リーネ「ハルトマンさ~ん!」エーリカ「……」 (161)
―501基地 食堂―
エーリカ「みやふじぃ」ガバッ
芳佳「な、なんですか!?」
エーリカ「私の食事はぁ?」
芳佳「はい。こちらです」
リーネ「どうぞ、ハルトマンさ――」スッ
エーリカ「……」バッ!!
リーネ「……」
エーリカ「さぁ、たーべよっと」
バルクホルン「きちんと手は洗ったのか?」
エーリカ「あらったよ。トゥルーデはうるさいなぁ」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん、どうしたの?」
リーネ「え?ううん。なんでもないよ。いただきます」
芳佳「……?」
エーリカ「はむっ……はむっ……。うん、おいひぃ。これ宮藤が作ったやつだね」
芳佳「あ、はい。肉じゃがです」
エーリカ「うんうん。いいね」
リーネ「あの、私も実は肉じゃがを作るときお手伝いをしたんですよ?」
エーリカ「トゥルーデ、訓練は午後からだっけ?」
バルクホルン「ああ。そうだ」
エーリカ「それじゃあ、時間までねてよ」
バルクホルン「ダメに決まっているだろう」
エーリカ「なんでだよぉ」
リーネ「……」
バルクホルン「ごちそうさま。宮藤、今日の料理も絶品だった。また作ってくれ」
芳佳「はい。任せてくださいっ」
リーネ「……」
エーリカ「ごち~。宮藤、またつくってよね」
芳佳「はいっ」
リーネ「あの、私も手伝った――」
エーリカ「トゥルーデ、まってよぉー」
バルクホルン「お前は寝るんだろう?」
エーリカ「なんだ、寝てていいの?」
バルクホルン「今からだと……30分後には起こすからな」
エーリカ「もっとゆっくりねかせてよぉ」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん?ごはん、おいしくない?」
リーネ「え!?ううん。そんなことないよ。おいしいよ、うん。おいしいから……」
―格納庫―
美緒「宮藤、リーネ。今日も基礎訓練からだ」
芳佳「了解!」
リーネ「……」
美緒「リーネ、返事はどうした?」
リーネ「あ、はい!了解!」
美緒「よし。では、滑走路30往復から始めろ」
芳佳「いこっ!リーネちゃん!」
リーネ「うん!」
ルッキーニ「おっ、がんばれぇ~」
シャーリー「しっかりなぁー」
芳佳「はぁーい!!」
リーネ「……」
美緒「なんだ、リーネのやつ……?」
芳佳「いち、にっ……いち、にっ……」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「え?」
芳佳「なにか、あったの?」
リーネ「……」
芳佳「話せないことなら、無理に話さなくていいんだけど」
リーネ「芳佳ちゃんは、すごいよね」
芳佳「え?」
リーネ「ううん。なんでもない。ほら、はしろ。坂本少佐に怒られちゃうよ」
芳佳「う、うん」
リーネ「いちっ!にっ!いちっ!にっ!」ブルンブルン
芳佳「今日もリーネちゃんはすごいなぁ……」
リーネ「はぁ……」
―大浴場―
芳佳「はぁー。ごくらくぅー」
リーネ「……」
エイラ「お、先客がいたのか」
芳佳「あれ?エイラさん、サウナじゃないんですか?」
エイラ「今日はこっちダ。サーニャがどうしてもっていうから」
サーニャ「サウナ、みんなが使わないから」
エイラ「私は使ってるだろ」
サーニャ「そうだけど」
リーネ「あ、あの」
エイラ「なんだ?」
リーネ「わ、私もサウナ使いますよ」
サーニャ「そうなの?」
リーネ「う、うん。たまに、だけど」
エイラ「たまにか。それなら大尉だって中尉だってたまに使ってるぞ」
リーネ「そうなんですか?でも、私はサウナで二人と一緒になったことがないような」
サーニャ「芳佳ちゃん、今からでもサウナ行く?」
芳佳「え?ごめん。もう体、洗っちゃったから」
サーニャ「そう」
エイラ「サーニャ、ほら。洗ってやるから、こっちこい」
サーニャ「うんっ」テテテッ
リーネ「……」
芳佳「私もたまにはサウナいこうかなぁー」パチャパチャ
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん?のぼせたの?」
リーネ「……大丈夫。まだ、平気だから」
芳佳「え?」
リーネ「うん……。大丈夫……」
芳佳「そ、そうなの?」
―廊下―
リーネ「……あ」
バルクホルン「あのときはもう少し私と距離をつめてだな」
エーリカ「えー?それだと、反応速度がぁー」
バルクホルン「お前なら何も問題ないだろう」
リーネ「あ、あの」
エーリカ「でもさぁ、トゥルーデだって1秒ぐらい遅れちゃうんじゃないの?」
バルクホルン「そんなことはない。むしろ上手く連携をだな」
リーネ「あ、あの!」
バルクホルン「……なんだ?」
エーリカ「……」
リーネ「……お、おつかれさまです」
バルクホルン「ああ、ゆっくり休め。――ハルトマン、ではもう少し変えてみるか?」
エーリカ「そのほうがいいかもー」
リーネ「……」
―食堂―
ルッキーニ「おかわりぃー!!」
芳佳「はぁーい。いっぱいあるからねぇー」
ルッキーニ「わーい!」
シャーリー「宮藤ぃー。あたしにもたのむよー」
芳佳「わかりましたぁー」
リーネ「……」
ペリーヌ「……リーネさん?」
リーネ「は、はい!?」
ペリーヌ「顔が暗いですわよ。食事時にそんな顔をされると、美味しくなくなります」
リーネ「ご、ごめんなさい」
ペリーヌ「ふんっ」
リーネ「……ごめんなさい」
芳佳「どーぞ!」
シャーリー「サンキャー。いやぁー、宮藤のメシは最高だなぁ」
芳佳「いえ、今日はリーネちゃんも手伝ってくれたんですよ」
