ほむら「悪魔だけど安価で魔法少女を救済するわ」 (269)

ほむら「私、悪魔パワーで世界を改編したのよ」

QB「うん」

ほむら「とりあえず杏子は美樹さやかの家で同居してる設定にしたわけだけど」

QB「それは聞いたよ」

ほむら「その結果一人の幼女が死んだわ」

ゆま「 」

QB「可哀想に」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1399904058

ほむら「この子は魔獣に襲われたところを杏子によって助けてもらう筈だったのよ」

QB「それなのにキミが改編してしまったから誰にも救って貰えなかったんだね」

ほむら「ええ」

ほむら「…………」

ほむら「……どうしよう、インキュベーター」

QB「どうしようって言われても」

QB「別に、放っておけば良いんじゃないかい」

ほむら「でも私のせいで死んだようなものだし……」

ほむら「なんか罪悪感っていうか」

QB「変なところで生真面目だね」

ほむら「……あ、そうだわ。それなら設定を変えれば良いんだわ」

QB「設定?」

ほむら「ええそうよ、私、悪魔なんだしまた改編しちゃえば良いんだわ」

QB「簡単に言うね」

ほむら「この幼女、千歳ゆまは……」

ほむら「【安価下】という設定に改編しましょう」

ほむら「そうすればきっと助かるわ」

QB「どうなっても知らないよ」

身体に染み付いたセーエキの臭いで朝を迎える。

それがわたし、千歳ゆまの日常。

ゆま「う……」

昨日の夜の『お仕事』で浴びせられた男の人のオツユがカピカピになって髪に張り付いてる。気持ちが悪い。

ノドもカラカラで何だか熱っぽいけれど、私には寝ていることなんて許されない。

ゆま「がっこう……いかなきゃ……」

そう、私はどんなに辛くても小学校に行かないといけないんだ。

そうしないとママが怒るから。ママがぶつから。

私の『お仕事』は、男の人とエッチなことをして、エッチなビデオを撮られること。

男の人はいつもママが何処からか連れてくる。怖い人も、太った人も、気持ち悪い人も、色々連れてくる。

ゆまがそういった人たちとエッチすると、ママは男の人からお金を貰えるらしいんだけど、詳しくは知らない。教えてもらえない。

本当はゆまはエッチなことなんてしたくないんだよ。ママが怒るからイヤなんて言えないの。

だから私は、一生懸命エッチする。ママに誉めてもらいたいから。

でも、エッチすればするほど、私が頑張れば頑張るほど、ママは、私に冷たい目を向けるんだ……。

ゆま「……しゃわー、あびよう……」

憂鬱な気持ちを少しでも洗い流したくて、私は浴室へと向かった。

ああ、早く済ませないと遅刻しちゃ
う。



何とか重たい体を引きずって、私は小学校へと向かう。

ウチから小学校は結構遠い。だから通学路は嫌い。大嫌い。

夜はお仕事でぜんぜん寝れなくて疲れてるから歩きたくないし……

たまに、お客さんの男の人に会っちゃったりするからイヤ。

ゆま「はあ……」

でも帰ったらママにぶたれるのは分かってる。さいあくのばあい、一日中別のお仕事をさせられるから、もっとイヤ。

ああ、ダメ、こんなこと考えてたらどんどん落ち込んじゃう……。

ゆま「……はやくなぎさちゃんとお話ししたいな……」

こんなときゆまが思い浮かべるのは、お友達のなぎさちゃん。

優しくて、可愛くて……チーズが大好きななぎさちゃん。

なぎさちゃんとお話ししてると元気が出るんだよ。

ゆま「今日はどんなお話をしようかな……」

給食のことかな、国語のことかな。

ゆま「……ふふ」

教室で、机を並べてお話しているところを想像すれば、ちょっとだけ元気が出てくる。

うん……やっぱりゆまがたのしくいられるのは、なぎさちゃんのいる学校だけなんだ。










────そう、思っていたのに。

「おい千歳! お前AV女優なんだってな!」

「おっさんとエロいことしてんだろ!!」

クラスの男の子が、ゆまを見るなりそう叫んだ。

教室中のみんなに聞こえるくらい大きな声で。

────ゆまのあたまは、まっしろになっちゃって、なにもいえなかった。

なんで、どうして、知ってるの。

ゆま、誰にも話したことないのに。

絶対バレてないはずなのに……!

