モバP「俺がいなくても大丈夫だよな」晴「!?」 (43)

・2年後、晴たちが中2になった頃のお話

・アイドルの仕事のため中学に上がると同時に寮住まいしている設定です



※読まないと今作がわからないかもしれない初作

梨沙「晴ってモテるわよね」モバP「!?」
梨沙「晴ってモテるわよね」モバP「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1433259012/)


※読まなくても今作がわかる続作

梨沙「晴とはどうなのよ?」モバP「!?」
梨沙「晴とはどうなのよ?」 モバP「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1440184057/)

飛鳥「キミたちは、いったい」モバP「!?」
飛鳥「キミたちは、いったい」 モバP「!?」 - SSまとめ速報
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晴「か、カワイイ衣装でもいいぜ!」モバP「!?」
晴「か、カワイイ衣装でもいいぜ!」モバP「!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1442669273/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450358882

ちひろ「――さん、プロデューサーさん!」

P「むにゃ…………うん、うん? はっ」

ちひろ「ようやくお目覚めですか? もう、しっかりしてください! こんなところで寝てる場合じゃないですよ!」

P「す、すみません……ははは、もう年かな」

ちひろ「まだそんな年齢じゃないでしょうに。待ってますよ、あの子たち」

P「あいつらなら大丈夫ですよ、とはいえ職務怠慢といくわけにいきませんね。行ってきます!」

ちひろ「いってらっしゃい――差し入れのドリンク、ハーフじゃ足りませんでしたかね?」

P(あまり寝れてなかったからな……油断した)

P(とはいえあいつらのことだ、今さら俺が最初から最後までついててやらなくても、おっ)


梨沙「遅ーーいっ! 何やってたのよ!」

晴「しっかりしてくれよプロデューサー。そろそろ本番だぜ?」


P「悪い悪い、混んでてな」

梨沙「そういうのは寝癖直してから言いなさいよね?」

P「……げっ」

晴「頼むぜほんと、アンタに見ててもらわないと調子狂うんだからさ」

梨沙「イチャイチャするのも後にしなさい、ほらいくわよ晴!」

晴「い、イチャイチャなんてしてねーだろ! ……行ってくる!」

P「おう、行ってこい2人とも。……ふぅ、なんとか間に合ったか?」



P(そして今日もつつがなく仕事をこなす2人を見守るのだった)

梨沙「――ま、こんなもんよねぇ。それとももう少し目立った方がよかった?」

P「いや、そんなもんさ。晴もそう思うだろ?」

晴「まーあんなもんか。調子に乗ると止まらなくなるしな梨沙って」

梨沙「いいのよ、そしたら晴が前に出てアタシを止めればいいんだもん。揃って目立つでしょ?」

晴「オレにお守りさせんなよ……寝坊されるよか全然いいけどな」

P「うぐ……で、でも大丈夫だったろ? 俺はお前たちを信用してるから安心して寝過ごせるんだ」

梨沙「だからって寝坊されてもねー? それってアタシ達の時だけ? それとも他のアイドルにもそんななの?」

P「今日はたまたまだよ。みんな忙しくしてるのに1人で寝ぼけてられないからな」

晴「どうだか。じゃあ、オレらの次のスケジュール頭に入ってるか?」

P「もちろん。今日はさっきので終わりだ。寮まで送るよ」

梨沙「アンタはどうすんの? 事務所?」

P「そ、戻ってまずは……ちひろさんのお説教かなぁ」

晴「……なぁ、オレも事務所行くからそのまま乗せてってもらえるか?」

P「? そりゃいいけど、忘れ物でもしたのか?」

晴「いや、まぁそんなとこ」

梨沙「ならおじゃま虫はさっさと寮に帰んないとね。学校の宿題もあるし」

晴「なんだよおじゃま虫って……ったく」

P「ははは……晴はどうなんだ? 勉強の方は」

晴「んー、んーーーー……ぼちぼち?」

P「ほう。なあ梨沙、晴の成績はどうだ?」

梨沙「教えてもいいけど高くつくわよ?」

晴「言わせねーよ! つーか言うなよな!」

梨沙「じゃ、うまくやんなさいよね♪」

晴「何をだよ。後でな、梨沙」

P「なあ、急ぎの忘れ物なら取ってきてやろうか?」

晴「いいんだ、ほらさっさと出してくれ。梨沙の顔がうざい」

P「へいへい。じゃあ事務所に戻るぞ」




ちひろ「あっ、プロデューサーさん――って、晴ちゃん?」

晴「うっすちひろさん。邪魔するぜ」

P「事務所に用があるって言うから連れてきました。さてちひろさん、俺に言うことは?」

ちひろ「何を居直ってるんですか……晴ちゃん、プロデューサーさんは間に合いました?」

晴「まぁな。ギリギリだけど」

ちひろ「そうですか、じゃあ今回の件はこれでお終いにしましょう」

P「言ったでしょう? あいつらなら大丈夫だって。ビートシューターに限らず、みんな頼もしくなりましたよ」

ちひろ「そういう問題ではないんですけど、ひとまずこれでも飲んでくださいな」

P「スタドリですか……最近効きが悪くなってきた気がするんですよね」

晴「うわ、それのビンばっかだなプロデューサーのデスク。飲みすぎなんじゃねーの?」

P「そうかもな。それもこれもちひろさんがホイホイ餌付けするから」

ちひろ「人聞きの悪いことをおっしゃる方にはあげませんよ?」

P「あー嘘です嘘です、いただきます!」

晴「……でもそればっかじゃ体に悪くねぇ? ちゃんと寝てんのか?」

P「気にすんなって。晴こそ明日もあるんだ、用が済んだら早く帰った方がいいんじゃないか?」

ちひろ「ちょっ、プロデューサーさん!」

晴「うるせーな、オレの体力なめるなよ? ……ジュース買ってくる」

P「……おう」

ちひろ「プロデューサーさん、あんな言い方はないんじゃないですか?」

P「本当のことですから。俺も今は構ってやれるほどの時間もないですしね」

ちひろ「……そのことですが、少し頑張りすぎじゃありませんか? ただでさえ担当アイドルを多く抱えてるのに」

P「たしかにここのところ忙しいですね。でもそれは嬉しい悲鳴ってやつですよ」

ちひろ「プロデューサーさんのおかげでお仕事に困らないくらいですもんね、みんな」

P「路頭に迷わせるのだけは嫌でしたから、なんとか軌道に乗ってよかったです」

ちひろ「でも……その、そんなプロデューサーさんの業績を見込んでか、あるプロジェクトが企画されてるとの噂も聞きますよ」

P「噂? どんなですか?」

ちひろ「なんでも新人アイドル十数人を主体としたプロジェクトで、それをプロデューサーさんに任せられるんじゃないかって」

P「俺に? どうして俺なんかに」

ちひろ「スカウトから育成まで幅広くこなして結果を出してるプロデューサーさんが適任だと、私もあなたならって思うところありますし……」

P「……。参ったなあ、俺はただ必死でここまできただけなんですがね」

ちひろ「えぇ。知ってます。見てましたから」

P(まずいな、このまま話してたらちひろさんに勘付かれそうだ)

