ほむら「…5億年ボタン…?」 (159)

~マミの家~


杏子「はあ~、魔獣退治も忙しいけど、なんかいいバイトないかな~」

さやか「あんた相変わらずさ、バイトすることしか考えてないよねえ」

杏子「いいじゃねーか別に、こっちはあんたと違って生活大変なんだからな」

マミ「アルバイトねぇ…私も何かいいものがあればしてみたいわね」

杏子「だろ~!?」

マミ「でも魔獣退治だってあるわけだし、その両立は難しいんじゃないかしら」

ほむら「……」

QB「やあ、みんなでお茶会かい?」ヒョイ

マミ「QB、どこに行ってたのよ」

QB「ちょっと野暮用でね、それよりアルバイトならいいものがあるよ、杏子」

杏子「ああ?なんだよ?」

QB「これさ」

杏子「なんだこれ、スイッチ?ボタン?」

QB「これは5億年ボタンさ」

杏子「はあ~?」

さやか「え、なにこれ面白そう~」

マミほむ「…5億年ボタン?」

QB「そうさ、このボタンを押せば、100万円もらえるよ」

さやか「えっ!?ひゃ、百万!?」

杏子「ま、マジか!?」

マミ「…胡散臭いわ…そんな都合のいいこと…」

ほむら「…これ以上私たちをからかうなら蜂の巣にするわよ」

QB「まあまあ、話しは最後まで聞いてよ、このボタンを押したら確かに100万円が出てくるけど」

QB「このボタンを押した瞬間に押した人間の精神は全く別の空間に移動して」

QB「そこで5億年過ごすんだ」

QB「何も無い空間でも意識や感覚ははっきりしていて、眠ったり死んだりすることもないよ」

さやか「え……?」

杏子「は……?」

QB「でも大丈夫、終わった瞬間にもとの『やる』って言った場所に戻るんだ」

QB「時間も身体も元の状態でね」

QB「だから本人にはボタンを押しただけで100万円手に入れたような感覚になる」

QB「…どうだい、やるかい、このバイト」

全員「……」

杏子「…で、でも100万だよな…」

さやか「なんかよくわかんないけど…ちょっと怖くない…?」

さやか「だ、だって、何もないし、誰もいないとこで5億年過ごすってことでしょ?」

マミ「た、確かに恐ろしいわね…でも信じられないわ…」

マミ「それに、仮にその話しが本当だとしたら、それで100万って安いんじゃないかしら」

ほむら「…想像するだけで…悪寒が走るわ」

杏子「でもさ、物は試しっていうじゃん……ちょっと、一回だけ……」

さやか「…大丈夫なの?杏子」


マミ「そ、そうよ、佐倉さん、そんな簡単に…」

杏子「……ど、どうせ記憶は消されるんだぜ、そ、それに別に死ぬわけじゃないんだしさ…」

QB「このボタンを押せば始まるよ」

マミ「ま、待って…!」

さやか「杏子っ!!」

ほむら「あ…待っ…!!」

ポチッ……

杏子「……」

…ジャキーン!

杏子「え…あ、これ、100万円っ!?」

全員「!!!」

さやか「え!な、なんともないの!?杏子!?」

杏子「え、あ、ああ…別に、何も」

マミ「……そ、そんな…」

ほむら「……」

杏子「おっしゃ、この100万もらっていいんだよな!?」

QB「もちろん、それは君のバイト料だからね」

さやか「ね、ねえ、ホントにさっきので終わりなの!?」

QB「そうだよ、体験するのは押した本人だからね、しかも記憶は消されるから体感的には一瞬さ」

さやか「な、なにそれ、なんかズルい~あたしも押す~」

QB「もちろん、いいよ」

…ガッ
ほむら「…待ちなさい、これは危険なものだわ」

さやか「何すんだよ~ほむら~、そんなこと言ってあんた一人で横取りするつもりでしょ~」

ほむら「危険過ぎるわ…こんなもの壊してやる…」

さやか「ああ!ちょ、ちょっと一回くらい押させなよっ」
ガッ

ほむら「…ダメよ…!危険だわ…!」

さやか「いいじゃん!一回くらい!渡せ~」
グイッ
ガッ

マミ「まあ2人とも落ち着いて…」

ほむら「…絶対にダメよ…」
グイッ

さやか「いいから~お願い~壊す前に一回押させてよ~!」
グイッ…!