なぎさ「ゆまちゃん……?」

ゆま「────っ!!」

ゆまの目を覚ましたのは、大好きななぎさちゃんの声だった。

ああ、やっぱりなぎさちゃんの声は優しい。大好き。

ずっと友達でいたい、大切ななぎさちゃん。

でも、もうそれもおしまい。

ゆま「あ、う……」

ゆまが汚らしい女の子だって、知られちゃったから。

ゆま「うああああああ!!」

もう一緒になんていられない。

どこをどう走ったかなんて覚えてないけど、ゆまは教室を飛び出して、学校から飛び出して……。

メチャクチャに走って、なんどもなんども人にぶつかって、転んで。

気が付いたら人がいなそうな路地裏に逃げ込んでた。

ゆま「はあ、はあ、はあっ、おぇっ……」

息が出来なくて苦しい。心臓はバクハツ寸前。足ももう動かない。

でも何よりも胸が苦しくて、なぎさちゃんの声が私の胸をチクチク刺して、私は泣くことも出来ないままうずくまった。

ゆま「う……うう……」

もうだめだ。わたしはもうだめだ。

男の人におもちゃみたいに扱われて、ママにも好きになってもらえなくて、サイテーのじんせいを送るしかないんだ。

なぎさちゃんもう、きっと笑ってくれない。

もう……どうでもいい……わたしなんてどうせ……。

ゆま「…………?」

そう落ち込んでいたわたしだったけれど、ふと誰かが近付いてくる気配を感じた。

ゆま「なぎさちゃん……?」

そんなわけない。わかってはいるけれどちょっとだけ期待してしまって、つい名前を呼んじゃう。

ゆま「……あ」

ゆまが顔を上げると、そこに立っていたのは────

真っ白な服を来た、かおにモザイクのかかった、大きな男の人だった。

ゆま「あ……ああ……」

一目見て分かったんだ。

この人、ゆまを狙っている。ゆまを襲う気なんだって。

ゆま「……あ、あはは……」

きっとゆまは逃げられない。絶対ゆまは助からない。

訳が分からないけれど、ゆまはこの化け物に乱暴されるのは間違いない。

ゆま「あは……あはは……」

でも、ゆまにはお似合いだよね。

こんな汚らわしい女の子なんだもん。

汚い路地裏で、訳の分からない変な人にエッチなことされて、メチャクチャにされちゃうのが、お似合いだよね……。

ゆま「……良いよ。ゆまのこと、好きにして、いいよ」

ゆまはもうぜんぶ諦めて、そう言った。

「オ……オオオオ……!」

そしたら、男の人は変な声を上げて。

ゆま「え……?」

────ゆまのしんぞうを、その手で貫いたんだ。

ゆま「あ……」

真っ赤な血が、コンクリートに広がっていって、とっても綺麗。

ゆま「あ、がっ……」

すごく痛くて、呼吸も出来ない。ああ、ゆま、死んじゃうんだ。

でも、これって……。

ゆま「あはっ……」

これって、救われた、っていうんだよね。

どうせ、どうでも良い人生だったもの……。

あっさり終われて……よかっ……



ほむら「……AV女優は止めましょう」

QB「そうだね。というか考えるまでもないよね」

ほむら「小学生にAV女優とかあり得ないものね」

QB「そうだね。もっと早くに気が付くべきだよね」

ほむら「そんなわけだから違う設定にしましょう」

ほむら「ええと、そうね……そもそも千歳ゆまは杏子の担当なわけだから」

ほむら「千歳ゆまは、杏子の【安価下】という設定にしましょう」

縺翫d縺吶∩

>>1のネタが尽きるまでは鬼畜安価も捌く予定です。
そんなわけで今日のところはおやすみなさい。

アタシには『家族みたいな存在』が二人いる。

一人はさやか。まあアタシにとっては妹のよーなヤツだ。

魔法少女としてもまだまだだし、くだらないことで拗ねたりする、かなり世話の焼ける妹。

それがアイツ、美樹さやかだ。

……そんなこと本人に言ったら怒るだろーけどな。

んで、もう一人のアタシの『家族』って言うのがコイツ、ゆま。

ゆま「ゆま、牛さんだよ! モォモォー♪」

アタシの暮らしを支えてくれる大切な愛牛だ。

杏子「ゆまー、今日も新鮮なミルクを頼むぞー?」

ゆま「うん、頑張るよ!」

ゆまの乳搾りはアタシの日課だ。

まあ乳搾りとは言っても最近じゃあ機械が自動でやってくれるから大した作業じゃねーんだけどな。

アタシがすることと言えば、まずはゆまの牛柄ビキニを脱がす。

杏子「はい、そんじゃ脱ぎ脱ぎしましょうねー」

ゆま「……えへへ」

そんでもって乳搾りの器具を乳房に取り付けて、スイッチを入れるだけ。

簡単なお仕事さ。

ごうんごうん、と音を立てて搾乳機が動き出すと、ゆまのおっぱいからお乳が搾り取られていく。

ゆま「んっ……あふぅっ……♪」

杏子「ん、痛いか? 悪いね、我慢してくれよ」

ゆま「んっ……へ、へーきだよ、ゆま、キョーコの役にたてるなら、これくらい……あんっ!」

機械に乳を吸い上げられながらも、ゆまは笑顔を忘れない。

相変わらず健気な奴だ……胸が熱くなるなぁ。

今日も頑張ったご褒美に美味しいケーキをご馳走してやろう。うん。

絞り終えたゆまミルクは朝の食卓に並べられる。

杏子「かーっ、うめえ!」

さやか「くぅー! やっぱ搾りたてのゆまちゃんミルクは違うねー!」

アタシもさやかもゆまミルクは大好物。

この一杯がなきゃ1日が始まらないと言っても過言じゃないくらいだ!

