男「鬱だ死のう」 幽霊「おいやめろ」 (169)

男「え?」

幽霊「やめろ。死ぬな」

男「あ、あなた誰ですか」

幽霊「霊だ」

男「霊て…」

幽霊「お前今自殺しようとしてたろ」

男「…」

幽霊「最近霊界に幽霊が増えすぎて問題なんだよ。迷惑なの。だから死ぬな」

幽霊「死んだら許さんぞ」

男「急にそんなこと言われても…」

幽霊「ちょっと鬱だからってホイホイ死なれても困るんだよ」

幽霊「最近の人間はすぐ自殺するから嫌だわ」

幽霊「こっちの身にもなれや」

男「すいません…」

男「っていうか、霊界とかあるんですか」

幽霊「おう」

幽霊「ついでに言うと、俺は霊界の日本国、幽口過密問題対策委員会の者だ」

男「幽口過密…?」

幽霊「死人が多すぎて困ってるんだよ。もううじゃうじゃいすぎて過密状態。お前は死んでも死なさんからな」

男「そんな…。辛いから、もう消えてしまいたいのに」

幽霊「そんな無責任なやつがあるか!!!」

男「す、すいません」

幽霊「まあ俺も自殺したクチだけどな」

男「おい」

幽霊「自殺者多すぎてさ、霊界の日本は世界からバッシング受けてるよ」

幽霊「事故や事件ならまだしも自分から命を絶つなんて、この幽口爆発の最中に何を考えてるだアホなのかってな」

男「はぁ、そうなんですか」

幽霊「お前、なんで死のうとした?生きるのが辛い理由は?」

男「…言いたくないです」

幽霊「はよ言え。呪うぞ」

男「…」

男「就職活動に失敗して…家族に会わせる顔が…大学もなんだか人間関係が辛くて…」

幽霊「うっざ。お前もう死ねよ」

男「わかりました」

幽霊「あー!!いやいやいや!!死ぬなバカ!!」

男「…」

幽霊「お前なぁ、そんか理由で死んだらあの世で袋叩き間違いねぇよ。地獄でも居場所がないだろうさ」

幽霊「そもそも地獄なんてねぇけどな」

男「…そうですか」

男「……」

男「とにかくもう何もかも、自分のすべてが嫌なんです。この世に存在していたくない」

幽霊「だからってこっち来られてもな」

男「すいません。でも、僕は死ぬことに決めてますから」

幽霊「…」

男「…」

幽霊「…はぁ。どーでもいい理由で死ぬ割りには、決意が固いようだな」

男「……」

幽霊「死ぬなら…そうだな」

幽霊「一人でいい。せめて誰か一人の命を助けろ。お前が死んでもプラマイゼロになるようにな」

幽霊「それなら、ギリで自殺見逃してやってもいいぞ」

男「…そうですか」

幽霊「まあそれでも自殺なんて褒められたもんじゃねーけどな」

男「…」

幽霊「…しかし、お前も俺みたいな親切な霊に見つかってよかったな」

男「?」

幽霊「委員会の他の連中じゃあこうはいかない」

男「…と、いうと?」

幽霊「取り憑かれたり呪われたりして、無理矢理生かされる」

男「…………………………」

幽霊「冗談だ」

男「でも、助けるってどうすれば?」

幽霊「お前みたいな自殺志願者を引き留めたり、事故で死にそうになってるヤツをどうにか救ったり、まあそんな感じだ」

幽霊「病気とか老衰とかはもうしゃーないからな。基本ノータッチだ」

男「へぇ」

幽霊「優先順位としては……一番問題なのが自殺者だからな。そこが一番だ」

男「でも、自分から死のうとしてる人より、不運で死んでしまう人を助けたほうがいいんじゃ…」

幽霊「うるせーな。国際的な方針なんだから仕方ねーだろ。俺が知るかよ」

男「…」

幽霊「じゃ、さっそく行くか。時間がもったいないからな……まあ俺寿命なんてねーけど」

男「行くったって…でもそんな現場なかなか遭遇しませんよ」

男「どうやって見つけるんですか?」

