響「ハム蔵が潰れた」 (413)

グチャ!ヂュッ!

天海春香、17歳。158cm。

響「え...?」

足はスラリと細く、腕はもっと細い。

春香「...え?」

プロデューサーさんなら、お姫様抱っこしたままどこまででも走っていけるだろう。
軽く、細く華奢な体。

真「あ...」

しかしその軽い体重は、

雪歩「ぁ...あぁ...」

ハム蔵を踏み潰すのには、十分すぎた。

響「は...るか...?」

響の静かな声に心臓が飛び跳ねる。

足の下に、何かを感じる。

春香「い...違...これ、は...」

真「...」

雪歩「...」

春香「ち、違う。ぁ、お願い...」

この足の下には、何もいない。小さな命はいない。

そう願って、足をどける。

春香「!」

小さな命は、どこにもなかった。

真「うっ...!」

あったのは、いつもはふっくらしたハムスター...の、ぺしゃんこになった死体だった。

雪歩「ぅっ...ぉえ...」

雪歩は耐えられなかった。口からとび出た赤いものをモロに見てしまったからだ。

真「!ゆ、雪歩...こっちに...」

春香「あ...あぁ...あ...ハム、蔵...」

最悪の結果だった。

 
 グチャァ… ヌチャ…

 靴のカカトと……床……赤い糸が、伸びた。
 ヌラリと光る、粘っこい赤い糸。
 広がる、紅色の染み。

響「あ……ぁあ……」

 嘘であってくれ。
 必死の願い。
 そして、虚しい願い。

美希「嘘……」


 そして、体の半分をペッタンコに潰し、赤い粘液を撒き散らし、

 半壊した内臓をブヂュルルルと捻りだしたその体は、

響「あ……ぁ、あ…ぁああぁ……」
 
 却って、悲劇だった。
 その体は、

ハム蔵「ヂュ、ゥ……」

 未だ、生きていた。

響「はるか...?ハム蔵...?ハム蔵...?」

響「ハム蔵!ハム蔵!!」

ぺしゃんこになったモノに呼びかける響。

春香「う...あ...!」

春香が後ずさると、足の裏についた血が床にこびりつく。

響「嘘...ハム蔵...」

P「どうした!何があった!!」

真「プロデューサー...ハム蔵が...」

逃げた、ではない。
春香の足から伸びるほんの少しの血を見て、プロデューサーは一瞬で察する。

P「と、とにかく...真と雪歩は、外に」

真「は、はい...」

雪歩「ぅ...うう...」

響「ハム蔵...ハム蔵...」

P「な、何があった?」

わかっている。何があったか、状況を見ればわかる。
しかし大事なのは、彼女たちの心だ。

P「春香、何があった」

春香「っ!」ビクン

呼ばれた春香は、抜けた魂が戻ったように飛び跳ねた。

春香「ああぁの、私が、えと、響ちゃんと遊んでて...私、押されて」

P「...そうじゃない。何が、起きたんだ。教えてくれ」

春香「...ハム蔵を、潰した」

自分の犯した状況を口に出した途端、春香は泣きはじめる。

春香「ハム蔵...ハム蔵?響ちゃん?」

P「くっそ...なんてこった」

その間も、響はずっとハム蔵の名を呼びかけていた。

 
P「どうしたら……」

春香「う、うぅぅ……」 ポロポロ…







響「ねぇ……春香……」


春香「ひッ……!?」 ビク



響「……殺して」


春香「え……」


ハム蔵「ヂュ……ヂュゥ……」 ビク、ビク




響「殺してよ」 ポロ…ポロ…

ID:rtob5cAc0 は1ではないので飛ばすかNGにしてください



P「もしもし、律子か?...ああ、緊急事態だ...すぐに戻ってこれるか?...俺一人じゃどうしようも...」

P「ええと...その...春香が...ハム蔵を......した」

P「ああ...じゃあ...」

響「ハム蔵!!ハム蔵!!嫌!!」

春香「...」

P「二人とも、とにかく落ち着くんだ」

響「プロデューサー!!ハム蔵が!!」

P「わかってる。とにかく、ここから一度離れるんだ」

社長室

真「雪歩、大丈夫?」

雪歩「真ちゃん、ありがとう...」

春香「...」

P「...」

どうすればいい。俺はどうしたらいい。

響「ねぇ!」

突然、響がいつもの声をあげた。

響「プロデューサー!ハム蔵を病院に連れて行かないと!」

P「え...?」

俺は、どうしたらいい...

