セイバー「問おう、貴女が私のマスターか?」禁書目録「え?」 (1000)

このSSはfate×禁書のクロス作品です
内容設定的にすり合わせでとんでもな部分が多々あります
ドご都合主義なども見られると思いますので、ご容赦ください
それでは、よろしくお願いいたします



「問おう、貴女が私のマスターか?」

割れたベランダのガラス、その向こうに立つ魔槍の騎士と私を隔たるように立つ少女。
夜の濡れたような闇を貫く凛と響いたその言葉。
私はきっと特殊な記憶能力なんかなくても。
例え記憶を失ったとしても。
この声と、目の前にいる少女を忘れないだろう。
―――そんな風に思った。


時を遡ること12時間前

「まったく! とうまは勝手だよ! また一人でどっか行っちゃうなんて!」

とうまと私の暮らす部屋で、猫のスフィンクスを抱きながら消えた同居人に憤慨していた。
消えた、と言うのは同居人の悪癖の一つで問題事に自動的に首を突っ込みに行ったことだ。

「しかも私に内緒でさ……まったく!」

頬を膨らませて、消えた同居人を睨んだ。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1340350566(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

「とうまはいつもいつも勝手なんだよ! もうっ!」

頬を膨らませていても何も解決することはない。
置いて行かれたのは彼なりの私への愛であることはしっかり理解している。

「………………」

……やっぱりは愛は訂正。恥ずかしいから優しさにしておこう。
だけどもやっぱり不満はある、だって彼はいくら幾度の事件を解決していても素人である事実は消せないのだから。
でも、彼が私の為に頑張っているのもまた事実には違いなかった。
それを考えると頬をゆっくり熱くなって来るのだけど。

「だめ、やっぱり駄目だよ……とうまは素人なんだから」

今からでも追いかけようか、でもどうやって?

「…………お腹が空いたんだよ」

考えることはお腹が空く。
それが無力である自分の逃避であることは解っていても、逃げるしか出来ないのかも知れない。
彼が、とうまが私の為に戦っているのに、私は逃げている。
それは私の戦いだ、なんて割り切れるほど私は大人じゃなかった。
もとはるが昨日私の家に来てとうまに何か話していたのは知っていた。
それが何に繋がるかは薄っすら解っていたけれど、それを止めることは出来なかった。
その間、私は隣の部屋でまいかと漫然と遊んでいるだけ。
守られたくないのに、ずっと私は守られるだけ。

「ふぅうう……お腹いっぱいなんだよ!」

とうまが残して行ってくれたお金で、苦手だけど出前を頼んで心行くまで食べた私はゴロンとその場に転がってみた。
普段よりずっと広く高い天井を見つめながら、夕日に陰る部屋をゆっくり追っていく。
一人でいることに苦痛はない。
だけど、二人だったのが一人になるのはとても苦しい。

「とうまー」

無意味にいない同居人の名前を呼んでも帰ってくるものはなくて。
ただ、空しく響いていくだけだった。
そして、その空しい寂しさのままいつしか私は眠りについていた。

「…………ん?」

目が覚めたとき、既に部屋は真っ暗で、周囲からも喧騒は消えていた。
時計は見えないけれどもうかなりの夜で、随分と寝てしまっていたらしい。

「ふわぁ…………夜かぁ」

あくび一つで身体を起こして、寝汗かいた身体をどうしようか迷っていたとき。

「……なに、この感じ?」

背骨に走る冷や水。
言葉で表すならそんな感覚。
そして、しっかり表現するならば危機的状況の接近!
それを裏付けるように壁が抜かれ崩れたのと、私が横に転がるのは同時だった。

「くっ!!」

ガラガラと飛んでくる瓦礫に少々身体を痛めながら、一目散に玄関に走ろうとして―――。

「出来れば動かねぇでくれるかな、嬢ちゃん」

冷や水なんてもんじゃない。
沸騰しそうな液体窒素を背骨に感じた。

酷く原始的に部屋に入り込んできたのは、背の高い、どこか豹じみたしなやかな男性らしかった。
まだ闇に慣れていない目ではあるけれど、周囲の明りで薄っすらとその姿は見て取れた。
青、ないし紺、もしくは黒であろうボディースーツの各所に防御の為の金属をつけている、動きやすさ重視のその服装。
そして、まるで軽く肩にかけている赤い、間違いようもなく紅い槍。
それらを身に纏っているその獣臭い精悍な顔をした男性。
今まで私が相対して来たそのどれよりも獰猛で―――。

―――強い。

ただ立っているだけでそれを解らされてしまった。
つまりそれは逃げられないということだった。
必死に頭の中を探っても、一秒に満たない先の未来で私が殺されるのは明白だった。

「…………とう、ま」

震える声で、いない彼に助けを求めてしまう。
普段なら絶対に彼に助けなんか求めない、私が助けてやると思っているのに。
結局私は彼に守られるだけの存在でしかなかったのかも知れない。
そう思うとこんな状況なのに涙が溢れてしまう。
死の恐怖を上回る情けない自分。
そしてここで死んでしまうと、彼は自分を責めるだろう。
弱い私のせいで彼が苦しんでしまう。
そんなことは、そんなことは、そんなことは―――。
―――出来ない。
私は、目に一杯の涙を浮かべて顔をあげた。
目線を合わせるだけ死ねそうな男を睨んだ。

「あ、あなたは誰なの!? なに勝手に私の家に入ってきてるんだよ!!」

状況が解らない、けど十中八九私の頭の中の原典狙いだろう。
だとしたらそこに付け入る隙があるハズ。
原典が狙いなら直ぐに殺されることはない、つまりそれだけチャンスがあるんだ。
そこを、そのか細いチャンスを掴むしかない。
いつもそうやって戦ってきた彼のように!

「ん、ん~、誰ってもなぁ、聞かれてはいそうですかって答える訳にもいかねーんだよ、立場上、悪いな」

男は面倒臭そうに頭をかいて、こちらの質問に言葉を返してきた。
名乗ってくれたら何よりだったけど、問答無用に殺されなかっただけ重畳。
さっきの言葉から彼を探る―――。
―――言語は?
日本語―――。
訛りは?
無し―――。
―――声質は?
20代、26歳、ないし27歳―――。
―――性格は?
律儀、とまではいかなくても一定のルールを重んじている―――。
―――雇い主は?
間違いなくいる―――。
―――雇い主との関係は?
そこまで良好じゃない―――。
他にも他にも他にも他にも――――――。
思いつけることをどんどんあげて行く。
そこに活路があるハズだから。

思考を一瞬の内に何十回何百回も巡らせながら、綱渡りの慎重さをそのまま口を開く。

「あなたの、目的は、何?」

「ん? 何って、まぁこの糞みてぇな聖杯戦争に勝つことだってよ」

聖杯戦争?
彼の言葉に含まれたその単語には聞き覚えがあった。
この日本でかつて行われていた聖杯を巡る戦争。
しかし、それは……。

「う、嘘だよ! だって冬木の聖杯は壊されてもう起動しないハズなんだよ!」

そうなのだ、冬木の霊地で行われていた驚天動地の聖杯を巡る魔術師合戦は五回目の終了と共に二度と行われないように、そのシステム自体を壊されたハズなのだ。
その際には結構なゴタゴタがあった為、一部ではかなり有名な事件とされていたので私の中にも重要情報として刻まれていた。
それなのに聖杯戦争とはどういうことなのかと男を見やるが。

「冬木? 冬木、冬木…………何だっけなぁ、冬木って」

槍を担いだ彼は、首をひねって何かを思い出そうとしているようだった。
冬木の地名に聞き覚えがあったのか、その単語を何回も繰り返して頭を悩ませている紅い槍の騎士。
………………紅い槍の騎士?

「え?」

一つの事実に一気に全ての記憶事実資料が回転していく。
関連する全ての項目が一気に開かれ開かれ開かれ回って廻る。
冬木。聖杯戦争。第五次をもって解体。根源の渦への一時到達。ゼルレッチ翁の干渉。
遠坂の魔術師。英霊召還システム。参加英霊は7柱。内槍を持つクラスは一つ。紅い槍。
紅い槍。紅い槍。紅い槍。紅い槍。紅い槍―――――――――血色の魔槍!!!!

「く、く、く……」

「ん? どうした嬢ちゃん?」

驚愕、そして再びの恐怖に震え出した私にまるで異常なことに当たり前だからこそ以上に男は不思議そうに視線を送ってきた。
それだけで本当に死にそうになりながら、小さく息を吐くように言葉を漏らした。

「クー・フーリン………………」

私の言葉を聞いて、さっきまでそこに濃密に存在していか男の気配が一気に死んだ。
否。
男の気配、存在感、人知を超えた神域の空気が、肩にかけられた槍が発する洗練された死の気配に塗り替えられた。

「お前、何でそれを知っている?」

「ひっ…………!」

男、さっきまでとはまるで違う気配を出す彼はクー・フーリン。
アイルランドの光の御子と呼ばれた槍の名手。最大の戦士。
ケルト神話最強の英雄。
魔槍ゲイ・ボルグを担う英霊。
最後の聖杯戦争において現出したとされる英霊だった。

「もう一度だけ聞いてやる何故俺の名前を知っている」

その正に神話クラスそのものな男が私を文字通り射殺さんがかりの目で見つめてきていた。
恐怖にガタガタ震える足に力を込めようとしても、どこにいても殺されると解ってしまい上手く身体は働かない。
それでもどうにか活路を見出そうとするけれど、圧倒的なまでに暴力的な死の臭いに動けないでいた。

「まぁ、良い……ここで殺せば済む話だ、目覚める前にマスターを潰すってのはどうにも俺のやり方じゃないけどな」

男は槍を始めて構えた。
長い、紅い槍。ゲイ・ボルグ。
まさか神話クラスのものをこんな間近で拝めるとはと内心どこか感動していた。
この後に死ぬんだ、と解っていても感動はあった。
そして約束された様に私に向かって槍が突き出された。

「ぐぅっ!?!」

刺された、痛みが全身に波のように広がっていく。
私に刺さっている真っ赤な槍は、こと無げに突き出さしたクー・フーリンが持っていて、その彼は苦々しそうに私じゃない誰かを睨んでいた。

「何のつもりだ!? 痛み無く殺してやるつもりだったのに手元が狂ったじゃねぇか!!」

「く、う…………」

ギリギリ心臓を外れているおかげで即死はま逃れたけれど、死はどんどん這いよってくる。
薄れる視界で必死に彼が誰に向かって喋っているのかを確認しようと首を動かした先には。

「まー、悪いけどそいつを殺して貰っちゃ困るんだにゃー」

「もと、はる?」

隣人にしてとうまの友人の土御門元春その人が立っていた。
長身金髪アロハにサングラスの怪しい出で立ちそのままに。

「はぁ? 殺して貰っちゃ困るって何を―――ちっ!」

「インデックス! それを持ってサーヴァント召還を行え! お前なら出来る! お前でしか出来ない!」

もとはるが私に向かって何かを投げてきた。
布に包まれた随分と重たいそれを抱えながら、私は朦朧とする意識の中で記憶に刻まれている情報を読み込んでいく。

「ちっ! させるか!!」

「それはこっちのせり、ぐぼっ!?」

クー・フーリンが槍を引き抜いて再び私を刺そうとする。
抜かれる痛みで意識が飛びそうになったけれど、無理にでも脳みそを動かした。
もとはるが無謀にも英霊相手に素手で立ち向かったけど一秒に満たないで開けられた穴の向こうに吹き飛ばされたいった。
でも―――。
それだけの時間で十分だった。
私は手にずっしりくる渡されたそれを手にして、流れ出る血を触媒に英霊を召還した。
再び突き出された槍、それを遮るように一瞬の淡く青い光の後に彼女は現れた。
暴風のようなクー・フーリンの槍を容易くいなして、彼をベランダに引かせた。
彼女の存在感だけで、あのケルト神話の英雄を後退させた。
その事実に驚愕しながら、私は目の前の少女に目を奪われた。
いつの間にか刺された傷が癒えているのも、吹き飛ばされたもとはるのことも意識から吹き飛んでただ彼女に見ほれた。
室内を照らす人工の小さな光に身体を洗われながら彼女は、金糸の髪を小さく揺らして口を開いた。
物語は冒頭に戻り―――。
―――夜は今、始まった。

「問おう、貴女が私のマスターか?」

とりあえず今日はここまでで

ちょいテスト

魔翌力

ふらふら更新していきますから、何とかお付き合いお願いしますね








魔 力

パスが繋がってたら食事する必要は無いだろ

sagaを使わないのは>>1の拘りか何か?

魔力

>>18
セイバーさんの楽しみですから

>>19
サゲとは同居出来ないんですね

デブなドラえもんが魔力放出して蚊を殺した

ちょろっと書けたので投下します

「問おう、貴女が私のマスターか?」

割れたガラス、その向こうに立つ魔槍の騎士と私を隔てるように立つ少女。
夜の濡れたような闇を貫く凛と響いたその言葉。
私はきっと特殊な記憶能力なんかなくても。
記憶を失ったとしても。
この声と、目の前にいる少女を忘れないだろう。
―――そんな風に思った。
それくらい彼女の存在感は圧倒的で圧巻だった。

「ちっ、ここで召還とはな、しかもセイバーか……」

ベランダに退いた男、クー・フーリンは抜かりなく槍を構えたまま私の前に現れた少女を睨みつけ「セイバー」そう呼んだ。
あの男が恐れ退くほどの実力を彼女は秘めているのだろう。
それは私にも感じ取れたけれど、男ほどの凶暴な気配が無いためにどこか安心しきっていた。
私とそう年の変わらない見た目をした彼女から伝わる絶対的なまでの安心感。
それは強制力すら感じてしまう強い強い強い安心だった。

「ぁ、あの……」

「私の召還したのは貴女ですね? サーヴァント・セイバー貴女の呼びかけに応じて参上しました」

恐る恐る声をかけた私に、青い鎧を鳴らしながら振り向いた彼女はそう告げた。
サーヴァント・セイバー。
冬木の聖杯戦争において最優と呼ばれるサーヴァントのクラスだ。
私はそれを引き当てたらしい。
それがどれほどのことかとかはまだ全く解らない。
今の状況でさえ把握しきれていないのだから。
解るのはこの場を制しているのが彼女と言うことだけ。

「マスター…………ご指示を」

彼女は迷いの無い瞳で私を見つめると、剣を構えるような仕草をしながらベランダの男に振り向いた。

「っ!」

相対した男は明らかに警戒を露にして、私に向けた気配が子供だましに思えるような凶悪な殺気をぶつけ出して来た。
私は、おしっこが漏れ出すのを感じながらそこを動けずにただ見ていた。
槍を構えて、少女を見つめる男。
見えない剣を構える仕草をしながら、男に相対する少女。
篭められた濃密な気配に気を失いそうになった瞬間。

「はぁ?! おい、何の話だ!? 退けって、おい! てめぇ!」

男は憤慨したように声を荒らげていた。
多分だけど、通信系の魔術により指示を受けているようだった。

「はぁ? 命呪って…………くそっ!」

「何のつもりだランサー!」

一気に殺気を消した男に、今度は少女が憤慨して睨みつけていた。
男は、少しだけ名残惜しそうに少女を見やると。

「俺だってやり合いたかったっつの、じゃーなセイバー、俺と会うまで負けんなよっ」

「なっ!? 貴様! 逃げる気か!!!」

あれだけ濃密な気配を出していた男はあっけなくベランダからその身を空に投げ出した。
少女、セイバーは後を追うようにベランダに駆け出したけれど。

「くっ……逃げられたか」

どうやら追跡は不可能らしく、セイバーは口惜しそうに歯噛みしていた。

「マスター、ご無事ですか?」

そして思い出したように私に近寄ってきた。
私の記憶はそこまでだった、気が抜けて意識がふわっと何処かに抜けてしまったみたいだった。

「ふぅん、聖杯戦争なんだ、やっぱりこれは」

「ええ、私達はその名目で呼び出された英霊です」

軽く掃除をした部屋で、私とセイバーは向かい合って座っていた。
もとはるは壁に近くに立って、私とセイバーの動向見守っている。
汚れてしまったからパジャマに着替えた私は、セイバーから聞いた情報を整理していくことにした。

「もう一回聞くね? 面倒とらせてごめんね?」

「いえ、大丈夫です。むしろ情報の重要性を理解して頂けているようで安心しました」

そう応えた彼女は変わらず青い布に軽鎧が組み合わされたもので、この部屋には少々似つかわしくない気がする。
まぁ、そこはそんなに重要じゃないから私は無視をしておく。
もとはるが「にゃー、服が必要かにゃー」とか言っていたのは何だか不穏な臭いがしたのでそれも無視して会話を戻す。

「まずは、この学園都市では聖杯をめぐって魔術師同士の戦争が行われているんだよね?」

「はい、そうです。より正確には魔術師と、それに従うサーヴァントのでもありますが」

「うん、解った。それで、参加する魔術師は7人、それに従うサーヴァントも7人、だよね?」

「ええ、その通りです。セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーの7種」

「ふんふん、それで貴女はセイバーに当たるんだよね?」

ゆっくりクドイくらいに私は確認していくけれど、セイバーは嫌な顔一つしないで応えてくれる。
敵に睨まれておしっこ漏らすような私にも一定の敬意を払ってくれているみたいで少し恥ずかしい。

「はい、私のクラスはセイバー、剣の英霊です」

「剣……てことはさっきのクー・フーリンはランサーに当たるのかな?」

「っ!」

私の言葉に、セイバーは目を見開いていた。

「ま、マスター、さっきのランサー、英霊の真名を看破したのですか!?」

「え? え? え?」

ガバッと身を乗り出してくるセイバー、綺麗な、とんでもなく整った顔を目の前に突きだされると同性でもドキドキしてしまう。
けど、何とか息を整えて、手を出して落ち着くように制して。

「か、看破ってほどじゃないよ……前情報があったから推測出来ただけだよ」

「ご謙遜を、我等英霊は真名の隠匿は最優先事項、それだというのに僅かな時間でそれを見破るとは……」

何だか、私に凄く感心してくれているようでどうにもこそばゆい。

「どうやら私は優秀なマスターに当たったようですね、この幸運身に余る想いです!」

「そ、そんなに持ち上げられても困るんだけど……」

だけど、悪い気はそんなにしない。
何だから頼られてるようでほっこりする。
しかし、真名の隠匿を最優先にする、それはつまり英霊であるが故の弱点なのだろう。
既に決定してしまっている英霊たちは、既に死んでいる。つまり死を与えた原因を刻まれているのだ。
それを上手く利用すれば、戦いは有利に進められるのだろう。
って、戦うって何を考えているのだろうか。
確かに私はこの少女に命を助けてもらったけれど、聖杯を巡る戦いに参加しようなんて気はないのだ。
私は現状に十分に満足している、わざわざ外部の力で叶えたい願いもない。
恩人の為に参加する、それも良いかも知れないけれどそれは私の周囲を危険に晒すことになるんだ。
悪いけれど……断ろう。そう決めた。

「あ、あのさ、セイバー、私ね―――」

切り出そうとしたとき、軽い電子音が響いた。
その音源の向きに首を向けると。

「悪いにゃー、ちょっと電話ぜよ……」

それはどうやた土御門の携帯電話の着信音らしく、彼は私達に軽く手を上げて見せるとそれを耳に当てた。
しばらく頷いたり、小さな声で相槌を打っていた。
私には関係ない話と断じて、再びセイバーに伝えようと目線を合わせたとき。

「なっ!? かみやんが行方不明? それは、マジなのか?」

「!!」

聞き流せない言葉が土御門から流れてきた。

「あぁ、うん、わかった………………ふぅ、悪かったな」

話し終えて、もとはるは携帯電話をポケットに仕舞い直した。
そして、私には何も言わずにまた壁に寄りかかって立つ。

「ねぇ…………とうまが行方不明、って?」

「………………」

説明なしに満足出来る訳もなく、もとはるを見つめ、ほとんど睨みながら質問をした。

「聞いた通りだにゃー、上やんは出先で事件に巻き込まれて……行方不明だ」

「っっ!!」

行方不明。
とうまの行方が不明。そのまんまだ。
つまり、とうまが危機的状況に陥っていると言う事だ。
心臓が早鐘を打ち、もとはるは申し訳なさそうに目を伏せ、セイバーは怪訝そうに私を見てきた。

今すぐ彼を助けに行きたい衝動に駆られた。
こんな訳の解らない戦争に参加しているんじゃなくて、少しでも何かの役に立ちたい。
彼を迎えに行きたい!

「も、もとはる! 私―――」

「行くな」

「え?」

断っ! と音がするようにくらい端的に切って落とされた否定の言葉。
最後まで言わせて貰うことも出来ずに、言葉を折られた。

「なん、で……?」

「何でも何もない、上やんはお前の為の戦いに行ってるんだよ……そこでお前が危険な目に合ってみろ」

―――それであいつがどれだけ苦しむと思う?
突きつけられた言葉。
それは深く私を抉って傷をつけた。

「っっ!!」

また、また私の為なのか。
誰かの為じゃなくて 私 の 為 に彼は傷つく世界に飛び込んで行ったらしい。
知らなかった。
知らなかったでは済まない気づけなかったこと。
彼はいつも私に気づかせずに私を救う。
私はいつも彼に気づけずに彼に救われる。
歪み切った一方的な共存関係。
仕方ないと割り切れる訳がない。
助けられるだけの、愛されるだけで満足出来るなら私は迷わない。
迷っているのはそこに満足出来ないからだ!
でも、どうしたら…………。

「マスター、先ほどから話が止まっていますが、どうしましたか?」

「え?」

悩み呻いていたら、一人かやの外状態だったセイバーが心配そうな顔をして見て来ていた。

「何か戦略上に不都合があるならそちらを優先しても問題はないです。戦は万全で向かってそれでやっとスタートですから」

声をかけられて、彼女の麗しいほどに美しい顔を見つめた。
目の前の美貌の少女、セイバー。
サーヴァント、人智を越えた英霊。
――――――。
そうだ!!

「ねぇ! セイバー! とうまを、とうまを助けてよ!」

「はい?」

また誰かに頼るのは苦しいけれど、私にどうにか出来ないなら。
私が無力感に震えてとうまが助かるなら。
そう思ってセイバーに事情を説明していく。
ぺらぺら必要のないことも、必死に必死に。
とうまがどんな人で、どれだけ私を守ってくれていて、どれだけ傷ついているか。
それらを身振り手振りで話した。

「申し訳ないのですが、それは了承できません」

「え?」

何を言ったか思い出せないくらい色々話しきって一息ついた私に、セイバーは真っ直ぐな瞳でそう告げてきた。

「な、なんで!? どうして!?」

「どうして、と言われてもマスター、今は聖杯戦争中なのです」

「っ! で、でも……!」

「落ち着いて下さい、私は別に聖杯戦争があるからトウマを助けられないと言っているのではありません」

興奮する私をセイバーは手で制する。
その目は理知的であり、怖いくらい公平の色を染めていた。
そんな目で見られてしまえば、私は黙るしかなく。
しゅんっと、下を向いてセイバーの言葉を待つ。

「私は聖杯のあるこの地から離れられないのです」

「え? …………あっ!!」

「わかっていただけましたか? マスター」

セイバーの端的な言葉、それを脳内で反響させて直ぐに思い至る。
聖杯戦争の情報、そしてサーヴァントの存在。存在の起因結因。
そう、サーヴァント、英霊の召還なんてとんでもないことを実現させているのは聖杯の力であって、それは聖杯の効力内での話しなのだ。
ここにセイバーがいること自体が奇跡であり、それを外部へとふらふら持ち出すことは出来ない。
私は興奮し過ぎてそんなことも忘れてしまっていた。

「そっか、そうだよね……ごめん、セイバー」

「いえ、私の方こそマスターの夫を助けにいけずに申し訳ないです」

「うん……………………うん?」

意気消沈していた私にどうにも理解しがたい言葉がかけられた。
おっと? おっと? オットット?
何だっけおっとって?
ん? おっと? あぁ夫か、うんうん。
随分遠回りな思考の末に私は答えに辿りついて。

「ち、ぁ、ちっ!」

「マスター?」

「ちっがぁぁぁぁあぁぁあぁああああああああああああう!!!!」

全力に全力をかけて私は反論を開始して。
色々なものを失った代わりに、セイバーもうろたえることがあるという事実を得た。

「はぁ……はぁ、わ、わかってくれた?」

「え、ええ、存分に……」

何とかセイバーに私ととうまの関係を説明しきって一息をつく。
もとはるが何だから必死に笑いを堪えているの軽く睨んでおく。
そして、改めてどうしようかと気持ちが沈みかけたときに、セイバーが口を開いた。

「マスター、一つよろしいですか?」

「うん、何?」

「その、トウマは魔術的概念を打ち消す存在自体が宝具のような存在と聞きましたが」

「うん、そうだけど……」

それがどうしたのかと思い浮かべる私に、セイバーは少し躊躇いがちに告げた。

「聖杯の力も打ち消すのでしょうか?」

「!!」

彼女の言いたいことを一気に理解した。
そうだ、私は今願望器を巡る戦争に身を投じてしまっているのだ。
何でも願いを叶える聖杯を手にする戦争に!!

「そっか……それがあったんだね、うん」

聖杯の力。それがあれば直接間接的でなくともとうまを救えるかも知れない。
やってみる価値はある。
さっきまで断ろうとしていたこの戦いに初めて意欲が湧いた。
自分でもとうまの為に何か出来るかも知れない。
何度も何度も頷いて何度も何度も考えていく。
聖杯戦争は確かに第五次をもって解体された。
しかし現在確かに学園都市では聖杯戦争が行われている。
それはサーヴァントの存在が確かに証明しているから。
つまり、この街のどこかには願望器たる聖杯があるのだ。
それを手にすることが出来れば―――!
私は人知れず手を握り締めて顔をあげた。
この聖杯戦争を勝ち抜くことを決めて。

「じゃあ話を戻すね? 英霊はそれぞれ願いを持っていて、その願いを叶える為に聖杯を狙うんだよね?」

改めて聖杯戦争の確認を再開する。
さっきまでの自分が巻き込まれた確認ではなくて、これより戦争を開始する為の状況確認を、である。

「…………えぇ、そうです。その利害の一致で我等はマスターに従っているのです」

「なるほど…………」

聞いた話、と言うかさっきのセイバー、ランサーを見て確信したけれど。
英霊は人間と比べて圧倒的に強い、多分かおりでも勝てないくらいには。
そんな存在がどうして自分より弱い魔術師に従うかと言うのは英霊は聖杯に願いを託しているのだ。
魔術師がそうであるように、英霊も叶えたい絶対の望みを持って戦いに挑んでいる。
つまり、セイバーにもそんな願いがあるのだろう……。

「? どうかしましたか? マスター」

「ううん、何でもないよ……」

私の視線に気づいた彼女、その真っ直ぐな目を少しだけ覗きこんだけれど、何が解るはずもなく首を振った。

「参加している魔術師は不明、イレギュラーな事態もあり得る、そして願いを聖杯、かぁ……」

内容の確認を終えて一息をつく。
思った以上にこの戦いが熾烈を極めることを再確認した。
人智を越えた英霊に、そのマスターたる魔術師たち。
それらを全て打破してやっとたどり着ける。
そう、願いを叶えられる。
それは大変大事なこと。
この戦争に勝ち抜くことが出来れば私の願いは叶う。
願い……私の願い。
とうまを助ける。
今彼がどうなっているかも解らない。
生きているのか…………死んでいるのか。
それでも、何もしないで待つなんて出来ない。

「あ、そーだ、命呪って何処にあるの? それが無いと私はマスターじゃなくなるんでしょ?」

「命呪、ですか……大体どちらかの腕に発現することが多いようですが」

「腕、腕かぁ……あっ! あったこれだね!」

パジャマの袖をまくって確認したら、右手の肘近くの微妙に見えにくい場所に刻印されていた。
何でこんなところに? と思ったけれど口にはしないで、そのどこか剣のような命呪を指先で撫でてみた。
いつの間にか現れていたそれは違和感もなく刻まれていて、いくら触っても何の感慨もなかった。
だけどこれが私の生命線なのだ。
命呪は、マスターがマスターたす証だけではなく。
サーヴァントを御するものであり、聖杯の魔力ブーストのトリガーでもある。
これがあれば一時的にサーヴァントを強化したり、遠く離れた場所から呼び寄せることも可能らしい。
その回数は三回。マスターとしての証を残すなら二回しか使えない訳だ。

「使うべき瞬間は考えなくちゃね……」

命呪を睨みながらそう呟いた。

「…………ねぇ、もとはる」

セイバーに周囲の巡回をお願いして、私は部屋にもとはるといた。
彼と少し話をしたかったからだ。

「なんぜよ?」

「聖杯戦争は解体されたんだよね?」

「そうぜよ」

真剣な私の言葉に彼は軽く答えを返す。
それに別に何も思わず私自身思考を巡らせる。
聖杯戦争。
冬木での聖杯戦争は確かに解体された。
聖杯は確かに珍しいけれど真贋あって世界各地に存在している。
それが学園都市にあったとしても不思議ではない。
だけど、聖杯戦争になれば別だ。
聖杯戦争は冬木の地で遠坂・マキリ・アインツベルンの三家が作り出した英知だ。
おいそれと再現できるものではないハズ。
なのになんでそれが。
そしてセイバーには話さなかったし、裏情報扱いだから極一部の人間しか知らない第五次聖杯戦争の召還サーヴァント。
私が知っているのは……。
ランサー『クー・フーリン』
バーサーカー『ヘラクレス』
そして……。

「セイバー、アーサー王…………」

彼女がそのセイバーなのだろうか?
ランサーは前回の聖杯戦争に召還されたランサーで間違いはないだろうけれど、同じ英霊が何度も召還されることはあり得るのだろうか?
その辺りについては詳しく知らないけれど、数ある英霊の中から同じ英霊が何度も選択されるのか?
何か作為的な不安が上ってきたけれど、今は目の前に戦いに専念するしかないと諦めて、私は溜息をついた。
戦いはまだ始まったばかりなのだから。

「ふわあ、おはよう……」

「おはようございますインデックス」

次の日の朝、私より先に目を覚ましていたセイバーに挨拶をする。
部屋には私とセイバーしかいないで、もとはるは私に貸してくれた召還の補助具という霊装を回収すると何処かに消えた。
彼も彼でとうまの為に情報を集めると言っていたので、そちらにも期待をする。
ちなみに、寝る前にセイバーとは話をして私を「マスター」ではなく「インデックス」と呼んで貰うようにお願いしてあった。

「セイバー、とうまのジャージで大丈夫だった?」

「えぇ、問題ありません、私の為にわざわざ用意していただきありがとうございました」

律儀に頭を下げるセイバーが着ているのはとうまのジャージだった。
彼女は鎧を脱ぐとその下に何も着ていないようだったので、それでは流石にまずいと思い、急遽用意したものだ。
身長的にちょっとぶかぶかだったけれどしょうがない。
まいかがいれば彼女に何か借りたのだけど、部屋に穴が開いてしまっていて、もとはる共々しばらく戻ってこないだろう。

「では、インデックス、いざ聖杯戦争を始めましょう」

「うん、でもその前に……」

「え?」

「ご飯食べなきゃ、もぐもぐ、だよね? んぐんぐ」

「そうでひゅね、もぐもぐ、ひょうろーは、もぐもぐ、戦の基本です」

もとはるが置いていってくれたカードを使って私とセイバーは朝の栄養補給を済ませた。
出前に来てくれた人が「あれ? 二人?」みたいな顔をしてたけど、何のことかは解らない。
食事を終えた私達は、昨夜のように向かい合って座り、今後の方針を決めることにした。

「とりあえず、私は昨日の聖杯戦争の情報を集めるだけ集めといたから、そこから決めていこうと思うんだよ!」

「私はマスターの指示に従いますよインデックス」

集めた、と言っても頭の中の情報を整理しただけなのであんまり偉そうには言えない。
だけど、セイバーはそんな私に関心をしてくれているようだった。

「まずは、何だけど……セイバー、セイバーの真名を教えて欲しいんだよ、それと戦法、得意な状況、苦手な状況とか」

「なるほど、確かに重要な部分ですね戦略を組む以上……しかし」

「しかし?」

私の考えに頷いたセイバーだったけれど、顔を曇らせて申し訳なさそうにこちらを見てきた。

「真名は秘匿にさせていただけないでしょうか?」

「ん~…………………………良いよ」

「良いのですか?」

こちらの答えに自分から言い出しておいてセイバーは驚愕しているようだった。

「うん、それが必要かも知れないからね、真名を隠すのは戦略上上等だし、私が漏らす心配もなくなるから」

「ありがとうございます、インデックス、不忠の私にお気遣いをして頂けるなんて」

「そんな、気にしないでよ……」

相変わらず律儀な彼女にちょっと困りながら話を続けていく。
それに、隠し事は私もしているのだからお相子だ。

「じゃあ、昼は探索、戦闘はなるべく夜にが良さそうだね」

「そうですね、特にこの学園都市は夜は人目につき難いですし、やり易いです」

セイバーの性質、戦闘技能、出来ること出来ないことを詰め合わせて、いくつかの戦場のピックアップなどを終わらせ一息ついた。
そこで私はふと思い出して。

「そうだ……これがあったんだっけ」

「インデックス?」

「ん、聖杯戦争のマスターにはサーヴァントのステータスを独自観念で認識出来るんだって、それをまだ開いてなかったんだよ」

脳内の情報から拾い上げ、意識を繋ぐ様に目じゃない目でセイバーを認識した。

クラス  『セイバー』
マスター 『インデックス』
真名   『不明』
属性   『秩序・善』
筋力 『C』
魔力 『C』
耐久 『B』
幸運 『B』
敏捷 『C』
宝具 『C』

「…………へぇ、便利」

彼女を認識し終えた私は被さる様に開いていた目じゃない目を閉じて、軽く呼吸を一つ。

「何か収穫はありましたか?」

「そこそこ、かな……昨日のランサーのと合わせてまだ二人だから、どれだけ作用するか解らないけど」

「情報あって困ることは少な、っ!!」

うんうんと頷いていたセイバーが急に立ち上がり、そして鎧を装着した。
それを見て私も直ぐにセイバーの背側に移動をする。

「セイバー……どうしたの?」

「サーヴァントの気配です……!」

「っ! …………え?」

昨日の今日で再びか、と身構えていると外から聞いたことある声が聞こえてきた。

「ちょろっとーー!! いるんでしょーー!! 出てきないってばーーー!!!」

セイバーの伺うような視線に頷いて、掃除したベランダに出て下を見るとそこには。

「あ、やっと出てきた……」

「た、短髪!? な、なにしてるのここは危ないから早くどっかいって欲しいかも!」

私が短髪と呼ぶ、この学園都市屈指の超能力者がそこにいてブンブンと手を振っていた。
サーヴァントが近づいていると言うのに暢気なその姿に呆れながら、追い払おうとして……気づいた。

「短髪…………それ、誰?」

「ん? あー、こいつ?」

彼女の隣に立つ長身で、白髪で肌の黒い赤套の青年。
その青年から出る異物感ある圧力に、目を見開き。

「こいつは私のサーヴァント…………ねぇ、出てきなさいよ、インデックス」

短髪は首につけたチョーカーのようなものを触りながら、私を睨んでいた。

とりあえず今日はここまでー!
ステータスについては、マスターが違うからと若干改変してあります
まぁ、原作のようにあんまり関係ないっちゃないんですけどねステータス

魔術回路が無い人間がなぜサーヴァントを使役できるか謎だけどこれからの設定に期待だわ

イレギュラーは出たりしますん?

>>48
そんなに深い設定はないですけど、理由付けくらいはします

>>49
今んとこは予定ないです

ここのは令呪じゃないん?

御坂の首にチョーカー?

とあるでチョーカーと言えば真っ先にアレを思い出すわけだが……
美琴+ミサカ×10000(=一方)の演算能力なんて洒落にならんぞw


イギリス清教は何をやってるんだ
自分たちの最終兵器がフラグメーカーの管理下から外れて危険な目に合ってるのにヤニ厨噛ませ犬すら派遣しないなんて……
っていつものことか

作者曰く「上条がいればとりあえず全員助かる」つまり、上条がいなかったら全員死ぬってことになる。・・・かなりまずいだろ

生前ならまだしも英霊状態なら神裂さんと似たようなものじゃないかな、宝具使われたら別だけど
インデックスって魔翌力どうだっけ

御坂がアーチャーとかぁ・・・・しかも敵対くさい?
絶対仲間と思ってたのに、何かすっげぇwktwするんだけど、壮大な物語になりげ

>>55
上条さんが英霊化したらどれくらい強いんだろ

つか相応しいクラスがない

>>51
oh
ありがとうございます

>>52
ファッションかも知れません

>>53
後手に回るのが組織だと私の8歳になる姪が言っていました

>>54
上条さん最強

>>55
神裂さん強いからなぁ……

>>56
長くはなるかも知れないですがお付き合いくだされば幸いです

>>58
ぼくのかんがえたさーう゛ぁんと系だと、当てはまらないのは大抵アサシンになっていましたね

投下します


「短髪、それで、何のようなのかな? 教えて欲しいかも」

降りてこなければ部屋ごと壊すと言わんばかりの眼で睨んできた短髪の前に私とセイバーはいた。
セイバーは一歩私の後ろにいて、いつでも迎撃出来るようにしていた。
それは私は短髪の異様な戦闘能力を教えてからであり、そしてその彼女がサーヴァントと一緒にいたからもである。
それにしても、超能力者である彼女が何故サーヴァントを従えているのだろうか?
それを不思議に思いながら、ギラギラと鈍い色を見せる彼女に相対した。
短髪の隣にいるサーヴァントだという赤い外套の男はセイバーを一瞥すると興味を失ったのかつまらなそうに立っているだけになった。
ここで戦闘する意思がないアピールなのかも知れない、だとしたら私もセイバーにあまり 「ごほっ! げほぉお!!」 え?

「げほっ! がっ、あ、おえぇええええ!!!!」

「た、短髪!? いきなりどうしたの!?」

私が思考をめぐらせていたら、短髪は急に身体を丸めてそして気持ち悪い色の液体を口から大量に撒き散らした。
その飛沫が私の方まで飛んできて、「ひっ」と呟き咄嗟に逃げてしまう。
短髪はそのまましばらく荒い息のまま口から液体をポタポタ垂らすと顔をあげた。

「っ!」

「わ、悪かったわね、ちょっと体調悪いのよ、今……」

短髪はそう言って、口についた液体を手で拭った。
そこに来て初めて彼女を私は正面から見た。
さっきまでは短髪がマスターということと、隣のサーヴァントに思考が流れていたから解らなかった彼女の異常を真正面から見つめることになった。

「短髪…………」

「……なによ」

相変わらず強い瞳で私を睨んでいるけど、その顔は蒼白を通り越して作り物みたいな色をしていて。
何回も噛んだせいなのか、血が滲んでいくつも瘡蓋の出来た唇。
いつも綺麗に手入れされていたのにボサボサの髪。
爪を噛んでしまうのかボロボロになっている指先。
そして今にも倒れそうなフラフラの身体。
その中で異様に光る瞳。
どう考えても普通じゃない。
明らかなまでの異常な状態だった。

「だい、じょうぶなの?」

「大丈夫に見えるわけ?」

短髪は首につけている、チョーカーを指を掻くように、どちらかと言うと首を掻く仕草をしながら睨んできた。
チョーカーは一見して何の変哲もないものだけど、左側の一部が円形に少しだけ盛り上がっていてそこに小さな穴が開いていた。
そのチョーカーを短髪はイライラしているようで、足を小刻みに揺らしながら指で弄る。
どうしてだか不安にしかならない仕草を私の前でずっとしている彼女。
しばらくの沈黙の後に。

「マスター、用件は良いのか? だとしたら敵の顔を把握したとしてそろそろ撤退が無難だと思うのだが?」

ざっきからずっと微動だにせずに立ち尽くしていた赤套のサーヴァントが口を開いた。
腕を組んだまま、片目だけを開いて、私達を―――敵。と言った。

「て、敵って……そこの赤いの! 私は敵じゃな―――」

「敵よ」

「え? た、んぱつ? 何言って」

否定する言葉を強く否定する言葉。
短髪の、血が、汁が流れる口から発せられた拒絶の言葉。

「敵よ、あんたは私の敵よ、そうでしょ?」

「そう、って、なんで―――」

「これは聖杯戦争だ、自分以外は全て敵、それくらいの状況把握は出来ていると踏んだのだがな」

「っ」

会話に割り込むように短髪のサーヴァントが、私を見下ろし見下し鼻で笑った。
どこか好きになれないその態度にちょっとムッとしてしまう。
だけど、今は噛み付くよりも短髪のついてが大切と思って、改めて彼女を見る。
睨む目にだけ力が入っていて、それ以外の身体の部位には生きる力が感じられないその異様。
どうしてこんな姿に、と痛ましさに唇を噛んだときにふと気がついた。
―――彼女は超能力者のはず。
そして、超能力者は魔術は使えない。
より正確には、発動させると身体が両極の負荷に耐え切れずに崩壊しだすのだ。
異能者、その最たる学園都市最高位のLevel5がマスターという一番の異常に、私はやっと気がついてしまった。
短髪の身体の異常――――――。
それはつまり。
自分の身体の破壊をしながらも、彼女は聖杯戦争に参加しているのだ。

「な、なんで…………」

「は?」

「なんで、そんな身体になってまでこんなことやってるの!!?」

ボロボロの身体、使えない魔術をどんな方法でか知らないけど無理矢理使ってまで聖杯戦争に参加している彼女を私は非難した。
心の底から非難をした。
彼女のその姿が、私が遠くで見るしかなかった彼の姿に重なって見えたから。
他人の為に自分の傷を省みない彼の姿に見えて仕方がなかったから。
だけど、私の叫びは彼女の瞳を更に強く光らせるだけでしかなかった。

「何でって……じゃあ、何であんたは参加してんのよ? あんたの願いは何よ?」

「なにって…………」

私の願いはとうまを見つける、助けること。
そうなのだけど、今の不安定な彼女にとうまが行方不明であることを言って良いのか迷う。
彼女は私と同じでとうまを支えにしているから。
理由は解らないけど、ここまでボロボロの彼女にそれ以上のダメージは与えられない。
そう判断して、彼女の強い瞳を避けるようになるべく明るく口を開いた。

「あ、あ、えっと、ほら、ご飯沢山食べたいなー…………なんて」

冗談めかして、少しでも短髪が笑ってくれるかな、なんて期待しながらの言葉だったのだけど。

「へぇ………………」

短髪は小さく吐息だけのような言葉を呟いて、さっきまで忙しなくチョーカーに触れていた指を自分のスカートのポケットに向けた。
私の少し後ろでセイバーの鎧がカチャリと小さく音を立てて、短髪の隣のサーヴァントが両目を開いてつまらなそうに息を吐いた。

「マスター、今日は顔見せだけじゃなかったのか?」

「それ、変更よアーチャー…………」

「ふむ…………して、変更内容は?」

短髪は、ポケットから取り出した一軒してタバコみたいな細い棒をチョーカーの膨らみに押し当てた。
そして「しゅこん」と軽い音がすると同時に、彼女は「ぐっ!」と呻き、身体を折った。
だけど、そこまでになっても強い瞳を変えずに、彼女はアーチャーと呼んだ己のサーヴァントに命じる。

「こいつらを、あがぁああ!! ここで、ここでリタイアさせるわ!!」

「承知した…………投影開始(トレース・オン)」

胃液を吐きながら命ずる彼女に、サーヴァントは忠実に応える。
彼の呟きに合わせて、その両手には一対の双剣が握られた、主の命を果たす為に。
そして、その主は歯を食いしばり、そこから血を流し、全身の細胞の痛みに耐えながた血走った目で眼前の敵―――私達を見つめていた。

「あんたは、あんたはぁああああ!!!」

彼女の叫びは、既に人のものではなく。
見知ったはずの彼女の顔に、見知らぬ表情が上書きされ、私は無意識に一歩下がっていた。
何が彼女をそこまでさせているのか、それを知らぬ私には追いすがる恐怖に足を震わせるしか出来ない。
彼女は、なぜ聖杯を求めるのは、それは私の知らない決意――――――。
ここで、私の物語から一旦彼女、短髪、御坂美琴の物語に移し変えてみよう。
私の知らない彼女の物語へ――――――。

「理事長ね…………その理事長のが何のようなのかしら」

私は学園都市の中心部にある「窓のないビル」を眼前に見ながら首を捻った。
今日、ここに理事長直々から呼び出しを受けたのだ。
学園都市に来て以来一度も見たことのない理事長に、直々に、だ。
怪しむ、と言うほどでもないけれど疑問は覚える。
何せ、一度も会ったことがないのだから。
言っては何だけど、私は学園都市の三本指に入っている能力者だ。
そんな私が一度も会ったこと無い相手に、今更呼び出される何てなんだろうか?

「まさか、自販機のあれバレてるとか?」

思い当たる節に頭を悩ませながら、ゆっくりと歩き出した。
私が呼び出されたのは窓のないビルだけど、指定された場所はそこから少し離れた場所にあるマンションの地下駐車場だった。
そこから繋がっているエレベーターでもあるのかと思いながら、そこに進入してはみたけれど。

「普通の駐車場よね…………」

仮にも発電能力のトップである私だ、例え絶縁処理されていてもエレベーターが隠されていれば解る。
だからこそ、ここが普通の駐車場だと解ってしまうのだ。

「いたずら? ってことはないわよ、ねぇ!!」

気配を感じた方向を振り向きながら、全身に帯電させ戦闘準備を取る。
いつでも、どこからでも攻撃に対応できるように電気レーダーを張りながら、振り向いた先には……。

「あんたは…………」

「初めまして御坂美琴さん、どうも統括理事長より貴女をビルに案内するように申し付けられたものです」

顔に趣味の悪い、仮面と言うか、穴も何もないのっぺら坊みたいなお面をつけた人が立っていた。
声からして私とそう変わらない男だということだけが解った。
私は念の為にレーダーは働かせたまま帯電状態を解く。

「案内って、あんた……んん、あなたがしてくれるんですか?」

ついタメ口を利きそうになったけど、咄嗟に矯正をする。
そんな私に興味もないのか、怪しい男はゆっくり近づいてくる。
咄嗟に身構えてしまうけれど、いきなり攻撃する訳にもいかない。
どこぞの誰かみたいに私を簡単に圧することが出来る人間なんて少ないのだから。
だけど、私の警戒を他所に、彼は友好的に手を差し出してきた。

「ぁ、ど、どうも―――ぇ?」

出された手を無視するのも失礼かと思い握った瞬間に、脳が浮き上がるような感覚と共に私はさっきとはまるで違う場所にいた。

「え? なに、ここ、え?」

「統括理事長がお待ちです、あちらへどうぞ?」

「へ?」

まだ理解の追いつかない私を置いて、手を握っていた彼は優しく解くと奥を指し示した。
そこに来てやっと私はここが「窓のないビル」内部で、彼が案内人としてのテレポーターだと理解した。
テレポートなら後輩で慣れているはずなのに、取り乱してしまった恥ずかしさにちょっと頬を掻いてから言われて方に進んでいく。

「…………変な場所」

室内は暗い、と言うより黒い。
壁面には血管みたいにチューブが張り巡っていて、忙しなく何かが行きかいしていた。
ここは何の為の施設なのか考えている内に私は大きなビーカーの前に出た。
そして、そのビーカーの中に満たされた液体に天地逆さに浮く人物と対面した。

「――――――」

対面して即座に解ったことは二つ。
この人が私をここに呼んだ人物で。
―――この人は危ない。

「いきなり呼びつけてすまなかったね」

「ぃ、いえ…………」

ビーカーと中の液体越しのはずなのに、まるで耳元で囁かれているように鮮明に聞こえてくる声。
それはまるで、老人のようで若者のようで女性のようで男性のような為政者のようで支配者のようで罪人のようで聖人の様で、どこまでも人間の声だった。
人間の声のはずなのに私は畏れを感じて仕方がなかった。
するはずだった挨拶も忘れて、立っているだけでの精一杯さを感じている。
そんな私を見抜いてか見抜かずか、人間は口を開いた。

「御坂美琴くん、君は聖杯と言うものを知っているかね?」

告げられたのは聖杯というワード。
聖杯、聞き覚えはあった。
と、言っても私だから漫画からの知識なのだけれど。

「せ、せいはい、ですか? それって、アーサー王とかの……?」

「そう、その聖杯だ。神の子の血を受けたとされる無辜の器」

漫画知識そのままに告げた私の言葉に人間は肯定して、話を続けた。
それはとても荒唐無稽な話だった。
詳細は省くけれど、その聖杯は何でも願いを叶えてくれるものらしく、それがこの学園都市に現れるらしい。
しかも、それを手に入れる為には7人の魔術師で争うことになるとか。
途中からどうしたら良いか解らずに、ただ相槌を打つだけになっていた私だった。
科学の最先端、学園都市の理事長からそんなファンタジーな話を聞かされるとは思ってもみなかったので、本当に反応に困ってしまった。
だけど、それはそこまで、疑い呆れはそこまでだった。
「前回の聖杯戦争」の映像と言うものを見せられて行くにつれて、私の目を驚愕に見開かれた。
法則解明の出来ない能力、そしてあの学園都市最強でも太刀打ちできるかというレベルの能力。
それらを見せられて行くにつれて、私は言葉を失っていた。

「これが聖杯戦争なのだよ」

「聖杯、戦争…………こんなのが、ここで起こるんですか?」

見せられた聖杯戦争。
とんでもない力のぶつかり合い。
そんなものがこの学園都市で起こる?
学園都市であのレベルに対抗できる人間はそうはいないだろう。
だけれども、なまじ力がある分抵抗しようとしてしまうから被害は大きくなるだろう。
最悪の事態に唾を飲み込みながらも、もし何かあっても「アイツ」が何とかするかも知れないとかも考えてしまっていた。
そして、私はここに呼ばれたのは、もしもの時の防衛についてなんだろうかと思い至った。しかし……。

「そう、学園都市で発現する。そして君にはその戦争に参加する権利があるのだよ」

「え?」

言われたのは予想もしていなかったことだった。
私に聖杯戦争とやらに参加の権利があるという、行き成りな話。

「あの、え?」

「困惑は解るだろうけど、君には資格があるのだよ、参加に値する、ね」

そう言われてもまったくピンとはこない。
魔術師とやらの戦争になんで私に参加資格があるのだろうか?
実は私に隠された力があって、なんて言われても正直困ってしまう。
そんな私に人間は小さく笑いかけて来た。

「君には叶えたい願いはないのかね?」

「叶えたい、願い…………?」

言われて考えるけれど、大して思い浮かばない。
欲しいものは自分の力で手に入れる人生を歩んできたのだ、今更ずるはしたくない。
いや、聖杯戦争だって戦い手に入れるだからそれは努力なのかも知れないけど、何でも叶うなんて私にはズルに感じてしまう。
そんなのに託す願いなんてない――――――はずだったのに。

「何か願いはあるんじゃないか? あるのだとしたら、その願いを託してみようとは思わないのかね?」

「そう言われましても…………」

「願いはないと?」

「はい……すみません」

確認してくる言葉に頷く。
その肯定に人間は考え込むような仕草を見せてから。

「本当に何でも叶うのだが?」

くどいくらいに確認をして来た。
それに私が同じ答えを返そうとしたとき―――。

「例えば上条当麻の記憶を蘇らせることも出来るかも知れないのだが? それでも?」

「っっっっっっっ!!!!!」

人間は私の隠した秘密にそっと触れてきた。
カミジョウトウマのことについて。
隠し通す、否私と本人しか知らないだろうと思っていた秘密がここで出てくる何て思いもしなかった。

「彼の記憶の復活を君は望むものと思っていたのだけれどね、だからこそ君に資格を有することを伝えたのだ」

願いがあるのだろう? ―――聞こえてくる、いや入り込んでくる声。
私の中に染みて行くようなその声。
口の中は乾いていき、待ち遠しい唾も直ぐに消費され行く。

「君が聖杯を手に入れれば、それも可能だろう」

記憶を失っても尚誰かの為に傷つく彼。
自分自身を亡くしてしまっている彼を助ける機会が私に巡ってきた瞬間だった。
かつで私を何度も助けてくれた彼を助けるチャンスが私の目の前に転がってきた。

「君には聖杯戦争参加の資格があるんだ、どうする?」

「――――――」

絶対に毒のある、その希望の果実に私は歯を立てた。

その後はどんどん話は進んでいった。
あいつと同い年くらいの魔術師という青年、そして医者による私の魔術師の改造が行われた。
何でも成体電気を操り、内部に擬似魔術回路を生成して、そこに魔力の代わりになるナノマシンを走らせるというものらしい。
そして私の体内には魔力の代わりを担うナノマシンの生成回路が埋め込まれた。
ナノマシンは脆く常に消費されるので、首につけたチョーカーで制御しつつ魔力を消費するときには活性剤を打ち込むことになるらしい。
リスクはあると聞いていた、だけど私は参加することを止めなかった。
目標の為の痛みは私にとって基礎代謝と代わらないから。
しかし手術に痛みはなかったし、擬似魔術回路の生成も上手くいった。
そこまでは本当に拍子抜けしてしまし、これで魔術か使えるのかといぶかしんだけれど、初めて魔力を回路に通したとき私の身体は簡単に破壊された。
吐き気? そんなもんじゃない。
筋肉痛? そんなもんじゃない。
激痛?  そんなもんじゃない。
全身の細胞一つ一つを捻られているような途方の無い痛みが私の身体を襲った。
そこに来て私は、実感した。
この行為が目標に向かっていることを。
この先に私の目的が転がっていると私はそう実感した。
サーヴァントの召還も苦痛の極みだった。
痛みのあまり何度もの失神を繰り返した。
痛みを伴って召還したサーヴァントを私は全力で信頼した。
そして聖杯戦争に望む前夜、私は今現在解っているマスターに見知った顔がいるのを見た。
だからまずは私はそいつらの本に向かうことにした、どうしてこの戦争に参加しているのかを知りたくて。
そうして私の聖杯戦争は始まった、アーチャーという赤套のサーヴァントと共に―――。

「ぐが、あああああああああああああ!!!!」

「短髪に、魔力、なんで?」

短髪の身体で生成されている膨大な魔力が、アーチャーに流れていくのが見える。
超能力者のはずの彼女からは確かに魔力が生み出されて、それがサーヴァントを支えていた。
そして彼女の魔力に背中を押されながら迫りくるアーチャー、その両手には黒白の双剣。

「マスター、行きます!」

「せ、セイバー!?」

後ずさった私に代わるように、セイバーがスッと前に出た。
不可視の剣を構えたまま、グッと力を込めて。

「インデックス、彼について解る事はありますか?」

「え? あ、えっと…………」

彼女に聞かれて慌てながら私はもう一つの眼を開いてアーチャーを確認する。

クラス 『アーチャー』
マスター『御坂 美琴』
真名  『不明』
所属  『不明』
筋力 『C』
魔力 『D』
耐久 『B』
幸運 『C』
敏捷 『B』
宝具 『??』

能力的にはセイバーのほうが上回っているけれど、まだ未知数な部分が多い。
だったら!
今度はアーチャー自身を確認しようとしすが。

「っ!」

その前に、二人は激突を開始した。
昨夜のイレギュラーな衝突とは違い、今初めて私の聖杯戦争はその火蓋を切って落とすことになった。
青い騎士と、赤い弓兵。
三本の剣が交差し、打ち交わされていく。
人智を越えた能力、英霊達の宴が今堂々と始まった!

今日はここまでです

>>74
乙ー!

何この超大作

事情を知らないとはいえ、そりゃ美琴もブチ切れるわなぁ……

アーチャーがどの、というか、どうなってるアーチャーなのかが気になる

乙です
美琴おおおおおおお…

細部は流したりしますが、長くなりそうです
これからもよろしくお願いいたします

>>75
ありがとうございます
コメントあるとテンションあがります

>>76
美琴さんはちょっと単純ですからね

アーチャーは、まぁ、基本的には変わらずですね

>>77
美琴さんは現在ぼろぼろで頑張ってます

>>1にいくつか質問

Q1,原作では確か学園都市のトップは表では統括理事会になっていて、統括理事長という役職を知ってるのは裏の人間だけという設定
だったと思うんだけど、ここでは公の役職?

Q2,学園都市のトップにあまり警戒せずに出会ったということは時系列は絶対能力進化(レベル6シフト)計画前?