ほむら「…あっ」
ドタッ…!


ポチ…

ほむら「…あ…!!」

ほむら(半信半疑だったけど…)

ほむら(まさか…本当に…)



~その瞬間~


キュッ…
ほむら「あ、あ…意識が…!?」

ブオォォ…


パ…
……ッ

ほむら「…こ、これは…」

ほむら「こ、これって…まさか…」

~5億年スタート~



ほむら「…そ、そんな…」

ほむら(…もう私は絶望のあまり何も考えられなくなった…)

ほむら(…ふと鼓膜に振動が伝わり、所謂”声が聞こえる”状態に陥った)

ほむら(ここには誰もいない、そんな既成概念から、幻聴が聞こえてるんだと…私の頭が答えをはじき出した)

ほむら(それと同時に私はもう…終わりなのだと思った)

??「…むらちゃん?」

??「…も、もしかして、ほむらちゃん…?」

ほむら「…え…そ、その声は…ま、まさか…!!」

まどか「ほむらちゃんっ!!」

ほむら「まどかっ!!」


ほむら(『絶望』と『孤独』その二つの単語が私の頭を支配し始めた時…)

ほむら(希望が現れた……そう…希望そのものが…私の大好きな…あの子が…)


ほむら「まどかあああ~うう~…ひくっ…ぐすっ…」
ダキッ…

まどか「ほむらちゃん…よしよし、もう大丈夫だよ…」

ほむら「で、でも…どうしてまどかがここに…」

まどか「私はずっとここにいたよ、来たのはほむらちゃんの方だよ」

ほむら「…はっ!」

ほむら「…そ、そうか…私…」

ほむら「…ボタン押しちゃったんだ…」

まどか「え?」

まどか「え、ソウルジェムで魔力を使いきって私の所に来たんじゃないの?」

ほむら「…違うと思うわ」

まどか「え、ええ…!?」

まどか「あ、い、言われてみれば、確かにソウルジェムはどうもなってないね…」

まどか「で、でも普通の人間はこんな場所には来れないよ!?」

まどか「ほ、ほむらちゃん…も、もしかして私に会うためにほむらちゃんまで、何かの概念に!?」

ほむら「…ち、違うわ、そうじゃないの」

ほむら「実はQBが…」

……

まどか「…そんなものが存在してたんだ、それは酷いね」

ほむら「…ええ、私は美樹さやかが押そうとしてたからそれを止めようとしたら」

ほむら「間違えて私が押してしまって…」

まどか「…そっかあ、さやかちゃんも相変わらずだなあ…」

まどか「そんなボタンはもう存在できないようにしておくね」

ほむら「えっ、そ、そんなことできるの?」

まどか「もちろんだよ」

ほむら「……ありがと、まどか…」

まどか「…ううん、ほむらちゃんと会えただけでも私はとっても嬉しいよ」

ほむら「うん…私も嬉しい…とっても」

まどか「でもここは概念だけが存在する世界なのに、そんな世界に精神だけを飛ばすなんて」

まどか「ひどいボタンだよね」

ほむら「…そんなものどこで手に入れたのかしらね、あいつは…」

まどか「それで、ほむらちゃんは今から5億年ここで過ごすの?」

ほむら「…多分…」

まどか「ごめんね、私の力でも、ほむらちゃんをすぐに元の世界には戻してあげれないみたい…」

ほむら「ううん、いいのよ、まどかと一緒なら5億年なんて…」

~3年後~


ほむら「あははは…さやかも馬鹿ね…そんなことまであったんだ」

まどか「うん、だよね~でね、でね…」


………

ほむら(こんな風にして、まどかとの再会を果たした私は、まどかと話し続けた)



