ミカサ「名前は」エレン「まだ無い」(99)

訓練兵1年目からスタート
思春期の入り口に立った何も始まらないエレンとミカサ
地の文注意

「ミカサ、ちょっと」

湯浴みを済ませて部屋に戻る途中、5人ほどの女子に囲まれた。あまり記憶が定かでないけれど、恐らく同期。
よく分からないけど深刻そうな様子の面々。
…私が何かしたのだろうか。……身に覚えは、ない。

馴染みのない面子と空気に戸惑っていると、さっき声を掛けてきた子が一歩私に詰めよる。一瞬、彼女の濡れた長い髪から花のような匂いがした。

「聞きたいことがあるの。いい?」

「ええ」

なんとなく気圧されてしまい、頷くしかなかった。同じ強気な口調と目でも、エレンのそれとは何かが違った。

「エレンの事なんだけど、あなた前に彼は家族だって言ってたじゃない。その言葉は本当?」

険しい顔をしているから何事と思えば、突拍子もない事を尋ねられて、一瞬きょとんとしてしまう。

「…ええ」

胸がざわざわした。

「本当に?」

「ええ」

「信じていい?」

「ええ」

「嘘ついてない?」

「?嘘をつく必要がない」

何度も何度も念を押すかのように同じ事を聞いてくるので、段々煩わしく思えてきた。
彼女は私の返答にあからさまに脱力すると、打って変わり笑みを浮かべてきた。それに続いて周りの子達もほっとしたような顔をする。状況が掴めない。
彼女を含めた女子達はさっきからしきりに目配せし合っている。あまり居心地が良くない。

「そう…じゃあ恋愛感情とかあるわけないよね!」

またもや話が飛躍して言葉に詰まる。

「…ない」

そう言った途端「だよねーっ」と口々に彼女達が騒ぎだす。…眠い。

私の答えでこんなに盛り上がる意味が分からない。さっきから胸がざわざわする。いい加減気分が悪い。早く部屋に戻って明日の訓練に備えて眠りたい。

「どうしてこんなことを聞くの?」

現状から一刻も早く脱したい一心で尋ねると、詰めよって来ていた子は私の右側にいた子の手を引いて輪の中心に導く。

金髪の綺麗な子が目の前に現れた。

「実はね、ニコルがエレンの事好きなの」

ニコルと呼ばれた女の子は、頬を仄かに桃色に染めながらもきっ、とこちらを見つめてくる。彼女も微かに甘い香りを纏っている。

「…」

普段なら例え教官に睨まれようがものともしないが、どういうわけか彼女の青い瞳に見つめられると胸のざわざわが大きくなって言葉が出てこなかった。

沈黙を先破ったのはニコルだった。

「あっあの…私からもひとつ聞きたいんだけど…。『家族』とかの肩書きじゃなくて…ミカサ自身はエレンの事どう思っているの…?」

口を一文字に結んで私が答えるのを待つ彼女の誠実そうな目に、促されるように口を開く。

「エレン、は一番大切な人。なので、守りたい」

「…家族として?」

「そう。エレンはたった一人の家族。」

「…」

ニコルは一瞬こちらを気の毒そうな目で見た。しかしすぐにまた頬を染めて、そっか、良かった、と呟いた。一際強く胸がざわざわして、無意識に指先がぴくっと動いた。

「じ、じゃあ、私がもしエレンと付き合ったとしても許してくれる?」

周りの子達も同調して期待した目を向けてくる。
「じ、じゃあ、私がもしエレンと付き合ったとしても許してくれる?」

周りの子達も同調して期待した目を向けてくる。
ざわざわが限界に達した。そうか、このざわざわの正体は眠さによるイライラだ。早くベッドに入りたい。そうすることによってしか平穏は得られない。

「私に許可を求める意味が分からない。私に、エレンが選んだ人にとやかく言う資格はない。」

自分でも驚くぐらい早口でニコルにそう告げると、おやすみなさい、の言葉と共に輪を押しのけて脱出した。

強い語気に気圧されたのか、彼女達は追ってこなかった。

ごめんミスった↑の上から6行は無しで

部屋に帰るとサシャが声を掛けてきたが、耳に入ってこなかった。
おやすみの挨拶だけして毛布に潜り込む。


あんなに眠かったはずなのに、ベッドに入ってもざわざわは暫く治まることはなかった。

「ミカサ?大丈夫ですか?眠れないんですか?」とサシャが心配してくれたおかげでやっと落ち着くことができた。

ミスったとこは上から6行じゃなくて2行だった…ぐだぐだすまん。
ここまでです。
次は1月後半に来ます。

乙!