シャーリー「へぇ、そうか」
ルッキーニ「おいしいぃ!」
シャーリー「だな」
芳佳「リーネちゃん、おかわりはどうするー?」
リーネ「あの!シャーリーさん!ルッキーニちゃん!」
シャーリー「ん?」
ルッキーニ「にゃに?」
リーネ「……今日、私もお手伝い、したんです」
シャーリー「今、聞いたけど?」
リーネ「……」
シャーリー「どうした?」
リーネ「なんでも、ありません……ごめんなさい……」
ルッキーニ「変な、リーネ!にゃはははは」
ペリーヌ「……」
リーネ「……」
ペリーヌ「ごちそうさま。食器はここに置いておきますわね」
芳佳「はい!」
ペリーヌ「まぁまぁでしたわ」
芳佳「ありがとうございます!」
ペリーヌ「リーネさんが手伝ったおかげかしらね」
芳佳「あはは。まぁ、そうですね」
リーネ「……!」
ペリーヌ「ふんっ」
リーネ「ペリーヌさん……」
シャーリー「はぁー、食った食ったぁ。サンキュ、宮藤」
芳佳「いえ。また作りますね」
ルッキーニ「にひひ、ありがとっ!」
シャーリー「リーネ、美味しかったよ。おやすみ」
リーネ「……!」
芳佳「さぁ、片付けなきゃ」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん、手伝ってくれる?」
リーネ「うんっ!!」
芳佳「どうしたの?なんだが、急に元気になったみたいだけど」
リーネ「そ、そうかな!?」
芳佳「なってるよ。うん」
リーネ「ごめんね。自分ではよくわからなくて!」
芳佳「よかったぁ。リーネちゃんに元気になって」
リーネ「この食器、私が洗うね!」
芳佳「うん、お願い」
リーネ「よかった……大丈夫だ……。きっと私が心配しすぎただけなんだ……」
リーネ「はぁぁ……」
エーリカ「あれー?ごはん、おわってるぅー」
リーネ「あ、ハルトマンさん。まだ、ありますよっ」
エーリカ「……」
リーネ「どうぞ――」スッ
エーリカ「……」バッ!!!
リーネ「……」
バルクホルン「宮藤、私の分も頼む」
芳佳「あ、はーい。リーネちゃーん、おねがーい」
リーネ「う、うん……」
バルクホルン「……」
リーネ「あ、あの……」
バルクホルン「いい。自分でやる」
リーネ「あ……」
エーリカ「トゥルーデ、はやくぅー」
バルクホルン「全く。食事は全員一緒じゃなかったのか」
エーリカ「トゥルーデがミーナに怒られるからじゃん」
バルクホルン「それはお前だ」
リーネ「……」
芳佳「ふんふふーん」
エーリカ「宮藤ぃー。夜も宮藤がつくったの?」
芳佳「はい。リーネちゃんも手伝ってくれたんですよー」
エーリカ「ふーん」
リーネ「あ、あの……お味のほうは……」
バルクホルン「しかし、お前もそろそろミーナの命令を聞くようになれ」
エーリカ「きいてるじゃん」
バルクホルン「そうか?7割ほどしか従っていないようにも見えるが」
エーリカ「3割ぐらい大目にみてよ」
バルクホルン「それでもカールスラント軍人か」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん、手伝って……」
リーネ「……っ」
芳佳「リーネちゃん?あの、どうしたの……?」
リーネ「……芳佳、ちゃん」
芳佳「リーネちゃん?」
リーネ「芳佳ちゃん……は……すごいね……」
芳佳「え?え?」
リーネ「ごめんなさい!!」タタタッ
芳佳「あ!?リーネちゃん!!」
リーネ(やっぱり……わたしはダメなんだ……!!私は……!!!)
ミーナ「きゃ!?」
リーネ「あ!?」
ミーナ「リーネさんっ。危ないから、廊下は走らないように」
リーネ「……」ダダダッ
ミーナ「ちょっと!!」
美緒「なんだ?リーネも隊長命令を無視し始めたか。はっはっはっは」
ミーナ「……美緒?」チャカ
美緒「冗談だ。銃は仕舞ってくれ」
―滑走路―
リーネ「……」
エイラ「いくぞ、サーニャ」ギュッ
サーニャ「ええ」ギュッ
リーネ「……」
エイラ「あ、リーネが膝抱えてるぞ。寒いなら部屋にもどれよー」
サーニャ「お見送り、ありがとう」
エイラ「いってくるー」
リーネ「……」
エイラ「なんだ、リーネに無視されたぞ。胸を揉みすぎたのが原因カ?」
サーニャ「……いこ」
エイラ「そうだな」ブゥゥゥン
リーネ「……」
芳佳「はぁ……はぁ……リ、リーネちゃん!!どうしたの!?」
リーネ「……芳佳ちゃん」
芳佳「――ハルトマンさんとバルクホルンさんが無視するの?リーネちゃんのことを?」
リーネ「うん」
芳佳「……」
リーネ「考えてみたら、私、ハルトマンさんとバルクホルンさんとはまともにお話したことないなって」
芳佳「私も最近だよ。バルクホルンさんとハルトマンさんに話しかけられるようになったのは」
芳佳「少し前まで話しかけてもそっぽ向かれてばっかりだったし」
リーネ「でも!!芳佳ちゃんは私よりあとに501に来たのに!!もうあんなに親しそうに話してる……」
芳佳「あ……うん」
リーネ「……私、ダメだから嫌われてるのかなぁ」
芳佳「そ、そんなことないよ。私だって、まだまだだし」
リーネ「……芳佳ちゃんは、すごいよね」
芳佳「リーネちゃん、それじゃあ、あのハルトマンさんと二人でお話してみるとか、どうかな?」
リーネ「大丈夫かな?」
芳佳「わからないけど……。でも、リーネちゃんは仲良くなりたいんだよね?」
リーネ「う、うん。ハルトマンさんとバルクホルンさんから色々教えてほしいから」
―ハルトマンの部屋―
芳佳「ハルトマンさーん」コンコン
エーリカ「――なにぃ?」ガチャ
芳佳「夜分にすいません。少し、お話したいなぁって」
