梨沙「晴ってモテるわよね」モバP「!?」 (55)
モバP(おっ、あそこで晴と梨沙がお喋りしてるな。何の話してるんだろう)
梨沙「――、晴ってモテるわよね――」
モバP(!?)
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梨沙「知ってたけど、晴ってモテるわよね。女の子に」
晴「はぁ? なんだよ急に」
梨沙「最近ほたるの様子が変なのよ。アンタ何かしなかった?」
晴「何もしてねーよ。……つい最近仕事が一緒だったくらいかな? うん」
梨沙「ブライダルのやつでしょ? どうだったどうだった?」
晴「どうもこうもあるか、仕事だから付き合ってやったけどああいうのはごめんだぜ」
梨沙「またまた~♪ かわいく映ってたじゃない、これとか」
晴「うおっ!? 何でお前がそれを……!」
梨沙「Pに見せてもらってせっかくだからそのままデータ貰ったのよ。よく撮れてると思わない?」
晴「あんのヤロー、いつの間に! 消せ、いますぐ消せ! いやオレが消す!」
梨沙「落ち着きなさいよ! これ消したってしょうがないでしょ!」
晴「ぐぅぅ……くそー……なんだよ、笑えよ……」
梨沙「だから似合ってるっつってんの! いいじゃない、ほらこれとか」
晴「うわー……誰だよこれ。梨沙の知り合い?」
梨沙「アンタでしょーが!」
晴「はぁ、こういうの梨沙の方が絶対似合うっつーか、憧れたりしねぇの?」
梨沙「んー、そりゃまあ着てみたい気もしなくはないわね。でもパパとは結婚できないしさぁ、アタシはまだいいかな」
晴「あ、そう……なぁ。なんで女ってこんなのに憧れるんだ?」
梨沙「同じ女の子の口から出てくるセリフとは思えないわね……。晴らしいけど」
晴「だってさー、今からケッコンのことなんて普通考えねーだろ。なあ?」
梨沙「いろいろ想像はするでしょ。普通」
晴「……。普通なのか?」
梨沙「そうよね、小さい頃からおままごとよりボール遊びして育ってきたらそうなるわよね」
晴「わっかんねー……」
梨沙「話し戻すけどさ、仕事中にほたるに何か言ったりしたんじゃないの?」
晴「別に何も、あいつ引っ込み思案だろ? オレよりよっぽどかわいいくせに、自信なさげだしなかなか出てこないからよー」
梨沙「それでそれで?」
晴「まあ、自信持てって感じでいろいろ言ったような気はする。思ったこと言っただけだから何言ったか覚えてねーけど」
梨沙「あー、そういうことだったのね。納得したわ」
晴「? 何をだよ」
梨沙「さーねー」
梨沙「バレンタインの時とか、チョコ貰ってなかった?」
晴「余りものとか失敗気味だけど食べられなくないってやつなら引き受けてたぜ。それがどうかしたか?」
梨沙「その割にはラッピングが丁寧だったり、形も整ってて美味しかったりしたんじゃない?」
晴「え、いや……あれ、言われてみれば……? で、でもあれだろ? えっとほら、友チョコってやつだろ?」
梨沙「お返しとかしたことなくてもずっと仲いいでしょ?」
晴「そもそも余りものとか言われてたし……やっぱ何か返すべきだったのか。でも柄じゃねーしなぁ」
梨沙「あー、大丈夫だと思うわよ。わかっててアンタにあげてるんだと思うし」
晴「……。つまり、どういうことだ? オレって女扱いされてない?」
梨沙「そうとも言えるし、そうとも言えないって感じかしら?」
晴「なんだよ。この際だ、はっきり言ってくれ!」
梨沙「じゃあ言うけど、女の子だけど男の子よりかっこいいって思われてるんじゃない? よかったわねー」
晴「お、おう……マジで? え? それを聞いてオレは明日からどんな顔して学校行けばいいんだ……?」
P(晴がモテる……晴がモテる……晴がモテる……………………晴がモテる?)
P(そうだったのか……でもよく考えたら、男女の垣根を感じさせず一緒に遊んでくれる女の子は貴重だよな……)
P(……いいなあ、晴と同級生の男子。って何を考えてるんだ俺は)
P「…………」
晴「お、そんなとこで何してんだ?」
P「ん、ああ。ちょっと通りかかっただけだよ」
梨沙「その割にはなんて顔してんのよ、体調悪いの?」
P「そうでもないけど……なあ晴、お前って(男子に)モテるの?」
晴「おまっ、聞いてたのかよ! ……(女子からモテる)らしいぞ? わかんねーけど」
P「そうか……なるほどな。いや、うん。立ち聞きするつもりはなかったんだ、すまん。それじゃ」
晴「……ったく、梨沙が変な話するから聞かれてたじゃねーか!」
梨沙「へぇ~……」
晴「へぇ~、じゃねーよ。オレの話聞いてる?」
梨沙「聞いてるわよ。それよりもなんだか楽しいことになってきそうじゃない♪」
晴「はぁ? それこそ何の話だよ」
梨沙「いいからアタシに任せときなさいって!」
晴「聞けっつーのに……だめだこりゃ」
とりあえずここまで
梨沙「――って訳で、協力してくんない?」
飛鳥「言っている意味がよくわからなかったんだけど」
梨沙「だーかーらー! Pが晴のことどう思ってるのか調べたいから協力してほしいのよ!」
飛鳥「……。その手の類に興味を持ちたがる人は他にいくらでもいるだろうに、どうしてボクなんだ?」
梨沙「えー? 一緒にオーストラリアを観光した仲じゃない♪」
飛鳥「なら他にもいるだろう。裕子とか、ネネさんがさ」
梨沙「それなのよねー。ユッコは口軽そうで危なっかしいし、ネネは隠し事苦手そうじゃない?」
飛鳥「まぁ、そうかもしれない。でも少なくともボクよりは協力的になってくれるんじゃないか?」
梨沙「飛鳥もそういうところ冷めてるわよねぇ……それともそういう格好とってるだけ?」
飛鳥「さぁね。とにかくボクとしては他をあたってほしいところなんだが」
梨沙「そんなこと言って、飛鳥も結構Pのこと気にはしてるんでしょ?」