是非完結させて下さい。

まぁパターン的に無理だろうけれど

1月後半にやればよかったやん

期待

期待

続きはよ

>>12
始まったばっかのスレにこういうこと書き込む奴最近多いな…

期待してるので気にせず続けて欲しい

>>12よりも>>17
>期待してるので気にせず続けて欲しい
何様だよwwwって感じの上からレスのが気にな

ここに来る読み手って、
ほとんどツンデレ属性の奴ばっかだからしゃーない。

後半…だと……?

ho

期待保守

ニコルってどこかで聞いた名前だと思ったら、
進撃の雑談スレで唐突なオリキャラの例として
糞みたいに叩かれてた名前だww

>>23まじかwwなんかごめんww

投下していきます。
キャラ崩壊ご容赦ください。あまりにも酷かったらご指摘ください。

入団してすぐ、人間の第二次性徴についての講義があった。

巨人の特徴であり謎でもある生殖器の欠如。その異常さを把握するためにも、通常の生き物ー…特に人間の生殖についての知識が必要だ。

それに、毎年軽率な行動によって開拓地送りにされる訓練兵がそれなりにいるらしい。

兵団志願者は色んな場所からやって来る。きちんとした知識のない奴だっている。これ以上例を増やさない為にも、数年前から第二次性徴と繁殖についての講義が必須化した。

初めて自分についているものの排泄以外の役割を知った奴も、既に知っていた奴も、年頃の男子だ。

講義があった日は、その刺激的な話題で持ちきりだった。

既にある程度の知識があり、特別興味の湧かなかった俺とアルミンは、下世話な話で盛り上がる皆を尻目にいつも通り過ごしていた。

うるさくて気に障ったが、その分自主鍛錬に集中しようと必死になれた。

俺は強くならなきゃならねえ。
強くなって巨人を駆逐するために。
昔見た本の世界を見るために。
自由を手に入れるために。

あいつらだって、どうせこれから訓練が本格的に始まって今みたいに騒ぐ余裕なんてなくなる。

そう思っていた。

そんな俺はすぐに自分の認識の甘さを思い知ることになるのだが。

ーー男子寮

「エレン。アルミン。お前らはどうなんだ?」

一日の終わりの自由時間。俺は自主鍛錬を、傍らにいるアルミンは読書を中断して、声のした共有テーブルの方を見た。

「は?何が」
「何の話?」

何故かにやけている男共に怪訝な視線を投げかけた。アルミンは不思議そうに首を傾げた。

「何って、話聞いてなかったのかよ!!」

大袈裟に立ち上がってこっちを指差してくるのはコニーだ。

「コニー!あまり馬鹿デカイ声だすなよ。教官が来ちまう」

ライナーが慌ててコニーを諌める。

「はっ!すまん」

バッと両手で口を覆って座り直す。

「で?何の話なんだ?」

「いやな、今みんなの精通話を聞いてたんだ。お前らまだか?ん?」

「す、すす済んでるよ!!」

からかってきたサムエルにアルミンがいち早く反応したもんだから、驚いて肩が跳ねた。アルミンは心なしか怒ってるような気がする。

「あはは、冗談だ!エレンも済んでんだろ?」

「え。ああ…。なんつー話題だよ」

「男同士なんだし別にいいだろ」

マルコがあっけからんと答える。
おい優等生。

「男同士でもそんな個人的なこと…放っとけよ」

「なんだお前、意外に繊細な奴だったのか?」

「は?排泄の話でそこまで騒げるお前らについて行けねぇだけだ」

俺は思っている通りのことを言ったまでだ。なのに

「排泄って!!」

何が面白いのか、男共は大受けだ。コニーに至っては机をバンバン叩いていて、またライナーに止めさせられていた。そのライナーでさえ目に涙を浮かべている。

「なんだよ」

イラっとして隣のアルミンを見る。

「俺は間違っちゃいないよな?アルミン」

昔一緒に父さんから聞いたはずだ。記憶は曖昧だけど。

「間違ってないけど…」

返答は尻すぼみになっていった。

「っひぃ、じゃあお前、いっつも出す時何考えてんだ?」

涙を拭いながらライナーが尋ねてきた。

「なんで何か考える必要があ…」

そこまで言って思い当たる。
もしかして、講義で言ってたアレか……?