Q3,御坂は“他人を犠牲にするくらいなら自分の命を捧げる。自分の命を捧げるくらいなら可能性がある限り死ぬ間際まで抵抗し続ける”
って印象なのですが、ここでは多少自己中補正が掛かったキャラということでおkでしょうか

Q4,>>1はどちらの原作も熟知しているという認識で大丈夫でしょうか

>>79
A1,あくまで御坂個人として知っている、程度にしてあります
LVEVL5なら全員認知しているくらいで

A2,時系列的にはかなりアバウトではあります、大戦の辺りを絡めると収集つかなくなりますが、ある意味パラレル、ある意味新訳くらいでしょうか
理事会に警戒なしだったのは、少し軽率でした


A3,状態による、感じですね
あくまで今は肉体的にボロボロで、諸事情ありきな感じですから
痛みなくして成長は無い思考をメインにさせてます

A4,熟知、とまでは行きませんが
一応、fateはstay night、hollow、アニメ、アンリミ、たいころ、エクストラ、zero、ついでにプリヤあたりを
とあるは、原作、アニメ、レールガン、新約あたりを
それらをざっと、くらいです
現在はwikiを見たりしながら、考えていますが不備はかなりあると思いますが
なるべく頑張っていきたいです

Zero見た後だからこの美琴が雁夜に見えてくる

面白いな、これ
大作過ぎる



つか、あそこの>>1かよwwww
器用すぎるw

アーチャーはやっぱ真名エミヤのアーチャーだよな?つうことはU・B・Wが使えるのか

>>81
魔術回路的にはかなりかぶりです
非魔術師が魔術を使う形としては

>>82
ありがとうございます
あちらも応援ありがとうございます

>>83
はい、エミヤさんですよ
使うかも知れませんね

上条さんご登場の予定は?
上条さんが御坂が聖杯戦争参加した理由をきいたらかなりキレるだろうなぁ。

そうなると
御坂→雁夜
上条→桜
になるな

ならインry→切嗣になるのか?
他のマスターが気になるがみこっちゃんがこうなると黒子がでそうだ

投下します



「っ!!」

「ぬっ!!」

ぶつかり合う不可視の剣と、黒白の双剣。
最初はどうなることか不安だったけれど、今の状況から見てセイバーが圧倒していた。
直撃こそ無いものの、アーチャーは防戦一方、たまに自分から仕掛けても数合の内に押し返されていた。

「すごい…………」

昨夜のランサーとの戦いではしっかりと見ることはなかった彼女の実力。
最も優れていると評価されるセイバーの戦いに私は見ほれていた。
見ほれると言っても、英霊同士の神速の攻防は目にしっかり映ってはおらず、ただ闘争が起きているという事実のみを認識していた。
剣と剣のぶつかり合う鈍い音、互いの刃が空気を切る音、そして小さく聞こえる息遣い。
ここが学生寮の目の前だというのを忘れるような圧倒的なまでの桁違いの戦いが起こっていた。
青と赤の二人がぶつかり合い、その度に鋭い気迫のような衝撃が私の肌を叩いていた。
戦うというものがこうも心に響くものだとは私は初めて知った。
見ているだけで圧倒されてしまうような力と力のぶつかり合い。
―――これが聖杯戦争なのだ。

「ぐぅっ! …………ふぅ、流石に分が悪いか」

「アーチャー…………!」

何度目かの激突の後に、今まで様々な角度から攻撃を繰り返していたアーチャーは大きく距離をとった。
いつの間にか非難していた短髪の少し前に立って、手にした双剣を交差して構えながらこちらを油断無く見つめる。
セイバーは、まったく消耗の兆しすら見せずに変わらずアーチャーを正面に構えていつでも飛び出させる準備をしていた。
セイバーの持つスキルの一つ『魔力放出』
それにより彼女は戦闘を圧倒的優位に進めていた。
力は同程度でも、このスキルにより彼女はブースターがついているように魔力の放出を可能として、魔力そのものを攻撃に転用出来るのだ。
その威力は数回の打ち込みでアーチャーを後退させるほどで、ただ受けに回っているだけの彼を追い詰めるほどだった。
しかも、アーチャーを追い詰めながら彼女自身は微塵の消耗も見せてはいない。
それだけお互いの能力に差があるということなのだろう。
改めて英霊の力に、セイバーの力に感服しているとアーチャーが双剣を交差するように構えだした。
こちらを見ながら、その双剣に魔力を通していくのが見える。

「…………っ!」

「まだ来ますか……!」

こちらに再び走り出したアーチャーに迎えるセイバー。
アーチャーは双剣を構えて、小さく何かを呟いきゆっくりと両手を広げ、構えた。

「何をしてこようと無駄です! 全て打ち破ってみせましょう!」

セイバーはスッと身を沈み込ませると、再び不可視の剣を下段に構えた。
何度目かの激突を予感しながら、私の脳内では検索を終えていた。

「セイバー! 多分アーチャーはその剣を投擲するかも! 投擲した剣は引き寄せられるように戻ってくると思うから気をつけて!!」

「なっ!?」

私の言葉に冷静な顔を保っていたアーチャーの表情が大きく驚愕に歪んだ。
脳内に埋め篭められたデータの内から、彼の持つ双剣の情報を引き出したのだ。
おそらく形状、色合い、魔力パターンからそれを『莫耶・干将』と判断した。
干将・莫耶―――呉越春秋や捜神記に名を残す夫婦剣。
由来曰く復讐を成す双剣。
殺された父の仇を時を経て完了する、咎戻りの性質を持っているとされる。
そして形状能力から、干将を投擲の後に手元の残った莫耶をで引き寄せる力を持つ。
そのときには威力は飛躍的に向上するとされているが、投げるのは必ず干将でなくてはならない。
莫耶は手元に残して置かなくては、その咎戻しの力も発揮されないのだ。
つまり彼はこれから干将を投擲、後に莫耶で切りかかりそして投擲した干将を引き戻して挟み撃ちにする連撃を繰り出す可能性が高い。

「それに干将莫耶なら退魔能力が強いから、セイバーの鎧も少し危ないかも!」

「承知しました!!」

私の助言を真っ直ぐに聞いてくれたセイバーは、一瞬動きの止まったアーチャーに一気に詰め寄った。

「はぁあああ!!」

「くっ!!」

投擲しようとしたけれど一瞬躊躇したらしいアーチャーは一気に間合いを詰めて来たセイバーの一撃を受け損ない体勢を崩した。
地面を転がり、その勢いのまま距離を取って立ち上がると私を見ながら不敵な笑みを見せる。

「なるほど、良いマスターだな」

「褒められても嬉しくないかも」

「嫌われたものだな……」

私を認めたのか、笑みを浮かべたまま彼は声をかけてきた。
そして、スッと両手を下げると合わせるように握られた双剣は消えた。
……さっきのは?
消えたのかしまったのか、それは解らなかったけれど私は現在違うところが気がかりで仕方なかった。
彼はどこのどんな英霊なのか、その点について。
アーチャーという名から弓兵、弓がメインのハズなのに彼は双剣を使っている。
しかも、その双剣は中国の宝具。
その点から鑑みるに彼は中国の英霊ということになるのだろう。
弓を使い、莫耶干将を操る英霊。
私の中にその情報にヒットする人物インプットされていない。
一体彼は何処のどの時代のどんな英霊なのか?
この聖杯戦争において正体不明という利点を実際に感じながら、私は少しでも情報を集めようと注意深く彼を観察していく。

「どうするマスター? この二人は結構な難敵のようだが」

「おぇ、ごぼっ……あ? あー、んぼぉっ?! はぁ、こ、ここでリタイアさせるって、言った、でしょ?」

どうにも気取った印象のアーチャーは、背後で今尚体液を吐き散らしている短髪に振り返らず問う。
それに彼女は本当に変わらない強い眼のまま応えていた。

「短髪……」

「マスター、辛いとは思いますがご決断を…………これは聖杯戦争なんですから」

セイバーは油断無く構えながら私にこの二人の処遇を求める。
彼女にはもうアーチャーを打開する絵が見えてしまっているらしい。
いつでもアーチャーの身を切り裂ける、そう判断したようだった。
つまり、私の決断一つで短髪はリタイアすることになるのだ。
彼女の願いはここで潰えてしまうかも知れない。
でも、まるで幽鬼みたいになってしまった彼女を救えるのはここしかないのかも知れない。
どうしたら良いか迷い、私は唇を小さく噛んだ。

「マスター……」

「うん、わかった…………セイバー」

私は未だに不敵な態度を崩さないアーチャーと、その奥で苦しむ短髪を見据えながらセイバーにお願いする。

「アーチャーを、倒して!」

「承知しました!!」

彼女は走り出した、さっきまで異常の速さで赤い弓兵に迫っていった。
魔力による加速、そして振りかぶる剣もそれ異常の魔力を籠めて一撃で打ち砕こうと全力を傾けているのが私にも解った。
彼女は私のお願い―――命令―――に殉じてその力を解放しているのに、迷ったままの私は目を閉じて小さく祈っていた。
そして――――――。

「がっ?!」

「え?」

閉じた瞼の上を光が撫でた、そして聞こえる予定の無かった女性の呻き声が私の耳に届いた。
予想外の音に私が眼を開けた先では―――。

「せ、セイバー!?」

「ぐ、く、何故、何故貴様がそれを!!」

私からは背中しか見えないけれど、膝をついて大量の血を流している彼女がそこにはいた。
そして、彼女の前には煌びやかな装飾の施された両刃の剣を構えたアーチャーが立っていた。

「自分を王にした剣で切られた気持ちはどうかな? 騎士王殿」

「貴様っ! 何故、何故、それを!!」

自分を王にした? アーチャーの言葉から私は直ぐにその剣の正体を看破した。

「選定の瑚剣、カリバーン…………!?」

彼が手にしているのは、かのアーサー王が齢15のときに引き抜いて王の運命を引き寄せたと言われる、失われた選定の剣・カリバーンだった。
私の脳には一気に疑問が並んでいく。
何故彼がそんなものを?
彼は中国の英霊ではないのか?
どうして私しか、否私も知らないハズのセイバーの正体を?
失われたとされる剣をどうやって?
どの疑問にも仮定以上の答えは生まれない。
そうしている間にも、アーチャーは再びその剣を構えた。
狙うはセイバーの首か。

「相手が悪かったなセイバー」

「ぐ、き、貴様…………」

セイバーは受けた傷が深いのか、アーチャーを、その剣を睨みながら動こうともしない。
そして構えられた剣が、今動き出そうとした。
しかし―――。

「と、言ってもこれをもう一度使うのは難しいようだな」

そう言うと彼が手にしたカリバーンは響く音を立てて光の塵になった。

「貴様! 騎士に情けをかけるつもりか!」

「そうではない、少しマスターに負担がかかってしまっているようでね」

「ぁ、た、短髪!!?」

そう言う彼の背後では、短髪が蹲り痙攣するように身体を揺らしてはまた吐いていた。
さっきの剣をアーチャーが使ったことで、引き出される魔力負荷が彼女の身体を襲ったのだろう。
彼が剣を消したことでどこか「戦いは終わった」そう感じた私は、セイバーと、そして短髪の元に駆け寄ろうとした。
だけど。

「なので、使い慣れたこちらで首を刈らせて貰うとするか」

「な、え、なんで?!」

アーチャーは再び黒白の双剣を取り出すと、大きく構えた。
咄嗟に足を止めて声をあげた私に見向きもしないで、その剣を振り下ろした。


アーチャーからすれば初恋の相手を斬りつけてるんだよな……
てかレベル5一人を使い物にならなくするとか☆どんだけテンパって……まさかの用済み?

特別製の妹達だったりして

むしろそれは聖杯用だろ



つか、実際そうだよなぁ
不意打ちならアーチャー強いよな
面白くなりそうだ

>>85
まだ決まってないですね

>>86
そうなるかも知れない

>>88
黒子はどうなることか

>>97
アーチャーさんはやるときはやりますからねぇ

>>98
妹達は考え中です

>>99
聖杯調整型妹達

>>100
アーチャーさんは強いですから

いろんな所が完全に雁夜状態やな
これがバーサーカーなら確実に死んでる

上条「お前なんか!人を好きになったことも無いくせに!!」

御坂「URYYYYYYYYYYYYYYYYY !!!」

アレイ☆「愉☆悦」

「わりーな、まだこいつをここで落とさせる訳にはいかないらしいんでな」

「むっ!」

アーチャーの剣がセイバーの首に落ちる瞬間、横合いから赤い閃光がそれを打ち落とした。

「え? ら、らんさー?」

「よぉ、嬢ちゃん昨日は痛がらせて悪かったな」

私の前に飄々と姿を見せたの青い影、昨晩合間見えたランサーがそこにはいた。
アーチャーの振り下ろした剣を打ち払い、セイバーとの間を割るように立つ背中を見ながら、行方を見守る。
正直な話、ランサーの行動が理解できずに放心していたのだ。
昨日は私を襲って、否殺しに来た彼が何で今度は助けに来ているのかが解らない。
それでも、彼のおかげでセイバーの首は文字通り繋がったのだ。

「嬢ちゃん! さっさとここから退きな、そこのセイバーを連れてな!」

「え…………う、うん!」

ランサーの声にハッとして、セイバーの元に駆け寄っていく。
その私の前に赤い影が滑り込もうとする。

「させるとおもうかね?」

「きゃ!?」

両手に黒白の双剣を構えたアーチャーが苦々しい表情のまま迫り―――。

「そりゃこっちの台詞だな、弓兵風情が騎士の真似事か?」

「ちっ…………」

―――セイバーを守ったときのようにランサーが私の前に割り込み、その血色の槍で彼の剣を打った。

それからも続けて聞こえてくる鉄のぶつかり合う音に押されながらセイバーの元に駆け寄る。

「大丈夫!? セイバー!」

「ま、マスター……くっ! 申し訳ありません、不覚を取りました……」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ! ……凄い怪我、は、早く治療しなくちゃ!」

近寄って確認したセイバーの傷は思ったように深く、激しいものだった。
彼女の鎧を砕き、青い布が深く赤く染まっていた。
アスファルトの地面にも、夥しい量の血がぶちまけられている。
マスターとして回復の魔術で、治療をしてあげたいけれど、私は私の魔力を上手く指向性にすることが上手く出来ない。
しっかり陣を張ってならまだしも、こんな場所状況でするのは無理がある。
だから、まずはここを離れなきゃ―――!

「セイバー、肩を貸すから、まずは逃げ―――」

「どこ、に、いこうっての、よ……」

「え? た、短髪……」

セイバーの手甲のついた手を掴んで、立ち上がらせようとしたらいつの間にか短髪が近づいてきていた。
ボロボロ、本当にボロボロで、綺麗だった手足には内出血の痕がいくつも出来て、口からはダラダラ汚らしく液が毀れている。
そんな姿なのに、もう立てないほどだろうに短髪はそこに立っていた。
どこか反神々しい、悪魔的な姿で彼女は私の目の前に。

「言った、で、えぼっぁ!? あ、あ、言ったでしょ? あんたは、ここで、リタイア、さ、さぇるって……」

「短髪!」

強い目、強すぎで何かが壊れたような瞳で睨む短髪は、当たり前のように液を吐き漏らす。
その姿に駆け寄りたくなるけれど、セイバーの手を放すわけにもいかないので、その場を動けないでいた。
それに、今の私は彼女に近づくのが怖かった。
その壊れた瞳が寒気がするほど怖かった。

「あっちの、はっ、あ、あっちのは、アーチャーが止めて、くれてるみたい、だし……あ、あんたのサーヴァントは、は、はは、動けないみたい、ね……」

「短髪…………」

彼女のボロボロの身体に紫電が纏わりついていき、髪が逆立っていく。
彼女が、学園都市に7人しかいないLEVEL5、230万人の能力者の頂点の彼女がその力を発現させた。
発電能力者、電力磁力電流電圧電子に至るまでを悉く操るのが彼女能力。
最大10億V、本物の雷さえ招来し、大戦燗電磁砲すら生身で再現するのが彼女、御坂美琴だ。
その彼女が私に向かって能力を使うことの意味。
きっと私なんか一瞬で黒焦げになってしまうだろう。
私の命にはとうまの命がかかっているし、セイバーの願いが乗っかっている。
命を捨てることは出来ない、けれど今の状態で逃げるのは不可能に近い。
以前見た彼女の能力から察するに、御坂美琴の代名詞たる超電磁砲の射程は47.7mほど。
余波でさえアスファルトを抉るその威力を生身の私が耐えられる訳がない。
もしかしたら、セイバーですら倒れるかも知れない一撃。
そしてその射程を逃げ切れる訳もない。
助けに入ってくれたランサーも今はアーチャーとの戦いに身を任せているようだし。
つまる所は絶対絶命―――。

「はぁあ、ぜはぁっ! いま、リタイア……いや、殺してあげるわっ!!」

「マスター! 私が盾になります! その隙に逃げてください!」

短髪の目か、それとも紫電か、危険を感じ取ったのかセイバーはボロボロの身体で私の前に出ようとするけど。

「ぐっ…………!」

「駄目だよ、セイバー……そんな身体じゃ、自分で立てないんだよ!?」

彼女の傷は深く、私の肩を借りなければ立つこともままならないほどだった。
そんな彼女を盾にするなんて、出きるはずもない。
でも、このままじゃ……。
また、また私は都合の良いヒーローを求めてる。
危機に直面する度に、私は自分の無力さを感じてしまう。
それが嫌で嫌で仕方ないけれど、自分では何も出来ない。
目から零れる涙、噛んだ唇から溢れる血。
それらが今の状況に何一つ役に立たないのに止まることはない。

「じゃあね、インデックス…………ばいばい」

「っ!」

短髪はその手に乗せたコインを高く跳ね上げた。
彼女の代名詞超電磁砲を撃つ時の準備姿勢。
私の目にゆっくり見えるコインが再び彼女の指に乗ったとき、そこから想像を絶する一撃が放たれ私を絶するだろう。
でも、何も出来ない。

「ごめん、とーま…………」

「しばらく会わない間に随分と諦めが良くなったもんだね」

え―――。
音にしたら『業』
色にしたら『紅』
意にしたら『火』
否――――『炎』!!
赤く紅くアカク。
血すら燃やし尽くして骨すら灰に変える。
そんな炎が降り立った。
人間の視認速度限界を遥かに超えた一撃を、その赤は容易く溶かした。
そして、私たちと短髪を分かつ様に巨躯の神父がそこに立っていた。

「す、ステイル!!?」

「やあ、遅くなったけど間に合ったようで何よりだ、すまないね人払いのルーンを刻むのに時間がかかってね」

咥えタバコに、少し離れていても鼻につく香水の匂い。
赤髪、2mを越える巨体を持つ教皇級の魔術を操る世界屈指のルーン魔術師がそこに立っていた。

「君の危機だというのに上条当麻は一体どこで何をしているんだか」

「っ…………」

彼の呟きに、更に私は唇を強く噛んでしまう。
それを見た彼は失言と判断したのか、少しだけ戸惑いの表情を浮かべて短髪に視線を合わせた。

「まぁいいさ、彼がいないなら僕が君を守るだけさ、それが僕の近いだからね」

彼の手に握られたルーン符。
力ある文字の刻まれたそれらから爆発するように火柱が立った。

「彼女を傷つけるものを悉く排除するのが僕だ」

「いきなり出てきて、何よあんた、ごほっ?! 死に、たいわけ?」

割って入ってきたステイルに面食らっているのか、短髪は少し後ずさり、そしてその分瞳に力を篭めて睨みつけていた。
ステイルの炎に警戒しているのか、片手で胸を押さえながらバチバチと紫電を迸らせていつでも攻撃へ転移出来るようにしているようだった。

「ふん、能力者による拒否反応か……僕らの領分に入ってくるからそうなると言うのが解らないのかな」

そんな彼女をステイルは一瞥すると、あっさり状態を見抜いたのか小さく鼻を鳴らすとつまらなそうにタバコを揺らすと。
振り返らず私に声をかけてきた。

「どうやら厄介なことに巻き込まれているみたいだね、ここは僕に任せて君は逃げたまえ」

「え、でも……」

「きつい言い方になるけれど君がここにいては僕は全力で戦えない」

ただ助けられる状況につい躊躇をしてしまうけれど、ステイルは優しい言葉のままそれを拒否する。
私に退けと逃げろと失せろと消えろと。
戦場からの離脱を優しく促してくれた。

「相手は魔術師のなりそこないみたいだけど、それでも君に被害が及ぶ可能性は0じゃないからね」

そう言うと、彼は口に咥えたタバコを放り投げ、それを焔滅させ。

「そこのサーヴァント、最低限でも彼女の身を守る盾くらいになってくれよ? じゃないと―――意味がないからね」

そうセイバーに告げると両手に構えた炎剣を交差させるように短髪にたたき付けた。

「今だ! いけ! どこかでサーヴァントの傷が癒えるまで隠れているんだ!」

「っ! セイバー、行くよ!」

「ええ…………メイガス、その命しかと承りました」

爆音を背に、私はセイバーに肩を貸すようにその場を逃げていく。
ステイルがルーンを刻んでくれているからか、人の影もないそこを二人で歪な二人三脚をしながら進む。
誰かが追ってきている気配はないけれど、焦燥感に駆られながら私は必死に先を急ぐ。
早く早く逃げなくちゃ。
死が追ってくる。
身を滅ぼしながらも睨む彼女の強い瞳が脳裏に焼きついてしまっている。
狂想に追われるように、重い足を運び続ける。

「スター――マ――――マスター!」

「ど、どうしたの?」

不意に耳元で声をかけられて、ビクッと動きを止めてしまう。
足を止めると途端に重さに似た疲労が、グッと圧し掛かってくる。
このまま倒れたいのを我慢しながらセイバーを支えて彼女を見る。

「無様を晒した身で申し訳ないのですが、少し落ち着いてください」

「え、あ、でも、でも……」

「私ならば大丈夫です、見てください既に表面の蘇生は終わっています」

―――内部のダメージについてはまだかかりますが。
と付け加えて、彼女はいつの間にか血すら消え去り、砕けていた鎧も元に戻っているのを見せてきた。

「すごい―――」

英霊が改めて人間とは違うことを思い知って眼を丸くする。
彼女は少しふら付きながらも私から身体を離すと。

「以前のマスターと違い貴女からは十分に魔力供給を受けていますからこれくらいは簡単です」

そう言うと彼女は鎧を仕舞い込んだのか、とうまのジャージ姿になると笑顔を見せてくれた。

「私も連戦は難しいですかが今はある程度回復しました、だからこそ落ち着いてください」

「う、うん、ごめん……」

「マスターが謝る必要はないです、頭を下げるなら私です不甲斐無い戦いをしてしまい誠に申し開きもありません」

彼女はそう言うとしっかり頭を下げてきた。
その堅苦しさに私はどうにもこそばゆさを感じてしまう。

「じゃ、じゃあ、うん、今回は二人とも悪かったことにしよう? 私がちゃんとした魔術師ならセイバーを補助したり出来たんだし」

「そう言って頂けるなら幸いです…………」

私の一言に安心したのかセイバーは一息つくと、少しだけだけど綺麗な笑顔を見せてくれた。
でも、それh一瞬で直ぐに戦闘時の顔に戻る。

「闇雲の移動は避けましょうマスター、どこか身を隠せる場所を探してそこを拠点としましょう」

「う、うん、そうだね…………」

彼女の言葉に頷くけれど、私にとうまの部屋以外に身を隠せる場所なんて、それこそ路地裏くらいのものだ。
落ち着いたは良いけど答えが浮かばない思考に足が完全に止まってしまった。
それでも必死にどこか、しばらくでも良いから身を隠せる場所を考えていたら。

「あれー? シスターちゃんじゃないですか、こんなところでどうかしたんですか?」

着慣れた、優しい響きの声がかけられた。

今日はここまでです

誤字は気を付けます
つい書き上がったらテンションあがってそのまま投下してしまう癖がありまして
これからはずっと少なくなるようにしますので、どうか見守ってやってください

>>118
インデックスの記憶してる魔術書10万3000冊と一切パターンが合致しない全く異なる未発見魔術が相手なら、強制詠唱は無理だと思うよ

>>1
イギリス清教と魔術協会はどういう関係ですか?ネタバレにならない範囲でお願いします。
それと、感想以外のコメは控えた方がよろしいでしょうか?

>>119
魔術協会は組合
各魔術陣営は派閥みたいな感じですかね

そうですね、予想考察はちょっと控えていただきたいのが本音ですね
展開が被ると困るので
あと、こちらからも返せるものがない場合が多いので

まぁ
軽い予想ならありがたいのですが
深く予想されたり考察されたりすると、それが当たりそうで怖かったりはしてます
出た設定に対して以外の質問だと、使おうとしてたネタと被りそうだったりもしますし
なるべく抑え目にして欲しかったりは本音ですね

投下します

「やっぱりシスターちゃんには海外のお友達がいるんですねー」

相変わらずの小萌のアパートに招かれた私とセイバー。
小萌はニコニコ笑って、私たちにコーヒーを入れてくれた。
セイバーを「私の昔の知り合い」と紹介すると快く受け入れてくれたみたいだった。
この柔軟性にたまに困るときもあるけれど、今は本当に助かっていた。
少しばかり気になることもあるけれど、今は身体を休めることに専念しよう。
そう決めて、まったりと手足を投げ出した。
考えることは山ほどあるし、さっきの戦いで感じたことも多々ある。
考えることはアーチャーの正体だったり、ランサー陣営の思惑だったり。
何より短髪のあの異常だったりだ。

「あれは…………」

あれは―――おかし過ぎる。
精神(ココロ)が壊れてしまっているようだった。
あの状況でそう見えただけで、実際にあれが精神の崩壊を起こしていたかは解らない。
でも。

「普通じゃないよ、あんなの……」

あの強い、強すぎて壊れた瞳を思い出すだけで身体が震えてしまいそうになる。
超能力者である短髪が自力で聖杯戦争を知って、自力で魔術を使えるようになったとは考えにくい。
そうなると手引きしている人がいるのは間違いないだろう。
ステイルが出てきたことも考察の一部に入れれば、学園都市だけでは収まらない組織の動きがある可能性が高い。

「考えることばっかりだよ……」

パタリと後ろに倒れ込んだ私を小萌はニコニコ笑って見ていた。
いつも通りの笑顔で「お疲れなんですねー」と、優しく。
それをボーっと見て、次にコーヒーを興味深そうに飲んでいるセイバーに視線を向けた。
少しだけ身体を近づけて、小萌に聞こえないように声を潜める。

「ねぇ、セイバー大丈夫なの? 外見は治ったって言ってたけど……」

「……えぇ、あのときの一撃はあくまで物理的一撃で概念能力の上乗せはされていませんでしたから」

「じゃあ、大丈夫なんだ」

「はい、このまま魔力供給を受けて無駄な消費をしなければさほど苦もなく傷です」

そう言って彼女は気品のある笑みを見せた。
だけど、私は彼女の眼にある迷いに気付いていた。
アーチャーがセイバーに一撃を入れた剣についてだろう。
セイバーに縁在るという意味では最高の位にある剣だろう。
彼女は私が自分の真名を知らないと思っているから、そのことには触れないのだろうけれど。
アーチャーについては私も考えをいくつか巡らせて、解答はいくつか出ていた。
まだ確実な解答ではないけれど、あと少し情報が集まれば容易く正解になるだろう。

「…………マスターは、アーチャーが使用した剣の正体を看破しましたか?」

「え?」

また考えに没頭していたら、静かな声でセイバーが尋ねて来た。
その質問を脳内で何回か反芻してから、そっと唇を動かす。

「多分だけど伝承、情報、形態、魔力範囲、霊数パターンから―――」

言って良いか少しだけ迷うけれど。

「―――カリバーン、アーサー王を生み出した運命分岐を動かす剣だと思う」

「……………………そう、ですか」

私の答え。
カリバーン。
彼女が何より知っているのだろうけれど、少しだけ悲しそうな顔をしてから。

「随分と高名な剣に傷をつけられたものですね……名誉に思えますよ」

そっと、今はもう痕も残らない傷跡を手で押えてそう告げてきた。
私は何も言わずにそのまま、また思考に心を向けていく。

「そう言えばあのメイガスは我等の友軍ということで良いのですか?」

「あの、メイガス? ……あぁ、ステイルのこと?」

しばらくしてまた声がかかった。
正座を崩さない彼女は、笑顔の小萌と対面するようにしながら私に質問をしてきた。
寝転がったまま私は、それに答える。

「友軍、味方かどうかは解らない、かな……」

「そうなのですか? あの者はかなりの術者と見受けましたが、彼が手助けをしてくれるならば戦は優位に進められると思いますが……」

「…………」

まだ会って間もないけれど、『彼女らしくない』発言だなぁと思いながら目を開く。
実際セイバーの言う通りルーンを究めるステイルの協力があれば聖杯戦争は優位どころか勝利に手が掛かると思うけれど。

「良く解らないんだよね、仲間なのか敵なのか……」

「敵意は見られませんでしたが複雑な間柄のようですね」

「複雑、なのかな……」

複雑なのは間柄か、それとも私と彼の関係か。
どこか捻れたままの関係を思い返すけれど、そこはお互いに触れたくない部分だ。

「彼が施した人払いのルーンの効力範囲から見るに、魔術に見識が浅い私でも解るクラスの実力者のようですからね」

「うん、ステイルは強いよ、凄く…………」

強いのは解る解っている。
私と変わらない年でどうしてあんな高みにいるのか解らないけれど、彼は強い。
でも、私は彼が苦手だ。
いっつもとうまを危ない場所に導いていくから。
だから―――彼とは手を組みたくは無い。
セイバーが『らしさ』を失って自信を亡くしている理由は解るけれど、彼への助力は避けたい。
それに、出来ることなら私だけの力でとうまを助ける手立てを作りたいのだ。

「難しいけれど、私たちだけでどうにかしないとね……」

「………………そうですね、マスター」

彼女の提案を暗に拒否をする。
私たちだけで戦っていくと。

「だから、頑張ろうセイバー」

「えぇ、私はマスターの意志に従います」

小さな声で、何とか戦争を続ける意志を確認しあう。
聖杯のためにここに召還されているセイバーは、そのモチベーションをそう簡単には失わないだろう。
でも、私は別だ。
とうまの為と言ってもどこで心が折れるか解らない。
自分では何も出来ない辛さが心に罅を入れる。
まるで土壁にゆっくり水をかけて砕くように、徐々に心が侵食されてしまう気配。
それが肩の後ろから来るのを感じていたのだ。
払拭する為に、決意をわざと口に出してからゆっくり身体を起こす。

「さっきの話だけど、ステイルの助力はなるべく避けたいけれど、この学園都市で戦う以上は人払いのルーン、もしくはそれに似通った術式が欲しいところだよね」

「そうですね、ここには無力な子供が多いようですから、何かあってからでは侘びることも出来ません」

私の言葉にセイバーは素直に頷いてくれた。
それに私は少しだけ安心する。
彼女が他者を踏み台にして願いを欲するタイプでないと確信できたから。

「その点で言えば、やはりあのメイガスの技量は捨てがたいですね」

「そう、なんだよね…………」

ステイルが施した人払いの範囲は、戦闘中心地からこもえに会ったところを含めて恐らく1km近くは続いていた。
それだけの範囲に効力を持たせれば安心して戦闘が出来る。
今でも効力は続いているところを見ても、桁外れの技量だ。

だけど彼に頼ってしまえば、多分頼りきりになってしまう気がする。
それでは駄目だ、今までと何も変わらない待っているだけの自分だ。
だから出来ることをする。
セイバーが戦ってくれるなら、私は必死に考える。
何も出来ないけれど、考える。
役に立たないかも知れないけれど、必死に考えて考えて考えて。
少しでもセイバーが有利に戦えるようにしなくちゃ。
その為には変なプライドは捨てなくちゃいけないのかも知れない。
血を流して伏せるセイバーの姿を思い浮かべると心が苦しくなる。
私の我侭で、これからも彼女のあんな思いをさせることになるかも知れないなんて。
だったからプライドも何もなく、ステイルに助けを求めてしまえば良いのかも知れないけれど―――。

「マスター………………私はサーヴァントである前に騎士です」

「セイバー…………」

「私は貴女の剣であり、この身は貴女を守る盾です―――」

彼女の声に聞き入る。
少し離れた場所で笑う小萌が凄く遠くに感じられて。

「主の信頼に堪える戦果をと、主の信頼に対する忠誠を持って戦います」

迷う惑う私に対して、自身も動揺しているのに疲弊しているのに、言葉自身が意志を持っているかのような音を届けてくれた。
どんな優美な音楽より私の心にそれは深く刺さり、そして不安を切り裂いた。
それは、あの少年が見せる気高き拳に似ている尊さだった。
私は無言で頷くと、笑顔を見せる。

「ありがとう」

と、万感の謝辞を一言に籠めた。

「何だか良く解らないですけど、お二人が仲良しみたいで先生はハッピーです♪」

「ありがとう、こもえ」

見慣れた笑顔のままこもえは立ち上がり。

「ではー、先生はちょっとお夕飯のお買い物でもしてきますねー、二人はゆっくりしててださい」

財布を持ち上げて見せて、私とセイバーに変わらぬ笑顔を見せた。

「ありがとー、こもえ」

「感謝します」

「いえいえ~」

腹が減っては戦が出来ぬ、まさにその通りだとおもうから小萌の申し出ありがたかった。
でも、その前に一つだけ聞いて置かないといけないことがある。

「そうだ、こもえ……ちょっと良い?」

「なんですか、シスターちゃん?」

お財布片手に玄関に向かったこもえが振り返る。
そこには変わらぬ笑顔が張り付いて―――。




「何でこもえは、人払いされた地域にいれたのかな? おかしいよね?」




―――顔に張り付いて離れないようだった。

張り付いた笑顔を見据えて、私は言葉を続ける。

「あれはね、何の訓練も耐性もない一般人が潜り抜けられるレベルの術じゃないんだよ」

……ううん、例え耐性があってもそう簡単に抜けれれるものじゃない。
そんなレベルの人払いが施された場所にひょっこり現れたこもえ。
どう考えてもおかしい。
言ってしまえば偶然奇跡もあるかも知れないけれど。
今この状況でそんな現象を期待する訳にもいかないだろう。
つまり彼女は、月詠小萌は必然意思でそこにいた。
一般人ならば、どうあっても入り込めない人払いの結界内に彼女はいた。
見逃しきれない事実を真正面から突きつける私。
突きつけられながらも笑顔を崩さないこもえ。
私の横で、いつでも動けるように座するセイバー。
空気が凍るような静けさの中で動いたのは、こもえだった。

「おっきなひとが悲しむんですよ」

「え?」

笑顔のまま、彼女は口を開いた。
その眼から涙を流しながら。

「私が悲しい顔をするとおっきな人が凄く悲しんで、悲しんで…………」

「こも、え?」

短髪のときに感じた寒気に似た何かが私の背中に纏わりつく。
それに対抗するようにセイバーは、いつの間にか鎧を装着して不可視の剣を携えて前に出た。
笑顔のまま涙を流すこもえの姿に何を感じるのか、セイバーは無言のまま。

「だから笑顔でいるんですけど、でも、それでも、駄目なんです、おっきな人は守りたいみたいなんです…………」

何を言っているか解らないけれど、この寒気は何なのだろうか。
こもえは一般人、能力者でも魔術師でもないハズの一般人なのに。
どうして―――。

「どうして、こもえから魔力が…………」

彼女の小さな身体から漏れ出してくる魔力。
それは濃厚で濃密で、これほどの濃度ならばルーンの人払いにも力技で対抗出来そうなくらい禍々しい。
そんな物が滲むように漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して漏れ出して。
漏れ出した魔力がサーキットを巡って行く。
ただの指向性を持たない魔力の塊が、研ぎ澄まされ世界を塗り替えていく。
冷や汗すら出ない緊張に一歩も動けないでいる私も前でこもえは、ゆっくり両手で顔を覆った。
その手の間から涙を零しながら――――――。

「守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたい守りたいって!!!!!!」

叫ぶ声に獣の呻きが混じり込む。

「守りたいって! 守れなかった人をもう一度守りたいって叫ぶんですよっっっっっっっっっっっ!!!!!!」

「マスター!! 危ないっ!!!」

「え?」

どかん。
そんな陳腐な擬音でこもえが背にする壁が吹き飛んだ。
吹き飛んだ先からは、こもえの言った『おっきな人』が入ってきた。
真っ黒い肌に左右移植の眼。
2mを越す巨躯に、鍛え抜かれた肉体が携えるは斧剣。
力の塊がそこにはいた。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!!」

獣叫びと共に振り上げられた斧剣。
そして、再び耳を疑いたくなるように破砕音が響いた。

「大丈夫、大丈夫ですから、私は泣いてませんから、悲しんでませんから、だから大丈夫ですよ―――バーサーカーちゃん」

嘘みたいな破砕音に紛れて、こもえのそんな呟きが聞こえて来た気がした。

今回はここまでです



まさか小萌のサーヴァントがバーサーカーとは…

小萌「バーサーカー!やっちゃえ!」



何か笑えたww

>>88
インちゃん「見ていてくれたかな。とうま。今度また殺したよ。短髪と同じように殺したよ
 短髪の時のようなへまはしなかった。私は大勢の人を救ったよ。」

俺「ふざけるな!ふざけるな!馬鹿野郎ー!」

続きマダー?
半端なく期待してます

時間が開きましたが投下します

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

セイバーに抱えて貰いながら、アパートの前の地面に私は着地した。
その直ぐ後に地面を食い破るような叫びが響き渡った。
さっきまで私たちがいたこもえのアパート、そこを跡形もなくなるくらいに破壊して立っている巨人。

「あれが、バーサーカー…………」

燃え立つように逆立つ髪、そして見下ろす異色の瞳。
屈強さを形にしたような巨躯。
おそらく今まで会ってきたランサー、アーチャーとはまた異質の存在。
そして―――最強の存在。
情報の通りならバーサーカーその真名はギリシャ神話最大の英雄『ヘラクレス』
神の息子たる偉大にして巨大なその魂。
知名度、崇拝度、畏敬度。
どれをとってもセイバーを上回るだろう。
とりわけその出自は更に。
あくまで人の身に王たる運命を詰め込んだアーサー王。
それに対して神たる身のまま神話の世界を戦い抜いたヘラクレス。
基準となる元が違い過ぎる。
しかも、それがバーサーカーとなるともはや―――。

「うそ、なにこれ……こんな、こんなのっっ!?」

「インデックス、どうかしましたか?!」

こちらを見下ろしている黒い巨人、バーサーカーを聖杯戦争のマスターとして確認して私は悲鳴を上げそうになった。
それを心配そうに覗き込んでくるセイバーの顔にも余裕はない。
武装してはいるが、まだどこかぎこちないのは、さっきの傷が当たり前に癒えていないからだろう。
だけど、今の私はそのことに気を配る余裕なんてなかった。

聖杯戦争において、マスターは目視したサーヴァントの実力を認識出来る。
それには個人差があり、動物に例える者、色に例える者、とそれぞれが一番認識し易い形として見せる。
そして私の認識方法はアルファベットによる降順表記だ。
私のサーヴァントたるセイバーのステータスはこれ。
筋力 C 魔力 C
耐久 B 幸運 B
敏捷 C 宝具 C

そして、昨夜に私を襲ったランサーが、これ。
筋力 B 魔力 B
耐久 B 幸運 E
敏捷 A 宝具 B

先ほど戦闘をしてきたばかりのアーチャーはこれだ。
筋力 C 魔力 D
耐久 B 幸運 C
敏捷 B 宝具 ??

皆それぞれ得意分野不得意分野があるのが解る。
これが全てではないけれど、戦闘の重要なファクターには変わりない。
ランサーは抜きん出る部分もある。
アーチャーはどこか不気味さが抜けない。
セイバーはバランスよく、優秀なのが解る。
それぞれを表すステータス。
そして、今新たに私の中にサーヴァントのステータスが刻まれた。
大きく強く猛々しいサーヴァント。
ヘラクレス―――バーサーカー。


クラス 『バーサーカー』
マスター『月詠 小萌』
真名  『ヘラクレス』
筋力 『A+』
魔力 『B』
耐久 『A』
幸運 『B』
敏捷 『A』
宝具 『A』

「こんな、バケモノ……どうやって」

突き抜けているとか強いとかそんなレベルじゃない。
巨大すぎる戦力。
セイバーならばきっと、どんな敵にも太刀打ち出来る、相対出来ると思っていたのに。
なんなんだ? この桁違いの力は…………。
どうやってこの化け物に太刀打ちできるのだろうか?
策を練る―――。
―――策が通じる相手か?
逃げる?―――。
―――逃がしてくれる相手か?
正面戦闘―――。
―――相手になるのか?
目の前にそそり立つ壁と表現すべき敵と相対して。
私は慄き。
セイバーは戦いた。
剣を下段に構える彼女の基本姿勢のまま、セイバー自身もバーサーカーの危険度を感じ取れるのか、かつてない緊張をその顔に浮かべていた。
こちらを見下ろしたまま動かないバーサーカー。
その眼は確かに私たちを捉えていた。
否、文字通り捕らえているのだ。
もし、今不用意に動いたら一瞬で肉塊にされる予感。
それを感じ取っているからこそセイバーは動けないのだろう。
それに、彼女はさっきの戦闘で負った傷すら完治には程遠い状態なのだ。
満身創痍、とまでは行かないけれど、渾身の全力で当たらなくてはいけない相手にそのハンデは大きすぎる。
それでも彼女は逃げる素振りは見せずに、ただバーサーカーの吐いた息すら凍りそうな冷たい圧力に対していた。

「マスター…………」

「な、なに、セイバー?」

ステイルのルーンの効力はまだ続いているらしく、人影物音しないこの区画では呟き声すら良く通る。
セイバーの小さな呟きになるべく控えた声で反応をする。
その間も私たちはバーサーカーからは一秒も目を離さないでいる。
一瞬でも視界からアイツを外したら胴を両断されるか、正中線で真っ二つか。
どちらにしろ殺されることになる、そんな気がするから口だけを動かす。

「こちらから一気に勝負をかけます、私が突撃すると同時にマスターは安全圏まで退避してください」

「っ!」

セイバーからの予想通りの提案。
そうなるだろうと予想予測していた私への配慮と逃走の補助。
今この状況で私は足手まといでしかない。
ここでセイバーに「私も残る」そう言っても負担にしかならないのは解っている。
解っているのに私は即答が出来ずに、乾いた口の中で舌を少し動かしてからやっと小さく息を吐くように答えた。

「うん、わかった…………気をつけて、セイバー」

「はい、お任せください…………」

ここでも私は逃げる側、守る側。
隣にいる誰かの為に戦えない存在。
いては足を引っ張り。
いては無力な置物で。
いてはいけない。
逃げることだけならそれなりに自信があるので役割にしたら合っているのだろうけれど、悔しい気持ちは拭えない。
無力は罪じゃないけれど。
無力にあまんじることは罪だろう。
手をギュッと握り締めて、せめて後方からでもセイバーの助けになろうと言い訳をする。
そして、そのときを待つ。

動かない世界。
見下ろす巨躯―――。
―――見上げる矮躯。
ただ握っているだけの破壊の斧剣―――。
―――しかと構えられた不可視の剣。
いるだけでその場を制圧するような瞳―――。
―――強く気高く戦に殉じる瞳。
二人のサーヴァントは強く強く相対し、そしてそのときは来た!

「はあああぁぁああああ!!!!」

「っ!」

気合一銭。
渾身、振り絞った様な叫びの尾を引かせながらセイバーは魔力のブースターを利用して飛び上がった。
まるで弾丸。
それは砲弾のような速度で、青い影を引きながら彼女はバーサーカーに飛び掛った。
それを視界の端に乗せながら私は走り出す。
安全圏に、セイバーの邪魔にならない位置に。
それでいて二人の戦いが見える場所まで。

「はああああ!!!」

「■■■■■■■■!!!」

「っ!!」

背後では戦闘が始まったらしく、金属のぶつかり合う鈍い音とセイバーとバーサーカーの叫びが聞こえてくる。
周囲をビリビリと振動させるような戦闘は着実に破壊を振りまいているようで、建物が崩壊するような音が聞こえる。
振り返りたくなる衝動に耐えながら、震える足を叱咤して私は近くのビルに駆け込んだ。

「はっはぁ! はっ!! はぁああ!!」

ビルの中にいても聞こえてくる破砕音。
二体の英霊の大げさではない戦争の音。
私は必死に階段を駆け上って、ビルの屋上に出た。

「はぁ、はぁ……っし、ここ、なら」

広い屋上、何のビルかは知らないけれど、人払いのルーンがここにも刻まれているようで人の誰もいない。
私は汗を流しながら、よろよろとビルの淵に近づいていき、下を眺める。

「はぁ、はぁ…………すごい」

そこは本当に戦場だった。
ぶつかり合う二つの剣。
その度に響く耳に残る金属音。
セイバーという小さな敵を押しつぶそうと暴れるバーサーカーに対して。
セイバーは大きな敵を翻弄するように―――ではなく、正面から打ち合いそして互角の勝負をしていた!

「ぜぁああああああ!!!」

「■■■■■■■■■■!!」

離れてみている私でも息を呑むような裂帛の気合。
セイバーが構えた不可視の剣が、バーサーカーの斧剣を弾き飛ばす。
そのまま懐に潜り込み、振り下ろす!
が、バーサーカーはその巨体であり得ない身軽さを見せ、一瞬早く後ろに飛びのいた。
ガードレールを踏み潰し、アスファルトを砕きながら着地して地面に手を着いた黒い巨人。
そこに一拍の停止もなくセイバーは大上段に構えて飛び掛る。

「あああああぁああああああ!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

落下速度、そしてセイバーの魔力放出により速度威力共に果てしなく増加された一撃をバーサーカーは防ぎ、そのままになぎ払った。
吹き飛ばされたセイバーは空中で器用に身を捻ると、悠々と近くの自販機の上に着地をしてみせた。

一秒に満たない対峙を終えて両者同時に弾け飛ぶ。
セイバーは自販機をへこませる踏み込みのまま、下段に剣を構え。
バーサーカーはアスファルトを弾けさせながら、斧剣を上段に構えた。

「でぁぁぁああああああああああ!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■!!!」

再び、何度目かのぶつかり合いを果たす。
上からその重さ、力を利用して押しつぶそうとする斧剣の一撃を、セイバーは下から掬い上げるような剣撃で弾き飛ばした。
眩い火花を散らして、一瞬だけ距離を取るが瞬きの刹那にそれは0に変わる。
一撃で家さえ崩壊させそうな斧剣の威力、それをバーサーカーは風のような速さで奮う。
それはまさに台風のようで、近寄っただけで全て飲み込まれそうだった。
そんな台風にセイバーは真っ向から斬り進んでいく。
卓越した技術、そしてそれを裏付ける自信、それらを統括する勇気。
三合果たして、バーサーカーの強烈な攻撃を全て防ぎ、さらに追撃を―――!
横薙ぎに振るわれた斧剣をセイバーは正面から弾き飛ばし、体勢を崩した巨体に踏み込む。
そのまま下段の構えから繰り出すは逆袈裟の一撃!

「終わりだぁぁぁあああああ!!!」

防ぎ様の無い一撃をバーサーカーは無防備なその身に正面からくらった。

「凄い、セイバー……凄い!!」

崩れ行くバーサーカーを見ながら私は感動に打ち震えた。
どうやって勝てば良いのかと不安になったような相手に、セイバーは小細工も何もなく正面から勝ちきった。
あのギリシャの英雄ヘラクレスを、アーサーが討ち取ったのだ。
しかも、セイバーは手負いの状態で、である。
思考を回してセイバーをアシストする暇もないような、それほど激しい戦禍で戦火で戦渦だった。
無力さを感じなくは無いが、今はこの意味ある大勝に歓喜しようと私は入り口に走り寄り。

「まだ、終わってないのです、シスターちゃん……」

「え? こ、もえ…………?」

戸口に寄りかかるように立った小萌。
その眼は普段の様に優しく細められて、小さな身体でフラフラと近づいてきた。
何か、短髪のときに似た恐怖を感じて後ずさるけれど、こもえは止まることは無く、私の横を通り過ぎて、さっきまで私が観戦をしていた場所まで進んだ。

「ほら、見てくださいシスターちゃん」

「え?」

こもえは、優しい笑顔のまま振り返って、下を指差した。
子供に優しく教えるようなその仕草につられて、フラフラ近づいてこもえの隣に立って下を見た。

「な?!」

見た先、荒れ果てた一角。
先ほどセイバーがバーサーカーを討ち取ったそこでは―――。

「ぐ、が! 貴様、何故! ぐぅううう!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

―――バーサーカーが傷の一つもない身体で立ち上がり、セイバーの身体をまるで玩具のように掴んでいた。

「な、なんで!? さっきやっつけたのに!? あっ…………」

理解できない状態に声をあげたけれど、私は直ぐに隣にいるこもえを見た。
そうだ彼女はマスターだ。
マスターということは曲りなりにも魔術師の一端。
それに、彼女はかつて手ほどきを受けながら私の傷を癒してくれた回復の魔術を行使できた人間だ。
まさか、こもえにそこまでの技量が?!

「違いますよシスターちゃん」

「え?」

私の予想を否定する声。
彼女が考えをどこまで読んだかは解らないけれど、優しい声で否定をすると。

「何にもしてないんです、ただバーサーカーちゃんが強いだけなんです♪」

そう、どこか誇らしそうに告げてきた。

バーサーカーが強い、そんなことは知っている。
だけれど、これは以上だ。
バーサーカーの一撃にも匹敵するセイバーの一撃をまともにくらったハズなのに未だ悠々と動いていて、しかも傷すらない。
そんなことがありえるのか?
私は停止仕掛けた脳みそをどうにか回転させる。
バーサーカー―――ヘラクレスの生涯に絞ってその原因を探った。

「……………………ネメアの獅子の毛皮?」

たどり着いた答えはそれだ。
かつてヘラクレスが生前に行った『十二の難事』と言われる行の最初の一つ。
ネメアに住んでいる剣も矢も通さない人食いの獅子を退治したという出来事だ。
そして、ヘラクレスは殺した獅子の毛皮を剥ぎ取り身に纏っていたという。
剣も矢通さない強固な守りの毛皮。
それの効力だろうか?
いや、それにしてはそれらしき物が見あたら無い。
常時展開されている宝具なのか?
考えても思いつかない答えに、私は縋る様にこもえを見た。
私のそんな視線にも笑顔のまま彼女は、片手の人差し指を立てて、教師が教えを授けるように振る舞い。

「バーサーカーちゃんの身体はとっても硬いんです♪」

「か、硬いって…………」

簡単な言葉、だけどその通りなんだろう。
セイバーのランクCの宝具の一撃を受けても傷がつかないところを見ても、それがバーサーカーなのだろう。
こもえは詳しく理解はしていないようだけれど、深くは理解しているようだった。
バーサーカーの特性宝具、その存在を。

「が、あああああああああ!!!」

私がこもえに集中している間に、セイバーは何とか腕から逃れて様だ。
息を荒らげながら距離を取り、打ち倒したハズの相手を強く睨みつけた。
彼女の剣は普段の下段構えではなく、まるで怯えるように正眼に構えていた。
正体不明に切りかかる愚を行わずに、努めて冷静に対処を考えているようだったけれど。
相手は斬ってもしなない大巨人。
そんなものに攻略の糸口はあるのか?
それと、今は思考の端で切り離しているけれど、こもえの存在も理解できない。
一教師であった彼女が何故この聖杯戦争に参加しているのか?
彼女とそう長い間ではないが付き合ってきたけれど、魔術師の一端も匂うことはなかったのに、何故?
どこかにこの状況を打破する基点はないかと必死に考える。
さっきのように都合良い増援を待つ訳にはいかない。
今あるこの場の自分とサーヴァントだけで切り抜ける他にはない。

勿論一番簡単は方法は解っている。
それは、私の隣にいるこもえを止めることだ。
彼女がマスターで、バーサーカーがサーヴァントである限り、元を断てば自然と流れは終わるだろう。
他の有用な策が浮かばない私は直ぐに、それを実行に移した。

「こもえ! やめさせて! バーサーカーを止めて!」

下を笑顔で見つめる彼女の肩を掴んで叫ぶ。
バーサーカーを退かせて欲しいと。
だけど、彼女は―――。

「バーサーカーちゃんは強いですね……本当に」

「こもえ!!」

「あんなに強いバーサーカーちゃんが守れなかった人って誰なんでしょうね?」

「こもえ! 聞いて! お願いだから!!」

肩を揺すっても、こもえは私の話を聞いてはくれないで、ただボンヤリ優しそうに笑っていた。
短髪だけじゃなくて、こもえまで。
異変的な魔術行使による精神汚染なのか?
彼女を正気に戻す術を考えなくては!

「無駄ぜよ…………インデックス」

「え? あ、もとはる……」

声のした先を見れば、もとはるが立っていた。
ランサーに向かっていったときのものか、お腹には包帯を巻いているようだった。

「あ、土御門ちゃん、その説はどうもです」

「先生の為ならお安いごようだにゃー」

もとはるは軽い、普段のように近づいてきてビルから身を乗り出して下を確認する。
そこで戦うセイバーの姿をしばらく眺めて。

「これは、上手くない状況だな……」

そう呟いて、こもえの方に身体を向けた。

「小萌先生、ちーっとお願いがあるぜよ」

「? なんですか? 土御門ちゃん」

「あの黒いの、バーサーカーを止めるとかってのは―――」

「無理ですよ♪」

もとはるの言葉に被せる様に食い気味に否定をしたこもえ。
笑顔なのに、短髪より怖い何かを私を感じてしまう。
もとはるもそれは同じなのか、僅かに身体を引いて汗を流していた。

「インデックス、ここは全力で逃げる以外ないぜよ」

「でも、どうやって?」

こもえの説得を諦めて、もとはるは私に向き直った。
逃げる、それには賛成だけれど、どうするかが問題だ。

「バーサーカーは速いから直ぐに追いつかれちゃうよ」

バーサーカーのスピードはセイバーを上回る。
いくら逃げてもいずれは捕まってしまうだろう。
不安がる私にもとはるは自信ありげに笑うと。

「簡単ぜよ、横に逃げずに縦に逃げれば良いんだにゃー」

「縦? …………あ、縦」

「そう、セイバーのブーストと小回り、そして逃げることならお前の得意分野だろ?」

「うん…………うん!」

もとはるの言葉に強く頷く。
そうだ、戦うことは出来ないけれど、私には逃走の技術経験がある。
そこを生かすべきは今しかない!
身を乗り出しビルの下で激しい戦いを繰り広げるセイバーを見据える。
フェンスを越えて、ビルの淵に立った。

「もとはる、ありがとう……」

「どういたしまいてだにゃー」

「それと、こもえ」

「なんですか?」

肩越しに振り返り、こもえの笑顔を見つめた。

「絶対、止めに来るから」

「…………そうですか」

それだけ告げると、私はビルから身を投げた。

「セイバぁぁっぁあぁあああああああ!!!!」

今日はここまでです

>>137
色々迷った結果ですね
イリヤっぽいかなと

>>138
一瞬ねーちんでもありかなとか思いました

かんざきさん「やってしまいなさい! バーサーカー!」

>>140
ありがとうございます
頑張っていきますね

今後の展開にワクワクする

ライダーさんは……「望まずしてバケモノになった薄幸の女性」と考えると、やっぱあの人なんやろか

バーサーカーステータス高杉わろた

>>155
ありがとうございます

ライダーさんは結構迷ってますね

>>156
原作と似たようなもんですよ……確か

ヤバい、ナニコレ面白い
もっと投下スピードあげてくれたら嬉しいな

あとは、ライダーとキャスターだけ?出てないの

>>158

とりあえずsageれ、アサシン出たか?

インデックス セイバー

美琴 アーチャー

ランサー

小萌 バーサーカー

ライダー キャスター アサシン

>>158
投下スピードについてはご容赦ください
しかし、ありがとうございます

>>159
ええ、そんな感じです
配役はまだ決まりきってはいませんが

投下します



「インデックス!? なにを!!?」

「飛んで!」

バーサーカーと距離を取っていたセイバーは、私のあまりにもな無謀に口をあんぐり開けて驚いていた。
その顔が面白くてちょっと笑いながら私は彼女に命令をする。

「っ!」

その言葉にセイバーは足元の瓦礫をバーサーカーに蹴り飛ばすと、飛翔そのままに空中の私に向かい身体を抱きとめてくれた。

「インデックス! 貴女は何を!?」

「話は後! 正面に剣を構えたまま少し体を右に捻って!」

「え? ぐっ?!」

混乱というより困惑、そして怒りを滲ませた表情のセイバーは強い口調で私を問い詰めようとしたけれど、今はそれどころじゃない。
魔力放出で飛び上がったセイバーを追うように、事実追跡してバーサーカーが迫っていた。
一足飛びで跳ね上がった巨体は、私とセイバー諸共断とうと横薙ぎに斧剣を構えている。
だけど―――。
―――それは遅い。

「■■■■■■■■■!!!」

「ぐ、くぅ!!」

雄たけびと共に放たれた一撃を、セイバーは私の指示通りに剣を構えていた為に何とか受けきる。

「力に逆らわないで! そのまま受け流してその勢いで左斜め後方に飛んで! そしたら電灯があるからそれを蹴って上方に飛んで!!」

「っ! 了解しましたマスター!!」

ここに来て何とか冷静さを取り戻してくれたセイバーは、私の指示に外れることなく、バーサーカーの力を受け流してそのまま後ろに飛んだ。
私を片手で抱えたままの不安定な姿勢のままで、彼女は指示に従う。
私の言葉を疑うことなく信じて飛んでくれている。
彼女は私の思いに応えて自分の想いを託して飛んでくれている!!
だとしたら―――私もそれに応えるしかないだろう!!!

魔力の放出により、直線的にだけだけれども敏捷Aに迫る速度を可能にしているセイバー。
一介のサーヴァント相手なら十分に、見通しの良い直線でも逃げ切れるだろう。
だけど、相手はバーサーカー。
そう簡単ではない。

「■■■■■■■■■■■■■!!」

獰叫一声。
バーサーカーは自分の攻撃を利用して大きく離れようとしているセイバーと私に迫り来る。

「セイバー! バーサーカーを引き付けたら外灯を蹴って斜め左下に抜けて!!」

「了解しました!!」

セイバーが機動を担って、私が舵を取る。
私が逃げる道を考えるんじゃなくて、セイバーの能力で効率よく逃げることを考えていく。
場所を記憶して、バーサーカーの行動を記憶して、逃げる手順を脳から引っ張り出す!!

