牡丹「あんたの花言葉ってさ」薔薇「んあ?」(358)


よく晴れた午後の昼下がり。

とある一軒家のとある花壇では、今日も暇を持て余した花たちがダベっていた。



牡丹「欲張りすぎじゃね?一人だけ多くね?ずるくね?」

薔薇「しょうがないじゃん。愛っていったら薔薇なんだから」

牡丹「なんで人間は、こんな棘棘の花に夢中なんだろ。まじ理解不能だわ」

薔薇「この棘がまたいーんじゃん?」

牡丹「……はあ。暇だ」

薔薇「……暇だな」

牡丹「…光合成でもするかぁ…」

薔薇「…やってなかったのかよ…」

牡丹「……」

薔薇「……」


話のネタが尽きるくらい暇だった。

牡丹「……ねえ」グデーン

薔薇「なんだよ…。昼寝したいから静かにしてて」

牡丹「私の花言葉知ってる?」グデーン

薔薇「知らねえよ。興味もねえよ」


牡丹「…『王者の風格』」


薔薇「……ぶっはwww」

牡丹「私こそがキング」

薔薇「どこにwwww風格wwww」

薔薇「いま超グデってしてるのにwwwwこんな王者やだwwww」

牡丹「wwwwwwww」



大根「おい!花壇のかしまし娘ども!お前らうるさいんだよ!」

パセリ「毎日元気だなーあいつら」

ニンジン「ほんとですねえ」



花壇の隣にある家庭菜園から、大根が半身を乗り出して、

花壇のレンガに身を叩きつけた。

一般的に人間社会で「壁ドン」といわれるものである。

壁を叩くだけで隣人に「お前うるせえよ」と伝えられる気軽さが人気のそれだが……

大根の身はレンガに比べてとても柔らかいので、この行為をすると自身の体も削れてしまう。

野菜社会ではかなりリスキーな行為として知られている壁ドンだった。



大近「ぐぁあッ!」

オクラ「大根さん!大丈夫ッスかぁ!」

薔薇「またやってるwww大根さんアホスwww」

ゴボウ「……花言葉の話してるの…?」

牡丹「あんたら野菜にはないだろうけどwww」



ゴボウ「あるよ……花言葉……ふふふ」

薔薇「えっ?あんの??」

ゴボウ「聞きたい……?」

牡丹「聞きたい聞きたーい!」

ゴボウ「……」





ゴボウ「……『私をいじめないで』」

薔薇「ファーーーーーーッwwwwwwwwwwwwwwwww」

牡丹「ヒャーーーーーーッwwwwwwwwwwwwwwwww」


薔薇「ちょまwwwwその花言葉はいつどんな時に使うものなのwwwww」

牡丹「ヒェーーッwwwwwやばい気孔閉じるwwwwww気孔閉じちゃうwwww」

ゴボウ「あなたたちはいいよね……かわいい花言葉とかかっこいい花言葉でさ…」

ゴボウ「ほんとどんな人が、何を思ってこの言葉をつけてくれたのかわかんないよ…」

薔薇「いじめられっこがいじめっ子にゴボウ差し出してる姿想像したらヤバイwww」

牡丹「笑いすぎて葉緑体吐きそうwwwwww」

アルパラガス「ちょっとぉ、ゴボウがかわいそうでしょ?あんまりいじめないであげてくれません?」

薔薇「ゴメリンチョスwwww」

牡丹「テラワロリッシュンヌwwww」



ゴボウ「もういいよ……この間も、もっとボンキュッボンの女がいいって彼氏に振られたし……どうせ私なんて…」グス

大根「えっ 彼氏ってあのニンジン?」

ゴボウ「ええ……そのあとヒョウタンとすぐ付き合ってたし……ぅぅ…」

オクラ「ああーっ 薔薇と牡丹がゴボウ泣かせたッスー」

薔薇「えっ」

牡丹「えっ」

ゴボウ「……」シクシク


薔薇「ちょ、ごめん悪かったって!あんなカロテン野郎忘れなよ」

牡丹「そうそう!それにさ、あんたの花言葉もけっこう個性的で素敵だってば!」

ゴボウ「ほんとに……そう思ってる…?」

牡丹「ま、まじまじ!!」

牡丹「例えばさ……こういう状況だったらどうよ…!」



道行く人々は吹きすさぶ冷たい風に、首をマフラーに埋めることで対抗している。
寒空の下、細い道を少女が白い息を弾ませながら駈けていた。


女「はぁっ、はぁっ……やばいよまた寝坊しちゃったよ~!」

女「年が明けたばっかりなのに…新年早々遅刻魔になるなんてやだ…!」

女「ただでさえ人見知りであんまり友達いないのに、根暗でその上不良なんて…」

女「!? キャッ! い、いきなり後ろから自転車が…!」


キキーッ


男「ちょりーーーーす!相変わらずドンくせーなお前!」

女「(…うわ……)お、男くん……」タジタジ

男「お前、今(うわ…)とか思ってねえだろうな」ギロ

女「思ってない!思ってないよ!」

男「ふうん…」

女「あの…ここ道が細いから……そこにいられると、学校に行けないんだけど…」

男「ディーフェンスwwディーフェンスww」

女「えええっ……早く行かないと、私遅刻しちゃうよ……」

男「別にとおればいいじゃんwww」

女「だから男くんの自転車が……」

男「あ!やべえ!HR始まっちまうぜ!じゃあな女!!」ギュンッ

女「え!ちょっ……自分だけ……!!」








……ガラッ

先生「……遅刻だぞ、女」

女「す、すいません…」

女(うう……)

女「今日は朝から散々だったよ……」

女「えっと…次は音楽室に移動か……」

女「……ん?」


クスクス クスクス


女「え…なんか、私笑われてる?」ドキ

女「なんなの……は、早く音楽室に行っちゃおう」


ガラッ


女友「……ねえ、背中のその紙、どうしたの?」

女「えっ?背中って……あああ!なにこれ!」ペラ

女「『私は遅刻魔です』って大きな字で書いてある……!」


男「wwww」

女(ま、また男くんが……!)

放課後 図書館


女(はぁぁぁ)

女(なんでいっつも男くんは私に意地悪するんだろう)

女(昔は……小学校の時は、もっと優しかったのにな。なんで嫌われちゃったんだろ…)


女(図書館でこうして一人で本を読むことが私の唯一の楽しみ…)

女「ん?花言葉図鑑かぁ。ちょっと見てみよう」

女「ふむ」


スタスタ

女「もう日が暮れちゃった……また明日も学校か。やだなあ……」

女「また意地悪されたらどうしよう……ちゃんとやめてって言えない私も悪いんだろうけど」

女「でも、睨まれると恐いんだもん。なんとかして、いやだっていうのを伝えられないかな?」


そのとき彼女は商店街を通っていた。
その街の商店街にはいろいろなお店が入っている。

花屋、靴屋、肉屋、本屋―――そして八百屋。

彼女はちょうど八百屋の前を通過していた。
そして、何の気なしに視線を店先に並べられた色とりどりの野菜たちに向ける。

女「……!!」


彼女の目に、土だらけの牛蒡が飛び込んできた。


女「……!!」



次の日。

男は教室で仲間と昨日のテレビについて雑談していた。
彼が時々チラチラと扉の方を見ていることに気付く者はいなかった。


男友「でさー、……なあ、聞いてるか?」

男「ん?聞いてる聞いてる。……!」


ガラッ


女友「あ…女。おは、……!?」

男「…!?」


クラスの空気が、女の登場によって一気に凍結した。
より詳細に述べるとすれば、女のもっているモノを見て、である。


彼女は通学かばんを持っているはずの右手に―――

一本の牛蒡を握りしめていたのだった。

―――ゴボウ?
―――なぜ?


クラスメイトの動揺と疑惑の波が静かに広まっていく。
しかしまだ誰も声を発しない。いや、彼女の異様な空気に発せないのだった。

彼女はゆっくりと男の机に近づくと、手にしているゴボウを彼の机にボタリと落とした。


男「……!」


ゴボウはその長さからは机に収まりきらず、両端が机からはみ出している。
落ちた衝動で、土が散った。

男は矯めつ眇めつ机の上のソレを眺める。
どっからどう見ても、例の食物繊維豊富な根菜だった。


意味が―――行動の意味が、全く分からない。
男の全身から冷たい汗が噴き出た。

男は、説明を求めて女を見上げる。
しかし女は何も言わずに去ってしまった。
教室の空気はしばらくそのままだった……



その日、男の家の夕飯はきんぴらゴボウだったという。


牡丹「って感じで、どうかな!」

ゴボウ「唐突に何か始ったと思ったら、唐突に終わった……」

薔薇「意味がわかんないのはこっちだ馬鹿野郎www」

薔薇「途中までちょっと青春だったのに、なんで花言葉がホラーに使われてんだよ!馬鹿!ほんと馬鹿な王者の風格だな全く!」

牡丹「いや、こっからラブコメが始まんだって」

薔薇「無理やろーこっからは無理すぎやろー」

ゴボウ「…でも…」

ゴボウ「私の花言葉が誰かのメッセージになれたっていうのは嬉しいな……ありがとう、牡丹」

牡丹「いいってことよ」



キャベツ「あのう」

キャベツ「わ、私のも考えてくれませんか?私の花言葉も全然知れ渡ってなくて」

牡丹「キャベツの花言葉ってなんなん」

キャベツ「『利益』」

薔薇「え?」

キャベツ「『利益』」

薔薇「えっ」





牡丹「ぐっふwwwwwwwwww」

薔薇「みじけぇーッwwwwwwwww」

ゴボウ「超ストレートwwwwwwwww」

牡丹「これも使いどころが全くわかんねええええええwwwwww」

薔薇「利益があるってことは損害っていう花言葉もあんのwwwwwwww」

ゴボウ「ちょwwwwwゲッホゴホ!導管の水、師管に入ったイッテェwww」

今日はここまでで

昼ドラのかとおもった

>>21
あー しくじった
花は適当に決めたから別のタイトルにすればよかった
まぎらわしくてすまん


薔薇「『利益』……『利益』ねえ……」

牡丹「こういうことじゃないかな




供給曲線「ああ…。需要曲線さんがあんなに上にいる。頑張っても頑張っても彼に追いつけない…」

供給曲線「遠距離恋愛辛いよう…」シクシク

需要曲線「供ちゃん、泣かないで。僕たちが遠く離れてるのは辛い僕も辛いけれど…」

需要曲線「これを、受け取ってくれ」ポイ

供給曲線「…? これは…キャベツ? 確か花言葉は…」

需要曲線「そう。『利益』さ」

需要曲線「僕らが離れていれば離れているだけ、商品の価格は上がって利益も増える……」

需要曲線「だからこれは悲しいことじゃないんだよ」

供給曲線「需要曲線さん……そうよね。ありがとう」

供給曲線「でも、いつか均衡価格に到達できるよう、頑張るわ。私」

需要曲線「いつまでも待ってるよ、供ちゃん」


牡丹「……と、これでどうだいキャベツ」

キャベツ「ええーっ やです!こんなのやです!第一、私野菜ですから経済のことなんてあんまり分かりませんし!」

薔薇「我がままだなー」

牡丹「しょうがない野菜だなー」


薔薇「じゃあ、これで納得するかな……」

ゴボウ(……あ……今度は薔薇が考えるんだ……)

男はこのところ誰よりも早く登校していた。
毎朝彼の机の上に置いてある、土だらけのゴボウを、クラスメイトに見つからないうちに回収するためである。


男「やっぱりな…今日も置いてある」ガサガサ

男「もってきた袋にいれてっと。全く、最近夕飯がゴボウばっかりでうんざりしてきたぜ」

男「一体どういうつもりなんだよ、あのブス!」

男「根暗女め。前は朝練のときだけ早起きすりゃあよかったのによお…おかげで寝不足だっつのあの野郎」

男「今日はそのまま朝練だからどっちにしろ早起きだったけど」


そのまま部活に行こうと、竹刀と防具袋を背負いなおす。


男「………ん?」


男「……」チラ


竹刀


男「……!」チラ


ゴボウ


男「……ああ~~~~!!なるほど、なるほどな!!!」ピコーン

男「なんであいつがこんなことしてきたのか、やっと分かったぜ!!」

男「コミュ障にも程があるぜwww全く、俺の察しの良さがあったからいいもののwww」

男「直接言やあいいってのにこれだから根暗野郎は友達できねえんだっつのwwwwwwよっしゃさっそく部長に言わなくっちゃな!!」

休み時間


男「おい女!」

女「ひぇっ……なんでしょう…」ビク

男「お前の入部届け、剣道部に出してきたからな!」

女「…?」

女「……!?」

女「ええええ!?な…なんで!?」

男「なんでって、お前が入りたいって言ったじゃねーかよ」

女(言ってないよ!?)

男「はっはっはぁ……俺と同じ部活に入りたくて、竹刀に似てるゴボウを毎日俺に渡し続けてたんだろ?」

女「ち、ちが」

男「お前みてえなひ弱に務まるかわかんねぇが、せいぜい頑張れよマネージャー!!」

女「えっ えっ」

男「じゃあ今日、放課後体育館に来いよ!」

女「ねえ……!」

先生「席につけー。授業始めるぞー」

女(ああああぁぁ……)


女(なんでこうなったの……体育の成績1の私が、マネージャーとはいえ運動部なんて絶対無理!)

女(ていうか竹刀とゴボウってそんな似てる?男くん想像力たくましすぎるよ……なんで私が剣道部に入りたがってるっていう結論に至ったの!?)

女(いじめないでって言いたかっただけなのにー!)

放課後 体育館


女「本当は嫌なのにはっきりNOと言えない日本人……私です」

部長「む!マネージャー希望の女子生徒とは君のことかね!」

副部長「あらあらかわいい女の子ね」

女「あ…はい!よ、よろしくお願いします…っ」ドギマギ

男「おっせーよノロマwwwww」

女「うぐ…」


部員「私、女ちゃんの同学年だよ。よろしくね」

部員「俺も。マネージャーがいなくて困ってたから入ってくれて嬉しいぜ」

女「よ、よろしく……」




女(初めて会う人ばっかりで緊張するなぁ…人見知りの癖治したいよう)

女(こんなんでこれからやってけるかな…)

―――――・・・
―――・・・
メーン!
 コテー!


部長「うむ!!よし皆の者!しばし休憩にするぞい!!」

「「「はーい」」」

女「お疲れ様です皆さん。スポドリここに置いてあるんで、飲みたい方どうぞ。あとタオルです」

副部長「女ちゃん気がきくな~ ありがと」

女「いえ…」



女(入部から数週間経って、少しだけマネージャーの仕事も慣れてきたかな… 最初はどうなることかと思ったけれど)フウ

男「なあブス!さっきの俺の見事な一本見た?見た?」

女「えっ みてないけど…」

男「…ハァ?まだまだマネージャーとして半人前みてえだな……テメエ…」ギロ

女「ひっ」


女(相変わらず男くんは意地悪です…)ビクビク

部長「よーっし!今日の部活はここまで!!着替えして帰るぞい!!」

「「はーい」」


副部長「うっわあ…さむーい」

部長「何のこれしきで!情けないぞ副部長!!」

副部長「あんたが規定外すぎるのよ…なにコートもマフラーもなしって。馬鹿じゃないのほんと」

部長「心頭滅却すれば火もまた易し!北風もまた易し!!」

副部長「この剣道馬鹿……。あ、ここで男くんと女ちゃんとはお別れね。しっかり送ってあげなさいよ男くん?」

男「こんな女送るとかいやっすwww」

部長「ではまた明日!!二人とも気をつけて帰れよ!!」

女「お疲れ様でした…」

男「あーっ さっみい」ギコギコ

女「……さ、寒いね…」

男「早く家帰ってコタツに入りてえー」

女「…あの……男くんは自転車なんだから、私のことは放っておいて先に帰ってくれていいよ……」

女(一緒に帰るの気まずいし)

男「あ!? 副部長に逆らえって言うのかよ、てめえは?」

女「べべべ別にそういうわけじゃ」

男「くだんねーこと言ってねえでさっさと歩けやボケ!」ギロ

女「ごめん…… (恐い……)」




女「ふう……ああー恐かった。やっと家に着いた」

女(でも、剣道部に入ってから部長も副部長もよくしてくれるし、同学年の友達も増えたな…///)

女(今度みんなで遊びに行く約束もしたし…えへへ)

女(運動部なんて絶対やだって思ってたけど、入ってよかったかも。これも全部男くんのおかげなんだよね)

女(本人はいつも意地悪だけど…)ハァ

女(何か、お礼できないかな。そういえば、明日はバレンタインデーだっけ)

女(感謝の気持ちを込めて……『男くんの勘違いが、私にとって良い結果になりました』って気持ちを込めて)

女(そういえば、花言葉にそんなのあったな。甘すぎないいい感じの言葉)

女(よーし!そうと決まればさっそく商店街へ!)

聖☆バレンタインデー


男「今日も朝練かー ねっみーわマジ」スタスタ

男「……ん。よーっすwwwwwなにしてんだ女………あああああああ!?」

女「うわあああ! な、なんだ男くんかぁ。おはよ……」

男「おまっ!お前……!!!そのピンクの紙袋はなんだよ!?」

女「ああ、今日はバレンタインデーだから…」

男「……はあ?はぁぁ!?お、お前のチョコなんて誰もほしくないに決まってんじゃんwwwwwww馬鹿じゃないのwwww馬鹿じゃないのwww」

女「やっぱり、いらないよね…。ご、ごめん」

男「ちなみに誰にあげるつもりだったんだよwwww」

女「男くんに…なんだけど……ごめん。気持ち悪いよね……持って帰るよ」

男「!?!?」

男「……」バッ

女「あぇ!?なにして…」

男「お前は食べ物を無駄にしちゃいけねえって教わらなかったのかよ!?この……現代社会の膿が!!」

男「モノが溢れかえっている消費社会が生んだ悲しい子どもめ!!いいか、いずれ資源も食物も豊富でなくなる時代がいつか来るんだ。今が豊かだからっていってモノや食べ物をいたずらに無駄にすることは決して褒められたことじゃねえ。そういう考え方は即刻捨てるべきだ。食べるもんは米粒一つ残さず食う!モノは壊れるまで使う!そしてリサイクル!!さらにリデュース・リユース・リサイクルと3Rを念頭に生活することができれば上出来だ!!ゴミ問題解決にもつながるからな!どんな小さなことでも人類全体が意識することで環境問題解決への糸口が見えてくるはずなんだ!!!」

女「???」パチクリ

男「よってこれは俺が責任をもって食そう。これは人類に課せられた責任なのだ」

女「は、はい…」パチクリ

男「じゃあな」



スタスタスタ


男(……)

男(ィィィィイイエーーーーーーーーーーーーーイッ!!)ピョンピョン

放課後 男の家


男「はっはァ!!あいつもかわいいとこあんじゃねえか!!!」

男「バレンタインにチョコを献上するとは、グズのくせにやるな!!」

男「別にあいつのチョコだからって嬉しいわけじゃねえ!ただ食べ物を無駄にしちゃいけないって先生が言ってたからな!」

男「仕方なくだ!!!」

男「……ふう。じゃあ開けるか。…手紙は入ってねぇな。チッ」

男「!? なんだこの箱……でっけえな」

男「こりゃあ……まさかホールケーキか」

男「……へへっ、気合入ってんじゃねえかよ女の奴。そんなに俺のこと好きなのか…?」

男「おおかた剣道部のエースやってる俺の姿を見て惚れたんだろ……へへへ」

男「おっしゃあああああああああ御開帳ぉぉぉぉぉぉおおおおお」



パカッ(オープン)

男「……?」

男「なんだ今。一瞬緑色が見えたんだけど……思わず箱を閉めちまった」

男「何故緑……?チョコなら茶色……ショートケーキでも白だろ……」

男「…ああ!!抹茶か!!抹茶のガトーショコラだな!きっと!!」

男「ハハッ、驚かせやがってよ!よっしゃ改めてオープン!!!!」


パカッ

トントントン・・・
グツグツ・・・


男「…うっ……うぅっ……」

妹「お兄ちゃん、なんでご飯作りながら泣いてんの?」

男「泣いてなんかねえよ……うっ…」

妹「今日のご飯なにー?」

男「…ロールキャベツ……ひっく……」

妹「やった!」


牡丹「……とまあ、こんな感じだよね」

薔薇「男カワイソスwwwwwwwww」

キャベツ「バレンタインに送られたことは私もまだないですねえwwww」

ゴボウ「泣いちゃってるじゃんwwww不憫wwwwww」


キャベツ「なかなかいいですね。気に入りました。ありがとうございます牡丹!」

牡丹「ええんやで」



アスパラガス「……キャベツさんいいですわね…」

薔薇「アッスーちぃーすwwww」

牡丹「今日も麗しいwwww」

薔薇「アッスーも花言葉物語やってほしいん?ん?wwwwwwwww」

アルパラガス「私は、そんなことに興味はないですわ!」

牡丹「素直になりなよアッスーwwwwwん?wwww」

アスパラガス「その気に障るしゃべり方やめていただけません?……あなたたちがどうしてもやりたいというなら構いませんけど!」

薔薇「んーーーーwwテンプレお嬢様ァーーーwww」

牡丹「んでwwwアッスーの花言葉は?」

アルパラガス「……『私が勝つ』」

薔薇「オゥフ!勝気お嬢様キャラのアッスーらしい」

ゴボウ「でもやっぱりちょっと意味わかんない花言葉だよね…」

キャベツ「なんで野菜の花言葉って変なのばっかなんでしょうね…」

今日はここまでで

>>39の最初の牡丹と薔薇のセリフ逆でオネシャス

牡丹「おっしゃ!ひらめいた!」

薔薇「早いな!」



審判(さあさあついにこの日がやってきました!チェス世界大会決勝戦でございます!いままさに、雌雄を決する世紀の戦いが始まろうとしています!!)

