姫「ふふふ」
侍女「おだやかじゃないですねぇ」
姫「よくね?」
侍女「おだやかじゃないです」
姫「あたしは良いか悪いかで聴いてんだけど?」
侍女「おだやかじゃないです!!」
姫「それがあなたの答えね?」
侍女「はい」ズズズ
姫「お茶飲むな!!」
侍女「」ブッシャァァ
侍女「すびません」
姫「ったく……余裕あんのかないのかわからないわねあなた」
侍女「ないです!」
姫「断言するな!」
侍女「ひゃい」ズズズ
姫「それでね、魔王を甦らせる手段なんだけど」
侍女「わ、わたしはなにも知りませんよ!!この城の地下が怪しいとかまったく!!」
姫「……」
侍女「本当に知りません!!」ゴププ
姫「地下か・・・ じゃちょっと行ってみよか♪」
侍女「えええええ!?」
姫「なによ? 怖気づいたの?」
侍女「いやいやいや! なんで行くことが決まったみたいになってるんですか!」
姫「じゃあ侍女はここで待ってれば?」
侍女「い、いいんですか?」
姫「うん、いいよ。」ニコッ
侍女「じゃ、お言葉に甘えて・・・」
姫「侍女。長い間お疲れ様、もう二度と会うことはないでしょう。」
侍女「すみません。お供します。いえ、お供させてください!」
~地下
姫「暗いわね・・・」
侍女「ううう、怖いです姫様。」
姫「ちょっとそんなにくっつかないで!歩きにくいじゃない!」
侍女「だ、だって~。」
姫「だってじゃない!」ガツン
姫「うう~。」
侍女「あ、ここで行き止まりなんですよ。」
姫「知ってるなら早く言いなさいよ!」
侍女「す、すみません!」
姫「まったく。どうやら魔法の封印を施した特殊な扉みたいね・・・」
侍女「そうなんですか? じゃお手上げですね!」
姫「ジャジャ~ン! そんなこともあろうかとお父様の宝物庫から開錠の指輪を持ってきたの!」
姫「それでは御開帳~!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
姫「さあ! 進むわよ!」
侍女「うう。なんだか寒気が・・・」
姫「しっかりなさい!」
~地下・奥
姫「これは魔方陣ね。」
侍女「今度こそお手上げですね!」
姫「ジャジャ~ン!こんなこともあろうかと転送の首飾りを(ry」
侍女「」
ガコン
大きな音を立ててゆっくりと部屋が動き出した。
侍女「ひいいいい。」
姫「変な声出さないで! 魔方陣が起動して部屋が移動を始めたのよ。」
侍女「ど、どこに向かってるんですか?」
姫「さあ? もっと下じゃない? たぶん。」
侍女「なんでそんなに冷静なんですか~。」
ゴトン
姫「止まったみたいね。」
侍女「これ魔法の扉みたいですね・・・」
姫「開錠!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
侍女「うわ~!す、すごい!」
姫「蔦? こんなところに樹木が?」
部屋の真ん中には巨大な樹があった。
姫「光もないこんな場所でいったいどうやって?」
侍女「姫様。もしかして、これ魔法生物じゃ・・・」
姫「え?」
侍女「触手とかエロ展開じゃないですか!やだー!」
姫「ちょっと!やめてよ・・・」
侍女「『期待と不安。そして初めての感情に支配されてしまう姫であった・・』」
姫「お前減給な。」ポン
侍女「悔しい、でも耐えなきゃ。」
姫「ん? ねえ、あれなんだか人の形に見えない?」
樹の幹に近づくとそこに大きなこぶを見つけることができた。
侍女「だ、大丈夫ですか? 突然襲われたりしないですかね・・・」
姫「う~ん。そいつは怖いな。侍女、お願い!」ゲシッ
侍女「ぎゃっ! なんで蹴るんですか~。」
蹴りやられた侍女は目の前のこぶに抱きつく形になる。
侍女「ひいいいい。」
姫「反応なし と。」
侍女「私で実験しないで下さいよ~。」
姫「あとこういう場合は何が考えらえるっけ?」
侍女「えっと王家に伝わる呪文とか宝具とかで解呪するとかじゃないですかね・・・?」
姫「う~ん、その手の類は一切伝わってないんだよね・・・。」
侍女「どうします? いったん仕切り直しますか?」
姫「うん。それもアリかな。」
侍女「やた! これで帰れる!」
姫「そういえば典型的な呪いの解呪に処女の口づけというのがあったな・・・」ニヤニヤ
侍女「」
侍女「あ、自分処女じゃないんで。 ここは一発姫オナシャス!」