飛鳥「………………何のことかな」
梨沙「ふふん、実はこの前こんなもの拾っちゃったのよね~。このいろいろ書いてある手帳、アンタのじゃない?」
飛鳥「!? そ、それは……!」
梨沙「その反応からしてビンゴね! はい、返しとくわよ」
飛鳥「あ、あぁ……ありがとう。……こんなに素直に返してくれてよかったのかい?」
梨沙「だって何書いてあるか全然読めないしわからないし、まあだから飛鳥かもって思ったんだけど」
飛鳥「そう言われると複雑なんだけどな……」
梨沙「でもなんとなーく、Pのことも書かれてるような気がしたのよね。でしょ? 違うってんなら、今度こそ他をあたりに行くわ」
飛鳥「…………はぁ。わかったよ、もう少しだけ話を聞こうじゃないか」
梨沙「交渉成立♪」
梨沙「……ところで何をそんなに書き綴ってたのよ。詩? それとも歌詞とか?」
飛鳥「世の中には首を突っ込まないでいた方がいい世界もあるのさ」
梨沙「そ、そう……やっぱりよくわからないわね飛鳥って」
飛鳥「それで、ボクに何をしてほしいって言うんだ?」
梨沙「その前に確認しておきたいんだけど、Pのことどう思ってる?」
飛鳥「……なかなかストレートにくるんだね。関係のないことなら黙秘してもいいかな」
梨沙「あー、アタシの聞き方が悪かったわ。Pってどんなやつだと思ってる? 簡単でいいわよ」
飛鳥「どんなやつ、か。端的に言うなら興味深い、いや面白い? そんなところか」
梨沙「晴も似たようなこと言うのよねー。変だけど面白いやつってさ」
飛鳥「そういう梨沙はどうなんだい?」
梨沙「アタシ? うーん……パパにも認められてるみたいだし、悪いやつじゃない、かなぁ」
飛鳥「信ずるに足る相手、といったところか」
梨沙「? まあでもあいつ絶対ロリコンよね、絶対」
飛鳥「…………、えっ?」
梨沙「アタシはそうにらんでるけど。晴も半信半疑って感じかしら」
飛鳥「ボクはそんな風には彼を見ていなかったが……」
梨沙「この前ブライダルの撮影があったらしいんだけどさ、あぁそれに晴も呼ばれたんだけどね。それだけでもって感じだけど」
飛鳥「……」
梨沙「仕事に呼ばれた7人のうち4人がローティーンよ? 絶対ロリコンでしょー」
飛鳥「ふぅん…………そういう見方もあり、かもしれない、のかな?」
梨沙「ま、違うなら違うでいいじゃない? ロリコンじゃないならイコール今の晴にそういう目を向けてないってことよね」
飛鳥「それでボクにPの――俗っぽい言い方になるけど、好みのタイプでも聞いてこいって言うのかい?」
梨沙「うん。アタシが直接聞いたって、一応晴とユニット組んでるからそうそう変なこと言わないだろうしさー」
飛鳥「そうだろうね。仮にネネさんぐらいの人に聞かれても、小さい子が好きなんてPもさすがに言わないだろう」
梨沙「だからお願い! 子ども過ぎず大人過ぎない飛鳥ぐらいの年の子にだったら、Pも口をすべらせやすいと思うの!」
飛鳥「……うーん」
梨沙「ねぇ、だめ? 変なこと口走っても飛鳥は言いふらすような子じゃないってPもわかってるはずよね?」
飛鳥「その敵失を誘い待つかのようなやり方はどうなんだろう」
梨沙「飛鳥だって誰かにしつこく頼まれて仕方なくなら、Pにも切り出しやすいでしょ?」
飛鳥「まぁ、こういった話はボクの柄ではないね」
梨沙「ならこの機会にいろいろ聞いてきちゃいなさいよ。いざとなったらアタシの名前出していいしさ」
飛鳥「…………ん? 待った、そもそもボクがPのそんなことを知りたいなんて言った覚えは」
梨沙「気にならない? パパ一筋のアタシでも気になるけどなー。アイツ全然浮いた話がないもん」
飛鳥「む……でも……そういうのはボクの柄じゃ……」
梨沙「だ・か・ら、飛鳥に頼んでるんじゃない! そういう話に興味なさそうな相手になら尻尾を出してくるわよ!」
飛鳥「……。なるほど、これを返してくれた時点でもう話がついていたみたいだ」
梨沙「はぁはぁ……あら? アタシはお願いしてるだけよ、悪い話してるつもりもないしね!」
飛鳥「ふっ、わかったよ。しょうがないな、口車に乗せられてあげよう。今回だけだよ?」
梨沙「ありがとっ♪ ……あー、疲れた。もうなんでそんなにめんどくさいのよ!」
飛鳥「面倒じゃない人間なんていないものさ。だからこそ人は誰かを、何かを知りたがるし、そんな自分に気付いて憂いもする」
梨沙「はいはい、どうせアタシには難しくてわかりませんよーだ」
飛鳥「ところで梨沙、面倒な思いまでしてボクを焚きつかせたんだ。何か根拠はあるんだろうね?」
梨沙「根拠?」
飛鳥「Pが晴をどう思っているか、それを聞き出してほしいんだろう? そこに何か因果関係を疑うのが筋ではないかな」
梨沙「そう……ね、まだアタシのカンでしかないわ。それじゃだめ?」
飛鳥「……いや、それで構わない。晴はいいパートナーを持ったみたいだね」
梨沙「なぁっ、そ、そんなんじゃないわよ! ただの……知的好奇心ってやつよ、そう! それだけなんだから!」
飛鳥「キミも充分、面倒なやつのようだ。ふふっ」
梨沙「……くすっ、そうかもね」
P「……」カタカタ カタカタ
飛鳥「……」ジーッ
P「……」チラッ
飛鳥「……」サッ
P「飛鳥? 気になるから用があるなら見てないで言ってくれよう。残ってるのお前だけだぞ」
飛鳥「うん……用というほどではないんだが、頼まれたからにはボクにも果たす義務があってね」
P「なんでもいいから早く頼む。俺もこれ終わらせて早く帰りたいんだ」
飛鳥「わかってるさ。……あー、こほん」
飛鳥(馬鹿正直に晴の名前を出すのは愚策か、梨沙の言うように逆説から解を導くとしよう)
飛鳥「キミに尋ねたいことがある。率直に問おう、Pは……その、ロリコンってやつなのかい?」
P「」
