菫「頼む、離してくれ……」 玄「……」(140)

菫「なぁ……ちょっと寒くないか」

玄「えー、菫さんお姉ちゃんに感化されすぎなんじゃないですか?」

菫「いや、やっぱり寒いって」


玄が同じ大学に入って最初の秋、私たちはラストまでバイトが入っている宥の帰りを待ちながら、宥と玄の部屋で酒盛りをしていた。
10時に店を閉めて、宥が上がるのは半ごろになる。
それからここまで来るのに、もう30分弱かかるから、11時まで待っていることになる。
今は8時、まだ当分待つことになりそうだ。

もっと近い場所でバイトを探せばいいのに、と言ったことはある。
しかし、寒がりの彼女が快適に働ける場所はそうそうないらしく、結局そのバイトを続けている。

明日は土曜日。
週末はいつもここの家に泊まることにしている。
そして日曜日は宥が私の家に泊まっていく。

そんな風にして私たちの生活は回っていた。


玄「とにかく、お姉ちゃんがいるときは電気代がかかってるんですから、居ない時には節約しないと」

菫「寒いものは寒いんだ……お湯余ってるか?」

玄「ありますよ、何割ります?」

菫「レッドで」

玄「はーい…………あ、すみません、切らしてました」

菫「なんだと」

玄「この間ブランデーケーキ作ろうとして、代わりに使っちゃったんでした」

菫「じゃあ暖房をつけよう、どんどん冷え込んできた気がする」

玄「芋ならありますけど、菫さん飲めましたっけ?」

菫「問題ない、それを」

玄「了解です、マグでいいですよね」


もうこんなに冷え込んできたのか。
カレンダーを見ながら、そういえば宥と付き合い始めてから、もうすぐ1年になるのだ、と思い出す。
去年はこの時期を、まだ寒いとは感じていなかった。
やはり玄の言うとおり、宥に感化されてしまったのだろうか……

玄「そういえばコレ、永水の人たちの職場の近くで作ってるんですよ」コポポポポ

菫「そうだったのか」

玄「夏休みに一人で行ってきたんですけど、いいところでしたよ」トクトク

菫「まああれだけ平均バストサイズがあればな」

玄「なんでそっちの話題になるんですか……」

菫「我が身を省みるんだな」

玄「私だっておもちばっかり見てるわけじゃないですよーだ」

菫「先輩が『玄ちゃんの目つきが怖い』って言ってたぞ」

玄「さぁ……錯覚じゃないですかね……はい、どぞ」

菫「うん……この香りがたまらないな」

玄「ですよね、照さんとかは嫌いみたいですけど」

菫「あいつはカクテルしか飲まないからな」

玄「たしかに、というかお酒あんまり飲まないですよね」

菫「だな……そういえば最近アイツと合ってるのか?」

玄「いえ、たまにこっちの部室に来てはいるみたいですけど……合同飲みの時にも来ないですし、なかなか話す機会が」


大学は別々だが、照も東京にいる。
玄と照はそれぞれ麻雀部に入っていて、その麻雀部同士、伝統的に交流があるようだ。
なので玄と照が接触する機会もありそうなはずなのだが、実際はそうもいかないようだ。
まぁ原因はだいたいわかっているが。

菫「たまには玄が向こうへ行ってみたらどうだ」

玄「えー、あんな魔窟に行くのはちょっと……そもそも私、インカレで勝ちあがろうなんて思ってないですし」

菫「いいじゃないか、向こうだってガチでやってるわけじゃない人もいるだろう」

玄「ぶっちゃけますと、目の保養にならないので」

菫「……鹿児島で煩悩を祓ってもらってくるべきだったな」

玄「煩悩ってお寺じゃありませんでしたっけ?」

菫「さぁ……」


照はこのおもち星人に惹かれてしまっているらしい。
どうもそれが原因で、顔を合わせられないようだ。
だが悲しいかな、照はお世辞にも胸がある方とは言えない。
可能性は絶望的だ。

