獣の巨人「腰に付けた飛び回るやつ」(14)


獣の巨人「できたぞ」

獣「名付けて『立体起動装置』」

獣「『機動』じゃなくて『起動』。ここ肝心な」

獣「じゃライナー、腰に付けて飛び回って」

ライナー「か、勘弁してください、まだ試作品じゃないですか!」

獣「文句言うなよ。任務に失敗しておめおめ帰ってきたくせに。怪我したってすぐに再生するんだからさっさとやれ」

ライナー「はい……」


バシュ
ビューン


ライナー「うわわわわわわ!」


獣「ぎゃはは! ほんとに飛び回ってる! あ、壁に突っ込んでいきやがった」

ライナー「ギャッ!」

獣「派手な音がしたな! 頭蓋骨砕けたか。全く…… 生身で頭突きしたって壁は壊れないって。でも蒸気出て再生してるわ。じゃ次、ベルトルト」

ベルトルト「ひいいいい!」

獣「何が『ひいいいい!』だよ。この役立たずが、さっさと飛び回れ」


ここでよい子たちのために解説しておこう。


獣の巨人が開発した「立体起動装置」とは、調査兵団から鹵獲した立体機動装置を参考に、腰に付けた一対のロケット推進機を使って飛行する装置である。

特殊燃料(壁外産)を充填した背中のタンクから燃料が推進機に供給され、燃焼エネルギーで飛行する。姿勢制御は両手に取り付けたウイング(厚紙)を操作することによって行う。



ベルトルト「嫌です死んじゃいますボス!」

獣「じゃ今すぐ死にたいの?」

ベルトルト「分かりましたひええええ!」


バシュ
ビューン


獣「ありゃまあ勢いよく飛んでったな。翼を使うこと忘れんなよ!」

ユミル「しっかしおもしろいこと考えるなー」

獣「お前もやりたい?」

ユミル「い、いいよ私は遠慮しとく」

獣「そう? ……あ、翼ちぎれたわ」

ユミル「空中でめちゃくちゃに回転してる。こりゃ目が回るね」

獣「と思ったら、随分高いところまで上昇したな。おーいベルトル! あ…… 燃料切れた」

ユミル「まっさかさまに墜落」

獣「地面に衝突した衝撃で…… 手足がちぎれ飛んだか。まあ再生してるからいいや。おい、燃料の残りぐらいちっとは考えろよ」

ベルトルト「」

獣「もう少し改良しないと実戦投入できないね……」



調査兵団が王政を相手に抗争を繰り広げている間……

試作品には日々改良が加えられ、「立体起動装置」は軽量の3、4m級に装備されて実戦投入の運びとなった!


獣「遂にこの日がやってきた…… 感無量だ。行け、飛行巨人部隊!」



ズドドドド


─カラネス区─


駐屯兵1「何だあれは?」

駐屯兵2「鳥か?」

駐屯兵3「違う! 巨人だ!」

駐屯兵たち「巨人が空を飛んでるだと!」


飛行巨人部隊「GUAAAAAAA!」


駐屯兵4「大砲で撃ち落とせ!」



ドーン


駐屯兵5「駄目だ全然届かない!」

駐屯兵6「突っ込んできた! ぎゃああ!」


獣「うむ、訓練の成果もあって見事に使いこなしている。よし、駐屯兵どもを制圧したら門を開けて残りを突入させよう」


─駐屯兵団司令部─


アンカ「ウォール・ローゼが突破され、カラネス区が陥落しました!」

ピクシス「何? 今度も誤報ではないのか!」

アンカ「誤報ではありません!」

ピクシス「嘘ついとりゃせんじゃろうな?」

アンカ「だから嘘ではありませんってば! しかも巨人どもは腰に変なものを付けて飛び回っているという情報が!」

ピクシス「巨人が空を飛んでるじゃと!?」


ザックレー「あわてるなピクシス!」

ピクシス「何じゃ、急に入ってきおって」

ザックレー「我々も遊んでいたわけではない。ひそかに秘密兵器の開発を進めていたのだ」

ピクシス「! それは本当か!」

ザックレー「そうだ。遂にそれを実戦に投入する時が来た」


新兵器はただちに、ストヘス区防衛のために投入された。
その新兵器とは……


ザックレー「名付けて『立体軌道装置』!」

ザックレー「高さ15メートルの円錐の周囲にらせん状にレールを巻き付け、ガス動力を用いてレールに取り付けた足場を高速で牽引する」

ザックレー「足場に立っている兵士は巨人のうなじの高さで空中に射出され、慣性によって巨人に飛びかかりうなじを削ぐという仕組みだ」

ザックレー「『機動』じゃなくて『軌道』。ここ肝心な」

ピクシス「素晴らしい!」


─ストヘス区─


リヴァイ「ジジイども遂に気が狂ったか」

ハンジ「でも駐屯兵団はあれで戦うらしいよ」

リヴァイ「放っとけ。目を合わせたりするなよ」



獣の巨人「人間どもがまた変なもの持ち出してきたな」

ライナー「ありゃ、目が回りますね」

ベルトルト「ほとんどは巨人につかまれるか、空中に放り出されて墜落してるよ」

ユミル「気の毒に」


獣「しっかし…… おもしろいこと考えるなー」

ベルトルト「我が方の立体起動装置の前には、全くの無力ですね」

獣「当たり前だよ。兵は『詭道』なり! なんちって」

ライナー「……今日はまた、一段と冴えてますねボス!」パチパチ

獣「今日『も』だろ? お世辞はいいからお前らもさっさと飛べ」

ライナー「え? 俺たちでかいから無理っすよ」

獣「人間体のまま飛べよ。降下してから巨人化しろ」

ライナー&ベル「……了解」


獣「どいつもこいつも飛んでったな」

獣「俺? でかいから無理」

獣「とんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんで、まわってまわってまわってまわぁーるうううううう!」

獣「終わり!」

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