佐天「さ…佐天ライダー!?…」 (149)


・とある科学の超電磁砲 ? 仮面ライダー

・とあるの時系列は考えない方向でお願いします。

・昭和ライダー中心、平成ライダーは出ないかも。

・佐天さんが主役です。

・細かい設定は見ない方向で。

・クドイです。

・地の文あり

生暖かい目で見て頂けると嬉しいかもです。

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    第X話『 怪人クラゲウルフ 学園都市恐怖のテロリスト! 』


いつも通りの朝、多少の薄雲がかかり日差しが抑えられた通学路を
佐天は学校に向かって歩いていた。
途中で親友である『初春飾利』の姿が目に入る、今日も可愛いなぁと
思いつつ、ニヤリとほくそ笑むと、そっと背後へ忍び寄り…。


佐天 「う~い~は~るぅっ!!!今日はパンツはいてるかぁ~~~~~?」


声をかけると同時に、初春のスカートを捲り上げた。
一瞬の出来事に初春だけじゃなく、通勤・通学中の男性諸君の目も釘付になった。
思わぬ副次的効果だが、まぁ、世の男性諸君に対してのサービスは女の子の義務
と初春に割り切ってもらおうと思っていた。


初春 「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


ワンテンポ遅れて発せられた初春の悲鳴を他所に、捲り上げられたスカートは
ヒラヒラ舞い踊っている、その奥にある純白のパンツが今朝も眩しかった。


佐天 「ごめん!ごめんよぉ~初春ぅ~」

初春 「もう!佐天さんなんか知りません!!」

佐天 「だからぁ本当にごめんってばぁ、今朝はやり過ぎだったのは認めるからぁ許してよぉ」

初春 「何っっ回目だと思ってるんですか!今度という今度はぜぇぇぇったい許しません!!」


今まで何回もスカートを捲っては怒られていたが、今回は堪忍袋の尾が何とやらだった。
放課後まで怒ったままなのはかなりヤバイ、とりあえずお詫びも兼ねてケーキでもと誘うが、
聞き入れてくれない、途方に暮れるとはこの事かもしれない。


佐天 「でもね、初春ってさ…怒ってても優しいよね」

初春 「はい?何言ってるんですか?激おこですよ?ぷんぷん丸ですよ!」

佐天 「え?」

初春 「え?」

佐天 「………あぁ、えっと、ほら、だって怒っててもさ、私が歩調を緩めたら
    それに歩調を合わせてくれるでしょ?何だかんだ言っても初春は本当に
    優しいなぁって…ごめんね、空気読まずにこんな事を言って…」


マズッたかな…いくらなんでも空気読まなすぎだよね…そう思いつつも初春の顔に
視線を持って行くと、さっきまでの怒った顔じゃなく、呆れるような微笑むような
顔をしていた。

初春 「もう…佐天さんはズルいです。そんなこと言われたら、これ以上は怒れないじゃないですか
    仕方がないですね、さっきのケーキの件、あれで許しちゃいます。」

初春 「でも、もうスカート捲りはやめてくださいね!」

佐天 「うん!善処する!!」

初春 「…やめてくださいね!!」

佐天 「うん!善処する!!!」

初春 「ちょっ!なんでそこは「もう二度としないよ」じゃないんですかぁ!!!」


ズドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン…


突然、地震とも思える振動と轟音があたりに響いた。
あまりの出来事と振動のため、佐天と初春は反射的に身を低くする。
初春の方を見ると、流石はジャッジメント、いつの間にか取り出した端末で情報を収集しつつ、
その左腕には誇らしげに付けられたジャッジメントの腕章が着けられていた。


初春 「爆弾!?無差別テロ!?佐天さんはこのまま寮の方へ戻ってください!」

佐天 「わ…わかった…う…初春はどうするの!?」

初春 「私はこのまま支部へ向かいます!そこで情報収集を行いますので!」


初春はそう告げると、177支部へ向けて走りだした。
ふと目を凝らすと、ちょっと離れたところで佐天は初春に並走す形で走る影を捉えた。
その影は徐々に初春に近づいて来ると突然明確な姿を表した。


佐天 「初春!!!!あぶない!!!!!!」

初春 「えっ…」


無意識に佐天は、初春の盾になるようにその身を滑り込ませていた。
目に入ったその姿は黒のマスクに黒のタイツ、手には大きな剣みたいな物を持っている男…。
その目は人である何かを失ったような目をしていた。


佐天  「ひっ…」


イィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイイイイッッ!!!!!!!


男が金切声を上げたその瞬間、佐天は肩から衝撃を受けたように感じた。
体が熱い、動かない、自分が倒れたと理解するのに時間がかかった。


初春 「佐天さん!!!佐天さん!!!!!」


意識が朦朧とする。
初春が佐天の顔を覗きこんでいた。
その後ろにはさっきの男が赤く染まった剣を振りかぶっている。

佐天 「うい…は…にげ……」


トゥ!!!

掛け声が聞こえたと思ったらタイツの男は初春の背後から居なくなっていた。
薄れる意識の中で最後に見たのは、初春の泣き顔と、その後ろに立つ黒い革ジャンの人だった。

ピッ…ピッ…ピッ…ピー…バイタルアンテイ…

規則正しい機械音が聞こえてきた。
ゆっくり目を開けると、白い天井が目に飛び込んできた。
首だけを動かして辺りを見回すと、そこが病院なのが理解できる。


佐天 「ん…ここは…」


佐天は右手で目を擦ろうとした瞬間、その手首に黒いタグが着けられているのに気が付いた。


佐天 「………え?」


学校で習ったことが有った、これは『トリアージタッグ』しかも黒(死亡群)が右手にあった。
思わず体を起こそうとしたが、思うように体が動かない、混乱しそうになる頭を素数を数えて
落ち着かそうとする。

佐天 「えっと…3.14159…ってこれは円周率だよ!!!!」

プシュゥ

突然、病室と思われる部屋の扉が開いた。
佐天は扉の方に顔を向けると、カエル顔の男が入ってきた。


医者 「やぁ、気がついたようだね、調子はどうだい?特に気持ち悪い所とか痛い所は?」


カエル顔のお医者さんが当たり前の様に佐天に問診してきた。
痛いも何もと思いつつ、右手を出してトリアージタッグを
恐る恐ると指差した。


佐天 「あの…これ…」


カエル顔のお医者さんは軽くため息をつくと、私の右手から優しくトリアージタッグを外した。


医者 「スタッフの不手際をお詫びするよ、大丈夫、君は生きている。」


生きている?そう聞いた瞬間、佐天は己に何が有ったのかを鮮明に思い出した。
生きている?、いや、あれはどう考えても致死レベルだった。
佐天は必死に状況を理解しようとした。


佐天 「えっと…でも…あれは」


ガバァ

突然、病院着を開けさせられたと思うと、カエル顔の医者はさも当然の様に肩から胸に指を這わした。


佐天 「え?…え?ひゃぁ!?」


医者 「うん、しばらく傷は残るだろうが、経過は良好だね」


素早く開けた胸を隠すと抗議の目でカエル顔のお医者さんを睨みつける。
スカート捲りは専売特許だが、捲られるのは苦手だ、佐天は今なら心から言えるだろう。


       ご め ん ね 初 春 ( ;∀;)


気を取り直して、状況の確認をすることにした。

佐天 「えっと…状況がよく飲み込めていないのですけど…教えてくれませんか…」

医者 「ふむ、3週間前にこの学園都市に、突如起こった無差別テロ、あれに君は巻き込まれたんだ」

佐天 「3週間前!?私、3週間も眠っていたんですか!?」

医者 「そうだよ、まぁ3週間で済んで良かったと思うんだね、君の右手に付けられていたタグだけど、
    意味は分かるね?そう、鼓動、脳波…全て停止して君は一度は死んでいるんだ」

佐天 「」


あまりのショックで言葉を失った。
臨死体験ならず、「一度死んだ」という言葉はこうもショックが強いとは思わなかった。
思わず、震えそうになるが、飛び込んだことに関しての後悔は不思議と感じなかった。


佐天 「あ…初春…初春はどうなりましたか!?」

医者 「初春?…あぁ、あの花の子だね、君が入院してから毎日お見舞いに来ているよ、うん…
    時間的にはそろそろ…」


カチャン…。

何かが落下する音が扉の前で聞こえた。
佐天とカエル顔のお医者さんは音のする方へ視線を移すと、そこには見知った親友の顔が見えた。


佐天 「…ただいま、初春♪」

初春 「さて…ん…さん…さて…さ…佐天さァァァァん」


初春は佐天に抱きつくと、顔を埋めて泣きじゃくっていた。
心配かけたやら、何やらで貰い泣きしてしまいそうだった。


佐天 「う~い~は~る~、グスッ…泣かないでよも~、私も無事だったんだから
    ほら、笑ってよね~、一緒にケーキ食べるんでしょ?」

初春 「は…はいヒック…はい…グス…」

佐天 「ごめんね初春…心配、かけちゃったね…」

初春 「私の方こそ…グス…巻き込んで…ヒック…」

佐天 「いいよ、初春の盾なら私がいくらでもなる…」

初春 「…はい…それじゃぁ…私も佐天さんを守ります…」

佐天 「うん…ありがと…じゃぁ…またスカート捲ってもいい?」

初春 「…はい…………………はい?」

佐天 「よっしゃー!!!!本人公認!!!!捲るぞ~~~~!!!」

初春 「ちょっ!!!佐天さん!!!ノーカン!今のノーカンです!ノーカンノーカン!」

黒子 「しつれいしますの」

佐天・初春「うひょあぁぁぁぁぁぁあ!?」


目の前にいきなり現れた常盤台中学の制服を着たツインテールの少女、『白井黒子』に、二人とも心底驚いた。

黒子 「まぁったく、お二人とも、ここは病院なのですから、大騒ぎは他の方々のご迷惑ですの!
    ほらほら、初春はその涙と鼻水だらけの顔を洗ってきなさいな」

黒子 「それと…佐天さん…お帰りなさいですの…よく…よくご無事で…グスッ…」

佐天 「白井さん…心配をお掛けしました。」

美琴 「そういう黒子も初春さんのこと言えないでしょ?ほら、ハンカチ」

黒子 「ほ…ほねぇさま…嫌ですわ、お恥ずかしいところを」

再び部屋の出入口から声がたと思うと、一人の少女が部屋の中に入ってきた。
黒子と同じ常盤台の制服に身を包んだ少女『御坂美琴』は黒子にハンカチを渡すと、佐天の手を握った。
触れると解るが、彼女の手は小刻みに震えていた。

佐天 「御坂さん…心配を…」

美琴 「ううん…いいの、今はこうして生きているだけで、こうしておしゃべり出来るだけで…
    嬉しいかから……。」

佐天 「クスッ…御坂さんも、初春や白井さんのこと…言えませんね。」


医者 「ふむ、感動の対面の最中なのに申し訳ないんだけど、ちょっといいかな?」


美琴はあわてて手を話すと、恥ずかしそうに軽く鼻を啜りながら離れた。
カエル顔のお医者さんは、最初とあまり変わらぬ表情で私を見ている。
正直、存在を忘れていた…。


医者 「佐天さん…だったね、君の治療にあたって僕は告知して置かなければならない事がある。
    これは、場合によっては周りのさぽーとも必要になるかもしれないから、君達も聞いて欲しい。」

佐天 「告知…ですか?…まぁ、記憶しているだけでも凄い大怪我を負ったのは理解るんで、後遺症は覚悟
    してますけど…」

医者 「あぁ、怪我による後遺症は皆無だよ、それは保証してもいい、ただ、怪我した時の君の状況だがね、
    さっきも言った通り、君は一度死んでいる、奇跡的に損傷がなかった頭部以外の人体の8割は修復が
    不可能な状態だったんだよ、学園都市の医療技術でもね…」


8割…その数字を聞いた瞬間、気が遠くなりそうになった。


黒子 「8割…それでは普通は助かりませんの…」

医者 「うん、そこで僕は学園都市に訪れていた一人の科学者の協力を元に、君の体の修復を行ったんだ。
    科学者の名前は『本郷猛』…君と初春さんを救った人物だね」

佐天 「それで…その『本郷猛』さんは今どこに…一言でもお礼を言いたいんですけど…」

初春 「あの人は…学園都市に現れた無差別テロ集団を追って、学園都市の何処かに居るはずなんですが…」

黒子 「えぇ、ですが…目撃情報はあれど『本郷猛』さんを補足することが出来ませんの…。」

美琴 「私も、その人がそこのお医者さんと佐天さんの手術を担当した時に見ているけど、あの時は学園都市
    全体が混乱していて、怪我人もおおくて到底話しかけれる状況じゃ無かったわ…。」

医者 「で、佐天さん…これから君の退院の手続きをするんだけどね、もし体に違和感を感じた時、彼が君に
    伝えて欲しいと言った言葉が『ライダーは1人ではない』…何のことか検討もつかないがね…」

佐天 「は…はぁ…何のことか…さっぱりですね…」

佐天 「あ、でも、なんで科学者がそのテロリストを追っているんでしょう?」

医者 「それは僕にもわからないんだ、理由はとうとう教えてくれなかったからね」

佐天 「そう…ですか…」

医者 【…これでいいんだね…本郷猛…】

翌日、佐天は病院から開放された。
3週間ぶりの外界は、色々なところにテロリストが残したであろう傷跡が生々しく残っていた。
初春から聞いた話によると、謎のテロリスト集団は神出鬼没らしく、学園都市の保安機能をフルで使用しても
その襲撃箇所を特定できないのが現状らしい、ただ、最近はテロリスト集団が出るところに必ずそのテロリスト
を襲う1人の人物が確認されていた。


佐天 「仮面…ライダー?」

黒子 「ですの」

佐天 「珍しいですね、白井さんがそんな都市伝説っぽい話題を切り出すなんて」

黒子 「私も最初は眉唾物だと思っていたのですが、まぁ、テロリストを襲撃している人物は確かに居ることですし…
    それにこの監視カメラの動画を見てくださいな」


写真には赤いマフラーにバッタだろうか?虫をモチーフにした仮面、筋肉質な体躯に確かにライダーと言う名称が似合う
感じがする雰囲気の人物が、圧倒的な力であの黒タイツのマスク集団を叩きのめしている映像が映っていた。


佐天 「で…この映像が私と何か関係があるんですか?…」

黒子 「えぇ、関係あるかは判らないのですが、あの医者の言葉を思い出して気になったんですの…」

佐天 「あ…あぁ!…えっと『ライダーは1人ではない』でしたね…そう言われると…」

黒子 「それに、思い出させる様で申し訳ありませんが、佐天さんは学園都市とは別の技術で治療を受けてますの…。
    万が一ですが、体に違和感を感じましたら、私や初春に連絡を下さいまし」

佐天 「え?…はははやだなぁ…白井さん……えっと……はい…」


少し落ち込んだ、命があるだけ丸儲けってどっかの芸能人が言っていたのを思い出す。その言葉には同意だけど、改めて
『爆弾を抱えているかも知れないから気を付けろ』と言われると、やっぱり不安が勝ってくる。


黒子 「大丈夫ですの、何があっても初春やお姉様、それに私も佐天さんの見方ですわ、この白井黒子を信用して下さいまし」

佐天 「白井さん…ありがとうございます……ところで、今日は初春は…。」

黒子 「初春は支部で例の『仮面ライダー』を捜索してますの、なに、初春はあれでも物凄く有能ですのよ?…たぶん…」

佐天 「あ…じゃぁ御坂さんは?」

黒子 「…先日…チョットばかり調子に乗ってしまいまして…口を聞いてくださいませんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…」ダバー…

佐天 「地雷だった…」


佐天は1人で帰路につく事にした。
初春はしばらく支部で缶詰らしい、いつ帰れるかわからないのであればジャッジメントではない佐天が居たら仕事上は迷惑と考えた。
夕焼けに照らされる帰り道を歩いていると突然辺りが異様な雰囲気に包まれた。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォッ!!!!


地響き、炸裂音、悲鳴、あの時と同じだった。
このあと辺りにどこからともなく例のテロリスト集団が現れる。
早く逃げなきゃいけない、佐天は震える足に力を込め、一気に走ろうとした。

イィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!!!!


突然、私の目の前に黒タイツの男が立ち塞がった。
あの時のように狂気とも取れる目で佐天を見下ろすとその手に持っていた鈍器を振り下ろした。


佐天 「ひっ…!?」


佐天は自分でも信じられないほどの反応で男の放った一撃を回避した。
何よりも驚いたのは、男の放った一撃が物凄くゆっくりと感じ取れたことだ。
再び男に目を向けると、ムキになったのか再び男は佐天に襲いかかった。


佐天 「あれ?…見える…体が動く…これなら…」


イィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイッ!!!!

男の渾身の一撃が私の頭にめがけて振り下ろされた。
普通ならこの時点で確実に死を迎える、だが、男の一撃が届くより早く私のパンチが男に届いた。

佐天 「パァァァァァァンチ!!!」


<<ズドォォォォォン!!>>

イ゛ィィィィィィィィィ!?


佐天 「はは…これって…身体強化系の能力?…レベル4くらいかな……っ!?」

???「クゥゥラゲェー!!」

佐天 「な…なにあれ……ヤバイ…ヤバイヤバイ…あれは別格だ…」

???「女ぁよくも我らゲルショッカーに手を出したなぁ…その度胸は認めてやろぅ…だが…はぁ!!」


ズドドォォォォォォォォォォォォン!!


妙な格好の化物が右手の触手を向けた瞬間、落雷が私を襲った。
何万ボルトだろうか、体を突き抜けた電流は一瞬にしてその機能を失わせていった。


佐天 「キャァァァァァァ…あ…あぁ…うぐぐぅ…」

クラゲウルフ 「クゥゥラゲェー…このクラゲウルフ様の落雷攻撃を受けてまだ息があるとは…なかなか見上げた女だ…
        だが、これで止めだ!!クゥゥゥラゲェー!!!!」


              そ  こ  ま  で  だ  !


殺される、そう思った瞬間、白井さんの見せてくれた動画に映っていた『仮面ライダー』がどこからともなく
現れたかと思うと、間髪入れずにクラゲウルフに一撃を加えていた。

クラゲウルフ 「おのれ本郷猛!…いや、仮面ライダー!!!どこまでも我らの邪魔をするかっ!!!!」

仮面ライダー 「クラゲウルフ!今日こそ引導を渡してやる!行くぞ!!!」


私は逃げることを忘れ、目の前で行われている怪人Vs改造人間の戦いに目を奪われていた。

初春飾利は監視カメラで信じられないものを見ていた。
佐天が能力と思われる力を使用したこと、その後に現れた化物の事、そして佐天を助けた『仮面ライダー』の事
情報が交錯する中、正確な情報を抜き出し、黒子へ報告する。


初春 「白井さん!現場ですか!」

黒子 「えぇ、一般人の避難誘導は終えましたですの!今はアンチスキルと共に謎の集団の制圧中ですの!」

初春 「その近くの柵川中学方面に抜けれる道で仮面ライダーと得体のしれない化物が交戦中です!
    交戦範囲内に佐天さんも居るみたいで…至急の救助の必要ありと認めます!白井さんお願いします!」

黒子 「初春、安心してその方面の監視カメラを見て下さいな…そこにはお姉さまが向かってますの」



ドガァァァァァアァ!!!!!

辺りに再び落雷音が響いた。
眩んだ目を無理やり見開くと、直ぐ手の届く範囲で仮面ライダーが倒れていた。


仮面ライダー 「ぐぅ!?」

クラゲウルフ 「クゥゥラゲェー…貴様が電気に対しては耐性が低いのはわかってるぞ仮面ライダー…ふっふっふっ~…
        止めだ喰らえー!!!!!」


ゴン!?

