輝子「ﾌﾋﾋ……」

輝子「シイタケ……いるかい？」

乃々「え、その……遠慮します……」

輝子「そ、そうか……」

輝子「ﾌﾋﾋ……ﾋﾋｬ……」

乃々「（まず輝子さんですが……）」

乃々「（臭いです、腐葉土のような臭いがします）」

乃々「（最近はそんなにしなくなったのですが、初めてあった時はひどかったです）」

乃々「（それに、瞳孔が開いて、なんだか焦点が合ってなさそうに見えます……）」

乃々「（まるでクスリでもやってるかのように視線がグルグルしていて……）」

乃々「（怖くて目を合わせられません……）」

美玲「……」ﾑｼｬﾑｼｬ

乃々「……何食べてるんですか……」

美玲「ん？ ……ごくん、えっとなー」

美玲「さっきそこにいたねず……」

美玲「あっ、いや、そのな、小腹が空いてさ！ ははっ！」

乃々「（……輝子さんから貰ったキノコですよね、そうですよね）」

乃々「（この美玲さんですが……）」

乃々「（臭いです、野生動物のような臭いがします）」

乃々「（最近はそうでもないんですが、初めてあった時はヤバかったです）」

乃々「（それに、初対面の時の私に対する第一声が……）」

美玲『うまそう』

乃々「（あれ以来、彼女の目が私を狙っているように見えて……）」

乃々「（怖くて目を合わせられません……）」

乃々「（でもまあ、そんな二人ですが）」

乃々「（それなりに仲はいいです……まあ、同じユニットですし）」

美玲「あのさー、お昼どうする？」

美玲「ウチは肉食べたい」

輝子「ﾌﾋ……美玲はいつも、肉だな……」

美玲「そういう輝子だってキノコって言うんだろー？」

輝子「ま、まあな……」

輝子「乃々は？」

乃々「えっと……軽めのもので……」

美玲「手羽先じゃないの？」

乃々「な、なんで手羽先なんですか……」

輝子「そういえば……もうすぐプロデューサーが、事務所に戻るらしい……」

美玲「そっか、じゃあプロデューサーに奢ってもらおう！」

乃々「い、いいんでしょうか……」

美玲「そうなると、プロデューサーが帰ってくるまで暇だなー」

輝子「それじゃあ、テ、テレビでも……見てよう」ﾋﾟｯ

K島『それでは次のニュースです』

K島『○○プロダクション所属アイドルのA子氏がアイドル活動を休止するということが事務所から発表されました』

K島『A子氏は一ヶ月程前から急病で入院しており……』

美玲「あー、見たことあるような」

乃々「収録で一緒に仕事したことがありましたけど……」

美玲「あれ、そうだっけ」

美玲「にしても急病ってなんだろ」

輝子「ﾌﾋﾋ……」

輝子「スエヒロタケの胞子を使ったから、な……」

輝子「肺炎が治らなければ、アイドル活動は厳しい、ハズ……」

美玲「ん？ 何か知ってんの？」

輝子「イヤ……何でもない」

K島『復帰の見通しはついていないとのことです』

乃々「……」

乃々「（一ヶ月前……そういえば……）」

乃々「（収録後にA子さんとばったり会って）」

乃々「（性格が悪くて、彼女のせいでアイドル止めたって人も多いと聞いていましたが……）」

乃々「（案の定、私も色々と絡まれて）」

乃々「（そこに輝子さんが通りがかったんですけど……）」

乃々「（その時突然A子さんが咳をしだして）」

乃々「（A子さん、逃げるように立ち去ったんでしたっけ）」

乃々「……」

乃々「（あの人が入院したのって、あのすぐ後だったような……）」

乃々「……」

乃々「（輝子さん、何かしたんでしょうか……）」

輝子「……ﾋﾋｯﾋﾋﾋ……」

乃々「（……何かしたんでしょうね……）」

K島『次のニュースです』

K島『ギタリストのB男氏が引退を表明しました』

K島『理由は右手の怪我ということであり……』

輝子「あー……この前一緒にロケしたな……」

輝子「確か……その人が怪我をしたとかで、さ、撮影中止になったんだよね……」

輝子「あの時の、怪我かな……」

