吹雪「叢雲ちゃん、お出かけしようよ!」 (43)
・・・・・・
~夏・鎮守府~
~吹雪型の部屋~
叢雲「あ゛ー…………あ゛つ゛い゛」グデー
叢雲「白雪と磯波は遠征、深雪は電と一緒に入渠…………暇ねぇ」
叢雲「しかも、なんでこんな日に限ってクーラー壊れてんのよ……」
初雪「…………あづい」
叢雲「そう思うなら私にも扇風機向かせなさいよ!」グググ
初雪「駄目。この扇風機君は私と婚約してるから……浮気許せない」グググ
叢雲「重婚で手を打ちなさいよ!」グググ
初雪「風がやむと私死んじゃうから……!」グググ
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ガチャッ
吹雪「うー……暑い…………って、何してるの2人とも?」
叢雲「初雪が扇風機くれないの!お姉ちゃんのくせに!」
初雪「マイダーリン」ガシッ
吹雪「そんな子供みたいな……あ、そうだ!」ポン
叢雲・初雪「?」
吹雪「部屋の中に居ても暑いだけだし、こんな日はお出かけしようよ!」
叢雲・初雪「却下」
吹雪「ひどい!?」
叢雲「吹雪、今日がどんな日か分かる?」
吹雪「え、子の日――」
叢雲「そんなギャグいらないのよ!!今日はねぇ、最高気温38℃!太陽さんさんアスファルトジュウジュウ!!『今日は外出を控えましょう』って朝のニュースのお墨付きの猛暑日中の猛暑日なのよ!!こんな日に外に出たら熱中症で死ぬわ!!!」
吹雪「そんな大げさなぁ」
初雪「私も、ムリ。夫婦は常に一緒にいるって決めてるから……ね、あなた?」
扇風機「」ゴオオオ
初雪「ね?」
吹雪「初雪ちゃんいつ扇風機と結婚したの……」
叢雲「今朝だそうよ」
吹雪「そんなぁ……今日と明日は出撃も無くてお休みの日なのに……妹達はそんなお姉ちゃんについてきてくれないっていうんだね……」
初雪「私、夜から遠征……」
吹雪「あ、ごめん」
叢雲「………………(私も吹雪と同じく今日と明日お休みだなんて言えない……!)」プルプル
吹雪「はぁ…………ひとりで行こうかな……外出許可貰ってこようっと」
叢雲「あーーーーもう!!分かった!分かったわよ!!」
・・・・・・
~鎮守府最寄り駅~
吹雪「叢雲ちゃんありがとう!!」
叢雲「白々しいわよ……」
ジリジリ……
吹雪「やっぱり暑いねー」
叢雲「(結局ついてきてしまったわ…………しかも、何が悲しくてこんなアホみたいに暑い日に吹雪と2人で)」
叢雲「(それに……)」チラッ
吹雪「次の電車は5分後かぁ」
叢雲「(吹雪、結構焼けてるわね……私はあんまり色が変わらない方だけど、吹雪の肌は小麦色って言うのかしら?それに近いわ)」
叢雲「(そういえば日中もあんまり部屋に居ないし、普段から外にいるのね……)」
吹雪「ん、どうしたの?ジロジロ見て」
叢雲「え、あ、別になんでもないわ!」
吹雪「それにしても叢雲ちゃんオシャレだねー!この白いワンピース、青い氷の模様が入っててすごく涼しげだよ!白い肌によく似合う」ウンウン
叢雲「あ、ありがとう…………そういう吹雪こそ、Tシャツにショートデニムなんて大胆ね」
吹雪「えへへ。このシャツ、この前扶桑さんと一緒に買い物に言って選んでもらったの」
叢雲「いいんじゃない?セーラーっぽいプリントとか面白いし、丈が長いから隠れて見えるショートデニムが逆絶対領域的な感じになってるし」
吹雪「ホント!?私もこれ気に入ってるんだよねぇ」
叢雲「……って、服の話をしてる場合?もうすぐ電車来るけど、どこまで行くか決めてるんでしょうね」
吹雪「うん。切符買おうか」
・・・・・・
~電車内~
『発車するぜ!ちゃっちゃか座るか吊革に捕まれよな~!』