「…何も考えてねえよ。強いて言うなら『早く出ろ』だな」

笑すぎたダズが椅子から転げ落ちた。

「げ!うるせえなダズ!教官来たらどうすんだよ」

「お前がそれを言うかよ、コニー」

「ていうかエレン…急いでる時にそういうことはあるけどさあ…」

その言葉に、転がったままだったダズがむくりと起き上がる。

「えっ?」

「え?」

「「…」」

「まあ…さすがエレン。調査兵団志望するだけあるな」

俺を見て感慨深そうに言うサムエル。

「でも折角快感を伴うなら味わった方が得だと思うけどなあ」

「そ、そうか…?」

「僕はね」

おい優等生。

「エレンはいつ頃精通したんだ?」

ライナーは無駄に真面目な顔をしている。

「1年前ぐらいだったような」

「状況は?」

「何で興味津々なんだよ気持ち悪い…。嫌だよ話すか」

「いいじゃねえか別に笑いやしねえよ!皆似たようなもんだろ?」

「嫌だね。声の大きさ落とせよコニー」

これ以上付き合ってられるか。鍛錬を再開する。

「あーあ、怒らせちまった。アルミン、お前はどうなんだ?」

「僕はよく憶えてない」

アルミンの返事に動きを止める。

「何言ってんだ?先週の話なんだから流石に憶えてるだろ…?」

声に出してから気づいた。

これは余計な事を言った。

アルミンは俺の顔を見てにっこり笑った。
俺の口の端が軽く痙攣したのが分かる。

まずいぞ。



「エレンって確か僕とミカサと居たときに初めて射精したよね?」



束の間の沈黙。



「*」
「ええええ」
「まじかよ!!」
「うわーキツイな!」
「同情するぜ…」


「バッ…アルミンお前…!!!」

「自業自得だよ」

すでにアルミンは本に目を落としている。

「それはすまねえと思ってるけど…!俺は詳しくは言ってないだろ!?」

「待て、それじゃあその…ミカサに見られたってことか…?」

振り返れば男共は、食材を盗んだことがバレて訓練中に教官に引き摺られていくサシャを見るような目で俺を見ている。

誰が固唾を飲む音がした。
なんだこれ。イライラする。

「ミカサは気づいてねえよ……多分」

いや、ミカサのことだから分かんねえな。気づいてませんように。

「つーか一体どんな状況だったんだよ*」

「いい加減にしろよお前ら!!」

うんざりしたから自分のベッドにもぐりこんでやった。

薄い毛布では外の音がくぐもってはいるがいくらでも入ってくる。

駄目だこいつら、訓練が厳しくなればなるほど夜のテンションも高くなっていってる。マルコなんかはちゃっかり途中で抜けて装置装備してたりするが。楽観視していた自分に舌を打つ。

兎に角寝よう。遮断するにはこいつが一番手っ取り早い。

無理矢理目をつぶった。

暫くすると周りの音を感じなくなって、意識は夢と現実との間を彷徨いはじめた。

ゆらゆらと揺蕩って、深く深く落ちていく。













…眠りに落ちる寸前、俺は開拓地の夜の宿舎にいた。

50人近くの開拓民が雑魚寝している中、目の前にはぶかぶかの服をはだけさせた少女が眠っていた。

形の良い真っ赤な唇から、すうすうと寝息が漏れていた。

服の隙間から覗く、自分より少し膨らんだ肌色が、少女の呼吸に合わせて小さく上下していた。




それは黒髪の、よく知っているはずの少女だった。

ここまで
まだ導入です。長いです。
あと、「*」は「?!」です。
男子のお下品目な話ですみませんでした。

おお、良いとこで…
続き絶賛期待してます乙乙!