ちひろ「……プロデューサーさん?」

P「いえ、何でもありません。さあ仕事を片付けちゃいましょう! 俺もたまには早く帰りたいですしね!」

晴「……。あー」

晴「さてと、言い訳考えとかなきゃな。どうやって居座ろうか――」






梨沙『おっそいわねぇ、何してるのかしら?』

晴『さぁな。普通に寝坊とかだったりするんじゃね?』

梨沙『寝坊ってアンタ……忙しいのはわかってるけどさー』

晴『少しぐらい遅れてきたって何とかなるだろ。オレらさえいれば』

梨沙『そうはいってもね、アイツがいるといないとじゃ晴のやる気が違うっていうか』

晴『んなっ!? そんなことねーよ!』

梨沙『そんなことあるわよ、アタシが気づいてないとでも思ってた?』

晴『……あーあーわかったわかった、迷惑かけないようにする。これでいいだろ』

梨沙『ねぇ、最近アイツとの時間も取れてないんでしょう? どうしたのかしらね』

晴『お前なぁ、プロデューサーが忙しいって自分でさっき言ってたじゃねーか』

梨沙『どんな忙しい人だって休みもなく働き続けられないわ。それに、忙しい時もなんとか合間を縫って一緒に過ごしてたんじゃなかった?』

晴『…………』

梨沙『で、オフの日に最後に2人きりで会ったのいつなのよ』

晴『……3ヶ月前、いや4ヶ月前だったかな』

梨沙『うそっ!? どうして会いに行かないのよ!』

晴『忙しいとか、都合が合わないとか言われたら……どうしようもねーだろ?』

梨沙『それが納得いかないの! 晴は引き際よすぎだし、アイツもあれだけ晴を優先してたのに』

晴『そ、そうなのか?』

梨沙『他の子の誘いに一切乗らないってわけじゃなかったけどね。でも過ごした時間はアンタが断トツで長いはずよ』

晴『……そう、だよな』

梨沙『その晴の誘いにも乗らないってことは、何か企んでるんじゃないの? これからもっと忙しくなるような何かをね』

晴『企んでるって、お前なぁ』

梨沙『やっぱりアレかしら? 新しくおっきなプロジェクトが企画されてるんじゃないかってやつ』

晴『噂になってるやつか。なんかバタバタしてるもんな。でもそんな話、アイツの口から聞いたことないぞ』

梨沙『そういうもんでしょ。ちひろぐらいにはそういう話してるかもしれないけどね』

晴『……そりゃ仕事の話されても力になれねーけど、何かあるなら言ってくれたっていいよな』

梨沙『素直に聞いてみたら? 本当に忙しくて相手にしてられないのか、理由があって遠ざけてるのかぐらいはわかるでしょ』

晴『遠ざける……か』

梨沙『あ、ごめん……言い方悪かったわね。たしか今日は事務仕事だけでチャンスなはずだから、仕事終わったら事務所までついてったら?』

晴『ついてくって、理由もなく? そんなのオレがわざわざ会いにきたみたいじゃねーか!』

梨沙『それでいいじゃない。理由がなきゃ会わないような関係でもないでしょ?』

晴『でも……仕事の邪魔するわけにもいかねーし』

梨沙『仕事の邪魔ってんなら晴のモチベーション下げさせるアイツの方が仕事の邪魔よ! とにかくぶつかってきなさい、らしくないわ!』



晴(――あっさり勢いに任せるオレもオレだよな)

晴(まぁ、たしかにPとサッカーしたりする機会も減ったし、調子出ねーんだよなここんとこ)

晴(これじゃPから誘ってくれるのずっと期待してたみたいじゃねーか、オレ)

晴(……みたい、じゃなくてそう、だよな。うん。自分を誤魔化してもどうしようもないな)

晴(Pの方は、どうなんだろう。そりゃ余裕はもともとないんだろうけど、オレに割く時間なんて必要ないのかな)

晴(Pはオレのこと、今でも友達だと思ってるのかな)

晴(……オレはPのこと……どう思ってるんだろう)

ちひろ「はーるちゃんっ」

晴「うわわっ!? な、なんだちひろさんか……」

ちひろ「ご、ごめんなさい……そんなに驚かしちゃったかしら?」

晴「いや、考え事してたからさ。ちょっとだけびっくりした。ちひろさんジュースでも買いにきたのか?」

ちひろ「そうじゃないけど、そういう晴ちゃんはまだ何買うか選んでたの?」

晴「えっ? ……そうだった。ジュース買いに来たんだよなオレ」

ちひろ「……。晴ちゃんは知ってますか? 今うちの事務所でささやかれてる噂の話」

晴「噂? あー、なんか新しいプロジェクト立ち上げるとかだっけ?」

ちひろ「そうなの。それで、晴ちゃんは何か聞いてないかなと思いまして。みんなに1度に聞くと混乱させちゃうかもだから、こっそり聞いてもいいですか?」

晴「おう、いいぜ。といってもオレからちひろさんに話せそうなことはないよ。……それより、そんなこそこそしないといけない話なのか?」

ちひろ「実は――」

P「……晴のやつ戻ってこないな。事務所に来る用があるんじゃなかったのか」

P(いや……用があったのは俺、だよな。しばらくオフの日に誘わなかったし)

P(晴からしたら急に避けられたかのように思っても仕方ない。けど、俺は……)