飛鳥「そういう性癖があるならそうと言ってほしいんだ。それを確認することがボクの役目なんでね」
P「誰に頼まれたんだよそんなこと……。ちがう、違うぞ俺は! ロリコンじゃない」
飛鳥「ロリコンは相手がそう感じたらロリコンらしいよ?」
P「え、なにそのセクハラ理論。いや、でもイエスかノーならノーなんだけど……」
飛鳥「それならそれで構わないが、それを裏付ける何かをキミに証明してほしい。いいね?」
P「……うーん、そういう変な噂が立ってるというならまあ、仕方ない。わかった、どうしたらいい?」
飛鳥「そうだな――」
飛鳥「むしろキミは年上を好む傾向にある、とか」
P「んー、そんなことはないぞ。どちらかといえば年下の方が慣れてるし」
飛鳥「慣れてる、とは?」
P「仕事柄ってことだよ。俺より年上のアイドルはあまりいないしな」
飛鳥「年下の扱いに慣れていると、そういうことだね? でもそれは何を裏付けるというんだい」
P「え、ああ……そうだよな。すまん、これじゃロリコンを肯定しかねないか」
飛鳥「発想を変えてみようか。ロリコンであることを否定するなら根拠があるはずだろう」
P「それなら、えー……っと、そうそう。ついこの前感じたことなんだけどさ」
飛鳥「うん」
P「なんというか、例えるなら娘をよその男の子に取られる父親の気持ち、みたいなのを感じたぞ」
飛鳥「? 何があったらキミがそんなことを体験するのさ」
P「ちょっとな……俺に娘がいたらいつかあんな気持ちになる時がくるんだと思う。たぶん」
飛鳥「つまり、整理すると――小さい女の子を父親目線でみていたからロリコンではない、こうかい?」
P「そんな感じ、のはず。俺自身よくわかってないところあるけどな、子供なんていないし」
飛鳥「ふぅん…………結婚する予定とか、ある?」
P「え? ああ、全然。相手もいないし、というか彼女すらいたことが――あっ」
飛鳥「えっ」
P「……。わかるよ、彼女もいたことないやつにプロデュースされてるなんて、って思ってるだろ?」
飛鳥「思ってないけど……少し意外だっただけで他意はないよ」
P「いいんだ、いいんだ…………」
P「…………」
飛鳥(あまり恋愛経験がないから浮いた話を聞かなかったのかな。Pが、ねぇ)
P(あー、これ明日からみんなにからかわれるパターンだ。鬱だ……)
飛鳥「えっと、P。とりあえずキミはロリータコンプレックスを抱えていない、その方向でまとめようと思うんだが」
P「ああ、そうしてほしい……正直俺もどんな人がタイプなのかよくわかってないしな……」
飛鳥「……いつまでいじけてるのさ。ここだけの話にしておくから、気を取り直しなよ」
飛鳥(これ以上引き出せそうにないし、このまま晴の名前は出さず梨沙に任せようかな)
P「ほんと? 本当に? だってお前、誰かに頼まれて俺に聞きにきたんだろ?」
飛鳥「ボクが今日ここで聞いたことを好き好んで流布するようなヤツだと思うなら、そうしてあげてもいいけど」
P「……ああ、うん。どうしてよりによって飛鳥がそういうことを聞きにきたのかわかった気がする……」
飛鳥「まったく、ボクも変な役目を押し付けられて参ってるんだ。少しは役得があってもいいと思わないかい?」
P「そうだな……あれ? それって遠まわしに口止め料払えってこと?」
飛鳥「さぁ、どうだろうね。ふぅ、もうこんな時間か」
P「ぜひ送らせていただきます!」
飛鳥「となると、キミの仕事が終わるまでここにいさせてもらうことになるな……ボクとキミ以外に誰もいないここで。いいね?」
P「急いで終わらせるからちょっと待ってろください!」
飛鳥「いや、とりわけ急ぐ必要はないよ。ミスを増やされても困るし、いつも通りでいい」
P「お、おう……じゃあ」カタカタ
飛鳥「あぁそれと」
P「?」
飛鳥「不確かな情報をもう少し正確にしようと思って。だからさ、例えばキミは……どんな外観の子に目を引かれるのかな」
P(えっと、ここでそれっぽいこと言えたらロリコンから遠ざかるってことだな? そうなんだな飛鳥! んじゃ適当に何か――)
P「そうだなあ……やっぱり胸が大きいと視線が吸い寄せられるよ、俺も男だしな!」
飛鳥「……………………。帰る」
P「えっ、あっ、ちょ、飛鳥? 飛鳥さん? 飛鳥ーーーー!!」
飛鳥「――という具合で、より正鵠を射たければ肯定も否定もできないというべきかな」
梨沙「そうなんだ。ありがと飛鳥♪ 悪かったわね変なことに付き合わせて」
飛鳥「いや、気にしないでくれ。ボクも思いがけず面白い情報を引き出せたしね」
梨沙「へ~、どんなの?」
飛鳥「……………………」
梨沙「ってなんで急に暗くなるのよ! 本当に面白いこと聞いたの?」
飛鳥「……うん、これはボクの胸の内にしまわせてもらうよ。胸……」
梨沙「胸?」
飛鳥「なんでもない。それより、どうも彼は自分のことをわかっていないようだから、これ以上何かを聞き出そうとしても無意味だよ」
梨沙「へぇ、それがさっきの面白いことと関係あるんだ」
飛鳥「そんなところさ。まぁ、自分をわかったつもりになることの方が、よほど自分について無知だと思うけどね」
梨沙「Pに何聞いたのよアンタは……。さてと、じゃあアタシは行くとこあるから」
飛鳥「晴のところかい?」
梨沙「まーねー。飛鳥にしてもらったことが無駄にならないといいんだけど」
飛鳥「それは誰にとって『いい』のかな?」
梨沙「んー? さぁね、それをこれからはっきりさせるんじゃない?」
飛鳥「そうか、じゃあこの辺で。ボクもボクのパートナーのところへあやかりに行くとしよう――」
梨沙「……よくわかんないけどはやまっちゃだめよ、ってもういないし! 飛鳥、なんか目がマジだったわね……しーらないっ!」
梨沙(娘を取られた気持ち、ねぇ。そりゃあ一回りは違うけど、やっぱりそんなものなのかしら?)