乙!
待ってたよ
続きも期待

保守
続き期待してる

続きを待ってるぞ

続き待ってる

ごめん、本当は言うほど待ってない

俺が待ってるからいいんだよ

誰だよ

誰だよ

ゴミageてんなよカス

続き待ってるぞ

保守

待ってるふりして戻って来たら叩く流れ
最近、やたら多い

続き待っとるで

保守

続きまだかな…

すみません。放置していて、今から読み直してから書き溜めますので明日にまた来ます

本物の>>1なら嬉しい
待ってる

待ってるから恋

まだ待ってる

書き溜め出来ましたので、レスがついたら張ります

書き溜め出来ましたので、レスがついたら張ります

取り敢えずみてみるか

本当に来るなら読みたいけど

で、無視……と。

このスレで連載する必要はもうなさそうですね。
以後はmixiとサイトだけでやっていきます。

sageてるから当たり前だろ。

ちゃんとageてるじゃん?

あの、スレ主なんですけど、久々に覗いてみたらまだ残ってて意外でした。ごめんなさい。ありがとうございます。
ずっと放置していてすみません…。言い訳をさせていただくと、携帯を弄る暇がありませんでした。でも寝る前に妄想したりしていたので、何とか文にしたいと思っています。これから暫く暇もありますし。
如何せん文才がないので時間は掛かりますが、スレが残っている限りは粘ります。

ちなみに、この投稿が前回お話を投稿して以来初となります。これからは投稿以外のときも時々見に来るようにします。

なんかもう本当申し訳ありません…。ちゃっちゃと書きますので…。出来れば明日。

なんか訳わからん事になっとるな…
とりあえず>>1の書く続きが読めるならそれに越したことはないんだが

続き待ってるよ
頑張って!!

実はどれも本物の>>1じゃなかったりしてな

結局来ねぇじゃん

ーー翌日

食堂に行くと、珍しくエレンもアルミンも既に席についていた。
入り口を向いているアルミンと目が合う。

「あ、ミカサおはよう」

「おはようアルミン。エレンも」

空けておいてくれたエレンの隣に腰掛ける。

「ああ…ってお前、隈できてるぞ。昨日ちゃんと寝てないのか?」

肩を軽く掴み覗き込んでくる。
たわいない所作と分かっていても、顔が近いと照れてしまう。

明後日の方を見ながら、指摘された目元に触れてみた。

「昨日は少し考え事をしていたから…かもしれない」

「へえ、珍しいな。何かあったのか?」

「悩み事なら話を聞くよ。役に立てるかどうかは分からないけど」

エレンもアルミンも私を気遣ってくれているのは解る。
とてもありがたいと思う。
けれど、昨夜の胸のざわつきを2人にどう伝えればいいか、私の言語力ではどうしようもなかった。
それに心配もかけたくない。

「大丈夫。取るに足らないこと…」

チラッと見やったエレンの、目元に目が止まる。

「…エレンだって隈ができてる」

肩に置かれていた手が離れる。

「そうか?気のせいだろ」

「毎日見ているのだからそんな事は断じてない」

それに、耳だって赤い。
エレンの適当な返事を聞いて、腹が立った。

もう偽物ネタ飽きたよ…

アルミンの顔を窺ってみると、眉を下げて申し訳なさそうに笑いかけられた。
どうやら彼はエレンの味方らしい。
何か事情があったらしいという事は察する。
でもそれは問題じゃない。


私の心配はするくせに。


自分からも顔を接近させてみる。
今度はエレンが視線を逸らした。

「エレン、毎日しっかり睡眠時間を確保しないと。訓練に支障をきたすと命に関わる」

そう諭すと、エレンの眉間にくっきりと皺が浮かんだ。

近いのでよく見える。エレン、鼻が少し高くなったような気がする。

苦々しい顔を前に、そんな呑気なことを思う。

「そ…そんなこと分かってるよ!お前だって…お前こそ、俺に説教する前に自分の体調を気にしろよ!」

人のこと言えんだろうが。そう言って私を睨みつけた後、視線を振り払うかのようにテーブルに向き直り、乱暴にパンを食らった。

「エレン」

「…」

「エレン」

「アルミン、昨日読んでた本の話してくれないか」

「え…い、いいけど…うーん。どこから話そうか」

「エレン」

「アルミンに任せる」

「エレン」

「…何だよ」

困った。返事をしてくれた先のことを考えていなかった。

「………さっき唾が散った」

「悪かったよ」

違う。
別に散ってもよかった。

私が新たな言葉を探している間に、アルミンが話しだしてしまった。

結局、エレンと一緒になってアルミンが立体機動の本について持論を織り混ぜながら語るのを聞いた。

途中、いつも通りサシャが余り物を請いに来たので木の実で「どっちだ」をした。
彼女はおそろしく勘が鋭い。
手に入れた木の実(私のを全部)を「木の実って意外とお腹に溜まるんですよね」などと言いながら嬉しそうに食べていた。