ゆま「えへへ、喜んでもらえてゆまも嬉しいよ!」

ゆまはいつもそんなアタシ達の様子をニコニコと見守っている。

心の底からの笑顔って感じで、まあなんだ、その、和む。

さやか「ふふ、いつも美味しいミルクありがとね、ゆまちゃん」

ゆま「どーいたしまして!」

マミ「佐倉さーん、いつものお願い出来るかしらー?」

おっと、お客さんだな。

ゆまミルクはアタシんちで消費するだけじゃない。

親しい人には格安で提供してたりする。

杏子「おっすマミ、いつもとおんなじのだな?」

マミ「ええ、お願いね」

マミが買ってくのは搾りたてゆまミルクと、ゆまチーズだ。

ゆまチーズってのは勿論、ゆまミルクから作ったアタシ特製のチーズさ。

マミの友人がチーズ好きで良くお菓子を作ってるんだけど、

「ゆまチーズで作るチーズケーキが世界で一番美味しいのです!」

なんて、ベタ誉めしてくれたりなんかするんだぞ。

ま、ゆまチーズはアタシの自慢の品で、誇りみたいなもんだな。

ゆまの体調管理もアタシの大事な仕事だ。

特にゆまは好き嫌いが多いので、食事はしっかり管理してやらなきゃならない。

ゆま「ゆまこれ嫌ーい」

杏子「こらこら、食い物を粗末にすんじゃねーぞ」

ゆま「……はーい」

頭を撫でて誉めてやると、ゆまはすっげー幸せそうに目尻を下げる。

ったく、世話が焼けるぜ。

ま、こんなのアタシにとっては苦じゃないんだけど。

なんたってゆまは可愛い家族だからな。

ゆま「もぐもぐ……」

杏子「よし、偉いぞー」

ゆま「……えへ♪」

夜はゆまが風邪を引かないように一緒に寝てやる。

ゆまは牛さんビキニしか着てないから、寒さには弱いんだよ。

杏子「どーだ、寒くないか?」

ゆま「うん、キョーコの身体、あったかくて気持ち良いよ……むにゃ」

杏子「眠くなったら無理せず寝ろよ」

ゆま「やだ……キョーコともっとお話するぅ……」

やれやれ。ほとんど瞼が閉じてるくれに、何を言ってるんだか。

こんな時は優しく背中をさすってやったり、トン、トンとゆっくりしたリズムで触れてやる。

そーすると安心するらしくて、ゆまはすぐに寝ちまうんだ。

ゆま「すぅ……」

よし、寝たな。

ゆまの飼育は大変なことも多い。

時には今日みたいにすぐに寝てくれなくて、グズってしまうこともある。

熱を出して寝込んで、一日中看病するはめになることだってある。

でも、まあ……。

ゆま「キョーコ……」

杏子「……ん? 寝言か……」

ゆま「キョーコ……大好きぃ……」

杏子「……ふふっ」

……悪くない。

大切な家族のためなら、どんな苦労だって辛くはないさ。

アタシは、今のこの暮らしが気に入ってる。

杏子「おやすみ、ゆま」

さーて、アタシも寝るか。明日も仕事なんだからな。



ほむら「無事に千歳ゆまは馴染めたようだったわ」

QB「そうだね、無事だね」

ほむら「改編は上手くいって、誰も何も疑問に思っていないみたい」

QB「もう記憶の操作もお手のものだね」

ほむら「でもその結果があちらよ」

織莉子「 」

キリカ「 」

QB「死んでるね」

ほむら「どうやら千歳ゆまが助かった影響で今度はこの二人が死んでしまったみたい」

QB「どういうことだい?」

ほむら「千歳ゆまを襲えなかった魔獣が、空腹のあまり暴走して美国織莉子を襲ったようなの」

QB「たかが魔獣一匹に襲われて死んだのかい?」

ほむら「まあそんなこともあるんじゃないかしら……」

QB「呉キリカは?」

ほむら「美国織莉子を失ったことによるショック死よ」

QB「なる程」

ほむら「…………」

ほむら「どうしよう、インキュベーさん」

QB「知らないよそんなの」

QB「魔法少女が命を落とすことなんて珍しくないだろう」

QB「仕方がないよ、これは彼女等の宿命さ」

ほむら「でもせっかく改編したのにまた犠牲者が出るなんて」

ほむら「やっぱり私のせいだし罪悪感っていうか」

QB「凝り性だね、キミは」

ほむら「ここはまた改編するしかないわね……どう改編しようかしら」

QB「ほいほい改編しすぎじゃないかい?」

ほむら「ねえ、どうすれば二人が助かると思う?」

QB「……彼女達に魔法少女の友人を増やすとか」

QB「あるいは彼女達自身を強化するとか」

QB「単純に、たまたま旅行に出掛けていて魔獣に襲われないようにするとか」

ほむら「すごいわキュゥべえ。アイデアマンね」

ほむら「さて、それじゃあ……美国織莉子と呉キリカ、この二人を」

ほむら「>>65という設定にしましょう」

QB「好きにしなよ」

今のところ短編集みたいなノリで方向性を考えていますが
うしさんをもっと可愛がりたいとか要望があれば前向きに検討します

醜悪なおっさん達のペット

レスがいっぱいついててうれしいなぁ(適当な感想)

叔父様の屋敷のホールに集まった男性たちは、皆スーツ姿だった。

上質なブランド物と思しきスーツに身を包んだ彼らは如何にも裕福そうな身なりだったけれど、その容姿は醜悪の一言に尽きる。

でっぷりと突き出た腹に、油の浮いた禿げ上がった額。

まさしく豚のように鼻息を荒らげて、年頃の乙女ならまず間違いなく顔を背けるであろう姿だ。

彼らは一様に、嫌らしい目つきで私を舐めまわしていた。

頭の中で私がどのような辱めを受けているのかなんて、想像するまでもない。

織莉子(嗚呼、今日も始まるのね……)

夜が始まる。長い長い夜が。

「さあ織莉子ちゃん、今日もみんなにご挨拶するんだよ」

男性たちの中の一人、酷い口臭とともに汚物のような息を吐く人物が私に命令する。

彼が私の叔父だった。

織莉子「はい……」

命令に従い、私は躾られた通りの作法でお辞儀をしてみせる。

いかがわしい衣装の短いスカートを持ち上げて、下着が見えそうなほど太股を晒しながら。

「……ふひっ」

男性たちの視線が私の下半身に突き刺さる。

羞恥で唇が震えるけれど、逃げることは許されない。

私は……彼らのペットなのだから……。



お父様が私に遺したモノは沢山ある。

良いモノも、悪いモノも、ごちゃ混ぜに沢山。

例えば、大きなお屋敷。お父様が遺したくれたモノで最も金銭的価値があるものだ。

例えば、庭の薔薇園。キリカとお茶会するのに最適な場所だから気に入っている。

例えば、汚職議員の娘という汚名。あの人が遺したモノのなかで一番要らないモノだった。

他にも遺したモノは色々あるけれど……その中でも、今でも私の心を蝕み続ける黒い黒い染みのようなモノがある。

それは、お父様が幼い私に施した────『調教』の記憶。

私は、幼い頃よりお父様の手で調教を受けていた。

それは男を悦ばすための、愛玩動物としての調教。

女の子として、いや、人間としての尊厳など微塵も存在しない屈辱的な調教だった。

何処をどうすれば雄が悦ぶか。どう媚びれば雄が征服感に浸れるか。

ペットとして相応しい振る舞いを、私は五歳で覚え込まされた。

調教はお父様が汚職疑惑で自ら命を絶つまで毎日毎晩続けられた。

そしてお父様の死後……私の前に現れたのは叔父様だった。

「やあ、織莉子ちゃん」

あの嫌らしい男の、臭気の漂う口内から吐き出された言葉を聞いたその瞬間、私は悟った。

「これからは、叔父さんが織莉子ちゃんの面倒を見てあげるからね……」

ああ、調教はまだ終わらないんだ、と。

絶望と、そして……かすかな熱を下腹部に感じたのを私は覚えている。

……以来ずっと、父の跡を継いだ叔父様から、私は調教を受け続けているのだ。



キリカ「……織莉子、織莉子!」

織莉子「……え、あ……何かしら、キリカ」

愛しいキリカの声が、私の意識を現実に引き戻す。

お茶会の最中にも関わらず、私は呆けてしまっていたようだ。

キリカ「何かしら、じゃないよ。どうしたんだいボーッとしてしまってさ」

紅茶はすっかり冷め切っている。どれだけの時間こうしていたのだろうか。

途中までは、お茶を飲みながらキリカと雑談をしていたのを覚えているのだけれど……。

織莉子(疲れているのね)