クラゲウルフ 「ぐぁっ!?」

佐天はブロック大のコンクリートの破片を思いっきりクラゲウルフに投げつけてやった。
前なら持ち上げることすら困難だったろうが、今なら軽々と持ち上げることが出来る。
怯んだ隙に佐天は仮面ライダーを抱えその場から離れた。

佐天 「あの…あの!…大丈夫ですか?」

仮面ライダー 「ぐ…き君はあの時の…そうか、無事だったのか…よかった…。」

佐天 「こんな時に言うのもなんですが、あの時は…命を助けてくれて…ありがとうございます。」

仮面ライダー 「なぁに、…今は君が私を助けてくれた、これでおあいこさ…」

佐天 「あの…あの後から私の体が変なんです…なんか強化されているというか、不思議な力が…」

仮面ライダー 「!?…そうか、やはり救命治療の範囲を超えて改造手術の粋になってしまったか…
        今から言うことをよく聞いてくれ、そして、すまないが手伝って欲しい…」

言葉を失った。
仮面ライダー本郷猛の人生を教えてくれた。改造手術の事を知った。そして、今の状況を理解した。
だけど不思議と悲壮感は無く、むしろ高揚感の方が強かった。
 

クラゲウルフ 「クゥゥラゲェー!おのれ逃げたか…仮面ライダー…」


仮面ライダー 「私はここだ!」

シュピィィィィン!!!

佐天 「私もここにいるわ!!」

キュピィィィィィィン!!!!!


クラゲウルフ 「ぬぅ!?」

すべてを仮面ライダー…いや、本郷猛さんから聞いた。
仮面ライダーの存在意義をなすべき何かを憎むべき敵を守るべき平和を
そう、今、佐天は得た力を正義に使うためにゲルショッカーに立ち向かう、
学園都市の仮面ライダーになると誓ったのだ。

仮面ライダー 「行くぞ涙子くん!!!!!!」

佐天  「はい!!!!」

佐天・ライダー 「ライダァァァァァァァ!!!!ダブルッッ!!!!キィィィィィィィック!!!!!」


佐天 「くっ!?タイミンがずれた!?」



ズドォォォォォォォォ!!

鈍い感触と鈍い音が辺りに響いた。


佐天 「やった!?」

本郷 「いや…浅い…」


土煙の向こうから、クラゲウルフの触手が伸びて来たのが見えた。
直撃と感じた瞬間、目の前を閃光が横切った。


美琴 「あんたがどこの誰だか判らないし、人間かそうでないかすら興味ないけどね…」


美琴が一歩一歩進むたびに辺りに電気が走った。
学園都市の第三位、Level5、御坂美琴が歩くたびに辺りに緊張が生まれる。
同じ電気を操るクラゲウルフですら年端の行かぬ少女の迫力に呑まれていた。


美琴 「私のお友達に手を上げた以上は…覚悟…できてんでしょうねぇ!」


バシシシシシィバチィッ!!!!!!


クラゲウルフ 「クゥゥラゲェー!!舐めるな女ぁ!10万ボルトの電撃ムチを喰らえー!!!!!」

クラゲウルフのムチが美琴に向かい襲い掛かる。
だが美琴はそのムチを避けるどころかあえて手首に巻きつかせた。
その顔は到底10万ボルトの電撃を受けているようには見えない。


クラゲウルフ 「ば…ばかな…!なぜだ!なぜ電撃が通じない!?」

美琴 「10まんぼるとぉ?私を感電させたきゃ…10億ボルト以上の出力になって出直して来いごらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

クラゲウルフ 「クゥゥラゲェーェェェェェェェェェェェェエェェェェ…」


シュバァァァァァァァバババババババババババババチンバチ…シュゥゥ…


瞬く閃光が収まった後にはクラゲウルフは跡形もなく蒸発していた。


仮面ライダー 「間近で見たのは初めてだが…これが…Level5か…」


緊張の糸が溶けたのか佐天は思わずその場に座り込んでしまった。
その目の前に大きな手が差し出される。
佐天は見上げると仮面ライダーが手を差し伸べてくれていた。

佐天 「あ…ありがとうございます…。」

その言葉を聞くと仮面ライダーは変身を解いた。
底には革ジャンで筋肉質な男性が立っていた。

本郷 「こちらこそ、ありがとう涙子くん。そしてそこの君、助かったよ、ありがとう。」

黒子 「お話はそこまでにしていただいて、ジャッジメントですの、本郷猛さん…ですわね?」

突然、黒子が目の前にテレポートしてきた。

黒子 「本郷猛さん、大変申し訳ございませんが、ジャッジメント本部までご同行願いますの」

本郷 「さすがにこれだけ大事になってしまったら、お目こぼしは無いか…解った。行こうじゃないか」

佐天 「ま…まってください白井さん!本郷さんは…」

黒子 「佐天さんとお姉様も一緒に同行していただきますの」

佐天 「…へ?…」

美琴 「ちょ…黒子、佐天さんもってどうゆうことなの!?」

黒子 「監視カメラの映像はアンチスキルやジャッジメント本部にも流れてましたの…。
    佐天さんのあの能力、本郷さんの力、そして得体のしれない怪人…上はこれを重大な危機を判断、
    本郷さん佐天さんそして現場に居た学園都市三位の超電磁砲に出頭を命令しましたの」

黒子はそれだけ告げるとアンチスキルに連絡を入れた。
程なくして護送車が到着、四人は乗り込んでいった。

佐天 「本郷さん…」

本郷 「何だい?涙子くん」

佐天 「私はこの力を得たことを後悔しません…私は仮面ライダーとして学園都市に住む生徒として、この街の平和を
    守ってみせます…。」

本郷 「決意が固いなら私は何も言わないさ…ゲルショッカーは手強い…死ぬなよ…『佐天ライダー』…」

佐天 「さ…佐天ライダー!?」

黒子 「…あ今ので名前が決まりましたですの」

美琴 「語呂がいいわね…『佐天ライダー』」



次回へ続く…かも?

くぅぅぅぅぅぅっ!疲れました!
又次の機会があればお付き合い下さい!



                第X話『ブラック将軍登場! 爆誕!佐天ライダー!』


ジャッジメント本部で佐天たちを待ち受けていたのは、アンチスキルによる半拘束とも取れる対応だった。
最初は怪訝な顔をしたが、得体のしれない怪人を相手にした以上は、この措置も仕方のない事だろうと納得した。


美琴 「ねぇ黒子…そのゲルなんとかって集団は、何のために学園都市にちょっかいを出してきたのかしら…」

黒子 「さぁ…皆目見当がつきませんの。ただ…彼らが動いた後は必ず何人かの能力者が行方不明になりますの…」

美琴 「えぇ!?それって誘拐じゃない!」

黒子 「お姉様、落ち着いて下さい、まだそうとは限りませんの」

美琴 「落ち着けって言われても!状況証拠はこれだけ揃っているのに!落ち着いて居られないわよ!」

本郷 「美琴くん、黒子くんはこんな時だからこそ冷静になるようにと言っているんだ、今は落ち着くんだ」

美琴 「ぐむ…うぅぅ…はい…」

佐天 「大人ってすごいなぁ…ところで、結構な時間待ってますけど…まだ呼ばれないですね、遅いなぁ」


プシュー

会議室の扉が開かれ光が差し込んできた。
入室してくる研究者風の人、アンチスキルの人たち、固法先輩を含むジャッジメントの面々、
その中に見知った花飾りを付けた人物が目に飛び込んできた。


佐天 「うぃ!?」

黒子 「はぁ!?」

美琴 「るぅ…さん!?」

本郷 「(´・ω・`)?」


会議は粛々と進んでいった。
勿論、本郷猛が仮面ライダーであること、瀕死の状態から奇跡の生還をした佐天が新たに得た能力そして、
本郷と共にクラゲウルフと名乗る怪人と戦ったこと、怪人と対峙したLevel5、御坂美琴の意見に集中したのは
言うまでもなかった。

警備員 「本郷猛さん、貴方が学園都市統括理事会により特例として学園都市に招かれたのは、我々アンチスキルも
     把握してました。しかし、貴方が招かれる直前からこの学園都市に不穏な空気が流れていたのです…」

研究員 「我々はその不穏な空気の現況であろうテロリスト集団の情報が無い、知っていることが有れば教えて欲しい」


本郷 「ここまで事が大事になれば、もはや隠す意味もないでしょう…。」


本郷は自らが『悪の秘密結社ショッカー』に改造された改造人間であること、現在に至る戦いの日々、そして、ゲルショッカー
の情報を包み隠さず話した。本人が被害者であるがゆえに平和を脅かす悪を挫く存在たらんと決意し仮面ライダーとなった本郷
の話に口を挟むものは居なかった。

本郷 「そして、ゲルショッカーが学園都市を狙う目的は…私が調べた所では」


             『 ゲ  ル  シ  ョ  ッ  カ  ー  超  能  力  軍  団  計  画 』


ゲルショッカーによる学園都市占拠、テスタメントによる能力開発技術の獲得、クローン軍団設立、Level0に対する実験的改造手術計画…。
本郷が調べた中でも、これだけの計画を実行する準備をゲルショッカーは進めていた。その情報を本郷は既に統括理事会に伝えており、
その中でもゲルショッカーによる超能力軍団計画は学園都市にとっては見過ごせる物ではなかった。
事態を重く見た学園都市側は、本郷猛を学園都市に召喚、混乱を避けるために秘密裏にゲルショッカーの排除に乗り出していた。


黒子 「なるほど…学園都市側はアンチスキルやジャッジメントではなく、猟犬部隊…つまり暗部を使っていたわけですの…
     統括理事会が隠蔽しているのでは、情報が表に出にくいわけですの」

本郷 「すまない…私がもっと注意していたら…」

佐天 「そんな…本郷さんの責任じゃないですよ、隠しても隠さなくても結局はこうなったと思いますし…」

本郷 「ありがとう、涙子くん」

美琴 「でも…いくら何でも非道よ…ゲルショッカーの馬鹿げた計画なんて絶対ぶっ潰す!!」


会議では初春が壇上に上がっていた。
彼女はその温和な表情とは別に、学園都市屈指のハッカーであり、守護神(ゴールキーパー)と呼ばれている。
そんな彼女が、可愛い顔を厳しい表情にして壇上に上がり、報告を始める。


初春 「昨日未明、学園都市の書庫に何者かがアクセスした形跡がありました。
    侵入者の招待は一応判明していますが、これはワザと正体を表したと思われます。」

黒子 「はっ!…学園都市の守護神が守るサーバーに侵入するなんて、莫迦も良いところですの」


初春が次の言葉を発した瞬間、研究者たちは我を疑う。


初春 「なお、アクセスの形跡はありますが…書庫側のセキュリティが一度も機能したログは…残ってませんでした…」

研究者 「馬鹿な!?あれは正規の手続きをとってもログを残すぞ!?しかもログは即ブラックボックス化…ほぼスタンドアローン
      と呼べる状態になる…アクセスは不可能なはずだ!」

初春 「えぇ、普通は無理です。物理的に遮断された以上は手は出せません…ですが、先もども言いました通り、セキュリティが一度も
    機能してません、相手は完全に自分を隠匿し学園都市のセキュリティーをくぐり抜けたのです…ほぼ不可能ですが、相当の天才が
    相手に居ることになります」

警備員 「書庫のセキュリティの見直しは後ほどの課題として、次を頼む」

初春 「はい、書庫に残されていた映像を出します」


映像に映し出されたのは1人の男だった。
WW1時のドイツか帝政ロシアか…そのような格好を彷彿としている、胸には自慢するよう付けられている勲章の数々
人を射抜くような眼光は数多くの戦いをくぐり抜けてきた証だと感じ取れた。


佐天 「だ…誰ですかあれは…なんかおっかない人が映しだされましたよ?」

美琴 「え…えぇ…只者じゃない雰囲気ね」

本郷 「…ブ……ブラック将軍!!」


一際大きい声を上げ本郷は椅子から立ち上がった。
その表情から察するにこの男はこの学園都市にとって最悪の相手の1人であることを告げていた。


ブラック将軍 「我が名はブラック将軍、偉大なるゲルショッカー首領の臣である…。
        我々ゲルショッカーは学園都市統括理事会及び、学園都市に住む全ての人間に対し宣戦を布告する
        皆殺しだ…もし皆殺しが嫌なら…学園都市すべての技術と能力者を我々ゲルショッカーに差し出すのだ」

ブラック将軍 「期限は一ヶ月…それまでの間に答えが得られなければ、我々ゲルショッカーの怪人軍団が学園都市を一斉に
        攻撃することになるだろう…ふふ…」


ブラック将軍の後ろに空間転移のように現れた異形の怪人軍団に、場は一気に凍りついた。
先ほど見ていたクラゲウルフと同じ、あるいはそれ以上の能力を持っているであろう恐怖の怪人軍団が映像に映し出されたのだ。



黒子 「!?…いとも簡単にテレポートを行う化物があんなに居るなんて…これは少しピンチですの…。」

佐天 「あんなのが集団で襲ってきたら…いくら何でもカバーしきれないですよ…。」

美琴 「これは少しヤバイわね…いくら私でも同時多発的に襲撃されたら為す術が限られるわ」

黒子 【…無い訳じゃないんですのね…クスリ】

本郷 「そんなことはさせるか!ゲルショッカーの企みなんぞ、私が打ち砕いてやる!!」

佐天 「本郷さん、私も居ますよ♪」

黒子 「まぁ、これも乗りかかった船ですし、ジャッジメントとして見過ごすわけにはまいりませんの」

美琴 「佐天さん、戦力は多いほうが多でしょ?微力ながら私もお手伝いさせてもらうわね」

黒子 「…私の中の『微力』の定義を変更する必要が出てきましたの…」

美琴 「なんか言った?」

黒子 「いえ何もいってませんの♪」

本郷 「ありがとう…ありがとうみんな…君達がいれば100人…いや、1000人力だ!」

佐天 「私は本郷さんに命を救われました、だから今度は本郷さんの力になりますよ!
    あ、今壇上に居る頭がお花畑な子あの子も一緒ですからww」

初春 「ふえっくしょん!?…あ…すみません…【佐天さんの方向から不穏な空気が…】」


翌日、ジャッジメント本部から第177支部を正式に『ジャッジメントライダー隊』の本部とする辞令が通達された。
それと同時に、佐天と美琴は臨時ではあるが風紀委員の預かりとなる決定が下される。
本郷猛に関しては、統括理事会の要請により学園都市内外のゲルショッカーの情報収集のため、一時ではあるが学園都市を
離れることになった。

美琴 「にしてもさ、なんで私がこの腕章を付けなきゃいけないわけ?…しかもなんか真ん中にライダーの顔が
    デフォルメされて付けられてるし、どうせならゲコ太にしろっていうのよ!」

黒子 「まったく…お姉様のゲコ太スキーも極まってますわね、仕方ありませんの、この支部の面子は一応ライダー隊の
    所属にもなってるのですから、まぁ、私としては、お姉様ほどの人が仮とはいえジャッジメントに所属して、
    あまつさえ治安維持にも動いているのは嬉しい限りですの」ハァハァ

初春 「まぁ私も正式にライダー隊として書庫へのアクセス権限も広がりましたし、情報収集は任せて下さい!
    っと…ところで…佐天さんと本郷さんが見当たりませんね?」

固法 「あの二人なら屋上へ行ったわよ?…んもう…あなた達が出入りしてるからって、私までライダー隊なんて…
    ……でも、これでバイクに乗ってパトロールOKと言われてチョット嬉しいかもね」

美琴 「あはは…固法先輩、本音も口に出しちゃってますよ?…」



屋上では佐天と本郷が互いに向かい合っていた。
互いに決意に満ちた表情で互いを見つめている。


本郷 「涙子くん、私はゲルショッカーの情報収集のため、しばらく学園都市を離れる事になった」

佐天 「はい…」

本郷 「本当はもっと時間をかけて伝えるべきだったが、今ここで君にライダーパワーを教える」

佐天 「ライダー…パワー…ですか」


本郷はゆっくり頷くと、ライダーベルトを顕現させたゆっくり構え気合を込める。
佐天は本郷の周りに力が集まっていくのが感じ取れた、ベルトの風車が激しく回転を始めていた。
力の集約が頂点に達したその瞬間、本郷の周りが光りに包まれる。


                 ライダァァァァァァ!変 身 !

           シュピィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!!


光が収まり周囲が見えるようになると、佐天の目の前には仮面ライダーが立っていた。
その姿は力強く、何処か神々しい物を感じた。


仮面ライダー 「涙子くん…いくぞ!!!」

佐天 「えっ!?きゃぁ!?」


佐天は突如攻撃を受けた、あまりの事に面食らって尻餅をついたのが幸いしたのか、ライダーの一撃を
避けることが出来た。


佐天 「本郷さん!?急に何を!?」

仮面ライダー 「いいか涙子くん、この街を学園都市を守るのは私ではない、君なんだ!より強く力を引き出し
        制御するのを意識するんだ!いくぞ!トウッ!!」

再びライダーの攻撃を佐天は間一髪で避けた。

佐天 「あんなに速い攻撃を避けれた!!…ううん…本郷さんが避けさせたんだ…そうだね…本郷さんに頼れない
    時が必ず来る…その時…私は…私は!!それでも皆を…守る!!!」

本郷 【そうだ…涙子くん…悪を憎むだけじゃない、大切な人達を守る想いもライダーには必要なんだ…】



佐天は自分の中に力が集まってくるのを感じ取れた。
徐々にライダーの攻撃が感じ取れるようになってくる。

佐天 「はぁ…はぁ…これは…」

本郷 「そうだ!これがライダーの力だ!立て涙子くん!」

佐天 「はいっ!!!」


佐天に顕現したライダーベルトは3つの風車を備えていた。
ベルトの風車が各々に激しく回転を始め、大気を震わすほどの力の集約が始まる。


美琴 「何々!?またゲルショッカー!?」

黒子 「いえ…この感覚は…」

初春 「大変です!急いで屋上に行って下さい!佐天さんと本郷さんが!」

固法 「…こりゃ始末書かしらね…ほら、初春さんも行って行って!」

初春 「は…はいぃ!」


固法は溜息をつくと、現在起こっている大気の共振はゲルショッカーとの関係はない旨を関係部署に通達した。
その後、アンチスキル及び、ジャッジメント本部からの始末書の催促を見越して、準備を始めていた。


美琴 「な…何よあれ…佐天さんなの?」

黒子 「なんという…凄まじいパワーですの。」

初春 「佐天さんを覆っている光が…」


直視したら目を痛めそうな程の強い光が佐天を覆っていた。
その光がベルトに集まり、風車の回転がピークを迎えた瞬間。


             らいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!へぇぇぇぇんしんっ!!!!

                   シュパァァァァァァァァァァン!!!!!


目の前にいた佐天涙子は確かに変身した。
風を纏う黒いロングヘアー、強固なゴーグル、力強く握られるグローブ、全身を守るプロテクター、
大地を踏みしめるブーツ、そしてライダーの証である3つの風車が回るライダーベルトが佐天涙子を
仮面ライダーへと変身させたのだ。


美琴 「カッコいいかも…」

初春 「ほへぇ…」

黒子 「…小さい男の子にも大きいお友達にもバカウケな感じですの…」


佐天は変身した己の姿を確認した。

佐天ライダー 「これが…ライダーパワー…」

仮面ライダー 「そうだ、そして平和を大切な人たちを守る力だ、行くぞ涙子くん!最後の仕上げだ!!」

佐天ライダー 「…は…はい!」


戸惑いながらも佐天は、本郷に呼応するようにその力を一転に集めていく。
互いに全力の一撃を放つために心を落ち着けていった。



仮面ライダー 「電光っ!ライダァァァァァァァァァァァァァアアアアアア!!!!!」

佐天ライダー 「ライダァァァァァァァァァスクリュゥゥゥゥゥゥ!!!」


二人のライダーは互いを高めるように高く高く跳躍した。


佐天・本郷 「キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィック!!!」


ズガガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ…………


大気を震わす炸裂音が辺りに響いた。



暗闇の中に光が差し込んでくる。
その光が徐々に大きくなっていく感じだった…


佐天 「ん……あれ?…」

初春 「あっ!佐天さん気が付きました?」

佐天 「初春ぅ…今日はパンツ…」

初春 「はいてますよ…もう…御坂さん白井さん、佐天さんの意識が戻りましたよ」

黒子 「あら?佐天さんおはようございますですの」

美琴 「佐天さん大丈夫?痛いところある?」

佐天 「痛いところ……あっ!?」


突然、意識が明瞭になったのか思わず飛び起きた。

ゴン!?