玄「菫さんこそ、たまには打ちに来てくださいよ」

菫「興が乗らん」

玄「菫さんのファンだって娘たちが、私にせがんでくるんですよ」

菫「君は自分の姉の恋人を差し出すつもりなのか?」

玄「サッと来て、ちょっとサービスしてくれるだけでいいですって、こう、耳元で甘い言葉のひとつやふたつ」

菫「酔ってるだろ」

玄「そんなことは無いのです! 私まだシラフと変わりませんから!」

菫「酔っぱらいの常套句だな」

玄「菫さんこそ、だいぶ顔が赤いですよー」

菫「酔ってるからな」

チーン

玄「あ、ホイル焼き出来たみたいですね、とってきます」

顔、スタイル、家事スキルの高さ……玄のスペックはなかなかのものである。
それゆえに異性同性問わずに好かれているようなのだが、肝心の本人が胸にしか興味がない。
それどころか毎日宥の世話を焼くばかりで、青春らしい話をほとんど耳にしない。
姉(のようなもの)の立場としては、この時期にしかできないことを経験して欲しいのだが。


玄「なかなか美味しそうに焼けてますよ、コレ」

菫「本当だな……レモンのいい香りがする」

玄「ワインがあればいいんですけど、昨日全部使っちゃって」


特に話題もないためか、二人で黙々と鱒をつつく。
ほかにも酒の肴が欲しいところなので、話を振ってみることにした。


菫「なぁ、玄は今好きな人とかいないのか?」

玄「はい?」

「おまえは何を言っているんだ」と言わんばかりの仰天した表情でこっちを見てくる。
そんなにおかしな質問をしたつもりはないのだが。


玄「菫さんからそんなことを聞かれるとは……」

菫「なにか引っかかる物言いだな」

玄「そんなことより、菫さんとお姉ちゃんの話を聞かせてくださいよ」コポポポポポ

菫「いや……今更特に話すこともないだろう?」

玄「まぁまぁ、じゃんじゃん飲んで、普段話さないこととかを吐いちゃってくださいよ」コト


いつの間に手元から離れたのか、つい先ほど空になったばかりのマグが、お湯割りをなみなみと注がれて戻ってきた。
なにを……と言いつつ口を付けると、先ほどより幾分か強くアルコールが感じられた。
どうやら本気で酔わせようとしているらしい。

菫「こんなことをしても、話すことなんて何もないんだから、話しようがないぞ?」

玄「酔えば思い出すこともありますよ、ささ」

菫「そんなことを言われてもだなぁ、だいたいいつも宥から聞いているだろう」

玄「聞いてないこともたくさんありますよ、例えば……」

玄「日曜の夜のこと、とか」


体が一瞬硬直する。
顔が熱くなってるのは、酒のせいだけではないだろう。
バレていないとは思ってなかったが、ここまで直球勝負に出てくるとも思っていなかった。

玄「もしかして、隠せてると思ってたんですか?」

菫「いや……その……」

玄「別に隠すようなものでもないでしょ? お酒が入れば猥談のひとつやふたつ、でない方がオカシイですって」

菫「私は玄ほど恥じらいを無くしてはいないんだよ……」

玄「ならもっと飲みましょうよ! ほらほらぁ!」トクトク


飲みかけのマグに焼酎を流し込んできた。
慌てて押し返したものの、既にだいぶ量が増えている。
そっと口をつけてみると、ほとんどストレートと変わらない、ぬるい液体が舌を刺激した。


菫「お前……」

玄「そんな顔しないでくださいよー、ほらお湯入れてあげますから」


注ぎ足してもらったが、多少温度が上がったくらいで、あまり変化はない。
諦めてこのまま飲むことにした。

菫「自分の姉の……その、情事の話を聞きたがるなんて、不健全じゃないのか」

玄「未成年で酒浸りな時点で、既に不健全ですし」

菫「はぁ……」

玄「っていうか、私『日曜の夜のこと』としか言ってないんですけど」

菫「……あっ!?」

玄「ちょろいですね、案外」


顔が真っ赤になるのがわかる。
急に気まずくなったような気がして、ひたすら酒を煽る。
その間も、玄は的確なタイミングで次の酒を注いでくれる。

気がついたら、最近では滅多にこないところまで酔が回っていた。

玄「菫さん、流石に飲みすぎですよ」

菫「酔わせたのはぁ、君だろぉ……」

玄「ああもう、横になっていいですから……この座布団も使っていいですよ」

菫「んん……」


横になって電源の入っていないこたつに体を滑り込ませる。
下半身が少し寒い気がするが、気になりはしない。
少しすると、玄がとなりのスペースに入り込んできた。
モゾモゾと動くたびに、私の体と擦れ合う。