美玲「そうなんじゃない？」

美玲「指を2本噛み千切ったし」

輝子「ん……？」

美玲「あーいや、何でもない」

K島『なお、野良犬らしき動物を目撃したという証言が多数あり、近辺の調査を……』

乃々「……」

乃々「（あの時のロケって確か……）」

乃々「（休憩中にB男さんに茂みの中に連れられて……）」

乃々「（女を漁ってるとか、そういう噂は聞いてましたけど……）」

乃々「（まさかとは思いましたが、私も強引に迫られて）」

乃々「（その時茂みから突然野良犬みたいな動物が出てきて）」

乃々「（B男さん、手を噛まれたんでしたっけ）」

乃々「（そんなこともあって、ロケの撮影は中止になったんですけど……）」

乃々「……」

美玲「……ハラ減った～……」

乃々「（美玲さん、あの時何か食べてましたけど……）」

乃々「（何食べてたんでしょうか……）」

輝子「……ま、マッシュルームは、いかが……？」ﾎﾟｺｯ

美玲「いや、いらない」

輝子「そ、そう……」

美玲「……あ」

美玲「なんか鼻が……」

美玲「へくちッ！」ﾋﾟｮｺｯ

乃々「！？」

美玲「ｽﾞｽﾞｯ あーー……」ｽｯ

輝子「ﾌﾋ……かわいい、くしゃみだな……」

美玲「か、からかうなよなッ！」

美玲「ていうか輝子といるとなんか鼻がムズムズするんだよッ！」

輝子「そ、そう言われても……うーん」

輝子「胞子の制御は、難しい、しな……」

美玲「乃々は何ともないのか？」

乃々「……えっ、あ、はい、別に何も……」

美玲「そっかー、ウチだけか……」

乃々「……」

乃々「（今、美玲さんに耳と尻尾が生えたような……）」

乃々「（……き、気のせいですね、目の錯覚ですよね）」

美玲「なんだか、目も痒くなってきた……」

乃々「……」

乃々「（そういえば、彼女眼帯してますけど）」

乃々「（なんで眼帯着けてるのかこの前聞いたんでしたっけ）」

乃々「（確か……）」

美玲『あーこれ？』

美玲『ナワバリ争い……いや違う』

美玲『昔の傷跡が残っちゃっててさ』

乃々「……」

乃々「（ナワバリ争いって、何の話なんでしょうか……）」

輝子「ｴﾉｷｰ……」ﾎﾟｺｯ

美玲「あー……肉食べたい」

乃々「……」

乃々「（付き合いは長いはずなんですが……）」

乃々「（いまだに分からないことだらけですね……この二人）」

ｶﾞﾁｬ

モバP「戻ったぞー」

輝子「お、おかえり……」

美玲「待ったぞー、お昼行こーよ！」

モバP「お？ 俺に奢ってもらうつもりだな？ あくどい奴らめー」

モバP「何食べたいんだ？」

美玲「肉！」

輝子「キノコ……」

乃々「……か、軽いもので」

モバP「よし、ファミレスだな」

輝子「い、いつも、ファミレスだな……」

モバP「だってお前ら食べたいものがバラバラじゃん！」

乃々「……」

乃々「（一番の謎は、プロデューサーさんですね……）」

乃々「（この二人をスカウトしたのはプロデューサーさんらしいですし、それに……）」

モバP「あー、そういや昨日遅くまで仕事してたから眠いな……」

輝子「そ、そうなのか……」

モバP「目の下にクマ出来てないかな、俺」

美玲「まず顔が無いじゃん」

モバP「そういやそうだったな、はっはっは」

乃々「（なんなんでしょう……あのPヘッド）」

次の日


乃々「おはようございまーす……」ｶﾞﾁｬ

乃々「それじゃあ、今日はもう帰りま」

狼「……」

乃々「……」

乃々「い、犬？」

狼「！……っ！？」ﾋﾞｸｯ

狼「……」

乃々「誰かの飼い犬でしょうか……」

乃々「なんか、すごく睨まれてるんですけど……」

乃々「帰りたくなるんですけど……」

狼「……」ﾋｮｺ

狼「……、……」

乃々「あ……向こうへ行っちゃった……」

乃々「……ほ、放っておいていいのでしょうか……」

乃々「……」

乃々「な、なんとかするべきですよね……」

乃々「それじゃあ……机の下に避難を」ｺﾞｿｯ