審判(決勝に残った今期のチェス界を担うとされる二人はこちら!!)

田中「……」モグモグ

審判(日本代表、田中選手!史上最年少でプロチェスプレイヤーになった天才と謳われる田中選手!好物はミカンです!さっそく今もほおばっています!)

審判(あーっと、ミカン4つ目に手を伸ばしました!ああーっミカンの匂いがこっちまで漂ってくる!死にそう!彼はちょっと不思議な行動にまつわる数々の伝説を所持しています!!)

審判(日本では負けなしの田中選手は、今日は一体どんな鮮やかな一手を見せてくれるのでしょうか!楽しみですうっぷミカンくせえ!)


審判(対するはロシア代表スミルノフ選手!)

スミルノフ「……」ギロッ

審判(彼もかの氷の地にて無敵の男です!さっそく狼にも似た鋭い眼光で田中選手を威圧するー!スミルノフ選手のチェスは神のチェスとも称されており、私も今日生で見ることができることに興奮を隠しきれません!)

審判(ちなみに彼の握力は150kg!よくチェスのコマを握りしめすぎて壊すことも彼の特徴のひとつでしょうか!)

審判(さあ、一体どちらの選手に運命の女神はほほ笑むのか!?いま、戦いの火ぶたが切って落とされようとしていますっっ!!)

田中「……審判。私のマイチェス駒を使用する許可をくれないだろうか」

審判「!? マ、マイチェス駒ですか…結構ですよ」

田中「ありがとう……」ニヤリ

審判(…!?なんでしょう今の田中選手の凶悪な笑みは………ああッ!?)

審判(彼が懐からゆっくりと駒を抜きだします……しかし、あれは…駒ではない)

審判(アスパラガス!? アスパラガスです!ベーコンで巻いて焼くとおいしい!)

スミルノフ「……!?」

審判(スミルノフ選手も動揺が隠しきれない!そんな彼の前で、ゆっくりとアスパラガスが盤上に並べられていきます……)

審判(あっ ちゃんとクイーンとかポーンとか分かるようになってますね!細かいさすが田中選手!)

審判(そうか!アスパラガスの花言葉は『私が勝つ』! これはスミルノフ選手に対しての宣戦布告及び動揺を誘う作戦ッ!これにはさすがのロシア最強の男も―――?)

田中「……」ニッ

スミルノフ「……」

スミルノフ「シンパン、ワタシモ イイデスカ」

審判「―――!? はい、結構です」

スミルノフ「……」スッ

審判「――――な、なにぃーーーーー!?!」

審判「スミルノフ選手が…取り出したのは、まさかの……白アスパラガス!!私、手が震えてきました!」

審判「彼は田中選手がアスパラガスを駒として持ってくることすら予期して、色ちがいの白いそれを持ってきたというのかーッ!」

審判「いま、世界大会決勝のチェス盤では、緑と白のアスパラガスたちが、誇らしげに胸を張っています!これは…これは前代未聞の戦いだぁーー!!」

審判「この勝負はきっと後世にかたりつが



アスパラガス「あの、もういいですわ」


牡丹「いいところだったのに」

薔薇「どっちが勝つのか気になる」

アスパラガス「茶番は結構!さっきの男女で続きやってくださいまし。おっさんどものチェス大会なんてこちとらどーでもええんじゃボケェ!!」

牡丹「へいへい」





笑いあり涙ありのバレンタインデイが終わり、やがて彼らは桜舞う季節を迎える。
彼と彼女は第2学年に繰り上がり、この学校での2度目の出会いの春を過ごした。


彼とは別々のクラスとなったが、部活で一緒の同学年の生徒と同じクラスになることができて喜ぶ彼女。
その影で歯ぎしりする彼。

それにしても、青春とはとにもかくにもせっかちで急ぎ足な生き物だ。

いつまでもこの白い校舎の中で、何も考えずに仲間を笑っていたいという彼らの思いなど素知らぬ顔で、暦の上を駆け抜ける。

いつの間にか、彼らは紫陽花が雨に打たれて美しさを増す、梅雨の水無月を過ごしていた。



部長「おーい皆の者、今日は部活が始まる前に話があるんでな!ちょっと集まってくれ!」

男「なんすか部長」

女「……?」

部長「うむ。主に俺からひとつ、副部長からひとつ話がある。まず俺からだな」

部長「7月下旬に、県大会が開かれる。われら剣道部は去年、予選は通過できたがベスト16どまり……涙を呑んだ夏だったな」

部長「しかし!!今年こそは優勝を成し遂げる!ルーキー、期待しておるぞ!


男「うっすwww」

部長「大会に向けてこれからは練習もよりハードになるだろう。みな心してかかるように!」

「はーい」


副部長「うん。じゃあ次は私ね」

副部長「何故部長じゃなくて私が話をするかというと……部長の学業の成績がオソマツだからよ」

女(学業…?)

副部長「いい?みんな……大会の前に、もうひとつ、突破すべき壁がある」

副部長「学 期 末 テ ス ト……」


「「「!?」」」


副部長「この学校では赤点をとった生徒は夏休み補習に来させられる」

副部長「そうなったら県大会への練習もクソもなくなっちゃう。この中にも何人か去年赤点とった人いるよね……?」

男「……」ブルブル

副部長「……もし…もしの話だけど…私が副部長をやっている今年、赤点をとる奴がいたら……ただじゃおかないわよ」ニコ

女「……」ブルブル

副部長「じゃあ、勉強もしっかり頑張ってね!部活はじめよっか!」


男(やべえ)
女(やばい)

部活後

男「部長!俺に歴史教えてください!お願いします!!!」

部長「何故俺に言うんだ!副部長に言えばよかろう!それに俺も歴史は苦手だ!」

男「ええ!?戦国武将みたいな顔してるのに! あと副部長に俺の勉強のでき無さを見せると恐そうなのでいやです!!」

部長「察した!」


女「部長…!私に数学教えてくださいぃぃぃ」

部長「悪い!俺も数学は苦手だ!」

女「ええ!寺子屋でそろばん弾いてそうな顔しているのに…!」

部長「しとらんわ!」


副部長「…あんたたち」ヌッ

部長「ヒッ」
男「ヒッ」
女「ヒッ」

ここまでで
ちなみにチェスプレーヤー田中さんのモデルは将棋界の123さん

ごめんなさい もういっこコピペし忘れてた


副部長「男くんって数学の成績よかったよね?」

男「えっ まあ…」

副部長「女ちゃんは歴史の成績よかったんじゃなかった?」

女「いや、普通よりちょっといいだけで…」

副部長「問題ないわ。二人とも、お互いに勉強教え合いなさいよ」

「「ええー!?」」

副部長「そして、この中でトップクラスの馬鹿には、学年1位の私がみっちり教え込んであげる」

部長「誰のことだ!?」キョロキョロ

副部長「お前だよぉ!あんたの脳みそに剣道以外の知識もたっぷり植えつけてやるからちょっと来い!」

部長「ぐえええっ」ズルズル



女「ちょっと、待ってくださいよ副部長!」

女(ひぇぇ絶対無理無理無理無理、男くんに勉強教わるのなんて怖くて集中できないよ絶対……)

男「副部長の命令ならしょうがねえな。お前前回の数学のテスト何点だ」

女「……39点……」

男「wwwwwwwwwwww馬鹿すぎwwwwwww根暗なのに勉強できないって悲惨wwwww」

女「ううっ……男くんは、歴史のテスト何点だったの…」

男「ん? 18点」

女(私よりひどいじゃんっ)



男「とにかく勉強すんぞ。この時間なら図書館がまだ開いてるだろ。おらグズグズすんなボケさっさと行くぞ」

女「えええっ……ほんとに…?」

男「お前……俺がテストで赤点とって副部長に半殺しにされても、いいってのか!?」

女「よくないけど…よくないけどぉ……っていうか私も危ないけどぉ…!」

図書館


女「人あんまりいないね」

男「だからって騒ぐんじゃねえぞ」

女(どちらかというとそれは私の台詞なんだけど……)


男「先に数学やる。おら、どこがわかんねーんだよ」バシ

女「……えっと……微分積分の…ここが、…よくわからないかも…」

男「それ超初歩やんwwwwww授業寝て聞いても分かるレベルやんwwwwww」

女「ちゃんと真面目に聞いてたんだけど……」

男「しゃーねえなwww天才の俺様が馬鹿用に、かみ砕いてこの定理の説明をしてやんよwwwwwwwwwww」

女「う、うん」



男「んで終わり。じゃあお前もない脳みそフル回転させて練習問題といてみろ」

女「うん……あれ?ちゃんと解ける。最初やったときは全然分からなかったのに」

男「教え方がうまいからな」ドヤ



女「すごいね、男くん。ちょっと教え方が怖いけど、内容がすらすら頭に入ってくるよ」

女「将来先生とか向いてるんじゃないかな…(あ、でもちょっと性格に難ありか……)」

男「はぁ!?誰が教え方うまくて天才的な頭脳でイケメンだよ!!馬鹿なこと言ってねえで問題に取り組めやブス!!」

女「ひゃ、ひゃいっ!」カリカリ



男「……違う。ここはこれを使うんじゃなくてこっち」

女「あ、そっか…」

男「それ解き終わったら、次は歴史を俺に教えろ」

男「言っとくが生半可な教え方じゃ俺の成績を向上させることはできねーからな。覚悟しておけ」

女「えええ……威張っていうことじゃないよ……わ、分かった」



女「えっと…じゃあ歴史やろっか。どこか分かりづらい流れのとことかあれば、詳しくやるけど…」

男「わかんねえところか……。こっから、ここまでだな」ペラペラ

女「……それってテスト範囲全部だよね」

男「そうだ」

女「そ、そっか…」



女「歴史は暗記ってよく言われてるけど、興味ないものって人はあんまり覚えられないものだから…」

女「まずは男くんが歴史のエピソードに興味をもつようになれば、いいんじゃないかなって」

男「あー 確かにな。教科書にでてくるおっさんどものなんやかんやなんて、すげえどうでもいいわ」

女「じゃあ……全員女の子にしてみるとか…」

男「はあ?」

女「例えばここ、足利義満が勘合貿易を始めたところだけど」

女「足利義満は色白ぽっちゃり気味、常々海のむこうの国と関わりを持ちたいと思っているちょっとミーハーな女の子って考えるとどうかな」

男「……!お前天才か?」ガタッ



男「すげえ…全部女の子で想像すると、なんでか知らんが流れがスラスラ覚えられるな!」

女「あはは……(邪道だけど…)」

男「なあ、じゃあ足利義政はどんな女の子だ?」

女「金閣寺みたいなピカピカの寺じゃなくて、渋い銀閣寺を建てたくらいだから…」

男「ちょっと地味で一人が好きな感じの女の子か。なるほどな」カリカリ

女(……)

女(なんか少し楽しいかも……いつも怖い男くんだけど、今はすごいしゃべりやすいな)

女(いっつもこうだったらいいのに)


男「……おい、なにニヤニヤしてんだ気色悪い」

女(戻った…)ガク



ほたーるのーひかぁりー…


女「あ。閉館の時間だね」

男「今日はこのへんにするか。また明日も来るぞ」

女「え゛っ 明日もやるの?」

男「当たり前だろーが!これからテストまで毎日みっちりだ。しっかり俺に教えやがれ」

女「…二人とも絶対に赤点とれないしね……うう、がんばろっか」

男「その、渋々やってやるか、みたいな面はなんなんだ?」ギロ

女「しししてないよそんな顔してないってば!」ブンブン

数日後の放課後

女友「今日もやっと授業が終わった~」

女「そうだねー。じゃあ、またね」

女友「……って、なんで体育館に向かってるの?下駄箱に行こうよ」

女「え?だって部活に行かないと」

女友「テストが明後日だから、全部の部活が今日からお休みだよ」

女「…ああ!そうだったね」


下駄箱

女友「じゃあ私、彼氏と一緒に帰る約束してるから、またね!」

女「うん、ばいばい」


副部長「女ちゃん、偶然ね。帰るの?」

女「あ…!副部長、と部長」

部長「やあ女さんこんにちは。今日も勉学に一生懸命取り組めたか内閣は国の行政権を担当する最高合議機関」

女「」

部長「勉強こそ我が生きる理由なり。サインコサインタンジェン等圧線とは天気図上で気圧の等しい地点を結んだ線であり……ブツブツ」

女「」

女「副部長っ!部長が……おかしくなってます!どうしたんですか!?」

副部長「夏の風物詩だから気にしないで。それよりどう?男くんと女ちゃん、ちゃんと勉強してる?」

女「え!あ……はい。ちゃんと毎日やってますよ」

副部長「そう。ならよかった。今日もやるのよね?」

女「はい!も、勿論です!」コクコク

副部長「あ、男くんがあそこに。おーい男くーん」

男「あれ。3人とも何してんスか」

部長「当意即妙獅子奮迅五里霧中、即説呪曰、羯諦羯諦、波羅羯諦、波羅僧羯諦、菩提薩婆訶。般若心経」

男「あ、またこの状態になってるんスね。懐かしい」

副部長「今日も女ちゃんと勉強会やるんだってね。明後日の試験いい点とれるようにがんばってね」ニコ

男「まかせてくださいよ!へへへ!」

副部長「さ、部長。私たちもラストスパートかけないとね。じゃあね男くん、女ちゃん」


女「部長って、テスト終わったら元に戻るよね…?」

男「テスト終了の鐘がなった途端に戻るらしいぜ」

女「そうなんだ…」

男「今日もやるか。副部長に笑顔で念をおされちまったし」コエエ

女「あ、でも今日図書館、休館日だよ。どうしよう」

男「まじかよ」

女「……学校の図書館は、この時期人いっぱいだよね」

男「チッ………俺の家使うか?」

女「え?」

男「勘違いしてんじゃねーーーぞ!!!仕方なく俺の家を提供してやるんだから感謝しろよな!!」

女「う、うん!ありがとう……」ビク

男「ちんたら歩いたらおいてくからなwwwwwよっしゃ行くぞwwwww」シャーッ

女「ああっ自転車はずるいよーっ!」

男家

男「靴は脱いで上がれよ」

女「わ、分かってるよそのくらい…。でも、久しぶりだなあ男くんの家。小さい時はよく来たよね…」

男「そうだったっけ?www」

妹「あれ?お兄ちゃん今日早いね……あ!!女さんだ~!」

女「わ……久しぶりだね、妹ちゃん」

妹「なんだ。お兄ちゃんと女さん、とうとう付き合っ

男「フォアーーーーーーーーッッ!!!!!!!!!」

女「」ビクッ

妹「うるさっ!なにお兄ちゃん!?」

男「ああ、喉の調子が悪くてな。ぅうんッ、ごほん。俺たち今日は死ぬ気で勉強しなくちゃいけねえから、邪魔すんなよ」

妹「はいはーいごゆっくり」ニヤニヤ



男「適当に座れよ」

女「お邪魔します……あれ…(意外と片付いてる)」

妹「女さん、お兄ちゃんの本棚の一番下の段、表紙はずしてみちゃだめだよ」ヒョコッ

男「テメエ邪魔すんなっつっただろーが!!余計なこと言うな!!!」バンッ

女「本棚?……なにかあるの?」

男「見たら部長のようにするからな」ギロ

女「見ません!」

カリカリ…
ペラッ ペラッ

女「練習問題も、二人ともなかなか解けるようになってきたね」

男「俺のおかげだなwwwww」

女「う、うん。そうだね…この分なら、二人とも赤点は免れそう」

男「待て。そう油断してるときが一番あぶねーんだ馬鹿!!」

女「そう…?」

男「ここはひとつ賭けをしようじゃねーか…」ニヤリ

女(なんか嫌な予感……)

男「どっちが前のテストの点数より高い点とれるか、勝負しようぜ。負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞くこと」

女「えー!? 無理っ」

男「おっしゃ次は問4を解くかなー」ペラリ

女「ねえっ 無理だってば男くん!なしにしよーよ」

男「やったね正解www俺絶好調wwwこれなら勝てるwwwwww」

女「聞いてる!?」

女(まずいまずい……どうしよう金銭を要求されたら……お金もってないよ…)

女(それか無理難題を押し付けられて、みんなの前でいじめられるかも……!!)

女(ぜ、絶対勝たなくっちゃ……!!)

今日はここまでで
アスパラ編なげえよお




そして二人は学期末試験の当日を迎える。

彼は朝日の眩しさに目を細めながら、自転車をのんびり漕いでいた。

頭の中には、昨日まで詰め込んでいた数式やら年号やらが花笠踊りを踊っている。

今日こそ、決戦の時。

彼は今一度気合を入れて、戦場――校舎――へと足を踏み入れた。



しかし、このときまだ彼は知らなかった。

この先に恐ろしい運命が待ち受けていることを……―――。



男「あ。やべ、シャーペン忘れた」


確か昨晩、自宅の机の上に置きっぱなしにして筆箱にしまわなかったことを思い出す。

しかし彼は焦らない。普通、皆ひとつしか持っていない消しゴムならまだしも、

シャーペンなど大体ひとつ以上みんなが所持しているはずなのだ。

誰かに借りればいい。そう判断して適当に声をかけようと、彼が席を立った瞬間
教室の後ろ側のドアが開いて、彼女が顔をのぞかせた。


女「男くん……ちょっと」


なぜか妙にそわそわした様子で、手をちょいちょいと動かしている。
彼は不思議に思いながらも、勝手に素っ気ない話し方になってしまう己の口を止めようとはしない。


男「なんだよ。なんか用かよ?」

女「あの……手を出してくれる?」

男「……はあ?」

意味わからん。そう思いながらも、休み時間の残りを考えるといちいち突っかかるのも面倒だ。
早く誰かにシャーペンを借りなければならない、さっさと済ませよう。
こいつが少しズレているのは昔からなのだから。


しかし、彼女の小さくてひんやりとした手のひらが、そっと彼の手に触れたとき、そんな考えは吹っ飛んだ。


男「な、なにしやがんだテメー!!なんのつもりだゴラァッ!!!」

女「わわわ…っ!ご、ごめんね!」

男「……ん?なんか握らせたか!?」


彼女の手が離れても、手の平に何か触れている感触がある。
見ると、何か緑色の棒状のものだった。
彼の脳内に電流が奔る。


男(これはト○ボ鉛筆……!?)

男(な、なんでこいつ、俺がシャーペン忘れたこと知って……!?)



この世の七不思議でも目の当たりにしたかのような表情で、彼は彼女を凝視する。

彼女は、にこりと笑って言った。


女「今日は、負けないからね……っ。お、お、お互いがんばろっ」


すると脱兎のごとく、廊下を走っていってしまう。
彼女の背中にチャイムの響く音が重なり落ちる。


男(そうか……正々堂々俺と戦いたいってことか。あいつ……)

男(ふん…まあ、勝つのは俺だけどな!!気持ちだけ有り難く受け取ってやろう!)


席につく。クラスメイトも臨戦態勢だ。
次の教科は歴史―――彼の最も不得意で、賭けの対象にもなっている教科だ。

問題用紙が前の席から回ってくる。まだ裏返してはいけない。
教師が時計を見つめて秒針を読んでいる。
まだだ……3……2……1……


男(やるぞ!見てろ義満ちゃんに義政ちゃん!!!俺はやる男だっ!!)


ゼロ。
全員が一斉に紙を裏返す。すぐにペン先が紙を滑る音が教室を満たした。



彼も出遅れまいとすぐに彼女に借りた鉛筆を握る。
問1から……イヤ違う!まずは名前だッ!!
名前を記入し忘れると一転地獄だ!!あぶねえ!!!