玄「もう今日はここで一緒に寝ちゃいます?」

菫「風邪ひくぞ……」

玄「寝てる本人がなにいってんだか」

だって、こんなところで寝てしまっては体に悪いに決まってる。
それに歯も磨いていないし、風呂にも入っていないから、化粧もそのままだ。
でもとりあえず今はこうしていたい。
宥が帰ってきたときにでも起きればいい。


玄「ねぇ……さっき好きな人のこと、聞いてきましたよね」


そういえばそんなことを聞いたきがする。
話の種に振って見ただけだが。


玄「私、菫さんのこと好き、ですよ」

菫「私も好きだぞ……」


うん、嘘は言っていない。
それよりも、そんなすぎた話はやめて、少し黙っていて欲しい。
今まさに、気持ちよく眠れそうなところなのだから。

玄「多分、違う意味だと思いますけど……」ギュ

菫「んぅ……」

玄「まぁ、言質は取った、ということで」


唇に柔らかいものが当たる感触がした。
少し息苦しいが、嫌いではない。
それに、今は指先を動かすのすら面倒だ。


玄「……抵抗しないんですね」

玄「……しちゃいますよ?」


何をするというのか。
もう放っておいて欲しい。

何かが、服の下に滑り込んでくる感じがする。
おそらく手だろう。
腹から胸の方へ、ゆっくりと肌をなぞりながら上昇してくる。
ブラを上の方へ上げられた。

少し冷たいソレは、私の左の乳房をそっと、持ち上げるように揉み始めた。
心地いい。
今度はその手が右胸に移動する。
同じように揉んでいたようだが、その手が徐々に先端へと向かってゆく。


菫「んっ」


甘い感覚が走った。
睡眠を妨げるような甘い刺激が。
正直言って鬱陶しい。
早くやめさせたいので、体をよじらせた。


玄「あれ……ここまで来たのに、今更あとには退けませんよ?」


そんなことは知らない。
私は眠いんだ。

手はなおも乳首を刺激してくる。
息が荒くなってくるのが分かる。
どうやらこの手は満足するまで動きを止めないつもりらしい。
ならば、この状況を早く終わらせなくてはならない。


菫「早く、終わらせてくれ……」

玄「……いいんですか? しちゃいますよ?」


そのまま黙っていたら、下半身にも手の感触が。
手はまっすぐ、秘部へと伸びてきた。


玄「びっくりです、準備万端だったんですね」


指がクリトリスをこすってきた。
その瞬間、背筋をゾクゾクとしたものが駆け抜ける。
手は止まらず、クリを擦る指はそのままに、ほかの指を内部へ侵入させてくる。
指は内部をうろうろしていたが、やがて自慰でしか刺激したことがない、私の急所を的確に責め立ててきた。

背中が丸まって、刺激に耐えようとする。
しかし、私の反応に気をよくしたのか、指は勢いを増してゆく。

くる――

次の瞬間、下腹部から波が沸き起こり、全身の筋肉が硬直する。
頭が真っ白になり、呼吸が荒くなる。
それと同時に、初めてとも言えるかもしれない、多幸感が押し寄せてきた。
こんなに気持ちいいのは初めてだった。
宥とはいつも――

そう思ったところで、抱きしめられる感じがした。
ちょうどいい圧迫感が、私を眠りに誘う手助けをする。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夢であってくれ――そう思わずにはいられない。
しかし、先ほど触れた自分の下着を思い出し、現実であることを再確認する。

ちょっと風呂へ

朝になって宥に起こされた私は、今シャワーを浴びている。
宥が帰宅したとき、私と玄は既にコタツで眠りに落ちていたらしい。
そのまま布団を重ねがけして、朝まで寝かせておいてくれたのだという。


菫「……あぁぁ」


思わず頭を抱える。
抱えたくもなる。
昨晩の記憶ははっきりと残っていて、私自身に言い逃れを許さない。
恋人の妹と、恋人が愛用しているこたつの中で……


菫「……死のう」


思わず口から溢れ出る。
しかし、現実的な選択肢の一つではある。
こんな罪悪感を抱えたまま、彼女と付き合っていける自信がない

それにしても、玄はなぜあんなことを……
私のことが好きだと言っていたが……

唐突に、玄の指の感触がよみがえってくる。
ゾクリ、と背筋が震える。
何が理由かはわからない。
しかし、彼女の指は、間違いなく今までの人生で一番の快楽を、私にもたらした。


