゃんね、ひいおじいちゃんの家に、ママ、一人で行ったことがあるの。あれは何でだったかしら。何か、親戚の集まりがあったんだと思う。で、暇だったママは、少しだけ前乗りして、ひいおじいちゃんの家に行ってたってわけ。

ひいおじいちゃんの家は、山の中にある小さな湖のほとりに建っていた。とても綺麗な場所で、湖の澄んだ水がきらきら空を映して、その上を可愛らしい鳥たちが行き交っていた。雲はまるで世界中の雲を神様が集めてぎゅっと固めたみたいに濃い白で、美味しそうに見えるくらい。

そんな素敵な場所だったけど、二日もすると、ママ、飽きちゃったの。そこにはお友達もいなかったし、喫茶店も本屋も映画館もなかった。そういうのが揃っている麓の街までは、なんとバスで40分もかかったの。今と違って携帯電話は発達してなかったから、インターネットで暇潰しってわけにもいかなかった。もちろんパソコンだってなかった。

さて、困ったなあってママは思った。親戚の皆が来るまで、あと何日かある。ひいおじいちゃんはその頃まだまだ元気で、昼間は働きに出ていたから、陽が出ているときは、ママは、本当に独りぼっちだったの。

だから、ママは、ひいおじいちゃんとの約束を破っちゃった。

ひいおじいちゃんね、裏山に繋がる道を行っては絶対にいけない、行かないと約束しなさいって、しつこいくらいにママに言ってたの。

何でも、その道は大昔にあった落石で、塞がれてしまっていて、ある程度行ったところで行き止まりになっている。そして、そういう、どこにも繋がっていない、行き場のない道には、「どこにも繋がらない、行き場のない、何か良くないもの」が集まってきちゃうんだって。

そんなことママに言うなんて、「行きなさい」って言ってるのと同じじゃない? ふふ。それに、本当に退屈で死んじゃいそうだったしね。

だから、ママはその日、ひいおじいちゃんが仕事に出かけたのを見てから、こっそりその道に出かけることにしたの。お弁当も作ったのよ。玉子焼きを焼いて、ウインナーを炒めて、胡瓜のお新香を切って、お櫃に残ってたご飯にごま塩ふって。

日射病になるといけないから、ひいおばあちゃんがまだ生きてた頃に使ってただろう麦わら帽子を被って、水筒にたっぷりお茶を入れて出かけた。

すごく天気の良い日だった。夏だったしね、その裏道の入り口につく頃には汗びっしょりになってた。木の匂いがむっとしてた。蝉が鳴いていて、蜂がその辺を行ったり来たりしてて、ママはいきなり「もうやめようかな」って思ったの。街の子だったママには、そういう、人の手があまり入ってない山の道が何だかママを拒否してるみたいに思えて、少しだけその場に立ちすくんだの。

でも、結局ママは歩き出した。ここまで来たんだしって気持ちがあったし、帰ったって何もすることがないからね。

その、行き止まりまではかなり長かった。どれくらいかな。1時間は歩いたような気がする。これはもしかして、持ってきたお弁当、腐っちゃうんじゃないかしらって思い始めたとき、それは急に目の前に現れた。

落石のあとなんてものじゃなかったなあ。あれは、もう、小さな山だった。それが道を塞いでて、脇は崖になっていて、確かにこれはどうやっても向こうに行けそうになかった。その、道を塞いでる山にはあちこちから草が生えていた。忘れられた道なんだなあ、ってママは改めて思った。

でも別に、そこに行くまでに怖いことなんか何もなかった。ひいおじいちゃんは大げさだなあなんて思ったわね。空を見上げると、太陽がほぼ真上に来ていた。お昼になっていたの。

もういいや、お弁当を食べて帰りましょうってママは思った。何ていうか、拍子抜けだったけど、山の中で自分で作ったお弁当を食べるなんて、やっぱりママにとっては楽しいことだったのよ。それは少しは退屈を紛らわせてくれそうだった。

何分か、もと来た道を下ったところに、大きな木があった。大人が何人もいないと抱えきれそうもない太い幹に、たくさんの枝とたくさんの葉っぱがついていて、涼しげな影を落としていた。ママはその下に入り込んで腰を落とした。水筒のお茶を一口飲んで、息をついた。結局、なんてことない、散歩みたいなものだったけど、たまにはこういうのもいいなって思った。

そして、なんとなくぼんやりと、周りを眺めていたら、変なことに気付いたの。

箱みたいなものがね、こちらに近付いてくるの。

人一人くらいなら簡単に入れそうな箱。その下には車輪がついてるみたいで、だからその箱はするする動いていたんだけどね、ママはとっても不思議だった。

あれは、どうやって動いているんだろう?

山の道とはいえ、その一帯の道はほとんど平らになっていたの。なのに、その箱は、誰が押してるようでもないのに、こっちに近付いてくる。

もっと不思議だったのは、何であっちから来るんだろうってこと。

あっちは、ママがちゃんと行ってこの目で見てきたんだよ。行き止まりになっていて、その途中、人はおろか、あんな箱なんてどこにもなかった。

なのに、急にあの箱が、道の向こうから現れた。しかも何でだか動いてる。

その箱はゆっくりゆっくり、道を進んでいた。ママが休んでる木は、道から少し離れていたから、その箱がママにぶつかったりするようなことはなさそうだった。

近付いてくるにつれて、その箱がどんなものか解りだした。その箱は、木箱のようだった。そして、蓋がしてあった。だから、中に何が入ってるのかママには解らなかった。解らなかったけど、ひいおじいちゃんの言葉を思い出して怖くなりはじめていた。どこにも繋がらない、行き場のない、何か良くないもの。

このまま通りすぎて! ってママは祈った。お願いだからこのまま、私に構わずに通りすぎてって。

でも、その願いは叶わなかった。

箱は、ママのすぐ近くでぴたりと止まった。風がやんで、あんなにうるさかった蝉の音も急にしなくなった。ママはその箱から目が離せなかった。一分? 二分? 忘れちゃったけど、ずいぶん長い間、その箱を見ていたと思う。

ばこん、っていうすごい音がして、蓋がはねあがったときには心臓が止まりそうだった。中に何かがいたの。そして、その何かが中から蓋をはねあげた。ママは見たわ。細い腕だった。細い腕が空に向かってぴんと伸びていた。その腕の持ち主が、蓋をはねあげたの。

どすん、という音がママが寄りかかってる木の後ろから聞こえた。蓋がそんなところまで飛んだのね。でも、ママはとりあえずそんなことはどうでもよくって、とにかくその、小さな腕から目が離せなかった。

それはどう見ても、子供の腕だった。白くて透き通るような、幼児独特の細い腕だった。

やがて、その腕が箱の縁をつかんだ。立とうとしてる! ママは恐ろしさのあまり、過呼吸になりそうだった。その腕の持ち主は、箱の縁をつかんだまま、ゆっくりと立ち上がった。ママとは真逆の方向を向いていたから顔は見えなかったけれど。腰から上は全部見えた。やっぱり、それは間違いなく、小さな子供だった。

頭は髪の毛一本生えてなくて、服も着てない。そう、裸なの。そしてその子は、向こう側を見ながら、大きな声で泣き始めた。小さな子供が泣くのと同じ感じで、わあ、わあ、泣くの。ママはそれがなんだかとても悲しい光景に見えた。もちろん怖いっていうのもあったんだけど、何でかな、すごくすごく、悲しかった。

でも、やっぱり、その子が泣きながら、ゆっくりとこちらを向こうとしてきたときには、「怖い」のが「悲しい」のを押しのけた。ママはその子がこちらを完全に振り向く前に、木の裏側に隠れた。

その子は相変わらず泣いていた。ママも泣きそうだった。怖くて怖くてどうにかなりそうだった。

でね、その子が、箱から降りたのが解ったの。何故なら、泣き声が聞こえる場所が、少しずつだけど、移動してるのね。ぺたぺたっていう足音も聞こえるような気がした。どうしよう、どうしようって思ってると、その子の泣き声の中に「おっかあ」っていう言葉があることに気付いたの。

おっかあっていうのは、、昔の言葉で「お母さん」ってこと。つまり、その子は、「お母さん、お母さん」って言いながら泣いていたの。

それを聞いたら、ママ、何だかまた、すごく悲しくなって……、申し訳なくも思ったの。あんな、悲しい声で泣く小さな子を怖がるなんて……。それで、ママ、その子をよく見ようと思って、木の裏から出ようとしたのね。木から出ようとして、でも、ふと、足元に転がってる蓋が目に入ったの。こんなところまで飛んだんだってママは思った。そして……足でその蓋をちょんと蹴ってみたの。

ものすごく重かった。ぴくりともしないの。それは、木で出来てるわけじゃなかった。何で出来てるかは解らないけど、鉄みたいな素材だったと思う。それに気付いた瞬間、ママはもう、木から出る気を完全になくした。

だってね。こんなに重いものを、あんな小さな子が、腕一本でこんなところまで飛ばせるわけないじゃない。ママは確信した。あれは、どう考えても普通じゃない。絶対に、見てはいけないし、見られてもいけない。

足が震えて、木に寄っかかってないと、立つことも出来なかった。

その子は相変わらず、泣きながらうろうろと動いていた。ママは来ないで、来ないでって、それだけを思ってた。

で、ママはあることに気付いて、真っ青になった。木の向こう側。つまり、その子がいる側に、お弁当や水筒を入れたカバンを置きっぱなしにしていたの。このままじゃ、気付かれる……。ママは気が気じゃなかった。

どれくらい時間が経ったか解らない。どう考えてもその何かがママのカバンをごそごそと弄り、中にあったお弁当をあけて中身を食べてるような音が聞こえ始めたとき、ママはほとんど気を失いかけていた。あげるから! 全部あげるから、それを食べて早くどこかに行って! そう祈りながら、ママは本当に気を失ってしまった。

どれくらい気を失ったのかしらね。気付くともう、暗くなり始めていた。ママはしばらく、何で自分がこんなところで寝ていたのか思い出せなかった。思い出したとたん、耳をすませたわ。何か聞こえないかって。でも、もう、あの泣き声は聞こえなかった。足音も聞こえない。ひぐらしの音だけが聞こえていた。

立ち上がって、背中についてる土を払って、思い切って木の裏から出て、あたりを見回してみたけど、やっぱり誰もいなかった。箱もなかった。

助かったんだ……! そう思った瞬間、何かに背中を叩かれた。

おっかあ、見つけた。見つけた。見つけた見つけた見つけたみつけた。



……ふふふ、こうして、ママは見つかったの。子宮に潜りこまれて、本当の命をあの子に分け与えた。パパに出会った。パパは私に何度も何度もあれを出したり入れたりした。ママは嬉しかった。やっとあなたに出会える、そう思ったから。ねえ、あなたもそう思うでしょう? ママに会えてよかったって……、あら、お父さん、ごきげんよう。……なに? やめて。その子を人形なんて言うなんて。いじわる。やめて。その子は私の子供なの、人形なんかじゃない、やめて、連れてかないで、やめて、やめて。

やめて。

長いよ

でも面白いよ

子供に問いかけてるって口調なのに、その子供が人形でしたってオチは変じゃないか?
それを深読みする人は「怖い」ってことになるんだろうけど、ちょっとチグハグすぎて置いてけぼり感が半端ない

語り口調はうまかったけど、でも語り口調そのものに意味は無いかなって感じた
語り口調であることによる親しみも不気味さも感じなかったから、ただ単に読みにくくなっただけに感じた


ある晩の事だった。
何かが崩れたような轟音で目が覚めた。離れの倉庫の方からだ。
辺りも見えない夜更けだが、泥棒や強盗かもしれない。私は懐中電灯を片手に寝床を後にする。
妻は寝ていたので、起こさずにそのまま倉庫へ向かった。

懐中電灯と微かな月明かりで照らされた倉庫は、どこか不気味さを感じられる。
錆びた引き戸をこじ開ける。年々この作業が辛くなるのを感じる。もう歳なのだろうか。
ぎい、と床が軋み、心臓がひときわ大きく収縮する。
なんでもない、ただの床の音だ。
暗い倉庫の中を懐中電灯で照らす。地震か何かがあったのか。棚のものが散乱していた。何年か前に娘がよく遊んだ女の子の人形が床に横たわっていた。
懐かしさを覚え、拾い上げる。照らされた顔は時間が時間だけに不気味だった。直ぐに棚に戻してーーー。やわらかい。

不意に浮遊感。踏み出した右足が空を掴む。
慌てて棚にしがみつく。そのまま懐中電灯で照らすと、床が抜けて穴が空いていた。
元々床の下にも収納スペースはあったが、地震の影響か、底が見えない。
ふと、気づくと、人形がない。どうやらこの穴の中に落としてしまったようだ。
気が引けるが、明日にも穴を塞ごう。この倉庫はなぜか娘のお気に入りの場所だ。
万が一、娘が穴から落ちたら大変だ。

>>322
ここで書くには長すぎる
語り口調にしても細部まで徹底されてないから緊張と迫力がいまいち伝わらない
同じ表現の繰り返しがところどころにあってテンポ悪い
文才晒しだから中身には深く触れないが、重要なところが描写不足で締まりが悪い
ようするに別個でスレ立てて制限を気にせず書けばよかった

>>336
人形を取ろうとした娘が落ちる可能性があるってことか?
読みやすい文章ですらすらと目で追えた
ぞっとさせるようなものはないけど面白い

>>337 ありがとうございます。深夜に倉庫にいた娘が穴に落ちそうになり淵にしがみついていて、父が娘の「やわらかい」手を踏んでしまいということだったんですが、描写不足でした……。

>>336 やわらかいはやっぱり踏んだとか入れた方が分かりやすかったと思うけど床塞いだら孫…
全体的に文章が淡々としすぎてね?
読みやすいけど味が足りない
人形は暗喩かな?

壁掛け時計がガシャンと落ちた。
つまり壊れたのだ。時計は精密機器だから。
動きの止まった時計という物はなんとももの悲しい。見た目には何が壊れたのか分からないのだ。
確かに認められるのは動かない、というただ一つの結果のみ。そこにあったはずの過程は後に残らない。

例えば時計の落ちた瞬間、中で歯車が外れていたとしよう。
歯車の欠けた時計は動かない。中で回転が伝えられなくなるからだ。
これもまた結果。歯車が外れたことは過程。言うなれば過程の結果までの過程。
この思考を繰り返していけば、最初の過程は段々と結果に染まっていく。

つまり、過程というものはよく見れば結果でもあるのだ。
いや、結果であったと言うべきものかもしれない。
人は先を先をと考えたがるが、全くに愚かな行為だ。
何故なら結果は既に出ている。その先の結果を求めれば、その瞬間過去の結果は過程に変わる。
未来を考えると、人は今ある結果を殺す。しかしそれで得られるのはただの結果。
無駄の極みだ。結果をつぶして結果を得る?それでは何も変わっていない。
重要なのは結果に到達すること。今まで誰もが、何もかもがそうしてきたのだ。
つまり、人生の最終目標について、私は生まれた時から達成していたのだ。

私は時計だ。どうせ残らないのなら過程なんて必要ないのだ。

一週間経ってるし新しいお題
叙述トリック
男だと思ったら女だったみたいに読者を勘違いさせるやつ

叙述トリックとか1レスで収めるとかどう頑張ってもうっすい内容にしかならん気がするがどうなのか

>>342
サスペンスかと思ったらただ料理してたってのなら前のスレにあったからあんな感じじゃないかな?

そもそも技法をお題にするとかないだろ

よく熟れているのです。
丁度いい頃合いだと判断した私は、思わず手を出してしまいました。
相手方も乗り気なようでしたし、その場面私を止めるものは存在しなかったのです。

最高でした。
中に入った瞬間の快感といったら、私の想像していたものを遥かに超えていました。
それは甘い香りで私を誘い、その実を食らわせ、満足していたようでした。

しかし今になって、後悔が私を襲います。
それは私が手を出して良いものではありませんでした。
あぁ、全くとんでもないことなのです。
それには元の主人がいたのです。
私が関わるべきものではなかったのです。

もちろん不倫の話です。

将棋のコピペのようだ

「やりたいことは、見つかりましたか??」
テレビの画面から、17歳の私が語りかけてくる。
私はその声を聞きながら、やりたいことをイメージしてみるが、どうもうまくいかない。
日々ぼんやりと流れるままに過ごしている私には、少々酷な質問だ。
獣医さんになりたいと考えたことはあるが、それは単に動物が好きだからであって、
一生をその仕事に捧げる覚悟があるか、と問われると簡単には「はい」と言えない。
ぼんやりしていると、また17歳の私が問いかけてくる。
「もしかして、結婚してたりしますか??なんちゃって」

なにが「なんちゃって」だ。17歳の私にはユーモアのセンスがない、と私は残念に思った。
画面の中でニヤニヤしている17歳の私を、私は睨みつけてやった。
もちろんそんな目線を彼女が感じることはあり得ないのだが。
この質問に答えるまでもなく、私は結婚などしていない。
それがわかっているからこそ、少し腹立たしかった。

「隣の席のK君とは、どうですか??」
まただ。
K君とは、大失敗したバレンタインのあの日から一言も喋ってない。
「どうせわかってるくせに……」
私のつぶやきは、画面の向こうには届かない。
K君とうまくいく保証など最初からなかったのだ。
どうせ彼は隣のクラスのSちゃんといい仲だったじゃないか。
自分でもわかっていたじゃないか。
「ふぅ……」
ついつい、ため息が出てしまう。

「この先のことはまだ分からないけど……」
17歳の私は少しはにかんで、次の言葉を探している。
「今日は元気です」
にっこりと、恥ずかしそうに、そう呟いた。

ビデオはそこで終わった。
今日は元気です、か。それが聞けただけでも、とりあえずは見た意味があるというものだろう。
それにしても便利な世の中になったものだ。未来からのビデオレターが発明される日が来るとは。
私は伸びをしてから、今日の分の宿題をランドセルから取り出し、机に向かうことにした。

僕にしか見えない女の子がいる。今日も部屋の片隅で窓の外を眺めながら、雲の数を数えている。

「外はいい天気だね」
「ええ、そうね。ピクニックに行きたい気分」

ニコッと、首をかしげて笑う。話しかけると応えてくれる、僕の大切な友だち。
ふと気づくと、木の上や屋根の上にいたり、ベッドの下に隠れていたりする。
無邪気で奔放で、笑顔が素敵で、僕にはないものをたくさん持っている。
僕は彼女と話をするのが大好きだ。

「ねえ、誰と話しているの?」

不意に話しかけられて、僕はびっくりする。

「また、ナタリーとお話をしているの?」

ナタリー、そう、僕が彼女につけた名前だ。いつか見た映画で言っていた。
多感な時期には、自分にしか見えない友達がいると。僕はその映画を真似して、彼女に名前をつけたのだった。

「うん、でも、ナタリーのことは内緒だよ」
「わかってるよ、僕には見えないんだから」

ガチャリと部屋のドアが開けられ、彼のママが入ってきた。
掃除機を手にしている。この部屋の掃除をするのだろう。

「なにか話し声が聞こえた気がしたけれど、あなた、またジョージとお話をしているの?」
「ううん、内緒だよ」

彼はそう言ってごまかす。
ジョージ、そう、それは僕の名前だったような気がする。

昔のだけど、ちょうどいいと思ったので

「サギ」の話をしましょう。
人をうまく騙すには信用させる必要があります。どんなに嘘を言ったところで、信用されなければ人を騙すことはできません。
では、優秀なサギ師とは信用させるのが上手な人を言うのでしょうか?
それだけでは優秀なサギ師にはなれません。
サギ師は貴方の中にすでにある思い込み、その信用を利用して貴方を騙すのです。

ああ、そういえばお題は叙述トリックでしたね。
私は既に叙述トリックをしかけましたよ?
貴方のその信用、確かに利用させてもらいました。

【夏の幻】


ここは、海の家。
彼女とよく来た思い出の場所だ。
すでに海開きは終わっているはずなのに、小雨のせいか客は誰もいない。
あたりを見回すと、やはり彼女がいた。

「や、久しぶり」

なんとなく、ここに来れば会えると思っていた。会えると信じていた。
彼女は相変わらずきれいだ。
その黒い髪も、白いワンピースも、オレンジのサンダルもよく似合っている。

「元気にしてた? 私は元気だけども」

死んだのに、元気も何もないだろうに。
あの頃と変わらない様子で、聞いてくる。
もしかして、「死んだ」ことを理解できていないのだろうか?

どちらからともなく、ベンチに腰掛ける。
ほとんど間を開けずに寄り添う。
冷たいかしら、と思ったけれど、体温はよくわからなかった。

「ここに来ると思い出すね、いろんなことを」

ケンカもしたし、仲直りもした。
ものすごく遠くまで泳いで行ったこともあるし、二人一緒にクラゲに刺されたこともあった。
あの事故があるまで、ここは二人にとって特別で大好きな場所だった。

「あ、だめ、やっぱり塩が多いからかな」

ふと見ると、足が消えていくところだった。
海辺の塩分で成仏するだなんて、洒落が効いている。

「でも、最後にまた会えて、良かった」

彼女は最後にそう言って、笑った。
先を越されてしまった。
同じことを言おうと思っていたのに。

「さよなら」

彼女は少し、泣いているようにも見えた。
私も少し、泣きそうになった。

自分の足元を見つめる。
彼女とおそろいのオレンジのサンダルが、さらさらと消えていくところだった。

どうか私の行くところが、彼女と同じでありますように、と祈った。

(´・ω・`)?

↑怒りを表しています

自分のことは棚に上げて感想。
>>347
同じような感じの話を二作続けて投稿する意味が分からない
しかも、オチがひどい。荒唐無稽すぎて怒りしか覚えない
荒唐無稽なオチに持っていくには、それを納得させるだけの伏線が必要だぞ?
「17歳の私の持ち物を羨ましがる」とか、不自然に思わせる「ひっかかり」が必要。
デタラメなオチをバレないように隠すのはただただ卑怯でしかないし、なにより陳腐だ。
>>352
お題がネタバレだから難しいのもわかるけど、もっと悪意があって誤解させる文章が欲しい。
「沖にながされてしまった彼女を助けようとしたが溺れてしまった」「沖に流されていく彼女をただ見ることしかできなかった。それが悔しかった」
あと、誤解を利用してドキッっとさせるしかけもあれば嬉しいかも。
「葬式場で彼女は泣いていたが、私は笑っていた」とか、起承転結の転で持ってこれば話が締まると思う。

短い叙述トリックを描くときはもっと読者をバカにしていい。
「そっちだと思った? バーカ」ぐらいの意図が透けてた方が面白くなると思う


黒く大きな瞳と目が合い、胸が締め付けられるようだった。
そっと手を差し出すと、指先が触れ合い、ひんやりとした感覚が伝わってくる。
髪を撫でる。枝毛が無く、そのまま毛先まで滑らかに手が滑る。街ゆく女性が見たら振り返り、羨むだろう。
やや紅潮した頬に手を当てると、マシュマロのような柔らかさが返ってくる。目を閉じて心地よさに身を任せたい。

「ああ……」

悩ましげな吐息に心が踊った。
しかし、時間がない。
化粧を簡単に済ませて、鏡をもう一度見た。
やっぱり今日も私は完璧だ。

age

次のお題
気軽にかけそうなのがいいな
ビックリした話とか、そういうざっくりしたので

>>356 はどういうこと?
お題なら家族

>>359
誰かを見てうっとりしてんのかと思ったらただのナルシストだったって話じゃないの?