幽霊「なんでもかんでもすぐ聞くやつだなーお前は。あれか、ゆとり世代ってやつか」

男「……」

幽霊「探すのはこれだ。これがあれば近場の死にかけ現場まで速攻で行ける」スチャッ

男「…なんですか、それ?」

幽霊「死にそうなやつレーダー!!」

男「そのまんまですね」

幽霊「うるせぇな」

幽霊「とにかく、次に死にそうなやつの反応がわかるシロモノなんだよ」

男「へぇ」

幽霊「ん~と………お、丁度ここから近いところで一人逝きそうだな」ピコーンピコーン

幽霊「この反応は……自殺か」

男「………」

幽霊「おし、行くか」

男「はぁ」

幽霊「よし、このアパートだな」

男「…ハァ…ハァ…」

男「も…もうちょっとゆっくり歩いてもらえませんか……」

幽霊「歩いてねーよ。浮いてるもん」

男「それは…そうですけど」

幽霊「体力ねーなぁお前」

男「…………」

幽霊「で…と。反応はこの部屋だな?入るぞ」

男「え、鍵は?」

幽霊「鍵?……あ、そうか。お前、すり抜けもできないんだよなぁ」

男「……………」

幽霊「しゃーねーな。念力だ」

男「ねんりき?」

幽霊「ハァッ!!!」

カチャッ

男「あ、空いた…」

幽霊「まあこんなもんよ。疲れるからできるだけやりたくねーけどな」

幽霊「さてさて…」スィ~

男「…(これ不法侵入だよな)」

幽霊「ん、対象は風呂場にいるみたいだな」

男「風呂場?これから死ぬ人が?」

幽霊「手首カットっぽいな」

男「ああ、そんな死に方もあるのか」

幽霊「致死率低いけどな」

男「そうなんだ」

幽霊「お前なー、よし自殺しようってやつがそんなことも知らんのか」

幽霊「そういう大事なことは事前にちゃんと調べろよな…ったく」

男「…」

幽霊「…ってそんなことは関係なくてだな」

幽霊「おい、こんな話してる場合か。早く助けるぞ」

男「…はい」

女「………」ボー



幽霊「この扉の先…まだ手首ちょんぱはしてねーみたいだな。湯船でぼーっとしてる」

男「…」ゴクリ

幽霊「あと、こいつ女だわ」

男「…え、じゃあ裸なんじゃ?どうするんですか」

幽霊「はぁ?こんな時にそんなシャイなこと言ってる場合か。乗り込んで自殺を止めるんだよ」

男「ほぇえ…」

幽霊「ちなみにお前以外には俺見えないからな。声も聞こえねーし」

男「……えええ!?」

男「じ、じゃあ僕だけでどうにかするんですか!」

幽霊「あたりめーだろ。お前のために与えたチャンスなんだから。自分でやれよ馬鹿か」

男「…でもここで僕が一人で乗り込んでも、ただの泥棒か変態にしか見えないんじゃ」

幽霊「細かいことは気にするな。勢いで乗り切れ」

男「そんな無茶苦茶な」

幽霊「あのなー、お前はもう死ぬこと決めてるんだろうが!じゃあ怖いものなんてなんもねーだろ!!」

男「……」

幽霊「な?」

男「わ、わかりました…」

震災で増えすぎた人類を~綺麗さっぱり洗い流して~……不謹慎だわ。

女「ち、ちがうの…これは猫!」
男「え」

男「…」

コンコンッ

男「あのー」

女「……」

幽霊「ノックて、そんなこといらんからはよ行け」

男「…」

コンコンッ

男「もしもし、すみません」

女「……」

男「…返事がないな」

幽霊「あいつボーっとしてて聞こえてねーよ。いいからさっさと乗り込め」

男「いや、しかし…やっぱりお風呂だし…」

幽霊「結構美人みたいだぞ」

男「それは関係ない」

幽霊「あーもう面倒だな…。ハァッ!!」

ガラッ

男「あっ」

女「ん?」

幽霊「念力でドア開けてやったぞ感謝しろ」フゥ

女「…」

男「ええと…」

女「…」

男「…」

女「… 」

男「ど、どうも」

女「どうも」

男「…」