仕方のないことだ。昨夜も長い夜だったから。

キリカ「もしかして、具合が悪いのかい?」

心配そうな表情で覗き込まれ、つい顔を背けそうになるが堪えた。

ここで目を逸らしたら、後ろめたいことがあると自白するようなものだから。

織莉子「い、いえ……別に、何でもないわ」

キリカ「……本当に?」

織莉子「ええ、本当よ」

何でもないはすがない。

でも本当のことなんてキリカに話せるわけがなかった。

……ごめんなさい、キリカ。

織莉子「ああ、そうだわ。今日も帰りは遅くなるから、お夕食は一人で食べてね」

キリカ「ええー、またなの? 昨夜もそうだったじゃないか、また叔父さんのところへ行くのかい?」

織莉子「……ええ」

叔父、という単語が私の脳裏に昨夜の屋敷での光景を浮かび上がらせるけれど、顔に出さぬよう努める。

平静を装うのは得意だから、きっと大丈夫だ。

お母様が亡くなった時だって誰にも悲しみを悟られなかった私だもの。

だから、大丈夫。

キリカ「ねえ織莉子、いつも叔父さんの家でどんな話をしているんだい?」

織莉子「……それは」

何かを察したというわけではないのだろうけれど、キリカは叔父様の話を続けた。

あまり、私としては望ましくない。

ここは適当に煙に巻くとしましょう。

織莉子「叔父様と話しているのは、税金のこととか、相続の話とかよ」

キリカ「ぜ、ぜーきん?」

織莉子「ええ、お父様が亡くなってから必要だった手続きがいろいろあって、叔父様に相談に乗ってもらっているのよ」

キリカ「う……わ、私にはよく分からなそうだね」

織莉子「ふふ、そうね。まだお子様のキリカには難しいかもしれないわね」

キリカ「むぅー! また子供扱いして!」

両手をぶんぶんと振り回して怒りをアピールするキリカ。

織莉子「……ふふ」

とても中学三年生になる女の子には思えない、子供っぽい様子だけれど……それもご愛嬌という奴だ。

私にとって誰よりも大切な人……キリカ。

……出来ることならば、この子には、あの調教のことは知られたくない。

もし知られてしまったら、私は……私は……。



キリカ「────お前たち、織莉子に何をする気だぁっ!!」

失態だった。

キリカが後を着けていたことにも気が付かず、私は叔父様の屋敷まで彼女を案内してしまった。

その結果がこれだ。

屋敷のホールまで踏み込んだキリカは、叔父様のお客様達にその魔爪を突きつけている。

織莉子「き、キリカ……」

キリカ「織莉子っ!! 嗚呼、そんないかがわしい格好をさせられて……!」

そう言われてようやく、自分がペットとしての姿をキリカに見られてしまったことに気が付いた。

キリカ「でも私が来たからにはもう大丈夫だよ! さあこんなとこ出よう、織莉子!」

嗚呼……嫌。やめて、そんな真っ直ぐな目で見ないでキリカ。

今の私の姿を見ないで……!

「ほう……彼女は織莉子ちゃんのお友達かい?」

叔父様は心底楽しそうに微笑んで、私に尋ねる。

織莉子「……はい」

「ならちょうど良い。織莉子ちゃんの可愛い姿をあの子にも見せてあげなさい」

織莉子「……!」

「さあ、それじゃあいつものように、みなさんにご挨拶だ」

そんなのイヤ。キリカの前で、あんなことをするなんてイヤ。

織莉子「はい……わかりました……」

でも、拒否することなど出来なかった。

私には染み着いてしまっていたから。

あの調教の日々が。お父様の遺した調教の記憶が。

あの────脳髄を痺れさせるような、快感が。

染み着いた躾は私の身体を操り、変わらぬ動作でお辞儀をしてみせる。

いかがわしい衣装の短いスカートを持ち上げて、下着が見えそうなほど太股を晒して……。

キリカ「お、織莉子……? い、いったい何を、ダメだよそんな……!」

もはやキリカの制止の声も届かない。

今の私はもう……美国織莉子ではなく、ただのペット。

醜い男たちに可愛がられるだけのペットなのだ……。

ああ、また夜が始まる。長い長い夜が────





織莉子「みんなー!! 今日もおりりんのシークレットライブに来てくれてありがとなのにゃー!!」

キリカ「えっ」

「うおおおおお!」

「おりりん! おりりん!!」

屋敷地下の特設コンサートホールは一瞬で熱狂の渦に包まれた。

織莉子「今日はおりりんの大切なお友達も見に来てくれたのにゃ! おりりん、いつもより張り切っちゃうのにゃー!」

キリカ「あ、うん……」

キリカは今までにないよう冷たい目で私を見ていた。

嗚呼、キリカに軽蔑されてしまった……?

恥ずかしさと後悔と……でも間違いなく気持ち良いと感じている私のごちゃまぜの心がグルグルと暴れている。

全身が熱いのはスポットライトのせいだけじゃない。

「おりりーん!! がんばってー!」

「おりりん! なでなでさせてー!」

織莉子「にゃはっ♪ なでなではダメなのにゃ、おりりんはみんなのペットなのにゃ!」

「ええー!」

織莉子「でもその変わりに、おりりんはみんなにお歌を贈るのにゃ! ご主人様みんな、みんなに歌を贈るのにゃー!」

ここでステージ衣装を翻して決めポーズのネコさんのポーズを決める。

ああ、もう完全に身体に染み着いてるわ……これもお父様の調教のせい……。

「うおおおおお! おりりん! おりりん!!」

そんな私のポーズを観て、男性達は一層わき上がる。

当然だ。私は、こうなるように何年も調教されてきたのだから。

マイクの握り方、発声法、仕草の一つ一つ……

全てが男性に媚びるために最適なものになるよう調教されてきたのだから。

新ジャンル・ぺットアイドルとして……!

織莉子「それじゃあ一曲目『わがままぺットなわたし』、いくのにゃー!」

演奏が流れ始めて、重低音が身体をふるわせる。

ああ、この感じ……下腹部にジンジンくる音の響き。

脳髄を痺れさせるような、この快感。

もはや私はこの感覚から逃げることなど出来ない。

恥ずかしいのに、死ぬほど嫌だったはずなのに、キリカが見てるのに……この快感を捨てることが出来ない。

私はもう、普通の女の子になんて、戻れないのだ。

「うおおおおお! おりりん! おりりん!!」

夜はまだ始まったばかり。今日はきっといつもより長い夜になる。

何書いてんのかよく分からなくなってきたから寝る

つづき



お父様が私に遺したモノは沢山ある。

良いモノも、悪いモノも、ごちゃ混ぜに沢山。

例えば、大きなお屋敷。

例えば、庭の薔薇園。

例えば、汚職議員の娘という汚名。

他にも遺したモノは色々あるけれど……その中でも、今でも私の心を蝕み続けるのは『調教』の記憶。

嗚呼、でも、これこそが……

お父様が遺したもので、一番素敵なものだったんだわ……!