前後のつながりにも無理がないし、さり気なく伏線も張ってあったりしてきれいな文章だと思ったよ

あげ

家族の話題になった途端、一気にみんな無言になった

たまに家族の声が聞きたくなくなる。
一人暮らしの男として普通逆だと思うのだが、私は何故か突然そんな気分になる。
だからといって問題は無い。家族は近くにいないわけで、声を聞く機会も多くはないからだ。

しかし極々稀に、運悪くタイミングが重なる時がある。
「声を聞きたくない」と思っている所に丁度電話がかかってくる。
当然受けざるを得ない。重要な連絡かもしれない。
私がしぶしぶ受話器をあげて見ると、いきなり甲高い声が響いてくる。聞きなれた母の声だ。
つい口の端が曲がる。その不機嫌を声には出さないように受け答えると、電話の理由は家のリフォームについて。
それも内容をどうするか?ではなく、やってみようか?という段階の話である。どうでもいい。

「ねぇ~どう思う?」
知るかバカ。ふざけるな。勝手にしろ。そんなことで一々電話してくるんじゃない。
言葉が溢れてくるが、ぐっとこらえる。相手に悪気は無いのだ。
さっさと会話を終わらせなければ危ない、私はとりあえずリフォームを行う方向に進めることに決めた。

「え~?でも、でもぉ」
どうした、私はもう意見を言ったぞ。さぁ切らせてくれ。
願いも虚しく、母の声に止む素振りは無い。
相槌をうつ事も躊躇われる。相手の話を引き出した所で何の得も無いのだ。
イラつく私は結論を急ぎ、なんとか言葉を捻り出す。

「え~?でも、でもぉ」
どうした、私はもう意見を言ったぞ。さぁ切らせてくれ。
願いも虚しく、母の声に止む素振りは無い。
相槌をうつ事も躊躇われる。相手の話を引き出した所で何の得も無いのだ。
イラつく私は結論を急ぎ、なんとか言葉を捻り出す。

「どうしたの?何かあった?」
しまった、言葉が震えていた。母親とはこういう事に敏感なものだ。
なんでもないよ、その声すら変に上擦っている。
あぁもう嫌だ、何故私がこんな目に遭うのだ。私が何をしたというのだ?
変に悲しい気分になってくる。母の声はまるで冷水だ。浴びせられる度に頭が震える。

ポタ、と落ちたのは涙だった。床の涙の跡を見て、私は初めて自分が泣いていることに気がついた。
これではまるで子供だ。嫌な状況の中、泣くことしか出来ない。
私を心配する母の声が耳から頭に響く。頼むから黙って欲しいのに。

一度受話器を置き、ソファを殴る。蹴る。ひっくり返す。
これで少しは気が晴れるのだ。スッキリとした私は受話器をとり、通話を再開する。
今は電話だからこういう対処が出来ている。
だがしかし、もしもこれが電話でなく、実際に対面していたら?
私は実の親に手をあげてしまうのではないだろうか。
それが心配だから、私はこの部屋から出ることは出来ないのだ。

読みにくい

あげ&お題変更
↓1

わたしは一向にかまわんッッ

夜中にふと喉が乾いたので、私は台所に行って冷蔵庫からウーロン茶を取り出した。コップにそれをとくとくと注いでいると、不意に玄関の方から妙な音が聞こえた。

私はそれを見に行こうかとも思ったが数歩進んだところで急に面倒になって、代わりにリビングに行きソファにどっかりと座って、しばしの間、事の成り行きを見守る事にした。

案の定、というか、予想に反して、というべきかは私にはわからなかったが、しばらくすると呼んでもいない客人がやって来た。その男は、暗闇の中、ソファに座ってくつろいでいる私を見つけると、礼儀正しいのか馬鹿なのか、こちらに向かって丁寧に会釈をしてきた。

「やあ、参ったね。まさかこんな時間に誰かが起きてるなんて思いもしなかったよ」

「私もだよ、気が合うね」そう言って私はコップに軽く口をつけた。「もしかしたら君とは美味い酒が飲めるかもしれないが、生憎、今ここにはウーロン茶しかなくてね。それでも飲んでいくかい?」

男は「遠慮しとくよ」と苦笑気味に答え、それから少し真面目な表情になった。

「ひょっとしたら君は気付いているのかもしれないけど、実は僕は泥棒なんだ。ここの家は裕福そうだからね。一週間ぐらい下見をして、入る準備には三週間も費やしたんだ。それがこんな結果になってしまって、僕としてはとても残念でならないよ。この気持ちが君にわかるかい?」

「多少は」と答えると男はにっこりと笑った。なかなか人好きのする笑顔だと思う。

「それでものは相談なんだけど、どうだろう。このまま僕を見逃してくれるかい? ついでに金目のものを幾つか物色して、それを持ち帰る事を許してもらえないだろうか。もちろん君ならわかってくれると思うけど、僕には泥棒をするだけの理由があるし、泥棒をしなきゃいけない事情もあるんだ。詳しく話せないのが悔しくてたまらないほどにね」

私は壁にかけてあった時計をちらりと眺め、それから再び男に目を向けた。「私は一向に構わないよ。この部屋にあるもので良かったら、そこの時計以外、好きに持っていくといい」

「そこの時計以外」

男は少しだけ残念そうな表情を見せたが、「あれは私もセンスがあって気に入っているんだ」と言うと、「それなら仕方がないね」と逆に嬉しそうに答えた。「ありがとう。助かったよ」と私に頭を下げる。

「いや、いいさ。それじゃあ私はもう行くよ。後片付けをしなきゃいけないんだ」空になったコップを見せながら立ち上がると、男はもう私に見向きもせず、早速、部屋を物色していた。私はもう一度だけ「じゃあ」と言ってリビングを後にし、コップを丁寧に洗ってから再び寝室へと向かった。ドアをゆっくりと開ける。

「さて……この死体をどう片付けようか」

私が今夜考えなくてはいけない命題はどうやら色々と多そうだ。それとは逆に、この家の主人は気楽そうな顔で死んでいて、理不尽な事にも私は少し羨ましくなった。

最後の行だけがよく分からない
『命題』と『理不尽なことにも』の部分
それ以外は面白かったから惜しいなと
俺の読解力がアレなだけだったら鼻で笑っていい

最後の行だけがよく分からない
『命題』と『理不尽なことにも』の部分
それ以外は面白かったから惜しいなと
俺の読解力がアレなだけだったら鼻で笑っていい

連投規制仕事しろよ……

>>368
これも一種の叙述トリックかな
読むのにストレスが無くていいとおもう

お題変更しちまうぜ
↓で

『鍋』

鍋はおいしい
冷えきった私を温めてくれる
いつからか私は冷たくなってしまった
なにもかも自分ではわからない
どうしてだろう
絶望にうちひしがれた私は小さな小さな希望を見つけた
そう私は鍋奉行

鍋ってどうよ?
どうよってのはつまり、鍋についてどう思う?ってこと。印象とか。
「美味しい」とか「あったかい」とか「みんなでワイワイ」とかさ、色々あると思うけど。
みんな心の底で思ってんだろ?
「不衛生」だって。
だってあれだぜ?お前、ツバつけた箸でもって同じ液体の中かきまわすんだぜ?大人数でだよ?
おかしくない?マジやべーよ。俺に言わせりゃ狂ってるね。
だろ?な?なぁ?
いや俺も食うけど・・・

西暦2010年の冬に自宅で行われた闇鍋はその名に恥じる事なく混沌の限りとなった。何でもいいから「何か一品持ち込むべし」との注意事項が正しく守られた事と、「またそれは普通の具材以外である」という暗黙の了解を全員がよく承知していた事、何より最大の原因となったのが「誰が何を入れたかがわからない」というそこに問題があったと思われる。

大きめの鍋を用意して、そこにネギや豆腐、白菜に椎茸、牛肉にしらたきなどの通常の具材を投下し、それが程よく煮込まれた後で、集まった面々はそれぞれ悪戯心と意趣に満ち溢れた表情でお互いの顔を眺めやり、そして電気を消した。

それぞれ袋や鞄などに入れて持ち寄った具材を取り出し、一斉に鍋へと投入する。この時、誰が何を入れたかを正確に把握している者がいたとしたら、それは全知全能である神かあるいはナイトスコープを持参したルール破りの不届き者だけだったであろうし、彼らは揃ってその鍋に手をつけるなと慌てて注意したはずである。

無論、それらの声は上がらず、集まった一同は奇妙な期待と好奇心からその鍋をよく混ぜ、そして「いただきます」との声を合図に全員が箸をその中へと突っ込んだ。

悲鳴が発せられた。

この時、何が起きたかを理解した者は誰一人としていなかったし、慌てて電気をつける者も安否を確かめる者もいつまで経っても一向に現れなかった。何故なら、その場にいた全員が倒れていたからだ。

後日、警察が調べたところによると、鍋には小型のドライヤーが入れられており、箸をつけた瞬間に誰かがコンセントにプラグを差し込んだのではないかという結論に至った。つまりは故意的に、集まったメンバーの感電死を狙ったのではないかという事だ。

警察は殺人未遂事件として、その場にいた全員を徹底的に調べあげたが、しかし、犯人を逮捕する事は結局出来そうになかった。コンセントにプラグを差し込む機会は全員にあったし、犯人は手際の良い事にも延長コードを用意して全員がその場にいながらコンセントに差し込めるようにしていた。これは電気を消す前にはなかったもので、つまり、誰か一人は気絶の振りを装って、後からそれを偽装したという事になる。

「まあ、本当に怖いのは、こんな事件が起こったって事じゃなくてね……」

捜査にあたった一人の刑事はメモ帳をパタンと閉じつつそう言った。

「全員を殺そうとした犯人が、あなた達の中に未だに何食わぬ顔しているって事ですよ」

今は2014年10月。今年もそろそろ鍋の時期がやって来る。あの時のメンバーの中で生き残っているのはいまや三人だけだった。今年はどうなるのだろうか。全ては闇の中だ。先が見えない。わからない。殺人者は今日も闇鍋をつつく。

前後半で文体がくちゃけてるなあ、と読み返してみて反省。慣れない書き方はするもんじゃあないね

>>375
一種のポエムかな。全体はいい感じにまとまってるけど、最後の締めが惜しい感じ。ひねらず落とさずにすると、綺麗な文章になりそう

お題変更

『メソポタミア文明』

これはひどいお題

「知ってる?一週間が七日になったのはメソポタミア文明からなんだよ?」

君はおどけた顔でそう言った
僕が「へぇ、そうなんだ」と適当に流すと君は怒った顔して
「川文明だから流すってか...寒いわ馬鹿野郎」と訳の分からない事を
呟いてどこかに走っていったね
僕が一緒に散歩していた犬を連れて

名前も知らないどこかずれている君へ
初対面で僕の犬を抱きかかえて逃げないでください


後日、またこの土手沿いで君と出会った
僕ん家の犬と君が飼っているらしき犬二匹を連れて恨めしそうににらんでくる
何だかむかついたので今度は僕が二匹とも抱えて逃げたんだ

「め、目には目を...同害復讐法かぁーっ!!」

そう、互いのペットを奪い合うこの戦いこそが、僕と彼女の初めてのカディシュの戦いだったのだ

「メソポタミアってどこにあるの?」

少年の質問はいつも唐突で、私を困惑させる。
メソポタミア、メソポタミア。どこで聞いてきたのだろうか?

「ね、メソポタミアってなあに?」

少年の声は甘ったるい金属の触れ合う響きがする。この年頃の男の子の声だ。
メソポタミアがなにか知らないらしい。素敵なオブジェかなにかとおもっているのかもしれない。
嘘を教えようか、本当のことを教えようか。
悩む私の服の裾を少年が引っ張ってもう一度。

「メソポタミアっておいしい?」

よし、味噌ポタージュみぞれ飴風味。ちょっと無理矢理だけれどこれで行こう。
嘘をつくことに決めた私はようやく本から少年に視線を移して口を開く。

「おいしいよ。食べたことないの?」
「うん!」
「メソポタミア文明って言われたくらい流行った、人気の料理なんだけどなあ」
「お姉ちゃんは食べたことあるの? メソポタミア」
「もちろん。メソポタミアっていうのはね……」

こうして私の口からでまかせが溢れだす。嘘八百もまもなくだ。
目をきらきらさせて少年は、架空の料理に舌鼓。
さてはて明日はなにを聞きにくることやら。

レベル高杉
へこむわ

>>382
面白かった。こんなほのぼのしたのもいいね
ただ、文体が最後で変わるのが違和感あって惜しい。
台詞も文と違和感があるから、統一するとギャグじゃなくて文学的になりそう

>>383
これ、いいな。なんかにやけてしまった
素敵なオブジェって表現がいいね。文も読みやすいし、後味がいい

そろそろお題を変えようず

看病

ほしゅ

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いつの間にか一ヶ月近く経っちゃったしお題変えようか

いぬのたまご

業者のコテってのも嫌だし、でも書き始めてる人もいるかもだし「たまご」にしようぜ

『いぬのたまご有り〼』
そこら辺で拾ったのであろうボロ板に、かすれ気味のマッキーで書いたような歪んだ文字のそれはどうやら看板だった。
思わず足を止めてしまったのは失態だがしかたがない。私は大の犬好きなのだ。
犬の犬好きと書きたいくらい犬が犬好きなのだ。おっと書いてしまった。愛してる。
私ほどの犬ラバーでなくても犬が卵を産まないことくらい知っている。
犬は胎生。あのコブ付きのうふんあはんを突っ込んでずっこんばっこんしたら、ちょめちょめからぬるりんぽ、と出てくるものだ。
そんなのだれだって知ってる。知らないなら私が教えてやる。教えこんでやる。身体になぁ。
話がそれた。
さて、その看板に目を足をとめた私が視線を上げると、ゴザの上に薄汚れたお兄さんがニタニタと黄ばんだ歯を見せている。臭そうだ。
「おい、お姉ちゃん。興味、あるのかい?」
思ったよりも甲高い声がその口から漏れた。話しかけられてしまった。どうしよう。
「いぬのたまごってなんなの?」
普通に返してしまった。なんといっても私はフランクが売りなのだ。フランク売りなのだ。愛嬌ひとつ二〇〇円。
「へへっ、こいつだよ。特別に見せてやる」
そう言ってごそごそとお兄さんが横においたズダ袋を漁る。何が出てくるのか、興味津々だ。
お兄さんが大事そうにそっと差し出した手の上にはおやおや何もない。
「どれさ」
「これだよ」
ひひっと、お兄さんが笑う。
「ちょうどいい、お姉ちゃんは犬が好きなようだし、預かっててもらおうか」
そういってふうと手の上を吹くと、なにか暖かいものが私の中に入ってきた。お腹の下のほうがほうっと熱を帯びる。
「ちょっ、ちょっと何したの?!」
服を捲ってみようにも、こう厚着ではままならない。せめて手で擦ってみるもなんの感触もない。
「三年後まで預かっててもらうだけさ。なあに、時が来たら勝手に出てくるから気になさんな」
「出てくるってなにがっ……」
わめき返そうとして目をあげると、もうそこには誰もいない。
「新年さ」
耳元で声だけがして、あとはふっつりと何もかもが消えてしまった。
あとはあの、謎の看板が残るばかり。それも風に流されてどこかへ言ってしまった。
よくわからないのだが、2018年は私の胎の中らしい。


「やあ元気かい? 突然で悪いけど、君が温めているその卵を渡してもらう」
 その申し出をすぐには理解できなかった。わたしは目をぎょろぎょろと動かし、彼女を観察する。
彼女によって、愛しい彼は殺された。残されたのは、彼との間にできたこの卵だけだ。
 わたしにはもう、この子しか希望はない。
「客人が来ていてね。お腹をすかせてるみたいだから、君の卵を食べてもらおうと思って」
 その理不尽な言葉に、眼球がぐつぐつと煮えたぎった。
 彼女の客、それは人間だろう。どうして人間の腹を満たすために、まだ見ぬ我が子を差し出さなければいけないのだ。
 もちろん要求は受け入れられない。わたしは彼女を殺してでも卵を守るのだ。
「おお怖い。君のそのスイカみたいな目玉、そのうち破裂するんじゃないかな」
 威嚇すると、彼女は肩をすくめてみせた。
「どちらにしろ、卵はもらうよ。君ら鳥はさ、卵も肉体も、食べられるためにあるんだから」
 そう言うと、彼女はいつの間にかわたしに近づいて、片手でわたしの首を締め上げてきた。
 ぐえ、と一つうめく間に、わたしの卵は彼の腕に抱かれている。
「それじゃ、確かに。また元気な卵を産むといいよ」
 悔しさと絶望と怒りから彼女をにらみつける。
 くちばしでつつくことさえできなかった。
 もうわたしには何もない。
 つがいである彼を殺したのは、彼女のくせに。
 三つの感情が入り乱れ、騒がしく羽をばたつかせる。
 それから少しの時間が経ち、彼女はまたやってきた。
 だが、手にはわたしの卵が乗っかっている。
「この卵がどういうものかって事情を話したらね、食べないというんだ。可哀想だから返してやれってさ」
 驚いた。人間にも慈悲深いものがいたのか。
 あまりにも嬉しくて、眼球がすぼんでしまった。
「だから君に返すよ。はい」
 卵は地面に叩き付けられ、わたしの前で割れた。散乱した中身は、わたしの。わたしの――――。
「さて、次は失礼な客人の相手をしてこなきゃ。どんな風に遊んであげようかな」
 命になりそこなった何かを見下ろしたまま、わたしはまだ動けない。
 膨らみすぎた眼球が割れ、その中身が卵と混ざる。

「たまご」

女「そこの通りすがりの貴方。私のたまごはいりませんか?」
男「はい?」
女「ですから、私のたまごはいりませんか?今ならお安いですよ?」
男「あのーよく分からないんだけど「私のたまご」ってなんなの?」
女「よくぞ聞いてくれました!私のたまごというのはですねー」ゴソゴソ
女「じゃじゃーん!」タマゴドド-ン
男「うわっまあまあ大きいなぁ。ダチョウのたまごかな?」
女「な、失敬な!!ちゃんと私が産んだたまごですよ!」プンスカ
男「へっ?産んだ??」ワケワラカン
女「そうです!しかも今朝産んだばかりの新鮮なたまごですよ~。それを今ならなんとこのお値段!」ユビサンボ-ン
男「へ、へー。三千円で売ってるもんなんだ...」
女「バカいっちゃいけません三百円ですよー。美味しいくて栄養満点ぜひどうぞ!」
男「えっ食べちゃうのこれ?」
女「何言ってんですかw無精卵なんだからいくら待っても何もうまれませんよー」
男「な、なるほど......うん、ひとつもらってもいいかな?」
女「はいまいどありー!三百円ちょうどのお預かりですねー。ではどうぞ消費期限は冷蔵庫で3日なので覚えておいてくださいねー」
男「あっはいどうも.....。おっまあまあ重たいんだなぁ」
女「ええ、今日のはなかなかの自信作です!しっかり味わってくださいねー。ではまたのご来店お待ちしておりまーす」ペコッ
男「はいどうもー」ペコッ
男「あれ?もういなくなってる」
男「まあいいや早速帰って料理しよーっと」


ー数時間後ー
男「早速作って食べてみたけど普通に美味しいなぁ」
男「あれ?でもこれってもしかして同じ人間を食べてることになっちゃうんだろうか.....?」

おわる

男は言った。
「卵がほしい。卵さえあれば、鶏を育てることができる。鶏がいれば卵も手に入ると」

私は彼に卵を渡してみることにした。

一週間後。彼は私に言った。
「卵をください。今度こそは育てて見せます」
私は、前の卵はどうしたのかと彼に聞いた。

「卵は育てている最中に突然隕石が落ちてきて割れてしまいました」
私は彼に渡すために懐から卵を取り出した。

そこに女が現れて言う。
「この男の言うことを信頼してはなりません。彼はいつまでも孵らない卵に腹を立て、放り投げて割ってしまったのです」
彼女の言葉を受け、私は男を咎めるように見る。
彼は恥じ入った。

女は続ける。
「私に卵をください。私なら卵の孵し方を知っています。私なら立派に鶏まで育てて見せましょう」

私は彼女に言った。
「卵の孵し方を知っているのなら、彼にその方法を教えてやるべきだったのだ。命を大切にしない者にこの卵を渡せないな」
彼女は、納得のいかなさそうな表情で私を、そして男を見た。

2人が去った後、私は考える。

やはり面白いな。
素直な愚か者をだますの、ひねくれた賢き者を適当にやりこめるのも快感だ。

絶対に孵ることのない卵を片手に、、にやりと笑った。

またこの男はイタズラをされているな、と考えた。

アイツはいつも彼にイタズラをしかける。
そして、今もそうだ。
「ここに大人の鶏と、もうすぐ孵ってひよこになる卵がある。いつも世話になっている礼にどちらかをやろう。お前はどちらが欲しい?」
と男に問いかけている。

私は知っている。
鶏が本物そっくりな偽物であることを。

私は知っている。
あの卵がスーパーの特売で買ってきたものであることを。

そして私は知っている。
彼はそのどちらにも気づいていないことを。

彼はしばらく考えた後に、育てられる卵のほうが良いなどと言って卵を受け取った。
これから、彼は孵らない卵を必死に温め続けるのだろう。
本当にあの男は馬鹿だなあ。

「でも放っておけないよね」
私はそんな独り言をつぶやき、そして彼を見守ることにした。

彼は卵を握ってそれを見つめている。
それで卵を温めているつもりだろうか。そんなことで卵が孵るわけがなかろうに。

そうやって、卵を見つめてしばらく経った。

彼は突然卵を放り投げてきた。
私は慌ててそれをキャッチした。
そして彼を見る。

彼は、ふうと一息溜め息をついて寝転がっていた。

あんまり卵が孵らないから飽きてしまい、適当に放り投げたのか。そう推測した。
(延々と、二日も三日も卵を温めるようなことにならなくてよかった)
私も、ふうと一息溜め息をついた。安堵したのだ。

そして、手に握っている卵を見つめる。
とりあえず、これはもったいないので卵かけごはんにでもして食べよう。

正直に生きるのではなく、正直っぽく生きるのがミソだと思う。
誠実に見せて信頼を得て、そして信頼を利用して楽をする。

これが一番得をする。下手に警戒させるよりずっといい。

アイツが「鶏か卵か」なんて聞いてきた。
もちろん、鶏が偽物だということに気づいていたし、卵なんて無精卵だから孵るわけがない。
下卑た顔でニタニタとこっちを見ていたからたぶんイタズラなんだろう。
でも、まあタダで貰えるのだからもらっておこう。

さて、貰うのはオモチャか卵か。そんなのは悩むことではない。
花より団子。食べられるほうがいい。だから、私は適当な理由をつけて卵をもらうことにした。
騙されたフリをして説得したら、簡単に卵が手に入った。

さて、何を食べようか。
卵一個って地味に調理しづらいんだよな。
目玉焼き。スクランブルエッグ。卵焼き。そのどれでも、卵の量が少なすぎて小腹でさえ満たせない。
ふむ、困ったなあ。

そんな感じで思索をしているうちに、彼は突然気づいた。

(あれ、この卵すごい生暖かい)
彼はその原因を考え、そして卵がアイツの懐から出てきたことに思い出した。

彼は考える。この卵は記憶が正しければ、消費期限ギリギリだったはず。
この卵は腐っているかもしれない。
……はあ。最悪だ。食べれないじゃん。
彼は適当に卵を放り投げることにした。卵が地面に落ちて割れても、きっと土に帰ることだろう。

たまには三題噺で「肩掛け」「月」「約束」

出展はここな
ttp://chocol.heteml.jp/soda/cgi-bin/sandai/sandai.cgi

 暦の上では春に近付いているとしても、現実的には寒い日が続いている。
肌を裂く冷たい風に身を竦めながら、私は約束を果たすべく足早に歩く。
深夜の人気がない街中を突き進んだ先は、小さな建物だ。古ぼけた建物だが、誰かが片付けているのか綺麗に手入れされている。

 扉を押し開いて中に入ると、玄関ホールに所狭しと置かれた展示物が出迎えてくれた。それらは建物のあらゆる場所に存在するようだ。
異常な光景に私は一瞬呑まれかけたが、頭を振って前進する。大抵の展示物には一瞥もせず通り過ぎたが、中には非情に興味深いモノがあった。
つい足を止めて眺めたいと思う時もあったが、その感情を抑えて先へ急ぐ。
 モノで溢れ、まるで迷路のような内部を進んでいくと、私は目的の部屋の前まで辿り着いた。

 部屋の前には番号が掛けられている。どうやら他の部屋の前にも番号が割り振られているらしい。
だがそれらが何らかの意味を成すとは思えない。目を離すと、番号は先程とは異なる数字を表しているのだ。
目的の部屋も例外ではなく、視線を変えた時には番号が変わっていた。まるで部屋が移動したかのような錯覚を覚える。
 いや、そんな事に気を取られている暇はない。私は部屋に押し入った。

 その部屋は簡素な造りだった。本棚にはファイル番号を表すラベルが貼られた本が数多くあり、あとは乱雑に雑多なモノが散らばっているだけ。
光源らしき物はなく、窓から差し込む明かりだけが頼りだった。
 窓から外へ視線を向けると、月が顔を覗かせている。どうやら約束は果たせそうだ。
 私はモノを押し退けて肩掛けバックを床に置き、バックの中を漁る。
この肩掛けバックの中には夢があるのだ。少なくとも私自身はそう思えるものが存在する。それをそっと窓辺に置いた。
 約束を果たしたという充足感と開放感が、私の中で満たされていく。
 私が置いた夢はどうなるのだろうか。そんな疑問が浮かんだがどうでも良いことだった。約束を果たした後など考えない。
恐らく本棚に仕舞い込まれた他の本同様、ファイル番号のラベルが貼られて納められるのだろう。
 それに対してどのような言葉が紡がれるのか。今の私には知る術などなかった。

>>403
>一瞥もせず
>部屋に押し入った
言葉の使い方がところどころ違和感覚えるし
>約束を果たしたという充足感と開放感が、私の中で満たされていく。
開放感って言葉使うなら、前の方で焦燥感とかどことなく追い詰められているような気ぜわしい感じだした対になる言葉使ったほうがいいと思うし
全体的に描写が甘くて今ひとつ想像できないけど話の雰囲気はいいと思いました。

age

腹が減る時間だよな
↓つまみ


若干卑猥注意


「いやっ、そんな所つまま……だめです」

白い柔肌が腕の中で跳ねた。いつもと違う声に、高揚感を隠せない。
シーツを握りしめ震える彼女の手をそっと撫でる。

職場ではクールな彼女が、俺のベッドで乱れていた。アルコールのせいか、他の理由か、彼女の頬は赤く染まっていた。
酒と女は相性がいい。嫌なことを忘れるのには一番だ。電気もつけず月明かりの下、何度も重なり合った。

互いの息が溶け合う距離で、一息ついた。髪をそっと撫でると、彼女は猫の様に目を細めた。初めて見る柔らかい表情だった。
しかしすぐに、影を落とした顔を覗かせる。

「でも、いいんですか。私……」

続きを遮るように抱き締めた。
ふと違和感を感じて顔を上げる。つられて彼女も、俺の視線を辿ってしまう。

ドアの隙間を見て血の気が引いた。

「だ、誰ですか」

彼女の問いに、よく知る女性が姿を見せて答えた。

「その人の妻です」

ずっと、見られていた。

妻見w

このオチ割と好きだわwww

age

↓ビール

我ながら馬鹿げた事に労力を使ったと思う。

耳が痛くなるほどに冷え切った空気の中、雪かき用の大きなスコップで新雪を集めては一輪車で運び、土手のように積み上げ重ねる。そんな作業を二時間もかけて作りあげたのが、大人ひとりが楽に入れる大きさのかまくらだ。
寒かったのは最初だけで、作業を終える頃には上着だけでなくセーターまで脱いでいるほど懸命に働いた。

