P「ありがとな……フレールジャック」 (70)
競馬中心のSSになります。
終盤に鬱展開があります。
お気をつけください。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1380765737
2011年5月7日(土)12:20 社長室
P「失礼しまーす」
社長「おお、来てくれたか! ま、そこに掛けてくれたまえ」
P「はい。ところで、俺に話って何ですか?」
社長「まあ、そう慌てなさんな。このレースが終わるまで、少し待っていてくれたまえ」
『さあこれから第四コーナーのカーブ。各馬、直線コースに入ります』
P「社長、競馬を見ていたんですか? ……ん?」
『ここで一気にフレールジャック!』
P「え!? 速っ!?』
『フレールジャック、勢いがまるで違う!』
P「何だあの黒い馬、めちゃくちゃ速い!?」
『あっという間に、前の各馬を抜き去りました!』
P「うわ、強! 一瞬でほかの馬をぶっちぎったぞ!」
社長「ほほう。やはりキミも、ティンときたかね」
『フレールジャック、今一着でゴールイン! デビュー戦を鮮烈に飾りました!』
P「へえぇ、デビュー戦だったのか。とてもそうは見えなかったぞ……」
社長「ふむ、なかなかのものだ。今後も忘れずにチェックするとしよう」
P「……あ、すいません。もう大丈夫ですか?」
社長「おお、すまんすまん! いや、大した話じゃないんだがね」
社長「アイドルたちの、最近の調子はどうかと思ってね」
P「はい。みんな確実に、少しずつ成長していってくれてます」
社長「そうか。私が見る限り、彼女たちもキミを非常に気に入ってるようだよ」
P「いえ、俺なんかまだまだですよ。みんなの足を引っ張ってばかりで……」
社長「そんなことはないさ。もっと自信を持ちたまえ」
P「社長……ありがとうございます」
社長「今後ともよろしく頼むよ、キミぃ!」
P「はい! 全力で頑張ります!」
2011年5月22日(日)13:10 社長室
P「社長、すみません。少しお話が……あれ」
『先頭はカリスマミッキーまだ粘っている。しかし、一気に後続が殺到します!』
P「また競馬ですか?」
社長「そう言うなよキミぃ。あの馬、キミも見覚えがあるだろう?」
『フレールジャックが先頭に立ちました! あっという間にリードを広げます!』
P「あ、あれは……この間の」
社長「そう、彼だよ」
『フレールジャック、今1着でゴールイン! 2連勝です!』
P「相変わらずの強さですね」
社長「なかなか有望そうだろう? ところでキミ、用件は何かね?」
P「あ、はい。明日の響のオーディションの件ですが――」
2011年5月23日(日)15:00 オーディション控え室
P「やったな響! 合格おめでとう!」
響「へへん、自分にかかれば当然だぞ!」
P「これで、オーディション二連続合格か」
響「この調子なら、ランクアップも間違いなしだね!」
P「いやあ、さすが響だよ!」
響「いいや、自分だけの力じゃないよ」
P「へ?」
響「プロデューサーが、ずっと近くで見ててくれたからさ!」
P「そうかぁ? 俺の力は、あんまり関係ないと思うけどなぁ」
響「そんなことないって! プロデューサー、これからもよろしく頼むぞ!」
P「ああ! もっともっと、一緒に高みを目指そうな!」
2011年7月3日(日)15:45 Pの自宅
P「ふぅ……。久しぶりの休日だし、くつろがないと損だよな」
P「テレビでも見るか」プチッ
『二番手にマイネルラクリマ、さらにはヒラボクインパクトが続いていきます』
P「競馬中継か。ん?」
『さあ最後の直線! ここで一頭、外から上がってきました!』
P「あの黒い馬、見覚えがあるぞ。名前は……えーっと」
『やってきたのはフレールジャックです!』
P「そうだ、フレールジャックだ」
『外からフレールジャック! ここで粘るマイネルラクリマをとらえました!』
P「おお……!」
『フレールジャック、ゴールイン! これで無傷の三連勝です!』
P「いやあ、また勝っちゃったよ」
P「……本当に強いな、この馬」
P「迫力があるというか、他の馬を抜くときの切れ味がすごいというか」
P「この分なら将来、とんでもないスターホースになるんじゃ……」
P「…………」
P「……しばらく応援してみようかな、この馬」
P「えーっと、次はいつ走るんだろうか?」
P「社長なら知ってるかな?」
2011年7月10日(日)11:00 事務所
美希「ハニー! 見て見てなの!」
P「どうしたんだ美希? これは、今日発売のアイドル雑誌か?」
美希「じゃーん! ミキの写真、こんなにおっきく出てるよ!」
P「おおスゲエ! あ、こっちにも! おお、こっちの雑誌にも!」
美希「この雑誌なんて『将来のスター間違いなし』って書いてくれてるの!」
P「ああ、なれるよ! 美希なら絶対になれる!」
美希「ミキ、もっともっとキラキラするの! 次のお仕事、早く来ないかなぁ……」
P「よし、まかせろ美希! 俺が今すぐ取ってきてやるからな!」
美希「ホント!? さすがハニーなの!」
P「お、おいおい美希、そんなにくっつくなって!」
美希「ハニー、大好きなのー!」