叢雲「ああああ冷房だわ!文明って最高ね……ここは天国よ!!私ここに住む!!」
吹雪「あはは……叢雲ちゃん、そこ座ろう」
ガタ、ゴト、ガタン……ゴトン……
叢雲「この車両、私達以外に誰もいないわね」
吹雪「まぁこの鎮守府も結構田舎だし…………目的の駅まで大体20分くらいかな」
叢雲「それなりにかかるのね」
吹雪「はいこれ、さっき自販機で買ったお茶!叢雲ちゃんの分もあるよ」
叢雲「助かるわ……!」
ガタンゴトン、ガタンゴトン……
吹雪「そだ、音楽聞く?」
叢雲「イヤホン片方ずつ?」
吹雪「そそ!」
叢雲「なんでウキウキしてるのよ……」
吹雪「なんか楽しくない?こういうの!」
叢雲「もう、仕方ないわね。早く貸しなさいよ」
~♪
叢雲「………………」
吹雪「………………♪」ルンルン
叢雲「…………ねぇ」
吹雪「なに?」
叢雲「このサビのフレーズ、宇宙の風に乗るってどういうことかしらね」
吹雪「船を大きな力で空に浮かべたからじゃない?」
叢雲「意味分かんないわよ」
吹雪「きっと宇宙も渡れる帆船なんだよ」
叢雲「宇宙に浮かべるのに帆船?私達でさえ燃料で動く艤装使ってるのに、技術的におかしいでしょ」
吹雪「もー夢が無いなぁ」
叢雲「現実的と言ってほしいわね………………宇宙に風なんて吹いてるのかしら」
吹雪「さぁね……私もそんなに詳しくないけど」
叢雲「その風が私達の部屋にも吹いてくれれば、クーラーが壊れてても大丈夫なのに」
吹雪「あはは、明日には修理にだしてくれるって司令官言ってたよ」
『次は○○駅だ。フフ、降りるか?』
吹雪「あ、この駅だよ。降りよう」
叢雲「ええ」
・・・・・・
~○○駅~
叢雲「あ゛つ゛い゛」ダラダラ
吹雪「ホントだねー……お茶もすぐ飲み終わっちゃった」
叢雲「私もよ……」
叢雲「いかにも田舎の駅ね……屋根があるだけマシって言えるかもしれないけど」
シャコ、カシャン
叢雲「……でもいっちょ前に改札機は普通のなのね」
吹雪「地図によるとこっちだね。行こっ」
叢雲「そういえば私達、どこに行こうとしてるのよ?」
吹雪「あ、言ってなかったね。あそこだよ」
叢雲「ん?………………気のせいかしら……あんたの指差す方向……山なんだけど」
吹雪「うん。山」
叢雲「こんな太陽照り付ける中ハイキング!!?」
吹雪「大丈夫大丈夫」
叢雲「なにがよ!!あーーーーやっぱりついてくるんじゃなかったーーー!!」
・・・・・・
~麓・リフト乗り場~
叢雲「リフト……?」
吹雪「ね、大丈夫だったでしょ?」
叢雲「そういうことね……これで頂上に行くの?」
吹雪「そうそう。そこから見える景色が凄いんだってガイドブックに書いてあったんだよ!」
叢雲「観光地なの?ここ」
吹雪「みたいだよ、かなり昔の本だったけどね、鎮守府の図書室で偶然見つけたの」
叢雲「ふぅん……道理で今じゃもう寂れてるわけね」
「おんや、めっずらしいなぁお客さんかねぇ」
吹雪「チケット2枚ください!」
「はいはい2枚で500円ね。ワシが言うのもなんだが、若いのによくこんなところに来なすったなぁ」
叢雲「他に誰か来ないの?」
「週に1度くらいかねぇ、嬢ちゃん達みたいな物好きがぽつぽつ来るよ。はいチケット2枚」
吹雪「ありがとうございます!」
「リフトは6時には終わっちまうから、それまでに帰ってきなよ」
・・・・・・
~上りリフト~
吹雪「足ブラーン」
叢雲「やめなさいよ子供っぽい」
吹雪「他に誰もいないし、楽しいよ?叢雲ちゃんもやろうよ!」
叢雲「もうっ…………」ブラーン
吹雪「どう?」
叢雲「…………悪くはないわね」ブラーン
吹雪「でしょー!」ブラーンブラーン
叢雲「ちょ、揺れすぎ――」
ガタッ!
