男「久しぶり」 幼「10年ぶりかしら?」(169)
男「10年か… 早いな…」
幼「そうね… 小学校に入る前だったわ…」
男「…」
幼「おじさんと、おばさんは元気?」
男「………」
「死んだよ、3年前」
幼「…!」
「ごめんなさい…」
男「いいんだ」
「それより幼のお父さんとお母さんは?」
幼「…離婚したわ、今は母親と一緒に暮らしてる」
男「…ごめん」
幼「いいの…」
男「…」
幼「…」
男「幼、どの辺に住んでるんだ?」
幼「○○の方」
「10年前と大体同じよ?」
男「そうか…」
幼「一緒に行ってみない?」
「まだ、公園はあるんでしょ?」
男「最近は行ってないから分からないな」
幼「そう」
男「…行ってみようか」
幼「そうね」
男「…」
幼「…」
「公園無いね」
男「そうだな」
「ビルになってる」
幼「帰ろう、男」
男「そうだな」
男「世の中こんなもんだ」
幼「そう…かもね」
男「…」
幼「…」
男「それで、クラスは?」
幼「2組よ」
男「隣のクラスだね」
「俺は1組だ」
幼「そうね」
男「でも、少しは近づいたかな…」
男「じゃあ、また明日」
幼「ええ」
男「…」
男「…もう3年か」
「早いな…」
「……飯を食うか」
──────
幼「ただいま」
幼母「おかえり、遅かったのね?」
幼「男君に会った」
幼母「そう、元気だった?」
幼「元気じゃなかった」
男「おはよう、幼」
幼「おはよう」
「昨日」
男「昨日?」
幼「昨日、元気が無かった」
「今日も元気が無い…」
男「そんなことないよ」
幼「そうかな…?」
男「じゃあ」
幼「…男君」
男「男で良いよ」
幼「一緒に帰りもいいかな?」
男「いいよ」
昼
男「…」
クラスメイト「でさー…」ガヤガヤ
「うんうん、わかるわかる!」ガヤガヤ
男「…」
(うるさいな…)
モブ1「男はどう思う!?」
男「俺はいいと思うよ?」ニコ
モブ1「だよなー、さすが話が分かる!」
男「…」ス
男「…」カツカツ
(うるさい奴らだ… そんなことどうだっていじゃないか…)
(……今日は曇ってる…)
男「明日は晴れるかな…?」
幼「明日も曇りだって」
男「…幼か…」
幼「男、元気無いよ?」
男「…そんなことないよ」
幼「嘘」
「ずっと会ってなかったけどそのくらい分かるわ…」
男「…」
幼「何かあったら相談して?」
男「…ありがとう」
帰り道
男「……」
幼「…」
男「10年前のことって覚えてる?」
幼「10年前?」
「あんまり覚えてないな…」
男「10年前は良かった」
幼「…」
男「まだ公園もあった…」
幼「そうね…」
男「それに…」
幼「それに?」
男「………」
「…この話は止めよう」
幼「?」
「どうしたの?」
男「何でもないよ」
幼「変だよ、男…」
男「そんなことは無い」
幼「だって…」
「私、心配なの…」
「男が笑ってる所まだ見てない…」
幼「…」
男「…」
「大丈夫」ニコ
幼「…」
幼「…お母さん、10年前って」
幼母「…」
幼「何で引っ越したんだっけ?」
幼母「どうしたの急に…?」
幼「…その、男がね…」
「…えと」
幼母「男君が?」
幼「10年前のこと…」
幼母「…!」
幼「話……たがらなかった…から」
「どうしたのそんなに驚いて?」
幼母「な、何でもないの…」
幼「?」
幼母「えと… 何で引っ越したのかだっけ?」
幼「そう… だけど…」
幼母「それは… お父さんの仕事の都合よ」
幼「…あの人、今は何してるの?」
幼母「あの人、なんて言い方良くないわ」
幼「だって…」
幼母「…もう夕食にしましょう? ね?」
幼「…うん」
男「…」
「月が出てないな…」
「雲が厚いのかな…?」