2011年9月25日(日)15:35 オーディション控え室
春香「プロデューサーさん、遅くなってごめんなさい!」
P「おう、お疲れ春香! 結果はどうだった?」
『スマートロビンがレースを引っ張ります。そのリードは三馬身』
春香「あれ? プロデューサーさんが見てるテレビ、競馬ですか?」
P「実は最近、注目してる馬がいてな。フレールジャックっていうんだ」
春香「へえ……。その馬、速いんですか?」
P「速いなんてもんじゃない! ちょっと見てみるか?」
春香「はい! どれどれ……」
『オルフェーヴル先頭! これを追ってウインバリアシオン!』
春香「ん……?」
『後方からフレールジャックがようやく追い込んで、三番手をうかがっています!』
P「あ、あれ……?」
『オルフェーヴルゴールイン! 2着にウインバリアシオン!』
P「負け……た……?」
『3着はフレールジャックが上がったか』
春香「えーっと……3着だったみたいですね」
P「……なぜだ」
春香「勝ったお馬さん、金色に輝いててかっこいいなぁ」
P「…………」
春香「プ、プロデューサーさん? 大丈夫ですか?」
P「あ? あ、ああ。すまない春香」
P「で、結果はどうだったんだ?」
春香「えーっと、3位でギリギリ合格でした」
P「ギリギリでも合格は合格だ。おめでとう!」
春香「ありがとうございます……はぁ」
P「……? どうしたんだ、ため息なんてついて」
春香「1位と2位の人とは、すごい点数の差があって……」
P「あ……なるほどな」
春香「ダンスもボーカルも、今の私とはちょっとレベルが違うなって……思いました」
P「……そうか。トップを目指すには、もっともっと努力しないといけないな」
春香「もちろんです! 今回負けた人に追いつけるように、これから精一杯練習します!」
P「その意気だ! 一緒に頑張ろう、春香!」
春香「はい! 次こそは1位通過しちゃいますよ! 1位通過!」
2011年10月23日(日)15:40 Pの自宅
P「社長から仕入れた情報によると、今日の大レースにあの馬が出るらしい」
P「そろそろ始まる時間かな」ポチッ
『スタートしました! 第72回菊花賞の発走です!』
P「よし、いいスタートを切ったぞ! 頑張れフレールジャック!」
『先頭集団にフレールジャック。人気のオルフェーヴルは中団からレースを進めています』
P「このレースには、前回負けた馬が出てるみたいだが……」
『ウインバリアシオンは最後方待機の作戦か』
P「二度は遅れを取らないはずだ! 普通に走れば……ん!?」
『おっと!? レースは中盤ですか、今度はフレールジャックが先頭を奪いました!』
P「え!? なんだなんだなんだ!? 急に先頭に立っちゃったぞ!?」
『フレールジャックがレースを引っ張ります! これは意外な展開となりました!』
P「そんな無茶なレースをして、大丈夫なのか……?」
『さあ第四コーナーのカーブ! フレールジャックは四番手に後退しています!』
P「ああ……こりゃダメだ……」
『これが三冠だ! オルフェーヴル強い! ウインバリアシオン追い込んで二番手!』
P「このオルフェーヴルって馬も、やっぱり強いなぁ……」
『オルフェーヴル、最後は流してゴールイン! ウインバリアシオン2着!』
P「…………」
P「10着ぐらいかな……」
P「…………」
P「……確かに上位の馬たちは強いけど」
P「相手以前に、自分に負けたような感じがするな……」
2011年10月29日(土)15:40 オーディション控え室
雪歩「プロデューサーごめんなさいぃ! 私……やっぱりダメダメですぅ」
P「そんなに落ち込むなって、雪歩。不合格で悔しい気持ちはわかるけどさ」
雪歩「……あの、プロデューサー」
P「ん?」
雪歩「今回の私、何がいけなかったんでしょうか……?」
P「うーん。今日の演技は全体的に、レッスンよりも気負ってたように見えたぞ」
雪歩「うぅ……絶対に受からないといけないって思ったら、固くなっちゃって……」
P「そっか……。自分に勝つのって、本当に難しいよなぁ……」
雪歩「で、でも私、同じ失敗はしません!」
P「お!」
雪歩「次のオーディションでは、どんなことがあっても自分に勝ってみせますぅ!」
P「その意気だ雪歩! 雪歩の芯の強さがあれば、絶対に勝てるとも!」
2011年12月3日(土)15:45 Pの自宅
P「いやあ、土曜日に休みなんて、何だか久しぶりだぞ……」
P「そういえば今日は、あの馬が走る日だったかな?」ポチッ
『スタートしました! 第64回鳴尾記念の発走です!』
P「お、始まった始まった。いいスタートだな!」
『ミッキーパンプキンとダノンスパシーバが、並んで先頭に立ちます』
P「今回のレースに、前回上位に来た馬は出ていない」
P「あとは自分にさえ負けなければ……」
『フレールジャックはいい手ごたえで、中団を追走していきます』
P「おお、今日はリラックスして走れてるんじゃないか?」
P「この分なら……」
『最終コーナーをカーブして、直線コースに入ります!』
P「勝てる!」
P「前回に比べて相手は格下のはず! ここから一気に伸びて!」