彼は名前欄に名前を記入しようとした―――
そしてここで世にも奇妙な出来事が起こったのだった。


―――人の先入観とは、何と恐ろしいのだろう。
彼は一瞬で悟りを開いた。彼は仙人に転身したのだ。

学校という場所で。手に収まるくらいの大きさの棒で。緑色ならば。
人は無条件でそれをト○ボ鉛筆だと、思いこんでしまう。

まるで孔明の罠。先入観という名のトラップ。



彼は戦慄する。
―――これ鉛筆じゃねえ、アスパラじゃねえか……と。

彼は煩悶する。
―――アスパラじゃあ、字が書けねえ……と。



ところで彼の学校には不思議な規則があった。
テストの時の名前記入漏れや忘れ物をした生徒は、点数から10点ひかれてしまうのだった。


彼は悩んだ。道は二つある。

一つ目は素直に先生に申し出て、点数マイナス10点の代わりに筆記用具を課してもらう安全策。

二つ目はテストの点数を死守するために、このままアスパラで奮闘する道。


男(………………ッくぅ!!)

男(俺は……俺は………どうしても賭けに勝ちてえ!!!)

キーンコーンカーンコーン


先生「おい、男。ちょっと来なさい」

男「はい」

先生「何故回答が緑色で書かれてる…?しかもなんかニチャっとしてるんだが」

男「鉛筆忘れたので、アスパラで書きました」

先生「馬鹿、冗談言うんじゃないよハッハッハ、怒らないから本当のこと言ってみろ」

男「アスパラで書きました」

先生「こら!先生をからかうんじゃない!もういいから冗談は!」

男「アスパラで書きました」

先生「……」

男「……」

先生「……席に戻っていいぞ」

男「うす」


最近の生徒はよくわからん。
しみじみ思う教師歴10年の男性教諭だった。

女「……」

男「……せーので見せるぞ」

女「うん……」

男「…せーのっ!」


女「……わ―――――――っ!」

男「っしゃあああああああああああああああああああ!!!」

女「待ってくださいお金は本当にないんです――――っ!勘弁してください――――っ!!」

男「ハッ!!てめえのしけた金なんざいらねえよ!!!」

女「えっ……じゃあ………」グスグス

男「ハッハッハッハ……てめえの人権は今俺のものとなった……」

女「そこまで!?」

男「賭けに勝った俺はお前に命令できる立場だが、それは次の剣道部大会の予選が通ったら言うことにする!!!」

男「それまでの束の間の平穏をせいぜい楽しむんだなァ……クックック……ハーーーハッハハ!!!」

女「うわーーーん……!変なのやめてねっ あの、ほんとに!ね!?」

こうして学期末テストは終了し、学生たちが浮かれる夏休みに突入した。

幸いにも剣道部の中で赤点をとった者はおらず、
副部長が破顔する横で、全部員が安堵のため息を吐いたとか吐いてないとか。

夏休みに入ってからも県大会に向けて部活に励む生活を、彼も彼女も送っていた。


蝉時雨。
高い空。
蜃気楼。
アスファルトに貼りつく濃い影。


女「夏だなぁ…」


去年より焼けた腕を眺め、独り言を呟いた。
きっといつの日か、この夏を懐かしんで思い返す時がくるのだろう。

もう戻れないあの夏の日と。



過去への憧憬と執着を糧に、人は生きているのだから。


剣道部 県大会予選


部長「ついに合戦の時が来たな!!よし副部長!ホラ貝頼む!!」

副部長「ないわよ、そんなもん」

部長「予選を勝ち進んで県大会に行くのは我らだ!皆今までの努力の成果を一滴たりとも無駄にせず発揮するのだ!!」

「「はいっ!」」

部長「特に三年はこの県大会が終われば引退だからな!!精一杯やるぞ!!」

副部長「はいはい、それくらいにして。大会のメンバー発表しましょ」

部長「そうだな!先鋒、男!次鋒、○○!中堅、副部長! 副将、××!大将、俺!!以上!!」

男「うっす」

部長「では気合入れてゆくぞ!!!皆の者、出会え出会え――――っっ!!」

副部長「違うでしょ!」スパーンッ

女「男くんは先鋒かぁ。先鋒って、確か中堅と並んで大将の次くらいに強いんだよね?」ヒソヒソ

女部員「少なくともうちの部ではそうだね」

女「すごいね……どんな試合になるんだろう。うう、私がなぜか緊張してきた」

男部員「お、始まるぞ」



審判「礼!」
男「よろしくお願いします!」スッ
  「お願いします!」スッ


男「……」



女(うわあ…!いつもあんなにアホみたいな男くんが、なんかちゃんとしてる……!?)



ザッ!!

男部員「でるぞ!男さんのアレが!」
女部員「えっ!?ほんとに!?」
女「アレってなに?」


男「うおおおおおおおおおおお!」ガバッ


男「チャーーーッ!」バシッ

男「シューーーッ!」ダンッ

男「メーーーーーーーン!!!」ズバァッッッ!


審判「一本!」



部長「小手、胴、面と流れるような三段突き……お前の『チャーシューメン』はいつ見てもすごいな!」

男「部長の『野菜たっぷりタンタンメン』には敵いませんよ」



女「みなさんお疲れ様です。予選通過、おめでとうございますっ」ニコ

部長「かたじけない!!皆、本当に御苦労であったな!!いい動きだったぞ!!」

副部長「みんなお疲れ様。やったね!」


わいわい
 がやがや

副部長「夏休み入ってずっと頑張ってきたし、今日は予選通過祝いってことでささやかな打ち上げでもしようか」

女部員「いいですね!」
男部員「男、ほら行こうぜ!」

男「あ、わり。ちょっと先行っててくんね」



男「ぃよおっ!」バシッ

女「いたっ!?」

男「見事俺らが予選通過したわけだが……約束覚えてんだろな?wwwww」

女「あ、ああうん……そうだったっけ」

男「負けた方は勝った方の言うことをなんでも聞くこと」

女「できることならなんでもするけど……できることなら、ね!?」

男「なに聞いてもらおっかな~~~~」ニヤニヤ

女(い、嫌な予感しかしない……っ)



薔薇「……ん?」

ゴボウ「今なんでもって言った?」

キャベツ「乱暴する気でしょう!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!!」

牡丹「ねーよwwwwwww」


アスパラガス「ふ……まさか私を鉛筆代わりにするとは恐れ入りましたわ。まあ及第点ってところでしょうか」

牡丹「そら光栄ですわオホホ」

薔薇「やりましたザンスねホホホ」



パセリ「あのー、私も、やってほしいなー、って」ニコニコ



薔薇「パセリだ」

牡丹「お前もかwww」

パセリ「私の花言葉はねー、『お祭り騒ぎ』っていうんだよー」

牡丹「ぃよっしゃ祭りじゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

薔薇「ひぃぃぃぃいいいいいいやっっっほぉっぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

パセリ「えっ!?」

牡丹「プァセルィ祭りじゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

薔薇「パセリーナ開催URYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY」

パセリ「あの!?ちょっ私を投げないで!?」

牡丹「そーーれッッッよっさほいさよっさほいさよっさほいさイェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!!!!!!!!!」

薔薇「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

パセリ「なにこれこわい」

今日はここまでで
読んでくれる人ありがとう(小声)



ゴボウ「お祭りって言えば浴衣で花火大会とかだね…」

アスパラガス「ちょうど夏休みって設定ですし、いいネタなんじゃありません?」

薔薇「都合良すぎワロタ」

牡丹「よっしゃ!ふんどしでソーラン節か!そのネタいただき!!」

キャベツ「やめろ」



男「よし、決めたはwwwwwwwww」

女「……」ゴクリ

男「お前、髪切れ」

女「……!?」サー…

女「……………ぼ、坊主にしろとかそういう」ダラダラ

男「ちげーよ!その長ったらしい前髪を切れ!!見てるだけでこっちが暗くなるわ!」

女「え……えー?」

男「今週中に切りにいけよ。それから二つ目だが…」

女「二つ目もあるの!?そ、それはさすがにずるいんじゃ」

男「浴衣を購入しろ」

女「!?」



女(ゆかた!?………浴衣って…いくらくらいなんだろう)

女(っていうか男ものの浴衣が売ってるところも見たことないし…)

女(ううう…でも負けたらなんでもするって言っちゃったからなぁ…)

女(仕方ないかぁ……お年玉を解禁しよう……うう、なんであんなこと言ったんだろ自分)


女「わ、わかったよ……じゃあ、男くんのサイズ教えてよ。買いに行く時困るから」

男「いや、お前の浴衣だからwwwwww」

女「……へ?」

男「とにかく買えよ。買えったら買え!!!いいな!!!」

女「うわっ……う、うん?」



男「それから三つ目だが…」

女「さすがにそれで最後だよね!?」



男「県大会終わった後の、8月下旬に夏祭りがあるだろ……」

女「ああ、地元の」

男「その日に浴衣を着ておまえんちの近くの交差点で立っていろ」

女「え……なんで?」

男「なんでもクソもねえよ!!言われた通りにしとけ!!わかったら返事!」

女「あ、はいっ」


女部員「おーい、二人ともー、置いてかれちゃうよー?」

男「お、おうっ!ほら行くぞ!!」

女「えっ、あ、うん」



数日後

女「………」

女部員「おはよー。体育館入らないの?」ポン

女「お、おはよ……」

女部員「あれ?髪切った?」

女「…………うん。すっごい…落ち着かない」ソワソワ

女部員「前髪短い方が明るくていいよ!女はにきびとかないんだしさ、せっかくなんだからおでこだした方がいいって」

女「う~ん……でもやっぱ落ち着かない……早く伸びないかな…!」

女部員「切った直後にその反応かい」




男「…………」ジー

女「言われた通り切ったけど…(何が目的なのかな…)」

男「……まあ、ブス度43829点から42384点に下がったかなwwwwww」

女「それ何点満点…?」


部長「おーい、女!!すまんが、これを職員室に届けてきてくれまいか!?」

女「あ、はい。分かりました」


ガララッ


女「ふう。体育館も暑いけど、外もあっついなあ…」

女友「あれ、女じゃん。久しぶり」

女「あ、友ちゃん……部活?大変だね」

女友「お互い様でしょ。てか髪切ったんだ!いいじゃん!!」

女「えっと、うんまあ…(不可抗力で)」

女友「女って、前と比べて明るくなったよね」

女「そう…かな?」

女友「うん! じゃあ私行くね!マネージャー頑張ってよ!」

女「…うん……」



女(明るく…なったのかな?私)


副部長「いやー今日の部活も疲れたわー。夏は道着も蒸れて暑いのよね」

男「そっスよねーコンビニでアイス買いましょうよアイスー」

副部長「いいわね。私ガリガリくんにしよっと」

男「女は小豆バーなwwwww」

女「小豆嫌いだもん…いやだよ」

部長「こら!買い食いはいかんぞ!!まっこといかん!!」

副部長「かたっくるしいこと言わないでよ部長。ほらほら」グイグイ

部長「押すでない!!」


ラッシャッセー



男「白クマアイスがやっぱナンバーワンっすわ」

部長「む……」

女「…あともうちょっとで県大会ですね」

副部長「そうね。最初にあたる相手に勝てたとして、次にあたるのが去年私たちが負けた学校なのよ」

部長「因縁の対決だな!!」

男「ま勝てるんじゃないスかwwww俺いるしwwwww」

副部長「それで勝てたとして、決勝であたるのが多分、県大会3連勝を成し遂げてる化け物みたいな高校」

副部長「どうなることやら」

部長「為せば為る!!」

男「さっすが部長、男らしー」



女「県大会終わったら……部長も副部長も引退しちゃうんですよね…寂しいな」

副部長「このあいだ入部したと思ったらもう引退よ。早いもんだわ」

部長「3年生全員のためにも、最後は華々しく散りたいものだ!」

男「いや戦じゃねえッスから。散るって」

副部長「まあそのくらいの意気でいった方がいいんじゃない?」

女「えええ…」

男「まじスか。じゃあ一番槍はいつも通りまかせてください」

部長「うむ!!明日も鍛錬に励もうぞ!!ではまた明日!!!」

副部長「ばいばーい」

男「うっす」

女「さ、さようなら」

県大会 準決勝

副部長「いやあ本当に準決勝に進めちゃうとはね」

部長「去年の我らとは違うのだ!!優勝ももぎとるぞ!!!」

男「さすがに準決勝は緊張感がダンチっすねwwwwww」

女「ああああ、ああのみなさん、ががががんばってください……!!」

女部員「なんで女ちゃんが一番緊張してるの」


眼鏡「おやおやみなさん、お揃いで。まさか今年も対戦することになるとは」

部長「おう眼鏡!!一年ぶりだな!!今年は勝たせてもらうぞ!!」

眼鏡「ククク……相変わらずの暑苦しさですねえ」

副部長「あーぶっころしたい」

眼鏡「副部長さんも相変わらず、顔は綺麗なのにその口の悪さだけは頂けませんね」

副部長「[ピー]」

男「はい放送禁止用語いただきましたー!」

女「副部長落ち着いてください!!」



眼鏡「今年はこちらにスーパールーキーがいるんですよ」

ひげ「ウス」

女(…………保護者の方?)

眼鏡「では楽しみにしてますよ……ほーほっほっほ」

副部長「あの眼鏡[ピー]野郎!ええいみんな!今日は絶対勝ってあいつにほえ面かかせてやるわよ!!」

部長「おう!!」

男「イエーwww」

女「お、おー…」



副部長「よっしゃ男くん!がんばってね!!」

男「うっす。相手はあのあんたか。どう見てもアラフォーなんだが」

ひげ「実際アラフォーだ。でも勉強したくて高校に入った」

男「まじかよ」

ひげ「ああ。学ぶことは楽しい」

男「お前なんかいい奴だな」


男「でも容赦はしないぜ!うおおおおチャーシューメェェェェェン!!!」

バシッバシッ

男「なに!?全部弾かれた!?」

ひげ「ふっ……今はラーメンの名前なのか。洒落てるな」

ひげ「俺たちの時代にはそんなものなかった」

ヒュッ

×あのあんた
○あんた



ひげ「受けてみるがいい……古より伝わりし我が剣技を」

男「なっ!?」


ひげ「まぁぁみぃぃむぅぅめぇぇぇぇぇ!!!」

ダンッ バシッ ダンッ ダンッ!


男(!? 防ぎきれない…!)


ひげ「もぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!」


バッシィィィィィン…


審判「一本!!」



女「そ、そんな。あの馬鹿みたいな技に男くんが負けるなんて……」

副部長「あのひげ、相当の手錬ね」

部長「あらふぉおは伊達ではなかったようだな」



大将戦

男「いまのところ、2勝2敗ッスね……」

部長「まかせろ!!腕がなるわ!!」

副部長「部長、がんばって!ここが正念場よ!」

女「がんばってください…!」



眼鏡「ククク……よろしくゥ」

部長「おう!!」

眼鏡(貴様の必殺技は『野菜たっぷりタンタンメン』の五段突きだということはもう分かっている)

眼鏡(技の入射角度も速さも流れも研究済みだ!)

眼鏡(僕のインテリ剣道を見せてやろう!!)



部長「ふんぬうおおおおおっ」ブン

部長「やさいッィィイ!!!」

眼鏡(きた!最初の『野菜』は小手から!!)サッ


部長「めぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

スパァーン

眼鏡「あ!?」

審判「一本!」

眼鏡「貴様!!何故だ!?」

部長「眼鏡、眼鏡に溺れるとはこのことだな」

部長「お前が俺の技を研究してくることは分かっていた。スポーツ漫画の眼鏡って大体そんなキャラだし」

眼鏡「な、なにぃ……!?」

部長「決勝に進ませてもらうぞ」ザッ


副部長「やった!!!勝ったわ!!!」

女「すごいですみなさん…!」

女部員「さすが部長!」

男部員「惚れていいですか部長!!」

女部員「ホモォ!!」

男「部長!!ありがとうございました…っ」

部長「男よ、負けたことが悔しいか。ならばそれをバネにもっと強くなれ!!!」

部長「この俺を越えてみせろ!!!」

男「ぶちょぉ……!!俺、次は絶対勝ちます!!!」

部長「それでいい!!!」

―――――・・・
―――・・・


部長「準決勝から数日経ち、明日はいよいよ決勝戦だ!!」

「「「うおおおおぉ!!」」」

部長「ここまで来れたのも皆のおかげと思っている!!そして」

部長「ここまで来たなら何がなんでも優勝杯を!持ち帰るぞ!!」

「「「イエッサー!!!」」」

部長「明日に備えて今日はゆっくり休むように!それでは、解散!!」

「「「はーい!!!」」」


副部長「男くん、体育館閉めるわよ」

男「俺もうちょっと残って練習したいんスけど」

部長「気持ちは分かるが休息も大事だぞ」

男「…うっす」

テクテク


女「……あのー、明日いよいよ決勝だね」

男「……そうだな」

女「…お、男くんなら大丈夫だよ!あれからいっぱい練習もしてたし」

男「ああ。まあな」

女「部長も副部長もいるし……絶対優勝できるよ!」

男「あの人たちも引退だしな。世話になったし、優勝杯あげてえな」

女「……」

男「明日か」


女(男くんが馬鹿にした喋り方をしてこない……)

女(普通に喋ってくれてるはずなのに、なんかすごく怖い……っていうか調子狂う……)



男「明日さ、もし優勝できたら」

女「えっ!?なに…?」

男「祭りの日に、言いたいことあるんだ」

女「……今じゃだめなの?」

男「だめだ」

女「そ、そっか。じゃあ、待ってるよ」

男「おう」

女「……明日、がんばろうね」

男「ああ。じゃあな」

女「またね」



女(なんだろう…言いたいことって)



決勝戦


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

マッチョ「………」

ムキムキ「………」

覇王「………」




女「……うわっ!体育館に入った瞬間、なんかすごい禍々しい空気が…」

男「むっさ」

副部長「あれが3連覇を成し遂げた去年の優勝校よ」

部長「さすがのオーラだな!!」

女「ひぃぃ……なんで格闘技じゃなくて剣道やってるのか、不思議なくらいの体格ですよアレ……」



先鋒戦


男(絶対勝つ!!!勝って優勝につなげるんだ!!)

マッチョ「ヌンッ!ヌンッ!」

男「あいつか!息の根とめてやる!じゃあ行ってきます!!」

部長「息の根はとめんでよいが、よし!行ってこい!!」

女「お、男くん……頑張ってね…っ」

男「ああ!」ザッ



マッチョ「ヌァアアアアアアアアアアアアアッ!」ブン

バシーン

男「うっ!?……こんな重い一撃初めてだ」

バシッバシッ

マチョウ「ヌンヌンヌンヌン!」

男「くっ」



副部長「まずいわね。攻撃しまくりタイプの男くんが防戦一方だわ」

部長「短期決戦が要だな!」

女「……」ハラハラ


マッチョ「ヌゥン!」

バッ!

男「!!」



部長「!!まずい男、ふせげ!!」

男「……っ」サッ

男「図体もでけえし、パワーもあるが、一振りが大きすぎるぜ筋肉ダルマ!」

男「隙だらけだ!!」

マッチョ「ヌンッ!?」


部長「!! あ、あの構えは!」


男「ヤ、サ、イ、マ、シ、マ、シ、カ、ラ、メェェェェ!!!」


バシッバシッバシッバシッバシッバシッバシッバシッバシッバシッ


男「アブラァァァァ!!!!!」


ダダンッ!! バシーッ


マッチョ「…ヌ……ン……!?」

部長「11連打だと……!?伝説の技……爾魯菟<JIROU>を獲得していたとはな……」

部長「間違いなく今、お前は俺を越えた……安心して部をまかせられる」

部長「成長したな、男!!」



男「はぁはぁ……勝った…手がいてぇ」

女「男くん!」タッ

男「はぁ……おい見たか!俺の勇姿を!」

女「見たよ!すごかった……!なんかよくわかんない呪文唱えてたけど」

女「かっこよかったよっ」

男「せ、せせせせやろか!?」

男「ま、……まああたりまえっちゅー話やなほんま!!」

男「ふぉう!あー道着暑い!!あっついわほんと!」



大将戦


男「あとは部長が勝てば、俺らの優勝か……」ゴクリ

副部長「部長はやるときにはやる男よ。馬鹿だけど」

女「そうですよね……でも、相手が……」


覇王「………」ゴゴゴゴ


女「なんか世紀末にいそうな人なんですけど…」

男「ていうか、なんで部長、竹刀二本もってったんですか」

副部長「知らなかった?部長はもともと二刀流よ」

男「え!?なにその中二設定」

副部長「でも二刀一気に使うわけじゃないわ。まあ見てなさい」

覇王「はぁっ!えいっ!」

ビュンッ!!!


男「!? さ、さすが覇王というだけのことはあるな!竹刀さばきが速すぎて見えねぇほどだ!!」

副部長「恐ろしい男ね!」

男「部長は一本竹刀を口でくわえて、もう一本の竹刀で攻撃をいなしてる…」

女「竹刀口にくわえる…とか、そういう某三刀流リスペクトって、ルール上大丈夫なんですか?」

副部長「さあ……いいんじゃないかしら。あんまりよくわからないわ」

女「そ、そうですか」



覇王「やあっ!!」

部長「ぐう……!思いのほか可愛らしい掛け声で力が抜ける!!」

部長「このギャップ…これがお前の強さの秘訣か!」

覇王「……」ニコッ

部長「しかし攻めるしかない!!攻撃こそ最強の防御!!」スッ

部長「野菜・たっぷり・タン・タン・メーーーーン!!!!!」


バキャァッ!!