ちひろ「ただいま戻りましたー」

P「わあっ!? ってなんだちひろさんか」

ちひろ「どうして戻っただけで驚かれないといけないんですか! まったく2人して……さすがにいじけちゃいますよ、もうっ」

P「? そういえば晴、どこ行ったんですかね。ジュースを買いに行ったにしては遅いような」

ちひろ「……晴ちゃんなら帰っちゃいましたよ?」

P「そうなんですか? あいつ何しにきたんだ……」

ちひろ「わかってるくせに」

P「えっ」

ちひろ「晴ちゃんがプロデューサーさんに会いにわざわざここまで来たの、わかってますよね?」

P「な、なんでそんなこと」

ちひろ「見てればわかりますよ。……といっても、最近晴ちゃんとサッカーしてる様子が見られないなぁって思っただけですけど」

P「それだけでわかるもんなんですか」

ちひろ「あとは勘、ですかねぇ。これはどちらかといえば晴ちゃんを見てたらそう思いまして」

P「……。ちひろさん、つまらない話ですがちょっとだけ聞いてもらっていいですか?」

ちひろ「もちろん♪ 最初からそうしてもらうつもりでしたよ」

P「おお、こわいこわい。つまらないというか、凄く恥ずかしい話なんですが」

ちひろ「えぇ」

P「晴……かわいくなりましたよね。それはもう」

ちひろ「えっ、親馬鹿的な何かですか?」

P「そうじゃなくて。その、ちょうど思春期じゃないですか。日に日に女の子らしくなっていくなーって」

ちひろ「あっ、そういうことですか。ですねぇ、下手すれば男の子に見えなくもなかった晴ちゃんでしたが」

P「学校の制服で当然のようにスカートはいてる機会も増えましたし、あとはその、ね?」

ちひろ「ね? じゃないですよ、言いたいことはわかりましたけど」

P「そんな感じで、その……サッカーしてる時なんかもそうなんですが、だんだん晴が女の子だってことに意識が向くようになっちゃいまして」

ちひろ「ほほう」

P「もちろん昔から女の子として接してきましたよ? でも女の子扱いして喜ぶあいつじゃないですからね。ありのままに接してきたんです」

ちひろ「だんだん見えてきましたね。つまり女の子らしくなった晴ちゃんと今まで通り接することが難しくなった、ということですか」

P「そんなところです。晴とは今まで通りの付き合い方をしてやるのがいいと思っていますから、俺がこんな状態では……」

ちひろ「いいんじゃないですか? 付き合い方にこだわらなくたって」

P「……そうですかね」

ちひろ「晴ちゃんがそう望んでるというならそうするべきでしょうけど、晴ちゃんはどう思っているのでしょう?」

P「……」

ちひろ「少なくとも、今は急に冷たくされて戸惑ってるんじゃないですか? 晴ちゃん」

P「冷たくしてるつもりは……」

ちひろ「そう受け止められたら一緒なんです! プロデューサーさんがそんな風に悩んでること、晴ちゃんは知らないんでしょう?」

P「そりゃ本人に言えるわけないじゃないですか」

ちひろ「それでも、晴ちゃんは待ってると思いますよ。プロデューサーさんの言葉を。距離を置かれた理由を」

P「……わかってますとも」

ちひろ「このまま何も伝えずにいなくなったりなんて、考えてませんよね?」

P「どういう意味ですか」

ちひろ「今までになくお忙しそうにしていらっしゃいますからね。でもそれは担当アイドルのこととは別件、違いますか?」

P「……」

ちひろ「さっきの話、やっぱり本当なんじゃありません? 新プロジェクトのお話。今度はとぼけちゃだめですよ」

P「……推薦はされています。何らかの形で携わることにはなるでしょうが、自分が取り持つかは、まだ」

ちひろ「そのことは誰にも?」

P「ええ、ちひろさんが初めてです。もしそうなったら担当してるアイドル達は誰かに任せることになりますね」

ちひろ「そんな大事なことを……」

P「すみません。しかしこんな形で口を割らされることになるとは……」

ちひろ「そのことは謝ります。でも、だからって晴ちゃんと向き合わずに逃げ道を作るのはいくらなんでも酷すぎます!」

P「じゃあどうしたらいいんですか!」

ちひろ「話し合うしかないでしょう! 訳もわからず担当ですらなくなるなんて知ったら、それこそ!」

P「いや、でも……担当アイドルを1人の女の子として意識してしまう方が、よっぽどのような……」

ちひろ「それはそれです。まだ晴ちゃんに拒まれたわけでも受け入れられたわけでもないのに。晴ちゃんの気持ちだって無視して」

P「……。ちひろさんからそんな風にお叱りを受けるとは思いませんでした」

ちひろ「私だってこんなこと言うべきでないのはわかってますよ。それでも私はアシスタントですからね、プロデューサーさんの」

P「ちひろさん……」

ちひろ「どんな結果になろうと、プロデューサーさんなら大丈夫だって信じてますから。晴ちゃん、そしてご自身の気持ちを大切にしてください。いいですか?」

P「ははっ、俺はつくづくいい人に支えられてきたみたいです」

ちひろ「今頃気づきました? 遅すぎますよっ♪」

晴「……」

梨沙「あら? 帰ってくるの早くないは、る……何があったの」

晴「……」

梨沙「晴ってば」

晴「……ん、あぁ。梨沙か……」

梨沙「酷い顔してるわよ。下ばっか見ながら歩いてないでアタシの部屋にきなさい」

晴「いいよ……別に。ここで宿題やってたんじゃないのか」

梨沙「よくない! ……わかんないとこ誰かに教えてもらいながらやるつもりだったけど、いいの。引っ張ってでも連れてくんだから!」

晴「わ、わかったからほんとに引っ張るなよ。行く、行くから待てって」





梨沙「――それで、なんだってそんな顔しながら帰ってきたのよ。Pとは話したの?」

晴「いいや、何も」

梨沙「それじゃあなに? 拒絶でもされた?」

晴「……わかんねぇ。頭ん中ごちゃごちゃで、黙って帰ってきちまった」

梨沙「原因は? まさか何話していいかわからなくて、ってだけじゃそうはならないわよね」

晴「……。Pが…………」

梨沙「Pが? アイツが、なに?」

晴「オレたちのプロデューサーじゃなくなるかもしれないって……」

梨沙「……、そう」

梨沙「かもしれない、ってことはまだ決まったわけじゃないのよね?」

晴「……あぁ」

梨沙「なら簡単よ。そうならないようアタシたちで引き留めるの。勝手に辞めるなってね」

晴「…………」

梨沙「晴はこのままアイツが担当外れてもいいの? そんなわけないでしょ?」

晴「当たり前だろ……考えたこともなかったよ。だから、よくないことばっか考えちまって」

梨沙「……。先に言っとくわよ。Pは晴のことが嫌になったとかそんなんじゃ絶対ない。だからそんな顔しないで、ね?」

晴「オレ、そんな酷い顔してるのか?」

梨沙「鏡見る?」

晴「……いや、いい。今度こそ自分のことが嫌いになりそうだ」

梨沙「今度こそ、って何よ。アンタ鏡見て自己嫌悪するようなキャラじゃないでしょうに」

晴「うるせーな、オレだって自分のことで悩んだりするっつの」

梨沙「……ふーん? もしかして、その辺のこともアンタの頭の中がごちゃごちゃになってる原因になってるのかしら?」

晴「さぁな……」

梨沙「もう、こんな調子じゃ埒があかないわね。……そうだ! 今日は久しぶりに一緒のベッドで寝ない? 今度はアタシの部屋で!」

晴「なんだよ、またホームシックにかかったのか?」

梨沙「そうじゃないわよ! 今度はアタシが晴の話聞くの。落ち着いて眠れるようになるまでね」

晴「……お前さぁ、強引だよな」

梨沙「いいじゃない、今に始まったことじゃないでしょう? そうしないとアタシの気が済まないんだから。晴の沈んだ顔なんて見たくないもん」

晴「そっか。……Pのことで梨沙に頼らないようにしようと思ってたんだけどな」

梨沙「ま、今回は晴だけの問題じゃなさそうだしね。それに2人が上手くいってると思って口出ししなかったアタシもアタシだし」

晴「オレ達よりもオレ達のことを気にかけてるよな、梨沙って」

梨沙「そりゃあ、気になるじゃない。晴もPも鈍いし。ってそんなことはいいでしょ! 暗くなるまでまだまだあるけど、どうする?」

晴「そうだな、ちょっと……落ち着きたい。また悪いこと考えちまうかもだけど、1人になって頭ん中整理したいな」

梨沙「その方が夜話しやすいかもね。わかった、じゃあまた後で。絶対来なさいよ? 来なかったらそっち行っちゃうから!」

晴「わかってるって、ありがとな。じゃあ……オレ、部屋に戻るわ」

晴「……」

晴「…………はー、あぁぁ」ポフッ

晴「……」

晴(寮に住みだしてしばらくの間はほとんどオレの部屋で寝てたっけ、梨沙のヤツ)

晴(さすがに少なくなってきたなと思ってたとこへ今度はオレが世話になるとは……)

晴(……アイドルにならなきゃ、家を離れて転校してまで寮に住むことなんかなかっただろうな)

晴(オレがアイドル続けられたのは……Pがいたからだ)

晴(アイドルしてるのが楽しくなったし、Pといられる時間も気に入ってた)

晴(このままPがいなくなったら、オレは……ここにいられるのか?)

晴(アイツがいなくてもアイドルとしてやっていけるのか?)