そして更に小一時間を費やし中に一通りのものを運び込んだ頃には時刻は夕方に近づき、白い厚化粧に埋もれた周囲の景色は青紫に染まっていた。

ここは県内でも一番といっていい豪雪地帯、しかし私自身はこの地域の住人ではなく親戚の家を三日ばかり預かっているだけだ。

だからこそ目の前を覆う雪景色に、こんな子供じみた真似を堪えきれなくなった。しかしながらその努力の目的は子供に例えるには少々不純なものかもしれない。

暖をとるためを兼ねておこした七輪の炭が赤黒くちょうど良い火加減に落ち着いている事を確かめて、僕はそっと網の上に肉を置いた。
最高級とは言い難いがそれなりに値の張った牛肉は程よく霜降りの模様を呈しており、ちりちりという音をたてながら少しずつ火に炙られてその身を縮めてゆく。
裏返すのは一度だけ、そう心に言い聞かせながら待つ事およそ二分間。なんと長い事だろう、喉がごくりと鳴る。

重労働をこなした身体が求めているのは食べ物だけではない、むしろ渇きを潤す命の水こそを一番に欲している。それを知りながら自身で焦らしているのだ、もしかしたら私には虐げられて悦ぶ趣味があるかもしれない。
慎重に肉を裏返すと網の型が薄っすらと焦げ目に残る良い具合、反対の面は軽く炙る程度で良さそうだった。

座る傍らにこしらえたほぐしたままの柔らかい雪山に左手を突っ込み探ると、すぐ硬いものが指に触れた。半ば乱暴に抜き出したそれが纏う雪も拭わず、反対の手で栓を開ける。もうここまでくると欲望は止まらない。

七輪の横に置いた小鉢から粗挽きの岩塩をつまみ乱雑に肉にかけると、その粒を零さないよう箸で巻く風にして網から上げる。まだぶつぶつとたぎる脂に二度息を吹きかけて、それでも熱いと知りながら口に放り込んだ。

熱い、美味い、甘みと旨みだけでできているかのような肉と、わずかに存在を示しつつ主役をひきたてるに徹する塩。そう大きくもない身からこんなに汁気が出るのか、厚さにきちんと閉じられない口から溢れてしまいそうだ。

しかしまだだ、私の身体は最も欲するものを得られていない。
噛む必要などほとんどない肉を喉の奥へ追いやる寸前、左手に持った缶に口づけ一気に呷る。脂の旨みに満たされていた口が、香ばしい麦の香りに洗われてゆく。熱さはが冷たさに塗り替えられてゆく。

ちくちくとした炭酸の刺激に喉が驚き、それでも喜びの音を鳴らしている。アルコールを含む飲料は水分の補給に向かない、一気飲みなどこの歳になってするものではない、そんな事は心からどうでもよかった。

ごくんと最後の一口まで飲み干して目尻を指で拭うと、私はただ幸せの溜息をついた。さあ、二回戦だ。

うわぁ、しまった
肉食ったとこ厚さじゃねぇ、熱さだ

age
↓卒業

つつがなく卒業式が終了したあと、内々に彼女を呼び出した。
さんざめく人波を縫って約束の場所へと向かう。校舎裏とは我ながらベタだと頭を掻きながら。
これが最後ともなれば、散々ダサいと罵られていた制服も惜しく、そして愛おしく思えるだろうか。
そのデザインを例にもれず嘆いていた彼女に、よく似合うと伝えたことは一度もないが、試してみるのも一興かもしれない。

校舎をはさんだ表側の喧騒が別世界に感じられるほど、蔭の落ちたその場所はひっそり静まっていた。
ふいに響いた私の足音に振り返った彼女のもとへ一歩ごと踏み出すたび、鼓動が激しさを増す。
ようやく向い合わせで立ったときには、もう心音が彼女の耳に拾われはしまいかと真剣に危ぶむ域だった。

じぃっと見上げてくる目線に熱が籠もっていると見えるのは錯覚ではないはずだ。
突発性の呼吸困難と視野狭窄と不整脈におちいる私。アルゴリズムの変調。プログラムの齟齬。
徹夜で考え抜いた上に投げ捨てるしかないフローチャート。
いまだ無言をつらぬく彼女の口ほどにものを言う目からは物理的な圧力すら感じ取れた。
これは、はたして先手を譲られたのか、それとも――。

「あー、その、卒業おめでとう?」
「なんで疑問系……えぇと、どういたしまして?」

まずは軽くジャブの応酬。
彼女も、そして私も、人前では堅苦しく振る舞うタチだが、二人きりならば軽口も叩き合える。

「まあ、つまりだ――結婚を前提として付き合って欲しい」
「遅いよ」

渾身のストレートは華麗にカウンターされた。

「言ってくれるの、ずっと待ってたのに」

可愛らしくふくれる彼女は、すぐに承諾の言葉を付け加えてくれたが――。
しかし仕方ないだろう。淫行罪で捕まりたくはなかったんだ。

上げたほうがいいんかな?

句読点の打ち方がおかしいって指摘されたことあるから
できるだけ気をつけてみたつもり

「――だからもう要らねえっつってんだろッ」
「だったら好きにしなさいよ!」

売り言葉に買い言葉。
そんな言葉を脳裏から追いやるように紙パックのお茶を音を立てて吸い上げれば、数秒でぺしゃんこになった。
胃がむかつくのは勢いに任せて大量に詰め込んだ惣菜パンの油だのソースだのが原因だ。
決して今朝がたの彼女とのやり取りを反芻してしまうせいではない。
後悔だってしていない。これでいいんだ。これが普通だ。
昼どきの教室は騒がしく、直射日光が肌を刺す。
苛々を飲み下すため、3パック目に手を伸ばしたところで、隣の席から友人が呆れた目線を寄越しているのに気づいた。

「おっまえ、ほんと重度なー」
「なにが」
「言わせんなよ、恥ずかしー」
「だから、なんだ」
「つか、おまえアレじゃん? コンビニ弁当とかダメな奴じゃん?」
「購買だからコンビニじゃない」
「っと屁理屈こくなー。で、」

わざとらしく友人は俺の机にずいっと身を乗り出してきた。

「ケンカでもしたん?」
「べつに」
「じゃあ今日はどーしたよ? おまえのねーちゃんの、げーじつ的ないつものアレ」
「……卒業したんだよ」
「へえぇーえ」

とても含みのある語尾の伸ばしようと音程変化に、つい目を逸らし――硬直した。

「おっ、ウワサをすればじゃーん。なんっか美男美女でお似合いカップル?」

反射的にとらえてしまった光景は、はにかむ同級生、その向かいに立つ彼女。
これまで俺に渡してきたのとは別格のラッピングが施された直方体を胸にかかえ、見たことないような顔で笑う。

「…………おまえって、ほんっと重度なー」

しつこくうるさい友人はヘッドロックをかけて沈めた。

1レスにまとめるの難しいね

「ねえねえ、起きてよ」

瞑った目も作った寝息も、偽であることは彼女も分かっているのだろうか。胸元に直に感じる温度がくすぐったい。そして、何より冷たい。

「まだあたししてないんだってば。課題」

寝相を装って毛布を身体にかけ直した。既に下からは足が出てしまっている。
頭寒足熱とは良く言うものだ。脳だけが逆上せあがり、爪先の冷えがもじもじと気になる。

「ねえってばあ。つねっちゃうよ?」

既に、いわゆるクールダウンの時間を迎えた。もちろん、覚えてないとは言わないし、誰も言わせてはくれない。
自分が大罪を犯した。その事実に、彼女のいない背中が毛羽立った。昔はこっちにいたはずなのに。

「全く、散々出しといて寝ちゃうなんて流石童貞さんだなあ」

語弊がある。むしろ搾り取られたに近い。などと抗議しても、現代日本社会ではきっと、俺に非があることにされるのだろう。
そもそも。

「でもまあ、いっか」

卒業祝いに、特別なものを。

「あたしから誘っちゃったしね」

願った自分が。

「卒業おめでと、お兄ちゃん♪」

馬鹿だったのだ。

アルバムから落ちた一枚の写真。
早咲きの桜の下で、三年を過ごした親友と写真を撮った。
肩にかかる桜の花びら、少しだけ小さくなった制服。
涙を流しながら、それでも最高の笑顔を並べていた。
そんな写真だ。

一生忘れられない思い出が、その一枚に詰まっている。
だが、もう彼には会えないのだ。

GWも終わって、いつまでも卒業気分じゃいられないのでage
お題は>>422でいかがでしょう?

五月病

「先生、急患です」
「どれどれ、ああひどい、これはいけない」
「先生、息子は、息子は助かりますか?」
「なあに、注射一本ちくりとすればすぐですよ」
「ああよかった、先生お願いしますお願いします」
そういってペコペコ頭をさげる母親をあとにして、私はクランケを連れて診察室へと入った。
ここは五月病専門の医院で、私は院長をしている。
五月病専門といっても一月の間だけで先月には四月病だったし、来月は六月病の看板を上げることになる。
治療が長引く患者が入院しているときは二枚掲げることになるけれど、滅多にあることじゃない。
さて、今回のクランケはずいぶん重症だ。リィリィと鈴のなるような音が漏れている。年に一度の大仕事だ。
こんなに重いと特別な薬を使わないといけない。残り少ないはずだが、まだあるだろうか?
棚の奥にしまってあった瓶をとりだしラベルを見ると仄かに光っている。耳に当てて確かめると結晶が静かに壊れるような音がする。よしよし、なんとか必要量はありそうだ。
ハッカとケルキ水、カルシュームを混ぜて作った水溶液に、先ほどの瓶から月の光を注ぐと薬は完成。
ブスリ、チュウ
クランケはたちまち元気になって外に飛び出すと、スーツのままで空に踊りだして満月と一緒にくるくると回っている。少々効きすぎたようだ。
私も疲れた。今日の仕事は終いにしよう。
ぐっと背伸びをすると、クランケが小さな星にぶつかり、空からリィンと水晶の散らばる音がした。

適宜改行が欲しいな

age
たまには書きやすいお題にしようぜ
>>426頼んだぞ

雨上がり

ふと空を見上げると、雲間からは日差しが差していた。

「……晴れてきたなぁ」

俺が外に出ると決まって晴れる。これは俺が小学生の頃からずっと続く、不思議な現象だ。
例え雨が降ろうが竜巻が来ようが、テレビで「今年一番の台風です」と言われていようが、五分足らずでお日様が顔を出してしまう。
そのせいで学生時代苦手だったプールは、一度も中止になることはなかった。
もしも、この現象を擬人化できたら、思いっきりぶん殴ってやりたいくらいに大嫌いだ。

しかし、今日だけは別。
初めてできた彼女との初デート。
虫のいい話かもしれないが、正直今だけはとても感謝している。

「ありがとう」

一言、礼を言う。
この現象に意思は無いのかもしれない。
でも俺はあの雨上がりの空の向こうに、それは必ずいると妙な確信を持つことができた。

ふと、風がすぐ側を横切る。

『どういたしまして』

俺にはそう聞こえた気がした。

>>427
いいんじゃね
細かいことをいうなら
>もしも、この現象を擬人化できたら、思いっきりぶん殴ってやりたいくらいに大嫌いだ。
ここは最初の読点いらないだろ

>初めてできた彼女との初デート。
ここは文章と繋がるように少し変えた方がいいんじゃないか

読みやすい文体だし個人的にはさほど問題はない気がする

前の文章と繋がるように、ね

あげ
あと、お題変えよか
下1

金魚

 子供の頃に見た金魚は、もう少しキラキラ輝いていたように思えた。
 こんなにもよどんだ子供用プールの中で、せわしなく動き回ってたっけ。
 一匹一匹がそれぞれ個性を光らせて、いつすくわれるのか……いつ救われるのかと、そんな風に人間達を見ていたような記憶が有るんだけどな。
 僕の記憶が曖昧なのか。
「ようあんちゃん、一回二百円だよ」
 店のおじさんにそう声を掛けられた。
 昔ならどうしていただろうか。
 母さんに「一回だけ」と懇願していただろうか。
 ……何でこんなにも魅力を感じないのだろう。
 もしかしたら、よどんでいるのは僕の心なのかな。


 このスレは初めて訪れました。
 宜しくお願いします。

>>432
なかなかいいと思う
すれてしまった自分への苛立ちが見えるね
このスレだからこそ漢字をひらくこと無く使えばいいんじゃないだろうか
掬われる しかり 淀む しかり

むしろひらがなだからこそ小学生と現在の対比がわかりやすく見えるのかと思ったけど

>>432 です
 いろいろ助言をくださりありがとうございます。
 漢字に関しましては、あまり多いと、固くなってしまうのではと思いました。
 心の暗くなった青年の話なのですが、幼少期の回想を挟むとなると、どこか柔らかさを残しておきたかったので。
 漢字でも良かったですかね(笑)
「平仮名の方が何かここ落ち着きそう」みたいな軽いノリで書いたので、まさかそこがピックアップされるとは。

あげ
お題、書きやすいのでよろ
直下

あげてなかった。
お題下

寂寞

書いた方がいいかなぁ。
どうにも思いつかない。
誰かのを読みたいあげ

 建物に足を踏み入れると、舞い散る埃が私を出迎えてくれた。淀んだ空気は新たに
侵入する者全てを拒むような、重苦しさと沈黙を長い間保ち続けていることを示していた。
 かつて、この建物は街の中心であり多くの人々が新たな出会いを待ち、出迎えるための
場所であった。しかし、次々に立ち並んでいく建物の中に埋もれるが如く、街の中心から
遠ざかっていき、やがて誰からも見向きされなくなったのだ。
 私がここを訪れたのは、単なる気紛れと偶然に過ぎなかった。たまたま遠出をして、ぼうっと
周囲を見渡していた時に見掛けた。以前にも訪れたことのある建物を見つけて、思わず足を運んだ。
ただそれだけであった。だが郷愁の念にも近い感情を持って訪れた私を出迎えたのは、この重く
湿った空気だけである。
 あれほど賑わっていた場所が閑散としている様子は、誰もいなくなったこの場所同様に、私の心が
寂寞感に侵されるのは無理からぬことだった。

 私の足音だけが響く。これ以上ここにいるのは無意味なように思えた。けれど願望に近い想いを
抱いていた。街の中心から遠ざかったとはいえ、まだこの建物は歴史の中に埋もれていない。
まだ現存している。それはまだこの建物が街の中心となることが可能であるということだ。
 愚かしい思考であった。人々がこの場所を望んでいれば、そもそもここまで埋もれることは
なかったのだ。結局の所、過去はともかく現在では望まれていない場所であることの証左だ。
 それでも私は未来に託す。これから誰かが訪れることを信じて、私が訪れた証を記す。
これからこの建物はどうなるのだろうか。埋もれていくだけなのだろうか。
 きっとそれは、次に訪れる者の意思によって決定付けられるだろう。

あげ
人いないね、このスレももう
簡単なお題よろしく、直下で

「うさぎ」

あげ

誰か書いてくれんかね
さすがに連続で書き込むのは気が引けるし、他の人の文章を読みたいものだ
他の人が書いた文章の感想や批評をしても構わないんだ
もっと気軽に参加、しよう!

>>440
文章が妙に重苦しくてバタ臭いし、長々書いているわりには結局は「過去の遺物が未来において復活することを望む」
程度のことしか言っていない
すなわち、叙述の見事さもなければ全く思想や哲学もない面白みのない文章

上から目線でスマソ でもこれが正直な感想だわ

>>444
まさか感想がくるとはな。構わんというか、真っ当な感想くれるなら嬉しい限りよ
ただ、全体に隠された意図(というほど大げさではないが)に気付いてもらず残念な限りだ
もう少し軽い感じの文章にすれば、読みやすさから気付いてもらえたかもしれんが
意図に気付いていたなら……うん、精進します

1つのお題につき、1人しか書いてはならないルールはない
なのでどんどん気軽に投稿してもらいたい

お題は >>442 です
賑わって、深夜VIPの中心になるといいな

>>445
>>444だ なるほど「この建物」っていうのはこのスレのことか
うまいこと書くなあ

まあ文章はもうちょっと軽いほうがいいと思う
英語をそのまま和訳したような文章だからくどい

>>440
おおー、気付かなかった、そう見ると中々内容がありますね

ss深夜なんだし、もっと夜を描写に入れたらもっと伝わり易いし、もっとそれっぽくなりそうですね
淀んだ空気は~示していた:は和文英訳でもないし、もう少し自然な日本語にした方が良いのでは?
私がここを訪れたのは~ただそれだけであった:かなり個人の感覚に依るけども、リズムが微妙かも。『だが~』に余韻を持たせるのにも、文書全体にある程度緩急を付けるにももう少し短文にして句読点打たない方が良いかも
あれほど~無理からぬことだった:主述が噛み合ってない、致命的だと思います
文語調なんだから「けれど」を「けれども」にしたほうがベターかな
後半部分、現在から語るならちゃんと現在に文末を揃えましょう、ノリと雰囲気で過去形混ぜちゃダメだと思う
「であった」「である」「であろう」「だ」「だった」「だろう」も統一しましょう
あと「湿った空気」とあるけど、どうして閑散としたスレッドが湿ったという印象になるのか良くわからない。どちらかというと乾いたイメージなんだけど

あと、無生物を主語にするの好きっぽいけど、まずはちゃんとした日本語で練習してからそういう文に移行しましょう!
全体として結構上手だと思うから頑張ってください

あ、ど素人なんで、真に受けないでね

思いは伝わるけど言われなきゃ分からん
というドドドド素人の感想です

「うさぎ」

「うさぎごっこ!」と、彼女はいった。
うさぎごっこって何?と聞くと、彼女はそれには答えずぴょーんぴょんと歌い出した。うさぎごっこがはじまった。
突拍子がないのはいつものことだ。この前だって道を歩いていたら急に郵便ポストと背比べを始めたくらいだ。
あれは傑作だった。
その時のことをぼんやり思い返している内に、歌にあわせた踊りが始まっていた。
踊りといってもやたらめったらに跳ねるだけで決まった形があるわけじゃない。
両手を耳の横にぴょこりと添えて前後左右に跳ねる、跳ねる。
とても楽しそうだ。いつにもまして常きげん。
なるほど、これがうさぎごっこ。
「ね、ね。いっしょにしよう?」
白い息と一緒にお誘いの言葉をうけるけれど、あいにくそこまで狂ってない。
断る言い訳をさがして視線を彷徨わせると、赤い自動販売機があった。
なにかあたたかいものでもいる? 買ってくるよ。
うん、じゃあニンジン!
ニンジンか、ニンジン。あるかなあ?
一人で跳ねる彼女をうしろに財布の小銭を漁ると、指先に冷たくずっしりした感触があった。ニンジンがあった。
はい、ニンジン、と振り向いて差し出すと白くて長い耳が2つ揺れていた。
どうもその耳は彼女の頭から生えているようで、思わずぎゅっと握ると、彼女はひゅるひゅる縮んで小さくて白いうさぎになった。
耳を持ってぶら下げても大丈夫なのかと心配だったが、うさぎはそんなことおかまいなしにニンジンをもとめていた。
いいからニンジン、ニンジンくれよ。
そう言わんばかりにニンジンを凝視して、鼻をヒクつかせている。
口元にニンジンをはこんでやると小動物らしく一心不乱にかじりはじめた。
ニンジンうまいぜ、ニンジン。
あんまり美味しそうだったので反対側の端をかじると、ニンジンはパチンと弾けて消えてしまった。
後はビックリした顔のうさぎと僕がいるばかり。

 教室の窓から夕暮れの校庭を見下ろすと、もう人影は少ない。皆長い影をひいて思い思いに動いている。楕円のトラックをなぞる影を見つめるともなく追いかけていると、下校のチャイムが鳴った。結局進まなかった課題をカバンにしまって伸びをする。チャイムを聞いた校庭の人達も部室棟へ引き上げていく。
 その中にひとつだけ逆行する影があった。その影は用具入れから校庭の真ん中を横切ってまっすぐに飼育小屋を目指している。気になってよく見ると大きなスコップを抱えていた。

 鞄を持ち、コートを羽織る。階段を駆け下りて、スニーカーを履き、いそぎ足で飼育小屋へ向かう。校庭の一番隅にあるそこに行くのは久しぶりのことだった。先ほどの人影はもう見えなかったが、居る場所は分かっていた。
 独特の臭いがする飼育小屋の角を曲がると土を掘る音が聞こえた。その音は単調でいっそ機械的なほどに一定のリズムを刻んでいる。もうひとつ角を曲がり、裏へ回ると彼は視線を上げてちょっと目を見開いてからゆっくり挨拶をした。その間も土を掘る手は止まらない。

 「また、来たんだね」
 「そうみたいね」
 「うん」

 彼が土を掘っているのを見るのは二回目だった。
 一度目は随分動転したものだけれど、今日は不思議と落ち着いていた。彼が前と変わらないせいかもしれない。スコップを刺して、踏んで、起こす。持ち上げるときに骨ばった手指がわずかに白くなるのもまったく同じだった。

 「なんていうの?」
 「カフェオレ」
 「変な名前」
 「そうだね」

 それから少し会話が止まり、スコップの音だけが響いた。僕はスコップの先や足元やらをあてどなく見て、ただ呆けていた。夕暮れは深まって、空気が夜の冷たさをはらんできた。普段から日の当たらない飼育小屋の裏はますます暗い。
 しばらくして沈黙に飽き、次の言葉を探していると、一際大きな音のあとに、音がやんだ。スコップは穴のわきに突き立って、厳然とそびえている。穴は脛が半分うまるほどになって、掘り起こした土はちょっとした盛り上がりをみせていた。
 彼は穴から二歩離れ、出来栄えを確かめるように穴を眺めていた。

 「できた?」
 「まだもうちょっと」
 「手伝うよ」
 「制服、汚れるよ」
 「いいよ」

 彼がつい先程まで握っていたスコップの柄は驚くほど冷えていた。思わず彼の指先をみると暗がりの中でいっそう白く浮き上がっている。その白さは確かに鉄の冷たさを思わせた。
 スコップの先を穴の底に突き刺すと、思ったよりも大きく、歪な音がした。それは彼の音とは根本から違い、この空間にとって明らかな異物だった。ただそれだけで僕は、彼の作っていた精緻な構造物を壊してしまったような気分になってしまった。
 恐る恐る彼の様子をみると、しかし、彼はまったく頓着することなくしゃがみこんで、ただ彼の足元だけを愛でている。
 僕はすっかりやけになって、何度もスコップの先を穴に叩きつけ、十分にほぐれると力まかせに底の土を放り出す。決まった動きもなく、感情に任せ、猥雑にただスコップを使った。僕はただ穴を掘ることに熱中した。日は沈んだというのに、スコップの先は不思議とよく見え、目一杯身体を動かしているのに、身体は芯まで冷えていく。
 いつしか彼は僕の隣に立ってなんども繰り返し同じ言葉を言う。

 「深く」
 「もっと深くだよ」

 穴の底に星が映り、僕達の足元は一層黒々とした暗さで横たわっている。

>>450
文章に息継ぎがなくて息苦しい感じ

>>451
重苦しいしよくわからん

上げ
ついでにお題変えよう
頼む>>455

中華料理

一ヶ月も放置されたスレ上げんなよ
荒らしかよ

>>456
このスレはこのぐらいで通常進行よ
半年ROMれ

半年ROMっても100レス行かないんだよなあ…

何か月も放置されたスレに初投下です。よろしくお願いします。


「中華料理」


 ある昼間、テレビの中で炎が上がる。蒸し器が中華鍋の上で炎上していた。
 どうやらシュウマイを作ろうとしていたらしい。中華鍋の中身は水ではなく油のようだが。

「そりゃ燃えるよ」

 画面では水をかけて消火しようとしたらしく、大きく火柱が上がった。さすがにスタッフが濡れ布巾で消火にかかる。
 当然完成品は表面が黒焦げで中身は半生という代物。友人による味見があったがどうやら味付けの段階で醤油を混ぜすぎたらしく苦さと塩辛さで涙目になっていた。

 馬鹿なことをしているなと思う反面、料理をしない人間が作り方の知らない料理を作るとどうなるかと考えるとこうなるのが現実なのだろうと納得もする。
 そして自分とて料理が得意とは言えない。作り方の知らない料理など山ほどある。もし自分がこんな場面に挑戦することになったなら、どうなるのだろうか。
 過去の自分を、子供のころ母に見栄を張り料理に挑戦した時のことを思い返す。

 冷蔵庫のキュウリとネギとキャベツ、それに豚バラ肉とニンニク、冷凍庫に眠る切り餅がその時の自分が選んだ食材だった。
 余っていた調味料の中から適当に選び豆板醤と醤油を混ぜて味を見た。酢で割って餃子のタレに使うと美味しそうな味になったのを覚えている。

 キュウリを適当に乱切りに、ネギを斜め切りに、キャベツをざく切りにする。肉も一口大に切り、ニンニクを微塵切りにした。学校で教わった切り方を試してみたかったから。
 母親の動作を思い出しながらフライパンに油を引きニンニクを炒める、肉を炒める、ネギを入れ、キャベツを入れ、キュウリを入れる。先ほど混ぜた豆板醤と醤油を混ぜ、コショウも振りかけ炒め続ける。

 適当に火が通ったと思った段階で大皿に盛りつけた。味見もしなかった。切り餅を焼いて、その切り餅も膨らみすぎて金網にへばり付いていた。

「美味しく、ない」

 当然見よう見まねとうろ覚えと適当の三拍子で作られ出来上がった炒め物は別に美味しいわけでもなかった。切り餅を焼いている間に少し冷めたことも無関係ではなかったかもしれない。
 そして幼い自分には自分で作っておいてこの料理が何に分類されるのかがわからなかった。そして今でもわからない。

 あの時の自分とあの番組で失敗していた大学生の違いは何だろう。お題の有無? 知識の有無? 年齢の有無? 料理経験の有無? センスの有無? 観測者の有無?