梨沙(アタシらからしたらパパよりは若いし、というかあんまり年上っぽく感じないのよね)
梨沙「晴はどう思う?」
晴「何を?」
梨沙「Pのこと。アンタはどう思ってるのかなーって」
晴「……」
梨沙「晴?」
晴「ん、ああすまん。そうだな……」
梨沙(うん? 流されるかと思ったら意外な反応じゃない)
晴「なんつーか、あいつもいい年だろ? だからいつまでも仕事以外で相手してるわけにもいかねーんだろうな」
梨沙「は? どうしたのよ、Pに遠慮してるの?」
晴「あいつだってその内ケッコンするじゃん、オレらより先にさ」
梨沙「先かどうかは知らないわ。そういう時代でもないっぽいし?」
晴「そういう細かいことは置いとくとしてだな。……オレらに時間取られてたらかわいそーじゃん?」
梨沙「かわいそうって、Pが? それともPのお嫁さんになる人が? アンタ熱でもあるの?」
晴「ねーよ! ふざけてるつもりはないぞ」
梨沙「だって、彼女すらいないヤツと誰とも知らない将来の結婚相手に今から気遣ってどうするの?」
晴「……それもそうだけど、まぁあれだ。ウエディングドレスなんて着せられたから頭どうかしてたんだなオレ」
梨沙「まったく、似合わないこと言うから何事かと思ったじゃない!」
晴「ひでー言われようだなおい……」
梨沙(でも晴にしちゃ珍しいのよね。なんだろ、いじらしいっていうか)
梨沙「そんな似合わないこと考えるぐらいなら、晴があいつと結婚してあげたら? あ、名案かも♪」
晴「はあぁーー!? ばっ、かお前……お前なあ!」
梨沙「Pの働きぶりを見てたら、プロデューサーなんてやってる間はまず出会いなんてないでしょ?」
晴「ないでしょ、じゃねーよ! いろいろ問題ありすぎるっつーの!」
梨沙「問題って?」
晴「いや、ほら……まずオレまだ12だし!」
梨沙「誰も今すぐ結婚してやれなんて言ってないわ」
晴「つーか歳の差が――」
梨沙「普段から遊び友達みたいに接してるくせによく言うわね~?」
晴「それとこれとは別だろ! ……別だよな?」
梨沙「さあ? 当人同士がよければ歳の差なんてなんとでもなるわよ!」
晴「ならねーよ! 第一ケッコンなんてよくわかんねーオレにそういうの押し付けんなって!」
梨沙「そんなこと言って、Pがいきなり結婚するとか言い出してもいいの!?」
晴「…………」
梨沙(なんでそこで黙るのよ!)
晴「……ケッコンするかどうかはあいつの勝手だろ?」
梨沙「そうだけどさぁ、Pが誰を選ぶかなんてわからないじゃない?」
晴「だからってわざわざオレなんかを選ぶわけねーだろうが」
梨沙「それ、選ばれたらまんざらでもないって風に聞こえなくもないわね」
晴「!? ……あー、やめやめ! 梨沙までオレをからかって、くそー……そんなに楽しいのかよ」
梨沙「めっっっちゃくちゃ楽しいわ!」
晴「堂々と言うな!」
梨沙「ねぇ晴~、機嫌直しなさいよ~」
晴「ふん! こんなことならあんな仕事やらなきゃよかったぜ」
梨沙「じゃあこれ最後、これで最後にするから聞いてくれない?」
晴「……なんだよ」
梨沙「Pに早く結婚してほしいと思う? 早くイイ人みつけて幸せになってほしい?」
晴「はあ? そりゃあ……そうだな……そういうもんじゃねーの?」
梨沙「嘘は無しだからね! 思ったことちゃんと言いなさいよ、これ最後にするから!」
晴「む…………なぁ、絶対笑うなよ?」
梨沙「笑わないわ。だから、聞かせて?」
晴「よくわかんねーんだけど、別にイヤってわけじゃないんだ。でも……」
梨沙「でも?」
晴「Pもその内ケッコンするんだろうなって思ったら、……寂しいっつーか、さ。仲の良い友達が遠くに引っ越しちまう~みたいな?」
梨沙「……あぁ、だから急に似合わない遠慮なんてしだしたのね。そういうことだったの」
晴「笑うなよ?」
梨沙「笑わないわよ! アタシもまぁ少しはそう感じないこともないだろうし、変なことなんてないわ、うん」
晴「それならいいけどよ……はい、終わり! もう変なこと聞くなよな!」
梨沙(なるほどねぇ。少なからずは意識してる? あとはP次第かもしれないわね!)
晴(あんな仕事してから調子狂いっぱなしだぜ。こういう時はサッカーだな!)
P「……」カタカタ カタッ
晴「なぁP――あ、なんでもない」
P「ん? いいよ、一区切りついたから」ターンッ
晴「別にいいって、仕事中なんだろ?」
P「俺だって息抜きするよ。それより、ボール持ってるってことは」
晴「んー、まぁな。なんか頭スッキリしたくなったんだよ。そういう時はこれだろ?」
P「晴らしいな。じゃあ外……行ってくるか」
晴「……うん」
P(このボール俺がプレゼントしたやつだよなあ。随分使い込まれてまあ、学校で男の子に混ざって遊んでりゃ汚れもする……か)
晴(おっかしーな、これからPとサッカーだってのになんかもやもやするぞ。どうしちまったんだオレ?)
梨沙(2人ともいつもとどこか雰囲気違うわね……もう、目が離せないじゃないのよ!) コソコソ
裕子「梨~沙ちゃん! 何してるんですか、それとも当てちゃおっかなぁ?」
梨沙「!?!?」バッ
裕子「むぎゅー!? むぐぐ!?」
梨沙「ユッコ静かに! いまいいとこなんだからっ!」
裕子「っ……ぷはーっ! ご、ごめんね! ……ところでいいとこって何?」
梨沙「後で教えてあげるから静かにしててよね!」
裕子「ううっ、冷たい……それならサイキックパワーで梨沙ちゃんの心に直接聞いちゃいます! ムムムッ!」
晴「? うわわ、なんだこれ! ボールが勝手に……」
P「前にもこんなことあったような……まさか! 晴、ボールを離せ!」
晴「お、おう!」
パァァーーンッ
梨沙「」
裕子「あれっ、何の音ですかね?」
晴「ボールが爆発……した?」
P「晴、怪我はないか? 大丈夫か!」
晴「大丈夫じゃねーよ! Pに貰ったボール、これじゃもう……」
P(いたずらにしちゃタチが悪いな……でも麗奈はさすがにここまでしない、ってことは考えられるのは――)
P「仕方ない、事故だよ事故。うちの事務所にはたまにあることだ」
晴「あってたまるか! 風船じゃねーんだぞ! 誰だよこんなこと、するヤツ、は…………」
P「!? 晴……な、なあ。泣くなよ」
晴「泣いてねーし……泣いて、なんか……」
P「……今日の帰り、送るから途中で新しいの買いに行こう。代わりになるかはわからないけど、必要だろ?」
晴「…………」
梨沙「……」
裕子「梨沙ちゃん? 今日は調子が悪いみたいなので降参します、だから教えてください!」
梨沙「ユッコ!」
裕子「は、はい!」
梨沙「アンタのサイキック? 認めてあげてもいいわよ、すごいじゃない!」
裕子「ほんとですか! 私のテレパシー、届いてたんですね!」
梨沙「でもこれからお説教ね。アタシの相棒、怪我するところだったんだから」
裕子「えっ、何の話? えーっ!? た、助けてーー!」ズルズル
梨沙(……素直に喜べないけど、これで何か進展したらいいわね。どうなるかしら?)