菫「くっ……」


邪な考えを振り払おうと、シャワーの温度を一気に下げた。
冷水が体中に降り注ぐ。


菫「きゃあああ!?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


宥「菫ちゃん……いくらなんでもこの時期にお水は無茶だよぅ……」

菫「済まない……」

玄「菫さん、まだ酔が覚めてないんですか?」


そう言いながら、玄はフライパンを煽っている。
今朝の朝食は、焼きそばのようだ。
正直言って、酒浸りになった胃袋には少しきつそうだ。


宥「そうだ、あのね菫ちゃん」

菫「ん? なんだ?」

宥「今日の夜から、友達の家でお泊まりすることになって……」


私はアーチェリー部、宥は植物愛好会。
互いに接点のない友人も多いので、こういうことはよくあることだ。


菫「別に構わないさ、行ってくればいい」

宥「本当? ありがとう!」


この笑顔を見るたび、彼女が私のパートナーで良かったと思う。
同時に、昨晩のことを思い出し、胸がキリリと痛む。

宥「菫ちゃんはここに泊まっていってもいいから、玄ちゃんをよろしくね」

菫「ん……ああ……」

玄「菫さんのお世話は私がしっかりするから、お姉ちゃんは安心してね」


一瞬、玄の目に妖しい光を見たような気がする。
気のせいだろうか……


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


午前中は家でゴロゴロして、午後は借りてきた映画を見た。
いつもどおりの和やかな休日。
だが、私の心中は常に罪悪感に苛まれていた。

なぜあのようなことになってしまったのか。
玄の真意はどこにあるのか。
結局何も進展しないまま、夕方になり、宥は出かけていった。


玄「二人きり、ですね」

菫「そう、だな……」

腹が……減ったんです……
八時半までには戻ってくるので…

気まずい沈黙。
いや、気まずいと思っているのは私だけかもしれない。
玄はさっきから私のことをじっと見つめている。

目を合わせられずに、何か話題を探し続ける。
が、無理だった。
現状を打開する方法がない。
私は、逃げることにした。


菫「……ちょっとやっておきたいことがあるんだ、宥にはああ言ってしまったが、今日はもう帰らせてもらうよ」


そう言って、立ち上がろうとした。


ギュ

菫「頼む、離してくれ……」

玄「……」


背後から無言で抱きついてくる玄。
抱きつかれたことよりも、その無言のプレッシャーが私を絡め取り、自由を奪う。

玄「菫さん……お姉ちゃんに満足させてもらってますか?」

菫「なに……を」


何を言っているか、それは検討がついた。
だが、どう返答していいかがわからないので、適当な言葉でお茶を濁そうとした。


玄「お姉ちゃん、マグロなんじゃないですか?」


やはりそういう話題だったか。
確かに、宥はネコで、しかもそういうことを特別好んではいないようではある。
しかし嫌っているというわけでも無いようで、毎週の情事は、照れながらも続けさせてくれている。
そう、私がしたいから、付き合ってくれているのだ。

自分でも、私が性に貪欲な面があるということはわかっている。
表には出していないが、したり、そしてされたりすることに対して、人並み以上の関心があるということは自覚している。
宥と付き合っていて、ようやく確信を持てたのだが。

宥を抱くことに関しては、そこそこ満たされている。
激しく喘ぐ宥が見たくないわけでもないが、そこまでのことは求めていない。

問題は、私がずっとタチだということだ。
宥を抱いたあと、密かに自分で処理をしてはいるが、やはりそれだけでは物足りないものがある。
昨日の夜の過ちは、そういった鬱屈したものがあったから、犯してしまったものだと言えるのかもしれない。

無論、自分の行いを正当化するつもりなどはないが……


玄「私なら、菫さんを気持ちよくさせてあげられますよ?」

菫「……いらん」

玄「そうですか? 昨日の菫さん、すっごく気持ちよさそうでしたけど……」

菫「気のせいだ」

玄「ねぇ……見てください、私の指」

玄「結構長いんですよ、昔は「ピアニスト向きの指だ」なんて言われてたんですけど」


そう言いながら、私の目の前でゆっくりと指を動かす。
その動きが何を意味しているか、今の状況でわからないはずがない。
思わず唾を飲んでしまう。
下腹部がわずかに熱を持つ。