『外から追ってくるのはレッドデイヴィス、フレールジャックはその内!』
P「……あら?」
『レッドデイヴィスが先頭だ! 迫るショウナンマイティ、サダムパテック!』
P「お、おいおい……」
『ショウナンマイティ前に迫ってくるが、レッドデイヴィスゴールイン!』
P「…………」
『2着ショウナンマイティ、3着サダムパテック、4着にフレールジャックです』
P「……負けた」
P「相手は格下だと勝手に思ってたけど……」
P「何か、普通に強かったな……」
2011年12月10日(土)10:00 事務所
P「亜美、真美。明日はオーディションだぞ? レッスンは大丈夫か?」
亜美「だいじょーぶだよ! 明日の相手って、ランクが下の人ばっかりなんでしょ?」
P「……何?」
真美「らくしょーに決まってるって! だから兄ちゃん、真美たちと一緒にあそぼーよ!」
P「……そういう甘い考えはやめておけ」
亜美「へ? だって、負ける可能性なんて――」
P「そんなふわふわした気持ちで、100パーセント勝てるって断言できるのか?」
真美「そ、そりは……」
P「油断してると足元をすくわれるぞ! 相手はみんな、全力で挑んでくるんだからな!」
亜美「……兄ちゃんごみん」
真美「真美たちが間違ってまちた……」
P「わかればいいんだ。さ、レッスン頑張ってこい」
亜美真美「「はーい!」」
2012年2月5日(日)15:45 Pの自宅
P「ふう……ここの所忙しくて、疲れがたまってる気がするぞ」
P「でも、弱音を吐いてる場合じゃない。アイドルたちは、もっと大変なはずだしな!」
P「さて、時間時間っと」ポチッ
『スタートしました! 第62回東京新聞杯の発走です!』
P「よし、今回もいいスタートだ!」
P「さあフレールジャック、今日はどのぐらいの位置につけるんだ?」
『フレールジャックは五、六番手。その外側にサダムパテック』
P「ふーむ、前回と同じぐらいの位置か」
P「今日こそ、昔みたいな迫力あるレースを見せてくれよ……」
『コスモセンサーが先頭で、第四コーナーをカーブしていきます!』
P「よし行け! 頑張れフレールジャック! 頑張れー!」
『ミッキードリーム、フレールジャック、マイネルラクリマ上がってくるが!』
P「あ、あれ……全然伸びないぞ……」
『コスモセンサー逃げる、ガルボが二番手に上がってきた!』
P「ど、どうしたんだ……」
『ガルボとコスモセンサー、並んだ並んだわずかにガルボかゴールイン!』
P「…………」
P「……7着ぐらいか」
P「何というか……普通に負けたな……」
P「うーむ。迫力がかけらも感じられなかったぞ」
P「もしかして、体調がよくなかったのか……?」
2012年2月11日(土)13:00 事務所
P「……ん? やよい、何だか顔色が悪くないか?」
やよい「だ、だいじょうぶです! 私は元気です!」
P「本当か? ちょっと額を触るぞ」
やよい「あ……」
P「って、やよい! すごい熱があるじゃないか!」
やよい「こ、これぐらいへっちゃらです! 午後のレッスンに行ってきますね!」
P「ダメだやよい! 今日は早く帰って、ゆっくり休むんだ!」
やよい「で、でも、オーディションが近いのに休むなんて……」
P「無理して悪化して、本番で力を出せなかったらどうするんだ?」
やよい「うぅ……」
P「それに俺だけじゃない。やよいの兄弟たちにも、心配をかけることになるんだぞ」
やよい「……わかりました。プロデューサーのお話が、ぜーんぶ正しいと思います」
P「ああ、よろしく頼むぞ。体調管理だって、立派なアイドルの仕事なんだからな?」
2012年7月8日(土)13:00 社長室
P「社長、お話とは何でしょうか?」
社長「まずは、彼の近況からだ」
P「彼? 誰ですか?」
社長「フレールジャック君だよ。忘れたとは言わせないぞ、キミぃ」
P「あ、ああ……。そういえば最近、走ってないですね」
社長「今は長期休養中で、復帰は秋になるそうだよ」
P「な、なるほど。わざわざ教えていただき、ありがとうございます」
社長「それから次は、律子君のアイドル復帰の件だ」
P「え!? 律子がアイドルに戻るんですか?」
社長「やはり、律子君にはアイドルの舞台が似合う。そうは思わんかね、キミ?」
P「それは、まあ確かに……そうですね」
社長「プロデュースは、もちろんキミにまかせるつもりだよ」
P「わかりました。全力で取り組みます」
社長「うむ、よろしく頼むよ。それから最後にもう一つ、キミに伝えておこう」
P「何です?」
社長「律子君が、今後のオーディションでトップを取り次第……」
P「取り次第?」
社長「新たなユニット、『765スターズ』を発足させるつもりだ」
P「何だか野球チームの名前みたいですね……。ところで、メンバーは誰ですか?」
社長「キミも何となく、予想がつくんじゃないのかね?」
P「……もしかして」
社長「その通り! 律子君を含めた、765プロ全員がメンバーだよ!」
2012年9月8日(土)15:35 事務所
P「ふぅ……」
P「いよいよ今日が、律子の復帰後初オーディションか」
P「現地までついてこなくていい、なんて言われたけど……」
P「……不安だなあ」