リーネ「……」
エーリカ「いいよ。はいってはいって」
芳佳「お邪魔します」
リーネ「……お邪魔します」
エーリカ「で、どんな話したいの?」
芳佳「えーと……」
リーネ「ハ、ハルトマンさんの……飛行技術について……」
エーリカ「……え?」
リーネ「……!?」ビクッ
エーリカ「なんで?」
リーネ「いえ、ごめんなさい……」
芳佳「……あ、あの、ハルトマンさんはその、グリーンピースは食べられるんですかぁ?」
エーリカ「うん!大好き!お皿に山盛りでもいけるね!」
芳佳「やっぱりぃ。バルクホルンさんから聞いたんですよぉ」
エーリカ「あぁ、そうなの?宮藤も食べられる?」
芳佳「はい!平気です!」
エーリカ「大好きっていえよー」
芳佳「だ、大好きって言ったらバルクホルンさんにいっぱい食べさせられそうで」
エーリカ「あははは。それはあるかもね。とういうか絶対に食べさせられるね」
芳佳「ですよねー」
リーネ「あの」
エーリカ「……」
リーネ「私、グリーンピース、大好きです」
エーリカ「ふぅん」
リーネ「……お邪魔しました」
芳佳「ちょ、ちょっと待ってよ!!リーネちゃん!!」ギュッ
リーネ「もういいよ。芳佳ちゃん。ありがとう」
芳佳「で、でも……。このあと、空気が和んだら、私が部屋を出て……」
リーネ「どうしたって、和みようがないよ。私が何か言うだけで、空気が凍りつくし……」
芳佳「だけど、もう少しだけでも」
リーネ「ううん……。もう、私は……」
芳佳「ハルトマンさん!!」
エーリカ「なに?」
芳佳「こうなったら、率直に訊きます!!」
リーネ「芳佳ちゃん!!ダメ!!」
芳佳「どうして!?」
リーネ「そんなの……聞きたくない……」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「夜遅くに申し訳ありませんでした。ごめんなさい。失礼しますっ」
エーリカ「うん」
芳佳「リーネちゃん!!待って!!」
―廊下―
リーネ(怖い……怖かった……!!)ダダダッ
バルクホルン「っと」
リーネ「あ!!ごめんなさい!!」
バルクホルン「……気をつけろ」
リーネ「は、はい!!」
バルクホルン「……」
リーネ「……」
バルクホルン「まだ何かあるのか?」
リーネ「あ、ありません!!」タタタッ
バルクホルン「……」
芳佳「はぁ……はぁ……!!バルクホルンさーん!!」
バルクホルン「こら!!廊下は走るな!!」
芳佳「す、すいません!!」
バルクホルン「いいか、宮藤。廊下を走るとだな――」
―格納庫―
シャーリー「あー。今日はこんなもんでいいかな」
ルッキーニ「セッティッグ、おわったのぉ?」
シャーリー「ああ。ちょっと時間がかかったけどなぁ。そろそろ寝ないと」
リーネ「……!!」ダダダダッ
ルッキーニ「あ、リーネだ」
リーネ「……あ」
シャーリー「どうした?」
リーネ「いえ……べ、べつに……なにも……」
シャーリー「そうか。それじゃ、おやすみー」
ルッキーニ「今日はあの木でねよーっと」テテテッ
シャーリー「おーい、リーネ。ここの照明落すぞー」
リーネ「……」
シャーリー「おとすぞー?部屋にもどれよー」パチンッ
リーネ「……うっ……ぅぅ……」ガクッ
―翌日 格納庫―
ペリーヌ「さぁーて、今日も坂本少佐の訓練をー」
リーネ「……」
ペリーヌ「きゃぁ!?」
リーネ「あ、ペリーヌさん。おはようございます」
ペリーヌ「リ、リーネさん。こんなところで何をしていますの!?」
リーネ「考え事を……」
ペリーヌ「なら、部屋でしたらどうですか?」
リーネ「部屋に戻る気力もなくて……」
ペリーヌ「はい?」
芳佳「あぁー!!リーネちゃん!!」
リーネ「……芳佳ちゃん?」
芳佳「どこに居たの!?昨日、ずっと探したのに」
リーネ「……ごめんね。ずっと真っ暗な格納庫にいたから」
ペリーヌ「な……。リーネさん。一晩中、ここにいましたの?」
リーネ「……はい」
ペリーヌ「何をしていますの。全く」
芳佳「あ、あの……実は……」
エイラ「ふわぁぁ……」ブゥゥゥン
サーニャ「ねむい……」ブゥゥゥン
リーネ「……」
芳佳「エイラさん、サーニャちゃん。おかえりー」
エイラ「お?なんだ、私たちの出迎えか?いや、悪いなぁ」
サーニャ「ありがとう、芳佳ちゃん、リーネちゃん、ペリーヌさん」
ペリーヌ「たまたまここにいただけですわ」
エイラ「なんだ。ガッカリだな」
サーニャ「うん」
リーネ「……」
エイラ「リーネ。昨日と同じ姿勢ダナ。それが落ち着くのか?」
リーネ「……」コクッ
エイラ「そうか」
サーニャ「あぁ……ぅ……」
エイラ「おっと。サーニャ、部屋で寝ような」
サーニャ「う……ん……」
エイラ「それじゃ、サーニャを部屋につれてくから。ちょっと待っててくれ」
芳佳「え?」
ペリーヌ「どういうことですの?」
エイラ「え?リーネが困ってるんじゃないのか?」
リーネ「……」
エイラ「違うならそのまま寝るけど」
リーネ「エイラ……さん……」
エイラ「なんだ?」
芳佳「実は、その、とっても困ってます!!」
エイラ「そうか。サーニャを寝かせたらすぐに戻るから」
サーニャ「あぅ……わた……し……も……」フラフラ
エイラ「――あぁ、中尉と大尉か」
ペリーヌ「……」
芳佳「ど、どうしたらいいですか!?」
リーネ「教えてください……」
エイラ「どうしてといわれてもな。ペリーヌもだろ?」
ペリーヌ「ええ」
芳佳「え?え?」
リーネ「ペ、ペリーヌさんも?」
ペリーヌ「わたくしも中尉と大尉には暫く無視されていましたわ」
リーネ「そうなんですか?」
エイラ「というか、無視されてないやつっているのか?」