 いつの間にか番組のコーナーは終わっていた。出演者たちがプロの作った美味しそうなシュウマイを食べている。
 それを見て思う。きっと、違いなどないのだろう。失敗は失敗だ。その程度が大きく、面白いが故に番組に採用された。
 あの時に自分が作った料理は、食べられなくはなかった。子供の微笑ましい失敗ではあったのかもしれない。だが面白くはない。そんな失敗料理。

 美味しい料理。今の世の中には溢れすぎているほどだろう。店が乱立し、料理作りを学ぶ機会を人々から奪うほどに。
 だが、きっとそれよりも前から世の中には美味しい料理は溢れていたはずだ。いつの時代も母は子の為に美味しい料理を作ってきたのだから。あの時、失敗料理に苦笑いしながらも頭を撫でてくれた母のように。次の日、大好物の餃子を作ってくれた母のように。

 電話が鳴る。ディスプレイに表示されていた登録名は――

「もしもし、え? 大丈夫、そろそろ実家が恋しくなってきたとこだったから」

蝉の鳴き声、応援席からの応援、様々な音が入り交じり、暑い場内を焦がす。
誰がどう見ても熱く、そして拮抗した試合。お互いに譲れない一進一退の攻防。
場内にいる様々な人の様々な想いを、太陽は容赦なく焼き尽くす。
永遠にも感じられた試合は、些細なミスでダムを壊すかのように決定的なものになってしまった。
僕たちは負けた。大学生活で、これが最後の試合になった。

その日の夜、僕たちは近所の中華料理へと足を運んだ。いつも試合の後は、何故か決まってこのお店に来る。
少し汚いが、活気の溢れる賑やかな店内を見回す。ふとカウンター席の奥に、大きな火柱が見えた。
大きな中華鍋を、片手で軽々と扱う料理人。一瞬の間に熱せられ、油により調理されていく食材達。
その混沌とした食材達は、昼間の僕たちの様だと思った。

「お前なに泣いてんだよ、そんなに腹減ったか?」

ああ、この頬を流れる温もりは涙のものだったのか。
意味も分からない得心をし、視線を厨房に戻すと、もう既に食材達は

「お待たせ致しました!ご注文の品です!」

私は昨今のグローバル社会に諸手を挙げて歓迎したい。さらに言えば、井戸端会議ですら世界情勢と野菜の生産地を話題にするこの時代に感謝したい。
新装開店である。
私は古いのれんをわざわざ一度掛け直してから、開店時間に取り外した。常連たちのまばらな拍手が心地良い。
古いのれんは「中華料理屋」。新しいのれんは「台湾料理屋」だ。
ここに至るまで四十年。
先代の親父が日本に来たとき、この国では"日本人の口に合う"中華料理がブームだった。
四川も北京も広東も台北もひとまとめにして「中華」と呼ばれていた。
台湾人の味覚は日本人と似ているから、先代も「中華の和風アレンジ料理」を次々に生み出した。
以来、親子二代に渡り、お客様の求める油ぎった炒飯を作ってきた。
山椒と七味で劇薬のようになった麻婆豆腐をお出ししてきたのだ。
「今日からは、違う!」
台湾は海沿いの国である。料理の目玉と言えば海産物なのだ。
台湾の気候は夏夏夏冬である。辛味で無理やり血行を上げる必要はない。
ああ、さらば乾燥地帯。湿度と台風にまみれる我が祖国の味は、日本人のメジャー・ディナーとして一躍羽ばたくであろう!
「台湾料理になると、どうなるんだ」常連が問う。
「日本人好みの味になりますよ」
「じゃあ、今までと変わらないってことか」
その言葉が耳に残る。我々は日本人の舌に合う味を作るために苦心した。
そのために元の料理を根本から変えたこともある。
「もう炒飯、作ってくれないのかい」
私は少し考えてから、答えた。
「炒飯ではなく、台湾炒飯なら」
「なにが違うんだ」
「海老が入ってます」

KANSOU貼ります
>>450
ひたすらかわいいぜ…な文章
かわいいぜ…
主観になってる人物の感情が読み取れないので感情移入し辛いところがある
一人称が僕であることすら最後まで読まないと出てこないので余計にそう思ってしまった

>>451
意図する所はいまいち読み取れなかったけど
>「彼がつい先程まで握っていたスコップの柄は~鉄の冷たさを思わせた。」
この文は質感が表現されててステキ
とりあえず最初の一行からして「人影」、「長い影」、「トラックをなぞる影」と似たような言葉が続いて冗長な印象を感じる
>「一際大きな音のあとに、音がやんだ。」
ここも同じく

>>459
文章も展開も丁寧という印象
料理フェイズのテンポがいいね
しかし回想と現在の切り替えがやや弱い気もする
あとは展開の話になるけど、不味そうな調理描写でジッサイマズイというのも文章に起伏がなくなってしまう
当時はそれでもベストを尽くしたのだろうから
美味そうな描写をして、一口食べてみたら泡を吹いた、ぐらいのほうがメリハリがつくかもしれない
>>461
短いけどやりたいことは伝わる、いい文章じゃないかしら
どうしても最後がぶつきりになっているように感じるので
炎天下のグランドと同一視したそれを、食べたのか食べなかったのかオチまでしっかり描写するだけで作品になると思う

ODAIください↓

>>464
感想ありがとうございます。
次のお題の時はメリハリ意識してパンチのきいた物が書けるよう努力します。

すみませんお題踏みました。

再募集でないなら「浮気」でお願いします。

>>462
店長の意気込みに対して、常連さんの「今までと変わらないってことか」という台詞との食い違いに引っ掛かりを覚えたんだが
最後のオチに「いやそれ殆ど変わらないし」とツッコんでしまって更にモヤっとした
うまい

台湾料理を食べた常連に「あまり変わってないように思えるけど、何が変わったんだい」と言わせるのも微妙な後味の悪さが増してより効果的かもしれない

 二人きりの放課後の教室で突然に「好きだよ」なんて言われたら、誰だって最初は戸惑うに違いない。
 クラスメイトという繋がり以外で、文芸部の中でも日陰役の私と運動部のエースの彼とに、接点なんてなかった。
「昼休みによく本を読んでるみたいだけどさ、いつも表紙が違うよね。なんだか大きくなってるし」
 机を挟んで喋る彼の目が私をまっすぐに見つめてくる。
 緊張とか恥ずかしさとか生きていることに対する申し訳なさとかがない交ぜになって、私にできたことは震えた呼吸すらも喉に突っかからせた不器用な相槌くらいだった。
 ろくな会話もできなくて、そのうえ顔を俯かせて机の表面のみに視線を向ける。
 私の行き来する視線が鉋(かんな)だったら、机なんてぺらぺらに削り取られていただろう。
「俺と付き合ってみないかな」
 彼が机に身を乗り出した、衣擦れの音がした。
なにかに驚いて動きを止める猫のように、私の体も瞬間的に強張って縮こまってしまう。
「あ……そ、わ、わたし……す、す……」
 頭の中では毛糸でセーターを編むように伝えたい気持ちがまとまっているのに、挙句の果てに口からは出る言葉は裁断機にかけられて、まるでひじきみたいになっていた。
「はい」のたった一言も返せないことが無性に情けなく思えてきて、目の奥からじわりと熱いものが溢れてきた。
 彼を遠くから眺めているのを隠したくなくて、学校に持ってくる本をお手軽な文庫本から、ちょっと重いけど顔を隠しやすい単行本に変えることまでした。その単行本を強く抱きしめて、泣くのだけは必死になって我慢する。
 彼にこんな醜態を晒し続けるくらいなら、付き合えなくなってもいいからすぐにでもこの場から逃げ出したい。
 それでまた彼との間に国境線が敷かれて、いつも通りに、繁栄している隣の国の王子様を覗き見る日々に帰るんだ。
 それが私にはお似合いなんだ。
 自棄になった自己嫌悪でもっと強く本を抱きしめると、急に本が反発して体から離れようとした。
「本が好きなのは知ってるけどさ。さすがに会話中にも抱きしめられると妬いちゃうよ」
 男子の力は想像以上に強くて、いとも簡単に私から引き抜いてしまった。
本を追いかけようとして咄嗟に動かした私の視線は、彼の笑顔と鉢合わせて止まる。
 彼が頭の上に本を掲げて言った。
「本が一番でいいからさ、間男のつもりで俺と遊んでみようよ」
 なんの悪もない提案に、私は口の中に溜まった唾液を飲み込んでから、頭を弾かれた赤べこみたく小刻みに何度も頷き返した。

>>469
結構好きな雰囲気。ニヤニヤしながら読めた。
ただ接点がないって明言されてるけど男側の惚れた理由が気になる。
あと16行目のは「隠したくなくて」で合ってるのか「隠したくなって」なのか。

>>469
好き
長編で読みたいね

賑わう必要はない
アイディア枯渇系SS難民のために毎週お題を出せ

お題サイトググるとか
酒場か休憩所で題募集すれば良いんじゃね

過疎スレに毎週を求めるのは酷
お題↓

食欲の秋って事で、食レポ

お題↓

1ヶ月で見切り付けるのは早過ぎるだろ

引き続き食レポ

秋の終わりの温度を連れて帰ってきた妹はせっせと手をこすり合わせながら、テーブルに置かれたラーメンに目を輝かせた。
「食べたほうが早くあったまるよ」と教えてあげると、光明を得たりと目を見開いて箸立てから自分の箸を取り出した。

「にーちん、なると。なると入れたの珍しい。めんまもある。お店のラーメンみたい。すごいね、にーちん」

即席ラーメンなのにここまで嬉しそうにされると、なんだか騙しているみたいで逆に申し訳なくなる。
料理の腕を自慢するのは嘘くさく、かといって謙遜するのもずるい気がして無難にありがとうと答えておいた。
好き嫌いのない妹は料理を出せばなんでもおいしそうに食べてくれるし、実際に何度もおいしいと言ってくれる。

「そのラーメンの何が美味しい」

いつも通りのやり取りは、毎回決まって何が美味しいかから始まる。
妹はどんぶりから顔を上げると、ぱちぱちと瞬きをしてから箸をおいて目をつむった。

「なんだろうね。でもおいしいの」

問いかけにわざと眉根にしわを作って、難しそうな声を演技する。

「麺はつるつる食べれてぱくぱくで、おいしいの。スープもごくごく飲めておいしいの」

どこでそう覚えたのか、妹にとって腕組みをしながら話すのが一番評論家らしいポーズとのことだった。

「めんまもなるともおいしくて、どうしようもない」

今回は「どうしようもない」ときた。思わず噴き出しそうになるのを抑え込み、僕もそうだねと同意する。
妹の総評は独特で、まるで誘導をかけられているのかのごとく食事のたびに聞いてしまうのだ。

「にーちんが作ってくれる料理ってなんだかいつもどうしようもないの」

いくら楽しそうな笑顔を見せられても、いつもどうしようもないと言われると、さすがに苦笑しかできなかった。

読みやすくて良い文章だな、妹可愛い

メンマとナルトってまた微妙なもんをチョイスしたなとは思ったけど

これは可愛い

お題↓

カイロ

操舵室の扉が勢いよく開くと寒さに身を震わせた大男が駆け込んできた。

「ういー、寒い寒い。こんな時期に五分も甲板に出てたら死んじまうわ」

これまでも再三の注意を受けてもなお、大男は音を立てて愛船の扉を乱暴に閉めてくれた。
ただでさえ気が立っている中での無神経な行動に、考えるよりも先に舌打ちが鳴る。

「いくら聞かせても治らないなら、次は海に蹴落としてやるからな」
「怖い声だすなよ。買ったばかりの船なんだろ。ちょっと強く閉めたくらいじゃ壊れねえって」

なだめるつもりではなく、この大男は本気でそう思っているから質が悪い。
新品だからこそ丁寧に扱うというごくごく当たり前の感覚なんて、体に張りつく雪の一片ほども備わっていないらしい。
いくら会社の都合上とは言え、雪が吹き荒ぶ極寒の航路。
本人への説明はおろか事前通達もなしに決定事項として振り分けるとは、つくづく頭のイカレタ上司だと思う。
しかもその上司は別の船に乗って南国の穏やかな海を、しかも緩やかな期日でバカンス気分も半分に
仕事をしていると思うと、殺意なんていくらでも湧いて出てくるものだった。

「こちとらプライベート用の船として買ってんだぞ。手当は納得いく分が出んだろうな、ああ?」
「俺だって書類上は昨日から有給取ってんだよ。我慢が必要な世界と承知の上で入ったんだろ」

三日かけて積もり積もった苛立ちを大男にぶつけると、いかにも迷惑そうに手を振って答える。
憧れていた仕事だなんて他言したことはなかったけれど、しっかりと見抜かれているだけに反論はできなかった。
「そうだけどよ」と小声でぼやいて煙草に火をつける。情けないことしてんなと自虐的に思う。
煙を肺にたっぷりため込んでから吐き出すと、頭に上っていた血がゆっくりと全身に流れていくのを感じた。

「運び屋の真似がしたくて入ったわけじゃねえんだよ」
「それもお互い様だ。よく分からん機械の部品を運びたくて船乗りになったわけじゃない」

大男は持ち込んだ荷物の中から使い捨てのホッカイロを取り出すと、袋の端を握って豪快に振る。
所詮は使われる側ってのは振り回されるだけか、と考えていると、それも見透かしたように大男は鼻で笑った。

「こちらからくじを一枚引いていただけますかー」

言われるがままに、黄色い箱の黒い亀裂に右腕を突っ込む。中でピンと立っている一枚にぶつかったので、それを引き抜く。見ると、なんか赤い。

「お、あたりですね~。今すぐお持ちしましょうか?」

「あはい」

内容も知らずに条件反射で答えてしまう。
もちろん、ニコニコ顔の青年店員は頼まれたとおりにレジから出て景品を棚から探しにいくが、その間に自分の後ろには3人のパーティメンバーが連なる。まあ、面持ちは芳しくない。
2分くらい探してようやく見つけた店員からは「お待たせしてすみません」との一言をもらうが、肝心の賞が「ほかほカイロ2枚セット」という微妙なもので、数人待たせて探してもらった手前受け取らない訳にもいかずに

「こちらこそすみません」

と呟いてしまい、ニコニコの頭上に「?」のランプが灯った。そそくさとコンビニを出る。


立冬済みの夕空。寒くない訳ではないが、カイロを使うほどの移動距離ではない。とは思うもののレジ袋から一枚を破り出す。結局下駄箱の奥にでも置いて使用期限を過ぎるのがこういうものの末路なら、いろいろと合算すれば使った方が無駄にはならない。
そして結局、ほのぬくい程度の発熱量で家に着く。知ってた、と思いながら住み慣れた306号室へ階段を上ると、2階から3階にかけての踊り場で背後から「こんにちは」との挨拶。
見やると、202号室の夫婦の娘さんが居て、冷たいコンクリにへたれこんで寒そうにしていた。軽く話を聞くと、今日は両親が出かけることを忘れて家の鍵を置きっぱなしで学校に行ってしまったらしい。いつもはこんなに喋ったりしないのにと思っただが、見れば手元のスマホの画面が真っ暗だった。余程暇だったんだろうか。
二言三言の会話だったが、娘さんは俺が家に帰ろうとしていたのを思い出したのか、

「あ、寒いですよねごめんなさいどうぞおかえりくださいませ」

と震えた早口で違和感のある敬語を言われるものだから、思わず残りのカイロを出して「これ使って、じゃあ」とたかたか306号室へ上がった。ご近所さんからできる親切のベストアンサーだと、玄関前でガッツポーズするも。

「あれあったかくなるの遅いんだった」

熱々のカイロがダウンジャケットの右ポケットで無駄になっていた。踵を返し、もう一度下へ。あーかっこわるい。

その後も何度か家と踊り場を往復し、冷え切った細い手にはやけどするくらいのカイロとココアを与え、彼女に暇だからと望まれたのでいくつか話をした。家にあげてくれないかとも言われたが、一人暮らしの男子大学生としての世間体を説くときゃははと笑われた。
バイトの時間が迫っていたので、家にあった適当なマンガを三冊持ち出して「つまんなかったら家のポストに突っ込んどいて」と言って階段を下りる。
後頭部あたりを目掛けて、声が飛んできた。

「ありがとねー。バイトがんばってね、カイロのお兄さーん」

だらしない顔してるのはなんとか自覚できたので、後ろ向きに手を振った。


二か月後、生活のルーティーンが揃わなかったか、彼女と再び会うこともなく202号室は空室になった。大家さんによれば、一軒家に引っ越したのだとか。
ふと彼女に貸した漫画を手に取ると、ちょうど中間のページに平たくなったカイロが挟まっていた。未使用の方か、と懐かしくなり、じろじろと眺めて裏っ返す。

マンガ 面白かったです
嫌じゃなければ続き 私の家のポストに入れてください

小さい字で、そう書いてあった。「うっわやっちゃった」、と呟いた。思わず深いため息が出た。なんならちょっと涙ぐんだ。気持ち悪、俺。
気落ちしているとインターホンが鳴る。半端な時間だからきっと勧誘系だとたかを括って「もしもし」とぶっきらぼうに答える。


「あ、え、いや、その……カイロの、お兄さん?」


思わず深いため息が出た。なんなら、ちょっと。

>>484-485
電車の中でチラ見。家に帰ってからもチラ見。
読み返せばいくらでも修正箇所が出てくるからそれだけでもったいない。
所々で1文の長さにこだわっているのか無駄に引き延ばしているような印象が……。
単語ひとつにまとめられるものはコンパクトに縮めてほしいな。
短くなった分を本来必要な状況描写で稼げるようになったら読みやすくなるんでね?

娘さんが可愛いし、メッセージに気付いてもらえなかったのが本当の本当にかわいそう。
最後に会えてよかったね、カイロの兄さん、娘さんに感謝だね、娘さんかわいい。
優しい緩い雰囲気が好きでした。
直せる部分が多いと思うから、だからこそ次のお題も楽しみよ。

いつかここで投下してみたいんだが、
文才のある文が具体的にどういう文なのかすら分からない

文才があるかどうかじゃなくて今現在の文才を晒そうぜな場所だし
文才ゼロでも気にせず絶賛オールカモン

>>486
ありがとうございました いろいろすみません
今読み返すだけでもコンビニの下りが無駄すぎて恥ずかしくなります
ほんとすみません がんばります

「はい、お手」

俺が靴を履き替え終わるのを見計らい、彼女が手を差し出した。
大好物の飴をせがむ孫娘のような愛おしい笑顔を見せながら……こいつ、今なんて言った。
掌を上に向けてこちらに伸びる手は、指をきれいに揃えていて行儀が正しい。
聞き間違いである可能性も無きにしもあらずと思い、彼女の顔に視線を移すと、
そちらもまた唇を尖らせて不思議そうに首を傾けた。
そんな顔をしたいのは、とてもとても俺の方なわけだけども。

「この手は何だ」
「お手」

なるほど。聞き間違いではない。スムーズな返答をありがとう。
理想的な意思疎通が行われていたとしても、これは決して会話ではない。
最近見たテレビでジャーナリストが『中国語は最も効率のいい言語だ』と
言っていたのを思い出したが、つまりはこういう会話術のことだろうか。
などと思考を巡らせた後、とりあえず俺は何も見聞きしていないことにして学校を出た。

無垢なくせして一人前に恥ずかしがり屋なところを本人が自覚するのはいつの日か。
クラスの女子から可愛い妹扱いされていると不機嫌に頬を膨らませるが、まあ妥当だろう。

「まだ鞄の中にホッカイロ残ってるだろ。それでも使ってろ」
「え、あ……ホッカイロは、友達に、あげて……」

言葉に詰まったときは嘘。隠し事にまったく向かない性格は、不本意だが愛らしい。

「お手」
「……いじわる」

悔しそうに唇を噛む彼女。この性格同士だから居心地がいいのかもしれないと思った。

次いこか
解釈自由な下記やすいやつ
お題↓

ウォーズマン

もう(キン肉マンしか)ないじゃん

版権ネタはさすがにな
書ける人が多数ってわけでもないだろし変えていいでしょ

お題↓

月見

sage

今夜は月が一番明るく輝くらしい。ついでに大きく見えるとかなんとか。
そんなことを登校前にたまたま見ていたニュースで言っていたと教えても、
部長はまったく興味を示さず、ただキャンバスに鉛筆で線を描くだけだった。

巷の話題にはまったくと言っていいほどに疎く、自分のしたいことだけをする。
三年生たちが抜けても部員の新規獲得に乗り出さなかったのは、
若さが跳梁跋扈する騒々しい限りの学校の隅っこで居場所を作りたいが為だろう。

こんな不愛想を越えた無機質人間だから、当然、正式な部員は先輩一人だけ。
学校全体が黄色い声に包まれる四月の部活動見学会でさえ新入生たちが
唯一寄り付かなかったのだから、特有の陰気臭さはお墨付きと言えた。

美術部は外観からして暗い雰囲気を取り繕う気をまったく感じさせない。
だからとそれを開き直ったように逆手に取ることもしていない。
部室の入り口に『死語厳禁』の注意書きを張り付けている奇怪な行動は、
まるで新月でもないのに積極的に雲を纏いたがる捻くれた性格の月のようである。
不人気の改善よりも人払いに労力を惜しまない姿勢にはきっともぐらも目を見開く。

明りが夕日頼りとなる時間帯の部室は茜色で薄暗い。
蛍光灯を点けてはいけないなんて決まり事なんてないのに、
部長は何を考えてか頑なに人工的な光を疎むのだった。
まあ、部活動に取り組んでいるのは部長だけで、こっちはもっぱら部活動の見学のみ。
部長がいらないと言うのであれば、それに逆らう権利なんてこちらにはない。
それに部活動見学なんて口実で、部長を眺めることさえできれば他はどうでもよかった。

ちらりと時計を見る。もうすぐ日の入りの時間が来る。冬に入ってからの昼の短さは嫌でも実感する。
日暮れがやってくると部長は黙って立ち上がり、空から茜色が引くように帰り支度を始めた。

瞬く星がよく見える田んぼ道。月の光の誘いだけでは足元がおぼつかない。
振られる覚悟で部長の手を握って引くと、意外なことに抵抗はなく、月は長い髪にさっと顔を隠してしまった。

↓次題

きつね

スレが立ってから3年目に入る勢いだな(勢いがあるとは言っていない)

>>490
ラノベみたいな文体。意識して書いてるなら良いけど、そうじゃない場合は多少改めた方が良い。文章が安っぽくなるから

>>497
こちらは逆に小難し過ぎかな。多分、主人公は高校生ぐらいだろうから、それに見あった語句を使った方が良いね

扉の前に誰かが立った気配がして目が覚めた。
昼寝の邪魔をされるのは心穏やかではないが、ないがしろにできる相手
ではないので、億劫に思いながらも出迎えるために体を起こした。
頭に残るもやっとした眠気にあくびが出る。

口から眠気が出ていき、感覚が戻ってくると、たんぽぽの
綿毛をまとめたような柔らかい雰囲気を扉越しに感じた。

「こんこん、起きてるかな」

扉が三度叩かれてからゆっくりと開く。
廊下から顔を覗かせたのは予想通りに、お世話になっている一家の長女だった。
家庭内にすっかり普及した『こんこん』なる呼び名の生み親もこの長女である。

「起きててお腹空いたでしょ。ご飯、持ってきたよ」

目の前までやってきた長女はそう言ってしゃがむと、
好物で山盛りにされた器をすぐそばに置いた。
差し出されたごちそうの量に唾を飲む。

どんなに健康な状態でお腹を空かしていたとしても、捌ける量には限度がある。
普段は欲深い私の本能と理性でさえ、これはさすがに無理だと警鐘を鳴らした。
長女を見上げて小さく鳴く。長女は嬉しそうに目を細めて私の頭を撫でた。

「我慢しなくていいんだよ。たあんとお食べ。まだあるからね」

まだあってもまだいらない。その気持ちを伝えたくて媚びるようにこん、と鳴く。
すると長女はまたもや嬉しそうに、私を真似て甘えるようにこん、と鳴いた。
寝起きで胃袋が重たくともせっかくの長女からの好意は邪険にできず、
結局、こん負けした私が折れてゆっくりとごちそうに口を付けたのだった。

>>501
ありがとね

>>409は読みやすさとはなんやねんと考えながら書いた習作っぽいやつ
安っぽさが出ちゃったのは予想外だからべつの手法考えるわ

>>410は変人×変人を表すにはどう描くのがいいかなと模索した末路
年齢相応の表現って難しいやっちゃな

突然の>>410
>>410じゃなくて>>497

散々やね
>>490>>497

土日目前にお題age
↓次題

ご当地ヒーロー



版権にはならないと思うが際どいなら安価下


「なんでウチの市のご当地ヒーローって、あんなにイケてないんだろうね」


たまたまTVで流れた地産地消を奨励するローカルCM、そこに登場した地元のヒーローキャラクターを指して妻が言った。

確かにそのデザインは古臭く、レトロ感を狙ったにしても成功しているとは言い難い。


「今のはデフォルメされたイラストだからまだマシ。このあいだ駅前で着ぐるみバージョン見たけど、百倍ヒドかったよ」

「なんだかヒーローにもゆるキャラにも、なりきれてないのよねぇ」


娘も妻の意見に賛同し、そして二人は揃って市の職員である私の方を向いた。


「あなた、なんとか意見できないの? あれじゃPR効果も何も無いわよ」

「そうだよ、お父さん課長なんでしょ? 部署が違うの?」

「駅前で着ぐるみに入ってたの、儂だよ」

「お茶淹れますねー」

「私、お風呂行ってくる」


次に娘を見かけたら、私は着ぐるみのまま声を掛けようと心に決めた。

世界のいろんなところで争いがあったとしても、空が青いうちはなんてことはない。
いざこざが過ぎて鞘に収まり切らな問題だって、いつかは必ず丸く落ち着く。
だから、困ったときは闇雲に頑張ろうとするんじゃなくて、まずは空の色を見るんだよ。
祖母は生前、それを俺によく言い聞かせていた。

