【ラブライブ】にこ「マザー・モスキート」 (60)

初投稿。BadEnd。完結済み。
一気に投下します。お付き合いください。

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《異変は唐突に訪れるものだ。》

にこ「はぁ…っ。はぁ…っ!」


────ドサッ


海未「だ、大丈夫ですかにこ!」

絵里「にこ!しっかりして!」

にこ「ごめん。朝から少し体調が悪くて……」

海未「風邪か何かですか?」

にこ「わかんないわ…朝から吐き気とダルさが……」

真姫「とりあえず病院に行った方がいいんじゃない?」

花陽「そ、そうです!何かの病気だったら大変ですし…」

にこ「…そうするわ。今日はこれで上がるわね」

海未「一人で大丈夫ですか?」

にこ「えぇ…平気よ」

《 異変は嵐のように全てを奪っていく。 》

にこ「…は?つわり…?」

にこ「…そう、ですか。わかりました」

《 そこに私達の意志は関係ない。 》

*


にこ「ねぇ。妊娠、したって」

海未「…そうですか」

にこ「驚かないんだ?」

海未「事を成したのですから。既に覚悟はできています」

海未「必ず、幸せにしてみせます」

にこ「安心して。堕ろすつもりだから」

海未「な、なぜです!それは私ではにこの相手として相応しく無いからですか!?」

にこ「そんなことはないわ。でも…」

にこ「私達はまだ学生。きっと待ち構える試練はとてつもなく大きい」

にこ「そんな辛さを味わって欲しくないの」

海未「私は絶対に……っ!」

にこ「私達だけじゃないわ」

にこ「この子にも…よ」

海未「!」

海未「……わかりました。この事については私よりにこの方が正しい決断を下せるでしょう」

海未「費用は直ぐに用意します」

にこ「ありがとう……愛してるわ」

《 嘘つき。 》

*


ことり「…そっかぁ」

にこ「嬉しい?」

ことり「うん…だけど、今は驚きの方が凄いかな」

にこ「いきなりでごめんなさい。でも大事なことだから────」

ことり「わかってる!それに、この事で一番大変なのはにこちゃんだもんね!」

ことり「えへへ…この中に……私達の……」サスサス

ことり「ねぇにこちゃん!私、赤ちゃんのお洋服とか作りたいな!毛糸の靴下とか、パジャマとか……」

にこ「ことり」

ことり「男の子かな?女の子かな?でも小さいうちはどっちでも可愛いからどんなのでも────」

にこ「…ことり」



にこ「堕ろそうと思ってるの」

ことり「…え?な、なんで!?折角ことり達に授かった宝物なのに!!どうして!?」

にこ「私にはこんな重い責任を負えないわ。きっとこの子にも迷惑を掛けてしまう」

にこ「子供は親を選べないのよ…。そんなの可哀想だと思わない?」

ことり「こ、子育てのこと!?それならお母さんに頼めばきっと────」

にこ「…親が最初から子育てを人に頼るなんて」

にこ「それじゃ、「親」として失格だわ」

ことり「…そっかぁ…っ。そうだよね……」グスッ

ことり「ご、ごめんね…っ。一番…辛いの…にこちゃんのほうなのに……っ。私、私、……っ!」

にこ「……ごめんなさい」

ことり「……お母さんに言って直ぐお金を用意してもらうから」

にこ「…お願いね」

《 嘘つき。 》

*


凛「……」

にこ「理解できる?この中に貴女の子供がいるの」

凛「あ、赤ちゃんってコウノトリが運んでくるんじゃないの…?」

にこ「いい加減大人になりなさい。貴女と寝た夜に教えてあげたでしょ?」

凛「わ、わかんないよ…。目が覚めたらそんなことになってて……」

凛「全然覚えてないの…!にこちゃんの感触も、にこちゃんの温もりも!全部全部!」

にこ「それだけ凄かったということよ。私はちゃんと覚えてるわ」

凛「うぅ…ど、どうすればいいの…?凛まだ学校辞めたくないよ……」

にこ「安心して。この子供は堕ろすつもりだから」

凛「お、堕ろすってどういうこと?」

にこ「産まずに赤ちゃんを未来に還すことよ」

にこ「そしたらまた私達が大人になった時に帰ってきてくれるの」

凛「そ、そんなことができるの…?」

にこ「えぇ。でもそれには少しお金が掛かるの。なんたって未来に還すんだから」

凛「凛、今までずっと貯めてたお年玉があるの…!これで、これで足りるかな??」

にこ「……大丈夫よ。ありがとう」

にこ「ほら、未来に還っちゃう前に挨拶してあげて?凛」

凛「…また会おうね。次会うときまでには凛、たくさん勉強して、ちゃんとした大人になるから……っ」

