速水奏「二年越しの想い」 (205)
それはまるで太陽のように――まばゆく、あたたかく、まっすぐに、私の心を照らしだす。
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躍動するその姿を初めて見た時、私は彼女の魔法に掛かってしまった。
掛けられた魔法は、今も私の心を掴んで離さないままでいる。
その気になれば、いつでもその一歩を踏み出し近づけたはずだった。だけど――
光り輝くその場所に近づけば近づくほど、足元の影が濃くなるのを恐れて、その勇気を持てないでいた。
軽やかに、鮮やかに、縦横無尽に所狭しと舞うその姿は、私の一番の目標であり、憧れだった。
壇上に立ってひとたび動き出せば、離れて見ていた私の心もそれに呼応するように躍り始める。
そして動く心とは対照的に、体は芯から痺れるような感覚に釘付けにされた。
その自由奔放さがまぶしくて、うらやましくて、ときには目を背けたくなってしまうくらい。
そんな溢れんばかりの輝きに照らされた私の姿は、遠く離れた貴女の隣で、どんな風に映っているんだろう。
――答えを聞くことさえも、ためらってしまっていた。
――――――――――――――――――――
あの人に誘われてアイドルの仕事を始めてからというもの、私にはたくさんの仲間が出来た。
そこで過ごす毎日は、彼女達が放つ様々な色に彩られていて、どこを見ても違う景色が映っていた。
それぞれから私の知らない事や、知らない世界を教えてもらい、日々新しい色が自分の中に増えていった。
共に頂点を目指すうえで、互いを高めあえる大切な存在でもあった。
そんな中でも同年代付近の仲間に対して、私は基本的にみんなを呼び捨てにしている。
どうしてかといざ聞かれると、返答に困ってしまう。
単にそのほうが呼びやすいから? ――即座に浮かんだのは、答えにもならない実に曖昧な疑問形だった。
そして基本的にというからには、当然例外が存在する。年齢が近くとも、呼び捨てにしていない仲間もいた。
これもどうしてかと聞かれると、また返答に困ってしまう。
呼びやすいのが同じ理由だとして、本当にそれだけ? ……今度は疑問形ですら、浮かんでこない。
でも心の奥底ではきっと、そんな不確かなものだけじゃないとも思っていて――
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