「セイバーーーー!!!」

「心得ています!!!」

私が叫んでその2秒後、黒い巨体が斧剣を振りかぶり突撃してきた。
セイバーは私を抱えたまま、ギリギリまでバーサーカーを引き付けて―――。

「■■■■■■■■■■!!!」

「ぐ、ぅ!!」

―――一秒に満たない前に私とセイバーがいた場所を斧剣が一撃で大地を割るように弾けさせた。
飛び散るアスファルトの破片をその身に受けながらセイバーはギリギリでかわすと背後の電柱の中腹ほどにグッと着地をする。

「■■■■■■■■■!!!」

しかし、バーサーカーは一撃必殺の破撃を繰り出したと言うのに硬直もなくその巨体にあるまじき身軽さで飛び上がった。

だけど―――。

「ふっ!!」

―――セイバーは、中空で斧剣を掲げてこちらに突撃するバーサーカーの横を斜めに抜き去った!
着地した電柱を蹴る反動と、こちらに迫り来るバーサーカーの加速。
二つの要素で軽々と抜き去り、背後では電柱を砕く音が響いてくるけど振り向くことはしない。
脇に抱えらたままの体勢で、少々気持ち悪くなりながらも私は舵を取っていく。

「また電柱に向かって! その根元を軽く斬って! そしたらそれをバーサーカーに蹴り倒して!!」

「っく、了解ですマスター!」

片手のままセイバーは不可視の剣で電柱の根元を斬った。
硬いコンクリートの柱は容易く断たれて、不安定に一瞬揺れた。

「っ、もう来ましたか! 本当に速い!」

そして、直ぐにバーサーカーはこちらに迫る!
ギリギリの逃亡戦!
単調な獣さながらの動きなのに、黒い巨人はかくも俊敏(はや)い!
変わらず風を大地を全てを破壊する斧剣を構えて猛追。

「セイバー!」

「ええ!!」

数秒先、今にも訪れそうなその瞬間より先にと私は叫ぶ。
セイバーは焦りながらも行為の是非を問わないで、私の言葉を信頼してくれている。
だからこそ、この逃げ戦。
私たちの勝ちでしかない。
私はセイバーを信頼しているし、セイバーも私を信頼してくれている。
負けるはずがない!
私の中に足りなかった何かがはまりこんだ、そんな気がした。
理想の実現に必要だった力が、セイバーというエンジンが私に積み込まれた瞬間だった。

セイバーは、襲い来るバーサーカーに向かって先ほど根元を断った電柱を蹴り飛ばした。
ゆっくりと斜めに傾いて、電柱は狂戦士に向かって倒れていく。
それに気づいたバーサーカーは斧剣を水平に構えていた。
一薙ぎに砕くつもりが丸見えだ。
電柱がもう少しでバーサーカーの間合いに入る瞬間に私は抱えられたまま叫んだ。

「セイバー!」

速度刺激に耐え切れないで震える手を上げて、倒れ行く電柱を指差した。

「あの上を走って!!」

「了解ですマスター!!」

私の言葉に彼女は一息で期待に応えて駆け出した。
丸太のような電柱を一気に駆け上がり、バーサーカーは構えた斧剣を振るおうと力を込めて―――。

「くっ!?」

「そのまま走って!!」

―――そして、大きく空振りをした。
電柱から他の電柱に伸びる電線、それが倒れる一瞬のブレーキになったのだ。
ほんの一瞬だけのブレーキだけどそれで十分。
再びバーサーカーが斧剣を振るったときには、セイバーと私は電柱をジャンプ台にビルの上に飛び乗っていた。

「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

下からはバーサーカーの怒り―なのかも知れない―の叫びが響いていた。
純粋な身体能力での移動しか方式を持たないバーサーカーがここまで来るにはかなりの時間を有するだろう。
その間にも私とセイバーは、ビルの上を、電柱を、地面を。
彼女の機動力に任せて縦横無尽に逃げ回った。
いつしか人々の活気ある地域に出ていたので、セイバーに提案して人目につかない場所に降り立ってもらい。

「ここまで来れば安心、だね」

「そのようですね……」

セイバーも安全を確認したのか、武装を解いてジャージ姿に戻って一息。
少し向こうから聞こえてくる雑踏に安心を感じると。

「あ、あれ? あし、足が……あえ?」

「インデックス!?」

「こ、腰、腰抜けちゃった……あ、あはは」

私は下を気にせずその場にへたりこんでしまった。
震える足は自分も意思が届かない部位になってしまい、ただそこにあるだけ。
小さめのお尻も、普段気にしてないのに今は随分と重い。
地面にぺたんと落としたまま、くっついて離れてくれそうもなかった。

「インデックス……」

セイバーは小さな笑みを浮かべて、私にそっと手を差し伸べてくれた。
その綺麗な、バーサーカーと互角に渡り合ったとは思えない綺麗な手を掴んだ。

「インデックス、本当に貴女がマスターで良かった」

「よっと…………私もだよ、セイバーが私のサーヴァントで良かったよ」

震える足に力を込めて、何とかだけど立ち上がった。
暴風のようなバーサーカーを潜り抜けた恐怖もあり、しばらくはまともに動かない気がしたけど、何とかセイバーに肩を借りた。

「貴女が私のマスターでなければ先ほどの戦で私はこの身ならず、マスターまで失っていたでしょう」

「そ、そんなこと―――」

「事実です」

私に肩を貸してくれながら、セイバーは強い瞳で、決意の瞳でそう言い切った。
彼女の目には悲しみ失意諦めはなく、ただ何かを強く理解して決意しきった色をしていた。

「今回、いえアーチャーとの戦いでの不覚も私の力不足の招いた結果です」

「…………」

彼女の瞳は強い。
敗北に酔うでなく、逃走を言い訳にするでもなく。
ただただ強い。
どこかたんぱつを思い出す、強すぎて強すぎて―――。
―――でも、きっと壊れはしない瞳。
きっと彼女の臣下たちも、この強い瞳と横顔を見続けたのだろう。
正面から見る人がいなかった、それが悲運であったと知る人はいなかったのだろう、彼女自身でさえも。
在りし日の民が、臣下が、友が見た横顔を私もジッと見つめる。
私の願いはとうまを助けること。
だけど、彼女が聖杯に託した願いはなんなのだろうか?
この強い瞳で彼女は何を見据えたのだろうか。

「貴女がいなければ、この逃走すらありえなかった、貴女のお陰で繋げた今です」

瞳はそのまま彼女の口だけが動く。
ジャージ姿で路地裏で、私に肩を貸している。
そんな状況でも彼女の言葉はまるで神託のように響いて消える。
言葉が消える空しさに、彼女は慣れているようだった。
彼女の言葉に誰も答えない、沈黙にして肯となす。
それが彼女の日常だったのだろう。

「だから、私ここに誓います、貴女を守る剣になると真に」

彼女の言葉は強く正しく重い想い。
だけど、こうも空しく響く。
本物であり過ぎる彼女の言葉は誰にも届かない。
それに気づく人は誰もいなかったのだろう。
だから、私だけは彼女に応えよう。
彼女の言葉に嘘はない。
彼女の想いに嘘はない。
彼女の本物に、私だけは本物で応えよう。
悲しい悲しい王様を一人にさせてはいけない。
彼女はきっととうまの行き着く未来の一つ、そんな気がするから。

「うん、よろしくセイバー」

肯定に合わせた私の笑みに、彼女は強く優しく微笑んでくれた。




「三文芝居は終わりましたか? とミサカは内心の溜息を隠さずに告げます」

路地の向こう。
雑踏から覗き込む光の下。
そこには、私がクールビューティと呼ぶ、たんぱつの妹が立っていた。
たんぱつと同じ格好、同じ服装。
だけど表情がまるで違う彼女が、大きなゴーグルを額にあげて―――。
―――片手に無造作に銃を携えてそこにいた。

「く、クールビューティ、どうした、の?」

「インデックス…………」

私も馬鹿じゃない。
彼女から感じる敵意と、そして銃の意味くらい理解している。
セイバーも彼女の不穏を感じたのか、すっと鎧を纏って一歩前に出た。
それを制止しようとした。
いくらクールビューティが敵意を持っていても、セイバーが相手じゃそんな敵意は意味がない。
彼女とまともに戦える人間なんてこの世に存在しないに等しいのだから。
だから、まずは話を聞こうとそんな余裕を見せたのが間違いだった。
ぽひゅん。
そんなどこか間抜けな音が路地に響いた。

「ぐっ!」

「セイバー!?」

音がして直ぐにセイバーは一瞬体勢を崩した。
ダメージはないみたいだけど、彼女の顔には驚愕と戸惑いが見て取れた。
私は慌ててクールビューティを見たけれど、彼女は銃を持っているだけで何もしていない。
では、誰がどこから何を?
その思考から一秒もしたら答えに辿りついたのに。
疲れと油断と余裕がその一秒も与えてくれなかった。
ぽひゅん。ぽひゅん。ぽひゅん。ぽひゅん。
重なり合うように追うように、連続で同時で音が鳴り響く。

「くっ、飛び道具とは卑怯な!!」

セイバーは音に反応して不可視の剣で顔を覆うようにしていた。
ダメージはないまでも衝撃はあるのか、彼女の身体がグラグラと揺れていた。

「これは…………」

私は足元に転がってきた小さなもので、彼女を襲うものの正体に気づいた―――しかし、もう遅い。
苛立ちながら剣を振るって、遅い来る小さなものをいくつか払い落とした彼女の右死角に、私に背を向けるように黒い、紫色の女性がすっと降りてきて。

「………………」

「ぐ、がっぁ!?!?!?!?」

無言のままセイバーを殴り飛ばした。

「せ、セイバー?!」

いきなりのことに思考はついていけない。
それでも吹き飛んでビルの壁を突き破って消えたセイバーのことが心配で直ぐに駆け出そうとしたけれど。

「………………」

私の前に、セイバーを殴り飛ばした女性が立ちはだかった。
かおりくらい背が高い、紫の長い髪に、黒いドレス、そして瞳を隠した女性がそこに立ちふさがる。
私の足元に転がるいくつも弾頭。
セイバーの気をそらしていた物体だ。
これに気を取られていたとしても容易くセイバーを吹き飛ばした怪物が目の前にいた。
その身から漏れる不吉な気配は人のそれじゃない。
恐らく、いや間違いなくサーヴァントだ。
しかもとびっきり凶悪な。
限界だった足は更にガタガタと震えだしてしまうけれど、どうにかその場で立つことだけは出来る機能は残っていた。
だけど、それだけ。逃げる機能はまだ回復していない。
いや、例え万全でもこの不吉な相手から逃げられるものか。
恐怖の端々から思考が零れ漏れていく。
そんな私に言うことはないのか、サーヴァントは無言。
無言のサーヴァントにクールビューティは初めてあったときのようなクールな声で告げた。

「ライダー、殺してください」
















今日はここまでです。

ああ、なるほど
ライダーのマスターには■■さんが来るとばっかり思ってた


逃亡がかっけぇな
マジ乙

二人目のギリシャの有名人がいらっしゃいました
たしかにライダーのマスターはアーチャーのマスターの「妹」だww
ましてクローン体で速成っていう「体を弄られて」る事実
能力者である御坂妹が吐血しないのは…書いたら当たり外れを問わず駄目言われそうで残念

にしても美琴、いくら好きな男の記憶のためとはいえそこまでするかよ?
小萌先生も聖杯を求める望みって何さ…
いっそ初期の木山先生とかなら余裕で想像できるけれど

>>172
これから頑張ります、多分

>>173
吸血繋がりで考えましたが、なるべくメイン? キャラを配置しようと思いまして

>>173
ありがとうございます
インデックスなら逃げるが得意かと思いまして

>>174
おやおや、色々突っ込んできましたが秘密、でお願いします
前述ですが、メインのキャラを使いたかったのと、思い付かなかったとかで本編キャラが前に来ますね
木山先生だと、インデックスとかと辛味がないのでちょっと
小萌先生は小萌先生ですから

また間が空きましたが、投下します

「させるかぁぁああああ!!!」

「ぐっ!?」

闇から出てきたような黒いサーヴァントが私めがけて、セイバーを一撃で吹き飛ばした豪腕を振るおうとしたとき真横から青い影が飛び出した。

「せ、セイバー!?」

「無事ですか!? インデックス!」

凄まじい勢いで吹き飛ばされて、ビルを突き破って消えたハズの騎士は息を少し荒らげながら私の前に立った。
見たところ傷も怪我もないようだけれども、ここまで連戦、そしてさっきの一撃がダメージになっていないハズがない。
彼女の顔色は明らかに悪い、消耗をしているようだ。

「はっ、はぁ……ふっ、く」

「せ、セイバー、大丈夫? 大丈夫、なの?」

彼女は剣を正眼に構えながら息を荒くして、肩を揺ら姿で私の前に立っている。
距離をとった敵サーヴァントから視線を一秒も逸らさずに、私と戦場を遮る為にその身を盾にした。
その盾になっている背中を見て、私は不意にとうまの背中を思い出していた。
私の為に、誰かの為に常に前に立っていた、ただの少年の背中を。

「ふぅぅぅ…………インデックス、敵の戦力は何か解りますか?」

「え? あ、ちょ、ちょっと待ってね!」

ボーっとセイバーの背中を見ていた私に声がかかる。
驚きの連続で不覚にもまだ敵サーヴァントの実力もクラスも確認していなかった。
なので、言われて慌てながらももう一つの目を開くように集中していき、セイバー越しに見える黒衣長髪の女性サーヴァントを見た。
「…………見えた」

彼女の纏う不吉な雰囲気に反してステータスは簡単に見ることが出来た。
世にはステータス、素性の解析を不明にする宝具も存在するらしいけれど、彼女にそれは無いらしい。

「それで、敵の戦力は……?」

「えっと…………」

セイバーに問われて、今見たステータスを認識し直した。
真名 『不明』
クラス『ライダー』
筋力 『C』
魔力 『E』
耐久 『C』
幸運 『E』
敏捷 『B』
宝具 『A+』

セイバーのステータスと比較して考えていく。
筋力 『C』
魔力 『C』
耐久 『B』
幸運 『B』
敏捷 『C』
宝具 『C』

ステータス、基礎能力としての差はほぼない、むしろセイバーの方がやや有利であるだろう。
でも―――。

「―――Aランク越えの宝具……!!」

「え?」

私の歯軋りにも似た呟きにセイバーは微かに反応をした。
聞こえなかったのか、それとも聞こえた上で聞き返したかったのか。
それを確認しないで私は今度はしっかり告げた。

「基礎戦闘なら多分セイバーが勝つと思うけど―――」

怯えを含ませた視線を不吉なサーヴァント―――ライダー―――に向けながら。

「宝具の出し合いになったら、多分勝負にならない―――」

あくまで、今のままなら。
セイバーがその『剣』を真に抜かないのなら、という条件をつけるけれど。
ステータスは絶対ではないけれど正直だ。
軒並みAの近いバーサーカーとセイバーは真正面から打ち合えたのは魔力放出というスキルがあってこそのブースターだ。
例えてセイバーが筋力・敏捷をA近くまで瞬間的に引き上げても宝具の威力の前では意味が無い。
いくら身体能力が上がっても、ミサイルに勝てる訳が無い。
理屈としてはそんな所なのだけれど……。

「でも、Aランク越えの宝具なんてそうおいそれと使える代物じゃないと思うんだよ」

そう、宝具はミサイル。
その火力が強ければ強いほど反動消費も高く大きくなっていくのは自明の理。
強力な宝具があっても、それには使いどころ、使うべき瞬間がある。
ならば、私にも―――私たちにも勝機はある!

「そう、ですね、インデックス…………その通りですね!」

一瞬だけ揺らいだ彼女の剣が再び真っ直ぐ敵を拝んだ。

「…………」

「…………コードD-23へ変更と、ミサカは告げます」

セイバーの不可視の剣にライダーは短剣のような、どちらかと言うと大きな縫い針が二本鎖で繋がれた武器を手にして、クールビューティは銃を構えて小さく呟いた。
それを見ながら、私はこのビルで囲まれた学園都市小さな隙間、その四方を見る。
さっきのセイバーを狙った狙撃がどこから来ているか、それを見極めてどうにか中止させなくては!
彼女の大したダメージもないだろうけれど、集中を一瞬乱されるのが戦闘では命取りになるのは間違いない。
セイバーが安心して、全力で戦えるようにサポートするのが私の役目だろう。

「っ!」

三人、ひいては私たちを囲むだろうクールビューティの仲間たちからの戦気が場を支配していく。
私は手を強く握って、その瞬間を待った。

「…………」

セイバーは身じろぎ一つしないで、微かに吹く風に綺麗な髪を揺らして―――。

「…………」

ライダーは手にした鎖付の双鋲をゆらゆらと揺らし―――。

「…………」

クールビューティは銃の装弾を終えたのか、こちらを見据えながら身を低くさせていた―――。
―――そして、何が起因になったかは解らないけれど、その場の空気を弾く様に三者動き出した!!

「「「っっっ!!!!」」」

「きゃっ!?」

三人が動き出したそれだけで狭い空間の空気が全てかき回されたような錯覚にすら陥るほどの突風。
開戦された戦いの凄まじさを讃えるかのようなうねる空気。
「ぜぁぁぁぁあぁぁぁああ!!!」

―――セイバーは不可視の剣を下段に構えて、ライダーに疾駆する!

「くっ!?」

―――ライダーは双鋲を構えはするけれど、魔力放出によりブーストがかかっているセイバーに対応出来ないのか、後退していき。

「予定値、希望値を大きく上回る速力、侮れませんとミサカは無駄と知りながら銃での応射をします

―――クールビューティーは着かづ離れづの位置からセイバーに向かって銃を撃っていく。

「はぁぁあああ!!」

「く、ぐぅっ!?」

銃の牽制なんか気にすることもなく、セイバーは真っ直ぐライダーに斬りかかって行った。
あのバーサーカーとすら互角に打ち合った一撃を、ライダーは交差させた双鋲で何とか受け止めるけれど、反動で大きく後退していく。
しかし、後退ばかりも出来ない。
ここは狭い空間、ライダーは剣を受けながら直ぐに壁に、ビルに追い詰めらていった。

「あああああああっ!!」

「っつ!!」

セイバーの不可視の剣をライダーは細く短い得物で上手く受けていく。
その度に火花が散っていき、それに混ざるようにアスファルトに銃弾が打ち込まれいている。
”ちゅいん”
そんな安っぽい音と共にアスファルトが削られていくけれど、セイバーにはほとんど当たっていなかった。
狙撃手たちは、激しく、そして速く動くセイバーに上手く狙いを定められないでいるようだった。
それもそうだろう―――。

「はぁぁああああ!!」

「っつぁ!?」

セイバーの一撃を受けて、身体を下がらせながらも狭い空間を上手く利用して跳ねる様に、どこか蜘蛛を思わせる動きで逃げるライダー。
そんな高速で予測不能な動きをする彼女をセイバーは無駄のない直線軌道。
ライダーの高速を易々上回る速さで動いて追いついているのだ。
そんな動きをする相手をそう簡単に打ち抜ける訳が無い。
また、セイバーの一撃を受けてライダーは後方に退いた。
そして、退くだけではなく!

「くらいなさいっ!!」

凛とした声と共に双鋲の片方をセイバーに向かって音を切る速さで投げた。
が、しかし…………!

「この程度! 止まる理由にもならないぞ騎兵!!」

「ちっ…………」

弾丸をも越えるような速度で向かってきたものをセイバーはその不可視の剣で簡単に打ち落として見せた。
そして、打ち落とすだけではなく、相手が繋がっている鎖を引き戻すよりも速く踏み込んだ!

「遅い!!」

「ぐぅっ!」

セイバーが振るった神速の一撃をライダーは双鋲を繋ぐ鎖で受けた。
撓みを利用して、上手くは防いだけれど完全ではなく、再び後方に大きく跳ぶ。
そして、背後に壁が迫っているのを察知してか、やや斜めに前に前進しながら引き戻した鋲を再び投擲!
”しゅぃん!”
耳を掠めるような切り裂き音を置き去りに、真っ直ぐにセイバーを狙った一撃。
だけれども、それをセイバーは同じように迎撃しようと身を少しだけ屈め―――。

「通じるとでも思ったか!!」

―――軽々と打ち落とした、ハズだった!

「なっ!?」

しかし、鋲はセイバーに到達する一瞬手前で減速した。
その鎖の先を持つライダーが自分の方に引いたのだった!

「スペックはあっても、おつむの方は残念のようですね」

それにより、セイバーが迎撃の為に振った剣は空を切るだけになってしまい、微かにバランスを崩してその場で停止を余儀なくされた。

「くっ! だが、これがどうだと言うのだ!!」

嘲る様な、どこか人間味ある声でセイバーを挑発してきたが、彼女の言うように一回すかしただけで何の意味があるのか?
魔力放出により、筋力・敏捷が実質A相当のセイバーにライダーは防戦一方なのだ。
一度してやっただけでひっくり返るようなことは起きない。
それは向こうも解っているハズだけれど―――”チカ”
思考の外から聞こえた小さな音、今まで二人の戦いが凄過ぎて忘れていた第三者の当事者!

「せい――― ”ぱしゅんぱしゅんぱしゅんぱしゅんぱしゅんぱしゅん!!!”

「くっ!? またか!」

軽い音の連続も連続が狭い空間に響き渡った。

「力ある者の油断とは利用しやすいものですね、とミサカは漫画のようにダブルハンドで連射しながら嘲ります」

囲んだビルの窓から窓から、そしてセイバーの死角に入り込んでいたクールビューティーが。
最初にセイバーの隙を作り出したように、いやそれよりも力技で銃の連射を行ってきた。
狙いもつけていないのか、銃弾のいくつかはセイバー周囲の地面を削っていく。

「くっ! この程度―――」

「―――この程度が重要なんですよ、セイバー」

「セイバー!!! 左後ほ―――」

再び作ってしまったどうしょうもない隙。
そこに入り込むように、ライダーがセイバーの後方斜め上空から襲い掛かる!
双鋲を手にした腕を交差させ、二本の牙で獣が獲物を狙うように!!
―――ライダーの位置を私が叫ぼうとした。
ライダーが上空から接近する―――。
―――クールビューティがその場から大きく退避する。
セイバーがライダーが前にいた場所を見て驚愕する―――。
―――その驚愕をつくようにライダーの双鋲が閃いた!!!!!

「ぐっ!!!」

「―――う斜め上からきてる!!」

私の声が届くよりも速く、セイバーはその場を大きく右に飛びのいた。
それにより、ライダーの一撃は完全に空を切ることになった。

「―――中々すばしっこいようですね」

「卑怯な手をっ!!」

弾痕で荒れたアスファルトにライダーは降り立って、空を切った得物を確かめるように二度三度振ってみせる。
セイバーは再び使われた卑怯な手に歯を軋ませ怒りの声をあげた。

「せ、セイバー、だいじょうぶ、なの?」

「ええ、大丈夫です、貴女の声のおかげです」

振り返らず彼女はそう告げてくれた。

「そ、そんな…………私の声は、セイバーが逃げる後だよ」

だけど、私はその気遣いが嫌で否定をするが。

「いえ、貴女の左後方、という声で最低限の当たりをつけられました、それが無ければ策の餌食になっていたでしょう……」

そう告げた彼女は、再び強く剣を構えた。
目の前の敵を圧倒せんという闘志をむき出しに。

「貴女の助けに報いる為に、私は―――!」

彼女の基本スタイル。
剣の下段構えをすると、そのまま身を沈みこませて。

「―――こんな者達には負けはしません!!!」

意味どおりの、人ならざる速度で踏み込んでいった。

そして幾激かの火花の末、セイバーの一撃を受けたライダーがその身をビルの壁に叩き付けられた。
さしもの英霊、大したダメージもないようだけれど、響いてはいるようで咄嗟の動きが一瞬遅れた。
その遅れを見逃すセイバーではない!!

「でやぁぁああああああ!!!」

下段に構え魔力のブーストで、セイバーはライダーの懐に一足で飛び込んだ―――!

「終わりだぁぁぁぁぁぁああああ!!!!」

突進の加速と、剣を振るう加速。
二重の加速を施された一撃が、無防備なライダーの身体を逆袈裟に斬った!

「やった!? やったの!?」

狙撃手の攻略も忘れて見入ってしまった三人の、否二人の英霊の戦闘。
その興奮に当てられたのか、ついはしゃいだ声を出してしまった。
本当なら恥ずべきことなのだけれど、熱気の中の私はそれに気付かないで勝利に歓喜している。
歓喜の声の中、セイバーは剣を納めると私の方にゆっくりと戻ってきた。
壁際で倒れているライダーには大きな裂傷があり、ゆっくりではあるけれど、消えだしていた。

「どうやら伏兵も退いたようですね」

「え? あ、そ、そうなの? …………ごめん」

「何故謝るのですか?」

こちらに向かってきたセイバーは、視線を軽く動かしただけで狙撃してきた連中が撤退したのを感じ取ったらしく、それをこともなげに伝えて着たけれど。
私としては、自分が何も役に立てなかったことが惨めで、俯いて謝罪をしたが。
彼女にとってはその謝罪が理解出来ないのか不思議そうにしながら、私の横に立った。
私の横、だけれども少しだけ前。
当然のように私を守る位置に。
それが、やっぱり悔しい。

「ライダーのマスターよ、勝負はつきました」

私の悔しさ惨めさをそのままに、セイバーは少し離れた位置で立ち尽くすクールビューティに声を投げた。
騎士である彼女としての情けであり、ルールなのかも知れない。
自分より明らかに格下の相手に手を出さないという心で、彼女を見つめた。

「………………」

だけど、その言葉にも視線にも反応をしないクールビューティは―――
――――――ゆっくりと崩れ落ちた。

「え?」

”どさっ”そんな軽いような重いような音を立てて、クールビューティはアスファルトの地面に倒れこんだ。

「な?!」

予想外の事態にセイバーも驚き動揺していた。
それは私もだけれど、驚きながらも私は駆け出す。
彼女の元に一秒でも速くつけば何かがどうにかなるのかも知れない、そんなことも思わずただただ駆け寄った。

「く、クールビューティ!? どうしたの!? どこか怪我をしたの!?」

近寄ってしゃがみ込むと、私は彼女の細い肩を掴んで揺するけれど反応は無い。

「ごめんね!」

一度謝ってから、服の下までも検分していくけれど、外傷、それに相応するものは一切見当たらない。
だけれども――――――。

「インデックス! 彼女は一体どうしたと言うのですか?!」

遅れてきたセイバーにも微かな焦りが見える。
だけど、そんなことはどうでも良くて私を震える声で告げた。

「――――――死んでる、クールビューティ、死んでるよ」

今日はここまでです


すげえ気になるところで終わったああああああ

途中で「狙撃手たち」ってなってるけど、シスターズ複数来てるのか?

英霊に対しては神秘を持たないただの銃撃は無効化されるんじゃね

>>189
なるべく早くに書き上げますね

>>190
そうですね、大量に

>>191
衝撃くらいはある感じでやってみてます

投下します

「死んでいる? 死んでいるとは、インデックスどういうことですか!?」

セイバーの焦りを含んだ声を聞きながら、私も汗をダラダラ流してクールビューティの身体を調べていく。
大きな怪我は見当たらない。
少しばかりの怪我は見つかる。
さっきの戦闘での傷なのか、微かな傷、火傷らしきものは見当たるのだけれども。
死に至る、致命の傷は見つけることは出来ない。
なのに、なのに、なのに―――!!

「―――死んでる、死んでるんだよ、クールビューティは!」

「っ!!」

あまりにもあっけない知人の、数少ない友人の死。
喜劇的でも悲劇的でもない、ただただ死んだようなその瞬間。
電池が切れたような彼女の死。
それが認められない私は必死に彼女の身体を調べていく。
路地裏で女の子の服を脱がせて触っている姿は、他人から見たら怪しいこと極まりないだろうけど、私は真剣だ。
友人の死を目の前にして落ち着ける訳もないし、落ち着く気もない。
調べてもどうにかなるかは解らないけれど、それでも『もう死んでるんだし』なんて割り切ることはできなかった。

だけど―――。

「なんで? なんでどこにも無いの!?」

彼女の身体にはその命を奪ったと考えられる傷がまったくないのだ。
小さな傷、裂傷、擦過傷、火傷、打ち身。
それくらいがちょっとあるだけ、それなのに彼女は生きていない。

「っ!」

「インデックス、気持ちは解りますが、あまりここに長居するのは得策ではないように思えます」

「…………わかって、るよ」

無力をかみ締めている私に、少し気遣うようにセイバーが声をかけてきてくれた。
だけど、私はその言葉に素直には頷けない。
セイバーにとっては敵のマスターが倒れた、それだけなのかも知れない。
もしかしたら、喜んですらいるのかも知れない。
でも、私にとっては愛する友人が敵で、理由も解らないままに死んでしまったのだ。
否―――。
もしかしたら。
―――私が殺してしまったのかも知れないのだ。

そう、そうなのだ。
セイバーとライダーの戦闘。
そして、セイバーの勝利。
純粋な魔術師ではない、むしろ魔の側面すら有していないマスターのクールビューティ。
何らかの外法によりマスターになった可能性は高い。
思い出すのは彼女の姉たる短髪だ。
血を吐き、身体を蝕まれながらも私の前に立ちはだかった彼女の姿。
あれはどう考えてもまっとうなそれではない。
もし、彼女が似たような外法に身を堕していたとしたら?
それによる対価は通常の術式の非ではない。
命を、もしかしたら魂さえ対価に持ち去られてしまったのかも知れない。

「っ」

その想像に寒気が背中を駆け上って行った。
命をとられる、それは即ち死だ。
しかし魂を取られる、それは死ですらない。
魂というエネルギー、意思、心、意識、それらを尽きるまで人間が地獄と称する場所で遊ばれ続けるのだ。
それは死よりも恐ろしい。
そして最後に迎えるのは無だ。
何もかもなくなってしまい、輪廻の輪から強制的に廃除される。
そんな終わりを迎えてしまう。
死んだ後すら安らぎの無い場所に連れ去られてしまったのかも知れない。
そう考えると―――震えは止まらない。

「インデックス、大丈夫ですか? 顔色が優れませんが?」

「…………うん、大丈夫、大丈夫、だよ」

クールビューティの死体をそのままに、私とセイバーは人の少ない公園に来ていた。
閑散としたそこのベンチに私は座り込んで、震えそうになる身体をどうにか抑え込んでいる。
セイバーにとってはもう終わった話。
敵のマスターを死を持って脱落されただけの話なのかも知れない。
だけど、私にはそんな割り切りかたは出来ない、したくない。
友人を殺してしまったかも知れない事実は私の心に深く深く沈んでいった。
まるで枷のように深く、刻むように深く―――。
―――杭―――悔い―――のように深く深く深く深く不快に。

「ぅっ!?」

「インデックス!?」

クールビューティの死に顔が頭に浮かんだ瞬間。
抑えてきた震えが限界を超えて、同時に胃が捻じれる様な熱を孕んだ。
最後に何か食べたのはいつだったか?
そんなことを思い浮かべる変な余裕はあったけれど、胃の捻じれを止める余裕はなくて。

「おぶぇげっぉああっぁああ!!」

「い、インデックス…………」

私はその場に、服の裾を汚しながら胃の中身を吐き出した。
気持ち悪かった。
心に沈んでいった何かを吐き出したくて、でもどうやら口から出せるものではないみたいで、いくら吐いても気分は晴れずにいた。
静かな公園に悪臭と、無様な声が響いて消えていった。

「では、インデックス、周囲を巡回してきますので身体を休めていてください」

「うん…………わかった」

ライダーとの戦闘に勝利を収めて二日。
一応と言うことで私とセイバーは荒れたとうまの部屋に戻ってきていた。
他に行く場所がなかったから、まら短髪が来るかも知れないけど―――。

「ぅっ、あ…………ぅ」

短髪の顔が頭に浮かんだ瞬間、一ミリの狂いもなく記憶しているクールビューティの死に顔がフラッシュバックした。
それにより吐き気を催した私は、ふらふらとトイレに向かい、空っぽの胃から胃液を吐き出した。

「…………」

チラッと見た鏡には真っ青なかおで、虚ろな目をした自分の姿が映っていた。
私はあれ以来完全に気力を失いきっていた。
度重なる親しい者との決別、そして友人の死。
もう訳が解らなくなっていた。
こんなものが聖杯戦争なのか?
見知ったもの同士が殺しあう醜悪な戦争の先にあるそれに希望はあるのか?
そんな考えをしていても、私はとうまを救わなくちゃいけない。
とうまが今もどこかで救いを求めているのではないか?
そう考えるといても立ってもいられないけれど、直ぐにこの戦争への嫌悪、恐怖が湧き上る。

「ライダーが墜ちて、あと6人のサーヴァント、私は後5人倒さなくちゃいけない…………」

一人を倒しても終わらない戦争。
自分以外が全員消えなくては終わりにならない戦争だ。
それが私の参加している聖杯戦争。
醜悪でしかない蟲毒のような儀式だ。
私も壷の中の蟲の一匹なのだろうか?
互いに食い合い、そして最後には最悪の毒になり果てる。
それがこの戦争の決着か。

「短髪、こもえ……クールビューティ、なんで?」

何でこんな戦争の彼女たちが参加しているのだろうか?
誰もが不幸になるような戦争に参加する理由。
それが理解できない私は、汚れた床で目を閉じた。

「首尾はどんなもんなんだ?」

暗い部屋、互いの位置も解らないようなそこで声が交わされて行く。
反響のせいで、どこにいるかも知れないそんな状況でも気にする風もなく。

「まぁまぁ、と言ったところだな……今のところ大筋の乱れは無い」

「大筋の乱れ、か」

声と声のやり取り。
むしろ、声しか存在していないような空間。

「つまり、現在の聖杯戦争は順調、と言うことか?」

「もちろんだ、このまま進めていけば再現率は93%から97%で落ち着くだろう」

「100じゃなくて良いのか?」

「100の再現は不可能だ、それなりでさえあれば良い、あとは自ずとどうにかなるように修正される」

「世界の修正力に期待する訳か」

「期待じゃない、最初から修正も組み込んでの計算だよ」

「世界すらプランに?」

「違う、プランの一部には必然的に求められただけだよ―――」


「―――全てが1になる渦の中心に飛び込むためにはどうしても、ね」


どちらの言葉のなのか、それさえ解らない暗闇に響く声。
声自体の圧力がその場を支配していった。
そして数瞬か数秒か数分か数時間か数日か数年か数世紀かの沈黙の後に最後の言葉が乗せられた。

「傲慢だな、その為に貴重な人材も、稀有な英霊も食い物にするか」

とだけ。
それ以降その部屋から言葉は抜け落ちたように消えていった。

「ん、んん? …………もう夕方?」

目を開けた瞬間に飛び込んで来た赤い景色。
割れた窓の向こうに広がる空は夕焼け。
綺麗な空をボーっと見つめていく。

「結構、寝ちゃったの、かな?」

「インデックス、起きましたか?」

「セイバー…………?」

ふと呟いた言葉に反応して、綺麗な声が返ってきた。
思考も何も無く反射でそちらを見ると、とうまのジャージを着たセイバーが立っていた。
夕焼けの日に、それより眩い金髪を濡らしながら、一枚の絵画のようにそこに佇む彼女を見ていると心が洗われて行くようだった。
悩みや思いや想いがスッと流れて消えていく。
今この瞬間だけは頭の中が真っ白になれた。
だけど―――。

「っ!?」

「インデックス! やはり、体調が芳しくないようですね…………」

―――直ぐに思い出してしまう今までの聖杯戦争。
綺麗になった心に汚いヘドロが流れ込んで流れ込んで。
私の『なか』をいっぱいに満たしてしまった。
胃が熱い、頭が白熱する、喉が焼ける。
内側から満たされる苦しみに、私は身体を丸めて何とか耐えていた。
そんな私の姿を見ながらセイバーは優しく背中を撫でてくれて。

「今日も休養に当てた方が良さそうですね」

「ごめん、セイバー…………」

セイバーがそう言ってくれた。
これで私は丸二日聖杯戦争から離れることになる。
とうまを助けると誓った私だけど、あの戦争に再び参加して見知った者を殺すことに私は恐怖していた。
身体は震えて、吐きすぎた喉は痛い。
足にまともに力は入らず、脳の回転は至極遅い。
今の私は、最悪の状態だ。

「大丈夫ですインデックス、ゆっくりじっくりと進んで行きましょう」

「うん…………ありがとう」

謝る私を励ますように綺麗な笑顔を見せてくれたセイバー。
だけど、私はその笑顔を直視出来ない。
だって、彼女は当然のように聖杯戦争を続けようとしているから。
いや、それは当たり前だろう。
彼女がここにいる
理由の全ては聖杯戦争にあるのだから。
彼女も目的は聖杯、私の目的は聖杯。
利害の一致であり目標の同一によりこの戦争に参加したと言うのに、私はこの戦争から手を引きたくなりつつあった。
だけど、それを押し止める理由があるのだ。
聖杯に、こんな戦争の結末に託さなくてはいけない願いがあるから。
その為にも戦わなくてはいけないのだけど私は―――。

「じっくりも良いんだけど、そうもいかないみたいなんだにゃー」

「何者だ!?」

「!?」

もう一度目を瞑って、意識を手放そうとしたとき不意に声が部屋に響いた。
軽い調子の、どこか人の心に入り込むような声が。
その声に反応して、セイバーは瞬時に武装を完了していて私もヨロヨロ立ち上がった。

「もと、はる?」

「よっ、辛そうだにゃー」

夕焼けの中から出でたように影の中に立っているのはもとはるだった。
相変わらずの格好で、軽くこちらに手を上げて見せていた。
目をパチクリされていると、彼はその手を下げて笑みを消した。

「辛そうなとこ悪いんだが、囲まれてるぞ、ここ」

そう冷たい一言を放り投げてきた。

「な!?」

「囲まれている!? そんなバカなサーヴァントの気配なんて感じません!」

私もセイバーもそれぞれ驚愕して、もとはるを見つめる。
そう、セイバーの感知に引っかからずにこの部屋を囲まれるなんて、そんなことがあるのかと。
もとはるに説明を求めるよりも早く、それを肯定する音が響いた。

”がしゃぁぁぁあああん!!”

「!?」

「早いな…………」

部屋のドアが音を立てて蹴り開けられ、その先から―――。

「な、なに、あれ?」

―――人のシルエットはしているけれど、どこかズングリとした形をした何かが進入してきた。

「あれは……パワードスーツの一種だな」

それを見てもとはるは冷静にそう告げた。
だけど、私もセイバーも聞き覚えのない単語に首を捻るばかりだ。

「パワードスーツ?」

疑問をそのまま口にする。

「着る事により運動能力耐久性を引き上げるものだ、簡単に言うなら纏式魔術の科学版だな」

「!」

「つまり、ただの人間ではない、ということですね」

その説明で私とセイバーは事態を理解した。
だけど、今ひとつ理解が出来ないのはこの状況だった。
何故そんな装備をした奴等がここを狙っているのか?
これは聖杯戦争とは別の何かなのだろうか?

「敵のマスターには学園都市で権力を持つ、もしくはそれに相当するものがいるってことだな」

私の疑問を察したのか、もとはるはゆっくり後退しながらそう告げて着た。
つまり、これは聖杯戦争なのだろう。

「っ!」

あの戦争の渦中に巻き込まれた、そう感じた瞬間に胃が軋みを上げた。
また嫌な吐き気が上ってくるが、それをどうにか飲み込みチラリとセイバーを見た。

「………………」

既に戦気充実な様子の彼女は、不可視の剣を下段に構えて目の前の敵を見つめていた。

「インデックス、どうしますか?」

「…………」

おそらく、いくら人間が身体能力を強化しよとセイバーの敵ではないだろう。
だからこそセイバーは私に指示を仰いだ。

”殺してしまっても良いのか?”

と。
否、違う。
彼女は”どうやって殺すか”を聞いてきたのだ。
ああ。
また胃が裏返る。
胃から上ってくる熱いもの。
喉を駆ける熱いもの。
それを開放する前に言わなくてはいけないことがある。
だけど――――――。
私の言葉が出る前に、侵入者が動き出して。

「来るか! ならば容赦はしない!」

すっと身を低くしたセイバーが駆け出した。

「ゃ、やめ―――」

「ぜあぁぁああああああ!!!」

そして、軽々と侵入者を人間を切り裂いた。

「あ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


この叫びが私のものか、それとも切り裂かれた敵のものか解らなかった。

今日はここまでです。

辛いな、インデックス・・・・

辛いな、インデックス・・・・

まだかな? まだかな?

投下します

「インデックス!?」

「どうしたぜよ!? おい、大丈夫か?!」


「あ、あああ、ああああああああああああああ!!!」

喉をかけ上ってきた熱いそれの重さに負けて私は膝を折り、身体を曲げた。
そして、耐えることなく熱い熱い胃液を部屋の床に撒き散らす。
目の前が真っ赤、それは精神的にかそれとも物理的にか?
視界の端では真っ二つにされた人間が転がっていた。
内臓をはみ出させ、白い骨、黄色い脂肪、赤黒い中身を撒き散らしてホカホカとそこに倒れているのだ。
人一人がそっと肉に変わってそこに転がっている。
それが私には耐え切れない。
名前も顔も知らないし、私に敵意を抱いていた可能性が高い相手だけれども、そこに死が絡むと話が別だ。
そう”殺さなくても良いじゃない!”だ。
こっちが強者側だからこそ吐ける言葉なのは解っている。
セイバーの上位に来れる様な相手はそうはいない。
つまり、相対する敵の大半の生殺与奪はこちらの自由。
殺すも生かすも気分次第。
その立場からの言葉だけれども、私は言いたい殺すなと。
だけど、脆弱な私の精神は心を締め付けて吐き気と嗚咽で言葉にならない。
ただただ潤んだ歪んだ視界の中にセイバーを納めるのが精一杯だった。

「インデックス、気を確かに…………」

彼女が先ほど人を斬り殺した手で優しく私の背中を撫でた。
その声は仕草は慈愛に溢れて、慈しみ心の発露には間違いがない。
だけれども、彼女の背後では肉の塊になり、二度と動くことなく二つに分かたれた人が転がっている。
そんな異様で異常で異形以上な空間は私の心を休ませてくれることはない。
逆流した胃液が鼻にも向かったのが幸いで、濃い血の匂いを嗅がずに済んで私は何とか意識を保っていた。
セイバーに背中を擦られながら、ゆっくり息を整える。

「かひゅっ…………ぜふぃっぁ…………」

「辛そうだぜぃ……インデックス、どうした?」

「数日前から少し体調が芳しくないのです」

二人が心配そうに私を見て、気を遣うように優しい言葉を投げ交わしているのを聞く。
死体の傍で交わされる優しい言葉の応酬。
それがまた私の胃を捻じ曲げる圧力へと変わる。
だけど、胃液を吐く前に吐かなきゃいけない言葉がある。
グッと手を床についた。
吐いた胃液がにちゃっと音を立てて、服の裾にも染みこんだ。
鼻から垂れる胃液のすっぱさ、吐きすぎて喉を切ったのか微かに感じる血の味。
それらマイナスを糧に力をこめきる。

「インデックス? 無理はしないで下さい」

「そうぜよ、まだ戦闘は終わらないんだから体力の回復に努めるんだ」

「ら、い、らいじょうぶ…………ん゛ん゛、げほっ!」

顔を上げようとする、それだけの行為に精一杯な私に二人は止めるように声をかけてくれた。
だけど、ここで私が動かないとこの先に起こることは戦闘ではなく虐殺で終わる。
それは間違いが無い。
サーヴァントに対抗できる人間なんて存在はしないのだから。
この科学の街の力の方向を全て向けてもどうにかなるかは不明。
そんなレベルの戦闘力を有するセイバーに、たかだ最新鋭の装備で立ち向かうなんて無謀も良いとこだろう。
だからこそ止めなくちゃ。
自分に敵意ある者を救うなんて、誰が聞いてもおかしいと思うだろう。
だけど、私が尊敬する少年なら間違いなくそうする。
だから、私だってそうしなくてはいけない。
誰を裏切っても利用しても尊敬は裏切れないから。
だから、ここで私が止めなくてはとうまに顔向けできない。
そんな気がする。

「せい、ばー…………」

「はい? どうかしましたか、インデックス?」

見上げた先の澄んだ泉のように綺麗な騎士。
その姿は本当に見ほれてしまうような美しさを見せてくる。
鎧に微かについた返り血さえその姿を一枚の絵画へ落し込む一因になっていた。
だからこその、そんな憧れにも似た美しさを持つ彼女を虐殺者に堕としたくはない。
その思いを必死に言葉に変換しようと口を開いた。

「お願いだから、誰もこ―――」

”ぽひゅぅん!!”

私が言葉を告げる前に、妙な軽い、どこか間抜けな音が響いて、近くの床が弾けた。
突然のことに口を開いたまま固まってしまう。
何が起きたかを理解する前に、私以外の二人は動き出していた。

「っ! また狙撃だ!」

「くっ、遠方から卑怯な!」

もとはるは私を庇う様に抱きかかえて、部屋の入り口付近に退避。
セイバーは不可視の剣を構え、狙撃してくるだろう窓の前に陣取った。

「ぅっ…………おぇっぇ!」

「インデックス!? どうしたぜよ!?」

もとはるが私を避難させてくれたはくれたのだけれど、その場所が問題だった。
窓から離れた入り口付近、そこは確かに窓からの狙撃から逃げる意味では良い場所なんだけれど―――。

「おぶっぇ、あ、ぐくぅっ…………」

「インデックス!? 大丈夫なのか!?」

―――玄関には真っ二つになった肉があるのだ。
やっと少し効くようになった鼻に強烈な血の臭いが刺さる。
もう出ないくらい吐いたつもりだったのに、再び胃液が漏れそうになるのを必死に耐えて、必死に前を見据えながら小さな違和感を頭の隅に抱えていた。
どこの何が引っかかっているのかは解らないけど、何か違和感を覚えたのは確かだ。
だけど、それを探求しようと頭を整理する余裕もないので、その小さな違和感は『誤差』として流されていってしまった。
でも、それは流してはいけない誤差だったのかも知れない。
もとはるに肩を抱かれながら、震える身体でそう思った。
ゆっくりと息を整えて、横に転がっている肉を見ないようにしながら肩を揺らす。
見なくても解るくらい青い顔をしているけれど、呼吸法を様々絡めながらゆっくりとした回復を促していった。
セイバーは私を庇うように、ベランダに続く窓の前に立って、どこから撃たれても対応できるように構えている。
敵を切り裂き私を守るために、だ。

「ふっぅ、は、は…………く、あ」

どうにかインデックスに意思を伝えるように、気道に空気を通していく。
乱暴に運ばれたせいで、再び動き出した胃の暑さを飲み込んで、声を出す状態に持って行こうとする。

「インデックス、無理はするな、ゆっくり呼吸を整えろ…………水、持ってくるから」

私が肩で息をするのを見て、もとはるはチラッと台所を見てゆっくりと立ち上がった。
急な動きをして狙撃手を挑発しないようにだろう。
見事なくらい滑るような体技でもとはるは台所に滑りこむと、同時に前回のように物量射撃が開始された。

”派しゅぱぱしゅしゅぱしゅぅぱしゅん!!”

「ぐくぅっ!?」

サイレンサーなのか、間抜けな音が重なり合うように響いていく。
街中でやる以上、最低限の目撃で済ませたいのだろうか?
相手の思考、その先、流れを読もうとするけれど、着弾の振動によりまた額に脂汗が浮いて寒気と熱が競演する。

「セイバー!!」

「ここは任されました! 貴方はインデックスをお願いします」

「りょーかいぜよっ! いくぞ、インデックス!!」

「え? え? あぐっ!!」

吐き気に耐えるだけの装置になっていた私の思考の外で、セイバーともとはるは会話を終えたのか、それぞれの役割を持って動き出した。

「この道は一歩も通さない!!」

その身を持って銃弾の盾になったセイバーは、無数の弾丸を全て叩き落して行く。
床に死んだ弾丸がいくつもいくつも転がって、その上に彼女は立ち構える。
もとはるは私の手を引いて、身を低くしながら学生寮の廊下をひた走る。
どこまでも慣れた歩方、私というお荷物を抱えながら見事な遁を見せ瞬く間に寮の外に出た。

「も、げほっ、もとはりゅ、ここだと、危な、ぐぅっ……」

出た場所は狙撃されたベランダ側の反対側ではあるけれど、周囲に高い建物はなく、少し開けている。
敵の詳しい位置の逆算は出来ていないけれど、ここでは危ない。
一秒に先にも蜂の巣にされる可能性がある。
それを進言するけれど、もとはるは私の手を握ったまま微動だにしない。

「もと、はる?」

「すまない…………インデックス」

「え?」

「少し、逃げ方を間違った、な…………」

少しだけ焦りを秘めた彼の声。
その言葉に疑問を覚えて、夕暮れから夕闇に変わりつつある街中を見た。

「え?」

「街中、そしてサイレンサー、単機突破兵のこの三点から部分的戦略を想定していたんだけど…………な」

寮の前、そこに集合するように左右からセイバーが切り裂いたスーツ、装備を携えた人間が数限りなく集まってきていた。

「も、もと、も、おぇっ!」

「気張れよ、インデックス…………こりゃマジでやばいかもにゃー」

軽い調子に戻った彼の言葉。
だけど、状況は一向に軽い方向に向かう様子は無い。

無骨な武装をして兵士たちは、それぞれ銃やナイフを無言で構えた。
遠くではまだセイバーが弾丸を弾く音が微かに聞こえてきた。
この戦争開始から何回目かのピンチ。
しかも、魔術的な戦闘の神秘によるピンチではなく。
純粋な物量戦力によるピンチだ。
ざっと見ただけで46人の兵士。
そしてこっちは怪我人に、半病人の女の二人。
冗談ではすまない戦力の溝がそこには広がっている。
どうにしても勝てないだろう、だから私は―――。

「もと、はる、逃げてよ…………」

―――握られた手を乱暴に振りほどいた。
それだけで倒れそうになってしまうのに。
支えを、人肌の温もりを失っただけで体温が氷点下になったような幻想をしながら、震える足で彼の前に立った。

「は?」

私の発言の真意を汲み取れないのか、彼は呆けた声を出したので、そこに更に重ねる。

「逃げて、二人でバラバラにいけば逃げれる確立はもっと、あがるし……」

「何を言ってる、お前がそんな体調で逃げれるかよ」

もとはるは強い口調で、ガタガタ震える私にそう言った。
だから、安心させるように口だけ笑みの形を作ると。

「大丈夫、令呪あるから、ぅ、いざと、なったら、セイバー、喚ぶ、から……」

これは嘘だ。
もし追われている状態でセイバーを喚んだりしたら、そこには血の海が広がるだけ。
だから、喚ぶことは出来ない。
だけど、そう言わなければもとはるは納得しないだろう。
私はぎこちない笑みで彼にこの場からの離脱を促した。
その間にも死を運ぶ兵士たちは、距離を食うように詰めて行た。

「インデックス、本当に逃げれるのか?」

「もちろん、だよ…………」

彼は確認を取り、私が頷いたら何も言わずに、振り返りもしないでその身を消した。
兵士たちは彼の見事な逃走に賞賛も驚嘆もなく、機械のように近づいてくる。
いや、彼らの武装は殆どが機械統括なのだから、機械そのものなのかも知れない。
魔術に携わる私が機械に潰される。
それは神秘の薄れるこの世界では正しい流れなのかも。
そうは考えるけれど、ここで殺され潰され肉になる訳にいかない。

「ふぅっ、ふ…………ふぅ」

近づく足音。
     私は逃げなくていけない。
向けられる照準。
     この敵を生かすために。
磨かれた殺意。
     そして死なない為に。

「くっ………………ふっ!!!!!!!」

”派ぱぱぱぱしゅぱしゅしゅぱしゅん!!!!!!”

ギリギリまで引きつけ、無理に魔力を身体に通した私は吐き気以上の不快感に目を血走らせアスファルトを蹴った。
そして一秒より短い前に私がいたその場にいくつもの銃弾が襲った。
まるでアスファルトを耕すように銃撃はそこを削っていく。
タイミングを誤っていたら耕されていたのは私だったろう。
寒気と興奮。
恐怖と動悸。
二律を胸に押し込んで私は駆ける。
一歩ごとに身体がバラバラになりそうになりながら、それでも―――。
―――走る!!

「くっ、は、ぜは、あっ、あぶっぁ!!」

汚らしく口から血交じりの泡を吹き出しながら、私は狭い路地を、道無き場所を駆け巡る。
追われ、待ち構えられ、撃たれ斬られ、回り込まれながら必死に足を動かす。
追い来る私の命を狙う兵士を助ける為に。
彼らが誰の命令で、どのサーヴァントに関わりがあるかなんて考えることもなく。
ただただ逃げることにだけ私の全てを注いだ。
命を狙うには軽い銃声を何度も何度も耳に刻み込み。
硬い足音を繰り返される幻聴のように刻んだ。
その音から逃れたいのに、耳からその音は離れない。
双方にとって死を運ぶ音が離れない!

”ぱしゅん!”

また銃弾の音がして、地面が弾けた。
当たらなかったから良かったけれど、もし足に当たっていたら私は8秒後には死んでいたかも知れない。
数秒後の死を常に意識しながら逃げる。
路地を曲がる、ビルに入る。
それでも後ろから音は途切れない。

「は、ぜ、はやぅ、あきら、め…………」

切れ切れ、むしろ呼吸不全のまま私は願いを口にする。
『早く諦めて』と。
だけど、それは叶わない願いのようだ。
そしてまた銃弾が私の肩を掠った。

「ぐっ!?!」

痛みに衝撃にバランスを崩してしまう。
地面に転がりながら胃液を吐き、鼻水を垂らす。
後ろからの靴音に死を感じていても、そのまま起き上がることはしないで、転倒の勢いのままに地面を転がって移動した。
そして、転がる力を利用して立ち上がると、さっきまで私がいた場所に銃弾の雨が降った。
それに恐怖をもう感じる心は磨り減っていて何も感じない。
ただただ目から涙、鼻から鼻水、口から血と胃液、尿道から小便、肛門から軟便、汗腺から汗を。
ありとあらゆる穴から汁を吐き出して吐き出して。
少しでも身体を軽くしようとしているのか、それとも身体の限界か。
そんな状態でも走り走る走れ。
歯を食いしばって血を流して。
握り締めた手の平に爪が刺さっても。
それでも逃げるしかないから逃げる。
希望は必ずその先にあると信じて。
形のない、具体的じゃないゴールを目指す命をベットしたマラソンを続けるしかない。
絶望は私の命か、はたまた敵の命か?
それとも両方か。
失われる命をどうにか救いたい。
それだけを目標に走る私にまた銃撃が襲う。
何とか回避をしているけれど、限界はもうとっくに超えている。
あと何メートル逃げれるのか?
そして、殺される寸前に私はセイバーを喚んでしまわないのか?
未来は不安で、過ぎた過去だけに栄光はある。
この先の未来を過ぎた栄光にするために、私は走った。

「あああああああああああああああっ!!!!!」

体力も気力もないのに叫び、無駄な力をロスしながら足を動かしていく。
無駄なエネルギーと知りながら叫び続け、喉を裂いて響く痛みに生を感じる。
歪んだ生存の確認をして、生きてる実感を糧に走った。
そうまでしなくては、私は今がどうなっているのかも理解出来ない状態になってしまっていたのだ。
足の感覚なんかない、目の前も真っ暗。
手がどうなってるか知らない、下腹部が気持ち悪い。
それでも逃げて逃げて逃げて彼らを生かして私も生きなくてはいけない。
それだけ、たったそれだけは理解、記憶していた。
だけど――――――。

「あ」

――――――そんな希望なんか、直ぐに死んでしまう。

「ぜあああああああああ!! 一人の少女を多量の兵が追い詰める、それが兵のすることか!!」

私の足が
動きを―――希望を―――
止めた―――失った―――
真っ暗な視界に青い騎士と、赤い血だけがはっきり見えた。
私を追う兵士が次々と肉へと移り変わるのを、ただただ呆然と見ているしか出来なかった。

空中から弾道ミサイルのように降り立ったセイバー。
その目には怒りを滲ませ、その身体は暴風と化した。
撃ち込まれた複数の弾丸を払い退けると、一足で敵の正面に立ち、相手が近接戦に切り替える暇も与えず二つに断った。
下から袈裟に切り裂き、その肉を踏み後ろの兵士に踊りかかると返す刃で再び両断。
左右にいた兵士は片方が銃を構え、片方はナイフを構えた。
だけど―――。

「ああああああ!!! ふっ!! ぜあああああ!!」

”ぞぶしゅっ!”

”ふぉん!!”

”ぶちゅるっ!!”

音にしたらそんな三連。
セイバーは銃を構えた兵士の胸に不可視の剣を突き刺したら、そのまま持ち上げて、反対側のナイフを構えていた兵士に叩き付けた。
二人の身体はスーツも肉も一緒くたの塊になり、微かな痙攣をするだけのものになった。
それでも彼女は止まらない。

「ふっ! あああああああ!!」

横薙ぎの一閃で二人の身体を分かつと、深く踏み込んで返しの刃でもう一人。

「逃がすものか!!」

距離を取ろうとした相手には、今まさに上半身下半身に分かれた肉を掴んでぶん投げた。
肉と人の衝突で、肉は二つになった。

「そんなもので我が剣を防げるか!!」

ナイフを構えて一撃受けようとした兵士はナイフごと斬られた。
近づいただけで相手を肉にし。
近づかなくても自分から相手を肉にしていく暴風。
セイバーと言う戦力の前に、兵士はそれこそ玩具のように壊されきった。
私がどれだけ逃げたか知らないけれど、セイバーが兵士45名を肉に変えた時間は56秒だった。
繋ぎたかった希望は、1分に満たずにゴミに成り代わる。
私は、ただただ血の海を肉の陸を見続けた。

「酷いことになっていますね? とミサカは呆れながら尋ねます」

聞き覚えのある声。
最後尾にいた、これから肉に変わる兵士から発せられた死んだはずの友の言葉。
そして、そこらに転がっている肉、その頭部から見え隠れする綺麗な茶色の短い髪。
どうやら、まだ絶望は続くようだ。

今日はここまでです

容赦なくミサカが減っていく……

さすが学園都市、えげつねぇ

>>207>>208
原作より死を絡めようとしてしまい、インデックスには辛い状況になっています

>>211
毎度遅くてすみません
しかし、期待して頂けると嬉しいです

>>227
御坂妹は消耗品だと教わりましたから

>>228
学園都市の裏は暗いみたいですから、つい

敵は御坂妹軍団か、つらい戦いになるな
ってか、話が黒くて良いな、原作より好きかも

原作通りの人数なら
残り10030人
どこぞの脳筋よりライフがあるな

>>231
PC版で唯一フルボイスだった方になんて呼び方しやがる!

……しかしあれだな、お姉様の怒りが天元突破しそうだな

いろいろ追い詰められすぎだろwwwwww




………………インデックス(´;ω;`)

上条さんが聖杯そげぶで解決

ここまでインちゃんがボロボロになったSSがあっただろうか



>>230
ついつい調子に乗ってしまっていますが
楽しんでいただけてるなら幸いです

>>231
しかし無双出来ますがね

>>232
お姉さまがぶちギレたら家電製品が全部死にますね

>>233
インさんは頑張ってます

>>234
対聖杯最終兵器は行方不明です

>>235
……………………私はインデックスさん好きですよ? はい

「襲撃」と「殺戮」ッ!!
ここまでインさんがボロボロなssがあるだろうかッ!!!

とてもリアルで引き込まれる、が、

ダップソはやめてくれ…


俺はそんな属性、持ってないんだよorz…

敵も味方も誰も殺さずに救えるヒーローなんて上条さん以外におらんかったんや…

どこぞの脳筋は12人しか残機ないけど旦那は2万越えるからな!!

投下します

「…………」

「まっ、て…………ぇいばー」

最後に残った兵士、死んだ友と同じ声をした相手にセイバーは無言で剣を構えた。
それを私は声になるかならないかギリギリの音を絞り出し制止を促す。
そして、血と痰の塊をアスファルトに吐き出し、肩で息をするのも限界な状態で、前見た。
黒い機械外装を纏った兵士を。
私の絞り出した声を聞き入れてくれたのか、セイバーは斬りかかることはしないでその場で待機をしてくれていた。
それにどうにか感謝しながら、ふらふら一歩二歩と汚れた身体で進み。

「くーぅ、びゅーひー、なんだ、ょね?」

またも上手く声にならない。
喉の奥からは泡だった血が上って来て、尿道は壊れてしまっているのかチョロチョロ小便を漏らしていた。
無理に体内に魔力を通しての逃走の後遺症なのだろうけれど、ここで倒れる訳にはいかない。
霞む目を必死に凝らして、手のひらから流れる血で生を確認する。
そして、たっぷり時間をかけて喉に空気を通したら次の言葉を告げた。

「かぉ、みひぇ、て?」

「………………了解しました、とミサカは同意します」

私の”お願い”に数秒の沈黙を取り、彼女は自分の頭部を守るヘルメットらしきものに手をかけた。
どこかカエルを思わせる平たいヘルメットの左右にあるスイッチを押し、いくつか手動作業をすると、”かしゅっ”と音をさせてそれは前後に広がった。
着脱可能になったそれを、彼女はゆっくり、焦らす様に取り払いその下から現れたのは―――。

「くーゅひゅーてぃ」

―――私の願う友人の顔ではなかった。

「……………………じゃ、ないんぁね」

歯の抜けたようなだらしない声でそう告げて、落胆の中に感謝を込めた息を吐いた。
ヘルメットの下から出てきたのは短髪そっくりの顔で、表情のない、どこを見ているか解らない深い目をした私の友人―――。
―――に、そっくりな誰かだった。

「ほう? 何故そう思いますかと、ミサカは意地の悪い笑みを浮かべます」

クールビューティにそっくり彼女は、無表情のままそう告げた。

「らっへ…………にへるけろ、ちがぅ、から」

「似てるけど違う…………ふふ、ミサカたちの違いに気付いたのは貴女が初めてですね、とミサカは驚きます」

彼女は本当に素直に驚愕したのか、微かに目を大きく開いて、少しだけ嬉しそうにしていた。
そう、私の目に映る彼女は確かにクールビューティとは違うのだ。
普段なら違和感で済ませたかも知れないけれど、一度彼女の死体を見ている以上普段より注意深く観察してしまった結果だ。
顔はそっくりだけど肌のあれ、少しの輪郭の違い、髪の伸びてる部分の違いなど。
私の記憶能力があっても見逃してしまうような微々たる違いがいくつもあった。
こいつは、私が殺してしまったあいつじゃない。
そう、あのとき私がクールビューティと呼んだ彼女ももしかしたら私が思っていたクールビューティじゃなかったのかも知れない。
友人と言いながら、私は友人が本当に本人なのか解っていなかったのだ。
その事実に内心自嘲して、虚ろな目を向けた。
友人に似た、もしかしたら友人なのかも知れない彼女を見ながら。

「あなた、だぇなの?」

そう質問した。

舌たらずな口調での私の質問。
まともに口の筋肉が動かず、涎を垂らして、断続的に小便軟便を漏らす私はある意味赤ちゃんみたいな状態だ。
だけど、そんな状態を気にするような余裕はなくその場にいることに全力を投じてた。
それでも聞きたい聞かなければならない、今私の周りに散乱する肉たちの正体にも通じるのだろうから。
怖いし知りたくない事柄なのは解っているけど、もう聞いてしまった。
私唾すら出ない口を、喉から溢れた血で潤しながらそのときを待っていた。
そして、少しの間を置いてクールビューティのそっくりさんは口を開く。

「ミサカは―――固体番号14550、学園都市LEVEL5第三位”超電磁砲”御坂美琴の成長サンプル細胞より精製された軍用クローン―――通称シスターズです」

「ぅんよ、う、くおーん…………」

彼女の言葉には良く解らない部分もあったけれど、回らない脳内をどうにか回転させて理解、構築していく。
私だって科学の知識がない訳じゃない、むしろこの街に来て急速に増えていた。
その知識を総動員させて、そしてあっさりい答えにたどり着いた。

「っ」

血で潤した舌を動かして、口に溜まった血液を痛みと共に飲み込んだ。
そして、私は涙を流さずに質問をした。

「わたしが、クールビューティって呼んでいた人は、どこに?」

絞り出した、声を最後の一滴まで絞り出した。
それくらいの気持ちで出した声。
目の前の彼女にどうしても届かせたかったその声。
しっかりと届いたようで、彼女は無表情のまま片手を水平に上げて―――。

「固体番号10032なら、”それ”ですよ、とミサカは事も無げに告げます」

―――私のやや後方にある、両断された肉を指差した。
スーツごと腰の辺りで切り裂かれ、少し離れた場所にある下半身はセイバーが踏み込んだときにか、太ももの辺りが陥没していた。
そんな肉が私の友人らしい。

「…………」

チラっとセイバーを見たけれど、彼女は変わらず目の前の”敵”を睨め付けていた。
何かしらの感情を求めた訳ではないけれど、彼女は敵を、自分の敵を、私の敵を排除しただけだったのだろう。
そこに悪感情はなかったはずだ。
だって、私を助けようとしたのだから。
向かってくる脅威を取り除いただけなのだから。
それでも、割り切れない部分はある。
そんな汗に血に胃液に糞尿に塗れた私が口にしたのは―――。

「そっか」

叫びだしそう崩れ落ちそう死にそう。
―――そんな感情が篭った言葉。
それがポロッと口から落ちた。

その言葉が引き金だったのか、それとも時間だったのか。
目の前の兵士は肉を指差した手をそのまま自分の腰に持って行き銃を手にした。

「っ!」

生きてるかも怪しい私と違い、セイバーはそれにコンマで反応をすると剣を深く構え私の前に出てくれた。
だけど、そんな必要はなかった。

”ぱしゅぅん!”