凛「だから…さよなら」

にこ「うん…。ちゃんと伝わったはずよ」

凛「にこちゃんは凛が大人になるまで…ずっと一緒にいてくれる?」

にこ「…えぇ、約束ね」

《 一つの嘘を隠すために。 》

*


花陽「メールのこと、本当なんですか?」

にこ「私がそんな嘘をつく余裕があると思う?」

花陽「ご、ごめんね…。でもまだ信じられなくて……」

花陽「にこちゃんは…私なんかに体を許して、良かったの?」

にこ「……えぇ。貴女と寝たあの夜を後悔なんてしてない」

花陽「そっかぁ…。ごめんね、ホントに記憶になくて……っ」

花陽「私、どうして覚えてないんだろ…。こんなにもにこちゃんが好きなのに、まるで自分の事じゃないみたいで……」ポロポロ

にこ「…花陽」ギュ

にこ「ちゃんとあの日。花陽の気持ちがちゃんと伝わってきたわ」

にこ「それは言葉を交わす必要も無いくらいに…熱く、強く、確かにね」

花陽「ごめんね、にこちゃん…私、まだ親になんてなれっこないよぉ……」

にこ「わかってる」

花陽「ごめんね、ごめんねにこちゃん!ごめんね赤ちゃん…っ!」

花陽「ほんとにごめんね……!!」

にこ「うん…」

花陽「…少し、グッズを売るから。そしたら」

にこ「ごめんなさい。辛い思いばかりさせて」

花陽「いいの…とても、大切なことだから…」

にこ「……」

《 また一つ、また一つと。 》

*


にこ「と、いうわけよ」

真姫「そう…」

にこ「お父さんになった感想は?」

真姫「…正直驚いてる。知識としては知ってても実際に起こると衝撃はまるで違うのね」

真姫「いい経験になった、と言ったら怒られそうだけど…私にとって、これほど以上に勉強になることはないわ」

にこ「脳外科目指してるのに?」

真姫「その前に医者だもの。命を扱う仕事なんだからこそ、生命の誕生は…大事にしなきゃいけないことだと思うの」

にこ「感心ね。良いお医者さんになれると思うわ」

真姫「それで、胎児のことだけど……」

にこ「ごめんなさい。私は親になれる自信がなくて…」

真姫「ということは中絶ってこと?でも中絶は母体に酷くダメージを残すわ。下手をすれば次の妊娠は……」

にこ「…それならそれは私への罰だと思うの。親になる覚悟も無く命を弄んだ私への…」

真姫「待って!これはにこちゃんだけの責任じゃない!避妊具も付けずに生殖行為を行った私にも責任がある」

真姫「必ず良い医者を探して見せるわ。勿論費用も全部出す。だからにこちゃんは安心して、ね?」

にこ「何から何まで…ごめんなさい…」

真姫「何よ…にこちゃんらしくない。それに言ったでしょう?これは2人の責任なんだって」

にこ「そうね……」

真姫「……」

真姫「さっきにこちゃん。私が良い医者になるって言ったわよね」

真姫「命を救う医者になる人間が…いかに命を静かに消すか考えてるなんて…笑っちゃうわよね…」

にこ「真姫…」

真姫「…ごめんなさい。変なこと言って」

《 嘘を重ね続ける。 》

*

────ドンッ


絵里「……」

にこ「…なんのつもり?」

絵里「ふざけないで。今更妊娠だなんて…」

にこ「でも本当のことよ」

絵里「だから!私はあの時も言ったはずでしょ!?私はにことはシテない!第一記憶にもないし……っ」

にこ「でも、現に子供は出来たわ」

にこ「私は貴女以外と寝る気なんて無い…それは絵里が一番理解できてるでしょ?」

絵里「…っ!えぇ、そうよ!にこは私を愛してるって言ってくれた!!二人でこっそり飲んだお酒の味だって…っ。今でも鮮明に思い出せる!!」

絵里「でも、だからこそ!だからこそ私は子供を作ったことを否定したい!!どうして覚えてないの!どうして…どうして……っ!」

にこ「絵里…」

絵里「…ふふふ…っあははは……っ!」

にこ「え、絵里…きゃっ!?」


────ドサッ


にこ「ちょ、ちょっと!いきなり押し倒してなんのつもり!?私のお腹には赤ちゃんが────」

絵里「そうよ。ならもう一度愛を確かめあえば良いんじゃない」

絵里「にこの言う『あの日の夜』よりずっとずっと濃く、強く、深く…。私の体に刻み込みめば…っ!」

にこ「ちょっ、やだ、やめてっ…!今はそんな気分じゃないし、体にも負担が……っ」

絵里「どうして?まだお腹も大きくなってないんだからそこまで大変でも無いでしょ!?それに妊娠してるならいくら膣内に出してもいいわよね!?」

絵里「それとも何?やっぱりその子は私の子じゃないの!?誰?海未?真姫?それとも────」


────バシンッ!!