初春・佐天 「いったぁい!?」

初春 「い…痛いですよ佐天さん…」

佐天 「ご…ごめん初春…いたた…」


勢い良く飛び起きたためか、顔を覗きこんでいた初春に思いっきりヘットバットをしてしまった。
不意に来た頭部への衝撃に二人は悶絶思想になっている。
その様子を見ながら固法は口を開いた。


固法 「本郷さんなら、もう行っちゃったわよ…」

佐天 「え?…」

黒子 「えぇ、あの方はもう行きましたの…佐天さんに再び『ライダーは1人じゃない』と伝えてくれと
    言い残して…」

美琴 「あと、こうも言ってたわ『ピンチになったら必ず駆けつける』ともね」

初春 「佐天さん、本郷さんや固法先輩、御坂さんに白井さん、そして私が…佐天さんには付いていますよ
    だから、助けて欲しい時は言って下さい、私も助けて欲しい時は佐天さんに言いますからね」

佐天 「初春…御坂さん、白井さん、固法先輩…ありがとう…うん…私、頑張るよ、学園都市の仮面ライダー…
    佐天ライダーとして、ゲルショッカーの魔の手から学園都市を守りぬくからね…グスッ」

固法 「所で佐天さん…早速のお仕事なんだけどぉ…これ♪」

佐天 「へ?…何ですかその紙の束…始末書?…何ですかこれ?…」

黒子 「さーてパトロールに行ってきますの~」

美琴 「あ、ちょっと学校に能力開発の件で呼ばれてるんだったけぇ~」

初春 「ゲルショッカーの報告書を本部に持って行くんでしたぁ~」

佐天 「ちょぉ!?えっ!?なに!?え!?た…助けてよぉ~~~!」

固法 「賑やかな支部が、更に賑やかになっちゃうわね…クスッ…」


仮面ライダー本郷猛からライダーパワーを受け継いだ佐天涙子!
その力に戸惑いながらも学園都市を守る決意を新たに固めるのであった。
闘え!佐天ライダー!負けるな!佐天ライダー!


次回へ続く

さて~んライダー♪さて~んライダー♪
ライダー♪ライダー♪

これで今回は終了です!
また次回がありましたら、よろしくお願い致します!


小説版仮面ライダー1971-1973のエピローグに出た、三連タイフーン式強化服を想像すればいいのかな

>>30

普通に三連タイフーンのネタがバレた…。
あ、でも、あくまでも風力なので核電池はついてないですw



スーツ自体のイメージは、どちらかと言えば某BM7号の彩色を2号ライダー依りにして
胸から腹筋、肘、膝に薄いプロテクター、ライダーグローブとブーツみたいな感じでお願いします。
それにトリプルタイフーン装着で…。


あれ?判りにくいなぁ…絵心有ればなぁorz

あと皆様、乙ありですた。

乙なんだよ。イカデビルがインデックスだったらおこるんだよ


                       佐天!ライダー!!!!!


                せまるーショッカー!あくまのぐーんーだんー 
                      われらをねらーうくろいか(ry





          第X話『親友を救え! 悪魔の人喰い花ドクダリアンの恐怖!!』





完全下校時刻が存在し住人の大半が学生である学園都市では、比較的早めに人気が無くなる場所が存在した。
ここ第17学区も夜になると、操車場くらいの明かりしか無く日が落ちるとスキルアウトと呼ばれる比較的に素行の
悪い若者がチラホラ現れたりする。


スキルアウトA 「最近はテロリストとか怪人とか、訳の分からない出来事が多すぎてよ、俺らの影がすっかり
           薄いように感じるぜ…。」

スキルアウトB 「しゃーねーよ、テロに遭遇した事あるけどよ、アイツらの目を見たかよ?ありゃイッちまってるぜ」

スキルアウトC 「少なくとも俺ぁ近寄りたくねーよな、俺ら何だかんでいってもワル振っているだけだしなぁ俺らww」

A・B 「ちげぇねぇwww」

??? 「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」


話に興じていたスキルアウト達の耳に突然、魔女とも思わせるような笑い声が聞こえてきた。
頭に響く不快な声が発せられているであろう場所に顔を向けると、1人の老女がそこに居た。


スキルアウトA 「ん…んだぁ!?…び…ビビらせんじゃねーよ!!!」

スキルアウトB 「ば…ババァ!ここは暗くてアブねぇぞ!さっさと帰りやがれってんだ!」

スキルアウトC 【やべぇ…ちょっと漏らした…】ジワッ…

??? 「おやおや、イヒヒヒヒヒ活きの良い人間の若者が三人も居るとは、こりゃ運がいいねぇ」

スキルアウトA 「∑(゚д゚lll)」

スキルアウトB 「∑(゚д゚lll)」

スキルアウトC 【((((;゚Д゚))))】

スキルアウトA 「い…いや…俺等そのような趣味ないんで…すみません…失礼します…」

??? 「おや?イヒヒヒヒヒそんな遠慮をするもんじゃないよ、さぁお前を食べさせておくれっ!」


スキルアウト達の目の前で老女が異形の怪人へ姿を変えていった。
その姿がスキルアウトたちがこの世で見た最後の光景となった。



黒子 「というわけで、最近スキルアウト達がボロボロの服だけを残して、失踪する事件が頻発してますの」

美琴 「正直、気味の悪い事件ね…アンチスキルの話だと、どうも服が溶けた形跡が有るらしいし」

初春 「その件に関わっているとは思うのですが、最近、スキルアウトの他にも女性の失踪が増えているんですよ…」

固法 「そうね…ただ、女性の失踪の場合は服とかは見つかっていないから、関係があるかは不明だけど…
     何にせよ、ジャッジメントとしてはこの件、放っては置けないわ…パトロールを強化しましょう。
     ただ、もし危険と遭遇したら相互間の連絡は忘れないこと!解った?」

美・黒・初 「はい!」

黒子 「ところで…佐天さんはミーティングぶっちしてさっきから何してますの?…」

初春 「あぁ…」


ミーティングを他所に佐天は1人机に向かってウンウンと唸っていた。
その手元を見ていると、学校から出されたのであろう課題の山で埋もれていた。


初春 「佐天さん…今日のテストで居眠りという大ポカをやっちゃって…」

黒子 「赤点を取りましたのね…ご愁傷様ですの…」

美琴 「はぁ…しゃーない…ここはいっちょ手伝ってあげますか」

佐天 「みぃぃぃさぁぁぁかぁさぁぁぁん」ダパー…

美琴 「あぁ、はいはい、泣かない泣かない、お姉さんに任せなさーい」ヨシヨシ

黒子 「ちょ!?佐天さん!?いくら佐天さんでもお姉さまに抱きつくのはダメですの!」

固法 「はぁ…もう…まぁいいわ、初春さん、今日も監視カメラのチェックをお願いね?
     あと白井さん達は…落ち着いたらパトロールに行くように伝えてね」

初春 「了解しました、固法先輩」


初春に指示を与えると固法は、ジャッジメントライダー隊に特例として認められたオートバイに跨り本部へと向かっていく。
普段の姿からは想像もつかないほどのライディングテクニックを駆使し固法は走り去っていった。


初春 【なんか…佐天さんより固法先輩の方がライダーって感じがするなぁ…】

初春 「それはそうと…スキルアウトの失踪に女性の失踪かぁ…とりあえず、人気の少ないところを中心に監視カメラを…」


初春は端末を操作すると次々と学園都市の監視カメラにアクセスを行っていく、監視カメラによる都市の監視作業と並行し
学園都市の書庫のセキュリティ強化を行っていた。普段の態度からだと想像し難いが初春は学園都市屈指のハッカーなのだ。
お菓子を摘んだり、お茶を啜ったりしているが、キーボードに置かれている初春の両手は忙しく動いていた。


美琴 「それにしても…凄まじいわね…初春さん」

黒子 「情報処理の一点でジャッジメントへの入隊を果たした実力は、伊達じゃありませんの」

佐天 「初春すごいや…今度から『さん』付けで呼ぼう」

黒子 「泣かれるからお止めなさいな…」

佐天 「それが良いんじゃないですか、可愛いですよ?初春の泣き顔」

美琴 「佐天さんって…結構…いじめっ子?」

佐天 「やだなぁ…愛ですよ愛」

黒子 「あ…なんとなく理解しますの」

美琴 「…あ゛ぁ!?」ギロ

黒子 「」プイッ



一通りの作業と黒子・御坂・佐天が各々パトロールに出たこともあり、初春は本部内で休息を取っていた。
監視作業は、カメラの映像を本部に中継することにより本部に出向いている固法先輩が引き継いでくれている。


初春 【そういえば…こちらに来る前に、お花屋さんで珍しい花を見つけたんですよね~】

初春 「よっと、休憩時間を利用して花瓶に挿しておこうかな」


初春は冷暗庫に保管していた花を取り出すと、丁寧に花瓶に挿した。
真っ赤な一枚花に中心は黄色い、茎と葉は紫色で、普通なら買わない様な花だった。


初春 「それにしても、ニューギニア産と言われてるけど、名前が無い花とか…確かにチョット不気味かも…
     でも、こうしてみると意外とカラフルで可愛いと思うけどなぁ…なんで誰も買わないんだろ?」

初春 「まぁ、独り言もなんですし、監視作業の続きをしましょうか」

???「イィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!お前で女の人数は揃ったぁ!」

初春 「え…あっ…き…きゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」


初春の前に突然現れた異形の怪人、その怪人のムチが初春の首に巻きついた。
細いムチのはずなのに、初春は荒縄で締めあげられている感覚を覚える。
少なくとも初春の腕力で解ける代物ではなかった。


初春 「あぐぅ…げ…ゲルショッカーの怪人…」

??? 「ふん!元々はショッカーの怪人さぁ!そんなことよりお前は良い作業員になれそうだ、安心おし!
      このドクダリアンの言うことを聞けば殺しはしない!もっとも、今は殺さないだけだがねぇ!
      イィヒッヒヒヒヒヒヒ」

初春 「だ…誰が…貴方のいうことなんて…」

ドクダリアン 「ふん!生意気な口に注意するんだね!いつでも殺すことはできるんだよ!」


ギリリリ


ドクダリアンは初春の首に巻き付いているムチを締め上げる。
その力に初春の意識は急激に落ちていった。
最後の力を振り絞り、初春は胸元に仕込んでいるSOS装置のスイッチを入れた。


初春 「あ…がっ……さて…ん…さ……ん……」カチリ…




外は快晴、実に良いパトロール日和だった。
佐天、美琴、黒子の3人は、初春が選定した箇所を中心に各々パトロールをこなしていく。
途中スキルアウトに佐天が絡まれる珍事態が発生したが、今の佐天の敵ではなかった。
ここ数日、ゲルショッカーの大規模襲撃も発生せず学園都市は実に平和である。

佐天 「うーん…アンチスキルに引き渡したけど…もう少し繊細にパワーを扱えるように
     ならないと、これじゃ事故が起こりそうで怖いかも…」

黒子 「静止する間もなく、いきなりチョップは行けませんの…それでなくても、佐天さんは
     一気に能力レベルが上がった様な物なのですから、相応の注意をしませんと」

美琴 「あははは、まぁ大した怪我じゃないんだし、アイツらもこれで少しは懲りるでしょ?」

佐天 「うーん…こんな時、本郷さんが居てくれたらなぁ…」

黒子 「まぁ、居ない人の事を言っても始まりませんの、それに…」

佐天 「それに?」

黒子 「お姉様が手を出すよりは、はるっっかにあの殿方達の怪我は軽傷ですの」

美琴 「んな!?」

佐天 「あはは~」


ピーピーピーピーピー!!!!!!

各自の端末が突然、けたたましい警報音を鳴らし始めた。
端末にはSOSと初春の所属番号が映しだされている。


黒子 「初春からのSOS通信!?お姉様!佐天さん!」

美琴 「わかった!黒子先に行って!!佐天さん!私達も!」

佐天 「はっ…はいっ!!!!!」


初春の入れたスイッチにより、佐天、美琴、黒子、固法の端末にSOS通信が入った。
テレポーターの黒子がいち早くライダー隊本部(177支部)に飛び込むように戻ってくる。
その目に写ったのは、荒らされた支部の惨状だった。



黒子 「初春!初春!!どこですの!?」

美琴 「黒子!!!初春さんは!?」

佐天 「初春っ!!!!!!」


佐天と美琴も戻ってきた。
その顔は明らかに焦りの色が浮かんでいる。


黒子 「いませんの…と…とりあえず捜索を!!」

美琴 「本部!本部への連絡を!」

佐天 「初春…初春っっ!!!!」


焦りのためか、各々が何をしていいかわからない状況だった。
あーでもない、こーでもない…只々混乱で貴重な時間が失われていく。
その様な混乱を諌める様に声が響いた。



固法 「落ち着きなさい!あなた達!!!!」ゼェ…ハァ…


声を上げたのは、同じく慌てて戻ってきたのであろう、固法が息を切らして入り口に立っていた。
固法は大きく深呼吸をすると、毅然とした態度で指示を出しはじめた。


佐天 「固…法…先輩…」

固法 「慌ててどうするの!それでもジャッジメント?まずは状況の確認!支部内の監視カメラの映像を出して!」

黒子 「わ…わかりましたの!」

固法 「私達に連絡が入ったってことは、初春さんはSOSを起動させたはずよ!各々の端末でGPSを確認!」

佐天 「はい!」

美琴 「あーもう!そうだったわ!」

黒子 「監視カメラの映像、音声込みで出せますの!」


監視カメラの映像に映っていた映像に、佐天は怒りを覚えていた。
花のような姿をしたゲルショッカーの怪人が初春の首をムチで締め上げている。
音声から直ぐに殺される心配がないだけが救いだった。


佐天 「初春を…私の初春を…いじめたな…」

黒子 「これは見過ごすわけにはまいりませんの」

美琴 「ゲルショッカー…思った以上のクズの組織ねトサカにキたわ」

固法 「…三人とも…落ち着きなさい…」

佐天 「GPS…第一九学区…ここね…固法先輩!!バイク借ります!!!!!」

固法 「えぇ!?ちょっと!?…」


佐天は固法のバイクに跨ると、いつの間にかに借りていたキーを差し込んだ。
バイクに跨るのは初めてなはずなのに不思議と運転方法が頭に浮かんでくる。
セルを回しエンジンに火を点す、KAWASAKI製Z1000MKⅡが喧ましい音と共に
猛スピードで飛び出していった。



美琴 「佐天さん…キレてるわね…」

黒子 「お姉さまも、負けず劣らずですわよ?」

美琴 「当然でしょ?…それに黒子、貴女もでしょ?」

黒子 「当然ですの、初春は私の大切な友達なのですから」

美琴 「じゃぁ…行こうか…黒子!」

黒子 「はいですの!」

固法 「貴女達!!…ちょ…まっ…はぁ…」


美琴と黒子がテレポートするのを止められるわけもなく、固法は1人事務所に残されてしまった。
固法は諦めたように溜息をつくと、緊急通信回路を開き状況をアンチスキルと全ジャッジメントに伝える、
一通りの通報を済ますと、インカムを付けて情報収集とサポートに徹し始めた。


固法 「まったく…あの子達は……初春さん…絶対に助けなさいよ…」


女子中学生には到底耐えられない風圧を押し切り佐天のバイクが疾走する。
視界が狭まり集中力が増し、さらなる加速を呼び込むためスロットルを握りこむ。
命のベルトを顕現させ、佐天涙子は叫んだ。


            ライダァァァァァァァァァ!!!へぇぇぇぇんしんっ!!!!!

              シュピィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!


力・技・守、3つの風車が風を受け激しく回転する。
光が集約し、現れた『佐天ライダー』が学園都市を疾走する。


佐天ライダー 「初春…必ず助けるからね…」


目にも留まらぬ速さで文字通り佐天ライダーは風になった。
第一九学区へ初春を救うための風に。



初春飾利が目を覚ますとそこは強制労働施設だった。
多数の女性がマスクを付け、得体のしれない薬品を粉にしては瓶に詰めている。
突然一人の女性が倒れるのが目に入った。


ドクダリアン 「ちぃ…また毒で1人死んだか…おい!廃棄処分だよ!」
 
     イィー!

初春 「な…何をしているのですか…」

ドクダリアン 「おや?気が付いたかい…ヒヒヒヒヒィ、女は手先が器用だからね、こうして特殊な
         花から取り出した毒薬の加工を行わせているのさぁイヒヒヒヒヒヒヒィ」

初春 「そ…そんなこと!許されると思っているのですか!今直ぐやめて下さい!」

ドクダリアン 「状況が飲み込めていないようだねぇ?お前はここで働くか、私に食われるか、それとも
         この死のスモッグの実験動物になるかしか選択肢がないんだヒヒヒヒヒヒヒヒヒィ」

初春 「くっ…貴女達ゲルショッカーの片棒を担ぐくらいなら…」

ドクダリアン 「ほう?死んだほうがマシとでも?よく言ったぁ!望み通りにしてやろうじゃないかぁ!」


ドクダリアンは片手で初春を乱暴に吊り上げると、一本のスプレーを取り出した。
初春は死の恐怖を必死に押さえ込みながら、ドクダリアンを睨みつける。
しかし、どんなに我慢しようと目から大粒の涙を止めることは出来なかった。

ドクダリアン 「怖いか?死ぬのは怖いか、だがもう遅い、のた打ち回り惨めに死ぬのだ!イィヒヒヒヒヒ!」

初春 【御坂さん…白井さん…佐天さん…佐天さん……助けて…】ヒック…ヒック…


        ドガァァァァァァァァ…!!!!!!


あたりに響く轟音と体を揺らす振動にドクダリアンは思わずバランスを崩した。


         そ  こ  ま  で  よ  !  ! 


初春は一瞬、何が起こったのか理解するのに時間がかかった。
だがこれだけは瞬時に理解する、眼前に立つ親友の姿が嬉しくて、一生懸命に堪えていた何かが一気に緩んでいった。


初春 「佐天さぁぁぁぁん…あぁぁぁぁぁん…」ウワァァン

佐天ライダー 「助けに来るのが遅くなってごめんね初春…もう大丈夫だからね!
          人喰い花ドクダリアン!私は貴方を絶対にゆるさない!殴ってやる!」

ドクダリアン 「ふん!何者か知らないが、小娘1人で何が出来る!こっちには人質も居るんだ!
         イヒヒヒヒヒヒィ!攻撃できるならやってるんだねぇ!」

佐天ライダー 「くっ…」


ドクダリアンは足元に居る初春に向けて、死のスモッグのスプレーを向けた。
初春とドクダリアンの間合いが近い以上は、佐天はうかつな行動を取るわけには行かなかった。
隙を見て飛びかかろうとするも、近寄る前に死のスモッグのスプレーが初春を襲う。
思った以上のピンチに為す術が無いかに思われた。



ドクダリアン 「どうだ!動けまい…お前はこの小娘を助けたいらしいからねぇ!イィヒヒヒヒヒ!」

黒子 「あらあらまぁまぁ…なんとも下品な笑い声ですこと」シュン

ドクダリアン 「なに!?いつの間に!!!!!」

黒子 「申し訳ございませんが、初春を返して頂きますの」シュン


突如現れた黒子のテレポートにより、初春はドクダリアンとの間合いをとることが出来た。
あまりの事に面食らっているドクダリアンに電撃が浴びせられる。

バシシィィィィィィン!!!!


