ライナー「なんだこれは」 (87)
※進撃SS
・漫画10巻までの価値観でキャラを書いているので明言はさせてませんがネタバレはしてます
アニメ組はご注意ください
・相当に強引な設定の前提なので無理があるのをご容赦ください
・原作を独自解釈しているので違和感はアリアリです
・恋愛はありません 女分もあまりありません ギャグもほぼありません
・ライナーはホモじゃありません
・無駄に真面目で長いです
書き溜めてるのでのんびり投下します
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374000198
ベルトルト「どうしたのライナー」
ライナー「いや、兵舎裏の掃除をしてたら変なものが土の中から出てきた」
ベルトルト「どれ? 見せて」
ライナー「これだ」
ベルトルト「うーん? なんだろうこれ。見たことない形してるね」
ライナー「ただの石……にしては形状が整いすぎてるな」
ベルトルト「うん。小さいのに綺麗な長方形だね。それに色もついてる。片面は黒で……もう片面は緑っぽいね。ただの石じゃなさそうだ」
ライナー「うーむ。俺らにはわかりそうもないな。教官かアルミンにでも聞いてみるか」
ベルトルト「ライナーがそうしたいのならいいんじゃないかな」
ライナー「それにしても奇妙な形だな……」
夜 兵舎 男子寮
アルミン「変わった石?」
ライナー「あぁ、これだ」
アルミン「うぅん? うーん、なんだろうこれ。初めて見る」
ジャン「石にしちゃ綺麗だな。なんなんだそれ」
ライナー「それがわからんから見てもらってる」
ガチャ ドヤドヤ
エレン「あー。疲れた。やっと食堂の掃除終わった」
トーマス「流石にへとへとだ」
コニー「お、何してんだお前ら」
ライナー「俺が見つけた石を見てもらってるんだ」
フランツ「石?」
エレン「アルミンが持ってるやつか? どれどれ」
コニー「なんだこの石。色ついてるじゃねえか」
トム「なんなんだ? この石」
ライナー「わからん」
ベルトルト「……」
ライナー「キース教官に聞こうとも思ったが、今日は午後から内地に行っていて聞けなかった」
ライナー「他の教官にも聞いてみたが、皆目見当がつかないそうだ」
ライナー「偶然できた綺麗な石だと判断する方が多かったな」
エレン「うーん?」
コニー「教官がそう言うならただの石なんじゃねえのか?」
ライナー「いや、そうは思えん。どう考えても人の手で作られたようにしか見えない」
アルミン「うぅん、かなり古いものっぽいんだけど、すごく綺麗だね」
アルミン「そもそも何でできてるんだろう。鉱石……じゃないな。黒金竹でもなさそうだし、超硬質スチールでもない」
アルミン「けどスチールに近いのかな。いや、でもそれにしては軽すぎるし……」
コニー「すちーる?」
ライナー「コニー、授業で習っただろう。鋼だ」
エレン「鋼で出来てるってのか? それにしちゃ色がありえねえだろ」
ジャン「普通鋼って言ったらブレードや鋼貨みたいな色だしな」
アルミン「うん。これは少し緑色が入ってる。角も削られてて丸みを帯びてるし、それに凄く軽い」
アルミン「妙な出っ張りみたいなのもあるし、とても自然物とは思えない」
ガチャ ドヤドヤ
ミリウス「腰が……」
ナック「あんな本腰入れて床磨いてりゃそうなるに決まってるだろ」
マルコ「ふぅー、やっとお風呂掃除終わった。あれ、皆して真ん中に集まっちゃってどうしたのさ」
サムエル「何してんだ?」
ダズ「おいおい、明日も朝早いんだぞ。遊んでないで寝た方がいい」
ライナー「いや、実はな」カクカクシカジカ
ナック「石か。どれ……、うーん、確かに見たことないな」
マルコ「こんなに綺麗な形してるんだから、自然のものじゃあなさそうだね」
ダズ「なんだってそんな石ころに真剣になれるんだお前ら。俺は興味もないし考える気もないから寝るぞ」
ミリウス「俺も寝るよ。腰が……」
ナック「わりぃな。俺も力になれそうにないし、寝る。何か面白いことでもわかったら教えてくれ」
トム「あぁ、悪いけど俺も寝るよ」
フアーネムイ
オイモウチョットツメロヨ
セメエンダカラガマンシロ
イタァッ!
エレン「うわ、外真っ暗じゃねえか。掃除してて全然気づかなかった」
コニー「俺もねみぃ」
ベルトルト「……」
アルミン「ライナー、これ少し借りていてもいい?」
ライナー「構わんが、どうする気だ」
アルミン「少し調べてみるよ。と言っても弄れるところもあまりないし、そんなにわかることはないと思うけどね」
ライナー「そうか。じゃあ頼む」
トーマス「今日はもう寝よう。明日の訓練に支障が出ちゃまずいからね」
深夜 兵舎 男子寮
???「W* w*r* **rn t* b*e*k *he *o*rs *o*n♪ F**ht*n' *il* *he e*d♪ Y*ah♪」
ライナー「うぉ、なんだ!?」
ベルトルト「ううん?」
エレン「なんだぁ?」
アルミン「ご、ごめん。実はこれ弄ってたらいきなり……」
ジャン「なんだ? 何の音だうるせえな」
エレン「それさっきの石か?」
ライナー「もしかしてこれが音楽、か?」
コニー「おんがくぅ? なんだそれ」
エレン「え、コニー音楽知らないのか」
コニー「なんだそりゃ」
アルミン「コニーのとこには楽団が来なかったの? シガンシナ地区には時々内地から楽団とか来てたけど」
ジャン「あぁ、そういやトロスト区でも時々やってたな」
コニー「そうなのか? 俺は知らねえ」
ライナー「コニーは確かラガコ村出身だったな」
ベルトルト「壁の中の小さな村に内地の音楽団が行くことなんてほぼないからね」
アルミン「ライナーたちの村には来たの?」
ライナー「いや、俺たちのところにも来てない。だが内地の楽団に入りたがってた奴がいてな」
ライナー「だから話は聞いたことがある。ただその後巨人に襲われたからな」
ライナー「そうした娯楽とは無縁になっちまったし、どっちみち聞くのは初めてだ」
石「L*v* *s o* *a*e us, *oth*n' *an b*ea* us♪ B*t*er be――」
石「充電が切れます。太陽にかざし十五分お待ちください」ピーピー プツッ
ベルトルト「……止まった、みたいだね」
アルミン「なんだったんだろう今の。こんな小さいのになんで音楽が聞こえたんだ」
アルミン「それに太陽にかざすって……。そもそもなんで声がするんだ」
アルミン「あり得ない。僕らの技術では不可能だ。第一明かりもないのに発光までしてた」
エレン「どういう仕組みなんだ」
アルミン「全くわからな……いや、待って。そうだ。これはまるで……」
エレン「どうしたアルミン?」
アルミン「ライナー、これは多分、僕たちが軽々しく扱えるものじゃない」
アルミン「それとあまり教官たち大人に見せない方がいいと思う」
アルミン「これは、もしかしたら壁の外の世界のものかもしれない」
コニー「なんだ、何の話だ?」
ライナー「外の世界?」
ジャン「おい、なんだそりゃ。どうしてお前がそんなこと知ってんだ」
エレン「おいアルミン。ジャンもいるってのに……」
ジャン「あぁ? 俺がいちゃ不満なのか」
エレン「なんでもねえよ」
アルミン「落ち着いてジャン、エレンも。大丈夫だよ」
アルミン「幸い起きたのは僕の近くにいた人だけみたいだし」
アルミン「どっちにしても皆になら話しても大丈夫だと思う。仲間だもんね」
エレン「あの本の話はジャンに聞かせたら」
ジャン「死に急ぎ野郎は黙ってろ。どういうことだアルミン」
ジャン「外の世界の話なんて、知ってるだけで二、三は法に引っかかりかねねえ」
ジャン「ここに憲兵団がいたら捕まっててもおかしくないんだぞ」
アルミン「ごめん、ジャン。今から話す話は内緒にしてほしい。君が内地の憲兵団志望なのを知った上でのお願いだ」
ジャン「……ったく。本当なら教官に報告するとこだが、大事な仲間を売る真似はしたくねえ」