男「確か…3年前も…」
「………」
「…寝よう」
幼「ねぇ、お母さん?」
幼母「ん?」
幼「今度、男を夕飯に誘って良い?」
幼母「!」
「そ、それは…」
幼「どうしたの?」
幼母「でも、男君も家で家族と食べたいんじゃないの?」
幼「お母さん、男のご両親は…」
「亡くなってるのよ?」
幼母「え?」
幼「知らなかったの?」
幼母「そ、そうだったの…」
幼「? お母さん?」
幼母「…ごめんなさい、ちょっと気分が良くないの」
「また今度話しましょう?」
幼「う、うん…」
幼「お母さん… 変だったな…」
「…何だったんだろう……」
男「………」トボトボ
幼「男、おはよう!」
男「幼か… おはよう」
幼「やっぱり元気ないなぁ…」
男「…」
幼「でね…昨日お母さんに話をしたんだけど…」
「何か変で…」
男「…」
「……」
「………やっぱりそうか」
幼「男…?」
幼「…」
幼友「幼さんっ!」
幼「あ、ええと、幼友さん?」
幼友「今日カラオケに行かない?」
幼「え…」
(今日も男と一緒に帰る約束してたんだけど…)
「う、うん大丈夫だよ! 行こう」
(後で連絡しておこう)
男「…………」ガサゴソ
「──────────やっぱりそうだったんだ…」
「…………そうか」
─────────
幼「………」ツーツーツー
(繋がらないな…)
(どうしたんだろ、男…)
幼「ただいま」
幼母「お帰り、幼」
幼「今日ね、クラスの幼友ちゃんと───」
「それでね───」
幼母「そう、良かったわね」ニコ
幼(あれ、いつものお母さんに戻ってる)
幼「そうだ、男に電話しなきゃ!」トテトテ
幼母「…」
幼「………」ツーツーツー
「やっぱり繋がらない…」
「どうしたんだろ男?」
次の日の朝
幼「ふぁぁぁ…結局繋がらなかった…」
「…」
幼母「おはよう、幼」
幼「おはよう、お母さん」
「昨日ね、男に電話したんだけど……」
「……何か変だよね?」
幼母「そ、そんな時もあるわよ」
「あんまり、男君を困らせちゃだめよ?」
幼「うん…」
10年振りって言ってるのに同じ学校?
学校
幼「男、いますか?」
モブ2「あぁ、君は隣のクラスの」
(可愛いな…)
「ちょっと待って……ええと男は…」
「あれ… いないな… まだ来てないみたい」
「それよりさ、良かったらアドr…」
幼「…」スィ
(男… 休みかな?)
モブ2「…」
モブ1「まぁ…そんなこともある」ポンポン
>>62 転入
幼「男…」
「……あ、雨だ…」
幼「やだな…」
それから一週間しても男は学校に来なかった…
電話にも出なかった…
途切れ途切れだけど雨が降っていて、気分が乗らなかったんだと思う
幼「男… どうしたんだろ?」
幼「ねぇ、お母さん」
「男君の家って確か××の辺りだったよね?」
幼母「…確かそうだけど、どうして?」
幼「このごろ男が学校に来ないから…」
「もしかしたら具合が悪いのかと思って…」
幼母「…」
「…男君のところに行くの?」
幼「うん、明日行ってみようかな」
幼母「…」
幼「えっと…」
「確か… この変だったよね」
幼「…雨が酷いな…」
──────ピンポン
幼「…」
────────ピンポン
幼「…出ない」
幼「…」ガチャ
「開いてる…」
幼「…男? いるの?」
「男ー?
幼「おじゃまします!」
「男ー?」
幼「…」トテトテ
「男?」トントン ガチャ
「いない…」
幼「…ここかな?」
「男、入るよ?」トントン ガチャ
幼「男? 寝てるの?」
男「………」
幼「男?」ユサユサ
男「…」ドサ
幼「!?」
「男?!」ユサユサ!
男だったそれ「………」
幼「男! 起きて!!」ユサユサユサ!