P「テレビでもつけて、気を紛らわすか」ポチッ
『さあ、先頭はワンダームシャ。軽快に飛ばしていきます』
P「お、競馬中継。そういえば、あの馬もそろそろ復帰するらしいけど……」
『そして二番手には、休み明けとなるフレールジャック』
P「あ! いた!」
『さあ七か月ぶりとなるフレールジャック、果たしてどういったレースを見せるのか』
P「そうか、今日が復帰戦だったのか。これはナイスタイミングだったな」
『これから最終コーナーをカーブ。最後の直線です!』
P「さて、どうなる?」
『さあ、ここで先頭が変わった! フレールジャックが先頭だ!』
P「おおっ!? ひ、久しぶりに勝つのか!?」
『しかし追ってくるのはランリョウオー! 残り200メートル!』
P「ま、まずい! 追っかけてくる馬が速い!」
『ランリョウオーが追い上げるが、内で粘るフレールジャック!』
P「粘れ粘れ粘れ粘れ粘れ! 頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ!」
『フレールジャックかランリョウオーか、二頭並んでゴールイン!』
P「ど、どっちだ!? どっちが勝った!?」
一旦ここで切ります。
続きはまた夜にでも投下する予定です。
よろしくお願いいたします。
続きを投下します。
『わずかにフレールジャック、粘り通したか!』
P「か、勝ったのか……!?」
P「……よ」
ガチャ
律子「プロデューサー、戻りました――」
P「よっしゃああああああああ!!」
律子「ひあああああああああっ!?」
P「え!? あ、律子」
律子「び、びっくりさせないでください! いきなり大声出して!」
P「お、おお……すまんすまん。悪かった」
律子「ところで、誰から聞いたんですか?」
P「へ、何を?」
律子「とぼけないでください。今日のオーディションの結果です」
P「いや、俺知らないけど?」
律子「またまたウソばっかり。私の結果を聞いて、思わず叫んじゃったんですよね?」
P「ちなみに何位?」
律子「一位です」
P「……マジ?」
律子「マジです」
P「本当に? 復帰戦でいきなり一位なの?」
律子「あのねえ。この状況で、私が嘘を言うとでも――」
P「よっしゃあああああああああああ!!」
律子「ひゃああああああああああああ!?」
2012年10月1日(月)15:30 Pの自宅
P「いよいよ明日から、『765スターズ』の活動が始まるんだなぁ……」
P「きっとこれまで以上に、忙しくなるに違いないぞ!」
P「今日はゆっくり休んで、明日への英気を養わないとな!」
P「……っと、そろそろか。テレビテレビ」ポチッ
『スタートしました! ポートアイランドステークスの発走です!』
P「よし、いいスタートだなフレールジャック! 昔と変わらずに!」
P「さて、どのあたりの位置を取るんだ……お」
『フレールジャック、今日は後方からレースを進めます』
P「ふーん、この間よりもずいぶん後ろだな」
P「でも復活した今なら、多少後ろからでも勝てるはずだ!」
『ガンダーラにミキノバンジョーが迫る! 第四コーナーをカーブしていきます!』
P「よし、ここから一気に……ん?」
『おっとフレールジャック、ちょっと前が壁になっている!』
P「な、何だ? フレールジャックの前に、馬群が密集してるぞ……!?」
『ミキノバンジョー粘るが、オリービンが上がってくる! さらにゴールスキー!』
P「ま、前が壁になって進路がない! もうすぐゴールだってのに!」
『フレールジャックは馬群の中だ! これは厳しいか!』
P「あ、ああっ……ああ」
『先頭はオリービンか、ゴールスキーか並んでゴールイン!』
P「……13着ぐらいか……?」
P「いくらなんでもあんなに前が壁になってたら……」
P「さすがに厳しいよな」
P「うーん。競馬の世界にも、こういう試練があるんだなぁ……」
2012年10月6日(土)15:30 事務所
P「どうしたんだ、千早? 何だか浮かない顔をしてるな」
千早「最近、壁に当たったみたいで……。微妙な感情の揺れを、うまく表現できないんです」
P「壁……か」
千早「せっかく『765スターズ』として、新しいスタートを切ったのに……スランプなんて」
P「千早、気持ちは痛いほどわかる。だけど、今は焦らない方がいいぞ」
千早「でも……」
P「大丈夫だ! 千早の歌で打ち破れない壁なんて、この世にあるわけがない!」
千早「!」
P「だから心配するなって! きっかけがあれば、スランプなんてすぐ脱出できるさ!」
千早「……はい。あの……プロデューサー」
P「ん、どうした?」
千早「励ましてくれてありがとうございます。私、頑張ります……!」
2012年12月8日(土)15:45 Pの自宅
P「明日は、『765スターズ』の初オーディションか……」
P「やるだけのことはやったはずだ。後はみんなの力を信じるだけだな」
P「おっと、そろそろあいつが走る時間かな」ポチッ
『スタートしました! 第63回朝日チャレンジカップの発走です!』
P「今日のスタートは……まずますか」
『フレールジャック、今回は二番手につけていきました』
P「この間は後ろからで、今度は二番手か」