P「響...」

こんな素直な子に、ハム蔵は死んだ、諦めろと言うのか?

響「さっきな!ハム蔵の飛んだ目を入れたら少し動いたんだ!」

雪歩「や、やめて、響ちゃん」

響「だからな!中の物もかきあつめて!」

真「響!やめて!」

春香「プ、プロデューサーさん」

P「...!!」

言えるわけがない!

律子が戻るまでの10分間、響は喋り続けていた。

律子「ただいま、戻りました」

P「律子...」

貴音「状況は、聞いております」

伊織「...」

美希「寝てる場合じゃないの」

響「律子!律子!午後は動物病院に行ってくるぞ!」

律子「病院...?」

P「律子」

響は...不安定だ。
目で律子に合図した。

P「律子、ちょっと」

律子「はい」

...

P「...俺には、無理だ」

律子「...」

P「情けないが、あの響にハム蔵は死んだと突きつけることは...できない」

律子「じゃあ、どうしろって言うんですか」

P「...わからない」

律子「...すみません...私も、わかりません。ですが、突きつけなければならないことだと思います」

ガチャ

社長室から貴音が出てきた。手には小さな箱を持っている。

P「貴音?」

貴音はハム蔵の前にしゃがみ込む。

貴音「...本当に、死んでしまわれたのですね」

律子「そう、みたいね」

貴音は長い箸を取り出し、ハム蔵をつまむ。

貴音「亡骸を、このままにしておくわけにはいきません」

P「すまないな...貴音。俺がやるべきことを」

貴音「いいのです。響は、大切な仲間です」

白い箱にハム蔵を丁寧に入れる。

貴音「響は...不安定な様子。友の死ほど辛いものはありません」

P「...」

貴音「しかし、誰のせいでもありません。そこはきちんと、伝えるつもりです」

律子「え、あなたが、伝えてくれるの?」

貴音「あなた方が頼りない、と言うつもりではありませんが。言うなら...私の方がよいかと」

P「ありがとう。すまないな...貴音」

貴音「はい」

社長室の空気は妙な形で張り詰めていた。

響「それでな、ハム蔵がな...」

ハム蔵の過去を、誰に聞かせる訳でもなく笑顔で語る響。

春香「...」

響の槍がいつ自分に向くかと思うと恐ろしく、動けない春香。

雪歩「...」

真「...」

響の笑顔が耐えられない真、雪歩。

美希「...」

伊織「...」

状況の中に放り込まれ、何を言えばいいのかわからない二人。

これは確かに、プロデューサーや私には荷が重いわ...と、律子は思った。

下手に突きつけるより、貴音などの親友に言ってもらった方がいい。

貴音「響」

響「貴音?貴音もハム蔵の話聞くか?」

貴音「響。ハム蔵は、死んだのです」

響「え...あ...」

響はきっと、認めたくなかったのだろう。
ハム蔵が死んだ事、事故とはいえ、殺されたこと。
誰を責めてもいけない。
でも死を受け入れられない。そんな思いが響の頭をぐるぐると回って、無理やり明るく振る舞うしかできなかったのだろう。

響「ちがうぞ、貴音」

貴音「わかります。友の死は辛いもの。ですが、生きるものは死ぬもの。それが今突然やって来たのです」

響「ちがうぞ」

貴音「受け入れなければならないものです、響」

響「うぁあ...」ボロボロ

貴音「誰のせいでも、ありません。大切なのは、はむ蔵を忘れぬことです」

響「貴音ぇ...!」

響は大声をあげて泣いた。

貴音、よくやった。緊張の糸がゆるみ、皆がほどほどに安心した顔になる。

貴音「さぁ、響。はむ蔵を弔いに行きましょう」

響「ゔん...」

貴音「あなた様、しばしよろしいですか?」

貴音「はむ蔵を、埋葬してきます」

P「ああ。ありがとうな...」

貴音はチラリと春香を見た。
春香は最大限の感謝を、無言で貴音に飛ばした。

...