ドクダリアン 「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

美琴 「面食らっている暇なんて無いわよ!初春さんが受けた痛みは100兆倍にして返してやる!」

黒子 「お姉様、他の捕まっていた方々は?」

美琴 「アンチスキルが保護中、固法先輩が読んでくれたのよ」

佐天ライダー 「じゃぁ…いっちょやっちゃいますか!」

ドクダリアン 「うぅ…くそっ!!ゲルショッカー戦闘員!!!こいつらを殺せぇ!!!」


ドクダリアンの号令を受けて、どこからとも無くゲルショッカーの戦闘員が数十名現れた。
各自が各々に武器を持ち、4人を取り囲む。


美琴 「まったく…数を揃えりゃいいってもんじゃ無いでしょうに」

黒子 「ですわね…それじゃお姉様」

美琴 「うん、わかってる…佐天さん、露払いは私と黒子で引き受けるわ、佐天さんはあいつを倒してきちゃいなよ」

佐天 「え?でもそれじゃ…」

黒子 「これくらい、物の数でも無いですの、それよりもあそこに居らっしゃるおバカさんに、初春の痛み、私達の怒り…
    しっかりと叩き込んで下さいですの」

佐天ライダー 「…はい!初春のこと頼みます!」


戦闘員集団を飛び越えて佐天ライダーが逃げるドクダリアンを追いかけて行くのを確認すると、
美琴と黒子はゲルショッカー戦闘員の前に立ち塞がった。


イィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!


美琴 「イーイーうるさいってのよ!!!!この外道がぁぁぁぁぁ!」

黒子 「私達、只今絶賛ブチ切れ中ですの…覚悟なさいまし」


ビシャァァァァァァァァァァン!!!!!!




佐天ライダーの後方から凄まじい電撃音が聞こえてくる。
その音に後押しされるように、佐天ライダーは風を纏いさらなる加速でドクダリアンを追い詰めた。


佐天 「追いついた!!!ライダァ!!パーンチィ!!」


ズドドドォォ!


ドクダリアン 「ぐぎゃぁ!?」


後部から急に受けた衝撃にドクダリアンは苦悶の悲鳴を上げた。
衝撃がドクダリアンの体を吹き飛ばし壁を崩す、屋外まで吹き飛ばされた威力にドクダリアンは戦慄を覚えた。


佐天ライダー 「ゲルショッカーの怪人ドクダリアン!貴方の行なった非道の数々、この佐天ライダーが決して
          許さない!覚悟っ!!」

ドクダリアン 「おのれ佐天ライダー!!!この私がそう簡単にやられると思うなよ!!!ヒヒヒヒヒヒィ!」


ドクダリアンのムチが佐天ライダー目掛けて放たれる。

バシィ!


佐天ライダー 「きゃぁ!?…いったいなぁもぉ!!!」

ドクダリアン 「ば…ばかな!岩も砕く威力なんだぞ!?」

佐天ライダー 「今度はこっちの番!!!」


佐天ライダーは素早くドクダリアンの体に飛びつくと高々とジャンプした。
怪人を抱えているにもかかわらず、40M以上の跳躍に自分でもビックリしたと
思いつつも、ドクダリアンと体勢を入れ替える。


佐天 「くらえぇ!!!ライダー!!きりもみ!!シュゥーーーーート!」

ドクダリアン 「イィヒヒヒヒヒヒヒィィィィィィィィ!?」


地面へ高速で落下していくドクダリアン目掛けて佐天ライダーは照準を合わせる。
電光が輝き、突風が佐天ライダーの体を推し進める、右足に込められた力が点となり
一気に開放された。


佐天ライダー 「初春の痛み!!仲間をさらわれた私達の怒り!殺された人たちの無念!!私が引導を渡す!!!
          電光ぉーっ!!!!ライダァァァァァァ!!!キィィィィィィィィィィィィィィィィィック!」

ドクダリアン 「イヒィヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒイィ………」


落下中のドクダリアンを一筋の光が貫いた。
直後、辺りに響く爆発音と共に人喰い花ドクダリアンは消滅した。




?? 「ふーん…あれが噂のなんとかライダーねぇ中々強そうじゃない」

?? 「仮面ライダーですよ、超街で噂になってます」

?? 「どんな相手でも私達の敵じゃないってわけよ」

?? 「…あ…南南西から信号が来ている…」

?? 「おい!例の毒ビン回収したぞ!!」

?? 「あぁ?じゃぁさっさと車を回せよ、早く帰ってシャワー浴びたいのよ」


ドクダリアンを倒した佐天ライダーは急いでドクダリアンが陣取っていたアジトへ引き返すと
そこは既にアンチスキルが制圧を完了していた。

佐天ライダー 「初春!!」

初春 「佐天さん!!!」

佐天ライダー 「良かったよ初春ぅ無事でさぁ、もう…心配したよぉ」シクシク…

初春 「ありがとうございます助けてくれてぇ、信じてましたぁ…」ウエーン

黒子 「私達が着くまで、よく頑張ったですの」

美琴 「ところで佐天さん…首尾は?」

佐天ライダー 「あ、きっちり叩き込んでおきました!」

美琴 「ん、ありがと、それを聞いてスッキリしたわ」

黒子 「じゃぁ帰りましょうか…固法先輩も待っているでしょうし」

佐天ライダー 「あ、じゃぁ今日の帰り、初春生還記念パーティーしましょう!」

初春 「もう…佐天さんってば!本当に怖かったんですからね!」

美琴 「ほらほら、歩く歩く!」

佐天・初春 「はぁい…」

黒子 【本当…よく無事にいてくれましたですの…初春…】ホロリ…


親友である初春飾利をさらった怪人ドクダリアンを倒し、無事に救出した佐天ライダー!
彼女を遠巻きに監視する5人の影!彼らは一体何者だろうか!?更なる戦いの嵐が
佐天涙子の身に降りかかる!闘え!佐天ライダー!負けるな!佐天ライダー!!!


次回につづく。

あらーしーとともーにーやってーキタ━(゚∀゚)━!
だれだ!誰だ!陰謀蹴散らす女子中学生~♪


お盆は暇でたまりませぬ!!!
今日の夜かまた明日にでも!!!



>>36

死神博士→イカデビル→インデックス…


チョットジジィに告白してくる!ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ

中学生がバイクに乗るな!自転車にしなさい!
それにしても志郎が佐天さんの後輩になるのかー。これじゃV3じゃなくてV4だな。

自転車乗ったらそれこそ少年仮面ライダー隊だな


         『佐天ライダー』佐天涙子は改造人間である!

       ゲルショッカーの魔の手により重症を追った佐天は

    本郷猛、冥土返しの改造手術を受け佐天ライダーとして蘇った!



     第X話『 誕生!新たなるニューマシン
               対ゲルショッカー部隊所属 『絹旗最愛』 登場 』 


授業が終わった放課後、今日も佐天と初春はジャッジメントライダー隊本部へ向かうため
陽が傾き始めた通りを歩いていた。
外の世界に比べると、ここ学園都市ではテスタメントによる刷り込みの学習法もあってか
比較的早い時間の下校なのだろうか、陽が傾いたと言っても比較的早い時間だった。


佐天 「あー!今日もつっかれたなぁ…こんな時は初春のスカートを捲りたい気分になるね!」

初春 「授業疲れは認めますが、スカートを捲られる気分にはなりませんよ?佐天さん♪」ニコッ

佐天 「初春…目が怖い…」ジワッ

初春 「佐天さんが不穏な事を言うからです」プンスカ

初春 「にしても…ドクダリアンの事件からここしばらく、ゲルショッカーの活動が小規模に
    限定されているのが少し気になりますね」

佐天 「うん…あのブラック将軍がこんなので済ますとは思えないから注意しなきゃね…
    でも、最近のヤツラの襲撃範囲が広いのがね…今のままじゃカバーしきれないし…」ハァ

初春 「で…でも、各学区のアンチスキルやジャッジメントが現状では対処してくれてますし」

佐天 「うん…」

初春 「噂ですが、対ゲルショッカー部隊というのも作られたと聞きます!佐天さんが全部を背負う
    必要はないですよ!だから気に病む必要はないです!佐天さん頑張ってるじゃないですか!」

佐天 「そうだね…うん!ありがと!初春♪」バサァ

初春 「ってなんでスカートめくるんですかぁ!?」

佐天 「にしてもさぁ…私も固法先輩みたいにオートバイでも有ればなぁ」

初春 「佐天さん…オートバイが有っても年齢でOUTですよ?」

佐天 「初春は固いなぁ…行き遅れるよ?遅れたら私が嫁にもらうよ?」

初春 「ちょっ!?…な…何言ってるんですかぁ!」セキメン


美琴と黒子が声をかけるタイミングを掴めなかったのか、遠巻きにその様子を見ていた。
むしろ、二人のイチャラブっぷりに美琴は少々当てられているが、黒子はむしろ羨ましそうな
感じだった。


黒子 「お姉様……」

美琴 「…一生、親友でいましょうね?」

黒子 「」シクシク


何だかんだ言っても四人は合流し177支部へ到着した。
ふと入口前で巨大な木箱を4~50代ほどの中年男性がトラックから荷降ろししているのが見える。
宙吊りになっている木箱には、デカデカと『立花レーシングチーム』と印が入っていた。



黒子 「な…なんですの…あれ」

初春 「ちょっとしたサーバーマシンが二台くらい入る箱ですねぇ」

黒子 「にしても…出入口前に荷降ろしされたら邪魔ですの…もう」プンスカ

美琴 「まぁまぁ、あのオジサンも仕事でやってるんだから」

佐天 「そうですよ?短期は損気って言うじゃないですかぁ」

黒子 「お姉様と佐天さんがそう言われるなら…にしても佐天さん…なんかBBA臭のするセリフですの…」

佐天 「ひどっ!?白井さんひどっ!?」ガーン

?? 「あぁ、お嬢ちゃん達、すまないねぇチョット場所借りてるよ」

黒子 「どうぞお構いなく」スタスタ


そっけない挨拶とともに、黒子はさっさと177支部に入っていってしまった。
男性に対しては本当に興味が無いんだろうか、そっけなさ過ぎて気まずさすら感じそうになる。
フォローを入れなきゃという必要性に駆られた三人は、必要以上の愛想を振りまきながら支部の
中に入るのだった。


初春 「もう、白井さん!ダメですよ?あんな態度!」プンスカ

黒子 「と、申されましても、別に私は普通に接しただけですの」

佐天 「いやいやいや、それ白井さんの中の普通で、傍から見たら「えぇ~」って感じですよ?」

黒子 「えぇ~…」

佐天 【あっ…ちょっとカッチーンと来そう…】(#^ω^)

美琴 「まったく相変わらずね黒子は…」ハァ

黒子 「お…お姉様まで…な…なんですの一体…」


そんな会話をしながら部屋の扉を開けると、固法が書類の確認と何かの手続きを行っていた。
四人は挨拶をして部屋の中に入ると固法は佐天に一枚の書類を手渡す。
佐天は書類を受け取って目を通し始めた。


固法 「佐天さん、この書類に目を通してサインしといてね」

佐天 「?…なんですかこの書類?」

初春 「失礼します、えっと?…とくしゅそうびじゅりょうしょ?…え?特殊装備受領書!?」ビックリ

美琴 「えぇ!?佐天さん専用の装備!?」ワクワク

黒子 「チョット興味がありますの!」ドキドキ

佐天 「特殊装備…な…なんか仰々しくて実感ないなぁ…」ウキウキ


佐天は書類に目を通すと、特殊装備の納品者欄に『本郷猛/立花藤兵衛』の二人の名前が並んでいるのに気がつく。
本郷猛は佐天にとっては命の恩人で師匠とも呼べる存在だが、立花藤兵衛という名前に心当たりが無かった。
この人も仮面ライダーだろうか、佐天の頭の中には色々な想像が駆け巡る。


佐天 「あの!固法先輩…この立花藤兵衛さんって方なんですけど…」

固法 「ん?…さっき下で会ったでしょ?」

佐天 「え?…」

初春 「はい?…」

黒子 【(゚д゚lll)】サーッ…

美琴 「黒子…あんたあとで謝っときなさいよ…」アチャー

固法 「?」

事のいきさつを聞いて、黒子は固法に大目玉を食らわされたのは言うまでもなかった。



立花 「いやぁ、悪いねぇ、お茶を頂いちゃって」

固法 「いえ、うちの白井が大変失礼な態度をとって…」

黒子 「申し訳ありませんの…」(´・ω・`)

立花 「いやいや、最初は嫌われたかと思っちゃったよ」ニッコリ

黒子 「」メソメソ

立花 「あぁ、そんなつもりで言った訳じゃ無いんだ、まぁ見ず知らずのオジサンが居たら仕方がない
     と思うしねぇ、黒子ちゃんだっけ?黒子ちゃんは全然悪くないよ」


幼気な少女(?)を自分が泣かせているようなバツの悪さを感じた立花は、さっさと話題を
次へ移してしまおうと考えると、お茶が入った湯のみをテーブルに置いた。


立花 「えっと、佐天涙子ちゃんは~」

佐天 「あ、はい!私です!佐天涙子といいまーす!」

立花 「君が佐天涙子ちゃんか、猛から話は聞いてるが…まさか女の子が仮面ライダーになるとはなぁ」

佐天 「いやぁ、私もびっくりしました」

初春 「でも佐天さんって、率先してゲルショッカーと戦ってますよね、あ、私は初春飾利と申します」

美琴 「御坂美琴です。佐天さん、何度もゲルショッカーから学園都市を守ってるんですよ」ニッコリ

立花 「えっと、飾利ちゃんに美琴ちゃん、黒子ちゃんに美偉ちゃんか、改めてよろしく、立花藤兵衛だ」

固法 「み…みぃちゃん!?…」

佐天 【猫ちゃんみたいで可愛いなぁ】ニヤニヤ

初春 【猫ちゃんみたいで可愛いかも】ニヤニヤ

美琴 【猫ちゃんみたいで可愛いわね】ニヤニヤ

黒子 【猫ちゃんみたいで可愛いですの】ニヤニヤ

立花 「おっとすまない、『固法さん』の方がよかったかなぁ?」

固法 「…あっいえ…美偉ちゃんで…いいです」テレテレ

黒子 「デレましたの…」


先ほど受け取った書類を佐天はテーブルにおいて『特殊装備』の欄を指さした。
書かれている内容は『特殊装備』とだけしか書いて無く、その内容は判らないのだった。


佐天 「あのぉ…立花さん、この特殊装備なんですけど、内容の欄が空白で何か判らないんですが…」

初春 「あ、本当だ…これ、何か判りませんね」

立花 「お、それじゃぁ早速お披露目と行きますか!涙子くん、皆もちょっと下に降りてくれるかな?」

固法 「そうですね、私も少し楽しみですし」ウフフ♪

黒子 「はて…佐天さんの装備なのに、なぜ固法先輩が嬉しそうな顔をしているのでしょう?」

美琴 「さぁ?…まぁとりあえず付いて行きましょ」


五人は立花に着いて行くように、177支部の出入口前に集合した。
そこには例の木箱が鎮座している。



立花 「猛と話した結果、やはり仮面ライダーに必要不可欠な装備はアレしかないとなってね」

佐天 「こ…これは!!」

初春 「うわぁ…ピッカピカですね~」

黒子 「固法先輩…これ問題ありませんの?」

固法 「ん~アンチスキルとジャッジメント本部からは特例としてOKを貰ったわよ♪」

美琴 「特権使い放題ね…まぁ…確かにライダーを名乗るなら必要と思うけど」


立花は器用に木箱を解体していくと、中から1台のオートバイがその姿を表した。
1960年台にから現代に至るまで、とあるメーカーは『赤』を基調としている。
そのメーカーの名は『HONDA』真紅のホンダカラーを纏ったそのオートバイは
比較的小柄ながらも、不釣り合いなパワーを秘めているのが感じ取れた。


立花 「HONDA製CB350F…通称サンハンフォア、エンジンは空冷4サイクルOHCバーチカルツイン
    立花スペシャルだぁ!ははは!素直で扱いやすいマシンだぞ」ニヤリ

佐天 「はぁぁぁ…これ…可愛いです!!」

黒子 【佐天さんの顔を見ていたら…なんとなく古臭いとは言い出せませんの…】

固法 「バケヨンとも呼ばれているホンダの名作機…このスッとしたフォルムが…」ウットリ

美琴 「へぇ~中々速そうじゃない」

初春 「えっと…CB400に比べるとその人気は低く…」ピッポッパ…

固法 【…花…毟ってやろうかしら…】


立花に促され、佐天は恐る恐るオートバイに跨った。
前に固法のZ1000MKⅡに跨った時とは違う感覚が佐天の中に流れる。


立花 「涙子ちゃんもライダーなら運転は分かるだろ?慣らしは終わってるから、
    少し流してきたらどうだい?」

固法 「あ、それじゃぁ私が先導します、佐天さん、腕章つけてね」

佐天 「はい!それじゃぁ皆さん、ちょっと行ってきますね♪」

黒子 「気をつけて行ってらっしゃいませ」

美琴 「ぬぅ…なんとなく羨ましいかも…。」

初春 「じゃぁ私は、お茶の準備でもしますね立花さんもどうぞ」

佐天 【あれ!?初春はあまり興味ない!?】(´・ω・`)


佐天と固法が走り去るのを見送ると、初春は一足先にお茶の準備と称して戻っていった。


立花 「うん…いい音だぁ、調整はバッチリみたいだな」

黒子 「違いが判りませんの…ああいう物の音は同じ様な物ではないのですか?」

美琴 「あぁ~…チョット私も区別がわからないです…ハイ…」

立花 「ん~まぁ、やはりマシンによって音も違うんだなぁ、人間のようにマシンも
    調子の善し悪しがあってねぇ、排気音で結構分かるもんなんだよ」

黒子 「そんなものなんですのねぇ…」


多分、この様な話は男の子の方が興味が有るんだろうなぁと美琴は出かかった言葉を
そっと飲み込んだ。



固法は佐天に合わせるように速度を抑えつつ、先導するつもりだった。
しかし、佐天の駆るオートバイはその排気量以上のパワーで迫ってくる。


固法 「な…なんなのあのバケヨン!こっちはリッターマシンなのに余力を残して付いて来る!」

佐天 「は…早いぃ…でも…不思議とコケる気がしない…これもライダーの力なのかなぁ…」


固法は左ウインカーを出すと、佐天に無線で停車の合図を送った。


固法 「早いわねこのバケヨン…本当にサンハンフォア?」

佐天 「え?これそんなに凄いんですか?」

固法 「えぇ、私のオートバイは1015CCの排気量がある所謂リッターマシンなの、乗りこなせば
     350CCにケツ…もとい、後ろを突かれることは無いんだけどね~」

固法 「貴方のバケヨンは明らかにリッターマシンを超える排気量を持っているわ、ライダーの
     力なのかしら、コーナーもプロレーサー顔負けで曲がり切るし」

佐天 「あっはい、確かにバイクの操作方法に関しては頭に浮かんでくるんですけど、考える前に
     体が動くというか、手足のみたいに感じ取れるというか」

固法 「まったく…凄まじいわね佐天さんの力、頼もしすぎるわ」コツン

佐天 「えへへへへぇ~」ニコニコ

?? 「と…、話も纏まったみたいなので超少しいいですか?お二人さん」

佐天・固法 「!?」バッ


二人の視線の先には、パーカーを被った少女が一人立っていた。
何よりも二人が驚いたのは、少女が一切の気配を感じ取らせず、手の届く範囲に近寄られたことに有る。
ジャッジメントとして幾度と無く実戦を経験した固法はもとより、ライダーの知覚力を持っている佐天も
この少女に気づくことが出来なかった。