姫「はあ? お前嘘つくな。生まれてこの方、城から出たことないっていってたやんけ!」
侍女「や、自分みたいな下賎の民より高貴な姫の方が可能性が高いんじゃ・・・?」
姫「くっ! お前そういうとこマジ必死な。」
姫「わかった。私がやろう。」
侍女「え? マ、マジに行くんすか? 先輩パネっス!」
姫「ぶっちゃけ、私ノリで来たんで!」
侍女「うえ~い! キ~スキ~ス!」
姫(あとできつい仕置きが必要だな。)
姫が体を支えようと樹に触れた瞬間、部屋全体に魔法の光が走った。
姫「な、何?」
侍女「姫様。樹の近くにいては危険なんじゃ・・・。」
姫「うん。」
あわてて樹から離れると、その根元から一つのモノリスが現れた。
姫「神聖文字だな・・・」
侍女「な、なにが書いてあるんです?」
姫「私と以前一緒に勉強しただろ?」
侍女「あはは。なんか下々の者は基礎以上の知識は覚えちゃいけないとかで完全には覚えてないんですよ。」
姫「まあ、わかりやすく言うと『この封印を解くな』ってこと。」
侍女「そ、それだけですか?」
指で石板の上を撫で文字を送る。
姫「お、封印の解き方まであるぞ。」
侍女「いいんですかね? 封印物と鍵が同じとこにあるなんて・・・」
姫「正確にはこれは鍵じゃなく錠だからな。」
侍女「?」
姫「これを発現させるには王族の血統であることが第一条件だが、その話は置いておこう。」
侍女が見つめる中、石板に浮かんだ文字をパズルのように並べ替えてゆく。
姫「これで・・・」
侍女「いよいよですか?」ゴクリ
姫「さあ!封印を解きなさい!」
姫が封印の解除を終えると大樹は、急速に衰えてゆく。
葉がその青さを失い、赤く染まり枯れ落ち枝が次々に落ちていく。
ばきりばきりと音をたてながらこぶの所から裂けていく。
樹皮と一緒に中から人が抜け落ちた頃には完全に大樹は姿を消していた。
姫「これが・・・魔王?」
侍女「た、たぶん。」
姫「たぶんて何よ。たぶんって。」
侍女「そ、それよりこの人どうしたら・・・。」
姫「運んで。」
侍女「えええええ。」
侍女「ひいひい。もうらめぇ。」
姫「なによ。だらしないわね。」
侍女「ひ、姫。」
姫「なによ。なんか文句あるの?」ギロッ
侍女「い、いえ。ちょっと休ませてください・・・」
姫「わかったわ。そこで待ってなさい。誰か呼んでくるから。」
~姫の自室
侍女「はあ~。 やっぱり我が家が一番ですね~。」ダラー
姫「お疲れ。 お茶淹れるわね。」
侍女「え? も、申し訳ありません。すぐやります。」
姫「いいわよ、これくらい。」
侍女「あ~。 とってもおいしいです。」
姫「ふふふ。 ありがとう。」
侍女「ところで姫。」
姫「? 何?」
侍女「これからどうされるんですか? まさか本当に?」
姫「そうね・・・。 これからだからね。」
コンコン
侍女「はい。」
部屋にメイドが一人入ってくる。
姫に向かって一礼し、侍女の耳元で何事かを囁くと静かに外に出て行った。
侍女「王子様がお目覚めのようですよ?」
姫「そう。 じゃあ、お茶が終わったらお話しにいきましょう。」
侍女「姫様・・・」
姫「大丈夫よ。心配しないで。」
姫「もう賽は投げられてしまったのだから。」
~客室
姫「おはよう!」
勢いよく扉を開くとテーブルの脇にメイドと一人の青年が立っていた。
どうやら着替えを手伝っていたようだ。
メイドたちは一礼するとそそくさと部屋を出て行ってしまった。
姫「いい朝ね。伝説の魔王と謁見できるなんて感動的だわ!」
芝居がかった口調で近づく姫。
魔王「魔王? 俺が? いやそうだ、俺は・・・」
姫「?」
魔王「なぜ?」
姫「なにが? なぜ目覚めたのかって?」
魔王「そうだ。 俺は封印されたはずだ。」
姫「それはね。 これから私と一緒に世界を壊して欲しいの。」
魔王「くだらない。」
姫「は?」
魔王「くだらないと言った。 そんな理由で俺を目覚めさせたとは・・・」
姫「あら? あなたにとってもメリットのある話だと思ったのに。」
魔王「どうしてそう思うんだ?」
姫「だってそうでしょ? あなたを封じた者たちに復讐するチャンスを得たんだから。」
魔王「俺は自らの意思で封じられたんだ。」
姫「は?」
魔王「何も知らないのか?」
姫「ちょっと待ってあなたはお父様に負けたから封印されたんじゃ・・・」
魔王「お父様? そういえばお前はいったい誰なんだ。」