P「――さあ乗った乗った。あんまり遅くまで連れ歩くわけにいかないしな」ガチャッ
晴「……」パタン
P「ふぅ。それ、どうするんだ? もうボールとは言えない何かになっちゃってるけど」
晴「帰ったら供養する。少しは無念を晴らしてやらないとな」
P「供養て。大事にしてくれてたんだな」
晴「当然だろ? 小さい頃から人形とかよりボールの方がよっぽどトモダチだ。それにこれは、Pがくれたやつだから」
P「そっか。……すまん」
晴「ん? 何を謝ってんだよ」
P「そんなに大事な友達なら簡単に代えなんてきかないだろう。新しいの買ってやるだなんて、軽々しかったかと思って」
晴「き、気にし過ぎだって! Pも言ったろ、オレも新しいのないと困るしさ。サンキューな」
P「そうだな……ボールがないと、学校の友達ともサッカーできないしな」
晴「ああ、そっちは別にあるぞ。それに毎度オレのボール使ってるわけでもねーし」
P「え、そうなのか?」
晴「Pから貰ったやつは……まぁ、Pと……あとは事務所の連中とやるときに使ってたんだ」
P「……気付かなかった。って、言われてみれば事務所によくボール置いていってたっけ。その割に使い込まれてないか?」
晴「たまに特訓する時とかも使ってたからな、なんとなく足に馴染むんだよ。リフティングの最長記録もこいつで伸ばしたんだ」
P「なら今度も晴に合いそうなボールを選ばないといけないな。おお、ハードルが上がった……」
晴「別に選り好みなんてしねーって、またすぐボロボロになるだろうし。オレ達結構サッカーしてるんだぜ?」
P「そうだっけ? なんか俺があまり仕事してないみたいなそういうことなのか」
晴「いや、経験者でもないスーツに革靴のヤツからオレがボール奪われるくらいにはやってるって。……あ、思い出したら腹立ってきた」
P「あ、あの時はただの偶然で……でも前より上手くはなれたか? サッカーで晴の相手になれそうな人あまりいないもんな」
晴「まーなー。……なぁ、オレに付き合ってくれるのは嬉しいんだ。でも無理することないからな?」
P「は?」
晴「オレから誘っておいて何言ってんだって感じだけど、なんつーか……」
P「そんなこと言うなよ。晴が誘ってくれなくなったら、俺から誘うぞ。仕事放ってでも誘うぞ」
晴「仕事はしとけ! ……そ、そうか? なら、いいんだけどさ」
P「……」
晴「……」
P(なんだろう。意外というか、晴からそんなこと言われるとは)
P「どうしたんだよ。晴らしくないぞ」
晴「オレもそう思う……。梨沙にも言われた。慣れないことしたり考えたりして疲れてんのかな」
P「慣れないこと? 何かあったのか」
晴「わからないとは言わせねーぞ! 人にウエディングドレスなんか着させといて」
P「えー。凄く評判よかったんだぞ? 晴のご家族に」
晴「おまっ、梨沙だけじゃなくオレん家にまでこの前撮ったやつ送ったのか!?」
P「特に晴のお父さんは絶賛してた、同時にいつか晴が嫁入りしてしまうことに複雑な気持ちを抱いたらしい」
晴「なにやってんだあのオヤジ……。つーかいいのかよ、この前撮影したのってまだ出回ってないんだろ?」
P「そこはまあ、なにとぞご内密にと」
晴「こいつ……! いや、家族にはいつかバレるしそっちはいい。それより梨沙には散々からかわれたんだからな!」
P「そうか? かわいいとか、晴もやればできるのにもったいないとか言ってた覚えが」
晴「そうじゃなくてだな……それもあるけど……」
P「うん?」
晴「……しまいには、オレがPと結婚してやれとか、意味わかんねーことまで言われたんだからな!」
P「」
晴「Pも後で梨沙になんか言ってやってくれよ。何馬鹿なこと言ってんだってさ」
P「……そうだよな、そりゃ意味わかんねー、だよな」
晴「……っ、だ、だろ? だから…………その」
P(晴はまだ小学生だし、俺とではずっと歳の差もある。ましてやプロデューサーとアイドルだ。誰が聞いてもおかしな話に決まってる)
晴(なんだよ、やっぱ普通に考えたら誰だって意味わかんねー話じゃんか。梨沙のヤツ……)
P(……だが、)
晴(……だけど、)
どうしてだろう。お前にだけは、違うと言ってほしかった――
P「小学生サイズのボールは4号だったな。じゃあこの辺か」
晴「……なー、ほんとにこれ必要か?」
P「帽子と眼鏡は変装の必須道具といってもいいだろ?」
晴「別に変装しなくたってってことを言ってるんだっつの……」
P「晴、お前も立派なアイドルになりつつあるんだから、今のうちから慣れておかないと」
晴「こういうの苦手なんだよなー。なんとかなんねぇ?」
P「そうだな……もっと髪をかわいくまとめて服もフリフリだったりすれば、結城晴だってバレにくいかもな」
晴「P、こんな感じでいいか。いいよな?」
P「ああ、とりあえずはな。そんなにかわいい服はいやか」
晴「当たり前だろ! 動きやすさ第一、あとはオマケだ服なんて。Pだってオフでもスーツなんだろ?」
P「うっ、……人には人のこだわりがあるってことだな!」
晴「いや、もしかしたらオレより駄目じゃね? 毎日ユニフォーム着てるようなもんだろそれ」
P「うーん、仕事着っていうより体の一部なんだよもう」
晴「……まさか寝る時も?」
P「あ、それはさすがに」
晴「だよなー! っつーことは、よほどのことがないとスーツ以外の姿を見せねぇってことか」
P「そうだな。外で誰かと会うときはつい着てしまう悲しい性を背負ってしまったのだよ」
晴「なんだそれ。オレとサッカーするのも仕事の内なのかよ?」
P「えっ、いや……」
晴「違うならサッカーウェアもついでに買おうぜー。あとシューズも買わないとな、スパイクの方がいいか?」
P「う、うむ。検討しておこう」
晴「なんか片言になってんぞ」
P「財布みたら持ち合わせがなくてだな、今日はとりあえずボールだけ、な?」
晴「……しゃーねぇなー。って、オレもとやかく言える立場じゃないけどさ」
P「ははは……さてと、ボールこれにしようと思うんだが。どうだ?」
晴「いいんじゃねーの? Pが選んだやつに文句はねーし」
P「じゃ、決まり。これが明日から晴に蹴ってもらえるボールだ」