にこ「最低…っ!!あんた最低よ!!」

にこ「アンタとならこの子を幸せにできると思ってたのに…!私達を愛してくれると思ってたのに!!」

絵里「あ、に、にこ……」

にこ「この子は堕ろすわ。もう耐えられない。これでさよならよ」

絵里「ま、待ってにこ…!ごめんなさい、謝るから帰らないで…!にこ…!にこぉ!!」

《 人を騙すことには、もう。 》

*

希「…だいぶ曇ってきたね」

にこ「今日は雨が降るらしいわ。あまり良い日ではないかもね」

希「でも、にこっちはウチに知らせを持ってきた」

にこ「大事なことだもの…。今更縁起を担ぐ物でもないでしょう?」

希「…子供、できたんやって?」

にこ「何よ…他人事みたいに」

希「そんなつもりは…。ただ、ウチもあんまり実感が沸かなくてなぁ…」

希「ウチの家は共働きやったから…あんまり親に良い印象が無いのも問題なのかもね」

希「それにしてもアカンなぁ…。ウチ、ちゃんと幸せにできるかな?」

にこ「希…そのことなんだけど」

にこ「堕ろそうと、思うの…」

希「にこっちは子供欲しくないん?」

にこ「欲しいわよ…。でも私は、学校も、ラブライブも諦めたくないの」

にこ「子供を産むとなったらどちらも諦めなきゃいけない…。でもそんなことしたらきっと私はこの子を愛せなくなる……」

希「にこっち…」

にこ「…ごめん。勝手なことばかり言って」

希「…ウチはにこっちとその子と三人で幸せになりたかったけど」

希「にこっちが幸せになれないんなら…仕方ないね」

希「堕ろすんやったらお金が必要…。バイトで貯めたお金があるから直ぐに用意できるよ」

にこ「…ありがとう…。もう行くわね」スクッ

希「あ、そうそうにこっち。最後に聞いてええ?」

にこ「なに?」

希「あの夜…一緒に飲んだお酒。あれ、なんて名前なん?」

にこ「……マンハッタン、よ」


────バタンッ


希「……」ピラッ

希「引いたカードは…恋人の、逆位置」

希「…やっぱり、かぁ」

《 何も感じなくなっていた。 》

穂乃果「いらっしゃい、にこちゃん」

にこ「上がってもいい?…荷物もあるから」

穂乃果「…穂乃果の部屋、行こっか」

穂乃果「最後にこうして会ったのはあの日の夜以来だね」

にこ「えぇ。こうやって二人で話すのも久々ね」

穂乃果「最近忙しかったみたいだからさ…穂乃果、寂しかったんだよ?」

にこ「そう?それは悪かったわ」

穂乃果「それで…考えは決まったの?」

にこ「えぇ…」




にこ「……産むつもりよ。貴女の子」

穂乃果「…でも穂乃果言ったよね?そのためには…」

にこ「えぇ。忘れはしないわ。あの日アンタに言われたこと……」

────────────
────────
────


にこ『…なんだか最近体調がおかしいわね…』

にこ『生理もなんだか…。も、もしかして…!』


RRRRRR……


にこ『もしもし?穂乃果!?大ニュースよ!』

穂乃果『大ニュース?』

にこ『妊娠よ!妊娠したの!!貴女の子よ穂乃果!!』

にこ『私、貴女の子を身篭ったの…!』

当然祝福してくれるものだと思ってた。
だって、二人の幸せの結晶なんだから。
でも────

穂乃果『え…。もちろん堕ろしてくれるよね?』

返ってきたのは、予想もしない嫌悪。

にこ『は…?』