織莉子「みんなー!! 今日もおりりんのシークレットライブに来てくれてありがとなのにゃー!!」

「うおおおおおお!!」

織莉子「みんなももう知ってると思うけど、今日からおりりんと一緒にみんなのペットになってくれるお友達が増えたのにゃ!」

織莉子「でもまだちょっと恥ずかしがり屋さんだから、みんなで名前を呼んであげてほしいのにゃ! せーの」

『きりりーん!!』

キリカ「え……えと、き、きりりんだにゃんっ……」

「うおおおおおお!! きりりん、きりりん!!」

キリカ「あわわっ、え、えと」

織莉子「にゃふっ、照れてる貴女も可愛いにゃん、きりりん♪」

キリカ「え……えへへ、ありがとう織莉子、じゃなかったおりりん」

織莉子「さあ、ライブを始めるにゃん!」

キリカ「う、うん……わかったにゃん!」

こうして、私の夜は変わった。

もっと長く、もっと情熱的で、もっと極上の快感に染まる夜となったのだ────。



QB「何なんだいコレ」

ほむら「後に一世を風靡することになるぺットアイドル『おりキリにゃんにゃん』の結成秘話よ」

QB「ネーミングセンスがおっさんだね」

ほむら「こうして呉キリカもぺットアイドルとしてデビューすることになるの」

ほむら「洗練されたおりりんとは異なり、恥じらいながら下手なダンスや歌を披露するきりりんが大ウケしてファンの層が一気に広がることになるのよ」

ほむら「メジャーデビューの日は近いわ」

QB「割とどうでもいい」

QB「ところで美国織莉子を襲うはずだった魔獣はどうなったんだい」

ほむら「二人の萌え萌えなライブに魅了されてファンクラブに入会したわ」

ほむら「危害を加えるつもりはないみたいよ」

QB「そうなんだ、すごいね」

ほむら「これでもうあの子達が命を落とすことはないでしょう……」

ほむら「と思っていた矢先に魔法少女が一人死んだわ」

>>128「 」

QB「またかい」

あすみ
無理なら優木

沙々「 」

ほむら「どうやら彼女……優木沙々はおりりんのシークレットライブを見に来ていたようなのだけど」

ほむら「ライブの熱気にテンション上がってソウルジェムを落として踏んづけられて死んだみたいなの」

QB「間抜けだね」

ほむら「そうね……」

ほむら「…………」

ほむら「どうしようインキュべえさん」

QB「いやこれはスルーして良いんじゃないかな」

もう書いちゃったんで沙々にゃんでいくんよ

QB「キミが責任を感じる必要性が全くないように思えるよ」

ほむら「でも私、おりりんファンクラブの会長だし……」

ほむら「おりりんのライブで事故が起きるなんてイヤだわ」

QB「何をやってるんだいキミは」

ほむら「どうしよう、やはり改編か……」

QB「改編の大安売りだね」

ほむら「そうだわ、それなら優木沙々を……」

ほむら「>>138という設定に改編しましょう」

QB「その改編は本当に必要なのかい?」

鹿目知久と不倫した結果、彼に膣内射精されて、ついには妊娠しちゃった女の子

でも認知してもらえたよ。やったね



ほむら「そんなこんなで知久さんに惚れた沙々にゃんはアプローチを続けて」

ほむら「やがて知久さんもその気になって不倫を始めて」

ほむら「なんやかんやで妊娠して認知するに至って」

ほむら「最終的に知久さんは詢子さんとは離婚して沙々にゃんと再婚したわ」

QB「凄いドラマティックだったね」

ほむら「そうね、特に詢子さんと離婚する場面は涙なしには語れなかったわね」

QB「そうだね、すごかったね」

ほむら「ちなみにまどかはこの一件で男性不信に陥っていたから私が慰めておいたわ」

まどか「いっぱい慰めてもらっちゃった///」

QB「意味深だね」

ほむら「沙々にゃんは妊娠したことで……」

ほむら「おりりんのシークレットライブには参加出来なかったわ」

ほむら「おかげで死ぬこともなくなったの」

QB「へぇ」

ほむら「でもその結果がこちらよ」

マミ「 」

QB「綺麗な顔してるね」

ほむら「死んでるのよそれ」

ほむら「巴さんは、幸せそうな沙々にゃんの姿を見て羨ましいなぁとか考えてたら」

ほむら「自分は将来結婚出来るのかしらとか不安になり始めて」

ほむら「そもそも就職も、いえ進学さえも怪しいわとか悩み続けて」

ほむら「ソウルジェム砕いて自害してしまったの」

QB「情緒不安定にも程があるよ」

ほむら「そうね」

ほむら「…………」

ほむら「どうしようべえさん」

QB「これはどうしようもないよ」

QB「マミのメンタルが脆いのはキミとは関係ないじゃないか」

QB「放っておきなよもう」

ほむら「そんなことないわ、元はといえば沙々にゃんが結婚したのが原因、つまり私のせいだもの……」

ほむら「私が巴さんを殺してしまったのと変わらないわ」

ほむら「ここは私が責任を取って改編するべきよ」

QB「改編したいだけだったりしないよね?」

ほむら「やっぱり巴さんには支えてくれる人が必要だと思うのよね」

ほむら「そして今、巴さんに一番身近な人物といえば百江なぎさちゃんだわ」

QB「マミには年下の子しか友達がいないっていうのかい?」

ほむら「だから今回の改編では……」

ほむら「なぎさちゃんを、巴さんの>>173という設定にしてサポートして貰いましょう」

QB「完全に百江なぎさがとばっちりを受けてるね」

腹違いの妹



ほむら「その結果がこちらよ」

マミ「 」

QB「最速じゃないか」

ほむら「どうやら腹違いの妹という設定が逆に二人の関係を気まずくしてしまったみたいで」

ほむら「巴さんの孤独化が加速してしまったようなの」

ほむら「そして自害よ」

QB「難しい年頃だからね」

ほむら「仕方がないからまた改編するわ」

ほむら「巴さんとなぎさちゃん、二人が仲良く出来るように……」

ほむら「>>188というシチュエーションをセッティングしてあげるとしましょう」

QB「上手くいくかなぁ」

2人とも男子生徒たちの共用肉便器

・再開

マミ「んーっ♪ 今日もいい天気ねー」

ベランダから見上げる空は雲一つなく真っ青で、絶好のお出かけ日和だった。

マミ「こんな日は学校なんかサボって、ショッピングにでも行きたくなっちゃうわねぇ」

もちろん、そんなことしないけど。可愛い妹に怒られるのはイヤだもの!

なぎさ「マミ、ごはん出来たのですよー」

マミ「ありがとう、なぎさ♪」

ちょうど私が青空の甘い誘惑に打ち勝ったタイミングで、妹……なぎさからお呼びがかかった。

リビングからは卵が焼ける良い香りが漂ってきている。今朝は目玉焼き……ううん、ハムエッグかしら?

テーブルに並べられたのは、キツネ色に焼け目が着いたトースト。

それと予想通りのハムエッグと、ヨーグルトサラダ。

簡単な朝食だけれど、なぎさが作ってくれたのだから私にとっては特別だ。

なぎさ「さぁ、どうぞ召し上がれ!」

朝一番の大仕事をやり遂げたなぎさは、自信満々でとびっきりキュートな笑顔を披露してくれた。

マミ「ふふ、いただきます」

その笑顔に免じて、見なかったことにしてあげるとしましょう。

貴女のハムの裏側が焦げてるのは……ね♪

なぎさ「もぐもぐ……ところで、今日はどうするのですか?」

マミ「?」

お口にトーストを含んだまま、なぎさは私に尋ねた。

ご家庭によってはお行儀が悪いと叱られそうな行為ね。

でも、我が家ではこれくらいは全然許容範囲内。

食事中の会話も家族の大事なコミュニケーションの時間だもの。

……っとそれはさておき。

マミ「どう、って? 今日も学校だし、いつも通りよ?」

なぎさの質問の意図が掴めず、私は質問で返してしまった。

『質問に質問で返すのは感心せんな』って言ったのは何のキャラだったかしら。

なぎさ「もー、マミってば何を言ってるのですか」

そんな私に対してなぎさが向けるのは呆れ顔だ。

私、何か変なことを言ってしまった?