晴(Pがいたからアイドルやってこれたし、アイドルやってればPといられるって思ってた)

晴(オレにはPが必要だ。勝手にいなくなられてたまるかよ)

晴(……)

晴(Pに、そばにいてほしい。最近そればっかだな、オレ)

晴(中学上がってから、少しずつ態度がよそよそしくなっていった気がするんだよな……P)

晴(サッカーしててもあんまり当たりを強くしてこなくなったし)

晴(やっぱPは男っぽいオレを友達だと思ってくれただけで、見た目女っぽくなってきたオレのことはもう……)

晴(……ああああ! 考えるな考えるな! Pはそんなヤツじゃないだろ!)

晴(はぁ……。なんか考え方まで女々しくなってきてねーか? 知らねーけど)

晴(…………はっきりさせないとな。オレはどうしたいんだ。どうなりたいんだ?)

晴(迷ってる場合じゃない。ずっと先延ばしにしてきた答え、せめてそれを出すまでは)

晴(……いなくなるなよ、P)

いったんここまで

書きあげてから投下しようと思ったけど年内に終わらせるため先んじて投下しときます

それにしても梨沙がまた書いたら出る現象(4ヶ月ぶり2度目)でした

P「うーん……」

ちひろ「ケータイ片手に何を唸ってるんですか?」

P「いえ、せっかくちひろさんに励ましてもらったし、晴とちゃんと向き合おうと思ったのですが」

ちひろ「思ったのですが?」

P「……どうしたものか、何て言えばいいですかね?」

ちひろ「それくらいご自分で考えてくださいな」

P「電話するにもなんだか上手く話せなさそうな気がするし、メールにしてもどういう文面がいいのか、どっちがいいんでしょう?」

ちひろ「上手く話せなくても今の気持ちは伝えられるんじゃないですか? 私は電話の方がいいと思います」

P「そうですか……そうですよね」

ちひろ「それより今日のお仕事は終わりました? もういい時間ですけれど」

P「晴のことばかり考えてたから進捗ダメです」

ちひろ「……まずはやるべきことを片付けてからにしましょうよ。それともまた事務所で寝過ごすおつもりで」

P「すみませんでした」

ちひろ「いえいえ♪」

P(これ以上ちひろさんに迷惑かけるわけにもいかないな。ひとまず仕事を終わらせて帰ってから決めよう)

