【モバマス】飛鳥「聖夜が終わり、年が明けるまで」 (14)

二宮飛鳥「…ハァ…今夜は、寒いな」

飛鳥「…この季節は、心が落ち着かないな」

飛鳥(寮を抜け出してこうして外を出歩いているものの…この時期は、夜だというのに眩しい)

飛鳥(クリスマスが終わり、新年を迎えるしんしんとした空気が街を包んでいるが…片付けの済んでいないイルミネーションがより一層この街の夜を拒んでいる)

飛鳥「…こんなにも、空は晴れているというのに」



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飛鳥(事務所のそばの、歩道橋の上ではボクの欲しい静寂はやはり得られないか)

飛鳥(時計の短針はもう10を指そうとしている…なのに、ここから見える事務所の窓は明るい)

飛鳥「…別に、何を気にしているわけじゃないさ。…ボクは独りで出歩いているんだ、誰かと逢おうだなんて考えているわけじゃない」

飛鳥(…そう、ただの散歩さ。コンビニに寄り、コーヒーを買って、公園ですする。静寂を愉しむ。…それだけのつもりで出かけてきた)

飛鳥(…なのにどうして、ボクはこんな場所でじっとしているんだろうか)

飛鳥「…あ…」

飛鳥(事務所の電気が…消えた)

モバP「あ゛ぁ゛~…やっと仕事終わった…」

モバP「…もう10時前か…とっとと帰ろ…」

モバP(荷物まとめて…電気消して…オフィスの鍵閉めて…と)

モバP「うぅお寒っ…コート着てても結構冷えるな…」

モバP(…夜の廊下って明るいのになんか怖いんだよなぁ…)

モバP(今も足音めっちゃ響いてるし…エレベーター待つのも何か怖いなぁ…)

………チーン!

モバP「」ビクッ!

モバP「…もうちょっと静かに開いてくれ」

モバP「1階…と」

モバP(…さて、次の電車は確か…って)

モバP「…何やってんの、こんな時間に」

飛鳥「…や、やぁ、奇遇だね、こんな場所で」

モバP「こんな場所って…事務所のビルの目の前なんだけど」

飛鳥「まぁいいだろう、その、そんな瑣末なことは。ところでどうやら見たところたった今仕事が終わったようだね」

モバP「まぁ、うん。今から帰るところ」

飛鳥「あー…えっと、うん、奇遇だね、ボクもさ」

モバP(…事務所ビルの出口に寄っかかってめっちゃポーズ決めて待ってた事には言及しない方が良さそうだな)

モバP「で、飛鳥は何を?」

飛鳥「散歩さ、ただ取り留めのない思考を廻しながら、ね」

モバP「というかダメだろ、こんな時間に出歩いてちゃ」

飛鳥「ダレもボクの意思縛り付ける事なんて出来ないのさ」

モバP「…寮母さんに連絡しておくからな」

飛鳥「あっいやそれはちょっと待、待って待ってまって」

モバP「…ハァ、まぁ部屋に戻るときにバレないようにな」

飛鳥「何、こう見えて細心の注意を払っている。ボクがここにいることは誰にもバレていないさ」

モバP「お前みたいな可愛い奴が今夜な時間に外をウロつくなって言ってるんだ」

飛鳥「かわっ…」

モバP「もし何かあったらどうする。ファンにバレるだけならまだマシだ。それこそガラの悪い連中に………。……聞いてるか?」

飛鳥「かわいい…ふへ…ッハ!?あ、ああ、聞いてるとも!」

モバP「取り敢えず寮まで送って行くよ」

飛鳥「え、いや君がわざわざそこまでしてくれなくても…」

モバP「心配なんだよ、ほら行こう」ギュッ

飛鳥「ぁっ…」

モバP「ん?どうかしたか?」

飛鳥「いや…何でも、ない…」

モバP「静岡はどうか知らないけど、こっちでは警察に補導されたりもするんだから、一緒にいないとな」

飛鳥「…まぁ、そうだね」ギュッ...