キノコ「」ﾃﾞﾝｯ

乃々「っ！？」

乃々「つ、机の下を丸々占領する巨大なキノコ……！？」

乃々「な、なんで机の下にこんなキノコが……」

キノコ「」

乃々「……し、輝子さんが持ち込んだ物なんでしょうか……」

乃々「こんな大きいの、どこからどうやって……」

美玲「お、おーっす」ｶﾞﾁｬ

乃々「あ、美玲さん、いたんですね……」

美玲「お、おお」

乃々「さっき、大きな犬がいたんですけど……」

美玲「そういや、廊下です、すれ違ったなー」

美玲「だ、誰かの飼い犬かな？ はは、ははは……」

乃々「……尻尾」

美玲「っ！？」ﾊﾞｯ

乃々「触ったら、もふもふしてたんでしょうかね……」

美玲「えっ？ あ、そ、そうかもなー……」

乃々「……」

美玲「……」

乃々「ところで……」

乃々「この大きなキノコなんですけど……」

キノコ「」

美玲「ああっ！？」

乃々「え？」

美玲「い、いや……」

美玲「そ、そうだ、プロデューサー、プロデューサーが呼んでたぞッ！」

乃々「え、そうなんですか」

美玲「だ、だから行こう早く」

乃々「でも輝子さんが……」

美玲「す、すぐ来ると思うから！ な！」

乃々「は、はあ……」

モバP「スカイダイビングの仕事が来ててな？」

乃々「むぅーりぃー……」

美玲「流石にそれは……」

モバP「そりゃそうだわな、やっぱ幸子かみくにやらせるか」

モバP「ところで輝子は？」

美玲「も、もうすぐ来ると思う、ぞ？」

モバP「そう？ まあいいか、用があるのは乃々だけだし」

乃々「私だけ……ですか？」

モバP「おう、他の事務所と合同の仕事なんだけどな」

モバP「心霊スポットツアーというのが」

乃々「帰ります……」

モバP「冗談、冗談だってば」

モバP「で、本題に入るけどな……」

乃々「メルヘンアニマル……」

美玲「いいなあ、出れるの乃々だけかあ」

乃々「リス、リスですか……」

美玲「いいんじゃない？」

美玲「うまそうだし」

乃々「え？」

美玲「あ、いや……」

輝子「……」

乃々「あれ……輝子さん、来てたんですね……」

輝子「お、おう、今、さっき、な……」

乃々「……さっき大きなキノコがあったんですが……」

輝子「っ！ あ、あー、あれな……」

輝子「……に、ニオウシメジって、言ってな……」

輝子「お、大きいので、い、1メートル、超えるんだ……」

乃々「へえ……」

輝子「……」

乃々「そんなキノコがあるんですね……」

輝子「……」ﾎｯ

乃々「……さっきまで机の下にあったと思うんですけど」

輝子「っ！？」

乃々「いつの間にか無くなってますが……」

乃々「どこかに置いたんですか？」

輝子「え、えっとだな……」

輝子「……」

輝子「た、食べられた」

乃々「えっ」

美玲「えっ」

乃々「た、食べられたんですか……？」

輝子「あ……ああ」

美玲「……」

乃々「……だ、誰に？」

輝子「……プ、プロデュ」

美玲「～～！」×

輝子「……え、えっと」

輝子「……ち、ちひろ、さん……」

乃々「えっ」

輝子「……」

乃々「ち、ちひろさんが、食べたんですか……？」

輝子「お、おう……」

乃々「……あの大っきいの、全部食べたんですか……」

輝子「そ、そうなんだ……」

乃々「……は、早食いなんですね……」

輝子「う、うん、わ、私も、驚いた……」

乃々「……」

輝子「……」

乃々「（ちひろさんにも、謎があったんですね……）」

輝子「な、なんとか、誤魔化せた、な……」ﾋｿﾋｿ

美玲「いやいや、誤魔化せてないかもしれないぞコレ……」ﾋｿﾋｿ

モバP「よーっす」

乃々「あ、プロデューサーさん……」

モバP「みんな揃ってるな」

モバP「今日はテレビの収録だな、じゃあ行くぞー」

モバP「あ、輝子」

輝子「ん？」

モバP「仕事終わりでいいから、顔を出せってちひろさんが」

輝子「」



おしまい