晴「梨沙ー、入るぞ」

梨沙「来たわね。こっち座りなさいよ。どう? 少しは頭の中スッキリしてきた?」

晴「さぁな。梨沙こそ元気そうだけど眠くねーの?」

梨沙「パパと電話してたからいくらでも大丈夫♪」

晴「ふーん」

梨沙「なによ、せっかく晴のためになりそうなことパパから教わってたのに」

晴「ん? どういうことだ?」

梨沙「ずばり! 男の人はどんな色仕掛けに弱いのか!」

晴「娘からそんなこと聞かれる親父さんに同情したくなるんだが……」

梨沙「だーかーらー、アタシじゃなくってアンタがやるの! そこは最初にはっきりさせといたから誤解なんてないわよ」

晴「待て、それはそれでオレが色仕掛けしようとしてるみたいに思われるじゃねーか!」

梨沙「子供の成長は早いなあ、ってパパ言ってた」

晴「このままだとお前の家族に合わす顔ないんだが……」

梨沙「いいじゃない別に。アタシのパパは誰にもあげるつもりないし」

晴「そういう話でもないだろ。……って何の話してんだオレらは」

梨沙「晴がPを色仕掛けして落とすって話よね。じゃあ早速――」

晴「だから待て! なんでそういう方向で話進めようとしてるんだよ」

梨沙「だってそういうことでしょ?」

晴「オレの理解が悪いみたいに言うのやめろ!」

梨沙「しょうがないわねぇ、じゃあちゃんと話そっか。飲み物持ってくる」

晴「……歯を磨きなおす必要のないやつな」

梨沙「で、アンタはPに担当を辞めてほしくない。そうよね?」

晴「……当たり前だ。まだ辞めると決まった話じゃねーけど」

梨沙「でもどうなるかわからないんでしょ? だから今のうちにやれることをやっておくの」

晴「それが色仕掛けに繋がる理由がオレにはさっぱりなんだよ」

梨沙「Pは男で、晴は女の子だもの。他に何かある?」

晴「それだけ!? いや、他にいくらでもあるだろ……」

梨沙「一番効果がありそうなことやんなくてどうするのよ! で、アンタたちどこまで進んでるの?」

晴「進むって?」

梨沙「……。まさかとは思うけど、まだ付き合ってなかったとか?」

晴「まだ、ってなんだよ。オレとPは……別に、あの頃から変わって、ない」

梨沙「はーーーー!? 2年よ、2年!?」

晴「声でけーよ! たしかに2年経ったけどさ、そんな意外か?」

梨沙「てっきりキスぐらいはしてるもんだと思ってたのに……」

晴「ぶっ!? な、な、なんでキスしてないとおかしいって発想になるんだ!?」

梨沙「てことは、まったく手を出されたことないってことよね?」

晴「Pはそういうことするヤツじゃねぇ! 梨沙だってそれくらい知ってるだろ?」

梨沙「……まぁアイツはただでさえアイドルに囲まれて平然としてるわけだしね、女の子には慣れてるか」

晴「おぅよ。慣れたっていやぁ髪乾かすのも手慣れたもんなんだぜ、P」

梨沙「どういうこと?」

晴「んー、サッカーしてからPの部屋戻ってシャワー借りるんだけどさ」

梨沙「」

晴「なんかいつの間にかPに乾かしてもらうのが習慣になってたっつーか。オレも誰かに乾かしてもらったほうが楽だしな」

梨沙「それって今も?」

晴「……しばらくオフにPんとこ行ってねーしなぁ。シャワー借りたら多分してもらうんじゃね?」

梨沙「まさかと思うけどタオル一枚とかじゃないわよね?」

晴「さすがにちゃんと着替えてるよ。着替え忘れた時はPの服借りたりするけどな」

梨沙「うーん……なんかPに同情したくなってきたわね」

晴「?」

梨沙「晴はさー、もっと恥じらい持った方がいいんじゃない? もう中2よ?」

晴「お前がそれを言うのか? 昔っからセクシー路線を強調してきたお前が」

梨沙「アタシは売りにしてるからいいの。パパ以外にはそんなに安売りしないしね」

晴「親父さんには安売りするのか……」

梨沙「アタシのことはさておき、晴だって昔とは全然違うのよ? こことか」

晴「!? ど、どこ触ってんだ!」

梨沙「……やっぱりアタシよりちょっと大きいわよね。なんか悔しい」

晴「離せ、っつの! ……オレは小さい方が運動しやすくていいんだけどな。それに身長はお前のが少しあるじゃん」

梨沙「身長伸びたってしかたないの! じゃなくて、晴もあまり男の子っぽい格好しなくなったでしょ?」

晴「学校ある時は制服だしな。減ったって言えば減ったか、別に男っぽさじゃなくて動きやすさ重視してるだけなんだけどさ」

梨沙「Pは晴のこと、前よりも女の子として意識してるはずよ? アンタが見た目しか変わってないんじゃPも困るんじゃない?」

晴「……そうかなぁ」

梨沙「男女間に友情は生まれない、とまでは言うつもりないわ。でもそういう意識が芽生えちゃったらそのままでいられないと思うけど」

晴「Pがオレを女だって意識してる、そう言いたいのか?」

梨沙「さぁ、それは聞いてみないとわからないわね。逆に晴はどうなの?」

晴「どうなのって、何がだよ」

梨沙「Pを男だって意識してるかどうかに決まってるでしょ。まぁ男家族に囲まれて育った晴にはわかりづらいのかもね」

晴「…………意識って言われてもな。Pはもともと男だし、オレはもともと女だ。それじゃ駄目なのか?」

梨沙「あー、うん。言い直すわね。異性として意識してるかってことよ」

晴「異性? あぁ、そういうことか……」

晴「……それと色仕掛けが繋がってくるのか?」

梨沙「そうねぇ。まずPが引っ掛かるならアンタを女の子として意識してるってはっきりするわよね」

晴「まぁ、そうなる……か?」

梨沙「で、晴が色仕掛けをするってことは、女の子としてのアピールをPにするってことだから」

晴「……」

梨沙「そのままくっついて離れられなくしちゃえば、Pも担当降りたくなくなるじゃない」

晴「……お前オレとPが付き合ってると思ってたとか言ってなかったっけ。どういうつもりで色仕掛けなんかさせるつもりだったんだよ?」

梨沙「言ったけどさー、せいぜいキスぐらいまでの初々しい付き合いしか想像できなかったのよね。アイツとアンタじゃ」

晴「そこまで想像できるだけですげーよ……」

梨沙「それで駄目なら、パパから教わったこれをされると男は弱いって色仕掛けを試させようと思ったのよ」

晴「信用していいのか?」

梨沙「たとえば並んで歩いてる時に男の人の腕を抱くようにくっつかれると弱いんだって。胸が当たるから」

晴「うっ……なんか具体的で妙な信憑性が」

梨沙「まぁでも結局エッチなことさせてあげれば大概の男は何とでもなるって言ってた」

晴「実の娘にそんなこと教える親父さんはなんなんだ……!」

梨沙「アンタのためにアタシが聞いたから包み隠さず教えてくれたのよ? 感謝してよね!」

晴「えっ、それは押し付けがましくね? 勝手に人に色仕掛けさせるつもりでいておいて」

梨沙「じゃあ他にある? Pを引き留められそうな効果的な手段っていうか。このまま何もしなかったら担当じゃなくなるかもなんでしょ?」

晴「……引き留めていいのかな」

梨沙「?」

晴「これは遊びじゃない、仕事の話なんだ。Pだけの問題じゃないんだから、オレらが口出しして何か変えられるのか?」

梨沙「それはわかんないわよ。わかんないから、やるんでしょ」

晴「簡単に言ってくれるよな」

梨沙「そう? どの道Pが担当辞めることになったとして、何もしないでいたよりかは後悔せずに済むじゃない」

晴「……かもな」

梨沙「気持ちは伝えなきゃ、応えてもらえないわ。応えてほしいなら、伝えなきゃ」

晴「……」

梨沙「って、パパがそんな感じのことも言ってた」

晴「なんだよ、やっぱりまともなこと言うんだな梨沙の親父さん」

梨沙「当然でしょ! アタシは色仕掛けが手っ取り早いと思ったんだけど、そもそもアンタたち付き合ってないんじゃあね~」

晴「なぁ、そんなに変か? オレらが付き合ってるとかそういうんじゃないってことにさ」

梨沙「さすがに友達で通すには無理あるでしょ……2年も経ってアイツに対する気持ちは何も変わってないの?」

晴「それは……」

梨沙「せっかくお互いの立場を乗り越えてきたんだから、いくとこまでいっちゃいなさいよ」

晴「……」

梨沙「チューしちゃいなさいチュー」

晴「なんでそんなにキスさせたがるんだお前は」

梨沙「いいじゃない、キス。言葉で気持ちを表しにくいんだったら態度で示さないと」

晴「そういうものか?」

梨沙「あとはそうねぇ、かわいい女の子にキスされて喜ばない男はあんまりいないってさ」

晴「本当にそれ言ったのか? 親父さん」

梨沙「アタシが投げキッスするだけでアタシのファンは気持ち悪いぐらい湧き上がるわよ?」

晴「お前自分の父親以外の男に冷た過ぎるだろ」

梨沙「そこんとこ晴はいいわよね、女性ファン多くて」

晴「女性多いのかオレのファン、気にしたことなかったけど」

梨沙「クラスでも女の子にモテモテなんでしょ?」

晴「うーん……それはそれでめんどくさいんだけどな」

梨沙「あ、やっぱり女の子にモテるのね」

晴「!? おまっ、カマかけたな!」

梨沙「気にしない気にしない、知ってたことだし」

晴「お前の中でオレはどういうヤツなんだ……?」

梨沙「ふふん、今度のこと上手くいったら教えてあげてもいいわよ。ねぇ、少しは気持ち軽くなった?」

晴「……ああ、ついでに口まで軽くなったみたいだぜ」

梨沙「そ。ならそろそろ寝よっか。お肌に悪いし」

晴「あれ、もうこんな時間か。……寝るか」

梨沙「どう、眠れそう?」

晴「なんとか。考え事してればそのうち寝てるんじゃねーかな」

梨沙「じゃあ電気消すわね。……あとは頑張んなさい。おやすみ、晴」

晴「ん、おやすみ。…………」

晴(色仕掛け……はともかく、キスか。キス……オレなんかのでもPは喜ぶのか?)

晴(…………)

晴(やばい、変な想像したせいで寝つけねぇ……!)






P「…………」

P「もう寝ちゃっただろうなぁ晴」

P「明日……うん、明日こそなんとか晴に連絡取ろう」

P「寝坊しないようにそろそろ寝よう……」



 翌朝

梨沙「んー……ん?」

晴「...zzz」

梨沙(背中が寒い……ってまた寝てる間に晴に掛け布団取られたのね。で、アタシは晴にくっついて暖を取ってたと)

梨沙(……あーあ、ここにいるのがパパだったらなぁ) ムニムニ

梨沙(あ、ついお腹回り摘まんじゃった。ウエストは……アタシの方が……?)

晴「…………くぅ」

梨沙「……晴、起きた?」

晴「…………」

梨沙「……。じゃあ次は――」

晴「……起きたっつの。くすぐってぇ」

梨沙「ちょ、起きてるんなら言いなさいよ」

晴「えー……つか次はオレに何するつもりだったんだ?」

梨沙「それよりまたアンタに布団取られて寒いんだけど、寝相どうにかならないの?」

晴「あぁ、すまん」

梨沙「……そういうとこ素直よね。じゃあおあいこってことで」

晴「うん? そうだな」

梨沙(微妙に寝ぼけてるっぽいわね。ちゃんと眠れたんならいっか)