口調は穏やかでのんびりとした性格。
茄子を育てるのが趣味で、収穫期にはいつも背負い籠を紫色で
満たして「作りすぎてね」なんて言い訳しながら近所に配り歩く。
祖父が先に逝った翌年から、茄子の出来が悪いねえとこぼすようになったが、
優しい祖母が作る茄子はたいがい色艶がよくて、一般人に違いは判らなかった。

「どうやって茄子作ってたんだよ」
若い体力を持っていても鍬一本で畑を耕すのは骨が折れる重労働だった。
汗と土埃で汚れた顔を手ぬぐいで拭くと、あっという間に茶色に汚れた。
顔を上げて畑を見渡す。時間と体力をかけて拵えた畝は、想像以上に立派に伸びていた。
疲れていた顔が思わず緩む。祖母が毎年畑に夢中になる気持ちを知った気がした。

「若えもんや。こっちで飯食わんか」
声に振り向くと、三倍も歳が離れた近所の農夫が手を振っていた。
農夫は祖父との好みで、その孫である俺にも親身になって接してくれるいい人だった。
声をあげる元気を惜しんで手をあげて返事をした。
鍬を置いて畑を出ると、農夫は大きなおにぎりとよく冷えたお茶で出迎えてくれた。

「たまんねえだろ、畑仕事は」
農夫はおにぎりを頬張りながら遠くを見つめる。
「たまんないですね、色々と」と言うと、年齢を感じさせる含み笑いが返ってきた。
三年後、都市化の流れで畑を買い上げられてマンションが建つ予定らしい。
たったの三年。そうと知っていればもっと早くに祖母から継いでいただろう。
「ここにビルがおっ立てば都会と変わらんな」と農夫が言った。
本当にそうだと思う。あの空が追いかけてくると思うと、蒼色が滲んで見えた。

お題では浮かばんくてフリースタイル
許せよ

>>508
読みやすくて好きよ
日常感があふれてて明るい
おとんがんがれ

>>508
素人が地域活性化のために何とか予算捻り出して頑張ってるとこもあるんだよな
お父さんも間違いなくヒーローだよ…

>>509
ええやん
土のにおいがする

>>509
いいな 実にいい

お題をね
そろそろね

寒いから『寒さ』

>>508
文才晒すってより、ちょっとした小咄かな。面白かったけど。すっきりしてるのも文才の一つ

>>509
読みやすかったし、構成も良かった。文章にも内容にも味があるね。お見事

「C組のあの子、彼氏とね、もうシたんだって」
「え、ウソっ。いつ、いつ?」
「はやーい。いいなあ」

私の苦手な会話が始まった。他人のプライバシーを晒しだしてまったく何が楽しいのやら。
煙草の煙を吹くように、吸い込んだ息を上に吐いた。

「私も早くシたいって言ってるのに彼氏がビビりで」
「わかるわかる。ウチもそう。……まあ、あんたはまだよねえ?」

会話の流れに従って、見下した流し目が私を向く。
よくご存じでという言葉を飲み込んで、受けのいい笑顔を作る。

「やめてよー。私、そうゆうお話はダメなんだってー」

恥ずかし気に耳を塞ぐポーズも付け加えると、机を囲む思春期乙女たちは
お互いの顔を見合わせて、やっぱりこの子はそうよね、と安心した顔になった。
私が経験したらいったい何がどうなるのか。まるで氾濫危険水位みたいな扱いだ。

「あ、そうだ。私、彼と帰る約束忘れてた。ごめんね」

そう言って席を立つと、思春期乙女たちは勝ち誇ったような笑みで手を振ってくれた。

校門で待つ彼を見つけて背中を弱くつつく。似合わないキャラだなと自分で思う。
未だ付き合っている感覚に慣れていないのか、固そうな声音で行こっかと言った。

「あのね。C組みの子……もう、シたんだって……」

彼の歩みが止まる。私が振り向くと、彼は赤くなった顔を横に向けた。
「もうちょっと俺たちが大人になってから」なんて言葉は、十二月にぴったりの寒さだった。

クリスマス前ラストか……
お題↓

クリスマスツリー

毎日、体験してるはずだ。
毎日、毎日、毎日、飽きることもせず、
繰り返し、僕らは目を覚ましてる。
眠ったら目覚める。昔、ママに買ってもらった車のおもちゃが
後ろに引っ張ったら、前に走り出すみたいに、
僕らは当たり前に、目を覚ましてる。
当たり前なのにおぼてない。いつもの朝がなにから始まるか。
枕の柔らかさだった気もするし、朝日の鋭さ立ったかもしれない。
パパの野太くて優しい声だったかもしれないし、
ママの作る朝ご飯のにおいかも。
ただ、今日だけは忘れない。


脂肪と髪の毛、それにむき出しになった血液を焦がす臭い
「よく眠れたかね」
神経質そうな兵隊さんは、そう声をかけ、わたしの隣に、
その大きな体を縮こませるようにして座った。
ボロボロにころされた街と対称的について、
昨日も当たり前の昨日だったように太陽は出てきて
わたしの吐く息を白く塗った。
お尻に付いた小石とか、砂を払おうと腰を浮かせると、兵隊さんは
「敵さんはすごいね、人殺しに自分の神様まで使うなんてさ」
目の前で焼ける、山積みになったパパやママを見ながら
ぼうっと言った。
わたしは何も、答えなかった。
ただ、ただ、山積みのパパやママはクリスマスツリーみたいだなって思った。

>>519
表現したい事は分かるけど、描写が全部雑です。
一人称が途中で変わったのは、視点が変わったからだろうけど、こういう短い文章でやるのは、わかり辛くなるだけだからやめた方がいいでしょう。
最後のクリスマスツリーの取って付けた感がかなり気になりました。
でも、雰囲気と前後半の対比はよかったし、
文章のテンポもすごいよかったです。
もっと、小説を読んで勉強してほしいです。

>もっと、小説を読んで勉強してほしいです。

意識高い系()がそうやって突っぱねるから過疎ってたんだろうな
もっと、スレを読んで勉強してほしいです。

つスレタイ

「欲しがり屋さんは卒業しましたので」

アクリルケースに行儀よく収まったクリスマスツリーを見ながら彼女が言った。
暖色の間接照明のみで薄暗い寝室に置かれた、彼女が見とれているミニチュアの
ツリーは、飾れた赤と金のクーゲルを遠慮がちに輝かせていた。

「そのツリー、気に入ってくれるのは嬉しいけどさ。去年の思い出だよ」

ベッドで横になっている彼女のすぐ後ろの縁に腰を下ろす。
自分好みに伸ばされた長い黒髪を掬うと、防衛本能が働いたのか僅かに身を縮めた。
悪いことなんてまったくするつもりないんだけどな、と思いながら髪の毛を弄ぶ。
心なしか、いつにも増して黒髪の手触りが良いように感じた。

「私ってみんなが思っている以上に欲張りみたいで。だから、いい子じゃないんだ」

欲張りと聞いて思い出したのは、彼女と出会った去年のクリスマスイブだった。
三年間も付き合っていたかつての恋人を浮気相手に取られ、公園のベンチで
雪をかぶりながら缶チューハイを呷っていると、声をかけてきたのが彼女だった。
私も隣いいですか、と聞いてくると返事を待たずしてベンチに腰掛けてきた。
そして俺と似たように上を向いて、叫びたい感情と一緒に缶チューハイを一息で飲み干した。
誰も信用したくない、けれども誰かが隣に居て欲しい。
そんな都合のいい寂しさを彼女も抱えていたように見えた。

「もう去年との俺たちじゃないんだし。新しいのが欲しいでしょ」

ベッドに倒れて背中側から腕をまわすと、彼女は振り向いて「大きいのは欲張りだから」と答えた。
「いらない」と言われなかったことにひとまず安堵して、ベッドの下に隠していた鞄を取り出した。
彼女を起こして正面に座らせて、赤地に白い星が散った包装をされた箱を手渡す。
緊張気味に受け取って固まる彼女に「開けてみて」と促すと、小さく頷いて包装を剥がした。
彼女が既に持っている物と全く同じ型のツリーは、クーゲルの輝きに混じって自慢げに白い指輪を下げていた。

>>519
前半部分がいじりがいありそうね
もっと表現のしようがありそうでもったいないなあって思いました
全体的な内容は好きよ
だから読んでて惜しいなあって

我が家にはクリマスツリーがある。

俺が幼稚園の頃に親父が買ってきたやつだ。当時の俺にはそのツリーは東京タワーぐらいにデカく思えたもんなんだが、今見ると別にたいした大きさじゃない。小市民という言葉がこれほど似合うツリーはないんじゃないかってぐらいの、『そこそこ』の大きさの平々凡々としたツリーだ。

ただ、このツリーには少し変わった思い出がある。

それを見て、無邪気にはしゃいでいた俺を横に、親父は真面目な表情でこんな風に言ったんだ。

「これはな、目印なんだ。柱の傷と一緒だ」

「はしらのキズ?」

「そうだ。父さんが子供の頃は一年ごとに背の高さにそって柱に傷をつけたもんさ。成長の記録ってやつだ」

ここは借家だから、柱に傷を残す事は出来ないからな。そう言った後で親父は不意に真剣な表情に変わり、

「このツリーより背が高くなったら、お前に我が家の大事な秘密を伝えようと思ってる」

今、俺はとうにそのツリーの高さを越えているんだが、親父はその事をすっかり忘れてしまったのか、未だに我が家の大事な秘密は謎のままだ。

>>525
わざとか分かりませんが、文章が悪い意味でバカっぽいです。
例えが吐き気をもよおす程下手とか、『』の無駄遣いや、真面目な表情から真剣な表情っの違いがわかるって凄い表情に敏感な幼子だなあ、とかありますが、特に目についたのが下の一文です。
我が家にはクリスマスツリーがある
とありますが、この書き方だと「常にか?我が家のどこにだ?」
と思ってしまいます。
短い文章でも5w1hを忘れないでください。
またツリーの出てくる時期と一緒に、飾り付けがどうとか、臭いがどうとか書いてあげれば、文章が記号的ではなくなり、厚みがでます。
ストーリーもありがちというか、陳腐でこの文章の中に褒めれる所は見つかりませんでしたが、文章を書ききったというのは素晴らしいです。
昔使った国語の教科書のような、読みやすいものから読んでいくといいかもしれません。

お題:白

「白」


 冬休み、少し早めに行った高校の卒業旅行。その日東京に行くまで私はホワイトクリスマスという言葉を知らなかった。冬なんて雪が降るのは当たり前、積もらないほうが珍しい。そんな風に思っていた。雪かきの手伝いが面倒だから嫌だとすら思っていた。雪をありがたがる気持ちなんてわからなかった。

「ホワイトクリスマスだね」

 そう呟かれて隣を見る。空を見上げるその男の目は今まで私を映していた。でも今は雪の降る空を見ている。

 別にこの男が好きだなんて思ってはいなかった。ただ一人でいるよりはマシかなとデートに一回付き合うだけのつもりだった。それでも私は隣にいた。今も隣にいる。なのに、この男は私にではなく雪に目を奪われた。
 別に私だけを見てほしいだなんて重いことを言うつもりはない。だけど雪なんかに負けるのは我慢がならなかった。雪なんて、毎年のように人を殺しているような物なんかには。

「私、雪嫌いなんだ」

 少し早歩きで距離をとって振り返る。男は困惑の表情を浮かべている。そんなに私は今冷たい目をしているのだろうか。

「今日はもう解散ということでよろしく」

 有無を言わさず分かれる。これならデートを断ったほうがまだ誰も傷つかなかったかもしれない。
 だけど、雪はどうしても好きになれない。

 故郷よりも重く粗い雪が歩道を濡らす。今日のこの先の予定は決めていない。一人で何もないクリスマスを過ごして一日を終えるしかないかもしれない。それ以外に思いつくことも特にない。
 適当にコンビニでシュークリームを買って帰ろう。雪よりも幸せな白いクリームを味わって、それでクリスマスを終えよう。

 ふとメールが届いた。確かめてみると弟から小さな雪ダルマの画像が送られてきていた。嫌がらせでしかない。

「雪、雪、雪」

 溜息しか出ない。試しに雪に手を伸ばしてみても少し冷たいだけだった。

「うぉ!?」

 前方で誰かが転ぶのが見えた。あまり積もってないけどきっと雪のせいだ。

「いててっ……」

 追い抜く時に見てみると、まったく知らない男の顔。ただ、痛そうに表情を歪めているのを見ると少し心が軽くなった。雪が嫌いな仲間ができたかなと、思わず目尻が下がるのを感じた。
 気付けばお互いに見詰め合っていた。普段ではまず起きない異様な状況の中、私は先手をとられてしまう。

「あの、一目惚れしました」

 結局のところ雪嫌い仲間はできなかった。雪嫌い仲間は、できなかった。
 今はまだ、雪は好きになれそうにない。

>>528-529
なんかストーリーから技術から、何もかもチグハグですね。
まず、その日東京に行くまでは、ってその後の陳腐なストーリーは
現在進行形に見える文章なのに、過去形の言い回しはやめて欲しいです。
まあ、おしゃれな言い回しだから使いたい気持ちはわかりますが、
どうしても現在進行形の書き方で使いたいなら、その日○○、の後に行間を3位開けて、
一拍開けた感が出せれば違和感ない気がします。
次にホワイトクリスマス、あんまりこういう言い方したくないですが、
これを知らない若い女の子なんてあまりにリアリティが無いです。
別にホワイトクリスマスを知らない女の子がいてもいいんですが
キャラの作りが小児用の風邪薬より甘いです。
普通の地方の女の子からホワイトクリスマスという単語を抜いただけっていえば伝わりますかね。
ホワイトクリスマスを知らないなら、それに付随してアホの子とか
一つのことに陶酔してそれ以外の常識等が欠如しているとかなら、
ホワイトクリスマスを知らないってことに納得できるんですが
あなたの書いた女の子はそれが無く、ザーメン臭くて薄っぺらいハリボテだなって感じちゃいます。
まだまだ言いたいことはありますが、完成させたのは偉いです。
頑張って書き続ければ読んでくれる人も増えるはずです。
根拠はありませんが頑張ってください。
よいお年を

>>530
感想どうもです。お目汚しすみませんでした。
キャラ背景の描写に次から気をつけます。感想ありがたかったです。

年あけたし変えるか
お題↓

>>531
そいつ、嵐みたいなもんだから、触らなくていいよ

お題は、やっぱり正月で

「正月」


 年が明ける。日の出を見る。それは新たな年への希望を胸に行う儀式。だというのに目の前の太陽は落書きのようにしか見えない。直視もできない輝きはただの赤い渦巻きに置き換えられていた。

 振り返ると山肌が見える。丸められた厚紙のような岩、薄い色紙の草花、ダンボールの樹木、眼下に広がる雲すらも歪な紙風船。少しずつ見づらくなっていく月も不自然な三日月型の紙にクレヨンで色を付けたようにしか見えない。昨日、海を見たときは細かく千切れた水色の紙片の中を厚紙の魚が泳いでいた。

「喉、渇いたな」

 紙、紙、紙……紙しか存在しない落書きの世界。悪い夢なのだろうか、人すらも紙を張り合わせ作った模型が動いている。紙でないものは自分自身のみ。
 気が狂いそうだ。もう既に狂っているのだろうか。狂ったからこんな世界になってしまったのだろうか。

 あまりの空腹に紙の草花を千切り、口に含む。噛めども噛めども紙の味しかしない。口の中の水分が奪われ余計に喉が渇いた気すらする。

 ――もう、疲れた。

 手首の皮を少し深めに噛み千切る。痛くて何度も失敗しながら、それでも必至に何度も牙を突き立てる。血が滲む、それでも噛む。痛くて痛くて涙が出る。自分で決めたことだというのに怖くて仕方がない。
 手首から明確な血の味が口内に広がる。いつの間にか涙だけでなく鼻水すら止まらなくなって息が詰まる。それでも必死に描いていく。折角手に入れた赤を無駄にしないように、覚えている限りのリアルを描いていく。

 いつの間にか、熱が頬を撫でていた。世界が、全て赤く染まっていく。息ができない、苦しい、だけどようやく開放されるのだとわかった。
 世界が全て白に染まるのを見届けることなく、私は黒い炭になっていく――

ここに来れば忘れていたものを取り戻してくれるかもしれない。
この雪原に彼女の記憶が残っていれば、俺のこともきっと思い出してくれるはずだ。
すがる思いで困惑する彼女の腕を強引に引っ張って数百キロも越えてきたのに、
彼女の回答は一縷の望みを絶ち切る、言葉の無い困ったような笑みだった。

「ごめんね。やっぱり見覚えないや」

雪に手足をついて愕然とうなだれる俺の頭に彼女が言った。
奥手で奥ゆかしい彼女に惚れて俺が告白してから三年。
その三年間で最も多くの思い出を作ったのがこの雪原だったのに、
彼女を襲ったたった一回の事故がそのすべてを根こそぎ奪い去ってしまった。

「あーあ。じゃあ、もうどうしようもうないわ」

本当の彼女と築き上げた時間は、もう頭の片隅にも残っていないらしい。
そうでもなければこの人がこんなに戸惑うはずがない。
俺が好きになった人はこの世界から死なずに消えてしまった。
これほど辛い別れは、人類史を底の底からほじくり返してもそうないだろう

「帰ろうか。こんなとこまで無理矢理連れてきてごめんね」

言葉遣いから性格まで、しいては表情の使い方もまったく別人。
知らない人だと割り切れと、頭の中で誰かがささやいた。

「君の知ってる私って、たぶん私じゃないんだよね」
「そうね。知らない人よ。だから」
「やり直せないかな。ここで別れたら、元の私に悪いよ」

彼女の記憶が戻ったら、また好きになった人を失わないといけない。
そうなったらもう一度ここまで戻って来れる自信は、まだ俺にはなかった。

>>528-529
擦れた感性をお持ちの女性やね
負けず嫌いな性格というか世界中を見下してる冷たい感じの、はっきりとしたキャラクターは好きよ
「人であれば雪が好き」を前提にした表現の「雪嫌い」と考えると色んなものが当てはまって面白く見えてくるし
あまり人からは好かれない方向に尖った子だけど俺は好きよ付き合ってほしい

「思わず目尻が下がるのを感じた。」
を自分で読み返して、ん?って思えば、文章内のたいていの違和感は直せると思うからがんば
頭がHappyなものしか書けない俺からすれば読み続けたい独特の視点で興味あるよ

>>534
ずいぶんとスプラッタなお正月をご存じで
そっち方向には詳しくないから浅い感想になるけどご容赦を

一文一文が短くてテンポがよくて好きよ
世界を紙に置き換えて話しを進める斬新さはそうそう出るものじゃないからすげえよね、ぱねえ

お前さんの作風と書き方から察するに、「ここがおかしい」というと
「んなわけねえじゃん!」とか返ってきそうだけど、ひとつだけね
「余計に喉が渇いた気すらする。」
気すらするじゃなくてもっと言い切る形にした方がより強い飢えや渇きが出せるんじゃないかねって
全体の表現が押し付けるほどに強めだから一歩でも引いたような部分があると目立って勿体ナス

しかしスプラッタについては何が適切なのかが本当に分からん

>>536-537
>>533で言われたのでむやみに誰かの感想に返答してもいいのかわかりませんが、感想どうもです。
細かい違和感に気付くのは難しそうですけど、少し時間を置いてから読み直す等で頑張ってみます。
あと世界観と主張の激しい作品はなるべく堂々とした書き方を貫けるよう気をつけてみます。
アドバイスありがとうございました。

「あけましてええぇぇ、おめでっ、とおぅっ!」

年明けの挨拶から妙にテンションの高い幼馴染が振袖姿で何かの決めポーズを取った。
カマキリが鎌を振り上げたような上体とフラミンゴを彷彿とさせる片足立ち。

「今の私は縁起がいいよ。力がすごい。なんか、こう、縁起力がすごい」

インターホンに呼ばれた年明けの一発目にこんな奇怪な光景を見せつけられた俺の心境が、こいつに理解できるのだろうか。
幼馴染は奇妙な佇まいを維持したまま何やら企むような怪しげな顔でにやけた。
まだ午前八時。人の家の前で理解不能なポージング。もう既に不審者。
その不審者が意味あり気な笑みを浮かべるのだから、これは通報する以外の選択肢はないに等しい。

「お年玉ちょー」

全てを聞き終わる前に扉を締めて手早く鍵をかける。
チェーンを引っかける完全防備の時間まで許してくれたは、
相手の反応が遅れる程度には想定外の行動だったのかもしれない。

「お餅! お餅でいいから頂戴! お餅でいいからあ!」

自業自得のクセに半泣きになっている声が扉越しに聞こえてきた。
何年一緒にいても思い付きと好奇心に急かさせる幼馴染の行動パターンはまったく読めない。
いつまでも玄関前で騒がれているとさすがに近所迷惑になると思い、
施錠を解いて玄関を開き、幼馴染を中にへと引っ張り込む。
改めて幼馴染の振袖姿を見ると、まあなんというか、馬子にも衣装とはよく言ったものだと感心する。

「いきなり閉められたからびっくりした。さ、お年玉」

こんな思考回路でなければ可愛いとは思う。
つくづくもったいないことをしてるなと思いながら、幼馴染の顔面にのし餅を叩きつけた。

そろそろお題変更かな

かまくら

「かまくら」


 雪が降り積もる中で妖精が遊んでいる。妖精は楽しそうに雪をすくい上げ、見つめる。見つめ終わると雪を宙に舞わせ、また楽しそうな表情を浮かべる。

 そんな光景を、ただ見つめる者がいた。周囲に足跡はない。長い時間その場に佇んでいたことがわかる。
 妖精は自分よりも何倍も大きなその人物に怯えることもなく、雪に目を輝かせている。雪の上に倒れこみ、雪のクッション性を確かめる。小さな足跡で覚えたてのひらがなを書いてみせる。大して積もっている訳でもない雪を、それでも小さな体で存分に楽しんでいる。

 今度は雪ダルマを作るようだ。小さな雪球を作り、重ねる。大きな雪ダルマを作ろうという発想がないのか、その小さな雪ダルマで妖精は十分満足した。作った雪ダルマを掲げ、自分を見つめる者に笑顔で差し出すのだ。

 雪ダルマの受け渡しが完了すると、今度は雪を大量に集め始める。小さな手ですくい上げた雪を少しずつ固め、壁のようなものを作ろうとする。サークル状の壁、それは見る者に竈のような形を思い浮かばせる。小さな体では思うように雪を集められないが、懸命にその小さな大仕事に取り組む。

 思わず、手が伸びたのだろう。その大きな手が雪を片手にひとすくい分、妖精の傍に積んだ。妖精が嬉しそうにその雪を固めて作品を仕上げていく。妖精のために、それは何度か続けられた。
 出来上がったのは小さく不恰好なかまくらだった。妖精は満足そうに笑顔を振りまく。

「先輩、ここにいたっすか」

 雪の上に大きな足跡が現れる。無言の世界に、声が戻ってくる。既に小さな雪ダルマは、体温で完全に溶けてしまっていた。

「……雪、娘さん、喜んだっすかね」

「あぁ、妖精さんは喜んでいるよ」

 妖精が抱きついた大きな手は、霜焼けで真っ赤に染まっていた。喜びに顔を赤くする妖精と、同じ色だった。

>>

>>543
やっぱり無邪気って可愛いわ
幼子や子供じゃなくて妖精と言われると純潔さが出ていいよねえ
俺もあの頃は自由だったわ……あの頃に帰りたい……
無言の世界に声が戻ってくるって表現が意図的に用いた比喩なら大好き
背丈相応の小規模な世界ってどうしてあんなに時間が詰まってたんだかね……

テーマのかまくらを冒頭に持ってくると使える行が減って苦しくなるから省いていいと思うよ
面白いお話なのにぎゅうぎゅう詰めで読まないといけなくなるからなんかもったいない
それと「私」とかを使ってはっきりとした一人称視点で書いた方が妖精の観察してる感じが際立ったかなあって

妖精が自然体でいる表現が上手でおいらは好きだよ
なんて言いながら書く側の意図を汲めてなかったらスマソ

空を見上げれば冬。
ふわりふわりと降りてくる雪に囲まれていると、いつもより一秒が長く感じられる。
バケツに雪をかき込む作業の手を止めて振り返ると、中庭に面した校舎がそびえ立つ。

創立80周年を迎えた名門校。名前を聞けば誰もが驚きに眉を持ち上げる。
独自の教育カリキュラムを組み上げることで有名大学への進学率では他校を圧倒。
運動部からも毎年のようにトップアスリートを輩出している登竜門的な存在。
『世界の牽引者の育成』にふさわしいトップレベルの学習環境の中にいながら、
なぜか俺は、水面が凍り付いた池の前でかまくら作りに加わっていた。

「本当に何故だ」

本来なら暖房の効いた図書館で難問奇問の並んだ入試問題に挑んでいたはずである。
それなのに、どうして今、手袋とマフラーと耳あての防寒三種の神器を身につけているのか。
握っているのはペンではなくてシャベルとバケツ。幼稚なお遊び道具に眩暈が起きそうになる。

「ギャザー(gather)! 動きが遅い! カーゴ(cargo)に待ち時間を作らせない!」
「はいはいはい!」

指揮を執る部長の怒号に突かれて慌ててバケツに雪を放り込む。
かまくら作り最短記録の樹立を宣言したレクリエーション部部長は、なまはげの形相だ。

「ギャザー! あんた、雪国を舐めてんでしょ!」

こちとら産まれも育ちも在住も関東圏。部長だって北緯36度線を越えた経験が無いのは知っている。
横目で製作部門に振られた女子部員に視線を向けると、寒さと冷たさと恐怖で目に涙を浮かべていた。

「ああもう! ギネスから2分遅れ! やり直し! 配置用意!」

挑戦的な部長の大声が冬休みの中庭に響く。築いたかまくらを崩す虚無感が白い溜息となって空へと昇って行った。

>>545
感想どうもです。次からお題は名前欄に書いておきます。
伝えたいことが伝わらなかったのはこちらの力不足なのだと思います。無言の世界は比喩じゃなかったです、ごめんなさい。
流石にこんな小さな妖精さんはいません。見えるのならそれは家族を失った誰かの妄想、ということです。

>>543
妖精さんが可愛いだけに、後輩?の台詞が「楽しめた」じゃなく「楽しんだ」なのが
(深読みし過ぎだろうけども)最初の…も相まって、もしかして「娘さん」は亡くなっていて全て空想…?と思う程度にはひっかかったので
例えば妖精の頭を撫でながらとか、真っ赤な手に少し呆れたような声でとか、後輩の感情が分かる描写があればなお良いと思う
雰囲気は好き

>>546
実際ありそうな部活且つ居そうな先輩なのがまた

すまん被った
深読みじゃなかったのか…

>>548-549
感想どうもです。一応妖精さんのサイズが人間の子供とは思えないほど小さいように描写したつもりでした。
後輩が妖精さんに話しかけないのもお察しのとおりです。
次からは意図的にそういった部分を匂わせる文章をもう少し足してみることにします。

お題↓

苦味

 そう新しくもない公立校だからか、教室内はともかく廊下や階段に暖房設備はありません。忍び込んだ一月の風が緩く吹き廻るこの一角は、建物の中だというのに吐息が白く染まる寒さです。それにこの旧校舎二階から三階は各科目の実習室が並ぶところ、木曜日の午後は全クラス共にこのフロアを利用する授業が無い事も解っています。真冬の今、昼休みとはいえ用も無くここを訪れる者など職員にも生徒にもいない事でしょう。たとえ誰かが近づいたとしても、その人がこの三階の階段ホールに辿り着くまでに足音で気づけます。だから、何も心配は要らないのです。

「見せてごらんなさい。ああ、もうこんなに苦しそう」

 私は制服のスラックス越しにその生殖本能が集中し昂った部分を指でなぞると、視線を上げて彼の表情を確かめました。?