「は?」

「ぇ…………」

ミサカ、自分をそう呼称する兵士は何気ない動作で自分の頭に銃を押し当てるとそのままに引き金を引いた。
さっきまで私を狙ってきていた軽い音が響いて、そして彼女はどこを見ているか解らない目で最後に私を視て―――肉になった。
セイバーすらいきなりのことに唖然として、小さく口を開けていたほどの衝撃。
私は、もう心が擦り切れそうになっていた。
私の友人は肉になってて、友人の血を分けて肉を同にした存在は周りで肉になってて、それを教えてくれた相手も今肉に。
感情が死にきり狂いそうになっていた。
暴れる感情がないのに、心が端から躍りだす。
口の形が笑みを作りそうになったとき―――。

「第二陣の全滅を確認、第三陣投入を開始しますと、ミサカは偉そうに宣言します」

聞き覚えのあるそんな言葉とともに、さっき以上の数のパワードスーツを着た兵士が湧き出るように出現した。
きっと、そのカエルみたいに平たい仮面の下は皆似たような顔なのだろう。
いや違うか、同じ人間なんだろう。
そして、忘れていた、忘れそうになっていたけどこれは聖杯戦争なんだ。

「……………………」

パワードスーツの兵士の後ろに、そいつはしっかりと存在した。
黒衣のサーヴァント。
短鋲を携え、目を隠した長髪の死がそこに。

あのときセイバーが断じたはずのライダー。
その姿を確認して、青い騎士は少しだけ目を見開き直ぐに冷静な顔になると深く剣を構えた。
彼女の目はライダーを見据えていて、その前にいる兵士たちは障害と判断しているようだった。
またクールビューティと同じ存在が殺される。
そう思うと死にそうになっていた感情が動き出した。
そして、さきほど肉になった彼女が教えてくれた、私の友人の亡骸をチラッと見た。
二つに分かたれ、腸を撒き散らしている彼女を。
胃液は今回は出なかったけれど、身体がガクガク震えだした。
目の前にいる兵士はざっとさっきの倍以上、それがまたここで肉になる。
セイバーにかかれば簡単な話だろう。
ライダーと戦いながらでもそう時間はかからず、ここは今以上に血が広がることになる。
セイバーは王だ、騎士だ。
無抵抗なものは斬らない、下り首もしないだろう。
だけれども向かって来る敵に容赦をすることはない。

「インデックス、下がっていてください、直ぐに終わらせます」

ほら、既にもう殺すつもりだ。
今さっき殺した以上を今から殺すつもりだ。
彼女の中ではもう殺しきっているのだろう。
それに気付いた私の身体は震えていた、また、また、また、また、また友人が目の前で沢山殺される。
そして、追い討ちをかけるように、彼女たちは一糸乱れぬ動きでヘルメットを外した。
その下からは予想した通り、同じ、似た顔が現れた。
短髪にそっくりだけど、感情がない、どこを見ているか解らない目でこちらを視ていた。
その異様さに私は後ずさるように一歩引いたけれど。

「…………顔を晒すその潔さは良し」

セイバーは騎士として応えていた。
彼女らの行動を自分なりに解釈してより一層闘志を燃やしたのか、グッと身構えて気を充実させているようだった。
兵士の奥の本丸を見据えて、これより戦争を開始するために。
そして、彼女は大きく沈み込み兵の壁に突撃を開始した。

文字通り「あっ」っと私が言う前に二人の兵士が斬り殺された。
一太刀で二人、軽々障子紙を破るように簡単に殺された。
彼女らはセイバーを中心に距離を取り銃を構えようとしたけれど、暴風・セイバーはそれを許さない。

「ふっぅ! はぁああああああ!!」

剣を片手持ちに返ると、自分の周囲を大きく薙いだ。
そこにいた3人の兵士は抵抗もなく、みな同じ場所で身体を切り裂かれた。

「ゃ、ゃ、え…………」

友人と同じ顔の兵士が次々セイバーに殺されていく。
ライダーは兵士を盾に上手く移動しながら、セイバーに攻撃をするが。

「甘い! でゃああああああ!!」

”きぃん!”

”じゅしゅぅ!”

セイバーは投げられた短鋲を払いのけると、ついでのように兵士を一人斬った。
作業のように一人斬った、また一人斬った。
ライダーとの距離を詰めるときに邪魔だから斬った。
攻撃を避けた先にいたので斬った。
流れるようにどんどん肉が増えていく。

「ぇ、やめ、て…………やめて」

見知った顔が友人が私の前で何回も何十回も殺されていく。
その光景が頭に刻み込まれてガクガクと身体が震えていた。
何回も何回も壊れたラジオが繰り返すように、友人が殺されていく。
斬られ潰され肉になり、血を流して腸を撒き散らす。
死んでいく友人の目が全員ワタシヲミテイル。

「やめ、て、せいばー、やめて…………」

「はぁああああ!! ふっ! ぜゃあああ!!」

私の声は届かない。
届かない内に、また一人。
腰から逆袈裟に切り上げられ―――ワタシヲミテイル。

「せいばー…………おねがぃ、もう、もう」

「遅い! この程度!!」

私の声は届かない。
届かない内に、また一人。
右肩からやや斜めに股まで切り裂かれ―――ワタシヲミテイル。

「みたく、ないよ、おねがい、おね、がい…………」

「甘い!」

私の声は届かない。
届かない内に、また一人。
首を綺麗に切り取れて―――ワタシヲミテイル。

「やめて、やめて、やめて、やめて」

「ふっ! む、逃がすかぁぁあああ!!」

私の声は届かない。
届かない内にまた一人。
左から逆袈裟に一撃、浅いそれを返す刃でトドメをさし―――ワタシヲミテイル。

「もう、みたく、ないよ、やめて、セイバー、おねがい、おねがい、おねがいっ!!」

―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。
―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。―――ワタシヲミテイル。

「あ、あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

狂ったように、いや私は狂ってしまったのかも知れない。
そんな叫びを吐き出して、再び喉が裂けた。
それでも気にせず声をあげてあげてあげた。
血が詰まった指で自分の令呪をかきむしり、潰れても良い気持ちで叫んだ。

「やめてセイバー! その人達を殺さないでぇぇえええええええぇぇぇぇぇぇええええ!!!!!!!!」

私の令呪が一際輝くと、構築される三画の一画が消えた。
どこか近くで遠くで。

「作戦の成功を確認と、ミサカは勝ち誇ります」

と聞こえたけれど、直ぐに肉になったようだ。

「なっ!? 身体が、重い!?」

兵士に切りかかろうとしたセイバーが急激に動きを止めた。
私はその理由を理解出来ないでいたけれど、直ぐに思考は思い至った。
血を口から流し、自分の血で汚れた手で令呪を確認した。
そこには三画だった令呪が一画消費されたのか輝きを失っているのが見えた。
令呪、それはマスターとしての証だけではなくサーヴァントを補助する聖杯による魔力ブーストのトリガーなのだ。
私はそれを”敵を殺すな”として消費してしまった。
本来ならば、大まか過ぎる命令はサーヴァント自信が跳ね除けるのだが、今回この命令は不完全ながら承諾されてしまったようだ。
セイバーは兵士を斬ろうとする度に急激な失速をするようになっていた。
それでも、着実に斬り殺しているのは最優のサーヴァント故か。
ただ、彼女はさっきの令呪の縛りにより私の願いにより、この兵士、シスターズを攻撃しようとすると一気にステータスが下がるようになってしまっているようだった。
セイバーは自分の状況を理解していないようで戸惑いながらも剣を振るっていた。
相手がシスターズだけならばそれでも問題はなかったのだが、敵にはいるのだサーヴァントが、双鋲の牙を持つライダーが!!

「拘束術式か? 卑怯な!! しかし、私はこの程度で――――――!!」

身体の不調を敵の攻撃と判断したのか、セイバーは顔を歪めながらも剣を構え力任せに切り裂いた。
さっきまでに比べてあまりに遅いその動き、そんな隙を見逃す訳もなく。

「捉えましたよセイバー―――!!」

「なっ!?」

斬られた兵士の影から飛び出たライダーが、セイバーの胸部を蹴り飛ばした!!

セイバーの身体は大げさに吹き飛んだけれど、令呪の縛りはシスターズに対してだけなのか大したダメージもないようで直ぐに体勢を整えて飛び込んでいった。
彼女に早く令呪による誓約を伝えなければいけないのだけれど、私の喉は上手く声を出させてくれない。
そうこうする内に、彼女は再び兵士に剣を振り上げ、その瞬間に失速してライダーの一撃を貰っていた。

「ぐっ!? な、なんなのだこれは!」

着地をして、セイバーは腹立たしげに自分の不調に声を荒らげた。
シスターズに攻撃するときだけ制限がかかることを完全に理解しきっていないのか、前方を睨み再び飛び込んだ。

「ぜぁぁあああああああ!!」

それはまた繰り返し、急激な失速、そして一人を斬り殺したと思ったらライダーに一撃入れられる。
ライダーは段々タイミングを理解しだいたのか、セイバーのステータスが下がりきった瞬間を狙って攻撃を入れだした。

「ぐっ!? くそっ、また身体が…………」

攻撃をする度に傷つくその身。
それでもセイバーは直ぐに剣を構えた。
私のせいでそんなことになっているのに、私を守ろうと背中を見せて。
周囲にはまだまだ兵士はいる、セイバーもなんとなく理解してきたのか無闇な突撃はしないが、向こうは待つ気は無い。
一気に襲い掛かり、セイバーの動きを遅くしてそこにライダーが攻撃をぶちこむ。
徹底された作戦。

「なめるなぁあああ!!! くっ―――」

ナイフを構えた兵士に上段から斬りかかった瞬間剣は失速して、次の瞬間横合いから投擲された鋲が彼女の肌を切り裂く。

「ぐぁああああ!?!」

それでも直ぐに剣を構えなおし、ライダーを探すが彼女は雲のように壁を這い、跳ね回り予測不能な場所からセイバーを襲う。
何度も何度も何度も何度も何度もだ。
攻撃の度に傷つき、セイバーはついに―――膝を折った。

「はぁ、はぁはぁ…………くっ、私がこのような手にかかるとは」

都合23度目の攻撃でセイバーは動きを止めた。
私はよろよろとセイバーに駆け寄り、その肩を抱きしめ。

「ぉぇんぇ……ごぇんぇ」

「インデックス…………謝ることはありません、これは私の力不足の招いたものなのですから」

令呪の強制と知らない彼女は、謝る私に綺麗な笑顔を見せてくれた。
私のわがままが今の状況を招いてしまったことを悔いていると。

「お別れの準備はすみましたか? とミサカは声をかけます」

「終わりにしましょう」

兵士が壁をつくり、その後ろでライダーが潜む陣形で迫ってきていた。
ある意味現在の必勝の方法だろう。
シスターズを攻撃しようとすると一気にステータスが軒並み2ランクは下がってしまうセイバーを落とすにはもってこいだ。
兵士を盾に、ライダーの矛が獲物を狙う、完璧に冷酷な陣形だ。
シスターズが一人二人死ぬこと前提の、それでも勝ちを得るための陣形。
膝をつき限界のセイバー、そして声すらまともに出ない私。
勝ち目は完全に消えていた、否私が消したのだ。
声をあげて謝りたいのにそれすら叶わず、私はここで死ぬのだろう。
せめてセイバーだけでも逃がせないかと令呪に触れようとしたとき。
黒衣のサーヴァントが鎖に繋がれた大きな杭のような双鋲を構え―――。

「せめて安らかに―――しっ!」

「っ!!」

「くっ!!」

―――私とセイバーを貫き殺す為に投擲した。














しかし――――――。
















「なンだ、なンだよ、なンなンですァ、こりゃァ一体全体なンの騒ぎなンですかァ?」

”きぃいん!!”

―――――――投擲された双鋲は私とセイバーを貫くことは無かった。
代わりにこの世を嘲り憎むような声が鼓膜を貫いた。

「ぇ?」

「よォ、見たことあるよォな奴と見たこともねェ奴がなァに俺の側の遊びやってんだよ」

目を開いた先には細いシルエット、スタイリッシュな杖を付いたどこか頼りない姿。
そんな人物が、私たちと兵士の間に立っていた。
その足元には双鋲がアスファルトに突き刺さり、まるで周囲の肉への墓標のようだった。
私は呆然としながら、その見知った人物を見つめていた。
そこには悪魔のように白く―――。
―――救世主のように黒く。

「ガキどもがちっとばっかはしゃぎ過ぎじゃァねェか? ア゛ア゛?」

―――最強が立っていた。

今日はここまでです


はたして一方さんはこの状況をどう判断するのか
妹達を殺ったのがセイバーだと知ったら逆ギレして襲い掛かってきそうな予感

八つ当たりなんだけどッ
セイバーに悪気はないんだけどッ
とりあえずセイバーをGOBで串刺しにしたい

乙!
最強議論で禁書厨と型月厨って二大害悪扱いなんだよな……

一方さんだけが頼りだな…

>>237
きっと…………ありました、よ?

>>238
緊張すると出ちゃうんですよね

>>239
死にたくないのに敵も殺したくないは主人公特権ですから

>>240
質が上ってことで

>>257
まだ考え中なんですよね
一方通行の傾きは

>>258
やめてください
彼女は頑張ってますよ

>>259
ファンの分母大きいからですよ
みんな自分の好きな作品が最強であって欲しいですから

>>260
頼りがいありますから

間が空いてしまいましたが投下します

「ぁぇぇぁ?」

「ああ? なに言ってんだお前?」

私たちの前に現れた学園都市最強。
学園都市第一位LEVEL5の隔絶した頂点、量子加速器の名を冠する『一方通行』その人。
その背中に私は声をかけたつもりだったけれど、声は言葉にならないノイズにしかならない。
そんな私の言葉に彼、は億劫そうに首を傾けた。

「あー、喉やられてんのかァ……ちっ、めんどくせェ」

「ぇぅ?」

一方通行は面倒くさそうに私に近づくと―――。

「ぇぐぼ?!」

「!? 貴様! インデックスに何をする!」

―――私の口に指を突っ込んできた。
いきなりのその行動にセイバーは傷だらけの身体で激昂したけれど、一方通行は面倒臭そうにため息をつくだけだった。

「っせェんだよ、ちっと喉を整備してやっただけだよ、ほれ」

「げほっ、んごっほ!」

乱暴に指を引き抜かれて、私は血交じりの痰を地面に吐き出した。
最初は激しく痛んでいたけれど、咳が止む頃にはその痛みもなくなり、喉に風が通った。

「あ、あれ? ん、っつ!」

「無理すんじゃねェよ、治癒なンて前向きな使い方してねェんだからよォ」

彼の言葉は乱暴でそっけないけれど、私の喉は痛みこそあるものもの、声を発するには問題ないレベルに戻っていた。
私には彼がどんな能力を使用したかは解らないけれど、改めて目の前の少年と呼べる年齢の最強の底知れなさを微かに感じ取った。

「インデックス、大丈夫ですか?」

「ん、大丈夫…………それより、ごめん」

「はい? 謝るならば私の方です、またも不甲斐ないばかりで……」

声が通るようになり、私はまずはセイバーに謝罪をした。
何よりも優先してしたかったそれを。
しかし、セイバーは何故私が謝るのか理解出来ていないみたいで不思議そうにしていた。
彼女はまだ、私は令呪を使用してセイバーが不利になるような状況を作ったと知らないのだから。
しっかり説明して頭を下げたい、でも、そんな時間は無いだろう。

「そンで、こりゃどォいう遊びなんだ? 答えろよそこのクローンども」

「………………」

学園都市最強が動き出したから。
彼は周囲に散らばる肉が誰であるかを認識しているかは解らないけれど、一方通行は足元の血をつまらなそうに踏みにじっていた。
その彼をシスターズ、そしてライダーが身動きしないで見つめていた。
急な乱入者に隊列を組み切れていないようで、微かな同様が見える。
それを彼はつまらなそうに杖に体重をかけたまま、空いてる手指で耳をかいていた。

「ンで、答えはなンですかァ?」

「……………………」

苛立ちなのか、それとも他の何かなのか、一方通行は杖で散らばる肉をぐちゅぐちゅと潰していた。
その行為に何だか私は怒りに似たような何かを感じていた。
その肉を作り出した原因は私たちに―――私にあるのに。

「一方通行、これは貴方には直接関係のない話です、とミサカは努めて冷静に答えます」

沈黙の後に、シスターズの一人がそう告げる。
迷い動揺緊張などが織り交ぜられた言葉。
それに対して一方通行は―――。

「誰がそンな答え聞いたよ、ア゛ア゛?」

―――怒りと不機嫌で答えた。
怒り、不機嫌。
それらは確かに攻撃的な感情だ。
他者から向けられたら身構えもする。
しかし、その程度だ。
だけど、その向けてる相手が一方通行ならば話は別だ。
彼は文字通り『学園都市最強』
一線級の魔術師を遥かに凌駕するような能力者がいるこの学園都市の隔絶した頂点!!
その彼から向けられる怒りはシスターズたちを半歩近く後退させた。

「―――ンン? なンだ、お前」

「………………」

後退するシスターズ、その中にいるライダー。
彼女だけは一方通行の恫喝に退く事はせずに、その場に立っていた。


”しゃいん”

「………………」

彼女は無言のまま、一方通行の足元に刺さっていてた双鋲の鎖を持つ引き抜いた。
抜いたそれを両手に構えてライダーはシスターズの前で踏み出し、一方通行に相対した。

凍る空気―――。
―――流れる風。
圧力―――。
―――殺気。

「…………」

「………………」

相対する二人の間に見えない圧力、そして何らかのものが高まっているように見えた。
セイバーでさえも、不可視の剣を握ったまま二人の動向を伺っていた。
私は喉の痛み、身体の脱力、下半身の気持ち悪さを感じながらそれらを観察する。
今この状況は私の、私たちの命を繋ぐ為の過程になるだろうから。
だけど、逆に私たちの死に繋がる可能性もある。
だって―――私たちはクールビューティたちを殺害しきったのだから。
彼が救ったシスターズという器の一部といえ、それを破壊していのだから。
沈黙は怖く痛い。
その怖くて痛い沈黙は一方通行は気にすることもなく破っていく。

「ンだァ? このデカイ女は」

「…………」

ライダーに対して事も無げに言い放った一言。
その言葉を聞いて私は今まで気にもしなかったけれど、彼女の身長が高いということをぼんやり考えていた。
言われたライダーからは少しだけ怒気に似た色合いが見えたけれど、直ぐにそれも収まり、また金属が擦れるような静寂に戻った。
静寂には戻ったけれど、一方通行はその怒気からライダーの脅威を感じ取ったのか杖で肉を潰すのをやめて、興味深そうに見つめる。

「ふゥン、こいつがお前らの自信の拠り所なわけかァ」

「………………」

「一方通行、退いてはいただけないのでしょうか、とミサカは最後になりそうな通告をします」

何が楽しいのか微かな笑みを見せた一方通行に、シスターズは平和な提案をした。
彼女たちにとってこの状況での脅威は彼だけなのだ。
彼を排除すれば残るのは半病人の私と、まともな戦闘を見込めないセイバーだけ。
ある程度の被害は出れど、簡単に勝負は終わる。
だけど、彼が方通行―――学園都市最強―――がそこに立ちはだかるならば話はまったく変わってくる。
彼だったら英霊にも対抗出来る可能性もあるのだから。

「く、クカッ! クケカカカカ!!」

「ぁ、あくせられー、た?」

シスターズの言葉に、どうしてか一方通行は笑い出した。
喉から絞り出すような不吉な声で笑い、彼は自分の額を髪ごと掴む。
彼の突然の、理解の出来ない行動に私もセイバーもシスターズも固まってしまっていた。

「あのバカに誘われてたまには出てくるもんだなァ―――」

「え?」

笑い声をとめて、それでもまだ尚ニヤニヤ笑う彼は裂けた様に広がった口から牙のような犬歯を覗かせた。
これから獲物を狩り取るとアピールするような攻撃的な笑顔。
読めない彼の行動に不安を微かに覚える。
彼はどこの立場としてここにいるのか?
私たちへの攻撃を逸らしてくれはしたけど、だからと言って味方とも決まっていない。
むしろシスターズを殺害した私たちの方が敵と認識される可能性はある。

「インデックス?」

「………………」

もしものことを考えて、私はセイバーの手を掴んで接触階梯から魔力を流し逃走の、もしくは闘争の準備をしておく。
一方通行相手に逃げられるのか、戦えるのは不明だけれども逃げることならば私に分があると信じて。
しかし、私の不安は杞憂だったのか一方通行は笑みという恫喝を携えたままライダー、そしてシスターズを見つめて。

「―――狩られる側の豚どもが俺に最後通告だァ?」

”かちり”

何かのスイッチを入れる音がそのばに響き―――。

「冗談にしても笑えねェぞ!?!?」

”どんっっっっ!!!!”

―――爆発するような音を立てて彼の細い足が踏みしめたアスファルトがまるで薄い氷のように砕けた。

「ちっとばっか遊んでやンよ、こいよ三下以下どもが」

銃声、爆音、破砕音、怒声、悲鳴、笑い声。

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!! まさかこの程度で俺に相対した訳じゃァねェよなァ? ア゛ア゛!?」

「ぐっ!?」

一方通行の力は圧倒的だった。
圧倒的に無敵で最強。
彼の手の一振りで起きた暴風はシスターズを吹き飛ばし。
地面を踏みしめればそこから隆起して彼女らを蹴散らす。
銃で撃たれたらそれらを反射し、撃った銃を壊す。
後方に抜けて私たちを狙おうとしたシスターズを蹴散らし。
距離を取れば1秒以下でつめ。
壊し叩き潰し削り穿った。
学園都市第一位『一方通行』
詳しくは知らないけれど、彼の能力はベクトル操作と呼ばれる分野ものらしい。
ベクトル、方向性の操作。
この世のものは全てに方向性が付属している。
地面に生えている草でさえ重力、そして自転による未鍍空間風力を持つ。
それらを彼は全てどのようにでも操り、自分のものと出来る。
それはナイフを素手で掴み、そのまま粉砕することも出来るし。
銃弾の反射、突風の発生、地面の粉砕。
その全てを軽々と行使する。
理論上この世界のものである限り、彼に防げない攻撃は無く。
また、彼に壊せないものはない。
それが学園都市の頂点の能力!
上の上!!
隔絶された一位!!!
それが最強なのだ。

「こちとらまだ50%も能力使っちゃいねェぞ?」

そして―――。

「彼は、何者なのですか?」

圧倒的に圧倒しつくし、倒れるシスターズの前で大声で笑う彼にセイバーは呆然としていた。
彼女もこれくらいの戦力、枷が付いている今でも問題なく壊せるだろう。
だけど、彼女が驚いているのはそこではない。

「ぐっ、流石は学園都市最強ですね、とミサカは感嘆の声を漏らします」

―――彼はシスターズを圧倒して尚その一人も殺していないのだ。
そう、彼は私たちの向かう兵すらカバーしつつこうも大量のシスターズ全てを打ち倒し、尚且つ誰も殺さず、目だった怪我すらさせていない。
そのとんでもない能力にその場にいた全員私も、シスターズも、セイバーも目を見張っていた。
唯一ライダーを除いて。

「ア゛ア゛?」

「………………」

倒れ付すシスターズ、その彼女たちの前に出るように黒い英霊は最強の前に立った。
私たちの前に立つ一方通行と対になるように、その長身を威圧的な空気に包みながら。

「そろそろ詳しい話を聞かせて貰いてェンだが―――」

彼はまたつまらなそうに耳を小指でかくと、一旦顔を伏せてから―――。

「―――そうもいかねェよォだなァ!!!!」

硬く握った拳をライダー目掛けて突き出した。
そのまま風を切るような音と共に拳が進み、彼の足元が大きく陥没した。
能力による威力の増加をしたのだろう、余波でアスファルトを陥没させるような運動エネルギーを持った拳がライダーの細い身体に突き刺さった!

”ぼぐんっ!!”

何かが何かを殴ってなるような音ではない、打撃音とは到底思えない音が響いた。
ただ巨大な何かの衝突音のような。
単一の人間から決して生まれない、そんな歪な音。
そして、その音を威力として受け止めた黒い英霊はその身を遥か後方に弾け飛ばし、消えた。

「むちゃくちゃ、なんだよ…………」

まさか、拳一発で英霊を場外ノックアウトさせるなんて。
信じられない気持ちで彼を見つめる。

「これでお前らのその自信の後ろ立ても消えた訳だァ、ンじゃあこの糞みてェな遊びの首謀者を教えて貰うとするかァ」

英霊を殴り飛ばした彼はコキリと、一仕事終えたように首を鳴らすと杖に体重を預けてシスターズを見下ろした。

「…………」

「…………」

「…………」

一方通行に質問をされた彼女たちは一様に口を噤み、次の作戦を練っているようでもあった。
無言の時間が少しだけ過ぎると、一方通行は大きくため息をついた。

「はァァ……ったく面倒なことになってやがンなァ」

わしわしと白い髪を乱暴にかいて、私とセイバーの方を少しだけ見やる。

「どうせまた上層部の実験かなンかなんだろ、言えよ」

再びシスターズに視線を向けると、足元に散らばる肉を下らないものを見るように見た。
彼の内部でどんな感情が渦巻いているいるのは知らないけれど、決して穏やかではないだろう。

「糞くだらねェ実験は全部ぶっ潰してやっからよ、てめェらも折角拾った命無駄にしてっとあの三下が暴れンぞ」

「…………」

彼の優しさなのか、それとも贖罪なのか。
一方通行は嘲る様な声をかけるが、シスターズはそれには答えない。
ただ彼は何度も何度も足元に散らばる、元シスターズだった、私の友人だったかも知れない肉踏みつけていた。

「………………」

それを見ながら、私はセイバーの手を強く強く、実際には力の入らない身体なので微かに強い程度に握っていた。
そこにいた、私の友人を思って。
そして殺してしまったことを想って。

「ちッ、話が進まねェな…………おい、シスター」

「ぇ、あ、な、なに?」

いきなり声をかけられて少し慌ててしまうけれど、微かな喉の痛みに耐えて声を返す。
こちらを向いた彼の目は本当に何もかもつまらないと想っているような、どこか悲しい目をしていた。
私はその目をどこかで見たことがあるような気がしてしまった。

「お前が知ってること説明しろ、横の金髪も関係者なンだろ? そのコスプレ女」

「こすぷれ?」

顎で指し示され『コスプレ女』と言われたセイバーは不思議そうに首を傾げていた。
どうやら聖杯からの知識補助に『コスプレ』という語彙は含まれていないらしい。

「えっと、うん、そうなんだよ……」

「ちゃっちゃと説明しろ、今夜は暇だからぶっ潰して来てやンよ」

「………………」

頼もしい彼の言葉。
英霊すら打倒した彼だ、それも可能なのかも知れない。
だけど、それでは駄目だ。
これは聖杯を巡る戦争なのだから。
彼は参加者ではない、そんな彼が参加してもこのシステムには届かない。
彼がいくら強くても参加出来なくては成立しないのだ。

「………………」

「ちっ、お前もだンまりかよ…………よっぽど面倒なことになってるってわけかァ?」

彼は本当につまらなそうだ。
何もかも諦めた様な目をしている。
それでも、諦めた様な目でも彼は諦めてはいないのだろう。
私たちが話さなくても、この惨状を見てしまった彼は自分で動き出す。
彼の細い背中に、私の敬愛する少年が重なって見えたような気がした。

「まァ、いい…………ただ、一つだけ聞かせろシスター」

無言の私に赤い瞳を向け、彼は肉をつま先で蹴った。
蹴られた肉は少しだけ跳ねると、血溜まりに落ちて少しだけ飛沫を飛び散らせる。
その行為に何の意味があったのかは解らない。
もしかしたら意味などないのかも知れない。
だけど、次の言葉は意味が深かった。
私を、セイバーを、シスターズを。
その場にいる全員を凍らせるような熱い感情と共に言葉は放たれた。



「―――先に手ェ出したのはどっちだ?」



「っ!!」

「なっ!?」

「あ、あ…………」

地面に伏していたシスターズが起き上がり、セイバーは汚物に塗れている私を抱え彼から距離をとった。
彼の感情に最優のサーヴァントたるセイバーが大きな後退を余儀なくされたのだ。
その感情の発信源を中心から逃げるように私たちとシスターズは退いた。
それほどまでの大きく強い感情。
彼はそれほどまでに怒っていた。
殺されたシスターズ、死んだ彼女たちについて、大いに怒っていた。
多分、私たちから攻撃したと言えばこの場で彼はこちらに攻撃を開始するだろう。
そう感じさせる怒気に、私は震えながらシスターズを指差した。
事実を告げる行為だけれど、見方を変えれば友人を売るようなことだと気付いたのは指してしまった後だった。

「…………ふゥン」

私の答えに納得いったのか、いかなかったのか、彼は小さく鼻を鳴らすと大きすぎる怒気を消し去り、また足元の肉を踏んだ。

「バッカなやつらァ」

嘲るでも諦めるでも罵倒するでもなく、一方通行はそう告げると私とシスターズを一度づつ見た
そして、さっきまでのつまらなそうな目で撫で付け口を開く。

「お前らはもう帰れ、これは俺が今晩の内に終わらせとくからよォ」

そう告げた声を追う様に、新たな乱入者がこの場に現れた。

「それは困るかもってミサカはミサカは抱っこされながら言ってみたり」

「ア゛ア゛?」

「打ち止め?」

乱入者は小さな少女。
打ち止め(ラストオーダー)と呼ばれる彼女。
その彼女がライダーに抱かれながらやってきた。
彼女の首には短髪がしていたようなチョーカーをしていて、小さな手には深く深く令呪が刻まれていた。

「なァにしてんですかァ、このクソガキはァ」

水色の可愛らしいワンピースに身を包んだ打ち止めは笑顔のままライダーの腕の中にいる。
その彼女を一方通行は苦々しく見つめていた。
表情からは『予感が当たった』という感情が読み取れる。
だけど、私にはそれがどうにも理解の外にあった。
この時点での私の知識には打ち止めという少女は短髪の妹、一方通行の友人という認識しかない。
しかし、彼女はシスターズを統括する為に造られた固体。
それ即ち、彼女たちを操るのに必要不可欠な人物なのだ。
故に、一方通行はこの大規模なシスターズの導入から予想をしていたのだろう。
それを知らない私からしたらかなり面食らってしまっていた。
まさか、ここで打ち止めまで聖杯戦争に関わっていたとは、と。
しかし、私が驚いていても事態が止まる訳はない。
打ち止めは先ほど一方通行に吹き飛ばされた筈なのに、傷一つ無いライダーの腕から降りると可愛らしい笑みを携えゆっくり一方通行に近づいていった。

「ねぇ、出来たら何も見なかったことにして帰って欲しいんだけどってミサカはミサカは可愛く小首を傾げてみたり」

「………………お前が命じたことなのか?」

「うン、ってミサカはミサカはあなたの真似をしてみたり」

「なンでだ?」

「目的があってするだけの理由があったからってミサカはミサカは格好つけてみたり」

二人の間で交わされるどこか穏やかな会話。
互いに互いを理解しているもの同士の優しい会話。
それが血と肉の海の真ん中で交わされている異様。
打ち止めは明るい笑顔で。
一方通行はつまらなそうに。
平和な温度に見える会話は続いていくが、それももう終わり。
打ち止めの後ろのライダー、その背後に生き残ったシスターズが隊列を組みだし、彼はそれを見つめながら最後の質問を口にする。

「もう、手遅れって訳ですかァ?」

「もう、手遅れってことってミサカはミサカは振り下ろされる檄鉄の気分」

”かちり”

再び一方通行は首につけられたチョーカーのスイッチを入れた。
これにより彼は歩行すらままならない半病人から最強に移り変わる。

「クソガキ、そのケツ引っぱたいてやっから覚悟しとけよ」

「ふふ♪ それは楽しみだけど―――」

「え?」

一方通行は一歩踏み出すことなくその場に倒れ伏した。
そして、手足を痙攣させるようにでたらめに動かす、どこか壊れた人形を思わせる動きを繰り返していた。
その姿を打ち止めは愛おしそうに見つめると、甘く甘く笑いかけて。

「―――ミサカは貴方の為に戦うんだから、貴方とは争いたくないのってミサカはミサカは大人の女の風格を漂わせてみたり♪ ――――――さて」


いきなり目のまで倒れた彼に驚愕していると、さっきまでの甘く可愛らしい雰囲気を打ち消すような無表情で打ち止めが私たちを見ていた。
その間にシスターズによって一方通行はどこかに運ばれていった。
急な出来事の連続に、硬直をしている私とセイバー。
その前にゆっくりとライダーが進み出る。

「っ!」

それに取り、セイバーもスッと一歩前に出て相対する。
これで都合三度目になるだろう睨み合い。
状況はこちらに至極不利。
それもマスターたる私のせいで、だ。
シスターズへの攻撃をするとステータスが軒並みダウンしてしまうセイバーに、そのシスターズを上手く利用してくるライダー。
どうあっても今の状況では勝ち目は薄すぎる。
それでも彼女は前に進んでいく。
不可視の剣を手に、心には誇りを。
目には闘志を携え、黒衣の英霊の前に。
私がまだ説明をしていないから、セイバーはどうしてステータスがダウンするかをしっかり理解していないけれど、先ほどの戦いで微かな理解はしているようで、離れた位置に控えるシスターズを警戒しているようだった。

「騎兵よ、今回は兵を捨て駒にはしないのか?」

互いの距離は5m前後、彼女らならば一瞬で詰められるその場所でにらみ合いながらセイバーはそう切り出した。

「………………」

しかし、ライダーは無言でただそこに立っていた。
構えるでも何をするでもなく、ただただそこに立つ。
それを挑発を受け取ったのかセイバーの身が少しだけ沈み込み、戦闘の開始を思わせたがそれをせき止めるように陽気な声が響いた。

「はいはーい、ストップストップってミサカはミサカは自分の存在をアピールしてみたり」

「………………」

手を上げて、売る相手もいないだろうに媚を売るように小さく跳ねる少女を私とセイバーは注視する。
そう、まだ彼女が未知数だからだ。
しかし、これまでの言動行動から警戒に値する存在なのは理解出来ていた。
何故なら彼女は令呪を持つマスター、おそらくはライダーの正式なマスターなのだろうから。
それはつまり、この状況を作り出した張本人が彼女なのだろう。
この命を使い捨てるような策を考えたのが、目の前の小さな少女だということ。
殺害したのはこちらだろ、そう言われて仕方ないだろう、でも、それでも私は大きな怒りを覚えていた。
そんな私の怒りの視線など気にならないようにしている打ち止めはライダーに微笑みかけてから、背後に控える50人ほどのシスターズを指差し―――。

「ライダー、あれ食べちゃって良いよ」

―――笑顔のままそう告げた。

「食べ?」

言葉の意味を理解出来ないでいる内に、”どさ” ”どさどさ”

「え?」

”どさ” ”どささ” ”どさどさ” ”どどさ”

「え? え? な、なに? え? なに!?」

次々とシスターズが倒れていく。
それは、最初に死んでしまったシスターズを思い出すようなあっけない死に様。
電池が切れるような死。
苦悶の表情も何も無くただただ死に絶えた。
何かに何かを、生きるといために大切な何かを飲み込まれたように。

「どう? ライダー、いけそうってミサカはミサカは伺ってみたり」

「ええ、問題なく」

震える私の前でそんな会話が繰り広げられ、私すっと理解した。
彼女たちがしたことを、今までのことから推察して答えにした。

「ねぇ…………」

「ん? どうかしたってミサカはミサカは―――」

「どうして魂を食べさせたりしたの!?!?!?!?!?」

「―――ふぅん、わかるんだ」

打ち止めからまた笑顔が消えた。
それは私の答えを認めたから、だろう。
彼女たちがやったことは英霊を簡単に強化する方法。
他者の、生きた人間の魂を食わせたのだ。
霊体である英霊にとっては生きた人間の魂は高密度のエネルギー。
それを摂取させ、サーヴァントを強化させる手法、外法だ。
おそらく、シスターズに魂喰の呪痕を植えつけてあったのだろう。
擬似的なマスター権との併用で、役目を終えたら魂ごと回収して喰わせる為に。
それを裏付けるようにライダーのステータスが上昇していく。
50人分の魂を飲み込み、彼女は強化されたのだ。
シスターズ、クローン兵士の魂の吸収。
少し前の会話、固体番号10032、クローン。
多分彼女たちはまだまだ足りない魔力を補おうとシスターズを喰わせるのだろう。
聖杯戦争のために、もっともっと、最終的には何人いるか知らないけれど全て喰わせる。
とてつもなく醜悪な戦法を彼女たちは実行するだろう、躊躇無く遠慮なく。
まるで蟲みたいに統制されたシスターズはその魂を差し出すことの何の感慨もないようだ。
ここで止めなければ、もっと多くの人が魂を喰われて死ぬ。
それは、それは、それは、それは!

―――そんなことは許せない!!!!

彼女たちを殺しておいて都合の良い怒りかも知れない。
それでも、私はその行為を許すことが出来なかった。

「ふふ、人間の魂を喰わせれば強化できるってことはさ―――」

私の怒りの視線を気にする風もなく打ち止めは可愛く笑う。
そしてゆっくりと、既に魂を喰われて死んでしまったシスターズの死体の山に近づき、彼女たちを見つめた。

「―――ミサカたちは人間で良いんだね、嬉しくなっちゃうよ♪」

その言葉にどんな重さがあったかは知らない。
でも、止めなくちゃいけないことは解る。

「っぇぺっぇ!!」

地面に血交じりの痰を吐いて、汚れた口を修道服の裾で乱暴に拭い、セイバーに向かって叫ぶ。

「セイバー!!! そいつらだけはそいつらだけは倒して、お願い!!!!」

「――――――承知しました、マスター!」

深く沈みこんだセイバーと―――。
筋力 C
魔力 C
耐久 B
幸運 B
敏捷 C
宝具 C


「ライダー、必要なら設置してある鮮血結界は全て発動して大丈夫、待機させてある122人の魂は全て食べちゃって」

「了解しました」

―――両手に持った双鋲を交差させるライダー。
筋力 C
魔力 D
耐久 C
幸運 E
敏捷 B
宝具 A+

英霊たちはその身に全身全霊をかけて戦闘を開始した。

今日はここまでです
あまり進まずにすみません

……何があった、打ち止め
望みは何となく予想できるけど、ここまで下位個体を消費するとは……

魂食は確かに……ライダー有利過ぎんぞ、これ。


やっぱり打ち止めだったか…

この使用法は思いつかなかった

頼みの一方さんも打ち止めが主犯じゃ演算オフでただの呻く肉塊に……
シスターズ半分も注げばライダーがパネェ事になりそうだな……


「……ちっ! 食い物に罪はねーからな……」

 掴んでいた零の胸倉を突き放し、反動で椅子に戻る。
 いや、折れたという表現は杏子が認めないだろう。ここで暴れれば、自身の言葉が確実に嘘になる。
それを嫌ったのだ。

 杏子はフォークを手に取ると、ケーキに突き刺して丸ごと口に運ぶ。
その瞬間の口元の綻びようは、普段の刺々しさや強かさ、素っ気なさを微塵も感じさせない年相応の少女。
 不覚にも隠し切れずに笑みがこぼれてしまった杏子はキッと零を睨むが、零の視線は外れていた。

 気を回した訳ではない。
 特に関心がなかった。
 安堵して手当たり次第に手を伸ばす杏子にも構わず、零の注意が向いているのは店内のある一席のみ。
 一時、子供に戻った少女を微笑ましく思うこともない。
 休息の時間は終わり。その眼、その思考は、既に獲物を追う狩人に切り替わっていた。

これは超作の予感ですね。素晴らしいでつ。
別の板でFateクロス物書いてるけどフルボッコサンドバッグの俺とは雲泥の差でワロタwwwwwwwwワロタ……。
応援してます。頑張ってください。

あ、番外個体はどうしたんだ?

面白いねこれ。
でも無理だ、どう頑張って読んでも頭ん中でインデックスにならない。

>>289
戦争を基本にしてますから
誰もが幸せな禁書世界とはややずれていっています

喰わせる相手は万に近くいますからね

>>290
ええ、原作のように擬似マスターを絡めたくて

>>291
少し外道でしたね

>>292
一方通行さんはややバランスが危なくなるので、早めに出して早めに退場していただきました
ライダーはまだまだ強化できますからね

>>293-295
他のSS書きの方に見ていただけるとはこちらこそ光栄です
ただ、自分で言うのもあれですが独特な文章なので参考になるかは甚だ不安ではありますが
ありがとうございます
そちらのも後で見つけて、拝見させていただきます
お互いに頑張って行きましょう

>>296
ありがとうございます、励みになります
ペースは遅いですが投げ出さずに行きたいと思います

>>297
出場予定は今のところ無いですね
絡め出すと御坂色が強くなりそうなので

>>298
地の文のインデックスがかなり解離していますが、一応はインデックスです

は、早く続きを
御坂妹から打ち止めでパワーアップは想像してたけど、まさかここまでやるとは
面白い面白すぎて困るんだが

あと、打ち止めの台詞が重い、、、おまえ等も人間だよ

投下します

「はぁぁあああああああ!!!」

瓦礫、血、肉の戦場を青い騎士が駆ける。
小柄な身体を沈みこませて、人ならざる速度で黒衣のサーヴァントへ接近していった。
深く構えられた不可視の剣を、肩越しに振りかぶるように持ち帰ると突進の威力をそのままに振りぬいた!

”ぎきぃんん!!!”

「むっ!?」

「くっ!!」

前の戦いでは一撃を受け大きく後退していたライダーであったが、今回は下がりこそしたももの、セイバーの筋力A相当の一撃を受けた。
その変化にセイバーも感じ取ったのか、表情には驚愕が見て取れた。
セイバーの持つスキル魔力放出、そしてライダーには怪力というスキルが確認出来た。
それは前回の戦いではなかったもの、おそらく少ない魔力の運用の為に封じていたものなのだろう。
そのスキルにより、彼女の筋力は大きく向上しているようだ。
セイバーの魔力放出が瞬間であるに対してライダーの怪力は一時付与だ。
瞬間最大風速ではまだ分があっても、継続的に負けていては隙が生まれかねない。
しかし、魔力放出は攻撃だけでなく移動にも使えるのだ!

”しゃいん!!”

鋲が閃き、セイバーの足を狙うが―――。

「なっ!?」

「遅いぞ騎兵!!」

―――セイバーはそれを退いてかわすのではなく前に出ることで鋲とすれ違った!!

魔力放出のブーストで一瞬すら生ぬるい速度で間合いを詰めていく。

”どしゅっ!!”

セイバーを狙った鋲は、彼女がライダーとの間合いをほぼ潰したときにやっとアスファルトに突き刺さった。
驚愕に後退しようとしたライダーだったが―――。

”がきっ!”

「なっ!?」

―――セイバーはそれを許さない。
彼女は本来攻撃に使うべき不可視の剣を、双鋲を繋ぐ鎖の上に突き刺した。
それによりライダーは繋ぎとめられ、ガクッと動きを止めることになった!

「甘いぞ騎兵がっ!!」

セイバーはそのまま棒飛びの要領で突き刺した剣を軸に身体を回転させ、魔力放出により速度・威力を高めた蹴りをライダーの腹に叩き込んだ。

”どがっ!!”

「ぐくぅっ!?!?」

セイバーのとんでもない威力の蹴りを受け、鈍い音を連れるように吹き飛んだ彼女はそれでも鋲を手放さず、むしろそれにより吹き飛ぶことを拒否して、鎖を張り詰めさせた状態で着地をした。
ひび割れたアスファルトの上を、砂埃を立てながら接地したライダーは、不可視の剣で繋ぎとめられた鎖を強く引いた。

「ふっ…………」

「…………」

セイバーはそれに逆らうことなく剣を引き抜き、ライダーの手には双鋲が戻ることになった。
騎士として彼女は相手に無手を強要することはしないのだろう。

「すごい…………」

セイバーの技量、戦闘能力は凄まじかった。
王道でありながら柔軟。
極地の技量を保持しているからこそ出来る発展能力。
技量と言う意味ではセイバーはライダーを圧倒していた。

「ふぅん、結構強いんだセイバーってミサカはミサカは感心してみたり」

「!?」

少し離れた位置で戦闘を見入っていた私の横に気付けば打ち止めがいた。
可愛いワンピースを来て、彼女が『お姉さま』と慕う少女のように苦しそうに顔中に汗を浮かべながら。

「…………」

私はその苦しそうなのに、どこか幸せそうな狂った希望を追う少女を見つめる。
彼女がどんな願いをもってこの戦争に参加をしたのかを少しだけ考える。
でも、直ぐにやめた。

「なに?」

「別に何もないよ」

そっけなく顔を逸らして、私はまたセイバーとライダーの戦闘を見ることにする。
だって、彼女の希望を聞いても仕方が無い。
だって、私はこの聖杯戦争で初めて彼女を敵と認識したんだから。
だった、敵の願いを聞いてそれでどうにかなる訳じゃないんだから。
そう考える私の思考に、他者は『冷たい』『非道』であると言うかも知れない。
でも、忘れてはいけない。
私は修道女。
布教者ではないけれど、世界最大宗教の一員。
世界最大の宗教が何を意味するか。
それは簡単な話――――――。

『…………セイバー』

少し離れた位置にいるサーヴァントに私は拙い念話のパスを飛ばす。
さっきまでの戦闘、ライダーがどの行動にどう反応してその後どうするか、それらを私は目に焼き付けた。
その前の戦闘も、その前の戦闘も。
私はライダーの動きを脳に刻んであり、出来ること出来ないことは元より癖、そして行動の基準を全て記憶し分解しつくしていた。
それは英霊であれど、思考を刻んでいる以上仕方ないパターン。
それらを漏らさず資料として記録、記憶してある。
私はもう一度だけ打ち止めを見た。
かつては友人だと思っていた彼女。
目の前にぶら下げられた希望に正気を奪われた彼女を見て、目を閉じた。

『セイバー、ライダーの行動パターン、思考順路はほぼ確定出来たから、多分もう負けはないかも』

――――――世界最大の宗教、それは。

     世 界 最 大 の 蹂 躙 組 織

私はその一員なのだ。
友には愛を、無知には愛を。
そして異教徒―――敵―――には剣を持って応える。
そうして永らえてきたのだから

「むっ!?」

「ふっ!!」

ライダーが距離を取り再び鋲を投げた。
しかし、セイバーはそれを投げられる前に回避をした。
その行動にライダーは表情の読み取れない目隠しの顔でも驚愕を見せる。
当たり前だろう、攻撃が起こり、それから回避するのが当然のこと。
しかし、今のセイバーは攻撃が起こる前に動き回避し次の行動を起こしている異常。
相手の行動の起こりからの先読みとは別、起こりの前に行動を開始しているのだ。

『セイバー、次は鋲を引き戻しながら鎖で横薙ぎに狙ってくるからしゃがんで!』

「ふっ!」

「またっっ!!」

念話で指示を送ると、その通りにライダーは地面に刺さった鋲を戻そうと引き、そのままセイバーを鎖で狙うように薙いだ。
無表情冷静だったライダーもどんどん困惑と焦りが出てきているようだった。
どうしても攻撃が当たらない、文字通り掠りもしない。
それどころか、行動する前にそれに対応されてしまっているのだ。
私の予測が上々に働いている結果だ。
ライダーの行動を記憶したものから引っ張り出し、今までの行動から未知の行動まで予測する!

「くっ! ならばっ!!」

行動を読まれていると感じたのかライダーは今までしてこなかった行動を起こした。
今までは双鋲を投擲するのは必ずどちらか片方であり、片方は手元に残していたのに彼女は両方同時に投げた―――。
―――否投げようとした!
何故彼女が行動を完遂しなかったのか?
それは簡単な理屈だ投げようとしたときには既にセイバーが投擲目標地点から外れ、ライダーへの間合いを詰めていたから。
今まで見せなかった行動でも、それを取る前には既存の起こりがある。
それさえあれば読むのは容易い。
投擲の姿勢のまま一瞬硬直したライダーの間合いに神速を持って踏み込むセイバー。

『右手の鋲を斜めから振り下ろすから、それを小手でいなしたら斬って、斬ったら直ぐに三歩後退して、もう片方を投擲してくるから』

「はぁぁああああ!!」

「くっ!?」

硬直状態のライダーの隙をついて、セイバーは彼女の左側に踏み込んだ!
そのときに彼女は下段に構えていた剣より左手を離していた。
そして、私の予測通りにライダーは半歩さがりながら距離を取ろうと右手の鋲を振り下ろした。
怪力のスキルを発動したときの彼女の筋力はB相当。
セイバーの基礎ステータスを上回る力を持って彼女の肩口を狙った!!

”ひゅいんっ!!”

鈍い銀が空気を裂き騎士の狙う!

”ぎきぃん!!”

「なっ!?」

「甘いぞ騎兵よ!」

だけど、彼女のその行動は既に予測されきっている。
ライダーの振り下ろした鋲を、セイバーは小手でいなしそのまま左手を引く勢いと魔力放出を乗せ剣を振るった。

「ぐっがぁあああ!!」

振るわれた不可視の剣はライダーの脇腹から深く食い込み、乳房を分かちながら切り抜ける!
鮮血と、それを汚すような濁った叫びを響かせながらライダーは左手の持った鋲を苦し紛れに投擲したが。

「ふんっ…………他愛ないな」

「くっ…………」

既に後退していたセイバーは、それを難なく避けると再び剣を構えて次なる行動に備える。。
それに対して苦し紛れの攻撃を外したライダーは傷を手で押さえながら大きく距離を取っていった。
魂喰いされたシスターズが眠る場所まで大きく退くと、ライダーは鋲を構えた。

「ぐっく…………ぅ」

「………………辛いの? 打ち止め」

私の隣で首につけたチョーカーを押さえながら、少女は蹲った。
彼女も短髪と同じく、無理に魔術回路を精製してその反動なのだろう。
それでも普段は魂喰いによる高密度魔力吸収をライダーにさせて負担を軽くしているのだろうけれど、大きな傷、それも英霊として
現界に関わるレベルのダメージを受けたらマスターから少なからず魔力を搾ってしまうものだ。
それにより苦痛を彼女は今受けていた。
その地べたに這い蹲る姿を私は冷めた目で見ていた。
本来ならば、これよりずっと大きな苦痛を受けるところを彼女はシスターズの魂を喰わせて減らしているのだから。
魂を喰われて死ぬというのは界からの消滅を意味する。
それは神の齎す救済の日すら訪れない完全な消滅を意味する。
そんな死に様を強要した彼女を私は許すことは出来ない。
敵には―――打ち止めには。
剣を持って―――セイバーを持って。
私は打ち倒す。
まずはそこからだ。
言葉に答えずに蹲り、体液を吐き出す彼女からセイバーに視線を戻す。
そして念話で指示送った、ライダーを倒すように。
これ以上放置すれば彼女たちは更に魂喰いをして強化するだろう。
それを許すことは出来ない。

『セイバー、右側から踏み込んでライダーを斬って、迅速に』

「承知しました」

多分私のこの思考は正しくはないと思う。
とうまは絶対に許してくれないと思う。
だけど、私はとうまの為に、とうまに叱って貰うためにこの戦争を潜り抜けなくてはいけない。
それに、何より私は打ち止めを許せそうにない。

「ふっ!!」

セイバーは真っ直ぐ、魔力放出のスキルによるブーストを利用してライダーを斬りにかかる。
フラフラの彼女がこの後している行動はいくつか上げられ、その全てへの対処をセイバーに伝えてある。
だけど、一つだけ不安で不確定なことがある。

それは彼女の宝具だ。
ライダーはランクA+の最上級クラスの宝具を有している。
最初はマスターの魔力不足による開放の不可を考えていたけれど、魂喰いをした今ならならばA+の宝具と言えど使うことは可能だろう。
しかし、それを使う様子はない。
宝具の開帳による真名の表面化を避けているのか?
それについては正しい戦略なのだろうけれど、ここまで来てしまえば使わざる得ないはず。
だけど―――。

「終わりだぁぁあああああ!!」

―――彼女は動かない。
       ”彼女は”
セイバーの不可視の剣が閃く!
上段から体重、力、そして魔力のブーストを持ってライダーを断とうと!!

”ずぶしゅっ!!”

剣は肉を裂き、骨を絶ち、肩口から太ももまで一直線に斬り切った!

「ぐっく…………と、ミサカは、がっぁ!!」

「な!? さきほどの…………ぁ」

斬ったは斬った、しかしその刃が斬ったのはライダーではなくパワードスーツを着たシスターズの一人。
華奢な彼女の身体を見事に斬り裂いていた。

「な?! なんで、さっきシスターズは魂喰いで…………」

まさかの事態、予測にも入れていなかったことに私は目を見開いた。
死んだものと思っていたシスターズが一人、おそらくこの事態の為に一人だけ残されていたなんて。
彼女は魂喰いにより倒れたときに、一緒に倒れ気を、一瞬のこの時を待っていたのだ!
ライダーの盾になったその彼女は既に事切れているようだったが、それで十分なんだろう。
私が犯してしまったミスがここに来て大きく響くから。
令呪による強制で、セイバーはシスターズを攻撃するときにステータスが大きく下がる。
それに加算させ、予想外の事態にセイバーは二秒は遅れてしまった。
英霊同士の二秒は私たちの二秒とはまるで違う。
セイバーのほんの少し前、シスターズの死体を挟んだ向こうにいるライダーは構えた双鋲を振りかぶり―――!!

”ざしゅっ”

―――自分の喉を切り裂いた。

「え? …………ぁ!!!」

そのまま攻撃してくると思っていたのに、まさかの自傷行為。
それの理由がわからず私は間抜けな声をあげてしまったけれど、そこで繋がった。
自傷行為とは魔術呪術においてとても大きな意味を持つ。
生贄などとは一線を画す、自身の奉納。
それは大きな対価を生むのだ。
彼女、ライダーが何をしようとしているのかまでは推測出来なかったけれど、何かをしようとしているのだけは理解出来た。

「セ――――――」

「もう遅いって、ミサカはミサカは勝ち誇ってみたり♪」

念話するのも億劫で叫ぼうとした私に激痛と共に痺れる衝撃が走った。
それが電気による感電痙攣だと気付いたときには既に遅く、微かな電気を纏った打ち止めが苦しそうに狂った笑顔で私を見ていた。
私が指示を出そうとしたのは察知して、彼女がそれを事前に潰したのだろう。
さっきまで私たちがしていたのと同じようなことだ。
呻きながらアスファルトに転がる私から少し離れた戦場では―――光が走った。
美しく尊く気高い。
そんな光が。

「なっ!? ライダー、貴様、それは!!!」

「行きなさいっっっっっっっ!!!!」

”しゅじゅごぉおおおおおおおおおお!!!!!!”

セイバーの驚愕の声を押しのけて、空気を斬る、そんなレベルではない―――
―――大気を殺すような音が響いた。

「…………綺麗」

打ち止めの見た目相応な声を聞きながら私が見上げた空には光輝く天馬に乗った美しい女神がいた。

「鮮、血……胤伏の天馬…………そっか、ライダー、貴方は―――」

          ”メデューサ”         

どうやら私たちは女神様と喧嘩をしているみたい。
それでも、それでも負ける訳にはいかない。
痺れる体に力を込めながら、私は強く唇を噛んだ。

今日はここまでです

打ち止め・・・・

これ以上、死ぬ訳にはいかないとか言っていたのにソレを破るとか・・・

まるで救いが見えねぇ…

欝過ぎるわ……

だが、それがいい


ガチ戦争だよな、これ
主人公不在だからか、ガチのガチですやん
にしても戦闘と表現が格好良いな一々、ぞくぞくしてくる

宗教についてが凄く良かった、宗教キャラは博愛過ぎるのばっかだけど、そうだよな宗教って押し付けと蹂躙だから


更新楽しみにしてます

マジ乙
おもすれー


ってか、SS書きに人気あるんだな

投下します。

念話は場合によって何度の変化する魔術だ。
初歩の上級程度での習得も可能だけれど、上級に届くレベルの使用状況もありえる。
難しい話を差っ引いて科学よりの解釈をするならば携帯電話だ。
知ってる番号にかけるのは簡単だろう。
しかし、知らない番号に狙ってかけたり、着信拒否をされていたらかけるのは難しい。
あまり科学に造詣は深くない私の弁だけれど、概ねそんな感じだ。
念話のパスを双方合意で結んだ場合ならば、お互いの意思疎通はとてもスムーズかつ簡単に出来る。
しかし、現在私はセイバーとの念話のパスを結んでいないのだ。
これは純粋に私の怠慢でしかない。
聖杯戦争が始まり直ぐにしなければいけなかったことだろうに、私はそれを怠り、さっきは集中に集中を重ねて何とか急ごしらえで結んだのだけれども。
それも切れてしまった、大きな感情の揺らぎ、そして集中力の欠如により拙いパスは消え去り、今の私にセイバーとの念話は不可能だ。
だからこそ集中する。
身体は痛むし、排泄器官はバカになって糞尿垂れ流しだ。
くらった電撃で今までの疲れが全て噴出して今にも目を閉じてしまいたい。
それでも、集中しなくてはならない。

「あと一発で終わりかなぁ」

打ち止めの楽しそうに狂った声。
彼女の言うとおりかも知れない。
震える視界の果てでは青い騎士が、不可視の剣を杖に何とか立ち上がっているけれど、どう見ても限界のようだ。
鎧はひび割れ、ところどころに血が滲んでいる。
いや、それでも良く耐えたほうだろう。
大地を削り取るような天馬の一撃を不完全とはいえ受けて、まだ現界してられるのだから。
だけど、このままではそれももう終わりだろう。
それでも、私は終わりにする訳にはいかない。
だから、必死に必死に脳内の処理を起こしていく。
今の私にはそれしか出来ないから。

ここで少し私の知らない物語に視点を向けてみよう。
それは私の敵、打ち止めについてだ。
彼女はシスターズと呼ばれる軍用クローンたちに指示命令を出す統括命令指示用上位固体製造番号20001だ。
通称『打ち止め(ラストオーダー)』
過去に軍用クローンによる大規模テロ的行為をしようとした男に利用されそうになったところを、学園都市最強たる一方通行に助けられその庇護下に入った。
彼女は他のクローンたちと違いとても活発無邪気な性格をしていた。
オリジナル・御坂美琴を彷彿とさせるような人に愛される少女。
それは、彼女が受けるべき『調整』と呼ばれる処置を受けることなく世に出たからだ。
しかし、それだけではクローンたる彼女が無邪気な童女の性格を得た理由にはならない。
無垢なる状況、そして彼女たちミサカ・シスターズが構築する共振脳電波ネットワークによる知識の供給により造られた性格なのだ。
自らの肉体年齢に最も適し、かつ他者の庇護を受けやすい性格・性質を生きるために彼女は取得していた。
彼女はミサカシスターズ全ての知識経験情報を統括する存在。
故に彼女の自我は他のシスターズに比べて極端に薄い。
知識としては理解していても、感情全てどこか他人事でありながら自分事。
大きな矛盾を彼女は孕んだまま生きていた。
感情の理解は出来るので、拾った知識そのまま嬉しいと感じる場面では笑い、悲しいと感じる場面では泣く。
教本通りの感情しか持たない故に彼女は無邪気で無垢なのだ。
そして彼女はその知識、感情の発展によりある人物にある感情を入手した。
それは『報恩』だ。
受けた恩を返すという、人間らしくとても綺麗な感情を入手した。
いや、入手してしまった。
報恩とはとても難しい行為であり感情なのだ。
して貰った行為の恩を受け取り量り、それと同等に返すか? それとも倍で返すか? もしくは減らして返すか。
それらを考えながら相手がどうしたら喜ぶのかも考えなくてはならない。
それは知識としてしか感情を知らない打ち止めには大きすぎる量りだった。
しかし、それでも彼女は人間でいたいと思い―――それも知識故の感情だったのかも知れないが―――命を賭して自分を守ってくれた少年に、命を賭して恩を返すことに決めたのだった。
そして、自我の薄い彼女にとって命とは自分だけのことに非ず。
自分と繋がるシスターズたちもその感情に入っていた。
それを誰かに見抜かれたのか?
はたまた自分で嗅ぎつけたのか、彼女はその身を持って聖杯戦争に参加をした。
命の恩人に報いる為に。
命に対して命で返す。
歪みに歪んでいながら至極全うな等価交換を果たすために。

「はっぁ、はっ、ぐ、くっ…………」

「…………」

傷を負った騎士を見下ろす天馬の女神。
愚かな反逆に大いなる力で応える、どこか神話のような光景だ。
セイバーは必死に剣を構えているけれど、最初のダメージは丸で抜けていない。
息は荒々しく、足が震えているのが遠目にも見えている。
もう少し私の位置が近ければ治療の魔術を少しでも施せるのに、彼女との距離は絶望的に離れている。
そもそも魔術の行使は私の専門外、治療にしたって接触使用が精一杯。
3mも離れたら効果はなくなってしまうだろう。
だから今の私は役立たずだ。
出来ることは必死に集中して念話のパスを繋ぐこと。
いや、いざとなったら令呪の使用も考えなくてはならない。
先ほどの無様に姦計にはまり一画使用してしまったけれど、まだ二画残っている。
一画はマスターの証として残しておかなければならないけれど、一画は使えるのだ。
念話が繋がらなかった場合はそれも視野に入れておかねばならない。
そう考えて必死に肉体を休め、必死に精神と脳をクリーンにしていく。
視界にはセイバーを納めながら。

「いきますよ…………ペガサス!」

「くっ! …………来いっ!!」

そして、ライダーは二度目の攻撃を開始した。
天馬の輝く羽が広がり、周囲が嘘みたいに明るくなる。
セイバーは、ふらつく足を引き締め剣を正眼に構えると迎え撃つ様子を見せる。
彼女自身それが無理だと理解はしているのだろう、迷いが表情から見て取れた。
それでも彼女は退かないのだろう。
彼女は騎士だから。
神々しき天馬を駆り、反逆の騎士を粛清しようとする女神。
その美しく高貴で、それでいて神話的な戦い。
多くの犠牲、そして多くの苦労を乗り越えてのこの戦い。
だけどもう終わりだ。
結末はもう直ぐ。
だって私は言った『負けはないかも』って。
彼女の行動は全て理解しきっている。
不確定要素だった宝具もこの目でしっかり確認した。
兵装が変わったからって、その操り手まで変わる訳じゃない。
だからもう終わり。
拙い念話のパスがセイバーに繋がってしまったから。

『セイバー――――――』

私はこの戦いを終わらせることに決めた。

念話のパスを繋いで、直ぐに指示を出した。
セイバーがそれに同意した瞬間、天馬が微かな後退を助走に彼女目掛けて光の奔流のような疾走を開始する!