梨沙「ほらっ、顔洗ってしゃっきりしてきなさい! 時間ないわよ!」

晴「時間って……学校なら余裕で間に合うだろ?」

梨沙「アタシは別にいいけど、晴は宿題とか出されてないの?」

晴「…………やべっ、どうしよ」

梨沙「だからさっさと起きて少しでもやっときなさいって。学業をおろそかにしないよう言われてたでしょ?」

晴「つってもなー……」

梨沙「いいのよ別に。この前のテストの点数、Pに教えちゃっても」

晴「わ、わかったよ。やるって」

梨沙「それでいいのよ。アイドルしてるとこ以外もちゃんとしてなきゃカッコ悪いものね」

晴「……お前は成績良い方だよなー。よく勉強する気になるよ」

梨沙「だって成績悪かったらパパとデートしちゃだめって言われてるんだもん! ただでさえ会える機会少ないのにそんなの嫌!」

晴「なるほどそっちか……」

梨沙「離れてみてよーーーくわかったわ。アタシはパパ成分がなくなると死んじゃうんだって」

晴「いい機会だから父親離れできるように、って家族に心配されてたんじゃなかったか?」

梨沙「……物理的には離れたけど、心の距離はむしろ近づいた気がするわね。会えない時間がそうさせたのよ」

晴「そういうもんかよ」

梨沙「晴だって、Pに構ってもらえなくて寂しかったりしない? それと同じ」

晴「……。そういうもんか」






P「……うーん……もう朝か」

P「……ん? ケータイ握りながら寝てたせいで充電できてない……ま、まあ事務所で充電すればいいか」

P「スケジュールどうだっけ? とにかく支度しよう」

とりあえずここまで

おそらく残り4分の1? とにかく年内には……

P「おはようございます」

ちひろ「おはようございます。お急ぎですか?」

P「今日の予定を忘れちゃって、とりあえず早めにきとけば間違いはないかなと」

ちひろ「そういうことでしたか。あれ? でも今日ってたしか」

P「……あっ。早朝ロケの収録……今日でしたね」

ちひろ「まだ間に合いますが、ドリンクいりますか?」

P「かたじけない、行って参る!」

ちひろ「参るって……心身ともに疲れていらっしゃるんでしょうか?」




~昼~

P「ふぅ……」

ちひろ「お帰りなさい、なんとかなりました?」

P「ええ、まあ」

P(それよりケータイのバッテリーがいつ切れるかわかったもんじゃないし、やっと充電でき)

ちひろ「でもここでゆっくりされてていいんですか? 今日のお昼って」

P「……あ。もうすぐ会議があったような」

ちひろ「それが終わったらまた外回りでしたよね?」

P(せめて充電だけでも……いや、遅れるっ! あの常務に睨まれたくない! 後だあと!)

~夕~

晴「うっす。あれ、ちひろさんだけか」

ちひろ「今日はプロデューサーさん出ずっぱりみたいで、何かあれば私に言ってください♪」

梨沙「アタシたちはレッスンだけだしPがいなくてもいいけどね。さっ、いきましょ」

晴「お、おぅ」




~夜~

晴「…………」

梨沙「帰るわよー、って電話中?」

晴「……いや、出る気配ないし気にすんな。帰ろうぜ」

ちひろ「気をつけて帰ってくださいねー? さてと、私もそろそろ……あら、お帰りなさいプロデューサーさん」

P「……」

ちひろ「えっと、さすがに今日はもう?」

P「……。行ってきます」

ちひろ「あっ……」

晴「…………」

梨沙「Pに電話掛けてる?」

晴「……まぁな。何回か掛けてるんだが今日は全然繋がらねぇ」

梨沙「へぇ~? いつもは気づいたらすぐ折り返してくるのにね」

晴「もしかして、これ……着信拒否ってやつなんじゃ」

梨沙「!? そんなはずないでしょーが! た、たしか着拒されると専用のアナウンスにならなかった?」

晴「そうなのか?」

梨沙「たぶん……着拒されたことないしわかんないけどたしかそうよ。それに担当を着拒ってありえないでしょ?」

晴「……」

梨沙「うーん、深刻ね」

晴「……電話もしてる余裕ないんだもんな」

梨沙「違うわよ、晴のこと。悪い方に考え過ぎだってば」

晴「そうかもしれねーけどさぁ……もし梨沙だったら急に親父さんと電話繋がらなくなったらどうよ?」

梨沙「実家に帰って会いに行く! 倒れてたりでもしたら怖いし、そうじゃなくても気になって寝れないわ!」

晴「お前わかりやすいよな」

梨沙「アタシのことはいいでしょ! 晴はどうするのよ」

晴「……うん。オレも……会いに行こうかな。せっかく梨沙にも世話になったしさ」

梨沙「そ、なら事務所戻る?」

晴「いや、アイツん家の前で待つ。事務所じゃ遅けりゃ追い出されるし、家なら電話が通じなくたって絶対会える。だろ?」

梨沙「……本気ってことね? いいじゃない、晴のしたいようにしてきなさいよ」

晴「あぁ。それで梨沙に頼みたいことがあるんだけど……」

梨沙「わかってる。寮母さんに晴が遅くなるってこと適当に理由つけて伝えておくわ。まぁでもさすがに日付変わるまでには帰ってきなさいよ?」

晴「助かる! さすが梨沙だな」

梨沙「褒めたって何も出ないわよ? ……ところでさ、合鍵とか持ってるの? Pのとこの」

晴「ん? そんなもん持ってねーよ。何言ってんだ?」

梨沙「そうよね、うん。まーそうよね。じゃあ外で待ちっぱなしかぁ」

晴「別にいいよ、今のままでいる方が嫌だし。それなら数時間くらい待ちぼうけてやる」

梨沙「それもあるけど、気をつけなさい。アイドルが誰かの家の前で1人、遅くまで待ってたなんて週刊誌のいいネタよ?」

晴「…………気をつける!」

梨沙「大丈夫かしら……? ちょっと待って、いま手持ちある?」

P「やっと終わった……何で今日は外ばっかりいなきゃいけなかったんだろう」

P「結局ケータイも昼ごろから充電切れたし。やだなぁ仕事の連絡とかきてたら」

P「事務所にいるうちに誰かからきてないか確認だけしとこう……」

P「…………、うわ、えっ。10件くらい着信あったのか……ん?」

P「そのうちのほとんどが晴からだ。どうしたんだろう、さすがに見なかったことにするわけにいかないな」

P「……………………繋がらない。まあいいか、帰りながらまたかけ直してみよう」




P(結局繋がらなかった。もう寝ちゃってるとか? いずれにしても近いうちに晴とは話さないとな……)

?「……」

P「……。……?」

P(見慣れない美少年が俺の家を塞ぐかのように待ち構えてる。どうしてこうなった)