覇王「ひゃぁ……!?おててが……!」ビリビリ

部長「く、やはり全力の俺の技には、竹刀が耐えきれないか…!!」

覇王(フン、ぬかったな!手のしびれも一瞬だった、今度はこちらの反撃よ!!!)ダダンッ

部長「ふ…忘れてないか?俺の口のもう一本の竹刀を……」

覇王「ふぇえ!?」

部長「俺が淀みなくしゃべれてたから、忘れていただろう。これが俺の二刀流だああああああああっ!!!」



部長「タンタンメン・替え玉ァァァァァ!!!!!」


ズダーン!!!

覇王(……つ、強い……)

覇王(……我の、負け…か……フッ)

覇王「完敗だよぉ……。おにいちゃん、すごいね」

部長「お前こそなかなかの太刀筋だった……」

覇王「……握手してもらっても?」

部長「構わない」


ギュッ…!

副部長「………うそ……え、優勝?」

副部長「や……やったーーーーっっっ!!!」ガバッ

女「ぶえっ」

副部長「うわあーーーーーんっっ!!勝ったわ私たち!!!}

男「よっしゃーーーー!!!」

女部員「し、信じられません……!!!」

男部員「お……俺たちが優勝だ!!!!部長!!!!」

部長「この優勝杯も、頑張ってくれた全部員のおかげだ」

部長「みんな、本当にありがとう!!!ええい目から汗がでるわい!!!」


部長「……男!」

男「はい!?」

部長「部はお前にまかせる。頼んだぞ」

男「えっ」

副部長「男くんなら、大丈夫だよ」

男「………はいっ」

男「部長、副部長、先輩方」

男「今まで、ありがとうございましたっ!!!」

女「ありがとうございました…」グスグス


「「ありがとうございました!!」」


部長「こちらこそ、今までありがとう」

副部長「みんなと剣道できて楽しかったよ」

部長「これからも切磋琢磨、みなで技を磨いてほしい」

副部長「……よっし、じゃあ打ち上げいくよ!部長のおごりでね!!」

「「いえーーい!!」」

部長「ぬ…!?お、おい副部長」

副部長「焼肉かなやっぱり。さあ行こう!」

部長「このたわけ!やめんか!!」

女「ぅぅぅ…」グスグス

副部長「ほら女ちゃんも泣きやんで!焼肉だよ!!」

今日はここまでで
はよ祭りいけやこいつら…


夏の大会が終わって数日が経過した。
3年生の先輩たちは引退し、2年生が中心となって部活を盛り上げていた。

ほぼ毎日ある部活を懸命にこなしながらも、
彼女は一度きりの高校2年生の夏休みを堪能していた。

宿題、家族との旅行、友人と出かけるショッピングモール、
図書館でひとりきりで過ごす時間。

日々は飛ぶように過ぎて行った。

そして、今日はあの約束の日である。


女「お母さん、ちょっ……きついって!」

母「だめだめ、浴衣はちゃんときつく結わえないとはだけてきちゃうから」


いつのまにか街の川沿いにはぼんぼりが飾られていて、
ああ。夏祭りの日が今年もやってきたのだと、
不思議な気持ちで夜空に浮かぶほのかな橙を見上げたのはつい先日のことだった。


母「それにしても、あんたがわざわざ浴衣着てお祭りいくなんて。だれといくの?」

女「と、友達だよ。じゃあそろそろ行ってくるね」

母「気をつけてねえ」




男家


男「…………」

妹「ねえねえお兄ちゃん、この浴衣どうかな?……ねえ、聞いてる?」

妹「鏡見つめてどうしたの?ナルシストになったの?」

男「うるせえッ身だしなみチェックだよ!浴衣似合ってる!」

妹「わーい」

男「……よし、行くか。……うっし!」


男「……」スタスタ

男「…この角を曲がったところだな、つーかあいつ忘れてねえだろうな…」

男「忘れてたらはっ倒す。100回ハリセンで叩いてやる」スタスタ


女「……あ、男くん」

男「お、おう!お前……」

部長「よう!!男、久しぶりだな!!」

副部長「部活どお?」


ズサーッ


女「ぎゃっ!男くん大丈夫!?」

男「なんっであんたらいるんスか!?なんでですかチクショウ!!」ガンガン

副部長「ひどいなーせっかく会いにきてあげたのに」


部長「お前らも夏祭りに行くのか!?ここで会ったのも何かの縁だろう」

部長「よかったら一緒に見て回らないか?」

女「いいですね。お祭りって多い方が楽しいですし。ね、男くん」

男「ハイ、ソウデスネ」ギリギリ

部長「では参ろう。俺はチョコバナナが食べたいぞ!」

女「あ、私もです」

男「 」ガンッガンッ


副部長「男くん、そんなに血の涙を流さなくても大丈夫よ」

副部長「頃合いを見て、はぐれてあげるから」

男「……へっ!?いや、別に俺は」


副部長「え、男くんって女ちゃんのこと、好きなんじゃないの?」

男「לא שאני אוהב」

副部長「テンパったのは分かるけど、急にヘブライ語を話すのやめて」



副部長「まあ、がんばんなさいよ。一応応援してるから」

男「だから違いますって勘弁してくださいよ、あんなブス」

副部長「素直にならないとだめよ?女ちゃん鈍感なんだから」



部長「おーい、二人とも置いて行ってしまうぞー」

女「うわあ!ジェイソンのお面ありますよ!みんなで買いませんか?」

部長「ノコギリもセットであればいいのだが…」

副部長「さ、行きましょう男くん」

男「あー はい……」

×ノコギリ
○チェーンソー

ウワー ジェイソン!? コエー

部長「夏祭りは楽しいなあ!!」

副部長「ちょっと部長……いや元部長だけど部長。そのお面外しなさいよ」

副部長「子どもがびびってるじゃない」


女「男くん、あれ見て、金魚すくい懐かしくない?」

男「金魚すくいとかwww小学校で卒業っしょwww」

女「べ、別にやりたいって言ったんじゃなくって……!ただ懐かしいなって!」

男「本心だだ漏れだからwww高校生のくせにガキにまじって金魚すくいwwやってみればぁ?」

女「ちがうって…!」

男「しゃーねえから俺が付き合ってやるよ!オラァっデメキンゲットぉぉ!」バシャァ

女「男くんだってやりたかったんじゃん……」


男「デメキン5匹とれたから一個あげよっか?」

男「金魚一匹しかとれなかったお前にあげよっか?www」

女「デメキンってなんか怖いからいいや……」

女「あ、部長と副部長があんな遠くに。はぐれちゃうね、早く行かないと」

男「え? あ、うんソウダナー」

カポカポ

女「……」

男「別に無理して追いつこうとしなくていいんじゃね?」

女「え…?」

男「あの人たちはあの人たちで楽しそーじゃん。つーか下駄で歩きにくいんじゃねえの?」

女「へっ!?」

男「無理して早歩きしなくていいだろ。なんだよそんなに俺と祭り見たくねえってのか?」

女「そそそそんなわけないですよ」


女(なんだろう……男くんが優しい)

女(こわ……この後どんでん返しがあるのかな……怖い…)ビクビク


男「すっげえ!このかき氷屋、コーンポタージュ味とドリアン味ってのがあるぜ!」

女「ええ? わ、ほんとだ…何故…」

男「おっちゃん、これひとつ」

女「買うの!?」

男「ほら、せっかく買ってやったんだから食えよ」テレッ

女「しかも私になの!?優しさなのか嫌がらせなのかわかんないだけに無下にもできないよぉ……」

男「ああん!?俺が買ったものを食えねえってのか!?」

女「嫌がらせだった……いらないよー!うわーん!」


男「もう8時か。楽しかったな」

女「そうだね、楽しかったね」

女「男くんが無理難題を言わなければもっと楽しかったね」

男「なにかいま聞こえたような?」ギロ

女「なんにも言ってないよ?」


女「このあと打ち上げ花火があるんだよね」

男「こっ、ここから少し行ったところにさ、よく花火が見えるところがあんだけど…」

男「אז אם לא ראית יחד」(そこで一緒に見ないか?)

女「え……何語?」

男「うるせえ!さっさと行くぞグズが!」

いま気づいたけど携帯からだとヘブライ語表示されないですね。すまん



男「この商店街を抜けてくんだ」

女「そうなんだ……あっ、ちょっと少しここに待っててくれないかな」

男「あ?なんか用でもあんのか?」

女「少し買うものがあって」


八百屋

女「はぁはぁ……」

女「あー…やっぱりもう8時すぎだし、閉店しちゃってるよね…」ガックリ


ガラッ

おっちゃん「よう、女ちゃん!来ると思ってたぜ!」

女「八百屋さん……!」

おっちゃん「これ、だろ?」ニカッ

女「ありがとうございます…!」

おっちゃん「青春楽しめよぉ~!じゃあおっちゃん、寝るから」

女「はい!おやすみなさいっ」



男「おう、遅かったじゃねえか。なにしてたんだ?」

女「ごめん……ちょっと買い物で」エヘヘ


丘の上っぽいところ


男「あ、もう花火始まっちゃってるな」

女「うわー……すごいね!綺麗」

男「お…おう」


ドパーン…
 ドドンパー…


女「……」ジー

男「……あのさ!!」

女「ふあ!?」ビク

男「俺さ……前に、大会で優勝できたら、祭りの日に言いたいことあるって言ったよなぁ!?ああッ!?」

女「ひっ!なんでキレてるの!?」

女「あ……そういえば、私も男くんに言いたいことあるんだよ」

男「えっ」ドキー


男「いいいいいいい言いたいことって…なんだよ!?」

女「えっとね、優勝おめでとう。本当にすごかったよ」

女「あと、これ。今日はお祭り行けて楽しかったから……」

男「パ………パセリ」

女「うん、パセリ」

男「パセリ…?」

女「パセリだよ」

男「それだけ…?」

女「えっ……うん。??」


女「えっと…男くんの言いたいことって?」


男「……お、おう」

男「俺さ………す……す」

男「……好きだ!!」

女「えっ?」


男「ずっと、好きだった……信じらんねえかもしんねえけど」

男「お……お前は?」

女「えっと……」


女(男くんって……そんなに好きだったの?)


女(パセリのこと)


女(じゃあよかった、今日あげて)

女(八百屋さん、ありがとう…)

女(でも私はあんまり好きじゃないんだよなぁ……苦いし)



男「お前の気持ちを……聞かせてほしいんだ!」

女「うーん。私は正直あんまり好きじゃないんだ。ごめんね」

男「」


女「ご、ごめんね本当に。(料理に飾りとして)見る分にはいいんだけど」

男「」

女「(味が)どうにも苦手で……独特のにおいもあるし」

男「」

女「あ……もう門限になっちゃうや。そろそろかえろっか……」

男「」

女「あの、大丈夫?体調悪いの…?」

女(そんなにパセリのこと大好きなのかな……)


男家

妹「ただいまぁ~!あー楽しかったぁ!」

妹「あれ?お兄ちゃん、なんで玄関で寝てるの?風邪ひいちゃうよ?」ユサユサ

妹「お兄ちゃん…?お兄ちゃん!?」

妹「し、死んでる…………」

妹「一体お兄ちゃんの身になにが……ん?手にもってるのは…これは、パセリ?」

妹「ダイイングメッセージというやつなの…?」


妹「お兄ちゃん……犯人は私が必ず見つけ出してあげるからね!!」


祭りの日に起きた怪奇殺人事件―――
玄関先の兄の死体、手の中のパセリは一体何を表わしているのか?
彼の頬にある涙の跡の示す意味とは……

見た目は子ども、中身も子どもの名探偵妹ちゃんの
あてずっぽう推理劇が、いま始まる!

「犯人は……お前だ!八百屋のおやじ!」

乞うご期待!


薔薇「推理小説になっちゃったよww」

パセリ「お兄ちゃん死んじゃったよ……ダイイングメッセージかよ私……」

牡丹「夏だしミステリーいれた方がいいかなって」

薔薇「クソみたいなミステリ要素なんかいらねーよwww」

ゴボウ「wwwwwww」

キャベツ「とりあえず死人はまずいでしょwww」


アロエ「なんか楽しそうなことやってんね」

牡丹「いたた、ちょっとあんま近づかないで、トゲトゲするから」

アロエ「ごめんごめん、で、私はいつでてくんの?」

薔薇「お前の花言葉なによ」

アロエ「『健康』」

牡丹「そのまんまやないすかwwwwwwww」

薔薇「確かに食えば健康になりそうだけどwwwwwだけどwwwww」


アロエ「うるさいな!健康第一でいいじゃん!」

牡丹「せやなせやなwwwwおばあちゃんにあげたくなるなwwww」

薔薇「こういうことやろ?wwww」


「お母さん」

「あら……もう学校は終わったの?」


病室の扉を静かに開けて、僕は母の横たわるベッドに駆け寄った。
窓際や小テーブルには花瓶や果物、マグカップなどが置かれているが、
それでもこの部屋はいつ来ても殺風景な印象を受けてしまう。

でも母が笑えば別だった。母が笑うと一気に部屋が明るくなって
壁の近寄りがたいような白色も、包み込むようなクリーム色に変わるのだ。

「今日はどんな勉強をしたの?」

「今日は算数で100点とれたんだよ」

「すごいじゃない!」

放課後に病院で母と過ごすこの時間が、僕は大好きだった。
友だちにゲームに誘われるたびに断るのが辛いけど、それでも僕は病院に通い続けた。

母とは病院の外で会ったことがない。僕が生まれたときから、「フジの病」というやつのせいで、外にでられないのだそうだ。
「フジ」って「フジ山」のこと?って聞いたら、笑われてしまった。
意味はまだ教えてもらっていない。

学校のことを話す中で、今日友達が楽しそうに語ってくれたことを思い出す。



「そういえば、街の外れに水族館ができたらしいんだ」

「そうなんだ……お父さんと行ってらっしゃいな。写真撮ってきて、私に見せてね」

「僕……お母さんの病気が治ったら、お母さんとお父さんと行きたい」

「…お母さんの病気は治るのにすごーく時間がかかっちゃうの」


じゃあ僕、ずっと待つから。ちゃんといい子にして待つから。
そう言うと母はなにも言わずほほ笑んだ。

「でもやっぱり先に、お父さんと二人で行ってきて」

どうして一緒に行く約束をしてくれないんだろう?
時々思うが、母は頑固だ。優しいくせに頑固だ。

「これ、あげる。花言葉は健康なんだって」

ランドセルから、紙に包んだアロエの切れはしを渡すと、母はきょとんとする。
家庭科の先生にもらったのだ。花言葉も先生に教わった。


「お母さんの病気、治るまで待ってるから」

「治ったらいっぱいいろんなところ行こうよ」


「…………ありがとう。お母さん、病気頑張って治すからね」

「うん!」

「そろそろ面会の時間終わっちゃうから、お帰りなさい。気をつけてね」

「はーい。また明日来るね」

「うん…」

病室の窓から覗く母に手を振る。
夏の空に浮かぶ雲と同じくらい白い手をしていた。

母が元気になったら。
何をしようか。水族館に一番最初に行こう。
それで遊園地に行って、授業参観にも来てもらうんだ。
でも一番楽しみなのは、母と一緒におうちでご飯を食べること。

退院したての母に、僕と父でとびっきりの料理を作ろう。病院の味気ない料理を一瞬で忘れられるような。
それから一緒にテーブルを囲んで、いただきますをするんだ。

僕はいつかそんな日がくることを、ずっとずっと願ってる。
そんな幸せな日がくるまで、ずっとずっと待ち続けるんだ。


薔薇「どうかな」

ゴボウ「いきなりガラっと雰囲気変えてくるのやめてくれないかなあ……」

牡丹「やべ、気孔からなんか汁でてきた辛い」

アロエ「できればさっきのお祭りの続きからやってほしいな!」

薔薇「しょうがないな。牡丹、また妄想王者の出番だ」

牡丹「いいぜ!」

今日はここまでで

―――――・・・
―――・・・

女「……っていうことがあったんだよ」

女部員「……」

男部員「……」

女「みんなはパセリって好き…?私はどうにも苦手で……」

女部員「ちょっと待っててね」

女「?」


女部員「…聞いた?」

男部員「おいおい……どういう思考回路してんだ女ちゃんは」

女部員「だから最近の男くんの様子がおかしかったんだね」

男部員「魂抜けた死神みたいな顔してたよな」

女部員「てか今日男くんお休みなのってもしかして」

男部員「ついに失恋が命の灯を吹き消したのか…?」

女部員「まじかよヤベーよ」



女部員「女ちゃん!今日男くんのお見舞いに行ってあげなよ!」

男部員「で、お祭りのときの会話はパセリについてだってこと、教えてやって」

女「え……?でも、勝手に行ったら怒られちゃいそうだし。あとパセリのことって、なんで?」

女部員「いいからいいから。はい、これ私たちからのお見舞い金ね。これで蘇りの水とか買ってってあげなよ」

男部員「蘇りの水って……RPGじゃないんだから。そこらのコンビニに売ってないだろ」

女部員「さっ、行ってきなさいっ!」

女「わ、わかったよ」


女(って言われて結局コンビニで色々買ってきて、いま男くんの家にいるけど)

女(いいのかな……勝手に来ちゃって……先に連絡したいけど、男くんの携帯番号知らないしなぁ…)

女(……えい!)


ピンポーン

……シーン


女(あ、あれ?誰もいないのかな)


ピンポーン
……ピンp

ガタガタガタッ!!バタンッ ドタン!!! イテェッ

ガチャッ!!

男「うるせぇな!!一回ならしゃ分かるわ!!セールスお断り!!!」


女「わっ……!?」

男「あ゛……?」

女「あ、あの…お見舞いに来ちゃったんだけど……体調大丈夫?」

男「あ゛あ……」

女(いつもの3割増しで顔が怖い!!)


男「テメエ…なにしに来たんだよ……」

女「いや、だからお見舞いに……」

男「お前、俺のこと嫌いって言っゲェッホ!!!ガハッ!!!」

女「男くんーーー!?と、吐血したーーー!?」

男「きらガッホゲェホいって言ってゲホゲホッたじゃねえかよぉぉぉ」

女「男くーん!口からも目からも血が噴き出てるよーーー!!大丈夫!?」


女「と、とりあえず男くんはベッドで寝てて…!」

女「はいヒエピタ。おでこに貼るよ」

男「おい、俺に顔向けないでくれ。また吐血するから」

女「どんな病気なの……。分かったよ……ええと、あと果物とか買ってきたけど、食べる?」

男「あー……おう」

女「じゃあキッチン借りちゃうね。皮剥いてくるから」

男「……」


女「できたよー。……って、あれ。寝ちゃってる」

女「寝顔は昔のままだなぁ」

女(でも懐かしいな。昔は男くん、身体が弱かったから、よくこうして寝込んでたよね)

女(そうそう。小さい時はこうしてお見舞いにもよく来たんだった)

女(昔はテメエとかお前とか言わなかったのに、どこで意地悪になっちゃったのかな)

女「……」パシャ

女「とりあえず写メ撮って、アプリで落書きしよっと」


男「……」スースー


――――――・・・
―――・・・


女「はじめまして、男くん……だよね?」

女「わたし、今日ひっこしてきたんだ」

男「……よ、よろしく」

女「よろしくね!」ニコッ


女「ねえ、公園にあそびにいこうよっ おにごっこしよっ」

男「……」

男「おれはできないんだ。おれ、ぜんそくだから…」

男「はしっちゃだめって、お母さんが」

女「……そ、そうなんだ」


男「……だから、おれじゃなくてべつの子とあそんだ方が、いいと思うけど」

女「うーん でも、わたし男くんとおともだちになりたいな」

男「え…」

女「おにごっこはやめて、砂場であそぼうよ。それならいいでしょ?」

男「うんっ」パァ


―――――・・・
―――・・・

「またこいつひとりでサボってる!」

「ずるいーんだ!」

男「サボってない だってお母さんが…! 走ったらだめだって…っ」

「またお母さんがって言ってるー!マザコンやろうだー!」

「マザコンマザコーン!」

男「……」

「あっ泣いた!すぐ泣くよなこいつ」

「なよなよして女みてー!オカマだオカマー」

男「うっ……」


女「なにしてるの…?」

「うわっ 女だ」

「お前にはカンケーねーし」

女「さ、さっきせんせい呼んだから、もうすぐ来るよ!」

女「男くんをいじめたら、おしりぺんぺんだって言ってた!」

「ヤベー逃げよーぜ!」

「バーカバーカ!まあた女にかばわれてやんの!」

「所詮お前は女子に庇護される弱者なんだよバーカ!」


女「うるさいなーもう」

女「男くん、だいじょうぶ?」

男「……っ」グス

男「おれだってみんなといっしょにおにごっこしたいのに……」

男「それにおれ、オカマじゃないっ……ひぐっ…ぐす」


女「お、お…男くん!泣かないで…!だ、だいじょうぶだから!」

男「なにがだよぉ……うぅっ…」

女「男くんのびょうきも、ぜったいいつかなおるよ!そしたらいっぱいやりたいことできるようになるよ!」

男「そうかな…」

女「うん!げんきになったら、なにやりたいの?」

男「おれ……けんどうやりたい」

女「ケンドー…?なにそれ?」

男「すごくかっこいいんだ」

女「へえー じゃあいつかわたしに見せてね!」

男「……うんっ」


男「おれのびょうきがなおって……つよくなったら……その」

女「え?なに?」

男「……やっぱいいやっ!そのときになったら言う!」

女「ええっ 気になるよー」

男「そのときまでひみつ!」


―――――・・・
―――・・・


男「……」パチ

男「…んぁー……夢か…」

女「あ、起きた?」

男「ギャッ!?」ガシッ

女「うわっ!? いったたた…アイアンクローやめて!」

男「なんっでお前がここに……!?」

女「だからお見舞いだってぇ……言うの3回目なんだけど」

男「ビビらせんなよ。奇襲かと思ったじゃねえか」

女「現代人の思考じゃないよソレ…」


女「あ、そーだ。果物むいたよ。はいアロエ。アロエヨーグルトにしてみたよ」

男「ア、アロエ? お…おう」

女「あとパセリもいれといたよ」

男「百歩譲ってもパセリはない。何故入れた?」

女「え?だって男くんがパセリをずっと昔から好きだって言ってたから」

男「俺がいつそんなこと言ったんだよ!どっちかっつーとちょっと苦手だ!!」

女「えええ!?だってお祭りの日に……」

男「はあ?脳みそちゃんと詰まってますかあ?www」

男「俺が好きって言ったのは…………ハッ!!」


男(まさか……

俺「(お前が)好きだ」
こいつ「(パセリが)好きなんだ、へえ」


っていうことになってるのか?)