吹雪・叢雲「!?」
『外部からの揺れのため、現在運転を一時停止しております。しばらくお待ちください』
叢雲「………………人いなくてよかったわ」
吹雪「…………だねぇ」
・・・・・・
~山頂~
吹雪「とうちゃーく!」タッ
叢雲「ああああ……あづい……あづいあづいー……なんで熱の根源たる太陽にわざわざこっちから近づいてやってるのよー……」
吹雪「でもそこの大きな木の下にベンチがあるし、そこで休めるよ!」
叢雲「木陰ねぇ……まぁこんな所で焼かれるよりマシね」スタスタ
吹雪「よいしょっと……わぁっ……!」
叢雲「どうしたのよ吹雪……って、っっ!」
叢雲「(私達の目に飛び込んできたのは、世界的名画をそのまま切り取ったような、絶景に相応しい風景だった……ってホントに凄い……それ以外に言葉が見つからない)」
吹雪「すごーーーーい!水平線まで見えるー!!」
叢雲「山が海に近いからかしら……風も吹いてて心地良いわ」
吹雪「このベンチ、観光客用に景色がよく見える場所に置いてあるのかな?」
叢雲「かもね。しかも木陰なんて粋な計らいだわ」
吹雪「あっ、あれ鎮守府の灯台じゃない?」
叢雲「ええぇ……どこよ……」
吹雪「あれだよあれ!」
叢雲「あの遠くにポツンとある小さいやつ?よくあれが鎮守府だって分かったわね……」
吹雪「皆も見えるかな?」
叢雲「無理に決まってるでしょ」ピトッ
吹雪「ひゃあぁぁぁっ!?」ビクッ
叢雲「ふふ、なに変な声出してんのよ」
吹雪「だって、首筋になんか冷たいのが!……って、ペットボトル?」
叢雲「初雪が持たせてくれたのよ。アクアエリス」
吹雪「わぁっ!初雪ちゃんナイス!でもなんでこんなに冷たいの?」
叢雲「凍らせてあるのを渡されたから、今まででうまい具合に全部溶けたんでしょ。飲みましょう」
吹雪「うん!」ゴクゴク
・・・・・・
~ベンチに座って10分後~
吹雪「涼しいねぇ……」
叢雲「そうね。冷たいものも飲んで、木陰のベンチで涼んで……」
吹雪「来れてよかった?」
叢雲「…………」
吹雪「叢雲ちゃん?」
叢雲「道中暑すぎんのよ!」チョップ
吹雪「あうっ」
・・・・・・
~20分後~
吹雪「にしてもこの風景、見てて全然飽きないね」
叢雲「それについては同感だわ」
吹雪「ねぇねぇ叢雲ちゃん」
叢雲「なによ」
吹雪「ちょっとそっち寄って」
叢雲「え?」ズルズル
吹雪「えいっ」ポスッ
叢雲「ちょ、吹雪!」
吹雪「えへへー叢雲ちゃんの膝枕ー!」
叢雲「なにしてんのよ降りなさいよ!」
吹雪「えー……しばらくこうしてたいよー」
叢雲「むっ………………」
吹雪「だめ?」
叢雲「………………すぐ降りなさいよね」ハァ
吹雪「やったー!」スリスリ
叢雲「腿に顔を擦り付けないで!くすぐったいわ!」
・・・・・・
~30分後~
吹雪「…………」ウトウト
叢雲「ちょっと、もういいでしょ?」
吹雪「あと、5分……」
叢雲「ええー……」
・・・・・・
~40分後~
吹雪「…………」Zzz
叢雲「結局寝ちゃったし……」
叢雲「……………………」
叢雲「…………」ナデナデ
吹雪「むにゅ……」
叢雲「……………………」
叢雲「………………あと5分したら起こすわ。絶対」
・・・・・・
~1時間後~
吹雪「…………」Zzz
叢雲「…………」Zzz
・・・・・・