男「お、男と言います」

女「はぁ…私は女です」

男「…」

女「…」

男「(ど、どうすれば…)」

女「…あの」

女「泥棒か何かなんですか」

男「あっ…違います」

女「ああ、じゃあ強姦魔とか」

女「もしくはなんらかの変態な方ですか」

男「いや…そういうのではないんです…」

女「じゃあなんですか」

女「ドアに鍵かけてたと思うんですけど。不法侵入ですよね」

男「あー…えーっと…」

男「なんて説明したらいいのか…」

幽霊「上手く生きたいと思う様、誘導しろよ」

幽霊「死ぬフリとかじゃなく、本気で死のうとし てるやつだからな」

幽霊「ストレートに言っても効果は薄い」

幽霊「わかったか?」

男「…」

男「し、死ぬのはよくないですよ」

女「え?」

幽霊「おい」

男「死ぬつもり…だったんですよね?このお風呂で手首を切って」

女「…」

男「そういうのよくないですよ」

女「はぁ。そうですか」

男「そうですか…って」

女「何だか知らないけど、私死ぬつもりなんかありませんよ」

男「え?」

女「ただお風呂に入ってたら、あなたがいきなり入ってきた。それだけです」

男「そ、そうなんですか」

女「そうです」

幽霊「嘘だぞこれ。騙されんな」

男「…」

幽霊「矛盾を見つけ、嘘だという事を暴いて自殺願望を認めさせろ」

幽霊「そこから生きる意欲を引き出す」

幽霊「死のうとしている理由を聞き出し、そこを分析して論破するんだ。ただ、逆上はさせないようにな」

男「…」

男「嘘は、よくないですよ」

女「はぁ?」

幽霊「おい」

男「本当は死ぬつもりなんですよね」

男「やめましょう、そういうの」

女「…さっきから何を言ってるのかさっぱりです」

女「だいたいあなた何なんですか」

女「泥棒でもレイプ魔でも変態さんでもないなら、なんですか?」

女「いきなりお風呂に入ってきて、自殺するなだのなんだの」

男「いや…ですから…ええと」

女「出て行ってくれませんか」

男「そういうわけには…」

幽霊「お前下手すぎるぞ」

男「そんなこと言ったって…」

男「…」

男「………」

男「やっぱり僕はダメだもう死にたい」

女「は?」

幽霊「おい」

女「人に死ぬな死ぬなって言っておきながら、自分がそんな軽く、いきなり死にたいなんて言うの?」

男「…」

女「…最初に思ったんだけど、なんだかあなたから生気が感じられない」

女「一瞬、幽霊かなにかかと思ったもの」

男「…」

女「あなたこそ、自殺でも考えてるの?」

男「…」

女「悩みがあるなら、聞くくらいならしてあげられるよ」

男「…」

女「ね?」

男「………」

男「実は…そうなんです」


幽霊「なんだこの展開」

女「話してみてよ」

男「…」

男「就職活動に失敗して…人間関係も、ひたすら苦痛なんです。自分には、この人生が難しすぎる」

男「僕には周りの人みんなが、僕と同じ苦痛を乗り越えて日々を過ごしているようには見えないんです」

男「…それは、僕が弱いってことなんだと思いますけどね。だから消えてしまいたい」

女「うーん、そっか。まあ生きてれば良いことばかりじゃないよねぇ。むしろ嫌なことのほうが多いかも」

男「辛いです…」

女「うんうん、わかるよ」


幽霊「どうしてこうなった…」

男「生きていたって何も楽しいことがないんです」

女「今日から楽しいかもしれないよ?」

男「そんなことは…」

女「死ぬなんていつでもできるよね?本当にその気さえあればさ」

女「とりあえず、今日は生きてみようよ。今日だけ、しっかり生きてみようよ」

男「うーん…」

女「だめかな?」

男「家族からは重圧があるし、友達もいなくて…」