玄「舌でも、してあげますよ……こんなふうに」


首筋を濡れたものが這ってゆく感触がする。
じわり、じわりと快楽の気配が忍び寄ってくる。
抵抗しなければいけないと、わかってはいる。
わかっては……


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


一度体を許してしまった、その事実が重い。
あと1度くらいなら……という姑息な考えが、私をここに留めさせた。

ベッドまで連れて行かれ、押し倒される。
だが違和感を覚える。
ここは玄のベッドではなく、宥のベッドだ。


玄「お姉ちゃんのベッドじゃ、嫌ですか?」

菫「……玄のベッドじゃダメなのか」

玄「ダメ、です」


口を口で塞がれる。
私を貪るように、玄の舌が入り込んでくる。
上顎をチロチロとくすぐられ、肩がこわばる。

気づかないうちに、私の方からも舌を絡ませていた。
時折漏れる二人の吐息が、私を高ぶらせてゆく。

そうしながらも、玄の手は私の衣服を少しずつ剥ぎ取ってゆく。
だが、ここまで情熱的な口づけをしたことがない私は、そんなことに気を配っている余裕などなかった。
宥とは、唇が触れ合うだけのキスしかしたことがない。

玄の口がゆっくりと離れてゆく。
無意識のうちに、玄から離れまいと、舌を伸ばしながら玄の顔を追いかけてしまった。
途中で気づき、慌ててベッドに頭を落とす。


玄「ふふ……そんなに気持ちよかったですか?」


頭が沸騰しそうなほど熱い。
目をそらすと、私の体が視界に入った。
前ははだけられ、スカートは取り払われている。


玄「シワになっちゃうとマズイですから、ちょっと脱いでくださいね」


玄のなすがままに、残りの衣服を脱がされてゆく。
一糸まとわぬ姿になった自分が、部屋の隅の姿見に写っている。
宥の部屋、宥のベッドの上で、宥ではない人間に……

急に忘れかけていた罪悪感が蘇る。
今なら、まだ、引き返せるかもしれない。


菫「な、なぁ……やっぱりやめにしないか……」

玄「今更何を言ってるんですか? ここまで来て」

菫「やはり……私には宥がっ!?」


突然足を持ち上げられ、下半身がベッドから離れる。
玄の両肩に私の太ももが乗せられ、それを腕でホールドされている。
足をばたつかせ逃れようとするが、本格的に暴れる前に、玄の口が私の性器を捉えた。


菫「ひぅ!」


舌が突起をねっとりと責め立てる。
体をよじろうとするが、不自由な体勢のためうまくいかない。
無駄な抵抗をしているあいだにも、繰り返し舐め上げられ、さらに、吸われながら軽く歯を立てられてしまう。


菫「やめっ! ひ、ひゃああああ!!」

衝撃が体を駆け巡った。
そして一気に脱力した私は、同時に膀胱が緩んでしまうのも感じた。
このままでは宥のベッドが……
頭では理解していても、止めることはできなかった。

が、私の予想は裏切られることになった。
玄が口をつけたまま離れず、私のソレを飲んでいるのだ。
思わず目を見開き、叫んでしまう。


菫「なっ! やめ、やめるんだ!」

玄「んっ……もう、終わっちゃいましたよ」


信じられない。
まさか飲んでしまうとは。
突然の事態に混乱して、身動きがとれなくなる。


玄「あれ、引いちゃいました? でもおもらししたのは菫さんですよ?」

玄「……って、聞こえてなさそうですね」

玄「じゃあ、もう一回口でシてあげますね」

先ほどの体勢を保ったまま、何か喋っていたかと思うと、再び玄は性器に口をつけた。
今度は突起ではなく、穴の方に舌をすべり込ませる。
呆然としていた頭が、ようやく活動を再開する。
だが、既に送り込まれ始めた快感には抗えなかった。


菫「くろっ……もう……いい、からっ……!」


口ではそんなことを言ってはいるが、体は悦んでいるのがわかる。
喘ぎながらも、今の状況を冷静に見ている部分があった。

玄の舌が、昨日見つけられてしまった弱点をつつく。
指とは違う、和らいかい感触によって、異なる刺激が与えられる。
両手で頭を抱え、体をひねり、絶頂の衝撃をやり過ごそうとする。


菫「くううぅ……うぐっぅ……」


必死で押し殺そうとした声は、悲痛な叫びのような音で、口の端から漏れ出してしまう。

玄「声、我慢しなくてもいいんですよ?」

菫「はぁっ……もうっ…………いいだ、ろ……」

玄「え、まだまだこれからですよ? 今、前菜が終わったとこですから」

玄「もっと、もぉっと、気持ちよくなってくださいね」

菫「そんな……こと……」


玄が私に覆いかぶさってくる。
抵抗する気力も体力も、もう残っていない。
それに何より、ここから先の展開に対しての興味もあった。
思考がどんどん浅ましくなっているのはわかっている。
だが、もう後には退けないのなら、今だけは……

胸を舌が這っていく。
徐々に頂点へ近づく。
あと少しで、乳首へ――

そこで舌は軌道を変え、鎖骨の方へ過ぎていってしまった。
訪れるであろう衝撃に備えていた私は、一瞬戸惑いを露わにしてしまった。


菫「え……」

玄「あれ? 期待してたんですか?」

そんなこと……と言おうとして、思いとどまる。
こんなところで意地を張って何になるのか。
きっとここで強がっていしまえば、玄は私が懇願するまで、肝心な部分は責めてくれないだろう。
ならば、早く折れてしまったほうがいいのではないか……


菫「期待……してた……だから……」


玄が驚いた表情をする。
こんなことを言うとは思っていなかったのだろう。


玄「素直ですね……やっぱり気持ちいいのが好きなんですね」

菫「頼む……」

玄「でも、そんな顔をしてオネダリされちゃうと……もっといじめたくなっちゃいますよ?」


そう言って、玄は私の性器に手を伸ばした。
入口に指が触れる。
しかし、中には入らずに、ただ周辺をなぞることしかしてくれない。

胸も、肝心な部分には触れず、ひたすらその周囲を舌で愛撫されるだけだ。
もう片方の胸も、揉まれるだけで乳首には触れてこない。

徹底的に私を焦らせるつもりのようだ。

菫「くろっ……お願いだから……」

玄「かわいい……可愛いですよ、菫さん」


そう言いながらも、先へ進めようとはしてくれない。
乳首がこれ以上ないくらい勃っているのがわかる。
下半身も濡れに濡れている。
こんな生殺しの状態、いつまで続けられるのだろうか。


菫「はぁっ……はぁっ……」

玄「切ないですか? 菫さん」

菫「切ないよぅ……だから……おねがいぃ……」

玄「……まったく、淫乱さんですね」


突然、乳首が刺激される。
待ち望んだ感覚に、思わず大きな声を上げてしまう。
舌ではねっとりと愛撫され、指ではクリクリを摘まれ、先端を爪で軽く引っかかれる。
これだけでイってしまいそうだ。

しかし、それだけでは終わらない。
性器を撫で回していた指が、中へと侵入してきた。
焦らしに焦らされた私の体は、それだけで3度目の絶頂に達してしまう。


玄「あれ……早いですね」

玄「でも、これからですよ」


そう言って指をさらに深くまで入れてくる。
そして、先ほど舌で刺激してきた弱点を、執拗に責め立ててくる。


玄「ふっくらしてますよ……ここ。感じるってことは、自分で開発してたんですよね」


玄の言葉に反応する余裕がない。
下半身が震え、思うように動かなくなる。
まるで、玄に支配されてしまっているようだ。

押して、擦って……玄の指の動きには容赦がない。
たまらず、4度目の絶頂を迎える。
しかし、それでも玄の動きは止まらない。

菫「イった! イった、からっ……やめ、一旦……止めてぇ!」

玄「ナカはまだまだイケますよ、もっと頑張れば、もっと気持ちよくなれますから」

菫「死んじゃうっ……だめっ……むりっ……!」


もう既に、絶頂の境界線がわからなくなっている。
今の私には、私の中で蠢く玄の指の感触が全てだった。
中の壁を、まんべんなく擦ってゆきながら、肝心な場所への刺激も施される。
全身の筋肉が今にも攣りそうで、腕は枕を抱き寄せ、声を漏らすまいと顔に押し当てている。

どれくらいの時間が経ったのだろうか。
既に話すことも億劫になるほど、体力が奪われてしまった。
ようやく無慈悲な指の動きが止まり、全身から力が抜け落ちる。

しかし、玄の指は抜かれず、さらに奥へと侵入してくる。
奥に指が当たる感じがした。


玄「うーん、流石にこっちはまだ開発できてないみたいですね」

玄「私がしっかり感じられるようにしてあげますから……そしたらもっと気持ちよくなれますよ」


そう言って、再び指を動かし始めた。
何か今までとは違う、何とも言えない感覚がある。
既に為すがままにされていた私は、荒く息を付きながら、ただ玄に身を委ねるしかなかった。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


照「なんか、ちょっと見ないあいだに変わったね」

菫「何がだ」

照「菫が」

菫「気のせいだろ」


久しぶりに照と会って、昼食をとっている。
しばらく他愛ない近況報告をした後、このようなことを切り出してきた。


照「なんか、こう……女性らしくなったというか、色っぽくなったというか」

菫「……何を言っているんだか」

照「本当だって、なんなら淡に会って聞いてみようよ」

菫「アホらしい……」


一瞬心拍数が和了った。
玄から「女性ホルモンが~」という話を聞いていたせいだ。

照「そういえばさ、菫は宥さんのところにしょっちゅう行ってるんだよね」

菫「まぁ、付き合ってるしな」

照「その……妹さんとは、仲いいの?」


カップに入った紅茶の水面が、激しく波打つ。
予想していた問いだとはいえ、動揺を完全に隠すことはできなかった。
もっとも、照はそれに気づいていないようだが。


菫「まぁほどほどにはな、悪くはない、といったところだ」

照「そっか……」

菫「いい加減、自分から声をかけてみたらどうだ」

照「……う」

菫「待ってるだけじゃ、事態は何も変わらないぞ」

照「うん……」


最低だな、私は……

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


照と分かれて家に帰ると、玄関に見慣れた靴があった。
メールで届いたとおり、既に家に来ていたようだ。


玄「おかえりなさい」

菫「ただいま」

玄「早かったですね……期待して、急ぎ足で帰ってきちゃったんですか?」


何も答えられない。
図星だったからだ。


玄「顔が赤いのは、走ってきたからですか? それとも……ふふ」

玄「スカート、あげて見せてください」

菫「ああ……」


両手でスカートを持ち上げる。
下には何も履いていない。
そう命令されたからだ。

玄「もう溢れてるじゃないですか……こんなに楽しみにしててもらえたなんて、嬉しいですね」


玄の指が、ズプリと入ってくる。
半開きになった口から吐息がこぼれ、膝が笑う。


玄「一回イクまで座っちゃダメですよ? 座っちゃったら今日はもう終わりですから」


回を追うごとに、玄のサディスト的な面が強くなっていくように思える。
しかし、私自身それを歓迎していた。


玄「うわ、もう完全に子宮下りてきちゃってますよ……これならすぐにイケそうですね」


玄によってボルチオまで開発された性器は、既に充血しているようだった。
奥がコリコリと弄られるのが分かる。
淫らな音を響かせながら、玄の指が私を蹂躙する。

もはやいつ崩れ落ちてもおかしくないほどの快楽で、体が満たされてゆく。
開いた足を内股にし、なんとかこらえる。

菫「あっ……あっ……ああ!」

玄「もうちょっとですね、イったらこっちに倒れてきてもいいですよ」

菫「らめっ……あふぅ……ふあぁぁ!!」


膝が伸びきり、体が強ばる。
そして一気に脱力し、玄に抱きつくようにして倒れこむ。


玄「わっ……っと、可愛かったですよ」

菫「はぁ……あぅ……」

玄「お姉ちゃんにはお友達の家に泊まるって言ってきましたから……今日はたっぷり楽しみましょうね」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


玄「ただいまー」

宥「あ、玄ちゃんおかえり~」

玄「はい、これ今回の」

玄「お姉ちゃんがリクエストした玩具も、ちゃんと使ったから」

宥「ありがと~、玄ちゃん」

玄「じゃあ私部屋で休んでるから、終わったら来て、ね?」

宥「うん……わかったよぉ」

ガチャン

宥「……」カチッ

宥「……」カチカチ

キョウハコレツカイマショウ
ワカッタヨ……
ノリキジャナイヨウニミエテ モウジュンビバンタンデスネ
アアアァッ!!

宥(あはぁ……菫ちゃんが……玄ちゃんに……私以外の人に)ソクソクッ

宥(菫ちゃん……菫ちゃん……)クチュクチュ



誤爆しまくるし誤字あるしもう死にたい

本当にすみませんでした…

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