晴「変な言い方すんなよ……」
P「サッカーボールは蹴られてなんぼなんだからいいじゃないか。ボールは友達なんだろう?」
晴「そうだけど、蹴られたがってるように言うのやめろ! 蹴りにくくなるだろ!」
P「じゃあレジ行ってくる。晴はどうする? せっかくきたしもうちょっと商品見てるか?」
晴「そうすっかな。ぷらっと見てくる」
晴(この辺か。へぇ、安いのならオレの小遣いでもなんとか……)
晴(……………………)
P「買うもの買ったし、さー帰るぞー」
晴「あ、ちょっといいか?」
P「ん? トイレ?」
晴「ちげーよ! 今日はサッカーできなかったし、新しいボールも気になるし……少しだけサッカーしねぇ?」
P「でももういい時間だぞ、暗いし危ないだろ?」
晴「照明がそこそこ明るい公園があるんだ。別に本気でやるってんじゃない、軽くパスするだけでいいから……駄目か?」
P「……わかった。少しな」
晴「そうと決まれば早く車出してくれ。時間がもったいないからな!」
P「ほいほい、発進ー」
晴「どうだ? ボールも新品だからよく見えるだろ?」
P「そうだな、これなら軽くやる分には差し支えないか」
晴「リフティングくらいならこの通り、よっ、ほっと」
P「蹴り具合はどうだ?」
晴「悪くねーよ。ほら、パス」
P「わっ、ちょっ、飛ばすな飛ばすな!」
晴「へへっ、でもゆっくりパスしてやっただろ――って、あれ?」
P「まだ目が慣れないな……っとと」
晴「P、いつの間にそんなリフティング上手くなったんだよ! やるじゃん!」
P「晴を驚かせたくってな。ちょこちょこ練習してたんだ」
晴「んだよー、早く言えって! やっぱセンスあるんじゃねーの?」
P「そんなことないよ。晴のその顔が見たくて頑張ってただけだから、これ以上はきついかな」
晴「……へっ、物好きなヤツ。オレ喜ばしたって何も出ねーぞ」
P「喜んでくれたならそれで充分だ。……あ、落ちた。喋りながらはまだ無理か」
晴「上出来だよ。もうオレのライバルに認定してもいいかもな!」
P「ライバルは言い過ぎだろ。ほら、パス」
晴「事務所の中じゃ張り合いないしいいんだよ! ……ははっ、やっぱPとやるのが楽しいや」
P「……?」
晴「ん? 人の顔ジロジロ見たりして、どうした?」
P「いや、別に……」
P(言葉とは裏腹に晴が寂しそうに見えた……気のせい、なのか?)
晴「……なー」
P「んー?」
晴「Pもいつかケッコンするんだよなー?」
P「……さあな」
晴「さあなって、したくねーの?」
P「そうだなー。世間体とかもあるし、親に孫の顔見せてやらないとってのもある」
晴「はぁ? なんだよそれー」
P「大人になったらいろいろあるんだよ。……でもなー、結婚ってなんだろうな」
晴「Pもわからないのか? 大人なのに」
P「そりゃしたことないものをどうこう言えないだろー。形だけすればいいってものでもないだろうし」
晴「それって、アレか? 好きな人としたいとか、そういう」
P「そう、なのかもなぁ。俺もいい年してその辺わかってないというか」
晴「……へぇ。好きな人とかいねーの?」
P「どうだろう。何をもって人を好きだと言えるか、晴にはわかるか?」
晴「そんなの、オレがわかるわけねーじゃん」
P「そっか。じゃあ俺は晴と一緒だ。全然大人なんかじゃない」
晴「……オレと一緒か。ははっ、つくづく変なヤツ」
P「悪かったな」
晴「褒めてんだよ。オレがアイドルをすぐ辞めなかったの、Pのせいだってはっきりわかったぜ」
P「……ははっ、悪かったな」
P(……今しかない。なんとなくだけど、今以外に伝える機会はもうこない。そんな気がする)
晴「? ヘイ、パスパス」
P(俺はこの、うまく言い表せない何かを晴に伝えたい。伝えたいなら、そうすればいいじゃないか)
P「晴、聞いてくれないか」
晴「聞いてるよ。どうした?」
P「好きな人はいない……と思う、けど。気になる女の子ならいるんだ」
晴「っ……へぇ。そうなのか、よかったじゃん」
P「その子はな、育った環境のせいか男の子っぽい振る舞いするけど、それも含めてかわいい女の子だと思ってる」
晴「は? それって……」
P「サッカーが好きで、クラスの男の子達に混ざってやってるって聞いたら、その男の子達が羨ましいなんて思ったりもした」
晴「…………」
P「だからこっそり練習して、たまにこうして相手になる時あきれられないようにしたんだ」
P「俺とは一回りは年も離れてるし、常識から考えれば戸惑いもある。周りの人もきっと認めてはくれないだろう」
P「何より俺自身、これがどういう感情なのかをわかってない。今まで経験してこなかった気持ちだから、言い表せない」
P「それでも、クラスの男の子達とサッカーで遊んでいると聞いて、名前も顔も知らない男の子達に俺はきっと、嫉妬したんだと思う」
P「……、だから、その。上手く言えないんだが……俺はその子に対してよくわからない気持ちを抱えているはずなんだ」
P「はっきりと言えない、勘違いなのかもしれない。だけど、こうして一緒にサッカーしてるだけで俺は楽しい」
P「なぁ、晴。俺はその子に、こう聞いてみたいんだ。『友達から始まりたい』って。やっぱり変かな」
晴「…………」
P「……晴?」
晴「――くくっ、んだよそれ。わっけわかんねー……でも」
晴(わかってたさ。梨沙も言ってたように遊び友達みたいに接してきたけど、本当はただの仕事の付き合いってだけだったんだ)
晴(年の差だってある。オレはきっとPとは仕事仲間なだけで、それ以上Pと深く関わることなんか出来ないまま終わるんだと思ってた)
晴(サッカーだけは、オレのフィールドに引き込んでる間だけはオレの方が上で、その差を埋められた気になって)
晴(だから、いつかPにボール奪われた時、すげー焦ったんだ。サッカーで追い越されたらオレにはもう何もないから)
晴(子供のオレがPと肩並べられることなんて、他にない。そんなこと気にするオレ自身の気持ちもよくわからなかった…………でも)
晴「友達……か。お前と友達になったら何かイイことあるんだろうな?」
P「…………そうだな、サッカーする時……ちゃんと着替える、とか。その子が好きなことに全力で応えられるよう、に?」