にこ『な、何言ってんのよ!愛してるって!大切にしてくれるって言ったじゃない!』

にこ『責任取りなさいよ!だから私、貴女に体を許したのに……っ!』

穂乃果『も、もしかしたら何かの間違いかも…』

にこ『そ、それはそうかもだけど…!』

穂乃果『それに…お金が無いから……』

お金?
穂乃果はお金に困ってるの?
私達の愛は、お金に遮られてるの?

にこ『じゃあ』

にこ『お金があれば、いいのね?』

なら…その弊害を取り除かなくちゃね


────
────────
────────────

にこ「こんなことならいっそ何かの間違いであって欲しかった」

にこ「でも、つわりが来って知らされたとき…私は悪魔に身を売る覚悟をした」

にこ「μ'sのメンバーを代わる代わる家に呼んで…睡眠薬を飲ませて既成事実をでっち上げた」

にこ「子供が出来たんだと…嘘までついて…っ!」

にこ「お金のために…周りの大切な人を傷つけるようなことを……っ」

にこ「全部!全部貴女と一緒になるためよ!!」

にこ「ここに500万あるわ。全部みんなが私のために出してくれたお金よ」

にこ「これで充分でしょ!?お願い、私に産ませて!アンタの子を…っ。私達を幸せにして!」


にこ「それくらいしなさいよぉ…バカぁ…!」

穂乃果「…驚いたなぁ」

穂乃果「流石にこちゃんだね。演技力も思考力も一流のアイドル顔負けだ」

にこ「はぐらかさないで!こっちは真剣な話をしてるのよ!?」

穂乃果「わかってるよ。大丈夫。大丈夫だから」

本当にわかってるのかしら?
疑いの種は、尽きることを知らない。

穂乃果「…あ、蚊だ。まだ夏前なのにもういるんだね」

にこ「え?え、えぇ…そうね」

いきなりなんの話?
それとも覚悟ができて安堵してる?

穂乃果「ねぇ、にこちゃん知ってる?蚊って血を吸うのはメスだけなんだって」

穂乃果「卵を生むためにはね?凄いエネルギーを必要とするから…そのエネルギーを得るために人の血を吸うんだって」

穂乃果「子供のために命懸けで頑張ってるんだってさ……」

にこ「健気ね…」

健気そのものね。
子孫を残すという生物特有の本能に従っているとはいえ、その姿は母親としての鏡だと思う。

穂乃果「まるで、」

穂乃果「にこちゃんみたいだね?」

にこ「そ、そうかしら…」

よく分からなかったが、褒められてるのだと思いひとまず頷いておいた。



しかし


そういうと穂乃果は


私の目の前でその蚊を


────パチンッ


手で叩き潰してしまったのだった。

────雨が降る音が聞こえる。

何人かの人の声と、足音を連れて……

【おわり】


50レス程ですがありがとうございました。
少し皆様の反応が知りたいので明日の24:00にhtml化の依頼を出す事にします。

ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年07月18日 (土) 00:45:35   ID: fperi1EP

うん…うん?

2 :  SS好きの774さん   2017年02月20日 (月) 16:21:44   ID: lUVgqEV4

後味悪すぎる…

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