ペリーヌ「サーニャさんは初めから中尉に気に入られていたような気もしますが」
エイラ「ああ、まぁ、そうみたいだな。部屋の合鍵もサーニャは中尉に渡してるし……」
芳佳「どうして無視をするんですか?」
エイラ「さぁ?」
リーネ「わ、わからないんですか?」
ペリーヌ「正直なところ、わたくしだってハルトマン中尉とバルクホルン大尉とはつい最近ですわよ。話しかけられるようになったのは」
エイラ「私もだ」
芳佳「そ、そうなんですか?」
エイラ「大尉の胸をいきなり揉んだのが無視された原因かなって思ったけど、どうやら違ってたしなぁ」
ペリーヌ「まぁ、そのうち自然と話せるようになりますわよ。気にしなくても問題ないはずです」
リーネ「……嫌われている、ということじゃないんですよね?」
エイラ「どうなんだろうな。別に嫌いってわけじゃないとおもうけど」
芳佳「私のときは……」
リーネ「え?」
芳佳「私のときは、バルクホルンさんを助けたあの日から、喋りかけられるようになりましたけど。何か関係あったりしますか?」
ペリーヌ「どうかしら」
エイラ「私たちは別に二人を助けたこともないしなぁ」
ペリーヌ「ですわね。手を貸さなくとも、お二人はどのような窮地も切り抜けてきましたわ」
リーネ「……」
芳佳「なら、一体……」
エイラ「でも、まぁ、新人が来るたびにあんな態度取ることもないのにな」
ペリーヌ「それには同意いたしますわ」
エイラ「お。珍しく意見があったな」
ペリーヌ「あんなの、受けた身からすればたまったものではありませんでしょ?」
エイラ「ま、そうだけどなー」
リーネ「嫌われてないなら、大丈夫です」
芳佳「リーネちゃん……」
リーネ「エイラさん、ペリーヌさん。ありがとうございます」
エイラ「もういいのか?」
リーネ「はい。嫌われてるんじゃないかって、ずっと悩んでて……。でも、何か理由があってそうしているのなら、大丈夫です」
ペリーヌ「……そう。なら、いいですわ」
リーネ「ごめんなさい。ご迷惑をかけて」
エイラ「別にいいんだけどさぁ」
美緒「――なんだ。宮藤、ペリーヌ。ここにいたのか。お前たちが朝の鍛錬に来ないから、すこし寂しかったではないか」
ペリーヌ「あぁ!!坂本少佐ぁ!!もう終えられてしまったのですかぁ!!」
美緒「ああ。この通りな」
ペリーヌ「はぁぁ……もうしわけありません……」
美緒「それで、何をしていた?」
エイラ「べーつに。私はねるぞー」
美緒「……」
芳佳「あ、あははは」
美緒「変な奴らだ」
リーネ「……」
美緒「ふむ。さてと、風呂に行くか」
ペリーヌ「ご一緒いたしますわ!」
美緒「そうか?なら、裸の付き合いだ!!」
ペリーヌ「はぁい!」
芳佳「リーネちゃんは、どうする?」
リーネ「私は、いい。ちょっと一人になりたいから」
―滑走路―
リーネ「はぁ……」
リーネ(きっと仲間として認められたかどうか……なんだろうなぁ……)
リーネ(芳佳ちゃんは体をはってバルクホルンさんを助けたから、ハルトマンさんにも認められて……)
リーネ「それなら……わたしなんて……もう……ずっと……むしされ……」
シャーリー「風よーし!」
リーネ「……」
ルッキーニ「にひぃ!いつでもいけるよー!!」
シャーリー「おっしゃー!!マッハをだすぞー!!」
ルッキーニ「おー!!」
シャーリー「あ、リーネ。そこ邪魔だから、ちょっと移動してくれ」
リーネ「あ、ごめんなさい」
シャーリー「スタンバイ、オーケー。カウントダウンスタート。――5秒前」
リーネ(二人は……どうなんだろう……。無視、されてたのかな……。ううん。されていても、シャーリーさんもルッキーニちゃんも才能があるから……すぐに……)
シャーリー「――いくぞぉ!!」
―大浴場―
美緒「ハルトマンとバルクホルンが?」
芳佳「はい。私も最近まで無視されてました」
美緒「んー。501結成時もそんな感じではあったな」
ペリーヌ「はい。少佐なら何か原因というか、お二人の意図も知っているのではないかと」
美緒「私は無視された覚えはないからな」
ペリーヌ「それは少佐だからですわ」
芳佳「バルクホルンさんもハルトマンさんも、坂本さんのことは尊敬しているって言ってましたし」
美緒「そうか」
ペリーヌ「やはりわかりませんか?」
美緒「宮藤もペリーヌも何故、今頃になって相談をする?無視されている時期に言ってくれなければ困る」
芳佳「そ、それは……」
ペリーヌ「ね、ねえ?」
美緒「もう問題はないのだろう?ならば、気にするな。二人もかけがえのない仲間だと認めたということだろう。はっはっはっは」
芳佳「……そうですね」
―滑走路―
ミーナ「シャーリーさん。朝から精が出るわね」
シャーリー「ええ。マーリンの調子も上がってきましたからね」
ミーナ「それは頼もしい限りね」
ルッキーニ「次ぐらいで音速でるんじゃない?」
シャーリー「そうだといいなぁ」
ミーナ「あら?あれは……」
ルッキーニ「リーネだよ」
シャーリー「そういえばずっと膝抱えてるよな」
ミーナ「……」
リーネ「……はぁ」
ミーナ「リーネさん?」
リーネ「は、はい?」
ミーナ「そろそろ朝食の時間よ?行きましょう」
リーネ「はい……ごめんなさい……」
―食堂―
シャーリー「あぁー。腹減ったぁー」
ルッキーニ「あっさごっはんー」
ミーナ「はいはい。騒がないの」
リーネ「……あ」
バルクホルン「……」
ミーナ「おはよう、トゥルーデ」
バルクホルン「ああ。おはよう。ミーナ」
芳佳「リーネちゃんっ」
リーネ「芳佳ちゃ――」
バルクホルン「おはよう、宮藤」