なぎさ「今日は学校が臨時休校になった、って連絡があったのです。さっき伝えたのですよ?」

マミ「あ、あら……そうだった、かしら」

臨時休校。言われてみればそんな会話をしたような記憶がある。

マミ「イヤだわ、ド忘れしちゃったみたい……うふふ」

なぎさ「ほんの数分前のことなのですよ……」

笑って誤魔化す私を、なぎさはそこはかとなく哀れみを含んだ目で見ていた。

……なんだか何処かでお姉ちゃんへの信用度が下がる効果音が聞こえた気がするわ。

なぎさ「まったく。マミはなぎさがいないと全然ダメダメなのです」

マミ「あ、あはは……返す言葉もないわね……」

なぎさ「あっ、でも大丈夫なのですよ、ダメなお姉ちゃんにはなぎさがずっと一緒にいてあげるのです!」

嬉しい発言なんだけど素直に喜べないわ、なぎさ。

なぎさ「こほん。……それで、今日はどうするのですか?」

閑話休題。話はいかにして今日を過ごすかに戻る。

マミ「ええと、そうね……」

降って湧いたような休日。さて、どうしましょうか。

マミ「なぎさは何かしたいことはある?」

せっかくだからなぎさの希望を聞いてみるけれども、

なぎさ「なぎさは美味しいチーズを食べたいのです、お買い物に行きたいのです!」

うん、いつも通りの発言過ぎて聞く意味がなかったわ。

まあなぎさが喜んでくれるのが一番だし、無難に買い物が良いかしらね。

臨時休校なのに派手に遊び歩くのもアレだし……

……あら? でも……そういえば。

今日って、なんで臨時休校なんかになったんだったかしら……。

なぎさ「……マミ?」

マミ「あ、ご、ごめんなさい」

少しボーッとしてしまったみたい。なぎさが心配そうな表情を見せている。

今日は何だか調子が出ないわね……まだ寝ぼけているのかしら、私。

マミ「ええと、そうね、今日はショッピングでも楽しむとしましょうか」

なぎさ「わあい! チーズを買うのです、なんか珍しいやつ!」

マミ「……ふふっ」

何となく頭がシャキッとしない感じがするけれど、でもそんなのはなぎさのはしゃぐ姿を見ればどうでも良くなった。

せっかくの休日ですもの、余計なことは考えずに楽しむとしましょう。

マミ「お財布と良く相談して決めるのよ?」

なぎさ「はーい♪」



楽しい時間は瞬く間に過ぎてしまうもので、気が付けば西の空が赤く染まり始めている。

マミ「うーん、久しぶりにのんびり過ごしたわねー」

なぎさ「楽しかったのです!」

買い物を満喫した私達は仲良く手を繋いで帰路についていた。

通学路にもなっているこの遊歩道は普段なら下校途中の生徒たちでごった返している筈なのだけれど、今は私たち二人きりだ。

道の両脇に立ち並ぶ街路樹は夕焼けによって紅葉のように紅く染め上げられている。

紅く染まった夕焼けの中、並んで歩く美少女二人……うん、中々絵になる光景なんじゃないかしら!

……今のはちょっと調子に乗り過ぎね、ええ。

今日はチーズだけでなく色々と雑貨屋さんを巡ってみたり、ウィンドウショッピングを楽しんだ。

でもあれね、お金がないのに買いたい物を探すっていうのは中々に目の毒ね。

マミ「嗚呼、あのティーカップ、やっぱり買えば良かったかしら……」

なぎさ「ふふ、まだ言ってるのですか?」

だって私の好みにピッタリだったんですもの。

マミ「うん、やっぱり頑張っておこづかいを貯めて、また買いに行くとしましょう!」

などと、ちっぽけな贅沢宣言をしてみる。

わざわざ口に出したのはなぎさの反応を伺いたかったから。

『買っても怒らないよね? 良いよね?』というアピールだ。

でも、なぎさはそんな私の遠回しな主張を無視してこう言い放った。

なぎさ「あ……マミ、ちょっと待って欲しいのです」

マミ「えっ! か、買っちゃダメ?!」

ショックのあまり声が裏返っちゃった。うう、情けない。

なぎさ「ふぇっ? いえ、そっちの待ったじゃないのです」

マミ「?」

違うのです、と大袈裟に首を振るなぎさ。

どうやら財布の紐の話ではなかったみたい。

なぎさ「えと、その」

なぎさは俯きながらも、ちらちらと何かに視線を向けていた。

マミ「?」

その先にあるのは公園の……。

マミ「……あ」

成る程ね。もう、姉妹なんだから恥ずかしがること無いのに。

マミ「わかったわ、荷物は持っててあげるから行ってらっしゃい」

なぎさ「は、はいなのです。ごめんなさい」

なぎさは私に荷物一式を手渡して、公園の隅にある小さな建造物へと駆けていった。

それがなんなのかは、レディの尊厳に関わるから伏せておくとしましょう。

マミ「……ふぅ」

なぎさを待つ間の、ほんの一時の休憩。

私は小さく溜息を吐いた。

魔法少女とはいえ、流石に一日中歩きっぱなしだと疲れるわね。

マミ「……あら?」

何となく道の向こうを見やると、見覚えのある女の子が歩いてくるのが目に入った。

あの子は確か……。

マミ「……志筑さん?」

そう、志筑仁美さんだ。

ウェーブのかかった綺麗な髪と、上品な物腰が特徴的なお嬢様。

彼女は一人でこちらへと歩いてきていた。

マミ(……何だか、浮かない顔をしているわね)

遠くから見ても分かる。酷く疲れた顔だ。

それに、何故か……彼女は制服姿だった。

マミ(今日は休校だったはずなのに、どうしたのかしら?)