男(…………まじで?)

男(じゃあ嫌いっていうのは……パセリのことが?)

男「………ハアアアアアア!?」

女「?」

男「おい……一生のお願いだ……」

男「横っ面張らせてくれ」

女「い、いやだよ。なんで急に」ビク


男「はぁ~~~~~…」ボスッ

女「大丈夫?熱まだ下がらないかな……ていうか、お母さんとかまだ帰ってこないの?」

男「お前さあ……ほんっと馬鹿だよな。救いようのないくらい……まじかよ…」

男「だって普通わかんだろ!?あの空気だったらよぉ!!俺がどんだけ緊張したと思ってんだよぉ!!こんにゃろ!」

女「えッ なんのこと…? で、でも、ごめん…ね?」

男「もうお前の読解力には期待しねーわ……ハァ」パシ

女「あ!ちょ…私のケータイ」

男「アドレス、ネットに晒しとく」

女「やめてよ!?」


男「お前そろそろ帰れよ。妹もうすぐ帰ってくるし。あいつうるせーから」

女「じゃあ帰ろうかな。明日は部活これそう…?」

男「わかんね」

女「まだ熱高いかな…」ピト

男「………!?!?」カァー

女「う、うわ!?まだ結構熱いな…これじゃ明日も無理そうだね……」

女「みんなに言っとくね…って……大丈夫?」

男「きっききききたねー手でさわんじゃねーこのボケナス!!!」

女「あ…! ごごごごめんね!ついうっかり…」

妹「はあ……素直になりなよお兄ちゃん」

男「!?」

女「あ。お邪魔してます」


男「テメエ、いつから…」

妹「さっきだよーん」

女「じゃあ、妹ちゃん帰ってきたし、帰るね。お邪魔しました。お大事にね、男くん」

男「おー…。明日は部活行けると思うから、覚悟して待っとけ」

女「え、なんの覚悟…?怖いなあ……」

妹「いちいち脅さなくても、素直に言えばいいのに」

男「おめーはうるせえんだよ!!!」


薔薇「……」

アロエ「……」

パセリ「……」

牡丹「…え、なんでみんな黙ってはるんどすか」

薔薇「いやー なんか。普通に。聞いてて恥ずかしいというかwwwwwwww」

牡丹「はあ!?なななにそれっ!そう言われると私の方が恥ずかしいんだけど!!」

ゴボウ「結構おとめチックな脳内してるんですね…ww」

パセリ「少女漫画すきそう」

アロエ「私はヨーグルトと食べるとおいしいよね~」

牡丹「ちょっと!生温かい目で見つめるのやめろ!やめろォ!」

薔薇「ボタンェ」

パセリ「赤い牡丹になったェ」


薔薇「でもなかなかいい感じになってきたじゃん。そろそろゴールイン?」

キャベツ「いやーどうでしょうね。まだ道のりは長いように思えますね」

アスパラ「ここはアレでしょう。王道の」

ゴボウ「なになに?」

アスパラ「相手がほかの異性と仲良くしてるの見て、あれっ!?なんかもやもやする……これはなに? みたいな」

牡丹「あーあるある」

アロエ「なるほど。だとすると、次の野菜は……大根さん!!」

大根「うわっ なんだよ」ビク


大根「言っとくが私はそんなんに興味ないからな。勝手にやってろバカども」

牡丹「え~」

アロエ「大根さんの花言葉は『潔白』ですよ」

薔薇「なるほど!じゃあさっそくやっちゃってくれ牡丹!」

牡丹「っしゃあ!」

大根「おい!ほんとに勝手に始めるなよ!その恥ずかしい妄想に私を巻き込むなーーーー!」

ここまでにしときます
あとでてくる野菜は2.3こやで
意外と長くなってしもた。読んでくれる方ありがとう



夏休みは8月をもって終了し、代わりに2学期がやってきた。
それまでの猛暑もなりをひそめて、徐々に街並みの色も落ち着いてきたように感じる。

紅葉の深い紅、銀杏の辛子色、空の淡くグレーがかかった青
一秒ごとに風景を変えていくような夏とは違い、ゆったりした安息を与えてくれる秋が好きだった。
もし自分に絵の才能があれば、芸術の秋となっていただろう。

図書館の窓から外を眺めていた彼女は、そろそろ帰ろうと荷物をまとめ始める。

2学期。
ほかの学期と比べ、行事が多いとされる。
合唱祭、文化祭、そして……明日から始まる修学旅行。

行先は、沖縄だ。
バトルロイヤル・イン・オキナワがついに明日開催されるのだ。


男「いや、バトルロイヤルってなんスか。おかしいでしょ」

女「ていうかお二人とも、割とよく部活に顔出してますけど…受験とか大丈夫なんですか?」

副部長「部長も私も推薦入試でいくつもりだから」

部長「うむ。ところでバト…バト……馬屠流露射遣流とはなんだ!?」

男「無理に漢字にしなくても」

副部長「バトルロイヤルはバトルロイヤルよ」

女「だって修学旅行なのにバトルって……ええ?」


副部長「修学旅行ってのは、1年で一番カップルができやすい行事なのよ」

女「へえ~」

副部長「でも、それをよく思わない連中もいるわけ」

男「教師とかですか?」

副部長「いやうちの学校の教師は、毎年修学旅行は泡盛のんで酒盛りするのがしきたりだから」

男「腐ってやがる…」

副部長「むしろ教師より厄介よ。敵は生徒の中にあり……ずばり!風紀委員たちよ!」

男「あいつらがですか?まあ確かに……カタブツばっかですけどね」

副部長「風紀委員たちは他人の恋路を邪魔することのみに命をかけてくるわ。いい雰囲気になったらヒョッコリ、男女が二人っきりになったらヒョッコリ」

副部長「でもね、恐ろしいのはそれだけじゃない」

女「えええー…」


副部長「イチャイチャしたいカップル同士で争いが始まるのよ。ほかのカップルを生贄に自分たちが旅行を満喫しようとしたりね」

部長「うむ!!去年はそれはもうすごかったな!」

副部長「もう地獄絵図よ。醜い争いだったわよ。あんたらも気をつけなさい、風紀委員と他の奴らにね」

男「ハァ…。めんどいっすね」

副部長「ところで二人は一緒の班になったの?」

女「私たち、違うクラスですから」

副部長「ああ~……そうなんだ。残念ね」チラ

男(余計なこと言わんでくださいよ)キッ

部長「お土産は、ラフテーでよいぞ!!!ははは!!」

女「海ブドウも買ってきますね。沖縄楽しみだなぁ……」

副部長「ま、楽しんできなさいよ」

男「そっすね……ハァ」


当日 沖縄

先生「いいかーくれぐれも問題起こすなよー。じゃあ自由行動開始。先生たちも観光するから邪魔すんなよ」

女友「ダメ教師どもめ」

友彼「おーい、さっそく行こうぜ!」

委員長「修学旅行中、よろしくね」

女「あ……よ、よろしく」

女友「えへへ。彼くんと一緒の班になれるなんて嬉しいな!」ギュッ

友彼「お、おい!みんなの前で///」

ピーーーーッ

風紀委員「公衆の面前で不純異性交遊!イエローカードですよ!!」バリッ

女友「きゃ!ちょっとなにすんのよ!」

友彼「お、お前たちは……風紀委員!」

女「ああ、これが副部長の言ってた……」



風紀委員「旅行とは言え浮かれないで頂きたい。カップル・そしてそれに至りそうな萌芽すらも僕たちは摘み取るつもりです」

友彼「な、なんでそんなことするんだよ!」

風紀委員「理由ですか?そんなの一つしかありませんよ……」

風紀委員「リ ア 充 し ね……」

風紀委員「イッチャイッチャしやがってよぉ!一人身の気持ちも考えやがれ!普段の鬱憤を晴らしつくしてくれるわ!!!」

女「ぶっちゃけすぎ…」

女友「さ、最低」


委員長「いや……びっくりしたね。風紀委員の噂は聞いてたけど、普段は大人しい奴らなのに」

女友「しかも人数多すぎでしょ。あれ絶対本物の風紀委員以外もまぎれてるって」

友彼「あーあ。せっかくの旅行なのにな」

女「まあまあ……気を取り直して、観光行こうよ。明日は海に行くし、今日は首里城だよ」

委員長「途中でいろいろお店も見て回れるし、楽しもうよ」

女友「そうだよね!よしっじゃあ出発ー!」

友彼「おい、はしゃぎすぎだって」


男「まだ沖縄あっちぃなー」

男友「だなー。明日も晴れるらしいぜ。海で泳ぎまくってやる」

茶髪(女)「あー見てみて!ドラゴンフルーツ売ってるよ!うわあすごい見た目ー!」

黒髪(女)「試食できるって。食べてみる?」

男「えっまじで?」

男(……ん!?あそこにいるのは……)


女友「おそろいで買う?」

友彼「俺これ」


委員長「風紀委員のいないこの時とばかりに二人が……ごめんね、なんか僕とばっか一緒にいさせて」

女「えっ……委員長が謝ることじゃないよ。そ、それに私の方こそ……ごめんね、私人見知りで」

女「あんまり私としゃべっててもおもしろくないと、お、思うんだけど」

女(うわーん……友ちゃんの馬鹿っ)

委員長「そんなことないよ。女さんと今まであんまりしゃべったことなかったからさ、話せて嬉しいよ」

委員長「あ、これ見てよ。シーサーだ。こわい顔だよね」

女「え、どれ?……ほんとだ。すっごい顔」クス

委員長「だよね」



男(……!? なんだあの、そこはかとないいい雰囲気は!?)ジロジロ


男(横にいるのは、勉強もスポーツもできると噂の委員長じゃねえか!あいつら一緒の班かよ!)

男(つーかなんだよあのブス!あんな笑顔全然俺の前でしないくせにぃぃぃぃうがぁあああああ)ギリギリ

茶髪「ちょ…男くん、大丈夫?どうしたの?シーサーの顔真似?」

男「ああ……そんなところだ」ギリギリ

男「……俺、ちょっと電話してくる」

男友「え?どこに?」


男「っへへへ……副部長が言ってた、バトルロイヤルの意味が分かったぜ……」

男「俺はちょっと違う意図だがな……」

男「あ、もしもし風紀委員か?ああ、~~の~~通りにイチャイチャしてるカップルもどきがいらっしゃる……」

男「存分にぶった切ってやってくれ…ああ……ハハハ」

男「いえいえこちらこそ……ククク」


男「俺にとっては風紀委員の存在すらも追い風になるぜ……ハーッハッハッハ!」

男「渾身のゲス顔で見物してやるよぉ!ヒャハー!」


―――――・・・
―――・・・

女「はぁはぁ……あーびっくりした……」

委員長「いきなり風紀委員がこっちに向かって木刀構えてくるから何事かと……ふう…」

委員長「僕たちカップルじゃないのにね。女さん、大丈夫?」

女「う、うん……ぜえぜえ……はあはあ……」

委員長「もう追ってこないようだし、ちょっとあそこの喫茶店で休もうか」

女「そうだね…友ちゃんと彼氏くんともはぐれちゃったし、連絡しないと…」


お店


女「わあ!海ブドウパフェなんてあるよ……!すごい!」

委員長「なんか変なお店はいっちゃったな…」

女「あれ…?(窓から見えるあの4人組って、男くんの班かな?)」


黒髪「いやー、風紀委員の跳梁跋扈だねぇ。さっき見た?怖かった~」

茶髪「鬼の形相で木刀振り回されたら失神しちゃうよ、あんなの」

男友「さっきのカップルって、委員長と女だったよな?あいつら付き合ってたんか」

男「カップルじゃねえ!!!!」

茶髪「きゃあっ!いきなり叫ばないでよ!」

男「わ、わり」


茶髪「そういえばさ、男って剣道部の部長になったんでしょ?」

男「ん?まあ」

茶髪「すごいじゃん。それに県大会も優勝したらしいし」

男「まあな。俺天才だから」

茶髪「あははっ 普通に言い切ったね~。県大会、応援行きたかったな。私も大会あって行けなかったんだ」

男「へー、お前って何部だっけ」

茶髪「バレー部だよ。なによ、一緒のクラスなのに知らなかったわけ?」

男「い、いや、知ってたって!」

茶髪「うそだー!」バシバシ

男「いって!やーめろ!悪かったって」


女(………)


女(すごい仲よさそう……ていうか男くんって普通に笑うんだ)

女(私といる時いっつもこわい顔してるからなぁ。まあ嫌われてるからなんだろうけど…)

女(男くんの彼女の話とか聞いたことなかったけど、もしかしてあの子がそうなのかな)

女(明るくて、かわいいし……私と真逆の女の子)


委員長「? 女さん、どうかした?」

女「ふぇ!?う、ううん!別になんも!」

委員長「なんか元気ないみたいだったけど。あ、もうすぐ女友さんと友彼はこっちに合流するってさ」

女「あ、そうなんだ。よかった」

委員長「……ふっ」

女「え?な?なに?なんで今笑ったの?」

委員長「いや……ごめん、口の横に海ブドウクリームがついてるから」

女「えええっ?どこどこ?」


委員長「あ、そっちじゃなくて……僕がとっていい?」スッ

女「うん、お願い」



男友「なんかハラ減ってきたな」

黒髪「じゃああそこのお店入る?」

男「そうだな……―――――!?!?」

男(なななななななにやってんだあいつら!?)

男「ちょっと電話してくる!!!」

茶髪「え、また?」


「いらっしゃいませー」

風紀委員「オラァー!貴様らなにイチャイチャしとるか!」

委員長「うわ!?またこいつらか!」

女「えっ!?な、なんで?」

委員長「とりあえず逃げよう!女さん、こっちへ」

女「わ、う、うんっ」

風紀委員「待たんかいおどれらあああああああああ」

バタバタ


――――――・・・
――――・・・

夜 宿にて


女「うぅうぅぅ……一日走りまわったおかげで筋肉痛だよ~」

女友「そんなに走ったの?てか私たちほとんど別行動みたいになっちゃったね」

女友「合流しようとしたら、またどっかに行くんだもん。結局合流できたの夜だったし」

女「なんかやたらと風紀委員に追いかけられて……疲れた…」

女友「でもさぁ、委員長と仲良くなれたんじゃないの?」ニヤニヤ

女友「委員長は勉強もできてスポーツもできて、性格もいいし、結構隠れファンいるんだよ?」

女「うん、ほんと優しい人だった。私、人見知りだけどしゃべりやすかったし」

女友「ほほう。じゃあ付き合っちゃいなよ!」

女「なんでそうなるの!?……そういうのまだ私には早いよ……よくわかんないし…」

女友「奥手だなぁ」

女「も、もう寝よ!明日は海だよ!早く寝た方がいいって!」


男(クックック……今日は大分阻止できたな)

男(明日も頼むぜ風紀委員……)

男友「なあ、黒髪ちゃんってかわいくねえ?」

男「ああ?あー…お前って好みハッキリしてるよな。巨乳」

男友「バッちが、胸だけじゃねえよ!!」

男「だけって言ったってことは、胸のこともしっかり見てんじゃねーか」

男友「うるせえな!!いいだろ。お前はどうなんだよ?茶髪ちゃん、結構いい感じだったじゃん」

男「そうか?いい感じかはともかく、おもしろい奴だよな」

男友「うんうん。俺たちラッキーだよな。しかも明日は海だ!!水着姿が見れるぜ!!!うひょー!」

男「明日か……(明日はあいつら邪魔できねえな。くそ!あいつの班も海に行ってくれれば!!)


翌日

男「うおおおおおおおお!海だああああああああ!!」

女「うわーっ!すごい綺麗な海だね、友ちゃん!」

男「……あ!?」

女「……あれっ!?」

男「お前らも海かよ…………ってか……」

男「洗濯板wwwwwwww」

女「なっ…!!///」

男「誰得の水着姿なんだけどwwww」

女「う、う、海なんだからしょうがないじゃんっ」

委員長「うわー、さすが沖縄。海もきれいだ」

男「ああん!?」ギロ


男「ほう。これはこれは委員長殿、ご機嫌うるわしゅう……!!!」

委員長「えっ。ご、ご機嫌うるわしゅう……ええとはじめまして」

男「噂通りのイケメンっぷりですなぁ!ええ!?ウラヤマシイナー!!」

委員長「ど…どうも?ははは…」

男友「おい、なにやってんだ?」

黒髪「男くんはやーい」

茶髪「わー、海だーーーーー!」プルンッ


女「…!?」

女(お………大きい!!)ガーン


茶髪「ねえ、早く泳ごうよ!」グイ

男「あっ おい!俺はまだ委員長に話が!」

茶髪「いいからいいからっ」プルンプルン

女(はわわわ……メ、メロン……メロンが二つ……)

女「……」

女「うぅっ……パーカー着ようかな…」ショボン

女友「なにしてんのー?早く海はいろーよ」

女「メロンが…メロンがぁ……」

委員長「?」


彼友「へい、パース」

女友「よっしゃー はい女パス!」

女「ええ!ど、どこに飛ばしてんの?」

女友「いっけね」

女「じゃあとってくるね……あーっ流されちゃう!急がないと」

女友「ごめんねー」


女友「……あ、なんかコンタクトずれたかも」

友彼「大丈夫か?なあ委員長、ちょっとここで女ちゃん待っててくれよ、俺こいつに付き添ってくるから」

委員長「うん、いいよ」


ザップン ザップン

女「うわわ……私が進むたびにボールが流れて行って、全然追いつかない…」

女「……よし!やっと捕まえた……なんか大分浜から離れちゃったな」

女「……ってあれ!?あ、あ、足がついてない…!うそっ!そそそそんな深くまで来ちゃったの?いつの間に!?」

女「ななななんか急に怖くなってきたっ!は、はやく戻らないと……!」

ザパーン

女「ぶわっ……!?」

女(やばいやばい!はやく陸地にぃぃぃぃ……!)

委員長「だ、大丈夫?女さん」パシ

女「!? い……いいんちょぉぉ」


女「なんかっ……いつのまにか……こんな深いところにいて…!!」

委員長「うん、全然戻ってこないから泳いできたんだ」

委員長「とりあえず落ち着こう。あそこに小さな離島があるから、ちょっとそこで休もうか」

女「う、うん」


女「はあ……怖かった……ありがとう、委員長。死ぬかと思ったよ…」ブルブル

委員長「こっちもびっくりしたよ」

委員長「それにしても、こんなところに二人でいるのみられたら、また風紀委員がうるさいだろうなぁ」

女「あっ……ごめん」

委員長「あ!い、いや違うんだ。そういうつもりじゃなくって」

女「ご、ごめん」

委員長「いやこちらこそごめん…!」

女「……」

委員長「……」

女「…あはは。私たちなんか似てるね…」

委員長「確かにね。ははは」


委員長「そろそろ戻る?」

女「エッ……そ、そうだよね。戻らないとね……大丈夫、泳ぐのと、と、得意だから!足がつかないくらい、どうってことない、よね!」

委員長「ええと、僕に掴まってればちょっとは怖くないかな?…もしよければなんだけど」

女「つ…捕まるって……」

女(でもそうしないと足つかないほど深い海を泳ぐの怖いし……いつまで経っても陸に戻れないし……)

女「じゃ、じゃあよろしくお願いしま………あれっ?」

委員長「ん?どうしたの………って、なんだあれ?」


女「あの影……こっちに向かってくるよ!?ま、ままままさか鮫!?しゃ…シャチ!?」

委員長「うわあ。困ったな……泳いで帰れない」

女「ってそういうことじゃないよー!食べられちゃうよぉ!!もっと海から離れないとっ」

委員長「え、ほんとに鮫!?うっわ!」


ザパーン!