姫「ああ。 申し遅れました、わたくしは王の娘、姫です。」
恭しく貴族に対するような挨拶をする姫。
魔王「あ、ああ。 こちらこそ。あ~、ま、魔王です。よろしくお願いします。」
姫「で、このたび魔王様にお目覚めいただいたのは・・・」
魔王「ストップ!」
姫「?」
魔王「や、なんか硬いよ!話し方。 うん。最初の時みたいなカンジでいいから。」
姫「あら? 殿方は女にくだけた口調で話されるのはお嫌いではなくて?」
魔王「い、いや。その。」
姫「それとも魔王様はそのように話されるのを好まれるのかしら?」
魔王「いや、なんだか急に目の前の人物が別人みたいにしゃべりだしたから・・・」
姫「ふふふ。じゃあ意地悪はこれくらいにして本題に戻りましょうか。」
魔王「あ、ああ。 と、ところで・・・」グー
姫「あら? お食事はまだだったのね。ごめんなさい。」
魔王「い、いや。こちらこそ。」
姫「すぐに用意させますわ。」
侍女「どうぞ。」
魔王「ありがとうございます。 これは・・・?」
侍女「ウサギのポシェ、煮込み料理です。」
姫「ウサギは苦手でしたか?」
魔王「いえ、大好きです。いただきます。」
姫「お味の方は、いかがですか?」
魔王「あ、はい。とてもおいしいです。」
姫「ふふ。」
魔王「? なにか?」
姫「いえ。 魔王様は想像していたよりもかわいらしい方なのだなと。」
魔王「・・・」
姫「あら? 気を悪くされたのならごめんなさい。」
魔王「い、いえ。ただ・・・」
姫「ただ?」
魔王「姫君の真意を測りかねるなと思いまして。」
姫「真意?」
魔王「そうです。」
魔王「先ほど姫は私に世界を破壊する手伝いをしろとおっしゃいました。」
姫「ええ。」
魔王「私を目覚めさせなくとも姫にお仕えする者たちがいましょうしょう。」
魔王「それに第一に理由がわかりません。」
姫「退屈なのです。それではいけませんか?」
魔王「納得いきません。それに私にとって復讐の機会とは?」
姫「それは・・・。」
魔王「・・・王にお会いして話を聞きたい。」
姫「王はこの城にはおりません。」
魔王「! なんと!?」
姫「この城にはわたくしと侍女、それとメイドたちだけです。」
魔王「では王はどちらに?」
姫「・・・」
魔王「答えられないのですか?」
姫「明日。」
魔王「明日?」
姫「明日、街の方へ出かけます。」
魔王「それがいったい何の・・・」
姫「直接お会いになって確かめればよろしいかと。」
姫「失礼します。」
魔王「・・・」
侍女「申し訳ありません。」
魔王「いえ。傷つけてしまったようだ。」
侍女「姫はまだ心が幼いのです。どうかご容赦ください。」
魔王「・・・」
侍女「魔王様。」
魔王「はい。」
侍女「どうか姫様の力になってください。」
魔王「・・・すみません。事情もまだはっきりせぬうちはまだ。」
侍女「そうですよね。いきなり目覚めさせられて世界を滅ぼせなど。」
魔王「はい・・・。私は王との盟約により眠りにつきました。」
魔王「ですが今回その約束が破られた。」
魔王「今の世界にいったい何が起きているのですか?」
侍女「・・・」
侍女「それは明日、魔王様の目で直接お確かめになってください。」
魔王「・・・わかりました。」
侍女「なにかお飲物をお持ちしましょうか?」
魔王「いえ、結構です。それより・・・」
侍女「なんでしょうか?」
魔王「私が眠りについてから後の書物、歴史書を見たいのですが。」
侍女「かしこまりました。」
魔王「それから城の中を散策してもよろしいか?」
侍女「はい。ただ城の外に出ることはかないません。」
魔王「中庭も?」
侍女「はい。この城に男はいないことになっていますので・・・」
魔王「見られるとまずいと。」
侍女「はい。」
魔王「ふう。謎が多いな。」
侍女「申し訳ありません。」
魔王「他にルールがまだあるのかな?」
侍女「ルールというものではないのですが・・・」
魔王「? 何か?」
侍女「この城には男がおりません。」
魔王「それは先ほど聞きました。」
侍女「ですのでその・・・」
魔王「メイドたちに手を出すなと?」
侍女「その、申し訳・・」
魔王「いや、かまわない。そういう風に考えるのも当然だ。」
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