藤原肇「夢見るころを過ぎても」 (10)

『私には夢がある』

授業で習った有名な演説の中に、そんな一説がありました

「歴史を変えた人の、歴史に残る演説です」

先生の言葉を聞きながら、頭の中では私自信のことを考えていました

私にも、夢があります

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それは本当に夢で、口に出すのもためらわれるような、遠い世界のお話で

やっぱり夢だから、って、自分で納得したフリをして

それでも、先にCDデビューした人たちのライブをお手伝いしてるとき、ステージの袖で観ているのは、やっぱり辛くて

岡山に帰ろうって、何度も何度も考えて、それでも……

それでもやっぱり、諦めきれなくて

お仕事のたびに、少しずつ増えていくファンの方たち

『いつまでも応援しています』

『肇ちゃんの歌声が日本中に響く日が早くきますように』

『肇ちゃんこそが僕のシンデレラガールです』

事務所に届いたお手紙の中の言葉に、毎日のように救われて……

みなさんに何かを届けなきゃいけないのは私の方なのに、いつもいつも貰ってばかりで……

ファンの方たちに足りないものなんて無くて、足りないのは私の実力で……

そんなふうに自己嫌悪に陥る自分が、情けなくて……

だから私は、決めました

もう、夢を見るのは止めよう、って

私にも夢があります

あのステージに立って、私の歌声を届けたいという夢が

だけどそれを『夢』と呼ぶのは、もう止めにします

『夢』と呼ぶことで、届かないことを前提にしていたんだって、そう思ったから

届かなかったときに「ああやっぱり」って納得しやすいように、最初から逃げてただけなんだって

だから私は、もう夢を語りません

私は、あのステージに立ちます

何年かかるか分からないけど、『諦めない』ということの大切さを、ファンの方やアイドルのみんなが教えてくれたから

『諦めずに、全てを捧げる』ということ覚悟が、私にもできたから

そして今度は……

私からの贈り物を、たくさんたくさんお届けできるように!


お し ま い

終わりです
肇ちゃんPのみなさん、本当にお疲れ様でした

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