ほむら「…ねえ、まどか、一つ聞いてもいいかしら」

まどか「ん?」

ほむら「…まどかは、こんな風に概念になったこと、後悔してない…?」

まどか「…うん、してないよ」

まどか「だって私はみんなを迎えにもいけるし、みんなの為になったって思うもん」

まどか「ほむらちゃんやママに会えないのはすこし寂しいけど、今の私はどこにでもいるから」

ほむら「…そう、それなら良かったわ」

~10年後~


まどか「…私たち普通なら、もう大人だよね」

ほむら「そうね、もう20歳くらいかしらね」

ほむら「……」

まどか「……」



ほむら(…最近、まどかとの話題が無くなっていた)

ほむら(全く話さない日が続いたときもあった…)

~100年後~


まどか「でね、でね」

ほむら「まどか…その話はもう何度も聞いたわ」

まどか「あぁ、ご、ごめん」

ほむら「…まどか、5億年はとても長いわ…別に無理に話しを続ける必要はないの」

ほむら「…私はあなたと一緒にいれるだけで嬉しいから」

まどか「ほむらちゃん…」

まどか「…じゃあ何かあったら呼ぶね」

ほむら「ええ、たまには名前呼ぶわね」

まどか「うん」



ほむら(でも、まどかが私に気を使っているのが手に取るようにわかって)

ほむら(私も罪悪感でいっぱいだった)

~1,000年後~


ほむら「そ、そうだ、まどか、次は動いて遊ぼ、これだけ広いんだから」

まどか「そうだね、うん」



ほむら(そこからはまどかと走ったり、歩いて話したり、色々なことをした)

ほむら(2人でできることで想像できることはどれもやった)

~10,000年後~


ほむら「…」

まどか「……」


まどか「……」
モジモジ

ほむら「ん?」

ほむら「どうしたの、まどか?」

まどか「え、う、ううん、べ、別に…」

ほむら「…ね、ねえ…ま、まどか」

まどか「え、な、何?」

ほむら「ま、まどかは…何か後悔してることとか」

ほむら「な、なにかしておけば良かったとか思うことはない?」

まどか「え、そ、それはあるけど…」

ほむら「…あ、あのね…わ、私もあ、あるの…」

まどか「最近ね、私も同じこと考えてたの…た、多分…か、考えてることは同じだと思う…」

ほむら「そ、そうかしら…」

まどか「う、うん…ふ、2人でできる…その、恥ずかしいことだよね…」

ほむら「え、ま、まあ…」

まどか「もう2人でやってないことはこれだけだよね…」

ほむら「そう思うわ…」

まどか「…じゃ、しよ…」

ほむら「ほ、ほんとにいいのかしら…」

まどか「…やっぱり、わ、私じゃ…ダメ…かな…?」

ほむら「そ、そんなことあるはずないっ!」

ほむら「…む、むしろ、まどか以外とは…」

まどか「…ありがと」
チュ…

ほむら「……」
カアアァ…

まどか「んっ…んんっ…!」
チュ

ほむら「…あっ、ああっ…んんっ…まどか…っ!」
クチュ



ほむら(そ、そして私たちは禁断の関係に堕ちてしまった)

ほむら(で、でも別に悪いことじゃないのよ)

ほむら(こんな時間も無限にあるような世界で私たちは仕方なく穢れてしまったのよ)

~100,000,000年後~


ほむら「んっ…あっ…」

まどか「…つ、次はまた私が上…?」

ほむら「え、う、うん…も、もうそろそろ…これもやめない?」

まどか「あ、う、うん…そうだね…そろそろ…」

ほむら「……」

まどか「……」

ほむら「…まどか…とっても可愛かったわ」

まどか「ほ、ほむらちゃんも…すくに濡れて可愛かったよ」

ほむら「っ…」カアアァ


ほむら「でも、これで…できることはもう全部やったんじゃないかしら…」

まどか「…うん、そうかも」

~120,000,000年後~



まどか「……」

ほむら「……」



ほむら(…そして私たちはそれから何もすることも話すこともなく)

ほむら(ただその場所に一緒に存在しているだけになった)

~300,000,000年後~



まどか「」
ほむら「」



ほむら(…まどかと手を繋いでこうしてずっと何も考えずにいると)

ほむら(まどかが私の身体の一部のように思えてくる)

ほむら(こうしてもう100,000,000年くらい経ってるからだろうか)

ほむら(でも、私は何も辛くなかった、むしろ幸福だった)