~夕方~
叢雲「……………………ん……」パチッ
叢雲「…………寝ちゃってた……?」
叢雲「……夕日、綺麗…………」ボー
吹雪「…………にぃ……」Zzz
叢雲「……ふふっ」
叢雲「…………………………ん?そういえばリフトが止まるのって6時だったわよね」
叢雲「さっきは大体10分くらいで頂上に着いたから、時間考えて帰らないと――」
時計【17:48】
叢雲「かなりギリギリじゃない!!!」
叢雲「吹雪!起きて吹雪!!」
吹雪「ん…………叢雲ちゃん?」
叢雲「早く起きて!山降りるわよ!」
吹雪「あ、寝ちゃってたんだ……それにもうそんな時間?」
叢雲「そうなのよ。早く行くわよ!」
吹雪「うん…………あ、夕日綺麗」
叢雲「それは同感……って、それどころじゃないのよ!早く降りないと私達ここに置き去りよ!」
吹雪「ええっ!?」
・・・・・・
~帰りの電車~
吹雪「いやぁリフト間に合ってよかったねぇ」
叢雲「そうね。まったく2人揃って寝ちゃうなんてどうかしてるわ……」
吹雪「あれ、叢雲ちゃんも寝てたの?」
叢雲「っ、そ、そうよ!あんたの間抜けな寝顔を見てたらいつの間にか寝ちゃってたのよ!悪い!?」
吹雪「間抜けってひどいなぁ」
叢雲「ふんっ!」
吹雪「叢雲ちゃん叢雲ちゃん」チョンチョン
叢雲「なによ」
吹雪「はい、イヤホン」
叢雲「…………これなら駅は寝過ごさないわね」
~♪
叢雲「なによ『飛べるはず』って。空くらい自信持って飛びなさいよ」
吹雪「これ物理的な意味じゃなくて天にも昇る気持ちって意味なんじゃないかなぁ……」
叢雲「…………でも、まぁ共感できるところがひとつくらいはある歌詞ね」
吹雪「え、どこどこ?どこに共感したの?」
叢雲「いちいち言葉に出すのは無粋ってもんよ」プイッ
叢雲「(それに、吹雪に『ずっと傍で笑っていてほしい』って言うのは…………私の柄じゃないわ)」
・・・・・・
~鎮守府最寄り駅~
『次は鎮守府最寄り駅だ。潮風のにおいが最高だなオイ!』
吹雪「さ、降りよう」
叢雲「そうね」
吹雪「すっかり日も沈んじゃったねー」
叢雲「でも帰ってきたって感じがするわ……落ち着く」
吹雪「ちょっとまだ早いんじゃない?家に帰るまでが、だよ!」
叢雲「遠足じゃないんだから……」
・・・・・・
~鎮守府~
吹雪「ただいまー!」
叢雲「はぁ~疲れたわ!」
吹雪「今日はありがとね、叢雲ちゃん」
叢雲「別に……たまにはいいわ」
吹雪「さっそく部屋に戻ろうか」
叢雲「そうね…………………………吹雪」
吹雪「なにー?」
叢雲「あんた、さっき山で私に『来れてよかったか』って聞いたわよね?」
吹雪「うん」
叢雲「それで…………まぁ…………」
吹雪「うん!」ニコニコ
叢雲「っ、なに笑ってんのよ!」
吹雪「なんのことかなー?」
叢雲「もう!やっぱりナシ!ナシよナシ!」
吹雪「ええーっ!?」
叢雲「まったくこの間抜け姉!」スタスタスタ
吹雪「あ、ちょっと待ってよ叢雲ちゃーん!」
叢雲「…………」スタスタスタ
叢雲「(まぁ、また機会があったら行ってもいい、かしらね……)」
~おしまい~
吹雪と叢雲のコンビ大好き
2人のほのぼの?が書ければそれでよかった
読んでいただきありがとうございます
このSSまとめへのコメント
ごちそうさま。おかわりお願いします。