 そう新しくもない公立校だからか、教室内はともかく廊下や階段に暖房設備はありません。忍び込んだ一月の風が緩く吹き廻るこの一角は、建物の中だというのに吐息が白く染まる寒さです。それにこの旧校舎二階から三階は各科目の実習室が並ぶところ、木曜日の午後は全クラス共にこのフロアを利用する授業が無い事も解っています。真冬の今、昼休みとはいえ用も無くここを訪れる者など職員にも生徒にもいない事でしょう。たとえ誰かが近づいたとしても、その人がこの三階の階段ホールに辿り着くまでに足音で気づけます。だから、何も心配は要らないのです。

「見せてごらんなさい。ああ、もうこんなに苦しそう」

 私は制服のスラックス越しにその生殖本能が集中し昂った部分を指でなぞると、視線を上げて彼の表情を確かめました。ほおが紅潮し、目は潤み、吐く息はさっきまで以上に白く湿り気を帯びています。彼は小さく呻くように「先生」と囁き、私を見つめ返してくれました。きっと今、その瞳に映る私は恍惚に塗れた雌の顔をしている事でしょう。

 スラックスの内で真上に反り返り脈を打つ充血した固い肉のスポンジを徐々に上に擦り上げてゆくと、それまでより少しだけ柔らかい部分に辿り着きます。その境い目である段差を指が乗り越える時、ぶるんとした感触と同時に彼の身体が一瞬強く脈を打つのが伝わりました。
 もう一度「見せてみなさい」と促すと、彼は酷く恥ずかしそうにファスナーを下ろします。しかし既に平常時の大きさでは無くなってしまっている彼の器官は、引っかかったように顔を出しません。私はそれを解放してあげるため制服のベルトを緩め、スラックスのホックをそっと外しました。次の瞬間、今まで彼自身と同じように恥ずかしがっていたはずのそれは牙を剥いたかの如く弾け出て私の顔を真っ直ぐに指したのです。
 形だけを見れば爬虫類の頭部に似たそれは、鼓動と同じ一定のリズムで僅かに上下しながら獲物を捉えようとしていました。今この時、彼にとっての獲物とは私自身。彼は相手を捕食するのではなく、その体内に侵入し己の遺伝子を撒き散らす事を望んでいるのです。彼の本能は私に対して『自分の分身を孕み、胎内で育て、産め』と言っている。私は恐怖と歓びが湧き上がるのを感じ、喉が鳴るほど大きく唾を飲み込みました。

 私はその付け根に指を当て、今度は布に遮られる事なく直接触れた状態で同じように指を伝せてゆきます。痛みと擽ったさの間、ちょうど心地よいと思ってもらえる強さを探り、それを維持するつもりで擦ります。硬直し、ほとんど弾力が無いと思えるほど硬直した茎にも、真裏に当たる部分に少しだけ柔らかいところがあるのは知っていました。そしてそこがこの周辺では最も敏感であることも。

 茎の先には丸みを帯びた赤黒い果実がなっています。その先端には小さな割れ目があり、そこから透明な蜜が少量溢れていました。でも私は、それが本当は少量ではない事も知っています。茎を擦り上げた人指し指を果実に移し、残りの指を開いて包み込んで潰さない程度の力で握ると、また彼は小さく呻きました。そして果実の付け根から先端に向けて搾るように動かすと、更に多くの蜜が溢れ出してきます。私は親指の腹を先端の割れ目に当て、そっと円を描くように捏ねまわしました。にち、にち、と僅かな粘性を持つ事の判る水音がたちます。少しずつ溢れ続ける蜜はやがて私の親指の付け根に垂れるまでになり、それを五指に纏わせ果実全体を捏ねると更に大きく卑猥な音をたて始めます。

「ぬるぬるした方がずっと気持ちいいでしょう? でもこれは貴方の中から出てきたの。貴方、自分で出したもので気持ちよくなってるのよ?」

 そう嗜めると彼は羞恥あるいは悔しさからか、息遣いを荒くしたように思えました。でも本当は彼だけを責められる立場には無いのです。私には彼の出口よりもずっと大きな、でも形の良く似た入り口としての割れ目があります。私のそこは触れて音をたてずとも、彼とは比べものにならない量の蜜を溢れさせている事は解っていました。
 でもその入り口に彼を迎えてあげる事はできないのです。彼の本能がどんなに私に種子を植えつけたくとも、そして私の本能がそれを乞いているとしても。私と彼が教師と教え子である以上、今は彼の遺伝子を私のそれと交じらせる事はできません。

 絡む指を潤滑させていた彼の蜜は、互いの体温で次第に乾いてゆきます。音がたたなくなり、接着力の弱い糊のようにべたべたとし始めた茎と果実。本当は私の蜜が溢れる入り口に誘われたがっているそれを、せめて似た感触と温もりで包んであげたい。私はそう思いました。

 口の中にできるだけたくさんの唾液を溜めて、果実の先端に優しく口づけます。唾液が溢れないよう薄く唇を開き舌を伸ばしてそれを塗り広げると、彼の出口からも新しい蜜が滲んでくるのが判りました。私はそれを愛おしく吸い取ります。そして隙間を作らないよう唇をぴったりと彼の果実に沿わせて、少しずつそれを口内に飲み込んでいきました。
 彼が快感に震えながら「先生、あったかい」と呟きます。しかし口内を犯す彼の塊も、私には熱いものとして感じられました。なぜ互い共が温もりを感じられるのでしょう。一方が熱いと感じればもう一方は冷たく感じるのが普通であるはずなのに、とても不思議に思えました。
私は舌をできるだけ横に広げ、彼の裏側半面を包み擦るつもりで押し付けながら頭を前後に動かします。喉に当たるまで深く咥え込み、強く吸い上げながらゆっくりと引き抜いて。彼が一段階太くなる、最も敏感なその段差を唇で締め付けながら乗り越えました。そして撫ぞる相手を失った舌の先を彼の先端にある割れ目に少しだけ侵入させ、まだ出てくる前の蜜を味わいながらもう一度深く沈めてゆきます。

 1ストロークに数秒、でもだんだんと早くしてゆくとほんの十回目ほどで彼が艶やかな声をあげながら私の頭を両手で掴みました。女では抗えない彼の力で、今までで一番深く咥え込むよう引き寄せられます。彼の先端が喉を強く押し、私は若干の苦しさを覚えました。しかし次の瞬間、彼は私の口内で激しく暴れ狂いながら喉の奥に多量の粘液を撒き散らしたのです。それが少し落ち着きかけた時、彼は私の頭を掴んだまま自らの腰を前後に動かし始めました。最後の一滴まで出し切ろうとしているのでしょう、それは私の事を微塵にも気遣った動作ではありませんでした。でも彼が我を忘れてしまったのは紛れもなく私が与えた快感のせいであり、私の心には歓びの他に感情はありませんでした。

 彼が自身を引き抜くと、私の唇から少しだけ彼の白濁とした欠片が溢れました。自然界において苦味と辛味は有毒のサインであるといいます。しかし私は生臭さを帯びたその苦い粘液を、衝動のままに飲み干したのです。

すまん、何回かミスった上に本文長すぎって言われて2レスに分かれた。また他の感想も書きにきます。

官能ありだったのかここ

そんだけ長いのを書きたければ自分でスレ立ててうんぬん
官能が禁止かどうかは知らん
知らないが触発されて官能が出てくるようならいらない

 お客さん、これは今よりずっと昔から「昔々」と伝わるお話でさぁ。

 ある森に狼の群れがいやした。その狼の群れの頭は強くて賢く、おまけに格好いい。それはもう立派な狼だったんでさぁ。これがあまりにも凄い狼なもんで群れのメス皆がその狼にホの字になっちまいやしてね、他のオスの狼はモテないことモテないこと。

「おい、どうする。このままじゃ群れは子供が少なくなって滅んじまう」

「何、ボスならメス全員に子供生ませるくらい簡単だろうさ」

「お前さんそれでいいのかよ。俺はモテたいぜ」

「俺だってモテたいさ。モテモテになりたいよ」

 モテない狼たちは頭を悩ませる。するとこんな声があがる。

「そうだ! 婆様から聞いたことがある。なんでも森の沼にとんでもない木の実があるって」

「とんでもない木の実? なんだいそりゃ。食べたらモテるようにでもなるのか?」

「全部食べきることができたって話だがな」

 まさかまさかの凄い情報に狼たちは顔を見合わせる。デマじゃないのか、いやただ不味いだけの木の実ならこんな噂話出るはずがない。少しの間相談すると我先にと狼たちは駆け出しやす。
 そうして辿り着いたのが森の沼。森で一番大きな沼の真ん中にある小島に木が生えている。そしてその木には沢山の木の実がなってるんでさぁ。狼たちは沼を渡りなんとか木によじ登って木の実を手に入れる。ところがいざ食べてみると皆が吐き出しちまいやす。

「甘すぎる!」

 そう、木の実は尋常じゃないほどに甘かったんでさぁ。何とか食べようとしても甘すぎて吐き出しちまいやす。これは食べられたもんじゃない。頑張ってみる狼たちもどんどん諦めていくんでさぁ。
 だがまだ諦めていない狼がいやしてね。どうしてもモテたいんでしょうなぁ、この甘すぎる木の実を食べる妙案を思いつきやす。

 その狼は木の実を木の枝に突き刺して口にくわえ、森を駆け抜ける。モテない仲間の狼たちもそれに続いて駆けていくと山に辿り着いた。暑い熱い火山でさぁ。そして狼は毛皮が焼けちまうほど熱い風の吹き出る穴の近くに木の枝を突き立てやした。
 しばらく離れて待っていると木の実はどんどん焼けていって黒くなっていきやす。そう、焼いているんでさぁ。よく焼けて炭になった外側の部分と一緒に狼は木の実を食べる。甘すぎる木の実に炭の苦味が足されて「これは美味い」と狼はとうとう木の実をひとつたいらげやした。

 凄いと賞賛し次々に木の実を焼き始める他の狼たちを尻目に木の実を食べた狼の姿が変わっていきやす。毛並みはどんどん美しくなっていって――

 ――狼はそりゃもう美しいメスになりやした。

 こうして狼たちに伝わる昔話は木の実の正しい食べ方が追加されるのと同時に訂正されやす。経験者曰く、「モテモテになるのではなく、モテモテになってしまう」ってな話に。
 お客さんらもモテないからといって美しいメスになった親友を襲わないようにしてくだせぇ。寝ている間に木の実を口に放り込まれても、あっしは知りやせんぜ……

>>554-555
手が込んでるのとこだわっているのは感じるけど、内容も量も場所を選べばもっとよかったかなあとね。
それだけ書けるなら自分でスレ立てた方がまとめられただろうし外の評価ももらえただろうし、
なんかもったいないことしてるねって。

ここで書くにしては……というのを抜きにすれば、中身は普通にいいよ。面白い。
全部を比喩で通してるけど読みやすいのは羨ましい。
10レス完結でいいからその内容でスレ立てちまえよ。読むよ、俺は。

>>560
落語かよ。
語り口調の軽さと会話のテンポの良さ、好き。
内容の童話っぽさとかオチの分かりやすさもええね。
俺は好き。

「なにが青春よ。学校は学校でも私にとっては職場だってのに」

デミグラスソースの染みた割り箸に、憎らし気に歯を立てて呪詛を唱える学年主任。
コンビニで買ってきたのだろうハンバーグは、そのトレーの中でサイコロ状に細かく切り刻まれていた。
恨み声から察するに、どうやら先ほどの昼休み中に人目を憚らない学生カップルと出くわしてしまったらしい。
大台の30歳を目前に控えていながら恋愛経験がないことを飲み会の席で嘆いたのがつい先日。
焦りと妬みが同時に襲い掛かって来れば、確かに不平等な現実への不平不満を吐き出したくなってしまう。

「どうせあの子たちだって私と同じよ。十年もしたらすぐに私みたいになるんだからね」

誰か彼女を止めろ、という無言の押し付け合いを含んだ視線が教務室内を飛び交う。
プレッシャーを感じているのは彼女だけではないので愚痴に付き合ってもいいのだけれども、
今話しかければ面倒な事態に発展してしまうのは火を見るよりも明らかなので、
手元にある小テストの採点を進めることで不毛な争いから抜け出すことを選ぶ。

「先生、なに一人で丸付けなんてしてるんですかあ」

しかしその努力も甲斐なく、質の悪い絡み酒のごとく面倒事が向こうからやってきてしまった。
願わくば勤務時間中は喋りかけられたくなかったし、彼女ともそう約束していのだが、
長年の鬱憤がここにきて許容限界を越えてしまったようだった。

「私のイライラの原因は先生にもあるんですからね。早く責任とって下さいよ」

教務室内の空気が全て抜かれたかのようのしんと静まり返る。
分かってる。お互いに酔った勢いと言えども、わりとまんざらでもなかったのは認める。
動かないのは逃げるための先延ばしではなくて、身を固めるための準備期間だからもう少しだけ待ってほしい。
などの言い訳にもならない無責任な言葉を出すわけにもいかず、押しつぶされそうな重い空気の中で手帳を開く。
次の空白は日曜日。サプライズで諸々の予定をこっそりと進めていく計画はご破算となり、
もう煮るなり焼くなり好きにしてくれと手帳を渡すと、彼女は黒ペンで予定を書き加えた。
筆圧強く刻まれた『指輪選ぶ』の四文字に、傷んだ林檎を齧ったような苦みを感じた。

被った感がすごいから違うのかこうかなあと思ったけど練り直し面倒だからいいやってなった

>>561
感想どうもです。色んな書き方試してるので次も褒めてもらえるような作品を作れるようにしたいです。

そ次題↓

椿

 虹椿により選ばれた勇者は毒の蛇を祓う。その話が伝説となった時代。しかし伝説の毒蛇は今一度復活した。八つの首から生える牙の毒は霧となって世界を覆い、この世の生き物の寿命を半分にまで縮めた。多くの動植物が絶滅の危機に瀕し、人もまた滅びようとしていた。
 だが一人の勇者が選ばれた。虹椿から枝を与えられ、その枝を燃やした灰を鋼に混ぜ、七色の聖剣を生み出した。勇者は聖剣を振るい谷を進む。そしてついに毒の蛇の前に辿り着いた。

「蛇よ、何故世界を毒で覆う?」

「恐怖こそが我が糧となる」

 蛇は世界が怯えるほどに力を増す。しかし勇者もその分力を増した。恐怖に対を成す人々の希望が勇者の力となっている気がした。
 戦いは八夜続いた。半日をかけ首をひとつ落とす。何故か毒の蛇は勇者が一時撤退しても追うことをしない。休み休み戦い、ついに九日目の朝に最後の首は聖剣により落とされた。それを見届けた勇者はその場で眠りに付いた。

 勇者が目覚めると、蛇の巨体は姿を消していた。残るのは薙ぎ倒された木々の切り株のみ。聖剣が勇者に語りかける。

「私を中央の切り株に突き刺せば、あなたの役目は終わります」

「それで毒の蛇を封印できるのですね?」

「八百年、毒の蛇は現れないでしょう」

 勇者は切り株に聖剣を深々と突き刺した。すると空に虹が現れ世界から蛇の毒が消えていった。こうして勇者は伝説の再来として語り継がれた。
 だがまた八百年後、毒の蛇は再び姿を現すのだろう。そして新たな勇者がまた伝説を紡いでいく。

 二百年後、誰もいないその場所に声が響く。

「あと六百年……」

 挿し木から成長した椿は、二股に分かれていた。

私たち双子は似ているらしい。
鏡に映してるみたい、なんて笑われることもしばしばあったけれど、
私たちからすればお互いが全くの別人で、その言葉が理解できなかった。

「私たちって似てないよね」
「似てた方が嬉しかった?」

紙パックの残り少ないジュースをストローですする姉と、サンドイッチを両手でつまんで食べる妹。
保育園に入園してから大学に進学するまで同じ部屋、同じ教室、同じ友達と過ごしてきたのに、
食事の作法のひとつを取り上げてもこんなに違っていた。なのに周りは「似ている」と笑うのだ。
示し合わせたわけでもなく希望した大学の学部まで被ったときは「ああ、一卵性の運命なんだなあ」と
妙に納得してしまったけれど、それ以外に一卵性を意識する機会なんてまったくと言えるほどになかった。

「おしとやかに食べるよねえ。モテたいんだ?」
「違います。人の目を気にするべき場所だからです」

顔を覗き込んでからかわれても妹は雰囲気を崩さない。
それどころかテーブルに置いていたハンカチで姉の汚れた口元をさっと拭い取ると、
慣れた手つきて照り焼きのソースがついた面が内側に入るように畳んだ。
こんなに出来た子が姉に似ていると言われてしまうのが可哀想だと思わずにはいられない。

「私にはもったいないくらいのいい人紹介してあげるよ」
「なら私にも釣り合わないよ」

サンドイッチを食べ終えた妹は、ハンカチを開いて口を拭いた。
「気取らない優美さ」。今の妹には、好きだと言っていた赤いツバキの花言葉がそのまま当てはまる気がした。
じゃあ、今の私にはなんの花が似合うのか。椿に似た花を咲かせるサザンカだろうか。
気になってサザンカの花言葉を検索にかけると、答えを見つけるよりも早く妹がため息交じりに言った。

「私よりもきれいなのに、お姉ちゃんってもったいないよね」

>>567
oh…マッチポンプ…
オチは好きなんだが、椿である必然性が薄いのが残念
例えば油によって灯りが出来る→闇を祓う、とかいうこじつけや
首が落ちるように花ごと散る様及び血のように真っ赤な色から、犠牲者の無念の象徴とされる、なんて描写があれば
伝説に説得力増すし、最後の不穏さが増したんじゃなかろか

>>568
サザンカの花言葉:困難に打ち勝つ・ひたむき・素直・飾らない心
謙譲・あなたがもっとも美しい(赤)
愛嬌・あなたは私の愛を退ける(白)
…ほほう
コンプレックスの描写、花言葉の使い方が上手い
似ていないと思ってるだけで根っこは似てる気がするなこの双子

>>569
感想どうもです。見直しもしたのにご指摘されるまで完全に失念していました。
八岐大蛇を退治したスサノオの奥さんが二股の夫婦椿を植えたという逸話を見て衝動的に書いたせいだと思います。
今後は説得力を出すための描写を忘れるようなミスをしないように気をつけたいと思います。すみませんでした。

そ(ry
お題↓

鬼やらい

 人々が恐れを抱くほどに鬼は力を増す。だがそれも今は昔の話。
 鬼と聞き今の人々が思い浮かべる擬人化された姿は、人々から恐れを取り除くために陰陽師たちが世に広めたものだった。陰陽師たちは勝った。擬人化された鬼を追い払う儀式すらただの恒例行事に成り果て、鬼たちは陰陽師たちの広めた逸話のとおりの弱点を抱えることになったのだ。

 鬼は陰陽師に敗れたが、鬼は不幸そのもの。鬼は消えない。人々に不幸をもたらす己の役割を忘れたりはしない。

「おい! しっかりしろ! こんな見え見えの誘惑に負けるな!」

「くっ、この俺がこんな誘惑に、ひとつふたつみっつ、ああっ!?」

 若い鬼が庭に撒かれた煎り豆を数え始める。そして風が吹き豆が動き最初から数えなおしだ。若い鬼は己の役割を忘れ楽しそうに豆を数えている。
 酒、嘘、柊、申酉戌、そして豆。陰陽師に負け、背負うことになった様々な弱点。その弱点を突かれない限り己の役割を忘れたりはしない。しかし、今の世にはその弱点が多すぎる。

「若い奴は誘惑にやられたか。だが負けるわけにはいかない。この家の住人を不幸に」

「うわぁ!? いっ、犬だ!」

 窓から見える小型の座敷犬に怯える鬼たち。犬がお腹を空かせキッチンに餌を強請りに行っても鬼たちは怯えるばかり。勇気を振り絞り家に侵入できた鬼はわずか三名。

「お前らふざけんなっ! ちゃんとしろ!」

 飲み酔っているこの家の大黒柱の手元の酒に吸い寄せられる二名の鬼。そして大黒柱の酔った勢いに任せた大法螺に倒れ臥す。僅かな時間で残る鬼は一名のみとなってしまった。

「絶対に、絶対にこの家の者を不幸にっ」

 酒を飲んでいる大黒柱に不幸は届かない。だが鬼の誇りにかけてせめて一人でもこの家の者を不幸にしなければならないと決意し、最後に残った鬼は扉をすり抜ける。

「バレンタインとかマジ死ねよバレンタイン。チョコとか太るし、お菓子会社必死すぎ乙」

 鬼は目を逸らし部屋を出る。鬼は再び敗北した。だが最後に残った鬼だけは一人分の不幸により己が力を増していた。仲間から褒め称えられるが、その鬼の表情はおこぼれで一等賞を貰ったかのような微妙な表情であった。

鬼ですらそっ閉じする嘘か…哀しいな…

高校の入学式から一週間も待たぬ間に、兄の紹介によってとある部活の
マネージャーになった私でございますが、なにやらここ数ヶ月間で部活内の
雰囲気が変わりつつある気がするのです。

以前と何が違うのかと聞かれてもはっきりとお答えができないのですが、
先代の部長が抜けてから部活内の空気が落ち着いてしまい、目先の一勝に
対しての執着が剥がれかけているように感じ取れました。

「先代たちが築いてきた歴史が途絶えてしまう恐れがあります!」

危機感に駆られた私は、バインダーを机に打ち付けて立ち上がりました。
全国大会に出た回数こそ指折りで数えても片手に収まってしまいますが、
県大会で万年二位、稀に一位の成績を維持している私たちは、同地区内の
他校からすれば強豪校と称えられる立場に居るのです。居てしまうのです。

「そんなことを言われてもねえ。俺たちは楽しく部活がしたいだけだし」

ミーティング中だというのにガムを噛みながら話すのは現部長。
机の上に足を投げ出してスマートフォンを弄っている姿に、高校男児の
青春に欠かせない勝利への飽くなき渇望は見て取れませんでした。

「楽しく部活がしたいんですよね」

『自分に厳しく、部活は楽しく、ご飯は美味しく』が先代たちのモットーで、その言葉は
入部申請書を渡される前の見学希望を行っているときに聞かされているはずです。

「あー、そういうことね。だから俺の凡ミスで先輩方の引退試合が早まったのはメンゴって」

部長はいけしゃあしゃあと言ってのけました。この人の陰謀で負けた後、兄は部員に頭を下げたのです。
負けた後の見栄っ張りの笑顔を思い出して、私はあまりの悔しさにバインダーを強く握りしめました。

次かな?
お題↓

チョコ


時期だしな

 夏休みの自由研究。ボクはクラスメイトの観察日記をつけることにした。明日から色んな場所に行って、見かけたクラスメイトのことを書いていこうと思う。

 初日から凄いところを見てしまった。名前を出したらイジメになりそうだから書けない。ボクは変には思わない。周りは気にせず、二人が幸せになりますように。……見たぞ?