ほむら(まどかとこうしていれる時間が…永遠に続けばいいとさえ…思った)

~499,999,999年後~


まどか「」
ムクッ

ほむら「?」

ほむら「ま…まどか…?」

まどか「ごめん、ほむらちゃん、やっぱりほむらちゃんは違う世界に生きるべきなんだよ」

ほむら「えっ?」

まどか「もうそろそろ、時間だよ」

ほむら「え…い、嫌よ!!」

ほむら「まどかとずっとこうして、一緒に!!」

ほむら「帰りたくない!!」

まどか「…ダメだよ、ほむらちゃん、やっぱり私たちは違うんだよ」

ほむら「嫌…嫌よ…!」

ほむら「私は戻ったとしても、あなたはこんなところにずっといるんでしょ?」

ほむら「それなら私もずっとここにいるわ!」

まどか「ううん、ダメだよ…ほむらちゃん」

ほむら「…まどか…!!」

まどか「私、ほむらちゃんと会えて本当に嬉しかった」

まどか「時間はたくさんあり過ぎて、今までにできなかったこととか」

まどか「2人でできること全部やったよね、それが一番嬉しいよ」

まどか「あ、あんまり大きな声で言えないような…え、えっちなこととかも」

まどか「でも楽しかったし、ほむらちゃんだったから嬉しかったな」

まどか「だから、ほむらちゃんはもう戻って、ここにいるのは私だけでいいんだ」

まどか「…ほむらちゃんまで、私みたいになっちゃったら、私がこうなった意味なくなっちゃうから」

ほむら「…ううっぐすっ…ひくっ…まどかあっ!」

まどか「ホント言うとね…ホント言うと」

まどか「少し後悔してたの、こんな風になっちゃったこと」

まどか「でも、私が希望をなくしたら、それは概念としての役目を果たせないってことになっちゃう」

まどか「だから私は頑張ったんだよ…本当に」

まどか「ほむらちゃんがここに来てくれたおかげで、またこれからも頑張れそうだよ」

まどか「だから安心して…ね?」

ほむら「まどかあっ!!」

まどか「だからね、最後にもう一回だけ…しよっ?」

ほむら「えっ」

ほむら「う、うん…」

ほむら(まどかは最後に私に感謝の言葉を伝えて、決意を新たに頑張るようだった)

ほむら(まどかと会えなくなるのは寂しいけど、でも最後にまどかが本音を言ってくれたことがとても嬉しかった)

ほむら(そして、感動ムードぶち壊しだろっ)

ほむら(とツッコミたくなるような、まどかの一言に私は拍子抜けしてしまったが)

ほむら(まどかとした最後の”それ”は…言葉では表現できないほど…気持ちよかった)

~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~



…ジャキーン!


さやか「あ、イテテ」

さやか「あ~、ほむら~、先に押したなあ~あたしも押させろ~」


ほむら「……」

ほむら「あ、わ、私…押したの?」


杏子「おっしゃ、この調子でどんどん稼ごうぜえ~!」

ジジジ…ジ…!


全員「!!」

杏子「な、なんかおかしくねーか?」

…ドカーン!


さやか「うわっ」

杏子「うおっ」

マミ「あっ」

ほむら「あっ」

さやか「え、な、なんで?急に壊れちゃったの~!?」

杏子「おいおい、これじゃ、バイトできないじゃんかよ~」

マミ「あ、わ、私も…押しとけば…」

ほむら「……」

さやか「ちょっと、QB、どういうことよ~」

QB「こんなこと普通ありえないはずなんだけど…」



ほむら「……」

ほむら(私は今まで何をしていたのか思い出した、巴マミの部屋での普通のお茶会)

ほむら(でも何か大事なことをまだ忘れているような気がする)

ほむら(そして目の前のボタンが爆発して、壊れたことになぜか安心感を覚えた)

~ほむらの家~


ほむら「……」

ほむら(最近、やけにまどかの顔がはっきりと思い浮かぶ…)

ほむら(ついこの間まで忘れかけていたような気がしたけれど)

ほむら(思い出すようなきっかけが何かあったはずはないのに…)


ほむら(…私はどこかで、まどかと会ってたのだろうか…?)

遅れましたが、終わりです

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