モバP「飛鳥の手、冷たいな」

飛鳥「そりゃ、君より前から外にいたからな」

モバP「なるほど」

飛鳥(…温かい…)



モバP「コンビニ、寄るか?」

飛鳥「そうだね、コーヒーでも買おうかな」

モバP「ん」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・

モバP「カップ麺…パン…コーヒー…」

飛鳥「…自堕落だな、自炊とかはしないのかい?」

モバP「時間がね…休日はたまーにだけど作ったりするよ」

飛鳥「まぁキミはいつも忙しそうだからな…」

モバP「はは、誰か料理作ってくれる人がいれば助かるんだけどなぁ、なんて」

飛鳥「…………」

モバP「買うもの決まった?」

飛鳥「あっ、えっと…う、うん」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・

モバP「コーヒーだけで良かったのか?」

飛鳥「まぁ、今から帰るだけなのにあまりたくさん買ってもね」

モバP「なるほど、飛鳥も『自堕落そう』とか思ってごめん」

飛鳥「そんなこと思ってたのか…」

モバP「いやまぁ半分冗談だよ。…コーヒーあったけ…」

飛鳥「…ああ、そうだね…」

モバP「さて、帰るか」スタスタ

飛鳥「…………」

モバP「…飛鳥?」

飛鳥「あ、いや…何でもない…」

飛鳥(…手…よりは、コーヒーの方が温かいもんな、そうだよな…)


ギュッ!

モバP「ん?」

飛鳥「………」ギュッ

モバP「…………」

飛鳥「………その…」

モバP「……」ギュッ

飛鳥「!」

モバP「寒くないか?」

飛鳥「…ん」コクン

モバP「ん」

飛鳥「…帰ろうか」

モバP「うん、帰ろう」


飛鳥「この時期は、街は夜でも眩しいな」

モバP「ん?…ああ、イルミネーションか。確かにクリスマスは終わっても少し明るいままだな」

飛鳥「聖夜は終わり、世界は新年を迎えようとしている…なのに浮かれたままというのは、どうなんだろうな」

モバP「…ふむ」

飛鳥「………」ズズッ

モバP「まぁそうかもなぁ」

飛鳥「キミにも理解るか」

モバP「…うーん、まぁ飛鳥の言ってることも分かるよ」

飛鳥「その言い方だと、キミの考えは違うのかい?」

モバP「そうだな…」

モバP「誰だってこの時期は寒いんだよ」

飛鳥「…?そりゃ、そうだろう。冬なんだから」

モバP「ああ、だから、温まりたいんだ。明るくいたいんだよ」

飛鳥「それで、街を光らせて…というのは、こう言っては何だが安直じゃないかな」

モバP「当然、街が明るければ温かいなんて、安直もいいところだな」

飛鳥「…………」

モバP「でも、こうやって手を繋いで、2人で一緒に見て、話して。きっと皆、それが欲しいんだよ」

飛鳥「……キミは、ロマンチストだな」

モバP「似合わないことを言ったかな」

飛鳥「…まぁ、でも」


飛鳥「…少なくとも、手は温かい、かな」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・

モバP「着いたな」

飛鳥「…着いたね」

モバP「結局、門限はとっくに過ぎてるけど大丈夫か?何なら俺から寮母さんに…」

飛鳥「いや、大丈夫さ。バレなきゃいい」

モバP「不良娘め」

飛鳥「そうかな」

モバP「ああ、こんな寒い夜に出歩いて、コンビニで買ったコーヒーで温まるなんて、不良だ」

飛鳥「説教をしているわりにはずいぶんと笑顔だな」

モバP「楽しかったからな」

飛鳥「…うん。ボクも、楽しかったよ」



モバP「でも心配なのも本当だ。これからは1人での夜の外出は控えてくれ、いいな」

飛鳥「ふふ、どうかな」

モバP「飛鳥」

飛鳥「なにせボクは不良だからね、不良っていうのはオトナの言うことには反抗するモノさ」

モバP「…………」

飛鳥「だから…」

モバP「…ん」

飛鳥「…だから、その」ギュッ

モバP「…ああ、その時は探し出してやる。そしたらまた一緒に帰るからな」ギュッ

飛鳥「…ああ」




飛鳥(寒いのも、眩しいのも好きじゃない)

飛鳥(だから)

飛鳥「その時はまた、ボクの手を握って欲しい…なんてね」


終わりです、チンタラ書いてたら年が明けました
ありがとうございました

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