ジャン「今日の話は全部聞かなかったことにしといてやる」
エレン「ジャン、お前……」
ジャン「俺だってそこまで腐っちゃいねえよ」
エレン「あ、あぁ、悪かった」
アルミン「ありがとうジャン」
ジャン「いいから話を続けろ」
アルミン「簡単に説明するけど、外の世界には炎の水、氷の大地、砂の雪原」
アルミン「そうした壁の中では絶対に見ることができない世界が広がってるんだ」
アルミン「海って言う塩の水が大量にあったりする」
アルミン「僕とエレンは、いつかその世界を見てみたい。調査兵団を希望してる理由は、それも大きいんだ」
ライナー「それはまたなんというか……」
コニー「塩の水って……」
ジャン「冗談にしちゃ笑えねえな」
ベルトルト「外の世界の記述って、アルミンはどうしてそんなこと知ってるんだい」
アルミン「おじいちゃんの本に書いてあったんだ」
コニー「お前のじいちゃん何者だよ」
アルミン「大事なのはここから」
アルミン「エレンとは昔一緒に読んだけど、実は今言った自然のこと以外にも後半にはいろいろ書いてあったんだ」
エレン「どんなことだ?」
アルミン「それは僕たち人類の技術力のことだ」
アルミン「巨大な岩の林、空を飛ぶ鉄の鳥、大地を駆ける長い獣、広大な塩水の海を渡る大きな船」
アルミン「僕たちの知らないとんでもない文明。それらがかつて外の世界には人の手によって作られて存在していた」
アルミン「そんな風なことが書かれてた」
コニー「??? なんだそりゃ」
アルミン「岩の林には人が入って住んでいた。鉄の鳥には人が乗り、長距離の移動手段として存在していた」
アルミン「大地を駆ける獣も海を渡る船も同じだ」
エレン「なんだそれ……。本当かよ。」
アルミン「そしてそうした巨大なものだけじゃない。逆の技術も特化してたんだ」
ジャン「逆の技術?」
アルミン「例えば小型の連絡手段。手で持てる大きさの伝令手段だよ」
ライナー「伝令ってのは人がいないと無理なんじゃないのか」
アルミン「それが可能だったんだ」
アルミン「その小さな伝令手段があると、同じものを持ってる人と瞬時に、同じ時間に会話ができる」
ジャン「はっ、嘘くせえ」
アルミン「僕も流石に信じてはいなかった。人間にそんなものが作れるとは思ってなかったんだ」
アルミン「現に今の今まで忘れてたしね。けど、今日ライナーが拾った石を見て確信したことがある」
アルミン「その本に書かれていたので、この石と全く同じ機能を持ったものがあった」
ベルトルト「というと?」
アルミン「小型の音楽再生機。内地の楽団を呼んだりしなくても、いつでも気軽に音楽が聞けるっていう小さな機械だよ」
ライナー「なんだと。それはまるで……」
アルミン「そう。ライナーの見つけたその石のことかもしれないんだよ」
アルミン「その石は普通じゃない。僕たちの常識じゃありえない技術が使われているんだ」
アルミン「もし教官とかに気付かれてたら、大変なことになってたかもしれない」
ライナー「むぅ」
エレン「にわかには信じがたい。けどアルミンが言うことなら多分本当なんだろうな」
ジャン「俺はまだ信じられねえ。だがついさっきそれのおかげで起こされたってのもある」
ジャン「もし本当に壁の外のもんだとしたら、とんでもねえ発見だな」
コニー「さっぱり付いてけねえ。えっと、鉄の獣が炎の雪原で? 空の船が伝令で?」
エレン「コニー、無理すんな」
アルミン「なんでそんなものがウォール・ローゼの、それも兵団兵舎にあるのかはわからない」
アルミン「けどこの場所だって、かつては壁もなく人の文明があった土地なのかもしれない」
アルミン「だから奇跡的にそれを見つけ出したのかもしれない」
エレン「そんなことが……あり得るのか」
アルミン「現に存在しているからね」
アルミン「そんな大昔、いや、正史より前かもしれない技術で作られたものなのに」
アルミン「こうして現在まで残って、壊れもせず機能しているなんてそれこそあり得ないことだと思う」
アルミン「だから本当に奇跡とか、そういう風に言うことしかできないよ」
>>20
×アルミン「なんでそんなものがウォール・ローゼの、それも兵団兵舎にあるのかはわからない」
↓
〇アルミン「なんでそんなものがウォール・ローゼの内側の、それも兵団兵舎にあるのかはわからない」
ライナー「ふむ……」
アルミン「どうして壊れずにここにあるのかは、多分僕たちには絶対にわからない」
アルミン「大昔の技術力が凄すぎて、まったく壊れないものとしてこうして残ったのかもしれない」
アルミン「けど今の人類には絶対にわからないだろうね。大昔の人類の英知の結晶だから」
エレン「で、どうするんだ? この石」
ライナー「そうだな……。捨ててしまった方がいいのかもしれん」
アルミン「うん。本来なら内地に持って行ってしかるべき調査をしてもらうべきなんだろうけど」
アルミン「これは知っちゃいけないことの気がする」
アルミン「僕は見なかったことにして土に埋めるとか、捨ててしまう方がいいと思う」
エレン「でも、もしこの技術が解明すれば巨人と戦う時の伝令手段としては……」
ジャン「おいおい、これは伝令手段じゃないんだ。どちらかと言えば娯楽品だ」
ジャン「もし残しといて憲兵団にでも見つかってみろ。こんなのを知った俺らは独房行きだぞ」
エレン「うっ」
アルミン「独房行きならまだマシかもしれないね。もしかしたら審議所で兵法会議にかけられるかも」
エレン「うぅ、それもそうか」
ベルトルト「ライナー、結局は君がどうしたいか、だよ」
コニー「やっぱりよくわからん。どっちでもいいんじゃないか?」
ライナー「……」
エレン「ライナー?」
ライナー「いや、さっき聞こえた音楽。というか言葉か。いったいどんな意味なんだろう、と思ってな」
ベルトルト「あぁ。なんだか女の人の声だったね」
アルミン「うーん。僕たちの言葉とは違ったよね。でも似ているような気もする」
エレン「全然聞き取れなかった」
ジャン「聞いたこともねえ言葉だったが……、あれが外の世界の言葉なのか」
コニー「っていうか俺そろそろついてけないから寝てもいいか?」
ジャン「おう、勝手にしろ」
コニー「つめてえ」
ジャン「いや、と言うか俺も限界だ。今日は寝ようぜ。それをどうするかはライナーが決めることだ」
アルミン「それもそうだね。どうしても気になるなら明日、朝日にかざしてみてもいいんじゃないかな」
アルミン「音が消える前にそう言ってたし、何か起こるかもしれない」
ライナー「あぁ、そうだな」
アルミン「けどあまりオススメもできない。それはやっぱり見なかったことにするべき、だと思う。本当に勿体ないけど」
ライナー「ありがとな、アルミン。助かった」
アルミン「ううん、僕でよければいつでも手伝うし、相談に乗るよ」
エレン「よし、じゃ寝るか」
ベルトルト「ライナー、僕らも寝よう」
ライナー「……あぁ」
翌朝 早朝 男子寮前
ライナー「……」
マルコ「おはようライナー。早いね」
ライナー「あぁ。マルコか。ちょっとな」
マルコ「? それって昨日の石?」
ライナー「そうだ。昨日いろいろあってな。こうして太陽にかざしてるんだ」
マルコ「ふぅん。よくわからないけど、まぁライナーの拾った石だしね」
マルコ「どういう風に使うのも自由だものね。じゃあ僕は先に食堂に行ってるよ。また後でね」
ライナー「あぁ」
ライナー「……」
ベルトルト「おはようライナー」
ライナー「あぁ、ベルトルトか」
ベルトルト「……?」
ライナー「……」
ベルトルト「ライナー」
ライナー「あ、あぁ。どうした」
ベルトルト「どうしたの? 大丈夫?」
ライナー「いや、何も。昨日これから聞こえた音が妙に耳に残ってな」
ベルトルト「そう」
ライナー「こうして日にかざしてはいるんだが、特に反応もない。壊れたか」
ベルトルト「……」
ライナー「……少し恐ろしくなった」
ベルトルト「え?」
ライナー「もしこれが外の世界の技術だとしたら、俺たちのやってきたことが無意味になってしまうような気がしたんだ」