残った血の片付けは終わった。

P「貴音には、感謝しないとな」

律子「...そうですね」

...でも、俺たちは分かってなかった。
この時の俺たちの行動が、後に全て裏目に出てしまうことになるとは...。

P「俺は...情けなかったな。響に、何も言えなかった」

律子「プロデューサーは、正しいことをしましたよ。下手に出てたらどうなっていたか...結果論、ですけど」

P「貴音がいなかったら...想像もしたくないな」

律子「辛いでしょうね...響は」

ガチャ

P「ん...春香か」

春香「プロデューサーさん...私は...私は...」

P「春香、大丈夫だ。誰のせいでもないって、貴音も言ってただろ」

春香「でも...でも」

真「春香、誰が悪いとかそういう話じゃないよ。謝ればきっと大丈夫だよ」

春香「あ、あんな小動物放し飼いんするのが間違いなんだよ!」

千早「春香…!」

春香「黙れよ弟殺し!殺人壁!」

響「殺す…」

春香「え?」

響「殺すゾ!」


ザクッ…

>>1死ねゾ

美希「デコちゃん、今日は珍しく無口ね」

伊織「...あんたも、珍しく寝ないじゃない」

美希「...寝れる状況じゃないの」

伊織「私も、何を言っていいのかわからなかったわ」

美希「貴音はすごいの...やっぱりひびたかなの」

伊織「?」

...

雪歩「春香ちゃん安心して!四条さんが話してくれたし、私たちも謝るから!」

春香「雪歩...ありがとう」

真「ボクも、きちんと謝るよ」

P「うん...一時はどうなることかと思ったが...大丈夫そうだな...」

ピピピピピピ

あんな小さな生き物を放し飼いにしてる方が悪いんですよ!プロデューサーさん!

P「ん?貴音から電話か」

P「もしもし?」

貴音『あなた様。今すぐ春香に事務所から出て行くよう指示を』

P「!?どうした?何があった?」

貴音『私の、力不足です。響がはむ蔵を殺したのは誰だとずっと聞いてくるのです』

ゾクっとした。

P「どうすればいい」

貴音『春香がいると危険かもしれません。今すぐ春香を隠して下さい』

P「わ、わかった」

P「春香!今すぐ来るんだ!」

???「そもそも事務所に動物持ち込むなの!」

春香「えっ、どうしたんですか」

P「いいから、はやく

ガチャ

響「...」

貴音「...くっ、間に合いませんでしたか」

この状況は非常にまずい。
ハム蔵のショックが大き過ぎれば、誰かにあたるかもしれない。
もし今そうだとしたら...間違いなく、春香にあたる。

響「春香だ!」

春香「っ」ビクッ


響「ねぇ貴音!春香だぞ!春香がハム蔵を」

響「ころしたんだ」

春香「お前が死ぬんやで」

春香「...ごめんなさい」

真「響!ごめんなさい!ボクもあの時ちゃんと警戒してれば...」

雪歩「ごめんなさい。響ちゃん。私も...」

響「あはっ、認めたぞ!」

真「...え」

まずい。非常にまずい。

P「ひ、響...」

響「ねぇ春香!ハム蔵どんなかんじで死んだの?教えて!」

春香「やめて、お願い響...」

響って本気出したら琉球殺人術とか使いそう

すると響は、くるりと向き直って。

響「プロデューサー。ハム蔵はどこ?」

P「え」

響「ハム蔵がまた逃げちゃったんだ!ハム蔵ー!」

おそらく今の響は、ハム蔵の死を認める気持ちと、絶対に認めない気持ちと、責任をとらせる気持ちでめちゃくちゃになっているんだ。

律子「響。ハム蔵は死んだのよ。今、箱を埋めて来たでしょう?」

貴音「響。埋葬は終わりましたよ」

響「うそだ!うそだうそだ!あの箱の中身は自分見てない!見てないぞ!ハム蔵!」

しまった...。貴音は響のためを思い、ハム蔵を箱に入れて埋めるまでの間、中身を見せなかった。それが逆に、ハム蔵は死んでないと思わせる結果になっている。

P「響、よく聞くんだ。ハム蔵は死んだ。それだけは分かってくれ」

響「あははっ、プロデューサーひどいこと言うなー!ハム蔵が死んだなんて!」

響が怖かった。
なぜお前は、そんな無邪気な顔で笑うんだ。

バタンッ!