P「……素人考えだけど、どうもポジションが一貫してない気がするなぁ」
P「でもこの間勝った時も、確か二番手だった気がするぞ!」
『先頭はイケドラゴン。フレールジャックが二番手で、第四コーナーをカーブ』
P「さあ、こっからどうだ……!」
『先頭イケドラゴンに、並んできたフレールジャック!』
P「よし、先頭に立ったか!?」
『フレールジャック先頭だが、後方からアドマイヤタイシ、ショウリュウムーン!』
P「うわ、後ろからたくさん迫ってきたぞ!」
『リルダヴァル、デルフォイ、ヒストリカル! 後続が殺到します!』
P「おおお!? 何が何だかよくわからん!」
『トライアンフマーチ、タガノエルシコも来る! 横に広がって大接戦!』
P「あ、抜かれたっぽいな……」
『大激戦だが、わずかにショウリュウムーンかゴールイン!』
P「う、うーん……8着ぐらいかな?」
P「……でも、差は本当にちょっとだけだったな」
P「順位は悪くても、それほど負けてはいないと思うが……」
2012年12月9日(日)17:00 事務所
P「『765スターズ』の初オーディション、結果は6位か……」
真「ボクたち、まだまだ実力不足なんですね。ショックだなぁ……」
P「いや。俺は、そこまで落ち込む必要はないと思う」
真「どうしてそんなことが言えるんですか!? だって、6位ですよ!」
P「確かに順位はイマイチに見える。でも、獲得ポイントによーく注目してくれ」
真「……あ! 1位から6位まで、ほとんどポイント差がない!」
P「そういうことだ。俺たちと他との差は、見た目の順位ほど大きくないんじゃないか?」
真「そうか、そういう考え方もあるのか……」
P「まあ、色んな視点から物事を見るのも大切ってことだな」
真「さっすがプロデューサー! 勉強になりました!」
P「ははは……。次のオーディションは一か月後だ。気を落とさずに頼むぞ、真!」
真「了解です! 次回はガツーンと行きますよ! ガツーンと!」
2013年1月13日(日)15:35 Pの自宅
P「来週は二回目の『765スターズ』のオーディションだな」
P「アイドルたちの呼吸は、前回よりも合ってきてる」
P「果たして、どれぐらい順位を上げられるか……」
P「ふぅ……そろそろあいつの発走時刻かな」ポチッ
『スタートしました! ニューイヤーステークスの発走です!』
P「あっ! 遅れた!?」
『おっとフレールジャック、やや出遅れてしまいました』
P「何てこった……このロスを挽回するのは厳しくないか……?」
『フレールジャック、今日は後方から。しかし、徐々にポジションを上げていきます』
P「うーむむ……走りは悪くないと思うんだけど……」
『前はレッドスパーダ、オウケンサクラ、ミトラと続いて直線です!』
P「先頭とは離れすぎてるかなぁ……」
『さあレッドスパーダ、ミトラ、そしてフレールジャックが三番手に上がってくる!』
P「おお、それでも来てるぞ来てるぞ! よし、行け行け! 頑張れ頑張れ!」
『ミトラ先頭! フレールジャック、二番手までは上がってきたが!』
P「あー……。ちょっとトップとは差があるかな……」
『ミトラ1着でゴールイン! 2着にフレールジャック!』
P「むう……惜しかった」
P「……スタートで遅れなければな」
P「でも、最後の勢いは見どころがあったぞ!」
P「これなら近い将来、結果がついてくるんじゃないか?」
2013年1月20日(日)17:00 事務所
P「よし、今回のオーディションは2位か! いい感じだな!」
貴音「申し訳ありません、あなた様……」
P「お、おいおい貴音。どうして謝るんだ?」
貴音「とっぷあいどるを目指す身でありながら、2位に甘んじることとなり……」
P「大丈夫だ! 少なくとも俺は、今回でトップへの手応えを掴めたぞ」
貴音「まことですか?」
P「ああ! みんなの一体感が、前回よりも格段に増してたからな」
貴音「それは……はい。最近日増しに、皆の気持ちが一つになっていくのを感じております」
P「だろ? この調子でチームワークを高めていけば、いずれ結果はついてくるさ!」
貴音「……ふふっ。そうですね、あなた様の言うとおりです」
P「よし! これからも頑張ろうな、貴音!」
貴音「はい! 次こそ目指せ、とっぷあいどる、です!」
2013年2月17日(日)15:30 事務所
P「『相談があります。お暇な時間によろしくお願いしますね』か……」
P「あずささん、どうしたんだろう?」
P「……まだ約束の時間までは少しあるか。それなら」ポチッ
『スタートしました! 洛陽ステークスの発走です!』
P「む……。今回も少し出遅れたか、俺の愛馬は」
P「でも大丈夫そうだ。すぐ前に上がっていったぞ」
『一番人気のサウンドオブハートは5番手。その後ろにフレールジャックです』
P「うんうん。スムーズに走ってるな、フレールジャック」
『オウケンサクラが後続を離して、最終コーナーのカーブを迎えます』
P「よし、こっからだフレールジャック! 行け行け行け!」
『フレールジャックも上がってくるが、外からサウンドオブハートが伸びてくる!』
P「あら……あっという間に引き離されちゃったぞ」