晴「ぷっ、あははははははは! そりゃいーぜ!」
P「いや、もちろん俺はこの姿が一番動ける自負はあるぞ! でもサッカーに付き合うのが仕事の内なんて思ってほしくないのもあるしさ」
晴「ま、胸でトラップするたびに埃を払われてたら気になってしかたねーし、そうしろよ。オレもやる気でるからさ」
P「! それじゃあ……」
晴「ったく、とんだキラーパス送りやがって。……なぁ、オレもいろいろごちゃごちゃ考えてたんだ。オレなりに」
P「うん」
晴「もう……余計なこと考えなくていいんだよな? 好きだの嫌いだのオレだってわかんねーけど、しばらくわかんねーままでいいんだよな?」
P「ああ。決着がつくまでロスタイムでも延長戦でも、いくらでも付き合うよ」
晴「そうか。なら、Pが気になるっていう子にもう一度聞いてみろよ。そいつもPのこと気になってたらしいから、きっと最高のパス返してくるぜ」
P「……わかった。なあ晴、俺と友達から始めてほしいんだ。いいかな?」
晴「……、おうっ!」
もうちょっとだけ続くんじゃよ
―――――
―――
――
晴「んー…………」
ネネ「晴ちゃん? どうしたの、気分でも悪いのかな?」
晴「あ、ネネさん……。そんなんじゃないんだ、体調はバッチリだぜ」
ネネ「それならいいのだけど……何かあったら遠慮なく言ってね?」
晴「うん。……あ、じゃあ早速いい?」
ネネ「もちろん! もしかして悩み事?」
晴「そんなとこ、か? 実はさ、Pの……ああ、プロデューサーのサイズが知りたくって」
ネネ「サイズってお洋服の?」
晴「それと靴も。プロデューサーってオレからしたらでかいし、やっぱ直接聞かないとわかんねーんだよな」
ネネ「男の人の服のサイズかぁ、私も見ただけじゃわからないかな。でもなんだか珍しいね?」
晴「ん、何が?」
ネネ「晴ちゃんなら迷わずPさんに聞きそうなのになぁって」
晴「うっ……じ、事情があってだな。オレがそんなこと気にしてるって思われたらつまんなくなりそうだしさ」
ネネ「そっか、晴ちゃんはPさんにプレゼントしたいんだね」
晴「……そうだけど、ここだけの話な。ネネさんを見込んで話してるんだからな!」
ネネ「安心して、誰にも言わないから♪ えっと、そうしたら私が代わりにPさんに聞いてくる?」
晴「いいのか!?」
ネネ「もちろん! それとなく聞き出してみるから、ちょっと待っててね」
晴「ああ、助かる! サンキューネネさん!」
梨沙「――って感じで、最近微妙に付き合い悪いのよねー。何してるのかしら?」
飛鳥「聞く相手を間違えてないかい? ボクに聞いたところで解答は得られないよ」
梨沙「ショッピングに誘ってもいまお金ないからの一点張りだし、友達と約束してるってことは学校の子とサッカーでもしてるのかなぁ」
飛鳥「……ボクの話は聞いていない、と。誰かにパートナーを取られて寂しいんだね」
梨沙「そ、そんなんじゃないわよ! アタシだってオフはパパと過ごすのに忙しいんだから!」
飛鳥「なんだ聞いているじゃないか。それより、いろいろ探りを入れていたのはもう済んだのかな」
梨沙「それなのよー。知ってる? 晴ね、最近Pをプロデューサー呼ばわりしてるのよ?」
飛鳥「……それが本来あるべき形なのだろうが、たしかに何らかの変化はあったようだね」
梨沙「でも別に仲が悪くなった感じしないし、むしろ距離縮まってる気さえするわ。だから余計わかんないっていうかさー」
飛鳥「となると、梨沙の陰ながらの献身はあながち取り越し苦労というわけでもなかった、ってことか」
梨沙「どうなのかしらね。アタシはただPが晴を気にしてて、晴もPを気に入ってるなら、くっついちゃえばいいのにって思っただけ」
飛鳥「なかなか安直な行動理念だね……」
梨沙「えー? でも晴ってあんなじゃない? ちゃんと晴を女の子として見てくれてるPが側にいたら、晴も自然と女の子らしくなると思ったのよね」
飛鳥「人はそう簡単には変われないさ。少なくとも、変わることを望まない限り」
梨沙「そうよねぇ……あのままでもいいけど、晴に女の子としての自覚がちょっとでもできたらもっと魅力的にならない? このままじゃ女の子の心しか掴めなさそうだし」
飛鳥「キミは本当にパートナーを大事にしてるんだね」
梨沙「だーかーらー、そういうんじゃないの!! ユニット組んでる以上はもっと良くなって貰わないと困るの! わかるでしょ!?」
飛鳥「典型的な照れ隠し、ごちそうさまってやつかな?」
梨沙「――~~!? あ、飛鳥こそ相棒とはどうなのよ! この前隅っこでめそめそしてたわよ?」
飛鳥「……。うん、蘭子には悪いことをした。そして気付かされた、ボクはボクなんだ。言葉に踊らされずにボクもボクを貫いていく所存さ。たとえあの頂には届かなくとも」
梨沙「アンタ蘭子に何したのよ……」
晴「なー、どうだ? 動きやすい?」
P「そうだな……体が軽くなって逆に動き方が定まらないというかバランス取れないというか」
晴「どんだけスーツと革靴に馴染んでたんだよ……」
P「ま、まあでも汚れとか気にせずできるのは気が楽だよ。ウェアにシューズ、ありがとな。高かったんじゃないか?」
晴「んー、しばらくガムはお預けだな。でもいいんだ、その分Pと思いっきりサッカーできるし!」
P「……あ、久し振り。なあ晴、なんで事務所じゃプロデューサーって呼ぶんだよ」
晴「そりゃあ仕事は仕事っつーか、プライベートはプライベートっつーか? この際しっかりしときたくなったんだ。コーシコンドーってよくないだろ?」
P「プロ意識ってやつか……晴! 俺は絶対お前をトップアイドルにしてみせるからな!」
晴「わっ、うるせー! 今はただのお前の友達なんだから、仕事の話は無しだ。いいな?」
P「あっ、はい……でもいいのか? 学校の友達とならもっと大人数でサッカーできるんじゃ?」
晴「あいつらとはいつでも遊べるしいいんだよ。Pとオフが被るなんてあんまりないしさ」
P「そうか。そう言ってくれると嬉しいな」
晴「ま、実際こうやってオフにのんびり外で遊んでられるうちは、まだまだトップなんて遠い話なんだろうけどさ」