芳佳「は、はい!おはようございます!」
リーネ「……おはようございます」
バルクホルン「シャーリー、今朝のエンジンテストはどうだったんだ?」
シャーリー「上々だ。もうすぐ音速だな。間違いなく」
ペリーヌ「少佐、朝食もご一緒に……うふふ……」
美緒「すまん、ペリーヌ。私の朝食は遅れる」
ペリーヌ「え?」
美緒「バルクホルン」
バルクホルン「どうした?」
美緒「ちょっといいか?」
バルクホルン「ああ」
ミーナ「美緒?」
美緒「ミーナは知っていたか?」
ミーナ「な、なにを?」
美緒「バルクホルンとハルトマンが主に年下を無視していたことだ」
ミーナ「……トゥルーデ」
バルクホルン「なんのことだ?」
美緒「……そうか。では、こっちにこい」
ペリーヌ「あ……あ……」オロオロ
シャーリー「なんだぁ?」
ルッキーニ「どこいくのぉー?」
芳佳「坂本さん……」
リーネ「……?」
ペリーヌ「余計なことを言ってしまったかしら……」
芳佳「そんなこと……」
ペリーヌ「元はといえば、宮藤さんが坂本少佐に相談しようなんていうからですわ!!」
芳佳「そんなぁ!ペリーヌさんだって賛成してくれたのにぃ!!」
ペリーヌ「貴女が強引だったからです!!」
芳佳「ひどーい!!!」
シャーリー「朝から騒がしいなぁ。いつものことだけど」
ルッキーニ「なんかあったの?」
リーネ「……」
シャーリー「ルッキーニ、リーネは話したくないってさ」
ルッキーニ「そっか。ごめんね、リーネっ」
リーネ「いえ……そういうことじゃ……」
シャーリー「いいよなぁー。リーネは悩み事を相談できるやつ、いっぱいいるし」
リーネ「……え?」
シャーリー「あたしなんて、自分で解決しなきゃいけないからなぁ。友達いないし」
ルッキーニ「あたしがいりゅー」ギュッ
シャーリー「ルッキーニは友達かぁ?」
ルッキーニ「うーん。しんゆー?」
シャーリー「そうかぁ、親友かぁ」
ルッキーニ「うじゅぅー!」
リーネ「……」
芳佳「リーネちゃん、この際、シャーリーさんにも聞いてもらおうよ。もうどうしていいのかなんて、分からないし」
リーネ「でも、これ以上、迷惑は……」
シャーリー「おいおい。迷惑はかけるなよ」
リーネ「……はい。大丈夫です」
シャーリー「でも、まぁ、話を聞いてみないと迷惑かどうかは判断できないけどね?」
リーネ「実はハルトマンさんとバルクホルンさんに……」
ルッキーニ「無視されてるんでしょー?」
リーネ「え!?ど、どうして!?」
シャーリー「まぁ、普段から無視されてたもんなぁ?」
ルッキーニ「されてたー。プイって」
ペリーヌ「シャーリー大尉!!知っていて貴女は……!!」
シャーリー「悪いか?」
芳佳「悪いですよぉ!!どうしてバルクホルンさんに何かいってあげないんですか!!」
シャーリー「言ってもやめないよ。あいつは」
リーネ「何が原因なんですか?理由はなんですか?」
シャーリー「バルクホルンは見た目どおり、不器用だからな」
芳佳「不器用って?」
ルッキーニ「大尉はぁ、リーネのこと大嫌いなんだよー」
リーネ「……え」
シャーリー「おい。ルッキーニ」
ルッキーニ「だってほんとのことじゃん」
シャーリー「それをいうならハルトマンもだろ?」
ルッキーニ「あ、そうだそうだ」
リーネ「……」
芳佳「もうやめてください!!!」
ペリーヌ「ハルトマン中尉とバルクホルン大尉がリーネさんを嫌っている、というのは本当ですの?」
シャーリー「まぁ、大嫌いだろうな」
ルッキーニ「私も嫌われてたしー」
リーネ「そう、なの?」
ルッキーニ「芳佳だって、最近まで嫌われてたでしょー?」
芳佳「う、うん」
シャーリー「ま、どうやったら好かれるかだな」
リーネ「シャーリーさんも無視されていたんですか?」
シャーリー「勿論さ。特にバルクホルンが酷かったな。事務的な話しか絶対にしなかったし」
ペリーヌ「そういえば、シャーリー大尉。一時期、バルクホルン大尉を徹底的に無視していましたわね?」
シャーリー「あったりまえだろ。無視してくるんだから、無視してやったんだよ」
ペリーヌ「戦闘中もでしたわね。その所為で連携が取れず、大怪我をしそうになってまで無視していたのは感服しますわ」
シャーリー「ふふーん。すごいだろぉ」
ペリーヌ「ほめてませんっ!」
芳佳「そのとき、どうなったんですか?」
シャーリー「えーと……」
ルッキーニ「中尉がたすけてくれたんだよー?」
ペリーヌ「そうでしたわね」
リーネ「そ、それからどうなったの?」
ルッキーニ「えっと、シャーリーが禁錮処分になったぁ」
シャーリー「いやぁー。まいった、まいったぁ」
ペリーヌ「丁度、そのころでしたわね。シャーリー大尉とハルトマン中尉がまともな会話をするようになったのは」
シャーリー「そうだったか?よく覚えてないな。まぁ、そのあとは自然とバルクホルンとも日常会話を交わすようになったけどさ」
リーネ「それって……どういうことなんだろう……。ううん。やっぱり、仲間って認められたから……だよね」
芳佳「……」
シャーリー「ま、そのうちリーネも普通に話せるようになるって」
ルッキーニ「あたしもなれたんだし、だいじょーぶっ」
リーネ「はい……。がんばりますっ」
ペリーヌ「結局、お二人が何故無視をするのかはわかりませんわね」
リーネ「そうですね」
芳佳「……」
リーネ「芳佳ちゃん、どうしたの?」
芳佳「え?ううん……」
ペリーヌ「なんですの?言いなさい」
芳佳「え……っと……」
シャーリー「リーネ」
リーネ「な、なんですか?」
シャーリー「あの二人に好かれようと思うと大変だからな。気合いれろ。ただし、無理に好かれようとしなくてもいい。あんな態度をとってるんだから当然だ」