『先頭はサウンドオブハート、二番手争いの一角にフレールジャック!』
P「あらららら……」
『2着争いは接戦だが、サウンドオブハート突き抜けてゴールイン!』
P「……結局、フレールジャックは4着だったか」
P「むぅ、勝てそうで勝てない。もどかしいというか、いじらしいというか……」
『若き牝馬サウンドオブハート、素晴らしい競馬を見せました!』
P「え、勝った馬ってメス馬なの!? しかも若いって――」
あずさ「いいわねぇ……。やっぱり若いっていいわねぇ……」
P「うわっ!? あ、あずささん、いつからそこに!?」
あずさ「うふふ~。お馬さんたちが最後のカーブを曲がる、少し前からですね~」
P「あずささん。相談って何ですか?」
あずさ「私、みんなの足を引っ張ってるんじゃないかと思って……」
P「そんなこと、あるわけないじゃないですか。どうしてそう思うんです?」
あずさ「だって私、一人だけ20代ですもの……」
P「へ?」
あずさ「若い子だけで固めた方が、もっとウケがいいんじゃないかしら~?」
P「あずささん。さっきの競馬で俺が応援してた馬なんですけど」
あずさ「はい?」
P「年齢を重ねるにつれて、昔と違う新たな魅力が出てきたように感じるんですよ」
あずさ「それはつまり、私が年を取ってるって言いたいのかしら~?」
P「え!? い、いや、そういう意味では決して――」
あずさ「うふふ~」
P「と、とにかく! あずささん抜きの『765スターズ』なんて、俺には考えられませんから!」
あずさ「うふふふ~。ありがとう、プロデューサーさん……」
2013年5月18日(土)15:45 Pの自宅
P「次のオーディションまで、もう残り一週間か」
P「三度目の正直でトップ通過! といきたい所だな!」
P「さーて、今日の俺の愛馬は?」ポチッ
『スタートしました! メイステークスの発走です!』
P「おわっ!?」
『おおっとフレールジャック、今日もスタートが良くありません』
P「……またか。確か昔は、いつも良いスタートを切ってたと思うんだけどなぁ……」
『先頭から後方まで、かなり縦に長い展開となっています』
P「何とか盛り返して中団までは上がってきたか……しかし」
『さあ、最後の直線コースに入ります! 先頭集団が、後続を大きく離している!』
P「……これ、後ろにいる馬届くのか……?」
『さあ、馬群の中からフレールジャック!』
P「おお、来た来た来た! 頑張れ頑張れ! 頑張れー!」
『中からフレールジャックが追い上げてきた! 再内を突くのはマルセリーナ!』
P「追い上げてる追い上げてる! 追い上げてるんだが……」
『しかし先頭はタムロスカイ、二番手セイウンジャガーズ! 大勢は決したか!』
P「……ダメだ。やっぱり前にいた馬には届かない……」
『タムロスカイ、今1着でゴールイン! 前にいた各馬が、上位3着までを占めました!』
P「……またしても4着か」
P「よく追い上げてるんだよ。よく追い上げてるんだけど……」
P「これがちょっとした、勝負のアヤってやつなのかな……」
2013年5月25日(土)17:00 事務室
P「今回のオーディションは3位か。もっとやれると思ったけどなぁ」
伊織「同感よ。勝つ気で挑んだだけに正直……ショックだわ」
P「伊織、敗因は何だと思う?」
伊織「そうね……。私達の前のグループ、思ってた以上に演技が素晴らしかったわ」
P「ふむ……」
伊織「審査員も沸いてたみたい。その後だったから、ちょっと雰囲気に飲まれたかも……」
P「なるほどな。実力差がない中で明暗を分けるのは、順番、当日の体調、展開……」
伊織「ふん。言い訳するなんて、私らしくないわね」
P「まあ、勝負は時の運もある。次回はきっと、俺たちに運が味方するさ!」
伊織「だといいけど。それじゃ、レッスンに行ってくるわ」
P「お、おい伊織。最近レッスンのやり過ぎじゃないか? 少しは体を休めた方が……」
伊織「休んでなんかいられないわ。次は何があっても、絶対勝ってみせるんだから!」
P「お、おい伊織! くれぐれも、ケガにだけは気をつけてくれよなー!」
すみません、また一旦切ります。
次の投下で終了させる予定です。
また後ほど、よろしくお願いいたします。
それでは続きを投下します。
2013年7月21日(日)15:30 事務所
トゥルルルルル トゥルルルルル
小鳥「はい、765プロですが――」
P『小鳥さんですか! やりました! やりましたよ!』
小鳥「うわびっくりした! プロデューサーさんですよね?」
P『はい、俺です!』
小鳥「その喜びっぷりは、もしかして……?」
P『はい! 『765スターズ』、今日のオーディションをトップ通過です!』
小鳥「おおおおおお! ついにやりましたね、プロデューサーさん!」
P『これで全国区のテレビに出演できます! 知名度もバンバン上がりますよ!』
小鳥「すごいすごーい! これは、盛大にお祝いしないといけませんね!」
P『来週の土曜日あたり、事務所でパーッとやりましょう!』
小鳥「大賛成です! プロデューサーさん、本当におめでとうございました!」
P『ありがとうございます! それではまた後ほど!』