ベルトルト「ライナー、それは」
ライナー「俺たちが必死にやってきたことも、この技術を持った人類からすれば酷く矮小なことなのかもしれん」
ライナー「あんなことをしなくても、この技術を人類は再び持てたのかもしれん」
ライナー「この技術を解析すれば、人類は飛躍的に科学力があがる。文明が成長する」
ライナー「そうすれば、俺たちがあんなことをしなくても済むようになるのかもしれない、と考えてしまってな」
ベルトルト「違うよライナー。僕らのしてきたことは間違いじゃない。そんな石に惑わされちゃだめだ」
ライナー「あぁ、そうだな。そうだよな……」
石「充電が完了しました」
ライナー「!」
ベルトルト「今それ」
ライナー「どうすればまた聞けるんだ、ここか?」カチカチ
石「ピー。トラックを再生します」
石「*e w**e *or* ** br**k t*e d*or* *own♪ Fi*ht*n' *ill t*e *nd♪ Yeah♪」
ライナー「昨日のと同じ。やはりこれは」
ベルトルト「ライナー。それは止めた方がいい。人が来る」
ライナー「あ、あぁ、そうだな。ここか?」カチ
石「トラックを巻き戻します」
石「W* *e*e b*rn *o *r*ak *he *o*rs *own♪ F*ght*n' t*ll *he *nd♪ *e*h♪」
ライナー「違うな、こっちか」カチカチ
石「ピー」
ライナー「止まったようだな」
ベルトルト「行こう。そろそろ朝食だ」
ライナー「あぁ」
朝 食堂
サシャ「あのぅ、昨日約束してたパンは……」
ユミル「あ? あぁ、あれか。ほらよ」
サシャ「パァン!」
クリスタ「もう、ユミル。また変な約束してない?」
ユミル「いーや? パン一個やる代わりに今日の女子風呂の掃除と食堂の片づけをやってもらう約束なんてしてない」
クリスタ「もう! そういうことしたらダメだってば!」
ダズ「(天使)」
トーマス「(あぁ、俺104期生でよかった)」
アルミン「(クリスタかわいいよクリスタ)」
ナック「おうライナー。昨日の石はどうなった?」
ライナー「いや、結局わからず終いだ。悪いな」
ミリウス「そうなんだ、残念。いてて」
エレン「なんだミリウス、まだ腰痛めてんのか?」
サムエル「いや、昨日寝違えて今度は首だそうだ」
フランツ「すまん、俺の寝相のせいで」
ミリウス「いや、仕方ないさ。まさか足が顔に当たってたとは思わなかったけど、集団生活なら十分あり得るよ」
ハンナ「だめだよフランツ。ちゃんと寝る前にストレッチしないからそうなるのよ」
フランツ「いや、本当に悪かったミリウス」
コニー「……って言うかそもそもストレッチしたら寝相悪いの治るのか?」
ジャン「知らん」
ソレニシテモフランツガソンナネゾウワルイトハ
ハハハ マァエレンニハマケルヨ
エッ!? オレソンナネゾウワルイノカ!?
黒と緑か
ウォークマンであったっけかな
それとも>>1が適当に考えただけ?
アルミン「ライナー」コソコソ
ライナー「ん?」
アルミン「石はどう? 動いた?」
ライナー「あぁ。また昨日の音楽が聞けた」
アルミン「そう。やっぱり壊れてないんだ。いったいどういうことなんだろう……」
ライナー「なぁ、アルミン」
アルミン「うん?」
ライナー「この音楽の言葉、なんとかわからないか?」
アルミン「うーん。難しいと思う。僕らの世界の言葉じゃないから、調べる手段がないんだ。あ、でも」
ライナー「何かわかるのか?」
>>32
読んでいただきありがとうございます
色に関しては適当です
自分のは緑なのでそれに足しただけです
現在存在しているものでなかったとしてももっと科学力が進んでそんな色のができた、的な感じで補正してもらえれば
……そんな未来なのにカチカチする押しボタン式なのはおかしいんですけどね;;
アルミン「いや、この石が言ってたこと、太陽にかざすとか」
アルミン「よく考えたらあの部分は僕らの言葉だった。ということは何か繋がりがあるのかもしれない」
アルミン「昔からある言葉の中で、共通の言葉があるかも……」
ライナー「ということは」
アルミン「そこからとっかかりでわかるかもしれない」
アルミン「うん。ライナー、もう一度その石を借りてもいいかな。聞いて音楽の言葉を書き取ってみる」
アルミン「それから辞書で片っ端から調べてみるよ」
ライナー「そうか、すまん」
アルミン「ううん。僕も気になってたし、頼られるのは嬉しいから」
ライナー「嬉しい?」
アルミン「ライナーみたいな優等生と違って、僕には取り柄が座学くらいしかない」
アルミン「そんなライナーに頼られると嬉しいに決まってるよ。僕なんかでもライナーの助けになるんだって」
ライナー「アルミン……」
アルミン「頼って頼られるのが仲間でしょ」
アルミン「僕が困ったときは、いつもエレンやミカサや、ライナーやみんなが協力して助けてくれる」
アルミン「でも僕が頼られるのはめったにない。だから、こうして頼られるのが嬉しいんだ」
>>34
なるほどな
まぁよく考えたらソーラー充電できるウォークマンなんてなかったな
携帯ならあったけど
アルミン「昨日のジャンが僕の話を黙っていてくれたみたいに、僕らは仲間だ」
アルミン「頼って頼られて、助けて助けられて」
アルミン「そうしてみんなで巨人と戦って、人として生きて、仲間として協力して、兵士として戦う」
アルミン「それが僕ら兵団だ。だから困ったときや助けてほしいときは遠慮なく言ってほしい」
アルミン「僕なんかでも、人の役に立てるって誇りを思い出させてくれるからね」
ライナー「……すまん」
アルミン「どうして謝るのライナー。いいんだよ。僕も好きでやってるんだから」
ライナー「いや、ちが」
ベルトルト「どうしたのライナー」
ライナー「っ……いや、なんでもない」
アルミン「おはようベルトルト」
ベルトルト「おはようアルミン。あれ、その石」
アルミン「あぁ、ライナーから借りたんだ。音楽にある言葉の意味が気になるんだって」
ベルトルト「そう」
ライナー「ベルトルト、心配するな」
ベルトルト「別に心配はしてないよ。ライナーが決めたんだろ? じゃあそれでいい」
ライナー「あぁ。そう、そうだ。俺が決めたんだ」
アルミン「?」
>>36
携帯ではあるんですか……知らなんだ……
腕時計はそういうのあるの知ってましたが、携帯でもできるんですねぇ
昼 休憩時間 図書室
アルミン「うーん……」
ミカサ「アルミン」
アニ「何唸ってるのさ」
アルミン「ミカサ、アニ。二人揃って珍しいね。どうしたの?」
ミカサ「エレンを守るためにはエレンより常に強くなければいけない」
ミカサ「その為にはアニの格闘術は参考になる。エレンが勝てない相手の技術は、知っておいて損はない」
アニ「本音を言えば面倒だけど。別に断る理由もないし」
アルミン「へぇ、あのアニがね……。エレンのおかげかな?」
アニ「別にそういうんじゃないさ。気まぐれだよ」
ミカサ「どうせ断っても部屋で寝るだけなんでしょう? 昼から寝ていては太る」
アニ「知ったこっちゃないね」
アルミン「ははは。それで二人で図書室に?」
アニ「お父さ……いや、昔、格闘術を極める為にある人に読んでおけって言われてた本がある」
アニ「図書室にならあるだろうから、まずはそれを読ませようと思ったのさ」
ミカサ「アルミンは何を?」
アルミン「あ、いや、その」
アニ「? その紙はなんだい」
ミカサ「!? アルミン、まさか……ダメ、アルミンにはまだ早い」
アルミン「は、ちょ、えぇ?」
ミカサ「アルミン、その紙を見せて」ガサガサ
アルミン「あ、誤解だってミカサ!」バタバタ
ミカサ「ダメ、渡して」ガサッ
アニ「? なんだいこれ」
ミカサ「よかった、いかがわしいものではなか……? これ……」
アルミン「うーん、別に隠すことじゃないんだけど、ちょっとライナーに頼まれてね」
アニ「ライナーに?