”じゅしゅごごぉおおぉおおおおお!!!!”

先ほどのを遥かに上回る、音と振動に離れた位置にいる私たちでさえ震える。
大きな光の塊、まるで太陽ようが振り落ちるようなその突撃!

「はぁぁあああああああ!!!」

「ぜぁぁあぁあああああ!!!」

女神と騎士の声が重なり、そして勝負はあっけなくついた。

「な、んで…………ぐっく、くあっぁああ、ぐぅっ!?」

「はぁっ、はぁっあぁ…………終わりです、騎兵よ」

光の消えた闇の世界で、女神が平伏し騎士が見下ろす。
さきほどとは真逆の光景が映し出されていた。
天馬は消え、ライダーの手には切り裂かれた手綱が残るのみだった。
私がした指示はとても簡単、だけど難しいこと。
突進してくる天馬の手綱を狙い斬って貰ったのだ。
天馬を従えるにはあの手綱が必要不可欠であるのは伝承より理解していた。
セイバーにはライダーの突進のタイミング、位置、威力、範囲を細かく伝えて魔力ブースト、そして彼女の剣を不可視とする宝具のもう一つの利用方を使わせて貰った。
彼女の剣が見えないのは『風王結界(インビジブルエア)』と呼ばれる宝具が大気を圧縮し光の屈折を操っているからだ。
その為、剣の周囲には風が圧縮されているのだ、それを開放して貰い魔力放出の推力に圧縮された風の放出を加算して天馬の突進を切り抜けて貰ったのだ。
本当に言うは易し、動くに難しな捨て身に近い攻撃。
事実彼女の身体には突進の余波でさっきより傷が増えていた。
もし彼女が私の指示を信じないで、恐怖して動きを少しでも違えたら消し飛んでいただろう。
だけど、セイバーは私の言葉に身体と命を賭けてくれたのだ。
騎士としての忠誠の極みを見せて貰った気分だ。
私はセイバーの能力、そしてかつての戦いでの前情報もあり彼女を信じていた。
かの戦車の車輪を破壊した彼女の能力を。
そしてそのセイバーに手綱を斬られると、天馬はその身を荒ぶらせ消滅した。
それでライダーも消滅するハズだったのだけれど、彼女の身には多くの魂による魔力が補充されていた為に生き永らえているようだった。
あの天馬は彼女の死体、その血から生まれた存在。
彼女と同時に存在は許されないのだ。
それを実現させていたのが望外の宝具だったのだけれども、それが破壊されては存在同士がぶつかり合い対消滅を起こすのだ。
これが英霊が真名を隠す理由の大きな一つ。
そう、英霊は既に死んでいるのだ。
彼ら彼女らは既に決定された死因を持っている。
それを引き起こせば、英霊は簡単に消滅する。
そしてその死因は擬似的まもので良いのだ、魔術とは代用で全てが行われている。
似たようなものを用意すれば近い結果を見合っただけ引き出せる、それが魔術なのだ。
そして私も魔術師。
情報と、それを実行してくれる仲間さえいればこの程度容易いのだ。
そうこうしている内に、セイバーの剣にまた風が戻り、不可視になると同時にライダーの首が跳ねられた。
これもかつてと同じ、確実な死因。
私の隣でも、まるで添い寝をするように敵が一人倒れた。
大規模な戦いは闇の中でひっそりと幕引きされ、私はゆっくり目を閉じた。

今日はここまでです。

乙……ここまで一気読みしてしまった

>>1乙 すごくおもしろい

インデックス含め、みんな願いがささいなものだけど、
代償の大きさといったら…

いい加減、上条さんは何してはるんですか!!


なんか、原作より由来とか色々絡めてて面白いね

あと最近更新早くてありがたいなぁ
セイバーSのも楽しみに読んでます

>>300
ありがとうございます
面白いと言って頂けると励みになります

シスターズの利用法を考えた結果です

>>311
少々過激になりましたね

>>312
きっとこれからですよ

>>313
少し暗めになっていますが、お付き合いください

>>314
ありがとうございます
まぁ、戦争ですから

ちょっとキャラから解離しますが、宗教は博愛ではないですから
殴って良いのは異教徒と化け物だけです

>>315
そうなんでしょうか?

>>322
これからもお付き合いお願いいたします

>>323
ありがとうございます

原作だと聖杯入手が目的になっていましたから、なるべく願いに飢えさせたく思いまして

>>324
なるべく色々と絡めていきます

ちょっとギャップありますが、両方よろしくお願いいたします

勘違いする人多いけど令呪使い切ってもマスター権は失われないよー
現世に英霊繋ぎ止めたり魔翌力供給する役目がある。

原作ちゃんと知らないからアレだが令呪使い切ると万一の時に反逆防止が出来ないくらいだと認識してる
この主人公ペアなら反逆の心配も無さそうだ

エロ姐さん退場だと……しくしく


追いついたー
セイバーさんとインさんの食費で上条さんの不幸がマッハなSSと思って来たからビックリしたけど、これはこれですごくおもしろい
続きが楽しみ

わずか3戦で行動パターンを丸裸にされるライダーさんェ……
まぁ、生前は狩りみたいなものでマトモな相手との戦闘経験は少なそうだし仕方無いのかな

本編であまり活きてなかった真名を知られる事のデメリットが活きてて良いね
こうなると、心眼(偽)的に行動パターン読めなさそうで、
なおかつ真名難易度MAXな某赤い英霊がインさんの天敵かのぅ

fateの出逢いは劇場版アンリミデッドブレイドワークスだったんだけど
ライダーこの人なんで出てきたん?って感じで最後の方存在完全に忘れてたな

そしてやっと大活躍する桜√はメディア化望み薄

>>326
そう言えばそうでしたね
セイバーと再契約した凛には令呪が再分配されていましたし
すっかり令呪=マスター権だと思っていました

>>327
仲良しな二人ですからある意味

>>328
ほのぼのな方では生きてますから大丈夫です

>>329
機会があったらそんな幸せなSSも書きたいですね
ありがとうございます

>>330
インデックスは未知の魔術を推測したり思考演算能力が高いみたいでしたので、せっかくバトルなんだからと利用してみました
基本的にライダーは強者ですからね

そうですね、せっかくのクロスですから色々していきたいです
アーチャーはかなりの難敵になりますね
一度真っ向から負けていますし

>>331
桜√は少々隠しきれませんからね
原作で補完するしか

投下します。

「…………」

ライダーとの戦闘、あっけない幕引きから3日。
私とセイバーはもとはるの手配で紹介してもらったマンションにいた。
もとはるからは沢山感謝をされ、後の処理は任せてくれと言われた。
セイバーには令呪の使用を詫び、逆に謝られそして感謝された。

「あなたのようなマスターに出会えて感謝の極みです」

と。
そして私は、何をするでもなく部屋のベッドの上で丸まっていた。

「………………」

「インデックス、体調はどうですか?」

周囲の見回りを終えたセイバーが部屋に戻ってきた。
彼女はもとはるが用意してくれた、現代の可愛らしい服を着て、片手には近くにコンビニで買ったらしい食事を持っていた。
セイバーを含め英霊は召喚されたときに現代の知識をインプットされるので、不便はないだろうけれど、少し馴染み過ぎているようにも思えた。
そんな風なことをどことなく他人事に見ている私。
ライダーを討伐し、聖杯戦争は一歩深みに近づいていくことになった。
喜ばしいことなのかも知れないけれど、私は疲れ切ってしまった。
脳内には友人を殺しつくした映像がフラッシュバックし続けているから。
肉に成り下がって、散らばっていく映像が、そして打ち止めの狂った笑顔が思い返されて、私を削っていく。
殺してしまったのだ、その決断をして、相手が死ぬと解ってセイバーに命じた。
サーヴァントという弾丸を私は友人に撃ち込んだのだ。
戦闘の興奮が冷めて、直ぐに私は罪の意識に心を砕かれかけた。
それをどうにか支えてくれたのは、単にとうまへの思いだけだった。
とうまに会いたい、そして嫌われてても良いから叱られたい。
その感情だけだった、それだけが私の心を今支えている。

「インデックス、あまり後手に回るのはよろしくないでしょうから、次はこちらから攻めますか?」

「!」

セイバーが買って着てくれたコンビニのお弁当を食べていたときに、セイバーがこう切り出した。

「現在確認出来ているのはアーチャー、ランサー、そしてバーサーカー、どれも難敵ですが、いずれが打破しなくてはいけない相手ですから」

「そう、だね…………」

手が震える。
足が震える、排泄器官に痛みが走り、頭痛が起こる。
思い返すは死んでいく友人たち。
殺してしまった友人たち。
ワタシヲミテイタ。
戦闘による興奮狂気の中では感じなくなってしまった大きな感情が私の心を押しつぶす。
でも―――。

「…………まずは、ふ、不確定なアサシン、キャスターを見つけた方が良いかも、ね」

―――もう退けないのだ。
だって私は既に大量の命を奪ってしまった。
そして、それでも願いを叶えようと決めてしまったのだから。
今退くならば、自ら命を断って強制的にこの戦争から身を消すしかない。
だけど、私にそれは出来ない。
死にたくない、とうまに会いたい。
私はとても利己的で醜い女なのだろう。
だから、もう止まれない。

「なるほど、確かに戦力の確認は重要ですね」

「うん、特にアサシンは怖いよ」

「そうですね、しかしアサシンなどと言う騎士道の真逆にいるような存在を許す訳にはいきません!」

アサシンという単語に反応して、セイバーは眉をキッと上げた。
騎士である彼女の生き様に反する相手なのだろう。
アサシン、暗殺者。
気配遮断というスキルを持ち、敵に気付かれることなく殺害をするサーヴァントのクラスらしい。
つまり、今ここ、この瞬間にも狙われている可能性があるのだ。

「つまりですね、騎士道とは自分そのものが生きてきた存在をぶつけ合うことであり!」

セイバーの騎士道についての講演を聞き流しながら考えていく。
もし、ここを狙われていたとした場合、狙うなら私であろう。
暗殺を旨とする以上、正面切手の戦闘能力は三騎士、セイバー、ランサー、アーチャーには劣るだろう。
その中でも最優のサーヴァントと称されるセイバーと真っ向から戦っても勝機は薄い。
ならば、この状況で狙うべきは私の方。
いくらアサシンが戦闘能力が低いといっても現代の人間では太刀打ち出来ないだろう。
ここにもしアサシンが現れ私の首を跳ねて、そして戦線離脱すれば、単独行動のスキルを持たないセイバーは既に現界出来ずに消えてしまう。
そうなれば、それだけで私たちは敗退だ。
…………だとしたら、攻撃される前に○○なくてはならない。
○す。○す。○さなくてはならない。
○される前に○す。

「―――ックス」

○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。
○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。
○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。
○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。
○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。○す。

「イン―――ッス」

もうここまで来たのだから止まれない。
坂道を転げ落ちるトラックだ。
とっくに止まるつもりはない。
ここで止まったら意味が無い、ゴールは一番した。
止まるにはコースから出るしかない。
ブレーキなんて最初からないのだから。
だから、だから、だから、だから―――。
――――――ころ。

「インデックス!!」

「え?」

清廉な、私の思考を切り裂くように鋭い声が響いた。
咄嗟にどこか自分の中に埋没してしまっていた私を引き上げたら、目の前には心配そうなセイバーの顔があった。

「ど、あ、どうか、した?」

「それはこっちの台詞ですよインデックス、どうしたのですか?」

「え?」

心配そうな、どこか咎めて来る顔をするセイバー。
それに慌てながら私は自分の身体を見回すけれど、異常はないように思えた。
ただ、何か、さっきまで、恐ろしい、思考を―――○す―――していたような。
考えていけない、何かを考えていたような、そんな気がする。

「さっきから思いつめたような…………その」

「…………ありがとう」

言いよどむセイバー、それから私がさっきまで酷い顔をしていたのが解る。
多分、自分でも認識で出来ていないけれど、薄暗い思考と感情が薄皮一枚下を渦巻いてるのを感じれた。
何か、考えてはいけないものを深く深く深く深くドロドロの感情が漏れ出しそうになった。
それを、どうにかセイバーが引き戻してくれた、そんな気がする。
だから、私は今出来る笑顔を彼女に礼として返した。
それでも―――○す―――なにか、私とはかけ離れた感情が湧き上ってくるのを感じてしまう。
きっとこれは、私の中に巣食っているのだ。
いや、もしかしたら今まで気付かなかっただけで、ずっと私の中にいたのかも知れない。
深く暗く重く嫌な熱い感情が下腹部で湧いて行く。
一度生まれてしまったこれは、止まらない止められない。
これは私の身を滅ぼすものなのだろう。
だけど、これがこの戦争を勝ち残る為に必要な何か、そう感じた。

「大丈夫ならば良いのですが…………」

「うん、大丈夫、まだちょっと疲れが抜けてないだけだから」

必要だけど、これは私の身に余るものだ。
だから、この感情にスッと軽い蓋をした。
見えなくなるだけ、ちょっとしたことで外れてしまうような、そんな蓋をして私は笑った。

場面は移り変わる。
そこは私の知らない場所。
イキタイ。イキタイ。いきたい。生きたい。
どこかほの暗い場所で、そんな言葉が紡がれた。
人間として、いや生き物として必要な生存願望。
小さな今にも消えそうな声。
そんな願いが延々と垂れ流されている。
もう”彼”を助けるものがおらず。
既に”彼”という個もない状態でも、それでも生きたいと願う純粋な願い。
人に頼れず自分も頼れず、そんなとき人間は手を合わせる。
どうにもならなくなったとき、人は自分たちとはかけ離れた何かにすがる。
”彼”も願っていた、自分を生きさせてくれる何かを。
そこまで深い思考なんかない、ただ生きたいという願いを溢れさせていた。
そして、その純粋な願いにこそ願望器は反応してしまうのかも知れない。
薄暗い、暗色の光と共に何かが存在した。
存在させられた”彼女”はしばらく薄暗い周囲を見渡してから、自分を呼んだ”彼”に気が付いた。

「ふぅん、貴方が私のマスターな訳ね…………へぇ」

黒いローブを纏った彼女は、細い指先で自分の唇をなぞった。
今自分が何処にいて、何をすべきか、そして”彼”の願いを理解して、形の良い唇を笑みの形に歪めた。
そして―――囁いた。

「素敵」

と。
そして彼女は動き出した、動き出してしまった。
戦争に乗り出すことを決めた。
自分の願いの為に、そして素敵なマスターの願いを叶える為に。
セイバー、ランサー、アーチャー、ライダー、バーサーカーに次ぐ6人目のサーヴァント。
キャスターはその身を戦場に投じた。
そのことに気付いたマスターはこの時点ではただ一人もいない

…………。
……………………。
食事を終えた私は、正座をするセイバーを見ながら今後を考えていた。
セイバーに言った「アサシン、キャスターの捜索」これは確かに大切だけれども時間稼ぎでもあった。
今の私にはどうにも、何か良く解らない感情を持て余している。
それを自分で認識したら、今まで築いてきた私が壊れそうだから目を逸らして見ないでいる。
だけど、一度また戦争になればその感情が起きてしまうかも知れない。
無慈悲無感情に引き金に指をかけてしまう。
それが怖くて仕方ないと同時に。
”それは仕方が無いこと”と納得しようとする自分もいるのだ。
その感情こそ私は怖いのだ。
このままでは私はまた友人を殺すことになってしまう。
いや、多分そうなる、それは何となく解っていた。
それでも、その結果から私は逃げたいのだ。
誰も殺さない戦争をしたい、既に100に届く人間を、友人を殺しているのに、私はそんな都合良いことを考えていた。
そんな私を遠くから見つめる影があるのに私は気付かない。
それもそうだ遠くと言っても程が在るほどの遠くからの視線だから。
その遠くでは当然私には聞こえない歯軋りと、聞こえない声を漏らしていた。
長身、長髪、スタイルの良い身体の女性は、自分の背丈より長い刀を握り締めながら歯軋りをして―――。

「誰が、誰があの子にあんな死の、戦の匂いを纏わせたのですか!!」

―――怒気と言うには生ぬるい、彼女の持つ剣のような感情を溢れさせていた。
それに気付くことなく、私はまた思考の海に沈んでいった。

今日はここまでです。

乙ー
魔術師でない小萌のバーサーカーはイリヤと同じステータスで
魔翌力は十分供給できてるらしいインデックスのセイバーが士郎と同じステータスだった理由が知りたいけど
それは物語の根幹に関わる部分なのか

それと打ち止めと出会った後の一方通行が妹達に暴力を振るうってのがどうにも違和感

セイバーはインデックスの様子に気が付かないのか?
それとも……

インさんに『漆黒の意志」が宿りつつあるな

それも上条さんのような「黄金の精神」とは遠くかけ離れた

相対すらしてないのに存在即効大否定されるアサシン(怒)

ただのジョジョネタに厨二病云々言い出す奴が居るなんて……
まさか中国四国はジョジョ一つ売ってない第二のグンマーだって言うのか

ネタにマジレスしてんじゃねぇぞ!!

このクサレ脳ミソがァ――――――ッ!!!!!!

そして私は>>1に敬意を表するッ!!!!!

おいおい…何もしなかった代償が上条さんその他禁書キャラよりヤバいぞ…

後打ち止め…司令塔だからっでミサガは絶対に死なせないんじゃなかったのかよ

おおお、面白い・・!!
続きまだ?

ふと、思ったけど御坂が回想で言ってた、見知った顔って、インデックスだけじゃなくて御坂妹の伏線だったり?
だとしたら、御坂は打ち止めをどう思ってたんだろ

二次だった一方と御坂仲良しだけど、原作はどうなってん?


極限状態だと正気失いやすいわな

>352
原作では新約3巻まで接点なし
一言ずつ現状認識のみでけっこう肩透かし

そういや愉悦の立ち位置は誰なんだ?

まさか土御門じゃあるまいな…

このSSはもう違和感なんてレベルじゃないだろ
でも>>1にちゃんと書いてあるんだし無問題

コレどう考えても最後上条さん発狂しそうなんだが

そこはまあ禁書お得意のご都合主義展開でなんとかなるさ


なるよね?

なんとかなると思いましたか?
ところがどっこい!なんとかなりません!!

面白ければ何を書いても良い理論なら、この1は何をしても許される

色々議論したいが、議論禁止か
続き早く!

投下します

「さて、まずは何処から捜索しましょうか?」

「うん…………とりあえずは結界、陣、工房でもあれば解りやすいんだけどね」

何とか気持ちの整理をつけた私はセイバーと二人で街中を歩いていた。
もとはるが用意してくれた妙に可愛い服を着たセイバーは目立つようで、周囲からは随分視線が集まっている。
外国人というだけで、それなりに珍しいのかも知れないし、金と銀の髪が並んでいるからかも知れない。
それは在り難いことだと思う。
昼間であること、そして人目につく場所、これならば急な襲撃もないだろう……いや、そう信じたい。
これが正規の聖杯戦争だったならば、目に付くことを嫌う魔術師は攻撃を仕掛けてはこないだろうけれど、今回のこれは異端であり異常な状況だ。
上手くはまるかは解らない、むしろ無駄に被害を広げることになるかも知れない。
そんなことを考えながら、セイバーに言った様に街のどこかに魔術的異常がないかを探す。
アサシンは解らないけれど、キャスターはその性質上、魔術師としての拠点たる工房か、下手したら大規模な陣を仕掛けている可能性がある。
それを見つけることが出来れば、何かの手がかりになるかも知れない。
場合によっては先に見つけておかないと、とんでもないことになる可能性もある。
解体されたハズの第五次聖杯戦争ではかなり大掛かりな陣が作られたらしいから、下手をしたら街が飲み込まれる可能性も考えなくてはいけない。
だから、それを未然に防ぐ意味も持ち、かつこちらが聖杯戦争を続ける上で優位になる探索はそれなりに意味がある。
そこから得た情報、それは時にして値千金になるから。

「工房ですか、正直魔術は専門外なのですか、作られやすい場所などはあるのですか?」

「うーん、まぁ、魔術師からしたらマナが多い場所、もしくは地理的に意味がある場所に立てたいだろうね」

「マナが多い場所は解りますが、地理的に意味がある、とは?」

「ん~、魔術において方角と角度は意味があるからね、魔術の特性によっては方角の魔は大きな意味を持つんだよ、北で儀式を行った場合と西で儀式を行った場合では意味に大きな違いが現れるから」

「ほ、ほう…………」

流す様に説明したけれど、セイバーはあんまり理解出来ていないようだった。
だから、適度に話を終わらせて周囲の異常に目を配っていく。

通常ならば聖杯戦争は魔術師同士の戦いの為に、その地にまずは簡易的でも工房を設置するハズ。
魔術においては前準備が全てに近い。
戦いまでにどれだけの石を積めるか、それが戦況を大きく動かす。
その為には工房は必要不可欠な拠点だ。
しかし、今回のこの戦いでは正規の魔術師が私以外にいるかどうか、私にしたって魔術師といっても執行能力は低い。
大規模な術など使えない、あくまで補助的魔術の行使しかしないので工房の準備などしていないし、何よりいきなりであったのでそんな暇なんかなかった。
してある準備など高がしれている、今現在はセイバーとのパス、そしていくつかの人払いの簡易護符、それと少々の護身に使えるものだけだ。
と、言うかそれくらいしか準備が出来なかった。
その場で魔術を行使するには私では難しいし、かと言って事前に行使した魔術を封じるにはそれ相応の器、宝石であったり、輝石であったりが必要だ。
それを準備する手立てもない私は、簡易のものしか用意できない。
だけど、それを上手く利用すれば勝ちへの布石にはなる。
特に超能力者、彼ら彼女らには有効な武器になり得る可能性もある。
やれる準備は何でもしておいて損にはならないハズ。
そう信じて警戒しつつ街を散策していくが。

「中々見つからないね」

「そうですね、普通の街、と言った感じで異変は無いように見受けられますね」

セイバーの言葉の通り、異変は見当たらない。
見当たらな過ぎる、と言っても過言ではない。
数日前に大きな破壊が起きていたのに、それに対する報道や騒ぎは特にないようだ。
それはつまり、この戦争には学園都市の上層部も関わっているということなのかも知れない。
大規模な情報操作、そして封鎖を可能にする程度の立場の人間が。
…………科学の街でそんなバカげたことする人間はいるの?
考えても答えは見つからない。
私は学園都市の上層情報なんか持っていないのだから、推測すら立て難い。

だけど、考えておくことも必要ようだ。
もしかしたらこの周りにいる学園都市の人間全てが敵に回る可能性もあるのだから。
そうなった場合に○すのは何処からが―――。

”ごんっ!”

「インデックス!?」

「い、たた…………」

思考が妙な方向に流れようとしたのを止めようと、私は自分の顔面を思い切り叩いた。
唇が切れて少し血の味がするけれど、それで良かった。
心配そうにするセイバーに軽く手を振って大丈夫と伝えて私は息を整える。
私は聖杯戦争に勝つだけで良いんだ。
それだけ、それだけ、それだけなんだ。
そう言い聞かせて何とか頭をフラットな状態に戻していく。
何か頭に妙なものが巣食っている気がするけれど、それから目を逸らすことが今の正解だと思う。
だから、私はその『妙なもの』を追求しない。
何となく解っていたから。
その『妙なもの』がこの聖杯戦争に必要な要素になるだろうから。
私に足りない、要らない、欲しくなかった何か。
それが多分芽生えつつあった。
大まかに言う決断力。
そして切り捨てる力。
とうまの元にいる限り必要ではなったその力が私の中で芽吹きつつあった。
私はそれから目を逸らす。
それが、いつの間にか見過ごせなくなるくらい大きくなってしまうことを知っていたのに。
それでも、私は綺麗な振りをしてそれを見逃してしまった。

そして、見過ごせない相手に出会った。

「おや、奇遇ですねとミサカは手を上げて挨拶をします」

「っっっっっっっっっ!!!!!!!」

街角、何の準備もなくふと出会ってしまった見過ごせない相手。
それはシスターズ、私の友人と同じ姿を持ったその人。
少し前に戦った相手、その一員に、だった。
もっとも、ここに生きて存在していると言うことは相対はしてなかった、燃料として扱われていた内の一人なのだろうけれど、それでも私は動揺しない訳にはいかなかった。

「貴様は!」

動揺する私の前にセイバーがグッと前に出て、守るように手を伸ばしてくれた。

「インデックス?」

「いいの、セイバー…………大丈夫」

だけど、私はその庇護を拒否するように前に出る。
シスターズと、彼女と、クールビューティの姉妹と真っ直ぐに向き合う為に。

「…………少し、話さない? 時間、あるかな」

「? ええ、問題ないですとミサカは頷きます」

私は自分が何をしたいのか解らない。
謝りたいのか怒りたいのか。
だけど、それでもこの場でただ擦れ違い、あのときを無かったようには扱えなかった。
無かったことには出来ないあの時、もしかしたら私はそれを再認識したいだけなのかも知れない。

「それで、話とはなんでしょうか? とミサカはベンチに踏ん反り返りながら聞きます」

「ふんぞり返ってないよね、普通に座ってるよね、それ」

少し歩いた場所にあった公園のベンチ、そこにシスターズの彼女は座っていて、その前に私とセイバーが立つ。
彼女自身は緊張感も何もないようだけど、私は今緊張していた。
だって、彼女の姉妹を私は殺しまくったのだから。
正直何を言われても仕方ないだろう。
セイバーは無言を保ちながらも、その手には不可視の剣が握られていた。
もし、何かあったら敵として排除するつもりなのだろう。

「あの、さ…………ご―――」

「謝罪ならば受け取るつもりはありませんとミサカはNOと言える日本人」

「―――え?」

硬く、くっついてしまったような唇を開いて『ごめん』と今更意味のない謝罪をしようとした私の言葉を彼女はスッと止めた。
そのまま何処か焦点の合ってない目でこちらを見つめて、今度は彼女が口開けた。

「先日の件についての非は襲い掛かったこちらにありますとミサカは冷静に物事を判断します」

「で、でも…………」

「デモもストもありません、貴女は自分を殺そうとする集団から身を守っただけですとミサカは判断します」

冷静に、まるで他人事のように彼女は物事を裁いた。
鼻を少しだけ鳴らして「それにミサカの姉妹を殺したのはそちらの騎士気取りの方ではないですか」とどこか挑発する発言をセイバーにしていた。
挑発にセイバーは無反応のままだったけれど。
冷静な物言い、彼女の言うとおりのことかも知れないけれど、それでも私はどうにも納得出来ない。
確かに襲われたけれど、彼女たちをああまで殺すこともなかった、そう思ってしまうのだ。
罪悪感、多分そう言うもの。
謝罪するくらいならば私が死ねば良かったのかも知れない。
それも出来ない、でも

――――――殺して

ごめんなさい――――――

なんて意味のない謝罪なのだろう。
私は強く唇を噛んだ。

そのまましばらくの無言。
ベンチの彼女は自分から話すことはないようで、セイバーも私を守るだけ。
そして、私は何も言えずに地面を見ていた。
本当に自分が何をしたいのか解らない。
意味の謝罪は受け取りを拒否されて、被害者―――と私が思う相手―――からは非を認められる。
この先何をしたら良いか解らない。
むしろ、何でこの場を設けたのかすら解らずにいた。
そこに、新たな声が放り込まれた。

「よォ、ちょーど、あつまって、ンじゃ、ねェ、か…………」

「あくせら、れーた?」

声の先、声の主。
無音に近いモーターにより駆動する車椅子に座った一方通行がゆっくりとこちらに向かってきていた。

「ど、どうしたの!? どこか怪我したの!?」

「あァ? なんで、もねェよ、ちっと、ばっかシステムが、変更に、な、っただけだよ」

「しすてむ?」

「あァ」

理解不能な発言に首を傾げる私に、彼は小さく応えた。
その彼の口調も何か、どこかぶつ切りの妙な感じになっていて、それにも首を傾げてしまう。
だけど、彼はそれを詳しく説明するつもりはないようだった。
ただ、彼はゆっくりこちらに近づいて来る。

「…………」

私の近くに来ると億劫そうに首を上げて彼は顔を覗き込んできた。
しばらく、そのまま見つめてくる。
その目からは何の感情も見つけられなかった。
どこかクールビューティ、シスターズと似てるような目だった。
浅い虚無。
その色はとても暗い。
彼はその暗い目のままゆっくりと、口を開いた。
その口の端からは微かに涎が垂れて、身体も微妙に震えている。
それでも、彼は必死に言葉を出すことにしたようだった。

「なァ、あいつは、どう、死んだ?」

震えるようなその質問に、私は答えられなかった。

答えられない。
言葉につまった―――のではなく。
知らないから。
彼女が、打ち止めが死んだとき、そのときに私は地面に倒れていたから。
その隣で死んでいく彼女を私も、誰も見ていなかった。
真の意味で打ち止めの死を看取った人間は誰もいない。
私の隣で、殺そうとした相手の隣でただ死んだ。
それが彼女の最後。

「わからない、ごめん…………見て、なかった」

それを私はそのまま伝えた。
それにベンチに座る彼女も、車椅子に座る彼も無言で応えた。
元より無言のセイバーは興味はないようで、そのままいつでも二人を斬れるように構えを崩さない。

「そ、っかァ」

「まぁ、特に興味もないですけどねとミサカは適当に流します」

それぞれどうにも思っていなそうな言葉。
絶対そんなことはないのだけれど、彼らはそう処理した。
処理できていないのは私だけなのかも知れない。
私たちの間に流れる空気は重いのに、どこか希薄。
薄く伸ばされたようなどうでも良い空気感がその場を埋めていく。
その空気を破ったのは以外にもベンチの彼女、シスターズの一人だった。
彼女は軽く一方通行に目をやり。

「一方通行、どうですか代理統括システムの調子は? とミサカは世間話をしてみます」

「まァまァ、だな」

私の知らない言葉、彼女と彼の間だけにまた妙は空気が纏わり付いていく。
それに首をかしげると、シスターズはそれを目ざとく見つけると。

「一方通行、脳にダメージを負い、歩行すら不可能だった貴方の演算を手助けするためにシスターズの脳電波ネットワークリンクを利用していて、私たちが並列に演算することにより歩行は元より、一時的な能力の使用も可能にしていたのですが、それを統括する最終信号の死により貴方の演算を補助することが不可能になると思われていましたが、死を見越してか彼女が用意した自分の代理となる統括システムの調子はまぁまぁですか、とミサカは説明口調で言い切ります」

「…………まァまァ、だよ」

彼女が告げたのは私の知らない事実だった。
私のしてしまったことの余波が一方通行にも関係していたことを知り、直ぐに彼に謝ろうとしたけれど、彼はそれを震える手を前に出すことで止めた。
また、私の意味のない謝罪は止められる。

「あの、ガキが、やった、こ、とだ、お前がどうこう、の話、じゃ、ねェ」

「…………」

彼もだった。
彼も彼女もだった。
自分の身内を大切な人を殺されたのに。
誰も私を責めない。
赦しが欲しいのかも知れない私にそれは辛い。
他者に赦しを求めるしか出来ない―――。
―――自分で自分を裁かない弱い私には、辛い。
私は結局、誰にも罪を咎められず。
ただただ贖罪の念だけを胸に押し込んだ。
誰も彼も私を責めない。
その状況に、私は強く強くとうまを求めた。
彼ならば、彼ならば私を叱ってくれる。
彼だったら、私を―――。
きっと、そう彼だったら。
まだ見ぬ幻想だけが私の頼りだった。
在りし日の彼の手、それだけを思い浮かべ。
私はまた夜に身を投じた。
聖杯戦争を続ける為に。
自分の願望を叶える為に、他人を蹴落とすその場に。

今日はここまでです

>>341
ちょっとだけ関係がありますね
根幹ってほとじゃないですけど、そんなに深い理由はないです
今回のは聖杯戦争の再現みたいな感じなので

ちょっとした躾みたいなイメージでやりました

>>343
王は人の心が解らない、ですね

>>345
黄金に向かう魂が金なのだ! ですね

>>347
騎士としては許せない相手かなと

>>349
群馬県民ですみません
入国にはパスポートか小麦粉が必要です

>>350
ありがとうございます
敬意には頑張りで返します

>>351
主人公不在ですから、悲劇が色々と

決意と結果は食い違うことはままあります

>>352
ありがとうございます

そのつもりは少しだけありました
他にもいくつか挟んでみてますが、活用されるかはまだ不明です

二人の仲は、まだまだ、ですね
深い何もない感じで

>>353
戦争ですから

>>354
言峰のたち位置は出るか微妙ですね

>>355
ちょっとインデックスが頑張りすぎましたね

きっと大丈夫ですよ

>>356
まぁ、多分

>>357
ハッピーエンドは大切です

>>358
ありがとうございます

まぁ、書き出した頃は過敏になっていましたが
今は大丈夫ですので、ある程度はお好きに

諸君、私は聖杯戦争が大好きだ

上条さんさえいれば、どんな状況になっても上条さんが来ればハッピーエンドになるはず
鎌地だってそう言ってたし

10月の禁書が楽しみ
最近質が下がったとか言われているが素晴らしい発想に毎回驚かされてます

今のまま妥協していても問題なかったのに、それ以上を求めて犠牲を増やす。欲って怖いね

投下します。

夜の街。
生徒たちの街である学園都市では、最終下校時刻が設定されている為に、街中にはほとんど人がいない。
そんな無音に近い、風の音に耳を傾けるような夜。
音が色が飲み込まれるような夜。
実験に使用されるという広々とした空間で、私は、私たちは赤いサーヴァントと対峙していた。
ドラマ性も奇跡もなく、ただただ普通に会い。
普通にこの場に招かれ。
そして、この場でこれより戦いが始まる。
ただ単に始まった戦争をただ単に終わらせよう。

「…………アーチャー、短髪は?」

「マスターなら不在だ、どうにも彼女は魔力汚染が酷いようでね、この場にはこられない。幸い私には単独行動のスキルがあるので問題もないのだがね」

「そう」

私の前には武装したセイバー。
その前、距離にして10mほど遠くに立つアーチャーは、御坂美琴のサーヴァントは質問に対して妙に長くペラペラと返してくれた。
それが決して律儀さや、礼儀ではないのはまるで嘲る様な語り口で理解出来る。
彼の語り口、どこか芝居がかった口調は誰かを嘲っているのだ。
それが目の前にいる相手なのか、それともまったく関係ない相手なのか、もしくはその両方なのかは知らないけれど、彼は誰かを嘲っている。
腕を組み、やや斜に構えるようなポーズのアーチャーは自分から言うこと聞くことはないようで、片目だけを開いてこちらを伺っていた。

「…………」

「セイバー、待って」

その態度、口調が勘に触るのか、それとも前回の敗北の借りを返したいのか。
セイバーは無言のまま一歩進もうとしたけれど、私はそれを止めた。
彼女は一瞬何か言いたげな顔をしたけれど、直ぐに頷いてくれる。
それを確認してから、再びアーチャーに向かって口を開く。
この質問だけ終われば、正直もうやることは戦争だけ。
言葉を選ぶつもりも気もなく、放るように軽く言葉を出した。

「アーチャー、貴方は聖杯戦争に何度目の参加?」

「二度だね」

「そう…………そう」

投げるような質問に返ってきたのは、投げるような答え。
少し私を振り返りながらセイバーは不思議な顔をしていたけれど、もうこれ以上質問は無い。
ただ単に戦争を始めよう。
しっかりとセイバーに念話のパスを繋ぎ、しっかりと敵を見据えた。

「おや、始めるのか? まぁ、夜は短い、目に付きたくなければ迅速に始めるのが賢い選択だろうね」

敵は赤い弓兵。
筋力 C
魔力 D
耐久 B
幸運 C
敏捷 B
宝具 ??


迎えるは青い騎士。
筋力 C
魔力 B
耐久 C
幸運 B
敏捷 C
宝具 C

弓兵がその手に黒白の双剣を手にする。
黒く白くそして硬く堅く光るその剣を交差するように構え、セイバーに向かって走る!!

「インデックス、行きます!!! はぁぁあああああああ!!!」

それに応え様と騎士は疾走を開始した。




その戦闘を遠くから見つめる影があることに私は気付けなかった。
影は、自分の身の丈よりある細長い何かを傍らに、唇を強く強くかみ締めていた。

戦闘は激しく、そして荒々しいものになっていく。

「ふっ!」

「ぬるい! ぬるいぞアーチャー!!」

”ぎきぃんっ!!”

かなりの広さがある場を二つの影は縦横無尽に駆け回る。
赤い影、アーチャーが投擲した双剣の一振り干将をセイバーは難なく打ち落とす。
―――これが既に24回。

「     」

剣を打ち落とされたアーチャーは、接近しよと神速を尊ぶセイバーにもう一方の剣を投擲すると後退して何かを呟き、再びその両手に干将・莫耶を存在させる。
そして、距離を取りつつ投擲による牽制を繰り広げる。
それは正しい判断に思えた。
アーチャーの白兵戦技能はそこまで高くなさそうだし、セイバーはあのバーサーカーと正面きって打ち合えるほどだ。
元より弓兵の性分は遠距離戦、接近戦主体のセイバーとは勝負にもならないだろう。
だからこそアーチャーは上手く距離をとりつつ、積極的には攻めないがセイバーにも攻めさせないでいた。
彼は恐らく格上との戦闘経験がかなり豊富なのだろう。
隙を伺い、相手の動きを予測して、リズムを逐一変えながら自分の動きは読ませない。
大よそ物語の主役を担う英霊らしからぬ、どこか泥臭い戦い方だった。
堂々と正面。
王道に直進。
そんなセイバーの戦とはまるで違う。
隙を作るために、勝つために全てを捨てうる、そんな危うさを私は感じていた。
彼のそんな戦い方を頭に刻み込んでいく。
ライダーのときほど簡単ではないけれど、ゆっくりゆっくりと彼の動きも把握出来て来た。
そして彼の特性も―――。

「ぜっ! あああああああああ!!!」

「ぐっ!? 力押しか騎士王!!」

セイバーの不可視の剣が双剣のガードを弾き飛ばした!
アーチャーの赤い外套がはためき、その身体が大きくバランスを崩して、慌てるように距離を開けるがセイバーはそれを逃さず前に出る!!
魔力放出のスキルにより加速で、アーチャーが後退しきる前に肉薄!
そして振るう刃が風と、肉を斬る!!

「…………逃げ足は本当に上等の様ですね、弓兵よ」

「武名高い騎士王に誉められるとは光栄だな」

一斬を浅く受けたアーチャーは、傷の深さを確かめ、それが問題ないと判断したのかまた余裕そうに笑っていた。
……やっぱりアーチャーはセイバーの真名を知ってる。
そして、前回の戦闘時に見せたあの剣。
    
    ”カリバーン”

アーサー王に王の運命全てを引き寄せたとされる剣。
何故彼がそれを持っていたかは解らない。
最初は私は彼を、彼の使う双剣から中華の英霊かと思ったが、それは間違いだった。
彼が黄金の剣をアーサー伝説に連なる剣を使用したからだ。
私はその矛盾を必死に考えたけれど答えが見つからずにいた、だけどその謎・矛盾も今回で大分氷解した。
今回私は前回みたいなことがないように万全を期すために見に回った。
そしてセイバーに『アーチャーが剣の投擲と、それによる距離の取り方が重要になるように戦闘するように』頼んでおいた。
彼の動き、そして位置を判断して逐一セイバーに指示を出して、アーチャーが気付かないように戦い方の選択肢を絞り込んだのだ。
アーチャーは莫耶を右手に、干将を左手に持つ癖がある。
この双剣を投擲して引き寄せるときは、常に莫耶を手元に置くのが重要なポイントになるので、セイバーにはアーチャーの左側から斬る様に、踏み込むように指示を出した。
常に、ではなく意識的にやや多く、そちら側から責めて行くように。
そうすることによって投擲をし難く、行動選択を削いで言ったのだ。
干将投擲をして挟み込むように斬りかかりたいアーチャーではあるが、セイバーがそちらからやや多めに斬りかかることで干将をメインに接近戦をせざる得ない。
そんな若干の嫌な感じ、上手く戦闘が運ばない状況に彼は後退するようになり、後退したときはセイバーに微かに速度を落とすように指示をした。
それにより彼に投擲を隙を作らせる。
大まかに言えばそんな指示を数度挟み込むだけで、彼の動きはゆっくりとパターン化されていったのだ。
その結果彼は大よそ予想通りに動いてくれるようになる。
無論、そこまでが彼の策であり演技である可能性は十分ある。
だからこそ慎重を期すしかない。
攻め込んで、前回みたいに大反撃を喰らってしまうことも十分にありえるのだから。
セイバーが戦ってくれるなら、私は彼女に最大限の援助をしなくてはならない。
エンジンと操舵手。
どちらが偉いではなく、二つ揃わないと目的地につけない。
だからこそ、私は出来ることを全てするしかない。


「ふっ、やはり君を殺すのはこれであるべきなのかな?」

少しの沈黙。
傷の箇所に当てていた手を仰々しく、どこかの演劇の騎士のように掲げると唇を小さく動かした。
その手に魔力が集中し、その場、その空間、そこが変質する。

「I am the bone of m  『The sowrd rustu and is long(その剣は錆びて久しい)』 なっ!?」

私は、割り込むようにして一節を呟きに混ぜ込んだ。
たったそれだけで彼の手に集中し、そこに溜まっていた、これより形作られる魔力が方向を変えた。
アーチャーがこれより生み出そうとしていた、ある種時空を歪める、無いものを存在させようとした魔術、それを私を割り込み、無効化した。
彼の手には絢爛豪華、優美にして無敵な宝剣ではなくどこか歪んだ剣に見えなくもない棒が握られるだけだった。
錆びて、これ以上何も斬れそうにない墓場のような剣が、その手に。

「あなたのそれは投影魔術、だよね」

「…………本当に有能なマスターのようだ」

苦々しく私を見つめるアーチャー。
彼はその手に生まれた墓場の剣を投げ捨てると、読み取らせない為にか口内での詠唱を終えて両手に双剣を存在させた。
そう、彼の持つ、振るう宝具は彼のモノではない。
そこに存在させているだけに過ぎないのだ。
『投影魔術』それは本物が生み出した影を顕現させる魔術だ。
理論上ならば遥かか彼方に消滅されてはずの宝具すら現代に蘇らせることが出来る魔術。
そう聞くと万能かつ有用に聞こえるが、勿論のようにマイナスもある。
一つに、存在しないものを存在させることにより、その存在させられたものは世界の修正力に耐えられず直ぐに崩壊してしまうのだ。
そして、もう一つ無いもの、かつて存在しえた宝具を投影するには、それを目の前で見るか、それに匹敵する資料、そして材料が必要なのだ。
そこまでして投影したものも、修正りょくにより直ぐに崩壊を迎える。
だったら現代のものを投影すれば良いかと言えばそうではない。
そんな無駄なことをするなら、本物を手に入れた方がましだから。
それ故に使い手の極端に少ない魔術なのだけれど、目の前の英霊はそれを使用して尚且つ『投影魔術の境地に立ち極地を占めている』と言っても過言ではない。
存在しない宝具の投影、しかも能力までも引き出し、そして連続投影に、投影時間、投影速度、代償なしの施行。
上げればきりが無いほどのことを目の前の英霊はしているのだ。
生前はどんなレベルの魔術師だったかなんて想像するのも怖いくらいだ。

さっきは『強制詠唱(スペルインターセプト)』で彼の詠唱に割り込み、失敗させることに成功したが、毎度出来る訳ではない。
一部門の極地にいるような魔術師にそれがいつまで効果があるかは甚だ疑問ではあるが、警戒くらいはさせることが出来たはずだ。

「…………」

双剣を再び構えたアーチャー。
それに呼応するようにセイバーも剣を深く構えなおした。
そして私は髪をかき上げるようにして、修道服のフードに隠れた耳辺りに『聡耳の兎』の札を貼り付けた。
ただ一定時間聴力をあげるだけの効果なのだけれど、それも今の戦いでは重要になるはず。
アーチャーが投影をしたときにそこに割り込めれば、勝負は簡単に決するはずだから。
……一回やってみせたのは失敗だったかな?
警戒をさせ、カリバーン、もしくはそれ以外の何かを投影させにくくはしたものの、それらをし難くなったことにより決定的な隙を作れなくなってしまったかも知れない。
それはそれで良い、セイバーが基礎性能で上回れば良いだけの話だから。
でも、少しだけ失策した感は拭えない。
さきほどよりずっと大量の音を耳から取り込みながら、私はそんな思考を巡らせた。
警戒させることに成功したけれど、それにより隙を作れなくなった可能性。
天秤にかけて見た結果としては、セイバーの安全の観点から見るに成功ではある。
そう納得して、修道服のあちこちにしこんだ様々な魔術の始動式を確認する。
英霊同士の戦いに何が出来るか解らないけれど、全ては使い方しだいだから。

「…………」

「…………」

睨み合う二人。
真っ向から切り裂こうとしているセイバーに、活路を探そうと鬼気迫るアーチャー。
二人の中心では空気が圧縮されていくような錯覚すら覚える気迫のぶつかり合い!
おそらく決着は近いことを確信して、勝負の開始を待ち、唾を飲んだ。
そして、まるでその音が合図になってように両者一斉に動き出した!!

「「はぁぁああああああああああああああああああああ!!!!!」」

不可視の剣と―――。

―――黒白の双剣。

今決死にて双方が衝突する!!

今日はここまでです。


スペルが間違ってるのはわざとなのか、意味があるのか…

swordだね
わざとならゴメン

>>370
私も好きです
士郎が固有結界を使ったときなど胸がスク思いでした

>>371
そうなることを願います

>>373
ペース早いですよね

>>374
それが人間ということで
原作では聖杯による願望成就ではなく、聖杯の入手が目的でしたから、そんなにどろどろしませんでしたね

>>383>>384
純粋なミスです
最初はスペルロジックにしようかと思いましたが、語学力に不備があったので止めました



「強制詠唱」は、「黄金錬成」とか全く未知の魔術は妨害不可のはず
なんてかインデックスさんが使えるのは、それ相応の知識の裏付けがあるわけで、
その知識を活用して相手の魔術を解析するわけで…つまり、解析不可能の未知の魔術は妨害不可なわけで…

通常の投影であればいざしらず、アチャ男の投影は固有結界からこぼれ落ちた別物
固有結界なんて個々人それぞれ、そもそも詠唱に意味なんて無い「黄金練成」以上の全く未知、
と言うか他人が理解出来るわけもなく、妨害不可の類かと……
あるいは、妨害可能と勘違いさせるアチャ男の名演技が光っているというのか

とりあえず、言葉尻を合わせておけば妨害できる、とかだと色々困るだろ、とある世界の魔術師もさ


……ここまで書いて、自分で「…うわぁ」って思った……ごめんよ

まあクロスなんだしそこらへんは深く考えなくていいんじゃない?
そもそも禁書世界の魔術と型月世界の魔術じゃ根本から異なってるし

目的を叶える為の手段がどういう結果を生み出すのか
それをイメージできなければ確実に破滅する
破滅への道は良心で鋪装されているのだ。

騎士王の言葉を借りるなら誰もが正しくあろうとしたがゆえの悲劇だこれは

それでも上条さんなら・・・

上条当麻がいなければ救われない世界ってのも間違っていると思うがな


これやばい面白いなぁ
あと、ステータス原作とちょっと違うんだな
やっぱりマスターが違うからか

まとめに載らないかなこれ
一気に読みたい

容赦なくキャラが死んでいくな、面白いが
あと、描写が上手すぎて生々しい

だがそれがいい

まだー?
セイバーたちのは更新されてんのになぁ

少々時間が空きましたが投下します。

「ぜっぁああああああああ!!!」

先に動いたのはセイバー!
その小柄な体躯を沈み込ませて、一挙動でアーチャーとの距離を潰す!
彼女自身が砲弾になったかのような圧倒的な速度、かつ圧倒的な威力!
一歩目の踏み込みで足元が爆発した!
踏み込みの勢いだけで風が生まれ大気が避けていく。

”ぎっきぃいん!!”

「ちっ!! くっっ!!」

不可視の剣の打ち込みを黒白の双剣が受ける。
散る火花に漏れるは苦悶の声。
アーチャーはセイバーの一撃を正面から受けきれず、双剣を上手く使っていなすけれど―――。

「はああああぁぁあああ!!」

”きぃいん! ぎっきぃん!”

「ぬっ!! く、があぁぁあああ!!!」

―――受けれるのは一撃。
続けざまの剣戟に堪えることは出来ずに、アーチャーは両手の双剣を弾き飛ばされた。

「凄まじいものだな騎士王!」

「ふっ! まだまだ! まだまだぁぁぁああ!!」

双剣を飛ばされると直ぐにアーチャーは新たな双剣を投影させた。
やはりこの双剣の投影には無詠唱のレベルに至っているらしく、タイムラグも無く存在させた。
…………凄い、割り込む隙が無いんだよ。
そこにあってはならない過去の宝具を、当然のようにそこに存在させる。
時空を歪めるに等しい行為を簡単に実現させる技量に唾を飲んだ。
聡耳の術式により微かな呼吸音は聞こえてくるけれど詠唱の片鱗も見つけられないでいた。

詠唱に割り込む、それは既存の魔術ならある程度可能だ。
だけど、目の前で繰り広げられる魔術は時代こそ不明だけれど人の理の外に近しいレベルの魔術。
おいそれと割り込むことは出来ない。
だけど、推測と予測は出来る。
見た限り彼の、アーチャーの投影魔術は剣に特化しているようだ。
詠唱にも剣を意味する言葉が散りばめられていたし、彼の投影魔術は多分一つに特化することで他のモノを捨てた結晶。
剣以外の投影も出来るかも知れないけれど、難度はあがるはず。
煮詰めきった純粋なもの。
そこに付け入る隙はあるか?
―――多分、ないだろう。
彼、アーチャーはあれほどのレベルの投影魔術を自分の手段の一つくらいにしか思っていない。
極めた道を誇るでもなく、ただの要素として扱っている、ほら、今だって―――。

「ふっ! ずぁぁあああ!!!」

アーチャーはセイバーの一撃をギリギリでいなし、その身にダメージを蓄積しながらもいなした回転を利用して蹴りを放った。

「くっ! 姑息な!」

突然の蹴撃にセイバーは一瞬動きを鈍らせたけれど、片手でそれを受けて大きく剣を振るった。
走る剣は赤い外套の一部を切り裂くだけに留まり、その身を断つまでには至らない。
大きく距離を取った彼は再び双剣を投影して構える。
一秒に満たぬ停止を終えて彼は駆け出す駆け抜ける!
構えた手を広げて片方を投擲、そして更にセイバーに接近!
近づき駆け抜ける!

”きぃんっ!”

天性の直感を持つセイバーは投擲された短剣を容易く打ち落とす。
そのコンマ数秒のタイムラグを経て突きだされたもう一方の剣!
セイバー自身の腕を影にするように狙われた闇突き!

「っ! 甘いっっ!!」

それもセイバーは容易く紙一重でかわして見せた。
そして当然のように剣で返す!
風斬る一撃がアーチャーの肌に微かだけど届いて鮮血が散り、アスファルトの地面に黒い染みになった。

「さすがにやるな、騎士王」

何度避けられ、その度に反撃を受けようとアーチャーは止まらない。
今出来ることを、今あるもので、今だかつて無いくらいに勝ってみせる。
出来ることを出来るだけ。
あるもので出来るだけ。
ボロボロになっているのに彼の目は一ミリも死んでいない。
何を使ってでも勝つ。
その意志が彼には強く宿っている。
私は、その姿勢に酷く親近感を覚えた。

繰り返されるチグハグな剣劇。
セイバーの剣は真っ直ぐで王道。
その存在が後押しするかのように、濁り無く真っ直ぐ真っ直ぐ全てを切り伏せる。
彼女の瞳は常に前を見る。
常に正面の敵を正面から斬る。
これから自分が斬る相手の瞳を真っ直ぐに見つめて。

「はっぁあああああああ!!」

それに対してアーチャーの剣は変幻自在で邪道。
彼の今までの生き方戦い方がそうさせているのだろう。
セイバーのように強者で王者に生まれなかった弱者故の戦い方。
常に乏しい状況で、常に勝ちに固執することでしか勝利を呼び込めなかった。
勝つことを運命付けられた王たるセイバーとは真逆。
手が届かない場所にある勝利の為に、何でもしてきたのだろう。
彼の戦い方にはそんな執念が垣間見えた。

「………………」

そう垣間見えてしまった。
戦闘の動き、目線、戦術、反応、そして思想。
そこまで推測推察が出来つつあった。
まだ不明な点は多くあるけれど、それを差し引いてもどうにか出来る程度に、私の読みは完成しつつあった。
あとはその一瞬を待つだけ。
勝負を決められる一瞬を。
でも――――――。

「ぐっお! おっおおおおおおお!!!!!」

「甘い! 甘いぞ弓兵! その程度で我が守りを崩せると思う―――なぁぁあああああ!!!」

双剣を共に大上段に構え、身長差と体重を利用した一撃。
やや斜めに刃を傾け、交差するようにセイバーを狙ったが、彼女の剣は横に構えられ容易くそれを受け止めた!

”きっぃいいんっ!!”

飛び散る火花!
体中に刻まれた傷よりアーチャーの鮮血が噴き出す!

「ぜっぁああああああ!!」

セイバーは横に倒し双剣を受け止めた自らの剣を魔力放出のスキルで力任せに振り払った!
その膂力にアーチャーは耐え切れず、容易く剣を弾かれ後退した。
その一歩の後退をセイバーは見逃すことはなく斬りかかる!
不可視の剣が風を裂き、その先にある弓兵を切り裂きにかかった!

「っ!!!」

振るわれた一撃はアーチャーの肩から胸の半ばを切り裂いた。
さっきまでとは比べ物にならないほどの血がそこから溢れ出していく。

「ふっ、正に最優のサーヴァント、その名に恥じぬな、セイバー」

「…………」

距離を取り、双剣を再び構えたアーチャーは相変わらずの不敵な笑みを浮かべてセイバーに向かい断つ。
セイバーは無言で剣を構えなおし、相対する彼を睨む。
視線だけで圧殺してしまいそうな気迫を含ませたその眼力を受けても。
全身に傷を刻まれ、どんな攻めも全てかわされ圧倒的なまでに追い詰められても。
彼は少しも諦めていない。
どこかにあるはずの一手を探しているのだ。
その姿に―――。
―――私は。

    ああ。なんと気高い人なのだろうか。

心の底から尊敬してしまっていた。
諦めない絶対に折れない。
どれだけ傷ついても決して折れない。
砕かれるまで、否砕かれてでも戦うこの人を。
その象徴たる剣の様なこの人を。
――――――殺したくはなかった。
今更。
友人、その姉妹を延々虐殺した私が言うには重みも無い言葉だけど、そう思ってしまった。
私はこの人を尊敬してしまっている。
この人を殺したくは無い。
そう感じている。
それでも私は進むと決めた以上この人を殺すのだ。
聡耳の札により聞こえてくる彼の心音、荒い呼吸音、全てが愛おしい。
それを止める自分が恨めしく―――。
―――羨ましい。

『セイバー、大体動きは読めて来たから…………決めよう』

「…………」

念話による私の指示にセイバーは、微かに身を沈みこませて応えてくれた。
完璧では無い読みだけれど、大体は読めている。
隠し玉もあるだろうけれど、予備動作はそれなりに情報が揃っている、そう大きな読み間違えもしないだろう。
だから、私は彼を殺すのだろう。
何でか、まったく知らない、現代の生者でもない彼を殺すことについて、打ち止めや、クールビューティのときより抵抗を感じている私がいた。
それでもそれでも。
勝負が始まった以上は決着が必要だかた。
思考が黒く暗く染まっていく、そんな高揚感を胸に私は指示を出す。

『多分あと三手で決するかも、まずは4秒後アーチャーは双剣を投影するから、その投影に合わせて踏み込んで』

「承知っ!!」

1秒。
アーチャーが両手を交差させる。
2秒。
変わらない不敵な笑みで少しだけ肩を沈ませる。
3秒。
指を何かを握りこむように曲げる。
4秒。
その手に投影魔術により双剣が姿を現し始め―――セイバーが踏み込む!
地面を削るような突進突撃!
それを受けてアーチャーは双剣を構えた!

『双剣を両方投擲して新たに双剣を投影すると思うから一瞬立ち止まって!』

「っ!?」

私の指示の通りセイバーはその神速の踏み込みを、目標半ばで急にブレーキをかけた。
対してアーチャーは翼を広げるように構えたまま目を見開き一瞬だけ動きが鈍る。
予定が狂い彼の判断に少しの隙間を開けさせた。

『今! さっきより少し遅めに踏み込んで欲しいかも!』

投擲をしようか迷っているその迷いに付け込むようにセイバーを遅めに進撃させる。
進撃を受けアーチャーが取るのはプランの変更か、それとも続行か?

「っ!」

彼がとったのは続行だった。
両手から双剣を投げだし、直ぐに新たな双剣を手にした。

”きぃん! きぃいん!!”

セイバーは投げつけられた二本を容易く打ち落とす。

「ふっ!!」

それは既に読んでいたと言わんばかりにアーチャーは前に出ると、左手を上段に、右手を下段に構え、やや曲線を描くような軌道を描くように斬りかかった!

『一歩だけ退いて、そしたらアーチャーはそれをまた投擲して直ぐに次の双剣で斬ってくるから低く構えて突き刺して…………それで終わる、かも』

そう、多分これで終わる。
これで―――殺す。
指示に対してセイバーは素直に実直に。
疑いなく殺すだろう。
青い外套をはためかせながら一歩退いた彼女。
避けることを読んでいた、というようにアーチャーは躊躇わず迅速に剣を投擲し新たな双剣を投影し大きく踏み込んだ!
が。
それは指示の内。
セイバーは双剣の軌道を避ける位置に沈み、引き構えた剣を神速で突き出した!
これで終わり。
打ち止めの例を考えるなら、アーチャーの死を持って短髪も死んでしまうのかも知れない。
でも、それでも止まれない戦争。
セイバーの不可視の剣が、アーチャーの双剣が届く前に貫く!!

”ぎっきぃいいいんんんん!!!”

”みしっ!”

金属の擦れる音、そして何かが軋む音が響いた。
剣が肉を貫き、内臓を破壊し、骨を砕く音でも。
死の苦痛に歪んだ声でもない、無機質な音がした。

「え?」

「なっ?」

「む!?」

予想外に私たち三人は動きを止めて”乱入者”を見つめた。
黒い長い髪を後ろで結び、片足だけ大胆に露出したジーンズ。
シャツの片側を縛り、くびれた腰を見せた彼女は―――。

「戦闘行為を今すぐに停止することを要求、しますっ!」

―――身の丈より長い刀で、セイバーとアーチャー双方の剣を受け止めていた。

「か、おり?」

いきなり現れた、恐らく空より来襲した彼女を見つめながら、ゆくゆく乱入の多い戦争だと、そんなことを考えていた。
私以外の二人は、自分の剣を受け止めた”人間”に驚愕の表情を浮かべている。

「「っ!!」」

一瞬の停止をもって二人はかおりを中心に大きく飛びのいた。
彼女は、剣を受け止めたときに一部砕けた鞘の破片を零しながら私を見つめてくる。
深い悲しみと怒りを込めた目で。
その目を受けて私は何を言ったら良いか解らず、その場に立ち尽くすだけだった。

「インデックス、貴方は――――――っ!!?」

一歩私に向かい踏み出そうとした彼女は目を見開き身体をずらした。
その急な動きの意味を理解出来たのは一瞬の後だった。
そう、彼女の身体から鮮血が散った時になって、私を守ろうとしたと気付いた。
急展開の連続に脳みそは真っ白になっていく。
乱入して、英霊の一撃を受け止めた彼女が左胸に赤い穴を開けて倒れ―――ない!