?? 「あぁ、そんなに警戒しなくても、超危害を加えるつもりは無いです」

固法 「…そうね…ところで貴方は?」

絹旗 「これは、失礼しました。私は絹旗…絹旗最愛といいます。
     貴女達は噂のジャッジメントライダー隊ですね?」

佐天 「そう…だけど、何か用でもあるんですか?」

絹旗 「用といえば…まぁ用みたいなものですね、警告をしに来ました」

固法 「警告…貴女は一体何者なの?場合によっては拘束させてもらうけど」ザッ


不穏な空気を出す少女に対し、固法は対応できるように構えをとる。
絹旗は小さくため息をつきながら、背中を向けた。


絹旗 「まぁ、貴女達のご同業ってところです。」

佐天 「私達と…同じ?」

絹旗 「…ゲルショッカーの件ですが…余計な手出しは無用です。
     正直、貴方達は超邪魔ですんで、大人しく見物してて下さい。」

固法 「何をっ!!馬鹿も休み休み言いなさい!!!!」


絹旗は面倒くさそうにため息をつくと、そのまま人混みに向かって歩き始める。


佐天 「まっ…待って下さい!…あなた達は…何者なの!!」

絹旗 「…統括理事会直属…対ゲルショッカー掃討部隊…『アイテム』ですよ、
     以前は『暗部』と言われてましたがね」



そう告げると絹旗という少女は人混みに紛れてその場から姿を消した。
佐天と固法はしばらくその場から動くことが出来なかった。


しばらくして、佐天と固法は177支部に戻ってきた。
心なしか、二人の表情は暗い、業を煮やした美琴が二人に問い詰めた。


美琴 「佐天さん固法先輩、一体何が有ったんですか?」

立花 「あれ?…もしかしてマシンになにか不具合でも…あったかな?」

佐天 「あ…いえ、オートバイは最高でした、ただ…。」

黒子 「固法先輩も佐天さんも何を抱え込んでいるのか存じませんが、私達は
    仲間でしょうに…隠し事は行けませんの…それともまさか…まさかっ!?」テレーン…

佐天 「あ、そうゆうのは一切無いんで、私は初春一筋ですし」

黒子 「あ…そうですの…」

初春 「…ん?」

固法 「そうね…隠す必要はないわ…」


固法は『対ゲルショッカー部隊』のこと、絹旗最愛のこと、を皆に掻い摘んで話をした。
その中でも「高みの見物していろ」と言われたことに対して、美琴が明らかに機嫌を
悪くしている。


黒子 「お…お姉様…そんな気にするほどでも…」

美琴 「私はぜんっぜん!気にしてないわよぉ~チョット腹の虫がおさまらないだけで」パリッ

佐天 「うわぁ…怒ってますね御坂さん…」

立花 「…すごい迫力だなぁ…本当に中学生の女の子?」

固法 「歳相応の…と言いたいんですけどね…彼女はこの学園都市で第三位の能力者なんです」

立花 「たまげたなぁ、猛の言っていたことは嘘じゃなかったのかぁ…」

初春 「にしても、そのアイテムって部隊は何故私達との協調路線を取らずに居るんでしょうか?」

佐天 「確かに…だって、仲間は多いほうが効率の良い戦いが展開できますし」

美琴 「単なるコミュ症集団じゃないの?」プンスカ

黒子 「お姉様…ゴホン…そんなの決まってますの…」

固法 「白井さん、なにか思い当たる節があるの?」


黒子はアンチスキルが回収したドクダリアンの毒瓶を例に上げ、その部隊はゲルショッカーの殲滅の前に
ゲルショッカーの独自技術の獲得のためだけに動いていると推測していた。


黒子 「アンチスキルからの情報では、ドクダリアンのあの毒瓶ですが、あの中に入っていた粉を一摘みほど、
    100ccの水溶液に溶かした場合…」

美琴 「溶かした場合…?」

黒子 「一滴で約100人を致死に至らしめる殺傷能力が有るのが判明しましたの…」

佐天・美琴・初春 「!?」ザワ…

初春 「ほ…本当なんですか…」

固法 「本当よ…そして、それだけの殺傷能力を持つBC兵器なんて、学園都市の技術でも製造は困難だそうよ」


ゲルショッカーの恐ろしさを改めて再確認されられる瞬間だった。
もし、あの毒を霧状にして学園都市の上空から散布された場合、数十万人規模での死傷者が出たかもしれない。
そして、ゲルショッカーは躊躇せず大虐殺を行うだろうと根拠のない確信があった。


美琴 「で…でも、あそこで精製された毒薬はアンチスキルがすべて押収したじゃない!」

佐天 「そ…そうですよ!その後然るべき手続きで研究者施設に渡せばいいだけで…」

立花 「まぁ、研究なんてものは表に見せて良い研究と見せちゃダメな研究ってのがあるからなぁ」

固法 「立花さん…随分と落ち着いてますね…結構重大なことですよ?」

立花 「重大なのは勿論わかってるよ、ただ、ショッカー…それにデストロン、GOD機関、ゲドン、
    ガランダー帝国、ブラックサタン、デルザー軍団と…」

立花 「私達も同じような手で来る悪の組織と何度も戦ってるんだ、はは、まぁ、手慣れたものさ」オチャズズー

佐天 「」

初春 「」

美琴 「」

固法 「」

黒子 「そ…外の世界では何が起こってますの…」ガクガク

立花 「まぁあれだな、表には記録を残さないようにゲルショッカーの技術だけを掠め盗りたいって考えが
    この学園都市の上層部にあるってことだぁな」

美琴 「……」


結論づけた様な立花の発言に対し、美琴は下を俯いたままだった。
美琴自信も『量産能力者計画』にDNAマップを提供したがために、自身のクローンを作られた苦い記憶がある。
学園都市の闇が、密かにゲルショッカーの技術の獲得に乗り出してもおかしくはなかった。




ピーッ!ピーッ!


『アンチスキルより連絡、学園都市第七学区セブンスミスト内にてゲルショッカーと思われる集団による傷害事件が発生!』


けたたましい警報と共に、緊急通信が飛び込んできた。
警報と同時に佐天、美琴、黒子の三人は177支部から飛び出していく。
初春と固法は情報の収集と分析に入った。


立花 「やぁ…手慣れたもんだねぇ、猛の言ったとおり、優秀な子達だ」


佐天は新たに受け取ったサンフォアのエンジンに火を入れ1~2度スロットルを回す。
呼応したエンジンは力強く唸り声を上げた。


佐天 「うん…よろしくね、じゃぁ行こっか!」

   

                          続く
   

                       
     頼もしいニューマシンを手に入れた佐天ライダー佐天涙子!

        セブンスミストを蹂躙するゲルショッカーの魔の手!

          謎の部隊『アイテム』とは一体何なのか!!

        闘え!佐天ライダー!負けるな!佐天ライダー
  


今回はここまでです!続きはまた週末にでも!!!


>>53

佐天さんはイレギュラーライダーなので、残念ながら栄光の昭和ライダーに含めることは出来ませぬ!


>>56

さすがにチャリンコは…やはりオートバイじゃないと…





      第X話『猛毒の発狂ガス!学園都市壊滅計画!』


佐天 「こ…これは…初春!状況を教えて!!」

初春 《それが…従業員や来場客のすべてが突然に発狂したみたいなんです!》

佐天 「ヒドい悪臭…ん…この臭いって…ガス!?」


セブンスミストに到着した佐天は、辺りの惨状に我を疑った。
そこで暴れていたのはゲルショッカーではなく、学園都市の住人だったのだ。
暴徒の集団は、老若男女構わず互いに殴りあっている。
負傷者も数多くとても少人数では手がつけられない状況だった。


佐天 「初春!状況ガス!しかもかなり強力なヤツだと思うけど…」

佐天 「とにかくアンチスキルに伝えて!生身での突入は危なすぎる!」

固法 「…ヤバイかも…」

初春 「え?…あっ!?」


固法と初春は、同じくセブンスミストに急行した美琴と黒子の安否を気遣う。
佐天から受けた報告からすると、万が一でもLevel5の『超電磁砲』御坂美琴が
周りの人間と同じように暴れ始めたらとんでもない被害が出る可能性がある。


初春 《佐天さん!御坂さんと白井さんが!!》

佐天 「…ひと足遅かったみたい…」


佐天の前には今にも飛びかかってきそうな勢いの美琴と、おそらくは美琴に倒されたのであろう
気を失った黒子の姿が見える、この惨状はゲルショッカーの仕業に間違いないだろうが、今現在は、
目の前の『超電磁砲』の方がある意味で強敵だった。


固法 「初春さん、周辺の監視カメラでゲルショッカーの姿は確認できる?」

初春 「いえ、どうやら既に撤退した後のようです、アンチスキルの除染部隊は間もなく到着します」

固法 「一般の人の避難、救助はアンチスキルに任せましょう…。」

初春 「問題は御坂さんですね、監視カメラで見る限り明らかに正気を失ってます。」

固法 《佐天さん、御坂さんを取り押さえることは出来る?》

佐天 《…判りません、正気を失っているとはいえ、level5の相手はこれが初めてですから》


固法は頭が痛くなるような感覚に襲われたと同時に、ゲルショッカーの恐ろしさを再確認する。
セブンスミスト内には少なくとも数百人から数千人の来場客が居るはずだった、それらの大半を
発狂させ、更にはジャッジメントライダー隊の誇るlevel5・level4の超能力者・大能力者の二人を
無力化、更には佐天さんの足止め…いやヘタすれば足止め以上の被害をうけるかもしれない状況に
追い込まれた、これもブラック将軍の策略だろうか。




固法 《佐天さん…なるべく怪我させないようにお願い…無茶なのは承知してるわ…》

佐天 「本当に無茶だなぁ…でも、このままだ…マズいよね!」

佐天 「御坂さん!正気に戻って下さい!!!」

御坂 「あ……あぁ……あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」バリバリバリ!

佐天 「だめか…御坂さん…ごめんなさい!!!ライダァァァァァ変っ身ッ!トゥ!」


相手を考えると佐天は最初から本気で事に当たるしか無かった。
変身したのは攻撃より耐久力を上げるために必要な行為だ、いくら何でも生身じゃ電撃に耐えられない。
変身することで、最悪、レールガンを食らっても死にはしないだろう、しかし、美琴自信の耐久力は歳相応だと
考えると、うかつに手を出すわけには行かなかった。


佐天ライダー 【最大出力10億ボルトの学園都市第三位…攻撃力パネェ、でも肉体は普通に女子中学生だもんね…】

佐天ライダー 【全力で攻撃する訳にはいかないし、さぁ困ったぞぉ…】ウーン


初春 「佐天さんの変身を確認!?」

固法 「相手は御坂さんよ、佐天さんも全力が必要と考えたんでしょう」

初春 「ですが…」

固法 「今は、佐天さんを信用しましょ…」


佐天は絶妙なヒットアンドアウェイ戦法で御坂を屋上へ誘導していた。
建物内だと救助を受けている人たちに被害が及ぶ可能性がある。
かと言って、建物の外に出てもそこは繁華街、人通りはそれなりにある、何よりもセブンスミスト前にはアンチスキルが
仮の救護所を構築していた。


佐天ライダー 「まさか途中で壁を抜いて、ロッククライミングのまね事をするなんて思わなかったなぁ…」

美琴 「…」パリ…

佐天ライダー 「…正気を失っているのに繊細に磁力を操って壁を登ってくるとか…御坂さんチートだよ…でも…」

美琴 「……うぁ…アァッァァァァ!」バリバリ!

佐天ライダー 「ここなら周りの被害は少ないよね!!!!ライダー!チョォォォップ!!!」



<<バシィィン!!!>>


佐天ライダー 「ぎゃん!?」


チョップが当たると思われた瞬間、佐天はおもいっきり弾き飛ばされた。
何が起こったのか一瞬わからなかったが、直ぐに美琴の自動防御だと理解する。
この時点で生半可な攻撃じゃlevel5には通じないと悟った。




チョップが当たると思われた瞬間、佐天はおもいっきり弾き飛ばされた。
何が起こったのか一瞬わからなかったが、直ぐに美琴の自動防御だと理解する。
この時点で生半可な攻撃じゃlevel5には通じないと悟った。


佐天ライダー 「いったーい…正気を失っているとはいえ、御坂さん容赦無いなぁ…」

御坂 「あが…ぎぃぃ…ざ…ざてんさん…にげ…」

佐天ライダー 「!?…正気を取り戻しかけている…それなら!ライダァァァファイトォォォォ!」


御坂の体に組み付いたその瞬間、佐天に大出力の電流が流された。
あまりの衝撃に一瞬で意識が刈り取られそうになるのをパワーを上昇させることにより耐えていた。


初春 《む…無茶です佐天さん!離れて下さい!!!》

佐天ライダー 「ご…ごめん…ね初春…私……バカだからこんな方法しか思い浮かばないや…」


佐天ライダー 「うぐぅぅぅぅぅぅぅぅ…み…御坂さん…少し我慢してくださいね…」

御坂 「」

佐天ライダー 「ライダァァァ…ハンマァァァせんぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


<<ヒュゴォォォォォォォォォォォォ>>


佐天は御坂を抱え込むと、風の力を乗せ高速回転を始めた。
10G近くの負荷が美琴に対し断続的にかかり始めてくる、数秒後、ブラックアウトを起こしたのか次第に
美琴の体から力が抜けて行くのを感じると、佐天は回転力を落とし、最終的には回転を停止させた。


佐天ライダー 「み…御坂さん…」

美琴 「……」スゥ…スゥ…

佐天ライダー 「良かった…気を失って…いる…だ…け…」バタリ

初春 《佐天さん…佐天さん!!》


急に意識が遠くなるのを感じた佐天は、その場に倒れてしまった。
モニタリングしていた初春と固法が直ぐに救護所のアンチスキルに連絡を入れる。
程なくして、佐天と美琴は救急車に収容された。



薄暗い部屋が物々しい雰囲気を醸し出している。
多数設置されたモニターの前に1人の男が座っていた。
男はその鋭い視線をモニターから外すと、概ね満足気に話し始めた。


ブラック将軍 「ふん…学園都市壊滅作戦のテストは上々のようだ…首領もお喜びになるだろう」

??? 「はっ!この猛毒の発狂ガスを使い、学園都市を恐怖の坩堝に貶めてやりましょう」

ブラック将軍 「この作戦に失敗は許されん…失敗したその時は貴様の死だ…」


ブラック将軍は再びモニターを見るとそこには1人の少女の姿が映っていた。


ブラック将軍 「クラゲウルフの落雷に耐え、ドクダリアンを倒したこの少女…佐天ライダーか…ふん…」

ブラック将軍 【忌々しい仮面ライダーが居ないと思いきや、この様な仮面ライダーがいるとはな…】


目を開けるとそこはいつか見た病室の天井だった。
佐天は状況を理解すると、起き上がって病室から出ようとする。


???「君はまだ、まだ動かないほうがいいね」


病室から出た瞬間、突如声をかけられた。
声のした方へ顔を向けると、いつぞやのカエル顔のお医者さんが立っていた。


佐天 「あ…お久しぶりです…」

医者 「うん、久しぶりだね佐天さん、活躍は聞いているよ」

佐天 「ははっ、ありがとうございます…ところで…」

医者 「大出力の電撃を食らった君も重症なのに、他人が気になるのかい?…ふむ、付いてきなさい」


佐天はカエル顔の医者の後をついていくと、『特別隔離病棟』と書れた施設へたどり着いた。
中からは呻き声や嗚咽などの様々な苦悶の声が聞こえてくるように感じ取れた。


医者 「…君の友達もこの中だよ、今なら引き返せるけど…」

佐天 「え?…」

医者 「あのガスは未知の猛毒物質でもあってね…発狂する上に徐々に体力を奪っていくんだ」

医者 「此処から先に行くのは、女の子には精神衛生上オススメは出来ないよ」

佐天 「…行きます…見ておかなきゃいけないと思うんで…」


佐天は特別隔離病棟へ足を踏み入れようとしたが、異様な雰囲気が後退りさせる。
心が折れるかと思った瞬間、後ろから声をかけられた。



初春 「佐天さん!」

固法 「まったく…水くさいじゃない…」

初春 「本当ですよ!私達仲間で親友じゃないですか!」

佐天 「固法先輩…初春…うん…そうだね、ありがと…」


佐天は再び意を決すると、初春、固法と共に特別隔離病棟へ足を踏み入れた。
そこで見たのは軽症者、重症者、重篤者とランクが分けられて各部屋に収容されている被害者達だった。
軽症といっても、発狂の危険性があるので、体を拘束されている状態である。


初春 「ひ…ひどい…」ウップ…

固法 「覚悟はしていたけど…これはちょっと来るわね…」

佐天 「あの…被害者の皆さんは大丈夫なんですか…」

医者 「さっきも言ったけど、未知の毒薬だからね、大丈夫とは言い切れないね」

佐天 「そ…そんな…」

医者 「ふむ…僕も『冥土帰し』と言われている意地があるからね、死なせはしないよ…ところで…」


冥土帰しはとある部屋で止まる。
そこには『重症者病室』と記載されていた。


医者 「さて、君達のお友達はここに居るよ」

佐天 「えっ…ここって…」

固法 「重症って…そんなに酷いんですか」

初春 「御坂さん…白井さん…」ウルッ

医者 「…どうするのかい?入るというなら鍵を開けるよ?」


三人は静寂に包まれた、佐天も固法もやはり怖気づいてしまったのだろうか、言葉が出てこない。
その状況を確認した冥土返しは、無理をする必要はないと言った。


初春 「いえ…入ります…」

佐天 「初春…」

固法 「初春さん…」

初春 「だって…ここまで来てお見舞いしないだなんて、白井さんに怒られそうじゃないですか」


その一言に佐天と固法は肩の荷が下りたように感じる。
三人は頷き冥土帰しに扉を開けるように頼んだ。



冥土帰しの後に三人は美琴と黒子が隔離されている部屋に入ると、特殊な機器を頭に装着された状態で
手足をベットに拘束されている二人が、寝息を立てて居る、鎮静剤が聞いているのだろうか、苦悶の表情はない。
寝顔だけを見ていると、発狂者とは思えないくらいに整った顔立ちだった。


医者 「申し訳ないとは思うけど、大能力者と超能力者に暴れられると厄介だからね…」

初春 「能力を抑える機械を付けて、眠らせてるんですね…」

固法 「最善ね、確かに御坂さんと白井さんが好き勝手に暴れると、手がつけられないもの」

佐天 「二人共…その…怪我とかは…」


佐天は自分が眠らせた美琴の安否を気遣った。
緊急事態とはいえ、ライダーの力で対応した以上は美琴に何らかの怪我が残っていてもおかしくはない、
重大な障害が残る可能性に怯えていた。


医者 「あぁ、そうだね…特に怪我はないと言えるし、怪我をしても僕が治すから問題ないよ」

佐天 「そうですか…良かった…といっていいのかな」ハハ…

医者 「ただ問題は、何度も言っているけど毒物の方だね」

初春 「あの!手伝えることが有れば言って下さい!!」

固法 「えぇ、私も…ううん、ジャッジメントライダー隊全員が手伝わせていただきます!」

医者 「そうだね…じゃぁ…」


冥土帰しの答えは「これ以上の被害者を増やさないように尽力してくれ」との事だった。
恐らく専門技術が必要なんだろう、現時点での手伝いは邪魔以外の何者でもないかもしれない、
それならばこれ以上の被害を防ぐことに専念することにした。


医者 「あぁ、佐天くんは今日まで入院だからね、君、病院着で帰るつもりかい?」

佐天 「あっ…そうだった」


翌日、退院した佐天はそのまま177支部に行くことにした。
セブンスミストの件もあって、第7学区では警備員による大規模な警備体制が取られている。
学校は臨時休校になっていた。