アルミン「うん。あのライナーに頼られるとは思わなかったけどね」
アニ「ふぅん、あいつがね。で、この“うぃーわー ぼーん とぅー”っての? どういう意味なのこれ」
アルミン「それを調べてるんだ。微妙に僕らの言葉と繋がりはあるんだけど、どうしてもわからない」
アルミン「うーん、やっぱり無理なのかなぁ」
ミカサ「アルミン、これはなに?」
アルミン「なにって、いや、それは」
ミカサ「なに?」
アルミン「あー、ミカサには隠し事は無理か……。ごめんアニ、少し席を外してもらっていいかな」
アニ「ま、別に構わないよ。それならそれで楽だ」
ガララ
ベルトルト「あ、アニ。ここにいたんだ」
アニ「……なに」
ベルトルト「ちょっといいかい」
アニ「……」ハァ
アルミン「?」
アニ「タイミングがいいんだか悪いんだか。じゃあねミカサ、アルミン」
ミカサ「わざわざありがとう。格闘術についてはまた今度聞かせて」
アニ「……あぁ」
スタスタ ガラピシャ
ミカサ「で、アルミン、説明して」
アルミン「いや、実はね」カクカクシカジカ
ミカサ「……その石は今も持ってるの?」
アルミン「あるよ。いろいろ弄って音楽を出したり止めたりしたり、音の大きさを調節できるのもわかったから」
アルミン「今は一番小さい音にして、音が出ないように止めてある」
ミカサ「聞かせてほしい」
アルミン「え、でも」
ミカサ「お願い」
アルミン「う、うん」
同時刻 兵舎外
アニ「で、用は? あまり一緒にいるとこを見られたくないんじゃないの?」
ベルトルト「それは、まぁ、そうなんだけど。ライナーのことでね」
アニ「……ライナーがどうかしたの」
ベルトルト「どうも最近様子がおかしい。いや、切っ掛けはわかってるんだけど」
ベルトルト「どうしたものかと思って。その、相談しようと」
アニ「……くだらない。いつものことだよ」
アニ「クリスタに色目使ってたり、兵士の連中の兄貴分になってたり、悩み抱えたやつの相談に乗ったり」
ベルトルト「厳密に言えば君もおかしいんだよ、アニ。前の君ならミカサに格闘術を教えるなんてことはしなかった」
アニ「……で? 何が言いたいの?」
ベルトルト「僕らの責任を忘れてないだろうね、アニ」
アニ「……今日はよく喋るね、ベルトルト」
ベルトルト「今は君があまり喋らないからね」
アニ「ふん」
ベルトルト「ライナーも最近自覚が薄れてる。兵士になっていってるんだ。それも立派な、ね」
アニ「私もそうだと?」
ベルトルト「そうだ、とは言えないかな。君は君でどこか他のみんなとは距離を置いてるからね」
ベルトルト「……まぁ、僕ほどじゃないけど」
アニ「つまりライナーはあんたや私よりもっと酷い、ってこと」
ベルトルト「ここ二日ほどは、特に酷い。それもこれもあれのせいなんだけど」
アニ「あれ?」
ベルトルト「……まぁ、アニに話すのは大丈夫か。実は」カクカクシカジカ
アニ「外の……世界の……」
ベルトルト「勘違いしちゃだめだ。あんな石にそんな力はない。僕らの責任を放棄させるほどの力なんて持ってないんだ」
アニ「……」
ベルトルト「なのにライナーは勘違いしてる。あの石が僕たちの希望になると思ってるんだ」
ベルトルト「そんなはずはないんだ。あの石にそんな力は……」
アニ「で? 私に何ができるの?」
ベルトルト「あっ。その、それは……、相談に乗ってもらおうと。どうしたらいいかなって」
アニ「はっきり言うけど、どうしようもないね。例えその石に力があろうがなかろうが、決めるのはライナー」
ベルトルト「いや、それは、そうなんだけど」
アニ「……それともベルトルト、あんたは怖いの?」
ベルトルト「怖い……?」
アニ「自分が決められないから、自分で決めてしまうかもしれないライナーが、怖いの?」
ベルトルト「!」
アニ「自分で決められないから、ライナーが決めたことに口出しもしないの?」
ベルトルト「……」
アニ「ライナーが決めたことが、私たちの決断と違ってしまうかもしれないから、どうにかしたい」
ベルトルト「……」
アニ「でも自分で決められないから、私に頼る」
ベルトルト「……」
アニ「……」
アニ「はぁ。情けない。自分を下に見すぎだね」
アニ「ベルトルト、こんなことを言うのは変だと思うけど言わせてもらうよ」
アニ「あんたは戦士だよ。立派で、私やライナーが弱く見えてしまうほどに完璧な戦士だ」
ベルトルト「……」
アニ「ライナーはぬるま湯につかってる。もちろん私も、ね」
アニ「でも私は自分で決められる。責任を放棄するも、責任を果たすも、自分で」
ベルトルト「……」
アニ「あんたは完璧な戦士。いつもライナーの決断を優先させて、自分を[ピーーー]」
アニ「自分ならいかに汚れても、仲間を仲間と思おうとしなくても」
アニ「いざというとき全部を切り捨てられるように準備している」
アニ「でも自分で決められない。戦士だからこそ、自分の決断が鈍ってできない」
アニ「それが本当に正しいのか、確信が持てない。だから後ろ盾がほしい」
アニ「どうせそんなとこでしょ?」
ベルトルト「……」
アニ「別に責めてるわけじゃない。ただライナーも私も変だと言うなら、あんたも十分変だよ、ベルトルト」
アニ「自分で決められる力もある。自己を[ピーーー]覚悟もある。でもそれをしない」
アニ「そう、本当ならあんたは冷静に、ぬるま湯に浸かる私やライナーを見捨てられる」
ベルトルト「そんなことは……」
アニ「あんたもあんたで気付いてないだけ」
アニ「この状況が、兵士として存在してることが、心の底から否定できていない」
アニ「だから本当なら切り捨てられるはずの、ライナーを切り捨てる決断ができないのさ。だから私に頼る」
アニ「それはあんたが一番嫌う兵士としての、仲間を頼るってことなのに」
ベルトルト「違う! 僕は、僕は……戦士だ!」
アニ「……ほんと、あんたは完璧な戦士だよ」
ベルトルト「……」
アニ「もういいかい? 折角休み時間が取れたんだ。私は部屋で休むよ」
ベルトルト「……アニ。忘れるな、僕たちは、戦士なんだ……」
アニ「……忘れてないよ。忘れるわけがない」
同時刻 図書室
アルミン「……え、わかる?」
ミカサ「うん。わかる」
アルミン「ちょっと待って。え、本当にわかるの?」
ミカサ「本当にわかる。昔、本当に昔。お母さんから教わったことがある」
ミカサ「昔の東洋人たちが書いたの凄く古い本。何冊もあった」
ミカサ「お母さんがおばあちゃんからもらって、そのおばあちゃんはおばあちゃんのお母さんから」
ミカサ「おばあちゃんのお母さんは、古い本を書き写して本として残してたんだって」
ミカサ「そういうふうにずうっと昔から受け継がれてた」
アルミン「凄い。読んでみたいな……」
ミカサ「いつも眠れないときはそうして昔の本を読んでくれた、つまらなくてすぐ寝ちゃうから」
ミカサ「本を口実に、お母さんは、本よりもおばあちゃんとかの話をしたかったんだと思うけど」
アルミン「東洋の本か……」
ミカサ「今はもうない。けど覚えてる。お母さんと、お父さんの大事な思い出だから」
ミカサ「眠っちゃってたはずなのに、しっかり覚えてる。」
アルミン「その本が、この言葉とどうつながるの?」
ミカサ「その本の中の一冊にかつての言葉がたくさん残ってた。東洋で使われてた言葉。東洋に持ち込まれた言葉」
ミカサ「多分あれは、辞書、みたいなものだったと思う」
アルミン「そんな本が……」
ミカサ「さっきも言ったけど、今はもうない。あの日、エレンが助けてくれたあの日」
ミカサ「憲兵団の人が助けに来てくれて、お父さんとお母さんのこともあったから、うちも調べられた」
ミカサ「その時、全部持って行かれてしまった」
ミカサ「もしあの時私があの本の内容を覚えてると言ってたら、憲兵団に捕まっていたかもしれない
ミカサ「とにかく、本の内容は全部覚えてる。自分で読んだものも、お母さんから聞かされたことも」