2013年7月21日(日)23:00 Pの自宅
P「みんな、本当に嬉しそうだったなぁ……」
P「そうだよなぁ……なんてったって、全国デビューだもんなぁ……」
P「このチャンスを活かせれば、全員まとめてトップアイドルも夢じゃないぞ!」
P「……おっと。そういえばすっかり忘れてた」
P「今日は俺の愛馬も、レースがあったんだよな!」
P「…………」
P「……思えばフレールジャックには、色んなことを教えてもらった気がするなぁ」
P「今の俺があるのは、あいつのレースをずっと見てきたからかもしれないな」
P「よし、それじゃあ録画したDVDを再生するか!」プチッ
『スタートしました! 第61回、中京記念の発走です!』
P「おっ!」
『全馬、揃った綺麗なスタートを切りました』
P「今日は出遅れてないぞ! おおっ!」
『フレールジャックが先手を取りました。先頭はフレールジャックです』
P「トップに行ったぞ! しかも、楽な感じで走ってる!」
『フレールジャックが主導権を握ったまま、第三コーナーに入ります』
P「いいぞいいぞ! これはひょっとして……」
P「『765スターズ』の晴れの日に愛馬の勝利なんて、奇跡みたいなことが……」
P「でもそんな出来過ぎな話があったって、いいじゃないか!」
P「よし、頑張れフレールジャック! あともう少しだぞ!」
『さあ、これから第四コーナー……おっと!?』
P「え?」
P「な、何だ……? フレールジャックが下がっていく……?」
『フレールジャックどうした!? ずるずると後退していきます!』
P「お、おい……」
『あーっと、どうやら故障発生か!』
P「何だよ……これ……」
『せ、先頭はシャイニーホークに変わっています!』
P「まさか……ケガ、しちゃったのか……?」
『……さあ第四コーナーをカーブして、これから直線コースに入ります!』
P「そんな、馬鹿な……」
『大外からフラガラッハ! フラガラッハが前に出るか!』
P「…………」
『フラガラッハ、今1着でゴールイン! 昨年に続いて、中京記念を連覇!』
P「…………」
『なおフレールジャックは故障発生。競走を中止しています』
P「…………」プチッ
P「……大丈夫なんだろうか?」
P「そんなに重いケガじゃないといいけど……」
P「…………」
P「……ネットで調べてみるか」カタカタ
P「…………」カタカタ
P「…………」カタカタ
P「!!」
P「…………」
P「ひ、左第1指関節……脱臼」
P「あ、安……」
P「安楽死処分……」
P「…………」
P「……う」
P「ウソだろ……?」
P「…………」
P「…………う」
P「うう……」
P「う……」
P「どうしてだよ……どうしてなんだよ……」
P「あんなにいつも頑張って走ってたのに……」
P「レースで、俺に色んなことを教えてくれたのに……」
P「…………」
P「うう……」
P「うう……くそっ……」
P「どうして……どうして……くそ……!!」
P「くそおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
P「うああああああああああああああああっ!!」
P「うあ……うううっ……」
P「フレールジャックが……」
P「俺の……愛馬が……」
2013年7月27日(土)16:10 事務所
小鳥「それではこれから、祝勝会を始めたいと思いまーす! かんぱーい!」
カンパーイ!
響「それにしても、本当に全国デビューできるんだな! 信じられないぞ!」
美希「これも全部、ハニーのおかげなの!」
P「いや……俺の力なんて、大したことないよ」
春香「またまたぁ。プロデューサーさん、謙遜しないでくださいよ!」
雪歩「そうですよぉ。プロデューサーはすごいですぅ!」
P「いやいや……俺なんか全然全然……」
真美「……ねえ、兄ちゃん。何だか最近、元気ないんじゃない?」
亜美「うん、亜美もドーカンだよ。どったの?」
P「……まあ、ちょっとな」
やよい「もしかして、体の具合が悪いんですか?」
P「いや、違うんだやよい。……そうじゃないんだ」
P「……実は、知り合いに不幸があってな」
やよい「あ……ご、ごめんなさい!」
律子「なるほどね。最近のプロデューサーの重たい雰囲気は、それが原因か」
P「え? 俺、そんなに酷かった?」
千早「酷いなんてものじゃありません」
真「はっきり言って、別人ですよ! 話しかけても、生返事ばっかりだし」
P「……そうだったか。すまなかったな、みんなに心配かけたみたいで」
貴音「よほど大切な方だったのですね。……お悔み申し上げます」
P「ありがとう、貴音。あいつもきっと、空の上で喜んでるよ」
あずさ「あの……プロデューサーさん? 元気出してくださいね」
伊織「そうよ! アンタが暗い顔してると、こっちまで気が滅入ってくるんだからね!」
P「ああ……そうだな。なるべく早く、気持ちを切り替えられるように頑張るよ」
小鳥「それにしても社長、遅いわねぇ……」
P「確か開始時刻から、ちょっとだけ遅れるって言ってましたけど――」
ガチャ
社長「すまんすまん! 打ち合わせが長引いてしまってね」
P「お、噂をすれば。お疲れ様です!」
小鳥「社長、飲み物は何にしますか?」