「っっっっっっっ!!!」

血を、大量の血を流しても彼女は踏みとどまり遥か遠くを睨み、その方向と私の間に立ちはだかり―――。
―――その身にいくつもの穴を刻まれ、そして倒れた。

「      」

女性にしては長身の、スタイル良い身体を自分の流した血で染まるアスファルトに投げ出したかおり。
ステイルの同僚であり、世界に10人といない聖人で、私の友達、彼女はあっけなく倒れた。

「な、ん…………なの?」

訳が解らない連続に完全に頭の中は真っ白。
急に現れ急に死んだ。
本当にそうとしか言えない状況。
それの答えを教えてくれる者は―――。

「ふむ、凄いものだな、我々英霊でも反応が難しい最新鋭誘導電磁砲から彼女を守りきるか」

―――直ぐ傍にいた。

「え?」

「乱入者を好機と読んだのまでは良かったが、私のマスターは随分と短気のようだ、まさか関係ない相手に全て撃ち切るとはね」

子供の悪戯をやれやれと嗜める様に笑うアーチャー。
そのどこか平和な姿。
だけど、その言葉に込められた意味から私は大体の状況を理解出来た。
狙撃だ。
狙撃により私の殺害をプランにしていたのだろう、そしてその凶弾から私を守りかおりは死んだ。
狙撃手はアーチャーの言葉から察するに短髪だろう。
勝つために何でもする。
その言葉を体現するように彼らは私を殺しにかかったのだ。
セイバーを正面から攻略するでもなく、私を直接殺しに。
混じりっ気無い殺意。
流石は打ち止めの姉だと妙に感心してしまう。

”ぱぁん!”

「え?」

感心したのも束の間。
軽い音を聞き、衝撃を脇腹に感じた。
呆然としたまま衝撃を受けた部位に目を向けると、そこにはかおりがそうだっように赤い血が一点から湧き出ていた。

「っち、あんた魔力使い過ぎなのよ、ふらふらして外しちゃったじゃない!」

「そう言われてもね、これでも抑えたほうなんだがな」

「こっちは少しでも持ってかれると体中痛くて死にそうになるんだから気をつかないなさいよ!」

愚痴るように声はどこからか?
それを気にする暇なく私は寒気を感じる痛みに膝を折った。

「インデックス!!!」

焦るセイバーの声に応える余裕もなく、私は目を閉じた。

今日はここまでです。
色々ぶっ飛びました

もう容赦無さすぎで、ワクワクですよ



バッドエンド回避できるのかこれ



おーっと、御坂・M・キリツグ選手の容赦無い狙撃攻撃だーっ!?
神裂選手は惜しくも退場、腹部を撃たれたインデックス選手の安否が気遣われますね。

サーヴァントに前線を張らせてマスターが狙撃スタイルだと、
アーチャーのクラス的にはミスマッチだけど、性格的にはマッチしてそう。
クラス的にはマッチしてるけど、性格的にミスマッチだった切嗣とは正反対だけど
果たして幸と出るのか不幸と出るのか……今後も楽しみにしてます。

そしてマッハ20の狙撃すら防ぐサーヴァントを持ってして反応が難しいって……
それ、最新鋭誘導電磁砲って書いてホーミングレーザーって読むんじゃなかろうな

なんてこったい\(^o^)/

力の50%近くを取られて、天使用の術式をかけてたとはいえ、大天使の攻撃を防ぐねーちん、銃弾を避ける速度と反射神経を持つ聖人全般。あたりを跡形も無く消し飛ばず爆発で無傷のねーちん。美琴ってなんか対策したの?アーチャーと組んでるからか。

>>386
そうですね
あまり定められた詠唱に乗っとる魔術が両作品共になかったので
このSSではその者の目指すべき象徴を推察して
そこを乱すことにより介入する形にしました
インデックスの戦力の一部に、既存の知識から未知を推察するのがありますから
戦時中としまして、それを特化したのと
投影魔術という形ある技術から読み解いたことにしてあります
基本的にはとんでもなとこは多々ありますが、見守ってください

>>387
そこなんですよね
設定がかなり違いますから、どちらに寄せるか迷います

>>391
今回は願望を求めすぎてる聖杯戦争ですから、自分の正しさを競ってる形かも知れませんね

>>392
何とかしてくれますかね

>>393
主人公は重要ですから

>>394
ステータスはマスターによってかなり変わるみたいですから
それぞれをイメージして決めました

まとめに載れたら嬉しいですが、まずは完結ですね

>>395
ちょっと調子に乗ってやり過ぎてる気もしますが
このままいきます

>>396
ありがとうございます

>>397
あちらはなるべく毎日を心がけていますから

>>408
ありがとうございます
どんどん行けたらと思います

>>409
…………………………多分

>>410
イメージしたらそれが近いですね
やはりアーチャーは正義の味方ですから、切嗣を目指したような、容赦なく
まぁ、速度はすみません

>>411
神裂さん好きにはすみません

>>412
物理結界と魔術結界、みたいなイメージです
魔術の100を受けきれるから、科学の100も大丈夫みたいな感じではなく
属性が違うような、イメージ

!?
バッドエンド回避予定だったのか!?
 
一番の衝撃だ。バッドエンドに猛進してると思ってた

みこっちゃんもう只の外道だな

切嗣とは何かが違う

1巻の上条さんの影響受ける前の美琴って感じするな、ただし超電磁砲は考慮せず

みこっちゃん
「私の目的はあくまでも聖杯!あくまでも願いを叶える事!
インデックスのように綺麗事を吐くつもりもなければセイバーのようなロマンチストでもない
どんな手を使おうが最終的に……勝てばよかろうなのだァァァァァァァ!!!!」

インさんは美琴からの聖杯への願いの問いに対する回答を誤った感があるしなぁ
美琴を気遣っての回答だったけどBAD ENDに直行な感じになってしまった
まともに上条さんのためと言えばここまで敵視はされんかったとは思うが・・・

投下します。

「っか…………!!」

熱い。
脇腹が熱い。
撃たれた場所が熱い!!!
痛いんじゃなくて熱い。
吐き出したくなる熱が腹部に留まって私を責める。
まともに呼吸が出来ずに、真っ暗な視界なのにどこか赤い。

「『【[{インデックス! インデックス!!}]】』」

「『【[{いかせると思うかね?}]】』」

「『【[{くっ! そこをどけアーチャー!!!!!!}]】』」

私の名前を呼ぶセイバーの声がどこか遠い。
アーチャーの声も、そして剣がぶつかり合う音も何もかもが遠い。
いくつもの壁を挟んだ向こう側みたいで、真っ直ぐ届かない。
届かない届かない、痛みに似た熱さに苛まれ何も届かない。
届かない届けない私を、彼女は見下ろす。
熱くて熱くて燃えそうな瞳で。

「じゃあ、死になさい、改めて」

その声ははっきりしっかり私に届いた。
ああ終わる。
ここで終わるの?
それは嫌だな、そう思った。
ここで終わったらとうまが助からないかも知れない。
ここで終わったら私に従ってくれたセイバーが可哀想。
ああ、ここでは終わりたくない終わない。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。
終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――終わる―――終わりたくない―――。



       誰がこんな場所で終わるかっっっっっっっっっっ!!!!!!

”ぱぁんっ!!”

何処か、遠い場所。
そして暗い場所でのはっきりした会話が交わされている。
二人の影の会話。

「剣が死にそうだけが、それは良いのか?」

「死んだら死んだまで、だな」

「おいおい、最終的には剣が全てを閉じるんじゃないのか?」

「因子の問題だよ、大筋がその通りなら起こったことは”ただ起こる”」

「そんなもんか」

「そんなもんだよ、それにここで弓が残ろうと、彼の者にも因子はある」

「なるほどそう言う考えか」

「そう言う考えさ」

「魔と狂の処理は? あれは剣の役目だろう?」

「最終的には駆逐されるさ、そうなるように出来ている」

「解らんな、それも剣の役目だろ? ここで剣が落ちてどうしてそうなる」

「なるようになるから、とした言えないが―――」

一方の影がそう言葉を切った。
何かを楽しむように、組んだ玩具のレールの上を電車が思い通りに動いたように笑い。

「―――それにまだ剣が落ちるとは決まっていない、あれはあれで捨てたものではないぞ?」

そう言葉を締めた。

「っ!!」

「ぐっこっぉおお…………!!」

ギリギリ、本当に紙一重!
短髪が放った弾丸を避けることに成功した!
避けた、と言ってもゴロンとただ転がったに過ぎない。
それでも私はあまりの激痛に失禁していた。
聖杯戦争開始してから何回失禁すれば私は気が済むのだろうか?
無理に身体を起こせば、腹から流れる血と尿が混ざり合い実に気持ち悪いけれど―――!!
―――こんなとこじゃ終われない!!!!!

「かっ!!! かぁあっっあ!!!」

痛いけど、動く。
動くなら無理をさせろ。
自分の身体に本当に鞭打つ気持ちで立ち上がった。
それだけで内臓全部を口から吐き出しそうになる。

「インデックス!! 無事でしたか!?」

「ぁ、お…………ごっぁ」

少し離れた場所でセイバーが弓兵と鍔迫り合いをしているのを確認出来た。
アーチャーでもセイバー相手に攻め気ではなく時間を稼ごうとすればかなり良い戦いをするだろう。
となるとセイバーの支援は直ぐには期待できない。
だから、目の前の障害は私がどうにかしなくてはならない!!

「っとにしぶといわね、腹撃たれてそこまで動く? あんたのお友達もだったけど、なんなの? 気持ち悪いんだけど……」

「くっか……おごっぉ…………っ!!!」

短髪の目が、も二度と動かないかおりを侮蔑の色で見た。
何も何もしてなかったかおりを殺しておいてその上!!!!
そんな目で私の友達を見させる訳にはいかない!!

「ぐっぎぃいいい!!!」

普段どう動かしているか思い出せないほどの苦痛のまま立ち上がり、一歩二歩と身体を揺らすように動く。
撃たれた傷からはまだ血が流れ出ていた。
……貫通したのが幸い、なんだよ、多分。
内部に弾丸が残っていないようだ、それだけが救い。
だけど、今も私の身体が死に向かっているのには変わらない。
血の出すぎで手足がしびれて、微かな寒気も感じ出していた。
このままでは私は時期に出血多量で死ぬだろう。
こんな状況では、短髪相手に立ち回ることは難しい。
……まずは、止血からなんだよ。
そう、まずは流れ出る私の命を止めなくてはいけない。
部位的に内臓に深い損傷無く抜けているので、手っ取り早く塞ぐのが吉だ。
幸い、短髪もさっきの発砲で足に来ているようで、フラフラして片手を首につけたチョーカーに当てて苦しそうな顔をしていた。
手は震えて、まともに引き金は引けない状態だろうけれど、彼女は超能力者だ。
もしここに遮蔽物があれば即座に隠れたけれど、残念ながら私の周りには壁にも盾にもなるものはない。
しかたなく、ずりずりと後ずさりながら修道服の下に各所に仕込んだマジックアイテムから一つの札を取り出した。
原初的な「τ」の符を一枚。
大した利用は出来ないけれど、火を起こす事は出来るそれ。

「なに、それ?」

「…………っっっっ!!」

短髪はそれが何か当たり前に解っていないみたいで眉をしかめた。
まだ体力は解決していないみたいで、銃を持った手をだらんと下げて荒く息を吐いている。
その向こうでは英霊同士の鍔迫り合い。
響き合う剣戟だけで私の傷はじくじく痛む。
踏ん張りが利かない足に力を込めると、肛門からはドロドロの便が吹き出る。
口からは涎、そして鼻水が零れ、みっともないほど汚い顔になっているだろう。
でも、今はそんなのを気にしている暇は無い!!

「なんの、つもりよ、それ?」

「がっ、ごぉお…………こひっぁ!」

震える手で無理矢理に服を、元よりボロボロの修道服を脱ぎ捨てた。
下腹部周りは汚物で、白い布地が汚れていたそれを脱ぐと私の裸体が露になる。
服の下にはホルダーをいくつか忍ばせていたから、どこか卑猥な店の服のように見えるけれど、脇腹から血を流して糞尿を垂れ流す姿からは性的なイメージは伝わらないだろう。

「インデックス!? なにを…………ぐっ!」

「余所見とは余裕だな!! 騎士王!!!!」

いきなり服を脱いだ私は短髪は困惑、セイバーも焦っているようだった。
その中で私は焦らず、血に汚れた符に本来の役目を持たせる。

”τ”

一瞬の光が、周囲の空気を飲み込み大きな火になる。
手の平よりやや大きい火の塊。
魔術的攻撃にも防御にも使えない、ただの火だ。

「!? なによ…………それ」

それでも超能力者であり、魔術に疎い短髪を退かせることは可能だった。
これは思考の外にあった嬉しい誤算だ。
だけど、この火は威嚇の為に用意したんじゃない。


これは―――。


「ぐっく、くあ。あああああああああああああ!!!!!!!」

”じゅぅうう!!”

肉の焦げる匂い、血の蒸発する匂い。
それらが周囲に一気に広がる。


―――私の傷を焼きふさぐ為に用意した火だ。

今日はここまでです。

美琴もう完全無欠の悪役やな

みこっちゃん…胸がいたい

この激痛を飲み込んだ応酬が、脳内で高遠るいの作画で再生されてしまう

本編の美琴見ててもちょっとこんな感じになりそうなところある気がするわ
上条さんのためならなんでもしそうな

ペンデックスモードはそういや破壊されてたっけな

投下します。

「ぐああっぁぁああああああああああ!!!!!!!」

腹の肉を火が焼いていく。
音を立てて嫌な臭いを発しながら。
制御する術式は組み込んでいないので、私の手も一緒に焼いていく。
気絶したいほどの苦痛を受けて、落ちかける意識が覚醒、そしてまた気絶したいほどの苦痛の繰り返し。
きっとこれが地獄なんだろう。
地獄の中で、私は立ち上がる。
力む度に糞尿を漏らし、軟便には血も混じりだしていた。
それもまた良い気付になる。
食いしばった歯が軋み、歯茎から血が流れていく。
戯れでかみ締めた口の内壁は磨り潰され、舌には血の味がはっきり広がった。

「ぁ、あんた、なに、頭、おかし……おぇええっ!?」


うろたえている短髪が一歩二歩と下がり、嘔吐した。
それを見ている私には歪んだ笑みが浮かんでいた。
だって、まだこれで終わりじゃない。
銃弾は貫通したんだ、穴はまだある。

”じじゅぅうううう!!!”

「うぎょがぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!!!!!」

「…………うぇっ」

弾の抜けた方の穴もしっかりきっちり焼き塞ぐ。
短髪は私の行為にか、それとも肉を焼く臭いにか。
そのどちらかか、もしくはまた別の何かに吐き気を催したみたいで、無理な魔力精製でフラフラの身体を更に揺らしていた。
予期しない部分で相手の体力を削れたと、私は内心笑ってしまっていた。
痛すぎて痛くない、麻痺した痛みによる多幸感でそんな余裕も出たくらいだけど、それも一時のことだろう。
麻痺が終われば地獄みたいな火傷の痛みが私を苛むのは目に見えている。
それくらい知っている。
それでも私はこんな手段しか取れなかったし、取らなかった。
焼け爛れ変色した脇腹、自分の一部とは思いたくないその気持ち悪い火傷。
涙と鼻水に塗れた顔、口の周りには血と泡。
下腹部から足にかけては尿と便で汚れている。
そんな汚らしい姿でも私は立っていた。
まだ戦える、これからも戦えるから。

「…………っ!」

そんな私の姿は短髪の目には異物に見えるのか異形に見えるのか汚物に見えるのか、彼女は口元を押さえて一歩、二歩と退いていた。
今までは彼女の鬼気迫る意志。
そして狂ったような気迫に押されていたけど、ここに来て私は初めて彼女を気圧した。
つまり、私も狂っているのだろう。
いや、聖杯戦争、こんな戦争に参加している事態、最初から狂っていた。
それが表に出ないだけだったのだろう。
私の内部はもうとっくに狂敗していた。

「イン、デックス…………」

遠くからセイバーの声が聞こえてきた。
彼女の呆然とする声、その目が捉えているのは私だ。
私の行い、今の状況に彼女は、彼女でさえ呆然としていた。
相対する弓兵も同じようで、戦闘の手を一時収めて―――。

「凄まじいものだな、君のマスターは…………」

―――呆れたような感服したような、どこか尊敬の混じった声を漏らしていた。
英霊に尊敬されるなんて光栄なことなのだろうけれど、彼は残念ながら打ち倒すべき敵でしかない。
私が立てる限り、セイバーも立ってくれる。
私が死んだら終わってしまう。
終わらせる訳にはいかない!!

「ぁ、が、ぐっ――――――」

痛みに、怒りに、闘志に脳みそが焼けていく。
思考が熱に焼かれ、冷やされ、叩かれ研ぎ澄まされていく。

「がっ――――――■■■■■■■■■■!!!!」

思考の果てに私は吼えた。
かの狂戦士のように。

そして時同じくして別の場所。
そこでも戦いは行われていた。
広い敷地、暗い闇を落としたようなそこで対峙するのは二つの影。
片方は闇から抜け出したような黒い巨人―――バーサーカー。
そしてもう一方はそれとは逆に白い、白い学ランを着た―――。

「やいデカブツ! こんな夜更けに女の追いかけ回すなんて根性ねぇ真似してんじゃねぇよ!!!」

―――学園都市が誇るLEVEL5、その第七位、世界最大の原石、通称『ナンバーセブン』
削板軍覇。
そんな彼が黒いローブを着た女性を庇うように立っていた。
ある意味単純で、ある意味行動の読めない彼はそこに正義としてバーサーカーと対峙していた。
バーサーカーの肩の上では、月詠小萌が聞き取れないくらい小さな声で何かを呟いている。
それを見て彼は更に目に怒りの炎を灯していた。

「そんなちっちゃい娘まで誘拐しようとしてやがるのか!」

削板軍覇、聖杯戦争に関係ないはずの彼はその拳を強く強く握り締め、ゆっくり歩いて巨人との距離を詰めていった。
その足取りには自身の能力に対する自信ではなく、自分を支える意志への信頼が見て取れた。
それほどまで雄弁な足取りを見せる彼の後ろでは、黒衣のローブを着た女が不敵に微笑んでいる。

「…………」

「――――――」

睨みあう両雄。
二人から発せられる力と力が擦り合わされ、まるで空気が熱を帯びているように熱くなっていた。
そして戦いは自然に静かにそして流れるように開始された。

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

そして、二つは衝突した。

場面は戻り、私たちの元へ。

「?」

私の耳、性格には聡耳の符が遠くて何かと何かがぶつかり会う微かな音を捉えた。
時間があれば一考の余地あるものだったけれど、今の私には時間が無い。
無理な治療とも言えない処置をした私の命だけど、いつ尽きるかも解らない。
だとしたら動くしかない!!
まずはセイバーに念話を飛ばす。

『セイバー、私は大丈夫だからそっちに専念して欲しいんだよ!』

「っ!」『承知しました、しかし危機となれば駆けつけます』

彼女はボロボロの私の言葉を信じてくれた。
糞尿を漏らしている小汚い小娘の言葉を信頼してくれた。
だとしたらそれには報いるしかないだろう。
思考を深めろ、脳を回せ。
目の前の相手を攻略しろ乗り越えろ。
出来ないことなんてない。
出来ることと、いずれ出来ることしかこの世にはないのだから。
ボロボロの私でも目の前の超能力者を倒すことくらい出来るんだ。
信じろ、まずは自分を信じきれ。
自分だけは疑うな。
相手の行動は全て疑え。
それでも!!!!

        自分だけは信じろ!!!

「ぅっぐっっっぃっ!!!」

口の中に広がる血の味を確かめ、まだ生きている実感を得る。
その実感を糧に私は動き出した。

「な、なんなのよ…………」

やはり、彼女は私に怯えているようだ。
得体の知れない何かの存在に気付いたように。
ならば、臆した状態のまま押し切る!!

「基本骨子。かぃ、めい…………」

口から出た血液、自分の一番正解な情報を腕に足になすりつけ馴染ませる。
そこに微々たる魔力を通して、自分の身体を把握していく。
血を身体に塗る行為も短髪には恐怖の対象になりえるのか、彼女はまた一歩下がった。
そのお陰で私は自分の身体をしっかり把握、そして理解出来た。
……専門じゃないけど、四の五の言ってられないんだよっ!
血を目印、媒介にして魔力を手足に通していく。
自分の身体の骨子を解明して、その能力の働きかける!

「強化、開始っ!!」

「ひっ!?」

手足に強化の魔術をかけ、その足で痛みを無視して全速全身!
強化とは基本的な魔術の一つ、そのモノの働きを強くさせる効力を持っている。
足にかければそのまま脚力の上昇に繋がる!

”だっ!”

地面を削るほどではない疾走で一気に短髪との距離を潰す!

「え? へ…………おぎょっ?!」

そして私の動きに呆気にとられている彼女の顔面に、技術も何もない、ただ私の理想を真似た拳を叩き込んだ!
容赦ないその一撃。
強化の魔術により働きを挙げた拳。
それを喰らった短髪は大きくのけぞり、拳銃を手から離してしまっていた。
カラカラ音を立てて暗い地面を拳銃は転がって、私の視界から消えていった。
残ったのは、アスファルトの地面の上で顔を抑えて私を見上げる短髪だけ。

「マスター!!」

流石の事態にアーチャーにも焦りが見えてきているようだ。
自分のマスターの能力値にそれなりの信頼を置いていたのだろうに、その彼女は私の前倒れている。
焦るのは勝手だけれど、忘れてはいけない―――。

「余所見とは余裕だな、弓兵!!」

”ぎっぎっぃん!!”

「ぐっ!!! くそっ! くそぉおおっ!!!」

―――自分が相手にしているのが彼の騎士王だと。
決して忘れてはいけない。
セイバーの踏み込みからの一撃をアーチャーは凌ぎ切れずに、手にした双剣の片方を弾き飛ばされていた。
冷静で、どこか皮肉屋なスタイルを見せていた彼らしくない熱い咆哮を見せてアーチャーはセイバーに圧されて行った。
きっと数合の果てに、彼は斬り倒されるだろう。
だったら、私の番だ。

「…………」

それをしっかり確認してから、短髪に、御坂美琴に視線を向ける。

「なんな、の、なんなの、なんなのよ、あんたっ!」

尻餅をついたまま彼女は後ずさっていく、顔を腫らし鼻血を垂らし、目に怯えを滲ませながら。
その姿を私は見下ろしていた。
多分、狂ったような目で。
狂ったような感情を押し込んだ目で見ている。
方向性は違えど、御坂美琴がしていたような強すぎて狂った瞳で見下す。

「あんた、あんた何がしたいのよっっっ! 大した願いもないくせにっ!!」

怯えた彼女を見下す見下す。
叫びを聞こえているけれど、脳まで届かせず。
この場で処理をするのだからと心を冷やして尖らせる。

「私の妹達を殺してまで叶えたい願いってなによ!!?」

聞こえているけど、脳まで届かず。

「言いなさいよ!? 言ってみなさいよ!?!」

聞こえているけど、心はもう冷え切っていた。
一歩、踏み出す。

「ひっ!? く、くるなっ! くるなっ!!!」

彼女の怯えよう、やっぱり今私は酷い顔、酷い眼をしているんだろう。
きっと、とうまには見せられないような。

「…………っ」

火傷がじくじく痛む。
無理に強化した手足から悲鳴が聞こえる。
下腹部にも痛みを感じる。

「助けて、助けて、助けてよっ!!」

声は全て無視をする。
自分の痛みも、相手の痛みも。
その場にある全ての声を、音を無視する。
耳には符の効果で様々な音が届いてくるけど、全ては無かったことに。

「やめて、やめっ、こないで、や、やめっ!!」

きっとセイバーはもう勝利をした。
だったら私も勝利しなくてはこの戦が終わらない終われない。
どんどん後ずさりしていく彼女を追い詰めていく。
私は彼女から徹底的に奪うことになる。
彼女の妹を奪い、そして今彼女自身を奪う。
その命を奪う。
私は彼女を   ”ぱぁんっ!!” 

「え?」

乾いた音、最近聞きなれた音。
そして熱く焼ける痛み。
どうやら私はまた銃で撃たれたようだ。

「え、へ、は。っはは、やった、やった、やった!!!!」

撃ったのは目の前の御坂美琴。
さっき彼女がどこかに転がしたはずのそれが手の中に納められていて、煙が銃口より昇っていた。

「あ、あんた私が超能力者って忘れてない!? この程度引き寄せるの簡単なのよ私にはっ!」


急に雄弁になった彼女の身体には一瞬静電気のようにパリっと電流が走った。
私は、撃たれた場所に手を当てようとして―――止めた。

「インデックス!!!!! 無事ですかインデックス!!!」

戦闘を終えたのだろう、神速で駆け寄ってきたセイバー。
彼女は直ぐに状況を把握して険しい表情を作ると、不可視の剣を構えた。

「マスター、ここは私が片付けます―――え?」

御坂美琴を斬ろうとしたセイバーを手で制し前に出る。
今私がすることは傷の確認じゃない。
セイバーに後を任せることじゃない。
私がすべきは目の前の相手を○すこと。

「は? な、なによ、あんた、死になさい、死になさいよ! 何であんた死なないのよ! 妹も皆死んだのに、なんであんたはっぐぅっっ?!!」

再び銃を構えようとした彼女の首を、強化された手で掴んだ。
今すべきなのは?
傷の確認―――。
―――後回し。
現状確認―――。
―――後回し。
周囲警戒―――。
―――後回し。
治療行為―――。
―――後回し。
殺害以外―――――――――。
        全て後回し。

「ゃべで、ひぬ……しんゃ………………っ!」

「…………」

御坂美琴の首を掴む手に力を込めていく。
強化した私の腕力なら、このまま首をへし折れるだろう。
苦しむ彼女は、尿を漏らしているようで、アスファルトに染みが広がっていた。
臭いからして便も漏らしているかも知れない。
私とお揃いだ。

「ほんひょに、し、、んじゃ、ぅ…………っ!!」

口から血の混じった泡を吹く彼女を、私は正面から見据えた。

「っっ!!!!!」

それだけで彼女は大人しくなった。
私の目に何を見たのか、私が何に見えたのか。
その眼には明確な怯えを浮かべていた。
さぁ○そう。

「バイバイ、みこと」

”ごきぃっ”

首の骨を砕き、ねじった。
これでお仕舞い。
私は御坂美琴を○しました。
私は。     
          人を。
 殺した。

今日はここまでです。


相変わらず生々しいくてリアルな描写だな

イノケンティウスのBGMをかけながら読もうぜ

……根性さんに死亡フラグが立ってるような気が……泣


でも英霊ってだいたい戦闘機一機分の強さなんでしょ?
それだけで考えたら根性さん負けようがないと思うけど、レールガンを歯で止めるほどだから

根性さんはそうそう死にそうにないと思うがなぁ
ギャグ漫画クラスのデタラメな頑丈さと身体能力持ってるし、一方さんの反射をも突破できるという噂もあるし

根性さんのアレはいわば常時ギャグ補正がかかってるようなもんだから、ギャグ要素がないこのSSでは果たしてどうなるのか・・・

>>414
物語は全てハッピーエンドが美しい派です
確かにややバッドよりですが

>>415
強すぎて狂った結果、です多分

>>416
目的のためにはあまり周囲は考慮しないキャラでしたね

>>417
正論ですよね

>>418
微かな擦れ違いが時にして大きなミスに繋がりますから
きっと選択肢があれば共闘もあったでしょう
セイバー組アーチャー組の共闘は原作よりですから

>>427
色々欠けてはいますがね

>>428
彼女も必死にもがいたんです、もがいていて、こうなった

>>429
製作はブロッコリーで

>>430
戦争の渦中に飛び込みますからね
盲信が少々

>>431
首輪がぶっ壊れたので、多分は

>>443
たまに行きすぎますが、戦争ですから

>>444
ステイルさん、きっとまた出ますよ、はい、多分、きっと

>>445
他のレベル5勢は迷ったのですが、彼は出したくて

>>446
レベル5勢は単体で軍との戦闘可能ですからね
ある意味存在が対軍宝具ですよね
しかし、多分英霊も軍とは戦えますから
霊体云々はなしで戦闘力として
たしか攻撃能力は戦闘機クラスで、各自宝具というミサイルを保持している、という認識ですから
案外距離感は計りやすい気もしますが、それは最強スレに任せましょう

>>447
あの豪快さは大好きなんですがね
オッレルスにも「能力を自覚してたら勝負は解らなかった」と評されていましたし

>>448
もしかしたら、漫画のように歪める能力なのかも知れませんね
黄金錬成みたいな

現実を歪めるというより根性で物理法則を凌駕するスキルだと自己解釈している

あいつ能力を自覚せずに色々応用してんだから逆にすげぇわ
身体能力の異常なまでの強化だけじゃないもんな

これはアニメ化できへんな

出血はともかく女の子の脱糞見て喜ぶ奴なんざ一人もいるか

投下します。

私は考えていた。
自分が何をしているかをぼんやりと。
聖杯戦争の中で私は自分の手で友人をしっかり殺した。
手で。
首を。
捻り。
殺す。
あのときの自分は何をしたかったのだろうか。
殺す必要があったのか。
私は何をしているのだろうか。
友人を何人も殺して、そこまでして何がしたいのか。
殺す必要はあったのか。
殺さなくても他に手はあったのではないか。
あての無い疑問が脳内を巡り巡る。
真っ暗な視界の中では何かを考えなくては狂ってしまいそうだったから。
考える、インプットが私の本分。
内面で全てぐちゃぐちゃにしていき、最終的な1を見つける。
それが私に出来ること。
だから脳みそ思考回して回して考え抜いていく。
自分が何をしているのか。
何をしたいのか。
それを虚しく脳みその中で回しまくっていた。
意味の無いに等しい自問自答。
答えは出ないのではなく出さない。
解っているけど目を背ける。
狂っているけど狂っていない。
そうするしか私は私を保つことが出来ない。
だって私は殺人者なんだから。











「どうですか、インデックス? 具合の方は」

横合いから声をかけられ、思考を中断する。
擬似的な暗闇たる

「どうですか、インデックス? 具合の方は」

横合いから声をかけられ、思考を中断する。
擬似的な暗闇たる瞼を押し上げて、光に目を細めた。
見えるのは見慣れぬ天井、私の担ぎこまれた病院の病んでるように白い天井だ。
声をかけられた方を見れば、現代の服に身を包んだセイバーがいてくれた。
その姿に安心する自分と、恐怖する自分がいた。
彼女の清廉な姿、空気は私の心を浄化してくれる。
だけど、同時に私の戦争がまだ続いていることを証明しているから。
責任を彼女に無理矢理押し付けるように思考を閉じて身体を起こした。

「もう、っ! だい、じょうぶだよ…………」

腹筋に力を入れると、無理矢理に焼き塞いだ傷が引き攣れて痛む。
ジクジクと私を責めるようにその傷はそこにある。
服の上から指を這わせると、硬くなった火傷痕がしっかりと感じ取れた。
その触る指にも火傷は残っている、焼き塞ぐときについたそれがしっかりと。
この手で殺したことを忘れないように、そう訓告しているように。

「…………」

もう吐き気も気持ち悪さすら感じない。
慣れたのか狂ったのか。
私の心は磨耗しきってしまったのか。
クールビューティのときほどの感情の揺らぎはない。
この手で友人を縊り殺したというのに。
まるで鶏をしめる様に、あの首を捻った。
その感触、その顔、その音、その暖かさ。
全て覚えているし、今も手に残っている。
それでも私はどうにもなっていない。
罪悪感はある贖罪の念もある。
だけど、それだけ。
後悔だってしてるし悲しいし取り返しつかないことをしたとも思っている。
だけど、それだけ。
ただそれだけの感情しか持っていない。

出された食事はしっかり食べた。
人を殺したのに。
おしっこする時に傷着いた尿道が痛んで辛かった。
人を殺したのに。
眠くなった瞬間に眠ったときは幸せだった。
人を殺したのに。
もちはるが置いていたマンガを読んで笑った。
人を殺したのに。
そう、人を殺した。
この手で殺した友人を殺した。
そして目の前でもう一人死んだ殺された。
二人の友人をいいっぺんに失った。
なのに私は別にフラットなまま。
自分でも自分が少し解らない。
でも、ただそれだけ。
解らないからって暴れるでも自棄になるでもなく、私は少しお腹が減ってきたことの方に思考を回していた。
そっちの方が絶対に重要ではないのに。

「インデックス?」

「ん、大丈夫、ちょっと傷が痛かっただけ」

心配さを隠さずに声をかけてくれるセイバーに笑顔を向ける。

「イン、デックス…………?」

その笑顔に何を思ったか感じたか、セイバーは不安そうな顔をしていた。
私の顔は、私の笑顔は今どうなっているのだろうか?
それとも、この瞬間での笑顔が不気味だったのかも知れない。

「大丈夫、大丈夫だから――――――」

痛みを無視して火傷の痕を掴んだ。

「――――――聖杯戦争を続けよう」

笑顔のままそう宣言した。

時間はあの戦いの日に戻る。
剣と弓の戦いとは別の場所で行われていた力と力の戦いへと―――。

「うっ! おっ! らぁぁぁああぁぁあぁぁああああ!!!!!!!!」

熱い、否暑苦しいとも表現できるほどの声をあげて白い学ランをたなびかせて削板軍覇は飛び出した。
地面を、アスファルトを一歩ごとに削り砕き、大よそ人間が出せる速度を遥かに越えての突撃!
握った拳を振りかぶると、2mを優に超す黒い巨人に踊りかかった。

「ッつらぁぁぁぁあぁあああああああああああああああああああ!!!!!」

”ばごぅっ!!”

叫びと共に突き出された拳により、何か大きなモノがぶつかり合う様な音が響いた。
人体から出るとは大よそ思われないほどの衝撃音!
そんな一撃! 車でさえ一撃で大破させるほどのそれ!
しかし―――

「■■■■■■■■■■!!!」

「ぬぉっ!?」

―――そんな一撃であってもバーサーカーは1mほど後退をしただけで留めた。
自分の一撃を受けてもたったそれだけしか動かせなかったことに軍覇は驚愕をしたけれど、直ぐに顔を引き締めその口元に笑みを作った。

「へっ! 中々根性があるようじゃねぇか!!」

目の前の相手を勝手に好敵手に認定したのか、戦闘好きな笑みを浮かべ一歩下がった。
再び強く拳を握ると、周囲から空気がまるで圧縮させるように集まっていく。
彼より代表される『説明不可能な力』原石能力の発露。
さっきまで以上の、ただの人体から発することはあり得ない異常な力が発現している。

「今度は! さっきより根性込めて耐えろよっ!!」

”びきぃっ!!”

そう言う彼の足元のアスファルトに大きくヒビが入った。

「おっらぁぁぁああああああ!!!」

ボッと足元を爆ぜさせ、さっきまで以上に振りかぶった拳を叩き付けた!!

「■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!」

それに呼応するように、バーサーカーも拳を振りかぶり叩き付けた!!!

”ごっぎぃいっ!!!!”

大きさの違う二つの拳が空中で衝突をした!

「ぐっ! くぉおおっ!!」

「■■■■■■■■■■っ!!!」

上から体重をかけて押しつぶそうとするバーサーカー。
下から脚力全てを込めて弾き飛ばそうとする削板軍覇。
力と力のせめぎ合いに周囲が歪んでいく。

”みきみぃぃっ!!”

「うおっ!!! おおおおおおおおおおお!!!」

グッと圧力が増し軍覇の足がまるで雪を踏むように押し込まれていった。
人一人をアスファルトに押し込むバーサーカーも脅威だけれども、それを受けて骨も身体も無事な軍覇もまた脅威。
しかも、その圧力を跳ね返そうと歯を食いしばり足から腰から肩から拳に力を集約させている。
そのまま数秒の硬直の末に―――。

「おらぁぁぁぁあああああ!!」

「■■■■■■■■■■!!!!!!!」

―――軍覇の拳の圧力、下からの押し上げに負けてバーサーカーの身体が大きく揺らいだ。
体重差身長差も弾き飛ばして、彼は「ふしゅぅうううう」と獣染みた息を吐く。
その息も寒くもないのに白く染まり、その目には比喩ではなく闘志に燃えていた。

「どうだっ! デカブツ!」

アスファルトから足を引き抜くと、堂々威風に腕を組み削板軍覇は吼えた!!
力と力の戦いはまだまだ終わらない。
その後ろでは魔女が一人微笑んでいた。

一部ミスりましたが今日はここまでです。

乙なんだよ!

もちはるェ・・・

乙、もちはるで笑ってしまった

アーチャーの霊圧が…消えた…?

もちはる(笑)

まだかなまだかな

いくぞ学園都市最強!!バッテリーの貯蔵は十分か!!

バッテリーの貯蔵ってのも変だろ
行くぞ第一位!バッテリーの残量は十分か?

かなりお久しぶりです投下します
誤字脱字は本当にすみません

「おおおおおおおおおおおっっっっらっぁああああああああああああああああ!!!!!!!」

”ぶぉぅんっっ!!!”

おおよそ人間が拳を振る音とは思えない怪音が響き、削板軍覇の拳が空気を切り裂く―――否押しつぶす。
白い学ランを靡かせ、渾身そのもの、アスファルトを踏み砕き放った一撃!!
その一撃が肩に月詠小萌を乗せた黒き巨人バーサーカーに迫る!!

「■■■■■■■■■■■■!!!!」

「おおおおっぁあああああああ!!!」

”ぼっぐぅっ!!”

振りぬかれた軍覇の拳をバーサーカーはその巨大な手を持って易々受け止める!!
が!!

「おおっ!! まだ!! まだぁぁああああ!!」

「■■■■■■■■!!!!!」

体重差、そのなものなど無いかのように軍覇はその巨体をジリジリと後退させ押していく。
自分が立つ地を踏み砕き、自身より倍はありそうな巨人、英霊、その身に引くことなく―――。

「んっだらぁぁああああ!!! こんっじょぉおおおおおお!!!」

「■■■■!!?」

”ずずっぅんっ!!”

―――かつて剣の英霊セイバーでさえ成し遂げることはなかった、巨魁バーサーカーに膝をつかせてみせたっ!!
この科学の頂学園都市でさえ解明できない能力者!
それが削板軍覇だ!!!

「女を襲うような根性ねぇやつに―――」

振り切った拳を戻し、月を背にその身を立てる。

「―――俺が負けるかっっっっ!!!!」

「       」

「なんだ? もう終わりか? 本当に根性ねぇな…………」

軍覇の拳を受け、膝をついたバーサーカーは目の前のいる少年を、人間を値踏みするように見ていた。
理性を失い狂化している彼にはありえない、どこか理知的な動き。
それに対して軍覇は「根性ねぇ」と言い切った。
彼の眼には、少しやられただけで戦意を失っているように見えたのだろう。
しかし、それが間違いだと数秒も待たずに気が付くことになる。

「バーサーカーちゃん…………」

「嬢ちゃん! 待ってろよ直ぐに助けてやるから―――」

”ふぉぅうんっ!!!”

バーサーカーがしゃがんだことにより、距離が近くなった月詠小萌に手を伸ばそうと軍覇が一歩踏み出したそのとき。
彼の筋肉質ながらしなやかな身体は宙を舞っていた。
普段彼が『修行』と称して高層ビルの屋上から飛び降りたり、橋の欄干から落下したりとはまるで違う。
縦ではない横移動。
そう、削板軍覇、彼は今中空を横に、正確には斜め上方向に滑るように舞っていた。
そして、さらに正確に描写するならば、彼は舞っているではなく―――

「なっぐが!? な、んだ―――」

―――バーサーカーの怪腕、その一振りで紙屑のように吹き飛ばされたのだ。

”どぐしゃっ!!”

「――――――かっっっっっっ!!!!!!!」

優に50mは吹き飛ばされた彼は、その身をビルの壁面に深々と突き刺し、内部奥深くまで叩き込まれたいた。
その状態でも尚人体の形を保っているのは一重の彼の頑強さ故だろう。
普通ならばビルの壁にぶつかった時点ではじけてトマトのように中身をぶちまけられていたハズだ。
しかし、そうはならなかったことが幸いだろう。

「…………バーサーカーちゃん」

削板軍覇が消えた先、深い穴の穿たれたビルの壁面。
ここからは肉眼では確認できないその穴、それは深く暗い。
黄泉の穴を思わせるそこに軍覇は放り込まれてしまった。

「あら、こんなもん?」

自分の前に立っていた軍覇が吹っ飛ばされたのを、何か面白いものでも見るように見ていた黒いローブの女はそう呟いた。
目深に被られたフードから微かに覗くその唇は綺麗な形でありながら、蛇か何か、深く、人間とは深い場所で違うことを思わせるそれだった。
彼女の前に立ち彼女を守っていた騎士が無慈悲な一撃で黄泉の穴に放り込まれたのに、その姫はただただ妖しく笑う。
そして狂戦士はゆっくり目標を次へ、第一目標へシフトしたようだった。

「■■■■■■■■!!!!」

「凄い声ねぇ…………品のない雄叫び」

その身を震わせる黒い巨怪。
震えるは筋肉であり空気でありそして世界。
彼の叫びにはそれだけの何かがあり、それほどの何かが詰まっていた。
その声を叫びを前にしても女は不敵に笑い、その場を動けない。
このままでは先の軍覇のように、バーサーカーの腕の一振りでその身を宙に舞わせることは必須だろう。
しかし、動かない、動かない動かない動かない。
なのに、動かないのに―――。

「あなたみたいのが最後までいると色々面倒なのよね――――――」

―――周囲の空気が無理矢理に変わっていく。
バーサーカーの叫びのような無理にも矢理にも震わせるのではない。
ゆっくりとそして徐々に、だけど確実に核心に彼女の周囲の空気が塗りつぶされていく。
魔術師ならばその周囲に漂う濃密過ぎる魔力に気づき、敏感なものは吐き気すら覚えたことだろう。
しかし、ここは科学の街、そしてこの場には魔術師はいない。
その為その事実に気づくものはいなかった。
気付くものがいないままに事態は深刻な方向に進んでしまう。
それほどの力をフードの女はその身に宿している。

「――――――だから、ここで駆除されて貰うわ」

その力が染み出るっっっっっ!!!!

「っ!! バーサーカーちゃんっっっっ!!!!!!!」

”ずごぅんっっっ!!!”

フードの女から染み出たそれが周囲を悉く塗りつぶし黒く黒く黒く黒くしていく。
その奔流はバーサーカーの力、それ自体を飲み込もうとして――――――。
――――――その巨体は吹き飛んだ。

「え? は?」

誰の声だったか、そんな間抜けな吐息に似た言葉が暗い夜に漏れた。
暗い天蓋の下、暗い女から染み出だしたクロイなにかが包み込もうとしたバーサーカーはその場から数メートルほど横に音を立てて滑った。

「きゃぁああ!!」

その肩に乗っていた月詠小萌は慣性に逆らおうと太い首に抱き着いて声をあげる。
その声に、その事態を引き起こした本人は素早く反応して見せた。

「ぬっ!! お嬢ちゃん!! 今助けてやるからなっ!!」

「え?」

言葉そのものに力が籠ったようなその台詞。
その台詞を放ったのは誰であろう削板軍覇。
白い学ランをボロボロにして、身体にいくつか『掠り傷』をつけた彼は握った拳でバーサーカーを殴り飛ばした。
数十mも吹っ飛ばされた彼はさっきと変わらぬその身で、さっきと変わらぬ心でそこに立っていた。

「…………呆れた坊やね、頑丈過ぎるわ」

周囲の空気を根こそぎ台無しに塗り替えようとしていたフードの女も目の前にいる存在が理解出来ないのか、形よい口をポカンと開けて棒立ちしていた。
その女性の前に削板軍覇は背を向けて、守るがために立ちふさがる。
自分の矜持の為に倒れない。

「どうやらお前を倒さない訳にはいかねぇみたいだな…………」

未だにバーサーカーから離れない月詠小萌を見て悲しそうに彼は眼を細めた。
彼の眼には彼女が囚われの姫に見えているようで、それが心に火をつける。

”ばっ!!”

そんな音を響かせ、彼はボロ布状態の学ランを脱ぎ捨てた。
ひらひらと風のない夜を舞った布が合図だったのか、それとも彼の中のスイッチが撃鉄だったのか。
学ランが地面に触れた瞬間、彼はまだ膝をついたままのバーサーカーに地を砕き突進した。

「いくぞぉおおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

”がっごっぉ!!!”

「っだらぁぁああああああ!!!」

「■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

吹き飛ばされ、ビルを貫通するようなダメージを負ってもさっきまでと変わらず―――。
―――いや、さっきよりも力強くその身体は動いていた。
身体はもちろん、心にだってダメージを受けているはずなのに。
受けていて当然、易々飛ばされて力の差を沁みつけられたはずなのに彼は―――。

「ああああああぁぁああああっぁああああああ!!!!!」

―――さっきまでより力強く、さっきまでも猛々しく向かっていく!!!

「■■■■■■■■■■■■!!!!」

軍覇の何の捻りもないベアナックルに近い拳、それをバーサーカーの大きな掌が受ける。

「それがっっっっっ!!」

それに驚愕も恐怖もなく、躊躇なく逆の拳を振るう。
風を大気を斬り押しつぶし押し殺し。
人の身を裕に超えるその力を――――――!!

「どうしたぁぁぁああああああああ!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

――――――叩き付けた!!!!

”ずしゃぁぁああ!!!!”

彼の拳を受けた狂戦士は大きくバランスを崩して尻もちをついた。
アスファルトを軋ませるようにその場に倒れこみながらも、肩に乗った大切な者だけは離さないでいる。
その姿は騎士を思わせるが、獣は騎士にはなれない。
それは獣自身が良くしっているのだろう。
黒い狂戦士は何の言葉もなく、ただ戦うべき相手を見つめる。
自分を屈っさせた小さな小さな『化け物』を。

「バーサーカー、ちゃん…………」

巨怪を案じる小さき女性の声。
震えるその声に何を感じたのか。
感じる心など持ち合わせていないのか、バーサーカーはただ前の敵を見つめていた。

「       」

「なんだ? またちょっと転ばされた位で戦意喪失か?」

彼は呆れた声を出すと何の策も警戒もなくバーサーカーに歩み寄る。
そして―――。

「立てないなら手を貸してやる、だからもうその嬢ちゃんと後ろの女にちょっかい出すんじゃねぇぞ?」

―――彼はその手を、バーサーカーより遥かに小さな手を差し出した。
異形の人外に、この手を頼れと諭すように。

「凄い坊やがいるのね…………この街には」

誰に聞かせるでもないような呆れ声と共に、ローブの女はいかなる技術科、その身を闇に溶かし込むように消えた。
それに軍覇は気づくことなく、バーサーカーに手を差し伸べる。
それに対して黒い巨怪は―――。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

「っ!! まだやる気かこのデカブツ!!!」

―――拳で撃って返した。
その身その声には理性を失っているバーサーカーには有るまじき怒りが渦巻いているように見えた。
彼の脳には既に感情のスイッチは消え去っているはずなのに、どうしてかバーサーカーは怒っていた。
怒りの方向性は大まか過ぎて判断はつかないだろう。
しかし、それでも彼は屈辱に怒っていた。
戦士として、勇猛の名に、既に理解さえ出来ない名誉に。
彼を彼たらしめている何かが汚されたことについて怒っていた。

「……………………バーサーカーちゃん、悔しいんですね?」

それに気づいた気づけたのは彼女、月詠小萌。
彼女は小さく囁くと、まだ腰を下ろしたままのバーサーカーからふらつきながらも降りた。
彼を彼の心を察した彼女は、自分がいては彼の気を晴らせないと判断したのだった。
一歩二歩、三歩。
ふらふら頼りなく歩いて彼女はバーサーカーの背中を見守る位置に立つと笑顔を向けた。

「バーサーカーちゃん、したいことがあるときは遠慮しちゃダメですよ♪」

その言葉が発火点だったのか。
理性無きバーサーカーが言葉を理解できるハズはないのに、狂戦士は立ち上がった。
その巨体を月の下に惜しげもなく晒し、その手、その足、その心には目には見えないエネルギーがチャージされていく。

「へっ、さっきまでは手を抜いてた訳か?」

それが軍覇にも理解出来たのか、それともあまりにも暴力的なそれに理解『させられた』のか。
彼には珍しくほんの数ミリだけれども足を下がらせていた。
目の前の相手にそれだけの何かを感じ取っていたのだ。
彼の目的は元は月詠小萌とフードの女の守備だったはず。
本当ならば今にも小萌を抱きしめ逃げるのが最善なのだろうけれど。
彼にはその気はなくて、相手もそれを許すつもりはまったくない。
両者の間に不可視の圧力が渦巻く。
不安定で不可思議でただただ力強い何かが行き場をなくし暴れ出しそうになっていた。
グラスに無理に満たされた水は今や零れ落ちる一秒前。

「……………………」

グッと拳を握り、グッと足に力を込めるは世界最大の原石。

「        」

その身に滾る力をふつふつ沸かせるは黒い狂戦士。
解りやすいまでの力と力がぶつかり合おうとしていた。
満ちに満ちたグラスの水は今その一滴が零れ――――――。

「っがぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

―――落ちた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ここで引くのか、軍覇くん流石の強さやね

>>450
内面に働いてる力なのかも知れませんね

>>451
手足を何となく使ってるのレベルなのかも、ですね
自覚するのは力学を学ぶような

>>452
内臓くらいはセーフかと

>>454
きっと世界は広いですから、どこかには

>>464
ありがとうございます

>>465>>466>>468
見なかったことに

>>467
ブリーチなら砕蜂が好きです

>>469
大変お待たせしました

>>470->>472
一方通行には早々に退場していただきましたが、好きなキャラです
毎度バッテリーにやきもきします

>>481
スパロボならスーパーロボット系ですから彼は
精神コマンドは
魂 熱血 鉄壁
ド根性 根性 加速

ソギーがさすがというかアホほど頑張るなww
ソギー単体で倒せる英霊って結構いそう

ランサー(クーフーリン)と対したら、二人とも大喜びで延々と戦い続けそうだなw

投下します。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

削板軍覇、固く固く、現在の格闘理論で言えばインパクトの瞬間までは優しく握った方が良いとされる拳を石より固く握った彼は、技術も何もなく地面を砕く踏込と共に繰り出した。
遠間から見てもその威力の高さ、恐ろしさ、そして強さは確認出来る。

”びしりっ!!”

人間が、その足で、踏み込む。
それだけでアスファルトはその存在意義を捨ててるように簡単に砕き、あおの足が易々めり込んだ。
その威力を存分に吸収した拳にて狙うは巨怪バーサーカー。
固く大きく何より雄々しい彼に、軍覇の拳が迫る!!

「っだらぁぁあああああああ!!!」

暗い闇広がる舞台でもはっきり見えるような存在感を持つ彼の拳が振るわれる!!

”ごっ!!”

「■■■■■■■■■■■■!!!」

「ぬっ!!!」

風斬る拳、当たればどんな相手でもぶっ飛ばすそれを狂戦士は大きな掌で受け止めた!
ぶつかり合う激しい音が響き、その巨体はアスファルトを微かに滑るように後退する。

「俺の拳をっっっ―――」

自身の全力、手加減なんか思考の隅にもない一撃、それを止められた軍覇はそれでも、いや、だからこそ笑う。
犬歯を剥き出しに、拳を引くことはせずにそのまま押し込む押し通る押し通す!!

”ずざざざざっっ!!”

「■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

その圧力、突進力、進む力、前を目指す力にバーサーカー筋骨隆々とした巨体が音を立てて後退していく。
二人の足元はもはや当然のように削れ砕け、その場にいたことを穿つように壊れていた。

「■■■■■■■■!!!」

「おっ!?」

数mの後退の末にバーサーカーは足に力を込めて軍覇の突進の威力を止めた。
『フシューーーッッ!!』と湯気立つ獣息を吐き、自らを押す軍覇の力に拮抗すると―――!!

”ふぉんっ!!”

―――拳を受けているのとは逆の手を握り、その巨大な拳を自分より遥かに小さな相手に向かって押しつぶすように叩き付けた!!

”がごっ!!!!!”

振り下ろされた拳、大きく雄々しく協力無比な一撃!
それを軍覇はバーサーカーがそうしたように受け止めた!!

「っらぁぁああ!!!」

『ずしっ』と来る圧力にそのまま押しつぶされそうになるが、軍覇の肉体、精神はそれに立ち向かう。
バーサーカーの拳をがっちり受け止め、犬歯を剥き出しに吠えた。

「■■■■■■■■■■■■!!!」

それに呼応するようにバーサーカーも雄叫び獣声をあげ、拳に力を籠めるっ!!

「ぐっぅ!? おおっ!!!!!!」

”ずざざざざざざざ!!!!”

さっきの焼回し、しかし立場が逆だ。
軍覇の身体はバーサーカーの圧力に押され、アスファルトの地面を削るように下がっていく。
その足を守るスニーカーは摩擦で底が擦り切れ、現在彼は素足で固く荒いアスファルトを擦っているのに血の一滴も出ていない。
バーサーカー共々彼もまた化け物なのだろう。
それを証明するように―――。

”ぐっっ!!”

「■■■■■■■■!?」

「あっ、あ、ああああああああ!!!!!」

―――軍覇は押される身体を、押してくる強大な力を受け止めて見せた!
足をアスファルトに沈み込ませ、根を張ったようにそれ以上一歩も押されないように渾身を込める!
それに対してバーサーカーもアスファルトを踏み砕くように力を籠め、軍覇の身体を圧しようと力を滾らせる!
お互いにお互いの拳を掴み、握り合う!
両手で組み合った状況で一歩も引かぬ!
今、この瞬間二人の力は完全に拮抗していた!!

「おっおおおおおおおおおおおお!! こんっじょぉおおおおおおおおお!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

恐らく有史以前からあったであろうこのポーズ。
お互いの手と手を掴み、どちらの力が上か競うそれ。
純粋単純そして明快な力比べ!!
声を上げ筋肉を脈動させ血を滾らせる!!!!
軍覇の拳をバーサーカーの大きな掌が常人ならば余裕で砕けてる力で握りしめ。
バーサーカーの拳を軍覇の掌がこれまた常人ならば余裕で砕けてる力で握りしめる!
二人の間では純粋な力が渦を巻き、その場に知覚できない風が巻き起こっていた!

”みしっ! びきぃっ!!”

アスファルトは踏みしめられ当然のように砕かれる。
彼らの前では、普段は幾万の人間を支える地面であるそれも薄氷に過ぎない。
互いが互いを圧しようとその足から力を呼び込み腕に回していく。
二人とも足はあくまで進行の手段であり力の入り口と考え、力を排出するのはその腕と決めていた。
削板軍覇はその心に―――。
―――バーサーカーはその本能に。

『こいつはこの腕でぶっ潰す!!!!』

そう魂に刻み込み、消えないくらい深く深く深く果てまで流し込んでいた。
その刻まれた誓いに答えるように、男二人月明かりを舞台にその生き様を燃やしていく。

「おっおっおおおっおおおおおおおおおお!!!!」

巨怪バーサーカーの拳を”みしりっ”と音を立てる力で握り閉め、彼に掴まれている拳に力を込めてそのままビルでも押せそうな力で巨体を押すっ!
2mを超える黒い狂戦士はその猛々しい力に徐々に押され、アスファルトに後退の跡を刻み込んで行く。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

「おっ?! ぐっ!!!!」

1mに満たない後退を強いられたバーサーカーはその屈辱を跳ね返すように、軍覇の拳を握りしめ、相手の頭ほどもある握り拳を力の限り突き出した。
バーサーカーに比べて小さな軍覇の身体は当然のようにアスファルトを削りながら後退していく。
それもまた1mにも満たない後退ではあった。

「あああっあああああああっぁあああああああ!!!!!」

押され下った自分を恥じるように軍覇はあたかも今初めてのように全身に力を籠めなおす。
今まで全力だった、それは紛れもない事実だ。
それでも、再び全力を初めてという矛盾。
彼は今全力を籠めなおしたのだ。
押された!
下らされた!!
相手に負けた!!!
それは自分の全力が純粋ではなったからだ!
そう彼は判断して初めての全力をまた繰り出した。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

その強大な力を受け止めるは巨怪。
狂った心の奥にある自尊心。
獣程度のプライド。
バーサーカーの重要な精神の中心が自分より小さき者に負けることを良しとはしなかった。
自分の後ろには守るべき『小さき者』もいるのだから。
負けない!
敗けない!!
まけない!!!
嘘偽りない濁り無い気持ち。
狂い狂った故に純粋な感情で彼はその力を吐き出す。
二人は組み合ったまま、お互いに筋肉を軋ませ、心を燃え上がらせる!
互角。
共に全力、共に勝つつもりでの勝負。
その状況で二人の足は前にも後ろにも一歩も動くことない。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!」

叫び、魂からの咆哮。
これ以上ないほどの力を持って向かっているのに、相手を圧することが出来ない自分を鼓舞するように二人は叫ぶ。
勝てる! 負けない! 自分が勝てないはずがない!
慢心でも自惚れでもないそう信仰のように信じて彼らは戦う。
自分という神を絶対なまでに信じ切ってどこまでの疑わず、神々しいまでの力を発揮してた。
純粋、磨けば光るような、これ以上ないくらい装飾のない『力』のぶつかり合い。
まるで神話のような一幕は長く続く。
拮抗した力は円周率のように割り切れず、延々延々答えを、勝ち負けの答えを求めて続く。

「っ!」

「■■■■ッ!」

そのどこまでも続くような組み合いも終わるときは一瞬!
二人はまったくの同時に掴んでいる相手の拳を話離した。
軍覇腰だめに構え、一瞬のチャージを終えると身体全体のエネルギーを持って発射するロケットのように斜め上に一撃を―――。
―――バーサーカーは背面に大きく振りかぶった拳を隕石が落ちるように斜め下に一撃を。

―――――――――放った!!!!!

”ごぐぅんっっっ!!!”

二人が同時に打ち込んだ拳を空中での正面衝突を起こした!
上から降り落ちるバーサーカーの拳と、下から噴上げる軍覇の拳。
その二つの衝突は風を起こし大地を揺るがせていく。
とんでもないエネルギーが生み出されたけれど、二人にはそんなことは重要ではない。
いくら風が起きようが、いくら大地が揺れようと、どれだけのエネルギーが生み出されても―――。

「まっだまだぁぁぁあぁああああああああああ!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

―――目の前の相手が倒れていないならそんなもの何の意味もないっっっっ!!
そう言うように二人は止まらない!
黒い巨体は逆の手を固く握り、一撃で軍覇を
宙に舞わせたように、横から襲う一撃、フックの軌道にも似たそれを繰り出した!!

”ぶぅぉっんっ!!”

「おぐっっっっ!!!!!?」

横からダンプカーでも突っ込んできたようなその一撃を何とか受け止めた軍覇。
ずしりと響くなんてもんじゃない威力、普通ならば一撃必殺のそれを歯を食いしばり耐えると、今度は自分の番とばかりに握った拳をバーサーカーの腹に思い切り叩き付けた!!

「これでっ! どうだぁぁああああああああああ!!!!」

”ぼごぉっ!!!”

「■■■■■■■■―――ッ!!」

自身の肉体に刺さるかつてないほどの強力な一撃にバーサーカーはその叫びを詰まらせた。
容赦なく強力な一発。
それに耐え一歩も押されず狂戦士は再び拳を振り上げた!!