■■■■■■■■■■  ■■
  ■■■■■■■■■■
    ■■■■■■■■■■

 三日目、幼馴染のアイツが遊びにきた。そして勝手に観察日記を見てチョコアイスを落とした。二日目に書いたことが消えた。しかもそれを「バレンタイン、プレゼントってことで」と。アイツの中では今はまだ寒い季節らしい。くすぐってから布団で簀巻きにしておいたた。

 四日目、アイツそのままボクの家に泊まった。勝手にボクのバニラアイスも食べていた。「ホワイトデーのプレゼントってことで」とか。ヘッドロックかけておいた。

 ~(中略)~

 夏休み最終日、なんでまたボクはコイツと一緒にいるのかわからない。クラスメイトの観察というよりもコイツの観察日記になってる。

 けど、アイツは最後の最後に、冷凍庫の奥をよく探してみてと言ってきた。冷凍庫の奥には、ラッピングがくしゃくしゃになって砕けたチョコがあった。手紙も入っていた。アイツの文字だ。信じられないくらい真剣な言葉が書かれてた。

 今、夏休みだぞ。家は冷凍食品多いから、こんな奥に入れたら気付けないよ。明日から新学期だ。アイツは何ヶ月も悩んだんだ。夏休みの最後だから勇気が出せたんだ。
 ボクとアイツは似ている。アイツは何かないと素直になれない。チョコも素直には渡せない。夏休み最後の日という魔法の日だから言えたんだ。ボクもきっと、今日しか言えない。
 外は夜で危ないって言ってたけど、どうしても今日しか言えない気がした。

 きっとボクたちはあんまり変わらない。でも日記を読んだ先生なら少し変わったってわかる。先生にだけ最初に教えます。だから先生、どうかこの日記は誰にも見せないでください。
 でないと登校日のアレ、バラします。

一月も止まってんのか
お題↓

明かせない嘘

 家族に嘘をついてしまった。今となっては明かすことのできない嘘だ。何故なら、

「なんであの子が……」

 死んでしまったからである。家族に私の姿は見えないし私の声も聞こえない。何故私は婚約者ができたから今度連れて行く、なんてすぐにバレる嘘をついてしまったのだろう。そして調べればすぐに嘘だとわかるだろうに何故家族は未だにそれを信じているのだろう。

「あの、婚約者の方のご親族が同時葬式を提案されているのですが、どうしますか?」

 ん? 何やら不穏な話になってきた。私の婚約者の親族? 同時葬儀?

「最期までこの子を守ろうとしてくれた人ですもの。二人もきっとそれを望んでいます」

 最期まで、私を守ろうとした? 私は、一人でバスに、

「この鍵、たぶん合鍵だと思うのでお返ししますね」

 やめて、やめてっ! 嘘ついたことは謝るから、だから同時葬儀なんてやめて!

「きっと、二人仲良く旅立ってくれることでしょう」

 私の姿は誰にも見えないはずなのに、後ろから視線を感じる気がした。

ストーカーか?こええなあ

細かいけど、同時葬式より合同葬式のが良いかな、合同結婚式のごとくw

>>582
感想どうもです。はい、ストーカーです。
合同葬式とするとバス事故だから他の人たちも一緒に埋葬するイメージとなってしまうかなと。
今思えばバス事故という設定自体を変えて死者を二人だけにすればよかったんですよね、次はもう少し頑張ります。

だいぶ滞っているね
お題↓

梅雨

 時に、雨が長く続く。暑い季節の前にやってくる。体が冷えるが、食べ物は多くなる。だが食べ物よりも楽しみにしていることがある。今日も、あの場所へと行く。

「やあ、おひさしぶり」

 あいつはいつも高いところにいる。この季節はずっとぶら下がっている。だから誰が来てもすぐに挨拶してくる。あいつより先に挨拶してやりたいが、あいつには熱がない。いつも先に見つけられてしまう。
 今日も、あいつと話をする。

「今年もカエルを食べにきたのかい?」

「何も食べない奴は気楽そうでいいな」

 軽口を叩きあう。それが楽しい。体は冷えるが、この季節は毎日のように通う。カエルを食べにくるという言い訳を用意して、次は何を話そうかと考える。冬眠中もよくあいつの夢を見る。

「君は、長生きするんだってね」

「変な虫や鳥よりも生きると思うけど、そっちは生きてすらいないだろ」

 長く生きた他の蛇は、結構死んでいる。あと何回かこの季節がきたらきっと自分の番だ。最初から生きていないあいつを残して死ぬことになる。

「生きてないんだから寿命もないんだろ? 羨ましい」

「君は自由に動けるだろう? 自分にないものは羨ましいものさ」

 どうでもいいような話ばかりを楽しむ。今日は少し寂しい話になったけど、明日もまたこよう。死んであいつに会えなくなるまで。そして、あいつの下で死のう。そう思っていた。

 雨が続いていた。挨拶が聞こえない。あいつがいない。まだ雨が続いているのにあいつがいないなんておかしい。冷える体を動かしてあいつを探す。探して、みつけた。初めて近くで見たあいつは、泥だらけでボロボロだった。

「よう」

「……あぁ、こんにちは」

 初めて先に挨拶できた。けど、こんな形でなんて望んでなかった。

「もうお前自由じゃん。よかったな、喜べよ」

「そうだね、じゃあ、行きたいところがあるんだ。連れて行ってくれよ」

 何かを運ぶなんて、今まで全然やったことがなかった。泥だらけのあいつをくわえて、雨の中を行く。あいつは、晴れが見たいらしい。空が見たかった。雨の空はもう見ることができたから、晴れの空が見たい。
 晴れた場所になんて連れて行けない。けどこのままここにいたらあいつは人間に捨てられる。誰にも見つからない場所まで運ばないと。そう思って、あいつを巣に運んだ。

 雨は続く。もうあいつの体はグシャグシャだ。きっと、長くは持たない。命のない物に終わりが来るなんて考えもしなかった。雨だっていつか終わるって知っていたのに。
 翌日、晴れた。あいつはもう何も話さなかった。暖かい空の下で、あいつの残骸の傍で語りかける。見えているか? 晴れの空。
 もう、雨を楽しみに思うことはなくなった。

>>586 >>587
二回読み返してようやく蛇だと気付いた。わりとはっきり書いてあるのに……
読み方が雑になってるな……気をつけます

読後感が悪くない。梅雨のお題らしく、寂しげな結末になってるのも好印象。梅雨時の晴れの日という普通は前向きな要素が、別れを際立たせているのも面白いと思う。
地の文に短文が多いのは意図してなのだとは思うけど、もう少し改行すると読みやすくなると思う。……こういった書き方の文学作品に難癖付けるような感想だけど、正直他には改善点は見当たらなかったです。すっげえ
拙い感想ですがご容赦を。何せ初レスなもので……

>>588
感想どうもです。お褒めいただけて嬉しいです。
改行に関しては、あまり改行しすぎると2レスにも収まらなくなっちゃうので。
もっと読みやすい形にできたのかもしれませんが、申し訳ないです。

僕は君の事を想う。
去年会った君とはまた別の、新しくて少し懐かしい君を。

去年の君は、それまでと同じようにやっぱりきまぐれで、冷たい時もあれば温かい時もあって。
人を笑顔にしたり、ため息をつかせたり。時に傷つけてしまう事もあったね。
それでも僕は毎年、君の事を想う。今年の僕は、今年の君を。

空調の利いたオフィスビルの中から見上げる空は、春の名残なんかこれっぽちもない抜けるような青空。
でもこの空の向こう、ずっとずっと南の空の下。君は今まさに、僕の方へと近づいてきている。

こんな風に言うと、湿っぽくて温かい君は「ありがとう、私も早く逢いたい」って言ってくれるかもしれない。
それともドライで冷たい一面もある君は「自意識過剰ね」って突き放すのかも。

ビルから外に出ると、からっとした暑さが僕を襲う。でもこれは、君に出会うために必要なこと。
大きく息を吸い込んで、排気ガスの臭いの中に君の香りを探す。
湿って、温かくて、懐かしい、あの夏の雨の香りを。

街頭に設置されたモニタでは気象予報士が当たらない予報を喚き散らしている。
そしてこの街に君がやってくる事が宣言された。

僕は君の事を想う。今まさに、生まれたばかりの君を。
おめでとう。おめでとう。お誕生日おめでとう。


「ハッピーバースディ、梅雨」

読みやすいね
途中でネタに気づいて、にやっとなったw

>そしてこの街に君がやってくる事が宣言された。
勿体をつけて「そして」のあとに「、」とか「ついに」とか入ってたら、好みだったかな

>>590
電車の中でふふってなったじゃねーか!

今まさに生まれたばかり、という表現と去年の、って表現を両立するのがいい感じ
でも梅雨にこれだけ思い入れがあるなら毎年の梅雨明けの寂しく思う心情とかも書いたほうがより今の梅雨への思い入れが強く感じた気がする

他には視覚と聴覚と嗅覚と色々な感覚に結びつけた描写が割りとクオリティ高くて好きかも

羽を回す換気扇越しにしとしとと降る雨音が聞こえてくる。
雲のかかる空は薄暗く翳り、多湿になりがちな梅雨の時期は、どうにも気分もつられて陰鬱気味に下がってしまう。

「私としては、まだ希望が残されていると思うのです」

台所に立つ同居人が寸胴鍋を見つめて唾を飲み込む。
おそるおそる蓋の取っ手に手を延ばしてみるものの肝心の決心はまだ準備中のようで、すぐに手をひっこめる。

「諦めろ。二日も火を通してないんだからとうにカビてら」

しつこいほどに「数日間じっくりと煮込んだカレーを食べたい」と駄々を
こねるから作ってやったのに、毎朝毎晩の過熱を忘れていたらしい。
ペットをねだる子供みたいに「ちゃんとお世話するから」なんて甘えたあの潤んだ瞳はいったいどこに捨て去ってきたのか。
言うは易しの責任感の希薄さは、むしろ子供と同程度だろう。

「あ、あの」

「新しいのなんか作らねえぞ。そして、まずそれをお前が処理しろ」

「ううぅ……」

雨音に混じってかき消えそうな弱った呻き声。まるで俺が悪者だ。
外を吹く風に急かされて雨粒がガラスをバチバチと叩く。

「……ったく。片付けてやっから、どけ」

脇の下に手を差し込んで持ち上げ、布団の上に投げ飛ばす。
軽々と飛んで行った同居人は、うつ伏せに落ちてからぴくりとも動かない。
案の上白い毛を生やしたカレーをまったくやる気なく処分していると、冷めた声で「またカビさせちゃったね」と聞こえてきた。
片付けを止めて布団に倒れ込み、かびた同居人を抱きしめる。これだから本当に、梅雨ってのは苦手なんだ。

梅雨といえばカビ
同居人ということは一緒に住んでるはずなのに代わりに加熱はしてあげない
でも片付けるのはやってあげる、もしかして少しの間家を空けてた?
陰鬱なのは梅雨のせいだけじゃなくて会えなくて寂しかったからなのかなとか思うと、より微笑ましくて味が出ていいね

そろそろ次いきますか
お題↓

うた

 声を失った。今は機械仕掛けの人工声帯もあるから声を失う人なんていないと思っていたのに、健康なはずの喉から声が出ることはなかった。
 魔女に声を差し出した人魚姫を思い出す。もしも魔法で声を奪われたのならこうなるのかもしれない。
 ストレス性の失声症。そう診断された。一体どんなストレスを抱えているというのか。家族関係は良好、友人は少ないけど孤立はしていない、将来への不安も特別強いわけじゃない。なのに何故声を失うほどのストレスがあるというのか。医者が信用できなくなりそうだ。

「何に悩んでいるのか、わかるといいね」

 両親も、その程度しか言えない。原因も何も分からないのだから仕方がない。医者がストレス性だと診断した以上、素人が自己判断でそれを否定するのは危険だ。だから両親は仕方ない、けどどうしても自分ではそんなに強いストレスを抱えているなんて思えない。
 今はテキスト読み上げアプリでなんとかカバーしたりしている。クラスメイトも面倒そうな表情ながらも理解してくれた。ラインのやり取りも問題ない。声を失っても、案外問題なく暮らせた。
 声を失った影響は、ただ生活が面倒になっただけ。ただ変な目で見られるだけ。医者は自然治癒するから安心していいというけど、それが本当なら早く治って欲しい。

 そう思いながらも時は過ぎ、声を失った原因もつかめず治りもしないままに数ヶ月が過ぎる。自然治癒といっても個人差もあり年単位が必要だったりするらしい。
 とはいうものの、正直もうどうでもいい。面倒なだけで声が出ないことでそんなに不便に思うこともない。周囲は声が戻るといいねの一点張りだけど、最近は別に治らなくてもいいかなとすら考えている自分がいる。
 テキスト読み上げアプリがない時代ならともかく、今の時代で何故声の有無が重要視されるのかわからない。現に問題なく暮らしているのに、それでも声が戻るといいねとしか言われない。そんなに同情したいの? 皆が優しいのはわかったからもっと他の困った人に同情して助けてあげて欲しい。

 あと一月で一年が経つ。声は戻らない。けど、よく観察していると皆の様子が少し違う。正確に言うなら、声を失う前の皆と比べると少しずつ様子が違う。同情されているというのとはまた違う部分で、違う。
 先生は昔鈍かったはずなのに何故かイジメのような雰囲気に敏感になった。馬鹿やっていたクラスメイトは無難な話題しか話さなくなった。病院に行ったりでお金がかかっているのに、両親は何故かお小遣いを増やしてくれた。どれも、どこかおかしい。
 皆のおかしさに気付いてから、皆の言葉が金箔のように感じるようになった。キラキラしてて綺麗だけど簡単に破れてしまうような、薄い言葉に。何故だろう、皆の変化にはきっと理由がある。一年経つまでに調べてみようと思う。

 一週間観察してみたけど、わからない。探偵でもない素人が調べても分かるはずがないのかもしれない。でも、気になる。
 少しでも手がかりはないかと昔のメールを読み返すことにした。日付を遡っていくと、大体一年前で途切れる。何で途切れたのだろうと考えるが、昔はガラケーを使っていたからこの時に機種変したのだろうと、納得しかけて、また疑問。何でそんな最近のことを忘れていたのだろう。声を失った時期と被るから、そのせいだろうか。
 机の引き出しから昔の携帯を探し出す。随分奥にしまわれていたそれは既に充電が切れていた。充電器は見当たらないけどガラケーの充電器くらいコンビニにも売ってる。使い続けるわけでもないから適当に買ってきて、早速中身を見る。見て、妙にメモ帳を使っていることに気付いた。

 『ずっと好きでいれば結ばれる。そんな世界なら結ばれたかな? 簡単に別れる人に恋人ができるのに、神様になれたらそんな人より一途な思いを応援したい。そんな人よりずっと愛し続けてみせるから。神様、どうか死んでください。一途な誰かが新しい神様になりますように』

 身に覚えのない詩(うた)が打ち込まれていた。うた? このポエムが? そう、ウタだ。覚えていないのにこのポエムが歌だと知っている。書いたときはただの詩だった。けど、あの日に詩は歌になった。急に雨に降られて、携帯が無事か確認しようとして、それを突然取り上げられて、返してもらえないまま、詩は歌になった。皆の前で。
 気が付けば歌は別人の悲鳴に変わっていた。右手の平に小さな赤い痕があった。ペンの後ろを手の平に、ペン本体を中指と薬指の間から突き出るように握って、拳を突き出す。ペンを深く突き刺すための握り方なんて何で知っていたのだろう。その瞬間まで意識もしたことない知識が無意識に発揮されたから、気付いたときに一瞬何があったのか自分でも飲み込めなかった。

 両親が急にスマホを渡してきたこと、声を失っただけなのにしばらく学校を休むように言われたこと、医者が無意味とも言える質問を何度も繰り返したこと、声を失っただけなのに皆が執拗なレベルで親切になったこと、最低限のデータしかスマホに移されていなかった事、一人少ないクラスに疑問を抱かなかったこと、記憶のない一月があるのに疑問に思わなかったこと、何故、声を失ったか、皆が悩みを自覚し声を取り戻せるといいねと言い続けた理由、あんなに好きだったあの人の事を今まで考えなかった理由。

 ――そんな真実を、思い出して、気が付けば右手に、ペンを――
 ――耳の奥で、焼きつくように、ウタが、リピートし続けている――

 ウタの好きな彼女に愛を訴えようというのだから、僕もやはりウタをウタわなければならないだろう。
 しかし歌えども詠えども謡えども、どうにも上手く伝わらない。
彼女を謳う胸の高鳴りが、宴のように騒いでいる所為だ。
 水面をたゆたう泡沫のように、想いが先へ進まないのだ。
 自分の魅力を疑いながら、それでも彼女にウタい続ける。
 今日は歌おうか、詠おうか、唄おうか。

勢いも死んでるし惰性で行こうぜ
そ次題↓

お盆の親戚

「まずいっす。こんな、こんな……」

 パソコンのモニターの前で硬直する。目を見開きその表情が歪む。
 まさにピンチ。誰が見てもただ事ではないと判断するような顔色で何度もモニターを確認してはそれが間違いであって欲しいと願い、その度に現実を突きつけられ絶望する。

「お盆の親戚、ちょっと遠いから気軽に行けなくて、今年もやっぱり行ってないのに、このお題」

 書いてみようという気持ちを真正面から叩き折られ、キーボードに突っ伏す。そしてお題を取った人物に身勝手な恨み言を散々吐き出した後に自己嫌悪で再び崩れ落ちる。お題を出してくれた感謝ならともかく、お題を出した人にとって責められるいわれはない。
 やる気をなくしダラダラと寝転がっていると、思いついた。自分の体験をモデルに出来ないのならば他人の体験をモデルに書けばいい。

「こんな時こそ先輩の出番っす! このボクの役に立てるなんて先輩は幸せ者っすよ! うん」

 無駄に自信満々で自意識過剰な発想に突き動かされるようにしてメールを打つ。まだかまだかと返信を待っていると、ほどなくしてメールが届いた。そこには一言、こう書いてあった。

「メシマズの影響で親戚の家には、いけない」

 一言「ごめんなさい」とメールを返し、無表情のままに他の誰かの作品か、次のお題を待つことにした。

やめておけばよかった、なんてのは薄っぺらい反省だと思う。
既読のつかないLINEを眺めながら、私は後悔の溜息をついた。

大学に進学を決めた姉貴を東京へと見送ったのが五年前。
都会に関する噂話でいいものを聞いた試しがなかった私は、
田舎から離れようとする姉を必死になって説得しようとした。

ひったくりや痴漢の類は日常茶飯事。
田舎から出てきたお上りは都会人の食い物。
打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた生活に憧れるなんてまともじゃない。

どんな言葉をぶつけても姉貴は表情を崩さなかった。
感情に任せすぎた訴えには姉貴に対しての暴言も交じっていたかもしれない。
それなのに私の一方的な訴えを黙って聞き続けた姉貴は怒ることもなく、
たった一言、「知らないから怖いんでしょ」とだけ言って荷造りに戻った。

LINEの履歴を辿りながら遠く離れた姉貴との記録を反芻する。
オシャレなバーを見つけたこと。綺麗な色のカクテルの写真付き。
都会にだって自然が多い公園があること。はしゃぐ子供たちの姿。
大学の先輩と付き合いだしたこと。恥ずかしそうに笑う男の人。

『姉貴なんか帰ってくるな』

姉貴は都会に明るいものを見ていて、本当にそれがあった。
だけど私は受け入れることを拒否して理解しようとしなかった。
たぶん姉貴は今年も帰ってこない。私が言ってしまった通りに。
立ち上がりかけて視界がくらみ、手のついた先に置いてあったコップをはじく。
こぼれたジュースはテーブルに広がって、その端からカーペットへと滴り落ちる。
もしやり直すことができたらなんて都合のいい妄想を繰り返しながら、
ジュースを吸い取るカーペットを見つめ続けた。

>>603
ノンフィクっぽい感じが面白くて好き
後半の切ない本音っぽさもシュールで好き
お題は出す側も出される側も難しいけど書けたら楽しいもんよね

>>604
帰ってこない親戚側の視点、なるほど。
こぼれた液体が戻らない様が後悔と重なる所とか、分かりやすいのにおしゃれな工夫ですね。

>>605
感想どうもです。お題には感謝するばかりです。本当です。本当ですよ?
他の人がどんな風に書いているのか想像する、ということをしてみるのが意外と楽しかったです。
今回のこの子は書けていませんでしたけど。次も誰かに褒めていただけるような文章が書けたらなと思います。

夏休みも後半戦が見えてきてるぞ
そ次題↓

制限時間

 授業のチャイムが鳴る。次は現代文の時間だ。現代文の時間のはずだったのだが、何故か教師が和服で入室し、扇子で教卓を叩いて授業の始まりを告げた。今まさに、この場での最高権力者による気まぐれからデスゲームが幕を上げた。

「皆さんこんにちは現代文の時間がやってまいりました、教員の鹿井です」

 一気に授業というよりも休み時間に近い雰囲気に戻ってしまう生徒達。

「いい答えの人には座布団を差し上げます。悪いと取ります。座布団がなければ椅子も取ります」

 だが、いつもの授業と同じだと思ってはいけない。場合によっては座って授業を受けるという当たり前の光景すら遠いものとなる。絶対に避けなければならないのは、ジェノサイドの引き金となるような性質の悪い答え。

「人というのは普段答えられる問題でも制限時間がつくと急に答えられなくなったりしますよね」

「クイズ番組あるある」

「そこで皆さんには『制限時間』をお題に何か問題を作ってもらいます」

 生徒達に緊張が走る。

「その問題を聞いた後、で答えは? と訊きますので答えをどうぞ。制限時間は授業終了までです」

 誰も、手を上げない。急に言われてもそんな短時間で答えが浮かぶほどにこのような状況に慣れている生徒はいない。そして真っ先に答えを言うのは気恥ずかしいという独特な感覚もこの沈黙の要因となっていた。そしてそれが、悲劇を生む。

「田山先生全員の椅子取ってください」

「理不尽!? 待って、はい! はい!」

 鹿井の我慢の制限時間を越えてしまったようだ。ジェノサイドを回避するため咄嗟に挙手してしまう一人の生徒。こうなれば何が何でも答えを捻り出さなければ、椅子がなくなる。

「はい。答えがあるのに絶対に答えられない問題とは何か?」

「で、答えは?」

「制限時間が1プランク時間な問題」

「プランク時間って言いたかっただけでしょ。まあいいや田山先生、倉野さんに座布団一枚」

 一人の成功を皮切りに生徒たちは少しずつ手を上げ始める。判定基準は意外と緩いのか、答えた生徒はほぼ座布団を貰っていた。そんな中、空気に乗せられお調子者の生徒が挙手をする。

「はい。この問題の制限時間は答える人によって変わります。この中では先生が一番少ないです」

「で、答えは?」

「制限時間=余命です」

「田山先生全員の全部持っていってください」

 地雷を踏んでしまった。しかしこの問題の制限時間である次のチャイムまであと僅か。少しの間立たされる位ならばどうということもない。既に生徒たちからは緊張感というものが抜け落ちていた。
 そしてスピーカーからは生徒たちが待ち望んだ音が流れる。

「では皆さん座布団も椅子もないようですが本日の現代文はここまでです。また来週」

 退室する教師と入れ替わるようにして、続く授業の教師が姿を現す。生徒たちが凍りつくのを尻目に、扇子が教卓に叩き付けられた。

「続いて数学の時間がやってまいりました。教員の合馬です」

もう夏じゃないね
そ次題↓

明治・大正

 犬は人類の友。犬と人間の関わりは西暦が始まるよりも遥か昔から始まったと言われている。
 猟犬として、番犬としての歴史はとても長い。ところが警察犬となると途端に最近の話になる。
 1896年、明治29年のドイツでのことだ。日本では大正元年にイギリスから購入した二匹が始まりとなる。

 当時の彼らは今のように犯人を追跡したり遺留品を探したりする役割というよりも、パトロールの友として防犯広報目的で運用されていた。その後戦争により一時廃止され昭和に至るまで警察犬が本格的な事件解決を担うようにはならなかった。

「もしも、その時代に生まれていたら、お前は幸せだったのかな?」

 警察犬の使命など忘れ、明治の終わりを悠々と散歩する姿を思い浮かべる。
 それとも警察犬が事件を解決した始めての例として名を残しただろうか。誇らしげな表情が新聞に掲載されたかもしれない。

 そんな、意味もないことばかりが頭をめぐる。

「偉かったな。先輩たちに沢山自慢してこいよ」

 初めての功績を褒めてあげられなかった不甲斐ない奴の事なんて忘れて、沢山褒めてもらえよ。

「先輩邪魔です。大人しくしててください」

「あっはい」

 両腕を骨折し、今回の功労者を撫でてやることもできない不甲斐ない奴の妄想は終了した。

よし次いこう
そ次題↓

宇宙

むかしむかしあるところに、ジャックというおとこのこがおりました。
ジャックはいつもそらをみあげて、よぞらのほしやおてんとうさまにむちゅうです。
ほしをつかみたい。おつきさまでうさぎとダンスしたい。でもどうすれば?
いくらなやんでも、いくらかんがえてもだめでした。
むらのちょうろうもだれもしりません、どんなほんにもかいてありません。

ある時ジャックはおもいました。
絵本のジャックと豆の木みたいにマメを植えよう。
高く、高く……ずっと高くのばして、それで星までとどかせよう!
ジャックはうらにわに豆をうえました。

豆の木は高く伸びていきます。ジャックの頭をこえ、屋根をこえ、でも星にはとどきません。
ジャックは考えました。考えて調べてまた考えて、分からない事は質問して、色々なことを学びました。

風で倒れないよう、蔓を硬くする方法を作り出しました。
飛行機がぶつからないよう、航空灯を設置しました。
空気がなくても育つように、太陽の光を電気に変えて貯められるように、まっすぐまっすぐ伸びるように、からみあう沢山の蔓の中を、弾丸のように列車が駆け抜けられるように。
何年も、十何年も、何十年も。夜空を見上げ、星に手を伸ばし続けました。

しかし、ジャックはついに星を掴むことは出来ませんでした。
豆の木に登って分かったことは、星はあまりにも遠くにありすぎると言うこと。
それでもジャックは諦めません。いつか、いつか自分の後ろを歩く誰かが――――