社長「まあ待ちたまえ。その前にテレビだ」ポチッ
P「テレビですか? 何か緊急のニュースでも?」
『スタートしました! 本日の小倉競馬場、最終レースの発走です!』
P「あ……」
小鳥「社長、こんな時に競馬中継ですか?」
社長「すまんな音無君。だが、どうしてもこのレースは見ておきたいのだよ」
『先頭はタマモピッコロ、続いてゲットハッピーが二番手』
P「あの……すいません社長。俺、今競馬は見たくないんですけど……」
社長「いいや。キミにはぜひとも、見てもらいたいんだ。彼のためにもね」
『それからポポルブフ、ケイワイツヨシと続きます』
P「ですから俺は、その彼を思い出すのが――」
響「お、何だか面白そうだな! どの馬も良い体つきで、速そうに見えるぞ!」
美希「ねえねえハニー! ハニーはどのお馬さんが勝つと思う?」
P「悪い美希。俺、今はそんな気分じゃ――」
『そしてここにいるのがマーティンボロ。先日亡くなったフレールジャックの弟です』
P「……え!?」
春香「ん?」
あずさ「あら?」
春香「フレールジャック……。この名前、ずっと昔にどこかで聞いたことがあるような?」
あずさ「あら、春香ちゃんも? 実は、私もそうなのよ」
雪歩「マーティンボロかぁ。真っ黒くてかっこいい馬ですねぇ、プロデューサー」
P「…………」
雪歩「プロデューサー……?」
美希「ハニー? 何かヘンだよ?」
『さあ、マーティンボロは中団の位置。これから第三コーナーに入ります』
P「……あいつの……弟……」
P「…………」
亜美「に、兄ちゃんどうしたのさ!? 急にマジな顔で画面をギョーシしちゃってさ!」
真美「おそらく兄ちゃん、さっきの馬を応援することに決めたんじゃん?」
やよい「それなら私も応援します! マーティンボロさん、ファイト―!」
美希「ミキも応援するの! 頑張るのー!」
春香「うーん、思い出せないなあ。昔のオーディションの時だったかなあ……」
あずさ「あ! 前に相談をした時、プロデューサーさんがテレビで応援してたお馬さんって……」
春香「……あっ! あの時控え室で、プロデューサーさんに教えてもらった馬の名前、確か……」
『第四コーナーを回って、最後の直線です!』
『さあ、マーティンボロは大外に進路を取った!』
律子「うーん、コーナリングで外にふくらんだわね……」
千早「ずいぶん外に振られてしまったわ。これでは、勝つのは厳しいかしら?」
『さあ先頭はクリサンセマム! それを追って外からマーティンボロ!』
真「いや、来てるよ来てるよ! うわっ、もの凄い伸びだ!」
伊織「いけるわ! あともうひと息よ! 負けるんじゃないわよ!」
『二頭の馬体が並ぶ! 勢いは外のマーティンボロか!』
貴音「これは……恐ろしい気迫ですね。まるで、何かが乗り移ったかのような……」
あずさ「勝ってちょうだい! 勝って! お願い、勝ってぇ!」
春香「…………」ギュッ
小鳥「あ……!」
響「おっ! おおっ! 勝てるぞ!」
『さあここで、マーティンボロが前に出た!』
あずさ「……!」
春香「やった!」
『マーティンボロだ! マーティンボロだ!』
社長「うむ!」
『マーティンボロ先頭で今、ゴールイン!』
やよい「うっうー! やりました! 1着でーす!」
亜美「おっしゃー!!」
真美「やったじぇーい!!」
伊織「……ふぅ。ま、この伊織ちゃんが応援したんだから、当然よね」
律子「ふぅん……あんなにコーナーでロスがあったのに勝つなんてね」
千早「そうね。正直、2着ぐらいが精一杯かと思ったわ」
響「いやぁ、最後のスパートにはビックリしたぞ!」
真「だね! ボク、興奮して鳥肌が立っちゃったよ!」
貴音「あの気迫は、わたくしたちも見習わなければなりませんね」
雪歩「プロデューサーさん、よかったですねぇ……あれ?」
P「…………」
美希「ハニー……泣いてるの?」
春香「美希。今は、プロデューサーさんをそっとしといてあげようよ」
美希「え? でも――」
あずさ「そうね~。私も、それがいいと思うわ。ね?」
美希「む~……。何だかよくわからないけど、そうするの」
小鳥「それじゃ、プロデューサーさん。落ち着いたら、一緒に盛り上がりましょうね!」
P「…………」コクリ
社長「……彼がいなくなって、つらいとは思うが」ポン
P「……社長」
社長「これからも765プロをよろしく頼むよ、キミ」ポンポン
P「……はい」
P「ありがとな……フレールジャック」
『勝ったのはマーティンボロ! 亡き兄、フレールジャックに捧げる見事な勝利でした!』
完
以上になります。
デビュー戦の走りに衝撃を受け、最後まで応援し続けたこの馬を忘れないために、
今回SSを書かせていただきました。
多少誇張している部分があるかもしれませんが、ご容赦ください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
あと、>>65の雪歩→Pの呼称を間違えてしまいました。
正しくは呼び捨てですね。
大変失礼いたしました。お詫び申し上げます。
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