リーネ「で、でも……わたしは……」
シャーリー「ま、好きにするといいさ。それじゃ、メシ食うか」
―ブリーフィングルーム―
美緒「……」
バルクホルン「私からは以上だ」
ミーナ「トゥルーデ。まだそんなことをしていたの?その所為でシャーリーさんがどうなったのか覚えているでしょう?」
美緒「あの連携ミスか。シャーリーが死んでいても不思議ではなかったからな」
バルクホルン「……」
美緒「現在、リーネに対しても無視しているな?」
ミーナ「え!?」
バルクホルン「……流石は少佐だ」
美緒「リーネの様子を見ていれば分かる。それで、リーネのことはまだ好かんか?」
バルクホルン「残念だが」
ミーナ「いい加減にしなさい、バルクホルン大尉」
バルクホルン「私とハルトマンはこうすることでしか、仲間を受け入れたくはない」
美緒「何故、嫌われようとする?」
バルクホルン「守るものが多いと、困るからな」
美緒「バルクホルン……」
バルクホルン「私とハルトマンに嫌われたぐらいで心を折るようならそれでいい。それまでの人間だ。私だって見切りをつける」
ミーナ「……」
バルクホルン「幸い、リーネはまだ我々に好かれようとしている。だが、そろそろ限界も近い」
ミーナ「やめなさい」
バルクホルン「すまない、ミーナ。これが私とハルトマンのやり方だ」
ミーナ「もう……言うことをきいて……」
美緒「何故、リーネよりも先に宮藤に心を開いた?」
バルクホルン「命がけで守ってくれた宮藤を無視することはできない。これはハルトマンも同意見だ」
美緒「他の者は?」
バルクホルン「こんな私やハルトマンにも黙ってついてきてくれた。それに応えないわけにはいかないだろう」
美緒「なるほど」
バルクホルン「ああ。サーニャだけは状況が違っていたか。無視したその日にハルトマンの部屋を訪ねたそうだ。扉をあけてみると泣いてたらしい」
美緒「それだけ恐怖だったんだろう」
バルクホルン「そうだろうな。悪いことをした」
ミーナ「トゥルーデ。それがどれだけみんなを不安にさせているのか分かってる?」
バルクホルン「分かっている」
美緒「どうやら、言ってもやめんようだな」
バルクホルン「ああ。リーネにはもう暫く、この屑の軍人に付き合ってもらう」
美緒「……」
バルクホルン「もういいか?飯の時間はとっくに過ぎている」
美緒「わかった。いけ」
バルクホルン「了解」
ミーナ「もう……」
美緒「ミーナも知らなかったか?」
ミーナ「年下のウィッチに対して態度が冷たいことは知っていたけど、あれほど徹底していたことは知らなかったわ」
美緒「やれやれ。とはいえ、バルクホルンの考えも分からなくはない」
ミーナ「美緒」
美緒「もう少しだけ様子を見たい。無論、ミーナが止めるなら私は従う」
ミーナ「それは……」
―食堂―
エーリカ「あー、おなかすいたぁ」
芳佳「あ、ハルトマンさん」
エーリカ「おー、みやふじぃ。ごはんちょーだい」
リーネ「ど、どうぞ」
エーリカ「……」バッ!!
リーネ「……」
芳佳「……!」
リーネ「芳佳ちゃん」
芳佳「で、でも……もう……私……」
リーネ「ありがとう。でも、大丈夫だから」
芳佳「リーネちゃん……」
バルクホルン「ハルトマン、起きていたのか」
エーリカ「うん」
バルクホルン「宮藤、私にも頼む」
リーネ「どうぞ」
バルクホルン「……」バッ
リーネ「……今日のは私が作ったんですけど」
エーリカ「はむっ……」
バルクホルン「……」
リーネ「美味しいですか?」
バルクホルン「……食事に集中できない。用がないなら喋りかけないでくれ」
リーネ「……ごめんなさい」
エーリカ「ねー、トゥルーデぇー」
バルクホルン「今日はウォーミングアップからきちんとするぞ」
エーリカ「えぇー?」
バルクホルン「お前がいつも真面目に――」
芳佳「あのっ!!」バンッ!!!
エーリカ「……!?」ビクッ
バルクホルン「ど、どうした、宮藤?」
リーネ「よ、芳佳ちゃん……」
芳佳「……」
エーリカ「なんだよ?」
芳佳「それ、リーネちゃんが作ったんですよ」
バルクホルン「それがどうした?」
芳佳「何か、言うことあるんじゃないですか?」
リーネ「よ、芳佳ちゃん、やめて……!」
芳佳「リーネちゃんは黙ってて」
リーネ「ひっ……」
エーリカ「それがどうかしたのかぁ?」
芳佳「リーネちゃんに何か言わないといけないことがあるんじゃないですか?」
バルクホルン「特にないな。調理当番は決められているはずだ。リーネは規則に従っただけにすぎない」
芳佳「……」
バルクホルン「なんだ、宮藤?その目は?上官に対する態度ではないぞ」
芳佳「リーネちゃんに何か言うことがあるんじゃないですか?」
エーリカ「宮藤、やめろよ」
芳佳「いただきますぐらい、言えないんですか?」
バルクホルン「宮藤。いい加減にしろ。なんだ、その口の利き方は?」
芳佳「バルクホルンさんもハルトマンさんも最低です。リーネちゃんだってこんなに一生懸命にしてるのに」
バルクホルン「新人のくせに手を抜かれても困るがな」
芳佳「ふざけないでください!!!」
リーネ「よ、よしか……ちゃん……」
エーリカ「おい、宮藤。その辺にしろ」
芳佳「嫌です!!」
エーリカ「あ?」
バルクホルン「宮藤。まだ間に合うぞ。今謝れば、水に流してもいい」
芳佳「二人が悪いのにどうして私が謝るんですか!!謝るのは二人です!!!」
エーリカ「調子にのるなよ?」
芳佳「調子にのっているのはどっちですか!!年上だから、エースだから、上官だから。そんな理由でリーネちゃんに失礼なことをしていいと思っているんですか!!!」