佐天 「こんにちわ~」

初春 「あっ佐天さん!病院から直接来たんですか?」

佐天 「うん!早く初春の顔を見たくてね!」

初春 「もー、何言ってるんですかぁ」

固法 「まったく、お熱いことねぇ」

黄泉川 「まったくじゃん…」

佐天 「!?」ビックリ

黄泉川 「よっ!久しぶりじゃん♪」

佐天 「お…お久しぶりです。えっと…」

黄泉川 「こぉらぁ、先生の名前を忘れるのは感心しないじゃん、『黄泉川愛穂』じゃんよぉ」

佐天 「す…すいません!」

黄泉川 「まぁ、気にしないじゃん、今は先生って言うよりアンチスキルの黄泉川として来ているじゃん」



黄泉川の話に場は重い空気を醸し出すことになる。
アンチスキルはゲルショッカーに対し、問答無用での射殺の方針をとったと伝えたのだ。


黄泉川 「ライダーの力があってジャッジメント所属といっても…此処から先はもう戦場じゃんよ…」

黄泉川 「いくら何でも戦場に子供を連れて行く事は…流石にできないじゃん…だから…」

佐天 「な…納得できません!」

黄泉川 「セブンスミスト件が引き金じゃん、アレでゲルショッカーは危険過ぎると判断したじゃん」

初春 「でも、能力者無しでゲルショッカーの相手は、正直無謀だと思います」

黄泉川 「…相手は怪人とはいえ、殺すことになるじゃんよ…いくら何でも子供に任せられないじゃん」

佐天 「…てます…」

黄泉川 「ん?」

佐天 「私…もう怪人を1人倒してます…爆散したんであれは死んだと思います…」

佐天 「でも…私は後悔してません…あの襲撃で本来なら死んじゃった命を救われた結果、この力を得たなら…」

佐天 「私は…この力で目に映るすべての人をゲルショッカーの手から守るために戦います!」

初春 「佐天さん…」

固法 「…黄泉川先生…申し訳ないですけど…」


黄泉川は、佐天の目尻に涙が浮かんでいるのに気が付いた。
お節介と言うよりは有難迷惑と自覚した以上は、もう何も言うまいと溜息を付いた。


黄泉川 「おーけい…そこまで決意が固いなら仕方ないじゃんよ」

佐天 「すいません!せっかくのご好意を…こんな形で」

初春 「私も!一生懸命に佐天さんを支えます!ですから…すいません」

固法 「ふぅ…黄泉川先生、私もジャッジメントとして、学園都市の危機は見過ごせません…」

黄泉川 「あーあー!わかったじゃん悪かったじゃん!だから三人ともそんな攻めるような目で見るな!」

黄泉川 【まったくもう…揃いもそろってワルガキじゃんよ…でも…まぁ私が同じ立場ならなぁ…】クス…


黄泉川は三人に無茶はしないようにと伝えると、そのままアンチスキルの仕事へ戻ろうとした。
177支部から出ようとした瞬間、突然呼び止められたかと思うと、佐天にパトロールの同行を
お願いされたのに面を喰らった気持ちになる。


佐天 「すみません黄泉川先生、突然こんなことをお願いして」

黄泉川 「いいってことよぅ、若者への指導も教師の努めじゃん♪」

黄泉川 「それに、これからもジャッジメントを続けるならパトロールのイロハは必要になるじゃん」

佐天 「はい!ご指導をよろしくお願いします!」

黄泉川 「おぉ?素直じゃんよ?よし!ビッシビシ仕込むから覚悟するじゃん!」



黄泉川は佐天に対し、パトロールで注意すべき点から意外と知られてない秘密の路地裏的なところまで丁寧に
教えたが、さすがの黄泉川も普通はスキルアウトとかのアウトローな人種しか使わない道を佐天が既に把握し、
しかも常用しているという事実を聞いて逆に驚かされたりした。


黄泉川 「うら若き女子中学生が…なんちゅう道を使ってるじゃん…ってか、今までよく無事だったじゃん…」

佐天 「えへへ~…そんなに褒められても何も出ませんよ?」

黄泉川 「いや、褒めてないから…むしろ呆れてるじゃん…」

黄泉川 「あー、教師として注意指導するじゃん…人通りの少ない道はさけろ!」

佐天 「は…はい!」

黄泉川 「もっとも…今はその腕章の誇りにかけて路地裏もパトロールするじゃん」

佐天 「はい!後、常に緊急連絡できるように!ですね」

黄泉川 「おぉ!わかってるじゃ!?…あぶない!!」


黄泉川は咄嗟に佐天の体に飛びつくと、そのまま一緒に転げるように緊急回避を行った。
突然の出来事に佐天は吃驚してしまったが、直ぐに状況を把握する。
その目の前には明らかに異形の怪人が立っていた。


佐天 「っ…何者なの!!」

???「ヴェェェェ!佐天ライダー!ブラック将軍の命令でこのイノカブトンが貴様を殺す!」

黄泉川 「こ…これが…ゲルショッカーの怪人…想像以上じゃん…」

佐天 「黄泉川先生は応援を…ゲルショッカーの怪人が居るなら…戦闘員も近くに展開してます!」

黄泉川 「わ…わかったじゃん!」


病院では未だに美琴と黒子が生死の境をさまよっていた。
発狂は収まっているが、猛毒による苦痛が二人を苦しめていた。


美琴 「こ…こんなので…うっ…くろ…こ…」

黒子 「おねぇ…さま…くろこ…は…大丈夫…です…づっぅぅぅ…」

美琴 「くろ…こ…無茶…いうけど…お願…い…」


美琴は黒子に頼み事を言うと、固定されているベットから片腕を抜いた。
頭に装着されている能力抑制の機械を取り外すと一気に拘束具を破壊する。


美琴 「ごめん…くろこ…」

黒子 「無茶は…いつものことですの…大丈夫…耐えれますの…」


美琴は黒子の頭に装着されている機械を取り外した瞬間、風景が一変した。
黒子のテレポート能力により病院の外へ出ると、持ちだしている個人端末を使い佐天の居場所を把握する。


美琴 「このコールは…怪人と…行かなきゃ…」


おぼつかない足取りで美琴は佐天の居場所へ向かっていった。



イノカブトン 「佐天ライダー!貴様のような小娘が仮面ライダーとてようしゃはせんぞヴェェェェェ!!」

佐天 「答えて!貴方が毒ガスの犯人なの!?」

イノカブトン 「如何にも!ゲルショッカー大幹部のブラック将軍が考えた学園都市壊滅計画のテストだったのだ!」

イノカブトン 「ヴェェェェェェ!思い残すこともあるまい!死ねぇぇぇぇ!!!!」

佐天 「えっ!?きゃぁ!!!」


イノカブトンの突進を間一髪避けると、佐天はその突進の恐ろしさに青い顔になる。
突進の威力かイノカブトンのツノが鋭いのか、分厚いコンクリートの壁が深く抉れていた。
佐天はあのツノが実は対ライダーの秘密兵器ではと一瞬考えた。


黄泉川 「喰らうじゃんよ!!」パンパン!


鋭い発射音がしたと思ったら、黄泉川が拳銃を数発イノカブトンに向けて発射した。
しかし、イノカブトンは気にもしないで佐天に目掛けて黄色い粉を吐く。
佐天はその粉を間一髪避けると、この粉の発する臭いがセブンスミストでの悪臭と
同じ事に気がついた。


佐天 「黄泉川先生!吸わないで!あの発狂ガスです!!」

黄泉川 「わかったじゃんよ!!…っ!?」

イノカブトン 「よく気づいたな…だが!女二人でこの包囲から抜けれるかなぁ?ヴェェェェ!」


ガスに気を取られた間に、ゲルショッカーの戦闘員に周りが包囲されていた。
黄泉川もアンチスキルの精鋭、一人二人の戦闘員なら何とでも出来る自信はあったが、流石にに二十名以上の
戦闘員をくぐり抜ける自信は無い、多勢に無勢と感じた。


佐天 「それが…そこまでピンチには感じないんだよねー!」


             ライダァァァァァァァァァ!!!へぇぇぇぇんしんっ!!!!!

              シュピィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!


眩い光が収まると、イノカブトンの目の前には『佐天ライダー』が居た。
佐天は変身後の一瞬の隙を突いてゲルショッカー戦闘員の大半を無力化する。
黄泉川がこの一連の出来事を把握するのに時間はかからなかった。


イノカブトン 「ぐぅ!?おのれぇぇぇぇ!!!」

佐天ライダー 「黄泉川先生!今のうちに」

黄泉川 「あ…あぁ!わかったじゃん!!!おらっ!」ドカッ!


佐天の合図で黄泉川は包囲の一角を崩し戦闘員の囲いから抜けだすと、まだ弾が残っている拳銃で数人の戦闘員を
無力化する、射殺許可が出ているにもかかわらず黄泉川は戦闘員の膝だけを撃ちぬいていた。



黄泉川 「これで死にはしないじゃんよ…」

佐天 「さぁ!怪人イノカブトン!形勢逆転ね!覚悟しなさい!」

イノカブトン 「馬鹿め!くらえぇぇぇぇ!!!ヴェェェェ!!!!」


<<ザクゥ!!>>


佐天は構えるとそのままイノカブトンに対し跳びかかっていく。
その行為が佐天にとっては最大のミスになった。
イノカブトンは佐天の繰り出した拳を避けるとそのツノで佐天の右肩口を貫き
そのまま吊り上げる。


佐天 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!」

イノカブトン 「ヴェェェェ…いい悲鳴だ…これで右腕は使えまい…」

黄泉川 「くっ!!!私の生徒を放すじゃん!!」


<<バシィ!>>


黄泉川 「あぁ!?」

イノカブトン 「後でたっぷり可愛がってやる!そこで大人しくしてろ!ヴェェェェ」


イノカブトンのツノを伝わり、佐天の肩口から流れ出る血液がイノカブトンを鮮血に染めていく。
ツノの特性だろうか、本来ならば直ぐに止まる出血が収まる気配は無い、それどころか出血の規模は
徐々に大きくなっていく。


佐天 「うぅ…い…痛いよ…苦しい…」

黄泉川 「く……このままじゃ…」

イノカブトン 「何人来ても無駄だ!ヴェェェェ!」

佐天 【くそぉ…せっかく守る力があるのに…こんなので…本郷さん…】


<<ズババババババァァァ!!!!>>


突如放たれた電撃がイノカブトンから佐天を弾き飛ばした。
衝撃に一瞬気を失いかけるが、何とか踏みとどまって立ち上がると目線の先に美琴が立っていた。
その顔は明らかに生気を失っているのが遠目に見ても感じ取れた。


佐天 「御坂…さん……何故…ここに」

美琴 「」フラ…


<<バジィン!!!>>


佐天に向けて再び電撃が放たれるが、狙いが定まらないのか手前に着弾した。
当たらないのを悟ったのか、美琴は電撃から砂鉄の剣に攻撃の手段を変化させる。
佐天はふらつく足を踏ん張り立ち上がるが、逃げるにしろ戦うにしろ分が悪かった。





イノカブトン 「ふふふ…その小娘は俺のガスを食らって頭がやられたのか、俺の言いなりだ!!ヴェェェェ!」

佐天 「御坂さん…」

美琴 「」


今度こそ明確に死のビジョンが浮かんだような気がした。
佐天は最後の力を振り絞り、イノカブトンへ一撃を与えようと構えたが、意外な光景が目に飛び込んだ。


美琴 「な…なめんじゃ…ないわよぉぉぉぉぉ!!!」ズバァ

イノカブトン 「!?ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」


美琴の放った渾身の一撃はイノカブトンのツノを叩き斬った。
突如襲った激痛にイノカブトンは悶えるが、体制をすぐに立て直すと美琴を弾き飛ばした。


美琴 「づぅ…」

イノカブトン 「ヴェェェェ!?おのれ貴様!裏切るかぁ!」

美琴 「最初…っから…あんたの…仲間に…なってない…わよ…」

イノカブトン 「死にぞこないめ!!!死ねぇェェェ!!!!」

美琴 「残念……くたばるのは…貴方よ…」

イノカブトン 「ヴェェェェ!?なにぃ!?」


イノカブトンが目を話した瞬間、佐天は残る力をすべてつぎ込んで跳躍をしていた。
狙うはイノカブトンの胴体、イノカブトンは己の犯したミスに気が付き振り向いた瞬間
その行為を悔やむ暇なく佐天の渾身の一撃にさらされた。


佐天 「ライダァァァァァァ!!!!!キィィィィィィィィィィィィィィック!!!」

イノカブトン 「ヴェェェェェェェェ!!!!…」


上空から斜め下に打ち込まれたライダーキックにより、イノカブトンは地面にめり込む。
佐天は着地と同時に美琴の体を抱え込みその場から飛び退いた瞬間、イノカブトンは
轟音とともに爆発した。


佐天 「御坂さん…御坂さん!」

美琴 「大丈夫…大丈夫よ…こんなの…寝てたら…治る…か…ら」

黄泉川 「動いちゃだめじゃん!佐天も止血するじゃんよ!」


黄泉川が呼んだアンチスキルの応援がようやく到着する。
その場で応急処置を受けた後、病院へ運ばれることになった。



冥土帰し 「まったく、超電磁砲のお嬢さんも君も、無茶ばかりするね…」

佐天 「あの…御坂さんは…」

冥土帰し 「また他人の心配かい?大丈夫だ、毒の成分の解析も済んだし直ぐに回復するよ」

佐天 「そうですか…よかった…」

冥土帰し 「とにかく、今は寝ることだね、寝ている間に全て終わらすから」


冥土帰しはそれだけ告げると佐天に麻酔を注射した。
次第に意識が薄れていくと、そのまま佐天は深い眠りに落ちていった。


佐天 「…ここに入院するのは何回目かな?」

初春 「三回目ですよ佐天さん」

佐天 「そっかー…三回かぁって初春!?」


独り言のつもりで言った言葉に相槌が帰ってきたので少しびっくりした。
ベットから上体を起こすと、そこには初春と固法、黄泉川、そして冥土帰しがいた。
再び数日間ほど眠っていたこと告げられると、そろそろ三年寝太郎も夢じゃないなと
佐天は考えていた。


佐天 「あの、御坂さんと白井さんは」

初春 「っ…」

固法 「……」


場の空気が一瞬にして重くなった。
初春も固法も目を合わそうとしない、まさかと考えた瞬間…


黒子 「流石に…これは悪趣味だと思いますの」

美琴 「そうよ、佐天さんが不安な表情をしているじゃない」


部屋の片隅から二人が出てきた。
まだ病院着のままだが、体調はすこぶる良好らしい。
佐天は安心すると同時に込み上げてくる何かを堪えることは出来なかった。


黒子 「いくらサプライズと言っても、縁起が悪い入りですの」

初春 「まぁまぁ、せっかく固法先輩が考えたんですから」

黄泉川 「いやぁ流石の私も、これはどうかと思うじゃん」

美琴 「でも、サプライズって意味じゃありかもね」

固法 「お医者さんまで協力してくれたんだから、凄くリアルだったでしょ♪」

医者 【…僕は回診に来ただけなんだけどね…】


佐天の反応を期待する固法を裏切るかのように、佐天の目から大粒の涙が溢れてきた。
突然の佐天の号泣に各々焦りの色が見える。




佐天 「うわぁぁぁぁん…」

固法 「!?」ガーン

初春 「あわわわ!?佐天さんごめんなさい!ごめんなさい!」

黒子 「ほら!だから言ったじゃありませんの!!」

美琴 「ヤバイ!マジ泣きだ!!!さ…佐天さん!ほら私も黒子も元気だよー!」

黄泉川 「あー…オマエラ…いじめは良く無いじゃんよ」

固法 「違います!イジメじゃないんです!佐天さんごめんね!ごめんね!」

医者 【これは、しばらく回診は無理だね】スタスタ

佐天 「良かったよぉ…みんな…無事だよぉ」グスグス


誰よりも心配していたであろう佐天の喜びの声が伝えられた。
その言葉に皆が心を打たれる思いになった。


美琴 「佐天さん…ごめんね…ありがとね…」

黒子 「佐天さん、ご心配をお掛けしましたの…」

固法 「がんばったわね、佐天さん」

初春 「さてんさぁぁぁぁん」グス

黄泉川 【全く…ワルガキ共だけど…イイ子たちじゃん…グス】


佐天の病室に少女たちの嬉し泣きの声が響いていた。


薄暗い赤色で統一された部屋で、ブラック将軍はかしづいていた。
部屋の中では重く、そして強く、不気味な声が響き渡る。
その声の主こそゲルショッカーの首領の声だった。


ゲルショッカー首領 「イノカブトンによる学園都市壊滅計画は失敗のようだな…ブラック将軍」

ブラック将軍 「…申し訳ございません『佐天ライダー』とやらの力…見くびっておりました」

ゲルショッカー首領 「小娘といえど、仮にも仮面ライダーの1人だ…侮るなよブラック将軍」

ブラック将軍 「はっ!…この際、小娘を無視して『超能力軍団計画』の方を進めようと思います」

ブラック将軍 「…佐天ライダーの始末はその後でも十分でしょう」

ゲルショッカー首領 「ブラック将軍…貴様に任せる」

ブラック将軍 「はっ!吉報をお待ちください。」


ブラック将軍は踵を返すと『超能力軍団計画』のプランを進めるために準備を始めるのであった。


続く

まさかの日曜の午前5時!!!!
仕事が忙しくてこんな時間になっちまいました。
読んでいただければ嬉しいかもなんだよ!


そして、もう寝ます!
おやすみなさい!


無理すんなよ

変身乙!!
しかし佐天さんこりゃ特訓が必要だなー…。

佐天さんの特訓回はアリだと思うんだよ!

昔の、改造人間設定のライダーって機械で出来てるサイボーグなんだっけか?


>>87
サンキューハチナナ!ワイも無茶しない範囲でがんばるで!


>>91 >>92
このSSの佐天さんはライダーパワーを『会得しているだけ』の女子中学生ですw
戦いの技術なんて持ってないんやで!いわば、肉体のアドバンテージと周り(特に美琴)の
手助けが大きいんや!

特訓回は次回の予定なんやで…エスパーかよYOU達…。


>>93

完璧な機械人間はZXだけやったと記憶してるんやで!
せやから、本郷猛とかはライダーになっても刺されたら赤い血が流れたりするんやで!
今回登場したイノカブトンに太ももを刺された本郷猛は出血多量で死にかけとるんや(´∀`*)ウフフ




乙をいただきました皆様、本当有難うございます。
励みになりますわい!!!




      第X話『恐怖!新たなる敵の可能性!佐天ライダー信念の大特訓!その1』


病室では佐天が冥土帰しの診察を受けていた。
怪人イノカブトンに負わされた右肩口の傷は、冥土帰しの治療技術とライダーの力を持つ佐天の
回復力により限りなく完治と言える上体だった。その超回復力は冥土帰しとて舌を巻くほどだった。


医者 「相変わらずの回復力だね、これもライダーの力なのかな?」

佐天 「あの、そろそろ恥ずかしいんで服を直したいんですけど…」

医者 「ふむ…これは既に完治しているね、本日中に退院しても構わないよ」

佐天 「あ、ありがとうございます!いつも助かります!」

医者 「お礼を言われるほどじゃないよ、僕は医者だからね、患者の怪我を治すのが仕事だよ」


相変わらずの冥土帰しの態度に、佐天はプロフェッショナルの極地を見た気分になる。
医者というのは治療が終わったら恩着せがましく患者に接し、お礼という名の金銭を別途で
受け取るものだと思っていた。


佐天 「と…言うのがお医者様だと思ってました」

医者 「…まぁ、そう言った医者も居ない訳じゃないけどね…」

佐天 「とにかく、いつもお世話になってるんですからお礼くらい言わせてくださいよぉ」

医者 「君は律儀なんだね、まぁお大事に」


翌日、佐天は177支部に向かっている最中にちょっとした噂を聞くことになった。
ゲルショッカーの襲撃が日常と化してから、能力者の失踪事件が増えているのは情報として
佐天も耳に入れている、その失踪した能力者の目撃情報が噂となって学園都市に広まっていた。



佐天 「というわけで、失踪者の目撃情報が街の噂で流れているんですよぉ」

黒子 「その件なら既に情報として上がってますの」

佐天 「えぇ~?せっかくのお手柄チャンスだと思ったのになぁ」

初春 「でも、一件二件じゃなく数十件以上の同一情報が上がってますから」

美琴 「噂の範疇は超えているような感じよね」

固法 「とにかく、私達のやることは変わらないわよ、さぁ!仕事仕事!」パンパン!