アルミン「全部って……」
ミカサ「全部。お母さんはマザー、お父さんはファーザー。そういう風に単純なのから」
ミカサ「ここに書かれてるレボリューション、これは革命。そういう複雑なのも、全部」
アルミン「す、凄いね……」
ミカサ「この言葉の言語のことも書かれてた。確か、英語」
アルミン「えいご?」
ミカサ「英語のことは何もわからない」
ミカサ「どういう言葉なのか、誰の言葉なのか、どこで使われてたのか、いつの言葉なのか」
ミカサ「でも英語の意味はわかる。だからこの音楽の言葉も、わかる」
アルミン「凄いねミカサ。もうずっと昔の、子供の頃のことなのに……」
ミカサ「きっと、知っていてはいけない知識なんだと思う」
アルミン「え?」
ミカサ「覚えていたけど、使うことはないと思っていた」
ミカサ「お父さんとお母さんと、私の、大事な記憶。大事な共通点」
ミカサ「だから、忘れるわけにはいかなかった」
アルミン「ミカサ……」
ミカサ「本当は使うべきじゃないんだと思う」
ミカサ「けれど、ここに書かれていることが、もし私の知っている通りの言葉なら、書き出すべきだと思う」
ミカサ「エレンのために」
アルミン「それって、どういう」
ミカサ「とにかく私たちの言葉に直していく。アルミンは待っていてほしい」カキカキ
アルミン「う、うん、わかった」
夜 兵舎 男子寮
アルミン「ライナー。わかったよ」
ライナー「本当か?」
アルミン「ミカサのおかげでなんとかね」
エレン「ミカサの?」
アルミン「あ、うん。まぁそれはまた後で話すよ。で、これが書き出した文字と、僕らの言葉での意味だよ」ペラ
ライナー「どれ。……! この……、一番上の言葉は」
アルミン「うん、Warrior。ウォ―リア。僕たちの言葉では、戦士だ」
ベルトルト「……」
ライナー「そうか、戦士。戦士、か」
ベルトルト「……」
コニー「お、なんだそりゃ」
ジャン「もしかして昨日の言葉の意味か?」
トーマス「え、何それ?」
ジャン「あぁ、お前ら知らないんだっけ。まぁ言葉だけ読んでみろよ」
サムエル「んー? 何々。“扉を打ち破る為に生まれて来たの”? なんだこりゃ」
ベルトルト「……」
ライナー「戦士として、か」
ベルトルト「……」
コニー「すげーなこれ、俺たちのことみたいじゃね」
フランツ「そうだな。闘い抜く、か」
マルコ「これが私たちの時代、私たちの世代」
ライナー「……アルミン。石はあるか」
アルミン「うん、ここに」
ライナー「返してもらっていいか」
アルミン「あ、うん」
ライナー「……。これ、使い方はわかったか」
アルミン「うん。真ん中を押すと音楽が聞こえるよ。横についてる突起で音の大きさを変えられる。上が大きく、下が小さく」
ライナー「そうか。……ちょっと出てくる」
ベルトルト「あ、ライナー」
ガチャ バタン
トーマス「それにしても本当に僕らのことみたいだね」
コニー「っつーかましんがんってなんだ?」
ミリウス「うーん?」
ダズ「わかんねぇ」
マルコ「こっちもわかんないね。くろひょうってなんだろう?」
フランツ「うーん。聞いたこともない」
エレン「……」
ナック「どうしたエレン」
エレン「違う」
アルミン「え?」
エレン「これは俺たちのことじゃない」
マルコ「エレン、どういうこと?」
エレン「……これは、俺たちのことじゃねーよ。こんなもん見てもしょうがねえよ」グシャ
コニー「あ、何すんだエレン!」
ジャン「はっ、癪に障るが今回はそいつが正しいな」
コニー「はぁ?」
同時刻 兵舎 男子寮 外
ライナー「……」
ベルトルト「ライナー」
ライナー「……これを拾ったのは運命かもしれん」
ベルトルト「え」
ライナー「俺は最近迷っていた」
ライナー「時々だが、自分が兵士なのか戦士なのかわからなくなることがあった」
ライナー「あいつらに仲間と呼ばれること、敵と呼ばれること」
ライナー「どちらが正しくて、どちらが間違いか。人間か巨人か。不完全な存在だ」
ベルトルト「ライナー……」
ライナー「この石は、あの言葉は啓示のようだな。あの文章を読んで平手打ちを喰らった気分だ」
ライナー「破滅さえも手玉に、戯言は叩き斬る。扉を打ち破るために生まれ、最後まで闘い抜く」
ライナー「それは心に秘めた何か」
ベルトルト「うん」
ライナー「ずっとそうやって生きてきた。どう思われようと構わない」
ライナー「信じること、時代が今夜変わる。これが俺たちの時代、俺たちの世代、待ってなんかいられない」
ベルトルト「うん」
ライナー「人生最後の夜まで生きて、か」
ライナー「そう、そうだよな。俺たちは戦士なんだ。闘い抜くこと、それしかないんだ」
ベルトルト「そうだね。後には戻れない」
ライナー「なぁ、ベルトルト。このままここにいれたらどれだけ楽しいだろうな」
ベルトルト「……わからない。でもきっと、それはダメなことだ」
ライナー「もし俺がここの連中とつるんで、仲間として、人として、最後まで闘うと言い出したら、お前はどうする?」
ベルトルト「僕は……」
ベルトルト「……きっと君を[ピーーー]。君が兵士になる前に、戦士のうちに」
ライナー「……そうか」
ベルトルト「うん。僕も、きっと闘い抜く。最後まで。最後の夜まで」
ライナー「……そうだな。愚問だった」
ライナー「俺たちは、闘い抜くしかないんだったな、戦士として」カチカチ
同時刻 兵舎 男子寮
ジャン「ん?」
アルミン「……この音は」
コニー「昨日の、なんだっけ。おんがくか?」
トーマス「おんがく?」
マルコ「楽団の音楽とは全然違うね。何て言ってるんだろう」
ナック「……もしかして」
ダズ「! この紙か」
ミリウス「……うん。なんとなくだけど、そうっぽいね」
ダズ「おお、なんか楽しくなってくるな」
トム「うん、凄いね。聞いてるだけでなんだか楽しくなってくる」
サムエル「聞いたことのない音に声」
フランツ「それでも、うん。凄い」
エレン「……」
ジャン「……けっ、ひでえ顔だな、エレン」
エレン「……当たり前だ。こんな音楽、反吐が出る」
ジャン「……あぁ、否定はしねえよ」
同時刻 兵舎 女子寮
サシャ「! な、なななななんの音ですか!? きょ、巨人!?」
ユミル「落ち着けって。音楽だろ」
サシャ「おんがく?」
ユミル「あぁ? 知らねえのか?」
クリスタ「……凄いね、この音」
ハンナ「なんだろうこれ、聞いたことないのに」
ミーナ「うん、凄く耳に残る」
アニ「……」
ミカサ「アニ」
アニ「なんだい?」
ミカサ「これ」ペラ
アニ「?」
ミカサ「今聞こえる声の、言葉の意味」
アニ「……。……っ」
ミカサ「……」
アニ「……どうしてこれを私に?」
ミカサ「……」
二時間前 図書室外
アルミン「ありがとうミカサ。助かったよ。夕食の後、寮でライナーに見せてみる」
ミカサ「ううん。気にしないで」
ガララ
アルミン「あっ、ベルトルト」
ベルトルト「……それを見せてくれ、アルミン」
アルミン「え、う、うん」ペラ
ベルトルト「……! ……貸して」ガッ
アルミン「え、ちょ」
ベルトルト「……ははっ。はははっ。なんだ、そうか。だからライナー、気になったのか」
ベルトルト「わからなくても、わかったんだね」
アルミン「??」
ベルトルト「戦士、そうか、戦士。そうだよ。戦士なんだ」
アルミン「あの、ベルトルト?」
ベルトルト「あぁ、ごめん。これ、書いたのミカサかい? 字がミカサの字だ」
ミカサ「そう」
ベルトルト「悪いんだけど、もう一枚同じのを書いてくれ。そしてアニに渡してほしい」
ミカサ「? 構わないけど、なぜ」
ベルトルト「それは君たちには関係ない。けどお願いだ」
ミカサ「……。わかった」
ベルトルト「ありがとう。あぁ、ごめんアルミン。返すよ」ペラ
ベルトルト「場合によっては見せないようにしようと思ったけど、心配いらなかった」