午後は森で立体機動の訓練だ。
二人一組でダミーの巨人を削ぎながら、決められたコースを駆け抜ける。

「ミカサ、組もうぜ」

「分かった」

対人格闘の訓練は組んでくれないが、立体機動の訓練時はよくエレンの方から申し込んでくれる。
向上心故だと理解しているが、それでも目の届く範囲にエレンがいると嬉しい。

身体を解している最中、不意に視線を感じて横を向くと、離れた場所からニコルがこっちを見ていた。
視線は私をすり抜けてエレンだけに向かっている(ような気がする)。


ー『ニコルがエレンの事好きなの』


好き、だと人はあんなかおをするのか。

訓練が始まっても、先程目撃してしまったニコルのかおが頭から離れない。

形容し難い。こちらまでどきっとするようなー…

「!?おいミカサ!どこ行ってんだ!そっちはコース外だぞ!?」

エレンの声にハッとする。
左アンカーを抜き損ねてしまう。
目前まで木が迫った。

「…っ」

直ちに右アンカーを放って遠くの木に突き刺す。
が、どういうわけかうまく刺さらなかったようで体が振れる途中で外れてしまった。

「…!!」

「ミカサ!!」

駄目だ、もう片方の巻き取りが間に合わない。落ちてしまう……!





「…っ!ミカサ、無事か?」

呼びかけられて、我に返る。
エレンの上に両脚に挟まれる形で乗っていた。
左頬のすぐ側にエレンの顔があった。
すぐに、自分を庇ってエレンまで巻き込んでしまったと理解した。
自分の不注意のせいで起こった事故に。

「エレンこそ無事?!」

咄嗟に立ち退こうとするも、立体機動装置のワイヤーが二人に絡まっているため、動きを阻害されてしまう。

「!おい引っ張るな!絡まってるんだから…こっちが聞いてるんだよ」

「だっ大丈夫。エレンは?」

「大丈夫だ。繁みに落ちたお陰で何とか助かったな」

繁みの方に目を向けると、エレンの手の甲から出血しているのを見つけた。
さあっと血の気が引いたような気がした。

「あ、傷が…ごめんなさい」

「全くだ。お前が失敗するなんてな…だから言わんこっちゃない」

案の定怒っている。
私が悪いのに、エレンの指摘に対してむっとしてしまった。

「それは違う」

「は?」

「眠気が襲ったわけじゃない。考え事をしていた」

「立体機動中に考え事に耽る馬鹿があるか!言い訳してんじゃねえぞ」

「ウッ…」

尾?骨辺りに軽く踵を落とされた。

「痛い…」

「痛くしたんだよ。目ぇ覚めただろ」

「…本当に眠たくなんかなかったのに」

「なら大馬鹿だなお前は!兵士なんてやめちまえ」

「痛い。やめて」

「いつもお前に投げられる俺の方が痛い」

「…」

言い返せなくなって、会話が途切れる。

そういえば、こんなに密着するのは初めてだ。
そう思うと急にどぎまぎしてしまう。
エレンに触れている箇所を感じてみる。温かくて、脈打っている。

私の体はそれなりに重いので、少しでも体重をかけまいと身動ぎすると、下腹部に何かが当たった。

思わず身体が強張る。

それは知識として知っているし開拓地にいた頃見たこともある。
でも、見るのと触れるのは違う。
全然違う。

そ、その、エレンにあって自分にはないものが…

「お、おい…!」

いきなり動いたせいで、エレンの胸辺りに顔を埋める形で固定されてしまった。
私の体重に圧迫されたせいかエレンの脈がさっきより速い。

「焦ってしまった…ごめんなさいエレン」

「っ、もうそれ以上動くな。喋るな」

そうは言っても、一度気にしてしまうとそればかりに神経が集中してしまう。
あと少し下にずれたい。
もう少しだけ…。

「!!う、動くなって!」

「…!!」

私の動きを封じるために、エレンが脚で胴体を締めた。
ぎゅうぎゅうとエレンの肌が押し付けられる。
勿論あれも押し付けられる。
…もう考えるのをやめたい。

「じっとしてろよミカサ…コース外だから人が来ないな…今救煙弾を…、……」

しかしこの状況ではどちらも煙弾を打ち上げることができない。
エレンもそれに気がついたようで、そのまま黙り込んでしまった。

「私に考えがある」

めいいっぱい手を動かして、なんとかエレンの両脇に手を着く。
そのせいでワイヤーが突っ張って余計に頭部がエレンに密着することとなった。
エレンが苦しそうな声を上げた。
私も苦しい。それに色々思う所もあるが、まずはこの現状を打破しなくては。