佐天 「ん~っ!じゃぁ今日も元気にパトロールに行ってきますか!」

固法 「あ、佐天さんはこっち♪」


パトロールに行こうとする佐天を固法は引き止めると、大量の書類を手渡した。
枚数にしては数十枚程度だが一枚にビッシリと活字が印刷されている。
佐天はその活字量に冷や汗を感じた。


固法 「労災と保安系職業の保険の約款に目を通すこと、あと報告書の作成ね♪」

黒子 「さぁ~て、今日もパトロールに行きますの~」ソソクサ

美琴 「あ、パトロールの基本はツーマンセルよね~私も行くわ~」

初春 「さぁ!今日は書庫のセキュリティ強化日です!」ンフー

佐天 「あれ!?デジャヴ!?」ガーン

固法 「佐天さん!がんばっ!」

佐天 「ふぁい…」シクシク


佐天は固法から手渡された書類を処理していきながら考え事をしていた。
今までライダーとしての戦いを振り返ってみたが、やはり戦いそのものに関して佐天は素人でしか無い、
言ってしまえば、偶々ライダーとしての力を手に入れた女子中学生に過ぎなかった。


佐天 「固法先輩…やっぱり格闘技って習ったほうが良いですか?」

固法 「ん?…そうね、やっぱりジャッジメントは荒事専門だから、習うに越したことはないわ…でも…」

佐天 「でも?」

固法 「正直、あのゲルショッカーの怪人相手に人間の格闘術がどれだけ通用するか…」

佐天 「うーん…でもこのままじゃ…」

固法 「…そうね…その技術が通じるかなんて、やってみなくちゃ何とも言えないか」


固法は立ち上がると、どこかに連絡している様子だった。




固法は立ち上がると、どこかに連絡している様子だった。


佐天 「ね…ねぇ初春?固法先輩どこに連絡してるんだろ?」

初春 「うーん黄泉川先生辺りじゃないですか?」

佐天 「あ、アンチスキルなら確かに格闘技もやってるよね!」

初春 「ほら、何だかんだ言っても固法先輩はすごく面倒見の良い人ですから」

佐天 「うん!知的美人系で面倒見も良いなんて……女として負けた気分がする…」ドヨーン

初春 「はい……」ガクーン

固法 「ん?」


翌日、ジャッジメントライダー隊はアンチスキル本部のグラウンドに居た。
朝も早いのに無駄に元気そうな笑顔で黄泉川愛穂がニコニコと立っている。
あまりにもいい笑顔に、メンバーは皆、少しだけ妬みを覚えそうになる。


黄泉川 「ほらほら、若い者が何を暗い顔をしているじゃん!?元気出すじゃんよ!」

黒子 「いや…流石に朝5時集合は辛いですの…」ネムー

美琴 「5時起床ならまだ話…分かるんだけどね…」ダルー

佐天 「あれぇ?…固法先輩は?」

黄泉川 「固法の奴は朝からジャッジメントの本部に用があると言ってたじゃん」

黒子 「逃げやがりましたわね…」

美琴 「たぶん今はまだグッスリね…」

佐天 「面倒見の良い?…」ジー

初春 「」プイッ

黄泉川 「今日は格闘術の特訓ということじゃんよ!そこで特別講師をよんでるじゃん!」

佐天 「特別講師…ですか?…えっと、どこに?」

黄泉川 「そこの鉄球クレーン車の中じゃん…」



アレで何をするのだろうか?佐天はとても嫌な予感しか湧いてこなかった。
そうこうしている内に、クレーン車から一人の男が降りてきた。


立花 「よぉっ!佐天ちゃんの特訓と聞いたから手伝いにきたぞぉ」

佐天 「立花さん!?」

黒子 「そ…そのせつは!」ビシッ!

初春 「白井さん…まだ気にしているんですか?」

美琴 「あの時の固法先輩、怖かったもんねー」アハハ

黄泉川 「立花さんは凄く優秀な講師の上に、生身で怪人と殴り合ったことも有る凄い人じゃん」

佐天 「生身で!?凄い!!」

美琴 「アレと生身で渡り合うなんて…立花さんもまさか…ライダー!?」

立花 「いやいや、運が良かっただけさ、自身は単なるバイクレーサーでメカニックマンで喫茶店のオーナーさ」

美琴 「単なるって多才すぎでしょ…」

立花 「まぁ、こう見えても歴代ライダーの特訓に付き合ってきた経験があるからなぁ、役には立てると思うよ?」

佐天 「あ!ありがとうございます!!…ところで…この鉄球は?」ビクビク

立花 「ん?あぁこれ?佐天ちゃんの特訓に使う道具だよ」ニッコリ

佐天 「( Д ) ゚ ゚」ポーン

初春 「」

黒子 「」

美琴 「」

黄泉川 「……チョット心配になって来たじゃん」

立花 「じゃぁとりあえず、変身してもらおうかな」

佐天 「えぇ~…」ヘンシーン…


立花と佐天の特訓を横目で見ながら美琴達は黄泉川の訓練を受けていた。
時折聞こえる激突音を聞くたびに三人は訓練の手が止まりなる。


ドカーン…キャー
ホラ!フンバッテ!ブロックスル!!


黒子 「…あ…あれ…大丈夫ですの?」

美琴 「…た…多分…」

初春 「」ゼヒュー…ゼヒュー…

黄泉川 「ほらほら!よそ見しないで走るじゃん!」

黒子 「…この人…容赦ありませんの」ゼェゼェ…

美琴 「あぁ!?初春さんが燃え尽きてる!?」

初春 「」マッシロ



立花と佐天の特訓はある意味で過酷極まりない内容だった。
振り子の力で迫ってくる鉄球を真正面から受けるとか、本当に訓練なのだろうかと思いながらも
佐天は言われた内容を愚直にこなしていく。


佐天ライダー 「た…立花さぁぁぁん、これで強くなれるんですかァァァ」ドカーン…

立花 「いいかぁ!鉄球を怪人の攻撃だと思え!まずは攻撃される恐怖心を抑えてブロックするんだ!」

佐天ライダー 「はっ…はいぃぃぃぃ!!…コワイヨー…」ドカーン…

立花 「怪人もその攻撃の大半が肉弾戦だ!鉄球を完璧に受けきれればそれだけで怪人の攻撃に対応できるんだ!」

佐天ライダー 「ひぃぃぃぃん…」ドカーン…

立花 「この特訓に慣れたら、攻撃をギリギリまで惹きつけて躱す訓練に移るぞぉ!」

佐天ライダー 「はっ…はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…」クスン


美琴達は休憩も兼ねて立花と佐天の特訓を見学していた。
内容的には軽くいや凄くドッ引く内容だが、鉄球を怪人の攻撃に見立てるのは理解できた。
ゲルショッカー怪人どころか、戦闘員の攻撃でさえそこらの成人男性の数倍の威力を発する、
それを考えたら、鉄球くらいは耐える必要があるのだろう。


黒子 「よ…黄泉川先生…本当にアレ大丈夫ですの?」

黄泉川 「ん~…多分…大丈夫じゃん?」

美琴 「でもまぁ、怪人の攻撃を考えると…鉄球はいい考えたど思うわね…うん…」

初春 「で…でも…ゼヒュー…いく…・ゼヒューら……ゼヒュー…」

黒子 「初春は喋るより休んだほうがいいですの」

初春 「は…すみ…ヒュー…ま…ヒュー…」

黒子 「いやだから…」


<<ドカーーーーーーーン!!!>>


佐天ライダー 「ウキャァァァァァァァァァァァ……ガクリ」ピク…ピク…


黄泉川 「あ!?」

美琴 「飛んだわね…」

黒子 「…ストライクですの」

初春 「」チーン…


鉄球のクリーンヒットを食らった佐天は10mばかりふっ飛ばされてしまった。
立ち上がる気力も失せ、変身も解けてしまう。
佐天は意識が混濁したままその場に突っ伏したままだった。



黄泉川 「む…無茶苦茶するじゃん…」

美琴 「さ…佐天さん…大丈夫かしら…」

黒子 「と…とりあえず佐天さんを医務室に運びますの」

初春 「」…

美琴 「黒子ー…」

黒子 「初春も運びますの…」


黒子はテレポートでアンチスキルの救護所に佐天と初春を運び込んだ。
立花はクレーン車からその様子を見て、便利だなぁとつぶやくと、そのまま
下車する。


黄泉川 「立花さん…ちょっとやりすぎじゃんよ…」

立花 「なぁに、まだまだ…まぁ、ある程度はモノに成ったと考えてますよ」

美琴 「で…でも受け止めきれずに盛大にふっ飛ばされてましたよ?」

立花 「徐々にだけど、鉄球の振り幅を大きくしていたんだよ美琴ちゃん」

美琴 「え?…じゃぁ…」

立花 「あぁ、最後らへんは相当な威力を真正面から受け止めていたことになるかな」

立花 「まだ不十分だが、今の段階である程度の攻撃に耐えれると思うねぇ」

黄泉川 「とりあえず、私らも医務室へ行くじゃん」


美琴たちが医務室に到着すると、意識が混濁していた佐天は回復していた。
ただ、その表情は疲労が明らかに浮き出ている。
数トンにも及ぶ鉄球を受けていたのだから無理もないと皆考えていた。


立花 「おう、どうやら回復したらしいな!それじゃぁ…」

黒子 「ちょ!?立花さんまだやる気ですの!?」

美琴 「いくら何でも…オーバーワークだと思います!」

黄泉川 「あー、オマエラ、チョット落ち着くじゃんよ」

立花 「特訓を続けるか続けないかは、佐天ちゃん次第だな、無理強いしても身にならないしなぁ」

佐天 「私は…っ!イタタた…」ズッキーン

黒子 「佐天さん、無理無茶は行けませんの!」

美琴 「そうよ!特訓も体を壊したら意味が無いわ!」

立花 「そうだなぁ…じゃぁ、休憩のついでに一人の男の話をするか」

佐天 「一人の男の人ですか?」

立花 「特訓を続けるか止めるかは、その後に決めたらいいさ」


立花は何かを懐かしむように話を始めた。



立花 「男はね、両親と妹をデストロンという組織によって目の前で殺された悲しい過去を持つ奴なんだ」

佐天 「っ!?」

美琴 「両親と妹さんを目の前で…ヒドい…」

立花 「男の名前は『風見志郎』…志郎は猛の大学の後輩でな、猛と同じ正義感の塊の様な熱い男だった」

佐天 「本郷さんの…後輩さんですか」

立花 「志郎はデストロンの罠に陥った猛と隼人を救おうとして瀕死の重傷を負うんだ…」

立花 「猛と隼人は志郎の命を救うため緊急の改造手術を行った、その結果、志郎は『仮面ライダーV3』として復活したんだ」

黒子 「佐天さんと同じですの…」

立花 「志郎は最初はライダーの力を使いこなすことが出来なくてな、怪人にやっと勝てるか否かって状況だった」

佐天 「力を使いこなせない…私と同じだったんだ…」

立花 「そんなV3も瀕死の重傷を負うほどの敗北を受ける日が来ててしまったんだよ」

佐天 「負けた…その志郎さんはどうなったんですか!?」

立花 「瀕死になって逃げ帰ってきたよ、相当悔しかっただろうなぁ」


立花は一息入れようとタバコに火を入れようとしたが、自分が女子中学生集団+αの中にいるのを思い出すと、
取り出そうとしたタバコをそっと収めてお茶を啜った。


立花 「志郎はその後、その悔しさをバネに佐天ちゃんもやった鉄球の特訓を私と行ったんだ」

佐天 「あの特訓を…そ…その後!その後はどうなったんですか!?」

立花 「徐々にライダーの力を使いこなす様になった志郎は、その後も特訓と戦いを続け、ついにはデストロンを壊滅させたんだよ」

黒子 「何という…凄い方ですの…黒子は…黒子は涙が止まりませんのぉ」ダパー

美琴 「努力による勝利…その志郎さんって人の気持ちが解る気がする」ジーン

佐天 「立花さん…私も…私も強くなれますか…ゲルショッカーの怪人に勝てるくらいに!」

立花 「なれるさ!佐天ちゃんの心が折れない限り、きっとなれる!」


意気消沈していた佐天の目に再び光が灯り始めていた。



佐天 「立花さん!特訓の続きをお願いします!私も強くなりたいです!」

黒子 「あんな話を聞いた後では、おいそれと止めることは出来ませんの」ヤレヤレ

美琴 「そうね、佐天さん!ファイトよ!」

黄泉川 【纏まったみたいでよかったじゃんよ…】

初春 「…ムニャ…おはようございます…」アフゥ


立花は、佐天の特訓に打ち込む姿を見て本郷猛の目に狂いは無かったと思っていた。
それと同時に佐天のライダーとしての素質を特徴を見出すと特訓の内容を変えていく。
わずか一日で佐天は見違えるような耐久力とスピードを手に入れていた。


立花 「よし!今日はここまでにしようか!」

佐天 「はい!ありがとうございました!」ゼハァ…ゼハァ…

立花 「良い返事だ!流石は猛が見込んだだけのことは有るな!」

佐天 「えへへ~」テレテレ

黒子 「最初は心配しましたけど、立花さん…確かに優秀な講師ですの」

美琴 「佐天さん、激しい特訓だけど、どこか楽しそうね」

初春 「うぅぅ…例の話…私も聞きたかったですよぉ」シクシク

黒子 「仕方ないですの、寝ていた初春が悪いですし」

美琴 「まぁまぁ、機会があったまた話してくれるわよ」


帰り支度の最中、ふと黒子はあることが気になった。
立花の話を聞いた黒子は以前に立花が言っていた悪の組織の名前を思い出す。
その中で、過去のショッカー、現在の脅威であるゲルショッカーは解るが、その後にも
デストロンや、GOD機関などの組織が存在したと言うことを考える。


黒子 「お姉様、初春、佐天さん…私気になることがありますの」

美琴 「ん?難しそうな顔してどうしちゃったのよ?」

初春 「お腹でも空いたんですか?」

黒子 「すいてい!グゥ…ますけど、それじゃないんですの」

佐天 「もったいぶらないで教えて下さいよぉ白井さ~ん」

黒子 「えぇ…立花さんの話を聞くと、ゲルショッカーは…既に壊滅してるはずですの」

佐天 「えっ?…あっでも、ライダーが強すぎたのが原因で諦めてていた間に別の組織が…・っことは~」

黒子 「あのゲルショッカーが?保留はあっても諦めるとは考えにくいですの」

美琴 「確かに、あのブラック将軍とか粘着質な顔してるもんね、諦めると思わないわ」

初春 「諦めたのにまた活動するってのもおかしな話ですよね」

黒子 「…なにかとてつもない…ゲルショッカーを超える大組織が控えている…そんな気がしますの」


黒子の発言に場は静まり返った。
ゲルショッカーだけでも強力且つ凶悪なのに、それ以上の大きな組織が控えている可能性が浮かんできた。
それは学園都市にとって最悪を意味しているに他ならない、四人は静まり返った。



佐天 「とにかく!詳しい話は立花さんに聞きましょうよ!今ここで暗くなっても仕方ないですし!ねっ」

初春 「佐天さん…はい!そうですよ!佐天さんの言うとおりです!」


佐天の一言で場の空気が一気に和んで来る。
美琴も黒子もこの一言で感じていた不安を払拭することが出来たのだった。

四人アンチスキルの訓練場から出た時には既に日は傾きかけていた。
177支部に着く頃には既に完全下校時刻間近だった。
支部の中に入ると、そこには固法がお茶菓子を食べていた。


黒子 「あ…サボり魔ですの…」

初春 「サボり魔ですね…」

美琴 「生意気にお茶菓子食べてるわね…」

佐天 「あ…あれ私の買ってきたやつだ!」

固法 「な…なによぉ…留守番は必要でしょ?」ゴクン

美琴 「固法せーんぱい、今朝の起床時間は?」

固法 「………………7時30分」プイッ

美琴・黒子・佐天・初春 「イラッ…」


固法に対して一通りの文句を言った後に、黒子は敵組織が想像を凌駕した規模である可能性を伝える。
まさか?とも思ったが、固法も黒子の意見を完全に否定できるほどの自信は持っている訳では無い、
上に報告すべきか正直悩んでいた。


固法 「…立花さんと一度話す必要があるかもしれないわね…」

黒子 「私もそう思いますの…何か知っているかもしれないですし」

佐天 「私の特訓は明日もありますし、その時に話を聞いて見ましょうか?」

固法 「そうね、休憩の時にでも立花さんに聞いてみてくれる?」

初春 「明日は固法先輩も来るんですよね」ニコッ

固法 「……へっ?」

黒子 「何を当たり前のことを、固法先輩は面倒見の良い美人で賢い自慢の先輩なのですから当然ッ」シレッ

初春 「あぁそうですね、アタリマエのことでしたネ~すみません固法先輩、白井さん」ニッコリ

固法 「」/(^o^)\

佐天 「あ…初春アレ絶対わざとです…」ヒソヒソ

美琴 「初春さん…恐ろしい子」ヒソヒソ

佐天 「しれっと口裏を合わせる白井さんも中々…」ヒソヒソ


ガックリ項垂れる固法をよそに、四人は明日に備えて気合を入れるのであった。


                             その2へ続く






とりあえず、今日はここまでっす。
続きは週末までに投稿できるように努力しまっさ!

読んでいただければ幸いです。








      第X話『恐怖!新たなる敵の可能性!佐天ライダー信念の大特訓!その2』




佐天ライダー 「おぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」ガギャァァァァン!


特訓も2日目に入ると、佐天は迫り来る鉄球に対し反撃を試みるようになっていた。
数トンにも及ぶ鉄球とそれを支えるクレーン支柱が大きく左右に揺れる、躱すのと同時に鉄球に打ち込まれる
佐天の一撃がどれほどのものかをクレーン車の揺れは物語っていた。


立花 「おっとっとぉ!? 佐天ちゃん!やるじゃないかぁ! もう一発行くぞぉ!」

佐天ライダー 「はい!お願いします! どっせぇぇぇぇい!!!」バギィィィィィン!