リーネ「あ……ぁ……」
エーリカ「……こいつ」
バルクホルン「宮藤。組織にいる人間の発言とは思えないが」
芳佳「貴方達みたいな人がいるなんてウィッチも大したことがないですね」
エーリカ「宮藤、おまえぇ――」
リーネ「芳佳ちゃん!!!」
芳佳「なに!?」
リーネ「あ、あやまって!!」
バルクホルン「リーネ……」
芳佳「どうして!!リーネちゃんが酷い目にあってるんだよ!?だから私は……!!」
リーネ「芳佳ちゃん!!この二人は上官なんだよ!?」
芳佳「だからなんなの!!!」
リーネ「芳佳ちゃん!!芳佳ちゃんとペリーヌさんを守ってくれたのは誰なの!?」
芳佳「……」
リーネ「シャーリーさんを命をかけて守ってくれたのは誰なの!?思い出してよ!!!」
芳佳「それは……」
リーネ「大したことないなんて……いわないで……」
芳佳「リーネちゃん……あの……」
リーネ「私……芳佳ちゃんのこと……嫌いになりたくない……のに……やめて……やめてよ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
芳佳「リーネちゃん……ごめん……」
リーネ「うぅ……ぅ……」
エーリカ「……」
バルクホルン「もういい。いくぞ、ハルトマン」
エーリカ「あーい」
リーネ「あ……」
芳佳「……」
リーネ「芳佳ちゃん……」
芳佳「うん。あとで謝りにいくから」
リーネ「私も一緒にいくからね」
芳佳「ありがとう、リーネちゃん」
リーネ「ううん……いいの……」
―廊下―
エーリカ「……」
バルクホルン「……」
エーリカ「宮藤、めちゃくちゃ怒ってたけど?」
バルクホルン「そ、そうだな……。あれは予想外だ」
美緒「ん?どうした、二人とも?」
バルクホルン「しょ、少佐か」
エーリカ「あー、あのー」
ミーナ「二人とも、話があるわ」
バルクホルン「なんだろうか?」
ミーナ「新人、新入りに対して行っている独自の歓迎方法だけど、即刻中止して」
エーリカ「えー?」
美緒「隊長命令だ。これが聞けない場合、それなりの罰があると思ってくれ」
バルクホルン「……丁度よかった。私ももうやめようと思っていたところだ」
ミーナ「え?ど、どうして?」
美緒「ふっ。はっはっはっはっは!なんだぁ。宮藤に怒られたのか」
エーリカ「笑い事じゃないってぇ。すごっく怖かったんだぞぉ」
バルクホルン「少し、泣きそうになった」
ミーナ「そう」
美緒「どうやら、お前たちのやっていることはそれなりのリスクがあるようだな」
エーリカ「まさか、宮藤があんなに肝が座ってるとは思わなかったよ」
バルクホルン「すまなかったな、ハルトマン。私がもう少し強く出ることができればよかったのだが」
エーリカ「いいよ。別に」
ミーナ「それで、リーネさんはもういいのね?」
エーリカ「あの状況で私たちを庇ってくれるなんてね」
バルクホルン「ただ狼狽するだけかと思っていたが」
エーリカ「リーネもしっかり守ってあげなきゃ。あそこまで言ってくれたんだから」
バルクホルン「当然だ」
美緒「全く。お前たち、不器用すぎるぞ。もう少しやりようがあるだろう」
エーリカ「だってぇ。新人や新入りとどう接していいのか、よくわからないしー」
―格納庫―
エーリカ「宮藤には謝っておかないとね」
バルクホルン「リーネにもな」
芳佳「あ!いた!!」
エーリカ「げ」
バルクホルン「み、宮藤……?」
芳佳「……」
エーリカ「あー、宮藤?」
バルクホルン「そのだな……」
芳佳「すいませんでした!!」
エーリカ「え?」
芳佳「ごめんなさい!!あんなに失礼なこと言っちゃって!!本当にごめんなさい!!!」
バルクホルン「お、おい」
芳佳「私、バルクホルンさんのこともハルトマンさんのことも大好きですから!!あの、ごめんなさい!!」
エーリカ「宮藤、もしかして……」
バルクホルン「そうか。私たちの意図を汲んでくれたのか……」
芳佳「はい。リーネちゃんはお二人ことをとても尊敬していますから、きっと私がああいえば、リーネちゃんだって怒るだろうなって……」
バルクホルン「……」
芳佳「そうしたら、絶対、バルクホルンさんもリーネちゃんのこと好きになれるって思ったんです」
エーリカ「宮藤がリーネに嫌われるかもしれなかったのにか?」
芳佳「そのときはそのときです。すこし寂しいですけど。それでもリーネちゃんがお二人と仲良く話している光景を見れたらいいなって」
バルクホルン「そうか……そこまで……」
芳佳「ごめんなさい」
エーリカ「いや、私たちも悪いから」
バルクホルン「すまない、宮藤。お前にこんなことをさせて」
芳佳「いえ。大丈夫ですよ」
バルクホルン「このこと、リーネには?」
芳佳「言ってません。言わないほうがいいかなって。あ、あとでまたリーネちゃんと謝りにきますけど、そのときは知らないフリでお願いします」
エーリカ「うん。了解」
芳佳「よかったぁ!それじゃあ、またあとで!」
シャーリー「……なんだ。終わったみたいだな」
ルッキーニ「だーねー」
シャーリー「どうする、リーネ。宮藤を探したのは間違いだったな」
リーネ「……芳佳ちゃん……どうして……わたしのためなんかに……」
シャーリー「そりゃあ、なぁ?」
ルッキーニ「にひぃ。しんゆー、だからでしょ」
シャーリー「そうそう」
リーネ「……」
シャーリー「ま、これで全部解決だ。よかったな」
ルッキーニ「リーネ、これからもよろしくね!」
リーネ「……うんっ」
シャーリー「おーし!ルッキーニ!今日も張り切ってマッハをだすぞー!」