?「……やっと帰ってきたか」

P「えっ? あれ、その声は……晴か?」

晴「そうだよ。…応変装した方がいいかと思って」

P「それで男装か……なんか懐かしいな。髪は帽子の中に?」

晴「無理やりいれた。ってそんな話するために待ってたわけじゃねーんだよ。充電切れて電話もかけられなくなったし……中入っていいよな?」

P「もちろん。俺も晴とは話しておかなきゃならないことがあったしさ」

晴「そっか。あー、それとその前に先に着替えてもいいか?」

P「ん? 構わないけど、なんで?」

晴「うん…………この格好、ちょっと胸のとこが苦しくてな」

P「Oh……」

晴「はー、生き返った。加減わからないからって力任せにやってみるもんじゃねーな」

P「でも晴の男装はありだな。あいさん路線でいけると思う」

晴「それってつまり次からカッコイイ路線で決まり、ってことでいいんだな?」

P「……」

晴「なんか言えよ!」

P「……えっと、元気そうで何より」

晴「そうじゃなくて、……別に、そっちこそ家には帰れてるんだな」

P「事務所に寝泊まりしないといけないレベルではないよ。ご覧のとおり、ほとんど寝て過ごすだけになってたけど」

晴「だからゴミも溜まってるし洗濯物も……しばらく見ないうちにこんなんなってたのか」

P「俺のことはさておき、時間も時間だ。本題に入ろう。わざわざ家の前で待ってたくらいなんだから、話があるんだろう?」

晴「……あのさ。なんで今日電話繋がらなかったのかだけ先に聞いていいか?」

P「充電が切れてたんだ。しないまま寝ちゃってずっと今日は外にいたから」

晴「なんで充電しながら寝なかったんだよ?」

P「……実は俺も、このままじゃいけないと思って晴に声を掛けようとしてたんだ。それで電話にするかメールにするか悩んでるうちに寝落ちしてた」

晴「そ、それならオレにも責任があるな。なら……いいや、うん」

P「……」

晴「……」

P「先に俺から話そうか?」

晴「えっ? あぁ、いや……オレから話す。もういろいろ待ってられねーんだ」

P「……わかった」

晴「単刀直入に言うぞ。オレのことどう思ってる?」

P「本当に単刀直入だな」

晴「……オレのこと、今でも友達だと思ってる?」

P「……」

晴「なんかさ、気がついちまったんだよ。昔より微妙にオレへの接し方が変わってきてたことに」

P「それは、どんな風に?」

晴「よそよそしい、っつーか。どこか気を遣ってるっつーか。なんとなく、だけど」

P「……」

晴「なんでかなーって考えてみて、いつも1つしか思い当たらなくってさ」

P「その1つが何なのか聞いていいか?」

晴「……オレが、少しは女っぽくなってきたから、じゃねーかなって。見た目な、見た目」

P「まあ、ちょうどお年頃だもんな」

晴「なぁ、Pはやっぱ……男っぽいオレのことを友達と思ってくれてたのか? だから、その……今は……」

P「晴……」

晴「……えっと、その……あれ? おかしいな……待ってる間なんて言おうか考えてたのに、出てこねーや……」

P(俺のことでそんなになるまで悩んでてくれてたんだな)

晴「ちょ、ちょっとタイムな。思い出すから……何を言いたかったのか」

P(……ごめん、晴。今すぐ違うって言えばいいのに、そのことが嬉しくてお前の言葉を待ってる俺がいる)

晴「オレらの担当から外れようとしてる……のは本当なのか?」

P「えっ」

晴「梨沙には絶対ないって言われたけど、オレが嫌になったから……とか」

P(……アイドル達にも行き渡ってるほど噂になってたのか)

P「そんなわけないだろう? でも、俺が担当じゃなくなってもやっていけるぐらいにみんなアイドルできてると思うんだ」

晴「……」

P「俺がいなくても大丈夫、だよな?」

P(担当を降りたいなんて思ってもないくせに、何を言ってるんだ俺は)

晴「……そんなこと、言うなよ。Pがいたから、オレは」

晴「Pがいてくれなきゃ、オレ……いやだ。どんな仕事だってするから、ずっと側で支えてくれよ」

晴「いいのか? お前が降りるって言うなら、オレだってアイドル……辞めたっていいんだぜ?」

晴「……こんなことばっか考えるようになっててさ、こんな女々しいこと考えるようじゃまたPに、嫌われる……かな」

P(うっ……これ以上黙ってられるか!)

P「待て待て。さっきも言ったけど誰が、誰を嫌いになるって?」

晴「……違うのか?」

P「うーん、たしかに晴が見た目もだいぶ女の子っぽくなってきて、そのことを意識するようになったのは晴の言う通りだ」

晴「じゃあ……」

P「むしろ、俺の方が謝らないといけないんだ。……ごめんな」

晴「……どういうことだ?」

P「晴は、女の子っぽくなった晴を俺が前のような仲としてみれなくなった、と思ってたってことだよな」

晴「そう、だな」

P「そこまでは、違う意味で合ってる。紛らわしいようだけど」

晴「違う意味?」

P「俺はな、晴。俺が晴のことを前以上に女の子として意識してしまえばお前から嫌がられるんじゃないか、ってずっと思ってたんだよ」

晴「? えっと……つまり?」

P「俺は俺で、自分が原因で晴との関係を壊したくなかったんだ。……そのために勝手に避けるような真似をした、すまなかった」

晴「……」

P「……」

晴「どうして、オレに嫌がられるって思ったんだ?」

P「それは、晴が俺と友達だと思ってくれているのなら、お前を女の子として意識する素振りを見せない方がいいと思って。……隠しきれてなかったみたいだが」

晴「……なんだ。じゃあ、オレもPも、相手の気持ちを知らずに考え過ぎだったってことなのか」

P「そうだな。嫌われたくないから……まあ、俺が晴を避けなければここまでこじれなかったんだけど。俺の方がよほど女々しいよ」

晴「でも、原因はやっぱオレ、なんだよな? オレが女っぽくなったから」

P「そうとも言えるけど、それは仕方ないだろう? 成長期なんだし、お前を見る目が変わった俺が悪いんだ」

晴「わ、悪くねーよ。見る目が変わったって言うんなら、オレだって……」

P「ん?」

晴「あぁ、何でもねぇ。……何でもなくねぇ!」

P「わっ! やっぱり怒ってる……よな」

晴「ち、違う! いや違わない? あーもうめんどくさい!! どうしたらいいんだ!」

P「それを話し合うべきなんだろうな……晴はどうなんだ?」

晴「何がだよ!」

P「俺に女の子として意識されて、今までみたいな関係でいられるかってことだよ」

晴「……それなんだけどさ」

P「うん」

晴「Pは、男と女の間に友情はあると思ってるか? ない派だったりする?」

P「え、そりゃあると思うよ。じゃなきゃ晴と友達から、だなんて……まあ、こうして揺らいじゃってる以上は説得力ないか」

晴「……。オレもあると思う。つーかむしろ男友達と遊んでたし、男か女かってだけで分ける必要を感じなかった」

P「晴はそうだろうな。俺も遠い昔は純粋にそう思ってたような気もする」

晴「でも……なんとなく、わかるようになってきた。そういう時期だからかもしれねーけど、やっぱオレ女なんだなーって思うこと増えたし」

P「……」

晴「Pにいろんなアイドルの仕事やらされていくうちに、女らしさってやつもわかってきたつもりだ」

P「俺が言うのもなんだけど、文句言いつついつもこなしてくれたよな。やってくうちにちゃんと吸収してさ」

晴「まーな。……それは置いといて、だから……オレを女っぽく見てくれても別に、いやじゃないよ。Pに映ってるオレをありのまま見てほしい」

P「……いいのか?」

晴「いいってば。……まぁ、それを友達だと思えるかって話なら、オレはPと友達じゃなくていい」

P「うっ……ど、どういう意味で?」

晴「ん? あ、そうじゃないぞ! 友達のままじゃなくていい、って意味っつーか?」

P「それってどう違うんだ……?」

晴「わー! 露骨に落ち込むんじゃねぇ! オレだって何て言ったらいいか……」

晴(うぅ、くそー……昨日の晩に梨沙の言ってたこと思い出しちまう)


 梨沙『いいじゃない、キス。言葉で気持ちを表しにくいんだったら態度で示さないと』


晴(あてにしていいのか? 変なヤツって思われるだろ絶対……!)

P「…………」

晴(でもこのままPにこんな顔させとくのも……あー、もう知るか! やってやる!)

