二宮飛鳥「月下に、二人で」 (18)

P「……こんな所にいたのか、飛鳥」

飛鳥「……ん。ああ、××××か。」

飛鳥「フ……さすがだね、とでも言うべきかな?
こうも速くボクのことを見つけ出してくれるとは、ね」

P「よく言うよ。これ見よがしに口笛なんて吹いてみせて。
これでは見つけてくれって言っているようなものだろうに」

飛鳥「口笛の音が届く距離なんて、たかが知れているさ」

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飛鳥「元よりボクの居場所について目処を立ててなければ、
そもそもこの調べを耳にすることすら出来なかった筈……違うかい?」

P「……いや、違わない」

飛鳥「フフ……そうだろう?
やはりキミは、ボクのことをボク以上に理解しているらしい」

P「…………。
そんなことより」

飛鳥「……今、ちょっと照れただろう?」

P「……そんなことよりっ。
お前、パーティを抜けだしてこんな所で何をやってるんだ。
急にフラッと居なくなるもんだから、蘭子達が心配してたぞ?」

飛鳥「別に、見たままさ。
こうやってジャングルジムに腰掛けながら、夜空を益体もなく眺めていただけだよ」

飛鳥「これであの月が満月だったり新月だったりすれば、
何ともロマンチックだったのだけれど、まあそこは我慢するしかないね。
月だって、人間(ぼくたち)の都合を押し付けられたら溜まったものではないだろう」

飛鳥「あぁ、それと……」

P「…………?」

飛鳥「ボクがまた一つ齢を重ねる特別な夜……
まあ厳密に言えば、昨日の時点で戸籍の上では15歳になっているのだけれど」

飛鳥「……話がズレたね。そう、その特別な夜を、
キミと二人で語らいながら過ごしたい……そう思ったのさ」

飛鳥「パーティを抜けだしたのも、その為のお膳立てだよ。
キミならきっと、ボクを探しに此処まで来てくれると確信していたからね」

P「特別な夜、ねぇ。
去年は確か、セカイに特別なんてない……みたいなことを言ってはいなかったか?」

飛鳥「ああ、そんなことも言ったっけ。
まあ、人間は常に移ろいゆく生き物だからね。
一年もあれば宗旨替えだってするさ」

飛鳥「こうやって取り留めのない話をしている最中にも、
ボク達は一瞬前のボク達とは別の存在に生まれ変……わ……は……くしゅんっ」

P「…………」

飛鳥「…………」

P「くつくつ……随分と可愛らしいくしゃみだな?」

飛鳥「……からかうのはやめてくれないかい」

P「はん、さっきのお返しだよ。
……ティッシュやるから、鼻かんどけ」

飛鳥「かたじけない……
ああ、それと……」

P「ん? ……ああ、あっちを向いてろってことか。
わかったよ……ほら、さっさと済ませてしまえ」

飛鳥「……本当に気が利くね、キミは」

P「これくらい察せられないようじゃ、アイドルのプロデューサーなんてやっていられないからな」

飛鳥「……それもそうか」

チーン!

飛鳥「ん…………ふう。もうこっちを見ても大丈夫だよ」

P「……まったく。こんな寒空の下、コートも着ずに出てくるからこうなるんだ。
とりあえずこれでも羽織ってろ」

飛鳥「ありがとう。
……事務所に戻れ、とは言わないんだね?」

飛鳥「何かと過保護なキミのことだ、
てっきり何がなんでも連れて帰るつもりだと思っていたのだけれど」

P「言ったって素直に聞きやしないだろ、キミは」

P「それにまあ、担当アイドルの我儘を……全てとは言わんがある程度は受け入れてやるのも、
プロデューサーにとっての大事な仕事だしな」

飛鳥「フフ……そうかい」

P「で、オレと語らいたいと言っていたが……一体どんなことを話すんだ?
プライベートのこと? 仕事のこと? それともそれ以外のことか?」

飛鳥「別にどんなテーマだって構わないさ。
プライベートのことでも、仕事のことでも、それ以外のことでも」

飛鳥「キミとこうやって言の葉を交わすことができる……
それだけで、ボクの心は十分満たされるのだから」

P「……随分とまあ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか」

P「それじゃ、キミの気が済むまでとことん付き合ってやるよ。
……と、言いたいところだけど」

飛鳥「ああ、理解っているさ。
蘭子達を待たせてしまっている以上、そう長居は出来ない……ということだろう?」

P「ああ。寮の門限のことを考えると、パーティのお開きまでそう時間もないからな」

飛鳥「となると、こうしていられるのは精々30分……よくて1時間という所か。
まあ、時間の長短なんてどうでもいいのさ、重要なことじゃない」

飛鳥「例え刹那の交わりであったとしても、心を心を通じ合わせることができれば、
それはきっと永遠に等しい価値を持つと、ボクは信じているからね」

飛鳥「さあ……始めようか、××××。ボク達二人だけの、月下の夜会(パーティ)を」

飛鳥「……と、その前に」

P「……どうした?」

飛鳥「我儘ついでにお願いしたいのだけれど……
キミの口から、聞かせてくれないか?
……この夜を鮮やかに彩る、祝福の言葉を」

P「…………それなら、事務所で何度も言っただろ」

飛鳥「あんなものは場の流れで口を衝いただけの戯言(はりぼて)だろう?
ボクが聞きたいのは、キミの想いがいっぱいに詰め込まれた、
キミにしか綴ることのできない福音なのさ」

P「……ったく、本当に面倒な奴だな、キミは」

飛鳥「仕方がないよ。
思春期の14……いや、思春期の15歳なんてものは、とかく痛くて面倒なものなんだからね」

P「……来年までにはいい加減思春期卒業しとけよな」

飛鳥「フ……善処はするよ」

P「…………」

P「……まあ、いい。こんなこっ恥ずかしいセリフ、一度しか言わないから……
耳の穴かっぽじって良く聞いておけ」




──ハッピーバースデイ、飛鳥。……オレのシンデレラよ。
キミとオレがこれから往く道に、どうか幸があらんことを──

飛鳥「…………」

P「…………」

飛鳥「……フ」

飛鳥「フ……フフ……フフフ……! 『オレのシンデレラ』か……!
これは傑作だ……!
やっぱりキミもボクと同じ、『痛い奴』だったようだね……!」

P「ぐあああああああ! いっそ殺せえええええええええ!」


おわり

~おまけ~

飛鳥「…………」モキュモキュ

P「…………」

P(飛鳥が恵方巻き食ってる……)

飛鳥「…………」モキュモキュ

P「…………」

P「…………」ムラッ

P「……はっ!?
いかんいかん……!
プロデューサーたるもの、担当アイドルに対してそんな視線を向ける訳にはァ……!」

晴「……なんで奇妙なダンスを踊りながら騒いでるんだ、アイツ」

梨沙「ほっときなさい。どうせいつもの発作でしょ?」

飛鳥(何だか騒がしいなぁ……)モキュモキュ



今度こそおわり

誕生日&ボイス実装おめでとう、飛鳥
早く思い出エピソード前編以外でも声を聞かせておくれ

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