……余計なお節介かもしれないけれど、このまま無視するのも気が引ける。

ここは一つ、正義の魔法少女としてのお役目を果たすとしようかしら。

マミ「今晩は、志筑さん」

仁美「きゃっ!? あ、巴さん……?」

余程周りが見えていなかったのか、志筑さんは必要以上に驚いてみせた。

……それだけ憔悴しているということなのかしら。

マミ「ごめんなさい。驚かしてしまったわね」

仁美「い、いえ、私のほうこそ失礼いたしました」

そういって志筑さんは丁寧にお辞儀する。

その動作に不自然さはなく洗練されていて嫌みもない。

やっぱり育ちの良い子は違うわねぇ、なんて感心してしまう。

マミ「随分とお疲れの様子だけれど、どうしたの? 何かあったの?」

志筑さんとはそれほど親しい間柄ではないからそう簡単に話してくれるとは思わないけれど、私は単刀直入に尋ねた。

仁美「いえ、その、別に……」

予想通り言いよどむ。まあ当然よね。

普通の人ならここで引き下がるのだろう。必要以上に首を突っ込もうなんて思わない。

でも、残念ながら今の私はお節介な魔法少女さんなのよ、志筑さん。

マミ「悩み事があるなら話してみない? 少しは気が楽になるかもしれないわ」

仁美「…………」

私の言葉が利いたのか、元々誰かに頼りたかったのか。

志筑さんは少しだけ悩んだ後、重たい口を開いた。

仁美「……少しでも、手がかりがないかと思いましたの」

マミ「?」

でもそれは私にとって要領を得ない台詞だった。

手がかり? 何のことかしら。

仁美「だから学校まで行ってきたのですけれど、門前払いで……」

志筑さんはそんな私に構わず話を続ける。

このままじゃついていけなくなりそうだわ。

失礼だとは思ったけれど、私は彼女の話を遮った。

マミ「……えっと、ごめんなさい。何の話かしら?」

仁美「……巴さんはご存知無いのですか? 昨日の事件を」

私の率直な質問に対して、志筑さんは問い返す。

……『質問に質問で返すのはうんぬん』なんて言える雰囲気ではないわね。

それにしても、昨日の事件って……何かあったかしら……。

仁美「……昨日の夕方のことですわ。見滝原中学で事件がありましたの」

私の様子から察したのか、志筑さんは説明を始めてくれた。

良く気が利く子ね。

仁美「ある教室で、大量の血痕が発見されたんです」

マミ「……!?」

仁美「そしてそれとほぼ同時に、数十人の男子生徒が行方不明になって……」

血痕。男子生徒。行方不明。

何かしら、凄くイヤな感じがする。何か胸の奥につかえるような感覚が……。

頭のなかで靄のかかったような記憶が渦を巻いて……気持ちが悪いわ。

仁美「そして……その中の一人が、いなくなった男子生徒の一人が……私の恋人の上条君でしたの……」

上条君。その名前も聞き覚えがある。誰だったかしら。

そう、確か彼は美樹さんの幼なじみで、私も何回か見かけたことがある。

仁美「彼が何処へ行ったのか、私、知りたくて……彼に何があったのかと思うと不安でっ……私っ……」

最近にも会ったような気がするわね……今日、会った……?

ううん、違う。ああ、そうだわ、思い出した!

マミ「────ああ、上条君って私が撃ち殺した子ね!」

仁美「……え?」

ああ良かった。思い出せてすっきりしたわ、うふふ♪

ノドに小骨が刺さったような感覚が無くなって、気分が良いわぁ。

こういうのアハ体験って言うんだったかしら?

仁美「殺……し? え……?」

あら? どうやら志筑さんはまだ飲み込めてないみたいね。

仕方がないからちゃんと説明してあげるとしましょう。

マミ「だって彼ったら私のなぎさに手を出したんですもの、殺されて当然でしょう?」

仁美「……!?」

マミ「彼だけじゃないわ、彼のお友達も同罪よ。だからみんな皆、私が殺してあげたの」

仁美「じょ……冗談はやめてください!! そんな、馬鹿げた話……!?」

うーん? 何故かしら、志筑さんは信じてくれていないみたいね。

何か分かりやすい証拠でもあれば良いのだけれど……。

なぎさ「どうしたのですか、マミ?」

と、そこへお花摘みから帰ってきたなぎさが現れてくれた。

グッドタイミングね!