委員長「うわあっ!?」

女「きゃーーーーーーーーっ!!!」

男「てめぇらあああああああああああああああ!!!」

委員長「ええええええええええええっ!?」

女「いやーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

男「なにしとんじゃーーーーーーーー!!!」


委員長「…え?」
女「……え」

男「はい!風紀委員として風紀を乱した貴様らを粛清しまーす!!」

委員長「…君さっき会った……風紀委員じゃないよね?」
女「ていうか、男くんだよね…」

男「風紀委員だよ!!おめーら近い!ほら離れろ離れろ!!!」

女「うわ!」

男「おら!俺がもってきてやったこのバナナボートに乗れ、まな板女!!」

女「まっ……まな板!?そそそそこまで貧しくないしっ…!」

男「陸に行くぞこんにゃろども!」ザパーン

委員長「えっと、ありがとう男くん。とりあえず助かったよ」ニコッ

男「男じゃねえ!俺は風紀委員だ!!」


女友「あ!やっと帰ってきたー!どこまで行ってたの?」

女「ごめん……なんか流されちゃって」

茶髪「あー、こんなところにいたんだ男くん!いきなりバナナボートもってどっか行っちゃうから心配したんだよ」

男「悪い」

茶髪「ほら、黒髪も男友も待ってるから、いこ」グイ


女「……」ジー

委員長「女さん?」

女「あ、いや…なんでもないよ。あはは…」

女「…はぁ」


――――――・・・
―――・・・

黒髪「あ~~、遊び疲れた~~」

男友「だな~」

男「俺なんか飲みもん買ってくるわ。なんか飲みたいのある?なければゴーヤジュース買ってくるけど」

茶髪「そんなん売ってるんだ」

男友「絶対まずいじゃねえか!俺コーラ!」

黒髪「私もー」

男「あいよ。じゃあ行ってくる」

茶髪「あ、私も行きたいな……って、もう行っちゃったか」


男「海の家っていいよなぁ」スタスタ

男「…あ」バッタリ

女「あ」バッタリ



男「なにしてんだよ」

女「飲み物買いに……」

男「ふーん」

女「……」


男「……お前さ、ああいうのがいいんだなwwwww」

女「ああいうの?」

男「委員長みたいな文武両道のイケメン?てやつ?でもお前みたいな不細工と委員長じゃ釣り合わないんじゃねwww」

女「釣り合う…って、別に委員長とは普通に友だちだけど…」

男「へえー でもすげえ楽しそうだったじゃん?好きになったんじゃねえの?」

女「す、好きって。そんなんじゃないよ。確かに委員長はいい人だけど……」

男「……へえ!?そらよかったな!?」

女「…………男くんだって楽しそうだったじゃん…」

男「あん?」


女「茶髪ちゃんのメロンにデレデレしてさ……そうだよね、茶髪ちゃんすごいかわいいもんね」

女「私みたいなまな板の不細工女に構わず、早く茶髪ちゃんのところに行ってあげればいいじゃん……っ」ジワ

男「お、女?」

女「普段から私のことブスとか根暗とか言うけど、そんなの私が一番分かってるんだから!」

女「さっさと行きなよ!もうっ!どうせブスで何をやるにもとろくて馬鹿ですよっ私は!」

男「俺がいつそんなこと言ったんだよ!?」

女「いっつも言ってるじゃん!」

男「じょ…冗談に決まってんだろ!?」

女「うそでしょどうせ……!いいよ今更そんなフォローしなくても!馬鹿!」

男「ば、馬鹿だとー!?」

女「馬鹿じゃん!!」


男「うそじゃねーし!俺はなぁ!世に言うツンデレなんだよ!!」

女「知らないよそんなの!」

男「だーから!見つめあうと素直にお話できない系男子なんだっつの!!察しろ!!!」

女「じゃあ見つめないから素直に話してよ」

男「なに!?」

女「……」ウルッ

男「分かったよ!あーもー!!べ、別に俺はお前のことブスとか思ってねえ!」

男「む、……むしろ……」



ピーーーーーーーーーッ


男「!?」

女「へ!?」


風紀委員「レッドカードォォ……」ユラリ

風紀委員「甘酸っぱいにおいがしたので来てみれば…」

風紀委員「ふぅ。赤い実はじける前に来れてよかったです」

男「風紀委員!?」

女「うわっ!また木刀もってる……に、逃げなきゃ」

風紀委員「そうは問屋がおろしませんよぉ……特にそこの女子!お前は昨日仕留めそこなった女だな」

風紀委員「さあ、スイカ割と行きましょうかね。なに、抵抗しなければ痛い目に会わずにすみます」

風紀委員「ただ油性マジックで顔に落書きをさせていただくだけですよ」

男「なにー!集合写真を撮る機会の多い修学旅行でその仕打ちはひでぇー!」

女「あわわわ」


男「おい、ブス!俺がここを引き受けるから、お前は……」

女「……」

男「あ、いや、ブスじゃなくって!!今のは口が滑っただけだ!!とにかく、お前は逃げとけ!」

女「ええ!?だって3人もいるんだよ?風紀委員……」

男「大丈夫だ!多分!いいからさっさと行かんかい!!」

女「……っ!」


風紀委員「ふん……一人逃げたか。まあいい。後で追えばすむこと」

男「俺を倒してからにしろ……お前らごときにやられるつもりもないがな」

風紀委員「小賢しい……!」バッ


女「はぁはぁっ なにか武器になるものないかな?竹刀……とかないよね」

女「うーん……!早くしないと男くんがピンチ……!なにか、なにか……」

「女ちゃーーーーん!受け取れーーーー!!」ヒューン

女「うわあああ!?こ……これは」パシ

女「大根!?それに今の声は……」

八百屋「よお、女ちゃん。偶然だな」

女「なんで八百屋のおじさんが沖縄に!?」

八百屋「家族旅行さ。それより、早く行ってやれ!ピンチなんだろ!?」

女「そうだった!ありがとうおじさん!」

八百屋「終わったら残さず食べるんだぞー!!」


男「っうおおおおおお!!!!」

男「眉毛は勘弁して眉毛つなげんのだけは勘弁してーーーーーーー!!!!」

風紀委員「暴れたらもっと悲惨な眉毛になりますよ~~~」

男「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」

女「男くんっ!これ、使って!」ヒュン

男「なっ!?お前なに戻ってきて………これは!?」パシッ



男「伝説の剣――――エクスカリバーッッ!?」

風紀委員「な、なにぃ!?」ザワザワッ

女「いや、大根だよ……」


男「ほりゃーーー!」ズバン

風紀委員「いてえーー!めっちゃいてえー!!」

男「そいやっそいやー!」ブンブン

風紀委員「クソォ!総員撤退しろーー!」


男「ハァ……助かった」

女「よかった、間に合って」


男「……ええと、なんの話してたんだっけか。……あ」

女「…な、なんだったっけ?忘れちゃった……あの、さっき…かばってくれて、ありがとう」

男「別にお前がいたら邪魔なだけだからな」

男「……それとな、さっき俺がブスっつったのはな、お前の面じゃねえよ!」

女「あ、ええ? えっと…」

男「お前のその、卑屈なところだ!自分のこと小さく見て、勝手に自信なくしてうじうじして」

男「そーゆーところがムカつくんだよ」

女「……」ムッ

女「……男くんにはわかんないよ。女の子って……茶髪ちゃんみたいな子が一番上なんだよ」

女「かわいくて、流行に敏くて、人見知りしないでみんなと仲良く話せて……私と正反対の女の子」

女「だからそういう私は、できるだけ目立たないように隅っこで細々と楽しく生きてたいんだもん」



女「男くんと茶髪ちゃん、お似合いだと思うよ……そろそろみんなのところに戻るね。じゃあね」

男「おい!待て!お似合いってなんだよ。俺は別に……」

男「つーかそんならテメーだってなぁ!委員長みたいな優しくて文武両道で完璧イケメンに惚れちゃったんじゃねえのかよ!」

女「ほ、惚れてなんかないってば!」

男「ほんとかよ…ウソこいてんじゃねえだろうなぁ…」

女「ほんとだよ…!この大根に誓うから!」

男「大根に誓われてもな」

女「……」

男「……」


男「戻るか」

女「そうだね…」

モーオソイヨ
 ナニヤッテタノ?
メンゴメンゴ



女「……」ジッ

女(はぁ。やっぱり茶髪ちゃんかわいいな)

女(……なんかもやもやするな……せっかく海に来たのに、もったいない)

女(もうあっち見るのやめた!いっぱい楽しまなきゃ、損だよね……!うん!)

女「みんなー、おまたせー!」パタパタ

ここまでで
あとオクラは 今はたぶん光合成かなんかしてるんだと思います


夜 宿屋

女「……」ボー

女友「ねえ……ねえってば。聞いてる? 委員長とか彼氏の部屋に遊びに行こうよ」

女「……へ? いや……そんなことしたらまた風紀委員がうるさいよ……」

女友「大丈夫!なんかいまほかのクラスのごたごたを粛清してるみたいだから。いまがチャンスなの!」

女「うーん……私はいいや。疲れちゃったし」

女友「ええ~~。じゃあほかの子と行っちゃうよ?」

女「うん、ごめんね。行ってらっしゃい」

女友「ちぇっ」


女「……」ボーッ



女「彼氏かぁ……友ちゃんいつも嬉しそうに彼氏のこと話すもんね……」

女「どんな感じなんだろうなー……。……」

女「はぁ。やっぱ私にはまだ早いなぁ。よくわかんないよ……」

女「喉かわいた。ロビーに自動販売機あったっけ。飲み物買ってこよっと……」


スタスタ



男「ゴクゴクゴクゴク……ッハー! やっぱゴーヤジュースうめー!」

男「沖縄限定ってとこがミソだよな。にしても修学旅行で一人でジュース飲んでブツブツ言ってる俺って…」

男「友も女の部屋に遊びに行っちまったしな。見つかったらまたどうなることやら」

男「俺も自分も部屋戻るか……」クル

茶髪「あ。男だ」

男「あ」

茶髪「なにしてんの?」

男「ジュース飲んでた」

茶髪「うわっ ゴーヤかよ。ほんとにあんのかよ」

男「飲む?」

茶髪「え……。じゃあ飲む。……うわあっ!?」

コケッ



男「うおお!?なんで何もないところで転んだんだよ あぶねーな!!」グイ

茶髪「わわわ……ごめん、ありがと」



女(自動販売機って確かここだよね……、!?)

女(みゃっ!?!?)


女(おおおおおお男くんが茶髪ちゃんとだだだだだ抱き合ってってててて?)

女(なんていうタイミングで来ちゃったの私……!)

女(って違う!私の存在を知られる前に逃げなきゃ……)

男「あ?なにしてんだお前」

茶髪「あ…」

女「1秒ももたずにばれちゃったよぉぉ」ガーン

女「あ、あ、あの!私っなんもみてないから!風紀委員にも言わないし……!」

女「ご…………ごゆっくり」ダッ

男「は? おい待てゴラァ!!!」ダーッ

茶髪「えええっ!?ちょ、どこいくの?」

男「なんかあいつがよからぬ誤解をしている気がする!!!」


男「てめーーーーーー!!!観念しやがれこの豚足がぁぁぁぁ!!!」

女「なんで追いかけてくるの…!?」

男「てめえが逃げるからだよ!!止まらねえと八つ裂きにするぞコラ!!」クワッ

女「こわいよ!そんなん言われたら意地でも逃げるよ!」





女「……って言っても運動苦手な私が逃げ切れるわけないんだよね…」ゼエゼエ

男「追いかけて10秒もたってねえぞ」

女「はぁはぁ……疲れた……もうだめ」

女「ていうか……茶髪ちゃん置いて追いかけてきちゃ、だめだと思うんだけど…」

男「なんでだよ」

女「いや……修学旅行をきっかけに付き合ったんでしょ?」

男「付き合ってねえよ!どこに目つけてんだお前」

女「だ、だってさっき、……その。抱き合ってたじゃん」

男「あれはたまたま……」

女「もう、照れなくていいって。応援してるよ……ねっ!」

男「いや だから…」

女「おめでとう男くん。お幸せにね」

男「……」

ズブヌ


女「いたぁーーー!? なんでいきなり私にチョップしたのっ? い、いたいよ。理不尽だよ」


男「だーかーらー 俺はあいつとなんの関係もねぇっつってんだろーが!」

男「あいつと付き合ってもないし、さっきもなんもしてない!さっきはたまたまあいつが転んだだけだ!」

男「それをこの超絶イケメンの俺が支えただけだから!」

女「そ、そうなんだ」

男「ああ。大根に誓うぜ」

女「大根に誓われたら信じざるを得ないなぁ……」

男(まじかよ)

女「なんだ……じゃあ勘違いだったんだね。ごめんね」

男「土下座しろよ」

女「そ、そこまで罪深いかな!?」

男「俺のガラスのハートが砕け散りそうになった」

女「ああっほんとだ ちょっと涙目だ……!」


女「…なんか、修学旅行なのに追いかけられたり追いかけてばっかりだね……」

男「旅行から帰ったら痩せてんじゃねーのwwwあ、それ以上やせたら困る部分もあるかwwww」

女「なっ そんなところないもん!も、もう部屋に戻ろうよ!」

男「wwwwwwww」

男「…………ん?」


カツーン…
 カツーン…


男「おい、誰かくるぞ…」

女「えっ。この展開まさか」

男「経験則的にまあ風紀委員だろうな」

女「どどどどどうするの?ここ廊下の突き当たりだし、逃げ場がないよ!」

カツーン…

男「しかもエクスカリバーもねぇしな!どうするか」

女「やばいよ、こっちに向かってくるよ」

男「よしっ!!お前窓から飛び降りろ!!」

女「な、なに言ってるのかな!?ここ3階なんだけど」

男「大丈夫だ!下、海だから!!」グイグイ

女「どこも大丈夫じゃないよ!お願いだから押さないで!」

女「あっ!私このロッカーに隠れるねっ」キィ

男「ハッ!?ずりーぞテメー俺も入れろー!」

女「わわ……!?無理だって!完全に一人用のスペースだって……!」

女「ていうか別にどちらか一人だけだったら見つかっても構わないんじゃ」

男「あ。でももう入っちまったしな」


カツーン…


風紀委員「む?ここから人の気配がしたんだが」


シーン

風紀委員「おかしいな……二人分の気配が確かにここにあったというのに」

風紀委員「窓から降りたのか?」キョロキョロ


女(せまい~……)ギュウギュウ

男(さっさとどっか行けや!この野郎!)ギラギラ


風紀委員「おっかしいな~~~」


女(苦しい~……)

男(あー落ち着け、落ち着いて円周率を……3.14159……)


女(男くんの肩幅おっきいなー。ていうかゴツゴツしててちょっと痛い……)

女(昔は女の子に間違われるほどだったのに……いつのまにか背も伸びちゃって……)

女(おっきくなったんだなぁ。今の状況だともうちょっと小さいままの方がよかったんだけど)

女(…………///)

女(うーん、なんかちょっと恥ずかしくなってきちゃったな…!)

女(だって男くんが昔と別人みたいなんだもん……ああーもう、早くロッカーから出たいよー!)


風紀委員「うーむ」ゴソゴソ


男「……」

女「……」

女(……ん?)

女「……あの…男くん」ヒソヒソ

男「 23846 26433 83279 50288……なんだよ」ヒソヒソ

女「すごい心臓バクバクしてるけど……大丈夫?まさか、また風邪かな……?」

男「」

男「……」ギロッ


風紀委員「……!?」ゾワ

風紀委員「なんだ今の殺気は……不気味な場所だな、もう戻ろう……」


カツーン…カツーン…


女「はあ…やっと出られた。って、えええ!?男くん、大丈夫!?は、鼻血がっ」

男「問題ない」ボタボタ

女「大ありだよ……はいハンカチ。やっぱ風邪じゃないの?」

男「俺はこの時期1日1回は鼻血だす体質なんだよ」

女「そうだったんだ…大変だね」



女「……男くんは昔と変わったよね」

男「あー?」

女「背も伸びたし、身体も大きくなったし。前は私とおんなじくらいだったのにね」

男「記憶ねつ造してんじゃねーよ!昔から俺はお前より10cm高かったぞ」

女「え、違うよ。二人でいると女友だちに見られて……」

男「んなの忘れろ!!なんで変なことばっか覚えてんだよこのアホ!!」

女「ご、ごめん。それで……性格もさ!昔はいじめられてすぐ泣いちゃってたのに、今は10倍返ししかねないほどたくましくなって」

男「なななな泣いてなんかねーしwwwwwwなに言ってんですかコンチクショーwww」


男「つーかまじで忘れろよ」

女「女ちゃんいつも助けてくれてありがとうって言ってくれたよね……」

男「わーーーーーーーーーーーー」

女「えへへ。なんか懐かしいな。でも昔の男くんがまさか今の男くんみたいになるとは、思ってなかったなぁ」

男「あんな情けねえ子ども時代を過ごしたことが俺の一生の不覚だ」

女「情けなくなんかないよ。それに、私は男くんと遊べて楽しかったし…」

男「……お前は変わってねえな」

女「……」

女「え?」


女「いや、私は変わったよ」

女「昔はこんな人見知りでも暗くもなかったし……」

男「まー昔はそんなうじうじしてなかったよな」

女「うっ…」

男「でもそれ以外は昔のまんま変わってねえだろ。じゃあ先に部屋戻るぜ」

女「あ、うん」


女「私変わってないのかな……?……そう、かな……」

女「……」

女「だといいな」


大根「誰がエクスカリバーだよ」

牡丹「いたたたた、ちょっ大根さんいたいいたいいたい」

薔薇「エクスカリバーは男が帰宅後ブリ大根にしておいしく頂きました」


ゴボウ「つーか風紀委員出張りすぎwwwwwww」

アロエ「これってもしかして三角関係になるの!?茶髪と男と女で!?」

アスパラ「あらまあ…」

キャベツ「茶髪→男→女……」

パセリ「茶髪→男→女→副部長……」

薔薇「唐突に百合が……」


アスパラ「茶髪→男→女→副部長→部長…!?」

ゴボウ「茶髪→男→女→副部長→部長→委員長…!?」

パセリ「……」チラ

薔薇「おいなんでこっち見たこの野郎」

牡丹「そんなドロドロにはならんからwwwめんどくさいしwww」

薔薇「っすよねー」


牡丹「じゃあ次はだれにしよっかな。って言ってももうほとんどの野菜が参加しちゃってるんだけど」

ナス「はい!はい!!」

牡丹「誰にしようかなあ。う~~~ん」

ナス「はい!はいっ!!!」

牡丹「誰もいないかな~~じゃあ私の花言葉使おうかな~~~」

ナス「あの、無視しないでもらえる!?}


薔薇「ナスかよwwwちょっと太った?wwwwww」

ナス「太ってねーし!これ標準体型だし!」

牡丹「えーそのお腹激ヤバじゃね?www」

ナス「牡丹こそ顔でかいくせに…」

牡丹「こいつ口答えしやがって……王者なめんなよ。薔薇、棘攻撃だ」

薔薇「えっさほいさ!」

ナス「いてて、ちょっ傷ものになると食べてもらえないからほんとやめて!」


牡丹「で、あんたの花言葉は?」

ナス「わーい!ええとね『よき語らい』!!」

ゴボウ「普通だね…」

ナス「なんかガッカリした顔しないでよ。こっちが傷つくわ」

ゴボウ「いやもっとインパクトほしかったっていうか」

アスパラ「あなたの花言葉に勝るインパクトなんてそうそうないですわよ」

ここまでです

一瞬何故かホムンクルスの絵が浮かんだ……


牡丹「でも待って!異議ありっ!!」

大根「うるせっ」

牡丹「あのさ……ここまで話しておいてなんだけど、全然二人がくっつくエンドが思いつかない!てへぺろぉっ!!」

ゴボウ「今更すぎるー」

牡丹「だからさ、もうやめね!?ぶっちゃけちょっと飽きてきました!PSPやらね!?」

キャベツ「ふざけんなですね」

薔薇「ここまできたら意地でもくっつけろや!大丈夫だ フラグなんとなくたってるから!!」

牡丹「だってだってwwwツンデレと鈍感だともう平行線どころか捩れまくって二重らせん構造を永遠辿っちゃうじゃんwwwwwww」

牡丹「終わりが見えないじゃんwwwww」

アスパラ「あなた自分でそういうキャラ作ったんでしょうが……」


ナス「うーん、二人がいい雰囲気になる→男が照れ隠しに暴言吐く→ネガティブ女がやっぱり私って嫌われてるんだ……ってなる、の繰り返しだもんね」

パセリ「加えて男はヘタレだしね~ 女もうじうじ後ろ向きタイプだしね~」

アロエ「あれ二人って絶望的に相性合わない感じかねこりゃ」

牡丹「だろぉ?だからもうこの際!委員長と女をくっつけて、男がショックで自殺することにしよう!んで妹ちゃんの復讐物語にしようっ!!」

ゴボウ「牡丹はどんだけ妹ちゃんを復讐者にしたいの……前も言ってたでしょ」

薔薇「諦めんじゃねェーーーーーー!!!」チクッ

牡丹「いってぇ!?棘は卑怯!」

薔薇「諦めんなよ牡丹!二人がどうしようもないくらいヘタレとウジ虫野郎だとしても、まだ一つだけ方法があるじゃんっ!」

牡丹「えぇ…?てかあんたキャラちがくない…?」

牡丹「…………うーん……ハッ!まさか!?」

薔薇「そうだよ牡丹……お前は今から王者ではなく神とナルノデス…」

牡丹「ふぉ……ふぉお……!」

ナス「一体なにが…はじまるんです?」


突然だが男は、科学技術の発達した現代社会を生きる大多数の人々と同様
科学的に説明できない事象を、無条件に信じる思考回路を持ち合わせていなかった。

例えばそれは幽霊であったり妖怪であったり霊能力であったり―――挙げればキリがないかもしれないが、とにかくいわゆる胡散臭い存在だ。


もし仮にそういったものを彼が目の当たりにしよう。
だとしてもきっと彼はその理解不能な現象を、無理やり常識にあてはめて理屈をこね、そういった摩訶不思議なものを現実的に解釈する。
その時点でそれは不思議なものではなくなり、ただ現実に存在するごくありきたりな存在となり得てしまうのだ。

理屈で説明できてしまった時点で、それは不気味でファンタジックなものから彼の日常にありふれているものへと成り下がる―――


そう、彼の大事にとっておいた冷蔵庫のケーキがある日消失してしまったとする。
それは間違いなく不思議な出来事だ。彼はケーキを買った。しかし突然ケーキが消失した。

ケーキを構成している原子は消失することなどあり得ない。
彼は間違いなくケーキを買ったはず。記憶の混乱などではない。
ならば何が起こったのか?ケーキは我が家に発生した時空の狭間に吸い込まれてしまったのか?