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!」

「よっしゃぁぁああぁあぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!!!!!!」

それに呼応するように軍覇も拳を握りしめ、さっきと同じく腰だめに構えた。
彼は今不思議な昂揚感に包まれていた。
自分の、自分の振るう力、その方向性を少しづつであるが理解しだしていた。
自分が何であるかを理解する、そんな不思議な昂揚感。
この世界の『理』その本質に近い部分に位置する力。
言葉ではまったく理解などしてはいないけれど、軍覇は感覚を掴みかけている。
バーサーカー、この規格外の相手と戦いながら、巨怪の世界から供給されている力をその身は敏感に感じ取っていた。
そう、彼の力の根源は人の世とは違う段階から引き出されている、人の身には過ぎた代物だった。
バーサーカーの拳で叩かれ。
バーサーカーの肌を叩く内に、ゆっくりであるが確実に彼は答えに近づいていく。
まだまだおぼろげで、それが正しいかも解らない。
それでも彼は自分の力、自分というものを理解しだしているのだ。
英霊との戦いにより、同種と乱暴なふれあいをしていく内に理解は深まる。

「らっ! らっ! らっぁあああああああああああ!!!」

鋭く重い拳の連撃。
固く大きい狂戦士の肌を何度も何度も叩いていく。
その一撃一撃が必殺。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

大きく激しい拳の一撃。
小さくしなやかな軍覇の肌を骨を砕くように叩く。
その一撃はまさに必倒。
二人は互いの攻撃を避けるつもりは毛頭なく。
戦略も技術もなく、ただただ真正面から。
ただただぶん殴る!!

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!」

”ごぎぃんっ!!”

大きな拳が、その拳より小さな軍覇の頭を、顔面を完全に捉えた。
常人なら頭が弾けるか、そのまま首だけ飛んでいきそうな一撃!
普通ならばこれで勝負ありだが―――。

「きっく! かあぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁあぁあああああ!!!!!!!!」

―――相手は削板軍覇!
吹き出す鼻血をもろともせず、全力全開のフルスロットルな拳をバーサーカーの顔面に叩き込んだ!!
頭が砕け散ってしまうような一撃!
しかし、バーサーカーも止まらない!!

「だっしゃあぁっぁぁぁあぁぁああああああああああああああぁぁぁぁあぁあああ!!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

狭いお立ち台の上で戦っているかのように、二人は一歩も引かず顔面を殴り合う!
人が人を叩いてるとは思えない爆撃音が延々響き続けた!
彼らの勝負はまだまだ終わる気配もないのに、常に終了10分前のような死闘!
獣のような叫びが世界を震わせていった。

今日はここまでです。

暑苦しすぎワロタ、この二人に終わりが見えねぇww
ところでこの二人がはた迷惑な喧嘩始めた理由なんだっけと思って読み返したらソギーの勘違い?だった
不毛過ぎるww

軍覇くんが小萌を助けようと勘違いの死闘を繰り広げる中
漁夫の利を狙うキャスターが置いてけぼりにされるの図だな

セイバーズスレとのこの差はなんなんだ
すごいな

感動した

投下します。

削板軍覇は戸惑い喜んでいた。
彼は以前より自分の身に宿るこの力、その意味を知りたかった。
そう意味が知りたかったのだ。
どんなことが出来るか、どれほど強いかではなく彼は、どうしてこの身にこんな力があるのか、その理由を知りたかった。

「おっらぁぁああぁあぁぁああああああああああ!!!!!」

”どぐぼっ!!”

「■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!」

魂から漏れ出しているような叫びと共に繰り出された拳は、バーサーカーの厚い腹筋に刺さり、内部にまでダメージを残した。
削板軍覇の拳は確かに霊長の守護者たる英霊の肉体を破壊しているのだ。
それに彼は戸惑う。

『俺のこの力は結局破壊する力なのか?』

と、その身を駆け巡りいつも以上に迸り、自分を押すこの力に喜びながら戸惑っていた
力の発露、どれほどか予想も出来ないくらい大きな力を得て喜ぶ心。
それが破壊に向いていた、ただそれだけなのかも知れない、それはそれで良いのかも、と。
―――しかし、間違ってはいけない、先走ってはいけない。

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

”ごしゃっ!!”

「おごぼっがぁぁあ!!!」

拳が軍覇の腹筋を貫く。
鍛えられた固い筋肉も、バーサーカー―――英霊―――の一撃には容易く決壊してしまう。
それでも彼は止まらない。
霊長の守護者相手に張り合う立ち向かう。
自分の能力、自分の力、それと同じ匂いを持つ狂戦士に一歩も引かない。
そう、先走ってはいけない。
軍覇が感じ取った同類、それは英霊。
世界の理に近い場所に存在する純なる魂。
それは如何なる力を有していても、どれだけの破壊を振りまこうと、役目は守護者。
破壊してでも守る者。
それが英霊なのだから。
英霊の存在を知らない軍覇はそこに戸惑う。
自分の力は破壊にしか向かないのかと戸惑う。
戸惑いながらも、もがく様に拳を振った。
しかし、あくまで近い匂いであるだけで、彼の力の本質はどこか、それは未だに解らないまま。

バーサーカーは戸惑っていた。
理性無き彼ではあったが、それは間違いなく戸惑いの感情であった。
目の前の『小さき者』の強さ、力に戸惑っていた。
この者はどうあっても小さく弱い存在のはずなのに―――。

「■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!!」

”ふぉおんっっ!!!!”

大きく雄々しい自分の拳。
この世界の全てを粉砕可能なそれを思い切り、容赦なく小さく者に向けて振りかぶった。

”ごじぃんっ!!”

「おっぐぅうう!!!!」

その強大過ぎる一撃を受けて、削板軍覇の身体は宙を舞い数mほど先の地面に叩き付けられた。

「随分、根性ある、一撃…………じゃねぇかっ!」

そう、叩き付けられて、たった数m飛んだだけで。
しかも、背中が罅割れたアスファルトに触れるか触れないかで直ぐに立ち上がりまた獰猛な笑みを浮かべて拳を握っていた。
その姿にバーサーカーは戸惑う。
―――何故こんなにも強いのか?
どうしてここまで強大なのか?
自分に比べて小さく弱いはずの相手。
なのに、この小さき者はどこまでも強い。
自分の掛け値なし本気の一撃を正面から受け止め―――。

「こんだぁ! 俺の番だぁぁぁぁあぁあぁらっしゃぁぁぁあああああ!!!!」

”どずぅんっ!!”

―――更にこちらに拳を叩き付けてくるその威力たるや自身に迫るほど。
今度は逆に大きな体を数mも宙に舞わせられた。
あまりにも強い、強すぎる。
弱く儚いはずなのにこんなにも強い。
そのことにバーサーカーは戸惑っていた。
戸惑いながらも戦いは待った無しに、一秒ごとに深く速く激しく進化していく。

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

握った拳を武器に深く深く踏み込んだ軍覇は―――。

”どずんっ!!!”

―――凄まじい踏込の音を響かせると、力任せに! 能力(ちから)任せにそれを振りかぶった。

”がっごぉっ!!”

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!!」

「らっあぁぁぁぁっぁあぁぁぁあぁぁあああぁぁっぁあああああああぁぁぁあああ!!!!」

バーサーカーの鳩尾に突き刺さった拳を更に更に力を込めて、その身を貫く様に突き出す!

”みしみしぃっ!”

地面の砕ける音か、はたまたバーサーカーの身体が軋む音か、それとも軍覇の拳か、そんな音が響く。
そして、そんな音をなんか掻き消すように二匹の獣は雄叫びを上げた!!

「■■■■■■■■■■■■!!!!!」

「むっ!!?」

拳を打ち込まれ、アスファルトを削りながら押し切られるバーサーカー。
しかし、そのまま甘んじる訳もなく押されながらも拳を振り上げた!!
押されるまま、押されながら、狂戦士は狂ったほど強い一撃を軍覇の胸部に叩き込む!!

”ずごぐぅっ!!!”

「おっおおおおお?!!!?」

自身の中心を抉り取るような一撃!
この上ない破壊の象徴を受けて尚軍覇は倒れない!
倒れないどころか歩みを止めない!

「おっ! おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!」

”ずざざざざざざざざざ!!!”

拳を突き刺したまま、黒い巨怪を押し切る!

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

「きっくっ! かぁぁぁああああああ!!!」

何度も振るわれる破壊の一撃を顔に身体に受けながらも、一歩の歩みに曇りを見せず!

”ずごぉんっ!!”

バーサーカーの背中をビル壁に叩き付け、内部にぶっ飛ばすっ!

「っしゃぁぁぁあ!!」

雄叫びと共に拳を月に自慢するように突き上げると、彼は追い打ちをかけるつもりはないらしく、壁に開いた大穴の前に立ち尽くす。
もうボロボロの学ランをマントのように夜風に流し、腕組み一つ威風堂々―――。

「この程度じゃ終わらないだろ!? 終われねぇよなぁ!! おい!!」

―――打ち倒すべき相手を叱咤激励する。
それが削板軍覇その人なのだ。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッ!!!」

その声に魂を叩かれ、鞭をぶち込まれたのか、狂戦士はがれきを吹き飛ばし立ち上がった。
湯気が立ちそうな程の熱で巨体を高ぶらせ、咆哮一閃―――。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!!」

「おっしゃ! 続きだぁああ!!!」

―――駆け出した!!!

黒い拳が、小さく儚い軍覇を狙い―――。
―――小さい拳が、黒く大きなバーサーカーを狙う!!

”ぢっ!”

二人の腕が微かに擦っただけで、火が付きそうな摩擦音が響き―――。

”ごしゃぁぁあ!!”

―――同時に顔面にて火種は爆発した!!
クロスカウンターのように二人の腕はすれ違い、お互いの顔を見事に打ち抜きあった。
威力はほぼ互角ではあるもの、やはり体重差身長差故に大きく吹き飛ばされたのは軍覇だった。

”すしゃっぁ!!”

「おおおおおおおおおおおおおお!!?」

荒れ果てたアスファルトの上をカーリングの用に数mも滑った彼は、手を突っ張りゆっくり身体を起こした。

「っ! てめぇ…………」

身体を起こした先、その向こうに見た。
先ほどの自分のように腕を組み、こちらを見据える狂戦士。
倒れた者に追い打ちをかけず、あくまで正面から戦う意志をはっきりと見せつける。

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッッッッ!!!!!」

倒れた相手を、強敵を、削板軍覇を―――!!

早く立ち上がれ、また終わらない、終わるものか!
これからまだまだだろう? まだまだ続くのだろうこの時間は!
圧縮されたような今はまだまだ『今』のまま!!
『過去』にならず『未来』も来ない!
『今』この場の『現在』は終わらない!!!
そんな風に―――。

―――叱咤激励する咆哮!!!!

「お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」

それの答えるように彼は吼えた。
文明人らしからぬ言葉ならぬ意志をぶつけ合うように。
同類にしか解らないシンパシーによる会話!
言葉ではないしかし伝え合う!
肌を叩く叫びは心を揺らす魂に刻まれる!!

”どずぅんっ!!”

地面を揺らし再び削板軍覇は身を立てた!!

「上っっっっっ等!!! まだまだまだまだまだ!! こんなくらいで終わるような根性無しじゃねぇぞ! 俺はぁああああ!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッッ!!!」

軍覇の期待通りの『答え』に応えんとするように巨怪はその身を再び走らせた。
握った拳に嘘はない、狙った場所をただ狙う。

「来ぉおぉおおおおぉおおぉぉぉぉいっっっ!!!」

それを避ける気は更々ないのか軍覇は両足を開き、正面から受け止めようと両手を広げた。
一撃で自身を数十mも吹き飛ばす一撃を前にまさに自殺行為。
だけど彼は動かない! 拳を待つ! 自分を壊そうとするような『根性ある』一撃を待つ!!

”どぼぐっっっ!!!”

「っっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!」

誰が耐えられるだろうか、英霊、その中でも最強に近い雄者の拳だ。
手加減なんか無い、そんな昨日は最初から備わっていない。
そんな一撃を顔面にて受け止めた軍覇の両手は、受け入れるように開かれていたのにゆっくりと下がっていく。
地面に根を張るように力強かった足、膝がゆっくり折れる。
誰もが彼を称賛するだろう。
この巨怪と戦い、その身に何発もの『一撃必殺』を受けて尚五体満足。
十分過ぎる偉業だ。
最後には無抵抗に最強の一撃を受けて尚、やはりその身は欠けていない。
それだけでこれ以上ない戦果を上げている。
このまま倒れても世界の誰もが拍手するだろう。

”がしっ”

しかし、だけど、やはり―――

「■■■■■■■■ッッッッ!?」

―――この男だけはそれに満足しない。

「っつぅ~、きいたぜぇ、お前の根性入った一撃!!」

自分の顔面に刺さったバーサーカーの拳を掴み、砕けそうになる足を奮い立たせ獰猛に笑う。

「お前の応えを避ける訳にはいかねぇからな」

言葉も交わせぬ猛獣の応え。
そんなものの為に彼は自らの身を差し出したのだ。
どうしてそこまでという位に真っ直ぐ。
何故そうまでしてという程に愚直の極―――。

「お前がまだ終わらねぇなら、俺も終われねぇよっ!!!」

―――それが削板軍覇、そこまで削板軍覇、そうまでも削板軍覇!!!
彼の咆哮に、バーサーカーは初めて一歩その身を引いた。
そのときに彼の、バーサーカーの戸惑いは消え去っていた。
目の前にいるのは『小さき者』なんかではない。
純然たるこの世が作り出した偉業―――異形であると。

「っ!!」

「ッ!!」

軍覇が握った手を放すと同時、お互い拳を握り技術もなにもなく振りかぶる!!
まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ――――――!!
まだ終わらない!
まだ終われない!
まだ終われる訳がない!!!!!

今日はここまでです。


こいつら一体何レス分戦うつもりだww

え、ここって削板スレだろ?



あのドロドロでギリギリなバトルも良いけど、今のも熱くて好きだなぁ
ぐんはくんの能力気になる


熱すぎワロタ

根性さえあれば無限ループじゃねぇか…

投下します。

”がっ! かっごっぉ!! ぎぃぃいんっ!! ごぎぃいいい!!”

「らっぉおおああぁぁあああああああ!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

鉄を鋼で打つような硬質な音が世界を支配する。
まるで大きな時計の内部に入ってしまったようにどこか規則的。
一打てば一返す。
彼の拳が彼の肌を殴り。
彼の肌が彼の拳を迎える。
どちらも休まずどちらも諦めず。
今、軍覇のしなやかな拳、今は最早一撃でビルをも倒壊させるようなその拳がバーサーカーの胸板にぶつかる!

”ごぃんっ!!”

ぶつかった瞬間の衝撃波が目に見えそうな一撃を受けて尚巨怪朽ちず。
それどころかその一撃に返すようにバーサーカーは巨大かつ堅固な拳を軍覇の顔面に叩き込む。

”ごぎりぃっ!!”

その一撃は軍覇と同等の破壊力。
ビルであれ何であれ破壊し砕く。
並みの英霊であればまともにくらえばそれだけで核を破壊されかねないほどの威力。
そんな威力は二つの怪物は遠慮なく容赦なく出し惜しみせず繰り出し続ける。
延々延々終わりなく終われなく――――――。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

――――――終わらせる気もない。

続き続く終わらないドツキ合い!!
交互に交互に交互に交互に交互に交互に交互に――――――!!
拳と拳が幾度となく行きかい、どんどんその感覚が狭くなる!

”どごっ!”     ”どごっ”
   ”どごぉっ!”  ”どごぉっ!”
 どぐっ!” ”どぐっ!”
      ”ごぐぅんっ!!””ごぐぅんっ!!”
     ”どど”ごっぅ!”
         ””どごぉっ!!””

協奏曲、合唱、輪唱、響きあう。
どこか劇術的なほどの殴り合い。
二人の拳はついには同時に当たるほどになっていた。
二人で同時に拳を振りかぶり、同時に突出し、同時にぶつかる。
そして休むことなく、一瞬でも相手に早く拳を打ち込もうと再び全身を滾らせていく。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!」

言葉もないほどの殴り合い。
それだけで完成されていた。
この場は力でのみ完成され、出来上がっている。
しかし完成完璧とはそのときその瞬間のみの存在でしかない。
どんなものも完成したときのみ完璧。
それ以降はただの劣化を辿る、ただ終わり行くのみ。
英霊と未だ人の身。
二人の狂奏による完成は歪むしかない。

”ごぎぃいいっ!!!!”

最後の和音は鍵盤を叩く様に乱れ終えた。

叩き込まれた巨大な鎚の如く一撃。
それは軍覇の肩をピンポイントに爆撃し、そこを破壊した。
そして彼の身体は優に10mは吹き飛ばされ、そして見事なまでに着地をして見せた。
立ち上がった、それは見事の一言だけれども、破壊された事実は消えはしない。

「っづぁぁああああああ!?!?」

壊された、破壊された痛みにさしもの彼もガクッとその身を揺らした。
破壊、と言っても脱臼程度のもの。
普通ならばそこ、その部分が消えてなくなってもおかしくない一撃だったのに、それでも脱臼。
しかし、その程度と言っても脱臼は脱臼だ。
今までお互いに砲弾のような拳を繰り出し合い、それでも決定打はなかった。
それもここまで、ここが英霊と人間の限界の壁なのだろう。
軍覇の拳は確かにバーサーカーにダメージを与えたが、それでも破壊にまでは至らなかった。

「ぐっく、お…………いってぇ…………」

ブランと垂れ下がった腕を掴み、軍覇は呻く。
痛みに、そして何より自身の、この程度で破壊される情けなさに!
自分はこの程度なのか?
           たかがこのくらいの痛みで壊れるような人間なのか?
何も出来ず朽ちるのか?
           何一つ誰一人守れないような意味のない人間なのか?

           
           
           いや、違うだろ? そんなことじゃないだろ? 俺が今考えているのは。





「…………………………………………」

この戦い始まって初めての沈黙、そして静寂。
腕を掴んで動かない軍覇に、それを見据えるバーサーカー、そして遠巻きにそれを見守る小萌。
破壊に破壊されつくされた場所、地面すら無事じゃないそこは今完全に凪いでいた。
いや、凪がざる得ないのかも知れない。
削板軍覇、世界最大の原石、彼から発せられる異様なまでの威圧感。
それがこの場を、下手したらこの世界を黙らせていた。
狂戦士は今や完全に沈黙。
いつ爆発するか知れない爆弾を前にしたように、動きたくても動けない、そんな状況にいた。

そう、軍覇は、削板軍覇、学園都市の最高位の能力者である彼は自分の能力を、ついに、ついにその一端を捉えようとしていた。
圧倒的なまでの強者であり同類である英霊との触れ合いにより、奥底に眠っていた力が脈を打ち出す。
ずっと眠っていたまま、眠ったまま力を漏れ出すだけだった能力が微かに動いた、動く、動こうとしていた。
彼が、軍覇が初めて自分の『弱さ』を痛感して『強さ』を求めたことにより、彼の一部である能力も動かざる得なくなったのだ。
削板軍覇、彼は自分という『今』を信じ、どんなモノにも立ち向かってきた。
能力に腰かけた訳でなく、自分を信じ、信じぬく限り何物も自分の敵ではないと心に刻んで立ってきた。
それだけの高い意識を持ち、彼は私利私欲に拳を振るわず正義の旗本に能力を行使してきた。
常に誰かの為に、常に弱き者の前に立つ。
それが彼だ、それがナンバーセブン、それが削板軍覇。
そのあり方こそが彼の強大過ぎる能力を繋ぎ止める鎖だった。

「………………………………………………………………」

もしかしたら彼自身能力を理解していたのかも知れない。
あまりの強すぎる能力故にそれに封をしていたのかも知れない。
世界最大の原石。
彼はそう呼ばれる、そう原石なのだ。
原石、そう、磨く、磨かれ、そして価値を、真の輝きを得る存在。
削板軍覇、彼の能力は未だくすんだ石の中に眠る。
そのくすみを取る手段は既に目の前。

自身の為に力を望むこと―――。

簡単故に彼には決して出来なかった。
簡単な道を避けに避ける人生を進んできた彼にとっては初めての体験だ。
そう、今彼が考えているのは。


              目の前のこいつに負けたくない。
こいつをこの手でぶっ潰したい。
              理由なんてない、ただそれだけ。
だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、
だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、
だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、
だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、だから、


”どくんっ”

何かがついにその身を動かした。
原石の中の輝きが、磨かれたことにより光を取り戻す。
今彼は問われた自分に問われた。
自分自身に問われた。





               力が欲しいか?

今日はここまでです。

やべえ、ソギーがARMSに目覚める……

あけましておめでとうございます
なるべく早くに更新して完結させたいと思うのでよろしくお願い致します

ARMSから力が逆流する・・・!

年内に投下しろよ

凄くお久しぶりですが投下します。

「ああ、これが―――」

自分が何をしているか解らなかった、ただバーサーカーは消し飛んでいた。
削板軍覇、彼はその手に握った初めての力を一瞬だけ振るい、それを再び見なかったように封じ込めた。
何が起こったか?
        何も起こってない。
何かが起きてはいけない、ただバーサーカーは消し飛んだ。
この力はあってはいけない、まだ早すぎる。
いや、遅すぎるのかも知れない。
何にせよさっきは何も起きなかったのだ。
そう何も起きてない、何の能力も要素も発動してなんかいない。
削板軍覇が手の中に視た力はここにあってはいけないもの。
世界の理、それすら大きく歪めるナニカ。
ただ一瞬、刹那の60分の1の時間だけ存在して、その端も端の出力で狂戦士を吹き飛ばしたのだ。
そうだけど、何も起きていない、何の力も、何の神秘も起きていない。
ただただただただ決着がついただけ、そう、ただ決着がついただけ。
ただただただただ巨怪がかっ消えただけの話。
無駄なまでに肉体をぶつけ合い削り合い、血で血を蒸発させる熱い鉄の打ち合い。
熱く長く大地をぶち壊し空気を圧縮し時間を縮めた戦いも終わり。
それはあっけなく、何でもなく、それでいて後味もなく煙のように消えた。
残されたのは削板軍覇、そして月詠小萌。
あとは破壊に破壊されつくした大地だけだった。

「……………………」

「…………ばーさーかーちゃん」

呆然と立ち尽くす男は小さな声に一瞬だけ目を向けると、彼には有るまじきことにその小さな存在に手を差し伸べることなくその場を後にした。

「……………………」

残された一人のマスターは、ただただ虚空を見つめる。
どこかに消えてしまった自分の従者を待つように。
その手に深く残る令呪は主の証を失うことはない。
色褪せぬその深くに刻まれた証明。
それに背くことはない。
巨怪、理性無き獣であったとしても自分の帰るべき場所は理解しているのだろう。

「ばーさーかーちゃん―――」

この世の理を超える力にて掻き消されたハズの狂戦士は小萌の背後でゆっくりと、全身から湯気を立ち上らせながら帰還した。
その眼に爛々と戦いの色を宿して。
自分が叩くうえで一番の障害になるだろう相手を心に刻み。

「―――お帰りなさい」

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!!!!!!!!!」

獣の咆哮は地を揺らし大地を割り、空を突く。
夜を打ち抜く様な声、断末魔に似た叫びはただ一人ために。
有ってはならないもので自信を7度瞬殺した雄々しき戦士の為に。

「ふふ、嬉しそう…………ばーさーかーちゃんも男の子ですね♪」

その咆哮を耳にして、月詠小萌は理性無き言葉無き戦士の内情を理解したのか優しく笑う。
弓と剣の決着がつくのはその3分12秒後だった。

…………。
……………………。


「それで、インデックス、こちらは既に騎兵と弓兵を屠っています、しばらく様子見でも問題ないと思いますが?」

「そうだね…………でも、それじゃあダメなんだよ」

まだ痛む身体、少しの身体の捻りで火傷が引きつり、その激痛に唇を噛んでしまう。
だけど、その痛みが口に広がる血の味が私に生きていることをしっかり実感させてくるのだ。
病院の廊下、隣を歩くセイバーの言葉にそっけなく返して、洗濯して貰った修道服をたなびかせて歩いていく。
入院して数日、まだまだ退院の指示は出ていないけれど、私はベッドで身体を休めることに我慢が出来ずにいた。
ただただ意識を休めていると心の奥から声が聞こえてくる音が響いてくる。
ラストオーダーの倒れる軽い音―――私が殺した。
かおりが撃たれ溢れる血の音―――私が殺した。
短髪の首が折れる鈍い音―――私が殺した。
瞼の闇には光景がやきついて、耳の奥ではいつでも音が響く。
それから私は逃げたい。
内部から削られる心はいつ破たんしてもおかしくないから。
だったらそんな光景にも音にも気にならないくらい私は目的を持たなくてはいけない。
全ては愛する尊敬するただ一人の為に。
私の戦いに関係して死んでいった沢山の友人の為に。
私の戦いで殺していった多くの友人の為に。
擦り減る私の心を守るために。
戦いに向かう。
休んでいられない、何よりも自分の為に。
知らず知らずに責任の所在を自分以外に投げた私は、奥底の暗く重い快感に蓋をして次の戦いを求めた。
押しつぶされそうになる空気を肩に乗せたまま。

「…………私は騎士です、マスターの命令に従います」

「ありがとうなんだよ」

そんな私の何を察したのか、セイバーは目を伏せ頷いてくれた。
目を伏せ、私から目を逸らし、自分の役割を『剣』だと逃げてくれた。
剣にすら諦められた私は、その柄に手をかける。
次の戦い、どうしてもやるしかないあの人の―――自分の―――為の戦いを求め。

「怖い顔してるにゃー」

「もとはる…………」

病院から抜け出そうとする私の前に、アロハ金髪の少年が現れた。
逆光によって表情は窺い知れないけれど、その声は変わらず軽い。
自分の、私の友人が死んだと言うのに。

「どうしたの? 何かあった」

「んにゃー、ちょいと忠告にな」

「忠告?」

軽い軽い言葉。
軽いからこそ容易く心に入り込む。

「…………ステイルからの連絡が耐えた」

「!」

心に入り込んだ軽い言葉が一気に重みを増した。
火傷が痛み、胃が捩じくれだす。

「気をつけろ、やつはキャスターを追っていた、あのステイルがそう簡単に死ぬとは思えないが…………ねーちんの件もあるしな」

「………………………………何も言わないんだね、もとはるは」

「にゃー?」

私の重みを持たせた言葉は彼の心に入り込めない。
彼の心の入り口に詰まってしまう。

「責めないんだねもとはるは」

「責められたいのか?」

「……………………」

「……………………」

また彼の言葉が一瞬重くなった。
その重さは私の脚を止めようとしたけれど、止まる訳にはいかない。
セイバーに目配せして、もとはるの横を通り抜ける。
笑みを浮かべた彼に重なる瞬間、私は小さく答えを返した。

「…………別に」

「……………………」

見はしなかったけれど、もとはる満足そうに笑ったそんな気がした。
数日の休憩を挟み、私とセイバーは再び戦場に帰還することになった。
甘さのない、苦く苦く苦く苦く苦しいそんな戦争に。

「インデックス、気付いていますか?」

街中、少年少女の行きかう明るく活気ある学園都市を進んでいると隣から小さな声があがった。
私はそれに無言で応えてから、すっと狭い路地に入った。
ビルとビルの隙間、人一人が通る限界の細い路地の奥、そこには魔法陣が描かれていた。

「やはり…………これは、陣、いや、結界か?」

「うん、多分…………さっきからこれと同じ魔力だまりがいくつもあるから、かなり大がかりなものだね」

セイバーが声をかけた理由はこれだ。
病院を出てから直ぐに感じた違和感であり空気。
詳しい範囲は解らないけれど、街中に結界のようなものが張り巡らされていた。
いくつもの魔法陣を繋ぎあわせて強固かつ強力なそれを作り出しているようで、これほどのものを作れるのは―――。

「―――キャスター、だね」

「やはりそうですか…………姑息な」

苦々しい思い出でもあるのか、眉を顰めたセイバーの横でしゃがみこむ。
…………目的は、ライン、念話のパス?
堂々と描かかれた魔法陣の目的、どういった用途で組まれたものかを読み取っていく。
これだけ広い範囲に張っているのだから、吸精、下手したら吸魂などの結界だと踏んだのだけれど、この陣からは私も使っている念話の仕組みに近い何かしか見受けられない。
と、言っても私であっても全てを理解出来ない部分も勿論ある。
どうにも古く、神秘性の高い陣らしく推測は出来ても確実な答えは出ないだろう。

「一応、使えないようにしておこうか…………」

念話であったとしても相手がこれを描く以上何か理由があるのだろう、そう判断して私はその陣に手を伸ばした。

「セイバー、一応周囲を警戒しといて欲しいんだよ」

「了解しました…………インデックスは?」

「この陣を使えないようにしておくんだよ…………」

陣を読み取り、使えないように導いていく。
知恵の輪、と言うよりかはパズルに近い。
組まれたパズルの全容を理解した上で、違う絵に組み替える。
魔法陣と言うものを破壊するのは実は容易ではないのだ。
既に組まれた陣を破壊するには、その陣を形成する魔力を一気に吹き飛ばし押し流すほどの魔力をこちらから流すか、術者に破棄させるしかない。
簡単は小さな陣であればそれなりの魔力さえあれば消せるだろうけれど、今私の対している陣の魔力は凄まじいものだった。
そんな陣を破壊する魔力は私にはない、だから使えないようにするのだ。
組み替え、意味を変え、役割を変えていく。
繊細で集中力のいる作業ではあるけれど、地道にやっていけば何とかなるものなのだ。
ただ、今回については私の知識でも意味が理解出来ない、神秘の高い部分も多いので少しばかり面倒だ。
だから、なるべく理解出来ない部分には触れず、解りやすい部分から組み替えて行き―――。

「…………よしっ、出来た」

「お疲れ様です」

―――10分ばかりの奮闘の末に使用できないように組み替えることに成功した。
その間無防備になるのでセイバーに周囲の警戒をお願いしたけれど、問題はなかったようだ。
…………何かしらトラップでもあるかと思ったけど何もなかったんだね。
この手の陣は侵入者用のトラップでも仕掛けてあるのが相場だけれど、その様子はなかった。
すんなりいったことに一抹の不安を感じていたが―――。

「え? 嘘、なんで!?」

組み替え使用不可能にしたはずの陣が一人でに動き、私の行為を全て無為にしだした。

「自動修復機構!? そんなっ!」

咄嗟に魔法陣にかけよろうとした私、その背中に声が叩き付けられる。

「っ!? インデックス!!!」

「にゃっ!?」

”ずがんっっっ!!!!!”

―――不安は予感となりしっかり的中した。
私が向かおうとした魔法陣のある横の壁、コンクリートのビルが打ち砕けその破片をまき散らした。
セイバーに抱き寄せられなんとか初撃を躱すことが出来たが、安心にはまだまだ早いし遅過ぎる。

「ここここんなときに超侵入者なんんんててて面倒なんでででですけどぉぉぉぉぉぉ」

「インデックス、下がっていてください」

破壊されたコンクリートに粉塵の向こうからまだ幼い甘い声が聞こえる。
甘い声のはずなのに、どこかおかしい。
壊れたCDのような変な声。

「セイバー、気を付けて欲しいんだよ」

「……………………」

私の言葉に鎧姿の騎士は、剣を深く構えて応えた。
不可視の剣は一撃で相手を斬る気迫に満ちている。
魔法陣を背後に隠すような位置に立つ敵。
ビルを容易く破壊する相手はゆっくり煙が張れると同時にその姿を見せた。

「女の子…………?」

「…………」

ビルの破壊とは到底結びつかない短い髪の、まだまだ幼い顔をした女の子が姿を見せた。
私と同じくらい、もしかしたらもう少し年齢は下かも知れないそんな相手は好戦的な笑みを浮かべ、立ちはだかる。

「面倒でででですけど――――――超排除させていただきますっ!!」

「来るかっ!!」

名も知らぬ、少女がこちらに砲弾のように躍りかかった。

今日はここまでです。

乙、やっと動いたと思ったら一気に動いたな

待ってました!
次はアイテムたちかぁ、期待してます

>>483
パワーAくらいありそうですからね

>>484
血みどろの戦いになります、きっと

>>493
勘違いから生まれる死闘もあります、きっと

>>494
図にしたら簡単です

>>495
ノリの差です、向こうはまったりで

>>496
ありがとうございます

>>506
ついつい楽しくてやり過ぎました

>>507
一時期乗っ取られかけました

>>508
セイバーたちは若干泥臭いですね、軍覇は少年漫画で

>>509
暑苦しいのも大好きです

>>510
負けないかぎりつづきます

>>517
あれは名作ですよね

>>520
共振します

>>521
がんばります

>>531
テンポ良くいけたらなと

>>532
ありがとうございます、アイテム戦になる予定です

百合的な展開はあったりするのだろうか?話に関わるならスルーで


ぐんはくん再登場ある?
あのバトル良かった

もあいは俺の嫁

投下します。

「ぜっっやぁぁぁああああああああ!!!」

”ひゅんっ!”

「っっ!! 超ははは早いいいででですね!」

一足間合いからの踏込、続けざまの神速の剣を相手はギリギリで躱した。
セイバーの、英霊の一撃を躱す相手に少なからず驚愕する。
この街には確かに英霊に匹敵するような能力を持っている人間は存在するけれど、それはあくまで能力で、だ。
魔力放出によるセイバーの速度は既に人間のそれを遥かに上回っている、それなのに回避するなんて。
身体能力を強化しているのか、それとも?

「ふっ! せぇぇええええ!!!」

「がっ!?」

相手の戦力を見極めていれば、そんなのは必要なかったのかセイバーの不可視の剣が少女の胴に入った。
これで終わりだ。
胴で二つに分かれた死体の完成。
既に人が死ぬ―――殺す―――ことに抵抗がなくなり出している私は取り乱しもせず一息つき。

「セイバー、だいじょう―――」

「マスター、まだです」

「―――え?」

労いの声をかけようとして、それを止められた。
その時に気付いた、血の臭いがしないことに。

「ったぁ…………びびびびっくりするくらい超強いででででですね」

「! 無傷!?」

確かに間違いなくセイバーの剣を腹に受けた少女は何事もなかったかのように立ち上がった。
その身体には傷一つなく、相変わらず壊れたような声を漏らしている。

「…………」

セイバーは改めて剣を構えて、私を庇う様に軸をずらした。
未知の敵にその顔は険しくなっている。
初撃で無傷ということはそれなりの覚悟をしなければ勝利を取れない。
そのことを騎士王は覚悟したのか、かつて英霊と相対したときと変わらない気迫を滾らせていく。

「インデックス…………離れていて下さい」

「う、うん…………」

言われるままにゆっくり下ろうとすれば、それが合図だったのか―――。

「超ううううう行きます!!!!」

「来い!!!!」

―――少女は再びセイバーに小細工なしに正面から突撃した。

「英霊の攻撃を受けても無傷なんて…………」

セイバーと少女の戦い、それは打ち合い、というか一方的にセイバーが攻撃するだけに近い。
相手も攻撃を繰り出してはいるが、それをセイバーは避けいなし、自身に掠らせることすらしない。
そうして相手を崩して打ち込んではいくけれど―――。

”ぎぃんっ!”

「むっ!!」

―――少女の身体に剣は通らない。

「皮膚の硬化? いや、でもそれじゃあ服は切れるハズ」

戦いを見ながら突破口を見出そうと脳みそを回転させる。
超能力について詳しい見識はないけれど、それなりの知識はあるから、そこからどうにか考えていく。
だけど、魔術と違って超能力には解決法が少ないのだ。
阻害は出来ても『これ』と言った解決法を見つけることは難しい。
それでも考えるしか出来ない私は考えるしかない。

「くっそっ! 超強いですねねねねね!!」

「はぁぁああああ!!!」

”がぃんっ!!”

また何度目か一撃少女に入るが、相手は吹き飛ぶだけだ。
その後ビル壁に激突しても大したダメージはなさそう。
見えない鎧、そうセイバーの不可視の剣のような何か、見えない鎧を着ているように見える。
鎧を着ていて、攻撃を受けて踏ん張りが利かなければ飛ばされる。
攻撃についてはコンクリートを粉砕する程度は容易い。
攻守ともにバランスの良い能力だろう。
だけど、それが解っても明確な攻略法は思い浮かばない。
…………科学の勉強ももっとしてくべきだったかも。
歯噛みしたくはなるけれど、今は後悔よりも前を向くしかない。

”ぎぃんっ!! がぃんっ!!”

「ぐっくううう!! かはっ!!!」

「本当に固いな貴様は…………」

剣で斬る、いや叩く度に衝撃は伝わっているらしい。
しかしダメージにはならない、それでも繰り返せば相手は昏倒くらいはするだろうけれど、あまりここでの戦闘継続は望ましくない。
昼まで通りに近い場所であるし、かなり大きい音が響いているのでいつ誰が来てもおかしくない。
不必要に人を巻き込みたくない気持ちは最低限私にはまだ残っているから。
となると勝負を決める必要がある。
そっともう慣れた念話のパスを繋ぐ。

『相手を吹き飛ばさない程度に二回斬りつけてみて』

「…………」

無言での肯定を、勝ち得てしまった信頼。
人を殺す行為の信頼を感じて胸の奥に蓋した何かが疼いた。
だけど、その疼きから目を逸らしてセイバーの動きに注視する。
推測が正しいかどうかを確かめる為に。

「はぁぁああああ!!!」

”かぎぃんっ! ぎぃんっ!!”

「かっ! ああ!!」

神速二連。
しかし、さっきまでのように少女を吹き飛ばさない程度の圧力での攻撃。
それによって起きた現象を目に焼き付けた私は―――。

『セイバー』

―――そっと、勝つことを決めた。

『単撃じゃなくて連撃、容赦なく斬りつけ続けて…………多分それで終わるから。』

と、簡単に言葉を飛ばして、あとは『私』が『少女』を『殺す』とこを瞬きせずに見つめる。
さっきまでの戦闘を見ていて解ったけれど、あの少女の見えない鎧はかなりの強度を誇っているけれど無敵では間違いなくない。
良く吹き飛ばされていたのは小柄故の踏ん張りの無さではなく、連撃を受けない為の回避行動なのだろう。
連撃を受けた時に刃の止まる位置が一回目より近くなっていた。
セイバーの剣も、相手の鎧も目に見えないので目測は難しかったけれど、そこだけを注目して視れば違いは見極められた。
つまり、彼女の鎧は攻撃を受ければ減少するのだろう。
それも直ぐに回復して変わらぬ厚さに戻るようだけど、連続で受け続ければ終わるのは間違いない。
消耗限界のある鎧だけれど、彼女の上手い避け方で気付くのに遅れてしまった。
しかしタネが割れたらそこまで。

「ふっ!! ぜゃぁぁぁああああああああ!!!」

「!」

これで終わり。
どこだろうか解らないだろうけど、あの可愛らしい少女も真っ赤になって終わ―――。

”ばじゅうぅうううう!!!!!”

「!?!?!!」

「な、なに!?」

―――るハズだったのに。

「本当に聖杯戦争って闇討ちと奇襲が多いんだよ…………」

衝撃を逃がさず頭頂部から両断しようと振り上げられた不可視の剣を、なんと言ったら良いか光の槍が弾き飛ばした。
英霊であるセイバーでさえ剣に受けた衝撃で大きく吹き飛んだ。

「くっ! どこから―――」

”ぼじゅうぅうううう!!!”

「きゃああああああああああああああ!!!」

「インデックス!!!!!」

崩れた体勢を直ぐに戻したセイバーだったけれど、再び降ってきた光の槍で吹き飛び、私も破壊の余波でアスファルトを転がる。
あまりにもあまりな、圧倒的なまでの破壊力。
それに圧倒的なまでの速度に新たな敵の位置も把握出来ずに地面を転がっていけばセイバーと少し距離開きすぎてしまった。
もし、私が狙わればそれだけで終わってしまうだろう。
微かに痛む身体、火傷の傷の激痛に歯茎から血を流すほど噛み締めて立ち上がる。
砂ぼこりの向こうでは影が二つ。
セイバーと、例の少女だろう。
戦いの再開予感される空気に前にでるべきか、それとも引くべきかを考える。
セイバーが近距離相手に戦うなら遠距離攻撃を潰すのは私の役目か?
だけど、あまりの威力に背中に嫌な汗がじっとり広がりだしていた。
間違いなく食らえば拳銃の日じゃない、生きていられるかも微妙な強大な攻撃だ。
私の手に余る敵だろう、だとしたらセイバーが即座に少女を殺し、そのまま遠距離を潰して貰うのが―――。

「ちょ、ちょっと、これは一体なんですな?! そこの御三方、少しお話を聞かせていただけます?」

「な!?」

戦闘の急激な悪化に背後を忘れていた、騒ぎを見つけた一般人がここまでやってきてしまった。
振り返った先には小柄な、ツインテールの女の子が決意と意志を秘めた目で立っていた。
そして、腕章に指をひっかけ、それをこちらに見せると。

「風紀委員(ジャッジメント)ですの」

誇りを感じさせる声を告げていた。
だけど、私はその言葉を聞く余裕なんてない。
振り返りだしたとき、多分私は油断していた、油断してしまった。
遠距離攻撃の相手に背中を向けてしまったのだ、きっと。
背中にさっきまでとは比べものにならない汗が噴き出す。
私は狙われている、それだけでなく、このままだと目の前の女の子まで殺される。

「っ!!」

迷う暇なく飛んだ。
ふらつく足に力を込めて、瓦礫散らばる地面を。
女の子に体当たりするように抱き着き、そのまま―――。

”ぼじゅぅううぅうううううう!!!!!!!”

三度光の槍が降り注いだ。

今日はここまでです。

乙です

いったい光の槍の正体はだれなんだ

投下します。

「ぐっく、ぅうううぅう…………!」

光の槍を何とか避けた。
乱入者のツインテールを突き飛ばす感じになったから、そのせいで少し身体を強く打ってしまった。

「…………!」

背後を見れば瓦礫の山、そして立ち込める粉塵と何かが焼き切れた匂いが鼻に刺さる。
肺から空気が押し出されたせいもあり、乾いた咳が喉を擦っていく。
微かな痛みに苛立ちを感じて直ぐに念話のパスをセイバーにつなげる。

『こっちは無事なんだよ、そっちは?』

『マスター、無事で何よりです…………こちらは、くっ! 目下交戦中です!』

耳を澄ませば遠くから鈍い剣戟、そして瓦礫の大地をかける靴音が聞こだし、そこで念話を一方的に切断された。
どうやらお互い一応は無事のようだ。
さっきの大軍魔術のような攻撃は直撃しなかったことが何よりと考える。
そして次だ。

「…………」

「い、いったいこれは何が起きてるんですの!?」

見た目は私より幼そうなのに妙にオバサン臭い声で驚いている彼女に視線を向けた。
周囲を見渡す彼女の身に大きな怪我がないことを確認したら、服を叩く暇も惜しんで駆け寄る。

「ここは危ないから早く逃げて!」

「は? きゃっ!?」

細い腕を乱暴に掴み、来た道を引き返すように指さす。
この娘はさっき風紀委員(ジャッジメント)と名乗っていた、記憶にある知識ならばこの街の治安維持機関の一員のはず。

「逃げて! ここに誰にも近づかないように言って欲しいんだよ! 早く!!」

彼女に頼めば、ここの封鎖をして、無駄な被害、犠牲者は減らせる可能性がある。

「に、逃げるって何をおっしゃいます! 逃げるのはあなたの方です!」

「っ」

言葉に対して予想していた答えが返ってきた。
彼女のさっきの誇りのある声、責務に立場に身を置いていて、持て余していない者の声だった。
だから、ここで逃げろと言ってもそれを聞くことはないとは思っていた。
それでも逃がさない訳にはいかない。
ここから先は学園都市の高位能力者でも割り込むことが出来ない戦場。
使命に燃えるこの女の子は間違いなくその戦場に踏み込むだろう。
そうなれば、答えは見えている。
戦場に転がる赤いゴミが増えるだけ。

「っっっ」

思い返すのはクールビューティの死に姿。
ほかほかの内臓をぶちまけた姿、ゴミになってしまった友人の顔。
また胃がねじれそうになるけれど、そんな人間的な優しい感情は私には勿体ない。

「お願いなんだよ…………ここから先は危ないんだよ、本当に」

「危ないって、だからこそ私が行くんですの! あなたは早く安全な場所に避難してください」

搾り出すように出した声も届かない。
彼女と私の間の事情と温度差。
どこまでも深い隔たりがそこにある。
でも、でも、彼女を、こんなに輝く様な目をしている強い目をした女の子をゴミにはしたくない。

「…………」

ぐっと身体に力を込める、相手はこっちにまったく警戒はしていない、どうにか気絶させることは出来ないだろうかと考えた。
呪符や術式紋様、簡単な魔術の組み合わせをいくつも考えては消していく。
不必要な怪我をさせずに気絶させる方法を模索する。

…………。
……………………。

「…………インデックスは無事ですか」

念話による無事を確認して一息つく。
吐いただけで安心はまだ出来ない。

「…………」

一瞬だけ周囲に気を配り、こちらの無事を伝える。
先ほどの光による攻撃により周囲には粉塵立ち込めている為先ほどの―――。

”ごっ!!”

「ぐっ!!!」

「まままままだ! 超おおおおお終わりませんよよよよよ!!!」

―――敵が拳を振りかぶり砂埃の壁をぶち抜いて突撃してきた!
念話を切断して、脳の警戒レベルを一気に戦闘配備にまで引き上げた。
相変わらず動きは直線的だけど、威力はとてつもない拳を避けつつ、さっきの光にも気を配る。
剣を狙われた一撃により腕にはまだ痺れに似た痛みが残っているけれど、この程度なら問題はない。

”ぼっ! ぶぉっ! ふぉっ!!”

「っ! ふっ! っっ!」

問題はないけれど、やはり大きくは踏み込めない。
先ほどの光の一撃は私の身体を貫くに等しい威力は間違いなくあった。
その命中精度も振り上げた剣を狙う程のものだった。
それを考えれば不用意に大きな動きをすれば狙い撃ちになることは間違いないだろう。
…………避けつつ、狙撃手も潰さねばインデックスも危険でしょう。
目の前の少女が生きている限り、ここら一体を焼き払うような攻撃はしてこないハズ。
ならば、泳がせつつ敵の位置を確認せねば。

「…………インデックスならば敵の位置の索敵は容易いのでしょうが、くっ!!」

「超ッ隙ありィッッ!!」

どんどん激しくなる拳撃をいなしかわし、自分の無能さに歯噛みする。

…………。
……………………。
セイバーはがれきの向こうで戦っている。
しかも二人の敵に、だ。
片方は姿を見せてない殲滅級の攻撃を行う相手。
それを一人で相手にするのはセイバーと言えど難しい。
だからこそ早く駆けつけなくては!

「ふぅう…………っ!」

呼吸を整える。
狙うのは顎か、首か、鳩尾か。
硬化の魔術で拳の骨と皮膚を一時的に固くして、それを一気に振り下ろせば少女を失神させることは可能のハズ!

「わ、わかったんだよ、じゃあ、私も逃げるんだよ…………」

「そうして下さいまし、ここから先は私たちの領域ですので」

意識を集中して、目線を下げ、少女の脇をすり抜ける。
大通りに抜けるために移動するふりをして―――!!

”すっ!”

拳を振り上げ、無防備な首に、鉄のように固まった拳を容赦なく振り落す。
後遺症を与えないようにと遠慮しては気絶まで至れない可能性があるので、一切の容赦なく!

「っっっっ!!!!!」

―――振り下ろした私は気づけば空を見ていた。

「え? え?」

拳には微かに当たった感触はあった。
本当に微かに、肌に触れたか触れないかくらいの感触はあった。
だけど、それだけ気付けば私は青い空を見てしまっていた。

「ど、こ?」

青い広く見える空。
さっきの粉塵の立ち込める瓦礫の戦場ではない。
広く広く見える空。
この街ではどこにいてもビルがありこんなに大きく空を見てなかったので、ただただ見入ってしまう。
小さく、身体の中に溜まった何かを追い出すように息を吐き出した。
背中に感じる固い感触と、張り付けられるような重力に自分が寝転がっているのを遅れながら理解する。

「っ…………どこ?」

呆然とする時間を過ごし身体を起こして周りを見回せば、そこは高い場所だった。

「ビル…………の屋上?」

遠くに見える入り口らしき場所、それと大きな給水タンクだがあるフェンスに囲まれた区画。
ビルに屋上、どこにビルかは解らないけれど間違いなく屋上であるそこにどうしているのかが全く理解出来ない。
あまりにも唐突の出来事で、さっきまで何をしていたか―――。

”ずがごぉおぉおおおお!!!”

―――何かが崩れる壊れる音と振動で直ぐに思い出した。

「セイバー!!!」

さっきの音はきっと光の槍、あの大規模魔術のような攻撃による破壊音だろう。
咄嗟に立ち上がり、フェンスに駆け寄る。

が。

”ざくっ!!”

「ぐっく、ぅ!?」

数歩と進まぬ前に右足に激痛が走った。
ガクッと、体勢を崩し、転ばぬまでもその場で動くことが出来なくなる。

「なんな、の!?」

咄嗟に負傷した、痛みの走った場所に手と目を向ければ修道服の下で何かがある膨らみが見えた。
服ごと刺さっているのではなくて、その下の脚に直接何かが刺さっている。

「くっっっ!!」

新しいサーヴァント? それとも敵の魔術師?
修道服の裾を捲りながら思考を回す。

「針?」

捲った先に一瞬見えた白い足には太い針のような、小さな杭が刺さっていた。
それだけを確認して、出血量、傷の範囲を確認したら直ぐに身体を起こした。
いつまでも負った傷を気にしてはいられない、ここももう『戦場』なんだ!

「おや、さすがは殺人者ですね、自分の傷より新たに殺す相手を直ぐに探すなんて―――」

「…………あなた、が?」

意識を切り替え心を落とそうとした先に聞こえた艶のある声。
幼い身体の割に大人びた落ち着いた声。
決意に燃えた―――強い―――強すぎる。
誰か―――を思い出す瞳。
両手に、私の脚に刺さったものと同一規格の針を携えた彼女はどこか妖艶に笑った。

「―――気持ち悪い、本当に気持ち悪いですの、あな「―――」「た」

「え?」

言葉の途中、急に目の前にいた少女は姿を消し、一瞬程度の間の後に後ろから声が来た。

”ごっ!”

「ぁぐっ!?」

声を認識して、振り返ろうと身体に指令を出す直前、背面に激しい衝撃を受けて吹き飛ばされた。
ゴロゴロとコンクリートの床を足から血を流しながら転がる。
刺さった針が更に深く刺さり、痛みに歯を食いしばり、何とか身体を起こした視界には誰もいない。

「あなたのような気持ち悪い殺人者に縊り殺されたお姉さまの苦しみ、その万分の一でも味わってから死んで下さいまし」

「はっ、おごぉおお!?」

また聞こえて来た声の方向は背後。
どこでそうして、いつの間にそこに回り込まれた判断も出来ないまま、今度は側頭部に衝撃を受けた。

「ぐっが!!?」

微かに見えた視界の端では、少女のはためくスカートと、持ち上げられた膝があった。
膝蹴りを食らったのだろうと理解するけれど、状況は理解が追いつかない。
―――お姉さま? お姉さまって?
彼女も魔術師―――?
―――これも聖杯戦争の一部か?
それとも何か勘違―――あ。
回す思考回っていく考え。
どこかに転がっていきそうな脳みその中で、彼女の着ている制服と私の良く知る相手の着ていた制服が合致した。
あれは―――確か―――常盤台中学の―――制服。
短髪の―――クールビューティの―――着ていた。

「あ、なた 「耳が汚れますの」 おがっぁ!?」

思考が追いつき、声がそれを更に追いかけようと身体を起こした瞬間、靴の裏が私の顔面を捉えた。
意識の飛びそうな一撃を受け、後ろに妙な体勢のまま吹き飛びながら―――。


ああ、私は恨まれているのか。

―――これが聖杯戦争とは関係ない私に対する全うな断罪だと理解した。

今日はここまでです。

黒子にボコられるのはちょっぴりご褒美風味

しかし、いたぶりは負けフラグなので悲しい

さっそく黒子に死亡フラグが・・

ていうか絹旗のしゃべり方がおかしいのは体晶でも使ってんのかね

誰かに操られてるとか
具体的にはみさきち
絹旗の能力だと精神防御は無に等しかろう

死亡フラグ!立てずにはいられない!

あと出てないのはアサシンだけか
アサ次郎とハサン先生のどっちだろ?
ハサン先生なら土御門あたりと相性が良さそうだな

>>535
多分、ないかなぁ、と思います
魔力切れは無いので

>>536
一応あります
自分のあの乗り好きなので

>>537
フレンダ派です

>>546
ありがとうございます

>>547
バレバレでしたよね、さすがに

>>558
ボコり方がかなり激しいですが

負けかどうかは後に

>>559
まだ死んではいませんから大丈夫です

>>560
体晶ではないですね

>>561
ぶっちゃけそんな雰囲気ですよね

>>562
死亡フラグを踏み越えましょう

投下します。

”ずざぁあぁあああ!!”

「やややややややりますねえええええええ!!!」

「ふっ…………せぁあああああ!!!」

瓦礫の戦場、一皮むこうでは平和な世界が広がる路地裏での戦い。
肉体に不可視の鎧を纏った少女相手に私は不可視の剣で迎え撃っていた。
攻略法は既に十二分に発見出来ている。
やろうと思えばこの場で二つに身体を分けることは可能なのだけれど、それが出来ない理由もまたあった。

”ばしゅぅううううう!!!”

「ぐっ! またか!!!」

数合の切り結びの最中、この一帯を瓦礫に変えた原因たる光の槍がまた降り注いだ。

”ずがぁぁあああん!!!”

世界を切り崩すかのような激しい一撃。
今のところ、最初に剣に当てられた以外は掠りすらしていないけれど、その威力には肝を冷やす。
周囲のビルがどんどん瓦礫に変わっていき、徐々に戦場の範囲は広がりつつあった。
微かに遠くからザワメキや悲鳴が聞こえてくるに、既にここの戦闘は外部に知られているのだろう。
密にされるべき聖杯戦争が公になるのはまずいだろうし、何より我がマスターがそれを望まない。

「…………やはり、長引かせる訳にはいかないか」

グッと剣を握りしめ、襲い来る少女ではなく、どこにいるかも定かではない光の槍を扱うものを睨みつける。
インデックスが狙われる前に、ここを掃除せねば!!

「はぁぁああああああ!!!」

「超かかかかかかかかカモンですっ!!」

”がぃいいんんんっ!!!”

”どぐっぅっ!!”

「おごっ!?」

騎士がもどかしい戦いをしている上空。
ビルの屋上で私は何度目かの地面との再会を果たしていた。
死角からの蹴りを脇腹にくらい、完治しきっていない火傷の引き攣れに苦痛を感じる暇もなくコンクリートの上を転げまわる。
足に刺さった杭は何度も何度も擦れて、もう感覚すら危うくなりつつあった。


「ああ、お姉さま…………お姉さま、嘆かわしいですの…………こんな、こんな!」

”ごすっ!”

「ぃぎっ!?!?」

転がったまま息を少しでも整えようとしたけれど、そんな時間さえ許されない。
無防備に晒していた背中を体重かけて踏みつけられた。
彼女は軽いだろうけれど、私も言ってもそうは体重はない。
多分彼女とそこまで差はないだろう。
そんな重さの相手に踏まれたら、苦しむ程度には痛い。
しかもこの少女はどうにも格闘術の心得があるのか、乱暴な踏みつけであっても内部に響く様に痛む。

”ごりぃいっ!!”

「あがっ、ごぉおおお!!?」

踏みつけられ、骨を削られる痛みに手足をでたらめに動かす。
少しでも痛みを和らげたくて、不自由な手足を、コンクリートにぶつかるのも構わず動かしまくる。

「醜い、まるでゴキブリですね…………こんな醜い女に、お姉さまがっっっ!!!」

”ごぎぃい!!”

「おごごぉおおおお!!!」

さらに圧力が強まり、目を見開き、泡を微かに吹き出しながら痛みで意識が遠くなっていく。

”ふわっ”

「おごっ、え?」

激しい痛みによる視界の明滅。
赤く染まっていきそうな視界。
痛みに飲まれていきそうに身体が震えていたのが一気に解放された。
それも足をどかされた、とかではなく急に全てから解放されたのだ。
さっきまで地を這う虫のような視点だったのに、今は何もない青空が広がっている。

「え? え? ごっ!?」

状況の理解に瞬きしようとした瞬間、背中から固いコンクリートの地面に叩き付けられた。
受け身も何もなく、ただただその場に打ちつけられ、肺から空気が押し出された。

「かっは!!!」

後頭部を打たなかったのは幸いだけど、そんな幸運に感謝することもなく、理解の外の出来事に目を瞬かせる。
…………さっきから、何が、起きてるの?
まずはこのビルにいきなり移動させられ、次にこれだ。
寝ていた状況から一気に落とされる。
投げられたとかではない、そんな感じはまったくなかった。

「薬か…………なに、か?」

眠らさせていたのかも知れない、そうも考えたけれど、それは直ぐに打ち消した。
記憶の中にある空、雲の位置がさっきと秒変化しかしていないところから眠らされて動かされた形跡はない。
と、言うことは―――。

「ぐっ、く、あ…………はぁ、っぁ、はぁ」

痛みすぎる身体に力を込めて、くらくらしそうになる頭を振り身体を起こした。
まだ少し揺れる視界、そこに写る少女。
制服姿の彼女はどこか物憂げに、私に興味ないように空を見ている。

「はぁぁ、はぁ…………はぁ」

空を見る彼女。
目に写る色は青、なのか。
色の意味は何なのだろう。
じっと空を見る彼女を、じっと見る。

「ぐっ、く…………」

見ながら、プルプル震える足を叱咤激励して立ち上がった。
それでも少女は私を見ない。
さっきまでの強すぎて、強すぎて壊れてしまったような目じゃなくて、何もない、空っぽの目で空を見る。
何も入ってない、全て出し尽くした瞳に何かを注ごうとしているように、ただ空を見ていた。

「はぁ、はぁはぁ、はっぁ、はぁ…………んぐ、べっ!」

少し血の混じった痰を吐く。
乾いた唇を、唾液の少ない舌で舐める。
息をゆっくり整える。
そして―――そこで立ち尽くす。
どうしたら良いのか解らないから。

「……………………」

「……………………」

無言で空を見る空っぽな彼女。
無言で少女を見る黒い何かの詰まった私。
無言で何も共有できない時間は過ぎる。
ただただ数メートルの空間を挟んで、動けずに動かずに。

「お姉さまは―――」

「え?」

何秒か、何分か挟んだ時間の先。
空っぽの彼女はぽつりと呟いた。

少女の中に残っている数少ない何かを零したような囁き。
何か凄く大切な言葉だったのかも知れない。
本当にどうでも良い言葉だったのかも知れない。
何にしても私には価値のない、関係のない言葉だったと思う。
きっとさっきの呟きは、私なんかが貰えるものじゃない。
彼女の大切な人に与えられる言葉だった気がする。

”ごっ!!”

「ぶっ!!!?」

間違いなく目を一瞬でも逸らしはしなかった。
だけど、少女は一気にその場から消え去り、それに驚く前に腰に衝撃を感じた。
痛みと認識する前に衝撃を知覚し、そのまま、またコンクリートを転がっていく。
その衝撃で、もう感覚のない足から杭が抜け、コンクリートを転がっていく。
ドロドロの血がついた杭が転がり、地面に血がポタポタ垂れて、溜まった血液が逃げ出す。

「ああ、お姉さま、お姉さま! お姉さま…………お姉さま、おねえ、さま! お姉さま! お姉さまお姉さ、ま! おねえ、さまぁあ! お姉さまお姉さまお姉さまお姉さま!!!」

”ざしゅっ!” ”ぶしゅっ!” ”どっしゅ!”

「あっ! ああ! あがが! ああああああああああああ!!!?!!?」

抜けた杭の埋め合わせをするように手に足に、新しい杭が刺さっていく。
声を追うように何本も何本も刺さっていく。

”ざしゅっ! ざしゅ!” ”ごしゅっ! どしゅぅ!”