「ワイヤーを力尽くで破裂させる」

「は…?それは本気で言ってるのか?どれだけの強度だと思って…っ!?」

あらん限りの力で、頭を上に押し上げる。

なるべく体を浮かせようとしているが、勢いをつける度に腹部がエレンの股間に擦れてしまう。
ああ、そんな事を気にしている場合ではないのに。
早くエレンを楽にしてあげたい気持ちと、エレンから離れたい気持ちでいっぱいいっぱいだ。

「ぐっ…ぅ…!」

分かってはいたものの、やはりワイヤーは頑丈だ。歯を食いしばって全身に力を込める。


「ミ、カっ…や、やばいって」

顔は見えないが声が本当にやばそうだ。

「痛くても耐えてエレン、すぐに終わるから…!」

「痛いとかいう問題じゃ…落ち着けっ…~!」

「はぁっ…責任を負うのは私だけだから…!」

「ちっげーよ!そうじゃないんだよっ…クッソ……!!」

エレンの脚が再び絡みつく。

「脚やめて…!」

「お前がやめろ、無茶だ…!!」

「私は…できる…!!」

「やめ…ろぉ…!」





ブチッ!

「「あ」」








「あれはエレンと……ミカサ?」

「本当だ……ミ、ミカサ?!」

「ミカサだな…」

「珍しいこともあったもんだ」






あの後、無事(?)に身体の自由を取り戻したが、装置を壊した事と不注意について教官に叱られ、罰として夕餉どきまで外を走るよう命じられた。

本来なら私一人が悪いのに、黙ってエレンも隣で教官の説教を聴き外を走った。
相当怒っている様子で、口はきいてくれなかったのだけれど。

走っている間は、エレンが庇ってくれたから私は擦り傷だけで済んだということ、反対に私はエレンに手の甲に深い切り傷を負わせてしまったということがぐるぐる頭を巡った。




息も絶え絶えになった頃、やっと夕方になり、解放された。
だが今から炊事に加わらなければならない。
息が整うのを待たずに立ち上がり食堂へ向かおうとするエレンの後を慌てて着いて行く。

「…エレン」


返事はない。
それでも、言わなくてはいけないと思ったので続ける。

「昼間の私は一人独りよがりだった。冷静じゃなかった。ごめんなさい」

「…」

「それから、助けてくれて、一緒に怒られてくれてありがとう」

「……」

数秒沈黙が続いた後、エレンが足を止めて振り返る。
後ろから夕陽が差しているため顔はよく見えない。

「…これからは真面目に訓練しろよ」

声はもう怒っていなかった。

「うん」

私の返事を聞いたエレンはこちらに歩み寄り、私の腕を掴んだ。

「夕飯食われちまうぞ、急げ」

「うん」

掴んだまま歩き出す。


エレンはいつだって優しい。
最後には私を許してくれる。
こうやって手を引いてくれる。

でもそれに甘えるばかりじゃ駄目だ。
訓練に集中できないなんて以ての外。
私がエレンを危険に晒してはいけない。
あれ位で取り乱してはいけない。
迷惑をかけてはいけない。

もっと強くなろう。
私だってエレンに何か返したい。

温かい力を腕に感じながら、改めて心に誓った。

偽物ネタとか言われるぐらい放置していてすまん。

ちなみに>>65はスレ主です。
言った通りにはできなかった。

本物?
マジで本人?
本当に>>1なら待ってたから嬉しい

>>89
うん。混乱させてしまって申し訳ない。コテハン付けました。


エレンの状況にワロタwww

完結さえさせれば別に乗っ取りの人でも良いよ
とりあえず乙

ふむ

ミカサ可愛い

更新ペース遅すぎ

めっちゃ面白いです!
続きも頑張って下さい!

マダー

保守

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