ベルトルト「むしろ、今の僕たちに必要な言葉、だったよ」
アルミン「どういうこと?」
ベルトルト「こっちの話。じゃあミカサ、よろしく」
ミカサ「……」コクリ
現在 兵舎 女子寮
アニ「そう、そんなことがね」
ミカサ「アニ」
アニ「なんだい」
ミカサ「今日聞くはずだった格闘術の話。また今度聞かせてほしい」
アニ「あぁ、わか……」
アニ「……」ペラ
アニ「いや、悪い。気が変わった。やっぱり教えるのはなしだ」
ミカサ「? 何故?」
アニ「理由は言えない。そもそも教えるのも気まぐれだったんだしね」
アニ「でも手取り足取り丁寧に教えるのはなしってだけ。対人格闘術の時、相手はするよ」
アニ「エレンみたいに、身体で覚えな」
ミカサ「……わかった。それでも構わない」
アニ「……。それにしてもうるさい音だね、まったく」
ミカサ「でもエレンは、聞いておいた方がいい。きっとエレンは怒る」
ミカサ「怒るけど、きっとその方がエレンは嬉しい」
アニ「……? あぁ、そうか。そうかもね」
ミカサ「うん」
アニ「……本当によく見てるんだね、エレンのこと」
ミカサ「エレンのことで、わからないことはない」
アニ「……だろうね」
同時刻 男子寮 外
ライナー「どうにも気になって仕方なかったが、ああいう意味なら納得だ」
ライナー「何となく、惹かれていたのか。戦士に。兵士ではなく、戦士に」
ベルトルト「うん、そう、なんだろうね。……でもいいの? そんな大きな音出して。教官がそろそろ飛んでくるよ」
ライナー「あぁ、そうだな」
ベルトルト「ライナー」
ライナー「ん?」
ベルトルト「やっぱり僕らは、戦士なんだね」
ライナー「……あぁ」
ベルトルト「怖くない?」
ライナー「……そうだな、この石を日に当ててた時思ってたとおり」
ライナー「恐ろしいままだ」
ベルトルト「やっぱり」
ライナー「だが、この怖さに、恐ろしさに向き合わなきゃいかん」
ベルトルト「……」
ライナー「向き合って、更に重く、考えないとな」
ベルトルト「……やっぱりライナーは強いよ」
ダッダッダ
キース「貴様か、ライナー・ブラウン! それにベルトルト・フーバーか! 一体これは何の騒ぎだ!」
ライナー「……」
キース「ブラウン訓練兵! 説明をしろ!」
石「W*rr*or-*o*-*or, *arr*or-ior♪ **rr*or-io*-*or, w*rr*or-i*r♪ ――――」
ライナー「……ありがとよ」グシャァ
キース「! 貴様、今何を握りつぶした」
ライナー「はっ! 己の弱く弛み切った、心であります!」バッ
キース「どういう意味だ」
ライナー「己の腐った心、弱い心、挫けそうになっていた心、恐怖し、畏怖した心」
ライナー「それらすべてをこの石に乗せ、破壊しました」
キース「……フーバー訓練兵。貴様は見ていたな。ブラウン訓練兵は何を握りつぶした」
ベルトルト「はっ! ライナー・ブラウン訓練兵の腐りきった最低最悪、反吐が出る汚い心です!」バッ
キース「……」チラ
石(残骸)「――」
キース「……」
ライナー・ベルトルト「……」
キース「貴様たちの目を、そして捧げた心臓を見れば一目瞭然か」
キース「……嘘は言っていない。よかろう。そういうことにしてやる」
キース「だが夜間の無断外出、並びに騒音被害。それらの罰として二人揃って三日間営倉行きだ!」
ライナー・ベルトルト「はっ!」
キース「ついてこい!」
同時刻 男子寮
コニー「あ、やっぱ連れてかれた」
ナック「それにしてもなんだったんだ今の。どっから聞こえたんだ」
ダズ「ノリはよかったな。思わず身体が動いちまった」
エレン「冗談じゃねぇ」
アルミン「エレン?」
エレン「お前ら本当にこれ読んだのか? よく見ろよ。これは俺たちのことじゃねえよ。これは……」
ジャン「俺らの大っ嫌いな巨人のことだ」
アルミン「!」
コニー「んー? あぁ、言われてみれば」
フランツ「確かにそうだね。扉とか、破滅とか」
トム「うわ、こわ。言われて気付いた」
ダズ「そう言われればなぁ。けどどっちにも取れそうだが」
サムエル「そうだな。どっちにも取れる」
トーマス「うーん」
エレン「違う。俺たちは、扉を打ち破るために、破滅のために戦ってなんていない」
エレン「俺たちは、自分たちの誇りを、人類としての誇りを守るために、尊厳を守るために戦ってるんだ!」
エレン「何が戦士だ。巨人のことじゃねえか! 俺たちは戦士じゃない! 兵士だ!」
アルミン「エレン……。ごめん、僕、読み解けたことに興奮してて、全然気づかなかった……」
エレン「……アルミンは悪くねえよ。ライナーに頼まれて、それにきちんと応えたんだ。誰も責めねえよ」
アルミン「エレン……」
ジャン「それにしてもなんだったんだろうな、あの石」
エレン「さぁな。けど礼は言える」
コニー「あ? なんでだ? お前すげー怒ってるじゃん」
エレン「怒ってるから礼を言うんだ。まだ巨人に対する憎しみを忘れてるわけじゃねえって再確認させられた」
ジャン「けっ、相変わらずの死に急ぎ野郎だな」
エレン「んだと!?」
マルコ「ま、まぁまぁ」
ダズ「けどエレンの言う通りだな」
トム「あぁ」
トーマス「巨人を倒そう」
ナック「そうだな」
ミリウス「うん」
フランツ「そうだな、ハンナの為にも」
サムエル「おい、しれっと惚気てんじゃねえ」
夜 兵舎地下 営倉
ベルトルト「……」
ライナー「なぁ、ベルトルト」
ベルトルト「……」
ライナー「ベルトルト」
ベルトルト「あ、うん。なんだい」
ライナー「お前、最近無理してないか」
ベルトルト「え?」
ライナー「いや、俺のせいなのもあるんだろう。お前は、そうだな、俺なんかよりずっと凄い」
ベルトルト「……何言ってるのさライナー」
ライナー「さっき握りつぶした石な。手に傷をつけた。だけどすぐ治っちまった」
ベルトルト「……」
ライナー「不完全な人間、だな。いや、人間ですらないんだな」
ライナー「……さっきも言ったが、俺は恐ろしい」
ライナー「俺が俺でなくなりそうだった。兵士か戦士か戦士か兵士か。頭が壊れそうだった」
ライナー「だが今は少し落ち着いた。俺は戦士だった。今も、昔も。そしてこれからも」
ライナー「そう考えれば、恐ろしさも、少しは収まるもんだ」
ベルトルト「……」
ライナー「だが俺が戦士でいれるのは、お前のおかげでもある」
ベルトルト「え?」
ライナー「俺はいつも決断する立場だった。お前はそれに乗っかることが多い」
ライナー「お前は俺の腰巾着だの、責任を押し付けてるだけだの、無口だの、よくわからない奴だの」
ライナー「成績だけのつまらない人間だだの、存在感が薄いだの、いろいろ言われてる」
ベルトルト「……酷いなぁ。けど、うん、その通りだよ。僕はそういう弱い戦士だ」
ライナー「違う。傍からはそう見えていても、俺にとっては違った」
ライナー「俺が決断する時、お前は必ず俺の隣にいて、後押しをしてくれるんだ」
ベルトルト「……」
ライナー「これがただ乗っかるだけの腰巾着なら、俺の決断が間違っていた時」
ライナー「すぐに見切りをつけてなかったことにするだろう」
ライナー「だがお前は違った」
ベルトルト「……」
ライナー「お前は俺が間違った時も、正しかった時も、必ずついてきた」
ライナー「そして俺が最善を取れるように動き、個を殺して俺を戦士たらしめてくれた」
ベルトルト「……」
ライナー「俺が兵士になるかもしれないと危惧していながら、決して見捨てなかった」
ライナー「同志で、仲間で、親友で、そして常に戦士でいてくれた。俺はそれが嬉しかった」
ベルトルト「……」
ライナー「ありがとうな、ベルトルト」
ベルトルト「……うん」
ライナー「俺たちは、戦士だ。けど同時に不完全で、どうしようもない破滅の使者だ」
ベルトルト「……うん」