勿論、そんなことはない。
ケーキは彼の妹の胃の中に消えただけなのだ。
これ以上ないほど、常識的な思考の筋道で彼はそう推測する。
あの野郎、俺のケーキ勝手に食いやがった、と。


つまるところ、彼にとって幽霊だ妖怪だ超能力だのと言われているものは、彼の妹に食されたケーキと同じくらいの価値しかない。
この発展した現代日本においては、どうしようもなく下らなく、意味がなく、とるに足らない有象無象。その程度の位置づけだったのだ。



そんな彼のスタンスを踏まえつつ、彼がこれから出会う、科学や常識で説明し得ない現象に対する彼の反応をお楽しみいただきたい―――

ちなみに別に>>272-273は別に読まなくても構わない―――

割とどうでもいい能書きである―――

「別に」が一文にふたつも入ってしまった―――

申し訳ない―――

間違えました―――


部室のドアノブに手をかけた瞬間、ドアの向こうから発せらるる禍々しいオーラにピシリと固まった。
彼が心血注ぐ剣道の試合にも劣らぬ緊張感をもたらしてくれる人物は、今のところ一人しか思い浮かばなかった。


「えっと……あんたらほんとなにしてんスか。まじ受験大丈夫なんスか」

「久しぶりだな男!!部は順調か!?」

「お久しブリーフ、男くん」

豪胆に笑う(元)部長の横で、怪しげに笑う(元)副部長。彼が唯一本気で謝ったことのある人物だ。
ていうかお久し……え?あんたそんなキャラでしたっけ。


「キャラもヘチマもないわよ。それより男くんどういうことよ。ちょっと座りなさいよ」


なんだろう。すごく嫌な予感しかしない。
こういうときは目上の先輩への敬いより、自分の第六感を信じた方がいいに決まってる。彼は即座にドアを閉め逃げ出そうとした。


「すまん男!!許してくれ!!!」

「げぼぉぅ!?」しかし部長の総重量80kgの巨体にタックルされ、阻まれてしまう。


「なにもとって食うわけじゃないのよ」


観念した彼は、大人しく二人が忙しい受験期間の合間を縫って部室に現れた理由を尋ねる。


「うん。あのね」

「はい」

「あんたさっさと女ちゃんに告白しちゃいなよ?」

「は…………ヴァーーーーーーー!?!?」

「もうね、見てらんない!二人の中学生日記見てらんないの。二人ともしっかりして。高校生でしょ?」

いい加減じれったいのよ。やきもきして受験勉強も手につかないの。私が志望校落ちたら男くんのせいだよ?とのたまう副部長。
ひどい責任転嫁を見た。


「修学旅行でさぁ、明らかにフラグたってたじゃない?ねえ、部長?」

「ああ、浜辺でやる、旗をとる競争のことか!?うむ、あれは実に楽しいものだ!」

「ビーチフラッグじゃないわ」


二人の夫婦漫才も彼の耳には入らない。
彼は今、混乱が行きかう十字路でリンボーダンスを踊っているかのような心理状態だった。


そんな彼の様子に構わず、副部長は畳みかける。


「修学旅行でさぁ、嫉妬イベント起きてたじゃない。気づいてなかったの?」

「嫉妬……イベ…?」

「お互いがお互いに嫉妬して、ちょっといつもとは違う口喧嘩もして、ピンチも大根エクスカリバーで助けちゃって……」

「ほう。大根エクリカリバーとな」

「部長は黙っててくれていいわよ。それで極めつけは、ほら。ロッカーで密着するってやつね!あ、男くんまた鼻血だしちゃだめよ。いまティッシュないから」


ださねーよ。


「……ていうか、え?副部長、なんで修学旅行のこと……そんな詳しく知ってるんスか」

まるで目の前で一部始終を見ていたかのような口ぶりだ。
しかし、その疑いを口に出した瞬間、彼はある可能性に思い当り、なんだ…とため息をついた。


「なにあいつ勝手にしゃべってやがんだコンニャロウ!女に聴いたんスよね!?」


「いや、聴いてないわよ。ね、部長」

「おう、聴いてないぞ!!断固として!!」

「え……え?じゃあ、なんで知ってるんですか?」

「見てたから」


不意に部屋の空気が変わった気がした。
彼は無意識に唾を呑みこむ。喉仏が大げさに上下した。


「いやいや。俺たちは沖縄にいたんスよ?先輩が見れるわけないじゃ……」

「あ?」

瞬きをした。
その瞬間、テーブルの向かいに座っていた二人が忽然と姿を消していた。

いくら高校剣道界で名の知れた二人といえど、瞬間移動までは身につけていなかったはずだ。


「部長?副部長?どこ行ったんですか!?」


立ちあがって四方を見回したり、テーブルの下を覗いてみたが彼らの姿はなかった。
もう彼の脳内は先ほどの比ではなく、混乱が行き交う十字路でリンボーダンスを踊りながら、鼻からそうめんを啜ってギネス記録に挑戦しているかのような状態だった。


訳のわからない状況に、彼は冷や汗を流す……が。
「人は突然消えたりしない」という常識に則り、彼はすぐにこう考えた。

俺は二人と話しているときに、突然眠気に襲われてしまったのだ。
そして呆れた二人は俺を置いて先に帰った。
最近自分もいろいろと慣れないことをして疲れていたのだ。突然眠くなることくらいある。そうだ。きっとあるんだ。


「……そうだよな。俺も……帰って夕飯作らなくちゃな」


不思議なことなど、超常現象などありはしない。これもただの日常に過ぎない。
彼は気分を切り替えて帰り支度を始める。
一応戸締りを確認しようとして、窓の方を見た。
そこで気づく。


「あれ。こんなん誰が置いたんだ?」

窓際には花瓶にさされた一輪の薔薇と牡丹。
二つの花が凛と咲き誇っていた。


昨日まではこんな花おかれていなかったはずだ。
いや……さっきも。部長と副部長がいたときには、間違いなくこんなものなかった。

そもそも剣道部に花瓶を持ってくるような上品な感性を持った奴なんていない。せいぜい洗って乾かした牛乳パックくらいだろう。


「……」

よく……わからん!!
考えるのが面倒くさくなった彼は、理屈屋設定を捨てて、豪胆な元部長譲りの思考放棄をした。

わからんもんは……わからん!!もう……帰ろう!!帰って飯食ってクソして寝よう!!!!


ドアへ向かった彼を呼びとめる声が一つ。


「待てやコラー」

「……?」


いま。声がしたような。
彼しかいない4畳半の部室で、彼以外の声がしたような。

……気のせいか!!ガハハ!!!
あーー部長のキャラ便利~~!!!!!


「気のせいじゃねーぞコラ」

「あんたさっさと女ちゃんに告白してこいよ。もーどっちもウジウジモジモジまどろっこしい」

「そこらの小学生の方がよっぽど男前だっつの!」

「せやせや つーかあんさんムッツリスケベでんなぁwwwwww修学旅行のロッカーで女さんと密着してどないやらしい気持抱きはったん?wwwwww」

「このむっつりwwwwwwwwwあのとき若さにまかせて告白しちゃえばよかったのにwwww」

「ワロッシュロリンwwww」


「でもさ薔薇?私いまの女ちゃんだと告白してもキョットーンってなりそな予感すんのよね」

「あ~~~かもね!まだニブチンだからね。それにネガティブうじ虫野郎だし?」

「だからさ~あともうちょいそこのヘタレ君のアプローチがほしいわけよ」

「せやかて牡丹!その通りやで!!」

「せやかての使い方ちげーよ!まあとにかく、男くんの間違ったアプローチ方法を私たちが修正したげよーよ!!!」

「なにそれバリ名案!というわけで男くん!!とりあえず、駅前の本屋さんに行こっか!!」


ええと……え?
いや……え?
鼻からソーメンでリンボーダンスでギネス記録で109……?

え?


「あらやだ奥さん。まだこの人ったら私たちが喋ってるってことにびっくりしてる!」

「順応性ひくーい☆ そんなんだから彼女できない暦=年齢なんじゃないのぉ~?」


でも、花が話すなんてことはあり得ない。
そもそも言葉を発するための器官がない。
それより、何故女のことを知ってるんだ?
そらから何故俺の彼女できない暦を知っている?誰にも言ったことないのに



どどどど童貞ちゃうわ。

俺の前に道はなく、俺の後ろに道は出来るんだ!
未来に続く道程を歩んでる最中なんだよ!


やたらと癇に障る口調で話し始める前は、その花たちは窓からの光に照らされて花弁の端が仄かに輝き、
まるで一枚の静物画のような光景だとすら思ったが。

全力で前言撤回させて頂くことにした。


「科学や常識だけじゃ説明できない物事だってあるって。大丈夫っ!愛の伝道者の私と、王者の牡丹がついてるからさ!!」

「これは、夢か?」茫然として彼は言う。

その問いに花は楽しそうに揺れながら答えた。

「男くんの夢か、ほかの誰かの夢か分からないけどね~~」

「つーかもうさっさと行こうぜ本屋!!!よっしゃ行くぞ本屋!!」


行くって。一体どうやって。
そう尋ねようとした瞬間、彼は駅前の本屋の店内に立っていた。

今日はここまでで
>>267のホムンクルスがすごい気になるんですが…

エロ漫画家だったのか。錬金術の方かと思ってました

続き投下します



男「え!? えっ!?」

薔薇「ほら、うろたえてないで、これとこの漫画買ってきな」

男「はぁ!? なんで俺本屋にいんの!? どういうこと!?」

牡丹「うるせーなこのヘタレ野郎wwwwwwwさっさとレジ行ってこいwwwwwwww」


男「ヘタレじゃねえよ! くそ、買ってくりゃいいんだろ買ってくりゃあ…」


本屋には不思議なほど人がいない。
そのせいで少女漫画を買う姿や、花としゃべる姿を誰にも見られずにすんだ。

というか俺は本当になにをやっているんだろう。
俺はどこに向かってるんだ。

金を払って、俺のものになった大量の少女漫画を手に
俺は遠い目をせざるを得なかった。


牡丹「じゃあその少女漫画を読んでお勉強しましょ」

薔薇「ちょっとお前のアプローチ方法ひどすぎんよ~」

男「こんなん読んでなにになるってんだよ」

牡丹「お前の恋愛の仕方だといつまでたっても完結できねーんだよっ!」

男「なんの話だよっ!?」


薔薇「まず好きな子に暴言吐かない!女なんてこの漫画のキャラみたいに、優しい言葉かけりゃコロっと一発なんだからさ!」

牡丹「とにかく優しくしときゃあ大丈夫だから!ほらリピートアフタミー!『髪に芋けんぴついてるよ……カリッ』」

男「それのどこが優しい台詞なんだよ。わけわからん…」



薔薇「とにかくほめまくってフラグたててこい!」

牡丹「照れ隠しで暴言吐くなよ。あっちもそれを真に受けるバカなんだから」

薔薇「素直になれよ兄ちゃんwwwwww」

男「腹立つ植物だな……」

牡丹「じゃっ、このナスもって女ちゃんのところ、行ってこい」

男「ナス!?なんで!?」

薔薇「『よい語らい』してきなよ。素直な心でさ」

男「どういうことだ!?」

牡丹「いま、お前にほんとのことしか言えない呪いかけたから」

薔薇「うそつけないからね」

男「え? お、おい!?」

牡丹「はいじゃあドーンwwwwwwwww」

男「う……わああああっ!」



――――――・・・
――――・・・


茶髪「……あのさ、女ちゃん、だよね?ちょっと今いいかな?」

女「え? あ……はい」


女(な、なんだろう……?)ビクビク

茶髪「えっと、突然ごめんね。しゃべるの初めてだよね。私、男と同じクラスの…」

女「茶髪ちゃん…だよね」

茶髪「うん。よろしくね」

女「あ、はい。よろしく…………。えっと……なんのお話でしょう」

茶髪「女ちゃんってさ。剣道部のマネージャーだよね」

女「うん……」

茶髪「突然で悪いんだけど」



茶髪「男って彼女いるか、知ってる?」

女「えっ!? か、彼女?」

茶髪「あははっ そんなびっくりしなくても。高校生なら普通でしょ?」

女「そ、そ、そう……だね。男くんは、たぶんいないと思うけど…」

女「でもそういう話したことないし……たぶん、ほんとにたぶんだよ」

茶髪「そっかぁ…… よかった!」

女「……」

茶髪「じゃあ、男の好きなタイプとか知ってる?こういうのってやっぱ本人から聞きにくいからさぁ」

女「えっと…」



女「ご、ごめん。好きなタイプとかも聞いたことないや」

茶髪「うーん、残念。男ってなに考えてるかわかんないからさー」

女「あはは……」

茶髪「じゃあ、これで最後!一応確認なんだけど……」

茶髪「女ちゃんって、男のこと好きじゃないよね?」

女「えっ…………」


茶髪「いや、好きなら悪いから。事前に聞いときたいと思って」

女「わ…私は別に」

茶髪「……そう?」


茶髪「……」ジッ

女「……な、に?」

茶髪「……ううん。ありがと。私そろそろ行くね」

女「あ、あのっ! 茶髪ちゃんは…………男くんのこと好きなの?」

茶髪「ん?うーん。そうだね。彼女いないって分かったし、これから好きになろっかなって感じ」

女「……?」

茶髪「じゃっ、ばいばーい!」


女「あ、うん……」



―――――――・・・
―――――・・・


女友「いや、それって普通だと思うよ?」

女「……え… そ、そうなの?」

女友「だってせっかく好きになっていろいろ頑張ってもさ、途中で彼女いるって分かったら、その時間無駄じゃん」

女友「だから、彼女いない人を好きになるって言ってるんでしょ?茶髪ちゃんは。そんなのみんなやってることだよ」

女「よくわかんないなぁ……だって、普通、好きになったら彼女がいてもいなくても、その人のことしか考えられなくって…みたいな感じじゃないの?」

女友「あっはははは!それは漫画の見すぎっしょ」

女「わ、笑わないでよー///」

女友「まあ あんた初心だからね。いつかそのうち、分かる日がくるよ」

女「バカにして……もう!」




女「そんなものなのかなぁ~~」ゴロゴロ

女「私が夢見がちなだけなのかな~~~!」ゴロゴロ

女「はあぁ。好きになった時間が無駄って。そんな……そう言われちゃおしまいというかなんというか……」

女「せめてもっとオブラートに包んでもらいたかったよ友ちゃん…」


女「……茶髪ちゃん、男くんと付き合うのかな。彼女いないって言っちゃったし、そうなるんだろうな」

女「男くんもOKするだろうし。だって茶髪ちゃんみたいな明るくてかわいい女の子だもん」

女「…………」

女「…………」ショボン

女「ってなんで私落ち込んでるんだろ」

女「なんだか修学旅行以来、男くんと茶髪ちゃんのことばっかり考えてる気がする……」

女「うぅ~~ 調子狂う。そうだ!本よもっと!」ガバッ


ドンッ!


女「えっ!? い、今の音……なに……?」

女「窓になにかぶつかったのかな…?」


ドンドンッ!


女「め、めちゃくちゃぶつかってる! 窓あけなくちゃだめかなぁ……怖いなぁ…」

女「でも窓割られちゃかなわないよ。……えいっ!」ガラッ

女「一体なにが……へぶっ!!?」

男「おっすwwwwwwwおっすwwwwww」

女「え、男くん!? ていうか今顔にあたったのって何…………ナスっ!?」

女「なんで……私の部屋の窓にナスをぶつけてるの……?」

男「いや、少女漫画風に呼びだしてみただけ」

女「いまの少女漫画ってそんな風なの!?そんなアグレッシブなの!?」

女「やめてよ……窓割れちゃうよ……!」



女「ええと、な、なにか用かな?」

男「おう。よき語らいってやつしよーや」

女「語らい…? いいけど……どうして?」

男「つべこべ言わずにさっさと家に上げろ!」

女「ひぇぇ!? わわわわわかったよ」

男「……っていうのは冗談で、ただお前とちょっと二人っきりで話したいだけなんだ!」


男「はぁ!?」

女「……え?」

男「いやっ!今のも冗談で!!勝手に口が動いただけだゴラァ!!調子乗んなテメー!!……ってのは照れ隠しなだけで俺はお前と話すのが楽しいからっつーか好きっつーか なに言ってんだ俺」

女「??」

男(か、勝手に口が動く!? なんだこれ!?………ハッ!)

~回想~

薔薇「『よい語らい』してきなよ。素直な心でさ」

男「どういうことだ!?」

牡丹「いま、お前にほんとのことしか言えない呪いかけたから」

薔薇「うそつけないからね」

男「え? お、おい!?」






男「…………まじか!」

女「…えーっと。よくわかんないけれど、とりあえず上がりなよ…」

男(なにしてくれてんだよあのクソフラワーどもが……!)


女「ちょっと散らかってるけど、ごめんね」

女(『ちょっとどころじゃねーーだろwwwww女の部屋とは思えんwww』とかかえってくるに1ペリカ)

男「散らかってるか?そうでもないだろ。やべっ 女の匂いするわこの部屋。ちょういい匂いするやばい」

女「……へ?///」

男「もあーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

女「えぇぇぇっ!? なにっ?」ビク

男「なんでもない……なんでもねえ!」

女「心臓に悪いよ…… ええと。お茶淹れてくるね」

男「お、おう……」ゼエゼエ


バタン

女(なんか…今日の男くん、様子が変だな… もしかして熱あるのかな?)

