灰原「江戸川君、早く高校に行きましょう」コナン「いつも悪りぃな」(19)

コナン「わざわざこっちまで来なくていいんだぜ?」

灰原「別に構わないわ」

灰原「あなた、私が来ないとすぐにサボるんだもの」

灰原「いくら成績がいいとはいえ、出席日数は気にしなくてはダメよ」

コナン「へいへい、分かってるよ」

コナン「……名前、まともにしとくんだったな」

灰原「何を今更言っているの」

灰原「早く制服を着なさい」

灰原「下で待ってるから」

コナン「朝飯作ってくれてもいいんだぜ?」

灰原「嫌よ」

灰原「そもそも、食材なんて殆ど置いていないじゃない」

灰原「何なら、書斎にある小説をいくつか煮込んであげましょうか?」

コナン「おいおい、やめてくれ」

コナン「おっちゃんのとこ居た時は……」

コナン「……気にしてこなかったからな」

灰原「……」

灰原「……仕方ないわね」

コナン「え?」

灰原「今から朝食は作れないけど」

灰原「夜は私が作ってあげるわ」

コナン「マジで?」

灰原「嘘を言うのは趣味じゃないわ」

コナン「それ、嘘だろ」

灰原「さぁてね?」

コナン「……ま、楽しみにしとくわ」

灰原「それと、今日はこっちに泊まるから」

コナン「は?何でだよ?」

灰原「博士が貴方のお父様に会いに行ってしまうから」

灰原「何か問題でも?」

コナン「いや、別にいいけど」

コナン「っと、着替え終わっちまったな」

灰原「私が見ている前で着替え始めるのは、趣味か何か?」

コナン「今更んなこと気にならねぇよ」

コナン「……気になるか?」

灰原「いいえ」

灰原「研究で何度見たか分からないもの」

灰原「準備が出来たなら、早く行きましょう」

灰原「遅刻するのはゴメンだもの」

コナン「おう」

灰原「……ペースを考えて頂戴」

コナン「おめー足遅えな」

灰原「慌てたくないだけ」

灰原「貴方こそ、少しはエスコートの基本を学んだらどう?」

コナン「へいへい、合わせてやるよ」

コナン「ほら、手出せって」

灰原「……デリカシーもムードも無いわ」

コナン「バーロー」

コナン「登校ぐらいでムード出せるか」

灰原「……ねえ、江戸川君」

コナン「んだよ」

灰原「……まだ、忘れられない?」

コナン「……忘れるつもりもねぇからな」

灰原「…ごめんなさい、私の力が足りなかったから」

コナン「気にすんなよ」

コナン「仕方ないさ、戻れなくなっちまったのは」

コナン「おめーこそ、俺に付き合うことなかったんだぜ?」

灰原「…私は、昔に戻りたくなかったのよ」

コナン「ま、暗い話はやめよう」

コナン「結局この年まで戻ってきちまったんだし」

灰原「早いものね」

コナン「本当にな」

コナン「どうだ?若返った実感湧くか?」

灰原「正直、あまりしないわね」

灰原「博士も貴方も、あまり変わらないものだから」

コナン「はは、まあ博士は昔からあんな感じだからな」

コナン「俺も……」

灰原「工藤新一、メガネを外さなくても分かるわ」

コナン「外せねーよ」

コナン「特に高校じゃ、な」

灰原「先生方もいるものね」

コナン「灰原」

灰原「なに?」

コナン「お前、今楽しいか?」

灰原「どういうこと?」

コナン「ほら、最近は言わなくなったろ」

コナン「私は存在しちゃいけない、とかさ」

灰原「……ええ、そうね」

コナン「……そんな顔するなよ」

灰原「別に、私がかつて犯した罪を忘れた訳ではないわ」

コナン「だから、お前は罪なんて犯してねーだ……」

灰原「罪よ」

灰原「貴方の人生を狂わせてしまった」

灰原「重い重い罪」

コナン「灰原……」

コナン「でも、お前はもう宮野志保じゃねーだろ」

コナン「忘れちまえよ、そんなこと」

灰原「そういうわけには……」

コナン「……めんどくせーな」

灰原「……悪いわね、私は面倒な女なの」

コナン「そうじゃねーよ」

コナン「…別に、俺の人生は狂ってなんかいないって言ってんだ」

灰原「え……?」

コナン「…そりゃ、今までとは違っちまったけど」

コナン「変わるってのは、悪いことばかりじゃないってことだ」

灰原「?一体何のこと?」

コナン「っと、あんまり話し込む訳にもいかねーか」

灰原「待って、まだ話が……」

コナン「あんまり難しく考えるなってことだよ」ツン

灰原「痛っ」

コナン「面倒にこねくり回すのは探偵の仕事さ」

コナン「ほら、また茶化されてーのか?」

灰原「……いいえ、鬱陶しいだけだもの」

コナン「だったら少しは走れよ」

灰原「私、走るの苦手だから」

コナン「ったく、せっかく二度目の高校生ならもう少し明るくなってみるとかすりゃあいいじゃねーか」

灰原「残念だけど、これが私なの」

コナン「……知ってるよ」

コナン「ま、たまには笑ってもいいとは思うけどな」

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