晴「おい! ちょっとこっち向け!」

P「……ん? んむっ――」

晴「――」

P「――」

晴「――っ、ど、どうだ。うまく言葉にできないから態度で示してやったぜ」

P「」

晴「う……や、やっぱりオレのじゃ駄目だったか? 悪い……でも女にされて喜ばない男はいないって梨沙が……」

P「あ、いや、とても、結構な、お手前で」

晴「……なんでそんな固まってるんだよ」

P「いや、晴からされたのは嬉しいんだけど……こういう時ってまずはほっぺたからじゃないか? いきなりのマウストゥーマウスは……びっくりした」

晴「……………………あ」

P「やー……、でも惚れ惚れするくらい気持ちよく奪われてしまったな。俺よりよっぽどかっこいいよ、晴」

晴「ああああああああああああ!!!!」

P(ようやく自分が何をしてしまったか理解したらしい。というか何を吹き込んだんだ梨沙のやつ……)

晴「ううぅぅう……やっぱあてにするんじゃなかった……」

P「それと、敢えて聞きたいんだが……今のってどういう風に受け止めたらいいのかな」

晴「……知るか! 自分で考えろ、バカ!」

P「えー……。都合よく解釈しちゃうぞ。それでもいいのか?」

晴「好きにしろ! ……でも、オレだけこんな赤っ恥ってのも不平等だよなぁ?」

P「ヤケになってない? で、つまり今度は俺の番、と」

晴「……頼む。このままで帰ったらオレ、明日からPにどんな顔合わせればいいかわかんねぇ」

P「だろうなあ。じゃあ……俺も、態度で示してもいいかな?」

晴「いいけど……何するつもりだよ?」

P「晴さえよければだけど、晴と同じこと。さすがに俺からさっきみたいにするのは事案だからな……」

晴「……。いいけどさー、オレの後追いみたくなるのは何か違くね? いいけどさー」

P「いいのか悪いのかはっきりしてくれよ……わかった、じゃあ晴にデートを申し込む!」

晴「は、はぁっ!? デートって、梨沙が親父さんとよくやってるやつのことか?」

P「身内でやるのとは意味が違うと思うが、うん。デート。友達と遊ぶのとも違うぞ」

晴「……わかったよ。Pはオレとデートしたい、ってことでいいんだな?」

P「うん」

晴「じゃあ、それでいいや。つーかいろいろ限界だ……Pの気持ち、受け取っとく……」

P(これでもう、友達だなんて言葉では)

晴(誤魔化せなくなったよな……ん? じゃあオレとPって)

P・晴(どういう関係ってことにすればいいんだ……?)

P「――色仕掛けねぇ。晴、できるのか?」

晴「無理に決まってるだろ? ほんと、そこまで梨沙に乗せられてたらいろいろアウトだったな……」

P「でも晴に色仕掛けされて耐えられるか自信ないなあ、俺」

晴「……ふーん、そういうもんなのか?」

P「あのさ、俺が晴と距離置こうと思った理由というか、決め手が今この部屋にあるんだ。そこの引き出し、見てみな?」

晴「なんだそれ? ……あ、え? これって、なくしたと思ってたオレの下着じゃねーか!」

P「これをどうしたものか散々悩んだ挙句、洗ってしまっておくぐらいしか俺にはできなかった……聞かれたら言おうと思ったけど、俺からは気まずくて……」

晴「……なんか、すまん」

P「晴はこういうのつけてるんだなーって思ったら、なんかもう、ね? 鎮まれ俺の右腕……! って感じになった」

晴「それでオレを避けるようにしたのか?」

P「うん……俺だって晴に嫌われそうなことしたくなかったから、少なくともそうすれば間違いがおきようもないし」

晴「……Pも男なんだな、って思っとけばいいのかな?」

P「そういうことだ。女の子に言うことじゃなさすぎて格好つかないが」

晴「いいよ、Pの考えてたこと知れるのは嬉しいから。それにオレのこと……大事にしてくれた、ってことだし。それで、オレの担当はどうするんだよ」

P「……やめない。俺にもっと箔がついたら断れなかったかもしれないけど、今の俺ならたぶん断れる」

晴「断っても大丈夫なのか?」

P「手伝える範囲で関わる、ぐらいはしないといけないけどな。それと居残るからにはこっちで成果を出さないと、みんなにはもっと忙しくなってもらおうか。晴もな」

晴「Pが担当のままってんなら、オレはいくらだってやってやるぜ」

P「頼もしいな、頼りにしてる。……あ、だいぶ遅くなっちゃったな。送ってくよ、でも大丈夫か?」

晴「梨沙に上手いことやってもらうように頼んだから寮の方はなんとかなる。ちょっと遠めのとこで下ろしてくれれば」

P「わかった。それと、さっきのデートの話だけど」

晴「お、おぅ……」

P「ま、運転しながら話そうか。休み調整できる日あったかなー」

晴「……お前さー、女慣れしてるのかしてないのかよくわからねーよ」

P「どうだろ、晴みたいな女の子は珍しいっていうか、前から気兼ねしなくて済む部分もあるからさ。俺もよくわからん。まあ特別だよ特別」

晴「オレが特別? ……そっか、へへっ♪」

晴「……ふぅ」ガチャッ

梨沙「あっ、おかえりー。で、どうなったどうなった?」

晴「……なんで梨沙がオレの部屋いるんだよ、待ってたのか?」

梨沙「そろそろ帰ってるかと思ってきてみたら鍵かかってないし、ちょうどいいかと思ってねー。それで?」

晴「うっ……ま、まぁ梨沙には言っておかないといけねーよな。世話になったし」

梨沙「当然♪ その様子だと悪い方には転ばなかったみたいだけど?」

晴「えっと、Pは担当続けてくれそうだ」

梨沙「そっか、よかった。なんだかんだアタシもアイツのおかげで楽しく仕事できてるとこあるしね。……そ・れ・で?」

晴「……あー、その。Pにデートに誘われた」

梨沙「うん? えー、あー、あぁ、うん。アンタたちからしたら進歩っていっていいのよね?」

晴「……たぶん?」

梨沙「てことはなに? とうとう付き合うことになったわけね!?」

晴「いや、そういうわけじゃ……」

梨沙「はーーーーあ!? デートするんでしょ、じゃあそういうことでしょうが!!」

晴「そういうことって、お前だってパパとデートしたいーっていつも言ってるじゃねーか」

梨沙「意味合いがちがーう! じゃあアンタらまだ友達同士って言い張るの?」

晴「それは……どうだろ、それもないんじゃないかな」

梨沙「じゃあどうなったっていうのよ!」

晴「……一応、気持ちは伝えてきた」

梨沙「へぇー、何て言ったの?」

晴「梨沙が言葉で駄目なら態度で示せっていうから……してきたよ」

梨沙「え、まさかほんとにキスしてきたの?」

晴「……。もう寝る。お前も部屋戻れ」

梨沙「ねーちょっと晴ー、詳しく教えなさいよー。気になるじゃなーい♪」

晴「うるせー! もう寝るんだよ!」

梨沙「じゃあアタシもここで寝るー♪」

晴「だから帰れーーーー!!」





おしまい

晴に唇を奪われるシーンを書いてみたくなった結果がこれです。本当にありがとうございました

質のアレなラブコメみたいな展開ですね。続いたらあかんパターンだこれ

思ったより長くなっちゃいましたが、それではお疲れ様でした

せっかくなのでこのシリーズ以外に今年書いたSS。漏れもあるかも。キャラの好みがはっきりわかんだね



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