二宮飛鳥「今日は――」 (12)
心「飛鳥ちゃん飛鳥ちゃん♪」
飛鳥「なに」
心「今日は2月2日ですが、なんの日でしょう?」
飛鳥「正月太りから始まった心さんのダイエット計画中間発表日」
心「あ゛っ」
飛鳥「およそ女性が出していいものではない声が聞こえたけど……その反応、忘れていたね?」
心「い、今はそれは置いとこう? ね? ね?」
飛鳥「傷口に蓋をしても、いつか化膿するだけだよ。そもそもこのダイエット計画は先月アナタが自分で言いだしたことで」
心「わーわー☆ 聞こえない、なんも聞こえなーいー☆」
飛鳥「……小学生か」
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心「今日はなんと! ツインテールの日なんだぞ☆」
飛鳥「へえ」
心「そしてツインテールといえばこのシュガーハート☆ つまりはぁとの日といっても過言じゃない♪」
飛鳥「過言だろう」
心「えー、なんで? ノリ悪いぞ☆」
飛鳥「確かに心さんはツインテールのイメージが強いけど、うちには他にもツインテールがトレードマークのアイドルがいるからね」
梨沙「おはようございます。は~、今日も外さっむい!」
飛鳥「ほら、彼女とか」
心「むう……よく考えると、ツインテでアホ毛あるってキャラ被ってない? これはいつか白黒はっきりつける必要が」
梨沙「朝っぱらからなんの話してるのか全然ついていけないんだけど」
梨沙「あ、アタシオセロは強いわよ? 晴には全勝中だもん!」
飛鳥「ありすには?」
梨沙「つ、次やったらアタシが勝つもん!」
心「なんならオセロで勝負する? はぁとも結構強いぞ☆」
梨沙「いいわよ、やってやろうじゃない!」
心「長野VS山口……白黒はっきりつけちゃうぞ♪」
飛鳥「いつの間に県民対抗戦に」
友紀「今キャッツの話した?」ニュッ
飛鳥「長野選手と山口選手の話ではない」
心「ま、長野県民ははぁとが負けても文香ちゃんいるし☆」
梨沙「それずるい!」
梨沙「で、アタシが来るまでなんの話してたのよ」←白
心「あ、そうそう♪ 梨沙ちゃん、今日は2月2日ですが」←黒
梨沙「ハートさんのダイエット計画中間発表の日?」
心「キミら記憶力いいな! 若さかこのっ!」
飛鳥「今日はツインテールの日、らしいよ」
梨沙「へー。アタシの日みたいなものじゃない」
飛鳥「さっきの心さんと同じ反応だね」
梨沙「アタシのほうがツインテール大きいし!」
心「大きさだけが決め手だと思ったら大間違いだぞ♪」
梨沙「やっぱり白黒つけるしかないみたいね」
心「そのためのオセロだもん♪ はぁとが勝ったら今日ははぁとの日……みんなに優しくしてもらっちゃう☆」
心「飛鳥ちゃんに肩揉んでもらってー、梨沙ちゃんには腰を踏んでもらってー」
梨沙「命令がおばさんクサいわよ」
心「プロデューサーにはいい雰囲気のバーに連れて行ってもらってー♪」
飛鳥「Pに対する要求だけ女が出ているね」
心「こう、酔ったところをおぶってもらってそのまま家へ……やーん、スウィーティー☆ お子ちゃまには見せられないぞ☆」
梨沙「はい、角もーらい」
心「ぬわっ!? ちょ、ちょっと待って! 今のやり直し!」
梨沙「いいわけないでしょ。変な妄想してるからオセロがおろそかになるのよ」
心「ぐぬぬ……!!」
飛鳥「……もう、ふたりとも自分の日ということにすればいいんじゃないかい」
P「そうそう。無理にひとりを決める必要もないしな」
心「あ、プロデューサー」
梨沙「ええー? せっかくアタシ勝てそうなのに」
P「今日は割と暇だから、ちょっとくらいワガママ聞いてあげられるぞ」
梨沙「プロデューサーに言うこと聞いてもらってもねえ……」
心「プッロデューサー♪ はぁと、素敵なステーキが食べたいなあ☆ 神戸ビーフ☆」
P「それ、値段によってはちょっとくらいのレベルを超えますよね」
心「さすがに冗談♪ でも、今夜一緒に飲んでくれる、くらいならいい?」
P「それくらいなら」
梨沙「あっ! じゃあアタシ、駅前に新しくできたケーキ屋さんのケーキ食べたい! おいしいって評判なの」
P「ああ、それもいいぞ」
梨沙「やった♪」
飛鳥「………」
P「飛鳥、どうかしたか?」
飛鳥「いや……なんでも」
心「ひょっとして、羨ましい?」
飛鳥「べつに。ボクはツインテールじゃないから、願いをかなえてもらう権利もない。それだけさ」
梨沙「今から髪型変えれば? エクステをツインテール風にすれば」
飛鳥「………」
飛鳥「しないよ」
梨沙「ちょっと迷ったわね」
心「かわいいなあ♪」
翌日
心「いやあ、昨日のバー、評判以上にいい感じでとってもスウィーティーだったぞ☆」
梨沙「よかったじゃない。プロデューサーと行ったの?」
心「おう♪ バーのマスターがダンディなオジサマで、はぁとが『あの人イケメンだね』って言ったら、プロデューサーが『俺の前で他の男の話はしないでください』って」