男「心がいつも焦燥感に駆られているんです。自分の人生から逃げ出したい」

女「じゃあ私と友達になろうよ」

男「へっ?」

女「どう?」

男「え、えっと…」

女「ん?」

男「…ありがとうございます」

女「ふふっ」

女「友だちなんだから、敬語はなしだよ。歳も同じようなものでしょ?」

男「あ、はい…」

女「じゃあ今日は友だちになった記念日だからね。死んじゃ、嫌だよ」

男「………」

男「わ、わかりました。……頑張ってみます」

女「よかった!」

幽霊「逆にお前が説得されてどうすんだよ」

女「じゃ、一旦外に出てくれる?私裸だから恥ずかしいよ」

男「あ、はい…じゃない。わ、わかったよ」

女「奥のリビングででも待っててくれたらいいから」

男「う、うん」スタスタ

幽霊「うーむ…」


リビング

男「なんか変なことになっちゃった…」

男「でも、友だちができた」

男「………」ホクホク

幽霊「うれしそうな顔しやがって…」

幽霊「お前なぁ、お前があの女を助けないといけないのに、逆になってるじゃねえか」

男「そ、それは…」

幽霊「どうすんだよ、あいつから目を離しちまって。今頃手首ザックリいってるかもよ?」

男「…でも、正直言ってあの女の人、死にそうには見えないですよ」

幽霊「そんなことはねぇよ。レーダーは正確なんだ」

男「…」

幽霊「…」

幽霊「(…ぶっちゃけると、俺も実は違和感があった)」

幽霊「(あの女、自殺者特有の『もう全てがどうでもいいと思っている目』じゃなかった)」

幽霊「(なにかあるのかね)」

幽霊「(…)」

幽霊「(ちょっと風呂場のぞいてこよ)」スィー

男「あ、ちょっと…どこ行くんですか」

再び風呂場

女「………」

女「…ふぅ」

女「疲れた…」

幽霊「(……)」

幽霊「(なんかさっきより随分、やつれてないか…こいつ)」

幽霊「(こう見たらやっぱり、まともな人間にも見えんなぁ)」

幽霊「(なんだ、こいつ…?)」


女「………」


女「これでいいの?」

幽霊「?」

幽霊「独り言か?」

女「もう、死んでもいいのかしら。聞いてる?」

幽霊「!?」

幽霊「………」

女「聞いてるの?」

女「え?なによそれ…どういうこと?」

幽霊「………」

幽霊「そういうことか…」

幽霊「はぁ…だっる…」

幽霊「おーい、男、ちょっと来いよ」

男「な、なんですか?」スタスタ

幽霊「いやぁ、可哀そうにな…お前」

男「??」

幽霊「…ややこしいから俺も姿出すか」フワッ

女「!?」

女「な、なにあなた!」

幽霊「霊だ」

女「れ、霊て…どういう…」

男「ちょ、出ちゃっていいんですか?」

幽霊「あー、もう事情が変わったんだ」

男「??」

幽霊「………」

幽霊「おい、いるんだろ?誰だか知らんが、お前もはよ出てこい」

女「ちょっ…」


・・・・・・


女幽霊「……」フワッ

幽霊「…」

幽霊「なんだ、お前かよ…」

女幽霊「それはこっちのセリフよ!」

女「???」

幽霊「なんか変だと思ったんだ」

女幽霊「だからそれはこっちのセリフ!!」

女幽霊「ちょうど目標から近寄ってきてると思って見てたら…いきなり部屋まで入ってくるんだもん」

女幽霊「仕方ないからそのまま進めたけど…」

女幽霊「あんたが憑いてるなんて、もう…面倒なことしてくれるわね」

幽霊「それこそこっちのセリフだバーカ」

女幽霊「なんですって!勝手に来たのあんたでしょ!」

幽霊「うるせーな」

男「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ。一体どういうことなんですか?訳が分かりませんよ!」