最期までそう言い続けたジャックの意志を継いだ誰かが今日も、36,000kmまでこの豆の木を昇ってくるのです。

星を掴むために。

本当はかっこいい童話になっとるw
軌道エレベーター豆の木か…

 どこまでもどこまでも大地が続く世界。果てがない大地が続く世界。
 とある王は旅人に訊ねた。この大地に果てはあるのかと。この世界はどんな姿をしているのかと。

「さて、旅人はなんて答えたと思う?」

 付き合い始めて一月になるが、一体何度このような哲学的なようなそうでないような問いを聞いただろうか。軽く両手の指の数は超える。無論両手両足合わせてだ。

「そうだなぁ、まずその旅人は王様の質問の答えを知ってるの?」

「知らなかったら知らないって言うだけだから今回はそのパターンは考えません」

 果てのない大地を旅する旅人は大地に果てがないことを知っている。ならばひとつめの問いには果てがないと答えるのだろう。だが果てのない大地が続く世界はどんな姿をしているかは――

「旅をしているから、世界が丸くループしていることを知っている。だから旅人はそれを教えた」

「うん。現実ならそう。でも、本当に大地が無限に続く世界だったら?」

 今回の本題はこれらしい。本当に無限に大地の続く世界の姿とはどんな形か。

「空もどこまでも続くの? その上には宇宙も果てなく続くの?」

 無限の長さの大地という板に無限の長さの空を重ね、無限の長さの宇宙を重ねる。そんな形をしているのだろうか。
 しかし、本当にそんな世界だというなら、どのように大地に果てがないと知るのだろう。そこにある大地が無限であるという証明を、旅人はどのようにして行ったのだろうか。
 果てがない。だが果てを確認できないだけで本当は果てがあるかもしれない。大地が無限であることが真実だと仮定するこの場の二人とは異なり、旅人にはそれを証明する手立てなどないはずだ。

「――そうだね、本当に果てがないっていうのは想像しづらいから少しだけ現実に寄せよう」

「現実に寄せる?」

 まず考えるのは、宇宙の果てはどこにあるか。どこまでも広がる宇宙、その端に、大地がある。宇宙の中に星という大地があるのではなく、大地が宇宙を包み込む世界。

「こんな世界なら、面白いと思わない?」

 意味があるとは思えない問い。それでも自分なりに真剣に考えて答えを出してみる。なんだかんだでこの意味不明の問いを楽しんでいる自分がいるのだろう。ただ、一番楽しみなのは――

「そんな世界なら、旅してみたくなるかも!」

 楽しそうな、この笑顔を見ることだ。

>>618-619
軽快な会話調が良いですね。
恋愛小説か青春を題材にした小説にありそうな文章だと思いました。

>>620
感想どうもです。くだらない話でも楽しめる二人は書いているほうも気楽に書けた気がします。

陽が沈んで夜が巡ってくると、彼女は飽きもせず空を見上げた。
何をそんなに惹かれるものがあるのかと真似したこともあった。
けれども、満天の星空はいつもただ綺麗なだけで面白みなんてなかった。

「見えてるものが違うからかな」

星以外に見えるものなんて、ただ暗いだけの空しかない。
瞬いている星をまばらに散らしたような夜空の
大部分を占める、明るさなんて何一つない広大な
暗闇は、氷点下に保たれた恐ろしく寒い空間らしい。

「見上げてると安心するんだ。今日も私はちっぽけでしたって」

彼女は安心に和らいだ表情で空を見つめていた。
温かいお茶を手渡されたようなのどかな微笑みだった。
元気に白い歯を見せて活発に笑う姿をテレビ越しで
見せていた彼女とは思えない対照的な穏やかさは、
こちらが本来の性格に感じるほど自然なものだった。

「星にも寿命があるんだよ。超新星。爆発。どっかん」

とっくに使い古された表現だけれど、テレビに
映っていた彼女は確かに光り輝く星だった。
多くの人に明るさを振りまく、多くの星に紛れた星。
そのたったひとつの星の最後は、彼女の言葉通りに
誰よりも目立つだけ目立って世間を騒がせから消えていった。

「楽しかったけど、けど、宇宙は人の住める場所じゃなかったよ」

彼女の震える肩ごと胸に抱くと、ようやく地面を向いて涙をこぼした。

>>622
芸能界を輝く星空のステージとたとえるのはよくあるけど、その負の側面まで宇宙でたとえるのは凄い。シンプルに凄い。

2週動きないし、そろそろ次のお題っちゃう?

過去のお題の中から任意にひとつ選んで書く

このクソスレをわざわざ掘り返すのか……

 水の悪いとある町。水屋の百平は水を汲むために登る山で石を拾ってきては磨いて眺める趣味があった。綺麗に磨ければ暫し神棚にそれを飾り、新しく石を磨けば古い石は捨て値で小遣いに変えていた。
 ある日、百平がいつものように石を磨いていると手元を誤り磨いていた石を割ってしまう。すると石の中から毒虫が現れ百平に噛み付いた。
 百平はその場に臥しその命は尽きようとしていたが、百平の下に近所の悪餓鬼が訪ねてくる。悪餓鬼は拾った石みっつと磨いた石ひとつを交換する百平のお得意様だった。
 悪餓鬼は百平の指を喰らう毒虫に目をつけると神棚に供えてあった石を手に取り毒虫を叩き潰した。すると不思議なことに割れた石は砂となり指の形となり百平の手は元通りになった。
 百平は悪餓鬼に大変感謝して神棚の石を悪餓鬼に持たせ、いっそう心をこめて石を磨き神棚に石を飾るようにしたそうな――

○月●日
××府××市――村某金物屋で男性の遺体が発見された。
発見時点で既に死後数日は経過しており直接の死因はアレルギー反応によるアナフィラキシーショックであるとされるもアレルギーの原因は不明。
また遺体の一部が欠損しており欠損部位は今だ見つかっていないこと、未完成の金物一点が不自然に破損していることから警察は事件、事故両面から捜査を開始――
――また、最近ボランティア活動で男性と共に山へ登ったというDさんに話をうかがうと――

 ボクは学校では優等生と言われている。でも実は皆に内緒で悪いこともしている。
 ボクはスプレー缶が壊れたときのプシューって音が好きで、よくゴミ捨て場から缶を拾ってきては壊して音がなるかならないかを楽しんでから元の場所に戻している。
 大人に見つかったらきっと怒られるから誰にも見つからないような場所でこっそりやっている。
 自分で作った石斧はボクの宝物。何回も失敗しながら完成した石斧で缶を割ると凄く気持ちいい。
 今日も缶を拾ったから秘密基地で割っていこう。この缶は音がでるかな? 楽しみだなぁ――

このクソスレをわざわざ掘り返したのか……

真に申し訳ないことに安価とってしまったので責任は取らないとと思いまして、すみません……

流石にもう変えましょう。変なお題出してすみませんでした
次のお題↓

灯台

 説明しよう。この世界は危機に瀕していた。過去形だ。
 大いなる闇が現れ世界から全ての光を奪おうとしたが光の剣を振るう勇者により大いなる闇は倒された。
 だが大いなる闇はその強大さ故に倒れた後も夜という形で世界に残り続けた。
 全ての人々の中に睡眠という魔が根付き、人々の時間は大きく切り取られてしまった。

「光の剣の光を拡散して高い塔から放ち続ければ全て解決するんじゃね?」

 そんなノリで塔が建てられ鏡やガラス、歯車などにより空を巨大な光の刃で凪ぎ続ける仕掛けが作られた。勇者は喜んでその塔に光の剣を収めた。

 結論を言おう。全くの無意味だった。夜が消えても人々から睡魔が消えることはなかった。
 むしろ明るすぎて寝れないと苦情が来た。でも何か綺麗だったので年に数回、特別な日だけ祭りを行い塔に光の剣が収められることになった。

「そんな伝統のある塔なんだから、地震で倒壊したラッキーとか言うんじゃないよこの馬鹿!」

「えぇ、だって雨戸閉めてもまだ明るいし……てか大人たちが一晩中祭りで酒飲みたいだけ」

「うるさい! 普段ちゃんと稼いでる父ちゃん母ちゃんはあんたにとって勇者だよ! 敬いな!」

 自分を叱る親を見て、それでもやっぱり塔が倒壊してラッキーだったと思う。
 何しろ父親の臨時収入の出所が『闇祓う灯りの剣の台座となる塔』の再建という仕事なのだから。

「どうでもいいけど塔の名前長いよ。略して灯台でいいじゃん」

「この罰当たり!」

このクソスレまだ続けんの?

 期待はしていなかった。久々の帰郷で感傷的になったのか、普段なら絶対にしないであろう思い出の場所巡りなんてのを始めたものの途中でやめようかと思ったくらいだ。とりあえず近いからという理由で向かったそのおんぼろ屋敷は子供の頃よりさらに老いていたがまだ生きていた。

「うわ!うまい棒5円のまんまじゃん」

 思わず当時の高揚感が蘇ってくる。たった5円。だが半額だ。謎のうまい棒のみ半額。すぐに売り切れるから学校が終わったらダッシュでここへ急いだ。5円のために。
 その田舎村の生態系が今も受け継がれているのかと思うと不思議な安心感に包まれる。と同時に、お会計をする時のひまわりのような笑顔が頭をよぎり、心臓が心地よいテンポを刻み始める。扉を開けようとしたが、変わり果てた自分がガラスに写り躊躇する。帰ろう。おんぼろ屋敷に背を向けるとクジラと瓜二つのゆったりとした時間を感じさせる目がこちらを見つめていた。

「いらっしゃい。今日は息切らしてないんだねえ」

「・・・夏休みだから」

「あーそうだったね」

 扉を開けてカウンターに向かうばあちゃんの後にいつも通りついて行った。いや、今日はペンギンみたいになった。店の中も昔とあまり変わっていなかった。あれ、商品名が読めない。

「ばあちゃん商品名滲んでて分かんないよ。書き直しときなよ」

「え?・・・そうかい。あとで直しとくよ。ふふふ」

 ばあちゃんは訝しげな顔をしたが、俺の目を見ると心底面白そうに目を細めて笑った。やはりお年寄りにこういうのは効く。なんてクールを装い、心の平静を保って視界を確保すると、奥の商品棚にはインテリアが飾られているのが見えた。

「あれ?イカゾーンは?」

左手奥にはイカ関連の駄菓子が一面にならんでたはずだ。あまりの種類の多さにイカゾーンと呼ばれていた俺のお気に入りの場所が。よく見ると右手奥のロシアンルーレットゾーンも無かった。

「もうないよ。あっても誰も買わないからねえ。子供がすっかり居なくなっちゃって」

 そうなんだ、の一言が出なかった。さっきまでここに来るのをやめようとしてたくせに胸が痛む。少子化の影響を最初に受けるのは田舎だ。言われてみれば当然のことだ。だけどそれだけで納得したくはなかった寂しい現実。

「おかげで毎月赤字だよ。大人買いのひとつやふたつしてっておくれよ」

 この陽気な感じが懐かしくて大笑いしてしまった。ばあちゃんは口の端をひくひくさせながらまた面白そうに目を細めた。

「じゃあここからあっちまで全部ちょうだい」

「1億万円ね」

「2万しかないや」

「ならうまい棒4本だけしか買えないねえ」

「じゃそれで」

 なぜか1万9980円のお釣りが返ってきた。99.9%OFFなんて聞いたことないぞ。俺はお釣りを財布にしまいながら、ある疑問を聞こうか聞かざるべきか悩んだ。けど、結局子供の頃のよしみに甘えてストレートに聞いてみることにした。

「ばあちゃんはなんでまだ駄菓子屋やってるの?」

「そうねえ。こうしてここに居ると時々、旅人さんが帰ってくるからね。やめるわけにはいかないのよ」

 ばあちゃんにそこまでの責任はないはずだ。しかし、俺は駄菓子屋という目印が無ければ子供時代に帰ることはできなかったかもしれない。都会の波に揉まれて、心が沈みかけていたからこそ、思い出の場所巡りなんて柄にもない行動に出たのだろうか。ばあちゃんの言葉がすっと染み込んできて俺は無意識のうちに感謝していた。 

「孤独でも旅人さん達を思えば寂しくなくなるの。いつか迷った時、帰れるようにを私がここを守ってるって思うと死んじゃいられないって元気が湧いてくるのよ」

 ここに来て良かった。ばあちゃんのしわくちゃな目尻を見て心からそう思えた。ばあちゃんは一流の灯台守だ。 
 ほんわかした空間に、ガラガラっと古い音が鳴り響いて俺は振り向いた。

「あ・・・」

「たーくん?」

「そうちゃんけ!?」

俺達は子供時代大陸に上陸した。

サンタクロースなんかいない。
年齢不相応に本当のことを色々と知っている私は、夢のないやつだと言われてよく仲間外れにされてきた。
言動が子供っぽくない。可愛げがない。同年代から一歩引いた冷めた性格だと、大人たちはよく言った。

「私は悪くないんだけどなあ」

頬杖をついてココアをひと口含む。珈琲が苦くてまだ飲めない私は、こうして大人の真似っこをするのが好きだった。
口にたまった甘い海の中に少しでも苦いところがないものかと舌を漕ぐ。
牛乳に砂糖を足したお子様向けのココアなのだから、そんなものがあるわけない。
本物の珈琲が注がれたマグカップを傾けて飲むお兄さんを横目で盗み見る。
砂糖もミルクもシュガーシロップも使っていない正真正銘の珈琲。
どうしてあんなに苦いものを表情一つ変えずに飲めてしまうのだろうか。

「それって大人が悪いと思う?」

コップを置いてお兄さんは微笑んだ。私が好きなお兄さんの中で、たぶん一番好きな表情だ。
でもそれと同じくらい嫌いな笑顔かもしれない。だって笑顔の意味が分かってきてしまっているから。

「お兄さんがそうやって、私に難しい質問をするからいけないだよ」

テーブルに組んだ腕を敷いて頭を乗せる。下からお兄さんを見上げると、やっぱり年上なんだなと実感した。
私がその日の出来事を教えると、お兄さんはいつも不思議な質問をしてきた。
どれもが頭を使う内容で、お兄さんからすればまだ子供な私には意味を考えるだけで精一杯になってしまう。

「子供っぽくないと言う大人が悪いのかな。それとも大人びてきた君が悪いのかな」

今日のお兄さんはなんだかいつもより嬉しそうだった。
たぶん私がだんだんと変な方向に賢くなってきて、お兄さん好みに穿った視点で世間を見れるようになってきたからだ。
お兄さんの笑顔はそういう意味だ。私はまだお兄さんほど大人じゃないしえらくない。
珈琲の入ったコップに口をつけて眉をしかめると、お兄さんは楽しそうに笑った。

思い付いたことを投げただけのフリースタイル
お題成分はとくになし

いいね

「付き合ってあげましょうか」

顔を覆って唸っていると、頭の上から明るい声がした。
無邪気を声で表現した場合の模範解答のような声だった。
どうしてこんなにタイミングよく救済の手が差し伸べられるのか。
悩める者にとってその一声は、空腹に動けなくなったときに
与えられたひと玉の林檎のように感じられる――わけがない。

「お前はお呼びじゃない」

顔を隠したまま突っ張る。個人的には最も首を突っ込まれたくない相手だった。
こいつには個人的興味だけを的確に見つけ出す天性の嗅覚によって散々に苦しめられた。
癒えない傷を負わされた心は気配を感じ取るだけでチリチリキリキリと悲鳴を上げた。

「えー、だってどうせまた楽しくなるんでしょ」

根っこが腐り堕ちてそうな主観で語られると反論する気力も起こらなかった。
当事者にとって不幸以外のなにものでもないことを享楽にするのだからたまらない。
いったいどんな環境で育ったらこんなにも捻くれて育つのだろうか。

「今回ばかりは本当にやめてくれ。お前が絡むと拗れた問題がねじ切れる」
「諦めた方が早いのに。無理ってしってるくせにー」

追い払うつもりで言ったのに、何が面白いのかケラケラと笑い始めた。
歳の差を考えない無遠慮な手がわきまえず、髪の毛にわしゃわしゃとじゃれついた。
だからそういう人目を気にしない軽率な行動が誤解を生むのだからやめてくれ。
ほらもう視線が痛い。胃が痛い。逃げるように顔を伏せると、遠くの陰口が余計に鮮明になった。

だって周りが荒れているほど君のそばがよく落ち着くんだ。
まるで秘密の約束事をするように、他の誰にも聞き取れないような小声で言った。

みたいな

お題「内緒話」↓

 皆が内緒話をしているんだ。振り返るとなんでもないように振舞っているけど、分かるんだ。
 すれ違った人が、後ろを歩く人が、座っている人が、内緒話をしている。
 きっと嫌なことばかり話しているに違いない。皆、笑っている。

「い  しゃ  せ」

 内緒話はできても、お前と話す言葉はない。そんな嘲笑が透けて見える。
 見ていないところではハッキリと話していたのに、挨拶すらまともにしたくないのか。

「お 計   円   ま 」

 聞こえない。仕方がないから表示される金額を見て、その通りに支払う。

「           」

 とうとう何も言わなくなった。店を出る前に、また内緒話と嘲笑が聞こえた。
 店の外に繋がれている犬がこちらを見ている。
 しゃがんで撫でてやりながら、あいつらに仕返しをする。
 お前にだけ、内緒の話をしてあげよう。犬は、返事をするように首をかしげた。

お題↓

ナルシスト

「ごきげんよう」

屋上でひとり寝ころんで時間を潰していると、視界の端からおさげが割り込んできた。
長さの合っていないマフラーが鼻の頭をくすぐる。あまりにも絶妙な配置に悪意を感じる。

「ここに何の用だ」
「それは私が聞きたいんだけども。風紀委員長として」

眼鏡の奥で大きな瞳がギラリと光る。
お互いに望まない邂逅が増えたせいか、最近は特に肉食獣の表情が様になりつつある。
無論、そこに相手を震え上がらせる気迫がこもっているかどうかは別の話しだ。

「あーあ、せっかく休憩してたのに。『婦長』のせいで邪魔されちった」
「誰が『ふちょう』だ! 私は風紀委員長だ!」
「それを略せば」
「役職を略すな!」

苛立たし気に覗き込む顔を手で退けて、勢いよく跳ね起きる。
そして右足を基軸にして軽やかに婦長の後ろに回り込んで抱きこんだ。
予想していなかったであろう不意打ちに、腕の中で婦長がびくりとはねた。

「婦長は相変わらず不用心だよな。俺だから抱きしめるだけ済んだものの」

蛇に喉を噛まれたネズミのように、婦長は抵抗することなく内側に収まる。
年齢のわりには小さな頭を撫でると、シャンプーの香りがふわりとひろがった。

「よかったわね、私がか弱い美少女で。体育委員長だったら締め落とされてるところよ」
「叱るつもりなんかないクセによく言う。俺のことが好きだからいつも来てんだろ」

マフラーの半分を借りて首に巻く。風の少ない冬の空では雲がゆっくりと流れていった。

消化してリフレッシュ
↓次題

残雪

「残ってない!」

 タイトルに反して悪いが、既に雪は残っていない。
 暦が春に移り変わるのと同時に雪は溶け去ってしまった。

「素直にバレンタインとかネタに書こう? な?」

「安価は絶対なんだよ! 何がチョコだ、ケツにチ○コ貰えやリア充!!」

 口汚いコイツはどうしても残雪というお題で書きたいらしい。
 仕方がないとキッチンに戻り戸棚の上を漁る。これで我慢してもらおう。

「……えっ、それ?」

「これで我慢しろ」

 夏の風物詩、カキ氷機が器に雪を盛った。
 無論、その雪はシロップかけて無理矢理コイツに食わせた。寒くても、知らん。

草にかぶさった雪を踏みつける。
手のひらほどもない残雪は土のつちのついた靴跡を綺麗にかたどった。

「ここはもうこんな季節になったんかい」

身の丈ほどもある銃を担いだ少年が言った。
そのすぐ隣。杵で突いたばかりの餅のような姿をした生物がぴょこんと飛び跳ねた。

「はやいね! もうあったかい季節になるんだ!」

興奮気味に大声で言った軟体生物は、少年の足に張りつくとずるずると昇り始めた。
体を這い上られる感触が好きではない少年はあからさまにため息をつく。
もちろん人間とはまったく別の感覚をもつこの生き物に感情など理解できるはずもない。
足を伝って背中を通り過ぎ、ついに頭の上にまで到達した白い生き物は、
遠くまでひらけた景色を見て、またぴょこんと跳ねた。

「頭の上で跳ねるな」

「すっごいすっごい! 僕の仲間が沢山いるんだ! あっちにも!」

賢くはないながらも抑えきれない感動を覚えた生き物が跳躍でもって喜びを表現する。
これまでも禁足事項として忠告をしてきた少年の我慢が限界を迎えるのはそれほど遅くはなかった。
体にひっついた時点ではたき落とすときもあるのだから、むしろよく耐えた方ではある。

頭上に居座る軟体な生き物を掴み取ると、すぐ傍の名残の雪にあらん限りの力を込めて勢いよく叩きつけた。

「ビャぎぃッ!!」

静かな森に悲鳴が響く。雪でなければ衝撃で体がはじけ飛んでいたはずだったので、それは少年の温情だった。
雪に紛れて全身を貫く激痛にもだえる白い生き物を置き去りに、少年は森の奥へと歩いて行った。

3月入ったし次奴↓

イキ人形

「おはようございます。今日の具合はどうですか?」
「特に問題はないよ」
 問い掛けに鷹揚に頷く。幾度となく繰り返された問答。もはや新鮮さなど何一つなかった。
返事をしなくとも良いだろうが、習慣でつい応えてしまう。

「暖かくなってきましたよ。どうです散歩でも」
 私は答えなかった。答える意味も必要もなかったのだ。
 散歩をするとしてどこへ行けば良いのか。外を歩く事など全くの無意味だと言うのに。

「私は貴方とずっと一緒に――」
「黙っててくれ」
 なおも喋り続けようとするのを遮り、私は感情の赴くままに叩き付ける。たやすく弾き飛ばされて
床に転がる。手足があらぬ方向に曲がっていた。
 何という事だろう。やってしまった……
 軽い自責の念が襲う。面倒な事が増えてしまっただけじゃないか。
 嘆息しつつ転がった女の姿をしたそれを抱えてベッドに寝かしつける。こうして一日放置して
おけばまた動き出すだろう。

「ふぅ。それにしても厄介な物だ」
 人類が、世界が崩壊した現状話し合える存在は有り難い、本来ならば。
だがこれは人形なのだ。気紛れに周辺の荒野を出歩いた時に奇跡的に残されていた建物の中で
遺棄されていた。
 初めは人間だと思ったがそうではなかった。ロボットと思ったがどうにも仕組みが全く異なる。
驚いた事に素材は人形そのもの。目はグラスアイ、身体は大きさは異なるがよくある球体関節だ。
 だが自律して会話でき、どういう仕組みなのか傷なども放置していれば修復される。
会話が出来て喜んでいたのは最初の内だけだ。会話の中身がとにかく少ない。同じ事しか言わない上に
学習機能もない。
 ただ動き続けるだけの人形。生き続ける人形――イキ人形というわけだ。
どこかへ捨ててもいつの間にか戻ってくる。どうにも厄介な代物である。
世界にたった一人ぼっちになっても煩わしい事があるなんて、物事はうまくいかないものだ。

手直ししていたらageしてまったスマヌ

次↓

GWらしく「連休」で

 同僚が、たまに家に帰ると娘に「おかえり」じゃなく「いらっしゃい」と言われると愚痴る。
 それを私は他人事のように聞いていた。彼に比べれば私はまだマシだと思っていた。
 帰ればちゃんと「おかえり」と言ってくれる息子。いつの間にか料理も覚えていた。
 だから、気付かなかった。久しぶりにとれた長めの休日。

「久しぶりに遊園地にでも行く?」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。

「久しぶりにキャッチボールでもしようか?」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。

「久しぶりに一緒にお風呂にでも入ってゆっくり――」

 もう、そんな年じゃないよと言われた。
 タブレット端末を弄る息子の手は、よくよく見れば、もう私と変わらない大きさだった。
 身長も同じくらい。思い返せば、確かにそうなのだ。息子は、もう立派に育っていた。

 気付かなかった。息子は私を親として見てくれていたのに。私はそれに気付かなかった。
 思わず息子を抱きしめる私に、息子はまるで親が子にするように、仕方ないなという顔をした。
 時間はもう戻らない。でもそれは今から努力しない理由にはならない。
 遅くなってしまったけど、今気付いたから。これからの時間を大切に過ごそう。息子と一緒に。

忙しさゆえに子供の成長を正しく認識できなかった、ある意味時間が止まったままの父親
長い休日で時の流れを知ったせつなさと前向きに歩み寄ろうとする、読後感の良いSSですな

>>657
感想どうもです。上手く思いつかなかったのですがシンプルに纏めようと書いてみました。

次↓次↓

お題ちょうだい

じゃあ「台風」で

「台風であぶないから学校休みだって~」

 このお子様は何故うちにいるのだろう。台風で危ないから自宅に戻りなさい。いやそもそもベランダ伝いにこっちの部屋に来るのは台風じゃなくてもやめなさい。
 あとさっきから人の家で何を書いているんだろう。「だいかんげい」? 大歓迎?

「ねぇ手伝ってよ~」

「何作ってるの」

「台風がまたきてくれるように旗作ってるの」

 台風の被害がシャレになってない人もいるというのにお子様は気楽な物だ。学校が休みになることを喜んでいるだけか。わざわざ旗まで作るのは不謹慎だと思うけど。

「ほ~ら、台風は目がすっごく大きいから大きく書かないとダメなんだよ!」

「あぁ、台風の目ね」

 なるほど、台風の目では風も雨もないのは台風が物を見るためか。その発想はなかった。
 旗作りを手伝うことになったが、被災地の人に配慮して目潰し用の一味唐辛子も用意したので許して欲しい。

子供らしい発想描けていてええやん

そろそろ次のお題をば↓


目薬
冷え性

の内どれか任意

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