社長室が勢いよく開き、美希が歩いてきた。
と思ったら。

パン!

響に思いっきり平手打ちを食らわせた。

響「あっ!」

全員、固まった。

ハム蔵でキャッチボールしたいな

本気で投げたら空中で内臓破裂するだろうな

響「なっ、なにす、」

響が顔をあげると、美希は泣いていた。

美希「ミキ、響のそんな顔...見たくない!」

美希は、響に抱きついて泣いた。
響はきょとんとした顔になり、貴音を見た。

響「...ハム蔵...は?」

貴音「はむ蔵は、死んだのですよ」

その瞬間、全ての糸が切れたように泣きはじめた。

春香「プロデューサー、さん」

P「春香...もう、大丈夫だ。この三人なら大丈夫。そう、信じたい」

ぷちますだったらこういう心配ないんだよな

あいつらって不死なんだろ

それから一週間後。

響「ねぇ春香!」

春香「なに、響ちゃん?」

もうすっかり響も立ち直り、春香とも普通に話せるようになっていた。

あの後響は、取り乱したことを謝り、春香含め皆に謝られ、仲を取り戻した。

響、美希、貴音の三人はより仲がよくなったように見える。

俺も律子も、後からこの話を聞いた他のメンバーも小鳥さんも社長も、ほっとしていた。

なんとか、無事に終わったな...。



その時の俺は、そう思っていた。

貴音「あなた様」

P「どうした?」

貴音「少し、響のことで気になることが」

P「ああ...あの後、何か変わったことがあるか?」

貴音「はい...」

貴音が言い淀む。

すっかり安心していた俺だったが、徐々に徐々に、不安が滲み出てくる。

P「何か、あったのか?」

貴音「いえ、直接何かあった、わけではありません」

貴音「出かけられる時に、一人で外に来てください」

...

貴音「こちらへ」

P「...」

貴音が連れ出す理由。
響。
この予感。杞憂であってくれ。

貴音「箱に入れたあの日、わたくしは響とこの道を歩きました」

P「ああ」

貴音「はむ蔵との思い出、飼う動物のことを話しました」

P「...」

貴音「気に、しすぎかもしれませんが...」

P「構わん。話してくれ」

貴音「わたくしが事務所に戻るまで、響はあなた様の知るような状態でした」

貴音「あの後、事務所で皆に諭され、状況を理解して共に帰りました」

P「ああ」

貴音「その時、一言...響が呟いた言葉があって...」

P「なんだ?」

貴音「「かわりをさがさないとな」と」

P「...それが、どうかしたのか?」

貴音「それを、確かめに行くのです」

P「貴音、もう少しわかりやすく話してくれ」

貴音「その後からです。この一週間、響をぺっとしょっぷと、この道でよく見かけるのです」

P「...なにも、おかしくないと思うぞ」

P「響は、ペットショップでハム蔵のかわりを探してる。この道には、ハム蔵の墓参りか何かだろうよ」

貴音「わたくしもそう思いました」

ました?

貴音「ですが、ぺっとしょっぷの店長に聞いたところ...」

貴音「響は、この一週間で何匹もはむすたーを購入していました」

貴音「店長は響と顔見知りで、なんら不思議には思ってませんでしたが...」

P「わからんな...それがどうして気になるんだ?」

貴音「わたくしも、はむ蔵を失った響が、多くのはむすたーに囲まれることで悲しみを癒していると思います」

P「...」

貴音「ですが...」

貴音「はむ蔵のお墓に向かう時...」

P「...」

貴音「響は、はむ蔵のお墓に、何かを埋めているようなのです」

P「そりゃあお前...エサとか、そういうものをそこに埋めればハム蔵も喜ぶだろう?ヒマワリの種でも埋めれば、花が咲くかもな」

貴音「わたくしもそう思います。ですから、これはわたくしの考えすぎの心配事なのです」

P「まぁ、とにかく見に行こう」

...