女「そうよ。説明して!」

幽霊「…」

幽霊「つまりだな、お前ら二人は同じ立場、同じ目的で行動してたってことだ」

男「…え?」

女「うわぁ…」

男「そ…んな…」

男「だ、だって…さっき友だちになってくれるって…」

女「…」

男「それじゃあ、あれは僕をとりあえず生かすための方便だったってことですか…」

男「自分が死ぬ権利を得るために…そういうことなんですか?」

女「…」

女「…ごめん」

男「…」

女「…」

男「………」

女「………」


男&女「もう死にたい」

幽霊&女幽霊「おいやめろ」

男「もう嫌だ」
女「死にたい」

幽霊「あーもううるせぇな!!」

女幽霊「…」

女幽霊「もう、このまま死なせてあげる?」

幽霊「いや…無条件で二人も自殺者見送るわけには、なぁ」

女幽霊「はぁ…」

幽霊「うーん…」


男「はぁ…

男「死にたい」

女「…」

女「…ごめんね」

男「え?」

女「傷つけるつもりはなかったの。ただ、私も死にたい一心で…」

女「ごめんなさい」

男「…」

男「いや、僕も」

男「僕のほうこそ、君と同じ目的で…むしろ先にここに乗り込んできたわけだし」

男「君を責めることなんかできないよ」

女「…そう」

女「そう言ってもらえると、ちょっと気が楽になった。…でもごめんね」

男「…」

男「こんなはずじゃなかったのにな、僕の人生」


男「小さいころに思い描いていた『普通の人生』…それがこんなにも難しいなんて」

男「…はぁ」

女「わかるよ」

男「…そうかな?」

女「君の気持ちがわかるってのは、嘘じゃないんだよ?私も君と同じ自殺志願者だもの」

女「それもあの世から幽霊が引き留めに来るくらい本気の」

男「はは、それは確かにそうかも」

女「…」

男「…」

男「こんな形で会いたくなかったな」

男「本当に気が合った、友だちになれたかもしれない」

女「…うん。そうだね」

女「じゃあさ、今からほんとに友だちにならない?」

男「え?」

女「今度こそ、ほんとにほんとの友だち」

女「そうね…お互いそのうち自殺するだろうから、それまでの短い間の付き合いだけど」

女「どう…?」

男「…」

男「悪くないね」


幽霊「むっ」ピコーン

女幽霊「レーダーが…」ピコーン

女幽霊「最悪じゃない、これ」

男「どうかしたんですか?」

幽霊「いや、ちょっとレーダーに反応があったんだが…ん?」

幽霊「なんかお前…顔つきが…」

男「?」

女幽霊「ちょっと!!こいつもう移動始めてるわよ!!」

幽霊「マジか」

女「一体なんなの?」

女幽霊「また自殺志願者の反応がレーダーに出たんだけどね…こいつが…ちょっと」

幽霊「この反応は『死ぬ前にできるだけ多くの他人を殺しまくってやろう。道連れ作ろう』系だな」

男「そ、そんなのもいるのか…」

女「自殺者の風上にも置けない野郎ね」

幽霊「このタイプが厄介なのは、このカス野郎に殺された人間が悪霊化しやすいことにある」

幽霊「さらに、被害者の遺族の精神も、死後に悪霊化しやすい性質へと変化するんだ」

女幽霊「強い恨みを抱きつつ死んだ者は悪霊になるの。悪霊は霊界でもかなり難しい立場に居てね…言わば腫れ物扱いなのよ」

幽霊「こいつをこのまま放っておくと…そのうち大量の悪霊が霊界になだれ込むことになるな」

女幽霊「どうするの?私たちの説得が通じるような相手じゃないわよ」

女「警察に通報しましょうか?」

幽霊「もうそんな時間の余裕はない」

女「じゃあ…」

男「あの」

幽霊「あん?」

男「考えがあります」

某所

基地外「くそくそくそ…くそくそくそくそそそそそそそそそそ」

基地外「もう俺の人生終わってんだ…死ぬしかない」

基地外「どうせ死ぬならできるだけ多く、道連れにしてやる」

基地外「ひっひひひひ」

基地外「俺だけがこんな不幸だなんて、間違ってんだ。そうだ」

基地外「世の中がクソだわ」

基地外「なるべく、幸せそうなやつをたくさん殺してやるぜ、へへ」

基地外「へへっへへへへへへ」ハァハァ



幽霊「…。あれだな」

女幽霊「気持ち悪ぅ…やっぱ生きてる人間は怖いわねぇ」

女「同じ自殺願望でも、えらく違いがあるものなのね」

幽霊「…」