P「言ってませんよ」
心「え? そうだっけ?」
P「言ったのは心さんですよ。『二人きりで飲んでるときに他の女の話はしないで』って」
梨沙「うわあ、独占欲強い」
心「え、ええ? そんなこと言った? うそ?」
P「言ってましたよ」
心「き、きっと相当酔ってたから……うん」テレテレ
梨沙「ホントに酔ってたの?」
P「その後『あと農家のおじさんの話もしないで泣けるから』って」
梨沙「間違いなく酔ってた」
心「この前農業体験させてもらったときに、いろいろと苦労話を聞いてね……」ホロリ
P「涙腺緩いですよね、心さん」
飛鳥「………」
梨沙「評判以上っていえば、アタシが昨日食べたケーキもおいしかったわ」
梨沙「生クリームがすっごく甘くてとろけそうだったし♪」
心「いいなあ、はぁとも今度食べよ♪」
飛鳥「………」
心「……ところで、飛鳥ちゃんはさっきから黙ってどうしたの?」
飛鳥「いや。ずいぶん楽しい思いをしたようだね」
心「昨日ははぁとと梨沙ちゃん、ツインテールアイドルの日だったからな♪」
梨沙「やっぱり羨ましかったんじゃない」
飛鳥「そうは言っていないだろう」
飛鳥「だいたい……アレだ」
梨沙「アレってなによ」
飛鳥「……そんなことを言ったら、今日はボクの誕生日だからボクの日のようなものだ」
心「………」
梨沙「………」
飛鳥「あ……な、なんでもない。今のは気の迷いだ、忘れて」
心「やーーっと自分から言ってくれた!」
飛鳥「………え?」
心「作戦成功だね、プロデューサー♪」
梨沙「まったく、素直じゃないんだから」
飛鳥「え? あの、作戦って」
P「飛鳥が素直に誕生日を祝われようとするための作戦、らしい。主犯は心さんだ」
心「普通に誕生日を祝っても、『ボクは自分が生まれた日のことを覚えていない。覚えていない日のことを祝っても仕方ないだろう』とか『ボクにとっては今日もいつもと変わらない普通の一日にすぎない』とか言ってすかしてきそうだと思ったから」
飛鳥「う」
梨沙「アタシが作戦聞かされたのは今朝だったけどね。ツインテールの日にアタシと心さんがいい思いをしてるのを見せて、次の日に羨ましいゲージが溜まった飛鳥が自分で誕生日のことをしゃべるのを待つんだって」
飛鳥「……手間のかかることを」
心「だってしょうがないじゃん♪ 一年に一度の誕生日なんだし、どうせなら思い切り祝ってあげたいでしょ?」
心「そのためには、ちゃんと本人が祝われる体勢になってくれないと、ね☆」
飛鳥「………」
飛鳥「ボクは……誕生日だからといって、それだけの理由で福音をもたらすことには、まだ納得がいっていないんだ」
飛鳥「ただ。特別な人間とは、他人に特別だと認められるからこそ特別――それと同じように。特別な日とは、誰かに特別だと認められるから、特別な日なのかもしれない……とは、思う」
飛鳥「つまり」
梨沙「今日は、素直に祝ってもらう。でしょ?」ニヤ
飛鳥「……あぁ。一本取られたからね」クスッ
心「やった♪ はぁと、この日のために飛鳥ちゃんにお似合いのスウィーティーな服作ってきたの☆ さっそく持ってくるから着てね! 着ろ☆」
飛鳥「フッ。それは現物を見てから決めるよ」
心「やーん、冷静☆」
梨沙「じゃ、冷蔵庫に入れてるケーキ持ってくるわね」
P「梨沙は二日連続ケーキだな」
梨沙「たまにはいいでしょ。甘いの大好きだもん!」ニコニコ
梨沙「飛鳥もそうでしょ?」
飛鳥「……うん、そうだね。たまには、甘さに身を委ねるのも心地がいい」フフッ
その日の夜
飛鳥「……もしもし、母さん」
飛鳥「……うん。ありがとう。またひとつ、歳を重ねたよ」
飛鳥「大丈夫。体調も崩していないし、東京での生活にも慣れたから。ボクは元気さ」
飛鳥「……え? ボクが自分から電話してくるなんて珍しいから心配になった? ホームシック? ないよ、こんなにぎやかな場所にいたらセンチメンタルになるのも難しい」
飛鳥「騒がしい音楽は、好きだけどね」
飛鳥「電話した理由は、ちゃんとあるんだ。母さんに、聞きたいことがあって」
飛鳥「単純な話なんだ。みんなが特別だと認めてくれる日のことを、知りたいと思ったから」
飛鳥「だから……教えて。ボクの、生まれた日のこと」
飛鳥「いつになく、聞きたいと思っているからさ」フフッ
おしまい
おわりです。お付き合いいただきありがとうございます
飛鳥誕生日おめでとう。一日遅れましたが誤差の範囲内ということで。
シリーズ前作:的場梨沙「お正月ね」 二宮飛鳥「あぁ」 佐藤心「祝え祝え☆」
その他過去作:モバP「なっちゃんと年末年始」
橘ありす「雪ですね」 佐城雪美「呼んだ……?」
などもよろしくお願いします
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