ライナー「自分たちが故郷に、必ず戻ること。それしか考えていない」
ライナー「その為だけに多くの人を犠牲にし、死なせ、巨人に食わせた。自分の手で殺めた」
ベルトルト「……」
ライナー「だからこそ、それを背負って、戦士として、間違っていたとしても」
ライナー「最後まで闘い抜くんだ。それは、俺だけだときっと不可能だった」
ベルトルト「……うん」
ライナー「俺にはお前も、アニもいた。だから、だからなんとでもなるんだ」
ベルトルト「うん」
ライナー「ここを出たら、俺たちはまた戦士に戻らなければいけない」
ライナー「だがもしかしたら、俺はまた挫けるかもしれん」
ベルトルト「……大丈夫、僕も、アニもいる」
ライナー「あぁ、そう。そうだな」
ベルトルト「ライナー。ありがとう」
ライナー「あぁ。……そろそろ寝よう。久しぶりに訓練抜きで三日も休めるんだ。じっくり休んで、体力を温存させよう」
ベルトルト「うん。そうだね。おやすみ、ライナー」
ライナー「……あぁ」
ベルトルト「……戦士、だよね」
ライナー「……あぁ、戦士だ」
ベルトルト「……うん、おやすみ」
ライナー「……あぁ」
三日後 兵舎 男子寮
ガチャ
コニー「お」
エレン「ライナー、ベルトルト」
アルミン「おかえり」
ライナー「あぁ」
ベルトルト「……」
ジャン「相変わらずベルトルトは無口だな」
ベルトルト「あ、あぁ、ごめん。ただいま」
マルコ「営倉行きだったんだってね。教官が次の日報告してくれたよ」
ライナー「あの石はどうした。欠片が残っていなかったが、やはり誰かが捨てたのか」
アルミン「ううん。あの後夜中だっていうのにわざわざ憲兵団が来て回収してたよ。欠片も残さずにね」
ライナー「そうか」
ジャン「次の日は教官がお前らを営倉にぶち込んだって話をした」
ジャン「そんでそのまま朝っぱら憲兵団の尋問だ。主に男子が問い詰められた」
ライナー「やはりこっちにも来ていたか」
アルミン「こっちにもってことは……。やっぱりそっちにも」
ベルトルト「あぁ、来たよ」
エレン「ほんとか!?」
アルミン「なんて答えたの?」
ライナー「知らぬ存ぜぬの一辺倒だ。今日営倉から出してもらうのと同時に、ようやく諦めて帰っていった」
ベルトルト「こっちはどうだったの?」
エレン「同じだよ」
マルコ「よくわかりませんで貫き通したから」
ダズ「仲間は売れねえよ」
トーマス「そうそう」
ナック「大体俺らはただの石だと思ってたわけだしな」
ライナー「そうか……。すまなかった。俺のせいでみんなにも迷惑をかけた」
トム「謝ることないって」
フランツ「当然のことだからね」
ミリウス「僕らは仲間じゃないか」
コニー「なんであんなわかりやすく音出したんだってのは聞きたいんだけどな!」
アルミン「コニー。二人にも事情があるんだよ。詮索はやめてあげよう」
コニー「わかってるよ。俺たちだって言いたくない事情や秘密はあるからな」
エレン「コニーにしちゃまともな意見だな」
コニー「お前ら俺がどんだけ馬鹿だと思ってんだ? なぁ?」
ベルトルト「……」
ジャン「どうしたベルトルト。ノリ悪いぞ」
ベルトルト「あ、いや、そういうわけじゃ」
エレン「おいジャン、そんなこと言うなって。ベルトルトは無口なだけだろ」
ベルトルト「……ごめん」
ナック「まぁ気にすんなって」
トム「ジャンが口悪いのは当然なんだからさ」
ジャン「んだとっ!」
マルコ「落ち着きなってジャン」
ライナー「とにかくこうして戻ってこれたんだ。お前らが黙っていてくれたおかげだ。礼を言う」
エレン「だから気にすんなって」
ミリウス「あの音楽が聞けないのは残念だけどね」
エレン「俺はライナーがぶっ壊してくれて清々したけどな」
トーマス「憲兵団が来るほどだからよっぽどのものだったんだな」
アルミン「うん、みんなももうあの石のことは忘れた方がいいと思う」
アルミン「あの紙も捨てたし、今日からまたいつも通り、訓練をがんばろう」
ダズ「そうだな。アルミンの言う通りだ」
コニー「おう、がんばろうぜ! 座学以外な!」
ジャン「いや、お前はむしろそっちを死ぬ気でやれ」
ハハハハハッ
ライナー「ベルトルト」
ベルトルト「ん?」
ライナー「ちょっとついてきてくれ」
ベルトルト「うん」
兵舎 外
ベルトルト「なんだいライナー」
ライナー「……なぁ、こういうとお前は怒るかもしれんがあえて言わせてくれ」
ベルトルト「……」
ライナー「俺たちは戦士だ。営巣でも言ったがそれは変わらない。決して逃げられない」
ライナー「確かにそうだ。だがな、毎日全てを戦士で生きていても」
ライナー「……感情を、[ピーーー]必要はないんだ」
ベルトルト「どういう意味?」
ライナー「お前は104期生の誰ともあまり会話をしていない」
ライナー「覚悟を、信念を持っているからだ。影が薄く、無口なのもその反動だ」
ベルトルト「……」
ライナー「それに俺たちのしていることを考えれば当然だ」
ライナー「俺たちはあいつらと仲良くなる必要はないし、一緒に励む必要もない」
ライナー「気を許す必要もない。俺たちはあいつらと同じ人間じゃないのだから」
ベルトルト「うん。そうだね。当然だと思う」
ライナー「だがな、俺たちは違って、いつかあいつらと戦うことになっていたとしても」
ライナー「今のあいつらにはそれはわかりようがない」
ベルトルト「……うん」
ライナー「ベルトルト、将来どうなるかを知っていて距離を置く俺たちと」
ライナー「今が楽しく、巨人を倒す仲間と生きているあいつらと、どちらが尊いと思う」
ベルトルト「……」
ライナー「考えるまでもない。あいつらだ」
ライナー「人間であり、兵士であり、いずれ俺たちが[ピーーー]ことになるかもしれない相手だ」
ライナー「だが本当なら生きている価値のあるあいつらの方が、尊いに決まっているんだ」
ベルトルト「それは僕らが人間だった場合の意見だ」
ライナー「そうだ。俺たちは人間なんだよ、ベルトルト」
ベルトルト「違う、僕らは」
ライナー「戦士は感情のない悪魔のことじゃないんだ!」
ベルトルト「!?」
ライナー「俺たちは信念がある。戦士としての矜持も、責任も、力も持っている」
ライナー「だが本当にそれだけなら、葛藤なんかしない。激昂もしない。あいつらと一緒に話すこともないんだ!」
ベルトルト「ライナー」
ライナー「営倉を出たら戦士に戻る。そうだ、俺たちは戦士に戻っている」
ライナー「だがな、戦士は感情のない悪魔というわけではないんだ、ベルトルト」
ベルトルト「……」
ライナー「故郷での俺たちを、人で無くなる前を思い出せ!」
ライナー「同じように笑い、同じように泣き、同じように怒っていた。人間としてだ!」
ライナー「戦士になったとしても、大本は、根っこは人間なんだ!」
ベルトルト「……」
ライナー「不完全な人間になり、人類と敵対し、俺たちは戦士になった」
ライナー「だがな、だからと言ってあいつらに冷たく当たり距離を置く必要なんかない」
ベルトルト「……」
ライナー「それは俺たちを仲間だと思ってくれているあいつらへの」
ライナー「……自己満足に近い、罪滅ぼしなんだ」
ライナー「同時に、自分たちの罪を、責務を、戦士としての矜持を強く、重くするために」
ライナー「そして自分を苦しめるために、あいつらと話し、共同生活を送るべきなんだ」
ライナー「距離を置けば、確かにあいつらと敵対したとき、なんの感情も沸かず[ピーーー]ことができるはずだ」
ライナー「それはあいつらも同じはずだ」
ライナー「戦士としてはそれが正解なのかもしれん。だがな、それじゃあだめだ」
ライナー「それじゃあ戦士ではあっても人間ではなくなってしまう」
ライナー「あいつらも、兵士なのに人間ですらなくなる」
ベルトルト「……」
ライナー「だからこそ、今を生きているあいつらと、行動を共にすることは」