寺の境内、墓場の隅。

貴音「許可をいただいて、ここに埋葬させていただきました」

P「確かに...何度も掘り返した後があるな」

貴音「供養であれば、お墓の前に置けばよいもの。お墓を掘り返すのは、あまりよくはないことです」

P「ここを掘り返して、響が埋めているものを見れば安心する、というわけだな?」

貴音「その通りです」

確かに、貴音は少し考えすぎかもしれない。
響が、ハム蔵の供養のために買ったハムスターを埋めているとでも思ったのだろうか?
...まさか、そんなはずはないだろう。

これで確かめて安心すれば、貴音も安心するというものだ。

二人で手を合わせ、ハム蔵に掘り返すことを告げる。

貴音は小さなスコップを取り出す。

貴音「...では」

P「まて貴音、俺が掘ろう」

貴音「...そうですか。お願いします」

何もない。何もなく終わる。
掘ればあの白い箱が出てきて、中身を確認すればハム蔵の亡骸がいる。それで終わりだ。

何度も掘り返された土はかなり柔らかく、あっさりと掘れる。

そんなに深くは埋めてないだろう。もうすぐ箱にスコップが当たって...

ぐに。

闇魔術かな?

...?

なんだ、この感覚は?

突き刺したスコップの先端は、何かに刺さった。

土でもなく、箱でもなく...

まさか...まさか

貴音「...どうか、したのですか?」

P「い、いや、なんでもないさ」

俺は何もないと言い聞かせて、その土を掘り返した。

途端、俺は叫んだ。

P「う...?う、うわあああああああ!!!」

ネクロノミコンかな?

貴音が覗き込む。

貴音「あなた様...何が...っ!うっ!」

掘り返した場所には、あの箱と、それと...

P「貴音!見るな、見るんじゃない!」

何匹もの、ハムスターの死体が埋まっていた。

P「見るんじゃ、ない...」

貴音は後ろを向いてその場から離れる。

このハムスターの死体が、そのまま埋めてあったらどんなによかったことか。


死体はすべて、あの時のハム蔵と同じように潰されていた。

お れ が う ま っ て た ん だ よ

貴音「響...響、どうして!」

P「貴音、落ち着け...落ち着くんだ」

貴音の肩を抱き寄せる。震えていた。

潰されたハムスターを見た恐れ...よりも、親友への恐ろしさに震えている。

貴音「あなた様...これは、何かの...供養、でしょうか...?」

P「こんなものは、聞いたことがないよ」

自分で買ったハムスターを同じように潰して埋めるなんて。
...まともじゃない。

P「雪歩、好きなだけ掘って良いぞ」

>>230
プロデューサーさん…

ペットショップの店長は、なんらかわった様子はないと言っていた。
つまり、いつものように買い物に来て、いつものようにエサを買ったりして、そしてまるでいつものように...ハムスターを、買っていく。

P「それ程までに...響は...」

響は、壊れているんだ。

貴音「あなた様...わたくしは...わたくしに、できることは?」

P「貴音。お前は本当に強い子だ」

こんな状況でも、親友の身を案じている。

P「俺は、響の家に行く。お前は...俺を信じて、待っていてくれ」

春香「はい、動物殺傷及び死体遺棄で逮捕」

響「おまえがああああああああああああああああおまえがゔあああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」