女(へ、部屋が私の匂いするって……臭いってことじゃないよね?///)

女(またからかわれてるのかな……! やめてほしいよほんと…)




女「……お待たせ。……なんで息切れしてるの?男くん」

男「別にタンスを物色してたとかしてねーぞ!部屋観察とかもしてねーからな!!」

女「まだなんも言ってないよ……はい、お茶」

男「悪いな」



男「えーっと。その……調子はどうだ」

女「……」プルプル

男「おいっ なんで笑いこらえてんだよっ!」

女「ご、ごめん……!だって、毎日会ってるのに、親戚のおじさんみたいなこと言うから…!」プルプル

男「うるせーーーな!笑うとかわいいなチクショウ!」



女「えっ……」

男「あっ……」

女「ええっ?」

男「もういっそ…ころしてくれ……」

女「ええええっ!!」


女「男くん今日どうしたの……なんかおかしいよ…」

男「くっ……ええい!もういい!こうなったら全部言ってやるよ!」

女「?」

男「い、いつも照れ隠しに、乱暴な口きいちまうけど、ほんとはそんなこと思ってねーから」

女「う、うん?」

男「ほかの奴らだとそうなんねーのに、お前の前でだけ勝手にそうなっちまうんだよ。今までいじめて悪かったな」

女(自覚あったんだ)

男「昔っからさ、……あー、周りからなに言われても俺と一緒に遊んでくれたお前が……その」

男「すげえいい奴だなって思ってた。いつも俺が寝込んだら見舞いにきてくれたろ。そういうところも優しいなって思ってたし……」

女「え…… え!」

男「あああああああああああああああ自分で言ってて自分で寒い!!!!」



男「くそっ!穴があったら入りてえ……ブラジルまで掘り進めてぇ!!!きもい きもすぎる!!」

女「きもくなんて…ないよ。私、子どものときより性格……暗くなったし、人見知りになったし。だから男くんに嫌われてると思ってた…」

女「そうじゃ、なかったんだね。……よかった。嬉しいよ」

男「そ、そうか」

女「うん」


男「……じゃあ次はお前の番な。なんか話したいこと話せよ」

女「と、唐突ですね。……うーん」

女「じゃあ……悩み?かな」

男「おう。言ってみろ」


女「最近ね……なんだか男くんと茶髪ちゃんのことばっかり考えちゃって、なんか変なんだよね」

男「んっ!?!?」

女「よくわかんないんだ。なんかもやもやして、勉強も手につかなくて。元からかもしんないけど」

男「まてまてまてまて」

女「茶髪ちゃん、最近部活にも応援に来るじゃない?それで男くんが手を振り返してるところとか見ると……なんか……ぎゅってなる」

女「なんだろ、これ。どうしたら治るかな……」

男「どういうこと?どういうことこれ?」

女「やっぱり、男くんにも分かんないかぁ……そうだよね、ごめん」

男「や……あのさ」


男「それって…………」


男「俺のこと、好きなんじゃねぇの?」

女「え?」

男「……」

女「え」

男「……お、おう」

女「……」

男「えっと…」

女「……」ポロッ

男「なんで泣く!?!?」


男「な、なん、な、どうしたんだよ!?おい!?」

女「……なんで私泣いてるの?」

男「俺に聞くなよ!俺が聞いてるんだよ!」

女「うっ……ひぐ……」

男「きゅ…………救急車!!」ピポパポ

女「救急車は呼ばなくていいよ……慌てすぎだよ男くん」

男「これ携帯じゃねえ!ナスだ!!!」

女「男くん、今日は帰って」


女「ちょっとひとりになりたいの。また明日、学校でね」

男「お、おう。じゃあな」

女「ちょ!ここ2階だから、窓から帰るのは危ないから!!玄関からでて!」

男「わわわわりい」バタン




女「……」

女「……涙ひっこんだな」



女(馬鹿だ……私)

女(私、茶髪ちゃんと一緒だ。気づかないふりしてただけだ…)

女(どうせ男くんは茶髪ちゃんと……付き合っちゃうんだからって。私みたいなの、最初から叶うはずないんだからって気づかないフリしてただけ)

女(傷つくのがいやだから。好きになっても無駄だからって)


女「……」グス


女「ほんっと臆病で弱虫で泣き虫で打算的でしょうもないな……私って」

女「でも、……男くんが、私は昔と全然変わってないって言ってくれて嬉しかった。今みたいに弱虫じゃない、昔の私と……」

女「…………」


女「いつもなら、諦めてた。やる前からどうせ無理だって思って」

女「でも……私、ちょっとは変わったもん。剣道部に入って、髪も切って、ちょっとは明るくなれたもん」

女「私!やってやる!もう気づかないふりなんてしない……!」

女「諦めたりなんて、しないんだから!」



男宅


男「ただいま……」

妹「おっかえりー!お兄ちゃんお腹すいたー」

男「おう……待ってろいま作るから……」

妹「今日はなに?ってかなんかあったの?すっごいしょんぼりしてるけど」

男「麻婆豆腐にナスの味噌炒め、ナスのおしんこにナスのてんぷら」

妹「今日はナスの日かなんかなの!?」

男「ハァ……俺またなんか言っちまったのかな……」

妹「ハンバーグ食べたいよぉ~」


男「我がままいうな。女は黙ってナスだ……。ん?なんだこの本?」

妹「ああそれ、図書館で借りてきたの」

男「花言葉図鑑って。いまどき読む奴いんのな」

妹「おもしろいんだよ?野菜にも花言葉あるんだって」

男「へえ」

妹「ナスはね、『よき語らい』っていうの」

男「あ!? ちょっと見せてみろ」


男「ゴボウ……『私をいじめないで』!?どんな花言葉だよ。ん?そういえば、俺の机にゴボウが置かれてたことがあったな」

男「……」パラパラ

男「……ハハッ」

妹「お兄ちゃんごはんー」



次の日


女友「おはよー女…………女!?」

女「おはよう」

女友「あ、あんたどうしたの!?」

女「なにが?」

女友「なにがって!顔が劇画タッチだよ!?これから世界征服でもするつもり?」

女「世界征服はしないけど……今日は決戦の日だから」ゴゴゴゴ

女友「ほんとどうしたのあんた!いつものおっとりキャラに戻ってよ!」



男「……あのさ、このクラスに女って奴いるだろ?いまいる?」チラチラ

モブ「ああ、女さんならあそこに」

男「ありがとな」


男「あー、あのさ。昨日は悪かったな…………大丈夫だったか?」

女「ん?男くん、おはよ」クルッ

男「ギャァーーー!?誰だテメェ!?!?」

女「女だよ」

男「お、お前、まじで昨日なにがあった!?」

女「なんにもないよ……ただ戦いに身を投じる覚悟を決めただけだよ……」

男「完全に戦士の顔になってるぞ!? きゅ……救急車ッ!!!」

女友「あんたも落ち着きなさいよ。なんだこれ…」


放課後


女「じゃあ……戦場に行ってくるね」ガタ

女友「死ぬなよ…」




茶髪「また剣道部に見学に行こっかな。今日は差し入れとか…」

茶髪「……!! 何奴!?」 

女「……」スッ

茶髪「女ちゃん……!?」


女「ちょっと……話があるんだけど、いい?」

茶髪(昨日までとはまるで違うオーラを感じるっ……一体、女ちゃんになにがあったというの!?)ゴクリ

茶髪「ええ……いいわ。じゃあそこの空き教室に入りましょ」

女「……」コクリ

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・


ついに覚醒した女っ……!
無人の教室にて人知れず世紀の闘いが繰り広げられようとしているっ……!


茶髪「で、なに?話って」

女「うん、突然ごめんね」

茶髪「別に用事あったわけじゃないし、大丈夫」

女「あのね……私、昨日言ったこと。撤回したいの」



女「私、男くんのことが好きなんだ」

茶髪「……やっぱり」



女「私なんて、ブスだし人見知りだし、勉強も運動もできないし、特技はガーデニングくらいし」

女「茶髪ちゃんみたいな可愛くて運動もできて明るくて、友だちもいっぱいいる女の子がライバルなんて、正直やる前から結果が見えてると思う」

女「でも、諦めないから!ま、負けないから!」

女「だって男くんの隣、譲りたくないもん。いや別にまだ私のものじゃないけれど……!」

女「とにかく、勝負です!!茶髪ちゃん!!」


茶髪「なーんだ。ちゃんとはっきり言えんじゃん。あーあ、私あて馬か」

女「……っ」

茶髪「ちょ、いきなり劇画タッチに戻るのやめてよ。恋する乙女モードに戻ってよ。こわい」



茶髪「ライバルなんている人狙わないよー めんどくさいし」

女「…えっ?」

茶髪「私この間彼氏と別れたばっかりでさ。男なら剣道部主将だし、背も高いし、顔もそこそこだし、ちょうどいいかな~って思ってたんだけど」

茶髪「まっ 野球部の4番打者の彼も結構いい感じでさ、ちょっと狙ってたからそっちに鞍替えしよっかな!」

女「く、くらげ?」

茶髪「とゆーわけで、安心しなよ。頑張ってね!応援してる」

女「どうも……?」



女「…あれ?」


体育館


スパーン
 メーン!ドー!

男「そこ、踏み込み甘いぞー ……ん!!」

男「おいおせーぞ!!もう部活始まってんだろーが!なにやってた心配しただろボケ遅刻するならするで俺に一言声かけろやコラ」

女「あ、うん……ごめんね?」

男「チッ」


女「あのさ、男くん」

男「あん?」

女「明日……部活終わった後、話したいことがあるの」

男「ふぁ!?」


男「はっはははは話したいことってなんだよ」

女「……明日、言う」

男「お……おう。分かった」





女部員(キタコレ)

男部員(まじか!!ついに!!)

女後輩(部誌にちゃんと書いとかないと!)

男後輩(先輩……やっとッスか……)

副部長「けしかけた私たちのおかげね……よっしゃ!一発かましてこいよ!」

部長「これはどんな状況だ、副部長!?」


部員「えっ!?」クルッ

部員「どうした?」

部員「い、いや。いま引退したはずの部長と副部長がいた気がしたんだが」

部員「誰もいないじゃん。てか二人がいるわけないだろ?いま受験勉強中だって」

部員「だ、だよな……」



牡丹「っしゃァアアアアアアアアアアア!!!!」

薔薇「キターーーーーーーーーーーー!!!!!!」

アスパラ「ちょっと!なにどさくさに紛れて自分ら話にでてるんですの!」

キャベツ「強引すぎる…強引すぎますよ…」

ゴボウ「いや、もう細かいことは気にしない!!GJ!!!」

パセリ「祭りじゃーーーーーーーーーー!!!!」

大根「血沸き肉躍るぜぇーーーーーーーーーーー!!!!」

アロエ「大根さんノリノリだね」

ナス「ひゃっほーーーーーーーーーー!!!!」


薔薇「いやー長かった。次で終わり?」

牡丹「終わり。もう日も傾いてきたしね」

ナス「次の野菜は、なににするの?」

パセリ「って言ってももうほとんどの野菜でちゃったよね」

薔薇「っふふふふ……ふははははは!」

大根「どーしたオイ」

薔薇「ここは!私の出番でしょ!!愛の伝道師、ローズ様の!!!」

牡丹「あー あんたそういや花言葉そんなんだったね」

薔薇「まかせな!!!!真っ赤な情熱の赤いバラだぜ!!!」


オクラ「待ってくださいッス!!!」

薔薇「!?」


アスパラ「オクラさん?」

オクラ「おはよッス!!!」

ゴボウ「おはようじゃねーよ。もう夕方だよ。どんだけ寝てたんだ」

オクラ「ところで……花言葉ッスけど。そういう話なら私以外に適役はいないと思うッス!!」

薔薇「アーン?ッスッスうるせーなぁ。この愛の代名詞、赤いバラ様に勝てると思ってんのか?」

薔薇「どーせ野菜の花言葉なんてあれだろ?オクラだったら『粘ります』とか『ぼん酢で食べるとうまい』とかだろぉ?」

オクラ「ちげぇー!野菜馬鹿にすんのもいい加減にしろ!」

オクラ「聞いて驚くがいいッス……私の花言葉は!!!」


オクラ「『恋によって身がほそる』!!!」ズギャーン

薔薇「な…………なにーーーーー!?」



薔薇「こ、恋という単語が入っているだとぉ!?野菜のくせに!ネバネバのくせに!!」

オクラ「体にいいんだぞ!」


ゴボウ「まじか……オクラ、あんたそんな花言葉もってたなんて」

キャベツ「とんだ伏兵がいたようですね……!!」


オクラ「さあ!!最後は私で飾るッス 牡丹!!」

牡丹「ああ!了解!」

薔薇「くっそぉぉぉ」



部活中


男「おそーい!そしてチャーシューメンのスープのうまさを表現できていない!!」

後輩「は、はいっ!?……す、すみません?」

男「そんなんじゃタヌキソバだ!お前の剣道はソバでいいのか!?ラーメンじゃなくていいのか!?」

後輩「え、え、え?」



男部員「いや~ 男の奴、舞い上がっちゃってますねぇ」

女部員「意味分からないこと口走ってるし……内心すごい動揺してるでしょ あれ」

女後輩「大丈夫ですかね」



男部員「一方あっちは……」チラ


女「はい、スポドリどうぞ」

後輩「あ、どうもです…………ギャーーーー!?鬼!?」

女「え?」ゴゴゴゴ


女部員「完全に決戦モードに入って顔がゴルゴ13みたいになってるね」

男部員「こわっ」

女部員「女は吹っ切れるとああいう顔になっちゃうみたいね」

男部員「男の奴大丈夫か?告白の前に殺されないかアレ?」


男「ふう。今日の部活はこれで終わりにするか。じゃじゃじゃじゃじゃっじゃあ、かかあい解散っ!!」

女(終わった……。が、がんばんなくっちゃ!うっ、なんか緊張してきたぁぁぁあ)

女(でも今日言わないと、この勢いにのってないと、また臆病な私に戻っちゃうよ)

女(大丈夫、オクラもちゃんともってき……え!?!?ないっ!?)

女(はわわわーーー 玄関においてきたまま学校きちゃった!!)


女「男くん、ごめん!ちょっと体育館で待ってて!」ダッ

男「は!?おい、どこ行くんだよ!」



男部員「…フラれたな」ポン

男「まだ告ってもないのに!?」



女「はぁ…はあっ! 急がないと!」

委員長「女さん」

女「えええっ?委員長?どどどどうしたの?」

委員長「すっかり出番のなくなった委員長さ。はい、コレ」

女「オクラ!? なんで委員長がこれを?」

委員長「頑張ってね、女さん。応援してるよ」ニコ

女「委員長……ありがとう。頑張るよ、私」


副部長「女ちゃん」

部長「よう!久しぶりだな!!」

女「部長、副部長!? え?お二人は結構暇なんですか?」

副部長「忙しいわよ。忙しいけど、こんなおもしろそうなこと見逃せないじゃない」

部長「受け取れ、女!!!」

副部長「獲れたて新鮮よ」

女「オクラ……。ありがとうございます!」

部長「がんばれよ、女」

副部長「陰から見守ってるわ」

女「それ、比喩表現ですよね?」

副部長「勿論よ。覗き見なんてするわけないじゃないテヘペロ」

女「する気満々じゃないですか…!」


女友「私からも!」

女「友ちゃん!」

女友「あんた、自分から告白するキャラじゃなかったのに、すごいじゃん!がんばって!」

女「う、うん……!がんばる!!」


女「みんなの気持ちがつまったオクラがあれば、私なんでもできる気がする…!じゃあ行ってくるね!」

女「ありがとう、みんな」

女友「告白中にゴルゴ顔になっちゃだめだぞー」

委員長「がんばれー!」

薔薇「がんばれー!」


体育館


ガララッ


女「男くん……!ま、まだいる?」


(やべっ きたぞ)コソコソ
(ちょっとあんたらもうちょい奥つめてよ!見えないじゃない!)
(うるさいぞ!!!ばれるだろうが!!!)


女「……」

女「男くーん」

男「おう、いるぜ」

女「よかった……待たせてごめん」



女「男くん、これ!!あげます!!」バッ

男「オクラ……」

女「意味は、分からなくていいから。ただの験担ぎ……」

女「私、男くんに言いたいことあって! あのね……!!」

男「ちょっと待て。これ」スッ

女「えっ? オ、オクラ? なんで男くんももってんの…?」

男「妹がさ、花言葉図鑑を図書館から借りてきてな。今までのお前の奇行もようやく意味がわかった」

女「え……えっ!///」


女「どちらかというと男くんの奇行っぷりもすごいけど……!じゃ、じゃあこのオクラも…」

男「おう、知ってる」

女「そ、そっか。じゃあ…あらためて言わせてもらうけど……」


男「いや、俺から言わせてくれ。……ん、ゴホンッ!えー、あー……その、だな」

男「……ずっと昔から好きだった」

女「……!」

男「あっ!このオクラがじゃなくてな!お前だぞ!!俺が、お前を、好きなんだからな!勘違いすんじゃねーぞ!!!」

女「うっ、うん///」



(あー パセリ事件のこと思い出して先手を打ちましたね 男。ちゃんと学んだんだな)
(パセリ事件とな?)
(いいところなんだから静かにしなさいよっ)


女(……)


女「わ、私も。男くんのことが、す……好きです!」

女「こんな私で……よければ。お付き合いしてくださいっ!」

男「ま、まじで?」

女「まじです…///」

男「じゃあ、これからよろしく…///」

女「…うん……よろしく/// な、なんか…照れるね」

男「なあ、


部長「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

副部長「おめでとう、二人とも♪」

男部員「いやーついにくっついたかー」

女部員「長い道のりでしたねえ」



男「は!?!?」


女「気づいてなかったの、男くん……」

男「は……ああ!?なんですかあんたら!!い、いつから!!」

副部長「男くんが、人という字を3回飲み込みながら女ちゃんを待ってるときから」

男部員「古風~」

男「最初からじゃないスか!!うわああああああああっ!」

女「……あれ? でも副部長たちは私にオクラを……あれ?」

女部員「まあまあ、ここからは若い二人にまかせましょ」

部長「用事も済んだし、帰るか!!!」

がやがや
 がやがや


男「なんて暇な連中なんだ……」

女「……」



男「…まあいいか。……帰ろうぜ」ギュッ

女「お、男くん。手……//」

男「お前が歩くの遅いから引っ張ってやんだよ!ほらっ行くぞ!!」

女「わわっ……ちょっ 速いよ!」

男「うまいオクラ料理作ってやるから、俺んち行くぞ!!」シャーッ

女「ねえ!?手つなぎながら男くんだけ自転車ってどういうことなの!?」

男「とろいな…この豚足野郎」シャーッ

女「ひどいよっ! せめて後ろに乗っけてよー!男くんの馬鹿ーー!」

男「はっはっはっはー!」





牡丹「こうして家についた男と女は、妹ちゃんからの祝福を受けつつありったけのオクラ料理を食べて、部屋でいちゃいちゃしようと思ったけど、女が男の本棚一番下の段のエロ本を発見してしまい、微妙な空気になって、結局チューすらすることもなく、ちょっと手を握るだけという初々しい付き合い一日目となったのでした。終わり」



薔薇「終わったー!おつかれー!うぇーい」

牡丹「うぇーい」

オクラ「大団円ッスね!!」

ゴボウ「いやーまさかゴボウからこんな話になるとは」

キャベツ「昼に始まって、ほとんど今、夜ですよ……牡丹さんお疲れ様です」

牡丹「疲れた」

大根「全然おもしろくなかったな」

パセリ「ちょっと茎潤んでない?大根」

大根「馬鹿言うな」

アスパラ「じゃあそろそろ寝ますか」

薔薇「ん?ちょっとみんな黙ってくんない?なんか聞こえる」



娘「ただいまー」

母「あら、おかえりなさい」


薔薇「この家の娘が帰ってきたみたい」

アロエ「もうそんな時間かー」


娘「今日なに?」

母「かき揚げのお蕎麦よ。…あら、野菜足らなくなっちゃったわ。庭のゴボウと…適当な野菜獲ってきてくれない?」

娘「ええっ…帰ったばっかりなのに。もー」


パセリ「やばい!こっちくる!みんな自分の埋まってた場所に戻って!」

オクラ「うわわわ!」


ばたばた
 ばたばた



ガラッ

娘「人使い荒いなぁ、もう…… あれ?」

娘「なんか土が…散乱してる。猫でも入り込んだかなぁ……」

娘「ま、いいか。ゴボウゴボウ……あ、あった」ズボッ

ゴボウ「……」

娘「そういえば……ゴボウの花言葉って、『いじめないで』とかなんとか…そんなんだったよね」

娘「……」

娘「面と向かって言えるほど、強気じゃないし。もういっそ野菜で訴えてみようかな?」



娘「男くんのせいで今日も遅刻しちゃったし……いや私が寝坊しなければよかったんだけど!」

娘「もうこんな生活、やだ……!私はもっと自由にのんびりひっそりと、学園生活を送りたいんだもの……」

娘「ゴボウで…………変われるかな?」ゴク

娘「……よしっ!!」


母「娘ちゃーん、まだー?」

娘「いま行くー!」



娘の手に握られたまま、ゴボウはこっそり仲間たちの方を振り返った。

声にださなくても、仲間たちの言いたいことは姿を見れば分かる。

と同時に、自分の言いたいことも彼らに伝わっているはずだ。

だって彼らは、花言葉で繋がったソウルメイトなのだから。



(ゴボウ……!!!)

(みんな……私……必ずこいつらくっつけるから!!)

(あんたならできるよ!絶対できるよ!)

(見ててね!私の勇姿を……! キャベツ、スタンバッておいてね……!!絶対あんたにつなげてみせる!!)

(承知しました、ゴボウさん……!!)




娘「これで、明日からいじめられる生活ともおさらば……っ」



野菜から

始まる恋も

きっとある

(牡丹こころの一句)







おわり

こんなgdgdな文を最後まで読んでくれた方、どうもありがとうございました

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