男だったそれ「………」
幼「きゅ、救急車!」
─────────
病院
幼「うっうっ…」ボロボロ…
医者「残念ですが…」
「相当時間が経過してるようでした、ご親族の方ですか?」
幼「ひっくひっく…」フリフリ
医者「後は警察で…」
警察「お嬢さん、こんなときに質問して悪いんだけど、我慢してね?」
幼「はい…」
警察「名前は?」
幼「幼です…」
警察「何か身分を証明できるものある?」
幼「生徒手帳が…」
警察「…」
「男さんとはどんな関係なの?」
幼「同じ学校の…」
─────────
そんな質問を繰り返し受けた
後になって知ったけど、質問はあくまで確認のためだったらしい
その後母が迎えにきた
幼母「大変だったね、幼…」
幼「…」
それからしばらく学校には行かなかった… 行けなかったという方が正しいかもしれない
男はどうやら自殺したらしい…
ずっと元気が無いと思っていたけど…
それからしばらくして手紙が来た
幼「手紙…」
「差出人が書いてない」
幼「誰宛かな…?」ピリピリ
『
いきなりでごめんなさい
この手紙を読んでる読んでる頃には、僕はもう生きていないと思います
僕は自分で命を絶ちました
迷惑を掛けて申し訳ない
でも、こうするしか方法が無かったんです
“あなた”は僕から大切な人を奪っていった
本当はあなたの大切な人を奪うつもりでした
でも、僕にとっても大切な人です
だから、こんな形でしか復讐出来ない
さようなら 』
幼「……どういう…こと?」
幼母「幼ー? どうしたの?」
幼「…」
幼母「手紙?」
幼母「…!」
幼「これは何なの、お母さん?」
幼母「これは……」カタカタ
幼「ねぇ、お母さん!」
幼「……お母さんが殺したの…?」
幼母「ち、違うわ…!」
幼「で、でも! ここに書いてあるのって!」
幼母「本当に違うの!」
幼「ちゃんと、話して…!」
幼母「…」
「話せない…」
幼「どうして?!」
幼母「……」
幼「もういいよ!」ダッ!
幼母「幼…!」
─────────
幼「…」グス
「……」
「どうしたらいいの……」
幼「男……」フラフラ
─────────
幼「男の家…」
「…」
「……」
「………」ガチャガチャ
「やっぱり閉まってるよね…」
幼「…」
(確か… 鍵が…)ゴソゴソ
「…あった」
幼「…」
「……」ガチャ
「………」ゴクリ
幼「…」ギシ…ギシ…
気分が動転しているからか、妙に床が軋んでいるような気がする
当たり前だが、家の中は静まり返っていた
幼「…男の部屋」
幼「…」
「誰もいない… 当然だよね…」
(男は3年間一人だったんだよね…)
幼「………あ」
幼「…エッチな本が」
「男も男の子だもんね…」
「ん?」
「ノート…」
「何だろう?」
幼「…」ペラペラ
「4年前から始まってる…」
○月×日
今日もケンカが酷い
大分前から酷いとは思っていたが、最近特に酷い
離婚は時間の問題なのかもしれない…
□月△日
もう駄目だ…
完全に離婚みたいだ
ちらっと聞いただけだが
親父の6年前の浮気が原因らしい
▽月●日
今日はかなり酷い喧嘩だ
食器が割れる音がしてる…
もうこんな家こりごりだ…
幼「…」
「男のご両親も仲が悪かったんだ…」
「…」ペラ
「ここから日付が飛んでる…」
◎月◇日
久しぶりに日記を書く
葬式が終わって大分落ち着いた
これからどうすればいいのか分からない…
幼「……お葬式…」ペラ
「…これは最近ね」ペラ
☆月Λ日
とうとう分かった、親父の浮気相手が…
俺の人生をめちゃくちゃにした奴が…
でも、幼が知ったらどう思うだろうか…?
幼「…私が知ったら?」
「………」
「……」
「そう、だったのね…」
幼「…最後のページ」ペラ
幼「日付が書いてない…」
15年前程浮気は続いていたらしい… 俺が生まれる1年前から
そう考えると、俺と幼は…
だが、幼が大切な人であることに変わりは無い
せめて幸せに生きて欲しい…
幼「………」
「でも… あんな手紙を寄こしたら、幸せになんかなれないよ…」
「次のぺージが切り取ってある… これが手紙だったのね…」
幼「…せめて幸せに…か…」
─────────
幼宅
幼「…」ガチャ
幼母「お、幼…」
「お、お母さん、あなたにずっと隠してたことがあるの…」
幼「知ってる…」
幼母「!」
「…ごめんさい、幼」
幼「…」
幼母「……」
幼「私はお母さんの事は許せない」
幼母「…!」
幼母「…」
幼「でも…」
「どうしたらいいのか分からないの…」
「私はお母さんのことが好き」
「でも… 男はもう戻ってこない…」
「だから、許せない」
幼母「…」
幼母「ごめんなさい…」ボロボロ
幼「…しばらく家を出る…」
幼母「…」ボロボロ
“世の中そんなものだ”男が言っていたことは正しかったのかもしれない
公園はビルになるし、晴れの日は雨になる
母が母として見れなくなるのも不思議じゃない
幼「さようなら…」
そう言うと幼は家を出て行った
外はまだ雨が降っている
終わり
乙
終わったから聞くけど妖精のSS書いてた人?
>>165
それはしらね
カニバSS書いてた
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