春香「超えちゃいけないライン考えろよ」

P「もしもし、律子か?今から響の家に行く...ああ、ああ...」

貴音「...」

P「律子には連絡した。お前は、事務所で待っててくれ」

貴音「なぜ...響は...」

P「この一週間、気がつかなかった俺も悪い。それに...」

P「もしかしたら、こうなってしまったのは、俺が原因かもしれない」

貴音「どういうことですか?」

P「あの日。ハム蔵が死んだ日、俺は響をすぐ社長室に連れて行った。そのあと、貴音が箱に入れて...」

このスレ見ながら雪歩のアムリタ聴くといい感じ

P「響には、ハム蔵が死んだと言葉では伝えたが、実際にハム蔵の死体をしっかりと見ていないんだ」

P「あいつは最後に見た死体を、まだ生きてると言い張って...目を...入れていた」

P「要するに...」

貴音「響の心には、ハム蔵はまだ生きてると?」

P「...そうだ。ハム蔵を、探しているんだよ。ハムスターの、中から」

貴音「...」

P「行ってくるよ。響の家に」

貴音「あなた様...」

貴音「響が戻ると、約束してくれますか?」

P「ああ...するさ...するとも...」

...

響の家。

響は、ガラスケースに入った何匹ものハムスターをニコニコと見ていた。

響「はっむ蔵をー♪さっがっそー♪」

ガラスケースの中に手を入れる。
その手にはヒマワリのタネがあり、ハムスターたちは寄ってくる。

響はその中の一匹を、やさしく掴んだ。

手に乗せられたハムスターは、状況を理解していない。

響「君はハム蔵かな~?」

ハム蔵のボルテッカー!

追いつめられて言葉無くして思うのは
心の中に散った風花

響はハムスターの瞳をのぞく。
ハムスターは響の手でヒマワリのタネを一生懸命食べている。

響「君は、ハム蔵じゃないな!」

次の瞬間に何が起こるのか、ハムスターにはわかるはずもない。

響は手を裏返す。
当然、ハムスターは下に落ちる。

ぼてっ。

落とされたハムスターは、驚いて歩き出した。


そのハムスターを、響は思いっきり踏み潰した。

ぐしゃっ


ハムスターが口に咥えていたヒマワリのタネが飛んで、どこかで音を立てた。

部屋の隅で、餌も十分に貰えなくなったペットたちが震えている。

響「はっむ蔵をー♪さっがっそー♪」

響はまた笑顔に戻り、選別を始める。
足元には、何匹かの死体。

その時。


ピンポーン


玄関から呼び鈴が鳴った。

響は笑顔のまま、玄関を見た。

P「響?いるか?」

響はとてとてと玄関に走る。
歩くたびに何か湿った音がする。

響「あ、プロデューサー!みんな!プロデューサーだぞ!」

がちゃり。

響がドアを開けてくれた。

P「今、大丈夫か?」

響「いいぞ!入って入って!」

俺は入った途端に、床にへばりついたハムスターの死体を見た。

なんJで立てたら2レスで落ちてワロタ


なんでや

響「君はハム蔵かな~?」
QB「僕と契約して」
響「君は、ハム蔵じゃないな!」
QB「キュップイ」
響「」

ハルカッス「しゃああああああああああああwwwww」
ミッキ「きたきたきたきたああああああwwwwww」
ピッヨ「もう最高!春香ちゃん大好き!!」
リッツ「お手柄ですねぇ」スチャ
ハルカッス「美希!今日はお祝いに寿司ですよ!特上!!」
ミッキ「はーいなの!」