マミ「ねえなぎさ、昨日貴女が食べた男の子たちのことだけど、まだ残ってる?」

なぎさ「昨日の? うーん、骨の欠片くらいなら残ってるかもなのです」

仁美「は……?」

マミ「その中に上条くんって子は残ってないかしら? 彼女に見せてあげたいのだけれど」

なぎさ「上条くん? ああ、さやかのお友達の男の子なのですね!」

良かった、なぎさも覚えててくれたみたいね。

これなら話も早いわ、ふふ。

仁美「あ……あの……な、なにを……言って……」

なぎさ「ちょっと待っててください、今出すのです」

そう言うとなぎさはお口から巨大な黒い蛇のような『本体』を吐き出した。

仁美「ひっ……!?」

志筑さんはちょっぴりびっくりしちゃったみたい。

ふふ、初めて見れば驚くわよね。

なぎさ「うーん、こりぇ、かにゃ……」

そしてさらに、なぎさはその本体の口からデロリと球状の何かを吐き出す。

仁美「…………え」

マミ「あ! これこれ、この子だわ!」

それは見覚えのある顔だった。

仁美「あ……ああ……」

うん、間違いないわ。半分溶けちゃってて骨が見えちゃってるけど、間違いない。

私はそれを拾い上げると、志筑さんに差し出してあげる。

マミ「はいこれ、上条くんの頭よ」

仁美「上条、くん……?」

良かった、志筑さんにもわかってもらえたみたい。

マミ「ごめんなさいね、なぎさのせいで少し汚れちゃってるみたいだけど」

なぎさ「あ、酷いのですマミ! なぎさが汚いみたいな言い方しないでほしいのです!」

マミ「ふふ、ごめんなさい。そんなつもりは……」

なんて、私たちが他愛のないやりとりをしていると……。

仁美「い……いやああああああああああ!!」

突然、志筑さんは世界の終わりが来たかのような悲鳴をあげた。

マミ「どうしたの? 大丈夫?」

嬉しくなって感極まったという雰囲気ではない。

まるで狂ってしまったかのような、そんな凄絶な悲鳴だ。

仁美「いや、いやああああっ!! なんで、なんでこんな……ああああ!!」

マミ「志筑さん、落ち着いて! いったいどうしたの?」

急な豹変に私も戸惑いを隠せないけれど、何とか鎮めようと声をかける。

仁美「ち、近寄らないでください!!」

だが、志筑さんは明確な拒絶の言葉と共に後退り、私から距離をおいた。

明らかに普通の様子じゃないわ……どうしちゃったのかしら。

仁美「ひ、人殺しっ……! 化け物、化け物!! 悪魔っ! 近寄らないでください!」

志筑さんは半狂乱になって私たちを罵った。

さっきまでの上品な振る舞いとは真逆。まるで別人だわ。

別人……嗚呼、そっか。成る程。この子もそうなんだわ。

なぎさ「マミ、この子はもう手遅れなのです。きっと魔獣に毒されてしまったのです」

マミ「ふふ、貴女もやっぱりそう思う?」

なぎさ「はいなのです!」

なぎさが私と同意見だと分かって、迷うことは無くなった。

悲しいけれど、これも私達の使命だ。

仁美「な……何をする気なんです、や、やめてください……!」

マミ「ごめんなさいね、これが私達のお仕事だから」

仁美「お仕事……? あ、貴女達はいったい……?」

その問いにわざわざ答える必要性は感じられなかったけれど……

せっかくだし、答えてあげるとしましょうか。

マミ「私たちは……」

なぎさ「なぎさたちは……」





────魔法少女、よ。



とんだ道草を食ったせいで、家についた頃にはもう空は真っ暗だった。

マミ「ふぅ……晩ご飯どうしましょうか?」

なぎさ「なぎさはお肉はもう要らないのです」

マミ「そうよねぇ」

なぎさ「だからチーズが食べたいのです!」

……なぎさったらそればっかりなんだから。

なぎさ「チーズ! チーズ! マミ、なにか作って欲しいのです!」

マミ「……ふふっ♪ まったくもう」

正直なところ、今日はもうヘトヘトなのだけれど……

なぎさのためだもの、もうひと頑張りするとしましょう♪

さあて、何を作ろうかしら────



ほむら「そんなわけで二人は私の改編により紆余曲折を経て絆を深めて仲良くなったわ」

QB「紆余曲折の部分が気になるんだけど」

ほむら「二人の魔法少女は末長く仲良く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」

QB「あれ魔法少女なのかい? もう魔女っていうんじゃないのかい?」

ほむら「魔法少女よ」

QB「……うん」

ほむら「今回は魔法少女は死んでないみたいね」

QB「もう満足しただろう?」

ほむら「そうね、一段落ついたみたい」

ほむら「でもまた私の救済を必要とする魔法少女が現れたら、その時は……」

ほむら「また改編で何とかするとしましょう」

QB「…………うん」

ほむら「さあて、今日はもう帰って寝ましょ……」

ほむら「あら?」

QB「おや?」

かずみ「 」

ほむら「死んでるわ」

QB「死んでるね」

ほむら「どうやら巴マミに会いに来たら……」

ほむら「なぎさちゃんが嫉妬して、この子を殺してしまったみたいね」

QB「迂闊に近寄れないじゃないか」

ほむら「そうね、ヤンデレね」

ほむら「…………」

ほむら「どうしようべえやん」

QB「改編しなよ」

ほむら「とりあえず、今回は巴さんとなぎさちゃんが仲良くなりすぎたのが原因ね」

QB「そうだね、それ以前にいろいろ問題あるよね」

ほむら「だからやっぱり肉便器は止めましょう」

ほむら「よく考えたら色々犠牲が出てるし」

QB「良く考えなくても気づいてよ」

ほむら「そんなわけで二人の関係は異母姉妹という形にいったん戻しましょう」

QB「そこは改編したままなんだね」

ほむら「でも……それにしても」

QB「?」

ほむら「ねえ、思ったんだけど……いくらなんでもちょっと死にすぎじゃないかしら」

QB「君がそれを言うのかい、殆どの原因の君が」

ほむら「これは何か……こう、大きな力のようなものを感じるわ」

ほむら「何者かが、必ず誰かを殺すように世界を操っているかのような」

QB「頭大丈夫かい?」

ほむら「この世界線は、誰かの死によって収束するように出来ている……?」

QB「マジかおオカリン」

ほむら「きっと、何か黒幕のような存在がいるんだわ……」

ほむら「それを探り当てないと延々とこの死の連鎖が続くのよ、たぶん」

QB「可能性は否定しないでおくよ」

ほむら「だからここからは真相究明に動き出すとしましょう」

QB「急にジャンル変更かい」

ほむら「死の連鎖を引き起こしている黒幕……必ず私が突き止めてみせるわ」

QB「頑張りなよ名探偵ほむら」

ほむら「黒幕は>>245だということに改編するわ」

QB「ちょっと」

寝る。

さやか



さやか「この世界は間違っているんだ!! だからあたしが修正してやる!!」

ほむら「くっ、やめなさい美樹さやか!!」

さやか「いいや止めないよ! あたしは世界を元通りにするまで魔法少女を殺し続けてやる!!」

ほむら「何てことを……!」

さやか「ふふふ、次はそうね、なんか名前も良く分からない小巻さんとかいう子に犠牲になってもらおうかしら」

さやか「死因はおりりんの可愛さに魅了されて物真似をしちゃったところをおりりんに見られて恥ずか死するってところね」

ほむら「させないわ、そんなこと!」

さやか「ええい、黙りなさい!」

ほむら(このままでは美樹さやかを止められない、また誰かが命を落としてしまうわ……!)

さやか「さあ、死ぬが良いわ小巻さん!」

ほむら(くっ……もうだめなのっ……!?)

マミ「────待たせたわね、暁美さん!」

ほむら「巴さん!」

なぎさ「なぎさたちが力を貸すのです!」

ほむら「なぎさちゃん!」

織莉子「私たちも手伝います」

ほむら「おりりん!」

キリカ「彼女を倒さなければ落ち着いてライブも出来ないからね!」

ほむら「きりりん!」

杏子「まあ任せなよ。あの馬鹿はアタシがぶん殴って正気に戻してやる」

ほむら「杏子!」

ゆま「ゆまの搾りたてミルクをもっとみんなに飲んでもらいたいの!」

ほむら「うしさん!」

さやか「ふん、雑魚が何人来ようと無駄よ! あたしに適うわけないわ!」

ほむら「いいえ、やってみなければ分からないわ!」

マミ「さあみんないくわよ!」

なぎさ「はいなのです!」

織莉子「みんなの力を一つにあわせて!」

キリカ「美樹さやかをたおすんだ!」

さやか「……ふふふ、面白い。いいわ、相手をしてあげる!」

杏子「ふんっ! その余裕、いますぐぶっ潰してやるよ!」

ゆま「よし、いくぞー!」

ほむら(みんなの心が一つになっている……これならいけるわ!!)

ほむら「いくわよ美樹さやか!! たああああ!!」

ほむらの救済はこれからだ!!
ご愛読ありがとうございました!!

完!!

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月20日 (火) 21:39:35   ID: OIR40qQt

マミが人肉を食う描写を描いたり書いてる本人が一番の荒らしだった

2 :  SS好きの774さん   2015年11月15日 (日) 18:11:18   ID: FSXs8op8

おもしろ

3 :  SS好きの774さん   2018年09月23日 (日) 20:04:55   ID: nYfh-MRM

これでもかと原作に泥塗りたくってレイプしていくかのようなスタイル
途中からエロSSになっててうーんこの、悪くはないんだけど…おりキリとか下手に出すと大体乖離しすぎてて痛いことになってるからな
まだ関係とか明らかにされてない時期だからしょうがないとはいえ

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