幽霊「本当に、いいんだな?」

男「僕の方は全く問題ありません」

女「あ、私もオーケー」

幽霊「…。そうか」

男「そちら側に問題はないんですよね?」

幽霊「…都合はいいけどな」

男「じゃあ大丈夫です」

女幽霊「でも、すごい思い付きねぇ」

男「そんなこともないですけど…」

女「わりと自然な発想かもしれないよね。私たちには」

男「これで全部丸く収まるはずです」

女「だねぇ」

幽霊「…」

幽霊「じゃ、行くか」

基地外「さて、どいつから…」チラッ

リア充♂「カラオケ行くべ」

リア充♀「おっけ~」

リア充♂「あ、それよりホテル行く?w」

リア充♀「もぉ~///エッチ!///」

リア充♂「わははは」

基地外「…」

基地外「………」スタスタスタスタ


基地外「お前らコロス」

リア充♂「ん?」

リア充♀「へっ?」

基地外「コロスコロスコロスコロスコロス」

グサッ!!

リア充♂「うがっ…!?」バタッ

リア充♀「え、え、なに…なんなの?」

基地外「お前も死ね」

ザクッ!!

リア充♀「い、いや…あ…」バタッ

基地外「へへ…へへへへ」

基地外「やった…やってやったぜ…へへへ」

基地外「人生満喫してるやつを殺してやったぁ!!」

基地外「ひゃはははははは!!!!!!!」

リア充♂「そんなでもないけどね…」

基地外「おま、まだ生きてたか」

リア充♀「そうそう…私たち…人生充実してないし…」

基地外「…??」

男「むしろ…ありがとね…」

女「ほんとほんと…」

基地外「ハア!?」

警官「おいそこ!!お前なにしてるんだ!!」

基地外「あっ…」

警官「この人殺しが!!」

基地外「く、くそぉ!!俺に近寄るな!まだ二人しかやってねぇんだ!!もっと幸せそうなやつを殺さないとだめなんだ!!」

警察「逮捕だ!確保ぉー!!」ガシッ

基地外「くそおぉぉぉぉ!!!なんなんだよおおおおおおおお!!!!!!」ジタバタ

・・・・・・・・



男「はぁ…はぁ…」ドクドク

女「…ぐふっ…」ドクドク

男「け、結構痛いね…当たり前だけど…」

女「うん…」

女「死ぬときは…て、手首切るつもりだったけど…それ以上かな…」

男「ごふっ!!」ビチャァ

女「だ、大丈夫…?」

男「…」

男「こういう時って、あんまり喋らない方がいい…とか言うよね」

女「うん…」

女「でも私たちは例外でしょ?」

男「それもそうか…」

男「…」ドクドク

女「…」ドクドク

男「死んだら、どうなるのかな…?」

女「幽霊でしょ…?やっぱり」

男「そっか…」

男「じゃあまた会えるのかな…僕たち…」

女「そうじゃない?知らないけど…」

男「…」

男「と、友達って…死ぬまでの期間限定だったよね、確か…」

女「…うん」

男「そっか…」

女「…」

女「幽霊になったら…」

女「…」

女「友達じゃないものになる?」

男「…」

男「それ…って…」

女「……」

男「……」

女「・・・・・・・・・・・・・」

男「・・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・

男「…………」

男「………」

男「……」

男「…あれ?」

男「ここ…は…」

女「おはよう」

男「あ、女さん…?」

女「なんか、生き残っちゃったみたいだよ。私たち」

男「ええっ?あんなに血が出てたのに?」

男「僕、生きてるんですか」

女「うん」

男「じゃあここは病院なのか…」

女「うん」

男「そうか…」

女「どうする?」

男「?」

女「死ぬ?」

男「…

男「死ぬのはいつでも死ねるからなぁ」

女「だよねぇ」

男「そんなに急ぐ必要もないのかもしれない」

女「痛いの嫌だしねぇ」

男「とりあえず」

女「はい」

男「死ぬまでは一緒に居ませんか」

女「死ぬまでの期間限定だね」

男「うん」

女「それもいいかも」









幽霊「おいやめろこれ以上人口増やす気か霊界では死人が多すぎてだなおいコラ」

~終~

お前ら「糞スレ氏ね」

>>1「鬱だ氏のう」

俺「やめてあげて」

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