ライナー「俺たちへの枷になるのと同時に、生きて、戦うための原動力になるんだ」
ライナー「俺たちがあいつらと戦うことになったとき」
ライナー「自分たちがしている愚かなこと、最悪のこと、悪魔の所業を」
ライナー「お互いにすべてを覚えていて、散々苦しんで、戦うことができる」
ライナー「それが、俺たちが、あいつらが人間でいられる唯一の証明なんだ!」
ベルトルト「ライナー……」
ライナー「俺たちは、あいつらと思い出を作るべきなんだ」
ライナー「いざ戦うことになったとき、あいつらを殺してしまったとき」
ライナー「自分たちへの罰と責務が、より一層重くなるのを感じなくてはいけないんだ」
ライナー「そう思わなければ、何のために戦い、何のために[ピーーー]のか、わからなくなってしまう」
ベルトルト「……」
ライナー「今を楽しむことは戦士ということを忘れるためじゃない」
ライナー「戦士として、将来苦しみ、嘆き、恨まれ、自分を追い込むために楽しむんだ」
ライナー「そして今を楽しんでいるあいつらを、今から人でなくしてしまう必要はない」
ライナー「今を楽しんでるやつらを、楽しませることだ。それが、お互いのためだと、俺は思う」
ベルトルト「……」
ライナー「日が重なれば重なるほど俺たちは悪魔となっていく」
ライナー「だがそうした罪悪感を感じる間は、俺たちは人間なんだ」
ライナー「その分、あいつらは、人間として俺たちを思う存分恨むことができる」
ライナー「そうして、人として、俺たちと戦うことができる」
ライナー「もし俺たちを[ピーーー]ことになっても、逆に俺たちが[ピーーー]ことになっても、どちらも人として[ピーーー]るんだ」
ベルトルト「ライナー、君は……」
ライナー「ベルトルト、お前もそうするべきなんだ。俺たちが罪を、重荷を、責任を、より一層感じるために」
ライナー「人として死ぬためにもだ」
ベルトルト「……ごめん、ライナー。僕は、それには同意できないよ」
ライナー「ベルトルト」
ベルトルト「ライナー。営倉の中で言ってくれたね。僕が後押ししてくれて助かってるって」
ベルトルト「でもね、今の話には後押しできないし、頷くことができない」
ライナー「どうしてだ」
ベルトルト「僕はね、強くなんかない。戦士として生きることも、本当は怖い」
ベルトルト「怖くて怖くて仕方がない」
ベルトルト「ライナーのしているみたいに、みんなと楽しくできれば本当はそれが一番いいのかもしれない」
ベルトルト「将来の自分を苦しめるためにも」
ライナー「なら」
ベルトルト「でもだめだよ。もし僕がそんなことをしたら、そっちに、兵士に逃げてしまいそうだからだ」
ライナー「!」
ベルトルト「確かに自分を追い込んで、人間であると思い知って、苦しんでみんなと楽しんで」
ベルトルト「僕らのわがままに巻き込みたくない、兵士のみんなを」
ベルトルト「破滅さえ手玉にとる戦士が巻き込んだ方が、確かにいいんだと思う」
ベルトルト「でも無理だよ。ライナー、僕はね」
ベルトルト「あのドアを打ち破ってしまったんだ」
ライナー「……」
ベルトルト「打ち破ってしまった僕は、最後まで闘い抜くことしかできないんだ」
ベルトルト「はみ出し者で、堕落した存在なんだよ」
ライナー「ベルトルト……」
ベルトルト「君も打ち破ったはずなのに、すごいね。やっぱりライナーは凄いし、強い」
ベルトルト「それに比べて僕は何もできない。君や、アニに頼ることしかできない」
ベルトルト「戦士だと思っていても、二人に頼ることしかできない」
ライナー「そんなことはない。お前は、俺たちよりもよっぽど戦士なんだ、ベルトルト」
ベルトルト「いや、違うよ。アニにもそう言われたけど、違うんだ。戦士だと思い込んでいるだけの、化物なんだ」
ライナー「違う!」
ベルトルト「違わないんだ! 僕は無理だ! 人間であるみんなと、仲良く過ごすのは無理だ!」
ベルトルト「無口で、腰巾着でいる方が楽なんだよ! 今から既に嫌われていたほうが、ずっと楽だ!」
ベルトルト「僕は、僕は苦しむのは怖い! だから、こうして、無口で、個を殺さなきゃいけないんだ!」
ベルトルト「もし彼らと仲良くしてしまったら、僕は、ライナーみたいに強くないから」
ベルトルト「多分すぐにただの一人の兵士になってしまう!」
ライナー「……」
ベルトルト「僕は君やアニみたいに強くない。君たちはぬるま湯になんて浸かってないんだ」
ベルトルト「本当は火傷しそうな熱湯に自ら入ってる」
ライナー「……」
ベルトルト「将来苦しんで、悩んで、悪魔になるために、今を楽しんでる」
ベルトルト「それは本当の強さだよ」
ベルトルト「僕なんかは、誰とも関わろうとしない、一番快適なお湯に入ってるんだ。」
ライナー「違う、違うぞベルトルト。お前は……」
ベルトルト「ありがとう。でも、もういいんだ。僕はこのままでこうして生きていくよ。最後の夜まで、ね」
ライナー「……お前は本当に戦士なんだな」
ベルトルト「……違うよ。二人の方がよっぽど戦士なんだよ、本当は」
ライナー「……わかった。もう俺は何も言わん。お前のしたいようにすればいい」
ベルトルト「……!」
ライナー「どうした」
ベルトルト「いや、僕の方がそう言われるなんてさ」
ライナー「ん? そうか……そうだな。いつもそんなことは言わないな」
ベルトルト「ありがとう、ライナー」
ライナー「いや、むしろ今まで言ってなかったんだな。悪かった」
ベルトルト「いいんだ。ありがとう。ライナーは今を楽しんでくれ」
ベルトルト「僕は……、僕は少しでも、そう感じられるように、強くなれるまで君の傍にいるよ」
ライナー「……あぁ。ありがとう」
ベルトルト「戻ろう。みんなが待ってる」
ライナー「あぁ」
ベルトルト「ライナー」
ライナー「なんだ?」
ベルトルト「戦士として、戦おう。最後まで」
ライナー「……もちろんだ。ずっとそうやって、生きていくんだ」
ライナー「戦士としてな」
848年
彼らは今も、戦士としてそこにいる
終
くぅ疲(略
ということで終わりです。
書き溜めておきながら書き込む時にいちいち手直ししてたので大本とはちょっと変わった
女の子もっと書きたかった……
ライナーとベルトルトとアニは、殺されるべきと言う人も多いけど
単に[ピーーー]ためなら苦しまないし、葛藤もしないと思う
そうした部分を書きたかった
アニをあまり書けなかったなぁ
あぁ、ピーになってしまう……
まぁわかると思うので割愛
今回SS初めて書きましたが難しい……
このSSで使った曲はKE$HAのWarriorという曲
全然ノリノリのダンス系POPです
歌詞が凄い進撃っぽかったので、これを絡めたいなぁと思い立って書きました
なので設定がむちゃくちゃです
音楽の概念、歌詞の概念は先に述べた通り独自解釈です
ミカサやアルミンの知識はかなりご都合主義です
ちなみにミカサはマシンガンや黒豹は言葉として知っていた、というだけで
実物がどんなものかを知っているわけではありません
ウォークマンなんて900年近く経ってんのに動くわけねーだろ、と自分でも思いますが
凄い未来技術で、光さえあれば一万年持つすんごいウォークマンだと思ってください
きっとSONYなら作ってくれる
Wattriorはこちらで聞けます→ https://www.youtube.com/watch?v=JDrschw-wdI
歌詞はこちら→ http://www.hinaroko.com/2013/01/keha-warrior-pv.html
KE$HAはノリノリ系が多いのでダンスPOP好きな人は是非CDをどうぞ
では、また気が向いたら書きます
その時はお付き合いいただけでば幸いです
今度書く事があれば世界観ぶっ壊して書きたいなぁ
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