男「宝くじを買おう」 (2)

 台本形式、短々編。書き溜めあり。


 どんどんどんどん。どんどんどんどん。

「はいはいはいはい。おりますよ。どちらさまでしょうかね」

「おうい、じじい。いるかあ。じじいー」

「おやま。その声はタロさんだね。開いてるから入ってらっしゃい」

「(どんどんどん)じじいー。いるかぁ」

「はいはい。開いてますってば。早くおあがんなさいって」

「(どんどんどん、どんどんどん)じじいーっ」

「(がらがらがらっ)開いてるって言ってるでしょっ!
 どうしていつまでも玄関たたいてるんだい!」

「ありゃ、いたのかい。返事がないから留守なのかと思っちまった」

「返事はしましたよ。さっきっから何度もさ」

「それがさ、玄関たたいてる音がやかましくって、なんにも聞こえなくてよ」

「呆れたねこの人は。自分で音たててやかましいなんて言ってちゃ世話ないや。
 まあいい、とにかくおあがり。何か用があって来たんだろう」

「あいよ、お邪魔。それでさ、おれ今度、宝くじを買うことにしてよ。
 そこで、じじいならうまい買い方を知ってんじゃねえかってさ」

「宝くじかい。あんなもの年始の景気づけに一束買えば十分でしょうよ。
 それとも何かあったのかい」

「それがさ、こないだ歩いてたら売り場を見つけてよ、そこに貼り紙がしてあったのよ。
 『当店で一等が出ました』とさ。こりゃあおれも買うしかねえなって思ったわけだ」

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