佐天が打ち込む度に鉄を打ち鳴らした様な鈍い音の響きがアンチスキル本部のグラウンドに響き渡った。
その様子を美琴達は遠巻きに見ている、響いてくる音だけでも佐天の力がそこらの肉体強化能力者の力を
明らかに超えているのが感じ取れた。


美琴 「す…凄まじいわね佐天さん…」

黒子 「えぇ、しかも躱してから打ち込むまでの動作が速すぎますの…一呼吸で全てが完了しているなんて…」

初春 「佐天さん…すごい…」

黄泉川 「さーて、休憩時間終わりじゃん! お前等も格闘訓練に移るじゃんよ!」

固法 「ほらほら! さっさと動く動く! ゲルショッカーは待ってくれないわよ!」

美琴・黒子・初春 「はい!」トリャー


アンチスキルとして、教師として、黄泉川は決して顔には出さなかったが、佐天の力に恐怖や嫉妬に似た感覚を感じ取った。
『失踪した能力者』『改造人間手術』ゲルショッカーが高位能力者を拐った上で改造手術を施したら、この学園都市の戦力で
Level5以外にゲルショッカーに対抗できる手段は有るのだろうか、実のところ戦闘員に関してはアンチスキルで十分に対処が
可能だったが、こと怪人に対してアンチスキルは無力でしかなかった。


黄泉川 「…本当…態度だけでかくても…あの子たちに頼らざるを得ないなんて…私等は無力じゃんよ…」

固法 「そんな訳ありませんよ、アンチスキルがいるから私達は安心して戦えるんですから」

黄泉川 「固法…そうだな…私等には私等の役目が有るじゃん……ところで……」

固法 「はい?」

黄泉川 「なんでお前は参加してないじゃんよ?」

固法 「」\(^p^)/

黄泉川 「さっさと動くじゃん!」

固法 「はっ!! はいぃ!」ダッシュ


2日間の特訓も終わり、黒子は立花に疑問に思ったことを聞いてみることにした。
壊滅したはずのゲルショッカーが何故存在しているのか、その背後に何が居るのか、全員が疑問に思っていた。


黒子 「立花さん、お話がありますの」

立花 「ん?どうした?黒子ちゃん、そんな改まった態度で…はは~ん?初めて会った時のことだな?別に気にしてないよ?」

黒子 「そ…そうじゃありませんの!…でも一応、あの時は失礼しました」ペコリ

立花 「ん?違う?…じゃぁ…何の件かな?」

黒子 「ゲルショッカーの件…ですの」


黒子の神妙な顔に立花は気を引き締めて内容を聞くことにした。
周りには佐天、美琴、初春、固法と各々が真面目な表情で立花の前に居た。



黒子 「立花さん…前に聞いたお話で、私はゲルショッカーは既に壊滅していたと推測しましたの」

立花 「あぁ、177支部で話したねぇ」

初春 「私も聞きました…そして、デストロン、GOD機関と新たに悪の組織が台頭して行ったって…」

美琴 「なのに、学園都市に現れた組織は『ゲルショッカー』…明らかにオカシイと思います」

固法 「一度は壊滅した組織が何故復活したのか…流石に私達も疑問に思いました」

佐天 「立花さん…お願いします!知っていることが有れば教えて下さい!」

黄泉川 「……たしかに…今の話だと明らかにオカシイじゃん…現行の組織が同じような旧組織を認めるとは思わないじゃんよ…」


立花はゆっくり目を閉じると軽くため息を付いた。
軽く呼吸を繰り返し、立花はゆっくりと口を開く。


立花 「簡単な話さ…壊滅したと思った悪の組織は、実は壊滅していなかった…それだけなんだよ」

立花 「『城茂』いや、仮面ライダーストロンガーと6人のライダーが、デルザー軍団大首領を倒した時に長い戦いは終わったと誰もが思ったんだ…」

佐天 「全部で…7人の仮面ライダー…」

初春 「佐天さんもライダーだから、8人目ですね」

立花 「ハハッ違いないな! でまぁ後は簡単、生き残った悪の組織は結託し今に至るってことだ」

佐天 「うーん…でもそれじゃぁ、誰が新首領になるかで残った者同士で争いが起きませんか?」

立花 「お? 良い所に気がつくね佐天ちゃん」

佐天 「いやーえへへ~」テレテレ

美琴 【…誰でもそう思うわよね…】ヒソヒソ

黒子 【まぁまぁお姉様…ここは話を聞きましょう】ヒソヒソ

立花 「私達も共倒れになると踏んでいたんだが、あの男…知っているだろ?『ブラック将軍』が生きていたのが誤算だったんだ…」



立花は一層、険しい顔をすると話を続けた。


立花 「他の組織の大幹部なら瓦解した組織を再びまとめ上げるのは不可能だろう…だが、ブラック将軍はそれをやり遂げた」

立花 「あの男の悪の組織、ことゲルショッカーに対しての忠誠心は今までの大幹部の中で群を抜いているんだよ」

立花 「それこそ、ゲルショッカー大首領に対しての忠誠の為なら、大都市の一つや二つを簡単に滅ぼすほどにね」

黒子 「なんと…いう…」

美琴 「狂ってるわ…」

立花 「そう、狂っている、だが、だからこそブラック将軍は他の大幹部から一目を置かれたんだ…」

立花 「いつしかあの男の下にデストロンの『ドクトルG』、GOD機関の『アポロガイスト』、ショッカーの『死神博士』が集ったんだ」

初春 「な…何か…禍々しい名前の人たちですね…響き的に…」

佐天 「うん…特に死神博士とか…縁起でもないし…」

固法 「その三名も生き残っていたんですか?」

立花 「…ゲルショッカーやGOD機関には再生怪人の技術があるからね…まぁクローンみたいなものさ」

美琴 「…クローン…」ピクッ…

黒子 【お姉様?…】


美琴はクローンに関してはトラウマにも似た感覚を持っていた。
『量産型能力者計画』終わった筈の忌々しい記憶に眉を顰める。


立花 「結局のところは生き残った大幹部たちが結託しただけさ、後のことは世界に散らばったライダー達の調査待ちだなぁ」

佐天 「あの…そのブラック将軍以外の3人の大幹部って…」

立花 「少なくとも…現状では1人1人が”最強の敵”と思っていい…私はそう考えているね…」

佐天 「そう…ですか…でも、私は必ずこの学園都市を守りますよ!立花さん!」

立花 「おぉ!流石は猛が認めたライダーだ!いやぁ、頼もしいじゃないか!」

黒子 「まったく…調子に乗る所は相変わらずですの」ヤレヤレ

初春 「そこも、佐天さんのイイところですよ♪」

固法 「そうね」ウフフ

美琴 「…」

黒子 「お姉様?」

美琴 「あ…う…ううん、もう佐天さんったらぁ」アセッ




<<ザッ…ザザザッ……>>


一瞬の静寂が訪れる、今まで居た場所がそうでないと思われる程に辺り一面にドス黒い空気が流れた。
自然とそのドス黒い空気が集まる場所に皆の視線が集まると、影が人型になり怪人が出現した。


佐天 「こんな所にゲルショッカーの怪人っ!?」

立花 「こ…この感じは……まさか…」

黒子 「初春!固法先輩!応援を呼んで下さいまし!お姉様!」

美琴 「えぇ!先手必勝!!!」<<バチン!ズババババ!>>


<<バシィンン!>>


美琴の電撃が怪人に直撃したと思われた。
その場に居た全員がこの一撃で決着が着くと思った瞬間、怪人の声が響いた。


??? 「ガイストカッター…」


<<ズバァァァァン!!>>


狙いは大きく外れていた。
佐天達の側面を通過した円盤状の物体はそのままアンチスキルの詰め所に激突すると、まるでチーズを
切る如くいとも簡単に建物自体を両断した


美琴 「な…なんて威力なの…」

佐天 「くっ…只者じゃないですね…」

固法 「初春さん!負傷者の救助要請!」キィィィィ…

初春 「あ…はっ…はい!!白井さん!救助活動お願いします!」

黒子 「…えぇ…と言いたいところですが…あの怪人の目線が外せませんの……」

黄泉川 「私等が行くじゃんよ!お前たちはアイツを抑えてくれ!」




固法はメガネを外すと、透視能力を使い斬り裂かれた建物の中に居る負傷者の位置を黄泉川に伝えていく
怪人はその様子を見ぬくと、放った円盤を固法に向けて軌道を変えた。


初春 「固法先輩!逃げて下さい!」

固法 「…えっ…キャァァァ!?」

佐天 「固法先輩!危ない!!!へぇぇぇぇぇぇんしん!!!」

佐天ライダー 「でぇぇぇぇぇい!!!!!」


<<ガキィィィィィィィィン!>>


固法に直撃すると思われた円盤は、佐天が両手で挟みその進路を妨げられていた。
やがて円盤は回転を止めると、地面に落下し、転がるように怪人の元へ戻った。
土煙が晴れ、その怪人の姿が露わになる。
その姿に立花は驚きを隠せなかった。


立花 「あ……アポロガイスト……」

美琴 「さっきの話に出た大幹部の1人!?」

佐天ライダー 「空気が…重く感じますね…」

黒子 「禍々しさが半端じゃないですの…」

立花 「お嬢ちゃん達…油断するなよ…アイツはとんでも無く…強いぞ…」


アポロガイストと呼ばれた怪人は白いマントを翻す、その行為だけでも佐天達は思わず攻撃を仕掛けそうになった。
一挙手一投足の動きでさえ想像を絶する圧力となり佐天たちに襲いかかっていた。
思わず唾を飲み込むような感覚をその場の全員が共有する。



アポロガイスト 「久しいな、立花藤兵衛」

立花 「ふん!お前に久しいと言われる筋合いはない!今更何のために出てきたんだ!」

アポロガイスト 「目的は今も昔も変わらない…今はその目的のためにゲルショッカーのブラック将軍と手を結んだのだ」

立花 「なぁにぃ!GOD機関は日本全滅を諦めてないのか!そんなことライダー達と俺が許すと思ってるのか!」

佐天ライダー 「に…日本…」

黒子 「全……」

美琴 「滅ぅ!?って…」

佐天ライダー 「そ…そんなこと!させない!御坂さん!!」

美琴 「理解ってるわ!でぇぇぇい!!」<<ズババババ!>>

黒子 「佐天さん行きますわよ!」シュン

佐天ライダー 「頭上を取った!!!!ライダァァァァァァ!!!キィィィィィック!!!!」


<<ズバンッ!>>


美琴が目を晦まし、黒子が佐天を飛ばし、絶好の位置から放った佐天のライダーキックをアポロガイストは
その手に持った日輪の盾でいとも簡単に弾き飛ばした。


アポロガイスト 「立花藤兵衛の特訓を受けただけは有るか、中々の威力だ…むっ…」

佐天ライダー 「残念!これも囮なんだよねー!御坂さん!」

美琴 「喰らいなさいっ!」<<キィィィン……ドゴンッ!!>>

立花 「よし!直撃だ!」

美琴の放った超電磁砲が光の尾を引いてアポロガイストに迫る。
このタイミングで直撃しない理由はない、単なる電撃とは違いその二つ名を持つ『超電磁砲』なら怪人相手でも
確実に倒せる、少なくとも瀕死の状態に出来るという自信を美琴は持っていた。



<<ギャギィィィィィィン!>>


その自信は無残に打ち砕かれた。
美琴の放った超電磁砲はアポロガイストの剣により弾体のコインごと切り落とされたのだ。


美琴 「なんで…すって…」

黒子 「お姉様の超電磁砲を」

佐天ライダー 「っだまだぁ!!!ライダァァァァァァパーンチ!」ズドン!


それでも超電磁砲の余波は残っていたのだろう、不完全な体勢のアポロガイストの顔面に佐天の繰り出した
ライダーパンチが直撃する、鈍く重い激突音が響き佐天自信も手応えを感じていた。


アポロガイスト 「…まさか…一撃もらうとはな」

佐天ライダー 「うっそ!?効いていない!?」

アポロガイスト 「いや、中々響いたぞ、ふん!」バキィ!

佐天ライダー 「きゃぁ!?っとと!」

美琴 「佐天さん!」

黒子 「大丈夫ですの!?」

佐天ライダー 「ッ大丈夫です!」


盾を使った体当たりに、佐天は美琴達の位置までふっ飛ばされた。
2日前ならこれだけで瀕死に至ったかもしれない衝撃が体の芯を貫き通す。
思わずバランスを崩したが、佐天は直ぐに体制を整えた。


佐天ライダー 「特訓の成果…ちゃんと出ている…これなら行けるかも!」グッ!

アポロガイスト 「勇ましいのは良いが、少し待つんだな」


再び挑みかかろうとする佐天をアポロガイストは剣に内蔵された銃口を救助活動に回っている初春、固法の
二人に向けることにより制した。




佐天ライダー 「くっ…卑怯よ!!」

アポロガイスト 「それで結構、今の私は単なる使者に過ぎん…聞け、ブラック将軍の言葉を伝える」

美琴 「聞けって、アンタ何様のつもりよ!」ビリッ

黒子 「お姉様!今は堪えて下さいまし!」

アポロガイスト 「ふん、聞き分けが悪い…この程度の小娘が学園都市側の切り札の1人か」

美琴 「なんですってぇ!っ!?」<<キィン!>>

黒子 「お姉様!避けて!」


美琴が再び超電磁砲を放とうとした瞬間、目と鼻の先にアポロガイストは存在していた。
酷くスローモーションな感覚を覚える、アポロガイストの右手に持たれた剣が美琴の首筋へ吸い込まれていく。
死という物は数多く見て来たつもりだった、自らの命を捨てようとしたことも有る。
だが、それとは比べ物にならないほどの明確で直接的な死のビジョンが美琴は見えた気がした。


美琴 「ヤバイ…」


<<ギャリィ!>>


アポロガイストの斬撃は美琴には届かなかった。
閉じてしまった目を開くと、アポロガイストと美琴の間に佐天が割り込んでいる。
佐天はアポロガイストの斬撃を体を使って受け止めていた。


美琴 「さ…佐天さん!!血が…」

佐天ライダー 「受け止めましたのでへっちゃらです!それより今のうちに離れて下さい」

黒子 「お姉様!」シュン!



黒子のテレポートにより美琴と黒子は二人から距離を取った場所に移動した。
明確な死のイメージが見えた美琴は踏ん張ろうとするがその足取りは些か頼りない状態だった。
倒れそうになる美琴の体を黒子は慌てて支えた。




アポロガイスト 「…三度このアポロガイストの攻撃を防ぐとはな、名前を聞いておこう」

佐天ライダー 「ったいなぁもう!佐天涙子よ!佐天ライダーとも呼ばれてるわ!」

アポロガイスト 「そうか…貴様が『佐天ライダー』か、覚えておこう」

佐天ライダー 「そんなことより、なにか話すんでしょ!さっさと離れなさいよ変態!」

アポロガイスト 「ふん、口の減らない小娘だ…いいだろう」スッ

佐天ライダー 「え!?…ほ…本当に引いちゃったよ…」ビックリ


アポロガイストは佐天から距離を取ると再び使者としての役目を果たすことにした。


アポロガイスト 「聞け…ブラック将軍が指定したタイムリミットまであと僅かだ」

佐天ライダー 「…あの映像のことね…」

アポロガイスト 「見ているなら話は早い、要求を受け入れない場合は、ゲルショッカーの全戦力を以って」


          学 園 都 市 に 総 合 撃 を 仕 掛 け る


佐天ライダー 「飲める訳無いじゃない…能力者を差し出すとか…技術を渡すとか…」

アポロガイスト 「それを決めるのは佐天ライダー…貴様では無いはずだが?」

佐天ライダー 「くっ…させない…ゲルショッカーの野望は私がぶっ飛ばすんだから!」

アポロガイスト 「面白い…佐天ライダー、止めてみせろ…出来るものならな」


次の瞬間、アポロガイストはその姿を消した。
夢でも見たのだろうかと思ったが、アンチスキルの惨状を見てそれは現実だと認識される。
佐天は変身を解くと美琴のもとへ駆け寄った。



佐天 「大丈夫ですか御坂さん!」

美琴 「うん…大丈夫…チョット腰が抜けちゃっただけだから…ありがとね佐天さん」

佐天 「い、いえ、私は別に」

黒子 「私からもお礼を言わせて下さいですの…本当に…お姉様を助けていただいでぇ…」ウッウッ…ヒック…ウエェ…

佐天 「あー!白井さん!泣かないで下さいってばぁ、無事だったからそれでいいじゃ無いですか」アセアセ

美琴 「本当、佐天さんにはセブンスミストの件や今回の件で物凄い借りができちゃった」

佐天 「か…借りだなんてそんな、私達…その…改めて言うのは恥ずかしいですけど…その…友達…じゃないですかぁ」


本当、佐天涙子は場を和ます天才だ…美琴と黒子はそう思うと、改めて目の前に居る黒の長髪が似合う友人が自分たちにとって
掛け替えの無い仲間であり、友人である佐天の存在が頼もしく思えてくる。


美琴 「うん、そうよね!んーっ!安心したら震えが止まったわ、じゃぁ黒子」

黒子 「グスッ…えぇ、救助活動…ですわね、お姉様、佐天さん」

佐天 「よーし!一人も死なせないぞ!変っ身っ!」


アポロガイストの襲撃によりアンチスキルが受けた被害は決して軽いものではなかった。
重軽傷者は多数居たが、被害の割に死傷者が1人も出なかったのはライダー隊のメンバーの
活躍とアンチスキルの的確な救助活動の賜物といえるだろう。


初春 「アレだけの被害にもかかわらず、幸い犠牲者が居なかったのは奇跡ですよ」

固法 「そうね、あの状況で即死者が居なかったのも運がいいわよね」

黒子 「固法先輩の透視のお陰ですの」

佐天 「そうですよ!要救助者の居場所をあんなに的確に見つけるなんて凄いです」

固法 「そういう佐天さんのパワーや白井さんのテレポート、御坂さんの磁力操作も凄かったわね」

黒子 「初春の関係部署への連絡やタッグ分けも的確でしたの搬送順の判断は難しいですのに」

固法 「本当、初春さんもお疲れ様」

初春 「あー…なんか取って付けられた感じがしますぅ」ブー

佐天 「あれ?…御坂さんは?」



177支部の屋上では、美琴と立花が居た。
美琴の表情は決して明るいものではない、むしろその逆と言える。
立花はその雰囲気にを汲んでか、その表情に笑顔はなかった。


立花 「で?私に何を聞きたいんだ?美琴ちゃん」

美琴 「えっと…何から話せば良いのか…」


美琴は再生怪人の話を聞いた時から『量産型能力者計画』の事を立花に話すつもりだった。
話して何になるかわからない、ただ本郷猛の言っていた『超能力軍団計画』に『クローン技術の獲得』
『消えた能力者達』そして、ゲルショッカー独自の『再生怪人』がどうしても引っかかっていた。


美琴 「ということが有りまして…関連性が有るかわからないんですけど…」

立花 「そうか…量産型能力者計画も絶対進化計画か…学園都市もエゲつない事するなぁ」

美琴 「それと…この話なんですが…」

立花 「他の人には言うな…だろ?わかってるよ、でもな美琴ちゃん…辛い時は友人を頼ってもバチは当たらないと思うけどな…」

美琴 「っ…はい」

立花 「まぁ、これらに関しては猛に話して調べてもらうよ、ゲルショッカーの狙いがそこに有るなら解りやすいしなぁ」

美琴 「お願いします」

立花 「皆の所に早く行ってやれ、お嬢ちゃん達、あぁ見えて心配してたんじゃないかな?」

美琴 「そうします、立花さん、ありがとうございました」


立花は美琴が戻るのを見送ってからゆっくりとパイプに火を灯す。
量産型能力者計画、そしてゲルショッカー超能力軍団計画、再生怪人計画、改造手術、クローン、立花は嫌な予感がした。
本来、再生怪人は通常の怪人よりその能力劣っているはずだった。


立花 「アポロガイスト…再生怪人なはずなのに、強力で的確な攻撃と防御だったな…」

立花 「もし、効率よくクローン体を生成するのに成功して、その分のアドバンテージを改造手術に費やしたら…」

立花 「もし、学園都市側が改造手術の技術が欲しくてゲルショッカーを招き入れたとしたら…」

立花 「こりゃぁ…思った以上に学園都市の『闇』も深いかもしれんなぁ…」


そう言うと立花はパイプの煙の流れを楽しむように燻らせた。



薄暗い廊下を1人の白いスーツの青年が歩いていた。
青年はとある部屋の前に立ち止まると、部屋の扉が自動的に開かれていった。
部屋の中に入ると、ブラック将軍と2人の影が姿を現す。


ブラック将軍 「戻ったかアポロガイスト」

アポロガイスト 「…仰せの通り、警告を伝えてきた」

ブラック将軍 「ふん、しかし…立花藤兵衛の特訓を佐天ライダーが受けるとはな…」

ドクトルG 「あの小娘が佐天ラーイダか…単なる子供ではないか…」

死神博士 「だが、あの立花藤兵衛の特訓を受けた後だ、相当なパワーアップを遂げたのではないか?」

ドクトルG 「アポロガイストよ、あのまま佐天ラーイダを殺しても良かっただろう」

アポロガイスト 「使者は使者としての役目を果たしただけだ」

ブラック将軍 「律儀な奴だ…まぁよい、諸君…計画をすすめるぞ…」


大幹部たちはその言葉に従うように動き始めた。
風が吹くが如く、嵐が荒れるが如く、怪人を操る恐怖のゲルショッカーがその全戦力を学園都市に向けた。
これから起こるであろう凄惨極まりない戦いにブラック将軍は満面の笑みを浮かべるのであった。


続く



今日はここまでです!

稲妻走るわ雷響くわでPCがぶっ壊れるわ、仕事は詰まるわで散々な目に会いましたがなんとか続けられそうです…
本当、遅れて申し訳ありませんでした…。

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