天国のハム蔵「……」

俺はこみ上げる吐き気と、泣きたくなる気持ちを必死に堪えた。

P「響...これはなんだ...」

響「ハム蔵を探してるんだ!」

部屋の隅に目をやると、痩せ細ったペットたちが震えていた。

P「響...何をしてるんだ」


響「え?だから、ハム蔵を」

P「ハム蔵は!死んだんだぞ!!!」


ありったけの大声を出した。大声なんて、何年ぶりだろうか。

響「知ってるよ?」

キョトンとした顔。

響「だからな、ハムスター買って来て、ハム蔵を探してるんだ。なかなかいなくて困ってたんだぞ」

響「プロデューサーも手伝ってくれるのか?」

P「もう...もう、俺は...」

ここまで壊れているとは。

P「すまない...俺は、お前を救えない...」

響は嬉しそうにハムスターに話しかける。

響「よかったなぁ!みんな!次のやつはプロデューサーに選んでもらおうな!」

P「貴音...律子。俺は、すまない。情けない奴で...俺は、もう無理だ...」

沖縄に帰って療養始めた方がいいレベル

響「ねぇプロデューサー。ハム蔵が見つかるまで、ここにいてよ!」

響はくいくいと袖をひっぱる。

P「駄目だ。いっしょにはいられない」

どうして、どうしてお前はそんな笑顔をするんだ。

P「響...お前はもう、駄目だ。アイドルから降ろさないと。それと、病院に、行こう。響」

響「どうしてそういうこと言うんだ」

P「響。俺にはもうどうしようもない。お前は...壊れているんだ」

「お前らの嫁だろ早くなんとかしろ」というタグがよぎった

響「壊れてない。自分は健康だぞ」

響「ハム蔵、いっしょに探そう?プロデューサー」

そう言うと、響はガラスケースの裏からはさみを出してきた。
昔の物で、両側が刃物になっている、今ではもう見ない危ない形の物だ。

P「響。それを置くんだ」

はさみには血がついている。なるほど、散らばってるバラバラのハムスターはそれでやったのか?

響「ハム蔵探そうよ?プロデューサー。ハム蔵、探そう?自分、プロデューサーとならやれるきがするんだ。ハム蔵探そう?」

響「大丈夫。プロデューサーの世話は自分がやるぞ。プロデューサーはハムスターを選ぶだけでいいんだ」

P「くそっ!」

このままでは危ない。俺は玄関にダッシュするか考えた。
しかし扉が閉まっている。開けている間にはさみに切られるかもしれない。

しかしこれ以外に、どうしようもない!

P「うわああああああ!!」

思いっきり叫んで、玄関に走ろうとする!

響「待ってよ」

と、その時。

響「うわぁ!」

痩せ細ったワニ子が、響に飛びつき、噛み付いた。

ワニ子と目が合った気がする。逃げろ。そう言ってくれたのだろう。

俺は迷わず玄関に飛び込む。

扉を開け、閉める時ちらりと見えたものは、響がワニ子にはさみを刺している瞬間だった。
ワニ子は刺されながらも、響の腕に噛み付いていた。

...

765プロ


律子「プロデューサー!」

貴音「あなた様!!」

P「はぁ...はぁ...はぁ...」

貴音「あなた様、響は...」

P「貴音...ごめんな...約束、守れそうにないよ」

俺は貴音にすがり、泣き崩れた。

...

ワニ子...(´;ω;`)

二ヶ月後...



響が事実上のクビとなってから二ヶ月。

事務所には昔と変わらない日常があった。

響は当然、いないけども。



あれから何度か、響を見たという話を聞く。
...俺にとっては、もう聞きたくもない名前だ。

名前が出るその都度、ハムスターの入ったガラスケースを、笑顔で持ち帰っていたという話を聞かされる。



...今も何処かで、ハムスターを購入しているのだろうか。

そして今もあの部屋で、ハムスターの中からハム蔵を探しているのだろうか。

救いはないんですか....?

春香は、周りのフォローもありすっかり立ち直っている。


墓の件、響がハムスターを買う理由を知っている貴音は、まるで半身が無くなったように落ち込んでいる。
それでも、仕事はキチンとこなす。まったく、大したやつだ。

響の家に行った日、何が起きたのか。
俺と貴音、社長だけが知っている。

今となっては、もう理由を聞く人などいない。

春香「プロデューサーさん、午後のお仕事もよろしくお願いします!」

P「ああ。そうだな。よし、行くか!」

響のいない765プロは、今日も動いていく。




おわり

お疲れ様でした。
春香ちゃん舐めたいです。

わざわざ最後まで読んでいただいてありがとうございます。

春香に踏まれたいなぁと思っているところで思いつきました。悪気はありません。
響も大好きですし、ハムスターも好きです。


春香「惚れ薬」
亜美「惚れ薬...?」
あずさ「惚れ薬ですか?」


も書いたので、そちらも読んでいただくと嬉しいです。

お疲れ様でした。

こういうの嫌いじゃないけど
多分荒れるんだろうなぁ...(遠い目)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom