~マミの家~
マミ「ま、まあ、なぎさちゃん、確かに間違いじゃないんだけど…」
マミ「もう一つ思い出すことないかしら?」
なぎさ「う~ん」
さやか「小学生だし、知らないっかあ」
杏子「なあなあ、豆なんて甘くもねーし」
杏子「まくなら、ブラックサンダーでもまこうぜ」
杏子「安いし、うまいし、当たってもいたくねーし、豆より絶対いいって!」
まどか「うぇひひっ、杏子ちゃんったら」
ほむら「……」
ほむら(どうして私がこんなのに参加させられてるのよ…)
ほむら(まどかのためとは言え…悪魔であるはずの私が…)
ほむら(私は悪魔…悪魔は孤独、孤独で当然なのに…!)
さやか「それで、結局なんなんですか?マミさん」
さやか「節分で、もう一つ思い出すことって」
マミ「恵方巻きよ、みんな食べたことあるでしょ?」
さや杏なぎ「ああ…!」
……
さやか「ん?」
杏子「んだそりゃ」
なぎさ「なんなのですか?」
まどか「うぇひっ、実は私もよく…」
マミほむ「…え?」
マミ「あ、暁美さんは、知ってるわよね?」
ほむら「も、もちろんよ…」
ほむら「あ、あなたたち、本当に知らないの?」
さやか「あたしは、ピンときてないだけで、知ってましたけどね~」
さやか「あははは、毎年節分に食べてたあれって、恵方巻きって言うんだ~」
ほむら「それって、知らなかったってことじゃない」
杏子「…ああ、あれな!アタシも今思い出したよ、でもアタシん家は、キリスト教だったからな~」
杏子「だから、わからなかったのさ~」
ほむら「…関係ないと思うわ、それは」
マミ「まあ、なぎさちゃんは、まだ小学生なわけだし…」
マミ「知らなくて当然といえば、当然かしらね」
なぎさ「食べ物なのですか?」
マミ「ええ、節分にはその年の恵方、つまり神様がいる方向に向いて」
マミ「太巻き寿司を食べるのよ」
マミ「それで、今年一年の幸せを願うの」
なぎさ「そんな行事があるんですかあ」
まどか「そういえば、前に日本にいたころにママがそんなことを…」
ほむら「まどかは知らなくて当然だわ、3年間もアメリカにいたんですもの」
さやか「んで、マミさんからその話題を持ち込むと言うことは…」
さやか「その、恵方巻き、準備してるんですか?」
マミ「ええ、もちろんよ」
さや杏「やったああ!」
なぎさ「なぎさも食べたいのです!」
杏子「さすがマミだぜ」
まどか「いつもすいません、マミさん…」
マミ「いいのよ、あなたたちは、私の大事な後輩なんだから」
マミ「それに、私の家にいつも来てくれて、私だってとっても嬉しいわ」
まどか「マミさん…」
ほむら「……」
ほむら(相変わらず、私たちがいないと友達いないのかしら…)
マミ「ちょっと、待っててね」
マミ「今、持ってくるから」
さや杏「恵方巻き♪恵方巻き♪」
まどか「うぇひっ、さやかちゃんも杏子ちゃんもはしゃいじゃって」
マミ「お待たせ~」
さや杏まどなぎ「おお~」
まどか「鬼はそとー。」
ほむら「悪魔も外に行かないと駄目かしら?」
さやか「って、なんかイメージと違うくないですか?」
杏子「これって…」
まどか「…ロールケーキ?」
なぎさ「なのです!」
マミ「そう、私特製の恵方ロールケーキよ」
さやか「おお、てっきり巻き寿司を想像してたけど、これはこれでおいしそう!」
まどか「うんっ!こんなの作れるなんて、マミさん、やっぱりすごいですっ」
杏子「マミ、最高だぜ…アタシは今、猛烈に甘いものが食いたかったんだ…!」
なぎさ「チーズは入ってるのですかっ?」
マミ「なぎさちゃんには特製のチーズたっぷりのがあるわよ」
なぎさ「やったです!!」
ほむら「…結構、量あるわね…」
杏子「このくらい余裕っしょ」
さやか「そうそう、余裕余裕~」
ほむら(この2人の前で言った私が馬鹿だったわ…)
まどか「うぇひっ、私も全部食べれるかなあ」
マミ「いい?みんな、恵方巻きを食べるときには、ちゃんとルールがあるのよ?」
マミ「まず、いくら量が多いからって、切って食べてはダメよ?」
マミ「これが切れてしまうと、それは縁が切れちゃうって意味みたいだから、これは一番重要ね」
マミ「それと、今年の恵方は東北東よ」
マミ「東北東を向いて、黙ってお願いごとをしながら、黙々と全部食べるの」
マミ「しゃべると運が逃げていってしまうらしいわ」
さやか「うわ、それって結構キツくないですか?」
まどか「私も、心配かも…」
杏子「そんなの余裕っしょ」
なぎさ「やってみるのです!」
ほむら(どうして、こんなくだらない風習に私が付き合わされなきゃならないのかしら…)
ほむら(…でも、もしかしたら…これは、まどかと…)
ほむら(ポッキーゲームのように恵方巻きで…!)
ほむら(って、何考えてるのよ…!私は!)
ほむら「ま、まどか、私と半分こしましょ?」
まどか「えっ、で、でも…」
マミ「半分こなんかしたら、それは縁も半分こずつになってしまうわよ?暁美さん」
ほむら「…くっ」
ほむら(巴マミ…あなたも私の邪魔をするつもり…?)
ほむら(…いえ、でも冷静になってよく考えてみたら…)
ほむら(ポッキーゲーム感覚で、恵方巻きを両端から食べるなんて…それはそれで、シュール過ぎるわ…)
ほむら「…や、やっぱりやめましょうか…まどか…」
まどか「う、うん…」
マミ「じゃあ、みんな準備はいい?」
マミ「今年の方角は、東北東よ」
マミ「ええっと…こっちみたいね」
さやか「ちょっと、杏子、あんた自分だけ余裕だからって」
さやか「ちょっかい出したり、笑わせたりすんのは禁止だかんね」
杏子「わかってるって~んなことしねーよ」
マミ「じゃあみんな、せーので、食べるわよ?」
まどか「うう…大丈夫かなあ」
さやか「あ、手に取ったら思ってたより小さいじゃん」
なぎさ「チーズが入ってれば大丈夫なのですっ」
杏子「さっさと食いてえ」
ほむら「……」
ほむら(…どうして、巴マミはたかが、節分というイベントをこんなに大げさにしたりするのかしら)
ほむら(くだらなすぎるわ…でも、まどかに誘われて来たんだし…)
ほむら(まどかは私がみんなとも仲良くするのを望んでいるわ…)
ほむら(ここで、私が空気を読まないような発言をするのはNGね…仕方ないわ)
ほむら(くだらないお遊びだけど、付き合ってあげましょう…)
マミ「じゃあ、いいわね」
マミ「せーのっ」
まどか「…んっ」
カプッ
さやか「……」
ガプッ
杏子「…」
ガブリ
なぎさ「…ん」
カプッ
マミ「……」
ガブッ
ほむら「……」
ガプッ…
モグモグ…
………
ほむら「……」
モグモグ…
ほむら(みんな意外と余裕ね、まあ量も思ったほど多くないようだし…)
ほむら(私も余裕かしら)
ほむら(さて、それじゃあ、あなたたちの滑稽な姿でも見せてもらおうかしら…)
ほむら「……」
チラッ…
ほむら「!」
ほむら「ぼふっ!」
みんな「!」
さやか「え!?ちょっ!」
さやか「って、うわっ!」
まどか「ん…んんっ!」
モグモグ…
まどか「…ぷはあ」
まどか「もう息がもたないよ…」
杏子「なにやってんだ、オメーら」
マミ「…どうしたのよ、暁美さん」
なぎさ「……」
モグモグ…
捕手。
ほむら「…っ」カアア…
ほむら(ま、ままどかの…ケーキを口いっぱいに咥えて、少し苦しそうにしてる姿が妙に…!)
ほむら(ふ、不覚だったわ…)
ほむら(というか、私は何考えてるのよ!)
まどか「えぇ?どうしてほむらちゃん、顔赤くしてるの?」
ほむら「ち、ちち違うのよ…別に…」
さやか「ああ~わかった~」
さやか「ほむらの奴、ケーキ咥えたまどか見ながらイヤらしいこと考えてたんでしょ~」ニヤニヤ
ほむら「ち、違うわ…!」
マミ「…どうしてケーキ咥える姿がイヤらしく見えるのよ、暁美さんも不思議ね」
杏子「つか、オメーら食べ物粗末にすんなよな!」
杏子「ちゃんと食えよ!」
さやほむ「すいませんでした…」
マミ「もう…まったく、これで、誰一人全部黙って食べれなかったじゃない…」
モグモグ…ゴックン
なぎさ「ぷは、全部食べたのです!」
マミ「あら、さすがね、なぎさちゃん」
まどか「なぎさちゃん、すごい!」
さやか「あ~あ、ホントならあたしも全部食べてたのにな~」
杏子「ま、もういいから、普通に食おうぜ」
マミ「それもそうね」
マミ「…ごめんなさいね、みんな…私がこんな提案したばっかりに」
さやか「べ、別にマミさんは悪くないですよ!」
まどか「そうですよ!」
まどか「それに、こんなに楽しい節分は私、初めてでとっても嬉しいですっ」
マミ「鹿目さん…」
さやか「まどか…」
ほむら「…まどか」
さやか「でも気をつけてよね、ほむら」
ほむら「わ、わかってるわよ…別に私は何も…!」
ほむら(今回ばかりは私の不覚だったわ…)
ほむら(美樹さやかに何を言われても…言い返せないわね…)
モグモグ…
まどか「普通に食べてもおいしいですね、このロールケーキ」
マミ「ええ、腕を奮って作ったんだから」
なぎさ「マミの作るものはなんだって、おいしいのです!」
まどか「でもマミさん、6人分になると材料とか結構かかったんじゃないですか?」
マミ「まあね…でもいいのよ、あなたたちとこうして楽しい時間を過ごせるなら」
マミ「別にちょっとのお金なんて惜しくないわ」
さやか「…ああ、お金の話はちょっと…」
マミ「あら、どうかしたの?美樹さん?」
まどか「…あ、ご、ごめん、さやかちゃん」
杏子「マミには、話してなかったのか?」
ほむら「?」
マミ「財布でも落としたの?美樹さん?」
さやか「いやあ…実はあ、お年玉をなくしちゃいましてえ…」
マミ「そうなの?それは大変ね」
ほむら「!」ギクッ
ほむら(……なんだか、雲行き怪しいわね…この展開)
マミ「…どこでなくしたの?」
さやか「それが…家なんですよ」
マミ「よく探してみた?」
さやか「はい、家中探したんですけど…」
杏子「アタシも手伝ったんだけどさ、ホント見つからないんだわ」
マミ「そうねえ…でも、そういうのって、ふとした時に出てくるものよ」
ほむら「そ、そうよね、わ、私もよくあるわ…」
まどか「でも、お年玉ないと今の時期はつらいよね…」
さやか「そうなんだよ~さやかちゃんの経済状況は大不況中なんだよ~まどか~」
杏子「でもさ、あんだけ探して見つかんないってなると、誰かが盗んじまったんじゃねーか?」
ほむら「!」ゴホッ!ゴホンッ!
まどか「どうしたの?ほむらちゃん、大丈夫?」
ほむら「……え、ええ、大丈夫よ」
ほむら(ま、まずいわ…!この状況…!)
マミ「泥棒なんて物騒ね…」
さやか「いやいや、それはないって!だって泥棒だったら、もっといろいろ盗むでしょ」
杏子「確かに、盗られたのはさやかのお年玉だけだもんな~」
まどか「でも…どんな理由があっても、人のもの勝手に盗むなんて最低だよ…」
ほむら「!!」
ほむら「……」グサーッ!
ほむら「……」
ほむら(ああ…もうダメだわ…)
まどか「え?ほむらちゃん?大丈夫!?」
杏子「コイツ、さっきから様子おかしいぞ」
さやか「……」
さやか(もしかして…)
______
まどさや杏「お邪魔しました~」
マミ「ええ、またいらっしゃいね、みんな」
なぎさ「なぎさは泊まっていくのですっ」
ほむら「…お、お邪魔しました…」
マミ「大丈夫?暁美さん、さっきから顔色悪いわよ?」
ほむら「…大丈夫です…」
…ガチャ
バタン
さやか「あ~ごめん、杏子、悪いけど先に帰っててくんない?」
さやか「あたし、買い物頼まれてたんだ」
杏子「へいへーい」
スタスタ…
さやか「ちょっと付き合って、あんた」
ほむら「…あっ」
~見滝原市内~
スタスタ…
さやか「……」
ほむら「……」
さやか「あんたでしょ、あたしのお年玉盗ったの…」
ほむら「!」
ほむら「……ご、ごめんなさい」
さやか「…あーあ、やっぱ、あんたは悪魔なんて向いてないっての」
さやか「まどかにあんなこと言われて、罪悪感一杯になっちゃったってわけ?」
ほむら「…ううっ…まどかあ…」
さやか「はあ…少しは昔のあんたから変わったかと思ったけど、何も変わってないね、あんた」
さやか「まあ、別にいいけどさ、あんたを責める気はないよ」
さやか「あたしも少し言い過ぎたとこあったと思うし」
ほむら「えっ」
さやか「それに、まどかとも仲良くしてくれてるみたいだしさ」
ほむら「そ、それは…」
さやか「まどか言ってたよ、あんたのこと好きだって…」
ほむら「…」
ほむら「で、でも私はあの子が最低だと思うことをあなたに…!」
さやか「…そのネガティブ過ぎるとこが何も変わってないって言ってんのさ」
ほむら「……」
さやか「あんたはなんだかんだで、悪いことなんてできゃしないし…」
さやか「ほんとのあんたは、泣き虫で弱くて、誰かが傍にいないと不安で、何もできない…」
ほむら「……」
さやか「でも、あたしだって、そんなあんたの方が好きだよ…」
ほむら「え…」
さやか「べ、別にそういう好きじゃないから、あたしはぜんっぜん!そういう気ないから」
さやか「勘違いすんなよ」
さやか「あんたってすぐ、そういう勘違いすんだから」
ほむら「…いや、あなたに好かれても…ね…」
さやか「ちょっとあんたねえ!」
さやか「こっちから、仲良くしてやろうって言ってんのに……」
ほむら「…確かに、私も悪かったわ…」
ほむら「でも、私はまどかが幸せになる世界を創ったのよ、たくさんの犠牲を払ってね…」
ほむら「私が悪魔でも、そうでなくても、私はただ…あの子が幸せになる世界を望むの…」
さやか「…うん、わかってるって」
さやか「ま、あたしはただ、言いたいことぶっちゃけちゃっただけだから」
さやか「あんたがこのまま、何も変わらないって言うなら」
さやか「あたしだって、このまんまでいるよ」
ほむら「……」
ほむら「ごめんなさい…本当に」
このSSまとめへのコメント
おい!って叫びたくなった。