P「まだ12歳だろ? 時間はたっぷりあるんだ、一歩ずつ進んでいけばいい」
晴「だな。その時までにオレとPのコンビネーションも磨いていって、いつかみんなに見せつけてやろうぜ!」
P「ん? 見せつけるって何を?」
晴「そこはほら、何かそういう企画を立ててだな。オレ達2人のサッカーでお茶の間を湧かせるんだよ」
P「し、仕事の話は今は無し、だろ? その前に俺を表舞台に出そうとするんじゃあない」
晴「はー? もったいねーじゃん、なんかやろうぜー?」
P「俺は監督ポジションであってプレイヤーにはならないの! ……ん?」
晴「おっ? 急に暗く……うわっ、降ってきやがった! 今日晴れるんじゃなかったのかよ!」
P「一旦俺の部屋戻るぞ! ダッシュだ!」
晴「わかった、遅れるなよ!」
P「ちょっ、家主より先に行くなー! 待てー!」
晴「待ってたら濡れちまうって! ほら早く!」
P「た、体力はまだ……ごふぅ」
P「…………降水確率10%とは何だったのか」
晴「それより降り過ぎなんだよ、一瞬でずぶ濡れじゃねーか……」
P「このままだと風邪引くぞ。シャワー使うか?」
晴「ああ、借りる……。あ、でも着替えどうすっかな」
P「Tシャツ貸すよ。晴くらいならいい具合に下まで覆えるだろ」
晴「うっせー、小さくて悪かったな。すぐでっかくなってやるからな! ……ックシュ!」
P「はいはい、続きは上がったらな。ほれタオル、とシャツはこれでいいか?」
晴「ん、じゃあ行ってくる。すぐ出るからPも風邪引くなよ?」
P「俺は着替えておくから大丈夫だ、晴こそちゃんと温まってから出るんだぞ?」
P(……誰かのシャワー音を聞くなんていつぶりだろう。なんか落ち着かないな)
P(さすがに今日はもうサッカー出来なさそうだから、遊び道具を用意しておくか。ゲーム機どこやったっけ)
P(いまの子にはPS2は古すぎるか? いや、俺はPS2を信じる! でもサッカーゲームはないんだよな……)
P(それよりもう少し部屋を片付けておこう。今日は晴が俺を部屋まで迎えに行くっていうから、何かあってもいいよう多少身構えてはあったけど)
P(まさかこんなプレゼントを貰えるとは……ボールよりよっぽど高くついたんじゃないか)
P(これ着て晴とサッカーでお茶の間デビュー、うーん。サッカー絡みで仕事させてあげたいのは山々だが、さすがに一緒には出れないぞ)
P(まあ、ゆるい感じでフットサルくらいなら一緒にできるかな? 俺と晴が一緒にサッカーの試合できそうなの、今度探してみよう)
P(……………………)
P(だめだだめだ、何か考えてないとシャワー音が気になる! こうなったら無心で片付けするか……!)
晴「あがったぜ。借りたシャツもほら、悔しいけど今は丁度いい丈だよちきしょー」
P「ま、まあ背はこれから伸びるって。それより髪ちゃんと乾かしたか?」
晴「いや、なんか人ん家だとドライヤーとか勝手に使うのもどうかなーってさ。それにオレの髪だと時間かかるし、Pが入った後でもいいかと思って」
P「じゃあドライヤー持ってきて俺が入ってる間使ってていいぞ。ついでに濡れた服、ドライヤーで少しでも乾かしておいたら?」
晴「……そうだな、そうすっか。じゃあ交代な、あれ部屋片づけてたのか?」
P「ただ待ってるのもアレだったからな……じゃ行ってくる」
晴(……な、なんかわかんねーけど落ち着かねぇ。なんでだ? こんな格好してるからか!?)
晴(とりあえずちゃっちゃと乾かさねーと。その前に、お茶のペットボトルとコップ置いてあるのは好きに飲めってことでいいんだよな?)
晴(全力ダッシュした後だったから喉乾いてたんだよな。気が利くぜほんと、ありがたく頂くか。何か飲めば少しは落ち着くだろ)
晴(ふぅ……さてドライヤードライヤーっと。しっかしあんな短時間でよくこれだけ片づけたなあいつ)
晴(何かオレに見られたらまずいもんでもあったのか? なんつってな)
晴(……いや、オレに見られたらまずいもんって何だよ! 何考えてんだオレ!?)
晴(別に誰にも見られたくねーもんだってあるだろうし、人来たら普通片づけようとするもんだろ……)
晴(んー、学校のやつらの部屋とも、兄貴の部屋ともどこか違うんだよな。似てるんだけど、雰囲気っつーか)
晴(友達の部屋に遊びに行くなんて普通なのに、なんでこんな落ち着かねーんだ……?)
晴(あ、ハーフパンツ。Pのか、せっかくだし試しにちょっとはいてみっか)
晴(……でけえ。なんだこれ? 持ってないと落ちるとかもうはくとかはかないじゃねーな……って、だからオレは何をやってんだっつーの!!)
P「あがったぞ。……なんでそんなに疲れた顔してるんだ?」
晴「……なんでだろうな。オレもわかんねー」
P「ん? 全然髪乾いてないじゃないか。ほんと何して、あっ」
晴「わりぃ、喉乾いて気付いたら飲み過ぎてた……」
P「仕方ないな、とりあえずドライヤー貸せ。俺が代わりに乾かしてやるよ」
晴「サンキュー。誰かに乾かしてもらうとか久し振りだ」
P「言っておいてなんだけど、慣れてないから不具合あったら早く言うんだぞ。お前の髪痛めでもしたら俺はプロデューサー辞める」
晴「そんなに思いつめなくたっていいだろ、あんま手入れとかしてねーし気にすんなよ」
P「……まあ、いずれ気にするようにな。自分でできる範囲でケアもしてくれよ? せっかく長くて綺麗な髪なんだから」
晴「っ!?!?」
P「え、何その顔」
晴「あ、いや……髪褒められるとは思ってなかったから、鳥肌立った」
P「どういう意味だそれ!? ……いいからほれ、後ろ向け」
ブオォーーーーッ(※ドライヤー音)
晴「…………」
P「…………」
晴(なんか……)
P(乾かし終わった後……)
晴・P(顔合わせにくい……!!)
この後めちゃくちゃゲームして遊んだ
おしまい
晴とは男だの女だのよりもこういう微妙な距離でいちゃコラとも何とも言えないまま絆を育んでほしいと思った まる
この後どうなったか数年後ってていで書いてみたいけど、成長後の晴ちんを描いたSSはたしかもうありましたね
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