ルッキーニ「うにゃぁー!!」
リーネ「芳佳ちゃん……ありがとう……」
リーネ「……行かなきゃ。芳佳ちゃんと一緒に謝らなきゃ」
芳佳「ごめんなさい」
リーネ「あの……」
バルクホルン「宮藤、自分のやったことは自覚できるな?」
芳佳「はい」
リーネ「……」
エーリカ「ふんっ」
芳佳「ごめんなさい」
バルクホルン「少し謝られた程度ではな」
リーネ「芳佳ちゃんは私の言葉を代弁してくれただけなんです。だから、罰は一緒に受けます」
芳佳「リーネちゃん!」
リーネ「芳佳ちゃんの言葉は、そういうことだったよ」
芳佳「で、でも」
エーリカ「どうする?」
バルクホルン「……リーネ。話がある。ちょっとこい」
リーネ「は、はい!」
―サウナ―
サーニャ「……」
エイラ「どうした、サーニャ?」
サーニャ「みんな、お風呂かなって」
エイラ「お風呂がいいのかぁ?」
サーニャ「うん……」
エイラ「じゃあ、お風呂に……」
バルクホルン「ん?エイラとサーニャか」
サーニャ「あ……」
エイラ「おお。珍しいな」
エーリカ「じゃまするよー」
サーニャ「あぁ……」
リーネ「ご、ごめんね」
サーニャ「わぁぁ……!」
エイラ「今日はサウナが人気だな。やったー」
エイラ「で、どうしてこっちなんだ?」
バルクホルン「人が少ないと思ってな」
エイラ「残念だったな!今日はなんと5人もサウナを利用しているゾ。501の半分だ。な、サーニャ?」
サーニャ「うん。賑やかで嬉しい」
エーリカ「まぁ、秘密の話をしながら汗を流せるのはここぐらいだもんね」
リーネ「あの……それで……」
バルクホルン「リーネ。あ、あとサーニャとエイラも聞いてくれ」
サーニャ「はい?」
エーリカ「ごめん」
リーネ「な、なにがですか?」
エイラ「……」
バルクホルン「話せば長くなるのだが……」
リーネ「あ……」
エイラ「あのことか。謝るまで、長すぎないか?」
サーニャ「なんのこと?」
サーニャ「――そうだったんですか」
エーリカ「実はそうなんだ」
サーニャ「あの時は、本当に怖くて……」
バルクホルン「悪かった。私の目つきが怖かったか?」
エーリカ「ねー?トゥルーデは目つき悪いもんねー」
サーニャ「いえ、ハルトマンさんの目が一番……」
エーリカ「え?マジ?」
エイラ「中尉が一番怖い」
エーリカ「そんなぁ。このプリティフェイスがぁ?」
エイラ「睨まれると本当に怖いんだかんな」
エーリカ「リーネもそう思った?」
リーネ「え、ええ……まぁ……」
エーリカ「あぁ……」
バルクホルン「リーネ……」
リーネ「私はバルクホルンさんのこともハルトマンさんのことも……いえ、501のみんなのことを尊敬していますし、好きです。あれぐらいじゃ、嫌いなんてなれませんから」
エイラ「ふっふっふっふ。そうかぁ」
リーネ「え!?」
エイラ「こんなことされても私のことは尊敬してくれるのかぁー」モミモミ
リーネ「いやぁー!!やめてぇー!!!」
サーニャ「エイラ……」
エーリカ「……その手、どけろよ」
エイラ「……はい」
リーネ「はぁ……」
エーリカ「リーネ、ありがとう。嬉しい」
リーネ「ハルトマンさん……」
エーリカ「お前のこと、絶対に死なせないからな」
リーネ「……はいっ!」
エーリカ「よし!」
エイラ「こえぇ……やっぱり、中尉がこわい……」
サーニャ「エイラが悪いわ」
―食堂―
ペリーヌ「まぁ、では、もう大尉はあのようなことはしないと?」
美緒「そのようだ」
ペリーヌ「よかったですわ。もうわたくしのような犠牲者は増やしたくありませんもの」
美緒「ペリーヌは色々いいながらも、よく付き従ってくれているな」
ペリーヌ「それはぁ、少佐のお傍にいれるからでぇ」
シャーリー・ルッキーニ「「おかわりっ!」」
芳佳「はーい!!ちょっとまってくださいねー」
ミーナ「トゥルーデ、みんなに謝ったの?」
バルクホルン「ああ。問題ない。それよりも、次新入りがきたときはどうしようか悩んでいる」
ミーナ「安心して。当分、入ってこないわ」
バルクホルン「とはいえ、転属になった場合も考えれば……」
ミーナ「もっと、肩の力を抜けないの?」
サーニャ「夜間哨戒に行ってきます」
エイラ「サーニャ、気をつけてなー」
芳佳「リーネちゃん、おかわり追加だって」
リーネ「うん。すぐに盛るから」
エーリカ「……」
芳佳「あ、ハルトマンさん?」
リーネ「どうしたんですか?」
エーリカ「いつも、美味しいごはんありがと、リーネ、宮藤」
リーネ「いえ。どうぞ」スッ
エーリカ「やったー。おおもりー」
芳佳「……よかったね、リーネちゃん」
リーネ「芳佳ちゃんがいなかったら、私はダメだったよ」
芳佳「そんなことないよ。リーネちゃんはすごいもん」
リーネ「そうかなぁ?」
芳佳「もう……すごいよ……」ハァハァ
エーリカ「いっただきぃ」
バルクホルン「今日の料理も美味だな」
―数日後 廊下―
リーネ「ハルトマンさ~ん!」
エーリカ「なに?」
リーネ「ミーナ中佐が呼んでますよ」
エーリカ「なんで?」
リーネ「昨日の戦闘で、ハルトマンさんが命令を無視したからじゃ……」
エーリカ「えー?やだぁー。おこられるじゃーん」
リーネ「仕方ないですよ」
エーリカ「リーネも一緒に、いこう?」
リーネ「も、もう。わかりました」
エーリカ「やったー。いくぞー、リーネぇ」グイッ
リーネ「はいっ」
芳佳「あ……ふふっ」
芳佳(リーネちゃん、楽しそう。よかったぁ。みんなと仲良くなれて……)
芳佳「さー!今日もがんばろー!」
おわり
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