「あっああ! ああが! ごがあああああああああ!! ぎぃいいいい!!?!?!」

指に、手の甲に、骨に足の甲に、足の裏に、太ももに!!
絶え間なく降る雨のように杭が穿たれ続ける。
痛いなんて感覚を飛び越して行き、おしっこが漏れ出す。
食いしばった歯の隙間から血の混じった泡が零れた。
目から涙、左目からは少し血色の涙も出ていく。
喉が裂けそうになるほど声をあげる。
人の声では間違いなくない。
獣の叫びですらない。
そんな音を喉から無理矢理押し出して押し出して押し出し尽くす。
本当は手足も痛みに関わらず動かしたい。
だけど、手足に刺さった杭の何本かはコンクリートにも食い込み、その場に標本のように貼り付けにされているので叶わない。

「おねえぇえさまぁぁああああ!!! お姉さまぁぁああ! どうじで! どうじで黒子をおいて、ぇええええええ!!!!」

「ぁっがぎっぃ!!!! ごぎああああああ!!! いがっぁおい!! おおごっかぁぁあああああああ!!!! ぎ!!!」

狂った二人の叫びが輪唱するように重なり混ざっていく。
一方は空に叫び、一方は地面に叫ぶ。
手足、足は確認できていないけれど、手には剣山の様に杭が刺さっている。
血も垂れだし、徐々に命が削られていく。
コンクリートに薄く薄く私の命が広がっていくのを目の写しながら叫ぶ。
少女は髪を振り乱し、地面に杭を取りこぼしながら、何を写したいのかそこら中に視線を走らせ叫ぶ。
もう手に入らない何かを求めて、狂った彼女は叫び尽くす。
私の手足を剣山をしても、それでも満たされない何かがあるのだろう。
失禁しがら、赤みがかった視界で少女を見上げる。
通り越した痛みによりややクリアになった思考。
狂い叫ぶ少女。
自分の半身をもぎ取られたかのように身悶えする彼女。
血を零すように涙を溢れさせ、薄く広がる私の命に混ざっていく。

「あああああ!!!!!!! なんで! おねえざぁぁああああまああああああああ!!」

”ごっ!!!”

「ごべっっぁ!!?」

悶え苦しむ辛さの限界だったのか、綺麗な髪を掻き毟りながら顔を蹴り飛ばして来た。
横っ面を蹴られ、その威力に身体を転げそうになるが―――。

「ぎっぃいいいいい?!?!?!」

―――杭がコンクリートに食い込んでいるのでその場で無理矢理繋ぎ止められる。
それにより傷痕が広げられる激痛に一瞬白目を剥いた。

「お姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまお姉さまあああああぁっぁぁぁああああああああ!!!!!」

白目を剥いたけれど、そこで意識は手放すことなく、狂った叫びに招かれるように覚醒してしまう。

そして、剣山になっている手足に更に杭が穿たれ。
顔を何度も何度も蹴られ、ついは何本かの杭を乱暴に抜く様に地面を転がっていった。
コンクリートに血まみれの杭を何本か残し、肉片を巻きながら転がり、それにより杭が動き痛みにもう声も出せないでいた。

「あああ!!! お姉さま! 教えて下さいまし!! 黒子は黒子はぁぁああ!!!! おねええぁぁああああああああ!!!」

”ごっ! がっ! ごぎぃ!!”

「ぁ…………っぁ、が…………おぐっ!!」

馬乗りになられ、何度も何度も顔を潰すように殴られる。
片目は既に腫れた肉に潰され視界は失われていた。
それでも彼女は拳を止めない。
どうして殴っているかも目的定めぬまま、戸惑い拳を振り下ろす。
何度も何度も何度でも。
答えが解るまで振り下ろす。
反応する体力すらない私の顔を醜く彩、血化粧をする。
そこまでされても、この状況の打破の仕方に答えを見つけられないでいた。
彼女は多分聖杯戦争にまったく関係ないのだろう。
ただ、自分の『大切』を汚した者に復讐しに来たのだろう。
大切な愛する尊敬できる人物を縊り殺した相手をぶち殺したくて今ここにいる。
そんな彼女に何をして良いのだろうか?
このまま殺される―――訳にはいかない。
だけれども、彼女を打破する―――殺す―――訳にはいかない。
だって、彼女は何も悪くないんだから。
だって、彼女の行為は正当なのだから。
だって、私だってそうするだろうから。
だって、だって、だって、だって、だって――――――。

「おねえ、さまっ…………んぐっ! あ、ひぐ…………あああ!!!」

――――――彼女は泣いているから。

今日はここまでです。


もののみごとに発狂してるな

ところでインさん、この場を切り抜けても再起不能に近いんじゃ無かろうか
ここのセイバーは、アヴァロン持ってたっけ?

きついな・・・

>>563
どちらがどう出るかはまだ未定に近いですね

>>574
何となくこうなってしまうかなぁといった感じですね

>>575
アヴァロンは残念ながら保持していませんね

>>576
すみません、毎度こんなノリで
もう一方のスレで癒せればと

インデックスの致命率が半端ない

とりあえずおねしょパンツでもはいとけ

正直リョナ好きにはたまらんわ

あ?あまたもらしたよこの子

いくらなんでも、そんなには出ないんじゃと思う時もあるが……
ぶっちゃけ下の描写は>>1さんの性癖なんじゃないかとか疑いたくなるかも
いや、そうでも一向に構いませんが

いや、ガチの話し出るよ、おしっこ
痛みとか恐怖を引き金に簡単に
女性はとくにその気が強いらしいよ


危機的状況に陥ると身体を軽くしようと出すって話とか、恐怖で身体のコントロールがバカになって出るらしい
何にせよ更新待ってます

女って歳とるとくしゃみでちょっと漏れるからな

投下します。

”どじゅうぅうううううう!!!!”

何度目かの光の槍。
破壊は広がり、既に私の周囲は瓦礫の山となっていた。
その瓦礫の戦場の中で不可視の鎧を纏った少女と対峙し続ける。

「……………………」

繰り返すようだけれど、この少女、この敵を打ち倒すのはさほど難しい話ではない。
インデックスが授けてくれた戦法をすれば苦も無く胴と首を泣き別れさせることが出来るだろう。
だけれども―――。

”どじゅっずがががががががががが!!!”

「っ! またか!」

こちらの戦闘を邪魔するように降り注ぐ光の槍。
これがどうにも厄介だ。
その一撃の威力もさることながら、それ故の威圧感。
制圧感がとてつもない。
さらに、さっきから放たれる位置が常に変わっていて術者の場所を掴めないでいた。
私の読みでは、この頑強な少女がいる以上直接の砲撃はないと踏んでいる。
おそらく狙撃で意識を攪乱しつつ、この少女が責める形なのだろう。
もしくは少女の一撃で私を昏倒させ、そこに光の槍か。
どちらにしろ二人そろっての戦法を組み込んでいるに違いない。
それが今までの戦闘で弾き出した私なりの結論だ。
そして解決法、攻略法はある。
二人揃っての戦法ならば、それを崩してやれば良いだけの話。
だけど、崩すにしても最初に光の槍の術者を崩さなくてはならない。
何故なら、今はこの少女のおかげで直接の砲撃はないけれど、もし撃破してしまえば次に直接狙ってくることは想像に難くない。
位置の解らない移動砲台のからの狙撃、考えるだけで恐怖を感じる。
しかもその一撃は致命の一撃になりえる威力を秘めているのだ。

「厄介な組み合わせだ…………」

倒すのに時間のかかる鎧と、移動砲台。
鎧だけなら十分倒せるが、それを許さない砲台。
それに、さっきから連撃で少女を斬ろうとはしているが、タイミング良い砲撃で上手いこと逃げられてしまっていた。
気付けば周囲は瓦礫、一般人のざわめきや、それを止める警邏の声が聞こえだしてもいる。
ここは無理に戦闘を長引かせず、インデックスと合流して逃げるのも吉と考えてはいるけれど―――。

”ぼっ! どじゅううぅううううぅうううぅうう!!”

「っ!」

―――この容赦のない光の槍。
これがそれを許さない。
距離の取り方、少しでも退く様な動きを見せるとその退路近辺を破壊してくるのだ。
それは言外に逃がさないというアピールには違いない。
これは間違いなく挑発であり挑戦だ。
そうこいつらは私に「逃げるな」と言ってきている。
冷静に考えればそんな挑発に乗るのは愚策と解っている。
ここにインデックス、マスターがいれば間違いなくその愚策を否定するだろ。
そして否定して貰えるならばそれに従うことも可能だ。
だがしかし、今この場にマスターは不在。
その上でのこの挑発―――。

「っふ!」

「ままままままままだまだぁぁぁぁああああ!!!!」

”がぎぃっん!!”

「ぜっはぁぁぁあああああ!!!」

―――受けない訳にはいかない!
騎士として、自分の意地ではなく。
私は剣、この身は騎士、主に仕えた騎士なのだ!
その騎士が挑発に背を向けるなど恥の極みだ!!!

突撃してきた少女の腹部に一閃。
当然のように不可視の鎧で防がれ、そのまま威力を殺すように彼女は吹き飛び距離を開けた。
この距離をそのままにしていては狙撃される可能性は高い。
そう判断して咄嗟に距離を詰める!

”ばっ!”

瓦礫を弾き飛ばしながら剣を下段に構え突撃していく中で、周囲に意識を分散させていく。
今どこに術者がいるのか、その位置を探ろうと、微かな気配の揺らぎを読み取ろうと、自分と言う意識を薄く薄く伸ばし広げる。

「すすすすすす隙超ありですすすすすすすすすす!」

「っ!」

”ぎぃんっ!”

気配を探るのに集中しようとしても、目の前にはこの敵がいる。
遅れを取るような相手ではまったくと言って良いほど無い。
不可視の鎧は実に珍妙で強固であったとしても、それを所持する少女の戦闘技量は低い。
その能力を生かす術はそれなりに心得てはいるようだけれど、戦士としての練度はまだまだだ。
だけれども、周囲に気を配りながら相手するのは難しい。
かといって術者を倒す前に切り捨てるのもまた危険。

「厄介であることは、間違いないな!!」

相手と言うより状況がやっかり極まりない。
せめてもの助けはインデックスがこの場にいないことだろう。
もし、ここに彼女がいれば光の槍の餌食になってしまうこともありえた。
それだけを掬いと思っておこう。
剣を再び構え直し、安直な突進を繰り返すだけの少女と向き合った。

「ふっ! ぜっぁああああ!!」

大地を駆け、私も私で何回目かの愚直な突進を開始した。

…………。
……………………。
………………………………。

「あ…………あ…………が、あ」

「おえねぇざまぁあ! おねえざまぁあああ!!!」

”ごすっ! がすっ! ごぎぃっ! ぼごっ!”

「あっ…………が…………あ…………」

青い空の下。
綺麗な白い雲の流れる場所。
地面より遥かに空に近く、だけどそこはまだ空じゃない。
そんな広くて心地良い場所で、大の字に熱転がったままツインテールの少女の拳をその顔に受け続けていた。
何発目か数えてすらいないけれど思い出せる回数。
鼻水を垂らしながら泣く少女の小さな拳を受け続けた私の顔は赤黒く変色していた。
瞼は碌に開かなくて、頬も大きく腫れ、多分頬骨が折れている。
鼻は血で詰まり、痛みから察するに曲がり折れていて。前歯も数本折れているみたいで、口の中でカラカラ転がっていた。
もう全身どこもかしこも動かない。
手足は杭がいくつも穿たれ痛みすら薄くなっているし、手に至っては片方の小指が千切れかかっている。
満身創痍ってきっとこんなことを言うんだと思う。
満身創痍、ここまでされたら後は自然に死を迎えるしかない、だけど彼女は拳を止めない。

”ごっ!”

「おごっ…………」

「おえね、えざぁまぁ!!」

小さくて綺麗だった彼女の拳は血に塗れて、拳頭は白い骨が見えている。
両手共々そんな状況で、多分砕けている。
もう拳にすらなりえない、そんなものを泣きながら何度も何度も私の顔に押し付けてくる。
痛みなんか吹き飛んでいるんだろう。
苦しみなんか問題じゃないんだろう。
どうしたら良いか解らないんだろう。
出来ることがそれしかないんだろう。
だから彼女は泣きながら拳を振るい続ける。

「はっぁ! はぁはぁはぁ…………はぁ…………はぁ! くっ!」

”ごすっ!”

「おっ…………」

「はぁ…………はぁ…………はぁ…………はぁはぁ」

最後の一撃なのか、休みなく拳を振るい続けた彼女は拳振るうとフラフラと私の上から退いた。
狭まり、片方は赤く染まった視界で微かに捉えた彼女の顔は真っ青だった。
休みの無い運動による酸欠か、それとも過呼吸か、そんな心配をする程度の思考力は私にあった。
いや、今の私にはそれくらいしか出来ない。
思考の果て、思考の先、思考の東端。
立ち上がった彼女は何を思い何を見る?
空しさか、それとも飽きか。
見つからない答えの解答欄か。
殴り終えて、自分の大事な人を殺した私を殺さず彼女は何を思う。
手足が動かず目もほとんど見えていないし、口もきけない。
こんな状況でも動いてくれるのは脳みそだけ。
その脳みそも思考を回すのを億劫に思っているのか、妙に眠い。

「……………………」

”ごりぃっ!!”

「がっ!!」

その眠気を吹き飛ばすようにさっきまでの単調なメトロノームのような拳ではない重く固い何かが鳩尾に落とされた。
肺から空気が漏れ、咄嗟に痛みの先を目で追えば、そこには細い足があった。
細い足の持ち主は、さっきまでの拳を振ることだけが全てだった少女。
潰れた両手をだらんとさせてまま、真っ青な顔で再び足を上げ―――。

”ごずぅん!!”

「おごぉっ!!」

―――叩き込んだ!!

もう痛みなんかとっくにどこか違う世界に吹き飛ばしたと思っていたのに、新しい苦痛はそれを呼び起こす。
彼女が立ち上がったのは満足や、空しさではなく、潰れた拳では満足に私にダメージを与えられないから、足に切り替えただけの話だった。
実に正しく実に合理的な判断だ。
新しい苦痛は慣れを忘れさえ、より新鮮な苦痛を与えることが出来る。
つまり彼女の思考は最初から、どれだけ狂い乱れても変わらず私殺すことなのだろう。
しかも、出来るだけ苦しめじわじわと、端から寸刻みにするように。
そんな殺害を望んでいるんだろう。

”どずっ!”

「ぶっ! はっぁ!」

「ああ、何で、お姉さまはこのような豚の手に…………」

つま先が脇腹に刺さり、苦痛に身体が揺れた。
彼女のいない誰かに語る一人語りを聞くこともせず、痛みに脳みそを明滅させる。
明滅させる思考で私はやっと現状の打破を考えだしていた。
彼女が私を痛めつけるのが目的であればそれは問題はない。
この身で良ければ差し出すことくらいは何でもない。
だけれども、私を殺すとなるとまた違う問題だ。
私を殺すということは、とうまを殺すに繋がる。
今のどこかで私の助けを求めているかも知れない彼を助けられなくなる。
それだけはどうしても譲れない、こんな汚物みたいな汚い私の最後の一線だ。
それを守るためな―――。

”ごりっ!!”

「ひぐあっぁ!!」

―――ら、彼女を殺そう。
みことをそうしたように、ただそのままま処理してしまおう。
振り下ろされる足、引き起こされる痛みに血混じりの泡を吐きつつ、そっと、勝手に殺すと、思考が吠えだしていた。

今日はここまでです。

縺翫▽

嗚呼・・・

インデックスやばいだろこれ・・・

むぎのんと絹旗のコンビって案外やっかいなんだな、アイテムはむぎのん最強感があったから、ちょっと意外
相変わらず乙

絹旗の様子と黒子の状態からして、今の黒幕というか、表に出てきてない連中ってあいつらか? 
と思ってんだけど、どうなんだろ……

投下します。

お姉さまが死んだ。
そう告げられとき、私はその言葉の意味がまったく理解出来なかった。
聞いたことのある日本語の組み合わせ。
『お姉さま』と『死んだ』この二つが脳内でまったく融合しなかった。
もはや私の中でその二語は一生出会うことなく、存在同士が銀河寸法で乖離していたからだ。
故に、その言葉を何とか理解して最初に行ったことは、そのようなあり得ない嘘を告げてきた親友を殴り飛ばすことだった。
嘘である冗談である、そう思ったとしても許せないことはある。
だから、信頼している友であり相棒である彼女、初春飾利の顔に固めた拳をぶつけた。
それくらいしないと言葉を否定できなかったから。
それほどここ最近のお姉さま異常だった。
かつても何度か危ない事柄に自分から向かい、私を心配させることはあったけれど、今回のそれは桁が違った。
今までなら披露していても何処かにまだ余裕があった。
腹立たしいことではあるけれど、お姉さまが思いを寄せる類人猿が助けの手を伸ばしていたから。
だけど、今回はそれが無かった。
助けの手―――止める腕―――が無かったから、お姉さまはどこまでもどこまでも、自分の能力の枠を超えるまで行動をしてしまっていた。
碌に寮にも帰らず、ボロボロの身体で独り言を延々呟くお姉さまの眼は濁っていた。
濁っていても、それでも強い何かが奥で光っていた。
強い意志、それを持って今回も無事黒子の元に戻ってきてくれる、そう信じていた。
信じなければやっていけなかった。
でも、それは裏切られた。
最悪も最悪。
お姉さまと言う∞が0になった。
怯える親友の顔を殴り続けていた頃にやってきた先輩に止められ、そこで再びお姉さまの死を知らされた。
絶望ともまた違う。

足元が崩れる―――。

―――そんなもんじゃない。

目の前が真っ暗に―――。

―――その程度の訳がない。

死にたくなる―――。

―――勝手に死ね。

一瞬にして語感が全て暴力的に潰されたような感覚に、私は気絶した。
私はここまで弱かったのか、風紀委員として研鑽を積み、火急の事態にはお姉さまでさえ捕縛する腹積もりでいたというのに。
私はどこまでも小さく、小さく、そして虫のように弱かった。

目が覚めたときは、正確は正気を取り戻したときには病院で、私はベッドにベルトで括られ眠らされていた。
医者が言うには、私はここ数日気絶と暴走を繰り返し、お見舞いに来た友人らに暴力を振るい、この隔離病室に移されたのだという。
その話を聞いても「申し訳ない」とか「なんてことをしてしまった」なんて普通の感情は湧いてこなかった。
だってこの世界にはもうお姉さまがいないのだから。
そのまま私は抜け殻のように過ごした。
二度ほどお見舞いに誰か来ていたけれど、そんなの何の意味もない。
ただ日がな呆然と、ただ漫然と何もない日々を過ごした。
食事も取らず、点滴によって意味なく生かさせる日々を享受していたある日。
病室に一人の男が入ってきた。
まったく面識なんかない男だったけれど、警戒することも気にすることもなく受け入れた。
いや、受け入れたと言うより意識の外だった。
私の世界、意識は壊れきってしまっていたから、多分あのときはゆっくり刃物で心臓を刺されても抵抗なく死んだことだろう。
それくらいもうどうでも良かった私に、その男はそっと告げてきた。

「御坂美琴の死について知りたくないか?」

壊れきったはずの世界。
私の中にあった明るい世界、もう壊れたその世界。
そこに闇がそっと影を伸ばした。
彼はニヤリと笑ったそんな気がした。
その男はまだ高校生くらいに見えたけれど、服装や髪形のせいで詳しい年齢は計りかねた。
だけど、そんあことは重要ではない。
私が知りたいのは男のことではない、お姉さまもこと。
彼が語る言葉を真剣に脳に刻んだ。
お姉さまが参加していた荒唐無稽だけども確かな戦争。
そして、その戦争に参加していた相手。
お姉さまの死、否!!!
お姉さまを殺したクソ豚の存在を!!!!
その日の内に病院を抜け出した私は風紀委員の詰所に走った。
食事もまともに取っていなかったので、目の前がクラクラしたけれど、回復を待つような悠長なことは出来ない。
だって、今日まで何もしなかったのだから。
お姉さまを殺したクズの存在を数日も見過ごしたいたなんて許しがたい!!

詰所にいたのは可愛らしい顔をガーゼで覆った友人。
私の姿に驚き、怯える彼女に『お願い』をした。
ここ数日の学園都市で起きた以上についての調査を。
かなり違法な手口ではあるけれど親友は『快く』引き受けてくれた。
持つべきものは友だとそう実感した。
親友から得た情報を元に、学園都市を飛び回った。
隅から隅へ。
時に聞き込み調査をしながらどうにかクソ豚の存在を追い回して数日。
私はついに見つけた。
お姉さまをどうしょうもないくらいにブチ殺してくれた豚を。
その豚を私は今―――。

”ごりぃっ!”

「ぅごぉっぇぇえ!!!」

―――踏みつけている。

「醜い声ですの」

手足に刺してあげた金属矢のせいか、まともに動けもしない豚は、デコボコで醜い顔面を化け物みたいに揺らして汚い口からドブみたいな血反吐を垂れ流していた。
見ているだけで不快になる。
汚物を殴ったせいで潰れた拳の痛みも合わさって立っていられない不快感。
そして、いくら痛めつけても晴れない私の心。
この行為の無意味さは始める前から理解していた、だけど―――。

「この豚に殺されたお姉さまの痛み苦しみ無念おぞましさ少しでも味わっていただきたいですのっっっ!!!」

”ごっぁ!”

「んぶっぁ!?」

踵を使って精一杯体重を込めた踏みつけて外も内部もグチャグチャにして行く。
死にたいと思っても死なない程度にじっくりじっくり命を端から刻み殺す。
それが私の出来る唯一のお姉さまへの手向け―――。

―――そう信じて。
……………………。
…………・
……。

……。
…………。
……………………。

「あっ! がっぁ! おっぁ! うげぇぇええええ!!!」

内臓を直接踏みつけられているような痛みに血混じりの泡を吹きながら考える。
この少女を、この敵を私の手で●す方法を。
セイバーを呼び、排除するのではなく。
みことを●したように、この手で。
手は―――。

―――動かない。

杭がいくつも刺さり、痛みすらどこかに消えてしまっている。
ただ身体から生えているに過ぎない。

足は―――。

―――動かない。

こちらも杭が刺さりに刺さり、まともな動きは期待できないけれど、それでも手よりまし。
痛みの脈を感じることが出来るから、上手くすれば動かすことも可能だろう。
身体の各部位を非常に冷静な頭でチェックしていく。
相変わらずジリ貧状態。
ギリギリの瀬戸際の戦い。
たまには華麗に勝ってみたい。
いや、泥臭くても誰かが認めてくれる、そう、とうまみたいな華のある勝利を納めてみたい。
誰かの為に血を流し、その血で誰かを導く。
光り輝く英血の勝利を私の手に欲しい。

”ごずっぅ!”

「んっぶっぼがぁぁあ!!!」

「まだまだ元気は有り余ってらっしゃるようですの」

だけど、多分そんな栄光の勝利は私には似合わないのだろう。
だから、どこまでもギリギリで。
地べたを這いずるように、ドブから拾うように!!

――――――勝利をこの手に!!!!!。

決意は一瞬。
行動に移れば決意はその瞬間に過去の分岐点に。

「おっぁ…………ふぅぅぅう…………」

痛む喉を無理にこじ開ける。
四神八卦の呼吸に従い無理矢理体内に気を取り込む。
潰れかけた目で少女が足を持ち上げ、再び振り下ろすタイミングを見極める。
ボロボロの身体、動く場所を限界まで、使える場所を擦り切れるまで。
どこまで行っても肉体はひとつ。
それがどこまで傷つき動かなかったとしても、それは一個の命。
燃え尽き、輪廻の流れに飲まれるまで常世の謳う鳥。

生きているのだから不可能なんかない!!!

”すっ!!”

「ふっっっっっっ!!!!!」

呼吸を整え、急ごしらえの丹田気。
さっきから狙ってくるのは鳩尾、そこが一番的確にダメージを与えられる場所だからだろう。
そこにしか攻撃が来ないと言うのなら、それを防ぐのは簡単極まりない!!

”ごっ!!”

「は、な、きゃ?!」

「ぐふっ!! かはっぁ!!」

溜めた気を一気に放出、踏みつけに対抗する勢いで、私の”内部”から衝撃を加えた。
無論急ごしらえの気と物理的な踏みつけでは、相殺は不可能だったけれど、相手は不意をつかれバランスを崩した。
気の放出、しかも比較的簡単な掌ではなく水月付近からの発勁に体内の気流乱れ口から血が噴き出た。
だけどそのおかげで血反吐が詰まった喉が完全開いた。
相手は少しバランスを崩しただけ、数秒の猶予もない、痛みを振り切る。
気流の荒れ狂う身体を無理に動かす。

「基本骨子、解明、媒体接続、強化開始!」

幸いにも血を流しに流したおかげで触媒には事足りない。
何とか動く指先でまずは片手の強化。
骨軋み、筋肉が震えだす。
その手で手早く手足にも同じく強化を施していく。
骨の強度を引き上げ、筋肉の動きを無理に倍化。
関節強度も強化して、死にかけの身体を無理に戦闘仕様にまで拵えた。
ここまでざっと4秒。
それでもまだ身体は横たえたままだ。

「こっのっ!! 死にかけの豚が何をしたんですのっっっ!!!!」

やられるだけの弱者の反撃に激昂した彼女はさっきまで以上に足を高く上げた。
多分踵落としをぶち込むつもりなのだろうけれど、それは失策だ。
さっきまでの踏みつけより断然攻撃予兆が大きく、予備動作に時間がかかる技なんて見切る以前の問題だ。

”ずしゅっ!”

強化された手、指が千切れかけている汚らしい手で反対の腕に刺さった杭を引き抜いた。

「なっ!? ま!」

それを私に向かってくる足に突出し―――。

”ざしゅっ!!”

「ぎゃぉぁぁああああ!?!?!?!」

「―――反撃、開始、なんだよ」

悶える敵の前に、血を滴らせ立ち上がった。
命と命のぶつけ合いを始める為に。

今日はここまでです。

乙ですの


しっかし、出るキャラ出るキャラやべぇな
血み泥バトルが巧すぎでしょ

鮮やかな反撃過ぎてなぜここまでボロボロにされたのかが謎に思えるレベル

泥臭く熱い展開… この戦争の後インちゃんどうなってまうん…?

投下します。

「あっぁ、ああああぁぁああ!! ぐっか!? ご、この、豚ぁぁああ!!」

「ふっ! ふぅぅううううう!!」

振り下ろされた足にカウンターで杭を刺してその場から一気に距離を取る。
強化の魔術で無理矢理動かしている手足は軋みを上げ、骨が端から削れていく。
その痛みを呼吸で何とか緩和して、ギリギリのラインで倒れることを踏みとどまる。
自分の杭を足に貫通する勢いで刺された少女は出血部位を抑えて、獣さながらの目で蹲りながら睨みを利かせる。
その眼に純粋に恐怖を覚えたけれど、それだからと言って止まる訳にはいかない。
止まれない止まらない止まる気なんてない。
みことを殺したときににじみ出た黒い黒い何かが出てきたから。
私の身体のどこかで蓋をして見ないようにしてきた黒くてドロドロして熱くて、それでいて大きな何かが湧き出た湧き出た。
もう蓋は無い。
蓋を閉められない何も出来ない、きっとこの黒いものは私を覆い尽くす。
それでも良いんだ。
この戦いを勝つためには、聖杯戦争を終結させる為にはこの黒いモノが多分必要だから。
身を任せよう黒い流れに。
押さえつけるのは止めよう、蓋もいらない。
これは私が生み出した私―――いや、私の中にあったものだ。
この黒いものは私だ。
だとしたら、文句なんかない。
全身全霊を持って戦う以上、これも使わなくてはいけない。

”がりっ”

「!? あなた、な、にを?」

”ぐちゅ、んぐ、ごりっ、がり、もぐ、んが”

「ごくんっ」

片手、一本の千切れかけの指を齧り、噛み砕き飲み込んだ。
意味なんてない、威嚇でもない、ただ何かに牙を立てたかった。
鬨の声、スタートホイッスル、よーいどん。
ただ、それだけ。
動き出すための最初の一歩、それが牙を立てること。
飲み込んだ自分の指。
長さが半分ほどになってしまった残った指。
気味が悪い物を見るようにこちらを見る敵。
ああ、何かが回っていく世界が回っていく。

戦争だ戦争だ戦争をしよう戦争だ。
意志のぶつけ合いなら決闘で。
命の削り合いなら殺し合い。
戦うことに意義があるなら闘争で。
大義があるならそれは戦争だ。
私にはその大義がある
誰より大事なあの人を救うための大義がある。
何より大事なこの思いが胸にしっかりとある。
だからこれは戦争だ。
そして敵にも大義はある。
大事な人を殺された復讐。
十分だ、十分以上の大義だ。
十分以上の戦争だ。
これまでに無いくらい純粋な戦争だ。
大きさじゃない規模じゃない、これが戦争だ!!

「べっ! ふっ!」

”びちゃっ!”

地面に血と痰と肉のカクテル吐き出すと同時に駆け出す!
強化された、金属の杭がこれでも可と刺さりまくった手足を全力駆動!
血を撒き、滴らせながら短い距離を一気に詰める。

「っ!」

敵は急激な反撃にまだ迎撃の準備が整わないのか、杭の刺さった足を庇いながら一歩引いた。
その動きを見ながら、等速で進む世界を置き去りにする速度をで脳内を回す。
今までの少女の動き、そして何より転移魔術のような動き。
その場から一瞬で消え去り、瞬きの間に違う方向より現れる、おそらく超能力の一種。
それを読み切らねば勝利は難しいだろう。
さて、どうする、さてどう読む?
体調万全ならば、実験的な行為も可能だったけれど、自業自得に現在満身創痍。
多分長引けば普通に死ぬ状態だ。
下手な衝撃はその時間を縮めかねない。
と、なると推測予測考え未来計算。
少ない、少なすぎるデータをもとに彼女の能力、行動パターン、思考ルートを読み切るしかない。
難しかろうがやるしかない、殺るしかない、殺るんだ。

今までの行動データから、能力の詳細を予測。
彼女が起こしてきた減少、それは転移、瞬間移動、そう呼ばれる類の能力だろう。
その最大移動距離は、おそらく30m以上だ。
このビルまで一瞬で私を運んだことを考えれば、そのくらいが妥当。
重量に関しては私の体重より上、もしくは制限などないのかも知れない。
そして限度回数はおそらくある、だけど、それはかなり多い数値だろう。
転移なんて言う秘匿神秘でも届かない奇跡のような行為を繰り返しながら、彼女には目に見えた疲労はない。
だけど、繰り返す度にほんの、ほんの微かだけれど疲労が蓄積されているように見える。
肉体的な疲労と言うよりかは連続的な思考回転の末の疲労という感じだ。
それ故に読みにくく、なにより限度の予測が難しい。
次に能力の発動に必要な距離は、おそらく接触だろう。
彼女自身の転移以外、私と手足に刺さる杭だけれど、それぞれ触れた、手に触れた状態から転移させられた。
これが手、なのか、それとも肌に触れた場合によるのかの読みはまだ不明だ。
だけど、おそらく手が一番やり易い、やり慣れているのだろう。
超能力は、個人の能力の延長と言う話をこもえに聞いたことがある。
それはつまり一定のルールと縛りがあるはず。
彼女の場合は『手で触れる』これがそのルールに当たるのではないかと予測できる。
と、なれば、警戒すべきはその両手だ。
そして重要なのは集中を乱すこと。
彼女ら、超能力者の能力行使は事象演算によるもにらしい。
だとしたらその演算には集中力を要するだろう。
私は学園都市の開発を受けていないから、その集中の練度が読み切れていない。
能力を起こす為の集中が、少し考える程度、もしくは無意識化の公式的数式のように、掛け算九九の答えの用に計算する間もなく弾きだされるのか。
それとも、難解な問題を紐解く様に、頭をひねり、頭脳を総動員させるものなのかはまだ知らない。
これもまた勉強不足、幸せな、守られる位置に甘えていたからこそ胡坐をかいたツケだ。
この街で戦う、この街で生き抜く為には必要なハズの知識。
それらを私はあまりにも知らない。
だから、変わろう。
この体内を踊る黒い流れに乗って変わろう、どこまでも。

――――――以上思考終了。

以下行動開始――――――。

「ふっ!」

接近。
まずは接敵!
こちらに有効な遠距離攻撃能力はなく、相手には30m以上の遠距離攻撃がある。
だとしたらまずはどこまでも近づいていくしかない。
腕力や脚力ならば、強化魔術を施しているこちらに部があるだろう。
技術、格闘の知識ならば頭の中にいくつもある!

「っぁ!!」

「なっ!?」

”びちゃっ!”

まずは腕を大きく振るい、流れ出る血液を顔に飛ばす。
それと同時に一気に体勢を低く、獣のように這いつくばり―――。

「ぉっ、こっ、目つぶしなどっ!」

「ふっ!!」

”ごっ!”

―――手を床につき、そこを軸にした水面蹴り!

「ぎっぁ!?」

目つぶしで視界を奪い、即座に予想外の位置からの蹴り。
これにより相手の集中力思考力を削ぐ―――しかも!

”ずぶっ!”

「ぎぃいい!?」

「ぐぅうう…………!!!」

私の足は現在杭のせいでスパイク状態。
威力は減少しても苦痛は倍増以上!
一本の杭を相手の足に移し替え、そのまま転がるように後退をする。

「ふぅぅうううぅう……………………っ」

杭の抜けた部分からの出血は少ない。
良くない傾向だ。
血液全体の量が減り、圧力が低くなってきている。
呼吸も浅く速くなっている、だけど肺が苦しい。
酸素が回っていないんだ。
やっぱり時間がない、どこまでも時間が無さすぎる。

「こっ……………………」

足に二本目の杭を刺された相手は蹲り、血液の付着した目元を拭っている。
この距離感、再び接近!
震える足でさっきと同じように距離を詰める。
血が落ちるより早く。
地面に紋を刻むより前に!

「…………基本骨子解析・強化開始」

血に塗れた腕を振りかぶり、血液を飛ばす。
狙うのはさっきと同じく顔だ。

「っ! 何度も同じ手が―――」

向こうもそれなりに心得はあるようで、直ぐに顔をの前に手を配置した。
血液、液体の防御、としては十分だろう。
『液体』の防御としては。

”ざくぅ!”

「―――は、ぎ?! ああああああああ!!」

血液の強化、硬化凝固作用の強化により、血は液体から固体、礫に変わる。
それを高速で振りぬけば、女の子の柔肌には十分以上に刺る。
だけど死ぬほどじゃない、命に係わるほどじゃない。
ただ一瞬思考の邪魔が出来ればそれで十分だ。
相手の能力は強大だ、でも、それを行使されないように戦えば―――。

「it is the same as ascarecrow」

―――案山子と一緒だ。

強化した拳、凝固した血液を纏わせたそれが少女の鳩尾を打貫いた!!

今日はここまでです。

>>578
中々華々しい勝ちは難しいですね
格好よくびしっと勝ったりも好きなんですけど

おむつは好きです

>>579
ああ、そう言う需要もあったんですね

>>580
結構漏れます

>>582
これくらいは結構漏れるそうですね
自動車事故、軽いものでも結構な確率で出ると聞きましたし
私も出ました

>>583
なるほど、そんな側面もあるんですね

>>584
若い内からそれなら素敵ですね

>>594
しめ鯖


>>595
少しハード路線に行ってます

>>596
ありがとうございます、励みになります

>>597
そうですね、結構とあるもfateも一体一だったり、順番に戦うことが多いので組み合わせてみました
level5と、それ以下の開きが有りすぎるから仕方ないんでしょうね

>>598
今の所はそこは悩みどこですね、直で出すか、一枚挟むか、みたいに

>>607
ありがとうございます、レスがつくと嬉しいです

>>608
少し、ノーマルな方が少ない状況ですね
血みどろは、趣味です

>>609
悩んでいた状態ですね
関係ない相手をやってしまって良いのか、って

>>610
どうにかなってしまうかも知れないですね


サーヴァントはstaynightキャラなのに
話はzeroみたいにどろどろしてるな

ウェイバーたんポジの人がいないからzeroよりきつい

サーヴァントよりインデックスの戦いっぷりが読んでて楽しい
fate本編だとマスターvsマスターとかあんまりなかったから

投下します。

「ごっぁがっ…………」

「…………ふぅうう」

敵の鳩尾を的確に付いた拳。
強化で筋力を底上げ、そして凝固させた血液のグローブをしての一撃。
それは細く小柄な女の子の戦闘能力を補ってあまりある一撃だ。

「おえぇえおぶげぇぇえっ!!!」

”びちゃっ! びちゃびちゃっ!”

吐き出される胃液。
内容物の無さから、数日食事も採っていなかったことが予測できる。
だけど、それは何の感慨も私に与えてくれない。
私は与えなくてはいけないから――――――。

「じゃあ、殺すね」

――――――確実な死を。

”べきぃっ!”

「ごっぁ!? ぎぃいい!?」

蹴り。
強化した足、血が流れに流れ、穴だらけの足で相手の脛を容赦なく砕く。
それに伴い、こちらの足も同じく砕ける。
相手は跪き―――。

―――私は立っている。
骨が砕けても立てる。
意志の力?
違う。
これは欲望の成したことだ。
この戦いに戦争に勝ちたいという欲望の表れだ。
欲望があれば人は、人体は、簡単には屈しない!

屈しない折れない曲がらない。
自分がその域に達していれば。
相手を屈させ心を折り骨を曲げる程度簡単だ。

”ごぎぃ!!”

「ぎゃっがっぁあ!??!!??!」

蹲ってる相手の足を踏みつぶす―――。

”ごぎりぃっ!”

―――念入りに。
この少女の瞬間移動能力を侮る訳にはいかない。
だから死の淵ギリギリまで油断せず、油断のないまま殺す。
嬲るような形になってしまっていることには凄く詫びたい気持ちはあるけれど、それも今やどこか遠い感情。
私の中に渦巻く黒い何か以外は全てが遠い。
暴力的な感情ではない。
相手を痛めつけてそれに快感を得るとか、人を壊す言い訳の感覚ではない。
ただ、黒い。
ひたすらに黒い何かが私の中に存在して、今やそれは毛先にまで通ってしまっている。
感覚のない指先にもその黒さはめぐっていた。
冷静に冷静に、感情を遠くへどこかへ。

”ごっ!”

「あぶっ!?」

後頭部に蹴りを入れ思考を鈍らせる。
続けて踵で側頭部を斜めから蹴り、脳みそを揺らす。
どんな人間でも脳が揺れてる状況で思考なんか出来やしない。
考えることが出来なければ超能力の発動は起きない。
その瞬間を狙い、肩を踏み抜く!

”ごぎぃ!!”

「ぁっ! おごぉおおお?!?!」

容赦なく体重をかけ踏み抜くと、足に刺さっていた杭が一本抜け落ちた。
そして容赦なくグリっ! と回転をかけ、関節破壊!
こいつの能力の発動形式から考えて腕の破壊は迅速に!

「ふっ! ぐっ!」

掴まれる訳にはいかない、もし彼女の能力で中空に瞬間移動させられたら間違いなく必殺の一撃になるだろうから。
その為には―――!!

”ずりゅっ!”

「ぐっ!」

―――手から一本杭を引き抜く!
それを強化した腕力で微かに曲げて、彼女の細い腕に振り下ろす!

”ざくっ!”

「ぎぃっ!?」

腕に刺すと同時に捻り、曲がった杭をフック代わりに腕を持ち上げ、肌に、腕に触れないように気をつけながら―――。

”べきぃっ!”

「あっぁがががががががああ!!!」

―――肘を破壊する!
痛みで脳を麻痺停止させている間に両足と腕一本の破壊。

「ふぅ…………」

ここまでやれば相手は芋虫。
だけど同時に、ここまでやってしまえば相手はもう引っ込むことはなくなる。
この時点で戦意の喪失が無ければ一番危険な状態。

「あがっか、かはっ! い、たぃっ、腕が、足が、ぁぁあああ!!!」

「……………………」

うつ伏せのまま碌に動かない手足をジタバタさせながら泣く姿を観察する。
彼女の次の行動を予測、そして最後の一撃の為に。

「痛いっ、いたいぃっ、お姉さまっぁ! おねえさまぁ…………」

嘆く小さな少女を見下し、震える小さな背中を見つめる。
復讐の為に削りに削った心が折れたかのように、涙を流し続ける哀れな姿。

「っ」

その背中に、そっと手を伸ばした。
……………………。
…………。

足を折られた、足を折られた。
頭を蹴られた、頭を蹴られた。
手を刺され、更に腕を壊された。
念入りに執拗に、白い修道服を着ているのに黒く見える豚女に壊された。
お姉さまを奪われた復讐に来たはずが、気付けば地面を這いつくばる。
しかも、しかも、しかも、一度は殺す寸前までいった相手に、だ。
友を殴り、使い捨て、矜持すら唾を吐きかけやってきた先でこの滑稽さ。
涙はいくら出ても足りない。
泣いても泣いても心はまったく晴れず、ただ涙の分だけ空しさが蓄積していく。
この胸の苦しみ、もし転げまわれたら少しは軽くなるのだろうけれど、手足がこれではそれも出来ない。
そんな私に何を感じたのか、豚はそっと優しげですらある所作で手を伸ばしてきた。
最初私に殺されようとした、投げ出すような優しさの手を―――――――――。


―――――――――狙うっっっ!!!

残ったのは片腕だけ?
それで十分!!
演算は既に終了している、この醜い豚足を掴み、上空80mまで空間移動させる!
嬲り殺せないのが心残りではあるけれど。


          殺す。
……………………。
…………。

「っ!」

”すっ!”

ノールックで迫る手。
折っていない片方の手が血で湿る私の手に迫る!

「くっ!」

だけど不意打ち気味とは言え、手を後ろに回す動き、どうしても遅くなるのは必然だ。
こちらの身体も万全とは言えなくても強化魔術は施してある。
感覚は途切れていても思考の内側で動かせる。
この速度なら―――。

―――躱せる!!

手首辺りを狙って伸ばされた手を、間一髪で躱す!
もし掴まれていたら今頃私はトマトのように潰れる準備をしていたころだろう。
でも、躱せた! 躱すことが出来た!
相手の一撃、必殺を躱す!
と、言っても伸ばした手を引っ込めただけではあるけれど。
躱したは躱した! これで―――。

”すっ”

「っか、つかまえましたわっ!!!!」

折った、壊した方の腕があり得ない角度から足へ伸びてきた。
最初の腕はフェイク、こっちが本命だったのだろう。
躱した瞬間の油断、一瞬の隙をつく必殺。
鎧の隙間を通す針の一撃!!
心の油断をつく毒蛇のような一撃!!




「これでガス欠だよね」

「え? あ…………」

”すかっ”

伸ばされた必殺は私の服にすら掠らない。

―――これでこれでガス欠、終了、おしまい、幕引き。
隙を狙っての攻撃、最後の最後を躱しきれば、今度は相手の心が隙だらけ。

「基本骨子解明―――」

絶望の淵をのぞく様な目でこちらを見てくる、もう何も残っていない少女。

「あ、ああ、おねえさ――――――」

「―――強化、開始」

その少女の首めがけて、自分の肉体崩壊も顧みない強化を施した足を―――。

”ごぎぃっん!”

「――――――まっ!!!」

―――振りぬいた。

”ごどっ!”

少女の首があらぬ方向に曲がる。

      ”ぼぎぃっ!”

それから数秒置いて、私の足もあらぬ方向に曲がる。
だけど、それでも、何でも、どんなでも。
立っているのは私だけ。

「殺されて上げれなくてごめんね」

大義のある戦い。
戦争はそうやって一つ終わった。

今日はここまでです。


とうとう黒子もやられたか・・・
こりゃ上条さんが見たら発狂ものだな

インデックスは「ヨハネのペン」は発動出来ない設定なの?
死にかけたりした時は自動で発動じゃなかったっけ

ふと思ったけど、これもしかして、初春死んでね?

>>619
とあるの空気感がないですが、個人的に好きなノリなんです

>>620
ウェイバーポジションは、いないかもですね
インデックスの孤軍奮闘になってますから

>>621
そうですね、あんまりマスターvsマスターは……
士郎vs慎司
士郎vs葛木
くらいでしたっけ

>>629
上条さんがいないとぐちゃぐちゃですしね

>>630
首輪が破壊されてるから、発動はないのかなぁ、と個人的に
覚醒パワーアップとしてやろうかなとも最初は考えたりしてました

>>631
ノーコメントで

ギャップで行けば行けるんじゃないでしょうか?
血みどろな彼女の弱い瞬間とか、彼女の帰る場所に

「ぼかぁ、あの娘の鞘になってあげたいんよ」

みたいなの格好良いですし

投下します。

「ぜっはっ、あっ、あ…………」

名も知らぬ少女の首を蹴り折った直後。
強化の魔術の効果切れと同時にコンクリートの床に倒れこんだ。
全身に損傷はもはや数えるのもバカらしいレベルだ。
何より血の流し過ぎで、命の揺らめきすら危ない。
呼吸は乱れすぎて、空気の吸い方さえ曖昧になっていく。
目の前はとっくに暗く、だけど少し赤く、これが地獄と言われれば信じそうな色をしていた。

「じご。く…………色」

―――地獄色。

その色を瞼に写したまま、動けずにいる。
聞こえてくる音はおそらくセイバーの戦闘音。
破壊の音、鳴り響く中、動けず動けず、このまま命が燃え尽きる寸前を彷徨う。
人一人殺した後だというのに、心に波は立っていない。
これから自分自身が死ぬというのに、心は何も動じていない。
ただただ私の内面には黒い海が広がっている。
その海に一人どこまでも沈んで行く。
このまま沈み[ピーーー]ば、少しは罪を贖えるのだろうか?
欲望の為に踏み台にした者たちに許しを乞えるのだろうか?

「ぁ……………………ぁあ……………………」

声も出ない。
出ているのは漏れてる呼吸音。
身体の感覚もなくなった。
目には地獄色。
ゆっくり沈み、沈み死する。
内面の海にどこまでもダイブしていく。

ああ。ごめんね、とうま…………。

とうまを助けたくて、私、人を殺したのに。

ごめんね、ごめんね、あなたに人殺しの理由を押し付けて―――。

―――ごめんね。

……………………。
…………。

…………。
……………………。
「ソレ」が召喚されて初めて見た光景は血に伏したゴミ寸前の少女だった。
元は白かった修道服をどす黒く染め、足をあらぬ方向に曲げて、異臭を漂わせ血の海で寝ている少女。
少女はほとんど死んでいた。
生きているというより、死んでいないだけ、その程度。
それを無感動に見ているうちに、どうしてか身体は自然に動いていた。
この誰からも見捨てられた救いようのないゴミのような少女を抱き上げ、まだ意識と目的がはっきりしないまま、飛んだ。
血が流れ出たせいか、それとも元から軽いのか、塵ほどの重さを腕に、何よりも速く動いていた。
多分、これが最初で最後の自由な意志であるのは存在した瞬間から理解していた。
他の使い道もあったと思う、だけど。
どうしてか―――どうしても。

この少女を死なせてはいけない。そんな気がした。

……………………。
…………。

「はぁっぁあぁああああ!!」

”ぎぃいん!!”

「ぎゃっか!?」

不可視の剣で少女の腹を斬りつける。
しかし、その一撃は同じく不可視の鎧によって防がれる。
何度も繰り返した攻防。
大げさに吹き飛んだ彼女は直ぐに小柄の身体を立て直し、光の槍との連携に備える―――。

「む………………?」

―――はずなのに。
彼女は倒れたまま動かない。
さきほどまではどれほど斬りつけようが、その”自慢の鎧”を以て立ち上がってきたのに、ピクリも動かない。

「…………どうした、終わりではないのだろう?」

それでも構えの油断は解かない、解けない。
今この瞬間にもバネ仕掛けのように立ち上がってこないとも限らない。
次の瞬間にも光の槍が広域を焼き尽くさないとも限らない。
だから緊張の糸は少しも緩めない。
下段に構えた剣。
やや前傾姿勢。
死線はどこを見るともなく見渡す。
いつどの瞬間、どの方角から、どこからでも対応できるように。

「…………………………………………」

動かない。
少女は動かない。
あれから呼吸にして45は置いた。
だけれども、少女は倒れたまま動く気配も見せない。
いくら緊張を解かないにしても限度はある。
それでも、もし解く瞬間を狙っている、そう考えれば警戒体勢は解けない。

「…………………………………………」

呼吸は深く、視線は彷徨わず。
肌で風を感じ、瓦礫の崩れる些細な音と、通りから聞こえる喧噪の隙間の音に耳を澄ませていく。
攻撃を仕掛けようとする予兆。
その隙間の音を必死に探していく。
幾度の戦場を乗り越えたが故に手に入れた第六感とも言える”耳”

来る、来るはず、どこから狙っている?

「……………………………………………………」

”耳”を澄ましていく。
遠くの一かけらの音を掬おうと、どこまでも耳を伸ばすが。

「……………………」

聞こえてこない。
倒れた少女は倒れたまま、あれだけ執拗に降り注いだ光の槍も無い。

「ふぅぅううう……………………」

一息。
深き深い呼吸。
そして剣握り手を緩める。
前傾だった身体も直立に戻す。

「……………………」

それでも何も聞こえてこない。

「終わったのか、これで?」

戦場の耳はゆっくりと普段の耳へ戻っていく。
聞こえてくるのはこの戦闘に騒ぐ者たちの甲高い声。
既に空気は戦場ではなかった。
あまりに呆気ない幕引きに戸惑いは覚えるが、戦場に拘っている訳にもいかない。

「…………」

敵が退いたのか、それともインデックス光の槍を対処してくれたのか、それは不明。
それでも―――。

「処置はしておきましょう…………」

―――することはしておかねば戦いは終わらない。
倒れた少女の元に歩み寄る。
その間は再び緊張を纏う。

「……………………これは?」

「ぁ。あ。あ。あ。あ。あ。あ。ぁ」

仰向けに倒れた少女は左右の目をそれぞれ有らぬ方に向け、呆けたように開いた口からはヨダレを垂らしていた。
異臭から、排泄物を垂れ流しているのも感じられた。
さっきまで勇猛果敢に戦っていた少女とはまるで重ならない姿に流石に面食らってしまう。
打ち所が悪かったか、それともまた別の理由か。
インデックスがいれば推測もしただろうけれど、今ここに彼女はおらず、そしてこのまま敵を放置する訳にもいかない。
だから―――。


「良い戦いでした、あなたの名誉は私が果てまで持って行くことを誓いましょう」

”ざしゅっ!”

―――何一つ躊躇うことはなくその首を刎ねた。
既に不可視の鎧は消えてなくなっていたようで、抵抗なく可憐な顔は転がった。

「…………」

剣を振るい、血を飛ばす。
最後に祈りを捧げ、彼女の魂の在り方を慮った。
それだけでもう彼女のことは終わった。
戦い、勝利し、止めをさし、そして弔った。
これ以上のことは線上にはない。
だから後は振り返ることなく、その場を去るだけだ。

「インデックス、今どちらへ? インデックス? インデックス!?」

終わった戦いよりも重要なことは既に起こったのだから。

…………。
……………………。

「骨折、打撲、失血、意識不明…………重体だにゃー」

「…………くっ! 私が、あのような相手に手間取っていたから!!」

病室。
いくつもの点滴やチューブが取り付けられた銀髪の少女は生きてるのかどうかすら判別不可能なくらい生気がない。
機械によって刻まれる鼓動だけが彼女が生きている証明。
包帯だらけの身体、可憐な顔はガーゼで覆われ歪に歪んでいるのは見て取れる。
誰かと戦い誰かがここに運んで来た半死半生の少女。
その少女の左右にはジャージ姿の少女と、アロハシャツの少年。
一人は悔しさに拳を握りしめ、一人は口元にだけ笑みを浮かべ瞳の色は恐れるほど深い。

「戦い終われば病院、どーにもかみやんに似てきちまったにゃー…………まったく」

「かみやん…………それがインデックスが”ここまで”する方、でしたか」

「ああ、そうだ」

「その方は、まだ見つからないのですか?」

「ああ」

二人の会話は短い。
それぞれの思惑を言葉にせず、口の内に留めているから。
セイバーは迷っていた。
あの朗らかな少女がボロクズのようになるまで戦うことに、迷っていた。

願いの為に全てを擲つ。

それは言葉だ。
言葉でしかない。
だというのに、この少女、インデックスは狂ってるかのようにそれを実行している。
呼べば良い、自分を呼べばここまで傷つくことはなかったのに。
なのに、彼女は”擲った”のだ。
その事実にセイバーは歯を食いしばった。

歯を食いしばり、後悔と自責の念に囚われているセイバーを見ながら元春は天井に視線を向けた。

「かみやん、やっぱりお前は凄かったんだにゃー」

ここにいない、少女の”ヒーロー”を想う。
学園都市の外、どこともしれない場所で生きてるのかすら不明の上条当麻。
彼がいればきっとこの戦争がこんなことにはなっていない。
それはきっと間違いではない。
きっとこんな戦争なんか起きてすらいなかっただろう。
でも、起きてしまった。
そしてそこに投げ込まれた少女がこれだ。
一歩、半歩の差で生きているだけの少女。

「ここまでやってもまだ終わらない、んだよな」

願いの為の道はまだ続く。
まだまだまだ、終わるまで続いていく。
戦争はまだ終わらない。

「嫌なもんだにゃー」

今日はここまでです。


いったいナニが召喚されたんだろ?


容赦なく最愛ちゃんを(;_;)

おもすれー、一気に読んでしまったwwwwww
これ償還されたのはアサシン?
まだ出てないのはそれだけだよね


絶対まとめ乗るわ、これ

投下します。

「それで今後の方針は決まってるのかにゃー?」

「方針、ですか…………」

病院の外、コーヒーとサンドイッチとおにぎりと焼きそばパンとアンパンを買って貰った私はベンチに座り、街灯に背を預けるモトハルに視線を向けた。
…………この者の思惑が今一読めません。
マスターの知己であるようなのだけれども、彼女が傷つくことを止めようとする素振りは見えない。
友の意志を尊重しているかとも思ったけれど、どうにもそういう感じでもないようだ。
どこか暗い色の少年、そのサングラスの向こうの目を覗きこむが、何も得ることはなかった。

「…………インデックスが行動可能になりしだい、キャスターを討つべきと私は思います」

おにぎりを一口頬張り、視線を外し思考を会話に切り替える。
ここで彼の人となりを確認しても意味はない。

「まぁ、残るサーヴァントはランサー、キャスター、アサシン、バーサーカー、確認出来ていないのはアサシンのみ、となるとこの中で討つとすれば、キャスター、か」

「ええ、キャスターは時間があればあるほど策を厚くしていくでしょうから」

そう、他のサーヴァントと違いキャスターの厄介さは戦力ではなく知略にある。
陣を敷かれ、神殿を建てられでもしたらそれは詰みに近い。
どんな英霊が召喚されたかにもよるけれど、準備の完全に整ったキャスターを崩すのは容易ではないのだ。
今回、私が人間相手に苦戦をしたように、キャスターの暗躍は脅威だ。
それにこの街には能力を持った人間が多数存在しているから、それらを手ごまにされれば更に脅威は増す。
キャスターは街中に魔法陣を描いているようで、空気が明らかに変わりだしていた。
敏感な者なら魔術の素養なくても違和感を覚える程度には空気が淀んでいた。

「手早く頭を叩き潰し、策ごと葬るのが手っ取り早いと思います」

「確かににゃー、この空気が尋常じゃないからな」

そう言うと彼は街灯から背を離し、匂いを嗅ぐように鼻をヒクつかせた。

「きな臭い事件が起きてるみたいだにゃー」

「…………あれは」

彼の見上げた先を私も見れば、巨大な飛行船の腹にかけられた電光掲示板に。

『集団衰弱死事件発生 柵川中学校の生徒103名が―――』

と、事件発生の報せが流されていた。

「集団衰弱死……………………キャスター、でしょうか?」

「だろう、な」

魂悔い、ライダーが行ったのと同じもの、似た方向性のものなのだろう。
戦争が、戦火が広がっている、それを感じた。
聖杯戦争という火が、ゆっくり学園都市に燃え広がっていく、そんな感覚。
今までとは違う、完全に無関係な人間の死がそれを報せてくれた。

「さて、俺はそろそろ行くかな、インデックスによろしくにゃー」

「……………………ご武運を」

話すことがなくなったのか手をヒラヒラ振りながらモトハルは去っていく。
その背中、これから何かを成そうとしている気配に、ひっそり武運を祈った。
何を考えているか解らない者ではあるけれど、彼はインデックスのことを気にかけている、それだけは解ったから。

「………………………………食べてしまいましょう」

見えなくなるまで背中を見送ってから、食事を再開した。
次なる戦いに備えて。

…………。
……………………。
………………………………。

「なんだぁ! こいつは、本当に人間か!?」

「おっらぁぁぁあああああああああ!!!!!」

”がいぃんっ!!”

固いものと硬いものがぶつかり合う、芯に響く音が舞う。
夜の帳が十分なまでに落ち、月の明かりも期待できない操車場。
そこで踊るは魅惑的なダンサーでも、寂しいシンガーでもなく二人の男。
一人はボロボロの白い学生服を纏った超能力者、削板軍覇。
彼の拳が空気を押し切り、その踏み込みが大地を揺らしていく。
爆ぜるように砂利を撒き散らし、もう一人の男、赤い槍を構える痩身の英霊に立ち向かう。
その砲弾のような人域を遥かに超えた勢いをランサーは捌き、受け、そして―――。

「っ! あんまり調子に乗んなよ坊主っ!!」

「っ!!」

”ずぁぁあああ!!!”

―――攻撃に転じる。
赤い槍、彼を象徴するその魔槍が音を抜き去る速度で伸びる!
その速さは槍がブレて見えるなんていうレベルではなく、赤い閃光が走ったが如く。
周囲の空気が摩擦で焦げ付く様なその一撃は、槍の軌跡の下の砂利を数メートル先まで巻き上げた。

「っ!!!」

肝を冷やすような槍撃。
恐らく削板軍覇が今まで経験した中で最速にして最善の一撃。
それを彼はなんとか身を捻り躱していた。

「っがああああああああ!!」

躱した捻りを返すように拳を振りかぶる!
避けた瞬間の隙を突くは拳。
真っ直ぐ真っ直ぐ、狂戦士の肉体すら破壊した拳が迫る―――!!

「おいおい、槍が一撃の訳ねーだろ」

――――――が。

「!?」

”しゅざざざざざざっ!!!!”

踏み込もう踏み出そうとしたその一歩が地面に着く微かな間。
瞬き以下の一瞬であるのに、ランサーの青い身体から繰り出される赤い閃光が無数に繰り出された。
幾条もの赤い軌跡が軍覇の視界を埋め尽くす。
そのどれでが最速で、そのどれもが必殺!

「ぐっ!!!」

”ざざっ!”

「はっ…………随分大仰に退いたもんだな」

必殺の槍。
一本の槍が繰り出した結界のような赤い戦線から逃れる為に後方に跳んだ軍覇を面白そうに、嘲る色はなく槍兵は笑う。
槍を肩にかけ、一見リラックスしているような態勢でありながらその身から滲む闘気に陰りは一片も見当たらない。
それを肌で感じているのか軍覇も相手から視線を外すことは出来ず、ただただ立ち尽くす。

「お前が誰でどんな目的で俺に戦いを挑んだかは知らないが―――」

立ち尽くす少年を前に、獣のように体勢を低くしてランサーは再び槍を構えた。
獣の様でありながらもその気配は、その手にある槍のように研ぎ澄まされていく。

「―――お前が戦士である以上、俺は容赦の出来るような男じゃねぇ」

「っっっっ!!!!」

”じりっ”

静かな声。
脅すようでも圧するようでもない宣告。
だけれども、その身から伸びた槍のような闘気は確実に軍覇を貫いた。
相手は動いていない、槍も構えたまま、だというのに彼の足は更に半歩退く。

「っ! すげぇ、な…………」

「あん?」

半歩、歴戦の英霊の闘気に貫かれ、それでも半歩しか退かなかった彼は足を震わせながら呟いた。
新しい玩具を手にした子供のように無邪気な目で。
自分の世界が広がった実感に踊る少年の目で。
その拳を強く強く強く固く握り、目の前にいる強大な存在を見つめる。

「この前の黒い奴も凄かった、あんたもすげぇ…………」

「……………………こいつ」

ぶつぶつと呟く姿にランサーは微かにだけれども穂先を震わせた。
軍覇から感じる異質さ、自分たちと似ているけれど違う、ずれた感覚に緊張していた。
相手は人間、そのハズなのに、何故? という疑問を胸に奥にしまい槍の先を固める。
それにより強くなる闘気は再び軍覇を貫くが、今度は半歩さえ退くことはなかった。
ただただ喜びを押え切れずに震えているだけ。

「すげぇ、すげぇ…………こんなにすげぇ奴らが世界にはいたんだな」

溢れだしそうなモノを必死に抑え込もうとしているのか、震えは更に強くなっていた。
だけど、彼の押さえつける『それ』は既に彼の器を超えようとしているのか長くは持たない